説明

基板上にバッファ層を形成する方法

【課題】従来技術に比較して、形成されたバッファ層の厚さをより正確に制御することができ、欠陥密度を減少させ、蒸着温度を下げることができるバッファ層を形成する方法を提供する。
【解決手段】HOの前駆物質およびOの前駆物質のいずれかと、DEZnの前駆物質とを供給し、400℃以下の処理温度で原子層成膜処理を行い、バッファ層として機能するZnO層12をサファイヤ基板、Si基板、SiC基板またはガラス基板からなる基板10の上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にバッファ層を形成する方法に関し、特に、サファイヤ基板、Si基板、SiC基板またはガラス基板といった基板上にバッファ層として機能するZnO層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と活性層(または、マイクロレベルやナノレベルの構成要素)の間にバッファ層を配置する技術、例えば、サファイヤ基板とGaN層の間にバッファ層を配置する技術が、従来技術として知られている。すなわち、バッファ層が、活性層と基板の間の格子不整合を緩和し、この活性層の欠陥密度を減少させると共に、活性層と基板の間の熱膨張係数の差を吸収する。
【0003】
バッファ層として機能する様々な材料の開発とともに、ZnOはすでに一般に利用されようになっている。バッファ層としてZnOを用いて表面欠陥を減らすことは、SEMを用いた測定によって証明されている。特に、ZnO層のアニーリング・プロセスを実行することにより、結晶の結晶化品質を改善できることも、証明されている。バッファ層として機能するZnO層を形成するプロセスとしては、現在、例えば高周波スパッタリング、分子線エピタキシ(MBE)、パルスレーザ蒸着(PLD)などがある。関連従来技術として、米国特許6,664,565を参考とすることができる。
【0004】
しかしながら、従来技術の検討により、形成されたZnO層の特性(例えば外形)には、まだ改善の余地があることが判明した。加えて、いくつかの従来技術は、プロセス層の形成を複雑にしている。したがって、ZnO層の特性を改善するための形成方法が必要であることは明らかである。
【特許文献1】米国特許6,664,565
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の要旨は、基板上にバッファ層を形成する方法の提供にある。特に、本発明による方法は、例えばサファイヤ基板、Si基板、SiC基板またはガラス基板といった基板の上にZnO層を形成する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施例によれば、基板上にバッファ層を形成する方法において、最初に、DEZnの前駆物質に加え、HOまたはOを供給する。そして、この方法は、400℃以下の処理温度で原子層成膜処理を実行し、基板上にZnO層を形成する。
【0007】
ここでは、ZnO層はバッファ層として機能する本発明の好ましい実施例によれば、この形成方法では、400℃から1200℃まで範囲の温度でZnO層のアニーリング・プロセスを実行する。
【0008】
本発明の利点および要旨は、添付の図面と共に以下の説明によって、よく理解されるであろう。
【発明の効果】
【0009】
従来技術に比較して、本発明で開示されるZnO層を形成する方法は、形成されたバッファ層の厚さをより正確に制御することができ、欠陥密度を減少させ、蒸着温度を下げることができることは明らである。明らかに、本発明で開示される方法によって形成されたZnO層は、その後に形成された活性層(または、マイクロレベルやナノレベルの構成要素)の歩留および特性を改善するのに効果があることは明らである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、基板上にバッファ層を形成する方法を提供する。特に、本発明の方法によれば、形成されたバッファ層の厚さをより正確に制御し、欠陥密度を減少させ、蒸着温度を下げることができる。
【0011】
図1Aおよび図1Bを参照する。それらの図は、本発明の好ましい実施例によるバッファ層を形成する方法を示す断面図である。以下、本発明の好ましい実施例による方法の詳細な説明を行う。
【0012】
まず第一に、図1Aに示すように、本発明の好ましい実施例による方法は、用意された基板10を、原子層成膜処理を実行するために設計された反応室にセットする。
【0013】
1つの実施例において、基板10はサファイヤ基板、Si基板、SiC基板またはガラス基板である。
【0014】
それから、本発明の好ましい実施例による方法では、DEZnの前駆物質と、HOまたはOの前駆物質を供給する。その後に、400℃以下の処理温度で原子層成膜処理を実行することによって、基板10上にZnO層12を形成する。図1Aに示すように、ZnO層12は、バッファ層として機能する。
【0015】
1つの実施例において、原子層蒸着サイクルは、次の4つの反応ステップを含む。
