説明

基板処理装置

【課題】収容部材内の薬液ミストを含む雰囲気が処理室内に拡散することを防止できる、基板処理装置を提供すること。
【解決手段】処理チャンバ2内において、ウエハWを保持するウエハ回転機構3は、カップ8内に収容された状態で設けられている。カップ8の上端部には、カーテン形成ノズル30が設けられている。また、処理チャンバ2内には、ウエハWの表面にSPMを供給するための移動ノズル14が設けられている。少なくともウエハWの表面へのSPMの供給中は、カップ8の上方に水カーテンWCが形成され、水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とが遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対する薬液を用いた処理のための基板処理装置に関する。基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板に対して、たとえば、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)を用いて基板の表面からレジスト膜を剥離(除去)するためのレジスト剥離処理、フッ化水素酸を用いて基板から金属汚染物を除去するための洗浄処理など、各種の薬液を用いた処理が行われる。
【0003】
この薬液処理のために、基板に対して1枚ずつ処理を行う枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。枚葉式の基板処理装置は、隔壁により区画された処理チャンバ内に、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャック、スピンチャックを収容する有底筒状のカップ、基板に薬液を供給するための薬液ノズルおよび基板に純水を供給するための純水ノズルなどを備えている。
【0004】
薬液処理時には、スピンチャックにより基板が回転されつつ、薬液ノズルから基板の表面に薬液が供給される。基板の表面上の薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の表面の全域に広がる。薬液の供給停止後は、純水ノズルから基板の表面に純水が供給されて、基板に付着している薬液が純水で洗い流される。そして、純水の供給停止後、基板の高速回転により、基板に付着している純水が振り切られて除去される。これにより、基板が乾燥し、一連の薬液処理が終了する。
【特許文献1】特開2005−93926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピンチャックがカップに収容されているので、薬液供給時に基板から流下および飛散する薬液は、カップに受け止められ、カップ外に飛散することが防止される。しかし、薬液供給時にカップ内に生じる薬液ミストを含む雰囲気は、カップの上面の開口を通して、カップ外(処理チャンバ内)に流出する。そのため、基板を乾燥させる工程で、カップ外に拡散した薬液ミストが基板の表面に付着することにより、基板の表面の汚染を生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、収容部材内の薬液ミストを含む雰囲気が処理室内に拡散することを防止できる、基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理室(2)と、前記処理室内に設けられ、基板(W)を保持する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板の主面に薬液を供給する薬液供給手段(14,43,55)と、前記基板保持手段を収容し、前記基板保持手段に保持された基板の主面と対向する位置に基板を通過可能なサイズの開口(33)を有するカップ状の収容部材(8)と、水によるカーテン(WC)を形成し、前記収容部材の内側の空間を含む前記カーテンの内側の空間と前記カーテンの外側の空間とを遮断する遮断手段(30;48;19,52;19,56)とを含む、基板処理装置(1,41,51)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
処理室内において、基板保持手段は、カップ状の収容部材内に収容された状態で設けられている。そのため、基板保持手段に保持された基板の主面(表面または裏面)に対して、薬液供給手段により薬液が供給されるときに、基板の主面で跳ね返った薬液や基板から飛散および/または流下する薬液を収容部材で受け止めることができ、薬液の飛沫が収容部材外に飛散することを防止できる。
【0009】
収容部材には、基板保持手段に保持された基板の主面と対向する位置に、基板を通過可能なサイズの開口が形成されている。したがって、その開口を介して、収容部材内に対して基板を搬入および搬出することができる。その一方で、開口が形成されていることにより、収容部材の内側の空間と外側の空間とが開口を介して連通するので、それらの空間で相互に雰囲気の流通が可能である。
【0010】
遮断手段によって、水によるカーテンが形成されると、収容部材の内側の空間を含むカーテンの内側の空間とカーテンの外側の空間とが遮断される。これにより、収容部材内の雰囲気をカーテンの内側に閉じ込めることができ、その雰囲気が処理室内(カーテンの外側の空間)に拡散することを防止できる。そのため、基板の主面への薬液の供給と並行して、カーテンが形成されることにより、このとき収容部材内に生じる薬液ミストを含む雰囲気が処理室内に拡散することを防止できる。
【0011】
請求項2に記載のように、前記遮断手段は、前記収容部材の外側の空間に前記カーテンを形成することが好ましい。
この場合、カーテンを形成する水が収容部材内に入らないので、基板の主面への薬液の供給と並行してカーテンが形成されたときに、薬液が供給されている基板の主面にカーテンを形成する水がかかることを防止できる。その結果、基板の主面に供給される薬液が水で希釈されることを防止でき、薬液の希釈に起因する処理不良の発生を防止することができる。
【0012】
また、請求項3に記載のように、前記遮断手段は、前記開口の一方側から前記開口に対する他方側に向けて水を吐出し、前記開口を跨ぐように前記カーテンを形成するカーテン形成ノズル(30,48)を備えていてもよい。
