説明

車両制御装置

【課題】運転者により合致した車両制御を行なうことが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】制御対象地点及び前記制御対象地点の周辺を走行したときの運転状態、運転者の状態及び路面状態を含む特定走行関連情報を検出する手段(S109)と、前記特定走行関連情報が検出された位置を検出する手段(S109)と、前記特定走行関連情報を検出された位置情報と共に仮保存する手段(S110)と、車両のナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた際に(S111)前記補正された地図情報に基づいて、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報を修正して記憶する手段(S112)と、前記特定走行関連情報と、前記記憶された特定走行関連情報が検出された位置の情報に基づいて、車両を制御する手段(S105)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関し、特に、運転者により合致した車両制御を行なうことが可能な車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の走行する位置に関する情報に基づいて、車両を制御する技術が知られている。ここで、車両の走行する位置に関する情報には、車両の走行する位置に関する走行環境パラメータが含まれ、その走行環境パラメータには、例えば、コーナー、交差点、曲がり角、T字路、一時停止、踏み切り、自動車専用道路等の料金所、信号、横断歩道、歩行者、自動車専用道路等の退出路や合流路、車線数の減少する地点、道路幅の狭くなる地点、見通し、道路勾配などが含まれる。また、車両の制御には、例えば、自動変速機のダウンシフト、自動ブレーキ、回生ブレーキ、電子制御スロットル閉じ制御、自動変速機のアップシフトを遅らせる制御、排気ブレーキなどの車両の駆動力制御が含まれる。
【0003】
特開2003−287117号公報(特許文献1)には、変速機のシフト特性を運転者のイメージにより適合させる、自動変速機の制御方法として、以下の技術が知られている。即ち、運転者による介入が予測的介入である場合には、変速機制御部により、来るべき路程の特徴をデータベースからバッファメモリにロードし、自動車の走行状態及び運転者による介入を記述する変数を、介入時点の前後、FIFOバッファの動作時間に相応した期間の間、バッファメモリに記録し、バッファメモリ内で特別な路程特徴を検索し、特別な路程特徴が存在する場合には、シフトロジックに対する入力データを計算し、介入のための分類システムを運転者が要望する特性に適合させ、又は、特別な路程特徴が存在しない場合には、運転者介入を拒絶するよう構成された方法により解決される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−287117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車両の走行する位置に関する情報に基づいて、車両を制御する技術において、運転者により合致した車両制御が行なわれることが望まれている。特に、車両の位置の情報に基づいて車両制御が行われる場合、車両の位置の検出精度が悪いと、運転者の意図に合致しないタイミングで車両制御が実行される場合がある。
【0006】
本発明の目的は、運転者により合致した車両制御を行なうことが可能な車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両制御装置は、制御対象地点及び前記制御対象地点の周辺を走行したときの運転状態、運転者の状態及び路面状態を含む特定走行関連情報を検出する手段と、前記特定走行関連情報が検出された位置を検出する手段と、前記特定走行関連情報が検出された位置の情報を仮保存する手段と、車両のナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた際に前記補正された地図情報に基づいて、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報を修正して記憶する手段と、前記特定走行関連情報と、前記記憶された特定走行関連情報が検出された位置の情報に基づいて、車両を制御する手段とを備えている。
【0008】
本発明の車両制御装置において、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報の修正は、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置から前記ナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた位置までの距離に基づいて行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両制御装置によれば、運転者により合致した車両制御を行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の車両制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1から図5を参照して、一実施形態について説明する。
本実施形態は、車両の走行する位置に関する情報に基づいて、車両を制御する技術の一例として、道路の曲がり角の情報に基づいて、減速度を付与する制御(例えば、自動変速機のダウンシフト制御やブレーキ制御)を行なう技術に関するものである。
【0012】
本実施形態は、走行履歴(過去の走行状態)を反映して車両を制御するために、走行時の運転・運転者の状態(走行状態、運転指向、気分、制御に対する満足度等)や路面状態(路面μ、凹凸)等を、位置情報、日時、その地点の走行回数(走行頻度)と共に記憶する記憶装置を備えた車両制御装置において、以下の構成を備えている。
