説明

基板材の表面処理装置

【課題】第1に、基板材に対し強いインパクトで、均一なスプレーが実施され、第2に、もって微細化,高密度化された回路の電子回路基板でも、精度高く安定的に製造可能な、基板材の表面処理装置を提案する。
【解決手段】この表面処理装置6は、電子回路基板の製造工程で使用され、基板材Aに対し、スプレーノズル7から処理液Bを噴射して表面処理する。スプレーノズル7は、2流体ノズルよりなり、処理液BとエアーDを混合して噴射すると共に、基板材Aとスプレーノズル7間が、5mm〜40mmの距離間隔Eとなっており、エアーDと共に噴射された処理液Bは、微小粒子となって基板材Aにスプレーされる。そして基板材Aに対し、強いインパクトでスプレーされると共に、左右方向Fへの水平往復移動により、広く均一にスプレーされる。エアーDは、圧送源14のブロワから温度上昇して圧送供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材の表面処理装置に関する。すなわち、電子回路基板の製造工程、代表的にはエッチング工程で使用され、基板材を処理液にて表面処理する、表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
プリント配線基板,その他の電子回路基板の代表的な製造工程では、銅張り積層板よりなる基板材の外表面に、→まず、液状やドライフィルム状の感光性レジストが、塗布又は張り付けられる。
→それから、回路のネガフィルムを当てて露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現像により溶解除去し、→もって露出した回路形状部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥離により溶解除去する。
このようなプロセスを辿ることにより、基板材の外表面に残った銅箔にて電子回路が形成され、電子回路基板が製造されている。なお、この種の銅箔としては、電解銅,メッキ銅,両者を併用したもの、等が使用されている。
【0003】
《従来技術》
さて、図5の(1)図に示したように、上述した現像工程,エッチング工程,剥離工程等では、それぞれ、現像装置,エッチング装置,剥離装置等の表面処理装置1にて、搬送される基板材Aに対し、スプレーノズル2(1液体ノズル)から現像液,エッチング液,剥離液等の処理液Bが、噴射される。
もって、基板材Aについて、現像,エッチング,剥離等の表面処理が、順次実施されていた。図5の(1)図中、3は、基板材Aを搬送するコンベア4の搬送ローラーであり、5は処理液Bの液槽である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
このような表面処理装置1としては、例えば、次の特許文献1,特許文献2に示されたものが挙げられる。
【特許文献1】特開2002−68435号公報
【特許文献2】特開2006−222117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したこの種従来例の表面処理装置1については、次の課題が指摘されていた。
《課題となる問題点》
電子回路基板は、パターン形成される回路C(図5の(2)図を参照)の微細化,高密度化の進展が顕著である。例えば、回路幅Lや回路間スペースSで15μm〜40μm程度まで、微細化,高密度化されている。
これに対し、その基板材Aのエッチング等の表面処理について、精度や安定性に問題が指摘されていた。例えば、図3の(4)図に示したように、略富士山状・急傾斜台形状の断面形状の回路Cが形成されてしまう、サイドエッチング・オーバーエッチングの発生が、報告されていた。
図3の(4)図の例では、40μmの回路幅L,40μmの回路間スペースS,20μmの回路高さH等の設定下において、頂面幅Xが25μm〜35μm程度でサイドエッチング幅Yが左右5μm前後程度となった回路C箇所が、多々エッチング形成されてしまっていた。もって、エッチング評価の目安であるエッチングファクターは、3前後程度と低かった。
そして、このようなサイドエッチング・オーバーエッチングの発生は、上述した回路Cの微細化,高密度化傾向にとって、大きな問題となっていた。回路Cにこのような箇所が発生すると、通電容量,抵抗値等が設定値に対し大きく変動してしまい、信号伝達等にも支障が生じ、発熱することもあった。
【0006】
《その原因について》
