説明

基準位置計測装置及び方法、並びに描画装置

【課題】上下方向の変動による基準マークの位置検出誤差を、スループットを低下させずに補正する。
【解決手段】アライメントユニット24のカメラ25に、基板上面の合焦位置からの変動量Δを計測するZ方向センサ26を設ける。基準マークの撮影画像を補正する歪み補正部58として、上記合焦位置からの変動量Δに対応する歪み補正データを、複数の変動量Δについて記憶した補正データ記憶部59と、Z方向センサ26の計測値に応じて適した歪み補正データを選択もしくは算出して決定する補正データ決定部60と、補正データ決定部60によって決定された歪み補正データを用い、撮影画像の歪みを補正する画像補正処理部61とを設ける。これにより、上下方向の変動による基準マークの位置検出誤差を、基板を上下動させずに補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に付された基準マークの位置を計測する基準位置計測装置及び方法と、その基準位置計測装置を備え、計測された基準マークの位置情報に基づき、基板上への描画位置を調整する描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に描画を行う描画装置として、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)等の空間光変調素子を描画部に設け、描画データに基づいてDMDを駆動制御し、光ビームを変調することにより、基板上に描画(露光)を行うデジタル露光装置(マルチビーム露光装置とも称される)が知られている。DMDは、半導体基板に2次元配列された各メモリセル(SRAMセル)に微小なマイクロミラーを揺動自在に取り付けてなるミラーデバイスであり、各メモリセルに書き込まれたデータ(電荷)に応じた静電気力によりマイクロミラーの反射面の角度が変化するように構成されている。
【0003】
このようなデジタル露光装置には、基板上に付された基準マーク(アライメントマーク)の位置を計測する基準位置計測装置(いわゆるアライメントユニット)が設けられている。基準位置計測装置は、ステージ上に載置されて所定の速度で搬送される基板上の基準マークをカメラで撮影することにより、その位置を計測する。露光装置は、この計測値に基づいて基板上への描画位置を調整する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
基準位置計測装置のカメラに内蔵されたレンズや撮像素子には微小ながら物理的変形が存在し、これに伴い、撮影画像には僅かに歪みが生じる。要求される基準マークの位置計測精度が高い場合には、この影響を無視することはできない。かかる問題を解決するために、特許文献1では、予め作成した歪み補正データを用いて撮影画像を補正することにより歪みを打ち消し、基準マークの位置計測精度の向上を図っている。
【0005】
また、撮影画像の歪みは、基板の個体差やステージの保持精度等により基板の上面位置が変動し、これに伴い、撮影画像の像倍率が変動することによっても生じる。そこで、基準位置計測装置のカメラには、被写体の光軸方向の位置変動に対して像倍率の変動が少なく、被写体の計測深度を広く取ることができるテレセントリック光学系が使用されている。しかし、テレセントリック光学系であっても、光軸方向の変動に対して微小ながら誤差(いわゆるテレセントリック誤差)が生じるため、要求される基準マークの位置計測精度が高い場合にはこの影響を無視することはできない。かかる問題を解決するには、特許文献2,3に示されているように、ステージを上下方向(カメラの光軸方向)に移動させることにより、像倍率の調整を行う方法が考えられる。
【特許文献1】特開2007−10736号公報
【特許文献2】特開2006−332480号公報
【特許文献3】特開平7−295230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のデジタル露光装置に、特許文献2,3の技術(ステージの上下方向の位置調整)を適用した場合、基準マークの位置計測時には、ステージの移動を一旦停止したうえで上下方向の位置調整を行う必要があるため、位置検出時間が長くなり、基板の処理効率(スループット)が低下するといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、上下方向の変動による基準マークの位置検出誤差を、スループットを低下させずに補正を行うことができる基準位置計測装置及び方法と、その基準位置計測