説明

原子層堆積装置および装填方法

本発明は、複数のALD反応炉があるパターンの相互位置関係で載置され、各ALD反応炉はALD処理のために一回分の基板群を収容するように構成され、上部からアクセス可能な反応室が各ALD反応炉に設けられた装置および方法に関する。複数の装填シーケンスが装填用ロボットによって実行される。各装填シーケンスは、収納域または棚において一回分の基板群を担持している基板ホルダを取り上げることと、この基板ホルダを一回分の基板群と共に当該ALD反応炉の反応室に移動させることとを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)装置および装填方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
原子層エピタキシー(ALE:Atomic Layer Epitaxy)法は、1970年代初頭にツオモ・サントラ(Tuomo Suntola)博士によって発明された。この方法の別の総称名は原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)であり、今日ではALEの代わりにALDが使用されている。ALDは、加熱された反応空間内に配置された基板に少なくとも2種類の反応性前駆体種を順次導入することによる特殊な化学的堆積法である。ALDの成長メカニズムは、化学的吸着(化学吸着)と物理的吸着(物理吸着)との間の結合強度の差異を利用する。ALDは、堆積プロセス中、化学吸着を利用し、物理吸着を排除する。化学吸着中、固相表面の原子(単数または複数)と気相から到達する分子との間に強力な化学結合が形成される。物理吸着による結合は、ファンデルワールス力のみが関与するため、はるかに弱い。物理吸着による結合は、局部温度が分子の凝縮温度を超えたときに熱エネルギーによって容易に破壊される。
【0003】
定義上、ALD反応炉の反応空間は、薄膜の堆積に用いられる各ALD前駆体に交互に順次曝露されうる全ての加熱された表面を含む。基本的なALD堆積サイクルは、連続する4つのステップ、すなわち、パルスA、パージA、パルスB、およびパージB、から成る。パルスAは、一般に金属前駆体蒸気から成り、パルスBは非金属前駆体蒸気、特に窒素または酸素前駆体蒸気、から成る。パージAおよびパージB期間中にガス状の反応副生成物とガス状の残留反応物分子とを反応空間からパージするために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスと真空ポンプとが用いられる。1つの堆積シーケンスは、少なくとも1つの堆積サイクルを含む。堆積シーケンスによって所望の厚さの薄膜が生成されるまで、堆積サイクルが繰り返される。
【0004】
前駆体種は、加熱された表面の反応部位への化学結合を化学吸着によって形成する。一般に、1つの前駆体パルス期間中に固体材料の単一分子層のみが各表面に形成されるように条件を揃える。したがって、この成長プロセスは自己終結または飽和する。例えば、第1の前駆体は、吸着種に付着したまま残ることによって表面を飽和させ、さらなる化学吸着を防止するリガンドを含むことができる。反応空間の温度は、前駆体分子種が基本的にそのままの状態で基板(単数または複数)上に化学吸着されるように、使用される前駆体の凝縮温度より高く、熱分解温度より低く維持される。基本的にそのままの状態でとは、前駆体分子種が表面に化学吸着されるときに揮発性リガンドが前駆体分子から脱離しうることを意味する。表面は、基本的に、第1の種類の反応部位、すなわち第1の前駆体分子の吸着種、で飽和する。この化学吸着ステップの後に、一般に第1のパージステップ(パージA)が続き、第1の前駆体の余剰蒸気と存在しうる反応副生成物蒸気とが反応空間から除去される。次に、第2の前駆体蒸気が反応空間に導入される。第2の前駆体分子は、一般に第1の前駆体分子の吸着種と反応し、これにより所望の薄膜材料が形成される。この成長は、吸着された第1の前駆体の全量が消費されて表面が基本的に第2の種類の反応部位で飽和すると終了する。次に、第2の前駆体蒸気の余剰分と存在しうる反応副生成物蒸気とが第2のパージステップ(パージB)によって除去される。その後、このサイクルは、膜が所望の厚さに成長するまで繰り返される。堆積サイクルをより複雑にすることもできる。例えば、堆積サイクルは、パージステップによってそれぞれ分離された3つ以上の反応物蒸気パルスを含むことができる。これら全ての堆積サイクルによって、演算論理装置またはマイクロプロセッサによって制御される1つの調時式堆積シーケンスが形成される。
【0005】