回路Cがこのようにサイドエッチング・オーバーエッチングされ、回路幅Lが狭く細くなる原因としては、エッチング液等の処理液Bのインパクト不足が、まず挙げられる。例えば、エッチング噴射による回路Cパターン形成には、基板材Aへの最大衝撃値200mN以上のインパクトが必要とされているが、この種従来例では大きく不足していた。
そこでこの種従来例では、基板材Aについて、スプレーされたエッチング液の更新が妨げられ、液溜まりや滞留も生じて、エッチング不足箇所が発生し、これをカバーすべくエッチング量を増やすと、上述したようにエッチング過多のサイドエッチング・オーバーエッチングが発生していた。
更に、このようなサイドエッチング・オーバーエッチングの発生原因としては、基板材Aにスプレーされるエッチング液等の処理液Bの粒径が大きく、微細化,高密度化された回路Cパターン内への入り込みが、不確実化することも挙げられていた。
【0007】
《本発明について》
本発明の基板材の表面処理装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、基板材に対し強いインパクトで、均一なスプレーが実施され、第2に、もって電子回路基板を精度高く安定的に製造可能な、基板材の表面処理装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の基板材の表面処理装置は、電子回路基板の製造工程で使用され、搬送される基板材に対し、スプレーノズルから処理液を噴射して表面処理する。
そして該スプレーノズルは、2流体ノズルよりなり、処理液とエアーとを混合して噴射し、該基板材と該スプレーノズル間は、5mm以上〜40mm以下の距離間隔となっていること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の基板材の表面処理装置では、請求項1において、該スプレーノズルは、各スプレー管にそれぞれ複数個設けられている。
そして各該スプレー管は、左右方向に向けて配列され、前後の搬送方向に相互間隔を存しつつ、複数本設けられると共に、左右方向に水平往復移動可能となっていること、を特徴とする。
【0009】
請求項3については、次のとおり。請求項3の基板材の表面処理装置では、請求項2において、該スプレーノズルから該エアーと共に噴射された該処理液は、微小粒子となって該基板材にスプレーされる。
かつ該処理液は、極めて近い前記距離間隔のもと、該基板材に対し強いインパクトでスプレーされると共に、該スプレー管そして該スプレーノズルの前記水平往復移動により、該基板材に対し広く均一にスプレーされること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の基板材の表面処理装置では、請求項3において、該処理液は、最大衝撃値200mN以上の強いインパクトで、該基板材にスプレーされること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5の基板材の表面処理装置では、請求項1に
おいて、該スプレーノズルでは、圧送供給された該エアーが内部噴射路を直進し、圧送供給された該処理液が、直進する該エアーに対し、該内部噴射路の途中で横方向から供給,混合されること、を特徴とする。
【0010】
請求項6については、次のとおり。請求項6の基板材の表面処理装置は、請求項3又は請求項5において、該エアーは、圧送源であるブロワから、該スプレーノズルに圧送供給されること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。請求項7の基板材の表面処理装置は、請求項6において、該ブロワから該スプレーノズルに圧送供給される該エアー、そして該スプレーノズルから該エアーと混合して噴射される該処理液は、温度が上昇しており、もって該処理液が該基板材にスプレーされることにより、該基板材の表面処理精度向上機能を発揮すること、を特徴とする。
請求項8については、次のとおり。請求項8の基板材の表面処理装置では、請求項1において、該表面処理装置は、現像工程,エッチング工程,剥離工程,又は洗浄工程で使用され、該スプレーノズルは、現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液を、該処理液として噴射すること、を特徴とする。
【0011】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この表面処理装置は、電子回路基板の製造工程、例えばエッチング工程で使用される。
