説明

基板処理装置およびガスノズルならびに基板若しくは半導体デバイスの製造方法

【課題】各ガス供給口から供給される反応ガスの流れを略均一化して、各基板をばらつくこと無く成膜する。
【解決手段】各ガス供給ノズル60,70に、各ガス供給口68,72からの反応ガスの供給方向に延在し、かつ各ガス供給口68,72の第1ガス排気口90側に各整流板69,73を設けた。これにより、各ガス供給口68,72から噴射(供給)された反応ガスが、第1ガス排気口90に向けて直接流れてしまうことを抑制でき、ひいては反応ガスの流れを各ウェーハ14に向けて略均一化して、各ウェーハ14をばらつくこと無く成膜することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置およびガスノズルならびに基板若しくは半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、ケイ素(Si)に比して、絶縁耐圧や熱伝導性が高いこと等から、特にパワーデバイス用素子材料として注目されている。その一方でSiCは、不純物拡散係数が小さいこと等から、Siに比して結晶基板や半導体装置(半導体デバイス)の製造が難しいことが知られている。例えば、Siのエピタキシャル成膜温度が900℃〜1200℃程度であるのに対し、SiCのエピタキシャル成膜温度は1500℃〜1800℃程度となっており、装置の耐熱構造や材料の分解抑制等に技術的な工夫が必要となる。このようなSiCのエピタキシャル成膜を行う基板処理装置としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、反応室に複数枚の基板を縦方向に積層して処理する、所謂バッチ式縦型基板処理装置が記載され、反応室の長手方向(上下方向)には、第1ガス供給ノズルおよび第2ガス供給ノズルが延在している。第1ガス供給ノズル(ガスノズル)は、シリコンおよび塩素含有ガスとしてのテトラクロロシラン(SiCl)ガス等を反応室内に供給し、第2ガス供給ノズル(ガスノズル)は、還元ガスとしての水素(H)ガス等を反応室内に供給する。そして、少なくともこれらの2種類の反応ガスは反応室の内部で混合され、その後、混合された反応ガスはウェーハ(基板)の表面に沿って流れる。これにより、ウェーハにSiC膜がエピタキシャル成長により形成される。
【0004】
このように、特許文献1に記載された基板処理装置は、第1ガス供給ノズルおよび第2ガス供給ノズルを設け、少なくとも2種類の反応ガスを反応室の内部で混合させている。これにより、1500℃〜1800℃にもなる反応室の内部に延在するガスノズルの内壁やガス供給口へのSiC膜の析出等を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−003885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された基板処理装置においては、中空パイプ状に形成したガスノズルの側面部に、その長手方向に沿って並ぶよう複数のガス供給口を開口して設けており、これらのガス供給口は、ガスノズルの側面部をその径方向に単純に貫通させることで形成している。したがって、ガスノズル内から各ガス供給口を介して外部に供給される反応ガス(成膜ガスやエッチングガス等)は、基板に向けて真っ直ぐ進んだり、基板に向かわずに各ガス供給口の周囲に拡散したりする。そのため、複数積層した基板への反応ガスの供給状態が不安定となり、例えば、各基板のうちの上方側と下方側とで反応ガスの流速や濃度が不均一になり易いという問題を生じ得る。つまり、各基板のうちの上方側と下方側とでは、SiC膜の成長速度や膜厚が異なってしまい、ひいては製品誤差を生じることになる。特に、特許文献1に記載された基板処理装置のように、各ガス供給口からの反応ガスの供給方向(水平方向)と、反応室内の反応ガスを外部に排出するための排気口による排気方向(垂直方向)とが異なる場合においては、各基板のうちの排気口に近い側にある基板の周囲において、反応ガスの濃度が高くなるという問題を生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、各ガス供給口から供給される反応ガスの流れを略均一化して、各基板をばらつくこと無く成膜することができる基板処理装置およびガスノズルならびに基板若しくは半導体デバイスの処理方法を提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
すなわち、本発明に係る基板処理装置は、複数積層された基板を処理する反応容器と、前記反応容器内を加熱する加熱体と、前記反応容器内に設けられ、前記基板の積層方向に延びるガスノズルと、前記ガスノズルの基端部から先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、前記ガスノズルに設けられ、前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0012】
すなわち、各ガス供給口から供給される反応ガスの流れを略均一化して、各基板をばらつくこと無く成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る基板処理装置の概要を示す斜視図である。
【図2】処理炉の内部構造を示す断面図である。
【図3】ウェーハをウェーハホルダに保持させた状態を示す断面図である。
【図4】処理炉の横方向の断面を示す横断面図である。
【図5】基板処理装置の制御系統を説明するブロック図である。
【図6】処理炉周辺の構造を示す断面図である。
【図7】第1実施の形態に係るガスノズルの処理炉内での配置状態を説明する横断面図である。
【図8】(a),(b),(c)は、図7のガスノズルの詳細構造を説明する説明図である。
【図9】処理炉内における反応ガスの濃度[%]および速度[m/s]を示す比較グラフである。
【図10】第2実施の形態に係るガスノズルの処理炉内での配置状態を説明する横断面図である。
【図11】(a),(b),(c)は、図10のガスノズルの詳細構造を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態においては、基板処理装置の一例であるSiCエピタキシャル成長装置において、高さ方向にSiCウェーハを並べた、所謂バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置を挙げて説明する。なお、バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置とすることで、一度に処理できるSiCウェーハの数が多くなりスループットを向上できる。
【0015】
<全体の構成>
図1は本発明に係る基板処理装置の概要を示す斜視図を表しており、まず、この図1を用いて、本発明の第1実施の形態に係るSiCエピタキシャル膜を成膜する基板処理装置、および半導体デバイスの製造工程の一つであるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板の製造方法について説明する。
【0016】
基板処理装置(成膜装置)としての半導体製造装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、複数の機構を収容した筐体12を備えている。半導体製造装置10には、例えばSiまたはSiC等で構成された基板としてのウェーハ14を収納する基板収容器としてのポッド(フープ)16が、ウェーハキャリアとして使用される。筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置され、当該ポッドステージ18には、複数のポッド16が外部から搬送されるようになっている。各ポッド16には、例えば、25枚のウェーハ14が収納され、蓋16aが閉じられた状態のもとで、ポッドステージ18にセットされる。
【0017】
筐体12内の正面側であって、ポッドステージ18と対向する部分には、ポッド搬送装置20が設けられている。また、ポッド搬送装置20の近傍には、ポッド収納棚22,ポッドオープナ24および基板枚数検知器26が設けられている。ポッド収納棚22は、ポッドオープナ24の上方に設けられ、ポッド16を複数個(図示では5個)搭載した状態で保持するよう構成されている。基板枚数検知器26は、ポッドオープナ24に隣接して設けられ、ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18,ポッド収納棚22およびポッドオープナ24の間で、次々とポッド16を搬送するようになっている。ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋16aを開けるものであり、基板枚数検知器26は、蓋16aが開けられたポッド16内のウェーハ14の枚数を検知するようになっている。
【0018】
筐体12内には、基板移載機28,基板保持具としてのボート30が設けられている。基板移載機28は、複数のアーム(ツイーザ)32を備え、図示しない駆動手段により昇降可能かつ回転可能な構造となっている。各アーム32は、例えば、5枚のウェーハ14を一度に取り出すことができ、各アーム32を動かすことで、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16およびボート30間で、ウェーハ14を搬送するようになっている。
