説明

車両用挙動制御装置

【課題】カーブ進入時だけでなくカーブ内においてもドライバの危険感に合った減速制御を実行することができる車両用挙動制御装置を提供する。
【解決手段】自車がカーブ内に位置すると判定した場合には、減速制御において、接近離間状態評価指標KdBに基づいた第1修正目標相対速度算出式を適正道路境界距離とカーブ内適性道路境界距離との差分をもとに修正した第2修正目標相対速度算出式を用いて第2修正目標相対速度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用挙動制御装置に関し、特に、カーブ進入時およびカーブ内走行時の車両挙動制御を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車の前方に存在する物体に対する自車の接近離間状態を、運転者の網膜上に投影される前方物体の見かけ上の面積の時間変化率に基づいて求めた接近離間状態評価指標を用いて車両の速度制御を行う装置が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、この接近離間状態評価指標を利用して、カーブ進入時のドライバの危険感に合った減速制御を実行することができる車両用速度制御装置が開示されている。詳しくは、特許文献1に開示の車両用速度制御装置では、カーブ手前での減速制御開始タイミングの判定に、カーブ時目標通過速度Vr_Gy_offsetを考慮した接近離間状態評価指標(補正接近離間状態評価指標)の現在値KdB_c(a)_pを用い、この現在値KdB_c(a)_pが補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)の近似式(ブレーキ判別式KdB_c(a))から定まる閾値KdB_c_tを上回った時点を減速制御開始時点とすることで、カーブをカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offsetで通過しようとする際のドライバの感覚に合ったタイミングで減速制御を開始することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−30403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の車両用速度制御装置は、カーブ手前の直線部においてカーブ入り口までに一定のカーブR(カーブの曲率半径)のカーブを曲がることができる速度まで減速することを目的としているものであって、カーブ入り口後のカーブRが一定であるという条件下での減速制御には有効である。
【0006】
しかしながら、カーブ入り口までに一定のカーブRのカーブを曲がることができる速度までの減速を終了したとしても、カーブ内に進入した後に当初目標としたカーブRよりもカーブRが急になるカーブにおいては、さらに減速しないとカーブを曲がりきれずにカーブ外側へ逸脱してしまうという問題が生ずる。
【0007】
また、カーブ手前の直線部においてカーブ入り口までに一定のカーブRを曲がることができる速度までの減速を開始したとしても、カーブ入り口前後の路面が凍結等で低μ状態になっている場合には、カーブ入り口までにそのカーブRを曲がることができる速度まで減速できずにカーブ内に進入してしまい、さらに減速しないとカーブを曲がりきれずカーブ外側へ逸脱してしまうという問題が生ずる。
【0008】
つまり、特許文献1に開示の車両用速度制御装置では、カーブ内においてドライバの危険感に合った減速制御を実行することができない場合があるという問題を有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、カーブ進入時だけでなくカーブ内においてもドライバの危険感に合った減速制御を実行することができる車両用挙動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両用挙動制御装置によれば、カーブ内外判定手段で自車がカーブ外に位置すると判定した場合には、第1目標減速度算出手段で算出した目標減速度に基づいて自車の減速制御を実行する一方、自車がカーブ内に位置すると判定した場合には、第2目標減速度算出手段で算出した目標減速度に基づいて自車の減速制御を実行することになる。
【0011】
詳しくは、カーブ手前での減速制御開始の判定に、カーブ時目標通過速度を考慮した補正接近離間状態評価指標を用いており、この補正接近離間状態評価指標が補正接近離間状態評価指標の閾値算出式から定まる閾値を上回った時点を減速制御開始時点としている。従って、カーブをカーブ時目標通過速度で通過しようとする際のドライバの感覚に合ったタイミングで減速制御を開始することができる。
【0012】
そして、減速制御においては、第1記憶手段に記憶してある修正目標相対速度算出式を用いて算出した第1修正目標相対速度に基づいて減速制御を行っている。この修正目標相対速度算出式は接近離間状態評価指標に基づいた式であり、接近離間状態評価指標はドライバの危険感をよく示す指標であることが学会等で既に認められている。従って、修正目標相対速度算出式を用いて算出した第1修正目標相対速度に基づいて減速制御を行うことで、ドライバの危険感に適合した滑らかな制御を行うことができる。
【0013】
しかも、カーブの入口を接近離間状態評価指標の対象とするとともに、カーブの入口における目標相対速度がカーブ時目標通過速度となるように減速制御を行うことから、カーブ直前の道路の直線部が終了しカーブの部分(つまり、曲線部)に入るときにも速度の変曲点が存在せず、滑らかに走行することが可能となる。また、対象とするカーブのカーブR(カーブの曲率半径)が一定である場合には、カーブ内に進入した後もそのままカーブ外側へ逸脱せずにカーブ内を滑らかに走行することができる。
【0014】
一方、カーブ内での減速制御においては、第2記憶手段に記憶してあるカーブ内修正目標相対速度算出式を用いて算出した第2修正目標相対速度に基づいて減速制御を行っている。このカーブ内修正目標相対速度算出式は接近離間状態評価指標に基づいた式であって、修正目標相対速度算出式を適正道路境界距離とカーブ内適性道路境界距離との差分をもとに修正した式であるので、カーブ内修正目標相対速度算出式を用いて算出した第2修正目標相対速度に基づいて減速制御を行うことで、ドライバの危険感に適合した滑らかな制御を行うことができる。
【0015】
例えば、対象とするカーブのカーブRが一定でなく、カーブ途中でより大きいカーブRに変化した場合であっても、自車正面に位置する道路外側境界を接近離間状態評価指標の対象とするとともに、自車先端からその道路外側境界までの距離がカーブ内適正道路境界距離である場合における目標相対速度がカーブ内目標通過速度となるように減速制御を行うことになる。よって、カーブ途中でより大きいカーブRに変化し、実道路境界距離がカーブ内適正道路境界距離よりも小さくなってしまった場合にも、実道路境界距離がカーブ内適正道路境界距離よりも小さくなった分だけ、目標相対速度も小さくなるように減速制御が行われる。従って、カーブ途中でカーブRが大きくなるような場合であっても、カーブ外側へ逸脱せずに済むとともに、ドライバの危険感に適合した滑らかな減速制御を行うことが可能になる。
【0016】
さらに、対象とするカーブのカーブ入り口手前の路面が凍結等で低μとなっており、修正目標相対速度算出式を用いて算出した第1修正目標相対速度に基づいて減速制御を行っても、カーブの入口までにカーブ時目標通過速度まで減速できない場合にも、自車正面に位置する道路外側境界を接近離間状態評価指標の対象とするとともに、自車先端からその道路外側境界までの距離がカーブ内適正道路境界距離である場合における目標相対速度がカーブ内目標通過速度となるように減速制御を行うことになる。よって、カーブの入口までにカーブ時目標通過速度まで減速できず、アンダーステア状態でカーブ内に進入した場合にも、実道路境界距離が適正道路境界距離よりも小さくなった分だけ、目標相対速度も小さくなるように減速制御が行われる。従って、カーブ内へカーブ時目標通過速度以上で進入し、アンダーステア状態となった場合にも、カーブ外側へ逸脱せずに済むとともに、ドライバの危険感に適合した滑らかな減速制御を行うことが可能になる。
【0017】
また、請求項2の構成によれば、評価指標算出手段は、(1)式から補正接近離間状態評価指標を算出するため、簡単な数式で補正接近離間状態評価指標を算出することができるので、カーブ進入時だけでなくカーブ内においてもドライバの危険感に合った減速制御を実行することができる車両用挙動制御装置をより容易に実現することができる。
【0018】
【数1】