(2)もって、そのスプレーノズルから処理液を噴射して、基板材を表面処理する。
(3)そして、2流体ノズル製のスプレーノズルを、基板材に対し5mm〜40mmの距離間隔で配設すると共に、水平往復移動させる構成よりなる。
(4)そこで、スプレーノズルからエアーと共に噴射された処理液は、微小粒子化されると共に、最大衝撃値200mN以上の強いインパクトで、基板材にスプレーされる。
(5)又、スプレーノズルが左右へ往復移動されるので、処理液は広いスプレー範囲のもと、基板材に対し満遍なく均一にスプレーされる。
(6)以上により、微細化,高密度化した回路パターン形成に際しても、基板材の表面処理が精度高く安定的に実施されるようになる。
(7)すなわち処理液は、回路パターン内に確実に入り込むことができると共に、更新が進展し液留まりや滞留発生は回避され、もってエッチング不足そしてオーバーエッチング等は、発生しなくなる。
(8)このようにして、理想に近い断面形状の回路が得られるようになる。
(9)ところで、エアー圧送源としてブロワが使用された場合は、スプレーノズルに圧送供給されて噴射されるエアーそして処理液が、温度上昇している。もって、この面からも、基板材の表面処理が、一段とスムーズかつ迅速に精度高く実施され、理想に近い断面形状の回路が得られるようになる。
(10)さてそこで、本発明は次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、基板材に対し強いインパクトで、均一なスプレーが実施される。本発明の表面処理装置は、2流体ノズル、5mm〜40mmの距離間隔、水平往復移動等を、組み合わせて採用したことを特徴とする。
もって、例えばエッチングに際しては、微小粒子状となったエッチング液が、最大衝撃値200mN以上の強いインパクトで基板材にスプレーされると共に、往復移動により、広く均一にスプレーされる。
そこで、1流体スプレーを用いた前述したこの種従来例のようなサイドエッチング・オーバーエッチングは回避されて、回路幅が狭く細くなる箇所の発生は防止され、もって理想に近い断面形状の回路が形成されるようになる。本発明の表面処理装置では、このようにエッチングその他の表面処理が、精度高く安定的に実施される。
又、上述した理由に基づき、例えばエッチングスピードも早くなる等、装置全体の処理スピードが向上する、という利点もある。
【0013】
特に、エアー圧送源としてブロワが使用した場合は、基板材の表面処理が、一段と精度高く安定的に、しかも処理スピードにも優れて実施されるようになる。
すなわち、温度上昇した処理液が基板材にスプレーされるので、基板材のエッチング等の表面処理が、一段とスムーズ化し精度高く安定的に実施されると共に、エッチングスピード等の処理スピードも向上する。
【0014】
《第2の効果》
第2に、そこで微細化,高密度化された回路の電子回路基板であっても、精度高く安定的に製造可能となる。
すなわち、本発明の表面処理装置では、上述したように、エッチングその他の表面処理が、精度高く安定的に実施される。そこで、回路幅や回路間スペースで15μm〜40μm程度まで微細化された回路を、パターン形成する際も、所期のとおり表面処理が実施され、もって高精度の電子回路基板を安定的に製造可能となる。
1流体ノズルを用いた前述したこの種従来例のように、製造された電子回路基板の回路について、通電容量,抵抗値等が設定値に対して変動するようなこともなく、信号伝達に支障が生じたり、発熱したりすることも防止される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る基板材の表面処理装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、正面の断面説明図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、平面説明図である。
【図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、スプレーノズル等の正面の説明図である。(2)図,(3)図,(4)図は、回路の断面説明図であり、(2)図は、理想例を、(3)図は、良い例(本発明)を、(4)図は、悪い例(従来例)を示す。
【図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、スプレーインパクト(最大衝撃値)のグラフである。
