説明

基板処理装置および半導体装置の製造方法

【課題】プラズマを利用して金属膜上に低温で成膜した場合に、金属膜と成膜した膜の密着性を改善する。
【解決手段】処理室201と、ガス供給口425、435を有するバッファ室423、433と、第1の処理ガスを前記処理室に供給する処理ガス供給系310と、第2の処理ガスをバッファ室423、433に供給可能な処理ガス供給系320、330と、高周波電源270と、プラズマ発生用電極471、472、481、482と、からなる処理炉202を使用して、表面に金属膜が形成された基板を、前記プラズマ発生用電極に高周波電力が印加されない状態で、前記第1の処理ガスおよび前記第2の処理ガスに順次曝して前記金属膜の上に第1の膜を形成した後、該第1の膜が形成された前記基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに交互に曝し、前記金属膜の上に第2の膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および半導体装置の製造方法に関し、特に、プラズマを利用して基板を処理する基板処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造工程の1つに、プラズマを利用したCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて基板上に所定の薄膜を堆積する成膜工程がある(特許文献1参照)。CVD法とは、ガス状原料の気相および表面での反応を利用して、原料ガス分子に含まれる元素を構成要素とする薄膜を被処理基板上へ堆積する方法である。CVD法では、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類の原料ガス等を同時に被処理基板上に供給して成膜する。ALD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類の原料ガス等を交互に被処理基板上に供給して成膜する。CVD法に対して被処理基板の温度を低くして処理を行うことができる。ALD法では、薄膜堆積が原子層レベルで制御される。そして、プラズマは、CVD法で堆積する薄膜の化学反応を促進したり、薄膜から不純物を除去したり、あるいは、ALD法では吸着した成膜原料の化学反応を補助したりするためになど用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−297818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の半導体デバイスの微細化に伴い、低い基板温度で成膜することが求められるようになっているが、プラズマを利用して低温で金属膜上に成膜すると、金属膜と成膜した膜の密着性が悪くなって、成膜した膜が剥離する現象が発生する。
【0005】
本発明の主な目的は、プラズマを利用して、金属膜上に低温で成膜した場合に、金属膜と成膜した膜の密着性を改善して、成膜した膜が剥離するのを防止または抑制できる基板処理装置および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口を有する1つ以上のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記1つ以上のバッファ室に供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記バッファ室の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記電極に高周波電力が印加されない状態で、前記第1の処理ガスおよび、前記第2の処理ガスに曝して前記金属膜の上に第1の膜を形成した後、前記第1の膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に第2の膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口を有する1つ以上のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記1つ以上のバッファ室に供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記バッファ室の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスに曝した後、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室に搬入する工程と、
互いに独立した複数の処理ガス供給系から、第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化されない状態の第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記基板を前処理する前処理工程と、
前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化された状態の前記第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記前処理された基板上に所定の膜を形成する成膜工程と、
前記所定の膜が形成された基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口をそれぞれ有する複数のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記複数のバッファ室にそれぞれ供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記複数のバッファ室の各々の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
前記基板を加熱する加熱系と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより前記複数のバッファ室の内部で活性化され、前記複数のバッファ室から前記処理室へ供給された前記第2の処理ガスに曝し、前記基板を前記第1の処理ガスの自己分解温度以下に加熱しつつ前記金属膜の上に膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系および前記加熱系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラズマを利用して、金属膜上に低温で成膜した場合に、金属膜と成膜した膜の密着性を改善して、成膜した膜が剥離するのを防止または抑制できる基板処理装置および半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の構成を説明するための概略斜透視図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい第1〜第3の実施の形態で好適に用いられる処理炉の一例とそれに付随する部材を説明するための概略構成図であって、処理炉部分を概略縦断面で示す図であり、図3のB−B線概略縦断面である。
【図3】図3は、図2に示す処理炉のA−A線概略横断面図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい第1〜第7の実施の形態の基板処理装置で好適に用いられるコントローラと当該コントローラによって制御される各部材を説明するためのブロック図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい第1の実施の形態のシリコン窒化膜の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の好ましい第1の実施の形態のシリコン窒化膜の製造プロセスを説明するためのタイミングチャートである。
【図7】図7は、投入した高周波電力と、発生したパーティクル数との関係を示した図である。
【図8】図8は、ウエハ200の面内の典型的なパーティクルの分布を示す図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい第2の実施の形態のシリコン窒化膜の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の好ましい第2の実施の形態のシリコン窒化膜の製造プロセスにおける前処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】図11は、本発明の好ましい第3の実施の形態のシリコン窒化膜の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の好ましい第1〜第3の実施の形態の変形例を説明するための概略横断面図である。
【図13】図13は、本発明の好ましい第1〜第3の実施の形態の変形例を説明するための概略横断面図である。
【図14】図14は、本発明の好ましい第1〜第3の実施の形態の変形例を説明するための概略横断面図である。
【図15】図15は、本発明の好ましい第4、第5の実施の形態を説明するための概略横断面図である。
【図16】図16は、本発明の好ましい第6、第7の実施の形態で好適に用いられる処理炉の一例とそれに付随する部材を説明するための概略構成図であって、処理炉部分を概略縦断面で示す図であり、図17のE−E線概略縦断面である。
【図17】図17は、図16に示す処理炉のD−D線概略横断面図である。
【図18】図18は、本発明の好ましい第7の実施の形態を説明するための概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の好ましい実施の形態の背景について説明する。
【0013】
例えば、基板温度650℃以下の低温で、DCS(ジクロロシラン)とプラズマ励起したNH(アンモニア)とを用いてALD法により基板上へのアモルファスシリコン窒化膜の形成が行われている。ALD法による基板上へのアモルファスシリコン窒化膜の形成は、基板上へのDCSの供給工程、DCS等の残留ガスの除去工程、プラズマ励起したNH供給工程、NH等の残留ガスの除去工程の4つの工程を繰り返し行う(サイクル処理)ことで行われる。ALD法ではサイクル処理の数で膜厚を制御することができる。
【0014】
近年のデバイスの微細化に伴い、300℃前後の温度で、基板表面上に形成された金属膜上に、上記のようなプラズマを利用したALD法によるアモルファスシリコン窒化膜を形成することが試みられているが、このような低温でアモルファスシリコン窒化膜を形成すると、金属膜とアモルファスシリコン窒化膜の密着性が悪く、アモルファスシリコン窒化膜が剥離するという問題がある。
【0015】
本発明者達は、プラズマを利用したALD法によってアモルファスシリコン窒化膜を形成すると、パーティクルが発生し、パーティクル数が多いと、金属膜とアモルファスシリコン窒化膜の密着性が悪く、アモルファスシリコン窒化膜が剥離しやすいということを見いだした。
【0016】
本発明者達は、また、基板温度が400℃以上と高い場合には、DCSは化学吸着となりやすいが、基板温度が400℃より低くなると、DCSは化学吸着よりも物理吸着が主体となり、基板表面上に形成された金属膜との結合手を形成しにくくなって、密着性が悪くなったのではと考えた。
【0017】
以下に説明する本発明の好ましい実施の形態は、このような知見や考察に基づくものであり、特に、低温(350℃以下)において、プラズマを利用したALD法によってアモルファスシリコン窒化膜を形成すると発生するパーティクルの数を減らして密着性を改善し、または、プラズマを利用したALD法によってアモルファスシリコン窒化膜を形成する前に前処理を行って密着性を改善した。
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
まず、本発明の各好ましい実施の形態で好適に使用される基板処理装置について説明する。この基板処理装置は、半導体装置の製造に使用される半導体製造装置の一例として構成されているものである。
【0020】
下記の説明では、基板処理装置の一例として、基板に対し成膜処理等をおこなう縦型の装置を使用した場合について述べる。しかし、本発明は、縦型装置の使用を前提としたものでなく、例えば、枚葉装置を使用しても良い。
【0021】
図1を参照すれば、基板処理装置101では、基板の一例となるウエハ200を収納したカセット110が使用されており、ウエハ200は半導体シリコン等の材料から構成されている。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111の内部にはカセットステージ114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入されたり、カセットステージ114上から搬出されたりする。
【0022】
カセットステージ114上にはカセット110が、工程内搬送装置(図示せず)によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢を保持しかつカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0023】
筐体111内の前後方向の略中央部より前方部にはカセット棚105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。
【0024】
カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0025】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構118bとを備えている。カセット搬送装置118はカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連動動作により、カセットステージ114とカセット棚105と予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0026】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとを備えている。ウエハ移載装置125aにはウエハ200をピックアップするためのツイーザ125cが設けられている。ウエハ移載装置125はウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連動動作により、ツイーザ125cをウエハ200の載置部として、ウエハ200をボート217に対して装填(チャージング)したり、ボート217から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0027】
筐体111の後部上方には、ウエハ200を熱処理する処理炉202が設けられており、処理炉202の下端部が炉口シャッタ147により開閉されるように構成されている。
【0028】
処理炉202の下方には処理炉202に対しボート217を昇降させるボートエレベータ115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台にはアーム128が連結されており、アーム128にはシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219はボート217を垂直に支持するとともに、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0029】
ボート217は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0030】
カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するクリーンユニット134aが設置されている。クリーンユニット134aは供給ファン(図示せず)および防塵フィルタ(図示せず)を備えており、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0031】
筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するクリーンユニット134bが設置されている。クリーンユニット134bも供給ファン(図示せず)および防塵フィルタ(図示せず)を備えており、クリーンエアをウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通させるように構成されている。当該クリーンエアは、ウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通した後に、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0032】
続いて、基板処理装置101の主な動作について説明する。
【0033】
工程内搬送装置(図示略)によってカセット110がカセットステージ114上に搬入されると、カセット110は、ウエハ200がカセットステージ114の上で垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くようにカセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、筐体111の後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0034】
その後、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送され受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0035】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってカセット110のウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、後続のウエハ200をボート217に装填する。
【0036】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ147が開き、処理炉202の下端部が開放される。その後、ウエハ200群を保持したボート217がボートエレベータ115の上昇動作により処理炉202内に搬入(ローディング)され、処理炉202の下部がシールキャップ219により閉塞される。
【0037】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に対し任意の処理が実施される。その処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110が筐体111の外部に搬出される。
【0038】
(第1の実施の形態)
次に図2、図3を参照して前述した基板処理装置101に使用される第1の実施の形態の処理炉202について説明する。
【0039】
図2および図3を参照すれば、処理炉202にはウエハ200を加熱するための加熱装置(加熱手段)であるヒータ207が設けられている。ヒータ207は上方が閉塞された円筒形状の断熱部材と複数本のヒータ素線とを備えており、断熱部材に対しヒータ素線が設けられたユニット構成を有している。ヒータ207の内側には、ウエハ200を処理するための石英製の反応管203がヒータ207と同心円状に設けられている。
【0040】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。反応管203の下部開口端部に設けられた環状のフランジとシールキャップ219の上面との間には気密部材(以下Oリング)220が配置され、両者の間は気密にシールされている。少なくとも、反応管203およびシールキャップ219により処理室201が形成されている。
【0041】
シールキャップ219上にはボート217を支持するボート支持台218が設けられている。ボート支持台218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され断熱部として機能すると共にボートを支持する支持体となっている。ボート217は、ボート支持台218上に立設されている。ボート217は例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成されている。ボート217はボート支持台218に固定された底板210とその上方に配置された天板211とを有しており、底板210と天板211との間に複数本の支柱212が架設された構成を有している(図1参照)。ボート217には複数枚のウエハ200が保持されている。複数枚のウエハ200は、互いに一定の間隔をあけながら水平姿勢を保持しかつ互いに中心を揃えた状態で反応管203の管軸方向に多段に積載されボート217の支柱212に支持されている。
【0042】
シールキャップ219の処理室201と反対側にはボートを回転させるボート回転機構267が設けられている。ボート回転機構267の回転軸265はシールキャップを貫通してボート支持台218に接続されており、回転機構267によって、ボート支持台218を介してボート217を回転させることでウエハ200を回転させる。
【0043】
シールキャップ219は反応管203の外部に設けられた昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降され、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0044】
以上の処理炉202では、バッチ処理される複数枚のウエハ200がボート217に対し多段に積層された状態において、ボート217がボート支持台218で支持されながら処理室201に挿入され、ヒータ207が処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱するようになっている。
【0045】
図2および図3を参照すれば、原料ガスを供給するための3本のガス供給管310、320、330が接続されている。
【0046】
処理室201内には、ノズル410、420、430が設けられている。ノズル410、420、430は、反応管203の下部を貫通して設けられている。ノズル410にはガス供給管310が接続され、ノズル420にはガス供給管320が接続され、ノズル430にはガス供給管330が接続されている。
【0047】
ガス供給管310には、上流側から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ312、開閉弁であるバルブ314、ガス溜り315、および開閉弁であるバルブ313が設けられている。
【0048】
ガス供給管310の下流側の端部は、ノズル410の端部に接続されている。ノズル410は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間で、反応管203の内壁の下部より上部に沿ってウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル410はL字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル410の側面には原料ガスを供給する多数のガス供給孔411が設けられている。ガス供給孔411は反応管203の中心を向くように開口している。ガス供給孔411は、下部から上部にわたって同一または、大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、同じピッチで設けられている。
【0049】
ガス供給管310の途中に、ガス供給管310から供給されるガスを溜めるガス溜り315が設けられている。このガス溜り315は、例えば通常の配管よりもガス容量の大きなガスタンク又は螺旋配管などで構成する。ガス溜り315の上流側のバルブ314および下流側のバルブ313を開閉することにより、ガス供給管310から供給されるガスをガス溜り315に溜めたり、ガス溜り315に溜めたガスを処理室201に供給できるようになっている。
【0050】
さらに、ガス供給管310には、バルブ314およびマスフローコントローラ312との間に、後述の排気管232に接続されたベントライン610およびバルブ612が設けられている。
【0051】
主に、ガス供給管310、マスフローコントローラ312、バルブ314、ガス溜り315、バルブ313、ノズル410、ベントライン610、バルブ612によりガス供給系301が構成されている。
【0052】
また、ガス供給管310にはキャリアガス(不活性ガス)を供給するためのキャリアガス供給管510が、バルブ313の下流側で接続されている。キャリアガス供給管510にはマスフローコントローラ512およびバルブ513が設けられている。主に、キャリアガス供給管510、マスフローコントローラ512、バルブ513によりキャリアガス供給系(不活性ガス供給系)501が構成されている。
【0053】
ガス供給管310では、バルブ313を閉じ、バルブ314を開けた状態で、気体原料ガスがマスフローコントローラ312で流量調整されてガス溜り315に供給され、ガス溜り315に溜められる。所定の量がガス溜り315に溜められると、バルブ314を閉じる。
【0054】
原料ガスをガス溜り315に供給していない間は、バルブ314を閉じ、バルブ612を開けて、バルブ612を介して原料ガスをベントライン610に流しておく。
【0055】
そして、原料ガスを処理室201に供給する際には、バルブ314、513を閉じた状態で、バルブ313を開けて、原料ガスをバルブ313の下流のガス供給管310を介して、処理室201に一気に供給する。
【0056】
ガス供給管320には、上流側から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ322および開閉弁であるバルブ323が設けられている。
【0057】
ガス供給管320の下流側の端部は、ノズル420の端部に接続されている。ノズル420は、ガス分散空間(放電室、放電空間)であるバッファ室423内に設けられている。バッファ室423内には、さらに後述する電極保護管451、452が設けられている。ノズル420、電極保護管451、電極保護管452がバッファ室423内にこの順序で配置されている。
【0058】
バッファ室423は、反応管203の内壁とバッファ室壁424とにより形成されている。バッファ室壁424は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室壁424のウエハ200と隣接する壁にはガスを供給するガス供給孔425が設けられている。ガス供給孔425は、電極保護管451と電極保護管452との間に設けられている。ガス供給孔425は反応管203の中心を向くように開口している。ガス供給孔425は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、さらに同じピッチで設けられている。
【0059】
ノズル420は、バッファ室423の一端側に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル420は、L字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル420の側面にはガスを供給するガス供給孔421が設けられている。ガス供給孔421はバッファ室423の中心を向くように開口している。ガス供給孔421は、バッファ室423のガス供給孔425と同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。複数のガス供給孔421のそれぞれの開口面積は、バッファ室423内とノズル420内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、同一の開口面積で同一のピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、順次開口面積を大きくするか、ピッチを小さくするとよい。
【0060】
本実施の形態においては、ノズル420のガス供給孔421のそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔421のそれぞれから、流速の差はあるもの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてガス供給孔421のそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室423内に導入し、バッファ室423内においてガスの流速差の均一化を行っている。
【0061】
すなわち、ノズル420のガス供給孔421のそれぞれよりバッファ室423内に噴出したガスはバッファ室423内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室423のガス供給孔425より処理室201内に噴出する。これにより、ノズル420のガス供給孔421のそれぞれよりバッファ室423内に噴出したガスは、バッファ室423のガス供給孔425のそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0062】
さらに、ガス供給管320には、バルブ323およびマスフローコントローラ322との間に、後述の排気管232に接続されたベントライン620およびバルブ622が設けられている。
【0063】
主に、ガス供給管320、マスフローコントローラ322、バルブ323、ノズル420、バッファ室423、ベントライン620、バルブ622によりガス供給系302が構成されている。
【0064】
また、ガス供給管320にはキャリアガス(不活性ガス)を供給するためのキャリアガス供給管520が、バルブ323の下流側で接続されている。キャリアガス供給管520にはマスフローコントローラ522およびバルブ523が設けられている。主に、キャリアガス供給管520、マスフローコントローラ522、バルブ523によりキャリアガス供給系(不活性ガス供給系)502が構成されている。
【0065】
ガス供給管320では、気体原料ガスがマスフローコントローラ322で流量調整されて供給される。
【0066】
原料ガスを処理室201に供給していない間は、バルブ323を閉じ、バルブ622を開けて、バルブ622を介して原料ガスをベントライン620に流しておく。
【0067】
そして、原料ガスを処理室201に供給する際には、バルブ622を閉じ、バルブ323を開けて、原料ガスをバルブ323の下流のガス供給管320に供給する。一方、キャリアガスがマスフローコントローラ522で流量調整されてバルブ523を介してキャリアガス供給管520から供給され、原料ガスはバルブ323の下流側でこのキャリアガスと合流し、ノズル420、バッファ室423を介して処理室201に供給される。
【0068】
ガス供給管330には、上流側から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ332および開閉弁であるバルブ333が設けられている。
【0069】
ガス供給管330の下流側の端部は、ノズル430の端部に接続されている。ノズル430は、ガス分散空間(放電室、放電空間)であるバッファ室433内に設けられている。バッファ室433内には、さらに後述する電極保護管461、462が設けられている。ノズル430、電極保護管461、電極保護管462がバッファ室433内にこの順序で配置されている。
