説明

真空加熱装置及び基板処理システム

【課題】基板に均一性高い加熱処理を行う一方で、高い真空度が得られる真空加熱装置を提供すること。
【解決手段】本発明の真空加熱装置は、気密な処理容器と、この処理容器内に基板を載置するために設けられたアルミニウム合金からなる載置台と、この載置台を支持し、その内部に用力線路部材が大気側から挿入されているステンレス鋼からなる筒状の支持部材と、この支持部材と処理容器との間を気密にするための有機物からなるシール部材と、前記載置台を加熱するための加熱部と、前記処理容器内を真空排気するための真空排気手段と、を備えている。これによって載置台の熱が支持部材を介してシール部材に伝熱し難くなっており、シール部材の昇温が抑えられ、大気側から大気成分がシール部材を通って処理容器内へ侵入することが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気で基板を加熱する真空加熱装置及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造装置の一つとして、共通の真空搬送室に複数の真空処理を行う処理モジュールを備えた、いわゆるマルチチャンバシステムがある。前記処理モジュールとしては例えばPVD(Physical Vapor Deposition)により、配線となる金属、例えばCu(銅)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)などを成膜する成膜モジュールが設けられる場合がある。基板である半導体ウエハ(以下ウエハと記載する)は通常、大気雰囲気を通ってマルチチャンバシステム内に搬入されるため、水分及び酸素が付着している。金属は、水分中の酸素により酸化されるため、ウエハの表面に水分や酸素が付着すると、前記金属が酸化されてしまい、配線の抵抗が増大してしまう。
【0003】
このような配線抵抗の増大を抑えるために、前記処理モジュールの一つを、真空雰囲気でウエハに加熱処理を行う真空加熱モジュール(真空加熱装置)として構成し、成膜モジュールに搬送される前のウエハをこの真空加熱モジュールで処理する場合がある。この処理により、水分及び酸素をウエハから除去し、前記金属の酸化を抑えることができる。
【0004】
図6に、前記真空加熱モジュールの概略を示すと、この真空加熱モジュール100は気密な処理容器101内に、ウエハWが載置されるステージ(加熱基盤)102と、ステージ102を支持する筒状の支持部103とが設けられている。104はヒータであり、105は温度センサである熱電対である。
【0005】
支持部103内には、ヒータ104に給電するための電力供給ライン106及び熱電対105の信号ライン107などの用力ラインが挿入されている。これら用力ラインは処理容器101の外の大気雰囲気に引き出されることから、支持部103内は大気雰囲気になっており、このため処理容器101の底面に開口部108が形成され、支持部103内の空間がこの開口部108を介して大気に開放された構造となっている。そして、支持部103の下端に形成されたフランジ109と開口部108の口縁部分とがゴム材からなるシール材であるOリング110を介して気密に接合されている。111は排気口、112は例えばAr(アルゴン)ガスなどの不活性ガスであるパージガスを供給するシャワーヘッドである。113は処理容器101により形成される処理空間である。
【0006】
このような真空加熱モジュール100においては、ウエハWが処理容器101内に搬入されておらず、待機状態になっているときには、シャワーヘッド112からのArガスの供給が停止し、ヒータ104によりステージ102が所定の温度に調整されると共に処理空間113が所定の圧力に調整されている。
【0007】