装置を備え、計測された基準マークの位置情報に基づき、基板上への描画位置を調整する描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の基準位置計測装置は、撮影手段により、ステージ上もしくは前記ステージに載置された基板上に形成された基準マークを略垂直上方から撮影することによって前記基準マークの位置を計測する基準位置計測装置において、前記撮影手段の合焦位置からの前記基準マーク面の変動量に対応する歪み補正データを記憶した記憶手段と、前記合焦位置からの前記基準マーク面の変動量を計測する計測手段と、前記計測手段の計測値に応じて、適した歪み補正データを前記記憶手段から選択もしくは算出して決定する決定手段と、前記選択手段によって決定された歪み補正データを用い、前記撮影手段によって得られた撮影画像の歪みを補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、前記歪み補正データは、前記撮影手段の物理的変形による撮影画像の歪みと、前記合焦位置からのずれによる像倍率の変化とを補正するものであることが好ましい。
【0010】
また、前記歪み補正データは、前記撮影手段の撮影画像の全位置に対応した2次元補正ベクトルからなることが好ましい。
【0011】
また、前記撮影手段は、テレセントリック光学系を備えていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の描画装置は、描画データに基づき、描画領域を通過する基板に対して順次に描画を行う描画手段と、前記描画領域を通過するように前記基板を前記描画手段に対して相対的に移動させる移動手段と、前記基準位置計測装置により計測された基準マークの位置に基づき、前記基板上への描画位置を調整する描画位置調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
なお、前記描画位置調整手段は、前記基準位置計測装置により計測された基準マークの位置に基づき、前記描画データを補正することが好ましい。
【0014】
また、前記移動手段は、前記基板を載置して一次元軌道上を移動するステージからなり、前記基準位置計測装置及び前記描画手段は、前記一次元軌道上に固定配置されていることが好ましい。
【0015】
また、前記描画手段は、前記基板に対して露光を行うものであることが好ましい。
【0016】
また、前記描画手段は、前記描画データに基づいて入射光を変調するデジタルマイクロミラーデバイスを備えていることが好ましい。
【0017】
また、前記描画手段は、前記デジタルマイクロミラーデバイスを備えた露光ヘッドを、前記基板の移動経路に対して直交する方向に複数列配設したものであることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の基準位置計測方法は、ステージ上もしくは前記ステージに載置された基板上に形成された基準マークを略垂直上方から撮影することによって前記基準マークの位置を計測する基準位置計測方法において、前記基準マークの撮影系の合焦位置からの前記基準マーク面の変動量に対応する歪み補正データを記憶しておき、前記基準マーク面の位置を計測し、計測値に応じて、適した歪み補正データを選択もしくは算出して決定した歪み補正データを用いて撮影画像の歪みを補正することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の基準位置計測及び方法は、基準マークの撮影系の合焦位置からの基準マーク面の変動量に対応する歪み補正データを、複数の変動量について記憶しておき、基準マーク面の位置を計測し、計測値に応じて最も適した歪み補正データを選択もしくは算出して決定し、決定した歪み補正データを用いて撮影画像の歪みを補正するものであるから、上下方向の変動による基準マークの位置検出誤差を、ステージを上下動させることなく補正することができる。
【0020】
また、その基板位置計測装置を備え、計測された基準マークの位置情報に基づき、基板上への描画位置を調整する描画装置は、上下方向の変動による基準マークの位置検出誤差を補正するために、ステージの移動を停止してステージを上下方向に調整する必要が無く、高スループットを達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1において、デジタル露光装置10は、描画対象の基板11を表面に吸着保持して移動させる平板状の移動ステージ12を備えている。基板11は、プリント基板やフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であり、表面に感光材料が塗布または貼着されている。また、基板11の表面には、露光位置の基準を示す基準マークMが複数個設けられている。この基準マークMは、例えば、薄膜の凹凸によって形成され、矩形状の基板11のコーナー部近傍にそれぞれ1つずつ計4個配設されている。
