説明

被検査体の検査装置

【課題】撮像装置に要するコストを抑制しつつ基板上の部品の高さを把握する。
【解決手段】基板検査システムにおいて、ミラー角度制御部は、被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる撮像角度から見た基板2の映像をラインセンサが走査できるよう撮像角度を切り替える。ミラー角度制御部は、ラインセンサから基板2への光路長が変化しないよう撮像角度を切り替える。ミラー角度制御部は、基板2からの光をラインセンサに向けて反射するハーフミラー42の角度を、ラインセンサから基板2への光路長が変化しないよう変更して撮像角度を切り替える。このときミラー角度制御部は、基板2の表面に対して垂直な垂直撮像角度と、基板2の表面に対して傾斜した傾斜撮像角度とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の検査装置に関し、特に撮像して得られた被検査体の画像を利用して被検査体を検査する被検査体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品には足がある場合があり、この足と基板との間に異物が挟まる場合がある。このような異物が挟まっているか否かを判定するためには、基板上の部品の高さを精度良く把握することが要求される。このため、例えば2つのカメラアレイによって撮像されたステレオ画像を利用して基板のプロファイルを取得する自動検査システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2003−522347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の自動検査システムのように互いに異なる複数の撮像角度から見た被検査体の映像を走査可能な複数のカメラを設ける場合、カメラに要するコストの増大を抑制することは困難である。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像装置に要するコストを抑制しつつ基板上の部品の高さを把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の被検査体の検査装置は、ライン状のセンサ列と、被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる撮像角度から見た被検査体の映像をライン状のセンサ列が走査できるよう撮像角度を切り替える撮像角度切替手段と、を備える。撮像角度切替手段は、ライン状のセンサ列から被検査体への光路長が変化しないよう撮像角度を切り替える。
【0006】
この態様によれば、被検査体に焦点を合わせたまま撮像角度を切り替えることができる。このため、撮像角度と焦点合わせを別々の工程で行う場合に比べ、ステレオ画像取得のための検査工数を削減することができる。なお、ライン状のセンサ列は、ラインセンサであってもよく、また、エリアセンサに含まれるライン状のセンサ列であってもよい。
【0007】
撮像角度切替手段は、被検査体からの光をライン状のセンサ列に向けて反射するミラーの角度を、ライン状のセンサ列から被検査体への光路長が変化しないよう変更して撮像角度を切り替えてもよい。この態様によれば、ミラーの角度を変更させるという簡易な構成で被検査体に対する撮像角度を切り替えることができる。
【0008】
撮像角度切替手段は、被検査面に対して垂直に被検査体を見る垂直撮像角度と、被検査面に対して傾斜して被検査体を見る傾斜撮像角度とを切り替えてもよい。この態様によれば、被検査体の被検査面に対して垂直に見た映像を走査した画像を取得することができるため、例えば被検査体の被検査面の高さ以外の様々な項目についても簡易に検査を実施することが可能となる。
【0009】
撮像角度切替手段は、主走査方向に見て、垂直撮像角度から被検査体の映像を走査するときのミラーの反射ポイントを原点とし、原点を含む水平軸をx軸、原点を含む垂直軸をy軸とし、原点から被検査体までの距離をA1、ミラーの回転角度をθ1としたとき、以下の座標、
【数1】

を中心としてミラーを回転させることにより垂直撮像角度と傾斜撮像角度とを切り替えてもよい。
【0010】
この態様によれば、ミラーを回転させるという簡易な構成により、ミラーの角度を適切に変更することができる。
【0011】