一方、PVD成膜モジュールにおいては1E−5Pa〜1E−7Pa(1E−7Torr〜1E−9Torr)もの高真空度の雰囲気に維持した状態で待機しておくことが必要であることから、この成膜モジュールと真空搬送室とを仕切るゲートバルブを開いたときに当該成膜モジュールの雰囲気が変化しないように、真空搬送室及び真空加熱モジュールについても同様の高真空度に維持しておく必要がある。ところで、ステージ102の熱が支持部103を介してOリング110に伝熱されるが、Oリング110は温度が高い程、リークしやすく、この傾向は圧力が1.33×10−6Pa(10−8Torr)よりも低くなると(真空度が高くなると)顕著になってくる。図7にこの様子を示しており、図7(a)はOリング110の温度が低く、支持部103と処理容器101との間がシールされている状態、図7(b)は、Oリング110の温度が高くなり、当該Oリング110が膨張してOリング110内の空隙が広がった結果として、大気が処理容器101内にリークしている状態を示している。なお、Oリング110を冷却すると、その冷熱がステージ102に伝わり、均一性の高い加熱が困難になるため、冷却構造は採用し難い。
【0008】
このようなことから、真空加熱モジュールにおいて真空度の高い雰囲気下で支持部と処理容器との間のOリングのリークを抑えることが要請されている。特許文献1には、ステージと支持部と処理容器とを備え、支持部と処理容器との間にOリングが設けられた成膜装置について記載されているが、上記の問題の解決手法については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−332465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、基板に均一性高い加熱処理を行う一方で、高い真空度が得られる真空加熱装置及びその真空加熱装置を用いた基板処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の真空加熱装置は、真空雰囲気にて基板を加熱処理する真空加熱装置において、
気密な処理容器と、
この処理容器内に基板を載置するために設けられたアルミニウム合金からなる載置台と、
この載置台を支持し、その内部に用力線路部材が大気側から挿入されているステンレス鋼からなる筒状の支持部材と、
この支持部材と処理容器との間を気密にするための有機物からなるシール部材と、
前記載置台を加熱するための加熱部と、
前記処理容器内を真空排気するための真空排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
例えば前記装置においては、前記処理容器内にプロセスガスを供給するガス供給部が設けられ、
前記加熱処理は、プロセスガスを基板に供給しながら当該基板の表面に付着している水分及び酸素を除去するためのものである。前記処理容器の外の基板搬送機構により基板の受け渡しを行うときには前記処理容器内の圧力が1E−3Pa以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の基板処理システムは、真空搬送室と、この真空搬送室に接続された請求項2記載の真空加熱装置と、前記真空搬送室に接続された処理容器を含み、前記真空加熱装置にて真空加熱処理された基板に対して、配線用の金属をスパッタして当該基板に配線を形成するためのスパッタモジュールと、前記真空加熱装置とスパッタモジュールとの間で基板を搬送する基板搬送機構と、を備え、前記真空搬送室内の圧力が1E−3Pa以下に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、載置台を熱伝導率の大きいアルミニウム合金により構成し、載置台を支持する支持部材を熱伝導率の小さいステンレス鋼(ステンレス合金)により構成している。このため基板の温度について高い面内均一性を確保することができると共に、載置台から支持部材を介して有機物からなるシール部材へ伝熱しにくくなり、シール部材の昇温が抑えられる。従って大気側から大気成分がシール部材を通って処理容器内へ侵入することが抑えられるので、処理容器内の水分及び酸素の分圧を小さくすることができ、基板に付着する水分及び酸素を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る真空加熱モジュールを備えた半導体製造装置の平面図である。
【図2】前記真空加熱モジュールの縦断面図である。
【図3】真空加熱モジュールの各部の分解斜視図である。
【図4】処理容器内の圧力がステージの温度により変動する様子を示したグラフである。
【図5】各ステージ温度にて処理容器内の圧力上昇率が変動する様子を示したグラフである。
【図6】従来の真空加熱モジュールの縦断側面図である。
