説明

微量気体濃度の監視によるウエハプラズマ処理中のアーキング現象の検出

【解決手段】半導体プラズマ処理装置内で基板アーキングを検出する方法が提供されている。プラズマ処理装置の反応チャンバ内の基板支持体上に、基板が載置される。処理ガスが、反応チャンバ内に導入される。処理ガスからプラズマが生成され、基板は、プラズマで処理される。プラズマ処理中に反応チャンバ内で生成された選択ガス種のリアルタイム質量分析信号の強度が、監視される。選択ガス種は、基板アーキング現象によって生成されたものである。強度が閾値を越えた時に、アーキング現象が検出される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラズマ処理装置は、エッチング、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、イオン注入、レジスト除去などの技術によって基板を処理するために用いられる。プラズマ処理に用いられるプラズマ処理装置の1つのタイプは、上側電極および下側電極を収容する反応チャンバを備える。電極間のRF生成プラズマは、反応チャンバ内のウエハ基板およびチャンバ部品をエッチングするエネルギイオンおよび中性種を生成する。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態では、半導体プラズマ処理装置において基板アーキング(基板アーク放電)を検出する方法が提供されている。プラズマ処理装置の反応チャンバ内の基板支持体上に、基板が載置される。処理ガスが、反応チャンバ内に導入される。処理ガスからプラズマが生成され、基板は、プラズマで処理される。プラズマ処理中に反応チャンバ内で生成された選択ガス種のリアルタイム質量分析信号の強度が、監視される。選択ガス種は、基板アーキング現象によって生成されたものである。強度が閾値を越えた時に、アーキング現象が検出される。
【0003】
別の実施形態では、プラズマ処理装置は、反応チャンバの内部で基板を支持する基板ホルダを備える。ガス供給源は、ガス分配部材を用いて、反応チャンバの内部に処理ガスを供給する。電源は、反応チャンバの内部にエネルギを供給し、基板を処理するために処理ガスをプラズマ状態に励起する。ガスセンサは、基板アーキングによって生成されたガス種を特定するために、プラズマ処理中に反応チャンバ内のガス種を監視するよう適合されている。アラームは、基板アーキングによって生成されたガス種が特定された時に、警告信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】プラズマ装置の代表的な実施形態を示す断面図。
【0005】
【図1B】誘導結合プラズマ処理装置を示す断面図。
【0006】
【図2A】有機フォトレジスト被覆シリコンクーポンのArプラズマ内での処理について、原子質量の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【0007】
【図2B】熱伝導グリスを背面に塗布した有機フォトレジスト被覆シリコンクーポンのArプラズマ内での処理について、原子質量の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【0008】
【図2C】シリコンクーポンのArプラズマ内での処理について、原子質量の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【0009】
【図3】シリコンクーポンのCF4プラズマ内での処理について、原子質量の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【0010】
【図4A】有機フォトレジスト被覆シリコンクーポンのArプラズマ内での処理について、アーキング現象の発生時に原子質量の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【0011】
【図4B】有機フォトレジスト被覆シリコンクーポンのArプラズマ内での処理について、アーキング現象の発生時に時間の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【0012】
【図5】プラズマが生成されていないCF4/N2ガス混合物について、原子質量の関数として強度を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