ライン状のセンサ列による走査位置と被検査体の位置とを相対的に往復移動させる移動手段をさらに備えてもよい。撮像角度切替手段は、往路と復路とで、被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる撮像角度から見た被検査体の映像をライン状のセンサ列が走査できるよう撮像角度を切り替えてもよい。この態様によれば、往復移動させる一工程において互いに異なる複数の撮像角度から見た被検査体の画像データを取得することができ、検査工数を抑制することができる。
【0012】
ライン状のセンサ列は、被検査体からの反射光をレンズ光軸に対して平行に集光する光学系を介して被検査体の映像を走査してもよい。この態様によれば、視差の影響が少ないステレオ画像を利用することができるため、被検査体における被検査面の立体形状を高速かつ高精度に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る被検査体の検査装置によれば、撮像装置に要するコストを抑制しつつ基板上の部品の高さを把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る基板検査システム10の構成を示す図である。基板検査システム10は、基板搬送機構12および撮像システム14を有する。基板搬送機構12は、支持プレート18、および支持プレート18により支持される2本の搬送レール20を有している。
【0016】
搬送レール20はモータ(図示せず)を駆動することにより基板2を搬送する搬送ベルト(図示せず)を有し、搬送ベルトに載置された基板2を基板搬送機構12の略中央まで搬送する。搬送レール20の上方であって検査テーブルの略中央には、基板2の搬送を検知する光センサなどの搬送センサ(図示せず)が設けられている。この搬送センサが基板2の端面や基板2に設けられた検知孔を検知すると、基板検査システム10は、基板2が基板搬送機構12の略中央に搬送されたと判定し、搬送レール20による基板2の搬送を停止させる。
【0017】
基板搬送機構12の下方には、搬送レール20の延在方向と直行する方向に延在するボールネジ22が設けられている。ボールネジ22は、搬送モータ(図示せず)によって駆動される。ボールネジ22が回転することにより支持プレート18が搬送レール20の延在方向と垂直な方向に移動される。このとき、基板搬送機構12もまた支持プレート18と共に移動される。こうして基板検査システム10は、基板2を撮像システム14の下方に搬送する。
【0018】
所定の位置まで基板2が移動すると、基板検査システム10は搬送モータを逆転させてボールネジ22を逆回転させ、もとの位置まで基板搬送機構12を移動させる。基板検査システム10は、こうしてもとの位置まで移動された基板2を搬送レール20によって次の工程へと搬送する。次に検査を行う基板2がある場合、基板検査システム10は再び搬送レール20によってその基板2を基板搬送機構12の略中央まで搬送し、上述の動作を繰り返す。なお、本図手前側の搬送レール20には、搬送レール20上の載置された基板2を上方から押圧して基板2の形状を矯正するクランプが設けられている。基板搬送機構12の略中央に搬送された基板2は、このクランプによりゆがみが矯正された状態で撮像システム14へ搬送される。
【0019】
撮像システム14は、撮像ユニット24および回転機構26を有する。撮像ユニット24は、基板2へ光を照射すると共に基板2を撮像し、画像データを生成する。回転機構26はユニット回転モータ(図示せず)およびギヤなどからなる伝達機構(図示せず)を有している。回転機構26は、ユニット回転モータが作動することにより伝達機構を介して基板2の被検査面と垂直な軸を中心に撮像ユニット24を回転させて、基板2の搬送方向と撮像ユニット24による走査方向とがなす角度である主走査角度を変更する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る撮像ユニット24の内部構成を示す斜視図である。撮像ユニット24は、走査ユニット30および照明ユニット50を有する。走査ユニット30は、支持プレート36上にラインセンサ38、レンズ39、テレセントリックレンズ40、およびハーフミラー42を備える。
【0021】
図3は、本実施形態に係る撮像ユニット24の構成を模式的に表した図である。図3において、基板2は左側から右側へと搬送されている間に撮像ユニット24によって基板2の撮像処理が実施される。以下、図3の右方向を第1方向、図3の左方向を第2方向として説明する。なお、撮像ユニット24は、基板2が第2方向に搬送されている間に基板2の撮像処理を実施してもよい。
【0022】