【0070】
バッファ室433は、反応管203の内壁とバッファ室壁434とにより形成されている。バッファ室壁434は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室壁434のウエハ200と隣接する壁にはガスを供給するガス供給孔435が設けられている。ガス供給孔435は、電極保護管461と電極保護管462との間に設けられている。ガス供給孔435は反応管203の中心を向くように開口している。ガス供給孔435は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、さらに同じピッチで設けられている。
【0071】
ノズル430は、バッファ室433の一端側に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル430は、L字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル430の側面にはガスを供給するガス供給孔431が設けられている。ガス供給孔431はバッファ室433の中心を向くように開口している。ガス供給孔431は、バッファ室433のガス供給孔435と同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。複数のガス供給孔431のそれぞれの開口面積は、バッファ室433内とノズル430内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、同一の開口面積で同一のピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、順次開口面積を大きくするか、ピッチを小さくするとよい。
【0072】
本実施の形態においては、ノズル430のガス供給孔431のそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔431のそれぞれから、流速の差はあるもの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてガス供給孔431のそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室433内に導入し、バッファ室433内においてガスの流速差の均一化を行っている。
【0073】
すなわち、ノズル430のガス供給孔431のそれぞれよりバッファ室433内に噴出したガスはバッファ室433内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室433のガス供給孔435より処理室201内に噴出する。これにより、ノズル430のガス供給孔431のそれぞれよりバッファ室433内に噴出したガスは、バッファ室433のガス供給孔435のそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0074】
さらに、ガス供給管330には、バルブ333およびマスフローコントローラ332との間に、後述の排気管232に接続されたベントライン630およびバルブ632が設けられている。
【0075】
主に、ガス供給管330、マスフローコントローラ332、バルブ333、ノズル430、バッファ室433、ベントライン630、バルブ632によりガス供給系303が構成されている。
【0076】
また、ガス供給管330にはキャリアガス(不活性ガス)を供給するためのキャリアガス供給管530が、バルブ333の下流側で接続されている。キャリアガス供給管530にはマスフローコントローラ532およびバルブ533が設けられている。主に、キャリアガス供給管530、マスフローコントローラ532、バルブ533によりキャリアガス供給系(不活性ガス供給系)503が構成されている。
【0077】
ガス供給管330では、気体原料ガスがマスフローコントローラ332で流量調整されて供給される。
【0078】
原料ガスを処理室201に供給していない間は、バルブ333を閉じ、バルブ632を開けて、バルブ632を介して原料ガスをベントライン630に流しておく。
【0079】
そして、原料ガスを処理室201に供給する際には、バルブ632を閉じ、バルブ333を開けて、原料ガスをバルブ333の下流のガス供給管330に供給する。一方、キャリアガスがマスフローコントローラ532で流量調整されてバルブ533を介してキャリアガス供給管530から供給され、原料ガスはバルブ333の下流側でこのキャリアガスと合流し、ノズル430、バッファ室433を介して処理室201に供給される。
【0080】
バッファ室423内には、細長い構造を有する棒状電極471および棒状電極472が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。棒状電極471および棒状電極472は、それぞれ、ノズル420と平行に設けられている。棒状電極471および棒状電極472は、それぞれ、上部より下部にわたって電極を保護する保護管である電極保護管451、452により覆われることで保護されている。棒状電極471は、整合器271を介して高周波(RF:Radio Frequency)電源270に接続され、棒状電極472は基準電位であるアース272に接続されている。この結果、棒状電極471および棒状電極472間のプラズマ生成領域にプラズマが生成される。主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により第1のプラズマ発生構造429が構成される。主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、整合器271、高周波電源270によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としての第1のプラズマ源が構成される。第1のプラズマ源は、ガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。バッファ室423はプラズマ発生室として機能する。
【0081】
バッファ室433内には、細長い構造を有する棒状電極481および棒状電極482が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。棒状電極481および棒状電極482は、それぞれ、ノズル430と平行に設けられている。棒状電極481および棒状電極482は、それぞれ、上部より下部にわたって電極を保護する保護管である電極保護管461、462により覆われることで保護されている。棒状電極481は、整合器271を介して高周波電源270に接続され、棒状電極482は基準電位であるアース272に接続されている。この結果、棒状電極481および棒状電極482間のプラズマ生成領域にプラズマが生成される。主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により第2のプラズマ発生構造439が構成される。主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、整合器271、高周波電源270によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としての第2のプラズマ源が構成される。第2のプラズマ源は、ガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。バッファ室433はプラズマ発生室として機能する。
【0082】
電極保護管451、電極保護管452は、ボート支持台218の下部付近の高さの位置で、反応管203に設けた貫通孔(図示せず)をそれぞれ介して、バッファ室423内に挿入されている。電極保護管461、電極保護管462は、ボート支持台218の下部付近の高さの位置で、反応管203に設けた貫通孔(図示せず)をそれぞれ介して、バッファ室433内に挿入されている。
【0083】
電極保護管451および電極保護管452は、棒状電極471および棒状電極472をそれぞれバッファ室423の雰囲気と隔離した状態でバッファ室423内に挿入でき構造となっている。電極保護管461および電極保護管462は、棒状電極481および棒状電極482をそれぞれバッファ室433の雰囲気と隔離した状態でバッファ室433内に挿入できる構造となっている。電極保護管451、452、461、462の内部が外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管451、452、461、462にそれぞれ挿入された棒状電極471、472、481、482はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管451、452、461、462の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて棒状電極471、472、481、482の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構(図示せず)が設けられている。
【0084】
なお、本実施の形態により発生したプラズマをリモートプラズマと呼ぶ。リモートプラズマとは電極間で生成したプラズマをガスの流れ等により被処理物表面に輸送してプラズマ処理を行うものである。本実施の形態では、バッファ室423内に2本の棒状電極471および472が収容され、バッファ室433内に2本の棒状電極481および482が収容されているため、ウエハ200にダメージを与えるイオンがバッファ室423、433の外の処理室201内に漏れにくい構造となっている。また、2本の棒状電極471および472を取り囲むように(つまり、2本の棒状電極471および472がそれぞれ収容される電極保護管451および452を取り囲むように)電場が発生し、プラズマが生成され、2本の棒状電極481および482を取り囲むように(つまり、2本の棒状電極481および482がそれぞれ収容される電極保護管461および462を取り囲むように)電場が発生し、プラズマが生成される。プラズマに含まれる活性種は、バッファ室423のガス供給孔425およびバッファ室433のガス供給孔435を介してウエハ200の外周からウエハ200の中心方向に供給される。また、本実施形態のようにウエハ200を複数枚、主面を水平面に平行にしてスタック状に積み上げる縦型のバッチ装置であれば、反応管203の内壁面、つまり処理すべきウエハ200に近い位置にバッファ室423、433が配置されている結果、発生した活性種が失活せずにウエハ200の表面に到達しやすいという効果がある。
【0085】
図2、3を参照すれば、反応管の下部に排気口230が設けられている。排気口230は排気管231に接続されている。ノズル410のガス供給孔411と排気口230は、ウエハ200を挟んで対向する位置(180度反対側)に設けられている。このようにすれば、ガス供給孔411より供給される原料ガスが、ウエハ200の主面上を排気管231の方向に向かって横切るように流れ、ウエハ200の全面により均一に原料ガスが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0086】
本実施の形態では、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、整合器271、高周波電源270により構成される第1のプラズマ源と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、整合器271、高周波電源270により構成される第2のプラズマ源とを備えている。プラズマ源が一つの場合には、単位体積当たりの投入高周波電力密度は大きく、パーティクルが多く発生するが、本実施の形態では、第1のプラズマ源および第2のプラズマ源という2つのプラズマ源を設けているので、プラズマ源が1つの場合に比べて、各プラズマ源に供給する高周波電力を小さく(半分に)することができ、発生するパーティクルの数を減少させることができる。
【0087】
また、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造429と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造439は、ウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線に対して線対称に設けられているので、両プラズマ発生構造からウエハ200の全面により均一にプラズマが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0088】
さらに、排気口230もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられているので、ウエハ200の全面により均一にプラズマが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。また、さらに、ノズル410のガス供給孔411もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられているので、ウエハ200の全面により均一に原料ガスが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0089】
また、ノズル410のガス供給孔411と、バッファ室423のガス供給孔425との距離と、ノズル410のガス供給孔411と、バッファ室433のガス供給孔435との距離とが等しくなるようにガス供給孔411、ガス供給孔425、ガス供給孔435が配置されているので、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0090】
再び、図2、3を参照すれば、反応管の下部の排気口230には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ243を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。真空ポンプ246の下流側の排気管232は廃ガス処理装置(図示せず)等に接続されている。なお、APCバルブ243は、弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節してコンダクタンスを調整して処理室201内の圧力調整をできるようになっている開閉弁である。主に、排気管231、APCバルブ243、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0091】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への供給電力を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、L字型に構成されており、マニホールド209を貫通して導入され、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0092】
反応管203内の中央部にはボート217が設けられている。ボート217は、ボートエレベータ115により反応管203に対し昇降(出入り)することができるようになっている。ボート217が反応管203内に導入されると、反応管203の下端部がOリング220を介してシールキャップ219で気密にシールされる。ボート217はボート支持台218に支持されている。処理の均一性を向上するために、ボート回転機構267を駆動し、ボート支持台218に支持されたボート217を回転させる。