半導体材料は、材料の層を選択的に構築および除去することによって、トランジスタ、ダイオード、コンデンサなど、特定の電子デバイスに加工されうる。集積回路の製造において、チップ上のデバイス数が増加し続け、それに伴って最小フィーチャサイズが小さくなることにより、異なる材料の層を時に困難なトポロジ上に蒸着する工程、材料を除去する工程、および、それらの層内にフィーチャを形成する工程など、集積回路製造に用いられる製造工程の多くに、ますます困難な要求が課されてきた。
【0014】
プラズマ化学蒸着(PECVD)は、半導体集積回路に様々な薄膜を形成するために利用できる。例えば、PECVDは、高純度かつ高品質のSiO2、Si34、Siなどの薄膜を形成することができる。薄膜形成の反応過程において、原材料は、ガス分子がガス中で熱的に解離され基板の表面上で結合して薄膜を形成するように、ガス成分の形態で反応チャンバに供給されうる。
【0015】
エッチングは、与えられた基板から半導体またはその他の材料の層を除去し、集積回路上にフィーチャを作る一技術である。例えば、有機フォトレジストなどの被覆マスク層を蒸着することによって、開口部(例えば、トレンチまたはビア)を基板層に形成することができる。マスク層は、トレンチ、コンタクト、または、ビアの形状にパターニングされてよく、その後に、エッチングが実行される。
【0016】
プラズマエッチングは、湿式エッチングの様々な方法と比較して、解像度が高く寸法および形状の制御能力が向上しているため、電子デバイス製造において、特に注目されている。したがって、プラズマエッチングは、大規模集積デバイスおよび集積回路を形成するための半導体ウエハの処理など、優れたパターン制御および描画が求められる場合に用いると有利である。
【0017】
プラズマリアクタは、超小型電子加工において、半導体ウエハに対して乾式エッチングまたは蒸着などの様々な処理を実行するために用いられてよい。ウエハがリアクタの真空チャンバの内部に配置され、エッチャントまたは蒸着ガスなどの処理ガスがチャンバ内に導入される。それらのガスは、プラズマを点火して維持するために励起される。プラズマを形成するためのガスの組成に応じて、プラズマは、ウエハから特定の材料をエッチングするために利用することもできるし、ウエハ上に材料の薄膜層を蒸着するために利用することもできる。処理チャンバは、処理ガス(すなわち、エッチング剤)を受け入れるよう構成されており、処理チャンバの1または複数の電極には、高周波(RF)電力が印加される。処理チャンバ内の圧力は、個々の処理に合わせて制御される。所望のRF電力が電極に印加されると、チャンバ内の処理ガスが活性化されて、プラズマが形成される。このように、プラズマは、半導体ウエハの選択された層に対して所望のエッチングを実行するために生成される。
【0018】
集積回路デバイスは、物理的サイズおよび動作電圧が共に小さくなり続けているため、デバイスに関連する製造歩留まりは、クリティカルフィーチャに影響する任意の欠陥の影響を受けやすくなっている。ウエハ表面上の欠陥は、フォトリソグラフィおよびエッチング工程中に、局所的にパターン転写を妨害する場合がある。
【0019】
それらの欠陥の原因の一つは、ウエハのプラズマ処理中に生じうるアーキング現象に関連している。一般に、アーキングとは、リアクタおよび/またはウエハの2つの表面の間に電流を流す過渡的な高密度プラズマフィラメントを指す。基板アーキングとは、リアクタおよびウエハの間、または、ウエハ内の2つの位置の間で生じるアーキングを指す。基板アーキングは、望ましくない材料のスパッタリング、材料の蒸着、または、いくつかの材料の高温揮発など、ウエハの材料劣化を潜在的に引き起こしうる。通例、アークは直径が小さく持続期間が短いが、アークの電力密度は、総電力損失が小さい場合でも、著しい損傷を引き起こしうるものである。例えば、基板アーキング現象は、ゲート構造、(無機または有機の)金属間誘電体層、または、金属相互接続線などのクリティカルフィーチャを損傷しうる微細な(すなわち、ミクロンのオーダーの)クレータを生じて、集積回路要素の故障または欠陥を引き起こしうる。したがって、多数のウエハが損傷を受ける前に基板アーキングの生じているプラズマ処理装置をラインから外してメンテナンスを実行できるように、リアルタイムで基板アーキングを検出する信頼性の高い方法が求められている。
【0020】
ガス種のリアルタイム監視と、プラズマ処理装置内の基板アーキングによって生じたガス種の特定とによって基板アーキングを検出する方法が提供されている。ウエハ内での基板アーキング現象、または、ウエハ表面およびプラズマチャンバ表面の間での基板アーキング現象により、プラズマ内に揮発種が放出される。例えば、基板アーキング現象は、基板の急速な加熱を引き起こし、シリコン、アルミニウム、銅(すなわち、アルミニウム含有種、銅含有種、または、シリコン含有種)、または、有機材料(すなわち、フォトレジストまたは有機誘電体)に関連する揮発性分解生成物を放出して、ウエハ表面付近で分解生成物の濃度の急激な増加すなわちスパイクを引き起こしうる。フォトレジストの分解に関係する生成物は、例えば、より安定な分子を作る場合があり、ウエハ表面付近に配置されたガス濃度を測定可能なセンサまで拡散しうる。一方、シリコン、アルミニウム、または、銅に関係する分解生成物は、検出される前にウエハ表面上で凝結しうる。