ラインセンサ38は、ライン状のセンサ列を内部に含み、ハーフミラー42によって反射されてテレセントリックレンズ40およびレンズ39を通過した基板2における走査ライン上の映像を走査する。以下、走査ラインが基板2の搬送方向と垂直に向くときの撮像ユニット24の位置を「ユニット初期位置」という。また、「走査する」は、対象物の映像を示す光の量をラインセンサ38内の受光素子が電気信号に変換して出力する動作をいう。また、「撮像する」は、一走査単位を走査することをいう。一走査単位とは、例えば基板の一方の端部から他方の端部までの1回の一方向の走査や1回の往復の走査など、ラインセンサ38の走査の単位をいう。
【0023】
なお、ラインセンサ38に代えて、エリアセンサが用いられてもよい。この場合、エリアセンサによって撮像された画像のうち、エリアセンサに含まれるライン状のセンサ列のいずれかによって撮像された部分の画像を用いて基板2の検査を実施する。
【0024】
照明ユニット50は、第1光源52、第2光源54、第3光源56、アクリルシート58を有する。基板搬送機構12は、まず本図右方向に基板2を搬送し、所定の長さを搬送後、図3における左方向に基板2を搬送する。以下、図3における右方向を第1方向、左方向を第2方向として説明する。
【0025】
第1光源52は、ラインセンサ38の走査方向に被検査体である基板2の長さ以上に列ぶLED(発光ダイオード)群により構成される。第1光源52は、基板2に落射する光を照射することができるように、ラインセンサ38が走査する基板2における走査ラインの真上に配置される。本実施形態においては、第1光源52は、基板2の被撮像面と平行に配設された基板に設けられたLED群により構成される。なお、効率的に検査中の走査ラインへ落射光を投ずるために、LED群を取り付ける基板を中央からふたつのサブ基板に分け、それぞれのサブ基板に走査方向に列んだLED群を構成してもよい。第1光源52により落射光を基板2に投じ、この反射光をラインセンサ38で検出することにより、基板2に実装される部品の位置ずれ欠品、ハンダのヌレなどに関する検査を実施することができる。
【0026】
第2光源54は、基板2の被撮像面と平行に配設された2つの基板に設けられた、ラインセンサ38の走査方向に被検査体である基板2の長さ以上に列ぶLED群により構成される。LEDが取り付けられた2つの基板は、第1光源52が走査ラインに落射光を投ずる光路に干渉しないように、走査ラインを含む鉛直面を挟んで両側に配置される。
【0027】
第3光源56も、第2光源54と同様にLED群により構成される。このLED群は、基板2の被撮像面と平行に配設された2つの基板に設けられ、被検査体となる基板2の走査方向長さ以上にわたって列べられて構成される。LEDが取り付けられた2つの基板は、第1光源52および第2光源54が走査ラインに光を照射する光路に干渉しないように、走査ラインを含む鉛直面を挟んで両側に配置される。第2光源54により側射光を基板2に投じ、この反射光をラインセンサ38で検出することにより、基板2におけるハンダブリッジの有無、実装部品の間違い、極性の反転などに関する検査を実施することができる。
【0028】
第1光源52は緑色の光を照射し、第2光源54は白色の光を照射し、第3光源56は青色の光を照射する。各々の光源は、異なる入射角度で被検査体となる基板2に光を照射する。このため、照明ユニット50は被検査体である基板2に複数の入射角度の光を照射する複合光源として機能する。第1光源52を緑色とし第3光源56を青色としたのは、SN比のよいクリアな画像を得るためである。プリント基板は緑色の場合が多いことから、落射光により平明を明るく照射するため、第1光源52を緑色としている。また、ICやチップのボディにレーザー印字された文字は、低い角度から青い光を当てることにより認識しやすくなるため、第3光源56を青色としている。
【0029】
第1光源52の鉛直下方にハーフミラー42が設けられる。第1光源52からの落射光は、ハーフミラー42を通過して基板2の検査面へ入射角がほぼゼロで投じられる。本実施形態においては、第1光源52に幅をもたせており、基板2が反ったときでも入射角がゼロになるような落射光成分が存在するように配慮されている。走査ラインからの反射光は、ハーフミラー42で反射し、テレセントリックレンズ40およびレンズ39を通過してラインセンサ38へ入射する。
【0030】
第2光源54および第3光源56と走査ラインの間には、アクリルシート58が設けられる。このアクリルシート58は、第2光源54および第3光源56からの光を拡散する。第2光源54および第3光源56は、点光源であるLEDの集合体であるため、拡散作用がなければスポット的な光が画像データに写り込んで検査精度に影響を与える可能性があるからである。
【0031】
図4は、走査ユニット30の主光線の光路を示す図である。なお、図4においてハーフミラー42による主光線の反射に関する図示は省略している。