【0019】
ボート30は、例えば、カーボングラファイトやSiC等の耐熱性材料により形成されており、複数枚のウェーハ14を水平姿勢で、かつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、保持するよう構成されている。なお、ボート30の下方側には、例えば、石英やSiC等の耐熱性材料で構成された断熱部材としての略円筒形状に形成されたボート断熱部34が設けられ、後述する加熱体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わり難くなるよう構成されている(図2参照)。
【0020】
筐体12内の背面側でかつ上方側には処理炉40が設けられている。この処理炉40の内部には、複数枚のウェーハ14を積層するよう装填したボート30が搬入され、各ウェーハ14に対する熱処理(成膜処理)が行われる。
【0021】
<処理炉の構成>
図2は処理炉の内部構造を示す断面図を、図3はウェーハをウェーハホルダに保持させた状態を示す断面図を、図4は処理炉の横方向の断面を示す横断面図を、図5は基板処理装置の制御系統を説明するブロック図を、図6は処理炉周辺の構造を示す断面図をそれぞれ表している。次に、これらの図2〜図6を用いて、SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の処理炉40について説明する。
【0022】
処理炉40には、第1ガス供給口(ガス供給口)68を有する第1ガス供給ノズル(ガスノズル,第1ガスノズル)60,第2ガス供給口(ガス供給口)72を有する第2ガス供給ノズル(ガスノズル,第2ガスノズル)70および、各ガス供給ノズル60,70からの反応ガスを外部に排気する第1ガス排気口(ガス排気口)90が設けられている。また、不活性ガスを供給する第3ガス供給口360および、当該不活性ガスを外部に排気する第2ガス排気口390が設けられている。
【0023】
処理炉40は、円筒形状の反応室44を形成する反応管42を備えている。この反応管42は、石英またはSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管42内には反応室44が形成れており、SiまたはSiC等で構成された基板としてのウェーハ14をボート30によって水平姿勢で、かつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、保持した状態で収納可能に構成されている。
【0024】
反応管42の開口側(下方側)には、当該反応管42と同心円状にマニホールド36が配設されている。このマニホールド36は、例えばステンレス等からなり、上方側および下方側が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド36は反応管42を支持し、マニホールド36と反応管42との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。マニホールド36が保持体(図示せず)に支持されることにより、反応管42は垂直に据付けられた状態となっている。ここで、反応管42とマニホールド36により、本発明における反応容器を構成している。
【0025】
処理炉40は、誘導加熱される加熱体48および磁場発生部としての誘導コイル50を備えている。加熱体48は、反応室44内に設けられ、反応管42の外側に設けられた誘導コイル50が発生する磁場により誘導加熱されるようになっている。これにより、誘導コイル50を通電することで加熱体48が発熱し、ひいては反応室44内が加熱されるようになっている。
【0026】
加熱体48の近傍には、反応室44内の温度を検出する温度検出体としての温度センサ(図示せず)が設けられている。誘導コイル50および温度センサは、コントローラ152の温度制御部52(図5参照)と電気的に接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づいて、誘導コイル50への通電具合が調節され、これにより反応室44内の温度が所望の温度分布となるよう所定のタイミングで制御されるよう構成されている。
【0027】
ここで、図3に示すように、ウェーハ14をウェーハホルダ15に保持させるようにすると良い。ウェーハホルダ15を、円環状に形成した下部ウェーハホルダ15aと円板状に形成した上部ウェーハホルダ15bとから形成し、下部ウェーハホルダ15aと上部ウェーハホルダ15bとの間にウェーハ14を挟むようにする。これにより、ウェーハ14の上方側から落下してくるパーティクル(微細ゴミ)からウェーハ14を保護することができ、成膜面(ウェーハ14の下面)とは反対側の面(ウェーハ14の上面)が成膜されるのを抑制できる。さらに、ウェーハ14の成膜面をボート30(ボート柱)から離間させることができるので、ボート柱の影響により反応ガスがウェーハ14の成膜面に流れ難くなるような不具合を確実に防止できる。この場合においても、ボート30は、複数枚のウェーハ14を、水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態のもとで、下部ウェーハホルダ15aおよび上部ウェーハホルダ15bを介して、縦方向に積層保持することになる。
【0028】
さらに、好ましくは、図4に示すように、反応室44内において各ガス供給ノズル60,70と第1ガス排気口90との間であって、加熱体48とウェーハ14との間に、加熱体48とウェーハ14との間の空間を埋めるよう、垂直方向に延在し断面が円弧形状となった構造物400を設けると良い。例えば、図示のように対向する位置にそれぞれ構造物400を設けることで、各ガス供給ノズル60,70から供給される反応ガスが、加熱体48の内壁に沿って流れてウェーハ14を迂回することを防止できる。構造物400としては、好ましくはカーボングラファイト等で構成すると、耐熱およびパーティクルの発生を抑制することができる。
【0029】
図2に示すように、反応管42と加熱体48との間には、例えば、誘導加熱され難いカーボンフェルト等で形成された断熱材54が設けられている。このように断熱材54を設けることで、加熱体48の熱が、反応管42あるいは反応管42の外部に伝達されることを抑制することができる。
【0030】
また、誘導コイル50の外側には、反応室44内の熱が外部に伝達されるのを抑制するために、例えば、水冷構造である外側断熱壁55が設けられている。この外側断熱壁55は、反応室44および誘導コイル50を囲むように設けられている。さらに、外側断熱壁55の外側には、誘導コイル50への通電により発生した磁場が外部に漏洩するのを防止する磁気シール58が設けられている。
【0031】
加熱体48とウェーハ14との間には、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガス(何れも第1反応ガス)とをウェーハ14に供給するために、第1ガス供給口68有する第1ガス供給ノズル60が設けられている。また、加熱体48とウェーハ14との間の第1ガス供給ノズル60とは異なる箇所には、少なくともC(炭素)原子含有ガスと還元ガス(何れも第2反応ガス)とをウェーハ14に供給するために、第2ガス供給口72を有する第2ガス供給ノズル70が設けられている。さらに、加熱体48とウェーハ14との間で各ガス供給ノズル60,70の反対側には、第1ガス排気口90が設けられている。また、反応管42と断熱材54との間には、第3ガス供給口360および第2ガス排気口390が設けられている。
【0032】
上述した各ガス供給ノズル60,70から供給される反応ガスは、半導体製造装置10を説明するために挙げた一例であり、これらの反応ガスの詳細については後述する。また、図4においては、説明を簡潔にするために各ガス供給ノズル60,70をそれぞれ1本ずつ(計2本)設けているが、各ガス供給ノズル60,70の本数や詳細構造等についても後述する。
【0033】
第1ガス供給ノズル60は、例えば、カーボングラファイトで構成され、反応室44内に設けられている。第1ガス供給ノズル60は、基端部60aおよび先端部60bを備え、基端部60aはマニホールド36を貫通し、当該マニホールド36に溶接等により取り付けられている。第1ガス供給ノズル60には、その長手方向に沿うよう複数の第1ガス供給口68が設けられている。ここで、SiCエピタキシャル膜を成膜する際に、第1ガス供給口68は、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとして、例えばモノシラン(以下SiHとする)ガスと、Cl(塩素)原子含有ガスとして、例えば塩化水素(以下HClとする)ガスとを、第1ガス供給ノズル60を介して反応室44内に供給するようになっている。
【0034】