【0022】
4本の脚部13に支持された平板状の基体14の上面には、その長手方向(Y方向)に沿って2本のガイドレール15が互いに平行となるように延設されている。移動ステージ12は、図2に示すように、脚部12aによりガイドレール15に摺動自在に支持されており、リニアモータにより構成されステージ駆動部71(図9参照)によってY方向に駆動される。また、移動ステージ12には、基板11を吸着保持する吸着保持部12bと、吸着保持部12bを上下方向(Z方向)に移動させる上下動機構12cが設けられている。
【0023】
基体14上のY方向に関する中央部には、ガイドレール15を跨ぐように門型のゲート16が立設されており、このゲート16には、露光部17が取り付けられている。露光部17は、移動ステージ12の移動経路に直交する方向(X方向)に複数列(例えば2列)配列された計16個の露光ヘッド18からなり、移動ステージ12の移動経路上に固定配置されている。
【0024】
露光部17には、光源ユニット19から引き出された光ファイバ20と、画像処理ユニット21から引き出された信号ケーブル22とがそれぞれ接続されている。各露光ヘッド18は、画像処理ユニット21から入力されるフレームデータ(描画データ)に基づいて、光源ユニット19から入力される光ビームを変調し、移動ステージ12によって搬送される基板11に対して露光(描画)を行う。なお、露光ヘッド18の数や配列は、基板11のサイズ等に応じて適宜変更してよい。
【0025】
基体14上にはさらに、ガイドレール15を跨ぐようにゲート23が設けられている。ゲート23には、アライメントユニット24が取り付けられている。アライメントユニット24は、略垂直上方から基板11上を撮影する3個のカメラ25を備え、各カメラ25には、基板11の上面(基準マーク面)の位置を計測するレーザ変位計であるZ方向センサ26が固設されている。詳細は後述するが、アライメントユニット24は、撮影画像から各基準マークMの位置ずれ量を検出することによって、基板11の移動ステージ12上での位置ずれ量を求める。この位置ずれ量に基づいて、露光位置の調整が行われる。なお、カメラ25の数は、基板11のサイズ等に応じて適宜変更してよい。また、Z方向センサ26が用いる測長用のレーザ光は、基板11の表面の感光材料を感光しない波長であることが好ましい。
【0026】
図3は、露光ヘッド18の構成を示す。露光ヘッド18は、空間光変調素子としてのDMD30を備えている。DMD30の光入射側には、光ファイバ20の端部から射出されたレーザ光をDMD30に向けて反射するミラー31が配置されている。DMD30は、図4に示すように、SRAMセルアレイ32の各セル上にマイクロミラー33が支柱により揺動自在に支持されてなる。マイクロミラー33は、例えば、600個×800個の2次元正方格子状に配列され、DMD30は、全体として矩形状となっている。SRAMセルアレイ32には、DMDドライバ39を介してフレームデータ(デジタル信号)が書き込まれる。なお、DMDドライバ39には、前述の信号ケーブル22が接続され、画像処理ユニット21からフレームデータが入力される。
【0027】
SRAMセルアレイ32の各セルは、フリップフロップ回路によって構成されており、書き込まれるデータ(“0”または“1”)に応じて電荷状態が切り替わる。各マイクロミラー33は、SRAMセルの電荷状態に応じた静電気力により各マイクロミラー33の傾きが切り替わり、ミラー31から入射されるレーザ光の反射方向を変化させる。つまり、DMD30は、入射されるレーザ光をフレームデータに応じて変調して反射し、反射光をレンズ系34に入射させる。例えば、データ“0”が書き込まれたSRAMセルのマイクロミラー33による反射光のみがレンズ系34に入射し、データ“1”が書き込まれたSRAMセルのマイクロミラー33による反射光は、不図示の光吸収体に吸収されて露光には寄与しない。
【0028】