【0032】
視差による歪みがある画像を利用して基板2に実装された部品の高さを算出しようとすると、視差による歪みを考慮した複雑な計算工程を経る必要があり、また、精度の高い算出結果を期待することも困難である。このため、ラインセンサ38は、テレセントリックレンズ40を介して基板2の映像を走査する。テレセントリックレンズ40は、基板2からの反射光をレンズ光軸に対して平行に集光する。このため、テレセントリックレンズ40と基板2との間では、主光線は光軸に対して平行、すなわち画角が実質的にゼロ度となる。
【0033】
このため、被写体の像が光軸中心にあっても光軸から離れた周辺位置にあっても視差による影響を受けず、原理的には視差による歪みのない画像を撮影することができる。したがって、シンプルな計算工程によって基板2に実装された部品などの高さを正確に算出することが可能となる。
【0034】
図5は、本実施形態に係る走査ユニット30を主走査方向に見た図である。以下、基板2の表面に対して垂直な垂直撮像角度から被検査体の映像を走査するときのハーフミラー42の位置を「ミラー初期位置」という。このため、ハーフミラー42がミラー初期位置にあるときの反射面と水平面との角度である初期ミラー角度θ0は45度に設定されている。
【0035】
ハーフミラー42がミラー初期位置にあるときにラインセンサ38に入射する光を反射する反射面上の反射ラインの位置を原点Oとする。また、原点Oを含む水平軸をx軸、原点Oを含む垂直軸をy軸とする。また、原点Oから基板2の表面までの距離を垂直光路長A1、原点Oからテレセントリックレンズ40までの水平距離を第1水平光路長B1とする。
【0036】
また、走査ユニット30には、ハーフミラー42を回転させるミラー角度切替機構70が設けられている。以下、ハーフミラー42のミラー初期位置からの回転角度をθ1とする。ミラー角度切替機構70によってハーフミラー42が回転された場合、ラインセンサ38は、垂直撮像角度に対して2×θ1だけ傾斜する傾斜撮像角度から基板2を見た映像を走査する。すなわち、垂直撮像角度は、被検査面の垂線に対する角度の絶対値がゼロ度となる方向、すなわち被検査面を垂直に見た映像を走査するときの撮像角度であり、傾斜撮像角度は、被検査面の垂線に対する角度の絶対値が2×θ1となる方向から見た映像を走査するときの撮像角度である。このとき、ラインセンサ38に入射する光を反射するハーフミラー42の反射ラインと基板2の走査ラインとの距離を傾斜光路長A2とする。
【0037】
仮にミラー角度切替機構70が原点Oを中心にハーフミラー42を回転させた場合、第1水平光路長B1は変わらないが、垂直光路長A1と傾斜光路長A2とが異なる長さとなるため、光路長は変化する。このときの光路長の変化量をλとすると、λは、
λ=A2−A1=A1×(1/cos(2×θ1)−1)・・・数式1
によって表される。
【0038】
光路長が変化すると別途焦点合わせを実施する構成および工程が必要となり、コストや検査工数の抑制が困難となる。このためミラー角度切替機構70は、ラインセンサ38から基板2への光路長が変化しないようハーフミラー42を回転させて、垂直撮像角度と傾斜撮像角度とを切り替える。これにより、別途焦点合わせを実施する構成および工程が不要となり、コストや検査工数を抑制することができる。
【0039】
まず、ミラー初期位置にあるときのハーフミラー42の反射面は、
y=−xtanθ0・・・数式2
によって表される。
【0040】
ハーフミラー42をミラー初期位置から回転させても光路長を変化させないためには、ハーフミラー42による反射ポイントの座標を(−λ,0)とする必要がある。このため、光路長を変化させないようミラー初期位置からミラー回転角度θ1回転したとき、そのときのハーフミラー42の反射面は、
y=−xtan(θ0−θ1)−λtan(θ0−θ1)・・・数式3
によって表される。
【0041】
この数式2および数式3より、x、yの解、すなわちハーフミラー42の回転中心を求める。まず、数式2と数式3からyを消去すると、
【数2】

となる。
【0042】
加法定理より、数式4は、
【数3】

となる。
【0043】
初期ミラー角度θ0=45度であることから、tanθ0=1を代入すると、
【数4】

となる。
【0044】
この分子分母に(1+tanθ1)を乗じると、
【数5】

となる。
【0045】
この数式7のλに数式1を代入すると、
【数6】

となる。
【0046】
また、数式2のxに数式8を代入すると、
【数7】

となる。
【0047】
以上より、ハーフミラー42の回転中心の座標は、
【数8】

となる。
【0048】