KdB_c(a):補正接近離間状態評価指標
Vr_GyA:第1速度差算出手段が算出する速度差
a:定数
Vr_Gy_offset0:カーブ時目標速度設定手段が設定するカーブ時目標通過速度
Ds:距離取得手段が取得するカーブ入口到達距離
また、請求項3の構成によれば、実外側曲率半径、適正旋回半径、適正道路境界距離のいずれについても、位置検出センサによって検出される道路境界または道路付帯物(以下、道路境界等)の位置から算出できることになる。また、実道路境界距離も位置検出センサによって検出される道路境界等の位置から算出できることになる。そのため、装置構成を簡素化することができ、且つ、処理も比較的簡易となる。さらに、自車前方に位置する3つの基準点を検出し、それら3つの基準点と自車との距離から実外側曲率半径を算出することで、外側曲率半径を精度よく算出することができる。
【0019】
また、請求項4の構成によれば、ステアリング切り角の適否を判断するための情報として、位置検出センサによって実際に検出した道路境界等の位置を用いているので、地図情報に基づいて道路形状を判定し、判定した道路形状に基づいてステアリング切り角の適否を判定するよりも精度よくステアリング切り角の適否を判定することができる。
【0020】
また、請求項5のようにしてステアリング切り角を制御すれば、自車の走行軌道を道路の曲率半径に応じた適切な旋回半径とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】運転支援システム100の概略的な全体構成を示すブロック図である。
【図2】外側曲率半径Reと適正旋回半径Re-Lを説明する図である。
【図3】車両制御ECU12の実行する減速制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】(a)は減速制御を開始するタイミングを示す図であり、(b)は接近離間状態評価指標KdBの現在値KdB_pと目標接近離間状態評価指標KdB_tとの関係を示す図であり、(c)は第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0の変化を示す図である。
【図5】第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterの変化を示す図である。
【図6】曲率が一定のカーブに自車両がカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0で進入した場合の一例を説明する図である。
【図7】カーブRがカーブ途中で小から大へ変化する場合の減速制御を説明するための模式図である。
【図8】カーブ入り口手前の低μ路によってカーブの入口までにカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0まで減速できなかった場合の減速制御を説明するための模式図である。
【図9】カーブ内を通過中の自車のカーブ内適正道路境界距離Dcnを示す図である。
【図10】車両がカーブ内適正旋回半径Re-Lの旋回軌道を外側へ外れる状態を示す図である。
【図11】車両制御ECU12の実行する操舵制御関連処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図12】ステアリング切り角制御のフローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、本発明の車両用挙動制御装置を運転支援システムに適用した場合について説明するものである。図1に、本実施形態の運転支援システム100の全体構成を示す。図1に示すように、運転支援システム100は、VSC_ECU1、舵角センサ2、Gセンサ3、ヨーレートセンサ4、ENG_ECU5、EPS_ECU6、EPSアクチュエータ7、路車間通信装置8、レーダ9、操作SW10、ナビゲーション装置11、及び車両制御ECU12によって構成される。また、VSC_ECU1、舵角センサ2、Gセンサ3、ヨーレートセンサ4、ENG_ECU5、EPS_ECU6、及び車両制御ECU12は、CAN(controller areanetwork)などの通信プロトコルに準拠した車内LANで各々接続されている。なお、運転支援システム100を搭載している車両を以降では自車と呼ぶ。また、運転支援システム100が請求項の車両用挙動制御装置に相当する。
【0023】
VSC_ECU1は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU1は、車内LANから目標減速度の情報を受信し、この目標減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU1は、自車の速度(車速)Vs0、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ2は、自車のステアリングの舵角(以下、ステアリング切れ角)の情報を検出するセンサであり、検出したステアリング切れ角の情報を車内LANに送信する。
【0024】
Gセンサ3は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ4は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。
【0025】
ENG_ECU5は、車内LANから目標加速度の情報を受信し、自車が目標加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。EPS_ECU6は、EPSアクチュエータ7を動作させることで、ステアリング切れ角の制御を行う。EPSアクチュエータ7は、EPS_ECU6からの指令信号に基づいてステアリング切れ角を変化させる機構であり、たとえばインターミディエイトシャフトと一体回転する減速ギヤとその減速ギヤを回転させるモータからなる。
【0026】
路車間通信装置8は、道路に設置された路側通信装置(路側インフラ)との路車間通信を行う無線通信装置であり、自車の進行方向前方の道路がカーブする場合に、そのカーブの入口地点よりも十分に手前の地点において、カーブの曲率半径(カーブR)、カーブにおける路面摩擦係数μ、カーブの出入口地点の座標(緯度経度)、カーブの幅員、車線数、車線毎の幅員などを示すカーブ情報を受信する。この路車間通信には、DSRC(Dedicated Short RangeCommunication、狭域通信)などが採用される。
【0027】
レーダ9は、例えばレーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、自車前方のカーブの道路境界又はその付近に設けられた道路付帯物との距離(以下、実道路境界距離D)、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU12へ出力する。なお、上記道路付帯物は、例えば車両から照射するレーザ光に対して所定強度以上の反射光強度を示す反射板、デリニエータ等である。また、このレーダ9は、例えば車両幅方向の検出範囲が車両の幅方向長さよりも長くなっているものとする。なお、レーダ9が請求項の位置検出センサに相当する。
【0028】
操作SW10は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU12へ出力される。ナビゲーション装置11は、何れも図示しない周知の地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ、及び衛星からの電波に基づいて自車の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機等から構成される位置検出部、道路地図データを記憶する道路地図データ記憶部、液晶やCRT等を用いたカラーディスプレイ、及び制御回路によって構成される。
【0029】
道路地図データは、地図上の道路をリンクとノードによって表現するためのリンクデータ及びノードデータが含まれており、このリンクデータ及びノードデータは、例えばリンクの始点及び終点座標、リンク長、通行区分幅、道路幅員、道路の曲率半径の情報等を含んでいる。
【0030】
また、ナビゲーション装置11は、車両制御ECU12からの指令を受けて、自車の現在位置の座標(緯度経度)を特定し、自車の現在位置の道路、及び自車前方の所定距離以内に存在するカーブ道路のリンクデータ及びノードデータを出力する。
【0031】
車両制御ECU12は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。
【0032】
この車両制御ECU12は、自車走行中に所定周期で逐次自車がカーブ外に位置するかカーブ内に位置するかを判定する。また、自車がカーブ外に位置するかカーブ内に位置するかの判定(以下、カーブ内外判定)は、カーブの入口地点(直線部終了位置)からカーブの外側の道路境界又はその付近に設けられた道路付帯物までの距離(以下、適正道路境界距離Dc0)を算出し、その適正道路境界距離Dc0と実道路境界距離Dとを比較することで行う。まず、適正道路境界距離Dc0の算出方法について説明する。なお、以降では、カーブの外側の道路境界又はその付近に設けられた道路付帯物を道路外側境界と呼ぶ。
【0033】
この適正道路境界距離Dc0は、(7)式により算出する。なお、Lは車線に対する自車中心の横位置であり、R-Lはカーブを走行するとした場合の自車の適正旋回半径である。よって、車両制御ECU12が請求項の旋回半径算出手段および適正距離算出手段に相当する。この横位置は、ナビゲーション装置11によって、幅員、車線数、自車走行車線が判断できる場合にはそれらに基づいて決定する。また、レーダ9によって先行車に対する横ずれ量が判断できる場合には、レーダ9等を用いて先行車の横位置を決定して、先行車の横位置および先行車との横ずれ量から決定してもよい。また、例えばRは前述した路車間通信によって取得したデータを用いる構成とすればよい。さらに、Rとして、後述する外側曲率半径Reを用いる構成としてもよい。
【0034】
【数7】

次に、カーブ内外判定について説明する。カーブ内外判定では、適正道路境界距離Dc0と実道路境界距離Dとを比較し、D>Dc0であった場合には、自車がカーブ外に位置すると判定する。また、D>Dc0でなかった場合には、自車がカーブ内に位置すると判定する。これは、D=Dc0の場合に自車がカーブの入口に到達することを利用している。
【0035】
さらに、車両制御ECU12は、補正接近離間評価指標KdB_c(a)の現在値KdB_c(a)_pが、ブレーキ判別式上の閾値KdB_c_tを上回ったときを減速制御の開始時として、ROM等の記憶手段に記憶してある修正目標相対速度算出式を用いて減速制御を実行する。ここで、修正目標相対速度算出式は、自車がカーブ外に位置する場合の第1修正目標相対速度算出式と自車がカーブ内に位置する場合の第2修正目標相対速度算出式との2種類が予め上記記憶手段に記憶してあるものとする。なお、ブレーキ判別式が請求項の閾値算出式に相当し、第1修正目標相対速度算出式が請求項の修正目標相対速度算出式に相当し、第2修正目標相対速度算出式が請求項のカーブ内修正目標相対速度算出式に相当する。また、車両制御ECU12が請求項の第1記憶手段および第2記憶手段に相当する。
【0036】
ここで、補正接近離間評価指標KdB_c(a)、第1修正目標相対速度算出式、および第2修正目標相対速度算出式について説明する。
【0037】
まず、補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)について説明する。この補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)は、特許文献1や、本発明者らの「前後方向の接近に伴う危険状態評価に関する研究(第5報)」、自動車技術会学術講演会前刷集、No.38-07,pp.1-4,(2007)にも記載されているように、運転者の網膜上に投影される前方物体の見かけ上の面積の時間変化率に基づいて求めた指標であり、基本式は、下記(8)式にて表される。
【0038】
【数8】