第1ガス供給ノズル60は、第1ガスライン222に接続されている。この第1ガスライン222は、例えば、各ガス配管213a,213bに接続され、各ガス配管213a,213bは、それぞれSiHガス,HClガスに対して流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(以下MFCとする)211a,211bおよびバルブ212a,212bを介して、例えば、SiHガスを供給する第1ガス供給源210a,HClガスを供給する第2ガス供給源210bに接続されている。
【0035】
この構成により、例えばSiHガス,HClガスのそれぞれの供給流量,濃度,分圧,供給タイミングを、反応室44内において制御することができる。各バルブ212a,212bおよび各MFC211a,211bは、コントローラ152のガス流量制御部78(図5参照)に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となるように、所定のタイミングで制御されるようになっている。なお、第1,第2ガス供給源210a,210b、各バルブ212a,212b、各MFC211a,211b、各ガス配管213a,213b、第1ガスライン222、第1ガス供給ノズル60および第1ガス供給口68により、ガス供給系としての第1ガス供給系が構成されている。
【0036】
第2ガス供給ノズル70は、例えば、カーボングラファイトで構成され、反応室44内に設けられている。第2ガス供給ノズル70は、基端部70aおよび先端部70bを備え、基端部70aはマニホールド36を貫通し、当該マニホールド36に溶接等により取り付けられている。第2ガス供給ノズル70には、その長手方向に沿うよう複数の第2ガス供給口72が設けられている。ここで、SiCエピタキシャル膜を成膜する際に、第2ガス供給口72は、少なくともC(炭素)原子含有ガスとして、例えばプロパン(以下Cとする)ガスと、還元ガスとして、例えば水素(H原子単体もしくはH分子。以下Hとする)とを、第2ガス供給ノズル70を介して反応室44内に供給するようになっている。
【0037】
第2ガス供給ノズル70は、第2ガスライン260に接続されている。この第2ガスライン260は、例えば、各ガス配管213c,213dに接続され、各ガス配管213c,213dは、それぞれC(炭素)原子含有ガスとしての例えばCガスに対して流量制御器としてのMFC211cおよびバルブ212cを介して、Cガスを供給する第3ガス供給源210cに接続され、還元ガスとしての例えばHガスに対して流量制御器としてのMFC211dおよびバルブ212dを介して、Hガスを供給する第4ガス供給源210dに接続されている。
【0038】
この構成により、例えばCガス,Hガスのそれぞれの供給流量,濃度,分圧,供給タイミングを、反応室44内において制御することができる。各バルブ212c,212dおよび各MFC211c,211dは、コントローラ152のガス流量制御部78(図5参照)に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となるように、所定のタイミングで制御されるようになっている。なお、第3,第4ガス供給源210c,210d、各バルブ212c,212d、各MFC211c,211d、各ガス配管213c,213d、第2ガスライン260、第2ガス供給ノズル70および第2ガス供給口72により、ガス供給系としての第2ガス供給系が構成されている。
【0039】
ここで、第1ガス供給ノズル60および第2ガス供給ノズル70において、第1ガス供給口68および第2ガス供給口72は、ウェーハ14の積層領域(プロダクト領域)内に任意の数を設けても良いし、ウェーハ14の積層領域内に当該ウェーハ14の積層枚数に合わせた数を設けても良い。
【0040】
<排気系の構成>
第1ガス排気口90は、各ガス供給ノズル60,70の位置に対して対向するよう配置されている。マニホールド36には、第1ガス排気口90に接続されたガス排気管230が貫通して溶接等により取り付けられている。ガス排気管230の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ(図示せず)および、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ214を介して、真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサおよびAPCバルブ214には、コントローラ152の圧力制御部98(図5参照)が電気的に接続されており、当該圧力制御部98は、圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ214の開度を調整し、処理炉40内の圧力が所定の圧力となるよう所定のタイミングで制御するよう構成されている。
【0041】
上述のように、第1ガス供給口68から少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとを供給し、第2ガス供給口72から少なくともC(炭素)原子含有ガスと還元ガスとを供給し、供給された反応ガスはSiまたはSiCで構成されたウェーハ14に対し平行に流れ、第1ガス排気口90より排気される。したがって、ウェーハ14の成膜面全体が、効率的かつ均一に反応ガスに曝される。
【0042】
また、第3ガス供給口360は、反応管42と断熱材54との間に配置され、その基端側(図中下方側)がマニホールド36を貫通し、当該マニホールド36に溶接等により取り付けられている。さらに、第2ガス排気口390は、反応管42と断熱材54との間で、かつ第3ガス供給口360に対して対向するよう配置され、第2ガス排気口390はガス排気管230に接続されている。
【0043】
第3ガス供給口360は第3ガスライン240に接続され、第3ガスライン240は、バルブ212e,MFC211eを介して第5ガス供給源210eに接続されている。この第5ガス供給源210eからは不活性ガスとして、例えば、希ガスのAr(アルゴン)ガスが供給され、SiCエピタキシャル膜の成長に寄与するガス、例えば、Si(シリコン)原子含有ガスまたはC(炭素)原子含有ガスまたはCl(塩素)原子含有ガスまたはそれらの混合ガスが、反応管42と断熱材54との間に進入するのを防ぎ、これにより反応管42の内壁または断熱材54の外壁に不要な生成物が付着するのを防止している。
【0044】
ここで、バルブ212eおよび各MFC211eにおいても、コントローラ152のガス流量制御部78(図5参照)に電気的に接続され、Arガスの流量が所定流量となるように、所定のタイミングで制御されるようになっている。また、反応管42と断熱材54との間に供給された不活性ガスは、第2ガス排気口390およびガス排気管230の下流側にあるAPCバルブ214を介して、真空排気装置220から排気される。
【0045】
<処理炉周辺の構成>
図6に示すように、処理炉40の下方側には、当該処理炉40の開口部分を気密に閉塞するための炉口蓋体としてシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属製であり、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には、処理炉40の下方側部分と当接するシール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。また、シールキャップ102には回転機構104が設けられ、当該回転機構104の回転軸106は、シールキャップ102を貫通してボート断熱部34に接続され、当該ボート断熱部34およびボート30を回転させることで、複数積層された各ウェーハ14を回転させるよう構成されている。
【0046】
シールキャップ102は、処理炉40の外側に設けられた昇降機構としての昇降モータ122によって、垂直方向に昇降されるよう構成されている。これにより、ボート30を処理炉40に対して搬入搬出することが可能となっている。回転機構104および昇降モータ122には、コントローラ152の駆動制御部108(図5参照)が電気的に接続されており、所定の動作をするよう所定のタイミングで制御するよう構成されている。
【0047】
予備室としてのロードロック室110の外側には、下基板112が設けられている。この下基板112には、昇降台114と摺動自在に嵌合するガイドシャフト116および昇降台114とネジ結合するボール螺子118が設けられている。また、下基板112に立設したガイドシャフト116およびボール螺子118の上端部分には、上基板120が設けられている。ボール螺子118は、上基板120に設けられた昇降モータ122によって回転駆動され、ボール螺子118が回転駆動されることで昇降台114が昇降するようになっている。
【0048】
昇降台114には、中空の昇降シャフト124が垂下するよう設けられている。昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっており、昇降シャフト124は、昇降台114とともに昇降するようになっている。昇降シャフト124は、ロードロック室110の天板126に形成した貫通孔126aに対して、所定の隙間を介して貫通するようになっており、昇降シャフト124および天板126は、互いに接触することが無い。これにより、昇降シャフト124のスムーズな昇降を確保している。
【0049】