・走行時の運転・運転者の状態や路面状態等を所定時間一時保存し、現在位置と地図上の位置情報の補正(マップマッチング)が実施された時、走行距離情報に基づいて、さかのぼった地図位置と共に上記一時保存された情報を記憶する。
【0013】
例えば車両のナビゲーションシステム装置の位置検出精度に依存する位置認識誤差があることにより、運転・運転者の状態・路面状態等が変化した位置に関する不正確な位置情報と共に、その運転・運転者の状態・路面状態等が変化した旨の情報を記憶し、その記憶された情報に基づいて、車両を制御すると、運転者の意図に反したタイミングで制御が実行されることになる。これに対して、本実施形態では、上記構成を採用していることにより、上記問題が発生することを抑制し、運転者の意図に沿った車両制御を実現する。
【0014】
本実施形態の車両制御装置は、以下に詳細に説明するように、制御対象地点(図4の符号202で示す曲がり角)及び前記制御対象地点の周辺を走行したときの運転状態、運転者の状態及び路面状態を含む特定走行関連情報を検出する手段(図1のステップS109)と、前記特定走行関連情報が検出された位置を検出する手段(図1のステップS109)と、前記特定走行関連情報が検出された位置の情報を仮保存する手段(図1のステップS110)と、車両のナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた際に(ステップS111−Y)、前記補正された地図情報に基づいて、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報を修正して記憶する手段(ステップS112)と、前記特定走行関連情報と、前記記憶された特定走行関連情報が検出された位置の情報に基づいて、車両を制御する手段(ステップS105)とを備えている。
【0015】
本実施形態の車両制御装置において、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報の修正(ステップS112)は、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置(図5の符号401参照)から前記ナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた位置(図5の符号402参照)までの距離(図5の符号L参照)に基づいて行われる。
【0016】
図2は、本実施形態の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車両のエンジン10の吸気配管には、アクセル操作量センサ52により検出されたアクセルペダル50の操作量に基づいてスロットルアクチュエータ54により駆動されるスロットル弁56が設けられている。
【0017】
また、エンジン10の回転速度NE を検出するエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Q/Nを検出する吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出する吸入空気温度センサ62、上記スロットル弁56の開度θTHを検出するスロットルセンサ64、出力軸(図示せず)の回転速度NOUT すなわち車速Vを検出する車速センサ66、エンジン10の冷却水温度TW を検出する冷却水温センサ68、ブレーキの作動を検出するブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作位置PSHを検出する操作位置センサ74、入力軸(図示せず)すなわちクラッチC0の回転速度NC0を検出するクラッチC0回転センサ75、油圧制御回路84の作動油温度TOIL を検出する油温センサ77などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q/N、吸入空気温度TA 、スロットル弁の開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキの作動状態BK、シフトレバー72の操作位置PSH、クラッチC0の回転速度NC0、作動油温度TOIL を表す信号がエンジン用電子制御装置76或いは変速用電子制御装置78に供給されるようになっている。
【0018】
ナビゲーションシステム装置113は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、演算処理装置と、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路など)が記憶された情報記憶媒体と、自立航法により自車両の現在位置や道路状況を検出し、地磁気センサやジャイロコンパス、ステアリングセンサを含む第1情報検出装置と、電波航法により自車両の現在位置、道路状況などを検出するためのもので、GPSアンテナやGPS受信機などを含む第2情報検出装置等を備えている。ナビゲーションシステム装置113から出力される信号は、変速用電子制御装置78に供給されるようになっている。
【0019】
レーダー114は、車両前部に搭載されたレーザーレーダーセンサ又はミリ波レーダーセンサなどのセンサであり、前方の車両との車間距離を計測する。カメラ116は、車両周辺監視カメラと、車室内カメラを有している。車両周辺監視カメラは、車両の前方道路、道路種類、道路場面、周辺車両等の状況を示す情報を取得するために用いられる。車室内カメラは、同乗者の情報を所得するために用いられる。通信装置117は、車−車間通信や車−センター間通信を行なう。レーダー114、カメラ116、及び通信装置117のそれぞれから出力される信号は、変速用電子制御装置78に供給される。
【0020】