【0021】
基板アーキング現象は(例えば、有機材料の分解によって)ガス種を生成しうるが、いくつかのガス種は、処理ガス(すなわち、エッチングガスまたはCVDガス)のバックグラウンド濃度が高いために検出できない場合がある。エッチングに用いられる処理ガスの例としては、炭化水素ガス(例えば、Cxy)、フッ化炭素(例えば、Cxy)、ハイドロフルオロカーボンガス(例えば、Cxyz)、ハロゲン含有ガス(例えば、NF3、HBr、Cl2)、酸素含有ガス(例えば、O2)、窒素含有ガス(例えば、N2、NH3)、または、不活性ガス(例えば、He、Ar)が挙げられる。薄膜蒸着に用いられる処理ガスの例としては、SiH4、SiF4、Si26、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、および、それらの混合物からなる群より選択されたシリコン含有反応ガスが挙げられる。薄膜蒸着の処理ガスとしては、H2、O2、N2、NH3、NF3、N2O,NO、および、それらの混合物が挙げられる。
【0022】
図1は、エッチングのための代表的な半導体材料プラズマ処理装置100を示す。プラズマ処理装置100は、プラズマ処理中に基板106を支持する基板支持体104を収容する反応チャンバ102を備える。反応チャンバ102の内部で基板106を支持するための基板支持体104は、処理中に基板支持体104上に基板106を固定するよう動作可能なクランプ装置(好ましくは、静電チャック)を備えてよい。
【0023】
図1に示したプラズマ処理チャンバの一例は、反応チャンバ102の壁を形成するトッププレート108と、トッププレート108に取り付けられたシャワーヘッド電極110とを有するシャワーヘッド電極アセンブリを備える。ガス供給源112は、シャワーヘッド電極110を通して反応チャンバ102の内部に処理ガスを供給する。シャワーヘッド電極110は、シャワーヘッド電極110および基板支持体104の間に位置するプラズマ反応チャンバ102内の空間に処理ガスを注入するためにシャワーヘッド電極110の厚さを通して延びる複数のガス流路114を備える。
【0024】
処理ガスは、シャワーヘッド電極110を通して、反応チャンバ102の内部に流入する。次に、処理ガスは、電源116A(シャワーヘッド電極110を駆動するRF源など)、および/または、約0.3MHzから約600MHzまでの1または複数の周波数(例えば、2MHz、13.56MHz、60MHzなど)で基板支持体104内の電極を駆動する約0.3MHzから約600MHzまでの1または複数の周波数(例えば、2MHz、13.56MHz、60MHzなど)の電源116Bによって、プラズマ処理チャンバ100内でプラズマ状態へ励起される。シャワーヘッド電極110に印加されるRF電力は、異なるガス組成がプラズマ処理装置100に供給される場合など、異なる処理工程を実行するために変更されてよい。別の実施形態において、シャワーヘッド電極110は、接地されてもよい。
【0025】
一実施形態において、2つのRF源からシャワーヘッド電極110および/または基板支持体104にRFエネルギを供給することによって、プラズマ処理チャンバ100の内部でプラズマを生成してもよいし、シャワーヘッド電極110を電気的に接地して、単一の周波数または複数の周波数のRFエネルギを基板支持体104に供給してもよい。さらに、シャワーヘッド電極110および基板支持体104の間に位置する空間内にプラズマを閉じ込めるために、プラズマ閉じ込めリングアセンブリ118が、シャワーヘッド電極110および基板支持体104の外側に提供されてよい。RF容量結合プラズマリアクタで用いられるプラズマ閉じ込めリングおよび二次接地に関する詳細な説明については、同一出願人による米国特許第5,534,751号に記載されており、これは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0026】
基板アーキング現象が起こり、分解生成物に関連するガス種の放出が起こると、かかるガスが処理ガスの動的な流れの中で希釈されて、エッチングガス中の分解生成物の濃度がガス検出器の検出限界未満に下がる前に、これらの分解生成物を検出することが好ましい。