【図5】(1)図は、表面処理装置の側面の断面説明図である。(2)図は、電子回路基板のテストパターンの要部を拡大した、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《表面処理装置6について》
図1,図2に示したように、本発明の基板材Aの表面処理装置6は、電子回路基板の製造工程で使用され、搬送される基板材Aに対し、スプレーノズル7から処理液Bを噴射して、表面処理する(製造工程等については、前述した背景技術欄も参照)。
すなわち、この表面処理装置6は、エッチング工程を始め現像工程や剥離工程、更にはこれらの工程に付随して設けられた洗浄工程等において、エッチング装置,現像装置,剥離装置,又は洗浄装置等として、使用される。又、代表的にはサブトラクティブ法に適用されるが、それ以外の電子回路基板の各種の製造方法、例えばセミアディティブ法にも適用可能である。
そして、この表面処理装置6では、チャンバー8内において、コンベア4の搬送ローラー3等(図1等では図示を省略、前述した図5の(1)図を参照)で、水平搬送される基板材Aに対し、エッチング液,現像液,剥離液,又は洗浄液等の処理液Bが、噴射される。もって、処理液Bがスプレーされた基板材Aが、所定の薬液処理や洗浄処理される等、表面処理される。
なお、表面処理後の処理液Bは、液槽5へと流下,回収,貯留された後、ポンプ9,フィルター10,配管11等を経由して、スプレー管12からスプレーノズル7へと、循環供給されて再使用される。
表面処理装置6は、概略このようになっている。
【0017】
《本発明の概要》
以下、本発明の表面処理装置6について、図1〜図4を参照して説明する。まず、その概要について述べる。
この表面処理装置6のスプレーノズル7は、2流体ノズルよりなり、処理液BとエアーDとを混合して噴射する。基板材Aとスプレーノズル7間は、5mm以上〜40mm以下の距離間隔Eとなっている。
そしてスプレーノズル7は、各スプレー管12にそれぞれ複数個設けられており、各スプレー管12は、左右方向Fに向けて配列され、前後の搬送方向Gに相互間隔を存しつつ、複数本設けられると共に、左右方向Fに水平往復移動可能となっている。
そして、スプレーノズル7からエアーDと共に噴射された処理液Bは、微小粒子となって基板材Aにスプレーされる。
かつ処理液Bは、極めて近い前記距離間隔Eのもと、基板材Aに対し強いインパクトでスプレーされると共に、基板材Aに対しその分だけ狭くなるスプレー範囲が、スプレー管12そしてスプレーノズル7の前記水平往復移動によりカバーされており、もって基板材Aに対し、広く均一にスプレーされる。
処理液Bは基板材Aに対し、例えば最大衝撃値200mN以上の強いインパクトで、広く均一にスプレーされる。
本発明の概要は、このようになっている。
【0018】
《本発明の詳細》
このような表面処理装置6について、更に詳述する。まず、図1や図3の(1)図中に示したように、そのスプレーノズル7は2流体ノズルよりなる。
そして、この2流体ノズル製のスプレーノズル7では、圧送供給されたエアーDが内部噴射路13を直進し、圧送供給された処理液Bが、直進するエアーDに対し、内部噴射路13の途中で直交する横方向から供給,混合される。
エアーDは、このように直進することにより、内部抵抗が少ないという利点がある。これに対し処理液Bは、直進するエアーDに対し横から供給されることにより、スムーズにエアーDに吸い込まれて混合されるという利点がある。又これにより、その圧送供給圧が低くてよいという利点もある。
【0019】
そしてエアーDは、導入された外気が、ファン,コンプレッサ又はブロワ等の圧送源14から圧送され、もって、フィルター15,流量計16,配管17等を経由した後、スプレー管12からスプレーノズル7へと供給される。図中18は圧力計である。
このエアーDは、0.01MPa以上〜0.6MPa以下程度の供給圧で、供給される。圧送源14として、コンプレッサが使用される場合は、0.3MPa以上〜0.6MPa以下程度の高圧エアーが代表的であり、ブロワが使用される場合は、0.01MPa以上〜0.08MPa以下程度の低圧エアーが代表的である。
圧送源14としてブロワ例えばルーツブロワが使用される場合は、導入される外気の雰囲気温度より温度上昇したエアーDが、ブロワで生成される。例えば、40℃〜90℃程度に温度上昇したエアーDが、ブロワにて生成され、もって適宜供給されることになる。