エンジン用電子制御装置76は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々のエンジン制御を実行する。たとえば、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁79を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ80を制御し、アイドルスピード制御のために図示しないバイパス弁を制御し、エンジン出力制御のためにスロットルアクチュエータ54によりスロットル弁56を制御する。このエンジン用電子制御装置76は、変速用電子制御装置78およびVSC用電子制御装置82と相互に通信可能に接続されており、一方に必要な信号が他方から適宜送信されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、変速用電子制御装置78も、上記と同様のマイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、油圧制御回路84の各電磁弁或いはリニアソレノイド弁を駆動する。たとえば、変速用電子制御装置78は、スロットル弁56の開度θTHに対応した大きさのスロットル圧PTHを発生させるためにリニアソレノイド弁SLT を、アキュム背圧を制御してクラッチツークラッチのシフトを制御するためにリニアソレノイド弁SL1 を、ロックアップクラッチ(図示せず)の係合、解放、スリップ量を制御するためにリニアソレノイド弁SLU を、ブレーキB2を直接制御してクラッチツークラッチのシフトを制御するためにリニアソレノイド弁SL2 をそれぞれ制御する。また、変速用電子制御装置78は、予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14のギヤ段を決定し、この決定されたギヤ段および係合状態が得られるように電磁弁S1、S2、S3、S4を駆動し、エンジンブレーキを発生させる際には電磁弁SRを駆動する。
【0022】
また、車両には、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ83、加速度センサ87、舵角センサ85、車輪回転速度センサ86、横加速度センサ89が設けられており、それらのセンサから、車体の鉛直軸まわりの回転角速度(ヨーレート)ωY 、車体の前後方向の加速度G、ステアリングホイールの舵角θW 、4つの車輪の回転速度NW1〜NW4、車体の横方向の加速度Gを表す信号がVSC用電子制御装置82に供給されるようになっている。
【0023】
道路勾配を計測又は推定する道路勾配計測・推定部118は、変速用電子制御装置78の一部として設けられることができる。道路勾配計測・推定部118は、加速度センサ87により検出された加速度に基づいて、道路勾配を計測又は推定するものであることができる。また、道路勾配計測・推定部118は、平坦路での加速度を予め記憶させておき、実際に加速度センサ87により検出した加速度と比較して道路勾配を求めるものであることができる。
【0024】
運転指向推定部115は、変速用電子制御装置78の一部として設けられることができる。運転指向推定部115は、運転者の運転状態及び車両の走行状態に基づいて、運転者の運転指向(スポーツ走行指向かノーマル走行指向)を推定する。運転指向推定部115の詳細については更に後述する。なお、運転指向推定部115の構成については、本実施形態において説明する内容に限定されず、運転者の運転指向を推定するものであれば、公知の様々な構成のものを広く含む。ここで、スポーツ走行指向とは、動力性能を重視した指向、加速指向ないしは運転者の操作に対する車両の反応が迅速なスポーツ走行を好むことを意味する。
【0025】
次に、運転指向推定部115の詳細について説明する。
運転指向推定部115は、複数種類の運転操作関連変数のいずれかの算出毎にその運転操作関連変数が入力されて推定演算が起動されるニューラルネットワークNNを備え、そのニューラルネットワークNNの出力に基づいて車両の運転指向を推定する。
【0026】
例えば図3に示すように、運転指向推定部115は、信号読込手段96と、前処理手段98と、運転指向推定手段100とを備えている。信号読込手段96は、前記スロットル弁開度64、車速66、エンジン回転速度58、シフトレバー操作位置74、車両加速度G87などの信号を比較的短い所定の周期で読み込む。信号読込手段96により読み込まれた検出信号は、前処理手段98に出力される。
【0027】
前処理手段98は、信号読込手段96により逐次読み込まれた信号から、運転指向を反映する運転操作に密接に関連する複数種類の運転操作関連変数、すなわち車両発進時の出力操作量(アクセルペダル操作量)すなわち車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時の出力操作量の最大変化率すなわちスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内において各センサから入力された信号の区間最大値、運転開始以後における最大車速Vmax 、などをそれぞれ算出する運転操作関連変数算出手段である。運転指向推定手段100は、前処理手段98により運転操作関連変数が算出される毎にその運転操作関連変数が許可されて運転指向推定演算を行うニューラルネットワークNNを備え、そのニューラルネットワークNNの出力である運転指向推定値を出力する。本実施形態では、例えば、ノーマル走行指向の場合の運転指向推定値を0、スポーツ走行指向の場合の運転指向推定値を1とする。
【0028】
