絶縁膜形成方法、及び絶縁膜形成装置
【課題】成膜温度が180℃以下で形成される絶縁膜の絶縁性を高めることの可能な絶縁膜の形成方法及び該絶縁膜を形成する成膜装置を提供する。
【解決手段】
マスフローコントローラMFC1から原料タンクTKにArガスを供給することによって押し出されたZr(BH4)4ガスと、マイクロ波プラズマ源PLで励起することによって活性状態にされた酸素原子を含むガスとを、シャワープレート36に設けられた複数の孔から別々に基板S表面の空間に供給する。この際、活性状態にされた酸素原子を含むガスの供給を連続的に行う間に、Zr(BH4)4昇華ガスの供給を間欠的に複数回行ってもよい。これにより、ジルコニウムと、ホウ素と、酸素とを含む絶縁膜であるZrBO膜を基板Sの表面及び該基板Sの有する貫通孔の内面に形成する。
【解決手段】
マスフローコントローラMFC1から原料タンクTKにArガスを供給することによって押し出されたZr(BH4)4ガスと、マイクロ波プラズマ源PLで励起することによって活性状態にされた酸素原子を含むガスとを、シャワープレート36に設けられた複数の孔から別々に基板S表面の空間に供給する。この際、活性状態にされた酸素原子を含むガスの供給を連続的に行う間に、Zr(BH4)4昇華ガスの供給を間欠的に複数回行ってもよい。これにより、ジルコニウムと、ホウ素と、酸素とを含む絶縁膜であるZrBO膜を基板Sの表面及び該基板Sの有する貫通孔の内面に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁膜、例えば、シリコン貫通電極(Through Silicon Via:TSV)の周囲に形成されてTSVとシリコン基板とを絶縁するための絶縁膜の形成方法及び該方法を用いる絶縁膜の形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、半導体デバイスの高性能化を図る技術の一つとして、例えば特許文献1に記載のように、シリコン基板に形成された貫通電極(シリコン貫通電極:Through Silicon Via (TSV))を介して複数の半導体チップを積層する三次元実装技術が注目されている。図11には、TSVを有した半導体装置の一部断面構造が示されている。
【0003】
図11に示されるように、半導体装置10は、トランジスタ等の素子が形成された半導体基板であるシリコン基板11と、該シリコン基板11の上面に積層されるとともに、例えば低誘電率の絶縁膜にシリコン基板11の素子と接続される各種配線が形成された多層配線層12とを有している。そして、多層配線層12の上面を覆うように例えば酸化シリコン等の絶縁層13が形成されているとともに、シリコン基板11の下面を覆うように接着層14が形成されている。
【0004】
また、半導体装置10には、上記接着層14、シリコン基板11、多層配線層12、及び絶縁層13を貫通する貫通孔Hが形成されている。また、貫通孔Hには、該貫通孔Hの内面に形成された絶縁膜16に囲まれてシリコン基板間を接続するシリコン貫通電極15が形成されている。絶縁膜16は、シリコン窒化物やシリコン酸化物から形成されて、多層配線層12の配線とシリコン貫通電極15とが電気的に接続したり、シリコン貫通電極15の構成元素が貫通孔Hの外側に移動することを抑えたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−87233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記TSVを形成する方法としては、一般に、(a)Via First 法、(b)Via Middle 法、(c)Via Last 法、(d)Via after Bonding 法と言われる4つの方法が検討されている。(a)Via First 法は、半導体製造プロセスの前工程である素子形成プロセスの前にTSVが形成される方法である。また、(b)Via Middle 法は、素子形
成プロセスと同時にTSVが形成される方法である。また、(c)Via Last 法は、素子
形成プロセスの後にTSVが形成される方法である。これらに対して、(d)Via after Bonding 法は、パッシベーション処理の施された半導体素子を有するウェハと他のウェハ、或いはパッシベーション処理の施された半導体素子を有するチップとウェハ、また或いは該チップと他のチップとが高分子樹脂などの接着剤で接着された後にTSVが形成される方法である。
【0007】
(a)Via First 法では、上述したように、素子形成プロセスの前にTSVが形成される。そのため、TSVに用いられる材料には、素子形成プロセスにて不可欠な熱処理に対し、耐久性の高い材料が求められる。こうした要請のもと、Vi a First 法では、熱処理
に対して耐久性の低い銅(Cu)がTSVの構成材料から外され、熱処理に対して耐久性の高いタングステン(W)が一般に用いられる。そして、Wの電気抵抗値がCuの電気抵
抗値よりも大幅に高いため、結局のところ、Via First 法は、半導体素子の動作を高速化するという点において不可避的な課題を残している。
【0008】
(b)Via Middle 法では、素子形成プロセスと同時にTSVが形成される。すなわち
、パターン寸法がナノメートルオーダーの微細な半導体素子と、パターン寸法がマイクロメートルオーダーのTSVとが同時に形成されることとなる。このようなVia Middle 法
では、素子形成プロセスの処理工程数や処理時間をTSVに合わせて増やす必要があるため、結局のところ、プロセスのコストが大きいという点において不可避的な課題を残している。
【0009】
そのため、近年では、上述のような課題を有しない方法、すなわち、(c)Via Last法と(d)Via after Bonding法とが盛んに検討されている。
一方、(c)Via Last 法、(d)Via after Bonding 法では、ウェハの厚さが100
μm〜数μmまで削られ、その後に、TSV用のホールが形成される。詳しくは、(c)Via Last法では、石英などからなるウェハサポート基板にウェハが仮接着された後に、ウェハの裏面が削られ、その後に、TSVが形成される。また、(d)Via after Bonding 法では、(c)Via Last 法と同様に、一対のウェハが半導体素子の形成された表面同士
で接着された後に、半導体素子の形成されていない裏面が削られ、その後に、TSVが形成される。この際、上述した接着剤は、高分子樹脂から構成されるものであって、その熱処理に対する膨張量や変形量は、半導体素子に用いられている一般的な材料と比較して著しく大きいものである。そして、こうした接着剤の耐熱温度は、通常、180℃以下、好ましくは150℃以下である。そのため、上記(c)Via Last 法や(d)Via after Bonding 法では、こうした接着剤の耐熱温度以下、すなわち、180℃以下、好ましくは1
50℃以下でのプロセスが要求されている。
【0010】
しかしながら、上記シリコン窒化物やシリコン酸化物で形成される絶縁膜16は、一般に、250℃以上の高温条件にて成膜されて初めて絶縁膜16として機能するだけの絶縁性を有するものである。例えば、プラズマCVD法によってシリコン酸化膜を形成する場合、250℃〜400℃程度の温度条件にて成膜を行う必要がある。また、プラズマCVD法によってシリコン窒化膜を形成する場合、300℃程度の温度条件にて成膜を行う必要がある。そのため、上記(c)Via Last 法や(d)Via after Bonding 法において要
求される温度条件では、上記貫通孔Hの内面への成膜自体は可能であったとしても、膜内に含まれる不純物等のために、所望とする絶縁性を得ることが困難である。したがって、シリコン貫通電極を有する半導体装置には、上述のような低温条件下での成膜であっても十分な絶縁性を有する絶縁膜を貫通孔の内面に有することが望まれている。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、成膜温度が180℃以下で形成される絶縁膜の絶縁性を高めることの可能な絶縁膜の形成方法及び該絶縁膜を形成する成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、半導体基板上にて、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にMBOを含む絶縁膜を形成する絶縁膜の形成方法をその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、半導体基板上にて、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化
ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成することを要旨とする。
【0014】
M(BH4)xを出発材料として得られるホウ化金属膜が、銅等の金属配線用のバリア膜として研究対象とされて久しい。本願発明者らは、こうしたホウ化金属膜の有するバリア性や導電性及び絶縁性を研究する過程にて、金属、ホウ素(B)、及び酸素(O)を含む膜、すなわちMBO膜が、以下の特性を有することを見出した。
・180℃以下の低温で成長すること。
・熱CVD法で形成されたシリコン酸化物膜と略同じ程度の優れた絶縁性を有すること。・シリコン(Si)、及び銅(Cu)に対して優れたバリア性を有すること。
【0015】
上記請求項1に記載の発明によれば、M(BH4)xが、活性状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスによって酸化されることにより、半導体基板上にMBOを含む絶縁膜が形成されることとなる。また、上記請求項2に記載の発明によれば、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜が形成されることとなる。そのため、上述した特性のように、低温成膜でありながら優れた絶縁性と優れたバリア性を有する絶縁膜が形成できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、酸素ガスを含むことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、亜酸化窒素、一酸化窒素、及び二酸化窒素の少なくとも一つを含むことを要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、一酸化炭素、及び二酸化炭素の少なくとも一つを含むことを要旨とする。
酸化ガスとして酸素ガスが用いられる場合には、他の酸化ガスが用いられる場合と比較して、金属含有ガスの酸化反応が進行しやすくなる。それゆえに、請求項3に記載の発明によれば、熱による反応の進行が一般的に小さくなる180℃以下の低温成膜においても、高い成膜速度を得ることが可能にもなる。
【0018】
一方、亜酸化窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスのいずれを用いる方法では、上述した酸素ガスよりは酸化反応が進行し難いものの、これらのガスを活性状態にすることで、金属含有ガスの酸化反応は180℃以下で進行する。そのため、請求項4、あるいは請求項5に記載の発明によれば、低い成膜速度を細かい範囲で調整することが求められる場合に有効的である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、ラジカル成分を含むことを要旨とする。
請求項6に記載の発明によれば、金属含有ガスの酸化反応がラジカル成分によって進行することになる。金属含有ガスの酸化源としては、上述したラジカル成分の他、イオン成分を用いることも可能である。ただし、このようなイオン成分が用いられる酸化反応では、活性状態のイオン成分が半導体基板の表面に入射するため、結晶欠陥等のダメージが半導体基板に発生しやすくもなる。この点、上述した方法のように酸化ガスにラジカル成分が含まれる方法であれば、イオン成分を用いることによって生じ得るダメージを抑えることが可能にもなる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法におい
て、前記活性状態が、高周波励起、及び金属触媒源の少なくとも一つによるものであることを要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、酸化ガスに供給する高周波電力の大きさや金属触媒源における温度等、これらのパラメータによって、酸化ガスの活性状態が調整可能にもなる。それゆえに、金属含有ガスや酸化ガスの供給の態様に合わせた活性状態を得ることが可能にもなる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法において、前記半導体基板上に前記酸化ガスを連続的に供給する間に前記金属含有ガスを間欠的に供給して前記半導体基板上に前記絶縁膜を形成することを要旨とする。
【0023】
上述したホウ化金属酸化物膜にて、その酸化の度合いが十分でない場合には、絶縁膜としての用途に足るだけの絶縁性が得られない虞がある。これに対して、MBOを含む膜が形成される過程において、前駆体の重合度が大きくなり過ぎたり、前駆体の酸化度が上がり過ぎたりすると、前駆体自体がクラスター粒子化してパーティクル成分になってしまう。
【0024】
この点、請求項8に記載の発明では、酸化ガスと金属含有ガスとが、半導体基板に対して同時に供給されている間は、酸化ガスと金属含有ガスとの反応が進行することによって、半導体基板上にMBOを含む絶縁膜が形成される。そして、このように形成されたMBOを含む絶縁膜にて酸化状態が不十分な場合でも、金属含有ガスの供給が停止されるとともに、酸化ガスの供給が継続されている間は、半導体基板上に既に形成された絶縁膜が、その表面層よりさらに酸化されることになる。そのため、MBOにおけるホウ素の含有量を失うことなく、絶縁膜がより確実に酸化されることから、ホウ素の含有量に起因した誘電特性の低下を抑えつつ、該絶縁膜が確実に絶縁性を発現するようになる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法において、前記半導体基板が、複数のシリコン基板を接着してなるとともに、前記半導体基板の表面から該半導体基板の積層方向に前記シリコン基板の少なくとも一つを貫通して、貫通された前記シリコン基板の下部のシリコン基板に形成された電極に繋がるシリコン貫通電極用の貫通孔を有するものであり、前記絶縁膜を前記半導体基板の表面及び前記貫通孔の内面に形成することを要旨とする。
【0026】
シリコン貫通電極が形成される貫通孔には、該電極の形成材料である金属がシリコン基板側に拡散することを抑制するためのバリア性と、シリコン基板に形成された素子や配線等と電極とを電気的に絶縁させるための絶縁性とを有した絶縁膜が必要とされる。
【0027】
