説明

配線基板およびその製造方法

【課題】セラミック系の配線基板において、配線回路層の微細配線化、低抵抗化を達成でき、かつ配線回路層の絶縁基板への接着強度が高い配線基板とそれを歩留り良く作製することのできる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック系絶縁基板2の少なくとも表面に、Cu、Ag、Al、Au、Ni、Pt及びPdから選ばれる少なくとも1種からなる金属含有量が99重量%以上の金属箔などからなる高純度金属導体からなる配線回路層3を絶縁基板2表面と同一平面となるように埋設してなるとともに、配線回路層3の配線方向に直交する断面が逆台形形状からなり、その逆台形形状における下底6と横辺7とがなす形成角αを45〜80°とし、特に、表面配線回路層3aの絶縁基板2への埋設側の平均表面粗さを200nm以上、絶縁基板2の40〜400℃における平均熱膨張係数を6ppm/℃以上とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子収納用パッケージや多層配線基板などに適した、絶縁基板がセラミックスあるいはガラスセラミックスからなる配線基板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来より、配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される配線基板として、比較的高密度の配線が可能な多層セラミック配線基板が多用されている。
【0003】この多層セラミック配線基板は、アルミナやガラスセラミックなどの絶縁基板と、その表面に形成されたW、Mo、Cu及びAg等の金属からなる配線回路層とから構成されるもので、この絶縁基板の一部にキャビティが形成され、このキャビティ内に半導体素子が収納され、蓋体によってキャビティを気密に封止するものである。
【0004】近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、Cu、Ag等の低抵抗導体材料と同時焼成可能なガラスセラミックスに代表される低温焼成セラミック材料を絶縁基板とした低温焼成基板が一層注目されている。
【0005】このような低温焼成基板において、配線回路層を形成する方法として、Cu、Ag等の金属粉末を主成分とするメタライズペーストを用いてセラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷法等により印刷形成した後、グリーンシートと同時焼成する手法が一般的である。
【0006】また、配線基板としては、上記のセラミック系配線基板以外に、有機樹脂を含有する絶縁材料を絶縁基板として有機系配線基板が知られている。この有機系配線基板は、熱硬化性樹脂を含有する未硬化の絶縁シートの表面に金属箔を接着した後に、金属箔の不要な部分をエッチング法やめっき法により除去してパターンを形成した後、適宜積層して熱硬化したり、絶縁シートの積層、ビアホール形成、メッキを繰り返して多層化する方法などによって作製されるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の配線基板のうち、セラミック系配線基板は、絶縁基板が耐薬品性に優れ、また、絶縁基板と配線回路層の間に焼成によって反応層等が形成され、強固な接着力が得られるため、密着不良の問題も生じにくく、さらに、多層化にあたっては、一括積層により容易にビアホール導体の形成も容易にできるという利点を有するが、配線回路層を導体ペーストの印刷によって形成するために、配線幅100μm以下の微細配線を歩留り良く形成するのは難しく、今後必要とされる更なる高密度化、小型軽量化への要求を満たすことができないものであった。さらに、導通抵抗についても配線回路層中に空隙や粒界が存在し、また、一般に絶縁層との焼成時の熱収縮差を緩和して密着性を高めるために、セラミック粉末やガラス粉末を添加するために、低抵抗化が困難という問題があった。
【0008】これに対して有機系配線基板は、配線回路層を金属箔やメッキ膜などの高純度の金属によって形成するとともに、エッチングなどによってパターン形成するために、配線回路層の抵抗が低く、また微細配線の形成が可能であるという利点を有する反面、エッチング等の薬液により、絶縁基板が劣化してしまったり、また、金属箔からなる表面の配線回路層と絶縁基板とに密着不良が生じて両者の界面に空隙が生じ易く、ひいては配線不良に至り使用不能となるなどの問題があった。
【0009】そこで、セラミック配線基板および有機系配線基板の利点を生かしつつ、低抵抗、微細配線が可能な配線基板が要求されている。このような要求に対して、例えば特開平7−86743号公報によれば、転写フィルム上に銅等の金属箔により形成された配線回路層をセラミックグリーンシート上に、転写した後、焼成することにより低抵抗かつ微細な配線回路層を形成する方法が提案されている。