図3の前処理手段98には、車両発進時の出力操作量すなわち車両発進時のスロットル弁開度TASTを算出する発進時出力操作量算出手段98a、加速操作時における出力操作量の最大変化率すなわちスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX を算出する加速操作時出力操作量最大変化率算出手段98b、車両の制動操作時の最大減速度GNMAXを算出する制動時最大減速度算出手段98c、車両の惰行走行時間TCOAST を算出する惰行走行時間算出手段98d、車速一定走行時間TVCONSTを算出する車速一定走行時間算出手段98e、例えば3秒程度の所定区間内における各センサからの入力信号のうちの最大値を周期的に算出する入力信号区間最大値算出手段98f、運転開始以後における最大車速Vmax を算出する最大車速算出手段98gなどがそれぞれ備えられている。
【0029】
上記入力信号区間最大値算出手段98fにおいて算出される所定区間内の入力信号のうちの最大値としては、スロットル弁開度TAmaxt(64)、車速Vmaxt(66)、エンジン回転速度NEmaxt(58) が用いられる。
【0030】
図3の運転指向推定手段100に備えられたニューラルネットワークNNは、コンピュータプログラムによるソフトウエアにより、或いは電子的素子の結合から成るハードウエアにより生体の神経細胞群をモデル化して構成され得るものであり、例えば図3の運転指向推定手段100のブロック内に例示されるように構成される。
【0031】
図3において、ニューラルネットワークNNは、r個の神経細胞要素(ニューロン)Xi (X1 〜Xr )から構成された入力層と、s個の神経細胞要素Yj (Y1 〜Ys )から構成された中間層と、t個の神経細胞要素Zk (Z1 〜Zt )から構成された出力層とから構成された3層構造の階層型である。そして、上記入力層から出力層へ向かって神経細胞要素の状態を伝達するために、結合係数(重み)WXij を有して上記r個の神経細胞要素Xi とs個の神経細胞要素Yj とをそれぞれ結合する伝達要素DXij と、結合係数(重み)WYjk を有してs個の神経細胞要素Yj とt個の神経細胞要素Zk とをそれぞれ結合する伝達要素DYjk が設けられている。
【0032】
上記ニューラルネットワークNNは、その結合係数(重み)WXij 、結合係数(重み)WYjk を所謂誤差逆伝搬学習アルゴリズムによって学習させられたパターン連想型のシステムである。その学習は、前記運転操作関連変数の値と運転指向とを対応させる走行実験によって予め完了させられているので、車両組み立て時では、上記結合係数(重み)WXij 、結合係数(重み)WYjk は固定値が与えられている。
【0033】
上記の学習に際しては、複数の運転者についてそれぞれスポーツ走行指向、通常走行(ノーマル)指向の運転が例えば高速道路、郊外道路、山岳道路、市街道路などの種々の道路において実施され、そのときの運転指向を教師信号とし、教師信号とセンサ信号を前処理したn個の指標(入力信号)とがニューラルネットワークNNに入力させられる。なお、上記教師信号は運転指向を0から1までの値に数値化し、例えばノーマル走行指向を0、スポーツ走行指向を1とする。また、上記入力信号は−1から+1までの間あるいは0から1までの間の値に正規化して用いられる(本実施形態では、0から1までの間の値に正規化して用いられるとする)。
【0034】
VSC用電子制御装置82は、上記と同様のマイクロコンピュータであって、VSC制御のために、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、スロットルアクチュエータ54を介してスロットル弁56を駆動するとともに、ハイドロブースタアクチュエータ88に備えられた図示しない電磁弁を駆動して4つの車輪のブレーキ油圧をそれぞれ制御する。このハイドロブースタアクチュエータ88は図示しない制動用油圧回路に組入れられており、必要に応じて4つの車輪の制動力が独立に制御されるようになっている。上記VSC用電子制御装置82も、エンジン用電子制御装置76および変速用電子制御装置78と相互に通信可能に接続されており、一方に必要な信号が他方から適宜送信されるようになっている。
【0035】
路面μ検出・推定部92は、VSC用電子制御装置82の一部として設けられることができる。路面の摩擦係数μに代表される路面の滑り易さ(低μ路か否か)を検出又は推定する。ここで、低μ路には、悪路(路面の凹凸が大きい場合や路面に段差がある等を含む)が含まれる。即ち、路面μ検出・推定部92では、走行路面の摩擦係数μが演算され、その演算された摩擦係数μが予め定められたしきい値を超えているか否かによって、低μ路か否かが決定される。
【0036】
路面μ検出・推定部92では、上記に代えて、演算により摩擦係数μの具体的数値を求めることなく、各種条件、例えば、車輪回転速度センサ86により検出された車両の前輪と後輪の回転速度の差に基づいて、路面が低μ路であるか否かを検出することができる。
【0037】
ここで、路面μ検出・推定部92による低μ路であるか否かの検出・推定の具体的方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、上記の前後の車輪速差の他に、車輪速の変化率や、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やTRS(トラクション・コントロール・システム)やVSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)の作動履歴、車両の加速度と車輪スリップ率の関係の少なくともいずれか一つを用いて、低μ路であるか否かの検出・推定を行うことができる。
【0038】
路面μ検出・推定部92は、将来に走行予定の路面についての情報(ナビ情報など)に基づいて、低μ路であるか否かを予測する。ここで、ナビ情報には、ナビゲーションシステム装置113のように予め記憶媒体(DVDやHDなど)に記録されている路面(例えば非舗装路)の情報の他、車両自体が過去の実走行や他の車両や通信センターとの通信(車車間通信や路車間通信を含む)を介して得た情報(道路状況を示す情報や天候状況を示す情報を含む)が含まれる。その通信には、道路交通情報通信システム(VICS)やいわゆるテレマティクスが含まれる。