この点、請求項9に記載の発明では、シリコン貫通電極用の貫通孔における内側面にZrBOを含む絶縁膜を形成するようにしている。そのため、上記バリア性、及び絶縁性の条件を満たす絶縁膜を、シリコン貫通電極用の貫通孔の内側面に形成することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、半導体基板を収容する真空槽と、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを前記真空槽内に供給する原料供給部と、活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスを前記真空槽内に供給するガス供給部とを備え、前記M(BH4)xを前記酸化ガスで酸化することによりMBOを含む絶縁膜を前記半導体基板上に形成する絶縁膜形成装置をその要旨とする。
【0029】
上記構成によれば、M(BH4)xが、活性化した酸素によって酸化されることにより、半導体基板上にMBOを含む膜が形成されることとなる。そのため、金属配線に対する
バリア性、及び熱CVDによって形成されるシリコン酸化膜と同じ程度の絶縁性を絶縁膜としてのMBO含有膜に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の絶縁膜形成装置の断面構造を示す断面図。
【図2】同絶縁膜形成装置の有する成膜チャンバの概略構成を示す図。
【図3】(a)(b)絶縁膜の成膜プロセス時におけるタイミングチャート。
【図4】(a)(b)(c)(d)シリコン基板に形成された凹部及びその内側面に形成されたZrBO膜の断面構造を示すSEM画像。
【図5】(a)(b)シリコン基板及びZrBO膜の断面構造を示すSEM画像、(c)(d)純水に48時間浸したシリコン基板及びZrBO膜の断面構造を示すSEM画像。
【図6】O2を用いて形成したZrBO膜の組成をラザフォード後方散乱分光法(RBS)及び核反応分析(NRA)により分析した結果を示すグラフ。
【図7】O2を用いて形成したZrBO膜のリーク特性を水銀プローブで測定した結果を示すグラフ。
【図8】(a)(b)Cu/ZrBO/α−Siの積層構造を用いてZrBO膜のバリア性及びシリサイド耐性を評価した結果を示すSTEM写真。
【図9】成膜チャンバ内の圧力とZrBO膜の成膜速度との関係を示すグラフ。
【図10】N2Oを用いて形成したZrBO膜のリーク特性を水銀プローブで測定した結果を示すグラフ。
【図11】シリコン貫通電極を有する半導体装置の一部断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態の絶縁膜形成方法及び絶縁膜形成装置について、図1〜図10を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、絶縁膜形成装置について説明する。なお、本実施形態の絶縁膜形成方法及び絶縁膜形成装置の処理対象である基板とは、上記半導体装置10の有するシリコン基板11の貫通孔H内に絶縁膜16とシリコン貫通電極15とが形成されていない構造物のことである。
【0032】
図1は、成膜装置として具現化された絶縁膜形成装置の概略構成を示している。成膜装置20は、ロードロックチャンバ21と、ロードロックチャンバ21に連結されたコアチャンバ22と、コアチャンバ22に連結された4つの成膜チャンバ23とを有している。コアチャンバ22に接続された成膜チャンバ23とロードロックチャンバ21とは、コアチャンバ22とこれらチャンバ21,23との間に設けられたゲートバルブが開放されることによって、1つの真空系を形成することができる。
【0033】
ロードロックチャンバ21は、複数の基板Sを収容する真空槽である。基板Sに対する成膜処理が開始されるときには、基板Sが、ロードロックチャンバ21を介して成膜装置20内部に運ばれる。また、基板Sに対する成膜処理が終了されるときには、基板Sが、ロードロックチャンバ21を介して成膜装置20の外部に運ばれる。
【0034】
コアチャンバ22は、基板Sを搬送する搬送ロボット22aが搭載された真空槽である。基板Sに対する成膜処理が開始されるときには、ロードロックチャンバ21内の基板Sが、搬送ロボット22aによってコアチャンバ22を介して成膜チャンバ23に運ばれる。また、基板Sに対する成膜処理が終了されるときには、成膜チャンバ23内の基板Sが、搬送ロボット22aによってコアチャンバ22を介してロードロックチャンバ21に運ばれる。
【0035】
成膜チャンバ23は、CVD法を用いて基板Sに対してジルコニウム(Zr)、ホウ素
(B)、及び酸素(O)を含む膜の1つである酸ホウ化ジルコニウム(ZrBO)膜を形成する真空槽である。図2は、成膜チャンバ23の概略構成を示している。成膜チャンバ23は、上部に開口を有したチャンバ本体31と、チャンバ本体31の上部に配設されることでその開口を塞ぐチャンバリッド32とを備えている。
【0036】
チャンバ本体31とチャンバリッド32とによって形成される内部空間である成膜室31Sには、基板Sが載置される基板ステージ33が配設されている。基板ステージ33に内設された抵抗加熱ヒータ33Hは、基板ステージ33に基板Sが載置されるときに、基板Sの温度を所定の温度、例えば100℃〜180℃、好ましくは120℃〜150℃にまで昇温させる。基板Sは、基板ステージ33に載置されることによって、成膜室31S内での位置が決められるとともに、成膜処理が行われている間中、その温度が所定温度に維持される。基板ステージ33の下方には、基板Sの搬出入を行う際等に基板ステージ33を上下方向に動かす昇降機構34が連結されている。
【0037】
チャンバ本体31の側部には、排気ポートP1を介して成膜室31S内を排気する排気ポンプ35が接続されている。また排気ポートP1と排気ポンプ35との間には、成膜チャンバ23内の圧力を調節するためのバルブVと圧力調節バルブAPCとが排気ポートP1側から順に設置されている。排気ポンプ35は、ターボ分子ポンプやドライポンプ等の各種ポンプによって構成されるものであって、成膜チャンバ23での成膜処理を行うときには、圧力調節バルブの調節を行うことによって成膜室31S内の圧力を例えば1Pa〜1000Paの所定圧力に減圧する。
【0038】
チャンバリッド32のチャンバ本体31側には、複数の第1供給孔H1と、各第1供給孔H1とは独立する複数の第2供給孔H2とを有するシャワープレート36が取り付けられている。
【0039】
第1供給孔H1は、ZrBO膜の形成材料である四水素化ホウ素ジルコニウム(Zr(BH4)4)を成膜室31Sに供給する。より詳しくは、第1供給孔H1には、チャンバリッド32の内部に形成されたガス通路GP1と該チャンバリッド32を貫通する原料ガスポートP2とを介して、Zr(BH4)4の入った原料タンクTKが接続されている。
【0040】
原料タンクTKには、キャリアガスであるアルゴン(Ar)を該原料タンクTKに供給するためのマスフローコントローラMFC1が接続されている。原料タンクTKの温度は、−2℃〜10℃、好ましくは0℃〜5℃の範囲に制御されている。原料タンクTKは、マスフローコントローラMFC1からのキャリアガスによって押し出されたZr(BH4)4昇華ガスを、キャリアガスとともに原料ガスポートP2に導出することで、Zr(BH4)4とキャリアガスとを第1供給孔H1から成膜室31Sに供給する。また、原料タンクTKとチャンバ23とを繋ぐZr(BH4)4供給配管には、Arガスを供給するマスフローコントローラMFC6が接続されている。マスフローコントローラMFC6は、Zr(BH4)4とキャリアガスとが停止されたときに、これらZr(BH4)4とキャリアガスとの流量の和に相当する流量のArガスを成膜チャンバに供給する。つまり、マスフローコントローラMFC6は、Zr(BH4)4が間欠的に成膜室31Sに供給される場合に、成膜室31S内の圧力バランスを常に保つことを目的として設けられている。
【0041】
他方、第2供給孔H2は、活性状態の窒素及び活性状態の酸素等を成膜室31Sに供給する。より詳しくは、第2供給孔H2には、チャンバリッド32の内部に形成されたガス通路GP2と該チャンバリッド32の上部に設置したマイクロ波プラズマ源PLとを介して、酸素(O2)ガスを供給するマスフローコントローラMFC2、窒素(N2)ガスを供給するマスフローコントローラMFC3、Arガスを供給するマスフローコントローラMFC4及び亜酸化窒素(N2O)ガスを供給するマスフローコントローラMFC5が接
続されている。これらマスフローコントローラMFC2,MFC3,MFC4,MFC5は、各ガスを所定流量に調量しつつマイクロ波プラズマ源PLに導出する。
【0042】
ガス通路GP2の上部に設置されたマイクロ波プラズマ源PLの内部には、石英或いはアルミナによって形成された耐熱性を有する放電管37が配設されている。マイクロ波プラズマ源PLの外側には、マイクロ波電源FGによって駆動されるマイクロ波源38が配設されている。マイクロ波源38から出力されるマイクロ波は、同軸ケーブル39aでマイクロ波プラズマ源PLにコネクタ39bを介して導かれた後、コネクタ39bに繋がれたアンテナ39cを介して放電管37に供給される。放電管37の内部は、チャンバリッド32の内部に形成されたガス通路GP2を介して成膜室31Sに繋がれている。マイクロ波源38は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発振させるマグネトロンであって、マイクロ波電源FGからの駆動電力により所定の出力範囲、例えば0.01kW〜3.0kWの範囲でマイクロ波を出力する。同軸ケーブル39aは、マイクロ波源38が発振させるマイクロ波をその内部に伝播させることでマイクロ波プラズマ源PLの内部へと導く。上記放電管37の内部には、成膜室31S内の圧力が所定値に保たれることによって、上記酸素、窒素、アルゴン、及び亜酸化窒素の各ガスが所定の流量で流れる。放電管37の内部を通過するガスの活性化は、マイクロ波源38がマイクロ波を発振させるときに、同軸ケーブル39aにより伝播されたマイクロ波をマイクロ波プラズマ源PL内のアンテナ39cを介して放電管37に照射することによって行われる。なお、成膜チャンバ23は、各種ガスの活性化によって生成されたラジカル成分が、成膜室31S内に供給される粒子の大部分を占めるような構成とされている。
【0043】
こうした成膜チャンバ23では、マスフローコントローラMFC1、原料タンクTK、チャンバリッド32、及びシャワープレート36が、原料供給部を構成している。また、マスフローコントローラMFC2〜5、マイクロ波電源FG、放電管37、マイクロ波源38、同軸ケーブル39a、マイクロ波プラズマ源PL、チャンバリッド32、及びシャワープレート36が、ガス供給部を構成している。
【0044】
次に、図3(a)及び図3(b)を参照して絶縁膜形成方法について説明する。
図3(a)は、本実施形態における絶縁膜形成方法の一態様であって、一般的なCVD法を用いた成膜方法において、各ガスの供給タイミングやマイクロ波電源を動作させマイクロ波を放電管37に供給するタイミングを示すものである。また、図3(b)は、本実施形態における絶縁膜形成方法の一態様であって、フローモデュレーテッド方式のCVD法における上述のような各種タイミングを示すものである。
【0045】
なお、上記図3(a)及び図3(b)では、マイクロ波電源FGのオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって、マイクロ波源から放電管へのマイクロ波の供給態様を示している。加えて、O2ガス及びN2ガスの混合ガスを供給するマスフローコントローラMFC2、MFC3のオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって、マイクロ波プラズマ源PLへの各ガスの供給態様を示す。また、Zr(BH4)4ガスを供給するマスフローコントローラMFC1のオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって原料ガスポートP2に対するZr(BH4)4とキャリアガスの供給態様を示している。そして、Arガスを供給するマスフローコントローラMFC6のオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって、原料ガスポートP2に対するArガスの供給態様を示している。
【0046】
上記図3(a)及び図3(b)のいずれにおいても、まず、成膜チャンバ23に基板Sが搬入された状態で、O2ガス、N2ガス、及びZr(BH4)4ガスラインに繋がれたマスフローコントローラMFC6からのArガスの供給が開始される(開始タイミングTs)。O2ガス、及びN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば25sccm、及び475
sccmとされる。また、開始タイミングTsでは、上記O2ガス及びN2ガスに加えて、ArガスをマスフローコントローラMFC4から供給することにより励起ガスにArガスを加えるようにしても良い。
【0047】
そして、上記開始タイミングTsにTx秒遅れてマイクロ波電源FGがオンの状態とされることによって、マイクロ波電源FGから放電管37にマイクロ波が供給される。マイクロ波の電力量は、例えば上記各ガスの励起に消費される実効値で50Wとされる。これにより、O2ガスとN2ガスとがマイクロ波によって活性化されることで、酸素ラジカルと窒素ラジカル等を含む活性種が生成される。なお、本実施形態では上述のように、基板Sの表面に到達する粒子は、その大部分がラジカル成分となるように成膜チャンバ23が構成されている。
【0048】
次いで、上記開始タイミングTsにTx+Ty秒遅れて、Zr(BH4)4とキャリアガスの供給が開始される。Zr(BH4)4のキャリアガスであるArガスの供給流量は、例えば100sccmとされる。なお、キャリアガスとしてのArガスの供給流量は、Arガスの供給流量を増やすことに伴ってZr(BH4)4の供給量が線形的に増える範囲に設定される。そして、開始タイミングTsにTx+Ty秒遅れてZr(BH4)4とキャリアガスの供給が開始されると同時に、マスフローコントローラMFC6からのArガスの供給は停止される。
【0049】
こうして、基板Sの表面に、Zr(BH4)4と活性化した酸素である酸素ラジカルとが供給されると、Zr(BH4)4が酸素ラジカルと反応することで、基板S上及び該基板Sの有する貫通孔Hの内面にZrBO膜が形成される。なお、この際、窒素ラジカルも酸素ラジカルと同様に形成されるものの、Zr原子、B原子が酸素との反応を優先的に選択するため、Zr(BH4)4の窒化反応は酸化反応と比較して進行し難い。そのため、上述したZrBO膜中には、窒素が混入していない。或いは、ZrBO膜中に窒素が混入したとしても、該窒素の濃度は酸素の濃度と比較して極めて低いものとなる。
【0050】
N2ガスの供給、及びO2ガスの供給は、上記開始タイミングTsにて開始されると、例えばTx+Ty+120+Tz秒継続された後、終了タイミングTeにて終了される。また、マイクロ波電源FGは、上記開始タイミングTs+Txの時点でオンの状態とされると、該状態がTy+120秒継続された後、終了タイミングTeよりTz秒前にてオフ(OFF)の状態とされる。
【0051】
また、図3(a)に示される態様では、Zr(BH4)4とキャリアガスの供給は、上記開始タイミングTsにTx+Ty秒遅れて開始されると、例えば120秒継続された後、終了タイミングTeよりTz秒前にて終了される。