【0010】しかしながら、導体ペーストを用いる従来の手法とは異なり、上記の金属箔の転写フィルムを用いる手法では、配線回路層と絶縁基板との反応性が乏しいため、特に配線が微細になればなるほど、高い接着強度が得られず、表面の配線回路層が剥離するなどの問題があった。
【0011】従って、本発明の目的は、セラミック系の配線基板において、微細配線化、低抵抗化を達成し、かつ、配線回路層と絶縁基板との接着強度が高い配線基板とそれを歩留り良く作製することのできる配線基板の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記のような課題について鋭意検討した結果、絶縁基板としてセラミックスやガラスセラミックスを用いたセラミック系の配線基板において、絶縁基板の表面の配線回路層を、金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体によって形成するとともに、その表面の配線回路層を回路層表面のみが露出するように絶縁基板表面に埋設するとともに、配線回路層の配線方向に直交する断面を前記露出表面側の線幅が埋設側の線幅よりも大きく且つ形成角が45〜80°の逆台形形状によって構成することにより、微細配線化、低抵抗化を満足し、配線回路層と絶縁基板との接着強度が高い配線基板が得られることを知見し、本発明に至った。
【0013】即ち、本発明の配線基板は、セラミック系絶縁基板の少なくとも表面に、金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体からなる配線回路層を前記絶縁基板表面と同一平面となるように埋設してなるとともに、前記配線回路層の配線方向に直交する断面が逆台形形状からなり、その逆台形形状における下底と横辺とがなす形成角が45〜80°であることを特徴とするものである。
【0014】また、かかる配線基板によれば、前記表面の配線回路層の前記絶縁基板への埋設側の平均表面粗さが200nm以上であることがさらに密着性を高める上で望ましく、また前記絶縁基板の40〜400℃における平均熱膨張係数が6ppm/℃以上であることが配線基板のマザーボードなどへの実装信頼性を高める上で望ましい。
【0015】また、前記高純度金属導体は、微細配線化および低抵抗化の点で金属箔からなることが製造上、好適であり、また前記高純度金属導体がCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt及びPdから選ばれる少なくとも1種以上を主とすることが配線回路層の低抵抗化を図る上で望ましい。
【0016】さらに、前記絶縁基板がガラス粉末、ガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物、あるいはセラミック粉末を焼成したものからなることが望ましい。
【0017】さらに、多層化を実現する上で、前記絶縁基板内部に、金属粉末を含有する導体ペーストを充填してなるビアホール導体を具備するとともに、該ビアホール導体の一方の端部が、前記表面の配線回路層と接続されてなることが望ましい。
【0018】また、上記の配線基板を製造するための方法としては、(a)セラミック系絶縁材料からなるグリーンシートを作製する工程と、(b)転写フィルムの表面に接着された金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体層をエッチング処理して配線方向に直交する断面が台形形状からなり、その台形形状における下底と横辺とがなす形成角が45〜80°の配線回路層を形成する工程と、(c)上記配線回路層が形成された転写フィルムを、前記グリーンシートの表面に圧接して前記配線回路層を前記グリーンシート表面に埋設した後、前記転写フィルムを剥がすことによって、前記配線回路層を転写させる工程と、(d)前記配線回路層を形成したグリーンシートを前記高純度金属導体の融点よりも低い温度で焼成する工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0019】また、多層構造の配線基板を作製する方法としては、(a)セラミック系絶縁材料からなる複数のグリーンシートを作製する工程と、(b)前記グリーンシートのうち、所定のグリーンシートにビアホール導体を形成する工程と、(c)転写フィルムの表面に接着された金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体層をエッチング処理して配線方向に直交する断面が、前記転写フィルム接着側の線幅が表面側の線幅よりも大きく且つ形成角が45〜80°の台形形状の配線回路層を形成する工程と、(d)上記配線回路層が形成された転写フィルムを、前記各グリーンシートの表面に圧接して前記配線回路層を前記グリーンシート表面に埋設した後、前記転写フィルムを剥がすことによって、前記配線回路層を転写させる工程と、(e)前記(a)〜(d)工程を経て作製された複数のグリーンシートを積層する工程と、(f)該積層物を前記高純度金属導体の融点よりも低い温度で焼成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0020】なお、上記の製造方法においては、転写フィルム表面の前記高純度金属導体層の表面を平均表面粗さ200nm以上に粗化する工程を具備することが絶縁シートへの密着性を高める上で望ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明のセラミック系配線基板について、図面に基づいて説明する。尚、図面では多層配線基板を用いて説明する。