図6は、ユニット初期位置にあるときの撮像ユニット24と、回転機構26によりユニット初期位置から回転された位置にあるときの撮像ユニット24とを示す上面図である。図5において、撮像ユニット24がユニット初期位置にあるときに走査ユニット30が走査する走査ラインを第1主走査ラインL1とする。また、撮像ユニット24がユニット初期位置から回転したときの走査ラインを第2主走査ラインL2とする。第1主走査ラインL1と第2主走査ラインL2とがなす角度は、撮像ユニット24がユニット初期位置から回転した角度となる。以下、この角度を主走査角度αとする。
【0049】
このように回転機構26は、基板2の搬送方向と基板2上の走査ラインとの角度を変更する撮像角度変更手段として機能する。このように基板2の搬送方向と基板2上の走査ラインとの角度を変更することにより、ラインスキャン特有の指向性の抑制し、検査対象である基板2の全体形状を計測し易くすることができる。本実施形態では、主走査角度αは45度に予め設定されている。
【0050】
図7は、本実施形態に係る基板検査システム10の機能ブロック図である。基板検査システム10は、基板搬送機構12および撮像システム14の他に、PC100およびディスプレイ130を有する。なお、図4においてPC100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0051】
PC100は、搬送制御部102、回転制御部104、照明制御部106、撮像制御部108、ミラー角度制御部110、記憶部112、画像処理部114、メモリ116、検査部118、および表示制御部120を有する。
【0052】
基板2を第1方向および第2方向に搬送する搬送モータ72は、PC100に接続されている。搬送制御部102は、搬送モータ72に駆動信号を供給することにより搬送モータ72を作動させて基板搬送機構12を移動させることにより、基板2を第1方向および第2方向に移動させる。したがって搬送制御部102および基板搬送機構12は、ラインセンサ38による走査位置と基板2の位置とを相対的に移動させる移動手段として機能する。
【0053】
回転機構26内に設けられたユニット回転モータ(図示せず)は、PC100に接続されている。回転制御部104は、ユニット回転モータに供給する駆動信号を制御することにより、撮像ユニット24の回転角度を制御する。照明ユニット50はPC100に接続されている。照明制御部106は、第1光源52、第2光源54、および第3光源56の点灯を制御する。撮像制御部108は、照明ユニットが基板2に光を照射するタイミングで基板2の映像を走査するよう、ラインセンサ38の各々の撮像を制御する。
【0054】
ミラー角度切替機構70に含まれるミラー角度変更モータ(図示せず)は、PC100に接続されている。ミラー角度制御部110は、ミラー角度変更モータの作動を制御することにより、ハーフミラー42の角度を変化させて撮像角度を切り替える。このため、ミラー角度切替機構70およびミラー角度制御部110は、撮像角度を切り替える撮像角度切替手段として機能する。
【0055】
記憶部112はハードディスクにより構成されており、基板検査に利用される判定基準データが予め格納されている。また、検査部118による検査結果なども記憶部112に格納される。画像処理部114は、走査ユニット30のラインセンサ38によって撮像され生成された画像データに画像処理を施す。メモリ116は、画像処理が施された画像データなどを保持する。
【0056】
検査部118は、メモリ116に保持された画像データを解析し、まず基準データを取得する。ここで基準データは、例えば基板2に設けられた、基板2の位置を示す認識マークの位置データ、基板2に設けられたバーコードなどの識別マークを解析することにより得られる基板2シリアルナンバーや製造年月日などの識別データを含む。
【0057】
また、検査部118は、メモリ116に保持された画像データを解析し、さらに取得した基準データを利用して、基板2に実装される各部品やハンダ個所の位置を示す位置情報データを取得する。検査部118は、記憶部112に格納された判定基準データを利用して、基板2の部品の実装状態に関する総合的な検査を実施する。なお、部品の実装状態とは、被検査体としての基板2に実装される素子など部品の有無、位置、適正な部品か等だけではなく、ハンダの有無、ハンダの量、ブリッジの有無、部品の高さ等を含む。
【0058】
検査部118は、記憶部112に保持された基準データおよび位置情報データを利用して、基板2に実装される部品の高さを算出する。このため、検査部118は高さ算出部としても機能する。
【0059】