ALDによって成長させた薄膜は緻密であり、ピンホールがなく、厚さが均一である。例えば、TMAとも称されるトリメチルアルミニウム(CHAlと水とから250〜300℃で成長させた酸化アルミニウムは、通常、100〜200mmのウェーハ全体にわたる不均一性が約1%である。ALDによって成長させた金属酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜、エレクトロルミネセンス表示装置の絶縁体、キャパシタ絶縁膜、および不動態化層に適している。ALDによって成長させた金属窒化物薄膜は、デュアルダマシン構造などの拡散障壁に適している。
【0006】
さまざまなALD反応炉におけるALDプロセスに適した前駆体は、参照によって本願明細書に援用するものとする、例えばR.プールネン(R.Puurunen)のレビュー記事「原子層堆積の界面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ(Surface chemistry of atomic layer deposition: A case study for the trimethylaluminium/water process)」、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(J. Appl. Phys.)、第97(2005)巻、p.121301に開示されている。
【0007】
一般的な反応炉において、ALD堆積サイクルは、単一のウェーハまたは基板に適用される。この種の単一ウェーハ処理は、研究開発用には十分かもしれないが、採算のとれる量産のための製品スループットや平均サービス間隔などの要件を満たさない。
【0008】
参照によりその内容を本願明細書に援用するものとする、2008年5月27日に出願され、本出願と同じ譲受人に譲渡された米国特許出願第12/154,879号は、ALD反応炉のスループットを向上させる解決策を提示している。その解決策においては、スループットを向上させるために、一回分の基板群が基板ホルダに担持されて鉛直流型反応炉に装填され、反応炉内の一回分の基板群の全てが同時に処理される。これは、単一基板用反応炉に比べ、量産に向けての大きな前進を示すが、スループットをさらに向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第12/154,879号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】R.プールネン(R.Puurunen)のレビュー記事「原子層堆積の界面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ(Surface chemistry of atomic layer deposition: A case study for the trimethylaluminium/water process)」、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(J. Appl. Phys.)、第97(2005)巻、p.121301
【摘要】
【0011】
本発明の第1の側面によると、
あるパターンの相互位置関係で載置された複数の原子層堆積(ALD)反応炉であって、各ALD反応炉はALD処理のために一回分の基板群を収容するように構成され、上部からアクセス可能な反応室が各ALD反応炉に設けられた、複数のALD反応炉と、
把持部と移動用構成とを備えた装填用ロボットであって、上記複数のALD反応炉の各々への装填のために複数の装填シーケンスを実行するように構成された装填用ロボットと、
を備えたALD反応炉システムであって、各装填シーケンスは、
収納域または棚において一回分の基板群を担持している基板ホルダを上記把持部によって取り上げることと、
上記基板ホルダを上記一回分の基板と共に当該ALD反応炉の反応室に上記移動用構成によって移動させることと、
を含む、ALD反応炉システムが提供される。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記装填用ロボットは、各装填シーケンスにおいて、上記基板ホルダを上部から反応室に鉛直に、別の装填室を通さずに、降ろすように構成される。本システムのALD反応炉の数は、2つまたは3つ、またはそれ以上、にしてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態においては、複数のウェーハが事前充填されたカセットが装填用ロボットによって装填され、かつ取り出される。
【0014】
いくつかの実施形態において、これらの基板は、シリコンウェーハなどの半導体ウェーハ、例えば3〜12インチのウェーハ、である。
【0015】