レンズ系34,35は、拡大光学系として構成されており、DMD30からの反射光の断面積を所定の大きさに拡大し、射出側に設けられたマイクロレンズアレイ36に反射光の拡大像を入射させる。マイクロレンズアレイ36は、DMD30の各マイクロミラー33に1対1に対応するように複数のマイクロレンズ36aが一体形成されたものであり、各マイクロレンズ36aは、レンズ系34,35を通過したレーザ光の各光軸上に配置されている。マイクロレンズアレイ36は、入射された拡大像を鮮鋭化してレンズ系37に入射させる。レンズ系37,38は、例えば、等倍光学系として構成されており、基板11の像を投影(露光)する。露光ヘッド18は、レンズ系37,38の後方焦点位置に基板11の上面11aが位置するように配置される。
【0029】
図5に示すように、各露光ヘッド18による基板11上の露光エリア(描画領域)40は、DMD30に相似した形状(矩形状)となる。DMD30は、短辺がステージ移動方向(Y方向)に対して僅かに(例えば、0.1°〜0.5°)傾斜させて配置されており、これに応じて露光エリア40が傾斜している。これにより、DMD30の各マイクロミラー33による正方格子状の露光点(描画点)の配列方向が走査方向に対して傾斜し、露光点による走査軌跡(走査線)のピッチ(X方向に関する間隔)が狭くなるため、DMD30を傾斜させない場合より、解像度を向上させることができる。
【0030】
各露光ヘッド18は、ステージ移動方向と略直交する方向(X方向)に2列に分けられ、各列において隙間無く配列されている。また、露光ヘッド18は、第1列目と第2列目とで配列方向に所定間隔(配列ピッチの1/2倍)ずらして配列されている。これにより、第1列目の露光ヘッド18によって露光できない部分が第2列目の露光ヘッド18によって露光され、ステージ移動に伴って形成される帯状の露光済み領域41がX方向に隙間無く形成される。
【0031】
図6は、アライメントユニット24の構成を示す。カメラ25は、照明部50、ハーフミラー51、テレセントリックレンズ52、及び撮像素子53から構成されている。照明部50は、LED等からなり、白色光または特定波長の光をハーフミラー51に向けて発する。ハーフミラー51は、照明部50から発せられた照明光をテレセントリックレンズ52に向けて反射する。テレセントリックレンズ52は、入射した照明光を基板11に向けて透過させるとともに、基板11の上面11aからの反射光を透過させる。上面11aからの反射光は、ハーフミラー51を透過し、撮像素子53に入射する。撮像素子53は、CCD等からなる2次元イメージセンサであり、入射した光を光電変換し、電気的な撮像信号として出力する。カメラ25は、撮影光軸が基板11の上面11aに対して略垂直(Z方向と略平行)となるように設置されている。
【0032】
カメラ25には、前述のようにZ方向センサ26が固設されている。Z方向センサ26は、レーザ光を基板11の上面11aに対して略垂直に照射し、この照射光と上面11aからの反射光との干渉により、上面11aのZ方向に関する位置(具体的には、カメラ25の合焦位置(ジャストピント位置)からの変動量Δ)を計測する。Z方向センサ26は、基準マークM近傍の高さ変動量Δを計測する。この変動量Δは、後述する歪み補正部58へ送出される。
【0033】
各カメラ25から出力された撮像信号は、画像処理部54に入力され、所定の信号処理を施すことにより画像データ(基板11の撮影画像)が生成される。画像処理部54によって生成された画像データは、マーク抽出部55に入力される。マーク抽出部55は、画像データから基準マークMを含む部分を抽出し、マーク照合部56へ送出する。マーク照合部56は、抽出された各基準マークMの画像データと、予めマークデータ記憶部57に記憶されたマークデータとを照合し、マークデータに一致した基準マークMの画像データを歪み補正部58へ送出する。
【0034】
歪み補正部58は、補正データ記憶部59、補正データ決定部60、及び画像補正処理部61からなる。補正データ記憶部59には、基板11の高さ変動(Z方向への変動)によって生じる画像データの歪み(像倍率の変化)を補正するために、複数の歪み補正データD0,D1,D2,・・・が記憶されている。歪み補正データD0は、変動量Δ=0の場合の補正データ(つまり、カメラ25の物理的変形(光学系や撮像素子の歪み)による画像データの歪みを補正する補正データ)である。その他の歪み補正データD1,D2,・・・は、所定の変動量Δ(例えば、Δ=+5μm、+10μm、−5μm、−10μmの各変動量)に対応する補正データ(つまり、カメラ25の物理的変形による画像データの歪み、及び合焦位置からのずれによる像倍率の変化を補正する補正データ)である。
【0035】