【0052】
なお、上記Tx秒、Ty秒、及びTz秒は、マスフローコントローラにおけるガスの供給圧、マスフローコントローラと成膜室との間の配管の長さ、成膜室における排気速度などによって適宜変更可能な時間である。
【0053】
これに対し、図3(b)に示される態様におけるZr(BH4)4ガスの供給は、上記開始タイミングTsで開始されると、第1の期間Ta、例えば10秒だけ継続された後、一旦停止される。そして、Zr(BH4)4の供給の停止が第2の期間Tb、例えば10秒だけ継続された後、再びZr(BH4)4の供給が開始される。そして、上記開始タイミングTsと終了タイミングTeとの間であって、マイクロ波の供給と、酸素ラジカルとの供給が連続している間に、こうした第1の期間Taと第2の期間Tbとの組が例えば6回繰り返される。
【0054】
このように、図3(b)に示される態様では、Zr(BH4)4の供給が間欠的に行われる。そのため、Zr(BH4)4の供給期間である第1の期間(成膜処理期間)Taにおいては、Zr(BH4)4が酸素ラジカルと反応することによって、基板Sの表面及び貫通孔Hの内側面にZrBO膜が形成される。これに対し、Zr(BH4)4が供給されておらず、酸素ラジカルが供給されている第2の期間(酸化処理期間)Tbにおいては、第1の期間Taにおいて形成されたZrBO膜が酸素ラジカルによってさらに酸化される。そのため、絶縁膜が、より確実に絶縁性を発現するようになる。
【0055】
次に、Zr(BH4)4と励起状態にさせた酸素原子を含むガスとの反応によるZrBOを含む膜の形成のメカニズムについて説明する。TSVに用いる絶縁膜には、上述のように180℃以下での低温成長で優れた絶縁性やバリア性を有するだけでなく、TSVホールに対するステップカバレージ性能も重要な条件となる。一般に、CVD法において良好なステップカバレージ性能を得るには、気相反応では難しく、表面反応状態での成長が必要である。
【0056】
上述のようにZr(BH4)4と励起状態にさせた酸素原子を含むガスとの反応では、気相中もしくはウェハ基板温度の影響を受けるウェハ基板表面近傍の気相中で、Zr(BH4)4と励起状態にさせた酸素原子とが一旦反応する。そして、このような反応によって生成された前駆体(中間体)がウェハ基板の熱の影響を受けて基板表面で反応し、該基板表面にZrBOを含む膜が形成されるものと考えられる。そのため、前駆体の重合度が大きくなり過ぎたり、前駆体の酸化度が上がり過ぎたりすると、前駆体自体がクラスター粒子化してパーティクル成分と同じになってしまい、ウェハ基板表面での反応性よりもただの堆積性になってしまい良好なステップカバレージ特性は得られない。一方、上記前駆体の重合度や酸化度が不足すると、成膜速度が小さくなるとともに、良好な絶縁性やバリア性が得られなくもなる。
【0057】
例えば、励起状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスにイオン成分(電離した成分)が含まれていると、Zr(BH4)4の酸化反応が激しく進行する結果、上述したようなクラスター粒子が形成されてシャワープレートや成膜室31Sの内壁が汚染されてしまう。また、カバレージの良い絶縁膜が得られ難くなる。ただし、励起状態でもなく、またラジカル状態でもない酸化ガスが用いられる場合には、180℃以下の低温にて、その成膜反応が進行しなくなったり、成膜が進行したとしても、絶縁性やバリア性に乏しい膜しか形成されなくなったりする虞がある。
【0058】
この点、上述したZrBOの形成方法では、励起状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスのラジカル成分を成膜に利用することとしている。そのため、励起状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスのラジカル成分を取り出してその酸化反応を制御することによって、180℃以下の低温成長で優れた絶縁性とバリア性とともに良好なステップカバレージ性能も有するZrBOを含む絶縁膜を形成することが可能となる。
[実施例]
[ZrBO膜の形成]
直径6μm、深さ45μm(アスペクト比7.5)の凹部を複数有する直径200mmのシリコン基板に対して、以下の条件にてZrBO膜を形成した。
【0059】
・キャリアガス(Arガス)流量 100sccm
・N2ガス流量 475sccm
・O2ガス流量 25sccm
・成膜チャンバ内の圧力 300Pa
・マイクロ波電力 50W(ガス励起に消費される電力値)
・基板温度 150℃
・成膜時間 100秒
図4は、上記条件にて形成したZrBO膜と、該ZrBO膜が形成された凹部の断面構造を撮像したSEM画像である。図4(a)は、シリコン基板41に形成された1つの凹部42の全体を、図4(b)は、凹部42の開口における一部を、図4(c)は、凹部42の側面における深さ方向の中央部付近を、図4(d)は、凹部42の底面における一部をそれぞれ撮像したSEM画像である。なお、下記の各膜厚の値は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した値である。
【0060】
図4(b)に示されるように、シリコン基板41の表面に形成されたZrBO膜43の膜厚を表面膜厚FT1とすると、該表面膜厚FT1は220nmであった。図4(c)に示されるように、シリコン基板41の有する凹部42の側面に形成されたZrBO膜43の膜厚を側面膜厚FT2とすると、該側面膜厚FT2は121nmであった。また、表面膜厚FT1に対する側面膜厚FT2の百分率である被覆率は、55%であった。図4(d)に示されるように、上記凹部42の底面に形成されたZrBO膜43の膜厚を底面膜厚FT3とすると、該底面膜厚FT3は120nmであった。また、表面膜厚FT1に対する底面膜厚FT3の百分率である被覆率は、54.5%であった。このように、凹部42の内側面に形成されたZrBO膜43の被覆率は、凹部42の側面及び底面のいずれにおいても50%を超える良好な値であり、上記形成方法によれば150℃の低温成膜でありながらも段差被覆性の良好なZrBO膜を形成できることが認められた。
[ZrBO膜の安定性]
直径200mmのシリコン基板に対して、上記条件にてZrBO膜を形成して試験用ウェハを得た。そして、成膜直後におけるZrBO膜の膜厚と、シリコン基板とZrBO膜とを純水に48時間浸した後のZrBO膜の膜厚とを測定した。なお、各膜厚は上記と同様の方法で測定した値である。
【0061】
図5は、成膜直後のシリコン基板51上のZrBO膜52aと、浸漬後のシリコン基板51上のZrBO膜52bとを撮像したSEM画像である。図5(a)及び図5(b)は成膜直後のZrBO膜52aであり、図5(c)及び図(d)は浸漬後のZrBO膜52bである。図5(a)と図5(c)とを比較したところ、成膜直後のZrBO膜52aの表面と、浸漬後のZrBO膜52bの表面とでは外観上の差異が認められなかった。また、図5(b)に示されるように、成膜直後におけるZrBO膜の膜厚を膜厚FT4とすると、該膜厚FT4は264nmであった。そして、図5(d)に示されるように、浸漬後におけるZrBO膜の膜厚を膜厚FT5とすると、該膜厚FT5は270nmであった。つまり、成膜直後と浸積後とでは、ZrBO膜の膜厚は2.3%変化したのみであり、SEM測定による誤差範囲に包括されてしまうレベルで変化したのみであった。
【0062】
したがって、ZrBO膜は水に対して極めて安定な膜であることが認められた。
[ZrBO膜の組成]
直径200mmのシリコン基板に対して、膜厚が約200nmのZrBO膜を上記条件にて形成することによって試験用ZrBO膜を得た。そして、ZrBO膜中に含まれる元素の平均組成をラザフォード後方散乱分光法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry )及び核反応分析(NRA:Nuclear Reaction Analysis )を用いて計測した
。図6及び下記表1は、RBS及びNRAでZrBO膜の深さ方向の組成を計測した結果を示している。なお、図6において、横軸は上記試験用ZrBO膜の表面からの深さである。また、縦軸は、RBS及びNRAでZrBO膜を分析した結果、ZrBO膜から検出された元素の深さ方向の組成比を示している。
【0063】
【表1】
図6及び表1に示されるように、ZrBO膜中に検出された元素は、酸素、ホウ素、及びジルコニウムの3元素のみであった。窒素は膜中に検出されるレベルには含まれていなかった。また、酸素、ホウ素、及びジルコニウムの順でZrBO膜に占める割合が大きかった。より詳細には、酸素の平均組成比が65.4%、ホウ素の元素濃度が21.0%、ジルコニウムの元素濃度が13.6%であった。なお、RBS及びNRAによる組成分析の感度は%オーダーであり、各元素の検出誤差を下記表2に示す。
【0064】
【表2】
ちなみに、先の図5に示したように、ZrBO膜は水に対して安定であったことから、その膜中に、水と容易に反応することでホウ酸(B(OH)3)を生成する三酸化ホウ素(B2O3)を含んでいないものと考えられる。つまり、ZrBO膜とは、ジルコニウム、ホウ素、及び酸素を上述の割合で含むとともに、B2O3骨格を有しない膜構造であると考えられる。
[ZrBO膜の誘電率とリーク電流値]
直径200mm、且つ0.01Ωcm程度の低抵抗P型シリコン基板に対して、膜厚が100nmのZrBO膜を上記条件で形成することによって試験用ZrBO膜を得た。
【0065】
まず、ZrBO膜の誘電率を以下の方法にて算出した。つまり、電極面積が2.792×10−3cm2である水銀プローブを用いて、直流バイアスに1MHzの高周波を重畳してC−V特性を測定した後、C−V特性の測定結果から誘電率を算出した。
【0066】
ZrBO膜の誘電率の測定結果とともに、絶縁膜として多用されている酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、遷移金属の酸化物である酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、及び酸化チタン(TiO2)の誘電率を表3に示す。なお、ZrBOの値としては、30個の試料について誘電率を測定した結果のうちの最小値と最大値とを記載している。また、ZrBO以外の酸化物における誘電率は一般の専門書や文献などを参照した値である。
【0067】
【表3】
表3に示されるように、ZrBO膜の誘電率は、Zrの酸化物を含めた他の遷移金属の酸化物よりも極端に低いことが認められた。加えて、信号遅延が起こりにくい程度の低誘電率膜であるSiO2膜に近い誘電率であることが認められた。それゆえに、上記方法によって形成されたZrBO膜を、シリコン貫通電極(TSV)用のバリア絶縁膜として用いた場合、他の遷移金属の酸化膜よりも該TSVにおける信号遅延を抑えることができる。
【0068】
同様に、0.01Ωcm程度の低抵抗P型シリコン基板上に上記条件で形成された膜厚が100nmであるZrBO膜のリーク電流としての電流密度J(A/cm2)を以下の方法にて測定した。つまり、ZrBO膜が形成された低抵抗P型シリコン基板を接地するとともに、ZrBO膜上の上記水銀プローブに負の電圧を0〜20Vまで印加することで、ZrBO膜に印加される電界E(MV/cm)に対する電流密度を測定した。この測定結果を図7に示す。
【0069】
ZrBO膜は、2MV/cmの電界が印加されたときの電流密度の値が9.16×10−10A/cm2であって、実用上好ましいとされる1×10−8A/cm2を超えない値であることが認められた。なお、150℃という低温下でプラズマCVD法によって形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜など、これらシリコン系の絶縁膜の場合には、同測定法において2MV/cmの電界が印加されると1×10−8A/cm2を超えるような値であった。それゆえに、上述の方法にて形成されたZrBO膜を上記TSV用のバリア絶縁膜として用いることにより、プラズマCVD法によって形成されたシリコン系の絶縁膜を用いるよりも、シリコン基板とTSVとの絶縁性を高められることが認められた。
[ZrBO膜のバリア性]
表面に膜厚100nmのアモルファスシリコン(α−Si)が形成された直径200mmのシリコン基板に対して、膜厚100nmのZrBO膜を上記条件で形成し、その上にPVD法にて膜厚200nmの銅(Cu)を成膜した試験用サンプルウェハを得た。
【0070】
その後、この試験用サンプルウェハに対して、400℃、1時間のアニール処理を施し、Cu200nm/ZrBO100nm/α−Si100nmのサンドイッチ構造において、ZrBO100nmを介してのCuとSiとの反応、及びZrBO膜中のCu拡散の有無について調査した。
【0071】
こうした調査の結果として、アニール処理の前後における上記サンドイッチ構造を図8に示す。図8(a)は、上記試験用サンプルウェハを形成した直後のSTEM写真であり、図8(b)はその試験用サンプルウェハに400℃、1時間のアニール処理を施した直
後のSTEM写真である。このSTEM写真の比較から明らかなように、ZrBO100nmを介したCuとSiとの反応(シリサイデーション)は発生していなかった。また、同様の結果が、膜厚50nmのZrBO膜においても認められた。
【0072】
なお、上記アニール処理時における400℃という温度は、処理温度を最大でも200℃以下に設定しようとしている上述のVia Last やVia after Bonding でのTSV形成に
おけるバリア性やシリサイド耐性の評価には、十分な加速試験温度である。
【0073】
したがって、上述の結果から、150℃で成膜したZrBO膜は十分なバリア性を有した膜と認められるとともに、150℃で成膜したZrBO膜ではその膜厚が50nmあればバリア性、シリサイド耐性は十分であることが分かる。
[ZrBO膜形成の圧力依存性]
直径200mmのシリコン基板に対して、以下の条件でZrBO膜を形成し、そのときの成膜速度を測定した。なお、成膜チャンバ23の排気ポートP1と排気ポンプ35との間に設置された圧力調節バルブ(APC)を調節することによって、該成膜チャンバ23内の圧力を変更した。
【0074】
・キャリアガス(Arガス)流量 100sccm
・N2ガス流量 475sccm
・O2ガス流量 25sccm
・マイクロ波電力 50W
・基板温度 170℃
・成膜時間 100秒
上記成膜速度の計測結果を図9に示す。同図9に示されるように、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近になるまでは、成膜チャンバ23の圧力を高めることに比例して、成膜速度も高くなることが認められた。これに対して、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近を超えると、成膜チャンバ23の圧力を高めることに反比例して、成膜速度は低くなることが認められた。これは、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近までの圧力領域にあるときには、圧力を高めることに応じてZr(BH4)4の成膜チャンバ23内での分圧が増加するために成膜速度が高くなると考えられる。他方、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近を超える圧力領域では、原料タンクTK内の圧力が上がるとともにZr(BH4)4の昇華が抑制され、成膜チャンバに供給されるZr(BH4)4量が低下して、成膜チャンバ23内のZr(BH4)4分圧が低下するため、ZrBO膜の成膜速度が低くなると考えられる。なお、こうした傾向は、シリコン基板の中心からの距離にかかわらず、該シリコン基板のいずれの領域においても認められた。