【0022】図1および図2に示す本発明の配線基板1によれば、絶縁基板2は、複数のセラミック絶縁層2a〜2dを積層してなる積層体から構成され、絶縁基板2表面あるいは絶縁層2a〜2d間には、金属含有量が99重量%以上、特に99.5重量%以上の高純度金属導体からなる表面配線回路層3a(以下、表面配線層3aという。)および内部配線回路層3b(以下、内部配線層3bという。)が形成されている。そして、各表面配線層3aおよび内部配線層3bは、金属粉末が充填されたビアホール導体3cにより電気的に接続されている。
【0023】そして、表面配線層3aは、表面のみが露出するように絶縁基板2の表面に埋設されており、絶縁基板2の表面と表面配線層3aの表面とが実質的に同一平面になるように埋設されている。
【0024】また、この表面配線層3aは、表面配線層3aの配線方向に対して直交する断面が、逆台形形状からなるものである。即ち、図2の拡大断面図に示すように、表面配線層3aの下底6の幅W1が上底5の幅W2より大きく、下底6と横辺7となす形成角α°が鋭角となる逆台形の断面形状を有するものである。
【0025】このように、少なくとも表面配線層3aを上記のような逆台形形状の断面によって構成することにより、逆台形形状における下辺5および横辺7が絶縁基板2に密着するとともに、配線層3aの周辺の絶縁基板2の変形を抑制しつつ絶縁基板2への埋設性を高め、絶縁基板との接触面積を高めることができる結果、表面配線層3aの絶縁基板2への密着性を大幅に高めることができる。また、表面配線層3aと絶縁基板2との表面を同一平面とすることができるために、配線基板の高い平坦性が要求される半導体素子のフリップチップ実装などに対して十分に適用することができる。
【0026】また、表面配線層3aの断面形状は、上記の作用を十分に発揮させる上で横辺7と下底6がなす形成角α°は45〜80°、特に50〜75°であることが必要である。これは、形成角α°が80°より大きいと絶縁基板2への埋設性が低く、絶縁基板2と表面配線層3aの密着強度が低下し、また平坦性が悪くなり、45°よりも小さいと配線層の端部の厚みが薄くなり、配線層の強度も低下し、端部から剥離が生じやすくなるためである。
【0027】さらに、表面配線層3aの絶縁基板2a表面に埋設されている上底5および横辺7の平均表面粗さ(Ra)を200nm以上、特に400nm以上とすることにより、表面配線層3aと絶縁基板2との密着性をさらに高めることができる。本発明の配線基板によれば、表面配線層3aについて上記のような構造からなるのみならず、図1に示すような多層配線基板においては、内部配線層3bも同様な断面形状からなることが望ましい。即ち、内部配線層3bを各絶縁層2b〜2dの表面に埋設することにより、各絶縁層表面と内部配線層3b表面とを同一平面にできるために、内部配線層3bの厚みに起因する配線基板表面のうねりなどの発生を防止し、平坦性の高い多層配線基板を作製することができる。
【0028】また、多層配線基板によれば、表面配線層3aや内部配線層3bをビアホール導体3cによって電気的に接続するが、その場合、ビアホール導体3cと表面配線層3aや内部配線層3bとの密着性を高めることもでき、回路の信頼性を高めることができる。
【0029】本発明の配線基板における表面配線層3aおよび内部配線層3bは、金属含有量が99重量%以上の導電材料からなり、特に配線層の低抵抗化を図る上で、Cu、Ag、Al、Au、Ni、Pt及びPdから選ばれる少なくとも1種以上の低抵抗導体を主とすること、特に、Cu、Ag、Auから選ばれる少なくとも1種以上を主とすることが望ましい。
【0030】好適には、上記表面配線層3aおよび内部配線層3bは金属箔によって構成されていることが望ましい。また、その厚みが大きすぎると、絶縁基板への埋設が難しく、薄すぎると配線回路層と絶縁基板との接着強度が弱くなるために、この表面配線層3aおよび内部配線層3bの厚みは1〜100μmが最適である。
【0031】また、ビアホール導体3cを形成する導体材料は、上記の表面配線層3a、内部配線層3bと同様の金属が充填されていることが望ましいが、必ずしも上記成分に限定されるものではない。
【0032】さらに、配線基板1の表面配線層3aは、ICチップなどの各種電子部品8を搭載するための電極パッドや、シールド用導体層や、さらにはマザーボードなどの外部回路と接続する端子電極として用いられ、各種電子部品8は表面配線層3aに半田などの導電性接着剤9を介して接合される。尚、図示していないが、必要に応じて、配線基板の表面には、さらに珪化タンタル、珪化モリブデン、酸化レニウムなどで構成されるの厚膜抵抗体やガラスやエポキシ樹脂等により構成される配線保護膜などを形成しても構わない。