他方、処理液Bは前述したように、スプレー管12からスプレーノズル7へと供給される。
【0020】
スプレーノズル7の噴射孔19からエアーDと共に噴射された処理液Bは、平均粒子径が20μm〜30μm程度の微小粒子となると共に、エアーDの前記供給圧より若干低い噴射圧で、基板材Aにスプレーされる。
そして、スプレーノズル7の噴射孔19から基板材Aまでの距離間隔Eは、上下5mm〜40mm程度に設定されている。エッチング等の表面処理による回路Cパターン形成に際し、噴射された処理液Bが基板材Aに対し、最大衝撃値が安定的に200mN以上となる打圧、つまり強いインパクトを与えることが必要とされているが、このような距離間隔Eにより、必要なインパクトが得られるようになる。
例えば図4に示したように、基板材Aに対し半径40mm程度で形成される全体的,外観的スプレー範囲中、半径20mm程度で形成される中心的,実質的スプレー範囲において、最大衝撃値は確実に200mN以上となる。
なお、距離間隔Eが40mmを超えると、最大衝撃値が200mNを下廻るのに対し、距離間隔Eが5mm未満の場合は、スプレーノズル7と基板材Aが接近し過ぎ、処理液Bの反射等によりスムーズな表面処理に支障が生じる。
スプレーノズル7としては、フラットコーンノズル(スプレーパターンが楕円形)やフルコーンノズル(スプレーパターンが円形)が、代表的に使用されるが、勿論これら以外の各種ノズルも使用可能である。
又、基板材Aとしては、表裏両面に回路Cが形成される両面基板タイプが代表的であるが、勿論、片面のみに回路Cが形成される片面基板タイプも考えられ、更に、多層基板その他各種タイプの基板についても、この表面処理装置6は広く適用可能である。
【0021】
図示例では、スプレーノズル7は、各スプレー管12に5個ずつ設けられている。そして各スプレー管12は、前後方向である搬送方向Gと直交する左右方向Fに向け、平行に配列されている。つまり、前後の搬送方向Gに相互前後間隔を存しつつ、チャンバー8内に例えば上下4本ずつ設けられている。
そして、各スプレー管12そしてスプレーノズル7は、左右方向Fに向け、同期連動して所定距離間を水平スライドしつつ、往復移動可能となっている。
ところで、エアーDはスプレー管12から、処理液Bはスプレー管12から、それぞれスプレーノズル7へと供給される。そして図1の例では、スプレー管12とスプレー管12とは、別個に配設されると共に同期連動して水平往復移動する。
これに対し、図2に示した例のように、共通のスプレーノズル7に対して対をなすスプレー管12とスプレー管12とを、スプレー管12として並存,一体連接設しておくと(例えば、スプレー管12内部を2流体用に区画した構成)、往復移動動作が容易化する。
本発明は、このようになっている。
【0022】
《作用等》
本発明の基板材Aの表面処理装置6は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この表面処理装置6は、電子回路基板の製造工程で使用される。すなわち、製造工程の中核をなすエッチング工程を始め、現像工程,剥離工程,洗浄工程等において、エッチング装置、更には現像装置,剥離装置,洗浄装置等として、使用される。
【0023】
(2)そして表面処理装置6は、基板材Aを処理液Bにて、回路C形成用に表面処理する。
すなわち、搬送される基板材Aに対し、スプレー管12(12,12)を経由してスプレーノズル7から、エッチング液,現像液,剥離液,洗浄液等の処理液Bを噴射し、もって基板材Aをエッチング,現像,剥離,洗浄等する(図1,図2を参照)。エッチング液としては、例えば塩化第二銅や塩化第二鉄が使用される。
【0024】
(3)そして、本発明の表面処理装置6は、スプレーノズル7として2流体ノズルを採用すると共に、このスプレーノズル7を、基板材Aに対し5mm〜40mmの距離間隔Eに配設し、更にスプレー管12(12,12)と共に、左右方向Fに水平往復移動せしめる構成よりなる。
本発明は、このような構成を組み合わせて採用したことを、特徴とする(図1,図2,図3の(1)図等を参照)。
【0025】
(4)そこで、スプレーノズル7からエアーDと共に噴射された処理液Bは、まず、20μm〜40μm程度に微小粒子化して、基板材Aにスプレーされる。
そして処理液Bは、5mm〜40mmと極めて近い距離間隔Eで基板材Aに向けて噴射され、もって強いインパクトで基板材Aにスプレーされる。エッチング等の表面処理には、最大衝撃値200mN程度以上のインパクトが必要とされているが、このような強いインパクトが確実に得られる(後述する表1や図4も参照)。