【0075】
こうした結果から、図2に示す本発明の一実施形態であるZrBO膜の成膜装置においては、最も成膜速度が高い状態でZrBO膜の形成を行いたい場合には、成膜チャンバ23内の圧力を300Pa付近とすればよいことが分かった。
[N2Oを用いたZrBO膜形成とリーク特性]
直径200mmの0.01Ωcm程度の低抵抗P型シリコン基板に対して、以下の条件にてZrBO膜を形成した。
【0076】
・キャリアガス(Arガス)流量 100sccm
・N2ガス流量 450sccm
・N2Oガス流量 50sccm
・成膜チャンバ内の圧力 300Pa
・マイクロ波電力 90W(ガス励起に消費される電力値)
・基板温度 140℃
・成膜時間 120秒
図10は、上記条件で低抵抗P型シリコン基板にZrBO膜を形成し、上記水銀プローブでZrBO膜のリーク電流を測定した結果を示している。上記水銀プローブによって印加する電圧は、シリコン基板がP型であるため負側に20Vまでとした。水銀プローブで測定した箇所のZrBO膜厚は約160nmであったことから、該ZrBO膜中の電界強度は1.2MV/cm強の値までしか測定できていないものの、リーク電流は1×10−8A/cm2より十分に小さく、実用レベルのリーク電流値であった。ちなみに、電界1MV/cmでのリーク電流は9.95×10−10A/cm2であった。このように、N2OをZr(BH4)4の酸化ガスとして用いるとともに、基板温度を140℃として成膜したZrBO膜でも、実用に十分な絶縁膜であった。
【0077】
以上説明したように、上記実施形態によれば以下に列挙する効果が得られるようになる。
(1)Zr(BH4)4を、活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスによって酸化することにより、基板S及び該基板Sに形成された貫通孔Hの内面に絶縁膜16としてZrBO膜を形成するようにした。そのため、180℃以下の低温での成膜においても、金属配線に対するバリア性を有し、シリコン系の絶縁膜と同じ程度の誘電率、及び熱CVDによって形成されるシリコン酸化膜と同じ程度の絶縁性を有した絶縁膜を形成することができる。
【0078】
(2)活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスを基板Sに対して連続的に供給する間に、Zr(BH4)4を同基板Sに間欠的に供給するようにした。これにより、活性化した酸素とZr(BH4)4とが、基板Sに対して同時に供給されている間(成膜処理期間Ta)は、活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスによるZr(BH4)4の酸化が進行することによって、基板S上及び上記貫通孔Hの内面にZrBO膜が形成される。他方、Zr(BH4)4の供給が停止されるとともに、活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスの供給が継続されている間(酸化処理期間Tb)は、基板S上及び貫通孔Hの内面に既に形成されたZrBO膜がさらに酸化されることになる。それゆえに、ZrBO膜がより確実に酸化されることから、該ZrBO膜が、より確実に絶縁性を発現するようになる。
【0079】
(3)酸素原子を含むガスを活性状態にする手段としてマイクロ波(2.45GHz)による高周波励起を用いるようにした。そのため、酸素原子を含むガスを活性状態にしやすくすることができ、ひいてはZr(BH4)4が酸化されやすくなる。
【0080】
(4)活性状態にさせた酸素原子を含むガスとして酸素原子を含むガスのラジカル成分を用いるようにした。そのため、活性状態にさせた酸素原子を含むガスの1つの成分であるイオン成分を用いる場合のような基板S上及び貫通孔Hの内面に既に形成されたZrBO膜が受けるダメージを抑えつつ、ZrBOの形成反応も穏やかに制御して十分な絶縁性が得られるだけ酸化されたZrBO膜を形成することができる。
【0081】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・酸素原子を含むガスを活性状態にする手段として、RF(13.56MHz)による高周波励起や、W(タングステン)などの金属触媒源による励起を用いるようにしてもよい。
【0082】
・ZrBO膜の形成時における基板温度、成膜室内の圧力、各種ガスの供給流量、及びRFやマイクロ波などの高周波電力や金属触媒のタングステン触媒温度等のプロセス条件は、ZrBO膜の形成が可能な範囲で任意に変更可能である。
【0083】
・Zr(BH4)4のキャリアガスとしてはArガスに限らず、他の不活性ガス、例え
ばHeガス等を用いるようにしてもよい。
・成膜装置20の処理対象である基板Sは、シリコン基板11、多層配線層12、絶縁層13、及び接着層14を備える構成とした。これに限らず、少なくとも、貫通孔Hが形成されたシリコン基板11を有する構成であればよい。
【0084】
・ZrBO膜の形成対象は、シリコン貫通電極15用の貫通孔Hが設けられたシリコン基板11を備える基板Sに限らない。例えば、埋込み配線用の凹部が形成された基板や、層間に形成される絶縁膜等、上述のようなバリア性、絶縁性、或いは誘電率等が必要とされる部位に用いることができる。
【0085】
・ZrBO膜の形成対象は、シリコン基板以外の半導体基板、例えばSiC基板やGaN基板等であってもよい。これら基板を用いた半導体装置においても、180℃以下の低温で絶縁膜を形成する必要がある工程に対して、上述の方法によって形成されるZrBO膜を用いることが可能である。
【0086】
・活性状態にさせた酸素原子を含むガスとして、O2ガス及びN2O(亜酸化窒素)ガスを用いるようにした。これに限らず、酸素原子を含むガスとして、NO(一酸化窒素)ガス、NO2(二酸化窒素)ガス、CO(一酸化炭素)ガス、CO2(二酸化炭素)ガスや、O原子を含むその他のガスを用いるようにしてもよい。また、酸素原子を含むガスとしては、O2ガスとN2Oガスとの混合ガスのように、先に列挙したガスの中から複数のガスを選択した混合ガスを用いるようにしてもよい。上記ガスの組み合わせにより、Zr(BH4)4との酸化反応を成膜室内の環境や成膜対象の形状に合わせて適宜選択することが可能である。
【0087】
・ZrBO膜の形成に際してN2ガスを添加するようにした。これは、O2ガス、N2O(亜酸化窒素)ガス等の酸素原子を含むガスのみでは励起状態の寿命が短い場合があるため、励起されやすく且つ比較的励起状態の寿命の長いN2ガスを添加することによって、酸素原子を含むガスの励起状態の寿命を長くすることができるためである。なお、N2ガスに代えてArガスとNeガスとを用いてZrBO膜を形成するようにしてもよい。
【0088】
・Zr(BH4)4を酸化する活性状態にさせた酸素原子を含むガスとして、ラジカル状態の酸素原子を含むガスを用いるようにした。これに限らず、酸化工程におけるイオンの衝撃がシリコン基板に形成された素子やZrBO膜の電気的特性や形状等に影響しないのであれば、上記活性化された酸素として酸素イオンを用いるようにしてもよい。
【0089】
・上述のように、酸素原子を含むガスのイオンも存在する態様でZr(BH4)4を酸化するのであれば、成膜チャンバ23内において、シリコン基板11がRFやマイクロ波の高周波プラズマに晒されるような態様でZrBO膜を成膜してもよい。
【0090】
・成膜処理期間Taと酸化処理期間Tbとは、各々一回あたりの期間を同一として複数回実施するようにした。これに限らず、例えば成膜処理期間Taと酸化処理期間Tbとは各回の期間の長さが互いに異なるようにしてもよい。
【0091】
・成膜処理期間Ta及び酸化処理期間Tbの繰り返し回数は、上記開始タイミングTsから終了タイミングTeまでの期間の長さ、成膜処理期間Ta及び酸化処理期間Tbの1回あたりの長さ、目標とするZrBO膜の厚さ、ZrBO膜の成膜速度等に応じて任意に変更可能である。
【0092】
・活性状態にさせた酸素原子を含むガスの供給期間中に、Zr(BH4)4の供給期間を間欠的に複数回設けるようにした。これに限らず、活性状態にさせた酸素原子を含むガ
スとZr(BH4)4とを同時に供給する期間(成膜処理期間Ta)と、活性状態にさせた酸素原子を含むガスを供給する期間(酸化処理期間Tb)とを1回ずつ設けるようにしてもよい。
【0093】
・上記開始タイミングTsからTx+Ty秒だけ遅れたタイミングから終了タイミングTeからTz秒前までにわたり活性状態にさせた酸素原子を含むガス(例えばO2ガス及びマイクロ波)の供給とZr(BH4)4の供給とを連続して実施するようにしてもよい。また、同一の成膜対象に対して、こうした処理を複数回行うようにしてもよい。
【0094】
・上記開始タイミングTsにおいてO2ガス、N2ガス及びArガスの供給を開始してから所定期間(Tx秒)の後に、マイクロ波電源FGをオンの状態とするようにした。これは、各種ガスの供給開始後に成膜チャンバ23内の圧力、特に成膜室31S内の圧力を安定させ、O2ガス及びN2ガスの励起を安定に行うようにするためである。つまり、各種ガスの供給を開始してからマイクロ波電源をオンの状態とするまでの所定期間Txは、成膜室31S内の圧力が安定するまでの時間として任意に設定することができる。
【0095】
・O2ガス、N2ガス、及びZr(BH4)4ガスの供給は、マイクロ波など励起手段によるO2ガスやN2Oガスなど酸素原子を含むガスの活性化、及びZr(BH4)4膜の酸化によるZrBO膜の形成が可能な範囲であれば任意に変更可能である。
【0096】
・実施形態及び実施例においては、Zr、B、及びOを主要な構成元素として含む絶縁膜、つまりZrBO膜が形成される条件を例示した。これに限らず、絶縁膜の構成元素として窒素(N)が含まれるような条件、例えばN2ガスあるいはN2Oガスの流量を増加させて該絶縁膜の形成を実施するようにしてもよい。なお、Zr、B、及びOに加えてNを主要な構成元素として含むバリア膜、つまりZrBON膜であっても、上述のようなバリア性、絶縁性、及び誘電率に関わる条件が満たされることが、本願発明者らによって確認されている。
【0097】
・上記ZrBO膜は、上述のようにZr(BH4)4と活性状態の酸素とを反応させて形成する方法以外の方法によって形成するようにしてもよい。すなわち、減圧化の成膜チャンバ内において、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成する方法であってもよい。
【0098】
半導体基板上にて、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成する方法であってもよい。
【0099】
・上記実施形態では、絶縁膜16として、ジルコニウムとホウ素と酸素とからなる膜を形成するようにした。これに代えて、該絶縁膜16として、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、及びハフニウム(Hf)の金属元素のいずれか一つと、ホウ素と、酸素とからなる膜を形成するようにしてもよい。この場合、上記Zr(BH4)4ガスに代えて、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを用いて絶縁膜16を成膜するようにすればよい。
【符号の説明】
【0100】
10…半導体装置、11,41,51…シリコン基板、12…多層配線層、13…絶縁
層、14…接着層、15…シリコン貫通電極(TSV)、16…絶縁膜、20…成膜装置、21…ロードロックチャンバ、22…コアチャンバ、22a…搬送ロボット、23…成膜チャンバ、31…チャンバ本体、31S…成膜室、32…チャンバリッド、33…基板ステージ、34…昇降機構、35…排気ポンプ、36…シャワープレート、37…放電管、38…マイクロ波源、39a…同軸ケーブル、39b…コネクタ、39c…アンテナ、42…凹部、43,52a,52b…ZrBO膜、APC…圧力調整バルブ、FG…マイクロ波電源、GP1,GP2…ガス通路、H…貫通孔、MFC1,MFC2,MFC3,MFC4,MFC5,MFC6…マスフローコントローラ、P1…排気ポート、P2…原料ガスポート、PL…マイクロ波プラズマ源、S…基板、TK…原料タンク、V…バルブ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁膜、例えば、シリコン貫通電極(Through Silicon Via:TSV)の周囲に形成されてTSVとシリコン基板とを絶縁するための絶縁膜の形成方法及び該方法を用いる絶縁膜の形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、半導体デバイスの高性能化を図る技術の一つとして、例えば特許文献1に記載のように、シリコン基板に形成された貫通電極(シリコン貫通電極:Through Silicon Via (TSV))を介して複数の半導体チップを積層する三次元実装技術が注目されている。図11には、TSVを有した半導体装置の一部断面構造が示されている。
【0003】
図11に示されるように、半導体装置10は、トランジスタ等の素子が形成された半導体基板であるシリコン基板11と、該シリコン基板11の上面に積層されるとともに、例えば低誘電率の絶縁膜にシリコン基板11の素子と接続される各種配線が形成された多層配線層12とを有している。そして、多層配線層12の上面を覆うように例えば酸化シリコン等の絶縁層13が形成されているとともに、シリコン基板11の下面を覆うように接着層14が形成されている。
【0004】
また、半導体装置10には、上記接着層14、シリコン基板11、多層配線層12、及び絶縁層13を貫通する貫通孔Hが形成されている。また、貫通孔Hには、該貫通孔Hの内面に形成された絶縁膜16に囲まれてシリコン基板間を接続するシリコン貫通電極15が形成されている。絶縁膜16は、シリコン窒化物やシリコン酸化物から形成されて、多層配線層12の配線とシリコン貫通電極15とが電気的に接続したり、シリコン貫通電極15の構成元素が貫通孔Hの外側に移動することを抑えたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−87233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記TSVを形成する方法としては、一般に、(a)Via First 法、(b)Via Middle 法、(c)Via Last 法、(d)Via after Bonding 法と言われる4つの方法が検討されている。(a)Via First 法は、半導体製造プロセスの前工程である素子形成プロセスの前にTSVが形成される方法である。また、(b)Via Middle 法は、素子形