【0039】
図1を参照して、本実施形態の動作を説明する。本実施形態では、車両の走行する位置に関する走行環境パラメータに基づいて、車両を制御する技術の一例として、例えば曲がり角(制御対象地点)の手前の所定距離の位置(例えば前回同じ曲がり角を走行した時に運転者が減速動作を開始した地点)で、所定の減速度(例えば前回同じ曲がり角を走行した時に車両に作用した減速度)を付与する減速制御(曲がり角制御)が行われる。
【0040】
[ステップS101]
ステップS101では、運転者の認証が行なわれて、現在の運転者が特定される。現在の運転者に関する情報は、例えば、運転者自身がその情報を車両側に入力するか、免許証の情報がIDカードにおいて磁気データとして格納されている場合には、その免許証の情報により取得されることが可能である。ステップS101の次に、ステップS102が行なわれる。
【0041】
[ステップS102]
ステップS102では、上記ステップS101により特定された現在の運転者が前回その曲がり角(制御対象地点)を走行したときの情報(以下、特定走行関連情報)が記憶されているか否かが判定される。
【0042】
ここで、特定走行関連情報とは、上記特定された現在の運転者が前回その曲がり角(制御対象地点)を走行したときの運転状態(その曲がり角の手前どれくらいの距離(位置)で減速操作を行ったか、そのときの減速度など)と、そのときの運転者の状態(覚醒度、集中度、運転指向、気分、体調など)と、そのときの路面状態(路面μ、凹凸など)と、そのときの車両周辺状況(前方の車両に追従して走行していたか、それとも単独で走行していたか、自車両の前方の見通し、視界、走行環境の明暗など)と、そのときの日時と、その特定された運転者によるその曲がり角の走行回数(走行頻度、走行履歴)等に関する情報である。特定走行関連情報には、例えば、その曲がり角(制御対象地点)の周辺の道路の視界が良く、道幅が広く運転者がスポーツ走行指向で走行したといった情報が含まれる。
【0043】
運転者の覚醒度、集中度、気分の情報は、例えば、カメラ(車室内カメラ)116により運転者の視線、顔向きを判断することにより取得することが可能である。運転者の体調の情報は、例えばステアリングに設けられた血圧センサや脈拍センサにより取得することが可能である。運転者の運転指向は、運転指向推定部115により推定される。
【0044】
路面状態は、路面μ検出・推定部92により検出・推定される。
車両周辺状況は、例えば、通信装置117によるセンターとの通信または車−車間通信や、ナビゲーションシステム装置113や、カメラ(車両周辺監視カメラ)116や、レーダー114を用いて取得されることが可能である。
【0045】
ステップS102の判定の結果、特定走行関連情報が記憶されている場合には、ステップS103が行なわれ、そうでない場合にはステップS106が行なわれる。
【0046】
[ステップS103]
ステップS103では、その曲がり角(制御対象地点)の位置情報とともに記憶されている、上記特定走行関連情報(上記ステップS102にて有ると判定された情報)が、その曲がり角(制御対象地点)の手前の予め設定された所定距離の地点において、ロードされる。
【0047】
ここで、上記特定走行関連情報が制御対象地点の手前の予め設定された所定距離の地点においてロードされる理由は、上記特定走行関連情報が制御対象地点においてロードされたのでは、制御対象地点での制御に使用できないためである。ステップS103の次に、ステップS104が行なわれる。
【0048】
[ステップS104]
ステップS104では、上記ステップS102において有ると判定された上記特定走行関連情報のうち上記運転者の状態と上記路面状態と上記車両周辺状況とが、現在の状況と同じであるか否かが判定される。その判定の結果、上記特定走行関連情報のうち上記運転者の状態と上記路面状態と上記車両周辺状況とが、現在の状況と同じであると判定された場合(ステップS104−Y)には、ステップS105に進み、そうでない場合(ステップS104−N)には、ステップS106に進む。
【0049】
[ステップS105]
ステップS105では、上記ステップS102において有ると判定された上記特定走行関連情報における、前回その曲がり角(制御対象地点)を走行したときの運転状態と同じになるように、今回の曲がり角制御の制御パラメータを設定する。例えば、今回の曲がり角制御における目標減速度を、前回の実際の減速度と同じ値に設定することができる。ここで、今回の曲がり角制御における目標減速度を、前回の実際の減速度と同じ値に設定することにより、運転者の感覚に合う曲がり角制御が行われる理由について、以下に説明する。
【0050】
前回の曲がり角制御の際に、運転者がその曲がり角制御による車両の減速度に対して満足であり、その曲がり角制御による減速度が車両に作用した後に、運転者がアクセルやブレーキを操作しなかった場合と、運転者がその曲がり角制御による車両の減速度に対して不満足であり、その曲がり角制御による減速度が車両に作用した後に、運転者がアクセルやブレーキを操作した場合と、が考えられる。
【0051】
前者の場合、即ち、前回の曲がり角制御後にアクセルやブレーキの操作がない場合には、前回の実際の減速度は、前回の減速度と同じとなり、その値で運転者はアクセルやブレーキの操作を必要としていないことから、前回の減速度がそのまま今回の減速度とされる。
【0052】
一方、後者の場合、即ち、前回の曲がり角制御後にアクセルやブレーキの操作があった場合には、そのアクセルまたはブレーキの操作の後の実際の減速度で運転者が満足したということなので、今回の目標減速度としては、前回の実際の減速度が用いられる。