上記(8)式において、Vrは前車との相対速度、Dは前車との車間距離、Vpは前車の速度、aは定数である。この補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)は、特許文献1に記載されているように、前車の速度を考慮して前車に対する接近離間状態を表す指標であり、(8)式から分かるように、前車に接近する相対速度が高くなるほど大きくなるとともに、各相対速度において前車との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる指標である。
【0039】
ただし、本実施形態では、自車が自車前方のカーブの外(つまり、カーブ外)に位置する場合には、前車との車間距離Dに代えて、そのカーブの入口までの距離Dsを用いるとともに、前車の速度Vpに代えて、そのカーブの入口を通過するときの自車の目標速度(以下、カーブ時目標通過速度という)Vr_Gy_offset0を用いる。また、前車との相対速度Vrに代えて、このカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0と現在速度Vs0との速度差Vr_GyAを用いる。すなわち、本実施形態では、自車がカーブ外に位置する場合には、(1)式を用いて補正接近離間状態KdB_c(a)を算出する。
【0040】
【数1】

なお、自車が自車前方に存在するカーブの内(つまり、カーブ内)に位置する場合に、前車との車間距離Dに代えて、自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの適正距離(以下、カーブ内適正道路境界距離Dcn)を用いるとともに、前車の速度Vpに代えて、カーブ内を走行する際の自車の目標速度(以下、カーブ内目標通過速度という)Vr_Gy_offsetを用いる構成としてもよい。また、前車との相対速度Vrに代えて、このカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offsetと現在速度Vs0との速度差Vr_GyBを用いる。すなわち、本実施形態では、自車がカーブ内に位置する場合には、(9)式を用いて補正接近離間状態KdB_c(a)を算出する構成としてもよい。
【0041】
【数9】

なお、カーブ内適正道路境界距離Dcは、道路の外側曲率半径Reおよびカーブ内適正旋回半径Re-Lから算出する。外側曲率半径Reとは、カーブ道路におけるカーブ部分の道路外側境界の曲率半径を意味している。
【0042】
この外側曲率半径Reは次のようにして算出する。図2は、この外側曲率半径Reと適正旋回半径Re-Lを説明する図である。外側曲率半径Reは、図2に示す正面基準点PO、左側基準点PL、右側基準点PRの位置をレーダ9によって検出することによって求める。ここで、正面基準点POは、車両幅方向中心線LOと道路外側境界(図2のような右カーブ道路の場合、ラインL)との交点である。左側基準点PLは、車両幅方向中心線LOを車幅方向左側へ左側オフセット距離WLだけオフセットした左側オフセット線LLと道路外側境界との交点である。右側基準点PRは、車両幅方向中心線LOを車幅方向右側へ右側オフセット距離WRだけオフセットした右側オフセット線LRと道路外側境界との交点である。
【0043】
なお、道路外側境界の付近に設けられた道路付帯物は、道路境界を示すものとして近似的に用いる。また、本実施形態では、左側オフセット距離WL、右側オフセット距離WRはいずれも1mに設定されている。ただし、これら左側オフセット距離WL、右側オフセット距離WRはこれに限られず、1mよりも長くてもよいし、1mよりも短くてもよい。また、左側オフセット距離WL、右側オフセット距離WRが互いに同じ長さである必要もない。
【0044】
本実施形態では、図2に示すように、正面基準点PO、左側基準点PL、右側基準点PRの位置を、車両先端における幅方向線LHと左側オフセット線LLとの交点を原点とする座標として検出する。
【0045】
外側曲率半径Reは、これら正面基準点PO、左側基準点PL、右側基準点PRの座標を(2)式へ代入することで算出する。なお、外側曲率半径Reが請求項の実外側曲率半径に相当する。
【0046】
【数2】

なお、この(2)式は、道路外側境界を円弧として含む円の中心をO(a、b)とすると、その点O−右側基準点PRを斜辺とし、他の2辺のうちの1辺が幅方向線LHと平行な直角三角形の三平方の定理を示す(10)式、点O−左側基準点PLを斜辺とし、他の2辺のうちの1辺が幅方向線LHと平行な直角三角形の三平方の定理を示す(11)式、点O−正面基準点POを斜辺とし、他の2辺のうちの1辺が幅方向線LHと平行な直角三角形の三平方の定理を示す(12)式から導出できる。また、(2)式のDが自車から正面基準点までの距離を表しており、Dが自車から左側基準点までの距離を表しており、Dが自車から右側基準点までの距離を表している。
【0047】
【数10】

【0048】
【数11】

【0049】
【数12】

適正旋回半径Re-Lは、(2)式から求めた外側曲率半径Reから、道路幅方向における道路境界から車両幅方向中心線LOまでの距離Lを引くことで求められる。なお、この距離Lの値は、前述したように、ナビゲーション装置11に地図データとして記憶されている通行区分幅や道路幅員に基づいて決定してもよいし、レーダ9等を用いて先行車の横位置を決定して、先行車の横位置および先行車との横ずれ量から決定してもよい。
【0050】
そして、カーブ内適正道路境界距離Dcは次の(13)式から算出する。この(13)式は、(12)式と同様に、点O−正面基準点POを斜辺とし、他の2辺のうちの1辺が幅方向線LHと平行な直角三角形の三平方の定理を示す式である。従って、カーブ内適正道路境界距離Dcは、自車がカーブ内適正旋回半径Re-Lの円軌道上を走行する場合の自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの距離を意味する。
【0051】
【数13】

補正接近離間評価指標KdB_c(a)の説明に戻って、前述の(8)式は、前車が存在する状況において自車のドライバが減速開始を行なうタイミングをよく示す指標であることが証明されている。そして、(1)式は、上述のように、(8)式において、Dに代えてカーブの入口までの距離Dsを用い、Vpに代えてカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0を用い、Vrに代えて、このカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0と現在速度Vs0との速度差Vr_GyAを用いている。従って、(1)式は、カーブの入口を通過するときの自車の速度をカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0としようとする場合に、ドライバが減速操作を開始する条件を示しているといえる。
【0052】
なお、(9)式は、上述のように、(8)式において、Dに代えてカーブ内適正道路境界距離Dcを用い、Vpに代えてカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetを用い、Vrに代えて、このカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetと現在速度Vs0との速度差Vr_GyBを用いている。従って、(2)式は、カーブ内を走行する際の自車の速度をカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetとしようとする場合に、ドライバが減速操作を開始する条件を示しているといえる。
【0053】
次に、修正目標相対速度算出式について説明する。まず、第1修正目標相対速度算出式は(14)式(目標相対速度算出式)を修正したものである。そこでまず、この目標相対速度算出式を説明する。
【0054】
【数14】

目標相対速度算出式は、以下の(15)式(接近離間状態評価指標関係式)、および(15)式を微分することで得られる(16)式(接線式)とから求めることができる。
【0055】
【数15】

【0056】
【数16】

これら(14)式〜(16)式において、Dは、自車進行方向の延長線上に位置し、自車の前方に存在するカーブの道路境界又はその付近に設けられた道路付帯物と自車との距離(つまり、前述の実道路境界距離)であり、Dc0は、その道路境界又は道路付帯物とカーブ道路の入口(直線部終了位置)との距離(つまり、前述の適正道路境界距離)である。また、D0は減速制御開始時のD、Vr_Gy_tはカーブの入口地点に対する自車の相対速度の目標値(目標相対速度)であり、KdBは接近離間状態評価指標、KdB0は減速制御開始時のKdB、KdB_tはKdBの目標値(目標接近離間状態評価指標)である。
【0057】
(15)式は、自車の前方に存在するカーブの入口に対する接近離間状態を表す接近離間状態評価指標KdBと、カーブ入口到達距離(D−Dc0)と、上記目標相対速度(カーブの入口地点に対する自車の相対速度の目標値)との関係を示す式であり、目標相対速度Vr_Gy_tが高くなるほど接近離間状態評価指標KdBが大きくなるとともに、同一の目標相対速度Vr_Gy_tにおいてはカーブ入口到達距離(D−Dc0)が短くなるほど接近離間状態評価指標KdBの増加勾配が急峻になる式である。この(15)式のKdBに(16)式の目標接近離間状態評価指標KdB_tを代入して整理すると、(14)式で示す目標相対速度算出式が得られる。
【0058】
そして、(14)式(目標相対速度算出式)に対して、距離D=Dc0における目標相対速度を負側にカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0だけオフセットさせるとともに、D=D0からDc0までは、(17)式に示す比率p1を(14)式によって算出できる目標相対速度Vr_Gy_tに乗じて得られる速度で変化するようにした式が第1修正目標相対速度算出式である。
【0059】
【数17】

すなわち、第1修正目標相対速度算出式は、(18)式に示す式変形の後、(18)式のVr_Gy0項を右辺に移項することによって得られる(19)式である。
【0060】
【数18】

