説明

車両の操作装置

【課題】 運転者によって独立的に操作される操作部の操作状態変化に起因する意図しない車両の挙動変化を抑制する操作装置を提供すること。
【解決手段】 操作意思推定部41は、回転操作部13,14の検出回転角θL,θRの時間変化量に基づき、操作部13,14の操作が意思操作領域または片方操作領域のいずれであるかを判定する。重み係数決定部42は、操作部13,14の操作が意思操作領域であれば重み係数KL,KRを所定の設定値に設定する。また、決定部42は、片方操作領域であれば中立位置まで復帰した側の操作部13(操作部14)の係数KL(係数KR)を小さな値に決定し、他側の操作部14(操作部13)の係数KR(係数KL)を大きな値に決定する。指令値演算部43は、回転角θL,θRおよび係数KL,KRを用いて指令値(要求値)Sを計算する。これにより、運転者の意図しない車速の変化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によって独立的に操作される複数の操作部を有する車両の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示された車両用操作装置は知られている。この従来の車両用操作装置は、独立した2つの操作レバーの各々の前後方向操作量または前後方向操作力を検出し、ステアリングECUが各々の操作量または操作力の差や和を演算するようになっている。そして、演算した操作量または操作力の差や和に応じて、スロットル操作角度やブレーキ装置を制御し、車両前後方向の加速減速制御を行うようになっている。
【0003】
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示された操作要素配置構造も知られている。この従来の操作要素配置構造は、互いに無関係に操作できる2つの制御ノブのうち、一方がプロペラシャフトトンネルに設けられ、他方が運転席ドアに設けられる構造となっている。そして、この従来の操作要素配置構造においては、各操作ノブから異なる制御指令信号が出力された場合には、各制御指令信号を重畳したり、予め優先順序を設定したりして、各制御ノブ間の指令の矛盾を阻止するようになっている。
【0004】
また、従来から、例えば、下記特許文献3に示された自動車のかじ取り装置も知られている。この自動車のかじ取り装置は、少なくとも2つの操作部材を備えており、これら各操作部材に作用する力の平均値または和を用いて、目標値を算出するようになっている。
【0005】
また、従来から、例えば、下記特許文献4に示された車両の運転操作装置も知られている。この従来の車両の運転操作装置は、第1のレバーと、第2のレバーと、第1のレバーの操作量を検出する第1の操作量検出手段と、第2のレバーの操作量を検出する第2の操作量検出手段とを備えている。そして、この従来の車両の運転操作装置においては、第1の操作量検出手段によって検出された第1のレバーの操作量検出値を主値とし、この主値に対して、第2の操作量検出手段によって検出された第2のレバーの操作量検出値のゲインを下げた低ゲイン信号を付加することにより転舵輪の転舵量を決定するようになっている。
【0006】
さらに、従来から、例えば、下記特許文献5に示された車両の速度制御方法も知られている。この従来の車両の速度制御方法は、ステアリング操作装置の左右に配設された一対のアクセル操作部材の操作量をそれぞれ検出し、これら左右のアクセル部材のうち、所定時間内におけるアクセル変位量の小さい方または先に操作された方を選択し、この選択された側のアクセル操作部材のアクセル出力値に対応してスロットル開度を調整して走行速度を制御するようになっている。また、この従来の車両の速度制御方法においては、アクセル操作部材の操作量を検出し、所定時間内におけるアクセル操作量の変化量を測定し、この変化量が特定値以上の場合にスロットル開度をアクセル操作量の変化量に比べて少ない変化量に調整してまたはスロットル開度を一定に保持して走行速度を制御するようにもなっている。
【特許文献1】特開2006−160123号公報
【特許文献2】特開平9−301193号公報
【特許文献3】特表2000−118427号公報
【特許文献4】特開2002−160642号公報
【特許文献5】特開2004−108244号公報
【発明の開示】
【0007】
ところで、上記特許文献1〜4に示された各装置においては、2つの操作部(操作レバー、制御ノブ、操作部材、第1,第2レバー)のそれぞれの操作量を加算、減算し、また、各操作量の平均値を算出することによって目標値を決定する。この場合、運転者が2つの操作部を両手で操作している状態においては、各操作部の操作量を用いて適切な目標値を決定することができる。しかし、運転中において、例えば、運転者が手の疲労を感じたり、その他の装置を操作する必要が発生した場合には、一時的に、操作部から手が離れる場合がある。このように、運転者が一時的に操作部から手を放した場合には、手を放した側の操作部に入力される操作量が小さく(または「0」に)なる。このため、各操作量を加算、減算または平均して目標値を決定している場合には、運転者が手を放した時点で目標値が急激に小さくまたは大きくなる可能性があり、その結果、運転者が意図しない車両の急激な走行挙動変化が生じる可能性がある。
【0008】
また、一旦手を放した後、ふたたび、手を放した側の操作部の操作を開始した場合には、同操作部に入力される操作量が加算、減算または平均化されて目標値が決定される。このため、運転者が両手で操作部の操作を開始した時点で目標値が急激に大きくまたは小さくなる可能性があり、その結果、運転者が意図しない車両の急激な走行挙動変化が生じる可能性がある。
【0009】
一方、上記特許文献5に示された速度制御方法においては、左右のアクセル操作部材の操作量のうち、アクセル変位量の小さい方または先に操作された方の操作量を選択して用いて、スロットル開度を調整するようになっている。しかし、例えば、運転者が疲労等によって選択された側のアクセル操作部材から手を放した場合、他方の手でアクセル操作部材を操作している状態であっても、運転者が意図しない車両の挙動変化、例えば、走行速度の減速が生じる可能性がある。また、一旦手を放した後、ふたたび、運転者が両手で左右のアクセル操作部材の操作を開始した場合、左右のアクセル操作部材が独立して操作可能であるにもかかわらず、継続して操作されている側のアクセル操作部材のみが有効な操作部材と認識される可能性が高い。その結果、運転者の運転状況に応じて、左右のアクセル操作部材のいずれもが操作できるという利点が享受できない可能性がある。
【0010】
さらに、車両を加速させる側への過度の操作に対して、車両の挙動変化が抑制されるようにスロットル開度が調整されるようになっている。しかしながら、運転者がアクセル操作部材から突発的に手を放した場合、すなわち、車両が減速する場合におけるスロットル開度の調整については、言明されていない。したがって、運転者が疲労等によってアクセル操作部材から手を放した場合には、運転者が意図しない車両の走行挙動変化すなわち走行速度の減速が生じる可能性がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者によって独立的に操作される複数の操作部の操作状態変化に起因して発生する意図しない車両の挙動変化を抑制する操作装置を提供することにある。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、運転者によって把持されてそれぞれ独立的に操作される第1操作手段および第2操作手段と、同第1操作手段および第2操作手段の各操作に応じて、車両の走行挙動を設定するための指令値を出力する制御装置とを備えた車両の操作装置において、前記制御装置を、前記第1操作手段の操作量を検出する第1操作量検出手段と、前記第2操作手段の操作量を検出する第2操作量検出手段と、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定する操作状態判定手段と、前記指令値に対する前記第1操作手段の検出操作量の寄与度を表す第1重み係数および前記指令値に対する前記第2操作手段の検出操作量の寄与度を表す第2重み係数を決定するものであって、前記操作状態判定手段によって運転者が手を放した状態であると判定された前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を減少させるとともに、運転者が把持している前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を増加させて決定する重み係数決定手段と、前記決定された第1重み係数を反映した前記第1操作手段の検出操作量と、前記決定された第2重み係数を反映した前記第2操作手段の検出操作量とを用いて前記指令値を演算する指令値演算手段とで構成したことにある。
【0013】
この場合、前記操作状態判定手段は、前記第1操作量検出手段によって検出された前記第1操作手段の操作量と前記第2操作量検出手段によって検出された前記第2操作手段の操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値よりも大きいときに、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定するとよい。また、前記重み係数決定手段が決定する前記第1重み係数と前記第2重み係数とは、それぞれ、例えば、前記第1操作手段の検出操作量と前記第2操作手段の検出操作量との前記指令値に対する割合を表すとよい。
【0014】
これらによれば、運転者が第1操作手段および第2操作手段のうちのいずれか一方から手を放したことが判定されると、手を放した側の操作手段(例えば、第1操作手段)の検出操作量に対する重み係数(例えば、第1重み係数)の値を減少させ、把持している側の操作手段(例えば、第2操作手段)の検出操作量に対する重み係数(例えば、第2重み係数)の値を増加させて決定することができる。そして、このように決定された第1重み係数および第2重み係数と第1操作手段の検出操作量および第2操作手段の検出操作量とを用いて、車両の走行挙動(例えば、車両の前後方向の車速や左右方向の旋回量など)を設定するための指令値を演算することができる。
【0015】
これにより、演算される指令値に対して、運転者が手を放した側における操作手段の操作量の寄与度(割合)を小さくするとともに、運転者が継続して把持している側における操作手段の操作量の寄与度(割合)を大きくすることができる。この結果、運転者が一時的に操作手段から手を放した場合であっても、手を放した側の操作手段の操作量分だけ、指令値に対する把持している側の操作手段の操作量を相対的に大きくすることができるため、演算される指令値の変化を小さくすることができる。したがって、運転者が第1操作手段または第2操作手段から手を放すことに起因する意図しない車両の急激な走行挙動の変化を良好に抑制することができる。
【0016】
また、第1操作手段の操作量と第2操作手段の操作量との差分値の絶対値が所定値よりも大きいときに、運転者が第1操作手段および第2操作手段のうちの一方から手を放したか否かを判定することができる。言い換えれば、差分値の絶対値が所定値以下である場合には、第1操作手段と第2操作手段とがともに操作されていると判定することができ、例えば、第1重み係数と第2重み係数とをそれぞれ適切な値に決定することができる。これにより、運転者がそれぞれの手で第1操作手段と第2操作手段とを独立的に操作している状況においては、第1操作手段の操作量と第2操作手段の操作量を演算される指令値に反映させることができる。したがって、第1操作手段および第2操作手段の操作によって表わされる運転者の意図を良好に反映した態様で車両の走行挙動を設定することができる。
【0017】
また、前記操作状態判定手段は、前記第1操作量検出手段によって検出された前記第1操作手段の操作量の時間変化量および前記第2操作量検出手段によって検出された前記第2操作手段の操作量の時間変化量に基づいて、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定するとよい。また、前記制御装置が、さらに、運転者による前記第1操作手段および前記第2操作手段の把持状態の変化を検出する把持状態検出手段を備えており、前記操作状態判定手段は、前記把持状態検出手段によって検出された前記第1操作手段の把持状態の変化および前記第2操作手段の把持状態の変化に基づいて、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定するとよい。この場合、前記把持状態検出手段は、運転者による前記第1操作手段および前記第2操作手段の把持状態を画像として検出する画像検出手段または運転者による前記第1操作手段および前記第2操作手段の把持状態における力を検出する力検出手段であるとよい。