【0053】
即ち、上記前者の場合と後者の場合の両方を考えても、前回の曲がり角制御後のアクセルまたはブレーキ操作の有無に関わらずに、前回の曲がり角走行時には、前回の実際の減速度(アクセルまたはブレーキ操作が無い場合には前回の目標減速度と等しい)で曲がり角を走行したことに運転者は満足しているはずなので、前回の曲がり角制御後のアクセルまたはブレーキ操作の有無に関わらずに、今回の目標減速度は、前回の実際の減速度にすればよい。
【0054】
例えば、上記記憶されていた特定走行関連情報に、例えば、その曲がり角(制御対象地点)の周辺の道路の視界が良く、道幅が広く運転者がスポーツ走行指向で走行したといった情報が含まれていた場合には、今回走行時にもスポーツ走行指向で走行することが考えられるため、ステップS105では、例えば、変速線をスポーツパターンにしておくことで、運転者の指向に沿った車両制御が実現できる。
【0055】
または、上記記憶されていた特定走行関連情報に、例えば、路面状態として、未舗装路であるという情報が含まれていた場合には、ステップS105では、未舗装路対応の車両パラメータに変更する。ここで、パラメータの変更には、例えば、サスペンション特性を変更することや、タイヤから入力される外乱入力対応(ベルト式無段変速機のベルト滑り対応)が含まれる。ステップS105の次にステップS107が実行される。
【0056】
[ステップS106]
ステップS106では、状況に合わせて、今回の曲がり角制御の制御パラメータが設定される。ここで、「状況に合わせて」とは、ステップS106が行なわれる前の各ステップにおける判定結果・判定内容に応じて、という意味である。
【0057】
例えば、上記ステップS102の判定の結果、否定的に判定されてステップS106が行なわれる場合、即ち、上記特定走行関連情報が記憶されていない場合には、予め設定された制御量の変更可能範囲の中央値に、今回の制御パラメータ(例えば、目標減速度)が設定される。または、制御量の変更可能範囲の中央値に代えて、より安全サイドの値に、今回の制御パラメータが設定されることができる。
【0058】
一方、上記ステップS104の判定の結果、否定的に判定されてステップS106が行なわれる場合、即ち、上記特定走行関連情報のうち上記運転者の状態と上記路面状態と上記車両周辺状況のいずれかが、現在の状況と同じであると判定されなかった場合には、その判定結果・判定内容に応じて、以下のように制御パラメータが設定される。
【0059】
例えば、前回のその曲がり角の走行時に比べて、今回、運転指向が低い(スポーツ走行指向ではなくノーマル走行指向により近い)場合には、前回の目標減速度よりも、今回の目標減速度を小さな値に設定し、前回に比べて運転指向が高い場合には、前回の目標減速度よりも、今回の目標減速度を大きな値に設定する。また例えば、前回のその曲がり角の走行時に比べて、今回、路面μが低い場合には、前回の目標減速度よりも、今回の目標減速度を小さな値に設定し、前回に比べて路面μが高い場合には、前回の目標減速度よりも、今回の目標減速度を大きな値に設定する。
【0060】
また例えば、前回に比べて運転指向が低く、かつ路面μが低い場合には、その運転指向と路面μの2つの要素が重なった分だけ、前回の目標減速度よりも、今回の目標減速度を小さな値に設定する。前回の目標減速度からの今回の目標減速度の変化量は、例えば、前回と今回の運転指向や路面μの違いの程度に基づいて設定される。
【0061】
[ステップS107]
ステップS107では、曲がり角制御の開始条件が成立したか否かが判定される。ここで、曲がり角制御の開始条件には、例えば、車両の低μ路走行時や旋回中であるか否かが含まれる。車両が低μ路である場合や旋回中である場合に、例えば変速線をスポーツパターンに変更することは車両挙動を不安定にさせる可能性があるため、実行されるべきではない。
【0062】
[ステップS108]
ステップS108では、本実施形態の車両制御である曲がり角制御が実行される。ステップS108の次に、ステップS109が実行される。
【0063】
[ステップS109]
ステップS109では、運転状態の変化(例えば運転者による減速動作の開始)、道路状態の変化(例えば舗装路から未舗装路への変化)等、上記特定走行関連情報として記憶すべき情報が検出されたか否かが判定される。その判定の結果、上記特定走行関連情報として記憶すべき情報が検出されたと判定された場合には、ステップS110に進み、そうでない場合には、本制御フローはリターンされる。
【0064】
ここでは、上記運転状態又は道路状態の変化等のイベントとして上記特定走行関連情報を検出する例を示したが、これに代えて、定期的に上記特定走行関連情報を検出する構成を採用することができる。例えば、道路勾配など連続して変化する情報に関しては、定期的(一定時間間隔、及び/又は一定距離間隔)に位置情報と共に記憶することにより、次回走行時に、連続して記憶した勾配情報を利用して、例えば登降坂時駆動・制動力制御等の車両制御に適用することが可能となる。
【0065】
[ステップS110]
ステップS110では、上記ステップS109にて検出された上記特定走行関連情報として記憶すべき情報を、その検出された時点の車両の位置の情報と共に一時保存する。この時点では、ナビゲーションシステム装置113の地図情報上の位置と、実際の現在位置とが精度良く合致しているか不明であるため、仮保存しておく。ステップS110の次にステップS111に進む。
【0066】
[ステップS111]
ステップS111では、実際の現在位置に対して、ナビゲーションシステム装置113上の地図情報の補正(マップマッチング)が実行されたか否かが判定される。その判定の結果、補正が実行されていればステップS112に進み、そうでない場合には本制御フローはリターンされる。
【0067】