【0061】
【数19】

図4(c)は、(14)式から算出される目標相対速度Vr_Gy_tの変化曲線と、(19)式で示す第1修正目標相対速度算出式から算出される第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0の変化曲線とを比較して示すグラフである。このグラフからも分かるように、第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0は、距離Dc0においてカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0となる。なお、前述のように、相対速度はカーブ入口地点に対するものであるので、この相対速度は自車速度Vs0と正負が逆であるのみで絶対値は自車速度Vs0に等しい。
【0062】
続いて、第2修正目標相対速度算出式について説明する。第2修正目標相対速度算出式は(19)式(第1修正目標相対速度算出式)を修正したものである。詳しくは、図5に示すように、第1修正目標相対速度算出式に対して、距離D=Dc0における第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0を、正側にカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetとカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0との差分だけオフセットさせるとともに、カーブ入口到達距離(D−Dc0)を、負側に適正道路境界距離Dc0とカーブ内適正道路境界距離Dcnとの差分だけオフセットさせる。また、(20)式に示す比率p2を(19)式によって算出できる第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0に乗じて得られる速度になるようにするとともに、(21)式に示す比率qをカーブ入口到達距離(D−Dc0)に乗じて得られる距離になるようにした式が第2修正目標相対速度算出式である。
【0063】
【数20】

【0064】
【数21】

すなわち、第2修正目標相対速度算出式は、(22)式に示す式変形の後、(22)式のVr_Gy0項を右辺に移項することによって得られる(23)式である。
【0065】
【数22】

【0066】
【数23】

次に、自車がカーブRのカーブ道路に進入する状況を例として、車両制御ECU12の実行する減速制御処理について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。この減速制御処理は、自車の進行方向前方の道路がカーブする場合に実行するものであり、路車間通信装置8を介してカーブ情報を受信することで実行を開始する。
【0067】
まず、ステップS1では、カーブR、カーブにおける路面摩擦係数μ、カーブの出入口地点の座標(緯度経度)、カーブの幅員、車線数、車線毎の幅員などを含むカーブ情報を取得する。また、自車の速度Vs0、自車の現在位置の座標(緯度経度)などを含む車両情報も取得する。よって、車両制御ECU12が請求項の速度取得手段および曲率半径取得手段に相当する。
【0068】
ステップS2では、カーブ道路におけるカーブRを得て、ステップS3に移る。なお、カーブRは前述したように、例えば路車間通信によって取得したデータを用いる構成としてもよいし、前述したようにして求めた外側曲率半径Reを用いる構成としてもよい。よって、車両制御ECU12は請求項の道路曲率半径算出手段にも相当する。ここでは、本フローではカーブRとして外側曲率半径Reを用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0069】
ステップS3では、レーダ9によって検出された自車前方のカーブの道路境界又はその付近に設けられた道路付帯物の位置に基づいて、自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの実際の距離(つまり、実道路境界距離D)を算出し、ステップS4に移る。よって、車両制御ECU12が請求項の実距離算出手段に相当する。
【0070】
ステップS4では、自車正面のカーブの入口地点から道路外側境界までの距離(適正道路境界距離Dc0)を前述したように(7)式により算出し、ステップS5に移る。ステップS5では、ステップS3で求めた実道路境界距離DとステップS4で算出した適正道路境界距離Dc0とから、自車から自車正面のカーブの入口地点までの距離、すなわち、カーブ入口到達距離Dsを(24)式により算出し、ステップS6に移る。よって、車両制御ECU12が請求項の距離取得手段に相当する。
【0071】
【数24】

ステップS6では、適正道路境界距離Dc0と実道路境界距離Dとを比較することで前述のカーブ内外判定を行う。よって、車両制御ECU12が請求項のカーブ内外判定手段に相当する。具体的には、実道路境界距離Dが適正道路境界距離Dc0よりも大きいか否かを判定する。そして、D>Dc0であった場合(ステップS6でYES)には、自車がカーブ外に位置すると判定し、ステップS7に移る。また、D>Dc0でなかった場合(ステップS6でNO)には、自車がカーブ内に位置すると判定し、ステップS16に移る。
【0072】
ステップS7では、ステップS1で取得したカーブ情報を参照し、カーブの入り口を通過するときに目標とする目標横G(Gy_t0)を、カーブにおける路面摩擦係数μに基づいて算出し、ステップS8に移る。この目標横G(Gy_t0)については、カーブを走行する際、自車のステアリング操作時のタイヤの横力が確保できる程度となるように、クーロンの摩擦の法則に基づいて算出すればよい。なお、この目標横G(Gy_t0)が請求項の第1目標横加速度に相当する。
【0073】
ステップS8では、自車が、上記ステップS7で算出した目標横G(Gy_t0)でカーブを曲がることのできる速度を、カーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0として、(25)式を用いて設定し、ステップS9に移る。よって、車両制御ECU12が請求項のカーブ時目標速度設定手段に相当する。
【0074】
【数25】

ステップS9では、ステップS8で設定したカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0と現在速度Vs0との速度差Vr_GyAを算出し、その速度差Vr_GyAと、ステップS8で設定したカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0と、ステップS5で算出したカーブ入口到達距離Dsとを前述の(1)式に代入することで、補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)の現在値(KdB_c(a)_p)を算出し、ステップS10に移る。なお、(1)式の定数aは予め実験に基づいて設定した値(たとえば0.3)を用いる。よって、車両制御ECU12が請求項の第1速度差算出手段および評価指標算出手段に相当する。
【0075】
ステップS10では、自車の減速制御を開始するかどうかを判断するため、図4(a)に示す状態となったか否か、すなわち、ステップS9にて算出した補正接近離間状態評価指標の現在値KdB_c(a)_pが、(26)式で示すブレーキ判別式とステップS5で算出したカーブ入口到達距離Dsとから定まる閾値KdB_c_t0を上回ったかどうかを判断する。そして、KdB_c(a)_p>KdB_c_t0であった場合(ステップS10でYES)には、ステップS11に移る。また、KdB_c(a)_p>KdB_c_t0でなかった場合(ステップS10でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。よって、車両制御ECU12が請求項の閾値判定手段に相当する。
【0076】
【数26】

このブレーキ判別式は、先行車両に自車が接近する状況において、テストドライバに対して先行車両に衝突しないようブレーキのコントロールが可能なぎりぎりのタイミングでブレーキ操作を開始するように教示して実験したときに(8)式から算出できる補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)と、ブレーキ操作開始時の先行車両までの距離との関係を示した近似式である(27)式を修正した式である。すなわち、(26)式で示すブレーキ判別式は、(27)式のDに、Dsを代入した式である。
【0077】
【数27】

(27)式は、先行車両に自車が接近する状況におけるドライバの減速行動の開始点をよく示していることが既に知られている。従って、(26)式は、地点D-Dc0、すなわち、カーブ道路の入口地点に接近する状況におけるドライバの減速行動の開始点をよく示す式であるといえる。
【0078】
ステップS11では、ステップS10で肯定判断したときの相対速度Vr_Gy0(=−Vs0)と、ステップS3で算出したカーブ入口到達距離Ds(=D-Dc0)とを(28)式に代入することで、接近離間状態評価指標の初期値KdB0を算出し、ステップS12に移る。なお、この(28)式は(15)式を変形したものである。
【0079】
【数28】

ステップS12では、(19)式で示す第1修正目標相対速度算出式を用いて第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0を算出し、ステップS13に移る。具体的には、まず、ステップS5と同様にして現在のカーブ入口到達距離Ds(=D-Dc0)を算出する。そして、この現在のカーブ入口到達距離Ds(=D-Dc0)と、ステップS11で算出した接近離間状態評価指標の初期値KdB0と、その初期値KdB0の算出に用いたカーブ入口到達距離(D0-Dc0)と、ステップS10で肯定判断したときの相対速度Vr_Gy0とを(19)式に代入することで第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0を算出する。よって、車両制御ECU12が請求項の第1目標相対速度算出手段に相当する。
【0080】
なお、前述のように、(19)式は(14)式を修正した式である。そして、(14)式は、(15)式と(16)式とから求めることができる式であり、(16)式は、図4(b)に示すように、減速開始判定時における接近離間状態評価指標の勾配(=dKdB/dD)を有する直線である。従って、このステップS12で算出する第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0は、減速開始判定時における接近離間状態評価指標の勾配(=dKdB/dD)に応じた変化をする。また、(19)式は、カーブ入口到達距離Ds(=D-Dc0)の三次関数であり、第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0は、図4(c)に示す形状で変化する。
【0081】
ステップS13では、自車の現在速度Vs0を取得し、この取得した現在速度Vs0から、現在の相対速度Vr_Gy_pを求め、この現在の相対速度Vr_Gy_pとステップS12で算出した第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0とを(29)式に代入することで、自車に発生すべき目標相対減速度GDp0を算出する。よって、車両制御ECU12が請求項の第1目標減速度算出手段に相当する。なお、(29)式において、Tは、現在の相対速度Vr_Gy_pと第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0との差分を目標相対減速度GDp0に変換するための除数であり、適宜、設定されるものである。
【0082】
【数29】