ロードロック室110と昇降台114との間には、昇降シャフト124の周囲を覆うよう伸縮性を備えた中空伸縮体としてのベローズ128が設けられ、当該ベローズ128は、ロードロック室110の気密を保持するようになっている。なお、ベローズ128は、昇降台114の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、かつベローズ128の内径は昇降シャフト124の外径に比べて充分に大きく設定されている。これにより、ベローズ128が伸縮する際に、当該ベローズ128と昇降シャフト124とは接触せず、昇降シャフト124はスムーズに昇降可能となっている。
【0050】
昇降シャフト124の下端部分には、昇降基板130が水平に固着され、当該昇降基板130の下面にはOリング等のシール部材(図示せず)を介して、駆動部カバー132が気密に取り付けられている。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134を形成しており、この構成により、駆動部収納ケース134の内部はロードロック室110の内部の雰囲気と隔離されている。
【0051】
駆動部収納ケース134の内部には、ボート30の回転機構104が設けられ、当該回転機構104の周辺は、冷却機構135によって冷却されるようになっている。
【0052】
電力ケーブル138は、昇降シャフト124の上端から中空部を通り、回転機構104に導かれて接続されている。また、冷却機構135およびシールキャップ102には冷却水流路140が形成されている。さらに、冷却水配管142が昇降シャフト124の上端から中空部を通り、冷却水流路140に導かれて接続されている。
【0053】
昇降モータ122が駆動されて、ボール螺子118が回転することで、昇降台114および昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134が昇降するようになっている。そして、駆動部収納ケース134を上昇させることにより、昇降基板130に気密に設けられたシールキャップ102が、処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、各ウェーハ14の熱処理が可能な状態となる。また、駆動部収納ケース134を下降させることにより、シールキャップ102とともにボート30が降下し、各ウェーハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0054】
<制御部>
次に、SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10を構成する各部(種々のバルブや駆動部等)を制御するコントローラ152について説明する。
【0055】
図5に示すように、コントローラ152は、温度制御部52,ガス流量制御部78,圧力制御部98,駆動制御部108を備えている。これらの温度制御部52,ガス流量制御部78,圧力制御部98,駆動制御部108は、操作部および入出力部を構成し、半導体製造装置10の全体を制御する主制御部150にそれぞれ電気的に接続されている。
【0056】
<反応ガスの詳細>
次に、第1ガス供給系および第2ガス供給系を設けた理由について詳細に説明する。
【0057】
SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置においては、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとC(炭素)原子含有ガスとで構成される反応ガス(原料ガス)を反応室に供給することで、SiCエピタキシャル膜を成膜する必要がある。また、本実施の形態のように、複数積層した各ウェーハ14を水平姿勢で多段に整列させてボート30に保持させるようにした場合においては、各ウェーハ14への反応ガスの供給を均一化させるために、各ウェーハ14の近傍から反応ガスをそれぞれ供給すべく、反応室44内でかつボート30の長手方向に沿うよう各ガス供給ノズル60,70を設けている。したがって、各ガス供給ノズル60,70内も反応室44と同じ条件となる。
【0058】
ここで、仮に、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを同じガス供給ノズルで供給すると、反応ガス同士が反応して当該反応ガスが消費され、反応室44の下流側で反応ガスが不足するだけでなく、ガス供給ノズル内で反応し堆積したSiC膜等の堆積物がガス供給ノズルのガス供給口を閉塞し、反応ガスの供給が不安定になるとともに、パーティクルを発生させる等の問題を生じてしまう。
【0059】
そこで、本実施の形態においては、第1ガス供給ノズル60からSi原子含有ガスを供給し、第2ガス供給ノズル70からC原子含有ガスを供給している。このように、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを異なるガス供給ノズルから供給することにより、ガス供給ノズル内では、SiC膜を堆積させないようにすることができる。なお、Si原子含有ガスおよびC原子含有ガスの濃度や流速を調整したい場合は、それぞれ適切なキャリアガスを供給すればよい。
【0060】
さらに、Si原子含有ガスをより効率的に使用するために、水素ガスのような還元ガスを用いる場合がある。この場合の還元ガスは、C原子含有ガスを供給する第2ガス供給ノズル70から供給することが望ましい。このように還元ガスをC原子含有ガスとともに供給し、反応室44内でSi原子含有ガスと混合させることにより、還元ガスが少ない状態となるためSi原子含有ガスの分解を成膜時と比較して抑制することができ、第1ガス供給ノズル60内におけるSi膜の堆積を抑制することが可能となる。この場合、還元ガスをC原子含有ガスのキャリアガスとして用いることが可能となる。なお、Si原子含有ガスのキャリアとしては、Arガスのような不活性ガス(特に希ガス)を用いることにより、Si膜の堆積を抑制することが可能となる。
【0061】
また、第1ガス供給ノズル60には、HClのような塩素原子含有ガスを供給することが望ましい。このようにすると、Si原子含有ガスが熱により分解されて、第1ガス供給ノズル60内に堆積可能な状態となったとしても、塩素によりエッチングモードとすることが可能となり、第1ガス供給ノズル60内へのSi膜の堆積をより抑制することが可能になる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、図2に示すように、第1ガス供給ノズル60にSiHガスおよびHClガスを供給し、第2ガス供給ノズル70にCガスおよびHガスを供給する構成で説明したが、これらの反応ガスの組み合わせは、上述の通り最も良いと考えられる組み合わせであって、これらに限定されることは無い。
【0063】
また、本実施の形態においては、図2に示すように、SiCエピタキシャル膜を成膜する際に供給するCl(塩素)原子含有ガスとして、HClガスを用いた場合を示したが、これに限らず塩素ガスを用いても良い。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、SiCエピタキシャル膜を成膜する際に、Si(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとを個別に供給したが、これに限らずSi原子とCl原子を含むガス、例えばテトラクロロシラン(以下SiClとする)ガス、トリクロロシラン(以下SiHCl)ガス、ジクロロシラン(以下SiHCl)ガスを供給しても良い。また、言うまでもないが、これらのSi原子およびCl原子を含むガスは、Si原子含有ガスでも有り、または、Si原子含有ガスおよびCl原子含有ガスの混合ガスとも言える。特に、SiClは、熱分解される温度が比較的高いため、ノズル内のSi消費抑制の観点から望ましい。
【0065】
さらに、本実施の形態においては、C(炭素)原子含有ガスとしてCガスを用いた場合を示したが、これに限らずエチレン(以下Cとする)ガス、アセチレン(以下Cとする)ガスを用いても良い。
【0066】
また、本実施の形態においては、還元ガスとしてHガスを用いた場合を示したが、これに限らず他のH(水素)原子含有ガスを用いても良い。さらには、キャリアガスとしては、Ar(アルゴン)ガス,He(ヘリウム)ガス,Ne(ネオン)ガス,Kr(クリプトン)ガス,Xe(キセノン)ガス等の希ガスのうち少なくとも1つを用いても良いし、これらの希ガスを任意に組み合わせた混合ガスを用いても良い。
【0067】
本実施の形態においては、第1ガス供給ノズル60からSi原子含有ガスを供給し、第2ガス供給ノズル70からC原子含有ガスを供給することで、ガス供給ノズル内のSiC膜の堆積を抑制している(以下、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを分離して供給する方式を「セパレート方式」と呼ぶ)。しかしながら、このセパレート方式においては、ガス供給ノズル内でのSiC膜の堆積を抑制できるものの、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを、各ガス供給口68,72から各ウェーハ14に到達するまでの間で充分に混合させる必要がある。