【0026】
(5)ところで、このように近い距離間隔Eで処理液Bが噴射されるので、そのままでは、基板材Aへのスプレー範囲が狭くなる(図4を参照)。
そこで、狭いスプレー範囲をカバーするため、スプレー管12(12,12)そしてスプレーノズル7を、左右方向Fへ水平往復移動させるシステムが、採用されている。もって処理液Bは、基板材Aに対し強いインパクトを与えると共に、水平往復移動により広いスプレー範囲のもと、基板材Aに対し満遍なく均一にスプレーされる。
【0027】
(6)本発明の表面処理装置6では、このように処理液Bが、微小粒子化し強いインパクトで均一に、基板材Aにスプレーされる。
そこで、回路幅Lや回路間スペースSで15μm〜40μm程度まで、微細化,高密度化された回路Cのパターン形成に際しても、表面処理が精度高く安定的に実施される。
【0028】
(7)すなわち処理液Bは、微粒子化しているので、基板材Aの微細化,高密度化された回路Cのパターン内に、確実に入り込み可能となる。そして処理液Bは、強いインパクトに基づき、基板材A外表面での更新が進展し、液留まりや滞留発生は回避され、エッチング不足やオーバーエッチングも発生しずらい。
【0029】
(8)このようにして、基板材Aの表面処理が進行し、理想に近い断面形状の回路Cが得られるようになる。この種従来例のようなサイドエッチングは回避され、回路幅Lが狭く細くなる箇所の発生は防止される。
もって、断面形状が正方形や長方形の理想例(図3の(2)図を参照)に近い、回路Cが得られるようになる(図3の(3)図を参照)。この種従来例のように、略富士山状・急傾斜台形状の回路Cは(図3の(4)図を参照)、回避される。
【0030】
例えば、エッチングに際して、40μmの回路幅L,40μmの回路間スペースS,20μmの回路高さH等の設定下では、次のようになる(図3の(3)図を参照)。
すなわち少なくとも、頂面幅Xが36μm程度、サイドエッチング幅Yが左右2μm程度の回路Cが、形成されるようになる(図3の(4)図と比較対照)。エッチング評価の目安であるエッチングファクターは、5〜10前後程度まで向上した。
【0031】
(9)ところで、エアーDの圧送源14として、ブロワ例えばルーツブロワを使用した場合は、更に一段とこれらの作用に優れるようになる。
すなわち、ブロワよりなる圧送源14から圧送供給されるエアーDは、外気の雰囲気温度より温度上昇しているので、スプレーノズル7からエアーDと混合して噴射される処理液Bも、これに伴い温度上昇する。
もって、温度上昇した処理液Bが、基板材Aにスプレーされることになる。そこで、基板材Aのエッチング,現像,剥離等の表面処理が、一段とスムーズかつ迅速に精度高く実施されるので、この面からも、理想に近い回路Cが得られるようになる。
【0032】
(10)例えば、エッチング工程で基板材Aをエッチング処理する場合は、代表的には45℃〜50℃程の温度が適している。場合によっては、60℃前後程度が適していることもあり、ソフトエッチングの場合は、例えば30℃〜35℃程度が適している。
又、剥離工程で基板材Aを剥離処理する場合は、代表的には45℃〜50℃程度が適しており、現像工程で基板材Aを現像処理する場合は、例えば30℃〜35℃程度が適している。
これに対し、圧送源14であるブロワで生成される温度上昇したエアーDは、40℃〜90℃程度間の所定温度域にある。
そこで、その表面処理に適した温度のエアーDが、圧送源14のブロワで生成されるケースでは、ブロワからスプレーノズル7に対し、上記温度域まで温度上昇したエアーDが、そのまま圧送供給される。
これに対し、その表面処理に適した温度が、ブロワで生成される上記温度域より低いケースでは、ブロワに冷却装置が付設される。もって、その表面処理に適した温度まで温度調節,温度低下せしめられたエアーDが、スプレーノズル7に圧送供給される。
【実施例1】
【0033】
ここで、本発明の実施例1のデータについて説明する。次の表1および添付の図4は、実施例1の表面処理装置6に関して得られたデータを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
まず、テスト条件については、表1中にも示したように、次のとおりである。
・使用したスプレーノズル7 : 2流体ノズル
・エアーDの供給量(空気量) : 200L/min
