説明

横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板およびその製造方法

【課題】HEMTのシート抵抗を非接触で精度良く測定することができる横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板およびこの電子デバイス用エピタキシャル基板を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に、不純物拡散抑制層を形成する工程と、前記高抵抗Si単結晶基板の他方の面上に、絶縁層としてのバッファを形成する工程と、該バッファ上に、複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて主積層体を形成してエピタキシャル基板を作製する工程と、該エピタキシャル基板の主積層体の抵抗を非接触で測定する工程とを具えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス用エピタキシャル基板およびその製造方法に関し、特に、横方向を電流導通方向とするHEMT用エピタキシャル基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC用デバイス等の高速化に伴い、高速の電界効果トランジスタ(FET: Field effect transistor)として、高電子移動度トランジスタ(HEMT: High electron mobility transistor)が広く用いられるようになっている。このような電界効果型のトランジスタは、例えば図1に模式的に示されるように、絶縁性基板21上にチャネル層22および電子供給層23を積層し、この電子供給層23の表面にソース電極24、ドレイン電極25およびゲート電極26を配設することにより形成されるのが一般的である。デバイスの動作時には、ソース電極24、電子供給層23、チャネル層22、電子供給層23およびドレイン電極25の順に電子が移動して横方向を主電流導通方向とし、この横方向の電子の移動は、ゲート電極26に印加される電圧により制御される。HEMTにおいて、バンドギャップの異なる電子供給層23およびチャネル層22の接合界面に生じる電子は、通常の半導体内と比較して高速で移動することができる。ここで、横方向の電子の移動、すなわち電流は、ゲート電圧によって制御され、各種デバイスとして動作する。
【0003】
特許文献1は、絶縁性基板としてSi単結晶基板を用い、その上にIII族窒化物層を成長させた構造を開示し、基板を高抵抗(比抵抗が100Ω・cm超え)として不純物の混入を防ぐことによりキャリアを低減させ、高周波領域でのエネルギー損失を減少させる技術が記載されている。しかしながら、高抵抗Si単結晶基板の表面上にIII族窒化物層を成長させた場合、高抵抗Si単結晶基板の裏面が低抵抗化してしまう現象が発生する。これは、III族窒化物層のエピタキシャル成長中に、Si単結晶基板の裏面からp型のキャリアとなるIII族元素がSi単結晶基板中に拡散する結果として、Si基板の導電性が大きくなってしまうことによるものである。
【0004】
ところで、HEMTの特性の一つであるチャネル層22のシート抵抗を測定するには、接触式または非接触式の抵抗測定方法がある。接触式の抵抗測定方法としては、ホール効果測定法が挙げられ、電子供給層23側表面に電極を配置することによりチャネル層22のウェーハ中心でのシート抵抗値を測定するものである。この方法は、チャネル層22と基板21との間にバッファを設け、このバッファを絶縁層として作用させることでチャネル層22だけの抵抗値が得られる一方で、表面に電極を取り付ける破壊検査となるため、この測定に用いたウェーハはその後用いることができないという問題がある。
【0005】
一方、非接触式の抵抗測定方法としては、電磁誘導方式によりシート抵抗値を測定する方法が一般に用いられる。この方法は、非接触であるため、測定に用いたウェーハを無駄にすることがなくなり、また、実際にデバイスを作製するウェーハ自身の全体の面内分布を得ることができる。しかしながら、かかる方法は、高抵抗Si単結晶基板を用い、裏面が上述したように低抵抗化したSi単結晶基板の場合には、基板の裏面の抵抗値も全体のシート抵抗に含まれてしまうこととなるため、シート抵抗を精度良く測定することができないという問題があった。
【0006】
これに関し、Si基板裏面の低抵抗化した部分を除去する工程を経れば、上記問題を解決することは可能であるが、工程数が増えるため作業性を悪化させるというという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−522447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、HEMTのシート抵抗を非接触で精度良く測定することができる横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板およびこの電子デバイス用エピタキシャル基板を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に、不純物拡散抑制層を形成する工程と、前記高抵抗Si単結晶基板の他方の面上に、絶縁層としてのバッファを形成する工程と、該バッファ上に、複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて主積層体を形成してエピタキシャル基板を作製する工程と、該エピタキシャル基板の主積層体の抵抗を非接触で測定する工程とを具えることを特徴とする横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【0010】