いくつかの実施形態において、これらの基板は、2〜10mmの金属、ガラス、またはシリカ球などの三次元部品を10〜100000個備え、装填シーケンス、堆積プロセス、および取り出しシーケンスの間、これらの基板は事前充填されたカセット内にある。
【0016】
いくつかの実施形態において、各ALD反応炉は、
反応炉蓋、または反応室蓋に一体化された真空室蓋、を備える蓋システムと、
反応室への装填のために上記蓋システムを吊り上げるように構成された吊り上げ構成と、
を備える。
【0017】
いくつかの実施形態において、ALD反応炉システムは、上記複数のALD反応炉と、装填用ロボットと、収納域または棚とを取り囲む、HEPA(high efficiency particulate air)フィルタフードなどの、高性能の微粒子除去エアフィルタフードを備える。
【0018】
いくつかの実施形態において、装填用ロボットは、ALD処理後に上記複数のALD反応炉の各々からの取り出しのために複数の取り出しシーケンスを実行するようにさらに構成され、各取り出しシーケンスは、
ALD処理された一回分の基板群を担持している基板ホルダを上記把持部によって当該ALD反応炉から取り上げることと、
上記基板ホルダをALD処理された一回分の基板群と共に上記収納域または棚に上記移動用構成によって移動させることと、
を含む。
【0019】
本発明の第2の側面によると、
あるパターンの相互位置関係で載置された複数のALD反応炉であって、各ALD反応炉はALD処理のために一回分の基板群を収容するように構成され、上部からアクセス可能な反応室が各ALD反応炉に設けられた、複数のALD反応炉を作動させることと、
上記複数のALD反応炉の各々への装填のために複数の装填シーケンスを装填用ロボットによって実行することと、
を含む方法であって、各装填シーケンスは、
収納域または棚において一回分の基板群を担持している基板ホルダを取り上げることと、
上記基板ホルダを上記一回分の基板群と共に当該ALD反応炉の反応室に移動させることと、
を含む、方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態においては、各装填シーケンスにおいて、上記基板ホルダは上記装填用ロボットによって上部から反応室に鉛直に、別の装填室を通らずに、降ろされる。
【0021】
いくつかの実施形態において、本方法は、上記複数のALD反応炉と、装填用ロボットと、上記収納域または棚とを取り囲むために、HEPAフィルタフードなどの高性能の微粒子除去エアフィルタフードを配置することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記装填シーケンスは、人間オペレータなしに、単一のロボットによって実行される。
【0023】
いくつかの実施形態において、本方法は、ALD処理後に上記複数のALD反応炉の各々からの取り出しのために複数の取り出しシーケンスを装填用ロボットによって実行することをさらに含み、各取り出しシーケンスは、
ALD処理された一回分の基板群を担持している基板ホルダを当該ALD反応炉から取り上げることと、
上記基板ホルダをALD処理された一回分の基板群と共に上記収納域または棚に移動させること、
を含む。
【0024】
あらゆる実施形態において複数のALD反応炉を設ける必要はなく、いくつかの実施形態においては単一のALD反応炉で十分であろう。したがって、本発明のさらに別の側面は、
原子層堆積(ALD)処理のために一回分の基板群を収容するように構成されたALD反応炉であって、上部からアクセス可能な反応室を備えたALD反応炉と、
把持部と移動用構成とを備えた装填用ロボットであって、上記ALD反応炉への装填のための装填シーケンスを実行するように構成された装填用ロボットと、
を備えるALD反応炉システムであって、上記装填シーケンスは、
収納域または棚において一回分の基板群を担持している基板ホルダを上記把持部によって取り上げることと、
上記基板ホルダを上記一回分の基板群と共にALD反応炉の反応室に上記移動用構成によって移動させることと、
を含む、ALD反応炉システムを提供する。
【0025】
本発明のいくつかの側面および/または実施形態の利点は、ALD反応炉におけるスループットの向上、費用効率の向上、およびALD反応炉への装填(および取り出し)時間の短縮を含む。
【0026】
以下、本発明の詳細な説明および本明細書本文に添付の特許請求の範囲において、本発明のさまざまな例示的実施形態を説明する。本発明の選択された側面に言及して各実施形態を説明する。当業者は、本発明の何れかの実施形態を同じ側面に含まれる他の実施形態(単数または複数)と組み合わせてもよいことを理解されるであろう。さらに、何れかの実施形態を他の側面に、単独で、または他の実施形態(単数または複数)との組み合わせで、適用することもできる。