前記カーテン形成ノズルが採用される場合、請求項4に記載のように、前記基板処理装置は、前記基板保持手段に保持された基板と前記カーテンとをそれらの対向方向に相対的に移動させる移動手段(13)をさらに含むことが好ましい。
【0013】
たとえば、基板の主面への薬液の供給の終了後に、基板と水によるカーテンとが互いに近接する方向に移動されることにより、基板の主面上の雰囲気をカーテンに向けて追いやることができる。基板の主面上の雰囲気には、薬液ミストが相対的に多く含まれる。基板の主面上の雰囲気がカーテンに接触すると、その雰囲気中の薬液ミストは、カーテンを形成する水に吸収される。そのため、基板の主面上の雰囲気中の多量の薬液ミストを排除することができ、薬液ミストを含む雰囲気が処理室内に拡散することを一層防止することができる。
【0014】
また、前記カーテン形成ノズルが採用される場合、請求項5に記載のように、前記薬液供給手段は、前記収容部材の外側の空間を移動可能に設けられ、前記基板保持手段に保持された基板の主面に向けて薬液を吐出する移動ノズル(14)を備えていてもよい。なお、移動ノズルまたは移動ノズルから吐出される薬液と水によるカーテンとの干渉を防止するため、そのカーテンは、移動ノズルおよび移動ノズルから吐出される薬液を避けて形成される。
【0015】
請求項6に記載のように、前記遮断手段は、前記開口に対向して配置され、前記開口との対向方向に延びる直線まわりに回転される板状の対向部材(19)と、前記対向部材の一方面に水を供給し、前記対向部材の周囲に、前記対向部材の周縁から飛散する水による前記カーテンを形成するための水ノズル(52,56)とを備えていてもよい。
この場合、前記基板処理装置は、請求項7に記載のように、前記対向部材における前記開口との対向面に薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給手段(56)をさらに含むことが好ましい。
【0016】
基板の主面への薬液の供給時には、対向部材における収容部材の開口との対向面に、薬液および/または薬液ミストが付着する。基板の主面への薬液の供給の終了後に、対向部材における開口との対向面にリンス液が供給されることにより、その対向面から薬液および/または薬液ミストをリンス液で洗い流すことができる。
請求項8に記載のように、前記薬液供給手段は、前記収容部材内に設けられ、前記基板保持手段に保持された基板の主面に向けて薬液を吐出する固定ノズル(43,55)を備えていてもよい。
【0017】
そして、請求項9に記載のように、前記固定ノズル(55)は、前記基板保持手段に保持された基板に対して前記開口が設けられている側と反対側において、当該基板の中央部に対向して配置されてもよい。
固定ノズルが採用された構成では、基板の主面に対して収容部材外から薬液を供給する必要がないので、カーテン形成ノズルがさらに採用される場合、水によるカーテンは、収容部材の開口の全域を塞ぐように形成されてもよい。これにより、収容部材内の雰囲気が開口を介して流出することをより良好に防止することができる。
【0018】
請求項10に記載のように、前記基板処理装置は、前記基板保持手段に保持された基板の主面に対して間隔を空けて対向配置され、当該基板との間の空間をその周囲から遮断するための遮断板(19)をさらに含み、前記薬液供給手段は、前記遮断板に設けられていてもよい。なお、前記遮断板は、前記対向部材と同一の部材であってもよい。
水ノズルにより遮断板の一方面に水が供給されて、遮断板の周囲に水によるカーテンが形成されつつ、遮断板に設けられた薬液供給手段から薬液が吐出されることにより、薬液と水によるカーテンとの干渉を生じることなく、基板の主面に薬液を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ]という。)Wの表面からレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理に用いられる。基板処理装置1では、ウエハWに対して1枚ずつレジスト剥離処理が行われる。すなわち、基板処理装置1は、レジスト剥離処理のための枚葉式の装置である。
【0020】
基板処理装置1は、処理チャンバ2を備えている。処理チャンバ2の天井壁には、処理チャンバ2内に清浄空気(基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の空気を浄化して生成される空気)を送り込むためのファンフィルタユニット(図示せず)が設けられている。一方、処理チャンバ2の底面には、排気口(図示せず)が形成されている。ファンフィルタユニットからの清浄空気の供給および排気口からの排気により、基板処理装置1の稼働中は、常時、処理チャンバ2内に清浄空気のダウンフローが形成される。
【0021】
処理チャンバ2内には、ウエハWを保持して回転させるウエハ回転機構3が設けられている。ウエハ回転機構3としては、たとえば、挟持式のものが採用されている。具体的には、ウエハ回転機構3は、モータ4と、このモータ4の駆動軸と一体化されたスピン軸5と、スピン軸5の上端にほぼ水平に取り付けられた円板状のスピンベース6と、スピンベース6の周縁部の複数箇所にほぼ等角度間隔で設けられた複数個の挟持部材7とを備えている。そして、複数個の挟持部材7により、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持することができる。この状態で、モータ4が駆動されると、その駆動力によってスピンベース6が鉛直軸線まわりに回転され、そのスピンベース6とともに、ウエハWがほぼ水平な姿勢を保った状態で鉛直軸線まわりに回転される。
【0022】
ウエハ回転機構3は、カップ8内に収容されている。カップ8は、カップ下部9と、カップ下部9の上方に昇降可能に設けられたカップ上部10とを備えている。
カップ下部9は、中心軸線がウエハWの回転軸線と一致する有底円筒状をなしている。カップ下部9の底面には、排気口(図示せず)が形成されており、基板処理装置1の稼働中は、常時、カップ8内の雰囲気が排気口から排気されている。
【0023】