【図7】処理空間内に大気が流入する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る真空加熱モジュール(真空処理装置)を備えた基板処理システムである半導体製造装置1の構成について図1を参照しながら説明する。半導体製造装置1は、半導体装置製造用の基板であるウエハWのロード、アンロードを行うローダモジュールを構成する第1の搬送室11と、ロードロック室12、13と、真空搬送室モジュールである第2の搬送室14と、を備えている。第1の搬送室11の正面には例えば25枚のウエハWを収納するキャリアCが載置される載置台15が設けられている。
【0017】
第1の搬送室11の正面壁には、前記キャリアCが接続されてキャリアCの蓋と一緒に開閉されるゲートドアGTが設けられている。そして第2の搬送室14には、ウエハWに処理を行う処理モジュールとして真空加熱モジュール3、Cu成膜モジュール61、61、アニールモジュール62が気密に接続されている。Cu成膜モジュール61、61はその内部が真空雰囲気に構成される処理容器を備え、PVDによりウエハWに半導体装置の配線を構成するCuを成膜する。アニールモジュール62は、その内部が真空雰囲気に構成される処理容器と、ウエハWを加熱する加熱手段と、ウエハWにアニール用のガスとして例えばH(水素)を供給するガス供給手段と、を備えている。真空加熱モジュール3については後述する。
【0018】
第1の搬送室11の側面には、アライメント室2が設けられている。この第1の実施の形態においてアライメント室2は、第1の搬送室11に設けられた第1の搬送手段16の予定する位置にウエハWを受け渡す役割を有する。ロードロック室12、13には、図示しない真空ポンプとリーク弁とが設けられており、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えられるように構成されている。つまり、第1の搬送室11及び第2の搬送室14の雰囲気がそれぞれ大気雰囲気及び真空雰囲気に保たれているため、ロードロック室12、13は、夫々の搬送室間において、ウエハWを搬送する時に雰囲気を調整するためのものである。
【0019】
図中Gは、ロードロック室12、13と第1の搬送室11または第2の搬送室14との間、あるいは第2の搬送室14と各処理モジュール(真空加熱モジュール3、Cu成膜モジュール61及びアニールモジュール62)との間を仕切るゲートバルブ(仕切り弁)である。通常、ゲートバルブGは閉じられており、各室間及び各モジュールと第2の搬送室14との間でウエハWを搬送するときに開かれる。
【0020】
第1の搬送室11及び第2の搬送室14には、それぞれ第1の搬送手段16及び第2の搬送手段17が設けられている。第1の搬送手段16は、キャリアCとロードロック室12,13との間及び第1の搬送室11とアライメント室2との間でウエハWの受け渡しを行うための多関節の搬送アームである。第2の搬送手段17は、ロードロック室12,13と、真空加熱モジュール3、Cu成膜モジュール61及びアニールモジュール62との間でウエハWの受け渡しを行うための多関節の搬送アームである。
【0021】
続いて、真空加熱モジュール3について、その縦断面図である図2及び各部の分解斜視図である図3を参照しながら説明する。真空加熱モジュール3は、処理容器31を備えており、処理容器31内にはウエハWに処理を行うための処理空間30が形成される。処理容器31の外部は大気雰囲気に構成されている。処理空間30には、ウエハWを水平に載置するためのステージ(加熱基盤)32が設けられており、このステージ32はアルミニウム合金により構成されている。ステージ32内には前記ウエハWを加熱するためのヒータ33が設けられている。更にステージ32には、昇降機構34により昇降自在な3本の昇降ピン35(便宜上2本のみ図示している)が設けられており、この昇降ピン35を介して前記第2の搬送手段17とステージ32との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0022】