[ステップS112]
ステップS112は、ナビゲーションシステム装置113の地図情報上による現在の車両位置と、実際の現在の車両位置とが高精度に合致している状態で行われる(ステップS111−Y)。そのため、ここで、現在(マップマッチング実行時(ステップS111−Y))の車両の位置の情報と、上記ステップS110にて上記情報を一時保存(検出)したときの車両の位置から現在までに車両が進んだ距離とに基づいて、上記検出した時点の正確な車両の位置を算出する。その算出された上記検出した時点の車両の位置の情報と共に、上記ステップS109にて検出された上記特定走行関連情報として記憶すべき情報を、記憶する。ステップS112の次に本制御フローはリターンされる。
【0068】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態の効果について説明する。
【0069】
図4は、マップマッチングが行われる前であって、実際の道路の位置とナビゲーションシステム装置113の地図情報とが一致していない場合を説明する図である。図4において、符号200は、実際の道路を示している。実際の道路200は、比較的長い直線路201と、その先方に曲がり角202とを有している。一方、符号300は、車両のナビゲーションシステム装置113の地図情報上で道路200を誤認識した結果の道路を示している。即ち、ナビゲーションシステム装置113では、直線路301の先方に曲がり角302が存在していると誤認識している。
【0070】
いま、車両Cが符号401の地点で上記運転状態の変化、道路状態の変化等を検出(ステップS109)したとする。この検出を行ったときの車両Cの位置401は、正しくは、実際の道路200で曲がり角202の入口203まで例えば80mの位置であるとする。しかし、車両Cのナビゲーションシステム装置113は、道路200を道路300であると誤認識しているために、車両Cが上記運転状態の変化、道路状態の変化等を検出した位置は、道路300の曲がり角302の入口303まで例えば100mの位置であると誤認識している。
【0071】
図5は、マップマッチングが行われた後であって、実際の道路の位置とナビゲーションシステム装置113の地図情報とが一致している場合を説明する図である。ナビゲーションシステム装置113のマップマッチングは、その車両Cが曲がり角202を曲がった地点402で行われることが多い。よって、曲がり角202までの直線路201が長い道路200では、長い間マップマッチングが行われないことになり、ナビゲーションシステム装置113による位置認識の誤差が累積していた。このことから、マップマッチングが行われるまでは、図4に示すように、実際の道路200に対するナビゲーションシステム装置113の認識する道路300の誤差は、大きい場合がある。
【0072】
従来は、上記運転状態の変化、道路状態の変化等を検出したときに、その検出した情報を、その運転状態・道路状態の変化等を検出した地点の情報と共に記憶していた。その位置の情報は、その後、マップマッチングが行われた後であっても補正・更新されることは無かった。即ち、マップマッチングが行われる前の直線路201にて、上記運転状態・道路状態の変化等を検出した場合には、実際の道路200を道路300(図4参照)であると誤認識した状態で、その検出した位置は、曲がり角の入口まで例えば100mの位置であると認識し、マップマッチングして実際の道路200の位置を正確に認識した後であっても、その検出した位置は、実際の道路200の曲がり角202の入口203から100mの位置(図5の符号403)であると記憶していた。そして、その記憶した情報に基づいて、次回、道路200を走行するときに、車両の制御が行われていたため、実際の位置401よりも20m手前(符号403)で車両が制御されることになり、運転者は違和感を感じることがあった。
【0073】
これに対して、本実施形態では、マップマッチングが行われる前に、上記運転状態・道路状態の変化等を検出したときに、その検出した情報を、その運転状態・道路状態の変化等を検出した地点の情報と共に一時的に記憶する(上記図1のステップS110)。その位置の情報は、その後、マップマッチングが行われた後に補正・更新される(ステップS112)。即ち、マップマッチングが行われる前には、実際の道路200を道路300(図4参照)であると誤認識した状態で、上記運転状態・道路状態の変化等を検出した位置は、曲がり角の入口まで例えば100mの位置(図5の符号403)であると認識していたとしても、マップマッチングが行われた後に(ステップS111−Y)、正しい位置情報に補正された上で記憶されていた(ステップS112)。
【0074】
具体的には、その場合、現在(マップマッチング実行時(ステップS111−Y))の車両の位置402の情報と、上記ステップS110にて上記情報を一時保存(検出)したときの車両の位置401から現在の位置402までに車両が進んだ距離Lとに基づいて、上記検出した時点の正確な車両の位置401を算出する。即ち、マップマッチングが実行された現在の地点402から、距離L(運転状態・道路状態等が変化した地点401からマップマッチング実行地点402まで車両が進んだ距離)分だけさかのぼった地点401を、上記運転状態・道路状態等の変化を検出した時点の正確な車両の位置として認識し、その位置の情報を記憶する(ステップS112)。そして、その記憶した情報に基づいて、次回、道路200を走行するときに、車両の制御が行われるため、上記検出した時点401という正しいタイミングで車両が制御されることになり、運転者は違和感を感じることが抑制される。
【0075】
上記例では、直線路が長く続いた場合に、ナビゲーションシステム装置113の位置の認識誤差が累積的に大きくなり、その場合に、本実施形態を適用すると、その効果が大きいことを説明した。直線路が長く続いた例の他、例えば、車両がトンネルを通り、GPSとの通信が一時的にうまくいかなかった場合にも、ナビゲーションシステム装置113の位置認識の誤差が大きいため、本実施形態を適用すると好適な効果が得られる。