【0093】
図4を参照すれば、コントローラ280は、操作メニュー等を表示するディスプレイ288と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作入力部290と、を備えている。また、コントローラ280は、基板処理装置101全体の動作を司るCPU281と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM282と、各種データを一時的に記憶するRAM283と、各種データを記憶して保持するHDD284と、ディスプレイ288への各種情報の表示を制御すると共にディスプレイ288からの操作情報を受け付けるディスプレイドライバ287と、操作入力部290に対する操作状態を検出する操作入力検出部289と、後述する温度制御部291、後述する圧力制御部294、真空ポンプ246、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、マスフローコントローラ312、322、332、512、522、532、後述するバルブ制御部299、カセットステージ114、カセット搬送装置118、ウエハ移載装置125等の各部材と各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部285と、を備えている。
【0094】
CPU281、ROM282、RAM283、HDD284、ディスプレイドライバ287、操作入力検出部289および通信I/F部285は、システムバスBUS286を介して相互に接続されている。従って、CPU281は、ROM282、RAM283、HDD284へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ287を介したディスプレイ288への各種情報の表示の制御およびディスプレイ288からの操作情報の把握、通信I/F部285を介した各部材との各種情報の送受信の制御を行うことができる。また、CPU281は、操作入力検出部289を介して操作入力部290に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0095】
温度制御部291は、ヒータ207と、ヒータ207に電力を供給する加熱用電源250と、温度センサ263と、コントローラ280との間で設定温度情報等の各種情報を送受信する通信I/F部293と、受信した設定温度情報と温度センサ263からの温度情報等に基づいて加熱用電源250からヒータ207への供給電力を制御するヒータ制御部292とを備えている。ヒータ制御部292もコンピュータによって実現されている。温度制御部291の通信I/F部293とコントローラ280の通信I/F部285はケーブル751で接続されている。
【0096】
圧力制御部294は、APCバルブ243と、圧力センサ245と、コントローラ280との間で設定圧力情報、APCバルブ243の開閉情報等の各種情報を送受信する通信I/F部296と、受信した設定圧力情報、APCバルブ243の開閉情報等と圧力センサ245からの圧力情報等に基づいてAPCバルブ243の開閉や開度を制御するAPCバルブ制御部295とを備えている。APCバルブ制御部295もコンピュータによって実現されている。圧力制御部294の通信I/F部296とコントローラ280の通信I/F部285はケーブル752で接続されている。
【0097】
真空ポンプ246、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、マスフローコントローラ312、322、332、512、522、532、高周波電源270、カセットステージ114、カセット搬送装置118、ウエハ移載装置125とコントローラ280の通信I/F部285は、それぞれケーブル753、754、755、756、757、758、759、760、761、762、781、782、783で接続されている。
【0098】
バルブ制御部299は、バルブ313、314、323、333、513、523、533、612、622、632と、エアバルブであるバルブ313、314、323、333、513、523、533、612、622、632へのエアの供給を制御する電磁バルブ群298とを備えている。電磁バルブ群298は、バルブ313、314、323、333、513、523、533、612、622、632にそれぞれ対応する電磁バルブ297を備えている。電磁バルブ群298とコントローラ280の通信I/F部285はケーブル763で接続されている。
【0099】
以上のようにして、マスフローコントローラ312、322、332、512、522、532、バルブ313、314、323、333、513、523、533、612、622、632、APCバルブ243、加熱用電源250、温度センサ263、圧力センサ245、真空ポンプ246、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源270等の各部材はコントローラ280に接続されている。コントローラ280は、カセットステージ114によるカセット110の姿勢制御、カセット搬送装置118によるカセット110の搬送動作制御、ウエハ移載装置125によるウエハ200の移載動作制御、マスフローコントローラ312、322、332、512、522、532の流量制御、バルブ313、314、323、333、513、523、533、612、622、632の開閉動作制御、APCバルブ243の開閉制御および圧力センサ245からの圧力情報に基づく開度調整動作を介した圧力制御、温度センサ263からの温度情報に基づく加熱用電源250からヒータ207への電力供給量調整動作を介した温度制御、高周波電源270から供給される高周波電力の制御、真空ポンプ246の起動・停止制御、ボート回転機構267の回転速度調節制御、ボートエレベータ115の昇降動作制御等をそれぞれ行うようになっている。
【0100】
次に、上述の基板処理装置を用いて大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)を製造する半導体装置(デバイス)の製造工程の一例について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0101】
LSIは、シリコンウエハ上に処理を施すウエハプロセスを行なった後、組立工程、試験工程、信頼性試験工程を経て製造される。ウエハプロセスは、シリコンウエハに酸化、拡散などの加工を施す基板工程と、その表面に配線を形成する配線工程とに区分され、配線工程では、リソグラフィ工程を中心に洗浄、熱処理、膜形成などが反復して行なわれる。リソグラフィ工程では、レジストパターンを形成し、該パターンをマスクとしてエッチングを行なうことにより該パターンの下層を加工する。
【0102】
次に、基板処理装置101を使用して、基板工程や配線工程でウエハ200の表面に形成される金属膜であるGST(GeSbTe)膜上にアモルファスシリコン窒化膜を形成する例について説明する。
【0103】
従来のCVD法やALD法では、例えば、CVD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガス等を同時に供給し、また、ALD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガス等を交互に供給する。そして、供給時の供給流量、供給時間、プラズマパワーなどの処理条件を制御することにより酸化シリコン膜(SiO膜)や窒化シリコン膜(SiN膜)を形成する。それらの技術では、例えばSiO膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si≒2となるように、また例えばSiN膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si≒1.33となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。
【0104】
一方、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、供給条件を制御することも可能である。すなわち、形成する膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。このように形成する膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ成膜を行うことも可能である。以下では、ALD法により、異なる種類の元素を含む複数種類のガスを交互に供給して化学量論組成を有する酸化シリコン膜を形成するシーケンス例について説明する。
【0105】
ここでは第1の元素をシリコン(Si)、第2の元素を窒素(N)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であるDCS(ジクロロシラン)を、第2の元素を含む反応ガスとして窒素含有ガスであるNH(アンモニア)を用い、ウエハ200上に形成された金属膜であるGST(GeSbTe)膜上にアモルファスシリコン窒化膜を形成する例について図5、図6を参照して説明する。図5は、アモルファスシリコン窒化膜の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。図6は、アモルファスシリコン窒化膜の製造プロセスを説明するためのタイミングチャートである。
【0106】
まず、ヒータ207に電力を供給する加熱用電源250を制御して処理室201内を、DCSの自己分解温度である400℃以下、より好ましくは350℃以下の温度であって例えば300℃となるような温度に保持しておく。
【0107】
その後、GST膜が形成された複数枚(100枚)のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する(ステップS201)。なお、ウエハ200は、直径300mmのものを使用した。
【0108】
その後、真空ポンプ246を起動する。また、炉口シャッタ147(図1参照)を開ける。複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される(ステップS202)。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。その後、ボート217をボート駆動機構267により回転させ、ウエハ200を回転させる。
【0109】
その後、APCバルブ243を開いて真空ポンプ246により処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空引きし、ウエハ200の温度が300℃に達して温度等が安定したら(ステップS203)、処理室201内の温度を300℃に保持した状態で次のステップを順次実行する。
【0110】
この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244の開度がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づき加熱用電源250からヒータ207への電力供給具合がフィードバック制御される(温度調整)。
【0111】
(前処理)
次に、前処理として、プラズマで活性化していないNを供給し、その後、残留ガスを除去する。
【0112】
(プラズマで活性化していないN供給:ステップS211)
ステップS204では、Nをキャリアガス供給管501、502、503から供給する。バルブ313を閉じ、バルブ513を開けて、Nをキャリアガス供給管510から供給する。Nの流量はマスフローコントローラ512で調整する。バルブ323を閉じ、バルブ523を開けて、Nをキャリアガス供給管520から供給する。Nの流量はマスフローコントローラ522で調整する。バルブ333を閉じ、バルブ533を開けて、Nをキャリアガス供給管530から供給する。Nの流量はマスフローコントローラ532で調整する。なお、棒状電極471および棒状電極472間、ならびに棒状電極481および棒状電極482間には、高周波電源270から高周波電力は印加しないので、プラズマで活性化されていない状態でNは供給される。
【0113】
(残留ガス除去:ステップS213)
ステップS213では、残留Nを処理室201内から除去する。キャリアガス供給管510のバルブ513を閉め、キャリアガス供給管520のバルブ523を閉め、キャリアガス供給管530のバルブ533を閉め、処理室201へのNの供給を停止する。このとき排気管231のAPCバルブ243を全開として、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、処理室201内に残留する残留Nを処理室201内から排除する。
【0114】
(アモルファスシリコン窒化膜形成)
【0115】
次に、DCSガスとNHガスを処理室201内に供給することによりアモルファスシリコン窒化膜を成膜するシリコン窒化膜形成工程を行う。シリコン窒化膜形成工程では次の4つのステップ(S231〜S237)を順次繰り返して実行する。本実施の形態では、ALD法を用いてシリコン窒化膜を形成する。
【0116】
(DCS供給:ステップS231)
ステップS231では、ガス供給系301のガス供給管310、ノズル410よりDCSを処理室201内に供給する。
【0117】
バルブ313を閉じ、バルブ314を開けた状態で、DCSをマスフローコントローラ312で流量調整してガス溜り315に供給し、ガス溜り315に溜める。所定の量がガス溜り315に溜められると、バルブ314を閉じ、ガス溜り315にDCSを閉じ込める。ガス溜り315内には、圧力が処理室201内の圧力の10倍以上であって例えば13000Pa以上になるようにDCSを溜める。また、ガス溜り315と処理室201との間のコンダクタンスが1.5×10-33/s以上になるように装置を構成する。また、処理室201の容積とこれに対する必要なガス溜り315の容積との比として考えると、処理室201の容積が100lの場合においては、ガス溜り315の容積は100〜300ccであることが好ましく、容積比としてはガス溜り315の容積は処理室201の容積の1/1000〜3/1000倍とすることが好ましい。本実施の形態では、ガス溜り315の容積は180ccである。なお、このDCSをガス溜り315に溜める工程は、最初は、上述した残留ガス除去工程(ステップS213)中に行うことができ、2サイクル目以降は、後述するNH供給工程(ステップS235)中に行うことができる。
【0118】
上述した残留ガス除去工程(ステップS213)が終了したら、APCバルブ243を閉じて、処理室201の排気を止める。その後、ガス溜り315の下流側のバルブ313を開く。これによりガス溜り315に溜められたDCSが処理室201内に一気に供給される。このとき排気管231のAPCバルブ243が閉じられているので、処理室201内の圧力は急激に上昇して約400〜500Paまで昇圧される。DCSを供給するための時間は2〜4秒設定し、その後上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を2〜4秒に設定し、合計6秒とした。また、ヒータ207に電力を供給する加熱用電源250を制御して処理室201内を300℃に保持しておく。処理室201へのDCSの供給が終了すると、バルブ313を閉じ、バルブ314を開いてガス溜り315へのDCSの供給を開始する。
【0119】