カップ上部10は、カップ下部9と中心軸線を共通とする円筒状の円筒部11と、この円筒部11の上端から円筒部11の中心軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部12とを一体的に備えている。カップ上部10には、カップ上部10を昇降(上下動)させるためのカップ昇降機構13が結合されている。カップ昇降機構13により、カップ上部10は、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される位置と、傾斜部12の上端がスピンベース6の下方に配置される位置とに移動される。
【0024】
また、処理チャンバ2内には、ウエハWの表面(上面)にSPMを供給するための移動ノズル14が設けられている。移動ノズル14は、カップ8の上方でほぼ水平に延びるアーム15の先端部に取り付けられている。アーム15には、アーム15を所定角度範囲内で揺動させるためのアーム揺動機構16が結合されている。アーム15の揺動により、移動ノズル14は、ウエハWの回転軸線上の位置(ウエハWの回転中心に対向する位置)と、カップ8の側方に設定された位置(ホームポジション)とに移動される。
【0025】
移動ノズル14には、薬液供給管17が接続されている。薬液供給管17には、薬液バルブ18が介装されている。薬液バルブ18が開かれると、薬液供給管17から移動ノズル14にSPMが供給される。そして、移動ノズル14に供給されるSPMは、移動ノズル14から下方に吐出される。
さらに、処理チャンバ2内には、ウエハWの表面付近の雰囲気をその周囲から遮断するための遮断板19が設けられている。遮断板19は、ウエハWとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状をなしている。そして、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に、ほぼ水平な姿勢で、その中心がウエハWの回転軸線上に位置するように配置されている。
【0026】
遮断板19の上面には、遮断板19の中心を通る鉛直軸線(ウエハWの回転軸線と一致する鉛直軸線)を中心軸線とする回転軸20が固定されている。回転軸20は、中空に形成されている。回転軸20の内部には、液供給管21が挿通されている。液供給管21の下端は、遮断板19の下面に達し、下方に開放されている。液供給管21には、リンス液供給管22が接続されている。リンス液供給管22には、リンス液バルブ23が介装されている。リンス液バルブ23が開かれると、リンス液供給管22から液供給管21にリンス液の一例としての純水が供給される。液供給管21に供給される純水は、液供給管21の下端から下方に吐出される。
【0027】
回転軸20の内壁面と液供給管21との間は、気体流通路24を形成している。気体流通路24の下端は、遮断板19の下面において、液供給管21の周囲で環状に開口している。気体流通路24には、窒素ガス供給管25が接続されている。窒素ガス供給管25には、窒素ガスバルブ26が介装されている。窒素ガスバルブ26が開かれると、窒素ガス供給管25から気体流通路24に窒素ガスが供給される。気体流通路24に供給される窒素ガスは、気体流通路24の下端の環状開口から下方に吐出される。
【0028】
回転軸20は、カップ8の上方でほぼ水平に延びるアーム27に取り付けられ、そのアーム27から垂下した状態に設けられている。アーム27には、アーム27を昇降させるためのアーム昇降機構28が結合されている。アーム27の昇降により、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置と、ウエハ回転機構3に保持されたウエハWの表面に微小な間隔を隔てて近接する位置との間で昇降される。また、遮断板19には、アーム27を介して、遮断板19を回転させるための遮断板回転機構29が結合されている。
【0029】
そして、基板処理装置1では、カップ8の上端部に、純水によるカーテン(以下「水カーテン」という。)WCを形成するためのカーテン形成ノズル30が設けられている。カーテン形成ノズル30には、水供給管31が接続されている。水供給管31には、水バルブ32が介装されている。水バルブ32が開かれると、水供給管31からカーテン形成ノズル30に純水が供給され、その純水がカーテン形成ノズル30から吐出されて、カップ8の上方に水カーテンWCが形成される。水カーテンWCが形成されると、その水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とが遮断される。
【0030】
図2は、図1に示すカップおよびカーテン形成ノズルの図解的な平面図である。
具体的には、カーテン形成ノズル30は、カップ上部10の傾斜部12上に2つ設けられている。2つのカーテン形成ノズル30は、カップ上部10の上面の開口(傾斜部12の上端縁に囲まれる円形状の開口)33に対する一方側、つまり平面視で開口33の周縁に接する1本の接線に対して開口33と反対側において、その接線と直交する開口33の直径に関して互いに線対称をなすように並べて配置されている。
【0031】
なお、開口33は、カップ上部10の昇降を実現するため、スピンベース6が通過可能なサイズを有しており、当然、ウエハWが通過可能なサイズを有している。
各カーテン形成ノズル30は、それらの並び方向に延びる長手状に形成されており、開口33側の側面に、多数の吐出口(図示せず)を有している。各カーテン形成ノズル30に純水が供給されると、各吐出口から開口33の向こう側に向けて水が勢いよく吐出される。各吐出口から吐出される純水は、開口33を越えて、開口33の向こう側の傾斜部12上またはカップ8外に到達する。また、各吐出口から吐出される純水は、全体として、帯状の水膜を形成する。これにより、開口33の上方に、2つの水膜からなる水カーテンWCが、カーテン形成ノズル30の並び方向に微小な間隔を空けて、それぞれ開口33を跨ぐように形成される。
【0032】
なお、カーテン形成ノズル30に、多数の吐出口に代えて、カーテン形成ノズル30の長手方向に延びるスリット状の吐出口(図示せず)が形成され、このスリット状の吐出口から純水が勢いよく吐出されることにより、帯状の水膜からなる水カーテンWCが形成されてもよい。
図1を再び参照して、基板処理装置1におけるレジスト剥離処理について説明する。
【0033】