【0018】
これらによれば、運転者が第1操作手段および第2操作手段のうちの一方から手を放したか否かを確実に判定することができる。したがって、上述したように、運転者が意図しない車両の走行挙動の急激な変化を極めて良好に抑制することができる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記第1操作手段および前記第2操作手段は、それぞれ、運転者による操作に対して中立位置方向に反力を付与する反力機構が組み付けられており、前記操作状態判定手段は、前記第1操作手段および前記第2操作手段の操作状態を、運転者が意思に基づいて前記付与された反力に抗して前記第1操作手段および前記第2操作手段を操作する意思操作状態であるか、前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方が前記反力によって自動的に中立位置に復帰動作し、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの他方のみを前記付与された反力に抗して操作する片方操作状態であるかを判定し、前記重み係数決定手段は、前記操作状態判定手段によって判定された意思操作状態または片方操作状態に応じて、前記第1重み係数および前記第2重み係数を決定することにもある。
【0020】
これによれば、運転者が第1操作手段および第2操作手段の操作状態を、例えば、検出操作量の時間変化量や把持状態に基づいて、運転者の意思に基づいて操作している状態(意思操作状態)であるか、突発的に第1操作手段または第2操作手段から手を放して一方の操作手段を操作している状態(片方操作状態)であるかを判定することができる。そして、意思操作状態と片方操作状態とに応じて、第1重み係数と第2重み係数を適切に決定することができる。
【0021】
より具体的には、前記操作状態判定手段による判定に基づき、前記第1操作手段および前記第2操作手段の操作状態が前記意思操作状態であるときは、前記第1重み係数および前記第2重み係数をそれぞれ所定の設定値に決定し、前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作状態が前記片方操作状態であるときは、自動的に前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を減少させるとともに、運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を増加させて決定することができる。
【0022】
これにより、第1操作手段および第2操作手段が意思操作状態にあるときには、第1重み係数と第2重み係数を所定の設定値に決定することによって、運転者の意思を反映した指令値を演算することができ、その結果、運転者の意思を良好に反映した車両の走行挙動を設定することができる。具体的には、第1重み係数と第2重み係数とが所定の設定値に決定されている状況において、運転者が、例えば、車両を減速することを意図して、第2操作手段の操作量を維持した状態で第1操作手段を中立位置方向すなわち第1操作手段の操作量が小さくなる方向に操作することにより、演算される指令値を小さくすることができる。これにより、運転者の意図を反映して車速を減少させることができる。
【0023】
一方、運転者が突発的に第1操作手段または第2操作手段から手を放した片方操作状態にあるときには、自動的に中立位置まで復帰動作している側の操作手段の重み係数を減少させ、操作を継続している側の操作手段の重み係数を増加させることができ、その結果、上述したように、運転者が意図しない車両の走行挙動の変化を良好に抑制することができる。具体的には、例えば、運転者が第1操作手段から突発的に手を放した状況において、第1操作手段は付与される反力によって自動的に中立位置まで復帰するため、第1操作手段の復帰動作に伴って第1重み係数を減少させるとともに、操作が継続されている第2操作手段の第2重み係数を第1重み係数の減少量に対応させて増加させる。これにより、演算される指令値の急激な変化を抑制することができ、運転者の意図しない車両の走行挙動の変化を良好に抑制することができる。
【0024】
この場合、前記制御装置は、さらに、車両の進行方向における前後方向に存在する物体と自車両との相対的な位置関係を検出する相対位置検出手段を備えており、前記重み係数決定手段は、前記操作状態判定手段によって前記片方操作状態であると判定されると、前記相対位置検出手段によって検出された前記相対的な位置関係に基づき、前記物体と自車両とが離間しているときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を大きな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を大きな変化量で増加させ、前記物体と自車両とが近接しているときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を小さな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を小さな変化量で減少させて決定することもできる。
【0025】
また、前記制御装置は、さらに、車両が走行している道路の形状を検出する道路形状検出手段を備えており、前記重み係数決定手段は、前記操作状態判定手段によって片方操作状態であると判定されると、前記道路形状検出手段によって検出された道路の形状に応じて、車両の車速を維持するときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を大きな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を大きな変化量で増加させ、車両の車速を減速するときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を小さな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を小さな変化量で減少させて決定することもできる。この場合、前記道路形状検出手段を、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、道路の形状に関する情報を記憶した記憶手段と、前記検出された車両の現在位置に基づいて、前記記憶手段に記憶された道路の形状に関する情報を検索する検索手段と、前記検索手段によって検索された道路の形状に関する情報を出力する出力手段とで構成するとよい。また、前記道路形状検出手段は、車両が走行している道路の勾配およびカーブ半径のうちの少なくとも一方を検出するものであるとよい。
【0026】
また、前記制御装置は、さらに、運転者が車両を運転するときに必要とする先行車両との相対的な位置関係を表す運転特性を判定する運転特性判定手段と、車両の走行特性を表す車両走行特性情報を記憶する車両特性情報記憶手段とを備えており、前記重み係数決定手段は、前記操作状態判定手段によって片方操作状態であると判定されると、前記運転特性判定手段によって判定された前記運転特性および前記車両特性情報記憶手段に記憶された車両走行特性情報に基づき、前記先行車両と自車両とを近接させるときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を大きな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を大きな変化量で増加させ、前記先行車両と自車両とを離間させるときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を小さな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を小さな変化量で減少させて決定することもできる。
【0027】
これらによれば、第1操作手段または第2操作手段が片方操作状態にあるときには、車両の周辺状況、例えば、車両の前後方向における物体(先行車両や後続車両など衝突する可能性のある物体)の存在や車両が走行している道路の状況(勾配やカーブ半径)、運転者の運転特性および車両の走行特性に応じて、第1重み係数および第2重み係数を決定することができる。すなわち、例えば、自車両の前方に物体が存在せず車速を維持可能な場合、登坂路走行や後続車両の存在により車速を維持する必要がある場合あるいは運転者が先行車両との車間距離を短めにすることを好む場合には、第1重み係数および第2重み係数は、大きな変化量で言い換えれば速やかに減少または増加するように決定することができる。これにより、演算される指令値の変化を抑制することができ、運転者の意図しない車両の走行挙動の変化を良好に抑制することができる。
【0028】
一方、例えば、自車両の前方に物体が存在し車速を減少させる必要がある場合、前方のカーブ半径が小さく車速を減少させる必要がある場合あるいは運転者が先行車両との車間距離を長めにすることを好む場合には、第1重み係数および第2重み係数は、小さな変化量で言い換えれば緩やかに減少または増加するように決定することができる。これにより、演算される指令値を緩やかに減少させることができ、運転者の意図しない車両の走行挙動の急激な変化を良好に抑制するとともに、適切に車両を走行させることができる。
【0029】
また、本発明の他の特徴は、前記重み係数決定手段は、運転者が、前記把持している前記第2操作手段または前記第1操作手段の操作方向にて、前記手を放した状態であると判定された前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作を再開したときは、前記減少させて決定した前記第1重み係数または前記第2重み係数を前記操作の再開された前記第1操作手段の検出操作量の増大または前記第2操作手段の検出操作量の増大に伴って増加させ、前記第1重み係数または前記第2重み係数の増加に伴って運転者が前記把持している前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を減少させて決定することにもある。この場合、前記重み係数決定手段は、前記第1操作手段の検出操作量と前記第2操作手段の検出操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値以下となったときに、前記第1重み係数と前記第2重み係数とをそれぞれ所定の設定値に決定するとよい。
【0030】
これによれば、運転者によって第1操作手段および第2操作手段のうちの一方から一旦手が放された後、ふたたび、第1操作手段および第2操作手段をそれぞれの手で操作を再開した場合においても、第1重み係数および第2重み係数を適切に決定することができる。これにより、第1操作手段の操作量および第2操作手段の操作量を演算される指令値に適切に反映させることができ、運転者は、独立的に操作できる第1操作手段および第2操作手段の利点を享受することができる。また、第1操作手段の検出操作量と第2操作手段の検出操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値以下となったときには、第1重み係数と第2重み係数とをそれぞれ所定の設定値に決定することができる。これにより、運転者が車両の走行挙動を設定するにあたり、どの操作手段に対する操作量が有効であるかを意識する必要がない。
【0031】
また、前記重み係数決定手段は、運転者が、前記把持している前記第2操作手段または前記第1操作手段の操作方向にて、前記手を放した状態であると判定された前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作を再開したときは、前記操作の再開された前記第1操作手段の検出操作量または前記第2操作手段の検出操作量と前記把持している前記第2操作手段の検出操作量または前記第1操作手段の検出操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値よりも大きければ、前記減少させて決定した前記第1重み係数または前記第2重み係数の変化を禁止するとともに前記増加させて決定した前記第2重み係数または前記第1重み係数の変化を禁止し、前記差分値の絶対値が前記所定値以下であれば、前記第1重み係数および前記第2重み係数をそれぞれ所定の設定値に決定することもできる。
【0032】
これによれば、運転者によって第1操作手段および第2操作手段のうちの一方から一旦手が放された後、ふたたび、第1操作手段および第2操作手段をそれぞれの手で操作を再開した場合において、第1操作手段の検出操作量と第2操作手段の検出操作量の差分値の絶対値が予め設定された所定値以下となるまで、第1重み係数および第2重み係数の変化を禁止することができる。すなわち、例えば、運転者が第1操作手段から一旦手を放し、ふたたび、操作を再開した場合には、第1操作手段の操作量が増加して第2操作手段の操作量との差分値の絶対値が所定値以下となるまでは、第1重み係数の変化(例えば、増加)と第2重み係数の変化(例えば、減少)が禁止されて一定値に維持される。そして、差分値の絶対値が所定値以下となると、第1重み係数および第2重み係数は所定の設定値に決定される。