【0033】絶縁基板2を構成する絶縁材料は、表面配線層3aや内部配線層3bを形成する金属の融点以下で焼成可能であることが必要であり、ガラス粉末、またはガラス粉末とセラミック粉末との混合物を焼成したガラスセラミックスや、セラミック粉末に適宜焼結助剤成分を添加したセラミックスが用いられ、特に配線層を前記の低抵抗導体によって形成した場合、ガラス粉末、またはガラス粉末とセラミック粉末との混合粉末を用いて焼成したものが最も好適に用いられる。用いるガラスとしては、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、鉛アルカリ珪酸ガラス、ほう珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、ほう珪酸亜鉛ガラス、アルミノ珪酸ガラス及び燐酸ガラスなどが挙げられ、特に、ほう珪酸系ガラスが好適である。
【0034】また、上記セラミック粉末としては、SiO2 、Al2 3 、ZrO2 、TiO2 、ZnO、MgAl2 4 、ZnAl2 4 、MgSiO3 、MgSiO4、Zn2 SiO4 、Zn2 TiO4 、SrTiO3 、CaTiO3 、MgTiO3 、BaTiO3 、CaMgSi2 6 、SrAl2 Si2 8 、BaAl2 Si2 8 、CaAl2 Si2 8 、Mg2 Al4 Si5 18、Zn2 Al4 Si5 18、AlN、SiC、ムライト及びゼオライトなどが挙げられ、用いる配線層の種類によって選択できる。
【0035】さらに、前記絶縁基板2は、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上であることが望ましい。これは、熱膨張係数がおよそ15〜30ppm/℃の有機系配線基板からなるマザーボード等に本発明のセラミック系配線基板を実装する場合、有機系配線基板との実装信頼性を高めるためであって、上記熱膨張係数が6ppm/℃よりも低いと、配線基板を上記マザーボードに実装した際、前両者の熱膨張差に起因する熱応力が大きくなり、実装構造の長期信頼性を確保できない恐れがある。なお、上記熱膨張係数の更に望ましい値として、7ppm/℃以上が良く、最適には9ppm/℃以上が望ましい。このように、高熱膨張係数を達成するため、特に、絶縁基板中には、クオーツ、クリストバライト、トリジマイトなどのSiO2 系結晶を含有することが望ましい。
【0036】次に、本発明の配線基板を作製する方法として、多層配線基板を作製する場合を例としてその工程図を図3、図4に示した。
(1)まず、上述したようなセラミックスの各原料粉末を所定の比率で混合し、その混合物に有機バインダー等を加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などによりシート状に成形してグリーンシート10を作製する。
【0037】(2)次に、このグリーンシート10にレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体11を形成する。導体ペースト中には、前述したような配線回路層形成用の金属粉末とともに有機バインダーと有機溶剤を含み、場合によってはガラスなどの無機質添加物等を混合して調製される。
【0038】次に、このグリーンシート10の表面に(3a)〜(3c)によって表面配線層3aを形成する。
(3a)まず、樹脂フィルムなどの可撓性の転写フィルム12の表面に接着剤を介して金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体層13を張り合せたものを準備する。この時、金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体層13としては、Cu、Ag、Al、Au、Ni、Pt及びPdから選ばれる少なくとも1種以上を主とする金属箔からなることが望ましい。
【0039】この方法によれば、配線の切れやダレがなく微細加工が可能であることから、配線幅50μm以下、配線間の距離50μm以下の微細配線を精度よく形成することができる。
【0040】(3b)次に、高純度金属導体層13の表面に回路パターンのレジスト層14を付設する。
【0041】(3c)そして、エッチング法により、レジスト層14を形成していない領域をの高純度金属導体層13を除去して配線回路層15を形成する。この時、エッチング後の配線回路層15の配線方向に直交する断面が台形形状からなり、その台形形状における下底と横辺とがなす形成角が45〜80°となるようにエッチングする。このような台形形状を形成するためにはエッチング速度を2〜50μm/分にするのが良い。即ち、このエッチング速度が50μm/分よりも早いと、配線回路層の断面が略矩形形状となり、エッチング速度が2μm/分よりも遅いと、形成角が45°よりも小さくなる。本発明では、このエッチング速度で高純度金属導体層13の厚みに応じてエッチング時間を調整することにより前述したような断面が台形形状の配線回路層15を形成することができる。