ステージ32の下方には筒状の支持部36が設けられており、支持部36はステンレス鋼により構成されている。支持部36とステージ32との間には接合部材37が介在している。アルミニウム合金からなるステージ32とステンレス鋼からなる支持部36とを直接溶接することができないため、この接合部材37がこれらステージ32及び支持部36に夫々溶接されることで、ステージ32及び支持部36が互いに固着される。接合部材37は、予め爆着、摩擦拡散などによって互いに接合された、アルミニウム合金からなる上側接合部材37aとステンレス鋼からなる下側接合部材37bとにより構成されている。上側接合部材37aはステージ32と、下側接合部材37bは支持部36と夫々溶接される。
【0023】
支持部36の下端部はフランジ38として構成されている。また、処理容器31の下部には開口部39が形成されており、この開口部39の開口縁に前記フランジ38が、シール部材であるOリング41を介して設けられている。Oリング41はゴムにより構成され、フランジ38と処理容器31とに密着し、処理空間30の真空度を保つ役割を有する。なお、Oリング41はゴムに限られず、柔軟性のある樹脂などの有機物であればよい。また、既述のように処理容器31の外部は大気雰囲気であるため、支持部36内の空間は大気雰囲気に構成されている。
【0024】
ヒータ33には当該ヒータ33に電力を供給するための供給ライン42の一端が接続されている。この電力供給ライン42の他端は支持部36及び開口部39を介して処理容器31の外部へ引き出され、電源部43に接続されている。また、ステージ32には温度センサである熱電対44が設けられており、熱電対44には信号ライン45の一端が接続されている。信号ライン45の他端は支持部36及び開口部39を介して処理容器31の外部へ引き出され、制御器46に接続されている。熱電対44は、検出したステージ32の温度に対応する信号を制御器46に出力し、制御器46はその信号に応じてステージ32の温度が設定された温度になるように電源部43へ信号を出力する。その制御器46からの出力信号に応じてヒータ33への供給電力が制御される。
【0025】
処理容器31の底部には排気口47が設けられ、排気口47には排気管48の一端側が接続されている。この排気管48の他端側には圧力制御バルブ49を介して真空ポンプ51が接続されている。圧力制御バルブ49は排気管48の排気コンダクタンスを制御し、処理容器31内の圧力を制御する。また処理容器31の側壁には、ゲートバルブGにより開閉される搬送口52が形成されている。
【0026】
更に処理容器31の天井部においては、ステージ32に対向するようにガスシャワーヘッド53が設けられている。ガスシャワーヘッド53は、ガス室54とガス供給孔55とを備え、ガス室54に供給されたガスはガス供給孔55から処理空間30に供給される。そして、ガス室54には、ガス供給路56を介して、バルブやマスフローコントローラ及びガス供給源を含んだガス供給手段57が接続されている。このガス供給手段57から不活性ガス例えばAr(アルゴン)ガスがプロセスガスとして前記ガス室54に供給される。
【0027】
続いて半導体製造装置1の作用について説明する。先ず、第2の搬送室14内、真空加熱モジュール3の処理容器31内、Cu成膜モジュール61,61の処理容器内、アニールモジュール62の処理容器内が夫々真空引きされる。真空加熱モジュール3ではヒータ33の温度が上昇し、ステージ32の温度250℃〜400℃例えば350℃になる。このときステージ32は熱伝導率の大きいアルミニウム合金により構成されているので、ヒータ33の熱が各部に均一性高く伝わり、各部の温度のばらつきが抑えられる。そして、支持部36が熱伝導率の小さいステンレス鋼により構成されているため、ステージ32の熱が支持部36を介してOリング41に伝わることが抑えられる。従って、Oリング41の温度上昇及び膨張が抑えられ、処理容器31の外部からOリング41を透過して処理容器31の内部へ大気が流入することが抑えられる。
【0028】
第2の搬送室14内及び各処理モジュールの処理容器内の真空引きが続けられ、第2の搬送室14内が1E−3Pa以下に維持されると共に、これら処理容器31内、Cu成膜モジュール61,61の処理容器内、アニールモジュール62の処理容器内も同様に1E−3Pa以下に維持され、これらのモジュールがウエハWを処理するための待機状態となる。
【0029】