【0027】
次に、添付図面を参照しながら本発明を単なる例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態によるALD反応炉システムの装填用ロボットを示す。
【図2】一実施形態による把持構成を示す。
【図3】一代替実施形態を示す。
【図4】一実施形態によるALD反応炉システムの各部を示す。
【図5】一実施形態による吊り上げ機構を示す。
【図6】一実施形態によるALD反応炉システムのレイアウトを示す。
【詳細な説明】
【0029】
ALD成長メカニズムの基本は、当業者には公知である。ALD法の詳細は、本特許出願の導入部にも説明されている。ここでは、これらの詳細を繰り返さないが、その点に関しては、導入部を参照されたい。
【0030】
図1は、一実施形態によるALD反応炉システムの装填用ロボットの一例を示す。装填用ロボット110は、基部105に取り付けられ、相互に回転可能に取り付けられた1組のアーム111〜114を備える。アーム111〜114は、所望の動きが得られるように、電子制御システム(図示せず)によって制御される。
【0031】
装填用ロボット110は、アーム111の下部111aから基部105に、ボルトまたは他の適切な取り付け具によって、取り付けられる。アーム111の上部111bとそこに取り付けられた装填用ロボット110の他の部分とは、矢印151によって示されているように、水平面での回転が可能である。アーム112は、継ぎ手によってアーム111に取り付けられ、矢印152によって示されているように、回転軸Aを中心に回転可能である。アーム113は、継ぎ手によってアーム112に取り付けられ、矢印153によって示されているように、回転軸Bを中心に回転可能である。アーム114は、継ぎ手によってアーム113に取り付けられ、矢印154によって示されているように、回転軸Cを中心に回転可能である。アーム114は、矢印155によって示されているように、自身の縦軸を中心とした回転も可能である。
【0032】
図1に示され、図2により詳細に示されているアーム114は、一回分の基板群130を担持している基板ホルダ120を把持するためのT字形の構造を備える。一回分とは、図1および図2には単一の基板130のみが示されているが、一般には、鉛直に載置された数枚の基板(すなわち、それぞれの表面が鉛直面を形成する複数の基板)を含む。一回分の基板の数は、実施形態およびALD反応炉のサイズに応じて、10枚または数10枚の基板から数百枚の基板に及んでもよい。米国特許出願第12/154,879号に示されているように、これらの基板を互いに位置合わせして基板ホルダ120内に一列に配置でき、このように一列に配置すると、基板を互いに並行にさせることができる。これらの基板は基板ホルダ120によって支持される。反応空間の効率を向上させるために、基板間の間隔は小さい。ただし、この間隔は、前駆体流が基板間に適正に入り込めるように十分大きい。いくつかの実施形態において、ほぼ均一な間隔は、一般には1〜10mmの範囲から選択され、一実施形態においては2〜5mmの範囲から選択される。
【0033】
T字形の構造は、図2に示すように、アーム114と、これに直角なバー215とを備えてもよい。バー215は、基板ホルダ120側の対応する吊り上げ部すなわちフック214に嵌入する突起225をその両端に有してもよい。この場合、これらの突起225は、基板ホルダを担持する。あるいは、代替構造を提供するために、アーム114の端部を図3に示すような形状にすることもできる。この実施形態において、アーム114は2つの指状部分を含み、これらの指状部分は、指状部分に直角なバーによって結合される。このバーが各指状部分を通って突出するため、各突起325が基板ホルダ120側の対応する吊り上げ部すなわちフック214に嵌入する。基板ホルダ120を担持するためのアーム114の他の代替案も可能であり、実施形態に応じて実装可能である。
【0034】
基板ホルダ120の材料として、一般に、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭化ケイ素(例えば、化学物質蒸気の含浸により黒鉛から製造したSiC)または石英が挙げられる。一実施形態においては、基板ホルダ120を使用する前に、ホルダ表面を腐食性のソース化学物質に対して保護するために、基板ホルダ120を非晶質薄膜(例えば100〜200nmのAl)によって被覆する。
【0035】