【0068】
したがって、各ウェーハ14への反応ガスの均一化の観点から見れば、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを予め混合しておき、第1ガス供給ノズル60から供給するのが望ましい(以下、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを同一のガス供給ノズルから供給する方式を「プレミックス方式」と呼ぶ)。しかしながら、このプレミックス方式によれば、ガス供給ノズル内にSiC膜が堆積してしまう恐れがある。一方で、Si原子含有ガスは、エッチングガスである塩素と還元ガスである水素との比(Cl/H)を大きくすると塩素によるエッチング効果の方が大きくなり、Si原子含有ガスの反応を抑えることが可能である。よって、一方のガス供給ノズルにSi原子含有ガス,C原子含有ガスおよび塩素含有ガスを供給し、還元反応に用いられる還元ガス(例えば、水素ガス)を他方のガス供給ノズルから供給することで、ガス供給ノズル内のCl/Hが大きくなり、SiC膜の堆積を抑制することが可能である。
【0069】
<ガス供給ノズルの構成>
本実施の形態においては、反応ガスの供給方式としてセパレート方式を採用し、各ガス供給ノズル60,70からウェーハ14に向けて、当該ウェーハ14の側方から反応ガスを供給するようにしている。そして、ウェーハ14に供給された反応ガスは、ウェーハ14の成膜面(図3中下側面)を通過して、その後、反応室44内の下方側に設けられた第1ガス排気口90から外部に排気される。しかしながら、反応ガスの供給方向と反応ガスの排気方向とが異なるため、各ガス供給口68,72から噴出(供給)された反応ガスの一部は、ウェーハ14に到達する前に排気される方向(ここでは下方側)へ向かってしまう。つまり、反応室44内の上方側と下方側とでは、反応ガスの流速や濃度が不均一になる傾向がある。そこで、本実施の形態においては、各ガス供給ノズル60,70における、特に各ガス供給口68,72の周囲の構造を工夫しており、以下、その詳細について図面を用いて説明する。
【0070】
図7は第1実施の形態に係るガスノズルの処理炉内での配置状態を説明する横断面図を、図8(a),(b),(c)は図7のガスノズルの詳細構造を説明する説明図を、図9は処理炉内における反応ガスの濃度[%]および速度[m/s]を示す比較グラフをそれぞれ表している。
【0071】
まず、各ガス供給ノズル60,70の反応室44内への配置状態について、図7を用いて説明する。図7は、反応室44を上方側から見た横断面図であり、理解を容易にするため主要部材のみを記載している。図7に示すように、加熱体48とウェーハ14との間には、Si原子含有ガスを供給する第1ガス供給ノズル60とC原子含有ガスを供給する第2ガス供給ノズル70とが交互に配置されている。このように各ガス供給ノズル60,70を交互に配置することで、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとの混合を促進することができる。また、各ガス供給ノズル60,70の各ガス供給口68,72は、それぞれウェーハ14の中心部分に向けられており、各ガス供給口68,72から供給された反応ガスは、図中矢印に示すようにウェーハ14の中心部分に向かって流れ、その途中で効率的に混合される。
【0072】
さらに、各ガス供給ノズル60,70は、合計奇数本設けるのが望ましい。これにより、図示のように、中心にある第2ガス供給ノズル70を中心として、図中左右方向に均一に反応ガスを供給することができ、ウェーハ14への反応ガスの供給の均一性を高めることができる。なお、各ガス供給ノズル60,70は合計5本でなくとも、反応室44の大きさ(容積)等に応じて、合計3本または合計7本以上設けても良い。また、C原子含有ガスを供給する第2ガス供給ノズル70を中央および両端側に配置し、Si原子含有ガスを供給する第1ガス供給ノズル60を第2ガス供給ノズル70の間に配置したが、これに限らずSi原子含有ガスを供給する第1ガス供給ノズル60を中央および両端側に配置し、C原子含有ガスを供給する第2ガス供給ノズル70を第1ガス供給ノズル60の間に配置しても良い。
【0073】
ただし、C原子含有ガスを供給する第2ガス供給ノズル70を中央および両端側に配置し、Si原子含有ガスを供給する第1ガス供給ノズル60を第2ガス供給ノズル70の間に配置するのが望ましい。このように各ガス供給ノズル60,70を配置することで、C原子含有ガスとともにキャリアガスとして大量に供給する(場の主流となる)Hガスの流量比(中央/両端側)を調整することで、ウェーハ14を通過する反応ガスの流れをコントロールすることができ、ウェーハ14の膜厚制御を容易に行えるようになる。
【0074】
ここで、反応ガスの供給方式としてプレミックス方式を採用する場合には、第1ガス供給ノズル60からSi原子含有ガス,C原子含有ガスおよび塩素含有ガスを供給し、第2ガス供給ノズル70から還元ガスである水素ガスを供給するのが望ましい。これにより、キャリアガスとして大量に供給する(場の主流となる)Hガスの流量比(中央/両端側)を調整することで、ウェーハ14を通過する反応ガスの流れをコントロールすることができ、ウェーハ14の膜厚制御を容易に行えるようになる。
【0075】
各ガス供給ノズル60,70は、図2に示すように、ウェーハ14の積層方向に延在するよう反応管42内に設けられ、その各基端部60a,70aから各先端部60b,70bに向けて、複数の各ガス供給口68,72が並んで設けられている。各基端部60a,70aは反応管42の開口側に設けられ、各先端部60b,70bは反応管42の底側に設けられている。図8に示すように、各ガス供給口68,72は、各ガス供給ノズル60,70の長手方向に沿って等間隔(例えば、ウェーハ14の積層間隔)で設けられ、ウェーハ14の中心部分に向けて開口されている。
【0076】
各ガス供給ノズル60,70の長手方向に沿う各ガス供給口68,72の上下側には、各ガス供給口68,72からの反応ガスの供給方向に突出した整流板(整流部材)69,73がそれぞれ設けられている。各整流板69,73はそれぞれ各ガス供給ノズル60,70に一体に設けられ、当該各ガス供給ノズル60,70の周方向(図中左右方向)に沿って略長方形形状に形成されている。各整流板69,73の基端側は各ガス供給ノズル60,70に接続され、各整流板69,73の先端側はウェーハ14に向けられている。ここで、各整流板69,73のうち、各ガス供給口68,72の下側にある各整流板69,73は、第1ガス排気口90側に配置されている。これにより、各ガス供給口68,72からの反応ガスが、第1ガス排気口90に向けて直接流れてしまうことを抑制している。
【0077】
各整流板69,73の幅寸法L1は、各ガス供給ノズル60,70の直径(外径)寸法L2よりも小さく設定している(L1<L2)。これにより、図7に示すように、各ガス供給ノズル60,70を略円弧状に配置し、各ガス供給口68,72をウェーハ14に向けつつ各ガス供給ノズル60,70を互いに近接配置可能としている。また、各ガス供給口68,72とウェーハ14との間の距離を等距離にしている。これにより、各ガス供給ノズル60,70間に回り込む反応ガスの量を減らして、ウェーハ14に到達する反応ガスの量を増やすことができる。
【0078】
各整流板69,73の各ガス供給ノズル60,70からの突出高さh1は、各ガス供給口68,72から噴射(供給)する反応ガスが、噴射直後に上下方向に拡散しないような高さ寸法に設定されている。このように各整流板69,73の突出高さh1を設定することで、反応ガスの噴射直後に上下方向に拡散してウェーハ14に到達しないようなことを抑制しつつ、各ガス供給口68,72とウェーハ14との間で、各ガス供給口68,72から噴射される2種類の反応ガスを効率良く混合できるようにしている。さらに、突出高さh1をそれほど高くせず、図示のように抑えることで、各ガス供給口68,72からそれぞれ噴射される反応ガスの流速の低下を防止している。つまり、突出高さh1を高くし過ぎると、反応ガスの各整流板69,73に対する接触時間が長くなり、ひいては流速低下の原因となる。
【0079】
なお、上述の各ガス供給ノズル60,70においては、各ガス供給口68,72のうちの最上段にある各ガス供給口68,72、つまり第1ガス排気口90から最も離間した各ガス供給口68,72の上方側(第1ガス排気口90から遠い側)にも整流板69,73を設けているが、当該整流板69,73は、反応室44内における反応ガスの流速や濃度にそれほど悪影響を与えないので省略しても良い。この場合、各ガス供給ノズル60,70の形状を簡素化でして各ガス供給ノズル60,70を製造し易くすることができる。ただし、整流板69,73により整流効果をより高めるためにも、最上段にある各ガス供給口68,72の上方側にも整流板69,73を設けるのが望ましい。
【0080】
また、上述の各ガス供給ノズル60,70においては、各整流板69,73と各ガス供給ノズル60,70とを一体化したものを示したが、これに限らず、従前のようなパイプ状のガス供給ノズルに、別部材の整流板を溶着等によって取り付けても良い。また、各整流板69,73の先端側の形状は、図示のような直線状でなくても、例えば、先端側に向けてその幅寸法が徐々に細くなる先細り形状等であっても良い。