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示せず)によって、処理チャンバ2内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でウエハ回転機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置に退避されている。また、移動ノズル14は、カップ8の側方のホームポジションに配置されている。さらに、カップ上部10は、最下方の位置まで下がり、傾斜部12の上端は、スピンベース6の下方に配置されている。
【0034】
ウエハWがウエハ回転機構3に保持されると、カップ上部10が上昇され、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される。その後、各カーテン形成ノズル30から純水が吐出され、カップ8の上方に2つの水カーテンWCが形成される。その一方で、ウエハ回転機構3によるウエハWの回転が開始され、ウエハWが所定の回転速度で回転される。また、アーム15が旋回されて、移動ノズル14がホームポジションからウエハWの回転軸線上に移動される。
【0035】
移動ノズル14の移動が完了すると、移動ノズル14からSPMが吐出される。移動ノズル14から吐出されるSPMは、2つの水カーテンWCの間を水カーテンWCと干渉することなく通り、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。言い換えれば、2つの水カーテンWCは、移動ノズル14から吐出されるSPMとの干渉を防止するため、カーテン形成ノズル30の並び方向に微小な間隔を空けて、そのSPMを避けて形成される。
【0036】
ウエハWの表面に供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にSPMが行き渡り、SPMに含まれるカロ酸(ペルオキソ一硫酸)の強酸化力によって、ウエハWの表面に形成されているレジストが剥離される。ウエハWの表面から剥離したレジストは、SPMにより押し流され、ウエハWの表面上から除去される。
【0037】
移動ノズル14からのSPMの吐出開始から所定時間が経過すると、そのSPMの吐出が停止される。そして、アーム15の旋回により、移動ノズル14がウエハWの回転軸線上からホームポジションに戻される。次いで、遮断板19が少し下降された後、遮断板19に設けられた液供給管21の下端から純水が吐出される。液供給管21から吐出される純水は、2つの水カーテンWCの間を通り、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPMが純水により洗い流される。
【0038】
また、ウエハWの表面への純水の供給が開始されると、カップ上部10がゆっくりと最下方の位置まで下降される。このとき、各カーテン形成ノズル30からの純水の吐出が続けられ、2つの水カーテンWCが維持されている。したがって、カップ上部10の下降により、ウエハWと水カーテンWCとが相対的に近接し、ウエハWの表面と水カーテンWCとの間の空間が小さくなっていく。そして、カップ上部10の下降の途中で、水カーテンWCをウエハWが通過し、最終的には、各カーテン形成ノズル30から吐出される純水がウエハWの裏面(下面)に供給される状態となる。これにより、ウエハWの裏面に付着しているSPMも純水により洗い流される。
【0039】
液供給管21からの純水の吐出が所定時間にわたって続けられると、その純水の吐出が停止されるとともに、各カーテン形成ノズル30からの純水の吐出が停止される。その後、遮断板19がウエハWの表面に微小な間隔を空けて対向する位置まで下降される。そして、ウエハWの回転速度が所定の高回転速度に上げられる。一方、遮断板19がウエハWと同じ方向にほぼ同じ速度で高速回転される。また、遮断板19に形成された気体流通路24の下端から窒素ガスが吐出される。その結果、ウエハWと遮断板19との間の空間に窒素ガスの安定した気流が生じ、ウエハWの表面付近の雰囲気がその周囲から遮断される。これにより、ウエハWの表面に乾燥跡を生じることなく、ウエハWに付着している純水が振り切られて除去される。
【0040】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられ、ウエハWが乾燥すると、気体流通路24からの窒素ガスの吐出が停止され、遮断板19がウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置まで上昇される。そして、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するレジスト剥離処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理チャンバ2から搬出される。
【0041】
以上のように、処理チャンバ2内において、ウエハ回転機構3は、カップ8内に収容された状態で設けられている。そのため、ウエハ回転機構3に保持されたウエハWの表面にSPMが供給されるときに、ウエハWの表面で跳ね返ったSPMやウエハWから飛散および/または流下するSPMをカップ8で受け止めることができ、SPMの飛沫がカップ8外に飛散することを防止できる。
【0042】
ウエハWの表面へのSPMの供給中は、カップ8内に、ウエハWの表面でのSPMの跳ね返りなどによるSPMミストが生じる。一方、カップ8に開口33が形成されていることにより、カップ8の内側の空間と外側の空間とにおいて、開口33を介して、相互に雰囲気の流通が可能である。そこで、少なくともウエハWの表面へのSPMの供給中は、カップ8の上方に水カーテンWCが形成され、水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とが遮断される。これにより、カップ8内のSPMミストを含む雰囲気を水カーテンWCの内側に閉じ込めることができ、その雰囲気が処理チャンバ2内(水カーテンWCの外側の空間)に拡散することを防止できる。
【0043】