図4は、一実施形態によるALD反応炉システムの各部を示す。このシステムは、第1のALD反応炉481を備えた第1のALD反応炉キャビネット401を備える。ALD反応炉481は、上部からアクセス可能な鉛直流型反応炉であるが、他のALD反応炉構成も可能である。一実施形態において、反応炉481は、ラウンドフィッティング、例えば複数のフランジをニップルにボルト止めしたISOフルニップルやCFフィッティングまたは同様のもの、によって形成された真空室を備える。フィッティングの幅は、実施形態に応じて一回分の100〜300mmのウェーハ群のための反応室と複数のヒータとを収容するのに十分な大きさである。一実施形態において、反応炉の蓋は、真空室の蓋461が反応室の蓋462に一体化され、これにより蓋システムが形成されるように、構成される。この蓋システムは、吊り上げ機構470によって上昇および下降させることができる。吊り上げ機構470は、空圧式昇降機によって作動可能であり、その動きはコンピュータ(図示せず)によって制御可能である。他の複数の実施形態においては、空圧式昇降機の代わりに、ステッピングモータを使用できる。
【0036】
図4に示すシステムは、ALD反応炉481と同様な(ただし、図4には、その蓋のみが示されている)第2のALD反応炉を備えた第2のALD反応炉キャビネット402と、これらのALD反応炉の間に載置された装填用ロボット110とをさらに備える。装填用ロボットは、図4に示す例においてはキャビネット410によって形成された基部に取り付けられている。単一の装填用ロボット110が上記の両ALD反応炉のために働く(装填および取り出しを行う)が、一代替実施形態において、ALD反応炉システムは、2台のALD反応炉ではなく、1台のALD反応炉のみを備えることができる。
【0037】
図4に示す例において、装填用ロボット110は、ALD反応炉481への装填中である。一実施形態において、ALD反応炉481は通気されて、堆積圧力(一般に1〜10hPa)から室内圧力(一般に950〜1050hPa)になっている。一回分の基板群は同時に装填される。ALD反応炉481の蓋(または組み合わされた蓋システム)は吊り上げ機構470によって上方位置に吊り上げられ、反応室の内部空間が露出されている。これは、図5により詳細に示されている。この図において、参照符号585は、反応室の内部空間を示す。
【0038】
装填用ロボット110は、装填ステーション(図示されていない装填空間/収納域または架/棚)においてALD処理対象の一回分の基板群を担持している基板ホルダ120を受け取る、または把持する。実際には、装填用ロボット110は、その把持部、すなわち適切な突起(単数または複数)225または325あるいは同様のものを有するアーム114、によって、基板ホルダ120を把持してもよい。装填用ロボット110の動きは、電子制御システム(図示せず)によって制御され、これにより基板ホルダ120を基板群130と共に移動させるための移動用構成となる。装填用ロボット110は、基板ホルダ120を一回分の基板群130と共に装填ステーションからALD反応炉481に向けて運ぶ。ALD反応炉481の至近距離において、装填用ロボット110は、反応室に通じる開口の上方で主に水平方向に基板ホルダ120を移動させる。その後、装填用ロボット110は、基板ホルダ120を一回分の基板群130と共に主に鉛直方向に反応室の底に降ろす。その後直ちに、装填用ロボット110は、基板ホルダ120の把持を解放し、アーム114を反応炉から遠ざける。反応炉の蓋は、吊り上げ機構470によって閉位置に降ろされる。反応室は、室内圧力から真空になるまで排気される。処理圧力は、窒素ガスなどの不活性ガス流によって、一般に約1〜10hPaに調整される。基板温度は、(高温壁)反応室の内部において処理温度(一般に約+80〜+500℃)に安定化させることができる。
【0039】
第1のALD反応炉481は、装填された一回分の基板群130に対して(所望数のALD堆積サイクルを含む)ALD処理を行う。ALD処理の後、反応室は室内圧力になるまで通気され、反応炉の蓋は吊り上げ機構470によって上方位置に持ち上げられ、装填用ロボット110は基板ホルダ120をALD処理された一回分の基板群130と共にALD反応炉から取り出す。装填用ロボット110は、基板ホルダ120を上記一回分の基板群130と共に取り出しステーションに運ぶ(取り出しステーションは、上記の装填ステーションと同じステーションでもよいが、異なるステーションでもよい)。装填および取り出し操作は、単一の装填用ロボット110によって行うことができる。ALD反応炉(単数または複数)と装填用ロボットとは、適正な操作シーケンスを実行するために、適切な電子回路を通じて互いに通信し合う。
【0040】
システムの第2のALD反応炉および何れか他のALD反応炉への装填および取り出しは、同様に行われる。全てのALD反応炉への装填を最初に行ってから、これらのALD反応炉の何れかにおいてALD処理を開始することができる。あるいは、装填用ロボット110は、適切な操作スケジュールに従って、特定のALD反応炉への装填または取り出しを、他のALD反応炉が処理中のときに行うこともできる。