このとき、処理室201内に流しているガスは、DCSのみであり、NHは存在しない。したがって、DCSは気相反応を起こすことはなく、ウエハ200上のGST膜の表面と表面反応(化学吸着)して、原料(DCS)の吸着層またはSi層(以下、Si含有層)を形成する。DCSの化学吸着層とは、DCS分子の連続的な吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。Si層とは、Siにより構成される連続的な層の他、これらが重なってできるSi薄膜をも含む。なお、Siにより構成される連続的な層をSi薄膜という場合もある。
【0120】
同時に、ガス供給管320の途中につながっているキャリアガス供給管520から、バルブ523を開けてN(不活性ガス)を流すと、NH側のノズル420、バッファ室423やガス供給管320にDCSが回り込むことを防ぐことができる。同様に、同時にガス供給管330の途中につながっているキャリアガス供給管530から、バルブ533を開けてN(不活性ガス)を流すと、NH側のノズル430、バッファ室433やガス供給管330にDCSが回り込むことを防ぐことができる。なお、DCSが回り込むのを防止するためなので、マスフローコントローラ522、532で制御するN(不活性ガス)の流量は少なくてよい。
【0121】
ALD装置では、ガスは下地膜表面に吸着する。このガスの吸着量は、ガスの圧力、及びガスの暴露時間に比例する。よって、希望する一定量のガスを、短時間で吸着させるためには、ガスの圧力を短時間で大きくする必要がある。この点で、本実施の形態では、APCバルブ243を閉めたうえで、ガス溜り315内に溜めたDCSを瞬間的に供給しているので、処理室201のDCSの圧力を急激に上げることができ、希望する一定量のガスを瞬間的に吸着させることができる。
【0122】
(残留ガス除去:ステップS233)
ステップS233では、残留DCS等の残留ガスを処理室201内から除去する。ガス供給管310のバルブ313を閉めて処理室201へのDCSの供給を停止する。このとき排気管231のAPCバルブ243を全開として、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、処理室201内に残留する残留DCS等の残留ガスを処理室201内から排除する。このときN等の不活性ガスを、ガス供給管320、330から、処理室201内へ供給すると、さらに残留DCS等の残留ガスを排除する効果が高まる。残留ガス除去工程(ステップS233)は9秒である。
【0123】
(プラズマで活性化したNH供給:ステップS235)
ステップS235では、NHをガス供給系302のガス供給管320よりノズル420のガス供給孔421を介してバッファ室423内に供給し、NHをガス供給系303のガス供給管330よりノズル430のガス供給孔431を介してバッファ室433内に供給する。このとき、棒状電極471および棒状電極472間に高周波電源270から整合器271を介して高周波電力を印加することで、バッファ室423内に供給されたNHガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔425から処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。また、棒状電極481および棒状電極482間に高周波電源270から整合器271を介して高周波電力を印加することで、バッファ室433内に供給されたNHガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔435から処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0124】
NHはマスフローコントローラ322で流量調整されてガス供給管320よりバッファ室423内に供給され、マスフローコントローラ332で流量調整されてガス供給管330よりバッファ室433内に供給される。NHは、バッファ室423に供給する前は、バルブ323を閉じ、バルブ622を開けて、バルブ622を介してベントライン620に流しておき、バッファ室433に供給する前は、バルブ333を閉じ、バルブ632を開けて、バルブ632を介してベントライン630に流しておく。そして、NHをバッファ室423に供給する際には、バルブ622を閉じ、バルブ323を開けて、NHをバルブ323の下流のガス供給管320に供給すると共に、バルブ523を開けて、キャリアガス(N)をキャリアガス供給管520から供給する。キャリアガス(N)の流量はマスフローコントローラ522で調整する。NHはキャリアガス(N)とバルブ323の下流側で合流し混合され、ノズル420を介してバッファ室423供給される。また、NHをバッファ室433に供給する際には、バルブ632を閉じ、バルブ333を開けて、NHをバルブ333の下流のガス供給管330に供給すると共に、バルブ533を開けて、キャリアガス(N)をキャリアガス供給管530から供給する。キャリアガス(N)の流量はマスフローコントローラ532で調整する。NHはキャリアガス(N)とバルブ333の下流側で合流し混合され、ノズル430を介してバッファ室433供給される。
【0125】
NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ243を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば40〜100Paとする。マスフローコントローラ322で制御するNHガスの供給流量は、例えば3000sccmとする。マスフローコントローラ332で制御するNHガスの供給流量は、例えば3000sccmとする。NHガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間は、例えば23秒とする。なお、高周波電源270から棒状電極471および棒状電極472間に印加する高周波電力は、例えば50Wとなるよう設定し、高周波電源270から棒状電極481および棒状電極482間に印加する高周波電力は、例えば50Wとなるよう設定する。また、ヒータ207に電力を供給する加熱用電源250を制御して処理室201内を、300℃に保持しておく。
【0126】
なお、NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときに、もし、排気管231に設けたAPCバルブ243を閉めて真空排気を止めた状態とすると、NHガスをプラズマ励起することにより活性化された活性種がウエハ200に到達する前に失活してしまい、その結果ウエハ200の表面と反応が起きなくなるという問題があるので、NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流す場合には、APCバルブ243を開けて、反応炉20を排気している。
【0127】
このとき、処理室201内に流しているガスはNHガスをプラズマ励起することにより得られた活性種(NHプラズマ)であり、処理室201内にはDCSガスは流していない。したがって、NHガスは気相反応を起こすことはなく、活性種となった、もしくは活性化されたNHガスは、ステップS231でウエハ200上のGST膜上に形成された第1の層としてのシリコン含有層と反応する。これによりシリコン含有層は窒化されて、シリコン(第1の元素)及び窒素(第2の元素)を含む第2の層、すなわち、シリコン窒化膜層へと改質される。
【0128】
同時に、ガス供給管310の途中につながっているキャリアガス供給管510から、バルブ513を開けてN(不活性ガス)を流すと、DCS側のノズル410やガス供給管310にNHが回り込むことを防ぐことができる。なお、NHが回り込むのを防止するためなので、マスフローコントローラ512で制御するN(不活性ガス)の流量は少なくてよい。
【0129】
なお、このNHをプラズマ励起することにより活性種として供給しているとき、ガス溜り315の上流側のバルブ314を開け、下流側のバルブ313を閉めて、DCSをガス溜り315に溜める。ガス溜り315に所定圧、所定量のDCSが溜まったら上流側のバルブ314も閉めて、ガス溜り315にDCSを閉じ込めておく。
【0130】
(残留ガス除去:ステップS237)
ステップS237では、未反応もしくは酸化に寄与した後の残留NH等の残留ガスを処理室201内から除去する。ガス供給管320のバルブ323を閉めて処理室201へのNHの供給を停止し、バルブ622を開けてベントライン620へNHを流し、ガス供給管330のバルブ333を閉めて処理室201へのNHの供給を停止し、バルブ632を開けてベントライン630へNHを流す。このとき排気管231のAPCバルブ243を全開として、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、処理室201内に残留する残留NH等の残留ガスを処理室201内から排除する。このときN等の不活性ガスを、NH供給ラインであるガス供給管320、330から、処理室201内へ供給すると、さらに残留NH等の残留ガスを排除する効果が高まる。残留ガス除去工程(ステップS237)は5秒である。
【0131】
なお、本実施の形態では、ガス溜り315にDCSを溜めている間に、ALD法で必要なステップであるNHガスをプラズマ励起することにより活性種として供給(ステップS235)、及び残留ガスの除去(ステップS237)をしているので、DCSを溜めるための特別なステップを必要としない。
【0132】
上記ステップS231〜S237を1サイクルとし、少なくとも1回以上行なう(ステップS239)ことによりウエハ200上のGST膜上にALD法を用いて所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜する。本実施の形態では、500サイクル行い、350Åのシリコン窒化膜を成膜した。
【0133】
所定膜厚のシリコン窒化膜を形成する成膜処理がなされると、N等の不活性ガスを処理室201内へ供給しつつ排気することで処理室201内を不活性ガスでパージする(ガスパージ:ステップS241)。なお、ガスパージは、残留ガスを除去したのち、APCバルブ243を閉じ、バルブ513、523、533を開いて行うN等の不活性ガスの処理室201内への供給と、その後、バルブ513、523、533を閉じてN等の不活性ガスの処理室201内への供給を停止すると共に、APCバルブ243を開いて行う処理室201内の真空引きとを繰り返して行うことが好ましい。
【0134】
その後、ボート回転機構267を止め、ボート217の回転を止める。その後、バルブ513、523、533を開いて処理室201内の雰囲気をN等の不活性ガスで置換し(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力を常圧に復帰する(大気圧復帰:ステップS243)。その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降して、反応管203の下端を開口するとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から処理室201の外部に搬出(ボートアンロード:ステップS245)する。その後、反応管203の下端を炉口シャッタ147で閉じる。その後、真空ポンプ246を止める。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ:ステップS247)。これにより1回の成膜処理(バッチ処理)が終了する。
【0135】
本実施の形態では、プラズマ発生構造429とプラズマ発生構造439とを設け、高周波電力を2つのプラズマ発生構造に分散して50Wずつ供給している。これに対して、プラズマ発生構造が一つの場合、例えば、プラズマ発生構造439を設けず、プラズマ発生構造429のみを設けた場合には、プラズマ発生構造429に100W供給することになる。図7は、投入した高周波電力(W)と、発生したパーティクル数との関係を示した図である。プラズマ発生構造を一つのみ設けた場合には、その一つのプラズマ発生構造に供給される電力は、投入した高周波電力(W)と等しくなるが、プラズマ発生構造を2つ設けた場合には、各プラズマ発生構造に供給される電力は、投入した高周波電力(W)の半分となる。図7を参照すれば、プラズマ発生構造を一つのみ設けた場合に比べて、プラズマ発生構造を2つ設けた場合には、発生するパーティクルの数が大幅に減少していることがわかる。従って、プラズマ発生構造を2つ設けることによって、発生するパーティクルの数を大幅減少させて、GST膜上に形成したシリコン窒化膜の剥離を抑制または防止できるようになる。図8は、プラズマ発生構造が一つの場合、例えば、プラズマ発生構造439を設けず、プラズマ発生構造429のみを設けた場合の、ウエハ200の面内の典型的なパーティクルの分布を示している。パーティクルはウエハの周辺部に偏っており、ウエハ200を回転させて処理していることを考慮すると、ウエハ200の周辺部近傍に配置されたプラズマ発生構造429方向から発生していることがわかる。これに対して、プラズマ発生構造429とプラズマ発生構造439とを設け、高周波電力を2つのプラズマ発生構造に分散して供給すると、パーティクルは発生しない方向となった。
【0136】
処理温度が低い場合には、成膜した膜の膜質維持の観点から、高周波電力の投入量を増やしたいという市場要求があり、一方では、図7に示すように、高周波電力の投入量を増やすと、パーティクルが多くは発生するという問題があるが、本実施の形態のように、プラズマ発生構造を複数設け、高周波電力を複数のプラズマ発生構造に分散して供給することにより、高周波電力の単位体積当たりの投入電力密度を下げることができ、その結果、発生するパーティクル数を減少させることができ、密着性を改善することができる。
【0137】
(第2の実施の形態)
次に、図9、図10を参照して、第2の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態では、前処理として、プラズマで活性化していないNを供給し(ステップS211)、その後、残留ガスを除去した(ステップS213)が、本実施の形態では、前処理として、DCSの供給(ステップS221)、残留ガス除去(ステップ223)、プラズマで励起していないNH供給(ステップS225)および残留ガス除去(ステップ227)の各工程を少なくとも1サイクル行う点が第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。使用する基板処理装置101も同じであり、シリコン窒化膜形成工程も同じである。
【0138】
また、DCSの供給(ステップS221)は、第1の実施の形態のDCSの供給(ステップS231)と同じであり、残留ガス除去(ステップ223)は、第1の実施の形態の残留ガス除去(ステップ233)と同じであり、残留ガス除去(ステップ227)は、第1の実施の形態の残留ガス除去(ステップ237)と同じである。なお、第1の実施の形態のプラズマで励起したNH供給(ステップS235)では、棒状電極471および棒状電極472間に高周波電源270から高周波電力を印加し、棒状電極481および棒状電極482間に高周波電源270から高周波電力を印加したが、本実施の形態のプラズマで励起していないNH供給(ステップS225)は、棒状電極471および棒状電極472間ならびに棒状電極481および棒状電極482間に高周波電源270から高周波電力を印加しない点が、第1の実施の形態のプラズマで励起したNH供給(ステップS235)と異なるが、他の点は同じである。
【0139】
(第3の実施の形態)