【0027】
基板アーキングに関連するガス種は、サンプリング構造122を用いたガスセンサ120による分析のために揮発性分解生成物を収集することによって検出され、ガスライン124に沿ってガスセンサに輸送されてよい。かかるガス種の凝結を防ぐために、ガスライン124は、加熱されてよい。基板アーキングに関連するガス種の感度を高めるために、サンプリング構造122は、基板支持体104上に載置された基板106の近傍に配置されてよい。
【0028】
一実施形態において、サンプリング構造122は、プラズマ閉じ込めリング118の外側に配置されたチューブであってよい。サンプリングチューブの材料の例としては、石英、シリコン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、または、イットリアなどのその他のプラズマ耐性セラミック材料が挙げられる。別の実施形態において、サンプリング構造122は、シャワーヘッド電極110内に直接埋め込まれたチャネルであってもよい。基板アーキングが検出されると、アラーム126からの信号が生成される。例えば、アラーム126は、音声警告、視覚警告、電子的な記録、もしくは、基板アーキングを最小化するための是正措置を取るか、または、プラズマ処理を終了するように促すオペレータへの指示であってよい。
【0029】
別の実施形態では、図2に示すように、誘導結合プラズマ(ICP)処理装置200を用いて、低圧(すなわち、50mTorr未満)で真空チャンバ内に処理ガスを供給すると共に、高周波(RF)エネルギをガスに印加することにより、蒸着(例えば、プラズマ化学蒸着すなわちPECVD)、および、基板上の材料のプラズマエッチングを実行することができる。図2は、ICPプラズマ処理装置200の一実施形態を示す断面図である。ICPプラズマ処理チャンバの一例は、カリフォルニア州フレモント、ラムリサーチ社によって製造されたTCP(登録商標)エッチングまたは蒸着システムである。ICPプラズマ処理装置は、例えば、共同所有の米国特許第4,948,458号にも記載されており、これは、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。反応チャンバ202は、反応チャンバ202の内部で基板206を支持する基板支持体204を備える。誘電体窓208は、反応チャンバ202の上壁を形成する。処理ガスは、ガス分配部材210を通して反応チャンバ202の内部に注入される。ガス分配部材210の例としては、シャワーヘッド、ガスインジェクタ、または、その他の適切な構成が挙げられる。ガス供給源212は、ガス分配部材210を通して反応チャンバ202の内部に処理ガスを供給する。
【0030】
処理ガスは、反応チャンバ202の内部に導入されると、エネルギ源216が反応チャンバ202の内部にエネルギを供給することによって、プラズマ状態に励起される。エネルギ源216は、RFエネルギを反応チャンバ202に誘導結合するために、RF源218AおよびRFインピーダンス整合回路218Bによって電力供給された外部平面アンテナであることが好ましい。平面アンテナにRF電力を印加することによって生成された電磁場は、処理ガスを励起して、基板206の上方に高密度プラズマP(例えば、1011〜1012イオン/cm3)を形成する。
【0031】
誘電体窓208は、平面アンテナの下にあり、ガス分配部材210は、誘電体窓208の下方に配置される。高密度プラズマは、基板206の蒸着またはエッチングのために、ガス分配部材210および基板206の間の領域内で生成される。
【0032】
図1の実施形態と同様に、基板アーキングに関連するガス種は、サンプリング構造222を用いたガスセンサ220による分析のためにかかるガス種を収集することによって検出され、ガスライン224に沿ってガスセンサに輸送されてよい。分解生成物の凝結を防ぐために、ガスライン224は、加熱されてよい。分解生成物の感度を高めるために、サンプリング構造222は、基板支持体204上に載置された基板206の近傍に配置される。基板アーキングが検出されると、アラーム226からの警告信号が生成される。例えば、アラーム226は、音声警告、視覚警告、電子的な記録、もしくは、基板アーキングを最小化するための是正措置を取るか、または、プラズマ処理を終了するように促すオペレータへの指示であってよい。
【0033】