ステップS14では、ステップS13で算出した目標相対減速度GDp0をVSC_ECU1へ出力し、ステップS15に移る。VSC_ECU1は、車両制御ECU12から入力された目標相対減速度GDp0が自車に発生するように、図示しないブレーキアクチュエータを用いた減速制御を実行する。よって、VSC_ECU1が請求項の第1制御手段に相当する。
【0083】
ステップS15では、減速制御終了条件が成立したか否かを判断する。この減速制御終了条件として、例えば、自車が停止したことや、補正接近離間状態評価指標の現在値KdB_c(a)_pがブレーキ判別式から定まる閾値KdB_c_t0を下回ったりしたこと、車速Vs0がカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0となったことなどを用いることができる。そして、減速制御終了条件が成立していた場合(ステップS15でYES)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。また、減速制御終了条件が成立していない場合(ステップS15でNO)にはステップS14に戻ってフローを繰り返す。
【0084】
カーブ内外判定によって自車がカーブ内に位置すると判定された場合に移って、ステップS16では、自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの適正距離(つまり、カーブ内適正道路境界距離Dc)を前述したように(13)式により算出し、ステップS17に移る。なお、(13)式では、レーダ9によって検出された道路外側境界の位置に基づいて算出した外側曲率半径(カーブの実外側曲率半径)Reを用いて、カーブを走行中の自車のカーブ内適正旋回半径(式中のRe-L)を算出し、それら実外側曲率半径およびカーブ内適正旋回半径に基づいて、カーブ内適正道路境界距離Dcを算出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、実外側曲率半径Reの代わりに、路車間通信によって取得したカーブRを用いる構成としてもよい。なお、車両制御ECU12が請求項のカーブ内旋回半径算出手段およびカーブ内適正距離算出手段に相当する
ステップS17では、自車が道路外側境界に適正な範囲を超えて接近しているか否か、すなわち、ステップS3で求めた実道路境界距離Dが、ステップS16で算出したカーブ内適正道路境界距離Dcを下回ったかどうかを判断する。そして、D<Dcであった場合(ステップS17でYES)には、ステップS18に移る。また、D<Dcでなかった場合(ステップS17でNO)には、ステップS16に戻ってフローを繰り返す。
【0085】
ステップS18では、ステップS1で取得したカーブ情報を参照し、カーブ内を走行する際に目標とする目標横G(Gy_t)を、カーブにおける路面摩擦係数μに基づいて算出し、ステップS19に移る。この目標横G(Gy_t)については、カーブを走行する際、自車のステアリング操作時のタイヤの横力が確保できる程度となるように、クーロンの摩擦の法則に基づいて算出すればよい。なお、この目標横G(Gy_t)が請求項の第2目標横加速度に相当する。
【0086】
ステップS19では、自車が、ステップS18で算出した目標横G(Gy_t)でカーブを曲がることのできる速度を、カーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetとして、(30)式を用いて設定し、ステップS20に移る。よって、車両制御ECU12が請求項のカーブ内目標速度設定手段に相当する。
【0087】
【数30】

ステップS20では、(23)式で示す第2修正目標相対速度算出式を用いて第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterを算出し、ステップS21に移る。具体的には、まず、ステップS16と同様にして現在のカーブ内適正道路境界距離Dcを算出する。そして、この現在のカーブ内適正道路境界距離Dcと、ステップS11で算出した接近離間状態評価指標の初期値KdB0と、その初期値KdB0の算出に用いたカーブ入口到達距離(D0-Dc0)と、ステップS10で肯定判断したときの実道路境界距離D0と、現時点での相対速度Vr_Gy0とを(23)式に代入することで第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterを算出する。よって、車両制御ECU12が請求項の第2目標相対速度算出手段に相当する。なお、車両制御ECU12は請求項の第2速度差算出手段にも相当する。また、第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterは、図5に示す形状で変化する。
【0088】
なお、本実施形態では、自車がカーブ内に位置すると判定された場合に第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterを算出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車がカーブ内に位置すると判定された場合であって、自車の減速制御を開始するかどうかの判断で肯定判断された場合に第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterを算出する構成としてもよい。
【0089】
この場合には、ステップS19で設定したカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetと現在速度Vs0との速度差Vr_GyBを算出し、その速度差Vr_GyBと、ステップS18で設定したカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetと、ステップS15で算出したカーブ内適正道路境界距離Dcとを前述の(9)式に代入することで、補正接近離間状態評価指標KdB_c(a)の現在値(KdB_c(a)_p)を算出する。なお、(9)式の定数aは予め実験に基づいて設定した値(たとえば0.3)を用いる。
【0090】
そして、自車の減速制御を開始するかどうかを判断するため、上述のようにして算出した補正接近離間状態評価指標の現在値KdB_c(a)_pが、(31)式で示すブレーキ判別式とステップS15で算出したカーブ内適正道路境界距離Dcとから定まる閾値KdB_c_tを上回ったかどうかを判断する。そして、KdB_c(a)_p>KdB_c_tであった場合に、(23)式で示す第2修正目標相対速度算出式を用いて第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterを算出する構成とすればよい。また、KdB_c(a)_p>KdB_c_tでなかった場合には、ステップS16に戻ってフローを繰り返す構成とすればよい。
【0091】
【数31】

なお、(31)式で示すブレーキ判別式は、前述の(27)式を修正した式である。すなわち、(31)式で示すブレーキ判別式は、(27)式のDに、Dcを代入した式である。従って、(31)式は、カーブ内においてカーブの道路外側境界に接近する状況におけるドライバの減速行動の開始点をよく示す式であるといえる。
【0092】
これによれば、自車がカーブ内に位置すると判定された場合であっても、自車の減速制御を開始するかどうかの判断で肯定判断されるまでは、カーブ内に進入する前に設定した第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0での走行を継続することになる。よって、対象とするカーブのカーブRが一定である場合には、新たに第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterを算出する手間をかけずに、カーブ内に進入した後もそのままカーブ外側へ逸脱せずにカーブ内を滑らかに走行することができる。
【0093】
ステップS21では、自車の現在速度Vs0を取得し、この取得した現在速度Vs0から、現在の相対速度Vr_Gy_pを求め、この現在の相対速度Vr_Gy_pとステップS20で算出した第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterとを(32)式に代入することで、自車に発生すべき目標相対減速度GDpを算出する。よって、車両制御ECU12が請求項の第2目標減速度算出手段に相当する。なお、(32)式において、Tは、現在の相対速度Vr_Gy_pと第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterとの差分を目標相対減速度GDpに変換するための除数であり、適宜、設定されるものである。
【0094】
【数32】