しかも、水カーテンWCは、カップ8の上方に形成され、水カーテンWCを形成する純水は、カップ8内に入らない。そのため、ウエハWの表面へのSPMの供給と並行して水カーテンWCが形成されても、SPMが供給されているウエハWの表面に純水がかかるおそれがない。その結果、ウエハWの表面に供給されるSPMが水で希釈されることを防止でき、SPMの希釈に起因する処理不良の発生を防止することができる。
【0044】
また、ウエハWの表面へのSPMの供給の終了後には、ウエハWと水カーテンWCとが互いに近接する方向に移動される。これにより、ウエハWの表面上の雰囲気は、水カーテンWCに向けて追いやられる。ウエハWの表面上の雰囲気には、SPMミストが相対的に多く含まれる。ウエハWの表面上の雰囲気が水カーテンWCに接触すると、その雰囲気中のSPMミストは、水カーテンWCを形成する純水に吸収される。その結果、ウエハWの表面上の雰囲気中の多量のSPMミストを排除することができ、SPMの供給の終了後にSPMミストを含む雰囲気が処理チャンバ2内に拡散することを防止することができる。
【0045】
図3は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。図3において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。また、以下では、図3に示す構造に関して、図1に示す構造との相違点を中心に説明し、図1に示す各部に相当する部分についての説明を省略する。
図3に示す基板処理装置41では、スピン軸5は、中空軸の構成を有している。そして、スピン軸5の中空部分には、液供給管42が相対回転可能に挿通されている。液供給管42の上端は、スピンベース6の上面に配置された固定ノズル43に接続されている。液供給管42には、薬液供給管44およびリンス液供給管45が接続されている。薬液供給管44には、薬液バルブ46が介装されている。リンス液供給管45には、リンス液バルブ47が介装されている。薬液バルブ46が開かれると、薬液供給管44から液供給管42にSPMが供給される。一方、リンス液バルブ47が開かれると、リンス液供給管45から液供給管42に純水が供給される。液供給管42に選択的に供給されるSPMおよび純水は、固定ノズル43から上方に吐出される。
【0046】
また、図1に示す基板処理装置1では、2つのカーテン形成ノズル30がカップ上部10の傾斜部12上に配置されているのに対し、図3に示す基板処理装置41では、1つのカーテン形成ノズル48がカップ上部10の傾斜部12上に配置されている。
そして、図1に示す基板処理装置1では、移動ノズル14および遮断板19が備えられているのに対し、図3に示す基板処理装置41では、それらが不要であるため、移動ノズル14および遮断板19ならびにこれらに関連する機構が省略されている。
【0047】
図4は、図3に示すカップおよびカーテン形成ノズルの図解的な平面図である。
カーテン形成ノズル48は、平面視で開口33の周縁に接する1本の接線に対して開口33と反対側に配置され、その接線と平行な方向に延びる長手状に形成されている。カーテン形成ノズル48の開口33側の側面には、多数の吐出口(図示せず)が形成されている。カーテン形成ノズル48に純水が供給されると、各吐出口から開口33の向こう側に向けて水が勢いよく吐出される。各吐出口から吐出される純水は、開口33を越えて、開口33の向こう側の傾斜部12上またはカップ8外に到達する。また、各吐出口から吐出される純水は、全体として、帯状の水膜を形成する。これにより、その水膜からなる水カーテンWCが、開口33を跨いで、その開口33の全域を上方から塞ぐように形成される。
【0048】
なお、カーテン形成ノズル48に、多数の吐出口に代えて、カーテン形成ノズル30の長手方向に延びるスリット状の吐出口(図示せず)が形成され、このスリット状の吐出口から純水が勢いよく吐出されることにより、帯状の水膜からなる水カーテンWCが形成されてもよい。
図3を再び参照して、基板処理装置41におけるレジスト剥離処理について説明する。
【0049】
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示せず)によって、処理チャンバ2内に搬入され、その表面(デバイス形成面)を下方に向けたフェースダウン状態でウエハ回転機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、カップ上部10は、最下方の位置まで下がり、傾斜部12の上端は、スピンベース6の下方に配置されている。
【0050】
ウエハWがウエハ回転機構3に保持されると、カップ上部10が上昇され、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される。その後、各カーテン形成ノズル48から純水が吐出され、カップ8の上方に水カーテンWCが形成される。その一方で、ウエハ回転機構3によるウエハWの回転が開始され、ウエハWが所定の回転速度で回転される。
その後、固定ノズル43からSPMが吐出される。固定ノズル43から吐出されるSPMは、回転中のウエハWの表面(下面)の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にSPMが行き渡り、SPMに含まれるカロ酸(ペルオキソ一硫酸)の強酸化力によって、ウエハWの表面に形成されているレジストが剥離される。ウエハWの表面から剥離したレジストは、SPMとともにウエハWの表面から除去される。
【0051】
固定ノズル43からのSPMの吐出開始から所定時間が経過すると、そのSPMの吐出が停止される。次いで、固定ノズル43から純水が吐出される。固定ノズル43から吐出される純水は、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力を受け、ウエハWの表面に沿って、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPMが純水により洗い流される。
【0052】
また、ウエハWの表面への純水の供給が開始されると、カップ上部10がゆっくりと最下方の位置まで下降される。このとき、各カーテン形成ノズル48からの純水の吐出が続けられ、水カーテンWCが維持されている。したがって、カップ上部10の下降により、ウエハWと水カーテンWCとが相対的に近接し、ウエハWの裏面と水カーテンWCとの間の空間が小さくなっていく。そして、カップ上部10の下降の途中で、水カーテンWCをウエハWが通過し、最終的には、各カーテン形成ノズル30から吐出される純水がウエハWの表面(下面)に供給される状態となる。これにより、ウエハWの表面のみならず裏面に付着しているSPMも純水により洗い流される。