望ましい実施形態において、ガスセンサ120/220は、質量分析計、好ましくは、残留ガス分析(RGA)質量分析計であってよい。RGA質量分析計は、真空システム内での微量ガス濃度の測定に適しており、サンプルガスを分析することによって動作する。サンプルガスはイオン化され、それらのイオンは、直流(DC)および高周波(RF)電位の組み合わせを用いて、四重極電場によって質量電荷比に基づいて分離される。分析計は、イオン束対質量電荷比を測定することにより、サンプルガスの詳細な化学的分析を提供する。RGAは、感度またはスキャン速度(例えば、単一質量で20Hz以上)を高めるために、電子倍増管を備えてよい。好ましい実施形態において、RGAは、フォトレジストの分解副生成物を検出するために用いられてよく、その分解副生成物は、背景の処理ガスを越えて検出可能である。例えば、プラズマ処理中に、質量分析計からのリアルタイムな信号を生成することができる。質量分析計からのリアルタイム信号は、フルスペクトルの原子質量(例えば、200AMUまで)、または、単一質量での収集を含みうる。
【0034】
上述のように、処理ガスのバックグラウンド濃度が高いために、基板アーキング現象に関連するすべてのガス種を容易に検出できるわけではない。例えば、基板アーキング現象に関連するガス種と、処理ガスは、リアルタイムRGA質量分析の特性解析の際に、重なり合うピーク(すなわち、同じAMUに2つのピーク)を生成しうる。この場合、処理ガスに対してかかるガス種の濃度が低いために、かかるガス種に関連するピークは検出不可能になる場合がある。
【0035】
したがって、基板アーキングに関連する選択ガス種は、処理ガスの存在下で容易に検出される必要がある。基板アーキングに関連する選択ガス種は、以下の比較によって識別されうる:
(i)アーキング現象がない場合の処理ガスの基準(または参照)質量分析信号と、
(ii)基板アーキング現象中の質量分析信号との比較。
2つの異なる質量分析信号を比較することで、基板アーキングに関連する選択ガス種を容易に特定することができる。
【0036】
別の実施形態において、ガスセンサは、誘導結合プラズマ発光(ICP−OE)分光分析装置、赤外吸収分光分析装置、または、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析装置を備えてもよい。ただし、ICP−OEおよびFTIR技術は、異なるガスを検出する能力が、原子および分子の構造に強く依存するため、特定の応用例に対しては決して満足できるものではない場合がある。
【0037】
例1
【0038】
プラズマ処理中のアーキング現象をシミュレートするために、シリコンクーポン(約3cm×3cm)を、193nm用の有機フォトレジストコーティングで被覆し、続いて、プラズマ処理中にArプラズマ内で熱分解した。これらの試験は、不活性ガスプラズマ内での有機フォトレジストの副生成物の熱分解が、RGA質量分析技術を用いて検出可能であることを実証した。試験は、ラムリサーチ社(カリフォルニア州フレモント)製の2300(登録商標)EXELAN(登録商標)FLEX−3XTM誘電体エッチングシステムで行われ、ガス種は、スタンフォードリサーチシステムズ社(カリフォルニア州サニーベール)製のRGA200残留ガス分析器によって監視された。
【0039】
熱分解試験は、シリコン試験クーポン(約3cm×3cm)上に193nm用の有機フォトレジストを被覆し、Arプラズマ内で試験クーポンをプラズマ処理することによって実行された。各試験クーポンは、剥き出しのシリコンウエハ上に配置された。200SCCMのArのガス混合物が、80mTorrのチャンバ圧のエッチングチャンバ内に導入された。約2MHzの周波数で約1500Wおよび約60MHzの周波数で約800Wの二重周波数RF電力が、下側電極に印加された。下側電極の温度は約60℃に設定され、上側電極の温度は約120℃に設定された。プラズマ処理中、シリコンウエハの温度は、約60℃に設定された下側電極の温度よりも約20℃から約30℃高かった。シリコンウエハ上に設置された試験クーポンの温度は、クーポンとシリコンウエハとの間の熱的結合の程度に応じて、潜在的にはるかに高い。この場合、熱的接触が弱いと、試験クーポンは、シリコンウエハの温度よりもずっと高い温度になると予測される。総処理時間は、約120秒であった。プラズマ処理中、処理チャンバを流れるガスの組成が、RGA質量分析によって監視された。プラズマ曝露および加熱の組み合わせによって、有機フォトレジストの熱分解が起こった。図2Aは、Arプラズマ内での有機フォトレジストの分解について、原子質量(原子質量単位すなわちAMU)の関数として強度(任意の単位)を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図である。
【0040】