【0041】
図6は、一実施形態によるALD反応炉システムのレイアウトを示す。このシステムは、あるパターンの相互位置関係で載置された複数のALD反応炉を備えている。この例において、反応炉の数は3つであり、三角形のパターンである。単一の装填用ロボット110が、ALD反応炉601、602、および603のそれぞれに対して働く。ロボット110は、事前充填された基板ホルダ(またはカセット)120を反応炉601〜603のうちの1つに装填するために、基板ホルダ(またはカセット)120を収納域または架606から取り上げ、ALD処理後に元の場所に戻し、次の事前充填された基板ホルダ(またはカセット)120を取り上げる。
【0042】
一実施形態において、収納域または架606は、基板ホルダ(単数または複数)を装填用ロボットにとって最適な取り扱い位置に設定するための、スライドテーブルなどの電子制御の位置決めテーブルを備える。
【0043】
この実施形態においては、他の複数の実施形態にも適用可能であるが、反応炉または基板ホルダ(単数または複数)への不純物粒子の侵入を防ぐための高性能の微粒子除去エア(HEPA:high efficiency particulate air)フィルタフード690がALD反応炉システム(反応炉、装填用ロボット、および収納域または棚)を取り囲むように配置される。このようにして、局所的なクリーンルームを作成することができる。一実施形態において、清浄空気は、好ましくは層流を形成するように、フード天井部から床に向けて吸排気される。局所的クリーンルームは、例えば、より大きな室内に構成することもできる。装填、ALD処理、および取り出し操作は、この局所的クリーンルーム内に人間オペレータを常駐させずに、局所的クリーンルーム内で装填用ロボットとALD反応炉(単数または複数)とによって行われる。
【0044】
上述の通り種々の実施形態を提示してきたが、本明細書においては、単語「備える/収容する/含む」は何れも、意図的な排他性のない非限定的な表現であることを理解されたい。
【0045】
以上の説明では、本発明を実施するために本発明者らが現時点で考えた最良の態様の詳細かつ有益な説明を本発明の特定の実装および実施形態の非制限的な例として提供した。ただし、本発明は上に示した実施形態の詳細に制約されるものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて他の実施形態での実施も可能であることは当業者には明らかである。
【0046】
さらに、上述に開示した本発明の実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴を同様に使用することなく効果的に使用できる。したがって、上記説明は本発明の原理の単なる例に過ぎず、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制約される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あるパターンの相互位置関係で載置された複数の原子層堆積(ALD)反応炉であって、各ALD反応炉はALD処理のために一回分の基板群を収容するように構成され、上部からアクセス可能な反応室が各ALD反応炉に設けられた、前記複数のALD反応炉と、
把持部と移動用構成とを備えた装填用ロボットであって、前記複数のALD反応炉の各々への装填のために複数の装填シーケンスを実行するように構成された前記装填用ロボットと、
を備えるALD反応炉システムであって、各装填シーケンスは、
収納域または棚において一回分の基板群を担持している基板ホルダを前記把持部によって取り上げることと、
前記基板ホルダを前記一回分の基板群と共に前記移動用構成によって当該ALD反応炉の前記反応室に移動させることと、
を含む、ALD反応炉システム。
【請求項2】
前記装填用ロボットは、各装填シーケンスにおいて、前記基板ホルダを前記上部から反応室に鉛直に、別の装填室を通らずに、降ろすように構成される、請求項1に記載のALD反応炉システム。
【請求項3】
前記システムのALD反応炉の数は2つまたは3つである、請求項1に記載のALD反応炉システム。
【請求項4】
各ALD反応炉は、
反応炉蓋、または反応室蓋に一体化された真空室蓋、を備える蓋システムと、
前記反応室への装填のために前記蓋システムを吊り上げるように構成された吊り上げ構成と、
を備える、請求項1に記載のALD反応炉システム。
【請求項5】
前記複数のALD反応炉と、装填用ロボットと、収納域または棚とを取り囲む高性能の微粒子除去エアフィルタフードを備える、請求項1に記載のALD反応炉システム。