(2)前記エピタキシャル基板を作製する工程の後、前記不純物拡散抑制層および前記高抵抗Si単結晶基板の少なくとも一部を除去する工程と、前記主積層体上に電極を形成する工程とをさらに具える上記(1)に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【0011】
(3)前記不純物拡散抑制層は、前記一方の面を熱酸化することによって形成される上記(1)または(2)に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【0012】
(4)前記他方の面側に形成される層は、化学気相成長法を用いてエピタキシャル成長させることにより形成される上記(1)、(2)または(3)に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【0013】
(5)高抵抗Si単結晶基板と、該高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に形成した不純物拡散抑制層と前記高抵抗Si単結晶基板の他方の面上に形成した絶縁層としてのバッファと、該バッファ上に複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて形成した主積層体とを具え、前記高抵抗Si単結晶基板の、前記一方の面から1μmの深さ位置までの範囲において、III族元素の濃度が1×1016atoms/cm3以下であることを特徴とする横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板。
【0014】
(6)前記不純物拡散抑制層が、Siの酸化物、窒化物または炭化物からなる上記(5)に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【0015】
(7)前記バッファは、超格子構造または傾斜組成構造を有する上記(5)または(6)に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【0016】
(8)前記バッファは、C濃度が1×1018atoms/cm3以上である上記(5)、(6)または(7)に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【0017】
(9)前記高抵抗Si単結晶基板は、比抵抗が5000Ω・cm以上である上記(5)〜(8)のいずれか一に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板は、高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に形成した不純物拡散抑制層を具えることにより、シート抵抗を非接触で精度良く測定することができる。
【0019】
また、本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法によれば、高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に、不純物拡散抑制層を形成することにより、シート抵抗を非接触で精度良く測定することができる本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、一般的な電界効果トランジスタを示す模式的断面図である。
【図2】図2は、本発明に従う電子デバイス用エピタキシャル基板の模式的断面図である。
【図3】図3(a)、(b)は、非接触式の抵抗測定装置を用いてシート抵抗の面内分布を測定したときの結果であり、図3(a)は実施例、図3(b)は比較例である。
【図4】図4は、不純物拡散抑制層を形成しないときの、Si単結晶基板の裏面(一方の面)から深さ方向にSIMS(二次イオン質量分析法)により成分分析したときの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板の実施形態について図面を参照しながら説明する。図2は、本発明に従う電子デバイス用エピタキシャル基板の断面構造を模式的に示したものである。なお、図2は、説明の便宜上、厚さ方向を誇張して描いたものである。
【0022】