【0081】
さらに、板状の各整流板69,73に換えて筒状の整流部材(図示せず)を採用し、当該筒状の整流部材を、各ガス供給口68,72の周囲に設けても良い。この場合、整流部材は各ガス供給口68,72の周囲を囲うため、反応ガスの回り込みをより抑制することができる。なお、反応ガスの混合効率を確保したり、反応ガスの速度が落ちたりするのを防止すべく、その突出高さはあまり高くし過ぎないようにする。
【0082】
また、図7に示すように、全ての各ガス供給ノズル60,70を、各整流板69,73を備えた同じ形状のものとしたが、これに限らず全ての各ガス供給ノズル60,70に各整流板69,73を設ける必要は無く、一部のガス供給ノズルに整流板(整流部材)を設けるようにしても良い。
【0083】
図9は、上述した各ガス供給ノズル60,70(本発明)による反応ガスの流速および濃度と、従前の整流部材を備えないガス供給ノズル(比較例)による反応ガスの流速および濃度とを比較した比較グラフを示している。図9に示すように、ウェーハ14が積層されたプロダクト領域の下方側(反応室44の下方側でグラフ左側)から上方側(反応室44の上方側でグラフ右側)に亘り、本発明においては反応ガスの濃度(%)が比較例よりも高くなっている。つまり、各整流板69,73が反応ガスの拡散を抑制することが判る。また、本発明においては、反応ガスの濃度のばらつき幅も比較例(±2.700%)よりも狭い±1.880%幅に抑えられることが判る。
【0084】
一方、ウェーハ14が積層されたプロダクト領域の下方側から上方側に亘り、本発明においては反応ガスの流速(m/s)が比較例よりも速くなっている。つまり、各整流板69,73が反応ガスの拡散を抑制し、これに起因する反応ガスの流速低下が起きていないことが判る。また、本発明においては、反応ガスの流速のばらつき幅も比較例(±1.030%)よりも狭い±0.574%幅に抑えられることが判る。
【0085】
<SiCエピタキシャル膜の成膜方法>
次に、以上のように形成した半導体製造装置10を用い、半導体デバイスの製造工程の一工程として、SiC等で構成されるウェーハ14等の基板上に、例えばSiCエピタキシャル膜を成膜する基板の処理方法について説明する。尚、以下の説明において半導体製造装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0086】
まず、図1に示すように、ポッドステージ18に複数枚のウェーハ14を収納したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド収納棚22へ搬送し、ストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド収納棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、ポッドオープナ24によりポッド16の蓋16aを開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収納されているウェーハ14の枚数を検知する。次いで、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウェーハ14を取り出し、取り出したウェーハ14をボート30に移載する。
【0087】
複数枚のウェーハ14がボート30に装填され積層されると、ウェーハ14を保持したボート30は、図6に示すように、昇降モータ122による昇降台114および昇降シャフト124の昇降動作により反応室44内に搬入、つまりボートローディングされる。この状態では、シールキャップ102はOリングを介してマニホールド36の下端をシールした状態となる。ここまでの一連の工程、つまりボート30に複数積層された各ウェーハ14を反応管42内に搬入し、シールキャップ102により密閉するまでの工程(ボートローディング工程)が、本発明における基板搬送工程を構成している。
【0088】
ボート30を反応室44に搬入した後、図2に示すように、反応室44内が所定の圧力(真空度)となるように真空排気装置220によって真空排気される。このとき、反応室44内の圧力は圧力センサによって測定され、測定された圧力に基づいて第1ガス排気口90および第2ガス排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。また、ウェーハ14および反応室44内が所定の温度となるよう、加熱体48が加熱される。このとき、反応室44内が所定の温度分布となるよう、温度センサが検出した温度情報に基づいて、誘導コイル50への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構104によりボート30が回転されて、これによりウェーハ14も回転される。
【0089】
その後、SiCエピタキシャル膜の成長に寄与するSi(シリコン)原子含有ガスおよびCl(塩素)原子含有ガスを、それぞれ第1,第2ガス供給源210a,210bから供給し、第1ガス供給口68から反応室44内に噴射する。また、C(炭素)原子含有ガスおよび還元ガスであるHガスを、所定の流量となるように対応するMFC211c,211dの開度を調整した後、バルブ212c,212dが開かれ、それぞれの反応ガスが第2ガスライン260に流通し、第2ガス供給ノズル70および第2ガス供給口72を介して反応室44内に噴射される。
【0090】
第1ガス供給口68および第2ガス供給口72から噴射した反応ガスは、反応室44内の加熱体48の内側を流れ、第1ガス排気口90からガス排気管230を通って排気される。第1ガス供給口68および第2ガス供給口72から噴射された反応ガスは、反応室44内を通過する際に、SiC等で構成されるウェーハ14と接触し、ウェーハ14の成膜面上にSiCエピタキシャル膜が成膜されていく。その際、各ガス供給ノズル60,70に設けた各整流板69,73(図8参照)により、隣り合う他のガス供給口に向かって流れる拡散が抑制され、その結果、各ウェーハ14を均質化できる。つまり、各ウェーハ14の膜厚を一定にして、製品誤差(ばらつき)の発生を抑制することができる。
【0091】
また、第5ガス供給源210eから不活性ガスとしてのArガス(希ガス)が所定の流量となるよう対応するMFC211eの開度を調整した後、バルブ212eが開かれ、第3ガスライン240に流通し、第3ガス供給口360から反応室44内に供給される。第3ガス供給口360から供給された不活性ガスとしてArガスは、反応室44内の断熱材54と反応管42との間を通過し、第2ガス排気口390から排気される。その後、上述のように反応ガスを各ウェーハ14に曝して、予め設定された時間が経過すると、各反応ガスの供給制御が停止される。ここまでの一連の工程、つまり反応ガスの供給により各ウェーハ14の成膜面上にSiCエピタキシャル膜を成膜する工程が、本発明における基板処理工程を構成している。
【0092】
次いで、図示しない不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、反応室44内の加熱体48の内側の空間が不活性ガスで置換され、さらに反応室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0093】
反応室44内が常圧に復帰した後、昇降モータ122の回転駆動によりシールキャップ102が下降し、処理炉40の炉口144が開口される。これに伴い、熱処理済み(成膜処理済み)の各ウェーハ14が、ボート30に保持された状態でマニホールド36の下方側から反応管42の外部に搬出、つまりボートアンローディングされる。ボート30に保持された各ウェーハ14は、冷えるまでロードロック室110の内部で待機状態となる。
【0094】
その後、各ウェーハ14が所定の温度にまで冷却されると、基板移載機28の動作により、各ウェーハ14がボート30から取り出され、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送されて収納される。その後、ポッド搬送装置20の動作により、各ウェーハ14を収納したポッド16が、ポッド収納棚22またはポッドステージ18に搬送される。このようにして、半導体製造装置10の一連の動作が完了する。
【0095】
<第1実施の形態の代表的効果>
以上、第1実施の形態で説明した技術的思想によれば、少なくとも、以下に記載する複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0096】
(1)第1実施の形態によれば、各ガス供給ノズル60,70に、各ガス供給口68,72からの反応ガスの供給方向に延在し、かつ各ガス供給口68,72の第1ガス排気口90側に各整流板69,73を設けたので、各ガス供給口68,72から噴射(供給)された反応ガスが、第1ガス排気口90に向けて直接流れてしまうことを抑制でき、ひいては反応ガスの流れを各ウェーハ14に向けて略均一化して、各ウェーハ14をばらつくこと無く成膜することが可能となる。
【0097】