【0033】
これにより、演算される指令値に対する第1操作手段の操作量の増加の影響が小さく抑制されるため、第1操作手段の操作再開後における車両の走行挙動への影響を小さくすることができる。そして、差分値の絶対値が所定値以下となった後は、運転者は、独立的に操作できる第1操作手段および第2操作手段の利点を享受することができるとともに、車両の走行挙動を設定するにあたり、どの操作手段に対する操作量が有効であるかを意識する必要がない。
【0034】
さらに、前記重み係数決定手段は、運転者が、前記把持している前記第2操作手段または前記第1操作手段の操作方向にて、前記手を放した状態であると判定された前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作を再開したときは、前記減少させて決定した前記第1重み係数または前記第2重み係数を前記操作の再開された前記第1操作手段の検出操作量の増大または前記第2操作手段の検出操作量の増大に伴って増加させ、運転者が前記把持している前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数の変化を禁止することもできる。
【0035】
これによれば、運転者によって第1操作手段および第2操作手段のうちの一方から一旦手が放された後、ふたたび、第1操作手段および第2操作手段をそれぞれの手で操作を再開した場合において、手が放された側の操作手段の操作の再開に伴って同操作手段の検出操作量に対する重み係数を増加させる一方で、継続して把持(操作)されている側の操作手段の検出操作量に対する重み係数の変化を禁止することができる。すなわち、例えば、運転者が第1操作手段から一旦手を放し、ふたたび、操作を再開した場合には、第1操作手段の操作量の増加に応じて第1重み係数を増加させるとともに、第2操作手段の検出操作量に対する第2重み係数の変化(例えば、減少)が禁止されて一定値に維持される。
【0036】
ここで、運転者は、例えば、一旦手を放した第1操作手段の操作を再開させるにあたり、例えば、車両を加速させることを意図する場合がある。これに対し、演算される指令値は、第1操作手段の操作量の増加に伴って大きな値として計算されるため、運転者による第1操作手段の操作開始に伴って車両を加速させることができる。したがって、運転者の意図する態様で車両を走行させることができる。また、運転者は、独立的に操作できる第1操作手段および第2操作手段の利点を享受することができるとともに、車両の走行挙動を設定するにあたり、どの操作手段に対する操作量が有効であるかを意識する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係る車両の操作装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の操作装置を概略的に示している。この車両の操作装置は、運転者によって操作される操作部材10と、同操作部材10の操作状態に応じて種々の指令値(要求値)を算出して出力する電気制御部20とを備えている。
【0038】
操作部材10は、図1および図2に概略的に示すように、車体に回転可能に組み付けられたシャフト11に対して、運転者による回動操作が可能となるように組み付けられた操作部本体12を備えている。そして、この操作部本体12には、運転者によって把持されるとともに、左右独立的に回転操作される第1および第2操作手段としての回転操作部13,14が組み付けられている。
【0039】
回転操作部13,14は、その軸線回りにて左右方向に独立的に回転可能に組み付けられている。そして、回転操作部13,14は、図示しない弾性部材(例えば、バネなど)によって、運転者による回転操作に対して反力が付与されるようになっている。これにより、運転者が回転操作部13,14から手を離した場合には、弾性部材による付勢力によって、回転操作部13,14は、ぞれぞれ初期位置(以下、この初期位置を中立位置という)方向に復帰動作するようになっている。ここで、以下の説明においては、それぞれの回転操作部13,14はアクセル機能とブレーキ機能を有するものとして説明する。そして、回転操作部13,14が、例えば、図2にて矢印で示す右方向に回転操作されたときに運転者が車両を加速させることを意図し、左方向に回転操作されたときに運転者が車両を減速させることを意図するとして説明する。
【0040】
電気制御部20は、運転者による操作部材10の操作状態、より詳しくは、操作部本体12の回動操作量および回転操作部13,14の回転操作量に基づいて、後述する車両に搭載された各種電子制御装置30に対する指令値(要求値)を算出して出力する。このため、電子制御部20は、運転者による操作部本体12の回動操作量(実操舵角に対応)を検出する操舵角センサ21と、運転者による回転操作部13,14の回転操作量をそれぞれ検出する第1および第2操作量検出手段としての回転量検出センサ22,23とを備えている。
【0041】
操舵角センサ21は、例えば、操作部本体12と一体的に回転するシャフト11に組み付けられており、運転者による操作部本体12の回動操作量を操舵角θsとして出力する。回転量検出センサ22,23は、例えば、操作部本体12と回転操作部13,14とをそれぞれ回転可能に連結する図示しないのシャフトに組み付けられており、運転者による回転操作部13,14の回転操作量をそれぞれ回転角θL,θRとして出力する。なお、回転量検出センサ22,23は、それぞれ、運転者によって回転操作部13,14が中立位置から右方向に回転操作されたときに回転角θL,θRを正の値として出力し、回転操作部13,14が中立位置から左方向に回転操作されたときに回転角θL,θRを負の値として出力する。また、回転量検出センサ22,23は、それぞれ、中立位置にあるときには、回転角θL,θRを「0」として出力する。
【0042】
また、電気制御部20は、後述するように、各回転操作部13,14の回転角θL,θRに対する重み係数を適切に決定するために、先行する車両との車間距離を検出する前方車間距離検出センサ24と、追従する車両との車間距離を検出する後方車間距離検出センサ25と、車両の車速を検出する車速センサ26とを備えている。前方車間距離検出センサ24は、車体の前方に配置されていて、例えば、ミリ波やレーザー光などを用いて、先行する車両の存在を検知するとともに自車両との間の相対的な距離を検出して前方車間距離Lmとして出力する。後方車間距離検出センサ25は、車体の後方に配置されていて、例えば、ミリ波やレーザー光などを用いて、自車両の後方に存在する車両を検知するとともに自車両との間の相対的な距離を検出して後方車間距離Luとして出力する。車速センサ26は、車両の車速を検出して車速Vとして出力する。
【0043】
これらセンサ21〜26は、電子制御ユニット27に接続されている。電子制御ユニット27は、CPU、EEPROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、図示しない各種プログラムの実行により、各電子制御装置30に対して出力する指令値(要求値)を算出する。このため、電子制御ユニット27は、車両内に構築された通信回線A(例えば、LANなど)に接続されており、この通信回線Aを介して算出した指令値(要求値)を各電子制御装置30に出力するようになっている。
【0044】
ここで、車両に搭載された各種電子制御装置30として、本実施形態においては、運転者による操作部本体12の回動操作に対して付与する反力の大きさを制御する反力制御ユニット31、運転者による操作部本体12の回動操作に応じて図示省略の転舵輪を転舵制御する転舵制御ユニット32、運転者による回転操作部13,14の回転操作に応じて図示省略のエンジンを出力制御するエンジン制御ユニット33および運転者による回転操作部13,14の回転操作に応じて図示省略のブレーキ装置を作動制御するブレーキ制御ユニット34を採用するものとする。なお、これら反力制御ユニット31、転舵制御ユニット32、エンジン制御ユニット33およびブレーキ制御ユニット34も、CPU、EEPROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものである。そして、図示しない各種プログラムの実行により、それぞれ、制御対象としてのアクチュエータの作動を制御する。また、反力制御ユニット31、転舵制御ユニット32、エンジン制御ユニット33およびブレーキ制御ユニット34は、それぞれ、通信回線Aに接続されており、電子制御ユニット27と通信可能とされている。
【0045】
次に、上記のように構成した車両用の操作装置が運転者によって操作されたときの動作について説明する。運転者は、操作部材10の操作部本体12を回動操作することによって車両を旋回させ、操作部材10の回転操作部13,14を回転操作することによって、車両の前後方向における走行挙動としての車速を設定することができる。以下、このような運転者の操作に対する電子制御ユニット27の動作を具体的に説明する。
【0046】
運転者が回転操作部13,14を把持して操作部本体12を回動操作すると、電子制御ユニット27は、この回動操作に応じて操舵角センサ21によって検出された操舵角θsを通信回線Aを介して反力制御ユニット31と転舵制御ユニット32に出力する。また、電子制御ユニット27は、車速センサ26によって検出された車速Vを通信回線Aを介して転舵制御ユニット32に出力する。これにより、反力制御ユニット31は出力された検出操舵角θsに応じて運転者による回動操作に対する適切な反力を付与し、転舵制御ユニット32は出力された検出操舵角θsおよび検出車速Vに応じて運転者が意図する態様で車両を旋回させるために転舵輪を転舵させる。なお、反力付与制御および転舵動作制御に関しては、直接本発明と関連するものではないため、以下に簡単に説明しておく。
【0047】
まず、反力付与制御から説明すると、反力制御ユニット31は、例えば、図3に示す特性テーブルを用いて、供給された検出操舵角θsに対して比例関数的に変化する反力トルクTzを決定する。ここで、反力トルクTzは、検出操舵角θsの絶対値の増大に伴って増大する変化特性であるとよく、比例関数的な変化特性に代えて、例えば、検出操舵角θsに対して指数関数的に増大する変化特性や、検出操舵角θsに対してべき乗関数的に増大する変化特性を採用することもできる。そして、反力制御ユニット31は、例えば、シャフト11に連結された図示しない反力アクチュエータの電動モータを駆動制御することによって、運転者による操作部本体12の回動操作に対して適切な反力トルクTzすなわち反力を付与する。
【0048】
次に、転舵動作制御を説明すると、転舵制御ユニット32は、供給された検出操舵角θsに応じて、転舵輪の目標転舵角δdを計算する。具体的には、転舵制御ユニット32は、検出操舵角θsを入力すると、同入力した操舵角θsに応じた転舵輪の目標転舵角δdを、例えば、下記式1に従って計算する。
δd=G・θs …式1
ただし、前記式1中のGは、操舵角θsに対する転舵輪の転舵角の比すなわち操舵ゲインである。ここで、操舵ゲインGは、例えば、図4に示すように、車速センサ26によって検出された車速Vに応じて、その大きさが変化するように決定される。すなわち、検出車速Vが小さい場合には、操舵ゲインGは大きく設定されるため、前記式1に従い操舵角θsに対して大きな目標転舵角δdが計算される。一方、検出車速Vが大きい場合には、操舵ゲインGは小さく設定されるため、前記式1に従い操舵角θsに対して小さな目標転舵角δdが計算される。
【0049】
そして、転舵制御ユニット32は、転舵輪の実転舵角が計算した目標転舵角δdと一致するように、図示しない転舵アクチュエータを構成する電動モータを駆動制御する。これにより、転舵アクチュエータと機械的に連結された転舵輪が目標転舵角δdとなるように転舵されるため、運転者は車速Vに応じて、所望の態様により車両を旋回させることができる。
【0050】
次に、運転者によって回転操作部13,14が回転操作された場合、言い換えれば、運転者によって車両の車速を設定する操作がなされた場合について、電子制御ユニット27内にてコンピュータプログラム処理によって実現される機能を表す図5の機能ブロック図を用いて説明する。ここで、電子制御ユニット27は、回転操作部13,14が互いに中立位置から逆方向に回転操作された場合、例えば、回転操作部13が加速側(右方向)に回転操作されており、回転操作部14が減速側(左方向)に回転操作された場合には、減速側(左方向)への回転操作を優先して有効な操作として採用するものとする。