補正データ決定部60には、Z方向センサ26によって計測された基準マークM近傍の高さ変動量Δが入力される。補正データ決定部60は、入力された高さ変動量Δに対応した歪み補正データを、補正データ記憶部59から選択もしくは算出して決定する。具体的には、入力された高さ変動量Δに対応した歪み補正データが補正データ記憶部59内に存在する場合にはその歪み補正データを選択し、存在しない場合には、補正データ記憶部59に記憶された歪み補正データに基づき、入力された高さ変動量Δに対応した歪み補正データを補間処理(スプライン補間または線形補間)によって算出する。
【0036】
この歪み補正データは、例えば図7に示すように、撮影領域62内の全位置に対応した2次元補正ベクトルH(補正方向と補正量)からなる。画像補正処理部61は、補正データ決定部60によって決定された歪み補正データに基づいて、マーク照合部56から送出された基準マークMの画像データの歪みを補正する。この歪み補正がなされた基準マークMの画像データは、位置情報算出部63へ送出される。
【0037】
位置情報算出部63は、図8に示すように、入力された画像データ中の基準マークM′の位置を、本来の(設計上の)基準マークMの位置と比較し、基準マークMの位置ずれベクトルSを算出する。この位置ずれベクトルSは、各基準マークMについて算出され、基板11の位置情報として、デジタル露光装置10の全体制御部70(図9参照)へ送出される。
【0038】
次に、図9は、デジタル露光装置10の電気的構成を示す。デジタル露光装置10には、装置全体を制御する全体制御部70が設けられている。全体制御部70は、移動ステージ12を駆動するステージ駆動部71を制御してステージ移動を行わせるとともに、光源ユニット19及び画像処理ユニット21を制御して露光を行わせる。また、全体制御部70は、ステージ移動制御を行うとともに、アライメントユニット24の動作を制御し、アライメントユニット24から得た基板11の位置情報を、画像処理ユニット21内のフレームデータ生成部72に与え、基板11上の露光領域に対応するようにフレームデータの補正処理を実行させる。
【0039】
画像処理ユニット21は、外部の画像データ出力装置73から出力されるラスター化された画像データを格納する画像データ記憶部74を備えている。画像データ記憶部74は、画像データ出力装置73から入力される画像データを記憶する。フレームデータ生成部72は、画像データ記憶部74に記憶された画像データに基づいてフレームデータを生成し、生成したフレームデータをDMDドライバ39に入力する。具体的には、フレームデータ生成部72は、DMD30の各マイクロミラー33の配置及び各露光ヘッド18の配置に応じて決まる露光エリア40内の各露光点の座標に基づいて、フレームデータを生成する。また、フレームデータ生成部72は、前述のように、アライメントユニット24によって検出される基板11の位置情報に基づき、位置ずれのない場合と同一の位置に露光点が形成されるように、フレームデータを補正する。
【0040】
次に、以上のように構成されたデジタル露光装置10の露光動作を、図10の動作シーケンス図に基づいて説明を行う。基板11が移動ステージ12上に載置されると、移動ステージ12は、図10(A)に示すように、右方向に往路移動を開始する。この往路移動中、全体制御部70は、Z方向センサ26及び不図示のX,Y方向センサにより、移動ステージ12の位置を認識する。
【0041】
図10(B)に示すように、移動ステージ12の移動方向先端がアライメントユニット24下に達すると、カメラ25が撮影を開始し、この撮影中に、Z方向センサ26により、基板11の上面位置の高さ変動量Δが検出される。図10(C)に示すように、移動ステージ12の移動方向後端がアライメントユニット24下に達すると、カメラ25による撮影が終了し、画像処理部54によって画像データが生成される。アライメントユニット24では、この画像データと高さ変動量Δとを用いて、前述の要領で、基準マークMの位置ずれ量Sが精度良く検出され、基板11の位置情報として、全体制御部70に送出される。
【0042】
次いで、移動ステージ12は、左方向に復路移動を開始し、露光部17下を通過する際に、露光部17によって基板11上に露光が行われる。この露光位置は、アライメントユニット24によって計測された基板11の位置情報に基づいて、露光開始タイミングと露光データ(フレームデータ)の補正を行うことにより、調整される。
【0043】