図2に示すように、本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板1は、横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板1であって、高抵抗Si単結晶基板2と、この高抵抗Si単結晶基板2の一方の面2a上に形成した不純物拡散抑制層3と、高抵抗Si単結晶基板2の他方の面2b上に形成した絶縁層としてのバッファ4と、このバッファ4上に複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて形成した主積層体5とを具え、高抵抗Si単結晶基板2の、一方の面2aから1μmの深さ位置までの範囲において、III族元素の濃度が、1×1016atoms/cm3以下であることを特徴とし、かかる構成を有することにより、HEMTのシート抵抗を非接触で精度良く測定することができるものである。
【0023】
ここで、「横方向を電流導通方向とする」とは、図1で示したように、ソース電極24からドレイン電極25へ、主に積層体の幅方向に電流が流れることを意味し、例えば半導体を一対の電極で挟んだ構造のように、主に縦方向すなわち積層体の厚さ方向に電流が流れるものとは異なることを意味する。
【0024】
高抵抗Si単結晶基板2の面方位は特に指定されず、(111),(100),(110)面等を使用することができるが、III族窒化物の(0001)面を表面平坦性よく成長させるためには、(111)面を使用することが望ましい。また、伝導型はp型またはn型のいずれでもよい。
【0025】
高抵抗Si単結晶基板2は、比抵抗値が5000Ω・cm以上とするのが好ましく、比抵抗を大きくすることにより、高周波特性の優れた電子デバイス用エピタキシャル基板を作製することができる。また、このような基板は、Si結晶の高純度化が容易なFZ法で作製するのが好ましい。高抵抗の基板を使用することにより、空乏層を有効に広げることができ、基板表面に形成されるキャリアと、基板に存在する電荷の容量性あるいは誘導性の結合による電子デバイスの高周波動作時の損失を抑制できる。なお、低抵抗の基板を使用する場合には、本発明が課題とする低抵抗化の問題は生じないため、本発明では基板を高抵抗基板に限定した。
【0026】
不純物拡散抑制層3は、単に裏面を保護するだけではなく、Si単結晶基板裏面に回りこんでp型のキャリアとなるIII族元素が基板中に拡散し、Si単結晶基板の導電性が大きくなってしまうことを防ぐ。これにより、高抵抗Si単結晶基板2の、一方の面2aから1μmの深さ位置までの範囲において、III族元素の濃度が、1×1016atoms/cm3以下とすることができる。このような不純物のレベルとすることにより、Si単結晶基板の裏面のシート抵抗を10000Ω/□以上とすることができる。また、III族元素は、Si単結晶基板2内でp型不純物として機能するため、上記の濃度範囲とすることにより、基板表面に形成される電極と、前記p型不純物の容量性あるいは誘導性の結合による電子デバイスの高周波動作時の損失を抑制できる。なお、不純物濃度は、SIMS分析を用いて測定する。この場合、基板の裏面から深さ方向の不純物濃度分布を測定する。この際、Alの不純物濃度がGaの不純物濃度より小さいことが望ましい。AlはGaよりも活性化エネルギーが小さく、よりp型キャリアを発生しやすいからである。なお、不純物拡散抑制層3としては、例えばSiの酸化物、窒化物または炭化物等が挙げられ、その厚さは0.1μm以上であるのが好ましい。0.1μmより薄い場合、不純物拡散抑制層としての機能を十分果たすことができない場合があるためである。また、前記厚さの上限は特に限定されるものではないが、不純物拡散抑制層の製造による工程時間の増加を考慮すると、10μm以下が好ましい。ここで、不純物拡散抑制層の厚さは、エピタキシャル成長させてエピタキシャル基板を作製する工程の直前での厚さを意味する。基板洗浄により不純物拡散層がエッチングされる等のことを加味する必要があるからである。
【0027】
バッファ4は、超格子構造または傾斜組成構造を有するのが好ましい。超格子構造とは、図2に示すように、第1層7aと第2層7bを周期的に含むように積層することを意味する。第1層7aと第2層7b以外の層(たとえば組成遷移層)を含むことは可能である。また、傾斜組成構造とは、特定のIII族元素含有量を膜厚方向に傾斜させることを意味する。
【0028】
また、バッファ4は、図2に示すように、Si単結晶基板2と接する初期成長層6および初期成長層6上の超格子積層構造からなる超格子積層体7を有するのが好ましい。初期成長層6は例えばAlN材料からなることができ、初期成長層6をAlNで形成することにより、Si単結晶基板2との反応を抑制し、縦方向耐圧の向上を可能とする。これは、初期成長層6をGa,Inを含むIII族窒化物材料で形成した場合、Ga,Inが基板のSiと反応して欠陥を発生させ、エピタキシャル膜内に貫通欠陥を誘起することによる、縦方向耐圧の低下の抑制を目的としている。ただし、ここでいうAlN材料は、1%以下の微量不純物を含んでいても良く、例えば、上記Ga,Inをはじめとして、Si,H,O,C,B,Mg,As,Pなどの不純物を含むことができる。
【0029】