【0051】
上述したように、電子制御ユニット27は、操作部材10における各回転操作部13,14の回転操作に応じて、車両の車速を設定するための指令値(要求値)を算出する。このため、運転者によって操作部材10の回転操作部13,14が回転操作されると、回転量検出センサ22,23によって回転操作部13,14の回転操作量である回転角θL,θRが検出され、同検出された回転角θL,θRを操作状態判定手段としての操作意思推定部41に出力する。
【0052】
操作意思推定部41は、運転者による回転操作部13,14の回転操作状態の変化が、運転者の意思に基づくものであるか否か、言い換えれば、運転者が意図した回転操作状態の変化か意図せず突発的な回転操作状態の変化かを推定する。具体的には、操作意思推定部41は、入力した回転操作部13,14の回転角θL,θRの時間変化量に基づき、運転者が疲労や他の操作機器を操作するために突発的に回転操作部13または回転操作部14から手を放した結果、回転操作部13または回転操作部14が自動的に中立位置まで復帰動作したか否かを判定して推定する。
【0053】
より詳しく説明すると、操作意思推定部41は、回転量検出センサ22,23から入力した回転角θL,θRについてそれぞれ時間微分し、回転操作部13の時間変化量dθL/dtと回転操作部14の時間変化量dθR/dtとを計算する。そして、操作意思推定部41は、計算した時間変化量dθL/dtと時間変化量dθR/dtとが、それぞれ、図6に示す領域判定マップのいずれの領域に存在するかを判定する。
【0054】
ここで、運転者による操作部材10の操作状態を考えると、通常、運転者は、両手で操作部材10の回転操作部13,14を把持し、それぞれの手で回転操作部13,14を回転操作する。すなわち、運転者は、車両を加速させたい場合には回転操作部13,14を図2における右方向にそれぞれ回転操作し、車両を減速させたい場合には回転操作部13,14を左方向にそれぞれ回転操作する。そして、運転者は、意図して車速Vを変化させる場合には、通常、回転操作部13,14を緩やかに回転操作する。
【0055】
一方、運転席周りに配置された他の操作機器(例えば、エアコンやオーディオなど)を操作する場合には一時的に左右いずれか一方の手を回転操作部13,14から放し、また、手の疲労を感じた場合にも左右いずれか一方の手を一時的に回転操作部13,14から放す。このように、運転者が回転操作部13または回転操作部14から手を放した場合には、上述したように、回転操作部13または回転操作部14は、弾性部材の付勢力によって、中立位置まで早急に自動的に復帰動作する。そして、この場合には、運転者が必ずしも車両の減速を意図しているとは限らない。
【0056】
このように、回転操作部13,14の回転操作状態、特に、中立位置方向への回転操作状態が運転者の減速する意思に基づくものであるか否かは、回転操作部13,14におけるそれぞれの回転操作量の時間変化に基づいて推定することができる。このため、図6に示す領域判定マップは、回転操作部13,14が弾性部材により自動的に中立位置まで復帰するときの時間変化量として予め設定された基準時間変化量dθb/dtによって分割されており、意識的に車両を例えば減速させるように操作される領域(以下、意思操作領域という)と、突発的に回転操作部13,14のうちのいずれか一方の回転操作が解除される領域(以下、片方操作領域という)とから形成される。
【0057】
具体的に運転者の操作状態判定処理を説明すると、操作意思推定部41は、回転量検出センサ22,23から入力した回転角θL,θRを用いて、回転角θLと回転角θRとの差分値の絶対値が予め設定された所定値αよりも大きいか否かを判定する。ここで、差分値の絶対値が所定値α以下である場合には、運転者によって回転操作部13,14がそれぞれ同様に回転操作されている。このため、操作意思推定部41は、差分値の絶対値が所定値α以下である場合は、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて回転操作されている状態であると推定する。
【0058】
次に、操作意思推定部41は、差分値の絶対値が所定値αよりも大きくなる状況が、回転角θL,θRのいずれか一方の値が減少することによって発生したか否かを判定する。ここで、差分値の絶対値が所定値αよりも大きくなる状況が、回転角θL,θRのいずれか一方の値が増加することによって発生した場合には、運転者が車両を加速させることを意図して弾性部材によって付与される反力に抗して回転操作部13,14を操作している状況である。このため、操作意思推定部41は、回転操作部13,14がある程度回転操作されており、差分値の絶対値が所定値αよりも大きい状況において、回転角θL,θRのいずれか一方の値が増加している場合には、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて回転操作されている状態であると推定する。
【0059】
そして、回転角θL,θRのいずれか一方の値が減少している状況において、操作意思推定部41は、図6の領域判定マップを用いて、回転操作部13,14の中立位置方向への回転操作状態が意思操作領域または片方操作領域のいずれに属するかを判定する。具体的に説明すると、操作意思推定部41は、計算した時間変化量dθL/dtの大きさおよび時間変化量dθR/dtの大きさと、基準時間変化量dθb/dtの大きさとを比較する。
【0060】
この比較により、時間変化量dθL/dtおよび時間変化量dθR/dtが基準時間変化量dθb/dtよりも小さければ、言い換えれば、回転操作部13,14が自動的に復帰するときよりも緩やかに回転操作されていれば、操作意思推定部41は、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて操作されている状態であると推定する。一方、操作意思推定部41は、時間変化量dθL/dtまたは時間変化量dθR/dtが基準時間変化量dθb/dt以上であれば、言い換えれば、回転操作部13,14が自動的に復帰する程度に早急に回転していれば、回転操作部13,14の一方が中立位置に自動的に復帰動作しており、回転操作部13,14の他方のみが運転者によって回転操作されている状態であると推定する。なお、以下の説明においては、回転操作部13,14が運転者に意思に基づいて回転操作されている状態を単に意思操作状態ともいう。また、回転操作部13,14の一方が中立位置に自動的に復帰動作しており、回転操作部13,14の他方のみが運転者によって回転操作されている状態を単に片方操作状態ともいう。
【0061】
このように、操作意思推定部41は、回転操作部13,14の回転操作状態の変化、より詳しくは、時間変化量dθL/dtおよび時間変化量dθR/dtの大きさを判定することにより、運転者の意思に基づいて回転操作部13,14が回転操作されていればこの操作状態を表す情報としての意思操作情報を重み係数決定部42に供給する。一方、操作意思推定部41は、運転者が回転操作部13,14の一方から手を離して回転操作部13,14の他方のみを操作していればこの操作状態を表す片方操作情報を重み係数決定部42に供給する。
【0062】
重み係数決定手段としての重み係数決定部42は、後述するように、指令値演算部43により演算される車速を設定するための指令値(要求値)Sに対して、回転操作部13,14の回転角θL,θRの大きさが適切に反映されるように、回転操作部13の回転角θLに対する重み係数KLと回転操作部14の回転角θRに対する重み係数KRを決定する。ここで、重み係数KL,KRは、それぞれ、回転操作部13,14の回転角θL,θRの指令値(要求値)Sに対する割合(寄与度)を表すものであり、下記式2に示す関係が成立する。
KL+KR=1 …式2
【0063】
具体的に説明すると、重み係数決定部42は、操作意思推定部41から意思操作情報を取得すると、前記式2に従い、重み係数KL,KRを、例えば、それぞれ「0.5」に決定する。この場合、重み係数決定部42は、操作意思推定部41から意思操作情報を取得している限りにおいて、重み係数KL,KRの値を変更しない。これにより、運転者が意識的に回転操作部13,14を回転操作している状況においては、回転操作部13,14の回転操作がともに有効となる重み係数KL,KRを決定することができる。そして、重み係数決定部42は、意思操作情報を取得した場合における重み係数KL,KRを決定すると、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。
【0064】
なお、意思操作情報を取得した場合に決定される重み係数KL,KRの大きさに関しては、例えば、過去の運転者による回転操作部13,14の回転操作状態(例示すれば、操作回数や操作時間など)に基づいて、頻繁に回転操作される側の重み係数を大きな値に設定することも可能である。すなわち、意思操作情報を取得した場合に決定される重み係数KL,KRの大きさに関しては、前記式2が成立すれば、異なる値に設定することが可能である。
【0065】
一方、重み係数決定部42は、操作意思推定部41から片方操作情報を取得すると、片方操作状態への移行に伴って現在の車両の走行挙動すなわち車速が急激に減少しないように、重み係数KL,KRを決定する。すなわち、重み係数決定部42は、運転者が手を放すことによって自動的に中立位置に復帰動作している側の回転操作部13(または回転操作部14)に対する重み係数KL(または重み係数KR)の値を小さく決定するとともに、運転者が引き続き継続して回転操作している側の回転操作部14(または回転操作部13)に対する重み係数KR(または重み係数KL)の値を大きく決定する。
【0066】
そして、重み係数決定部42は、片方操作情報を取得した場合における重み係数KL,KRを決定するにあたり、図7に示すように、回転角θL(または回転角θR)の変化に対する重み係数KL(または重み係数KR)の変化を表す特性テーブルを用いて決定する。以下、この特性テーブルを用いた重み係数KL(または重み係数KR)の決定について具体的に説明する。
【0067】
図7に示すように、回転角θL(または回転角θR)の変化に対する重み係数KL(または重み係数KR)の変化特性は、実線で示す第1変化特性と破線で示す第2変化特性に基づいて決定される。すなわち、第1変化特性は、回転角θL(または回転角θR)の変化に対して重み係数KL(または重み係数KR)が「0」〜「1」まで変化する特性である。これに対して、第2変化特性は、第1変化特性の傾きに比して小さく、回転角θL(または回転角θR)の変化に対して重み係数KL(または重み係数KR)が「N」〜「1−N」まで変化する特性である。ただし、Nは「0」よりも大きな値である。
【0068】
そして、これら第1変化特性と第2変化特性は、走行状態にある車両の周辺状況に応じて適宜選択される。すなわち、自車両の前方または後方に車両が存在しないまたは自車両の前方に車両が存在しても十分な車間距離が確保されかつ相対速度が小さいあるいは自車両の後方に車両が存在して車間距離が短ければ、第1変化特性が選択される。そして、重み係数KL(または重み係数KR)は、選択された第1変化特性に基づいて決定される。一方、自車両の前方に車両が存在し車間距離が十分に確保できていないまたは車間距離が十分に確保できていても相対速度が大きいあるいは自車両の後方に車両が存在しなければ、第2変化特性が選択される。そして、重み係数KL(または重み係数KR)は、選択された第2変化特性に基づいて決定される。
【0069】
したがって、重み係数決定部42は、前方車間距離検出センサ34、後方車間距離検出センサ35および車速センサ36から、それぞれ、前方車間距離Lm、後方車間距離Luおよび車速Vを入力する。そして、重み係数決定部42は、自車両と先行車両または後続車両との相対的な位置関係および速度差を判定する。この判定に基づき、重み係数決定部42は、上述した第1変化特性または第2変化特性を選択し、同選択した変化特性に基づいて、回転角θL(または回転角θR)の変化に対する重み係数KL(または重み係数KR)を決定する。そして、重み係数決定部42は、前記式2に従い、決定した重み係数KL(または重み係数KR)の他方の重み係数KR(または重み係数KL)を算出する。このように、重み係数決定部42は、片方操作情報を取得した場合における重み係数KL,KRを決定すると、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。
【0070】
指令値演算手段としての指令値演算部43は、重み係数決定部42によって決定された重み係数KL,KRを用いた下記式3に従って、車速を設定するための指令値(要求値)Sを計算する。
S=θL・KL+θR・KR …式3
ただし、前記式3中のθL,θRは、それぞれ、回転量検出センサ22,23によって検出された回転角である。
【0071】