(2)第1実施の形態によれば、第1ガス排気口90から最も離間した各ガス供給口68,72の上方側、つまり第1ガス排気口90から遠い側にも各整流板69,73を設けたので、各ガス供給口68,72から噴射(供給)された反応ガスの上下方向へ拡散を抑制して、各整流板69,73による整流効果をより高めることができ、ひいては各ウェーハ14のばらつきをより無くすことができる。
【0098】
(3)第1実施の形態によれば、反応ガスの上下方向への拡散を抑制して、反応ガスの流れを各ウェーハ14に向けて略均一化できるので、少なくともSi原子含有ガスとCl原子含有ガスとを供給する第1ガス供給ノズル60と、少なくともC原子含有ガスと還元ガスとを供給する第2ガス供給ノズル70とを用い、これらの2種類の反応ガスを反応室44(反応管42)内で混合させ、ウェーハ14を成膜する場合に有効である。
【0099】
(4)第1実施の形態で説明した半導体製造装置10を、半導体装置の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、半導体装置の製造方法において、上述した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0100】
(5)第1実施の形態で説明した半導体製造装置10を、SiCエピタキシャル膜を形成する基板の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、SiCエピタキシャル膜を形成する基板の製造方法において、上述した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0101】
[第2実施の形態]
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0102】
図10は第2実施の形態に係るガスノズルの処理炉内での配置状態を説明する横断面図を、図11(a),(b),(c)は図10のガスノズルの詳細構造を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0103】
第2実施の形態においては、上述した第1実施の形態に比して、第1ガス供給ノズルおよび第2ガス供給ノズルの形状のみが異なっている。第1実施の形態においては、整流部材として板状の整流板69,73(図8参照)を採用したが、第2実施の形態においては、上下側の整流板302,352に加えて、左右側の遮蔽壁303,353を備えた整流部材を採用している(図11参照)。
【0104】
図10に示すように、第1ガス供給ノズル(ガスノズル,第1ガスノズル)300および第2ガス供給ノズル(ガスノズル,第2ガスノズル)350は、第1実施の形態と同様に反応室44内に配置されている。つまり、反応室44内には、第1ガス供給ノズル300が2本,第2ガス供給ノズル350が3本設けられている。各ガス供給ノズル300,350の第1ガス供給口(ガス供給口)301および第2ガス供給口(ガス供給口)351の周囲には、当該各ガス供給口301,351を囲うようにして、それぞれ上下側に位置する整流板302,352と左右側に位置する遮蔽壁303,353とが設けられている。これらの各整流板302,352および各遮蔽壁303,353は、何れも本発明における整流部材を構成しており、各ガス供給ノズル300,350に一体に設けられている。
【0105】
各遮蔽壁303,353は、整流部材の側面部を形成しており、一の各ガス供給口301,351から噴射された反応ガスが、隣り合う他の各ガス供給口301,351に回り込まないようにするもので、各ガス供給口301,351を挟み、かつウェーハ14に向けて延在するよう設けられている。図11に示すように、各遮蔽壁303,353における各ガス供給口301,351側で向き合う内壁の間隔寸法L3は、各ガス供給口301,351の直径寸法よりも大きい寸法に設定されている。これにより各遮蔽壁303,353の内壁間は、各ガス供給口301,351に比して閉塞が起こり難くなっている。また、各遮蔽壁303,353の各ガス供給口301,351から先端側までの長さ寸法L4は、各遮蔽壁303,353の内壁間の間隔寸法L3よりも大きい寸法に設定している(L4>L3)。これにより、一の各ガス供給口301,351から他の各ガス供給口301,351への反応ガスの回り込みを確実に抑制できる。
【0106】
各ガス供給ノズル300,350の各遮蔽壁303,353側(図11(b)中下方側)の幅寸法L5は、各ガス供給ノズル300,350の各遮蔽壁303,353側とは反対側(図11(b)中上方側)の幅寸法L6よりも小さい寸法に設定している(L5<L6)。これにより、図10に示すように、各ガス供給ノズル300,350を略円弧状に配置し、各ガス供給口301,351をウェーハ14に向けつつ各ガス供給ノズル300,350を互いに近接配置可能としている。また、各ガス供給口301,351とウェーハ14との間の距離を等距離にしている。これにより、各ガス供給ノズル300,350間に回り込む反応ガスの量を減らして、ウェーハ14に到達する反応ガスの量を増やすことができる。
【0107】
図11(b)に示すように、各遮蔽壁303,353の先端側は、斜め下方に延びる外壁と縦方向に真っ直ぐ延びる内壁とを結んでできる三角形領域(図中網掛け部)を切り落とした形状となっている。言い換えれば、各遮蔽壁303,353の内壁の長さ寸法L4は、各遮蔽壁303,353の外壁の延長線と交差するまでの各遮蔽壁303,353の内壁の延長線の長さ寸法L7よりも短くなっている。これにより、各遮蔽壁303,353の内壁に各ガス供給口301,351から供給された反応ガスが接触し、反応ガスの流速が低下してしまうのを抑制している。
【0108】
さらに、各遮蔽壁303,353の先端側の角部分はR面取りされており、当該部分は曲線形状(R形状)となっている。このように、各遮蔽壁303,353の先端側の角部分を曲線形状とすることで、当該部分にSiC膜が堆積したとしても、SiC膜は平面状に堆積するので、パーティクルの発生を抑制することができる。ここで、各遮蔽壁303,353の先端側の角部分をR面取りしない場合には、角部分を基点として略くちばし形状のSiC膜の堆積が発生する恐れがあり、これによりパーティクルが発生し易くなることが懸念される。
【0109】
各整流板302,352は、整流部材の各遮蔽壁303,353を除く他の部分を形成しており、各遮蔽壁303,353の先端側を、図11(b)中下方側へさらに突出させた形状に形成されている。つまり、図11(c)に示すように、各遮蔽壁303,353の内壁の長さ寸法(整流部材の側面部の長さ寸法)L4は、各整流板302,352の各ガス供給口301,351から先端側までの高さ寸法(整流部材の他の部分の長さ寸法)h2よりも短い長さ寸法に設定されている。これにより、各遮蔽壁303,353による流速低下を抑えつつ、各ガス供給口301,351からその上下方向への反応ガスの拡散をより抑制できるようにしている。なお、各整流板302,352の先端側の角部分についても、各遮蔽壁303,353と同様にR面取りされている。
【0110】
ここで、上述の各ガス供給ノズル300,350においては、各整流板302,352と各遮蔽壁303,353とを、それぞれ各ガス供給ノズル300,350に一体化したものを示したが、これに限らず、従前のようなパイプ状のガス供給ノズルに、別部材の整流板および遮蔽壁を溶着等によって取り付けても良い。
【0111】
また、各遮蔽壁303,353の外壁を斜め下方に延ばさずに、縦方向に真っ直ぐに延びるよう形成して良い。この場合、各ガス供給ノズル300,350の形状を簡素化することができ、ひいては安価かつ容易に製造できるようになる。
【0112】
さらに、図10に示すように、全ての各ガス供給ノズル300,350を、各整流板302,352および各遮蔽壁303,353を備えた同じ形状のものとしたが、これに限らず全ての各ガス供給ノズル300,350に各整流板302,352および各遮蔽壁303,353を設ける必要は無く、一部のガス供給ノズルに整流板および遮蔽壁(整流部材)を設けるようにしても良い。
【0113】
また、反応ガスの供給方式としてプレミックス方式を採用する場合、第2ガス供給口351の周囲には、遮蔽壁353を設けないほうが望ましい。第2ガス供給口351からは還元ガスが噴射され、成膜の原料となる反応ガスが供給されない。したがって、第1ガス供給口301から噴射された反応ガスが第2ガス供給口351に向かったとしても、その濃度は小さくなると考えられる。その一方で、還元ガスの流速はSi原子含有ガスやC原子含有ガスよりも速くなる。よって、あえて遮蔽壁353を設けないようにすることで、反応ガスの流速を稼ぐことが可能となる。
【0114】
<第2実施の形態の代表的効果>
以上、第2実施の形態で説明した技術的思想においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態においては、少なくとも、以下に記載する複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0115】