その後、キャリアCが載置台15に載置され、第1の搬送室11に接続される。次いでゲートドアGTおよびキャリアCの蓋が同時に開かれて、キャリアC内のウエハWは第1の搬送手段16によって第1の搬送室11に搬入される。然る後、ウエハWはアライメント室2に搬送されて、その向きや偏心の調整が行われた後、大気雰囲気に保たれたロードロック室12に搬送される。そして、このロードロック室12の圧力が調整されて、室内が真空雰囲気になると、第2の搬送手段17によって第2の搬送室14に搬入される。
【0030】
次いで第2の搬送手段17は、ウエハWを処理容器31内に搬入し、ステージ32に受け渡す。その後、シャワーヘッド53からArガスが供給され、処理容器31内が例えば1Torrに保たれた状態で、ウエハWが加熱処理される。この真空雰囲気における加熱処理によってウエハWに付着している水分及び酸素が、当該ウエハWから除去される。Arガス供給開始から所定の時間経過後、そのArガスの供給が停止し、処理容器31内が前記待機状態と同じ1E−3Pa以下に維持される。然る後、ウエハWは第2の搬送手段17によって第2の搬送室14に搬入される。
【0031】
続いて、第2の搬送手段17はウエハWをいずれかのCu成膜モジュール61に搬送し、そこでウエハWの表面にCuが成膜される。Cu成膜処理後、ウエハWはアニールモジュール53に搬送される。そこで、Hガスが供給されながらウエハWは加熱され、成膜されたCuがアニールされる。その後、ウエハWは第2の搬送手段17により真空雰囲気に保たれたロードロック室13に搬入される。ロードロック室13の圧力が上昇し、大気雰囲気になると、第1の搬送手段16によりウエハWはキャリアCに戻される。
【0032】
この実施の形態によれば、真空加熱モジュール3においてステージ32をアルミニウム合金で、支持部36をステンレス鋼で夫々構成している。従って、ステージ32の各部に均一性高く伝熱されるため、ウエハWを均一性高く加熱することができるその一方で、処理空間30をシールするOリング41にステージ32の熱が伝わることを抑えることができる。従って、Oリング41の温度上昇を抑えることができるので、処理容器31の外部から大気成分がOリング41を透過して処理容器31内に進入することが抑えられる。その結果として、処理空間30の水分及び酸素の分圧を低く抑えることができるため、ウエハWに付着する水分及び酸素を低減することができる。従ってCu成膜モジュール61でウエハWに成膜されるCuが酸化されることを抑えることができるので、このCuから形成される配線の抵抗の上昇を抑えることができる。
【0033】
ところでステージ32の温度が高すぎると、当該ステージ32を構成するアルミニウム合金が変形、溶解してしまうので、ステージ32の温度としては350℃以下であることが好ましい。なお、本発明は水分及び酸素の除去を目的とした加熱モジュールへの適用に限定されるものではなく、例えば上記アニールモジュール62を真空加熱モジュール3と同様に構成してもよい。その場合例えばウエハWにArガスの代わりにHガスがアニール用のプロセスガスとして供給される。
【0034】
また、上記の例では成膜モジュールでCuを成膜し、Cuが成膜されたウエハWを真空加熱モジュール3で真空加熱処理する例について説明しているが、成膜モジュールで成膜される金属としてはCuに限られず、Ti、Ta、TiN(窒化チタン)、TaN(窒化タンタル)などの金属であってもよい。そして、これらの金属が成膜されたウエハWについて真空加熱モジュール3で処理する場合にも、これらの金属の酸化が抑えられるので、これらの金属から形成される配線の抵抗を抑えることができる。なお、ここでいう配線にはバリア膜も含む。また、上記の例では真空加熱モジュール3において、プロセスガスとしてArガスを供給しているが、Arガスの代わりに例えばHガスをプロセスガスとして用いてもよい。
【0035】
(評価試験1)
背景技術の項目で説明した真空加熱モジュール100を用いて、ステージ102の温度を変更したときに、処理空間113の圧力をどこまで低く保てるかを測定した。この真空加熱モジュール100ではステージ102及び支持部103をアルミニウム合金により構成している。この実験においては、Oリング110として、所定の材質により構成されたOリングA1を用いて前記圧力の測定を行った後、当該OリングA1の代わりに、OリングA1とは異なる材質により構成されたOリングA2を用いて繰り返し圧力を測定した。