ここで、前記式3に従って計算される指令値(要求値)Sについて説明する。なお、以下の説明において、理解を容易とするために、運転者によって回転操作部13,14がそれぞれ同一の回転操作量、すなわち、回転角θL,θRがともに等しい場合を初期状態として説明する。
【0072】
まず、運転者が両方の回転操作部13,14を意思操作状態により操作している場合から説明する。運転者が減速を意図して回転操作部13(または回転操作部14)を中立位置まで回転操作すると、回転角θL(または回転角θR)は「0」まで変化する。このとき、上述したように、意思操作情報を取得した重み係数決定部42によって決定される重み係数KL,KRは、例えば、それぞれ「0.5」に設定されるため、前記式3に従って計算される指令値(要求値)Sは、初期状態に比して半分の大きさとなる。
【0073】
この場合、回転操作部14(または回転操作部13)が加速側に回転操作されていれば、図8にて実線で示すように、回転操作部13(または回転操作部14)の中立方向への回転操作に伴って車両の車速は一様に減少した後、回転操作部14(または回転操作部13)の回転操作量すなわち回転角θR(または回転角θL)の大きさに基づいて車速が一定に維持される。したがって、この場合においては、運転者が回転操作部13(または回転操作部14)を中立位置に戻して車速を減少させるという意思が適切に反映されることになる。なお、回転操作部13,14をともに中立位置まで復帰させた場合には、指令値(要求値)Sが「0」となることはいうまでもない。
【0074】
次に、運転者が疲労または他の操作機器を操作することにより、回転操作部13(または回転操作部14)から手を放した状態すなわち片方操作状態を説明する。運転者が突発的に回転操作部13(または回転操作部14)から手を放すと、弾性部材による付勢力によって、手を放した側の回転操作部13(または回転操作部14)は、中立位置まで早急に自動的に復帰動作する。このとき、重み係数決定部42において決定される重み係数KL(または重み係数KR)は、上述した第1変化特性または第2変化特性に基づいて決定される。すなわち、例えば、自車両の周囲に車両が存在しない、言い換えれば、自車両と衝突する可能性のある車両が存在していなければ、重み係数KL(または重み係数KR)は、第1変化特性に基づいて決定される。
【0075】
これにより、重み係数KL(または重み係数KR)は、例えば、「0.5」から「0」まで減少する。一方、重み係数KR(または重み係数KL)は、前記式2に従って、例えば、「0.5」から「1」まで増加する。その結果、前記式3に従って計算される指令値(要求値)Sは、初期状態と同一の大きさとなる。この場合、回転操作部14(回転操作部13)が加速側に回転操作されていれば、図8にて破線で示すように、回転操作部13(回転操作部14)が中立位置に自動的に復帰動作しても車速の変化は良好に抑制される。なお、図8に示すように、操作意思推定部41による運転者の操作状態変化の推定(判定)および重み係数決定部42による重み係数の決定に必要な時間Δt間において、車速は一時的に減少するものの、その後、初期状態における車速まで復帰する。
【0076】
また、例えば、衝突する可能性のある車両が自車両の周囲に存在していれば、重み係数KL(または重み係数KR)は、第2変化特性に基づいて決定される。これにより、重み係数KL(または重み係数KR)は、例えば、「0.5」から「N(≠0)」まで減少する。一方、重み係数KR(または重み係数KL)は、前記式2に従って、例えば、「0.5」から「1−N」まで増加する。その結果、前記式3に従って計算される指令値(要求値)Sは、初期状態に比して(1−N)倍の大きさとなる。この場合、回転操作部14(回転操作部13)が加速側に回転操作されていれば、図8にて一点鎖線で示すように、回転操作部13(回転操作部14)の中立方向への復帰動作に伴って車両の車速は一様に減少した後、回転操作部14(回転操作部13)の回転操作量すなわち回転角θR(回転角θL)が(1−N)倍された大きさに基づいて車速が極めて緩やかに減少する。したがって、この場合においては、車速の急激な変化が良好に抑制されるとともに、自車両の周辺状況に応じて、車速を適切に設定できる。
【0077】
そして、指令値演算部43は指令値(要求値)Sを計算すると、計算した指令値(要求値)Sを指令値出力部44に供給する。指令値出力部44は、計算された指令値(要求値)Sを、通信回線Aを介して、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34に出力する。これにより、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34は、指令値出力部44によって出力された指令値(要求値)Sに基づき、エンジンの出力およびブレーキ装置の作動を互いに協調して制御する。したがって、回転操作部13,14の回転操作状態に基づいて計算される指令値(要求値)Sに対応した車速で車両を走行させることができる。
【0078】
ところで、上述したように、運転者が回転操作部13,14の一方の回転操作を解除した状態から回転操作部13,14の両方の回転操作を再開した場合には、以下に説明するように、電子制御ユニット27は指令値(要求値)Sを計算する。以下、運転者が両手で回転操作部13,14の操作を再開した場合を具体的に説明する。
【0079】
操作意思推定部41は、回転角θL,θRの差分値の絶対値が所定値αよりも大きい状態において、回転角θL,θRのいずれか一方の値が「0」であれば、重み係数決定部42に対して片方操作情報を供給する。そして、操作意思推定部41は、回転角θL,θRのいずれか一方の値が「0」から順次増加し、回転角θL,θRの差分値の絶対値が所定値α以下(より好ましくは、差分値の絶対値が略「0」)となると、重み係数決定部42に対して意思操作情報を供給する。
【0080】
重み係数決定部42は、片方操作情報を取得した場合には、上述したように、重み係数KL,KRの変化特性としての第1変化特性または第2変化特性を選択する。そして、重み係数決定部42は、「0」となっている回転角θLまたは回転角θRの値の増加に対して、設定した第1変化特性または第2変化特性に基づいて重み係数KLまたは重み係数KRを決定するとともに、前記式2に従って重み係数KRまたは重み係数KLを決定する。一方、重み係数決定部42は、意思操作情報を取得した場合には、上述したように、重み係数KL,KRをそれぞれ、例えば、「0.5」に決定する。そして、重み係数決定部42は、決定した重み係数KL,KRを指令値演算部43に供給する。
【0081】
指令値演算部43は、供給された重み係数KL,KRを用いて、前記式3に従って指令値(要求値)Sを計算し、指令値出力部44は、計算された指令値(要求値)Sをエンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34に出力する。これにより、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34は、指令値出力部44によって出力された指令値(要求値)Sに基づき、エンジンの出力およびブレーキ装置の作動を互いに協調して制御する。
【0082】
以上の説明からも理解できるように、本実施形態によれば、操作意思推定部41によって運転者が回転操作部13,14のうちのいずれか一方から手を放したことが判定されると、重み係数決定部42は、手を放した側の回転操作部13の回転角θL(または回転操作部14の回転角θR)に対する重み係数KL(または重み係数KR)の値を減少させ、把持している側の回転操作部14の回転角θR(または回転操作部13の回転角θL)に対する重み係数KR(または重み係数KL)の値を増加させて決定することができる。そして、このように決定された重み係数KL,KRと回転操作部13の回転角θLおよび回転操作部14の回転角θRとを用いて、指令値演算部43は、車両の車速を設定するための指令値(要求値)Sを演算することができる。
【0083】
これにより、演算される指令値(要求値)Sに対して、運転者が回転操作部13から手を放していれば回転角θLの割合(寄与度)を小さくするとともに、回転操作部14の回転角θRの割合(寄与度)を大きくすることができる。この結果、運転者が一時的に回転操作部13(または回転操作部14)手を放した場合であっても、回転操作部13(または回転操作部14)の回転角θL(または回転角θR)分だけ、指令値(要求値)Sに対する回転操作部14(または回転操作部13)の回転角θR(回転角θL)を相対的に大きくすることができるため、演算される指令値(要求値)Sの変化を小さくすることができる。したがって、運転者が回転操作部13または回転操作部14から手を放すことに起因する意図しない車両の急激な車速の変化を良好に抑制することができる。
【0084】
また、運転者によって回転操作部13,14のうちの一方から一旦手が放された片方操作状態から、ふたたび、回転操作部13,14をそれぞれの手で操作を開始する意思操作状態に移行する場合においても、重み係数KL,KRを適切に決定することができる。このため、回転操作部13の回転角θLおよび回転操作部14の回転角θRを演算される指令値(要求値)Sに適切に反映させることができる。これにより、運転者は、独立的に操作できる回転操作部13,14の利点を享受することができるとともに、車両の車速を設定するにあたり、回転操作部13,14のどちらの回転操作が有効であるかを意識する必要がない。
【0085】
a.第1変形例
上記実施形態においては、操作意思推定部41が、回転操作部13,14の回転操作量としての回転角θL,θRの時間変化量に基づいて、運転者の回転操作部13,14に対する回転操作状態を推定して判定するように実施した。より具体的には、回転角θL,θR間の差分値の絶対値が所定値αよりも大きい場合であって、回転操作部13の時間変化量dθL/dtまたは回転操作部14の時間変化量dθR/dtが基準時間変化量dθb/dtよりも大きい場合には、操作意思推定部41は、運転者が回転操作部13,14の一方から突発的に手を放した回転操作状態であると推定して判定するように実施した。
【0086】
この操作意思推定部41による操作状態の推定に代えてまたは加えて、物理的に運転者が回転操作部13,14から手を放したか否かを検出して判定するように実施することも可能である。以下、この第1変形例を詳細に説明する。
【0087】
この第1変形例においては、図9に示すように、操作部材10の操作部本体12に対して、運転者による回転操作部13,14の回転操作状態を画像として検出するための左右一対の画像検出センサ28が設けられている。画像検出センサ28は、運転者の手と回転操作部13,14との相対的な位置関係、より詳しくは、運転者の手が回転操作部13,14から離れたか否かを画像処理して検出する。そして、画像検出センサ28は、運転者の手が回転操作部13,14を把持している状態を表す把持情報と、運転者の手が回転操作部13,14の一方から離間している状態を表す離間情報とを電子制御ユニット27に出力するようになっている。
【0088】
そして、この第1変形例においては、図5に示すように、操作意思推定部41は、画像検出センサ28から出力された把持情報または離間情報に基づいて、重み係数決定部42に対し、意思操作情報または片方操作情報を供給する。すなわち、操作意思推定部41は、把持情報を取得していれば、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて回転操作されているとして、意思操作情報を供給する。一方、操作意思推定部41は、離間情報を取得していれば、運転者が回転操作部13,14の一方から手を放しており、回転操作部13,14の他方のみが回転操作されているとして、片方操作情報を供給する。ここで、運転者が手を放した側の回転操作部13,14においては、上述したように、弾性部材による付勢力によって、自動的に早急に中立位置に復帰動作することはいうまでもない。なお、この第1変形例における重み係数決定部42、指令値演算部43および指令値出力部44の動作については、上記実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0089】
このように、第1変形例においては、運転者が回転操作部13,14を把持しているか回転操作部13,14から手を放しているか、言い換えれば、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて回転操作されているか否かをより確実に判定することができる。したがって、運転者の意思を良好に反映して、車両の走行挙動を制御することができる。また、その他の効果については、上記実施形態と同様である。
【0090】