有機フォトレジストの分解に関連する原子質量のピークを特定するために、シリコンと、分解していないフォトレジストコーティングを有するシリコンとについて、RGA質量分析計からのリアルタイム信号を測定した。上述の試験条件を以下のものに対して繰り返した:
(i)Arプラズマ内において、クーポンなしの剥き出しのシリコンウエハ、および、
(ii)Arプラズマ内において、熱伝導グリスを塗った剥き出しのシリコンウエハに取り付けられたフォトレジスト被覆シリコンクーポン。
【0041】
熱分解を防ぐために、試験クーポンの背面に熱伝導グリスを塗布して、プラズマ処理によるフォトレジストコーティングからの熱の除去を促進した。これにより、熱伝導グリスなしの場合と比較すると、試験クーポンの温度がはるかに低くなる。剥き出しのシリコンクーポンおよび熱伝導グリスを塗布したフォトレジスト被覆シリコンクーポンについて、RGA質量分析計からのリアルタイム信号を、図2Bおよび図2Cにそれぞれ示す。図2Aないし図2Cのリアルタイム信号は、プラズマ処理の最初の数秒間に測定された。
【0042】
図2Aないし図2Cを比較すると、原子質量86のピークは、有機フォトレジストの熱分解に関連したものであると決定され、プラズマ処理の継続と共に時間の関数として徐々に減衰した。したがって、この試験により、フォトレジストの熱分解の結果、質量86の追加的なピークが生じることが示された。
【0043】
ただし、質量86のピークがフォトレジスト分解の潜在的な指標として特定されたものの、フッ素系のエッチングガスを用いると、フォトレジスト分解に関連する質量86のピークを潜在的に隠してしまう可能性がある。上述の試験は、剥き出しのシリコンクーポンを処理するためにArの代わりにCF4ガスを用いて繰り返された。CF4プラズマ内の剥き出しのシリコンについて、RGA質量分析計からのリアルタイム信号を、図3に示す。図3のリアルタイム信号から、CF4プラズマは、有機フォトレジストがない場合には、質量85および質量86の2つの強度ピークによって特徴付けられることがわかった。したがって、有機フォトレジスト分解を示唆するための質量ピーク86の検出は、処理ガスがフッ化炭素系(例えば、CF4)である場合には、完全に満足できるものではない可能性がある。
【0044】
例2
【0045】
次のセットの試験では、アーキング現象中にRGA質量分析によって有機フォトレジスト分解生成物を検出した。上述のように、プラズマ処理中にガス濃度のリアルタイム分析を行うためのRGA200残留ガス分析器に接続された2300(登録商標)EXELAN(登録商標)FLEX−3X(商標)誘電体エッチングシステム内で、試験を行った。
【0046】
シリコンクーポンは、193nm用の有機フォトレジストで被覆され、Arプラズマ内でプラズマ処理を受けた。プラズマ処理中、処理チャンバを流れるガスの組成が、RGA質量分析によって監視された。アーキングを誘導するために、金属線をクーポンに接合することによって部分的に接地された剥き出しのシリコンクーポン(約3cm×3cm)に、フォトレジスト被覆ウエハを取り付けた。
【0047】
575SCCMで流れるアルゴンが、80mTorrのチャンバ圧のエッチングチャンバ内に導入された。約27MHzの周波数で約1000Wの電力を有するRF電力が、下側電極に印加された。下側電極の温度は約20°Cに設定され、上側電極の温度は約80℃に設定された。プラズマ処理中、処理チャンバを流れるガスの組成が、RGA質量分析によって監視された。シリコンウエハは、約60秒間プラズマ処理を施され、その際、アーキング現象が処理の約25秒後に検出された。試験が完了した後、アーキング現象が、シリコンクーポンおよびシャワーヘッド電極の目視検査によって確認された。シリコンクーポンおよびシャワーヘッド電極は共に、アーキングによる損傷に特徴的な変色を示した。
【0048】
図4Aは、Arプラズマ内での有機フォトレジストの分解について、原子質量(原子質量単位すなわちAMU)の関数として強度(任意の単位)を表したRGA質量分析計からのリアルタイム信号を示す図である。図4Aの関心領域(すなわち、質量12.1、質量15、質量25.3、質量26.3、および、質量85.6)が、黒い矢印で示されている。図4Bは、質量12.1、質量15、質量25.3、質量26.3、および、質量85.6について、プラズマ処理時間の関数として強度を示したRGA質量分析計からのリアルタイム信号である。図4Bに示すように、5つの原子質量では、約20秒で強度の急激な増加が見られた。約25から30秒にかけて、5つの原子質量は、強度の最大値に達した。約35秒で、5つの原子質量の強度は、元のレベルに戻った。したがって、この試験では、アーキング現象に関連したフォトレジストの熱分解が、質量12.1、質量15、質量25.3、質量26.3、および、質量85.6で追加のピークをもたらすことが示された。