次に、図11を参照して、第3の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態では、前処理として、プラズマで活性化していないNを供給し(ステップS211)、その後、残留ガスを除去した(ステップS213)が、本実施の形態では、前処理として、プラズマで活性化していないDCSを供給し(ステップS215)、その後、残留ガスを除去する(ステップS217)点が、第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。使用する基板処理装置101も同じであり、シリコン窒化膜形成工程も同じである。
【0140】
次に、図12を参照して、第1〜第3の実施の形態の一変形例を説明する。
上記第1〜第3の実施の形態では、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造429と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造439は、ウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線に対して線対称に設けられており、排気口230もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられており、ノズル410のガス供給孔411もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられており、第1のプラズマ発生構造429と第2のプラズマ発生構造439は排気口230近傍に設けられているが、本変形例では、第1のプラズマ発生構造429と第2のプラズマ発生構造439はウエハ200を挟んで対向する位置(180度反対側)に設けられ、ウエハ200の中心および反応管203の中心に対して点対称に設けられ、また、ノズル410は、排気口230と第2のプラズマ発生構造439との間に設けられている点が上記第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0141】
本変形例でも、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、整合器271、高周波電源270により構成される第1のプラズマ源と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、整合器271、高周波電源270により構成される第2のプラズマ源とを備えているので、プラズマ源が1つの場合に比べて、高周波電力を複数のプラズマ源に分散して供給することにより、高周波電力の単位体積当たりの投入電力密度を下げることができ、その結果、発生するパーティクル数を減少させることができ、密着性を改善することができる。
【0142】
また、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造429と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造439は、ウエハ200を挟んで対向する位置(180度反対側)に設けられ、ウエハ200の中心および反応管203の中心に対して点対称に設けられているので、両プラズマ発生構造からウエハ200の全面により均一にプラズマが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0143】
次に、図13を参照して、本実施の形態の他の変形例を説明する。
上記第1の実施の形態では、ノズル410のガス供給孔411は、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造429と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造439は、ウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線に対して線対称に設けられており、ノズル410のガス供給孔411もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられているが、本変形例では、第1のプラズマ発生構造429と、第2のプラズマ発生構造439は、ウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線に対して線対称に設けられているが、ノズル410のガス供給孔411はこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられていない点が上記第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0144】
本変形例でも、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、整合器271、高周波電源270により構成される第1のプラズマ源と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、整合器271、高周波電源270により構成される第2のプラズマ源とを備えているので、プラズマ源が1つの場合に比べて、高周波電力を複数のプラズマ源に分散して供給することにより、高周波電力の単位体積当たりの投入電力密度を下げることができ、その結果、発生するパーティクル数を減少させることができ、密着性を改善することができる。
【0145】
また、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造と主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造は、ウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線に対して線対称に設けられているので、両プラズマ発生構造からウエハ200の全面により均一にプラズマが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0146】
次に、図14を参照して、本実施の形態のさらに他の変形例を説明する。
本変形例では、上記図13に示す他の変形例に対して、主に、棒状電極481’、棒状電極482’、電極保護管461’、電極保護管462’、バッファ室433’およびガス供給孔435’により構成され、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造439と同じ構造の、第3のプラズマ発生構造439’を、追加し、この第3のプラズマ発生構造439’を、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造429と、ウエハ200の中心および反応管203の中心に対して点対称に設けている。
【0147】
本変形例では、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、整合器271、高周波電源270により構成される第1のプラズマ源と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、整合器271、高周波電源270により構成される第2のプラズマ源に、さらに、主に、棒状電極481’、棒状電極482’、電極保護管461’、電極保護管462’、整合器271、高周波電源270により構成される第3のプラズマ源が追加されているので、プラズマ源が2つの場合に比べて、高周波電力を複数のプラズマ源にさらに分散して供給することができ、高周波電力の単位体積当たりの投入電力密度をさらに下げることができ、その結果、発生するパーティクル数をさらに減少させることができ、密着性をさらに改善することができる。
【0148】
(第4の実施の形態)
図15を参照すれば、第2の実施の形態では、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成されるプラズマ発生構造429と、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成されるプラズマ発生構造439とを備え、ガス供給系は、ガス供給管310を備えるガス供給系301、ガス供給管320を備えるガス供給系302およびガス供給管330を備えるガス供給系303を備えていたのに対して、本実施の形態では、プラズマ発生構造439を備えず、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成されるプラズマ発生構造429のみを備え、ガス供給系303を備えず、ガス供給管310を備えるガス供給系301、ガス供給管320を備えるガス供給系302のみを備えている点が第2の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0149】
上述した第2の実施の形態および本実施の形態(第4の実施の形態)では、前処理として、DCSの供給(ステップS221)、残留ガス除去(ステップ223)、プラズマで励起していないNH供給(ステップS225)および残留ガス除去(ステップ227)の各工程を少なくとも1サイクル行うことにより、発生するパーティクル数を減少させることができ、密着性を改善することができる。第2の実施の形態のように、プラズマ発生構造を2つ備える方が、発生するパーティクル数を減少させ、密着性を改善することができる効果は大きいが、プラズマ発生構造を一つ備える本実施の形態の場合でも、発生するパーティクル数を減少させ、密着性を改善することができる。
【0150】
DCSおよびプラズマで活性化しないNHを用いた前処理の原理は、次のように考えられる。GST等の金属膜が露出した基板に、DCSを供給すると、基板上に薄く金属とSiの反応中間体が形成される。但し、その際は、DCSに含まれるClも同時に基板に吸着していると考えられる。そこへNHを供給すると、基板に吸着したSiと反応してシリサイドを形成しつつ、塩化アンモニアが形成され膜中からClが除去される。低温では、NHはプラズマ励起されないとシリコン窒化膜を形成しないため、プラズマで活性化しないNHとすることにより、上記のような効果が得られる。
【0151】
(第5の実施の形態)
図15を参照すれば、第3の実施の形態では、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成されるプラズマ発生構造429と、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成されるプラズマ発生構造439とを備え、ガス供給系は、ガス供給管310を備えるガス供給系301、ガス供給管320を備えるガス供給系302およびガス供給管330を備えるガス供給系303を備えていたのに対して、本実施の形態では、プラズマ発生構造439を備えず、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成されるプラズマ発生構造429のみを備え、ガス供給系303を備えず、ガス供給管310を備えるガス供給系301、ガス供給管320を備えるガス供給系302のみを備えている点が第2の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0152】
上述した第3の実施の形態および本実施の形態(第5の実施の形態)では、前処理として、プラズマで活性化していないDCSを供給し(ステップS215)、その後、残留ガスを除去する(ステップS217)ことにより、発生するパーティクル数を減少させることができ、密着性を改善することができる。第3の実施の形態のように、プラズマ発生構造を2つ備える方が、発生するパーティクル数を減少させ、密着性を改善することができる効果は大きいが、プラズマ発生構造を一つ備える本実施の形態の場合でも、発生するパーティクル数を減少させ、密着性を改善することができる。
(第6の実施の形態)
図16、図17を参照して、本実施の形態を説明する。
上述の第1〜第3の実施の形態では、主に、棒状電極471、棒状電極472、電極保護管451、電極保護管452、バッファ室423およびガス供給孔425により構成される第1のプラズマ発生構造429と、主に、棒状電極481、棒状電極482、電極保護管461、電極保護管462、バッファ室433およびガス供給孔435により構成される第2のプラズマ発生構造439は、反応管203の内側に設けたが、本実施の形態では、プラズマ発生構造を反応管203の外側に突き出して設ける点が第1〜第3の実施の形態と異なるが、他の点は同様である。
【0153】
反応管203の側壁に、反応管の下部から上部にわたる上下に細長い矩形の開口822が設けられ、開口822を覆って反応管203の外壁にプラズマ形成室壁428が設けられている。プラズマ形成室壁428は、断面コの字状をなし上下に細長く形成されている。プラズマ形成室壁428は、例えば石英で形成されている。プラズマ形成室壁428内にはプラズマ形成室821が形成される。プラズマ形成室821は開口822を介して反応管203の内部と連通している。開口822はボート217に積層されて搭載された複数のウエハ200の最下部よりも下側から最下部よりも上側にわたって上下に細長く形成されている。
【0154】
プラズマ形成室821の奥の部分(反応管203の中心から最も離れた部分)に、ノズル426が立設されている。ノズル426の下部の部分は、一端反応管203内部側に折れ曲がり、その後、プラズマ形成室壁428の下側の反応管203の管壁から反応管203の外部に突き出し、その端部はガス供給管320に接続されている。
【0155】
ノズル426は、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル426の上端は閉塞されている。ノズル426の側面には、ガスを供給するガス供給孔427が、ボート217に積層されて搭載された複数のウエハ200の最下部よりも下側から最下部よりも上側にわたってウエハ200の積載方向に沿って複数設けられている。ガス供給孔427は反応管203の中心に向かって開口している。複数のガス供給孔427の開口面積は同一であり、同一のピッチで設けられている。
【0156】
プラズマ形成室壁428の両側壁428a、428bの外面に上下方向に沿って互いに対向して、細長い一対のプラズマ形成電極473、474が設けられている。プラズマ形成電極473、474をそれぞれ覆って電極カバー475、476が設けられている。電極カバー475、476の内部に、窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えてプラズマ形成電極473、474の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0157】
プラズマ形成電極473は、整合器271を介して高周波電源270に接続され、プラズマ形成電極474は基準電位であるアース272に接続されている。主に、プラズマ形成電極473、474、プラズマ形成室壁428、プラズマ形成室821、開口822、ノズル426およびガス供給孔427により第1のプラズマ発生構造820が構成される。主に、プラズマ形成電極473、474、整合器271、高周波電源270によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としての第1のプラズマ源が構成される。
【0158】
以上のように構成された結果、ガスがプラズマ形成室821の奥の部分に設けられたノズル426のガス供給孔427からプラズマ形成電極473、474間に供給され、プラズマ形成電極473、474間のプラズマ生成領域でプラズマが生成され、開口822を介して、反応管203の中心に向けて拡散しつつ流れる。
【0159】