上記第1変形例においては、運転者による回転操作部13,14の把持状態を物理的に画像として検出する画像検出センサ28を設けて実施した。これに代えて、または、加えて、運転者が回転操作部13,14を把持するときの圧力を検出して実施することも可能である。この場合においては、図10に示すように、回転操作部13,14に対して、運転者が把持したときの圧力(把持力)を検出して出力する左右一対の圧力センサ29が設けられている。
【0091】
そして、この場合には、操作意思推定部41が、図5に示すように、圧力センサ29によって検出された回転操作部13,14のそれぞれに対応する圧力値に基づいて、重み係数決定部42に対し、意思操作情報または片方操作情報を供給する。すなわち、操作意思推定部41は、取得したそれぞれの圧力値が、回転操作部13,14を回転操作するために必要な圧力として予め設定された所定の圧力値よりも大きければ、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて回転操作されているとして、意思操作情報を供給する。一方、操作意思推定部41は、取得したそれぞれの圧力値のうちの一方が所定の圧力値以下であれば、運転者が回転操作部13,14の一方から手を放しており、回転操作部13,14の他方のみが回転操作されているとして、片方操作情報を供給する。
【0092】
このように、圧力センサ29を設けた場合であっても、運転者が回転操作部13,14を把持しているか回転操作部13,14から手を放しているか、言い換えれば、回転操作部13,14が運転者の意思に基づいて回転操作されているか否かをより確実に判定することができる。したがって、運転者の意思を良好に反映して、車両の走行挙動を制御することができる。また、圧力センサ29を設ける場合には、画像検出センサ28を設ける場合に比して、構成を簡略化することができるとともに製造コストを低減することもできる。また、その他の効果については、上記実施形態と同様である。
【0093】
b.第2変形例
上記実施形態においては、重み係数決定部42が、自車両の周辺状況、より詳しくは、自車両の前方または後方に存在する車両との相対的な位置関係や相対的な速度差に基づいて、重み係数KL,KRを決定するための第1変化特性と第2変化特性とを選択するように実施した。これに代えて、または、加えて、車両が走行している道路状況に基づいて、第1変化特性と第2変化特性とを選択するように実施することも可能である。以下、この第2変形例を詳細に説明する。
【0094】
この第2変形例においては、図11に示すように、通信回線Aに接続されたナビゲーション装置50が設けられている。なお、ナビゲーション装置50の構成およびその動作に関しては、本発明と直接関係しないため、以下に簡単に説明しておく。
【0095】
ナビゲーション装置50は、通信回線Aに接続されて電子制御ユニット27と通信可能なナビゲーション制御ユニット51と、このナビゲーション制御ユニット51に接続されるGPS(Global Positioning System)受信機52、ジャイロスコープ53および記憶装置54とで構成されている。ナビゲーション制御ユニット51は、CPU、EEPROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としており、各種プログラムを実行してナビゲーション装置50の作動を統括的に制御する。GPS受信機52は、自車両の現在位置を検出するための電波を衛星から受信し、検出した自車両の現在位置を例えば座標データとして出力する。ジャイロスコープ53は、自車両の進行方向を検出するための車両の旋回速度を検出して出力する。記憶装置54は、ナビゲーション制御ユニット51によって実行される各種プログラムを記憶するとともに、全国に存在する道路の位置を表す地図情報、高速道路や国道、県道などの道路種別を表す道路種別情報および車線数やカーブ半径、道路勾配などの道路形状を表す道路形状情報を互いに関連付けて記憶している。そして、ナビゲーション制御ユニット51は、自車両の現在位置を検出すると、検出した現在位置に対応する道路種別情報および道路形状情報を記憶装置54から取得して電子制御ユニット27に出力するようになっている。
【0096】
そして、この第2変形例においては、重み係数決定部42は、操作意思推定部41から片方操作情報を取得した場合には、ナビゲーション装置50のナビゲーション制御ユニット51から出力された道路種別情報および道路形状情報に基づいて、第1変化特性または第2変化特性を選択する。具体的に説明すると、重み係数決定部42は、取得した道路種別情報に基づいて例えば車両が高速道路のように自動車専用道路を走行しており、取得した道路形状情報に基づいて例えば前方にカーブがなく車両が上り坂を走行しているなど、車速を維持する必要がある場合には、第1変化特性を選択する。
【0097】
これにより、重み係数決定部42は、選択した第1変化特性に基づいて、回転角θL(または回転角θR)の変化に対する重み係数KL(または重み係数KR)を決定する。そして、重み係数決定部42は、前記式2に従い、決定した重み係数KL(または重み係数KR)の他方の重み係数KR(または重み係数KL)を算出する。このように、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRを決定すると、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。
【0098】
また、重み係数決定部42は、取得した道路種別情報に基づいて例えば車両が国道や県道を走行しており、取得した道路形状情報に基づいて例えば前方にカーブがあり車両が下り坂を走行しているなど、減速する必要がある場合には、第2変化特性を選択する。そして、重み係数決定部42は、選択した第2変化特性に基づいて、回転角θL(または回転角θR)の変化に対する重み係数KL(または重み係数KR)の変化を決定する。これにより、重み係数決定部42は、前記式2に従い、決定した重み係数KL(または重み係数KR)の他方の重み係数KR(または重み係数KL)を算出する。
【0099】
このように、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRを決定すると、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。なお、この第2変形例における操作意思推定部41、指令値演算部43および指令値出力部44の動作については、上記実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0100】
このように、第2変形例においては、車両が走行している道路状況に応じて、重み係数KL,KRを決定することができる。したがって、運転者の意思を良好に反映するとともに、走行している道路の形状などに応じて適切に車両の走行挙動すなわち車速を制御することができる。また、その他の効果については、上記実施形態と同様である。
【0101】
c.第3変形例
上記実施形態においては、重み係数決定部42が、自車両の周辺状況に基づいて、重み係数KL,KRを決定するための第1変化特性と第2変化特性とを選択するように実施した。これに代えて、または、加えて、重み係数決定部42が運転者の運転特性や車両の特性に基づいて、第1変化特性と第2変化特性とを選択するように実施することも可能である。以下、この第3変形例を詳細に説明する。
【0102】
この第3変形例においては、電子制御ユニット27は、車両の走行に伴って前方車間距離検出センサ24によって検出される先行車両と自車両との間の前方車間距離Lmの例えば平均値をEEPROM内の所定の記憶位置に記憶するようになっている。ここで、検出された前方車間距離Lmの平均値を記憶するにあたり、電子制御ユニット27は現在運転している運転者に関連付けて記憶する。
【0103】
具体的には、電子制御ユニット27は、予め登録された運転者特定情報を用い、例えば、運転者が所持するスマートキーやイグニッションキーなど個人認証が可能な手段あるいは個人別に設けられた設定スイッチ操作などに基づいて、現在の運転者を認証する。そして、電子制御ユニット27は、認証した運転者の運転者特定情報に関連付けて走行時に検出された前方車間距離Lmの平均値をEEPROM内に記憶する。これにより、現在の車両の運転者が、例えば、先行する車両との間の車間距離を短めに確保する運転スタイルを好むか、車間距離を長めに確保する運転スタイルを好むかを判断することができる。なお、以下の説明において、運転者特定情報に関連付けられた前方車間距離Lmの平均値を運転特性情報という。
【0104】
そして、この第3変形例においては、重み係数決定部42は、操作意思推定部41から片方操作情報を取得した場合には、運転者ごとにEEPROM内に記憶した運転特性情報と車両の特性情報とを取得する。ここで、車両の特性情報とは、例えば、車種ごとに予め設定される加速性能や減速性能などであり、EEPROM内の所定記憶位置に予め記憶されるものである。これら運転者の運転特性情報および車両の特性情報を取得すると、重み係数決定部42は、取得したこれらの情報に基づいて、第1変化特性または第2変化特性を選択する。
【0105】
具体的に説明すると、重み係数決定部42は、取得した運転特性情報に基づいて、例えば、運転者が短めの車間距離を好む場合には第1変化特性を選択し、長めの車間距離を好む場合には第2変化特性を選択する。また、重み係数決定部42は、取得した車両の特性情報に基づいて、加減速性能に優れた車両である場合には、例えば、第2変化特性を選択し、加減速性能の優れない車両である場合には、例えば、第1変化特性を選択する。そして、重み係数決定部42は、選択した第1変化特性または第2変化特性に基づいて、回転角θL(または回転角θR)の変化に対する重み係数KL(または重み係数KR)を決定する。そして、重み係数決定部42は、前記式2に従い、決定した重み係数KL(または重み係数KR)の他方の重み係数KR(または重み係数KL)を算出する。このように、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRを決定すると、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。
【0106】
このように、第3変形例においては、運転者の運転特性や車両の特性に応じて、重み係数KL,KRを決定することができる。したがって、運転者の意思をより良好に反映することができる。また、その他の効果については、上記実施形態と同様である。
【0107】
d.第4変形例
上記実施形態においては、運転者が両手で回転操作部13,14の回転操作を再開した場合、回転角θL,θRの差分値の絶対値が所定値α以下(より好ましくは、差分値の絶対値が略「0」)となるまでは、重み係数決定部42が第1変化特性または第2変化特性に基づいて、回転操作が再開された側の回転操作部13(または回転操作部14)の重み係数KL(または重み係数KR)を増加させるように実施した。そして、差分値の絶対値が所定値α以下となると、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRをそれぞれ、例えば、「0.5」に決定するように実施した。
【0108】
これに対して、重み係数決定部42が、回転操作の再開された側の回転操作部13(または回転操作部14)の回転角θL(または回転角θR)が、継続して回転操作されている他方の回転操作部14(または回転操作部13)の回転角θR(または回転角θL)と略一致するまで、重み係数KL(または重み係数KR)を「0」(または「N」)に維持するように実施することも可能である。以下、この第4変形例を詳細に説明する。
【0109】
この第4変形例においても、操作意思推定部41は、回転角θL,θRの差分値の絶対値が所定値αよりも大きい状態において、回転角θL,θRのいずれか一方の値が「0」であれば、重み係数決定部42に対して片方操作情報を供給する。そして、操作意思推定部41は、「0」となっている回転角θL(または回転角θR)の値が増加し、回転角θL,θRの差分値の絶対値が略「0」すなわち回転角θL,θRが略一致すると、重み係数決定部42に対して意思操作情報を供給する。
【0110】
そして、この第4変形例における重み係数決定部42も、片方操作情報を取得した場合には、上述したように、重み係数KL,KRの変化特性としての第1変化特性または第2変化特性を選択する。しかし、重み係数決定部42は、片方操作情報を取得している限りにおいては、回転操作が再開された側の回転操作部13(または回転操作部14)の回転角θL(または回転角θR)の値が増加しても、重み係数KL(または重み係数KR)を、第1変化特性を選択した場合は「0」、第2変化特性を選択した場合は「N(≠0)」として決定し続ける。なお、重み係数決定部42は、重み係数KL(または重み係数KR)を「0」(または「N」)に維持する場合であっても、前記式2に従って、他方の重み係数KR(または重み係数KL)を決定することはいうまでもない。