【0036】
図4のグラフにこの実験結果を示している。図4のグラフでは、縦軸が前記処理空間113の圧力(Torr)、横軸がステージ102の温度(℃)を夫々示している。このグラフから明らかなように、OリングA1、OリングA2を用いた場合のいずれにおいてもステージ102の温度が高くなるほど、処理容器31内で維持できる最低圧力は高くなってしまう。この結果から、背景技術の項目で述べたようにステージ102からOリングA1,A2に熱が伝わり、当該OリングA1、A2を透過して大気が処理容器101内に流れ込んでいることが考えられる。
【0037】
(評価試験2)
続いて、評価試験2について説明する。上記の実施の形態における真空加熱モジュール3について、ステージ32の温度を変更し、その温度毎に処理空間30の圧力上昇率(Torr/分)を測定した。また、背景技術の項目で説明した真空加熱モジュール100について、ステージ102の温度を変更し、その温度毎に処理空間113の圧力上昇率(Torr/分)を測定した。これらの圧力上昇率は、ある一定時間処理容器31、101内を封じ込め、その間における処理容器31、101内の圧力上昇を見るものであり、その値が小さいほど処理容器の外部から内部への大気の透過率は小さく、処理容器の気密性が高いと言える。
【0038】
図5は、この評価試験2の結果を示したグラフであり、その縦軸に前記圧力上昇率(Torr/分)を、その横軸にステージ32、102の温度(℃)を夫々示している。このグラフに示すように、測定された各温度における真空加熱モジュール3の圧力上昇率は、真空加熱モジュール100の圧力上昇率に比べて低く抑えられている。また、温度が高くなったときの圧力上昇率の変化は、真空加熱モジュール100よりも真空加熱モジュール3の方が小さい。従って、本実施形態の真空加熱モジュール3は、従来の真空加熱モジュール100に比べてOリング41の温度が低く保たれ、Oリング41における大気の透過が少ないと言える。この実験結果から本発明の効果が示された。
【符号の説明】
【0039】
W ウエハ
1 半導体製造装置
3 真空加熱モジュール
30 処理空間
31 処理容器
32 ステージ
33 ヒータ
36 支持部
37 接合部材
41 Oリング
53 ガスシャワーヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気にて基板を加熱処理する真空加熱装置において、
気密な処理容器と、
この処理容器内に基板を載置するために設けられたアルミニウム合金からなる載置台と、
この載置台を支持し、その内部に用力線路部材が大気側から挿入されているステンレス鋼からなる筒状の支持部材と、
この支持部材と処理容器との間を気密にするための有機物からなるシール部材と、
前記載置台を加熱するための加熱部と、
前記処理容器内を真空排気するための真空排気手段と、を備えたことを特徴とする真空加熱装置。
【請求項2】
前記処理容器内にプロセスガスを供給するガス供給部が設けられ、
前記加熱処理は、プロセスガスを基板に供給しながら当該基板の表面に付着している水分及び酸素を除去するためのものであることを特徴とする請求項1記載の真空加熱装置。
【請求項3】
処理容器の外の基板搬送機構により基板の受け渡しを行うときには前記処理容器内の圧力が1E−3Pa以下であることを特徴とする請求項1または2記載の真空加熱装置。
【請求項4】
真空搬送室と、
この真空搬送室に接続された請求項2記載の真空加熱装置と、
前記真空搬送室に接続された処理容器を含み、前記真空加熱装置にて真空加熱処理された基板に対して、配線用の金属をスパッタして当該基板に配線を形成するためのスパッタモジュールと、
前記真空加熱装置とスパッタモジュールとの間で基板を搬送する基板搬送機構と、を備え、
前記真空搬送室内の圧力が1E−3Pa以下に設定されていることを特徴とする基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−52274(P2011−52274A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202009(P2009−202009)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】