反応管203の側壁に、反応管の下部から上部にわたる上下に細長い矩形の開口832が設けられ、開口832を覆って反応管203の外壁にプラズマ形成室壁438が設けられている。プラズマ形成室壁438は、断面コの字状をなし上下に細長く形成されている。プラズマ形成室壁438は、例えば石英で形成されている。プラズマ形成室壁438内にはプラズマ形成室831が形成される。プラズマ形成室831は開口832を介して反応管203の内部と連通している。開口832はボート217に積層されて搭載された複数のウエハ200の最下部よりも下側から最下部よりも上側にわたって上下に細長く形成されている。
【0160】
プラズマ形成室831の奥の部分(反応管203の中心から最も離れた部分)に、ノズル436が立設されている。ノズル436の下部の部分は、一端反応管203内部側に折れ曲がり、その後、プラズマ形成室壁438の下側の反応管203の管壁から反応管203の外部に突き出し、その端部はガス供給管330に接続されている。
【0161】
ノズル436は、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル436の上端は閉塞されている。ノズル436の側面には、ガスを供給するガス供給孔437が、ボート217に積層されて搭載された複数のウエハ200の最下部よりも下側から最下部よりも上側にわたってウエハ200の積載方向に沿って複数設けられている。ガス供給孔437は反応管203の中心に向かって開口している。複数のガス供給孔437の開口面積は同一であり、同一のピッチで設けられている。
【0162】
プラズマ形成室壁438の両側壁438a、438bの外面に上下方向に沿って互いに対向して、細長い一対のプラズマ形成電極483、484が設けられている。プラズマ形成電極483、484をそれぞれ覆って電極カバー485、486が設けられている。電極カバー485、486の内部に、窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えてプラズマ形成電極483、484の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0163】
プラズマ形成電極483は、整合器271を介して高周波電源270に接続され、プラズマ形成電極484は基準電位であるアース272に接続されている。主に、プラズマ形成電極483、484、プラズマ形成室壁438、プラズマ形成室831、開口832、ノズル436およびガス供給孔437により第2のプラズマ発生構造830が構成される。主に、プラズマ形成電極483、484、整合器271、高周波電源270によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としての第2のプラズマ源が構成される。
【0164】
以上のように構成された結果、ガスがプラズマ形成室831の奥の部分に設けられたノズル436のガス供給孔437からプラズマ形成電極483、484間に供給され、プラズマ形成電極483、484間のプラズマ生成領域でプラズマが生成され、開口832を介して、反応管203の中心に向けて拡散しつつ流れる。
【0165】
上記のような構成を備えたプラズマ発生構造820、830によっても、リモートプラズマが生成される。すなわち、プラズマ発生構造820、830で発生したラジカルが処理室201内のウエハ200の全面に到達するまでに失活せず、かつプラズマ発生構造820、830で発生したイオンが処理室内のウエハ200にダメージを与えるほどには到達しない。
【0166】
本実施の形態のように、プラズマ発生構造820、830を反応管203の外部に突き出して設けると、第1の実施の形態のように、バッファ室423、433を反応管203の内部に設けた場合と比較して、ウエハ200の外周と反応管203の内周面との距離をより近くにすることができる。
【0167】
本実施の形態では、主に、プラズマ形成電極473、474、整合器271、高周波電源270により構成される第1のプラズマ源と、主に、プラズマ形成電極483、484、整合器271、高周波電源270により構成される第2のプラズマ源を備えているので、プラズマ源が1つの場合に比べて、各プラズマ源に供給する高周波電力が小さくても、充分な量のプラズマを発生させることができる。従って、プラズマを利用してウエハ200を処理する際にウエハ200や形成する膜に与えるダメージを小さくでき、しかもウエハ200の処理温度を低くできる。
【0168】
また、主に、プラズマ形成電極473、474、プラズマ形成室壁428、プラズマ形成室821、開口822、ノズル426およびガス供給孔427により構成される第1のプラズマ発生構造820と、主に、プラズマ形成電極483、484、プラズマ形成室壁438、プラズマ形成室831、開口832、ノズル436およびガス供給孔437により構成される第2のプラズマ発生構造830は、ウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線に対して線対称に設けられているので、両プラズマ発生構造からウエハ200の全面により均一にプラズマが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0169】
さらに、排気口230もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられているので、ウエハ200の全面により均一にプラズマが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。また、さらに、ノズル410のガス供給孔411もこのウエハ200の中心(反応管203の中心)を通る線上に設けられているので、ウエハ200の全面により均一に原料ガスが供給されやすくなり、ウエハ200上により均一な膜を形成することができる。
【0170】
本実施の形態の構造の基板処理装置においても、図5を参照して説明した、前処理として、プラズマで活性化していないNを供給し(ステップS211)、その後、残留ガスを除去し(ステップS213)、その後、シリコン窒化膜を形成する(ステップS231〜S237)処理方法や、図9を参照して説明した、前処理として、DCSの供給(ステップS221)、残留ガス除去(ステップ223)、プラズマで励起していないNH供給(ステップS225)および残留ガス除去(ステップ227)の各工程を少なくとも1サイクル行い、その後、シリコン窒化膜を形成する(ステップS231〜S237)処理方法や、図11を参照して説明した、前処理として、プラズマで活性化していないDCSを供給し(ステップS215)、その後、残留ガスを除去し(ステップS217)、その後、シリコン窒化膜を形成する(ステップS231〜S237)処理方法が適用でき、発生するパーティクル数を減少させ、密着性を改善することができる。
【0171】
(第7の実施の形態)
図18を参照すれば、第6の実施の形態では、電極473、電極474、電極カバー475、電極カバー476、プラズマ形成室821および開口822により構成されるプラズマ発生構造820と、電極483、電極484、電極カバー485、電極カバー486、プラズマ形成室831および開口832により構成されるプラズマ発生構造830とを備え、ガス供給系は、ガス供給管310を備えるガス供給系301、ガス供給管320を備えるガス供給系302およびガス供給管330を備えるガス供給系303を備えていたのに対して、本実施の形態では、プラズマ発生構造820を備えず、電極483、電極484、電極カバー485、電極カバー486、プラズマ形成室831および開口832により構成されるプラズマ発生構造830のみを備え、ガス供給系303を備えず、ガス供給管310を備えるガス供給系301、ガス供給管320を備えるガス供給系302のみを備えている点が第6の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0172】
本実施の形態の構造の基板処理装置においては、図9を参照して説明した、前処理として、DCSの供給(ステップS221)、残留ガス除去(ステップ223)、プラズマで励起していないNH供給(ステップS225)および残留ガス除去(ステップ227)の各工程を少なくとも1サイクル行い、その後、シリコン窒化膜を形成する(ステップS231〜S237)処理方法や、図11を参照して説明した、前処理として、プラズマで活性化していないDCSを供給し(ステップS215)、その後、残留ガスを除去し(ステップS217)、その後、シリコン窒化膜を形成する(ステップS231〜S237)処理方法が適用でき、発生するパーティクル数を減少させ、密着性を改善することができる。
【0173】
なお、上記各実施の形態では、ALD法を使用する場合を例に説明したが、CVD法を使用する場合でも、複数のプラズマ源を備えることによって、高周波電力を分散でき、プラズマ源が1つの場合に比べて、各プラズマ源に供給する高周波電力を小さくでき、プラズマを利用してウエハ200上の金属膜上に成膜する際パーティクルの発生を抑制でき、成膜した膜の密着性を改善できる。
【0174】
上記各実施の形態では、GST膜上にアモルファスシリコン窒化膜を形成したが、GST膜以外の金属膜であっても、上記各実施の形態は、適用可能である。好適に適用できる金属膜としては、Ti、TiN、TiSi、W、WN、WSi、Co、CoSi、Al、AlSi、Cu、およびそれらの合金等が挙げられる。
【0175】
上記各実施の形態では、CCP(Capacitively Coupled Plasma)方式の高周波電源を使用したが、ICP(Inductively Coupled Plasma)方式の高周波電源を使用しても、同様の効果が得られる。
【0176】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0177】
(付記1)
本発明の好ましい一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口を有する1つ以上のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記1つ以上のバッファ室に供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記バッファ室の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記電極に高周波電力が印加されない状態で、前記第1の処理ガスおよび、前記第2の処理ガスに曝して前記金属膜の上に第1の膜を形成した後、前記第1の膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に第2の膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0178】
(付記2)
本発明の好ましい他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口を有する1つ以上のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記1つ以上のバッファ室に供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記バッファ室の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスに曝した後、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0179】
(付記3)
付記1または2の基板処理装置であって、好ましくは、前記処理室を排気する排気系をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1の処理ガスと前記活性化された第2の処理ガスを互いに混合しないよう前記処理室へ交互に供給して前記金属膜の上に前記膜を形成するよう、前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段である。
【0180】
(付記4)
付記1〜3のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、前記金属膜はGST膜である。
【0181】
(付記5)
付記4の基板処理装置であって、好ましくは、前記第1の処理ガスはDCSであり、前記第2の処理ガスはNHである、
【0182】
(付記6)
付記1〜5のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、前記バッファ室を複数備える。
【0183】
(付記7)
付記5の基板処理装置であって、好ましくは、前記基板を加熱する加熱系をさらに備え、
表面に金属膜が形成された基板を、DCSの自己分解温度以下に加熱して、前記第1の処理ガスに曝した後、DCSの自己分解温度以下に加熱して、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に膜を形成するよう、前記制御手段により前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系および前記加熱系を制御する。
【0184】
(付記8)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室に搬入する工程と、
互いに独立した複数の処理ガス供給系から、第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化されない状態の第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記基板を前処理する前処理工程と、
前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化された状態の前記第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記前処理された基板上に所定の膜を形成する成膜工程と、
前記所定の膜が形成された基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0185】
(付記9)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室に搬入する工程と、
互いに独立した複数の処理ガス供給系から、第1の処理ガスを前記処理室に供給して、前記基板を前処理する前処理工程と、
前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化された状態の前記第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記前処理された基板上に所定の膜を形成する成膜工程と、
前記所定の膜が形成された基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0186】
(付記10)
付記8または9の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記成膜工程は、前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスと前記活性化された第2の処理ガスを互いに混合しないよう前記処理室へ交互に供給して前記前処理された基板上に所定の膜を形成する成膜工程である。
【0187】
(付記11)
付記8〜10のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記金属膜はGST膜である。
【0188】
(付記12)
付記11の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記第1の処理ガスはDCSであり、前記第2の処理ガスはNHである、
【0189】
(付記13)