成プロセスと同時にTSVが形成される方法である。また、(c)Via Last 法は、素子
形成プロセスの後にTSVが形成される方法である。これらに対して、(d)Via after Bonding 法は、パッシベーション処理の施された半導体素子を有するウェハと他のウェハ、或いはパッシベーション処理の施された半導体素子を有するチップとウェハ、また或いは該チップと他のチップとが高分子樹脂などの接着剤で接着された後にTSVが形成される方法である。
【0007】
(a)Via First 法では、上述したように、素子形成プロセスの前にTSVが形成される。そのため、TSVに用いられる材料には、素子形成プロセスにて不可欠な熱処理に対し、耐久性の高い材料が求められる。こうした要請のもと、Vi a First 法では、熱処理
に対して耐久性の低い銅(Cu)がTSVの構成材料から外され、熱処理に対して耐久性の高いタングステン(W)が一般に用いられる。そして、Wの電気抵抗値がCuの電気抵
抗値よりも大幅に高いため、結局のところ、Via First 法は、半導体素子の動作を高速化するという点において不可避的な課題を残している。
【0008】
(b)Via Middle 法では、素子形成プロセスと同時にTSVが形成される。すなわち
、パターン寸法がナノメートルオーダーの微細な半導体素子と、パターン寸法がマイクロメートルオーダーのTSVとが同時に形成されることとなる。このようなVia Middle 法
では、素子形成プロセスの処理工程数や処理時間をTSVに合わせて増やす必要があるため、結局のところ、プロセスのコストが大きいという点において不可避的な課題を残している。
【0009】
そのため、近年では、上述のような課題を有しない方法、すなわち、(c)Via Last法と(d)Via after Bonding法とが盛んに検討されている。
一方、(c)Via Last 法、(d)Via after Bonding 法では、ウェハの厚さが100
μm〜数μmまで削られ、その後に、TSV用のホールが形成される。詳しくは、(c)Via Last法では、石英などからなるウェハサポート基板にウェハが仮接着された後に、ウェハの裏面が削られ、その後に、TSVが形成される。また、(d)Via after Bonding 法では、(c)Via Last 法と同様に、一対のウェハが半導体素子の形成された表面同士
で接着された後に、半導体素子の形成されていない裏面が削られ、その後に、TSVが形成される。この際、上述した接着剤は、高分子樹脂から構成されるものであって、その熱処理に対する膨張量や変形量は、半導体素子に用いられている一般的な材料と比較して著しく大きいものである。そして、こうした接着剤の耐熱温度は、通常、180℃以下、好ましくは150℃以下である。そのため、上記(c)Via Last 法や(d)Via after Bonding 法では、こうした接着剤の耐熱温度以下、すなわち、180℃以下、好ましくは1
50℃以下でのプロセスが要求されている。
【0010】
しかしながら、上記シリコン窒化物やシリコン酸化物で形成される絶縁膜16は、一般に、250℃以上の高温条件にて成膜されて初めて絶縁膜16として機能するだけの絶縁性を有するものである。例えば、プラズマCVD法によってシリコン酸化膜を形成する場合、250℃〜400℃程度の温度条件にて成膜を行う必要がある。また、プラズマCVD法によってシリコン窒化膜を形成する場合、300℃程度の温度条件にて成膜を行う必要がある。そのため、上記(c)Via Last 法や(d)Via after Bonding 法において要
求される温度条件では、上記貫通孔Hの内面への成膜自体は可能であったとしても、膜内に含まれる不純物等のために、所望とする絶縁性を得ることが困難である。したがって、シリコン貫通電極を有する半導体装置には、上述のような低温条件下での成膜であっても十分な絶縁性を有する絶縁膜を貫通孔の内面に有することが望まれている。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、成膜温度が180℃以下で形成される絶縁膜の絶縁性を高めることの可能な絶縁膜の形成方法及び該絶縁膜を形成する成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、半導体基板上にて、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にMBOを含む絶縁膜を形成する絶縁膜の形成方法をその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、半導体基板上にて、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化
ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成することを要旨とする。
【0014】
M(BH4)xを出発材料として得られるホウ化金属膜が、銅等の金属配線用のバリア膜として研究対象とされて久しい。本願発明者らは、こうしたホウ化金属膜の有するバリア性や導電性及び絶縁性を研究する過程にて、金属、ホウ素(B)、及び酸素(O)を含む膜、すなわちMBO膜が、以下の特性を有することを見出した。
・180℃以下の低温で成長すること。
・熱CVD法で形成されたシリコン酸化物膜と略同じ程度の優れた絶縁性を有すること。・シリコン(Si)、及び銅(Cu)に対して優れたバリア性を有すること。
【0015】
上記請求項1に記載の発明によれば、M(BH4)xが、活性状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスによって酸化されることにより、半導体基板上にMBOを含む絶縁膜が形成されることとなる。また、上記請求項2に記載の発明によれば、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜が形成されることとなる。そのため、上述した特性のように、低温成膜でありながら優れた絶縁性と優れたバリア性を有する絶縁膜が形成できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、酸素ガスを含むことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、亜酸化窒素、一酸化窒素、及び二酸化窒素の少なくとも一つを含むことを要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、一酸化炭素、及び二酸化炭素の少なくとも一つを含むことを要旨とする。
酸化ガスとして酸素ガスが用いられる場合には、他の酸化ガスが用いられる場合と比較して、金属含有ガスの酸化反応が進行しやすくなる。それゆえに、請求項3に記載の発明によれば、熱による反応の進行が一般的に小さくなる180℃以下の低温成膜においても、高い成膜速度を得ることが可能にもなる。
【0018】
一方、亜酸化窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスのいずれを用いる方法では、上述した酸素ガスよりは酸化反応が進行し難いものの、これらのガスを活性状態にすることで、金属含有ガスの酸化反応は180℃以下で進行する。そのため、請求項4、あるいは請求項5に記載の発明によれば、低い成膜速度を細かい範囲で調整することが求められる場合に有効的である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法において、前記酸化ガスが、ラジカル成分を含むことを要旨とする。
請求項6に記載の発明によれば、金属含有ガスの酸化反応がラジカル成分によって進行することになる。金属含有ガスの酸化源としては、上述したラジカル成分の他、イオン成分を用いることも可能である。ただし、このようなイオン成分が用いられる酸化反応では、活性状態のイオン成分が半導体基板の表面に入射するため、結晶欠陥等のダメージが半導体基板に発生しやすくもなる。この点、上述した方法のように酸化ガスにラジカル成分が含まれる方法であれば、イオン成分を用いることによって生じ得るダメージを抑えることが可能にもなる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法におい
て、前記活性状態が、高周波励起、及び金属触媒源の少なくとも一つによるものであることを要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、酸化ガスに供給する高周波電力の大きさや金属触媒源における温度等、これらのパラメータによって、酸化ガスの活性状態が調整可能にもなる。それゆえに、金属含有ガスや酸化ガスの供給の態様に合わせた活性状態を得ることが可能にもなる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法において、前記半導体基板上に前記酸化ガスを連続的に供給する間に前記金属含有ガスを間欠的に供給して前記半導体基板上に前記絶縁膜を形成することを要旨とする。
【0023】
上述したホウ化金属酸化物膜にて、その酸化の度合いが十分でない場合には、絶縁膜としての用途に足るだけの絶縁性が得られない虞がある。これに対して、MBOを含む膜が形成される過程において、前駆体の重合度が大きくなり過ぎたり、前駆体の酸化度が上がり過ぎたりすると、前駆体自体がクラスター粒子化してパーティクル成分になってしまう。
【0024】
この点、請求項8に記載の発明では、酸化ガスと金属含有ガスとが、半導体基板に対して同時に供給されている間は、酸化ガスと金属含有ガスとの反応が進行することによって、半導体基板上にMBOを含む絶縁膜が形成される。そして、このように形成されたMBOを含む絶縁膜にて酸化状態が不十分な場合でも、金属含有ガスの供給が停止されるとともに、酸化ガスの供給が継続されている間は、半導体基板上に既に形成された絶縁膜が、その表面層よりさらに酸化されることになる。そのため、MBOにおけるホウ素の含有量を失うことなく、絶縁膜がより確実に酸化されることから、ホウ素の含有量に起因した誘電特性の低下を抑えつつ、該絶縁膜が確実に絶縁性を発現するようになる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法において、前記半導体基板が、複数のシリコン基板を接着してなるとともに、前記半導体基板の表面から該半導体基板の積層方向に前記シリコン基板の少なくとも一つを貫通して、貫通された前記シリコン基板の下部のシリコン基板に形成された電極に繋がるシリコン貫通電極用の貫通孔を有するものであり、前記絶縁膜を前記半導体基板の表面及び前記貫通孔の内面に形成することを要旨とする。
【0026】
シリコン貫通電極が形成される貫通孔には、該電極の形成材料である金属がシリコン基板側に拡散することを抑制するためのバリア性と、シリコン基板に形成された素子や配線等と電極とを電気的に絶縁させるための絶縁性とを有した絶縁膜が必要とされる。
【0027】
この点、請求項9に記載の発明では、シリコン貫通電極用の貫通孔における内側面にZrBOを含む絶縁膜を形成するようにしている。そのため、上記バリア性、及び絶縁性の条件を満たす絶縁膜を、シリコン貫通電極用の貫通孔の内側面に形成することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、半導体基板を収容する真空槽と、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを前記真空槽内に供給する原料供給部と、活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスを前記真空槽内に供給するガス供給部とを備え、前記M(BH4)xを前記酸化ガスで酸化することによりMBOを含む絶縁膜を前記半導体基板上に形成する絶縁膜形成装置をその要旨とする。
【0029】
上記構成によれば、M(BH4)xが、活性化した酸素によって酸化されることにより、半導体基板上にMBOを含む膜が形成されることとなる。そのため、金属配線に対する
バリア性、及び熱CVDによって形成されるシリコン酸化膜と同じ程度の絶縁性を絶縁膜としてのMBO含有膜に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の絶縁膜形成装置の断面構造を示す断面図。
【図2】同絶縁膜形成装置の有する成膜チャンバの概略構成を示す図。
【図3】(a)(b)絶縁膜の成膜プロセス時におけるタイミングチャート。
【図4】(a)(b)(c)(d)シリコン基板に形成された凹部及びその内側面に形成されたZrBO膜の断面構造を示すSEM画像。
【図5】(a)(b)シリコン基板及びZrBO膜の断面構造を示すSEM画像、(c)(d)純水に48時間浸したシリコン基板及びZrBO膜の断面構造を示すSEM画像。
【図6】O2を用いて形成したZrBO膜の組成をラザフォード後方散乱分光法(RBS)及び核反応分析(NRA)により分析した結果を示すグラフ。
【図7】O2を用いて形成したZrBO膜のリーク特性を水銀プローブで測定した結果を示すグラフ。
【図8】(a)(b)Cu/ZrBO/α−Siの積層構造を用いてZrBO膜のバリア性及びシリサイド耐性を評価した結果を示すSTEM写真。
【図9】成膜チャンバ内の圧力とZrBO膜の成膜速度との関係を示すグラフ。
【図10】N2Oを用いて形成したZrBO膜のリーク特性を水銀プローブで測定した結果を示すグラフ。
【図11】シリコン貫通電極を有する半導体装置の一部断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態の絶縁膜形成方法及び絶縁膜形成装置について、図1〜図10を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、絶縁膜形成装置について説明する。なお、本実施形態の絶縁膜形成方法及び絶縁膜形成装置の処理対象である基板とは、上記半導体装置10の有するシリコン基板11の貫通孔H内に絶縁膜16とシリコン貫通電極15とが形成されていない構造物のことである。
【0032】
図1は、成膜装置として具現化された絶縁膜形成装置の概略構成を示している。成膜装置20は、ロードロックチャンバ21と、ロードロックチャンバ21に連結されたコアチャンバ22と、コアチャンバ22に連結された4つの成膜チャンバ23とを有している。コアチャンバ22に接続された成膜チャンバ23とロードロックチャンバ21とは、コアチャンバ22とこれらチャンバ21,23との間に設けられたゲートバルブが開放されることによって、1つの真空系を形成することができる。
【0033】
ロードロックチャンバ21は、複数の基板Sを収容する真空槽である。基板Sに対する成膜処理が開始されるときには、基板Sが、ロードロックチャンバ21を介して成膜装置20内部に運ばれる。また、基板Sに対する成膜処理が終了されるときには、基板Sが、ロードロックチャンバ21を介して成膜装置20の外部に運ばれる。
【0034】