バッファ4は、C濃度が1×1018atoms/cm3以上であるのが好ましい。縦方向耐圧を向上させるためである。また、バッファ4が低抵抗であると、上述したような基板裏面の低抵抗化と同様の悪影響が懸念される。
【0030】
さらに、本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板1は、高抵抗Si単結晶基板2の、初期成長層6から0.1μmの深さ位置までの範囲において、III族原子の合計の最大濃度が1×1016/cm3以下であり、かつ初期成長層6から0.3μmの深さ位置でのIII族原子の合計の濃度が1×1015/cm3以下であるのが望ましい。これら部分にIII族原子が所定量以上存在すると、当該部分も低抵抗化してしまい、シート抵抗測定のずれ要因となってしまうためである。
【0031】
電子デバイス用エピタキシャル基板1は、HEMTに用いるのが好ましい。図2に示すエピタキシャル基板1の主積層体5は、Ba1Alb1Gac1Ind1N(0≦a1≦1, 0≦b1≦1, 0≦c1≦1, 0≦d1≦1, a1+b1+c1+d1=1)材料からなるチャネル層5aおよびチャネル層5aよりバンドギャップの大きいBa2Alb2Gac2Ind2N(0≦a2≦1, 0≦b2≦1, 0≦c2≦1, 0≦d2≦1, a2+b2+c2+d2=1)材料からなる電子供給層5bを有することができる。この際、両層とも単一もしくは複数の組成から構成することができる。特に、合金散乱をさけ、電流導通部分の比抵抗を下げるためには、チャネル層5aの少なくとも電子供給層5bと接する部分はGaN材料とすることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図2に示すように、高抵抗Si単結晶基板2の一方の面2a上に、不純物拡散抑制層3を形成する工程と、この高抵抗Si単結晶基板2の他方の面2b上に、絶縁層としてのバッファ4を形成する工程と、このバッファ4上に、複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて主積層体5を形成してエピタキシャル基板を作製する工程と、このエピタキシャル基板の主積層体5の抵抗を非接触で測定する工程とを具えることを特徴とし、かかる構成を有することにより、シート抵抗を非接触で精度良く測定することができる本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板1を効率よく製造することができる。
【0034】
また、主積層体5を形成する工程の後、不純物拡散抑制層3および高抵抗Si単結晶基板2の少なくとも一部を除去する工程と、主積層体5上に電極を形成する工程とをさらに具えることができる。
【0035】
不純物拡散抑制層3は、一方の面2aに貼り付けるか、または一方の面2a上にCVD法、スパッタ法等により蒸着させることにより形成することができる。より好ましくは、高抵抗で、かつ緻密でエッチング耐性の高い層を形成することができる、熱酸化によって形成されるのが好ましい。
【0036】
他方の面2b側に形成される層は、化学気相成長法を用いてエピタキシャル成長させることにより形成されるのが好ましい。成長方法としてはMOCVD法を用い、III族原料としては、TMA(トリメチルアルミニウム)・TMG(トリメチルガリウム)等、V族原料としてはアンモニア等を用い、キャリアガスとして、水素および窒素ガス等を用いることができる。
【0037】
なお、図1および図2は、代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。たとえば、各層の間に本発明の効果に悪影響を与えない程度の中間層を挿入したり、他の超格子層を挿入したり、組成に傾斜をつけたりすることも可能である。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
図2に示すように、高抵抗Si単結晶基板2を熱酸化することにより、基板の両面にSiOx膜を形成後、片面のSiOx膜を除去することにより形成した、裏面2a(一方の面)にSiOx層3(厚さ:2μm)を有する(111)面3インチSi単結晶基板2(厚さ:600μm,比抵抗:6×103Ω・cm)の表面2b(他方の面)上に、初期成長層6(AlN材料,厚さ:100nm)および超格子積層体7(AlN,厚さ:4nmおよびAl0.15Ga0.85N,厚さ:25nm、合計75層)を成長させてバッファ4を形成し、この超格子積層体7上にチャネル層5a(GaN材料,厚さ:0.75μm)および電子供給層5b(Al0.15Ga0.85N材料,厚さ:40nm)をエピタキシャル成長させてHEMT構造の主積層体5を形成し、試料を得た。超格子積層体7のC濃度は2.0×1018atoms/cm3であった。また、チャネル層5aの電子供給層側の部分5aは、C濃度が0.8〜1.5×1016atoms/cm3であった。各層の成長温度、圧力を表1に示す。成長方法としてはMOCVD法を用い、III族原料としては、TMA(トリメチルアルミニウム)・TMG(トリメチルガリウム)、V族原料としてはアンモニアを用い、キャリアガスとして、水素および窒素ガスを用いた。ここでいう成膜温度は、成長中に放射温度計を用いて測定した、基板自体の温度を意味する、なお、C濃度のSIMS測定は、エピタキシャル層側から行い、Cameca製の測定装置で、イオン源としてCs-を用い、イオンエネルギーを8keVとして行った。