【0053】
固定ノズル43からの純水の吐出が所定時間にわたって続けられると、その純水の吐出が停止されるとともに、カーテン形成ノズル48からの純水の吐出が停止される。そして、ウエハWの回転速度が所定の高回転速度に上げられる。このウエハWの高速回転により、ウエハWに付着している純水が振り切られて除去される。
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられ、ウエハWが乾燥すると、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するレジスト剥離処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理チャンバ2から搬出される。
【0054】
図3に示す基板処理装置41においても、ウエハ回転機構3に保持されたウエハWの表面にSPMが供給されるときに、ウエハWの表面で跳ね返ったSPMやウエハWから飛散および/または流下するSPMをカップ8で受け止めることができ、SPMの飛沫がカップ8外に飛散することを防止できる。
また、少なくともウエハWの表面へのSPMの供給中は、カップ8の上方に、水カーテンWCがカップ8の開口33の全域を覆うように形成され、その水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とがより良好な状態で遮断される。これにより、カップ8内のSPMミストを含む雰囲気を水カーテンWCの内側に閉じ込めることができ、その雰囲気が処理チャンバ2内(水カーテンWCの外側の空間)に拡散することをより良好に防止できる。
【0055】
しかも、水カーテンWCは、カップ8の上方に形成され、水カーテンWCを形成する純水は、カップ8内に入らない。また、ウエハWは、その表面を開口33と反対側である下方に向けたフェースダウン状態でウエハ回転機構3に保持される。したがって、たとえ水カーテンWCを形成する純水がカップ8内に入っても、SPMが供給されているウエハWの表面に純水がかかることがない。その結果、ウエハWの表面に供給されるSPMが水で希釈されることを確実に防止でき、SPMの希釈に起因する処理不良の発生を防止することができる。
【0056】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。図5において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。また、以下では、図5に示す構造に関して、図1に示す構造との相違点を中心に説明し、図1に示す各部に相当する部分についての説明を省略する。
図5に示す基板処理装置51では、遮断板19のアーム27に、遮断板19の上面に純水を供給するための水ノズル52が取り付けられている。水ノズル52は、先端が遮断板19の上面と回転軸20の外周面との境界部付近に位置するように斜め下方に延びている。そして、水ノズル52には、水供給管53が接続されている。水供給管53には、水バルブ54が介装されている。これにより、水バルブ54が開かれると、水供給管53から水ノズル52に純水が供給され、水ノズル52から遮断板19の上面と回転軸20の外周面との境界部付近に向けて純水が吐出される。
【0057】
また、カップ8内に、ウエハWの表面(上面)にSPMを供給するための固定ノズル55と、遮断板19の下面に洗浄用の純水を供給するための洗浄用純水ノズル56とが設けられている。
固定ノズル55は、たとえば、カップ上部10の傾斜部12の内面に、その先端をウエハ回転機構3のスピンベース6に向けた状態で取り付けられている。固定ノズル55には、薬液供給管57が接続されている。薬液供給管57には、薬液バルブ58が介装されている。薬液バルブ58が開かれると、薬液供給管57から固定ノズル55にSPMが供給され、固定ノズル55からSPMが吐出される。
【0058】
洗浄用純水ノズル56は、たとえば、カップ上部10の円筒部11の内面に、その先端をカップ8の開口33に向けた状態で取り付けられている。洗浄用純水ノズル56には、純水供給管59が接続されている。純水供給管59には、洗浄用純水バルブ60が介装されている。洗浄用純水バルブ60が開かれると、純水供給管59から洗浄用純水ノズル56に純水が供給され、洗浄用純水ノズル56から開口33に向けて純水が吐出される。
【0059】
そして、図1に示す基板処理装置1では、移動ノズル14が備えられているのに対し、図5に示す基板処理装置51では、それが不要であるため、移動ノズル14およびこれに関連する機構が省略されている。
基板処理装置51におけるレジスト剥離処理について説明する。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示せず)によって、処理チャンバ2内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でウエハ回転機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置に退避されている。また、カップ上部10は、最下方の位置まで下がり、傾斜部12の上端は、スピンベース6の下方に配置されている。
【0060】
ウエハWがウエハ回転機構3に保持されると、カップ上部10が上昇され、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される。また、遮断板19がカップ8の開口33の少し上方の位置に配置され、その位置で遮断板19が所定の回転速度で回転される。そして、水ノズル52から回転中の遮断板19の上面に純水が供給される。純水は、遮断板19の回転による遠心力を受けて、遮断板19の上面上を周縁に向けて流れ、遮断板19の周縁から側方へ連続流の状態で飛散する。これにより、遮断板19の周囲には、遮断板19の周縁と開口33の周縁(傾斜部12の上端縁)との間を塞ぐように、略円環状の水膜からなる水カーテンWCが形成される。その結果、遮断板19および水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とが遮断される。