コアチャンバ22は、基板Sを搬送する搬送ロボット22aが搭載された真空槽である。基板Sに対する成膜処理が開始されるときには、ロードロックチャンバ21内の基板Sが、搬送ロボット22aによってコアチャンバ22を介して成膜チャンバ23に運ばれる。また、基板Sに対する成膜処理が終了されるときには、成膜チャンバ23内の基板Sが、搬送ロボット22aによってコアチャンバ22を介してロードロックチャンバ21に運ばれる。
【0035】
成膜チャンバ23は、CVD法を用いて基板Sに対してジルコニウム(Zr)、ホウ素
(B)、及び酸素(O)を含む膜の1つである酸ホウ化ジルコニウム(ZrBO)膜を形成する真空槽である。図2は、成膜チャンバ23の概略構成を示している。成膜チャンバ23は、上部に開口を有したチャンバ本体31と、チャンバ本体31の上部に配設されることでその開口を塞ぐチャンバリッド32とを備えている。
【0036】
チャンバ本体31とチャンバリッド32とによって形成される内部空間である成膜室31Sには、基板Sが載置される基板ステージ33が配設されている。基板ステージ33に内設された抵抗加熱ヒータ33Hは、基板ステージ33に基板Sが載置されるときに、基板Sの温度を所定の温度、例えば100℃〜180℃、好ましくは120℃〜150℃にまで昇温させる。基板Sは、基板ステージ33に載置されることによって、成膜室31S内での位置が決められるとともに、成膜処理が行われている間中、その温度が所定温度に維持される。基板ステージ33の下方には、基板Sの搬出入を行う際等に基板ステージ33を上下方向に動かす昇降機構34が連結されている。
【0037】
チャンバ本体31の側部には、排気ポートP1を介して成膜室31S内を排気する排気ポンプ35が接続されている。また排気ポートP1と排気ポンプ35との間には、成膜チャンバ23内の圧力を調節するためのバルブVと圧力調節バルブAPCとが排気ポートP1側から順に設置されている。排気ポンプ35は、ターボ分子ポンプやドライポンプ等の各種ポンプによって構成されるものであって、成膜チャンバ23での成膜処理を行うときには、圧力調節バルブの調節を行うことによって成膜室31S内の圧力を例えば1Pa〜1000Paの所定圧力に減圧する。
【0038】
チャンバリッド32のチャンバ本体31側には、複数の第1供給孔H1と、各第1供給孔H1とは独立する複数の第2供給孔H2とを有するシャワープレート36が取り付けられている。
【0039】
第1供給孔H1は、ZrBO膜の形成材料である四水素化ホウ素ジルコニウム(Zr(BH4)4)を成膜室31Sに供給する。より詳しくは、第1供給孔H1には、チャンバリッド32の内部に形成されたガス通路GP1と該チャンバリッド32を貫通する原料ガスポートP2とを介して、Zr(BH4)4の入った原料タンクTKが接続されている。
【0040】
原料タンクTKには、キャリアガスであるアルゴン(Ar)を該原料タンクTKに供給するためのマスフローコントローラMFC1が接続されている。原料タンクTKの温度は、−2℃〜10℃、好ましくは0℃〜5℃の範囲に制御されている。原料タンクTKは、マスフローコントローラMFC1からのキャリアガスによって押し出されたZr(BH4)4昇華ガスを、キャリアガスとともに原料ガスポートP2に導出することで、Zr(BH4)4とキャリアガスとを第1供給孔H1から成膜室31Sに供給する。また、原料タンクTKとチャンバ23とを繋ぐZr(BH4)4供給配管には、Arガスを供給するマスフローコントローラMFC6が接続されている。マスフローコントローラMFC6は、Zr(BH4)4とキャリアガスとが停止されたときに、これらZr(BH4)4とキャリアガスとの流量の和に相当する流量のArガスを成膜チャンバに供給する。つまり、マスフローコントローラMFC6は、Zr(BH4)4が間欠的に成膜室31Sに供給される場合に、成膜室31S内の圧力バランスを常に保つことを目的として設けられている。
【0041】
他方、第2供給孔H2は、活性状態の窒素及び活性状態の酸素等を成膜室31Sに供給する。より詳しくは、第2供給孔H2には、チャンバリッド32の内部に形成されたガス通路GP2と該チャンバリッド32の上部に設置したマイクロ波プラズマ源PLとを介して、酸素(O2)ガスを供給するマスフローコントローラMFC2、窒素(N2)ガスを供給するマスフローコントローラMFC3、Arガスを供給するマスフローコントローラMFC4及び亜酸化窒素(N2O)ガスを供給するマスフローコントローラMFC5が接
続されている。これらマスフローコントローラMFC2,MFC3,MFC4,MFC5は、各ガスを所定流量に調量しつつマイクロ波プラズマ源PLに導出する。
【0042】
ガス通路GP2の上部に設置されたマイクロ波プラズマ源PLの内部には、石英或いはアルミナによって形成された耐熱性を有する放電管37が配設されている。マイクロ波プラズマ源PLの外側には、マイクロ波電源FGによって駆動されるマイクロ波源38が配設されている。マイクロ波源38から出力されるマイクロ波は、同軸ケーブル39aでマイクロ波プラズマ源PLにコネクタ39bを介して導かれた後、コネクタ39bに繋がれたアンテナ39cを介して放電管37に供給される。放電管37の内部は、チャンバリッド32の内部に形成されたガス通路GP2を介して成膜室31Sに繋がれている。マイクロ波源38は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発振させるマグネトロンであって、マイクロ波電源FGからの駆動電力により所定の出力範囲、例えば0.01kW〜3.0kWの範囲でマイクロ波を出力する。同軸ケーブル39aは、マイクロ波源38が発振させるマイクロ波をその内部に伝播させることでマイクロ波プラズマ源PLの内部へと導く。上記放電管37の内部には、成膜室31S内の圧力が所定値に保たれることによって、上記酸素、窒素、アルゴン、及び亜酸化窒素の各ガスが所定の流量で流れる。放電管37の内部を通過するガスの活性化は、マイクロ波源38がマイクロ波を発振させるときに、同軸ケーブル39aにより伝播されたマイクロ波をマイクロ波プラズマ源PL内のアンテナ39cを介して放電管37に照射することによって行われる。なお、成膜チャンバ23は、各種ガスの活性化によって生成されたラジカル成分が、成膜室31S内に供給される粒子の大部分を占めるような構成とされている。
【0043】
こうした成膜チャンバ23では、マスフローコントローラMFC1、原料タンクTK、チャンバリッド32、及びシャワープレート36が、原料供給部を構成している。また、マスフローコントローラMFC2〜5、マイクロ波電源FG、放電管37、マイクロ波源38、同軸ケーブル39a、マイクロ波プラズマ源PL、チャンバリッド32、及びシャワープレート36が、ガス供給部を構成している。
【0044】
次に、図3(a)及び図3(b)を参照して絶縁膜形成方法について説明する。
図3(a)は、本実施形態における絶縁膜形成方法の一態様であって、一般的なCVD法を用いた成膜方法において、各ガスの供給タイミングやマイクロ波電源を動作させマイクロ波を放電管37に供給するタイミングを示すものである。また、図3(b)は、本実施形態における絶縁膜形成方法の一態様であって、フローモデュレーテッド方式のCVD法における上述のような各種タイミングを示すものである。
【0045】
なお、上記図3(a)及び図3(b)では、マイクロ波電源FGのオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって、マイクロ波源から放電管へのマイクロ波の供給態様を示している。加えて、O2ガス及びN2ガスの混合ガスを供給するマスフローコントローラMFC2、MFC3のオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって、マイクロ波プラズマ源PLへの各ガスの供給態様を示す。また、Zr(BH4)4ガスを供給するマスフローコントローラMFC1のオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって原料ガスポートP2に対するZr(BH4)4とキャリアガスの供給態様を示している。そして、Arガスを供給するマスフローコントローラMFC6のオン(ON)及びオフ(OFF)の態様を示すことによって、原料ガスポートP2に対するArガスの供給態様を示している。
【0046】
上記図3(a)及び図3(b)のいずれにおいても、まず、成膜チャンバ23に基板Sが搬入された状態で、O2ガス、N2ガス、及びZr(BH4)4ガスラインに繋がれたマスフローコントローラMFC6からのArガスの供給が開始される(開始タイミングTs)。O2ガス、及びN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば25sccm、及び475
sccmとされる。また、開始タイミングTsでは、上記O2ガス及びN2ガスに加えて、ArガスをマスフローコントローラMFC4から供給することにより励起ガスにArガスを加えるようにしても良い。
【0047】
そして、上記開始タイミングTsにTx秒遅れてマイクロ波電源FGがオンの状態とされることによって、マイクロ波電源FGから放電管37にマイクロ波が供給される。マイクロ波の電力量は、例えば上記各ガスの励起に消費される実効値で50Wとされる。これにより、O2ガスとN2ガスとがマイクロ波によって活性化されることで、酸素ラジカルと窒素ラジカル等を含む活性種が生成される。なお、本実施形態では上述のように、基板Sの表面に到達する粒子は、その大部分がラジカル成分となるように成膜チャンバ23が構成されている。
【0048】
次いで、上記開始タイミングTsにTx+Ty秒遅れて、Zr(BH4)4とキャリアガスの供給が開始される。Zr(BH4)4のキャリアガスであるArガスの供給流量は、例えば100sccmとされる。なお、キャリアガスとしてのArガスの供給流量は、Arガスの供給流量を増やすことに伴ってZr(BH4)4の供給量が線形的に増える範囲に設定される。そして、開始タイミングTsにTx+Ty秒遅れてZr(BH4)4とキャリアガスの供給が開始されると同時に、マスフローコントローラMFC6からのArガスの供給は停止される。
【0049】
こうして、基板Sの表面に、Zr(BH4)4と活性化した酸素である酸素ラジカルとが供給されると、Zr(BH4)4が酸素ラジカルと反応することで、基板S上及び該基板Sの有する貫通孔Hの内面にZrBO膜が形成される。なお、この際、窒素ラジカルも酸素ラジカルと同様に形成されるものの、Zr原子、B原子が酸素との反応を優先的に選択するため、Zr(BH4)4の窒化反応は酸化反応と比較して進行し難い。そのため、上述したZrBO膜中には、窒素が混入していない。或いは、ZrBO膜中に窒素が混入したとしても、該窒素の濃度は酸素の濃度と比較して極めて低いものとなる。
【0050】
N2ガスの供給、及びO2ガスの供給は、上記開始タイミングTsにて開始されると、例えばTx+Ty+120+Tz秒継続された後、終了タイミングTeにて終了される。また、マイクロ波電源FGは、上記開始タイミングTs+Txの時点でオンの状態とされると、該状態がTy+120秒継続された後、終了タイミングTeよりTz秒前にてオフ(OFF)の状態とされる。
【0051】
また、図3(a)に示される態様では、Zr(BH4)4とキャリアガスの供給は、上記開始タイミングTsにTx+Ty秒遅れて開始されると、例えば120秒継続された後、終了タイミングTeよりTz秒前にて終了される。
【0052】
なお、上記Tx秒、Ty秒、及びTz秒は、マスフローコントローラにおけるガスの供給圧、マスフローコントローラと成膜室との間の配管の長さ、成膜室における排気速度などによって適宜変更可能な時間である。
【0053】
これに対し、図3(b)に示される態様におけるZr(BH4)4ガスの供給は、上記開始タイミングTsで開始されると、第1の期間Ta、例えば10秒だけ継続された後、一旦停止される。そして、Zr(BH4)4の供給の停止が第2の期間Tb、例えば10秒だけ継続された後、再びZr(BH4)4の供給が開始される。そして、上記開始タイミングTsと終了タイミングTeとの間であって、マイクロ波の供給と、酸素ラジカルとの供給が連続している間に、こうした第1の期間Taと第2の期間Tbとの組が例えば6回繰り返される。
【0054】
このように、図3(b)に示される態様では、Zr(BH4)4の供給が間欠的に行われる。そのため、Zr(BH4)4の供給期間である第1の期間(成膜処理期間)Taにおいては、Zr(BH4)4が酸素ラジカルと反応することによって、基板Sの表面及び貫通孔Hの内側面にZrBO膜が形成される。これに対し、Zr(BH4)4が供給されておらず、酸素ラジカルが供給されている第2の期間(酸化処理期間)Tbにおいては、第1の期間Taにおいて形成されたZrBO膜が酸素ラジカルによってさらに酸化される。そのため、絶縁膜が、より確実に絶縁性を発現するようになる。
【0055】
次に、Zr(BH4)4と励起状態にさせた酸素原子を含むガスとの反応によるZrBOを含む膜の形成のメカニズムについて説明する。TSVに用いる絶縁膜には、上述のように180℃以下での低温成長で優れた絶縁性やバリア性を有するだけでなく、TSVホールに対するステップカバレージ性能も重要な条件となる。一般に、CVD法において良好なステップカバレージ性能を得るには、気相反応では難しく、表面反応状態での成長が必要である。
【0056】
上述のようにZr(BH4)4と励起状態にさせた酸素原子を含むガスとの反応では、気相中もしくはウェハ基板温度の影響を受けるウェハ基板表面近傍の気相中で、Zr(BH4)4と励起状態にさせた酸素原子とが一旦反応する。そして、このような反応によって生成された前駆体(中間体)がウェハ基板の熱の影響を受けて基板表面で反応し、該基板表面にZrBOを含む膜が形成されるものと考えられる。そのため、前駆体の重合度が大きくなり過ぎたり、前駆体の酸化度が上がり過ぎたりすると、前駆体自体がクラスター粒子化してパーティクル成分と同じになってしまい、ウェハ基板表面での反応性よりもただの堆積性になってしまい良好なステップカバレージ特性は得られない。一方、上記前駆体の重合度や酸化度が不足すると、成膜速度が小さくなるとともに、良好な絶縁性やバリア性が得られなくもなる。
【0057】
例えば、励起状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスにイオン成分(電離した成分)が含まれていると、Zr(BH4)4の酸化反応が激しく進行する結果、上述したようなクラスター粒子が形成されてシャワープレートや成膜室31Sの内壁が汚染されてしまう。また、カバレージの良い絶縁膜が得られ難くなる。ただし、励起状態でもなく、またラジカル状態でもない酸化ガスが用いられる場合には、180℃以下の低温にて、その成膜反応が進行しなくなったり、成膜が進行したとしても、絶縁性やバリア性に乏しい膜しか形成されなくなったりする虞がある。
【0058】
この点、上述したZrBOの形成方法では、励起状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスのラジカル成分を成膜に利用することとしている。そのため、励起状態にさせた酸素原子を含む酸化ガスのラジカル成分を取り出してその酸化反応を制御することによって、180℃以下の低温成長で優れた絶縁性とバリア性とともに良好なステップカバレージ性能も有するZrBOを含む絶縁膜を形成することが可能となる。