電磁誘導方式で測定する非接触式の抵抗測定装置(リーハイトン社製)を用いて、シート抵抗の面内分布を測定したところ、図3(a)のような分布が得られ、シート抵抗分布は、標準偏差値(σ値)で2.6%であった。
上記エピタキシャル基板において、ホール効果測定法により、チャネル層部分の電気特性を評価したところ、ウェーハ中心でのシート抵抗値は1410Ω/□で、上記非接触式での測定値(1450Ω/□)とのずれは、40Ω/□であった。
ウェーハ中心部のSi単結晶基板の裏面をホール効果測定したところ、シート抵抗は、測定装置の検出限界を超えて抵抗値が高く、100kΩ/□以上であった。
前記試料のSi単結晶基板裏面のSiOx膜をフッ酸水溶液を用いて除去した後、SIMSにてSi単結晶基板裏面(ウェハ中心部)の不純物をSi単結晶基板裏面から深さ1μmまでの範囲について測定したところ、測定した全範囲で、Ga、Al等のIII族元素の不純物濃度は、1×1016atoms/cm3未満であった。
【0039】
【表1】

【0040】
(比較例1)
裏面にSiOx層を有しない(111)面4インチSi単結晶基板(厚さ:600μm,比抵抗:6×103Ω・cm)上に、実施例1と同様の構造を同条件にて形成し、試料を得た。
電磁誘導方式で測定する非接触式の抵抗測定装置(リーハイトン社製)を用いて、シート抵抗の面内分布を測定したところ、図3(b)のような分布であり、シート抵抗分布は、σ値で10.1%であった。
上記エピタキシャル基板において、ホール効果測定法により、チャネル層部分の電気特性を評価したところ、ウェーハ中心でのシート抵抗値は1410Ω/□で、上記非接触式での測定値(1000Ω/□)とのずれは、410Ω/□であった。
ウェーハ中心のSi単結晶基板の裏面をホール効果測定したところ、シート抵抗は、3kΩ/□であった。
SIMSにてSi単結晶基板裏面(ウェーハ中心部)の不純物を観察したところ、Si単結晶基板内にはIII族元素の不純物である、Gaの混入が検出限界以上であることが認められた(図4)。なお、比較例1のサンプルの裏面を1μm研磨したところ、非接触式の抵抗測定装置で測定したウェーハ中心のシート抵抗の値は1450Ω/□となり、実施例1とほぼ同様のシート抵抗値となった。
【0041】
(実施例2)
高抵抗Si単結晶基板2を熱酸化することにより両面にSiOx膜を形成後、片面のSiOx膜を除去することにより、裏面2aにSiOx層3を有する(111)面3インチSi単結晶基板2(厚さ:600μm,比抵抗:6×103Ω・cm)の表面2b(他方の面)上に、初期成長層6(AlN材料,厚さ:100nm)およびAl0.6Ga0.4N層(厚さ:0.2μm)およびAl0.3Ga0.7N層(厚さ:0.2μm)を順次成長させてバッファ4を形成し、この傾斜組成バッファ層上にチャネル層5a(GaN材料:厚さ0.75μm)および電子供給層5b(Al0.15Ga0.85N材料,厚さ:40nm)を、エピタキシャル成長させてHEMT構造の主積層体5を形成し、試料を得た。AlGaN層内のC濃度は2.0×1018atoms/cm3であった。また、チャネル層の電子供給層側の部分5bは、C濃度が0.8〜1.5×1016atoms/cm3であった。各層の成長温度、圧力を表2に示す。成長方法としてはMOCVD法を用い、III族原料としては、TMA(トリメチルアルミニウム)・TMG(トリメチルガリウム)、V族原料としてはアンモニアを用い、キャリアガスとして、水素および窒素ガスを用いた。ここでいう成膜温度は、成長中に放射温度計を用いて測定した、基板自体の温度を意味する、なお、C濃度のSIMS測定は、エピタキシャル層側から行い、Cameca製の測定装置で、イオン源としてCs-を用い、イオンエネルギーは8keVとして行った。
電磁誘導方式で測定する非接触式の抵抗測定装置(リーハイトン社製)を用いて、シート抵抗の面内分布を測定したところ、シート抵抗分布は、σ値で2.0%であった。
上記エピタキシャル基板において、ホール効果測定法により、チャネル層部分の電気特性を評価したところ、ウェーハ中心でのシート抵抗値は1400Ω/□で、上記非接触式での測定値(1450Ω/□)とのずれは、50Ω/□であった。
ウェーハ中心部のSi単結晶基板の裏面をホール効果測定したところ、シート抵抗は、測定装置の検出限界を超えて抵抗値が高く、100kΩ/□以上であった。
【0042】
【表2】

【0043】
(比較例2)
裏面にSiOx層を有しない(111)面4インチSi単結晶基板(厚さ:600μm,比抵抗:6×103Ω・cm)上に、実施例1と同様の構造を同条件にて形成した試料を得た。
電磁誘導方式で測定する非接触式の抵抗測定装置(リーハイトン社製)を用いて、シート抵抗の面内分布を測定したところ、シート抵抗分布は、σ値で12.5%であった。