そして、ステップS22では、ステップS21で算出した目標相対減速度GDpをVSC_ECU1へ出力し、ステップS23に移る。VSC_ECU1は、車両制御ECU12から入力された目標相対減速度GDpが自車に発生するように、図示しないブレーキアクチュエータを用いた減速制御を実行する。よって、VSC_ECU1が請求項の第2制御手段に相当する。
【0095】
続くステップS23では、減速制御終了条件が成立したか否かを判断する。この減速制御終了条件として、例えば、自車が停止したことや、補正接近離間状態評価指標の現在値KdB_c_pがブレーキ判別式から定まる閾値KdB_c_tを下回ったりしたことなどを用いることができる。そして、減速制御終了条件が成立した場合(ステップS23でYES)には、フローを終了する。また、減速制御終了条件が成立していない場合(ステップS23でNO)にはステップS22に戻ってフローを繰り返す。
【0096】
このように動作する本運転支援システム100では、カーブ手前での減速制御開始タイミングの判定に、カーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0を考慮した補正接近離間状態評価指標の現在値KdB_c(a)_pを用いており、この現在値KdB_c(a)_pが(26)式で示すブレーキ判別式から定まる閾値KdB_c_t0を上回った時点を減速制御開始時点としている。従って、カーブをカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0で通過しようとする際のドライバの感覚に合ったタイミングで減速制御を開始することができる。
【0097】
そして、減速制御においては、(19)式で示す第1修正目標相対速度算出式を用いて算出した第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0に基づいて減速制御を行っている。この第1修正目標相対速度算出式によって算出される第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0は、図4(c)にも示すように滑らかに変化する。また、第1修正目標相対速度算出式は接近離間状態評価指標KdBに基づいた式であり、接近離間状態評価指標KdBは、ドライバの危険感をよく示す指標であることが学会等で既に認められている。従って、第1修正目標相対速度算出式を用いて算出した第1修正目標相対速度Vr_Gy_t_after0に基づいて減速制御を行うことで、ドライバの危険感に適合した滑らかな制御を行うことができる。
【0098】
しかも、図4(c)に示すように、距離Dc0の地点、すなわちカーブの入口地点においてカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0となることから、カーブ道路の直線部が終了し曲線部に入るときにも速度の変曲点が存在せず、滑らかに走行することが可能となる。
【0099】
また、対象とするカーブのカーブRが一定である場合には、図6に示すように、カーブ内に進入した後も自車両がD=Dc0の状態を保ったままカーブ外側へ逸脱せずにカーブ内を滑らかに走行することができる。なお、図6は、カーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0で曲率が一定のカーブに自車両が進入した場合の一例を説明する図である。
【0100】
一方、本運転支援システム100では、カーブ内での減速制御においては、(23)式で示す第2修正目標相対速度算出式を用いて算出した第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterに基づいて減速制御を行っている。この第2修正目標相対速度算出式によって算出される第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterは、図5にも示すように滑らかに変化する。また、第2修正目標相対速度算出式は第1修正目標相対速度算出式と同様に接近離間状態評価指標KdBに基づいた式であり、接近離間状態評価指標KdBは、ドライバの危険感をよく示す指標であることが学会等で既に認められている。従って、第2修正目標相対速度算出式を用いて算出した第2修正目標相対速度Vr_Gy_t_afterに基づいて減速制御を行うことで、ドライバの危険感に適合した滑らかな制御を行うことができる。
【0101】
例えば、図7に示すように、カーブRがカーブ途中でより大きいカーブRに変化(図7中のRa0からRanへの変化)する場合であっても、自車正面に位置する道路外側境界を接近離間状態評価指標の対象とするとともに、自車先端からその道路外側境界までの距離Dがカーブ内適正道路境界距離Dcである場合における目標相対速度がカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetとなるように減速制御を行うことになる。よって、カーブ途中でより大きいカーブRに変化し、実道路境界距離Dがカーブ内適正道路境界距離Dcよりも小さくなってしまった場合にも、実道路境界距離Dがカーブ内適正道路境界距離Dcよりも小さくなった分だけ、目標相対速度も小さくなるように減速制御が行われる。従って、カーブ途中でカーブRが大きくなるような場合であっても、カーブ外側へ逸脱せずに済むとともに、ドライバの危険感に適合した滑らかな減速制御を行うことが可能になる。なお、図7は、カーブRがカーブ途中で小から大へ変化する場合の減速制御を説明するための模式図である。
【0102】
さらに、図8に示すように、対象とするカーブのカーブ入り口手前の路面が凍結等で低μとなっており、第1修正目標相対速度算出式を用いて算出した第1修正目標相対速度に基づいて減速制御を行っても、カーブの入口までにカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0まで減速できなかった場合でも、自車正面に位置する道路外側境界を接近離間状態評価指標の対象とするとともに、自車先端からその道路外側境界までの距離Dがカーブ内適正道路境界距離Dcである場合における目標相対速度がカーブ内目標通過速度Vr_Gy_offsetとなるように減速制御を行うことになる。よって、カーブの入口までにカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0まで減速できず、アンダーステア状態でカーブ内に進入した場合にも、実道路境界距離Dが適正道路境界距離Dcよりも小さくなった分だけ、目標相対速度も小さくなるように減速制御が行われる。従って、カーブ内へカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0以上で進入し、アンダーステア状態となった場合にも、カーブ外側へ逸脱せずに済むとともに、ドライバの危険感に適合した滑らかな減速制御を行うことが可能になる。なお、図8は、カーブ入り口手前の低μ路によってカーブの入口までにカーブ時目標通過速度Vr_Gy_offset0まで減速できなかった場合の減速制御を説明するための模式図である。
【0103】
また、車両制御ECU12は、自車走行中に所定周期で逐次ステアリング切れ角の適否を判定し、ステアリング切れ角が適切でない場合にはステアリング切れ角の自動制御を行う構成としてもよい。よって、車両制御ECU12は請求項のステアリング切り角適否判断手段にも相当する。以下では、このステアリング切れ角の適否の判定およびステアリング切れ角の自動制御についての説明を行う。
【0104】
まず、前述のカーブ内外判定で自車がカーブ内に位置すると判定した場合には、ステアリング切れ角の適否の判定は、前述したようにしてカーブ内適正道路境界距離Dcを算出し、そのカーブ内適正道路境界距離Dcと実道路境界距離Dとを比較することで行う。
【0105】
図9は、カーブ道路を通過中の車両のカーブ内適正道路境界距離Dcを示す図である。この図9に示す車両はカーブ内適正旋回半径Re-Lにて走行している状態であり、このように、車両がカーブ内適正旋回半径Re-Lにて走行している状態では実道路境界距離Dはカーブ内適正道路境界距離Dcと等しい。これに対して、図10に示すように、車両が、カーブ内適正旋回半径Re-Lの旋回軌道を外側へ外れる状態、すなわち、そのままでは車両が道路外側境界に衝突または道路を外側へはみ出してしまう状態では、実道路境界距離Dはカーブ内適正道路境界距離Dcよりも短い。
【0106】
従って、カーブ内適正道路境界距離Dcと実道路境界距離Dとを比較して、実道路境界距離Dのほうがカーブ内適正道路境界距離Dcよりも短い場合には、ステアリング切り角が不適切であると判定する。
【0107】
また、前述のカーブ内外判定で自車がカーブ外に位置すると判定した場合には、ステアリング切れ角の適否の判定は、前述したようにして算出した適正道路境界距離Dc0と実道路境界距離Dとを比較し、実道路境界距離Dのほうが適正道路境界距離Dc0よりも短い場合に、ステアリング切り角が不適切であると判定する。
【0108】
次に、車両制御ECU12の実行する操舵制御関連処理の一例を図11のフローチャートを用いて説明する。なお、この図11に示す操舵制御関連処理は所定の繰り返し周期で繰り返し実行する。また、ここでは、前述のカーブ内外判定で自車がカーブ内に位置すると判定した場合を例に挙げて説明を行う。
【0109】
まず、ステップS101では、レーダ9を用いて、正面基準点PO、左側基準点PL、右側基準点PRを検出し、ステップS102に移る。ステップS31においてこれら3つの基準点が必ず検出できるとは限らない。一方で、レーダ9によって、道路外側境界の他の部分が検出できている場合がある。その場合には、検出できている道路外側境界の他の部分の位置を用いて基準点を決定する。よって、車両制御ECU12が請求項の基準点検出手段に相当する。
【0110】
そこで、ステップS102では、正面基準点PO、左側基準点PL、右側基準点PRを全て検出したか否かを判断する。そして、3つの基準点を全て検出できた場合(ステップS102でYES)には、ステップS104に移る。また、3つの基準点のうち少なくとも1つの基準点を検出できなかった場合(ステップS102でNO)には、ステップS33に移る。
【0111】
ステップS103では、ステップS101で検出した基準点と合わせて、基準点が3点となるように、不足分の基準点を決定し、ステップS104に移る。例えば、右側オフセット線LR上に道路境界がない場合には、右側基準点PRを検出することができない。この場合、車両幅方向中心線POと左側オフセット線LLとの間を2等分する中間線と道路外側境界との交点PL_2を、右側基準点PRに代わる基準点に決定する。なお、この交点PL_2の位置はレーダ9によって検出したものであるが、簡易的に、2つの基準点PO、PLを用いた補間により、それら2つの基準点PO、PLの中点を基準点としてもよい。このように、基準点が2つしか検出できなかった場合には、その2つの基準点間の検出点または補間点を3つ目の基準点とする。また、2つ以上の基準点が検出できなかった場合にも、実際に検出できた道路外側境界上の点から補間により基準点を作成すればよい。
【0112】
また、ステップS104では、衝突回避が必要な状態か否かを判断する。衝突回避が必要な状態とは、ステップS101で検出した基準点のうちの1つが内側道路境界上の点である場合である。ステップS101で検出した基準点のうちの1つが内側道路境界上の点である場合に、前方のカーブ道路形状に沿うようにステアリング切り角を制御してしまうと、道路内側境界に衝突、あるいは、道路内側境界をはみ出してしまう。そのため、衝突回避のためのステアリング制御が必要となる。
【0113】
ステップS104は、具体的には、自車から左側基準点PLまでの距離DL、自車から正面基準点POまでの距離D、自車から右側基準点PRまでの距離DRの関係が、DL、D、DRの順に増加する関係であるか、または、DL、D、DRの順に減少する関係である場合には、3つの基準点は全て道路外側境界上の点であると考えられるので、衝突回避は必要ではない(ステップS104でNO)として、ステップS105に移る。一方、DL、D、DRの関係が上記以外である場合には衝突回避が必要(ステップS104でYES)として、ステップS111へ進む。
【0114】
ステップS105では、自車から左側基準点PLまでの距離DL、自車から正面基準点POまでの距離D、自車から右側基準点PRまでの距離DRを算出し、ステップS106に移る。なお、距離Dは、前述した実道路境界距離にあたる。
【0115】
ステップS106では、これら3つの距離DL、D、DRと、左側オフセット距離WL、右側オフセット距離WRを前述の(2)式に代入することで、外側曲率半径Reを算出し、ステップS107に移る。ステップS107では、ステップS106で算出した外側曲率半径Reから、車両幅方向における車幅方向中心線から道路境界までの距離Lを引くことで、カーブ内適正旋回半径Re-Lを算出し、ステップS108に移る。
【0116】
ステップS108では、ステップS106で算出した外側曲率半径Re、ステップS107で算出したカーブ内適正旋回半径Re-Lを前述の(13)式に代入して、カーブ内適正道路境界距離Dcnを算出し、ステップS109に移る。
【0117】
ステップS109では、ステップS108で算出したカーブ内適正道路境界距離Dcnと、ステップS105で算出した実道路境界距離Dとを比較する。そして、実道路境界距離Dがカーブ内適正道路境界距離Dcn以上である場合(ステップS109でNO)には、ステアリング切り角の制御を行うことなくフローを終了する。また、実道路境界距離Dがカーブ内適正道路境界距離Dcnよりも短い場合(ステップS109でYES)には、ステップS110に移る。
【0118】
ステップS110では、ステアリング切り角制御を実行する。ここで、図12を用いて、ステアリング切り角制御についての詳細な説明を行う。なお、図12は、ステアリング切り角制御のフローの一例を示すフローチャートである。
【0119】
まず、ステップ201では、推定外側曲率半径Raを下記(6)式から算出し、ステップS202に移る。(6)式において、Dcnはカーブ内適正道路境界距離、Lは道路幅方向における道路境界から車両幅方向中心線LOまでの距離である。なお、この推定外側曲率半径Raは、ステアリング切り角制御用の外側曲率半径である。これに対して、前述の外側曲率半径Reは、ステアリング切り角の適否判定用の外側曲率半径である。ただし、ステアリング切り角の制御に前述の外側曲率半径Reを用いてもよい。また、(6)式は、直角三角形の三平方の定理から導出できる式である。
【0120】
【数6】