・処理液Bの供給量(噴霧水量): 0.8L/min
・エアーDの供給圧(空気圧) : 0.038MPa
・ 噴射圧(水圧) : 0.026MPa
【0036】
このようなテスト条件のもとで、基板材Aに対するスプレーノズル7の距離間隔Eを、順次変更すると共に、各距離間隔E毎に、基板材Aへの処理液Bによる最大衝撃値を計測した。(なお、処理液Bの粒子径は、30μm程度で計測された。)
すると、表1や図4中に示した計測結果が得られた。本発明のように距離間隔Eを5mm〜40mmに設定すると、必要なインパクトである200mN以上の最大衝撃値が、安定的に得られた。
すなわち、距離間隔Eが5mmで477mN、10mmで385mN、20mmで298mN、30mmで244mN、40mmで224mNの最大衝撃値が、それぞれ計測された。そしてこれと共に、各距離間隔E共に、基板材Aへの半径20mmの中心的,実質的スプレー範囲において、200mN以上の最大衝撃値が安定的に得られた。
なお第1に、距離間隔Eが45mmでは、212mNの最大衝撃値が計測されたが、この最大衝撃値は部分的,瞬間的であり、スプレー範囲について安定的に得られたものではない。又、距離間隔Eが50mmでは、160mN程度の最大衝撃値へと低下した。
このように、距離間隔Eが40mmを超えると、200mN未満の最大衝撃値となり、必要なインパクトは得られなかった。
なお第2に、距離間隔Eが小さくなるほど、最大衝撃値は大きくなるが、スプレー範囲は狭くなる。そこで、水平往復移動の移動距離が、大きく設定されるようになる。
実施例1については、以上のとおり。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の実施例2のデータについて説明する。
次の表2は、実施例2の表面処理装置6に関して得られたデータを示し、表3は、この種従来例の表面処理装置1に関して得られたデータを示す。但し、データには若干の測定誤差が含まれている可能性がある。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
そして、各ライン&スペース(つまり回路幅L/回路間スペースS)の各々の目標値・理想値(前述した図3の(2)図を参照)毎に、共通のエアー圧(エアーDの供給圧,空気圧),液圧(噴射圧,水圧),エッチング時間等の条件下で、テストした。なお、ノズル高さ(距離間隔E)も共通に30mmとした。
その結果、本発明の実施例2では、上記表2に示したように、パターントップ幅(頂面幅X),パターンボトム幅(回路幅L),パターン間隔(回路間スペースS),パターン高さ(回路高さH)等の各ポイントの測定値から見て、理想に近い良い形状の回路Cが得られ(前述した図3の(3)図を参照)、もってエッチングファクター(E/F)も高かった。
これに対し、この種従来例では、上記表3に示したように、各ポイントの測定値から見て、略富士山状・急傾斜台形状の悪い形状の回路Cとなり(前述した図3の(4)図を参照)、エッチングファクター(E/F)も低かった。
このように、データ的にも本発明の優れた作用効果が、裏付けられた。実施例2については、以上のとおり。
【実施例3】
【0041】
次に、本発明の実施例3のデータについて説明する。
次の表4は、ノズル高さ(距離間隔E)を30mmに設定した実施例の表面処理装置6に関して得られたデータを示し、表5は、ノズル高さ(距離間隔E)を40mmに設定した実施例の表面処理装置6に関して得られたデータを示す。但し、データには若干の測定誤差が含まれている可能性がある。
【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
そして共に、ライン&スペース(つまり回路幅L/回路間スペースS)の目標値・理想値(前述した図3の(2)図を参照)を、共通の20/20とすると共に、共通のエッチング時間のもとで、エアー圧(エアーDの供給圧,空気圧)および液圧(噴射圧,水圧)の条件を、順次変化させてテストした。その結果、いずれも良好なデータが得られた。
すなわち、パターントップ幅(頂面幅X),パターンボトム幅(回路幅L),パターン間隔(回路間スペースS),パターン高さ(回路高さH)等の各ポイントの測定値から見て、理想に近い良い形状の回路Cが得られ(前述した図3の(3)図も参照)、良好なエッチングファクター(E/F)となった。
このようなデータ面からも、本発明の優れた作用効果が、裏付けられた。実施例3については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0045】