具体的には、走査ユニット30は、それぞれ異なる視点で見た基板2の被検査面を走査するため、被検査面の高さがゼロの平面を基準とすると、高さがある部分はそれぞれの走査ユニットにより得られる画像の位置が異なることになる。本実施形態では、走査ユニット30が傾斜撮像角度に基板2を走査するときの角度は基板2表面の鉛直方向に対して45度と予め決まっている。検査部118は、これを利用して、記憶部112に保持された位置情報データが示す各部品位置のずれ量に基づいて基板2に実装される部品の高さを算出する。記憶部112には、基板2における部品の高さに関する検査基準データが予め格納されている。検査部118は、記憶部112に格納された検査基準データを利用して、例えば検査基準データが示す正常範囲の高さに各部品の高さが入っているか否かを判定する高さ検査を実施する。これにより、例えば電子部品の足と基板との間に異物が挟まっているかなどを検出することが可能となる。
【0060】
表示制御部120は、検査部118による基板2の総合的な検査結果をディスプレイ130に表示させる。このとき表示制御部120は、メモリ116に格納された画像データを利用して、基板2を鉛直上方から見た画像を、異常がある部品の位置を明示しながらディスプレイ130に表示させてもよい。
【0061】
図8は、本実施形態に係る基板検査システム10の基板検査処理工程を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、基板検査システム10に設けられたスタートボタンがユーザによって押されたときに開始する。
【0062】
ユーザはマウスやキーボードなどの入力装置を用いて、主走査方向の変更指示を入力することができる。回転制御部104は、主走査方向の変更指示が入力されたか否かを判定する(S10)。
【0063】
主走査方向の変更指示がユーザによって入力された場合(S10のY)、回転制御部104は、回転機構26のユニット回転モータに駆動信号を供給して、ユニット初期位置から主走査角度αとして設定されいる45度だけ撮像ユニット24を回転させる(S12)。これにより、基板2の幅方向または長さ方向に並んで実装された部品の間など、検査の死角となる範囲を低減させることができる。なお、入力装置を用いて主走査角度αが入力可能となっていてもよい。主走査角度αが入力された場合、回転制御部104は、ユニット初期位置から入力された主走査角度αだけ撮像ユニット24を回転させる。主走査方向の変更指示の入力が場合(S10のN)、S12をスキップする。
【0064】
次に撮像制御部108および搬送制御部102は、往路において通常撮像処理を実行する(S14)。この通常撮像処理では、回転制御部104はミラー角度θを45度に保持した状態とし、搬送制御部102は第1方向に基板2を搬送する。
【0065】
基板2が撮像システム14の下方に搬入されると、撮像制御部108は、ラインセンサ38に基板2の撮像を開始させる。具体的には、照明制御部106が第2光源54を点灯させて基板の上面に白色の光を落射させ、撮像制御部108はこのタイミングで基板2からの反射光をラインセンサ38に撮像させる。次に照明制御部106が第1光源52を点灯させて緑色の光を基板の上面に落射させ、撮像制御部108は、このタイミングで基板からの反射光をラインセンサ38に撮像させる。次に照明制御部106が第3光源56を点灯させて基板の上面に青色の光を落射させ、撮像制御部108は、このタイミングで基板2からの反射光をラインセンサ38に撮像させる。このように、照明制御部106は、一走査単位につき3回異なる色の落射光を基板に投じ、撮像制御部108は、各色での落射光の基板による反射光をラインセンサ38に撮像させる。以下、これを1ラインの第1撮像という。
【0066】
1ラインの第1撮像が終了すると、搬送制御部102は、基板を搬送方向に所定の走査ライン間隔だけ移動させ、照明制御部106およびラインセンサ38は再び1ラインの第1撮像を実施する。照明制御部106、撮像制御部108、および搬送制御部102は、基板の撮像処理においてこの動作を繰り返すことにより、検査対象となる基板の全上面を撮像する。
【0067】
ここで、撮像ユニット24が回転されて主走査方向が変更されている場合、搬送制御部102は、搬送方向における各走査ラインの間隔がL×cosαになるよう基板2を搬送させる。本実施形態ではαは45度に設定されていることから、搬送制御部102は、搬送方向における各走査ラインの間隔がL×√2になるよう基板2を搬送させる。このLは、基板2がユニット初期位置にあるときの基板2の被検査面における各走査ラインの間隔を示す。これにより、基板2がユニット初期位置にあるときに比べ、搬送方向の解像度を1/cosα、即ち1/√2に高めることができる。また、このように基板2の搬送速度を調整することにより、搬送方向の解像度を基板幅方向の解像度に合わせることができる。