[実施例]
[ZrBO膜の形成]
直径6μm、深さ45μm(アスペクト比7.5)の凹部を複数有する直径200mmのシリコン基板に対して、以下の条件にてZrBO膜を形成した。
【0059】
・キャリアガス(Arガス)流量 100sccm
・N2ガス流量 475sccm
・O2ガス流量 25sccm
・成膜チャンバ内の圧力 300Pa
・マイクロ波電力 50W(ガス励起に消費される電力値)
・基板温度 150℃
・成膜時間 100秒
図4は、上記条件にて形成したZrBO膜と、該ZrBO膜が形成された凹部の断面構造を撮像したSEM画像である。図4(a)は、シリコン基板41に形成された1つの凹部42の全体を、図4(b)は、凹部42の開口における一部を、図4(c)は、凹部42の側面における深さ方向の中央部付近を、図4(d)は、凹部42の底面における一部をそれぞれ撮像したSEM画像である。なお、下記の各膜厚の値は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した値である。
【0060】
図4(b)に示されるように、シリコン基板41の表面に形成されたZrBO膜43の膜厚を表面膜厚FT1とすると、該表面膜厚FT1は220nmであった。図4(c)に示されるように、シリコン基板41の有する凹部42の側面に形成されたZrBO膜43の膜厚を側面膜厚FT2とすると、該側面膜厚FT2は121nmであった。また、表面膜厚FT1に対する側面膜厚FT2の百分率である被覆率は、55%であった。図4(d)に示されるように、上記凹部42の底面に形成されたZrBO膜43の膜厚を底面膜厚FT3とすると、該底面膜厚FT3は120nmであった。また、表面膜厚FT1に対する底面膜厚FT3の百分率である被覆率は、54.5%であった。このように、凹部42の内側面に形成されたZrBO膜43の被覆率は、凹部42の側面及び底面のいずれにおいても50%を超える良好な値であり、上記形成方法によれば150℃の低温成膜でありながらも段差被覆性の良好なZrBO膜を形成できることが認められた。
[ZrBO膜の安定性]
直径200mmのシリコン基板に対して、上記条件にてZrBO膜を形成して試験用ウェハを得た。そして、成膜直後におけるZrBO膜の膜厚と、シリコン基板とZrBO膜とを純水に48時間浸した後のZrBO膜の膜厚とを測定した。なお、各膜厚は上記と同様の方法で測定した値である。
【0061】
図5は、成膜直後のシリコン基板51上のZrBO膜52aと、浸漬後のシリコン基板51上のZrBO膜52bとを撮像したSEM画像である。図5(a)及び図5(b)は成膜直後のZrBO膜52aであり、図5(c)及び図(d)は浸漬後のZrBO膜52bである。図5(a)と図5(c)とを比較したところ、成膜直後のZrBO膜52aの表面と、浸漬後のZrBO膜52bの表面とでは外観上の差異が認められなかった。また、図5(b)に示されるように、成膜直後におけるZrBO膜の膜厚を膜厚FT4とすると、該膜厚FT4は264nmであった。そして、図5(d)に示されるように、浸漬後におけるZrBO膜の膜厚を膜厚FT5とすると、該膜厚FT5は270nmであった。つまり、成膜直後と浸積後とでは、ZrBO膜の膜厚は2.3%変化したのみであり、SEM測定による誤差範囲に包括されてしまうレベルで変化したのみであった。
【0062】
したがって、ZrBO膜は水に対して極めて安定な膜であることが認められた。
[ZrBO膜の組成]
直径200mmのシリコン基板に対して、膜厚が約200nmのZrBO膜を上記条件にて形成することによって試験用ZrBO膜を得た。そして、ZrBO膜中に含まれる元素の平均組成をラザフォード後方散乱分光法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry )及び核反応分析(NRA:Nuclear Reaction Analysis )を用いて計測した
。図6及び下記表1は、RBS及びNRAでZrBO膜の深さ方向の組成を計測した結果を示している。なお、図6において、横軸は上記試験用ZrBO膜の表面からの深さである。また、縦軸は、RBS及びNRAでZrBO膜を分析した結果、ZrBO膜から検出された元素の深さ方向の組成比を示している。
【0063】
【表1】
図6及び表1に示されるように、ZrBO膜中に検出された元素は、酸素、ホウ素、及びジルコニウムの3元素のみであった。窒素は膜中に検出されるレベルには含まれていなかった。また、酸素、ホウ素、及びジルコニウムの順でZrBO膜に占める割合が大きかった。より詳細には、酸素の平均組成比が65.4%、ホウ素の元素濃度が21.0%、ジルコニウムの元素濃度が13.6%であった。なお、RBS及びNRAによる組成分析の感度は%オーダーであり、各元素の検出誤差を下記表2に示す。
【0064】
【表2】
ちなみに、先の図5に示したように、ZrBO膜は水に対して安定であったことから、その膜中に、水と容易に反応することでホウ酸(B(OH)3)を生成する三酸化ホウ素(B2O3)を含んでいないものと考えられる。つまり、ZrBO膜とは、ジルコニウム、ホウ素、及び酸素を上述の割合で含むとともに、B2O3骨格を有しない膜構造であると考えられる。
[ZrBO膜の誘電率とリーク電流値]
直径200mm、且つ0.01Ωcm程度の低抵抗P型シリコン基板に対して、膜厚が100nmのZrBO膜を上記条件で形成することによって試験用ZrBO膜を得た。
【0065】
まず、ZrBO膜の誘電率を以下の方法にて算出した。つまり、電極面積が2.792×10−3cm2である水銀プローブを用いて、直流バイアスに1MHzの高周波を重畳してC−V特性を測定した後、C−V特性の測定結果から誘電率を算出した。
【0066】
ZrBO膜の誘電率の測定結果とともに、絶縁膜として多用されている酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、遷移金属の酸化物である酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、及び酸化チタン(TiO2)の誘電率を表3に示す。なお、ZrBOの値としては、30個の試料について誘電率を測定した結果のうちの最小値と最大値とを記載している。また、ZrBO以外の酸化物における誘電率は一般の専門書や文献などを参照した値である。
【0067】
【表3】
表3に示されるように、ZrBO膜の誘電率は、Zrの酸化物を含めた他の遷移金属の酸化物よりも極端に低いことが認められた。加えて、信号遅延が起こりにくい程度の低誘電率膜であるSiO2膜に近い誘電率であることが認められた。それゆえに、上記方法によって形成されたZrBO膜を、シリコン貫通電極(TSV)用のバリア絶縁膜として用いた場合、他の遷移金属の酸化膜よりも該TSVにおける信号遅延を抑えることができる。
【0068】
同様に、0.01Ωcm程度の低抵抗P型シリコン基板上に上記条件で形成された膜厚が100nmであるZrBO膜のリーク電流としての電流密度J(A/cm2)を以下の方法にて測定した。つまり、ZrBO膜が形成された低抵抗P型シリコン基板を接地するとともに、ZrBO膜上の上記水銀プローブに負の電圧を0〜20Vまで印加することで、ZrBO膜に印加される電界E(MV/cm)に対する電流密度を測定した。この測定結果を図7に示す。
【0069】
ZrBO膜は、2MV/cmの電界が印加されたときの電流密度の値が9.16×10−10A/cm2であって、実用上好ましいとされる1×10−8A/cm2を超えない値であることが認められた。なお、150℃という低温下でプラズマCVD法によって形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜など、これらシリコン系の絶縁膜の場合には、同測定法において2MV/cmの電界が印加されると1×10−8A/cm2を超えるような値であった。それゆえに、上述の方法にて形成されたZrBO膜を上記TSV用のバリア絶縁膜として用いることにより、プラズマCVD法によって形成されたシリコン系の絶縁膜を用いるよりも、シリコン基板とTSVとの絶縁性を高められることが認められた。
[ZrBO膜のバリア性]
表面に膜厚100nmのアモルファスシリコン(α−Si)が形成された直径200mmのシリコン基板に対して、膜厚100nmのZrBO膜を上記条件で形成し、その上にPVD法にて膜厚200nmの銅(Cu)を成膜した試験用サンプルウェハを得た。
【0070】
その後、この試験用サンプルウェハに対して、400℃、1時間のアニール処理を施し、Cu200nm/ZrBO100nm/α−Si100nmのサンドイッチ構造において、ZrBO100nmを介してのCuとSiとの反応、及びZrBO膜中のCu拡散の有無について調査した。
【0071】
こうした調査の結果として、アニール処理の前後における上記サンドイッチ構造を図8に示す。図8(a)は、上記試験用サンプルウェハを形成した直後のSTEM写真であり、図8(b)はその試験用サンプルウェハに400℃、1時間のアニール処理を施した直
後のSTEM写真である。このSTEM写真の比較から明らかなように、ZrBO100nmを介したCuとSiとの反応(シリサイデーション)は発生していなかった。また、同様の結果が、膜厚50nmのZrBO膜においても認められた。
【0072】
なお、上記アニール処理時における400℃という温度は、処理温度を最大でも200℃以下に設定しようとしている上述のVia Last やVia after Bonding でのTSV形成に
おけるバリア性やシリサイド耐性の評価には、十分な加速試験温度である。
【0073】
したがって、上述の結果から、150℃で成膜したZrBO膜は十分なバリア性を有した膜と認められるとともに、150℃で成膜したZrBO膜ではその膜厚が50nmあればバリア性、シリサイド耐性は十分であることが分かる。
[ZrBO膜形成の圧力依存性]
直径200mmのシリコン基板に対して、以下の条件でZrBO膜を形成し、そのときの成膜速度を測定した。なお、成膜チャンバ23の排気ポートP1と排気ポンプ35との間に設置された圧力調節バルブ(APC)を調節することによって、該成膜チャンバ23内の圧力を変更した。
【0074】
・キャリアガス(Arガス)流量 100sccm
・N2ガス流量 475sccm
・O2ガス流量 25sccm
・マイクロ波電力 50W
・基板温度 170℃
・成膜時間 100秒
上記成膜速度の計測結果を図9に示す。同図9に示されるように、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近になるまでは、成膜チャンバ23の圧力を高めることに比例して、成膜速度も高くなることが認められた。これに対して、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近を超えると、成膜チャンバ23の圧力を高めることに反比例して、成膜速度は低くなることが認められた。これは、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近までの圧力領域にあるときには、圧力を高めることに応じてZr(BH4)4の成膜チャンバ23内での分圧が増加するために成膜速度が高くなると考えられる。他方、成膜チャンバ23内の圧力が300Pa付近を超える圧力領域では、原料タンクTK内の圧力が上がるとともにZr(BH4)4の昇華が抑制され、成膜チャンバに供給されるZr(BH4)4量が低下して、成膜チャンバ23内のZr(BH4)4分圧が低下するため、ZrBO膜の成膜速度が低くなると考えられる。なお、こうした傾向は、シリコン基板の中心からの距離にかかわらず、該シリコン基板のいずれの領域においても認められた。
【0075】
こうした結果から、図2に示す本発明の一実施形態であるZrBO膜の成膜装置においては、最も成膜速度が高い状態でZrBO膜の形成を行いたい場合には、成膜チャンバ23内の圧力を300Pa付近とすればよいことが分かった。
[N2Oを用いたZrBO膜形成とリーク特性]
直径200mmの0.01Ωcm程度の低抵抗P型シリコン基板に対して、以下の条件にてZrBO膜を形成した。
【0076】
・キャリアガス(Arガス)流量 100sccm
・N2ガス流量 450sccm
・N2Oガス流量 50sccm
・成膜チャンバ内の圧力 300Pa
・マイクロ波電力 90W(ガス励起に消費される電力値)
・基板温度 140℃
・成膜時間 120秒
図10は、上記条件で低抵抗P型シリコン基板にZrBO膜を形成し、上記水銀プローブでZrBO膜のリーク電流を測定した結果を示している。上記水銀プローブによって印加する電圧は、シリコン基板がP型であるため負側に20Vまでとした。水銀プローブで測定した箇所のZrBO膜厚は約160nmであったことから、該ZrBO膜中の電界強度は1.2MV/cm強の値までしか測定できていないものの、リーク電流は1×10−8A/cm2より十分に小さく、実用レベルのリーク電流値であった。ちなみに、電界1MV/cmでのリーク電流は9.95×10−10A/cm2であった。このように、N2OをZr(BH4)4の酸化ガスとして用いるとともに、基板温度を140℃として成膜したZrBO膜でも、実用に十分な絶縁膜であった。
【0077】
以上説明したように、上記実施形態によれば以下に列挙する効果が得られるようになる。
(1)Zr(BH4)4を、活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスによって酸化することにより、基板S及び該基板Sに形成された貫通孔Hの内面に絶縁膜16としてZrBO膜を形成するようにした。そのため、180℃以下の低温での成膜においても、金属配線に対するバリア性を有し、シリコン系の絶縁膜と同じ程度の誘電率、及び熱CVDによって形成されるシリコン酸化膜と同じ程度の絶縁性を有した絶縁膜を形成することができる。
【0078】
(2)活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスを基板Sに対して連続的に供給する間に、Zr(BH4)4を同基板Sに間欠的に供給するようにした。これにより、活性化した酸素とZr(BH4)4とが、基板Sに対して同時に供給されている間(成膜処理期間Ta)は、活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスによるZr(BH4)4の酸化が進行することによって、基板S上及び上記貫通孔Hの内面にZrBO膜が形成される。他方、Zr(BH4)4の供給が停止されるとともに、活性状態にさせた酸素原子(O)を含むガスの供給が継続されている間(酸化処理期間Tb)は、基板S上及び貫通孔Hの内面に既に形成されたZrBO膜がさらに酸化されることになる。それゆえに、ZrBO膜がより確実に酸化されることから、該ZrBO膜が、より確実に絶縁性を発現するようになる。
【0079】
(3)酸素原子を含むガスを活性状態にする手段としてマイクロ波(2.45GHz)による高周波励起を用いるようにした。そのため、酸素原子を含むガスを活性状態にしやすくすることができ、ひいてはZr(BH4)4が酸化されやすくなる。
【0080】