【請求項6】
前記装填シーケンスを、人間オペレータなしに、単一のロボットによって実行するように構成された、請求項1に記載のALD反応炉システム。
【請求項7】
前記装填用ロボットは、ALD処理の後で前記複数のALD反応炉の各々からの取り出しのために複数の取り出しシーケンスを実行するように構成され、各取り出しシーケンスは、
ALD処理された一回分の基板群を担持している基板ホルダを前記把持部によって当該ALD反応炉から取り上げることと、
前記基板ホルダを前記ALD処理された一回分の基板群と共に前記収納域または棚に前記移動用構成によって移動させることと、
を含む、請求項1に記載のALD反応炉システム。
【請求項8】
あるパターンの相互位置関係で載置された複数のALD反応炉であって、各ALD反応炉はALD処理のために一回分の基板群を収容するように構成され、上部からアクセス可能な反応室が各ALD反応炉に設けられた、前記複数のALD反応炉を作動させることと、
前記複数のALD反応炉の各々への装填のために複数の装填シーケンスを装填用ロボットによって実行することと、
を含む方法であって、各装填シーケンスは、
収納域または棚において一回分の基板群を担持している基板ホルダを取り上げることと、
前記基板ホルダを前記一回分の基板群と共に当該ALD反応炉の前記反応室に移動させることと、
を含む、方法。
【請求項9】
各装填シーケンスにおいて、前記基板ホルダは前記装填用ロボットによって前記上部から反応室に鉛直に、別の装填室を通らずに、降ろされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記システムのALD反応炉の数は2つまたは3つである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各ALD反応炉は、反応炉蓋、または反応室蓋に一体化された真空室蓋、を備えた蓋システムを備え、前記方法は、
前記反応室への装填のために前記蓋システムを吊り上げること、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のALD反応炉と、装填用ロボットと、前記収納域または棚とを取り囲むように高性能の微粒子除去エアフィルタフードを配置し、これにより局所的クリーンルームを形成すること、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記装填シーケンスは、人間オペレータなしに、単一のロボットによって実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ALD処理の後に前記複数のALD反応炉の各々からの取り出しのために複数の取り出しシーケンスを前記装填用ロボットによって実行することをさらに含み、各取り出しシーケンスは、
ALD処理された一回分の基板群を担持している基板ホルダを当該ALD反応炉から取り上げることと、
前記基板ホルダを前記ALD処理された一回分の基板群と共に前記収納域または棚に移動させることと、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
原子層堆積(ALD)処理のために一回分の基板群を収容するように構成されたALD反応炉であって、上部からアクセス可能な反応室を備えた前記ALD反応炉と、
把持部と移動用構成とを備えた装填用ロボットであって、前記ALD反応炉への装填のための装填シーケンスを実行するように構成された前記装填用ロボットと、
を備えるALD反応炉システムであって、前記装填シーケンスは、
収納域または棚にある一回分の基板群を担持している基板ホルダを前記把持部によって取り上げることと、
前記基板ホルダを前記一回分の基板群と共に前記移動用構成によって前記ALD反応炉の前記反応室に移動させることと、
を含む、ALD反応炉システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−530003(P2011−530003A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520533(P2011−520533)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050616
【国際公開番号】WO2010/012863
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510275024)
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI−02150 Espoo, Finland
【Fターム(参考)】