【0068】
本実施形態に係る基板検査システム10では、ユーザは、入力装置を用いてPC100にステレオ撮像モードまたは通常撮像モードを択一的に選択することが可能となっている。往路における第1撮像処理を終了すると、ミラー角度制御部110は、ユーザによってステレオ撮像モードが選択されているか否かを判定する(S16)。ステレオ撮像モードが選択されている場合(S16のY)、ミラー角度制御部110は、ミラー角度切替機構70を作動させてハーフミラー42をミラー回転角度θ1だけ回転させてその角度を変更させる(S18)。
【0069】
ハーフミラー42の角度変更が終了すると、撮像制御部108および搬送制御部102は、復路において傾斜撮像処理を実行する(S20)。この傾斜撮像処理では、搬送制御部102は第2方向に基板2を搬送させる。
【0070】
傾斜撮像処理では、照明制御部106が第2光源54を点灯させて基板の上面に白色の光を落射させ、撮像制御部108はこのタイミングで基板2からの反射光をラインセンサ38に撮像させる。以下、これを1ラインの第2撮像という。1ラインの第2撮像が終了すると、搬送制御部102は、基板を搬送方向に所定の走査ライン間隔だけ移動させ、照明制御部106およびラインセンサ38は再び1ラインの第2撮像を実施する。照明制御部106、撮像制御部108、および搬送制御部102は、基板の撮像処理においてこの動作を繰り返すことにより、検査対象となる基板の全上面を撮像する。なお、走査ライン間隔および搬送速度は往路と同様である。
【0071】
このようにミラー角度制御部110は、ステレオ撮像モードが選択された場合、ハーフミラー42の角度を変更することによって、基板の2の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる垂直撮像角度と傾斜撮像角度とを切り替える。このようにステレオ撮像モードにおいても垂直撮像角度から見た基板2の画像データを取得することで、基板2における部品の高さ以外の様々な項目についてこの画像データを利用して検査を実施することが可能となる。
【0072】
なお、ミラー角度制御部110は、垂直撮像角度と傾斜撮像角度とを切り替えるだけでなく、被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる撮像角度から見た基板2の映像をラインセンサ38が走査できるよう撮像角度を切り替えるてもよい。この場合も、ミラー角度制御部110は、ラインセンサ38から基板2への光路長が変化しないよう撮像角度を切り替える。
【0073】
また、ミラー角度制御部110は、往路と復路とでラインセンサが被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる複数の撮像角度から見た被検査体の映像を択一的に走査することができるよう、基板2に対する撮像角度を切り替える。これにより、往復移動させる一工程において、互いに異なる複数の撮像角度から見た基板2の画像データを取得することができる。
【0074】
こうして傾斜撮像処理を終了して基板2の全撮像工程を完了すると、検査部118は、各部品の高さを算出する(S22)。なお、通常撮像モードが選択されている場合(S16のN)、S18〜S22をスキップする。次に検査部118は、基板2に実装される部品の位置ずれ欠品、ハンダのヌレ、ハンダブリッジの有無、実装部品の間違い、極性の反転などに関する総合検査を実行する(S24)。なお、ステレオ撮像モードが選択されている場合、検査部118は、算出された各部品の高さを利用して、基板との間に異物が挟まって電子部品の足が浮いているかなどの高さ検査も総合判定の一部をして実施する。総合検査を終了すると、表示制御部120は、総合検査結果をディスプレイ130に表示する(S26)。
【0075】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0076】
ある変形例では、搬送レール20上にターンテーブルが設けられる。ターンテーブルはモータが作動することにより回転するよう構成されている。ユーザによってPC100に主走査角度αが入力された後スタートボタンが押されると、回転制御部104は、このモータを作動させてターンテーブルを主走査角度αだけ回転させる。このように撮像ユニット24を回転させる代わりに基板2を回転させることによっても、主走査角度αを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態に係る基板検査システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る撮像ユニットの内部構成を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る撮像ユニットの構成を模式的に表した図である。