【0061】
その一方で、ウエハ回転機構3によるウエハWの回転が開始され、ウエハWが所定の回転速度で回転される。
その後、固定ノズル55からSPMが吐出される。固定ノズル55から吐出されるSPMは、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にSPMが行き渡り、SPMに含まれるカロ酸(ペルオキソ一硫酸)の強酸化力によって、ウエハWの表面に形成されているレジストが剥離される。ウエハWの表面から剥離したレジストは、SPMにより押し流され、ウエハWの表面上から除去される。
【0062】
固定ノズル55からのSPMの吐出開始から所定時間が経過すると、そのSPMの吐出が停止される。次いで、遮断板19に設けられた液供給管21の下端から純水が吐出される。液供給管21から吐出される純水は、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPMが純水により洗い流される。
【0063】
また、洗浄用純水ノズル56から純水が吐出され、その純水が回転中の遮断板19の下面に供給される。ウエハWの表面へのSPMの供給時に、遮断板19の下面には、ウエハWの表面で跳ね返ったSPMの飛沫などが付着する。遮断板19の下面に純水が供給されることにより、その付着したSPMを純水で洗い流すことができ、遮断板19に付着したSPMがウエハWの表面上に落下することによる汚染を防止できる。
【0064】
液供給管21からの純水の吐出が所定時間にわたって続けられると、その純水の吐出が停止されるとともに、水ノズル52および洗浄用純水ノズル56からの純水の吐出が停止される。その後、遮断板19がウエハWの表面に微小な間隔を空けて対向する位置まで下降される。そして、ウエハWの回転速度が所定の高回転速度に上げられる。一方、遮断板19がウエハWと同じ方向にほぼ同じ速度で高速回転される。また、遮断板19に形成された気体流通路24の下端から窒素ガスが吐出される。その結果、ウエハWと遮断板19との間の空間に窒素ガスの安定した気流が生じ、ウエハWの表面付近の雰囲気がその周囲から遮断される。これにより、ウエハWの表面に乾燥跡を生じることなく、ウエハWに付着している純水が振り切られて除去される。
【0065】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられ、ウエハWが乾燥すると、気体流通路24からの窒素ガスの吐出が停止され、遮断板19がウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置まで上昇される。そして、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するレジスト剥離処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理チャンバ2から搬出される。
【0066】
図5に示す基板処理装置51においても、ウエハ回転機構3に保持されたウエハWの表面にSPMが供給されるときに、ウエハWの表面で跳ね返ったSPMやウエハWから飛散および/または流下するSPMをカップ8で受け止めることができ、SPMの飛沫がカップ8外に飛散することを防止できる。
また、少なくともウエハWの表面へのSPMの供給中は、遮断板19の周縁と開口33の周縁(傾斜部12の上端縁)との間を塞ぐように水カーテンWCが形成される。これにより、遮断板19および水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とがより良好な状態で遮断される。その結果、カップ8内のSPMミストを含む雰囲気を水カーテンWCの内側に閉じ込めることができ、その雰囲気が処理チャンバ2内(水カーテンWCの外側の空間)に拡散することをより良好に防止できる。
【0067】
しかも、水カーテンWCは、カップ8の上方に形成され、水カーテンWCを形成する純水は、カップ8内に入らない。そのため、ウエハWの表面へのSPMの供給と並行して水カーテンWCが形成されても、SPMが供給されているウエハWの表面に純水がかかるおそれがない。その結果、ウエハWの表面に供給されるSPMが水で希釈されることを防止でき、SPMの希釈に起因する処理不良の発生を防止することができる。
【0068】
以上、本発明の3つの実施形態を説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することも可能である。
図1に示す基板処理装置1では、2つのカーテン形成ノズル30が備えられているとしたが、さらに多くのカーテン形成ノズル30が備えられてもよい。たとえば、図6に示すように、カップ上部10の傾斜部12上に、4つのカーテン形成ノズル30が設けられてもよい。この場合、2つのカーテン形成ノズル30は、平面視で開口33の周縁に接する1本の接線に対して開口33と反対側において、その接線と直交する開口33の直径に関して互いに線対称をなすように並べて配置されるとよい。また、残りの2つのカーテン形成ノズル30は、他の2つのカーテン形成ノズル30の並び方向と直交する方向に延び、平面視で開口33の周縁に接する1本の接線に対して開口33と反対側において、他の2つのカーテン形成ノズル30よりも高い位置に、その接線と直交する開口33の直径に関して互いに線対称をなすように並べて配置されるとよい。これにより、移動ノズル14から吐出されるSPMを避けて、そのSPMの周囲に4つの水カーテンWCを形成することができる。その結果、SPMと水カーテンWCとの干渉を防止しつつ、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間との良好な遮断状態を形成することができる。
【0069】
また、図5に示す基板処理装置51において、固定ノズル55が省略され、遮断板19に設けられた液供給管21に、リンス液供給管22に加えて、SPMを供給するための薬液供給管が接続されて、液供給管21の下端からウエハWの表面にSPMが供給されてもよい。