【0049】
上述のように、フッ素系のエッチングガスを利用すると、アーキング現象に関連したフォトレジスト分解の発生を示す質量ピークを潜在的に隠す可能性がある。80mTorrの圧力のエッチングチャンバ内に150SCCMのCF4/50SCCMのN2を流入させることによって、CF4/N2エッチングガス混合物のガス濃度のリアルタイム分析を実行した。プラズマは生成されなかった。CF4/N2ガス混合物について、RGA質量分析計からのリアルタイム信号を、図5に示す。図5から、質量分析計からのCF4/N2のリアルタイム信号は、アーキングによる任意の強度増大を潜在的に隠す質量12.1および質量25.3の強度ピークによって特徴付けられる。図4Aおよび図5のリアルタイム信号を比較すると、質量15および質量26.3の追加のピークにつながるアーキング現象は、CF4エッチングガス内で容易に検出可能であることがわかった。
【0050】
好ましい実施形態は、単なる例示であり、決して限定を意図したものではない。本発明の範囲は、上述の記載ではなく添付の請求項によって与えられ、特許請求の範囲内に含まれるすべての変形物および等価物が、本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体プラズマ処理装置内の基板アーキングを検出する方法であって、
プラズマ処理装置の反応チャンバ内の基板支持体上に基板を載置する工程と、
前記反応チャンバ内に処理ガスを導入する工程と、
前記処理ガスからプラズマを生成する工程と、
前記プラズマで前記基板を処理する工程と、
プラズマ処理中に前記反応チャンバ内で基板アーキング現象によって生成される選択ガス種のリアルタイム質量分析信号の強度を監視する工程と、
前記強度が閾値を越えた時に前記アーキング現象を検出する工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記基板は、アルミニウム、銅、シリコン、有機誘電体、または、有機フォトレジストを含み、
前記基板アーキング現象によって生成される前記選択ガス種は、アルミニウム含有種、銅含有種、若しくは、シリコン含有種、および/または、前記有機材料の分解生成物を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
前記基板アーキング現象によって生成される選択ガス種を特定する工程
を備え、
前記選択ガス種を特定する工程は、
前記基板アーキング現象の非存在時に前記処理ガスのリアルタイム質量分析信号の強度を監視する工程と、
前記基板アーキング現象中に、リアルタイム質量分析信号の強度を監視する工程と、
前記基板アーキング現象の非存在時の前記処理ガスのリアルタイム質量分析信号の前記強度と、前記基板アーキング現象中のリアルタイム質量分析信号の前記強度とを比較する工程と、
を備える、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
リアルタイム質量分析信号の強度を監視する工程は、残留ガス分析(RGA)質量分析計、誘導結合プラズマ発光(ICP−OE)分光分析装置、赤外吸収分光分析装置、または、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析装置によって実行される、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、
前記選択ガス種は、残留ガス分析器(RGA)において12、15、25、26、85、または、86原子質量単位(AMU)の信号を生成する分解生成物を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
アーキング現象が検出された時に警告信号を生成し、前記プラズマ処理を終了する工程
を備える、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記反応チャンバ内に処理ガスを導入する工程は、シャワーヘッドを通して処理ガスを注入することによって実行され、
選択ガス種のリアルタイム質量分析信号の強度を監視する工程は、前記シャワーヘッド内のチャネル、または、前記基板に隣接したサンプリングチューブから、ガス種を収集する工程を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記プラズマで前記基板を処理する工程は、
(a)半導体、金属、若しくは、誘電体のプラズマエッチング、又は、(b)導電材料若しくは誘電材料の蒸着、を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