【図4】第1走査ユニットの主光線の光路を示す図である。
【図5】本実施形態に係る第1走査ユニットを主走査方向に見た図である。
【図6】ユニット初期位置にあるときの撮像ユニットと、回転機構によりユニット初期位置から回転された位置にあるときの撮像ユニットとを示す上面図である。
【図7】本実施形態に係る基板検査システムの機能ブロック図である。
【図8】本実施形態に係る基板検査システムの基板検査処理工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
2 基板、 10 基板検査システム、 12 基板搬送機構、 14 撮像システム、 24 撮像ユニット、 26 回転機構、 30 走査ユニット、 36 支持プレート、 38 ラインセンサ、 39 レンズ、 40 テレセントリックレンズ、 42 ハーフミラー、 50 照明ユニット、 52 第1光源、 54 第2光源、 56 第3光源、 70 ミラー角度切替機構、 72 搬送モータ、 100 PC、 102 搬送制御部、 104 回転制御部、 106 照明制御部、 108 撮像制御部、 110 ミラー角度制御部、 112 記憶部、 118 検査部、 120 表示制御部、 130 ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状のセンサ列と、
被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる撮像角度から見た被検査体の映像を前記ライン状のセンサ列が走査できるよう撮像角度を切り替える撮像角度切替手段と、
を備え、
前記撮像角度切替手段は、前記ライン状のセンサ列から被検査体への光路長が変化しないよう撮像角度を切り替えることを特徴とする被検査体の検査装置。
【請求項2】
前記撮像角度切替手段は、被検査体からの光を前記ライン状のセンサ列に向けて反射するミラーの角度を、前記ライン状のセンサ列から被検査体への光路長が変化しないよう変更して撮像角度を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の被検査体の検査装置。
【請求項3】
前記撮像角度切替手段は、被検査面に対して垂直に被検査体を見る垂直撮像角度と、被検査面に対して傾斜して被検査体を見る傾斜撮像角度とを切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の被検査体の検査装置。
【請求項4】
前記撮像角度切替手段は、主走査方向に見て、垂直撮像角度から被検査体の映像を走査するときのミラーの反射ポイントを原点とし、原点を含む水平軸をx軸、原点を含む垂直軸をy軸とし、原点から被検査体までの距離をA1、ミラーの回転角度をθ1としたとき、以下の座標、
【数1】

を中心としてミラーを回転させることにより垂直撮像角度と傾斜撮像角度とを切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の被検査体の検査装置。
【請求項5】
前記ライン状のセンサ列による走査位置と被検査体の位置とを相対的に往復移動させる移動手段をさらに備え、
前記撮像角度切替手段は、往路と復路とで、被検査面の垂線に対する角度の絶対値が互いに異なる撮像角度から見た被検査体の映像を前記ライン状のセンサ列が走査できるよう撮像角度を切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の被検査体の検査装置。
【請求項6】
前記ライン状のセンサ列は、被検査体からの反射光をレンズ光軸に対して平行に集光する光学系を介して被検査体の映像を走査することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の被検査体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−107249(P2010−107249A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277341(P2008−277341)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】