ステップS202では、ステップS201で算出した推定外側曲率半径Ra等を下記(4)式に代入することで、タイヤ切れ角θを算出し、ステップS203に移る。なお、(4)式において、WBは車両ホイールベースである。
【0121】
【数4】

ステップS203では、ステップS202で算出したタイヤ切れ角θを下記(5)式に代入することで得られる値を、目標ステアリング切り角Θに設定し、ステップS204に移る。よって、車両制御ECU12が請求項の目標角設定手段に相当する。なお、(5)式において、Nはステアリング切り角Θとタイヤ切れ角θとの比率(定数)である。
【0122】
【数5】

ステップS204では、ステアリング切り角を実際に変化させる。具体的には、ステップS203で設定した目標ステアリング切り角ΘをEPS_ECU6へ送信する。EPS_ECU6は、舵角センサ2によってステアリング切り角を検出しつつEPSアクチュエータ7を制御して、ステアリング切り角を所定の変化速度で目標ステアリング切り角Θに近づく方向に変化させる。よって、EPS_ECU6が請求項のステアリング切り角制御手段に相当する。そして、ステップS110のステアリング切り角制御を実行した後は、フローを終了する。
【0123】
図11に戻って、ステップS111では、3つの距離DL、D、DRのうち最も短い距離をカーブ内適正道路境界距離Dcと設定し、ステップS112に移る。そして、ステップS112では、前述したのと同様にしてステアリング切り角制御を実行してステップS101に戻り、フローを繰り返す。このステップS112にてステアリング切り角制御を実行することで、自車の向きが少しずつ走行中の道路に沿った向きとなり、道路内側境界への衝突等が回避される。そして、3つの基準点がいずれも道路外側境界上の点となると、ステップS104で衝突回避は必要ではないとして、ステップS105以降の処理に移ることになる。
【0124】
また、ここでは、カーブ内外判定で自車がカーブ内に位置すると判定した場合の操舵制御関連処理の一例を挙げたが、カーブ内外判定で自車がカーブ外に位置すると判定した場合の操舵制御関連処理についても同様にして行う構成とすればよい。
【0125】
より詳しくは、ステップS109において、カーブ内適正道路境界距離Dcの代わりに、適正道路境界距離Dc0と実道路境界距離Dとを比較し、実道路境界距離Dが適正道路境界距離Dc0以上である場合には、ステアリング切り角の制御を行うことなくフローを終了する一方、実道路境界距離Dが適正道路境界距離Dc0よりも短い場合にステアリング切り角制御を実行する構成とすればよい。なお、適正道路境界距離Dc0については、前述したようにして算出する構成とすればよい。
【0126】
また、この場合、ステアリング切り角制御においては、推定外側曲率半径Raを下記(3)式から算出する構成とすればよい。なお、(3)式において、Dc0は適正道路境界距離、Lは道路幅方向における道路境界から車両幅方向中心線LOまでの距離である。
【0127】
【数3】