このように、本発明によれば、基板11のアライメント計測中に、移動ステージ12の上下位置の調整を行うことなく、基板上面の高さ変動による基準マークMの位置ずれを補正することができるので、高精度な露光と同時に、高い処理効率(高スループット)を達成することができる。また、高さ変動による誤差を高精度に補正することができるため、カメラ25には、高精度なテレセントリック性は要求されない。
【0044】
また、デジタル露光装置10は、上記の露光モードの他に、歪み補正データ作成モードを備えている。この歪み補正データ作成モードを実行するために、アライメントユニット24内には、図11に示すように、歪み補正データ作成部80が設けられている。この歪み補正データ作成部80は、補正ベクトル算出部81と演算処理部82とからなる。
【0045】
この歪み補正データ作成モードでは、基板11に代えて、校正用基板を用いる。この校正用基板には、図12に示すように、カメラ25の撮影領域62に関して十分小さなピッチで格子状にマークKMが配置されてなる校正パターンKが形成されている。この校正用基板は、例えば石英などの精度が狂わない(経時的に寸法変形しない)材質で形成されており、校正パターンKは、クロムメッキ等で形成されている。
【0046】
歪み補正データ作成モード時にカメラ25によって撮影された校正パターンKの画像データは、全体制御部70の制御に基づき、画像処理部54から補正ベクトル算出部81へ送出される。補正ベクトル算出部81は、図13に示すように、入力された画像データ中の校正パターンK′の位置と、本来の校正パターンKの位置と比較し、校正パターンK′の各マークKM′の位置ずれ量に基づき補正ベクトルHを算出する。補正ベクトル算出部81によって算出された補正ベクトルHは、演算処理部82に入力される。
【0047】
また、演算処理部82には、Z方向センサ26から校正用基板の上面位置の計測値(合焦位置からの高さ変動量Δ)が入力され、さらに、全体制御部70から校正パターンKの撮影回数を含む撮影情報が入力される。カメラ25による校正パターンKの撮影は、撮影ごとの誤差を補正するために複数回行われる。演算処理部82は、データ格納部83、平均化処理部84、及び補間処理部85からなり、データ格納部83は、補正ベクトル算出部81から入力された補正ベクトルHを格納する。データ格納部83には、撮影回数分の補正ベクトルHが格納され、平均化処理部84は、複数の撮影で得られた各補正ベクトルHを平均化する。補間処理部85は、補正ベクトルHをXY方向について補間処理(スプライン補間または線形補間)し、撮影領域62の全位置について補正ベクトルHを求め、歪み補正データを生成する。この歪み補正データは、高さ変動量Δに対応付けられて、前述の補正データ記憶部59に書き込まれる。
【0048】
次に、歪み補正データ作成モード時におけるデジタル露光装置10の動作を、図14のフローチャートに基づいて説明する。まず、移動ステージ12上に校正用基板がセットされ、操作部(図示せず)により歪み補正データ作成モードが設定されると(ステップS1のYes判定)、校正用基板上の校正パターンKが各カメラ25の撮影領域62に位置するように移動ステージ12が移動される(ステップS2)。この撮影位置にて、移動ステージ12の上下動機構12cが駆動され、校正用基板の上面が所定位置(例えば、Δ=0の合焦位置)となるように、Z方向に位置調整が行われる(ステップS3)。
【0049】
この状態で、カメラ25により、校正パターンKの撮影が所定回数行われ、各撮影が終了するたびに、補正ベクトル算出部81によって補正ベクトルHが算出される(ステップS4)。次いで、演算処理部82において、各撮影で得られた補正ベクトルHの平均化処理が施され(ステップS5)、補間処理により撮影領域62の全位置について補正ベクトルHが算出される(ステップS6)。こうして、所定の高さ変動量Δに関する歪み補正データが作成され、作成された歪み補正データは、補正データ記憶部59に書き込まれる(ステップS7)。
【0050】
この後さらに、上下動機構12cが駆動され、校正用基板の上面位置(つまり、高さ変動量Δ)が所定ステップずつ変更され(ステップS9)、各位置において、ステップS4〜S7の歪み補正データ作成処理が実施される。この歪み補正データ作成処理が複数の所定の高さ変動量Δについて実施されると(ステップS8のYes判定)、移動ステージ12が初期位置に移動され(ステップS10)、歪み補正データ作成モードが終了する。
【0051】