【0076】
なお、上記では、前回曲がり角制御が行なわれたときの運転者の状態と路面状態と車両周辺状況が記憶され、それらの運転者の状態と路面状態と車両周辺状況と、現在の運転者の状態と路面状態と車両周辺状況とが同じであるときに(ステップS104−Y)、記憶されている実際の減速度が今回の曲がり角制御の制御パラメータとされた(ステップS105)。しかし、比較の結果、一致していることが要求されるのは、上記3つの要件(運転者の状態、路面状態、車両周辺状況)に限定されない。例えば、それらのうちの一つが記憶され、その一つの要件が一致すればよい。
【0077】
上記では、車両の走行する位置に関する走行環境パラメータに基づいて、車両を制御する技術の一例として、曲がり角制御が説明されたが、本実施形態は、曲がり角制御に限定されない。例えば、交差点、T字路、踏み切り、自動車専用道路、自動車専用道路の合流路や退出路や料金所、車線数の減少する地点、道路の幅の狭くなる地点等の車両の走行する位置に基づいて、車両の駆動力を制御する技術が含まれる。
【0078】
車両の駆動力の制御とは、ダウンシフトや自動ブレーキや電子スロットルの閉じ制御や排気ブレーキ等により減速度を発生される制御の他、合流路等でアップシフトの時期を遅らせたり、電子スロットルを開く制御やダウンシフトを行う制御を行なうことにより、大きな正駆動力を発生させる制御が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の車両制御装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図2】本発明の車両制御装置の第1実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明の車両制御装置の第1実施形態の一部の概略構成図である。
【図4】本発明の車両制御装置の第1実施形態の効果を説明するための図である。
【図5】本発明の車両制御装置の第1実施形態の効果を説明するための他の図である。
【符号の説明】
【0080】
10 エンジン
14 自動変速機
54 スロットルアクチュエータ
56 スロットル弁
58 エンジン回転速度センサ
60 吸入空気量センサ
62 吸入空気温度センサ
64 スロットルセンサ(スロットル弁開度)
66 車速センサ
68 冷却水温センサ
70 ブレーキスイッチ
72 シフトレバー
74 操作位置センサ
75 クラッチC0回転センサ
76 エンジン用電子制御装置
77 油温センサ
78 変速用電子制御装置
79 燃料噴射弁
80 イグナイタ
82 VSC用電子制御装置
83 ヨーレートセンサ
84 油圧制御回路
85 舵角センサ
86 車輪回転速度センサ
87 加速度センサ(車両加速度G)
88 ハイドロブースタアクチュエータ
89 横Gセンサ
92 路面μ検出・推定部
96 信号読込手段
98 前処理手段
98a 発進時出力操作量算出手段
98b 加速操作時出力操作量最大変化率算出手段
98c 制動時最大減速度算出手段
98d 惰行走行時間算出手段
98e 車速一定走行時間算出手段
98f 入力信号区間最大値算出手段
98g 最大車速算出手段
100 運転指向推定手段
113 ナビゲーションシステム装置
114 レーダー
115 運転指向推定部
116 カメラ
117 通信装置
118 道路勾配計測・推定部
200 実際の道路
201 直線路
202 曲がり角
203 曲がり角の入口
300 車両のナビゲーションシステム装置の地図情報上で道路を誤認識した結果の道路
301 直線路
302 曲がり角
303 曲がり角の入口
401 運転状態の変化、道路状態の変化等を検出した地点
402 マップマッチングが行われた地点
403 誤認識された運転状態の変化、道路状態の変化等の検出地点
L 距離
NN ニューラルネットワーク
S1〜S4 電磁弁
SL1、SL2、SLU リニアソレノイド弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象地点及び前記制御対象地点の周辺を走行したときの運転状態、運転者の状態及び路面状態を含む特定走行関連情報を検出する手段と、
前記特定走行関連情報が検出された位置を検出する手段と、
前記特定走行関連情報が検出された位置の情報を仮保存する手段と、
車両のナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた際に前記補正された地図情報に基づいて、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報を修正して記憶する手段と、
前記特定走行関連情報と、前記記憶された特定走行関連情報が検出された位置の情報に基づいて、車両を制御する手段と
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御装置において、
前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置の情報の修正は、前記仮保存された特定走行関連情報が検出された位置から前記ナビゲーションシステム装置の地図情報の補正が行われた位置までの距離に基づいて行われる
ことを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−168865(P2008−168865A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6166(P2007−6166)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】