以上の構成によれば、レーダ9によって検出される道路境界等の位置に基づいて、外側曲率半径Re、適正旋回半径Re-L、およびカーブ内適正道路境界距離Dcnや適正道路境界距離Dc0を順に算出している。すなわち、これら外側曲率半径Re、適正旋回半径Re-L、カーブ内適正道路境界距離Dcn、適正道路境界距離Dc0をいずれもレーダ9によって検出される道路境界等の位置から算出している。また、実道路境界距離Dもレーダ9によって検出される道路境界等の位置から算出している。そのため、装置構成を簡素化することができ、且つ、処理も比較的簡易となる。
【0128】
また、ステアリング切り角の適否を判断するための情報として、レーダ9によって実際に検出した道路境界等の位置を用いているので、地図情報に基づいて道路形状を判定し、判定した道路形状に基づいてステアリング切り角の適否を判定するよりも精度よくステアリング切り角の適否を判定することができる。
【0129】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1 VSC_ECU(第1制御手段、第2制御手段)、2 舵角センサ、3 Gセンサ、4 ヨーレートセンサ、5 ENG_ECU、6 EPS_ECU(ステアリング切り角制御手段)、7 EPSアクチュエータ、8 路車間通信装置、9 レーダ(位置検出センサ)、10 操作SW、11 ナビゲーション装置、12 車両制御ECU(旋回半径算出手段、適正距離算出手段、第1記憶手段、第2記憶手段、速度取得手段、曲率半径取得手段、道路曲率半径算出手段、距離取得手段、実距離算出手段、カーブ内外判定手段、カーブ時目標速度設定手段、第1速度差算出手段、評価指標算出手段、閾値判定手段、第1目標相対速度算出手段、第1目標減速度算出手段、カーブ内旋回半径算出手段、カーブ内適正距離算出手段、カーブ内目標速度設定手段、第2速度差算出手段、第2目標相対速度算出手段、第2目標減速度算出手段、ステアリング切り角適否判断手段、基準点検出手段、目標角設定手段)、100 運転支援システム(車両用挙動制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が、自車の前方に存在するカーブの入口に到達するまでの距離であるカーブ入口到達距離を逐次取得する距離取得手段と、
前記自車の速度を取得する速度取得手段と、
前記カーブの曲率半径を取得する曲率半径取得手段と、
前記カーブの曲率半径、及び前記自車が前記カーブの入口を通過するときに目標とする第1目標横加速度から、前記自車が前記カーブの入口を通過するときの目標速度となるカーブ時目標通過速度を設定するカーブ時目標速度設定手段と、
前記カーブ時目標通過速度に対する前記自車速度の速度差を算出する第1速度差算出手段と、
運転者の網膜上に投影される前方物体の見かけ上の面積の時間変化率に基づいて求められた指標であって、前記自車の前方に存在するカーブの入口に対する前記自車の接近離間状態を、前記カーブ時目標通過速度を考慮して表す指標として、前記カーブ時目標通過速度に対する前記自車速度の速度差が大きくなるほど大きくなるとともに、同一の速度差においては前記カーブ入口到達距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる補正接近離間状態評価指標を逐次算出する評価指標算出手段と、
前記評価指標算出手段の算出した補正接近離間状態評価指標が、当該補正接近離間状態評価指標の閾値算出式から定まる閾値を上回るかどうかを判定する閾値判定手段と、
前記自車の前方に存在するカーブの入口に対する接近離間状態を表す接近離間状態評価指標と、前記カーブ入口到達距離と、前記カーブの入口に対する相対速度との関係を示す式であって、前記相対速度が高くなるほど当該接近離間状態評価指標が大きくなるとともに、同一の相対速度においては前記カーブ入口到達距離が短くなるほど当該接近離間状態評価指標の増加勾配が急峻になる式を接近離間状態評価指標関係式とし、
前記接近離間状態評価指標関係式によって表される曲線の接線を示す式であって、接近離間状態評価指標関係式を、前記カーブ入口到達距離で微分することにより求まり、当該接近離間状態評価指標と前記カーブ入口到達距離との関係を示す式を接線式とし、
これら接近離間状態評価指標関係式と接線式とから求まり、前記カーブ入口到達距離に基づいて目標相対速度が定まる目標相対速度算出式としたとき、
前記目標相対速度算出式を、前記カーブの入口における目標相対速度が前記カーブ時目標通過速度となるように、その第1修正目標相対速度が、前記目標相対速度算出式によって算出される目標相対速度に、制御開始時の自車の速度に対する、制御開始時の自車の速度と前記カーブ時目標通過速度との差の比率を乗じて得られる速度となるように修正した修正目標相対速度算出式を記憶する第1記憶手段と、
前記閾値判定手段が閾値を上回ると判定した場合に、前記第1記憶手段に記憶されている修正目標相対速度算出式と前記距離取得手段が実際に取得したカーブ入口到達距離とから第1修正目標相対速度を算出する第1目標相対速度算出手段と、
前記第1目標相対速度算出手段が算出した第1修正目標相対速度と、前記速度取得手段が取得した自車の実際の速度とから、目標減速度を算出する第1目標減速度算出手段と、
前記第1目標減速度算出手段で算出した目標減速度に基づいて自車の減速制御を実行する第1制御手段と、
前記自車の前方に存在するカーブの道路境界またはその付近に設けられた道路付帯物の位置を検出する位置検出センサと、
前記カーブの曲率半径に基づいて、前記カーブを走行中の自車のカーブ内適正旋回半径を算出するカーブ内旋回半径算出手段と、
それらカーブの曲率半径およびカーブ内適正旋回半径に基づいて、自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの適正距離をカーブ内適正道路境界距離として算出するカーブ内適正距離算出手段と、
前記カーブの曲率半径、及び前記自車が前記カーブ内を走行する際に目標とする第2目標横加速度から、前記自車が前記カーブ内を走行する際の目標速度となるカーブ内目標通過速度を設定するカーブ内目標速度設定手段と、
前記カーブ内目標通過速度に対する前記自車速度の速度差を算出する第2速度差算出手段と、
前記修正目標相対速度算出式を、目標相対速度が前記カーブ内目標通過速度となるように、その第2修正目標相対速度が、前記修正目標相対速度算出式によって算出される第1修正目標相対速度に、前記制御開始時の自車の速度と前記カーブ時目標通過速度との差に対する、前記制御開始時の自車の速度と前記カーブ内目標通過速度との差の比率を乗じて得られる速度となるように修正する一方、前記修正目標相対速度算出式におけるカーブ入口到達距離が、前記カーブ入口到達距離に、前記制御開始時の実道路境界距離と前記適正道路境界距離との差に対する、前記制御開始時の実道路境界距離と前記カーブ内適正道路境界距離との差の比率を乗じて得られる距離となるように修正したカーブ内修正目標相対速度算出式を記憶する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に記憶されているカーブ内修正目標相対速度算出式と前記カーブ内適正距離算出手段で算出したカーブ内適正道路境界距離とから第2修正目標相対速度を算出する第2目標相対速度算出手段と、前記第2目標相対速度算出手段が算出した第2修正目標相対速度と、前記速度取得手段が取得した自車の実際の速度とから、目標減速度を算出する第2目標減速度算出手段と、
前記第2目標減速度算出手段で算出した目標減速度に基づいて自車の減速制御を実行する第2制御手段と、
前記位置検出センサによって検出された道路境界または道路付帯物の位置に基づいて、自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの実際の距離を実道路境界距離として算出する実距離算出手段と、
前記カーブの曲率半径に基づいて、前記カーブを走行するとした場合の自車の適正旋回半径を算出する旋回半径算出手段と、
それらカーブの曲率半径および適正旋回半径に基づいて、自車先端から自車正面に位置する道路外側境界までの適正距離を適正道路境界距離として算出する適正距離算出手段と、
前記適正距離算出手段で算出した適正道路境界距離と前記実距離算出手段で算出した実道路境界距離との大小関係をもとに、前記自車がカーブ外に位置するかカーブ内に位置するかを判定するカーブ内外判定手段と、を含み、
前記カーブ内外判定手段で前記自車がカーブ外に位置すると判定した場合には、前記第1制御手段による自車の減速制御を実行する一方、前記カーブ内外判定手段で前記自車がカーブ内に位置すると判定した場合には、前記第2制御手段による自車の減速制御を実行することを特徴とする車両用挙動制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記評価指標算出手段は、(1)式から補正接近離間状態評価指標を算出することを特徴とする車両用挙動制御装置。
【数1】

KdB_c(a):補正接近離間状態評価指標
Vr_GyA:第1速度差算出手段が算出する速度差
a:定数
Vr_Gy_offset0:カーブ時目標速度設定手段が設定するカーブ時目標通過速度
Ds:距離取得手段が取得するカーブ入口到達距離
【請求項3】
請求項1または2において、
前記位置検出センサによって検出された道路境界または道路付帯物の位置に基づいて、前記カーブの実外側曲率半径を算出する道路曲率半径算出手段と、
道路外側境界と前記自車の車両幅方向中心線との交点である正面基準点と、車両幅方向中心線を車幅方向左側へ左側オフセット距離だけオフセットした左側オフセット線と前記道路外側境界との交点である左側基準点と、車両幅方向中心線を車幅方向右側へ右側オフセット距離だけオフセットした右側オフセット線と前記道路外側境界との交点である右側基準点とを前記位置検出センサを用いて検出する基準点検出手段をさらに備え、
前記道路曲率半径算出手段は、(2)式から前記カーブの曲率半径としての実外側曲率半径を算出することを特徴とする車両用挙動制御装置。
【数2】

Re:実外側曲率半径
WL:左側オフセット距離
WR:右側オフセット距離
D:自車から正面基準点までの距離
D:自車から左側基準点までの距離
D:自車から右側基準点までの距離
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記カーブ内外判定手段で前記自車がカーブ外に位置すると判定した場合には、前記適正距離算出手段で算出した適正道路境界距離と前記実距離算出手段で算出した実道路境界距離との比較に基づいて、前記自車のステアリング切り角の適否を判断する一方、前記カーブ内外判定手段で前記自車がカーブ内に位置すると判定した場合には、前記カーブ内適正距離算出手段で算出したカーブ内適正道路境界距離と前記実距離算出手段で算出した実道路境界距離との比較に基づいて、前記自車のステアリング切り角の適否を判断するステアリング切り角適否判断手段を含むことを特徴とする車両用挙動制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記カーブ内外判定手段で前記自車がカーブ外に位置すると判定された上で前記ステアリング切り角適否判断手段においてステアリング切り角が適切でないと判断された場合に、前記適正距離算出手段で算出した適正道路境界距離と(3)式とから推定外側曲率半径を算出し、その推定外側曲率半径と(4)式とからタイヤ切れ角を算出し、そのタイヤ切れ角と(5)式とからステアリング切り角を算出し、そのステアリング切り角を目標ステアリング切り角として設定する一方、前記カーブ内外判定手段で前記自車がカーブ内に位置すると判定された上で前記ステアリング切り角適否判断手段においてステアリング切り角が適切でないと判断された場合に、前記カーブ内適正距離算出手段で算出したカーブ内適正道路境界距離と(6)式とから推定外側曲率半径を算出し、その推定外側曲率半径と(4)式とからタイヤ切れ角を算出し、そのタイヤ切れ角と(5)式とからステアリング切り角を算出し、そのステアリング切り角を目標ステアリング切り角として設定する目標角設定手段と、
前記目標角設定手段が設定した目標ステアリング切り角に基づいてステアリング切り角を制御するステアリング切り角制御手段と、をさらに含むことを特徴とする車両用挙動制御装置。
【数3】

Ra:推定外側曲率半径
Dc0:適正道路境界距離
L:車両幅方向における車両幅方向中心線から道路境界までの距離
【数4】

θ:タイヤ切れ角
WB:車両ホイールベース[m]
【数5】

Θ:目標ステアリング切り角
N:ステアリング切り角Θとタイヤ切れ角θとの比率(定数)
【数6】

Ra:推定外側曲率半径
Dc:カーブ内適正道路境界距離
L:車両幅方向における車両幅方向中心線から道路境界までの距離

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−40914(P2012−40914A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182417(P2010−182417)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】