デジタル露光装置10は、このような歪み補正データ作成モードを備えることにより、経時変化によって生じる基準マークの検出誤差を適宜補正することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、基準マークを薄膜の凹凸によって形成しているが、これに限定されることなく、基準マークを印刷形成等の他の方法によって形成してもよい。また、基準マークの形成位置は適宜変更可能である。さらに、歪み補正データ作成モードを実行することで、基準マークの形状も適宜変更可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、基板上に形成された基準マークの位置検出を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、移動ステージ上に形成された基準マークの位置検出を行う形態にも適用可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、基板の上面位置を検出するZ方向センサを各カメラに設けているが、これに限定されることなく、複数のカメラに対して1つのZ方向センサを設けるようにしてもよい。また、このZ方向センサとしては、レーザ変位計に限られず、他の方式の測長器を用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、撮影を補助するための照明部をカメラ内に設けているが、これに限定されることなく、照明部の形態は種々の変形が可能である。また、種類の異なる複数の照明部を切り替え可能に設けてもよく、この場合は、照明の種類ごとに歪み補正データを作成することが好ましい。さらに、照明光の波長を可変としてもよく、この場合は、変更可能な波長ごとに歪み補正データを設けることが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、カメラ内に撮影素子及びレンズを固定配置しているが、これに限定されることなく、特開2007−10736号公報に示されるように、撮影素子及び/またはレンズを回動可能としてもよい。また、撮像素子を1次元イメージセンサとしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、本発明に係わる描画装置の一形態として、描画データに基づいて光ビームを変調することにより基板上に露光を行うデジタル露光装置を例示しているが、本発明はこれに限定されることなく、描画データに基づいてドット状のインクを射出して描画を行うインクジェット描画装置などに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】デジタル露光装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】移動ステージの構成を示す概略側面図である。
【図3】露光ヘッドの構成を示す模式図である。
【図4】DMDの構成を示す概略斜視図である。
【図5】露光ヘッドによる基板上の露光エリアを示す概略斜視図である。
【図6】アライメントユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】歪み補正データを構成する補正ベクトルを示す概略平面図である。
【図8】歪み補正がなされた基準マークと本来の基準マークとの位置関係の一例を示す図である。
【図9】デジタル露光装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】デジタル露光装置の動作シーケンスを示す概略平面図である。
【図11】歪み補正データ作成部の構成を示すブロック図である。
【図12】校正用基板上に形成された校正パターンを示す概略平面図である。
【図13】校正パターンの撮影画像を示す図である。
【図14】歪み補正データ作成モードを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10 デジタル露光装置
11 基板
11a 上面
12 移動ステージ(移動手段)
15 ガイドレール
17 露光部(描画手段)
18 露光ヘッド
19 光源ユニット
21 画像処理ユニット
24 アライメントユニット
25 カメラ(撮影手段)
26 Z方向センサ(計測手段)
30 DMD
39 DMDドライバ
40 露光エリア(描画領域)
50 照明部
51 ハーフミラー
52 テレセントリックレンズ
53 撮像素子
54 画像処理部
55 マーク抽出部
56 マーク照合部
57 マークデータ記憶部
58 歪み補正部
59 補正データ記憶部(記憶手段)
60 補正データ決定部(決定手段)
61 画像補正処理部(補正手段)
63 位置情報算出部
70 全体制御部