【0111】
この状態において、操作意思推定部41から意思操作情報を取得すると、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRをそれぞれ、例えば、「0.5」に決定する。なお、この第4変形例における指令値演算部43および指令値出力部44の動作については、上記実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
このように、第4変形例においては、回転操作部13,14の回転角θL,θRが略一致した時点で片方操作状態から意思操作状態に移行する。これにより、回転操作が再開された側の回転角θL(または回転角θR)が増加するときの指令値(要求値)Sに対する影響を極めて小さくすることができる。したがって、指令値(要求値)Sに基づいて設定される車両の走行挙動すなわち車速の変動を極めて小さくすることができて、運転者が違和感を覚えにくくすることができる。また、その他の効果については、上記実施形態と同様である。
【0113】
e.第5変形例
上記実施形態においては、運転者が両手で回転操作部13,14の回転操作を再開した場合、重み係数決定部42が第1変化特性または第2変化特性に基づいて、回転操作が再開された側の回転操作部13(または回転操作部14)の重み係数KL(または重み係数KR)を増加させるように実施した。そして、重み係数決定部42は、継続して回転操作されている他方の回転操作部14(回転操作部13)の重み係数KR(または重み係数KL)を、前記式2が成立するように決定するように実施した。このように、前記式2が成立するように重み係数KL,KRを決定することによって、車両の走行挙動を乱すことなく、運転者は両手操作を再開することができる。
【0114】
ところで、運転者が、例えば、回転操作部13の回転操作を一旦中断して片方操作状態とした後、回転操作部13の回転操作を再開した場合においては、運転者は、車両を加速させることを意図している場合がある。以下、この運転者による加速意思を重視した第5変形例を以下に詳細に説明する。
【0115】
この第5変形例においても、操作意思推定部41は、回転角θL,θRの差分値の絶対値が所定値αよりも大きい状態において、回転角θL,θRのいずれか一方の値が「0」であれば、重み係数決定部42に対して片方操作情報を供給する。そして、操作意思推定部41は、回転角θL(または回転角θR)の値が増加し、回転角θL,θRの差分値の絶対値が所定値α以下(より好ましくは、差分値の絶対値が略「0」)となると、重み係数決定部42に対して意思操作情報を供給する。
【0116】
また、この第5変形例における重み係数決定部42も、片方操作情報を取得した場合には、上述したように、重み係数KL,KRの変化特性としての第1変化特性または第2変化特性を選択する。そして、重み係数決定部42は、回転操作が再開された側の回転操作部13(または回転操作部14)の回転角θL(または回転角θR)の値が増加に対して、選択した第1変化特性または第2変化特性に基づき、重み係数KL(または重み係数KR)を決定する。
【0117】
このとき、重み係数決定部42は、重み係数KL(または重み係数KR)決定に対して、継続して回転操作されている回転操作部14(または回転操作部13)の回転角θR(または回転角θL)に対する重み係数KR(または重み係数KL)の値を変更しない。すなわち、この第5変形例における重み係数決定部42は、KL+KR>1となる関係を許容する。そして、重み係数決定部42は、KL+KR>1となる関係を許容して決定した重み係数KL,KRを指令値演算部43に供給する。
【0118】
このように、重み係数KL,KRが供給されると、指令値演算部43は、前記式3に従って指令値(要求値)Sを計算し、同計算した指令値(要求値)Sを指令値出力部44を介して、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34出力する。ここで、指令値演算部43によって計算される指令値(要求値)Sは、初期状態に比して大きな値となる。より具体的には、運転者が回転操作を再開した側の回転操作部13(回転操作部14)の回転操作量の増大に伴って、指令値(要求値)Sは初期状態に比して大きな値となる。
【0119】
これにより、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34が、大きな値に計算された指令値(要求値)Sに基づき、エンジンの出力およびブレーキ装置の作動を互いに協調して制御すると、車両は運転者の加速意思を良好に反映して加速することになる。そして、運転者は、加速意思を反映して加速した車両に対して、回転操作部13,14を適宜回転操作することにより、所望の車速で車両を走行させることができる。
【0120】
ただし、重み係数決定部42は、回転操作部13,14がともに中立位置に復帰したときには、KL+KR>1となる関係の成立を禁止するようになっている。すなわち、重み係数決定部42は、一旦、回転操作部13,14がともに中立位置に復帰すると、上記実施形態と同様に、ふたたび、片方操作情報を取得するまでは、前記式2が成立するように重み係数KL,KRを決定する。
【0121】
このように、第5変形例においては、運転者が両手操作を再開したときに、運転者の加速意思を車両の走行挙動に良好に反映させることができる。したがって、運転者は、極めて良好な走行フィーリングを得ることができる。また、その他の効果については、上記実施形態と同様である。
【0122】
ここで、上記第5変形例においては、重み係数決定部42が、回転操作部13,14がともに中立位置に復帰したときに、KL+KR>1となる関係の成立を禁止するように実施した。これに代えて、または、加えて、例えば、回転操作が再開された回転操作部13(または回転操作部14)の回転角θL(または回転角θR)が予め設定された所定の大きさとなった時点で、重み係数決定部42がKL+KR>1となる関係の成立を禁止するようにしてもよい。これにより、運転者による加速意思を良好に反映しつつ、車両を適度に加速させることができる。
【0123】
また、運転者の加速意思を反映させて車両を加速させる場合、重み係数決定部42が車両の周辺状態に応じて、KL+KR>1となる関係の成立を許容するように実施することも可能である。すなわち、重み係数決定部42は、前方車間距離検出センサ34、後方車間距離検出センサ35および車速センサ36によってそれぞれ検出された前方車間距離Lm、後方車間距離Luおよび車速Vを入力する。そして、例えば、自車両の前方に車両が存在しないまたは自車両の前方に車両が存在しても十分な車間距離が確保されかつ相対速度が小さければ、重み係数決定部42は、KL+KR>1となる関係の成立を許容する。
【0124】
一方、例えば、自車両の前方に車両が存在し車間距離が十分に確保できていないまたは車間距離が十分に確保できていても相対速度が大きければ、重み係数決定部42は、KL+KR>1となる関係の成立を禁止する。この場合には、上記実施形態と同様に、重み係数決定部42は、前記式2が成立するように、重み係数KL,KRを決定する。
【0125】
このように、自車両の周辺状況を考慮することにより、加速可能な場合には、運転者による加速意思を良好に反映して車両を加速させることができる。また、加速不能な場合には、無用な加速を抑制することができる。
【0126】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0127】
例えば、上記実施形態および各変形例においては、回転操作部13,14がシャフト11に一体的に組み付けられた操作部本体12に形成して実施した。しかし、運転者によって独立的に操作可能であれば、例えば、運転席周りに配置されて傾倒動作可能なジョイスティックタイプの操作部本体に対して回転操作部を形成するようにしてもよい。
【0128】
また、上記実施形態および各変形例においては、第1および第2操作手段として運転者の両手によって回転操作される回転操作部13,14を設けて実施した。しかし、運転者の両手によって操作可能であれば、例えば、レバータイプやジョイスティックタイプなどいかなるものを用いてもよい。この場合、第1および第2操作手段としてジョイスティックを採用した場合において、これらのジョイスティックの前後方向操作により車両の前後方向の走行挙動(例えば、車速)を設定し、左右方向操作により車両の左右方向の走行挙動(例えば、旋回量)を設定するときには、前後左右の操作についてそれぞれ重み係数を決定するように実施することも可能である。また、上記実施形態および各変形例においては、左右一対の回転操作部13,14を設けて実施した。しかし、運転者が同時に独立的に操作できるように設けられていれば、その数に関してはいくつであってもよい。
【0129】
さらに、上記実施形態および各変形例においては、操作入力値として、回転操作部13,14の回転操作量を表す回転角θL,θRを採用して実施した。しかし、運転者が操作入力可能であればいかなる値を用いてもよく、例えば、回転操作部13,14を回転操作するときの操作力を操作入力値として採用して実施することも可能である。この場合、運転者が回転操作部13,14を回転操作することによって入力された操作力を検出する力検出センサが設けられ、同センサによって検出されるそれぞれの操作力の大きさに基づいて、操作意思推定部41は運転者の意思を推定し、重み係数決定部42はそれぞれの操作力に対する重み係数を決定し、さらに、指令値演算部43はそれぞれの操作力および重み係数を用いて指令値(要求値)Sを計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の操作装置の概略図である。
【図2】運転者によって操作される操作部材をより具体的に示す斜視図である。
【図3】操舵角と反力トルクの関係を示すグラフである。
【図4】車速と操舵ゲインの関係を示すグラフである。
【図5】図1の電子制御ユニットにて実行されるコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。
【図6】図4の操作意思推定部が意思操作領域と片方操作領域とを判定するために利用する領域マップを概略的に示した図である。
【図7】図4の重み係数決定部が片方操作状態において決定する重み係数の変化特性を表す特性マップを概略的に示した図である。
【図8】図4の指令値演算部によって計算される指令値(要求値)に応じた車速の時間変化を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態の第1変形例に係り、画像検出センサを設けた操作部材を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の第1変形例に係り、圧力センサを設けた操作部材を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態の第2変形例に係り、車両に搭載されたナビゲーション装置の構成を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0131】
10…操作部材、11…シャフト、12…操作部本体、13,14…回転操作部、20…電気制御部、21…操舵角センサ、22,23…回転量検出センサ、24…前方車間距離センサ、25…後方車間距離センサ、26…車速センサ、27…電子制御ユニット、28…画像検出センサ、29…圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって把持されてそれぞれ独立的に操作される第1操作手段および第2操作手段と、同第1操作手段および第2操作手段の各操作に応じて、車両の走行挙動を設定するための指令値を出力する制御装置とを備えた車両の操作装置において、前記制御装置を、
前記第1操作手段の操作量を検出する第1操作量検出手段と、
前記第2操作手段の操作量を検出する第2操作量検出手段と、
運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定する操作状態判定手段と、
前記指令値に対する前記第1操作手段の検出操作量の寄与度を表す第1重み係数および前記指令値に対する前記第2操作手段の検出操作量の寄与度を表す第2重み係数を決定するものであって、前記操作状態判定手段によって運転者が手を放した状態であると判定された前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を減少させるとともに、運転者が把持している前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を増加させて決定する重み係数決定手段と、