上記エピタキシャル基板において、ホール効果測定法により、チャネル層部分の電気特性を評価したところ、ウェーハ中心でのシート抵抗値は1400Ω/□で、上記非接触式での測定値(800Ω/□)とのずれは、600Ω/□であった。
ウェーハ中心のSi単結晶基板の裏面をホール効果測定したところ、シート抵抗は、1.9kΩ/□であった。
【0044】
表3に示すように、実施例1〜2は、比較例1〜2と比較して、裏面抵抗値の低下を抑制することができるため、非接触式によるシート抵抗測定値と接触式によるシート抵抗測定値とのずれの大きさが小さく、シート抵抗分布のばらつきも小さいことがわかる。
【0045】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に形成した不純物拡散抑制層を具えることにより、シート抵抗を非接触で精度良く測定することができる電子デバイス用エピタキシャル基板を提供することができる。
【0047】
また、本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法によれば、高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に、不純物拡散抑制層を形成することにより、シート抵抗を非接触で精度良く測定することができる本発明の電子デバイス用エピタキシャル基板を効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 電子デバイス用エピタキシャル基板
2 高抵抗Si単結晶基板
2a 一方の面
2b 他方の面
3 不純物拡散抑制層
4 バッファ
5 主積層体
5a チャネル層
5b 電子供給層
6 初期成長層
7 超格子積層体
7a 第1層
7b 第2層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に、不純物拡散抑制層を形成する工程と、
前記高抵抗Si単結晶基板の他方の面上に、絶縁層としてのバッファを形成する工程と、
該バッファ上に、複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて主積層体を形成してエピタキシャル基板を作製する工程と、
該エピタキシャル基板の主積層体の抵抗を非接触で測定する工程と
を具えることを特徴とする横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項2】
前記エピタキシャル基板を作製する工程の後、前記不純物拡散抑制層および前記高抵抗Si単結晶基板の少なくとも一部を除去する工程と、前記主積層体上に電極を形成する工程とをさらに具える請求項1に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項3】
前記不純物拡散抑制層は、前記一方の面を熱酸化することによって形成される請求項1または2に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項4】
前記他方の面側に形成される層は、化学気相成長法を用いてエピタキシャル成長させることにより形成される請求項1、2または3に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項5】
高抵抗Si単結晶基板と、
該高抵抗Si単結晶基板の一方の面上に形成した不純物拡散抑制層と
前記高抵抗Si単結晶基板の他方の面上に形成した絶縁層としてのバッファと、
該バッファ上に複数層のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させて形成した主積層体と
を具え、
前記高抵抗Si単結晶基板の、前記一方の面から1μmの深さ位置までの範囲において、III族元素の濃度が1×1016atoms/cm3以下であることを特徴とする横方向を電流導通方向とする電子デバイス用エピタキシャル基板。
【請求項6】
前記不純物拡散抑制層が、Siの酸化物、窒化物または炭化物からなる請求項5に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【請求項7】
前記バッファは、超格子構造または傾斜組成構造を有する請求項5または6に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【請求項8】
前記バッファは、C濃度が1×1018atoms/cm3以上である請求項5、6または7に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。
【請求項9】
前記高抵抗Si単結晶基板は、比抵抗が5000Ω・cm以上である請求項5〜8のいずれか一項に記載の電子デバイス用エピタキシャル基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−23664(P2011−23664A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169349(P2009−169349)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】