付記12の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、DCSの自己分解温度以下に加熱して、前記前処理工程および前記成膜工程を行う。
【0190】
(付記14)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口をそれぞれ有する複数のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記複数のバッファ室にそれぞれ供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記複数のバッファ室の各々の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
前記基板を加熱する加熱系と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより前記複数のバッファ室の内部で活性化され、前記複数のバッファ室から前記処理室へ供給された前記第2の処理ガスに曝し、前記基板を前記第1の処理ガスの自己分解温度以下に加熱しつつ前記金属膜の上に膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系および前記加熱系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0191】
(付記15)
付記14の基板処理装置であって、好ましくは、
前記制御手段は、前記第1の処理ガスと前記活性化された第2の処理ガスを互いに混合しないよう前記処理室へ交互に供給して前記金属膜の上に前記膜を形成するよう、前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系および前記加熱系を制御する制御手段である。
【0192】
(付記16)
付記15の基板処理装置であって、好ましくは、前記処理室を排気する排気系をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1の処理ガスと前記活性化された第2の処理ガスを互いに混合しないよう前記処理室へ交互に供給して前記金属膜の上に前記膜を形成するよう、前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系、前記加熱系および前記排気系を制御する制御手段である。
【0193】
(付記17)
付記13〜15のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、前記金属膜はGST膜である。
【0194】
(付記18)
付記16の基板処理装置であって、好ましくは、前記第1の処理ガスはDCSであり、前記第2の処理ガスはNHである、
【0195】
(付記19)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室に搬入する工程と、
表面に金属膜が形成された基板を、第1の処理ガスおよび、複数のプラズマ発生構造で活性化され、前記複数のプラズマ発生構造から前記処理室へ供給された第2の処理ガスに曝し、前記基板を前記第1の処理ガスの自己分解温度以下に加熱しつつ前記金属膜の上に膜を形成する工程と、
前記膜が形成された基板を前記処理室から搬出する工程と、
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0196】
(付記20)
付記19の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記金属膜はGST膜である。
【0197】
(付記21)
付記20の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記第1の処理ガスはDCSであり、前記第2の処理ガスはNHである、
【0198】
(付記22)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、付記8〜13および19〜21のいずれの半導体装置の製造方法を用いて形成された半導体装置が提供される。
【0199】
(付記23)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
コンピュータを、互いに独立した複数の処理ガス供給系およびプラズマ励起手段を制御して、第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化されない状態の第2の処理ガスをそれぞれ処理室に供給して、基板を前処理し、その後、前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化された状態の前記第2の処理ガスをそれぞれ処理室に供給して、前記前処理された基板上に所定の膜を形成するように制御する、制御手段として機能させるプログラムが提供される。
【0200】
(付記24)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
コンピュータを、互いに独立した複数の処理ガス供給系およびプラズマ励起手段を制御して、第1の処理ガスを処理室に供給して、基板を前処理し、その後、前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化された状態の前記第2の処理ガスをそれぞれ処理室に供給して、前記前処理された基板上に所定の膜を形成するように制御する、制御手段として機能させるプログラムが提供される。
【0201】
(付記25)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
コンピュータを、互いに独立した複数の処理ガス供給系、基板を加熱する加熱系および複数のプラズマ発生構造を制御して、表面に金属膜が形成された基板を、第1の処理ガスおよび、複数のプラズマ発生構造で活性化され、前記複数のプラズマ発生構造から前記処理室へ供給された第2の処理ガスに曝し、前記基板を前記第1の処理ガスの自己分解温度以下に加熱しつつ前記金属膜の上に膜を形成するように制御する、制御手段として機能させるプログラムが提供される。
【0202】
(付記26)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、付記23〜25のいずれかのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0203】
(付記27)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、付記26の記録媒体を備える基板処理装置が提供される。
【0204】
(付記28)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
投入する高周波電力の単位面積当たりの投入電力密度を減少させることで、350℃以下の温度で、アモルファスシリコン窒化膜を金属膜上に密着性良く形成する基板処理装置が提供される。
【0205】
(付記29)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
高周波電力を印加するバッファ室を2つ以上配置した処理室にて、
投入する高周波電力を前記2つ以上のバッファ室へ分散供給することにより、
350℃以下の温度でアモルファスシリコン窒化膜を金属膜上に密着性良く形成する基板処理装置が提供される。
【0206】
(付記30)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
350℃以下の温度で、金属膜上へ、
DCS照射と高周波電力の印加のないNH照射とを少なくとも1回以上繰り返して実施し、
その後、DCS照射と高周波電力の印加のあるNH照射とを少なくとも1回以上繰り返して実施することで、アモルファスシリコン窒化膜を金属膜上に密着性良く形成する基板処理装置が提供される。
【0207】
(付記31)
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、
350℃以下の温度で、金属膜上へ、DCS照射を実施し、
その後、DCS照射と高周波電力の印加のあるNH照射とを繰り返して実施することで、アモルファスシリコン窒化膜を金属膜上に密着性良く形成する基板処理装置が提供される。
【0208】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0209】
101 基板処理装置
105 カセット棚
107 予備カセット棚
110 カセット
111 筐体
114 カセットステージ
115 ボートエレベータ
118 カセット搬送装置
118a カセットエレベータ
118b カセット搬送機構
123 移載棚
125 ウエハ移載機構
125a ウエハ移載装置
125b ウエハ移載装置エレベータ
125c ツイーザ
128 アーム
134a クリーンユニット
134b クリーンユニット
147 炉口シャッタ
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
210 底板
211 天板
212 支柱
217 ボート
218 ボート支持台
219 シールキャップ
220 Oリング
230 排気口
231 排気管
232 排気管
243 APCバルブ
245 圧力センサ
246 真空ポンプ
250 加熱用電源
263 温度センサ
265 回転軸
267 ボート回転機構
270 高周波電源
271 整合器
272 アース
280 コントローラ
281 CPU
282 ROM
283 RAM
284 HDD
285、293、296 I/F部
286 バス
287 ディスプレイドライバ
288 ディスプレイ
289 操作入力検出部
290 操作入力部
291 温度制御部
292 ヒータ制御部
294 圧力制御部
295 APCバルブ制御部
297 電磁バルブ
298 電磁バルブ群
299 バルブ制御部
301、302、303 ガス供給系
310、320、330、330’ ガス供給管
312、322、332、512、522、532 マスフローコントローラ
313、314、323、333、513、523、533、612、622、632 バルブ
315 ガス溜り
410、420、430、430’、426、436 ノズル
411、421、431、431’、427、437 ガス供給孔
423、433、433’ バッファ室
424、434、434’ バッファ室壁
425、435、435’ ガス供給孔
428、438 プラズマ形成壁
429、439、439’ プラズマ発生構造
428a、428b、438a、438b 側壁
451、452、461、462、461’、462’ 電極保護管
471、472、481、482、481’、482’ 棒状電極
473、474、483、484 電極
475、476、485、486 電極カバー
501、502、503 キャリアガス供給系(不活性ガス供給系)
510、520、530 キャリアガス供給管
610、620、630 ベントライン
820、830 プラズマ発生構造
821、831 プラズマ形成室
822、832 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口を有する1つ以上のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記1つ以上のバッファ室に供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記バッファ室の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記電極に高周波電力が印加されない状態で、前記第1の処理ガスおよび、前記第2の処理ガスに曝して前記金属膜の上に第1の膜を形成した後、前記第1の膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に第2の膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口を有する1つ以上のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記1つ以上のバッファ室に供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記バッファ室の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスに曝した後、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより活性化された前記第2の処理ガスに曝し、前記金属膜の上に膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源および前記第2の処理ガス供給系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置。
【請求項3】
表面に金属膜が形成された基板を処理室に搬入する工程と、
互いに独立した複数の処理ガス供給系から、第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化されない状態の第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記基板を前処理する前処理工程と、
前記複数の処理ガス供給系から前記第1の処理ガスおよびプラズマ励起により活性化された状態の前記第2の処理ガスをそれぞれ前記処理室に供給して、前記前処理された基板上に所定の膜を形成する成膜工程と、
前記所定の膜が形成された基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板を処理する処理室と、
前記処理室と区画され、前記処理室へ開口するガス供給口をそれぞれ有する複数のバッファ室と、
第1の処理ガスを前記処理室に供給する第1の処理ガス供給系と、
第2の処理ガスを前記複数のバッファ室にそれぞれ供給可能な第2の処理ガス供給系と、
高周波電力を出力する電源と、
前記電源により高周波電力が印加されることによって、前記複数のバッファ室の各々の内部で前記第2の処理ガスを活性化させるプラズマ発生用の電極と、
前記基板を加熱する加熱系と、
表面に金属膜が形成された基板を、前記第1の処理ガスおよび、前記電極に高周波電力が印加されることにより前記複数のバッファ室の内部で活性化され、前記複数のバッファ室から前記処理室へ供給された前記第2の処理ガスに曝し、前記基板を前記第1の処理ガスの自己分解温度以下に加熱しつつ前記金属膜の上に膜を形成するよう前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系および前記加熱系を制御する制御手段と、
を備える基板処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の処理ガスと前記活性化された第2の処理ガスを互いに混合しないよう前記処理室へ交互に供給して前記金属膜の上に前記膜を形成するよう、前記第1の処理ガス供給系、前記電源、前記第2の処理ガス供給系および前記加熱系を制御する制御手段である請求項4記載の基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−114340(P2012−114340A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263626(P2010−263626)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】