1 表面処理装置(従来例)
2 スプレーノズル(従来例)
3 搬送ローラー
4 コンベア
5 液槽
6 表面処理装置(本発明)
7 スプレーノズル(本発明)
8 チャンバー
9 ポンプ
10 フィルター
11 配管
12 スプレー管
12 スプレー管
12 スプレー管
13 内部噴射路
14 圧送源
15 フィルター
16 流量計
17 配管
18 圧力計
19 噴射孔
A 基板材
B 処理液
C 回路
D エアー
E 距離間隔
F 左右方向
G 搬送方向
H 回路高さ
L 回路幅
S 回路間スペース
X 頂面幅
Y サイドエッチング幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板の製造工程で使用され、搬送される基板材に対し、スプレーノズルから処理液を噴射して表面処理する、基板材の表面処理装置において、
該スプレーノズルは、2流体ノズルよりなり、処理液とエアーとを混合して噴射し、該基板材と該スプレーノズル間は、5mm以上〜40mm以下の距離間隔となっていること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載した表面処理装置において、該スプレーノズルは、各スプレー管にそれぞれ複数個設けられており、
各該スプレー管は、左右方向に向けて配列され、前後の搬送方向に相互間隔を存しつつ、複数本設けられると共に、左右方向に水平往復移動可能となっていること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載した表面処理装置において、該スプレーノズルから該エアーと共に噴射された該処理液は、微小粒子となって該基板材にスプレーされ、
かつ該処理液は、極めて近い前記距離間隔のもと、該基板材に対し強いインパクトでスプレーされると共に、該スプレー管そして該スプレーノズルの前記水平往復移動により、該基板材に対し広く均一にスプレーされること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載した表面処理装置において、該処理液は、最大衝撃値200mN以上の強いインパクトで、該基板材にスプレーされること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載した表面処理装置において、該スプレーノズルでは、圧送供給された該エアーが内部噴射路を直進し、圧送供給された該処理液が、直進する該エアーに対し、該内部噴射路の途中で横方向から供給,混合されること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項6】
請求項3又は請求項5に記載した表面処理装置において、該エアーは、圧送源であるブロワから、該スプレーノズルに圧送供給されること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載した表面処理装置において、該ブロワから該スプレーノズルに圧送供給される該エアー、そして該スプレーノズルから該エアーと混合して噴射される該処理液は、温度上昇しており、もって該処理液が該基板材にスプレーされることにより、該基板材の表面処理精度向上機能を発揮すること、を特徴とする基板材の表面処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載した表面処理装置において、該表面処理装置は、現像工程,エッチング工程,剥離工程,又は洗浄工程で使用され、
該スプレーノズルは、現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液を、該処理液として噴射すること、を特徴とする基板材の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−287881(P2010−287881A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100305(P2010−100305)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(509136219)米沢ダイヤエレクトロニクス株式会社 (2)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】