プラズマエッチングのための前記処理ガスは、炭化水素ガス、フッ化炭素ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、ハロゲン含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガス、および、不活性ガス、ならびに、それらの混合物を含む、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、
蒸着のための処理ガスは、SiH4、SiF4、Si26、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)からなる群より選択されたシリコン含有反応ガス、又は、前記選択されたシリコン含有反応ガスと、H2、O2、N2、NH3、NF3、N2O、及び、NOを含むさらなる処理ガスとの組み合わせ、並びに、それらの混合物を含む、方法。
【請求項11】
プラズマ処理装置であって、
反応チャンバの内部で基板を支持するための基板ホルダと、
ガス分配部材を用いて、前記反応チャンバの前記内部に処理ガスを供給するガス供給源と、
前記反応チャンバの前記内部にエネルギを供給し、前記基板を処理するために前記処理ガスをプラズマ状態に励起する電源と、
基板アーキングによって生成されたガス種を特定するために、プラズマ処理中に前記反応チャンバ内のガス種を監視するよう適合されたガスセンサと、
基板アーキングによって生成されたガス種が特定された時に、警告信号を生成するアラームと、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載のプラズマ処理装置であって、
前記ガスセンサは、残留ガス分析(RGA)質量分析計、誘導結合プラズマ発光(ICP−OE)分光分析装置、赤外吸収分光分析装置、または、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析装置である、プラズマ処理装置。
【請求項13】
請求項11に記載のプラズマ処理装置であって、
前記ガスセンサは、プラズマ処理中に処理ガスに関する質量分析計からのリアルタイム信号を監視するよう適合された残留ガス分析(RGA)質量分析計であり、
基板アーキングによって生成された前記ガス種は、有機フォトレジストの分解生成物である、プラズマ処理装置。
【請求項14】
請求項11に記載のプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置は、半導体、金属、または、誘電体に適合されたプラズマエッチャ、又は、導電材料または誘電材料を蒸着するよう適合された蒸着チャンバである、プラズマ処理装置。
【請求項15】
請求項11に記載のプラズマ処理装置であって、
前記ガス分配部材は、シャワーヘッドである、プラズマ処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載のプラズマ処理装置であって、さらに、
プラズマ処理中に前記反応チャンバからガス種を収集するよう適合されたサンプリング構造と、
前記ガスセンサにガス種を輸送するよう適合されたガスラインと、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項17】
請求項16に記載のプラズマ処理装置であって、
前記サンプリング構造は、前記シャワーヘッド内のチャネル、または、前記基板ホルダに隣接するチューブであり、
前記ガスラインは加熱される、プラズマ処理装置。
【請求項18】
請求項11に記載のプラズマ処理装置であって、
前記ガス分配部材はシャワーヘッド電極であり、
前記電源は高周波(RF)電源である、プラズマ処理装置。
【請求項19】
請求項18に記載のプラズマ処理装置であって、さらに、
前記シャワーヘッド電極および前記基板ホルダの外側に配置されたプラズマ閉じ込めリングアセンブリを備える、プラズマ処理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−523774(P2011−523774A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509471(P2011−509471)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/002726
【国際公開番号】WO2009/139828
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】