72 フレームデータ生成部(描画位置調整手段)
80 歪み補正データ作成部
81 補正ベクトル算出部
82 演算処理部
83 データ格納部
84 平均化処理部
85 補間処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段により、ステージ上もしくは前記ステージに載置された基板上に形成された基準マークを略垂直上方から撮影することによって前記基準マークの位置を計測する基準位置計測装置において、
前記撮影手段の合焦位置からの前記基準マーク面の変動量に対応する歪み補正データを記憶した記憶手段と、
前記合焦位置からの前記基準マーク面の変動量を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測値に応じて、適した歪み補正データを前記記憶手段から選択もしくは算出して決定する決定手段と、
前記選択手段によって決定された歪み補正データを用い、前記撮影手段によって得られた撮影画像の歪みを補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする基準位置計測装置。
【請求項2】
前記歪み補正データは、前記撮影手段の物理的変形による撮影画像の歪みと、前記合焦位置からのずれによる像倍率の変化とを補正するものであることを特徴とする請求項1に記載の基準計測装置。
【請求項3】
前記歪み補正データは、前記撮影手段の撮影画像の全位置に対応した2次元補正ベクトルからなることを特徴とする請求項1または2に記載の基準位置計測装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、テレセントリック光学系を備えていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の基準位置計測装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載の基準位置計測装置と、
描画データに基づき、描画領域を通過する基板に対して順次に描画を行う描画手段と、
前記描画領域を通過するように前記基板を前記描画手段に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記基準位置計測装置により計測された基準マークの位置に基づき、前記基板上への描画位置を調整する描画位置調整手段と、
を備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項6】
前記描画位置調整手段は、前記基準位置計測装置により計測された基準マークの位置に基づき、前記描画データを補正することを特徴とする請求項5に記載の描画装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記基板を載置して一次元軌道上を移動するステージからなり、前記基準位置計測装置及び前記描画手段は、前記一次元軌道上に固定配置されていることを特徴する請求項5または6に記載の描画装置。
【請求項8】
前記描画手段は、前記基板に対して露光を行うものであることを特徴とする請求項5から7いずれか1項に記載の描画装置。
【請求項9】
前記描画手段は、前記描画データに基づいて入射光を変調するデジタルマイクロミラーデバイスを備えていることを特徴とする請求項8に記載の描画装置。
【請求項10】
前記描画手段は、前記デジタルマイクロミラーデバイスを備えた露光ヘッドを、前記基板の移動経路に対して直交する方向に複数列配設したものであることを特徴とする請求項9に記載の描画装置。
【請求項11】
ステージ上もしくは前記ステージに載置された基板上に形成された基準マークを略垂直上方から撮影することによって前記基準マークの位置を計測する基準位置計測方法において、
前記基準マークの撮影系の合焦位置からの前記基準マーク面の変動量に対応する歪み補正データを記憶しておき、前記基準マーク面の位置を計測し、計測値に応じて、適した歪み補正データを選択もしくは算出して決定した歪み補正データを用いて撮影画像の歪みを補正することを特徴とする基準位置計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−249958(P2008−249958A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90722(P2007−90722)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】