【0016】
1.キャリアガスを用いて、反応室にHO分子を導入する。このことにより、HO分子は、基板の表面に吸収され、そこにOHラディカルの層を形成する。ここで、露光時間は0.1秒である。
【0017】
2.キャリアガスを用いて、基板の表面に吸収されなかったHO分子を除去する。ここで、パージ時間は5秒である。
【0018】
3.キャリアガスを用いて、反応室にDEZn分子を導入することにより、DEZn分子は、基板の表面に吸収されたOHラディカルと反応して、ZnOの1つの単分子層を形成する。その場合の副産物は、有機分子である。ここで、露光時間は0.1秒である。
【0019】
4.キャリアガスを用いて、上記反応で生じた残余DEZn分子および副産物を除去する。ここで、パージ時間は5秒である。
【0020】
上述した実施例において、キャリアガスとして、非常に純粋なアルゴン・ガスまたは窒素ガスを利用できる。上記4つのステップは、原子層蒸着サイクルと呼ばれる。原子層蒸着サイクルは、基板の全体の表面上に、単一の原子層の厚さを有する薄膜を成長させる。この特性は、自己制御機能(self−limiting)と呼ばれる。そして、この特性によって、原子層蒸着で、単分子層の厚さの精度での制御が可能となる。したがって、ZnOバッファ層の厚さは、正確に原子層蒸着サイクルの回数を制御することにより、正確に制御することができる。
【0021】
一つの実施例において、処理温度は、室温から400℃までの範囲で選択される。より好ましい処理温度は、150℃から200℃までの範囲である。
【0022】
一つの実施例において、ZnO層12の好ましい厚みは、20nmから500nmまでの範囲から選択される。
【0023】
その後に、さらに欠陥密度を減少させ、表面状態を改善するために、本発明の好ましい実施例による方法は、400℃から1200℃まで温度範囲で、ZnO層のアニーリング・プロセスを実行する。
【0024】
そこでは、空気すなわち窒素ガスまたは酸素ガスが、導入される。従来技術に比較して、本発明で開示されるZnO層を形成する方法は、以下の効果があることは明らである。
【0025】
(1)原子スケールの材料形成の制御
(2)形成されたバッファ層の厚さのより正確な制御
(3)大きい面積で大量生産
(4)優れた均一性
(5)優れた共形性
(6)ピンホールのない構造
(7)小さな欠陥密度
(8)低い蒸着温度
【0026】
上記の具体例および説明によって、本発明の機能および要旨は、十分に理解されるであろう。当業者は、本発明の要旨に沿って、さまざまな変形や改変が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、上記の開示は、添付の請求の範囲によってのみ限定されるものとして、解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の好ましい実施例によるZnO層の形成方法を説明するための断面図である。
【図1B】本発明の好ましい実施例によるZnO層の形成方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 基板
12 ZnO層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にバッファ層を形成する方法であって、
Oの前駆物質およびOの前駆物質のいずれかと、DEZnの前駆物質とを供給するステップと、
400℃以下の処理温度で原子層成膜処理を行い、バッファ層として機能するZnO層を前記基板上に形成するステップとからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理温度は、室温から400℃までの温度範囲から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は、サファイヤ基板、Si基板、SiC基板およびガラス基板からなるグループから1つ選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ZnO層は、その厚みが20nmから500nmまでの範囲から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
400℃から1200℃まで温度範囲で、ZnO層のアニーリングを行うステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate


【公開番号】特開2008−81391(P2008−81391A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−160909(P2007−160909)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(507204660)中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司 (5)
【出願人】(507204338)
【Fターム(参考)】