(4)活性状態にさせた酸素原子を含むガスとして酸素原子を含むガスのラジカル成分を用いるようにした。そのため、活性状態にさせた酸素原子を含むガスの1つの成分であるイオン成分を用いる場合のような基板S上及び貫通孔Hの内面に既に形成されたZrBO膜が受けるダメージを抑えつつ、ZrBOの形成反応も穏やかに制御して十分な絶縁性が得られるだけ酸化されたZrBO膜を形成することができる。
【0081】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・酸素原子を含むガスを活性状態にする手段として、RF(13.56MHz)による高周波励起や、W(タングステン)などの金属触媒源による励起を用いるようにしてもよい。
【0082】
・ZrBO膜の形成時における基板温度、成膜室内の圧力、各種ガスの供給流量、及びRFやマイクロ波などの高周波電力や金属触媒のタングステン触媒温度等のプロセス条件は、ZrBO膜の形成が可能な範囲で任意に変更可能である。
【0083】
・Zr(BH4)4のキャリアガスとしてはArガスに限らず、他の不活性ガス、例え
ばHeガス等を用いるようにしてもよい。
・成膜装置20の処理対象である基板Sは、シリコン基板11、多層配線層12、絶縁層13、及び接着層14を備える構成とした。これに限らず、少なくとも、貫通孔Hが形成されたシリコン基板11を有する構成であればよい。
【0084】
・ZrBO膜の形成対象は、シリコン貫通電極15用の貫通孔Hが設けられたシリコン基板11を備える基板Sに限らない。例えば、埋込み配線用の凹部が形成された基板や、層間に形成される絶縁膜等、上述のようなバリア性、絶縁性、或いは誘電率等が必要とされる部位に用いることができる。
【0085】
・ZrBO膜の形成対象は、シリコン基板以外の半導体基板、例えばSiC基板やGaN基板等であってもよい。これら基板を用いた半導体装置においても、180℃以下の低温で絶縁膜を形成する必要がある工程に対して、上述の方法によって形成されるZrBO膜を用いることが可能である。
【0086】
・活性状態にさせた酸素原子を含むガスとして、O2ガス及びN2O(亜酸化窒素)ガスを用いるようにした。これに限らず、酸素原子を含むガスとして、NO(一酸化窒素)ガス、NO2(二酸化窒素)ガス、CO(一酸化炭素)ガス、CO2(二酸化炭素)ガスや、O原子を含むその他のガスを用いるようにしてもよい。また、酸素原子を含むガスとしては、O2ガスとN2Oガスとの混合ガスのように、先に列挙したガスの中から複数のガスを選択した混合ガスを用いるようにしてもよい。上記ガスの組み合わせにより、Zr(BH4)4との酸化反応を成膜室内の環境や成膜対象の形状に合わせて適宜選択することが可能である。
【0087】
・ZrBO膜の形成に際してN2ガスを添加するようにした。これは、O2ガス、N2O(亜酸化窒素)ガス等の酸素原子を含むガスのみでは励起状態の寿命が短い場合があるため、励起されやすく且つ比較的励起状態の寿命の長いN2ガスを添加することによって、酸素原子を含むガスの励起状態の寿命を長くすることができるためである。なお、N2ガスに代えてArガスとNeガスとを用いてZrBO膜を形成するようにしてもよい。
【0088】
・Zr(BH4)4を酸化する活性状態にさせた酸素原子を含むガスとして、ラジカル状態の酸素原子を含むガスを用いるようにした。これに限らず、酸化工程におけるイオンの衝撃がシリコン基板に形成された素子やZrBO膜の電気的特性や形状等に影響しないのであれば、上記活性化された酸素として酸素イオンを用いるようにしてもよい。
【0089】
・上述のように、酸素原子を含むガスのイオンも存在する態様でZr(BH4)4を酸化するのであれば、成膜チャンバ23内において、シリコン基板11がRFやマイクロ波の高周波プラズマに晒されるような態様でZrBO膜を成膜してもよい。
【0090】
・成膜処理期間Taと酸化処理期間Tbとは、各々一回あたりの期間を同一として複数回実施するようにした。これに限らず、例えば成膜処理期間Taと酸化処理期間Tbとは各回の期間の長さが互いに異なるようにしてもよい。
【0091】
・成膜処理期間Ta及び酸化処理期間Tbの繰り返し回数は、上記開始タイミングTsから終了タイミングTeまでの期間の長さ、成膜処理期間Ta及び酸化処理期間Tbの1回あたりの長さ、目標とするZrBO膜の厚さ、ZrBO膜の成膜速度等に応じて任意に変更可能である。
【0092】
・活性状態にさせた酸素原子を含むガスの供給期間中に、Zr(BH4)4の供給期間を間欠的に複数回設けるようにした。これに限らず、活性状態にさせた酸素原子を含むガ
スとZr(BH4)4とを同時に供給する期間(成膜処理期間Ta)と、活性状態にさせた酸素原子を含むガスを供給する期間(酸化処理期間Tb)とを1回ずつ設けるようにしてもよい。
【0093】
・上記開始タイミングTsからTx+Ty秒だけ遅れたタイミングから終了タイミングTeからTz秒前までにわたり活性状態にさせた酸素原子を含むガス(例えばO2ガス及びマイクロ波)の供給とZr(BH4)4の供給とを連続して実施するようにしてもよい。また、同一の成膜対象に対して、こうした処理を複数回行うようにしてもよい。
【0094】
・上記開始タイミングTsにおいてO2ガス、N2ガス及びArガスの供給を開始してから所定期間(Tx秒)の後に、マイクロ波電源FGをオンの状態とするようにした。これは、各種ガスの供給開始後に成膜チャンバ23内の圧力、特に成膜室31S内の圧力を安定させ、O2ガス及びN2ガスの励起を安定に行うようにするためである。つまり、各種ガスの供給を開始してからマイクロ波電源をオンの状態とするまでの所定期間Txは、成膜室31S内の圧力が安定するまでの時間として任意に設定することができる。
【0095】
・O2ガス、N2ガス、及びZr(BH4)4ガスの供給は、マイクロ波など励起手段によるO2ガスやN2Oガスなど酸素原子を含むガスの活性化、及びZr(BH4)4膜の酸化によるZrBO膜の形成が可能な範囲であれば任意に変更可能である。
【0096】
・実施形態及び実施例においては、Zr、B、及びOを主要な構成元素として含む絶縁膜、つまりZrBO膜が形成される条件を例示した。これに限らず、絶縁膜の構成元素として窒素(N)が含まれるような条件、例えばN2ガスあるいはN2Oガスの流量を増加させて該絶縁膜の形成を実施するようにしてもよい。なお、Zr、B、及びOに加えてNを主要な構成元素として含むバリア膜、つまりZrBON膜であっても、上述のようなバリア性、絶縁性、及び誘電率に関わる条件が満たされることが、本願発明者らによって確認されている。
【0097】
・上記ZrBO膜は、上述のようにZr(BH4)4と活性状態の酸素とを反応させて形成する方法以外の方法によって形成するようにしてもよい。すなわち、減圧化の成膜チャンバ内において、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成する方法であってもよい。
【0098】
半導体基板上にて、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成する方法であってもよい。
【0099】
・上記実施形態では、絶縁膜16として、ジルコニウムとホウ素と酸素とからなる膜を形成するようにした。これに代えて、該絶縁膜16として、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、及びハフニウム(Hf)の金属元素のいずれか一つと、ホウ素と、酸素とからなる膜を形成するようにしてもよい。この場合、上記Zr(BH4)4ガスに代えて、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを用いて絶縁膜16を成膜するようにすればよい。
【符号の説明】
【0100】
10…半導体装置、11,41,51…シリコン基板、12…多層配線層、13…絶縁
層、14…接着層、15…シリコン貫通電極(TSV)、16…絶縁膜、20…成膜装置、21…ロードロックチャンバ、22…コアチャンバ、22a…搬送ロボット、23…成膜チャンバ、31…チャンバ本体、31S…成膜室、32…チャンバリッド、33…基板ステージ、34…昇降機構、35…排気ポンプ、36…シャワープレート、37…放電管、38…マイクロ波源、39a…同軸ケーブル、39b…コネクタ、39c…アンテナ、42…凹部、43,52a,52b…ZrBO膜、APC…圧力調整バルブ、FG…マイクロ波電源、GP1,GP2…ガス通路、H…貫通孔、MFC1,MFC2,MFC3,MFC4,MFC5,MFC6…マスフローコントローラ、P1…排気ポート、P2…原料ガスポート、PL…マイクロ波プラズマ源、S…基板、TK…原料タンク、V…バルブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にて、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にMBOを含む絶縁膜を形成する
ことを特徴とする絶縁膜形成方法。
【請求項2】
半導体基板上にて、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成する
ことを特徴とする絶縁膜形成方法。
【請求項3】
前記酸化ガスが、酸素ガスを含む
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項4】
前記酸化ガスが、亜酸化窒素、一酸化窒素、及び二酸化窒素の少なくとも一つを含む
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項5】
前記酸化ガスが、一酸化炭素、及び二酸化炭素の少なくとも一つを含む
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項6】
前記酸化ガスが、ラジカル成分を含む
請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項7】
前記活性状態が、高周波励起、及び金属触媒源の少なくとも一つによるものである
請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項8】
前記半導体基板上に前記酸化ガスを連続的に供給する間に前記金属含有ガスを間欠的に供給して前記半導体基板上に前記絶縁膜を形成する
請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項9】
前記半導体基板は、複数のシリコン基板を接着してなるとともに、前記半導体基板の表面から該半導体基板の積層方向に前記シリコン基板の少なくとも一つを貫通して、貫通された前記シリコン基板の下部のシリコン基板に形成された電極に繋がるシリコン貫通電極用の貫通孔を有するものであり、
前記絶縁膜を前記半導体基板の表面及び前記貫通孔の内面に形成する
請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項10】
半導体基板を収容する真空槽と、
M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを前記真空槽内に供給する原料供給部と、
活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスを前記真空槽内に供給するガス供給部とを備え、
前記M(BH4)xを前記酸化ガスで酸化することによりMBOを含む絶縁膜を前記半導体基板上に形成する
絶縁膜形成装置。
【請求項1】
半導体基板上にて、M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にMBOを含む絶縁膜を形成する
ことを特徴とする絶縁膜形成方法。
【請求項2】
半導体基板上にて、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)又はテトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ)であるジルコニウム含有ガスとジボランとからなる金属含有ガスを活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスで酸化することにより、前記半導体基板上にZrBOを含む絶縁膜を形成する
ことを特徴とする絶縁膜形成方法。
【請求項3】
前記酸化ガスが、酸素ガスを含む
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項4】
前記酸化ガスが、亜酸化窒素、一酸化窒素、及び二酸化窒素の少なくとも一つを含む
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項5】
前記酸化ガスが、一酸化炭素、及び二酸化炭素の少なくとも一つを含む
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項6】
前記酸化ガスが、ラジカル成分を含む
請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項7】
前記活性状態が、高周波励起、及び金属触媒源の少なくとも一つによるものである
請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項8】
前記半導体基板上に前記酸化ガスを連続的に供給する間に前記金属含有ガスを間欠的に供給して前記半導体基板上に前記絶縁膜を形成する
請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項9】
前記半導体基板は、複数のシリコン基板を接着してなるとともに、前記半導体基板の表面から該半導体基板の積層方向に前記シリコン基板の少なくとも一つを貫通して、貫通された前記シリコン基板の下部のシリコン基板に形成された電極に繋がるシリコン貫通電極用の貫通孔を有するものであり、
前記絶縁膜を前記半導体基板の表面及び前記貫通孔の内面に形成する
請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁膜形成方法。
【請求項10】
半導体基板を収容する真空槽と、
M(BH4)x(M=Al,Ti,V,Zr,Hf,Be,Mg)を含む金属含有ガスを前記真空槽内に供給する原料供給部と、
活性状態の酸素原子が含まれる酸化ガスを前記真空槽内に供給するガス供給部とを備え、
前記M(BH4)xを前記酸化ガスで酸化することによりMBOを含む絶縁膜を前記半導体基板上に形成する
絶縁膜形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図8】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図8】
【公開番号】特開2012−142359(P2012−142359A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292785(P2010−292785)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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