前記決定された第1重み係数を反映した前記第1操作手段の検出操作量と、前記決定された第2重み係数を反映した前記第2操作手段の検出操作量とを用いて前記指令値を演算する指令値演算手段とで構成したことを特徴とする車両の操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記操作状態判定手段は、
前記第1操作量検出手段によって検出された前記第1操作手段の操作量の時間変化量および前記第2操作量検出手段によって検出された前記第2操作手段の操作量の時間変化量に基づいて、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項3】
請求項1に記載した車両の操作装置において、前記制御装置は、さらに、
運転者による前記第1操作手段および前記第2操作手段の把持状態の変化を検出する把持状態検出手段を備えており、
前記操作状態判定手段は、
前記把持状態検出手段によって検出された前記第1操作手段の把持状態の変化および前記第2操作手段の把持状態の変化に基づいて、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項4】
請求項3に記載した車両の操作装置において、
前記把持状態検出手段は、
運転者による前記第1操作手段および前記第2操作手段の把持状態を画像として検出する画像検出手段または運転者による前記第1操作手段および前記第2操作手段の把持状態における力を検出する力検出手段であることを特徴とする車両の操作装置。
【請求項5】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記操作状態判定手段は、
前記第1操作量検出手段によって検出された前記第1操作手段の操作量と前記第2操作量検出手段によって検出された前記第2操作手段の操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値よりも大きいときに、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方から手を放した状態であるか否かを判定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項6】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段が決定する前記第1重み係数と前記第2重み係数とは、それぞれ、前記第1操作手段の検出操作量と前記第2操作手段の検出操作量との前記指令値に対する割合を表すことを特徴とする車両の操作装置。
【請求項7】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記第1操作手段および前記第2操作手段は、それぞれ、運転者による操作に対して中立位置方向に反力を付与する反力機構が組み付けられており、
前記操作状態判定手段は、
前記第1操作手段および前記第2操作手段の操作状態を、運転者が意思に基づいて前記付与された反力に抗して前記第1操作手段および前記第2操作手段を操作する意思操作状態であるか、前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの一方が前記反力によって自動的に中立位置に復帰動作し、運転者が前記第1操作手段および前記第2操作手段のうちの他方のみを前記付与された反力に抗して操作する片方操作状態であるかを判定し、
前記重み係数決定手段は、
前記操作状態判定手段によって判定された意思操作状態または片方操作状態に応じて、前記第1重み係数および前記第2重み係数を決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項8】
請求項7に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
前記操作状態判定手段による判定に基づき、前記第1操作手段および前記第2操作手段の操作状態が前記意思操作状態であるときは、前記第1重み係数および前記第2重み係数をそれぞれ所定の設定値に決定し、
前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作状態が前記片方操作状態であるときは、自動的に前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を減少させるとともに、運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を増加させて決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項9】
請求項8に記載した車両の操作装置において、前記制御装置は、さらに、
車両の進行方向における前後方向に存在する物体と自車両との相対的な位置関係を検出する相対位置検出手段を備えており、
前記重み係数決定手段は、
前記操作状態判定手段によって前記片方操作状態であると判定されると、前記相対位置検出手段によって検出された前記相対的な位置関係に基づき、前記物体と自車両とが離間しているときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を大きな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を大きな変化量で増加させ、前記物体と自車両とが近接しているときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を小さな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を小さな変化量で減少させて決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項10】
請求項8に記載した車両の操作装置において、前記制御装置は、さらに、
車両が走行している道路の形状を検出する道路形状検出手段を備えており、
前記重み係数決定手段は、
前記操作状態判定手段によって片方操作状態であると判定されると、前記道路形状検出手段によって検出された道路の形状に応じて、車両の車速を維持するときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を大きな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を大きな変化量で増加させ、車両の車速を減速するときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を小さな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を小さな変化量で減少させて決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項11】
請求項10に記載した車両の操作装置において、
前記道路形状検出手段を、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
道路の形状に関する情報を記憶した記憶手段と、
前記検出された車両の現在位置に基づいて、前記記憶手段に記憶された道路の形状に関する情報を検索する検索手段と、
前記検索手段によって検索された道路の形状に関する情報を出力する出力手段とで構成したことを特徴とする車両の操作装置。
【請求項12】
前記道路形状検出手段は、車両が走行している道路の勾配およびカーブ半径のうちの少なくとも一方を検出するものである請求項9または請求項11に記載した車両の操作装置。
【請求項13】
請求項8に記載した車両の操作装置において、前記制御装置は、さらに、
運転者が車両を運転するときに必要とする先行車両との相対的な位置関係を表す運転特性を判定する運転特性判定手段と、
車両の走行特性を表す車両走行特性情報を記憶する車両特性情報記憶手段とを備えており、
前記重み係数決定手段は、
前記操作状態判定手段によって片方操作状態であると判定されると、前記運転特性判定手段によって判定された前記運転特性および前記車両特性情報記憶手段に記憶された車両走行特性情報に基づき、前記先行車両と自車両とを近接させるときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を大きな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を大きな変化量で増加させ、前記先行車両と自車両とを離間させるときには前記中立位置まで復帰動作している前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数を小さな変化量で減少させるとともに運転者が前記付与された反力に抗して操作する前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を小さな変化量で減少させて決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項14】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
運転者が、前記把持している前記第2操作手段または前記第1操作手段の操作方向にて、前記手を放した状態であると判定された前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作を再開したときは、
前記減少させて決定した前記第1重み係数または前記第2重み係数を前記操作の再開された前記第1操作手段の検出操作量の増大または前記第2操作手段の検出操作量の増大に伴って増加させ、前記第1重み係数または前記第2重み係数の増加に伴って運転者が前記把持している前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数を減少させて決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項15】
請求項14に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
前記第1操作手段の検出操作量と前記第2操作手段の検出操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値以下となったときに、前記第1重み係数と前記第2重み係数とをそれぞれ所定の設定値に決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項16】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
運転者が、前記把持している前記第2操作手段または前記第1操作手段の操作方向にて、前記手を放した状態であると判定された前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作を再開したときは、
前記操作の再開された前記第1操作手段の検出操作量または前記第2操作手段の検出操作量と前記把持している前記第2操作手段の検出操作量または前記第1操作手段の検出操作量との差分値の絶対値が予め設定された所定値よりも大きければ、前記減少させて決定した前記第1重み係数または前記第2重み係数の変化を禁止するとともに前記増加させて決定した前記第2重み係数または前記第1重み係数の変化を禁止し、前記差分値の絶対値が前記所定値以下であれば、前記第1重み係数および前記第2重み係数をそれぞれ所定の設定値に決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項17】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
運転者が、前記把持している前記第2操作手段または前記第1操作手段の操作方向にて、前記手を放した状態であると判定された前記第1操作手段または前記第2操作手段の操作を再開したときは、
前記減少させて決定した前記第1重み係数または前記第2重み係数を前記操作の再開された前記第1操作手段の検出操作量の増大または前記第2操作手段の検出操作量の増大に伴って増加させ、運転者が前記把持している前記第2操作手段の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作手段の検出操作量に対する前記第1重み係数の変化を禁止することを特徴とする車両の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−126763(P2008−126763A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311962(P2006−311962)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】