(1)第2実施の形態によれば、各整流板302,352および各遮蔽壁303,353よりなる整流部材を、各ガス供給口301,351の周囲を囲うように設けたので、反応ガスの上下方向への拡散抑制に加えて、反応ガスの左右方向への拡散抑制もできる。よって、各ガス供給ノズル300,350間に回り込む反応ガスの量をより減らして、ウェーハ14に到達する反応ガスの量をより増やすことが可能となる。
【0116】
(2)第2実施の形態によれば、整流部材の側面部として各遮蔽壁303,353を設け、当該各遮蔽壁303,353の長さ寸法L4を、整流部材の他の部分である各整流板302,352の高さ寸法(長さ寸法)h2よりも短くしたので、各遮蔽壁303,353の内壁に反応ガスが接触することによる反応ガスの流速低下を抑制しつつ、反応ガスの上下方向への拡散をより抑制することができる。
【0117】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、SiCエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(基板処理装置)を例示して説明したが、ガス供給口から噴射(供給)される反応ガスの供給方向(水平方向)と、噴射された反応ガスの排気方向(垂直方向)とが異なる他の基板処理装置にも本発明における技術的思想を適用することができる。
【0118】
本発明は少なくとも以下の実施の形態を含む。
【0119】
〔付記1〕
複数積層された基板を処理する反応容器と、
前記反応容器内を加熱する加熱体と、
前記反応容器内に設けられ、前記基板の積層方向に延びるガスノズルと、
前記ガスノズルの基端部から先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、
前記ガスノズルに設けられ、前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材と、
を備える基板処理装置。
【0120】
〔付記2〕
前記整流部材を、前記排気口から最も離間した前記ガス供給口の前記排気口から遠い側にも設けることを特徴とする付記1記載の基板処理装置。
【0121】
〔付記3〕
前記整流部材を、前記各ガス供給口の周囲を囲うように設けることを特徴とする付記2記載の基板処理装置。
【0122】
〔付記4〕
前記ガスノズルを、第1反応ガスを供給する第1ガスノズルと、第2反応ガスを供給する第2ガスノズルとから形成し、前記第1反応ガスおよび前記第2反応ガスを前記反応容器内で混合させ、前記基板を成膜することを特徴とする付記1〜3のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【0123】
〔付記5〕
前記整流部材の側面部に、前記整流部材の他の部分の長さ寸法よりも短い長さ寸法の遮蔽壁を設けることを特徴とする付記3または4記載の基板処理装置。
【0124】
〔付記6〕
複数積層された基板を処理する反応容器内に設けられ、
前記反応容器の開口側に設けられる基端部と、
前記反応容器の底側に設けられる先端部と、
前記基端部から前記先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、
前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材と、
を備えるガスノズル。
【0125】
〔付記7〕
前記整流部材を、前記排気口から最も離間した前記ガス供給口の前記排気口から遠い側にも設けることを特徴とする付記6記載のガスノズル。
【0126】
〔付記8〕
前記整流部材を、前記各ガス供給口の周囲を囲うように設けることを特徴とする付記7記載のガスノズル。
【0127】
〔付記9〕
前記整流部材の側面部に、前記整流部材の他の部分の長さ寸法よりも短い長さ寸法の遮蔽壁を設けることを特徴とする付記8記載のガスノズル。
【0128】
〔付記10〕
複数積載された基板を反応容器内に搬送する基板搬送工程と、
前記反応容器内に設けられ、前記反応容器の開口側に設けられる基端部と、前記反応容器の底側に設けられる先端部と、前記基端部から前記先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材と、を備えるガスノズルの前記各ガス供給口から前記基板に向けて前記反応ガスを供給し、前記反応容器内を加熱体により加熱しつつ前記基板を処理する基板処理工程と、
を有する基板若しくは半導体デバイスの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、半導体装置(半導体デバイス)やSiCエピタキシャル膜を形成する基板などを製造する製造業等に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
10…半導体製造装置(基板処理装置)、12…筐体、14…ウェーハ(基板)、15…ウェーハホルダ、15a…下部ウェーハホルダ、15b…上部ウェーハホルダ、16…ポッド、16a…蓋、18…ポッドステージ、20…ポッド搬送装置、22…ポッド収納棚、24…ポッドオープナ、26…基板枚数検知器、28…基板移載機、30…ボート、32…アーム、34…ボート断熱部、36…マニホールド(反応容器)、40…処理炉、42…反応管(反応容器)、44…反応室、48…加熱体、50…誘導コイル、52…温度制御部、54…断熱材、55…外側断熱壁、58…磁気シール、60…第1ガス供給ノズル(ガスノズル,第1ガスノズル)、60a…基端部、60b…先端部、68…第1ガス供給口(ガス供給口)、69…整流板(整流部材)、70…第2ガス供給ノズル(ガスノズル,第2ガスノズル)、70a…基端部、70b…先端部、72…第2ガス供給口(ガス供給口)、73…整流板(整流部材)、78…ガス流量制御部、90…第1ガス排気口(排気口)、98…圧力制御部、102…シールキャップ、104…回転機構、106…回転軸、108…駆動制御部、110…ロードロック室、112…下基板、114…昇降台、116…ガイドシャフト、118…ボール螺子、120…上基板、122…昇降モータ、124…昇降シャフト、126…天板、126a…貫通孔、128…ベローズ、130…昇降基板、132…駆動部カバー、134…駆動部収納ケース、135…冷却機構、138…電力ケーブル、140…冷却水流路、142…冷却水配管、144…炉口、150…主制御部、152…コントローラ、210a…第1ガス供給源、210b…第2ガス供給源、210c…第3ガス供給源、210d…第4ガス供給源、210e…第5ガス供給源、211a〜211e…MFC、212a〜212e…バルブ、213a〜213d…ガス配管、214…APCバルブ、220…真空排気装置、222…第1ガスライン、230…ガス排気管、240…第3ガスライン、260…第2ガスライン、300…第1ガス供給ノズル(ガスノズル,第1ガスノズル)、301…第1ガス供給口(ガス供給口)、302…整流板(整流部材)、303…遮蔽壁(整流部材)、350…第2ガス供給ノズル(ガスノズル,第2ガスノズル)、351…第2ガス供給口(ガス供給口)、352…整流板(整流部材)、353…遮蔽壁(整流部材)、360…第3ガス供給口、390…第2ガス排気口、400…構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数積層された基板を処理する反応容器と、
前記反応容器内を加熱する加熱体と、
前記反応容器内に設けられ、前記基板の積層方向に延びるガスノズルと、
前記ガスノズルの基端部から先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、
前記ガスノズルに設けられ、前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
複数積層された基板を処理する反応容器内に設けられ、
前記反応容器の開口側に設けられる基端部と、
前記反応容器の底側に設けられる先端部と、
前記基端部から前記先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、
前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材と、
を備えるガスノズル。
【請求項3】
複数積載された基板を反応容器内に搬送する基板搬送工程と、
前記反応容器内に設けられ、前記反応容器の開口側に設けられる基端部と、前記反応容器の底側に設けられる先端部と、前記基端部から前記先端部に向けて複数並んで設けられ、前記基板に向けて反応ガスを供給するガス供給口と、前記各ガス供給口からの前記反応ガスの供給方向に延在し、かつ前記各ガス供給口における前記反応容器内の反応ガスを外部に排気する排気口側に配置される整流部材と、を備えるガスノズルの前記各ガス供給口から前記基板に向けて前記反応ガスを供給し、前記反応容器内を加熱体により加熱しつつ前記基板を処理する基板処理工程と、
を有する基板若しくは半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−178492(P2012−178492A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41217(P2011−41217)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】