前述した各実施形態は、適当に組み合わされてもよい。たとえば、図3に示す実施形態(第2の実施形態)と図5に示す実施形態(第3の実施形態)とが組み合わされて、ウエハWがフェースダウン状態でウエハ回転機構3に保持され、そのウエハWの表面への固定ノズル43からのSPMの供給と並行して、遮断板19および水カーテンWCによって、カップ8の内側の空間を含む水カーテンWCの内側の空間と水カーテンWCの外側の空間とが遮断されてもよい。この場合、図5に示す水ノズル52が省略されて、ウエハWの表面へのSPMの供給中に、洗浄用純水ノズル56から回転中の遮断板19の下面に純水が供給され、その純水が遮断板19の周縁から側方に飛散することにより、遮断板19の周囲に水カーテンWCが形成されてもよい。
【0070】
また、水カーテンWCは、必ずしも純水により形成されなくてもよく、薬液成分を含まない液体であれば、たとえば、純水よりも純度の低い水により、水カーテンWCが形成されてもよい。
さらには、レジスト剥離処理のための装置を取り上げたが、本発明は、薬液を用いた処理を行う装置に広く適用することができる。たとえば、薬液としてフッ化水素酸を用いて基板から金属汚染物を除去するための洗浄処理などを行う装置に本発明を適用することが可能である。
【0071】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
【図2】図2は、図1に示すカップおよびカーテン形成ノズルの図解的な平面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
【図4】図4は、図3に示すカップおよびカーテン形成ノズルの図解的な平面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
【図6】4つのカーテン形成ノズルの配置例を説明するための図解的な平面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 基板処理装置
2 処理チャンバ
3 ウエハ回転機構(基板保持手段)
8 カップ(収容部材)
13 カップ昇降機構(移動手段)
14 移動ノズル(薬液供給手段)
19 遮断板(対向部材)
21 液供給管(薬液供給手段)
30 カーテン形成ノズル
33 開口
41 基板処理装置
43 固定ノズル(薬液供給手段)
48 カーテン形成ノズル
51 基板処理装置
52 水ノズル
55 固定ノズル(薬液供給手段)
56 洗浄用純水ノズル(リンス液供給手段)
W ウエハ
WC 水カーテン(カーテン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室内に設けられ、基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の主面に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板保持手段を収容し、前記基板保持手段に保持された基板の主面と対向する位置に基板を通過可能なサイズの開口を有するカップ状の収容部材と、
水によるカーテンを形成し、前記収容部材の内側の空間を含む前記カーテンの内側の空間と前記カーテンの外側の空間とを遮断する遮断手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記遮断手段は、前記収容部材の外側の空間に前記カーテンを形成する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記遮断手段は、前記開口の一方側から前記開口に対する他方側に向けて水を吐出し、前記開口を跨ぐように前記カーテンを形成するカーテン形成ノズルを備えている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持手段に保持された基板と前記カーテンとをそれらの対向方向に相対的に移動させる移動手段をさらに含む、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記薬液供給手段は、前記収容部材の外側の空間を移動可能に設けられ、前記基板保持手段に保持された基板の主面に向けて薬液を吐出する移動ノズルを備える、請求項3または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記遮断手段は、前記開口に対向して配置され、前記開口との対向方向に延びる直線まわりに回転される板状の対向部材と、前記対向部材の一方面に水を供給し、前記対向部材の周囲に、前記対向部材の周縁から飛散する水による前記カーテンを形成するための水ノズルとを備える、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記対向部材における前記開口との対向面に薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給手段をさらに含む、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記薬液供給手段は、前記収容部材内に設けられ、前記基板保持手段に保持された基板の主面に向けて薬液を吐出する固定ノズルを備える、請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記固定ノズルは、前記基板保持手段に保持された基板に対して前記開口が設けられている側と反対側において、当該基板の中央部に対向して配置される、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段に保持された基板の主面に対して間隔を空けて対向配置され、当該基板との間の空間をその周囲から遮断するための遮断板をさらに含み、
前記薬液供給手段は、前記遮断板に設けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−267101(P2009−267101A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115287(P2008−115287)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】