【0042】(3d)また、本発明では、上記のように配線回路層15を形成し、レジスト層14を除去した後、その配線回路層15の上底および横辺を平均表面粗さが200nm以上,特に400nm以上となるように粗化処理することが望ましい。粗化処理は、配線回路層15をギ酸あるいはNaClO2 、NaOH、Na3 PO4 の混合液等で表面処理する。この表面粗さは、粗化速度で制御でき、1μm/分以上の粗化速度で良好に粗化できる。
【0043】(4)次に、このようにして上記配線回路層15を付設した転写フィルム12を(2)のグリーンシート10の表面に位置合わせして積層し、10〜500kg/cm2 程度の圧力を印加し、断面が台形形状の上記配線回路層15をグリーンシート10に配線回路層15における下底がグリーンシート10の表面と同一平面となるように埋設させる。そして、上記配線回路層15をグリーンシート10内に残したままで転写フィルム12を接着層(不図示)とともに剥離することにより、配線回路層15をグリーンシート10の表面に転写することにより、1層の配線シート16を作製する。
【0044】(5)その後、(1)〜(4)と同様にして作製した配線シート17〜19を配線シート16とともに積層圧着して積層体を作製する。
【0045】(6)そしてこの積層体を400〜800℃の窒素雰囲気中で加熱処理してグリーンシート内やビアホール導体ペースト中の有機成分を分解除去した後、配線回路層を形成する高純度金属導体の融点よりも低い温度で焼成することにより図1で示されるような多層配線基板を作製することができる。
【0046】なお、焼成条件としては、例えば、配線回路層15を銅箔によって形成した場合には、800〜1000℃の窒素雰囲気で焼成する。また、この焼成時、高純度金属導体からなる配線回路層15はグリーンシートのような焼成収縮挙動を示さないために、焼成する場合には、積層体に対して一軸方向から圧力を印加し、X−Y方向への収縮を抑制しながら焼成することが望ましい。
【0047】このような(1)〜(6)工程を経て多層配線基板を作製することができる。なお、配線回路層1層の配線基板を作製する場合には、(1)(3)(4)の工程後に、(6)に示したような焼成を施すことにより作製され、また、配線回路層2層の配線基板を作製する場合には、(1)〜(3)の工程後、(4)の工程を経て、グリーンシート10の両面に配線回路層15を形成した後、(6)に示したような焼成を施すことにより作製される。
【0048】上記の製造方法によれば、(4)の工程においてグリーンシート10の表面に転写した後の配線回路層15の断面形状を前記所定の逆台形形状とすることにより、図5(a)に示すように、配線回路層15をグリーンシート10表面に圧接した際に、配線回路層15の周辺のグリーンシート10の変形が抑制され、その圧力が配線回路層15の逆台形の断面の横辺および上底からグリーンシートに圧接される結果、図5(b)に示すように、配線回路層15の断面が略矩形の場合に比較して、配線回路層のグリーンシート10への埋設性を高めることができるとともに、焼成後の配線回路層15の絶縁基板への密着性を大幅に向上させることができる。
【0049】
【実施例】先ず、ほうけい酸ガラス粉末70重量%と、SiO2 粉末30重量%を秤量し、成形用バインダーとしてアクリル樹脂、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンを加えて調製、混合したスラリーを用い、ドクターブレード法により厚さ300μmのグリーンシートを作製した。なお、このセラミック粉末組成物を用いて焼成後の熱膨張係数を測定した結果、40〜400℃で10ppm/℃であった。
【0050】次に、平均粒径が5μmのCu粉末に、有機バインダーとしてアクリル樹脂、溶媒としてDBPを添加混練し、ビアホール用導体ペーストを作製した。そして、グリーンシートの所定個所にパンチングにてビアホールを形成し、そのビアホール内に先の導体ペーストを充填した。
【0051】一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)の転写フィルム表面に、接着剤を塗布して厚み12μmの電解銅箔または銀箔を接着した。そして、前記金属箔の表面に感光性のレジストを塗布し、ガラスマスクを通して露光してパターンを形成した後、これを塩化第二鉄溶液中に浸漬して非パターン部をエッチング除去して配線回路層を形成した。レジスト剥離後、配線回路層の上面及び側面を10%のギ酸で処理し、エッチング層の浸漬時間を変えることにより粗化速度を制御した。
【0052】配線回路層は、各測定用のパターンを除き、線幅(断面が台形形状の場合には下底幅)が50μm、配線と配線との間隔(配線ピッチ)が50μmの微細パターンを用いた。
【0053】なお、エッチング処理および粗化処理にあたっては、それぞれ表1の条件で処理を行い、配線回路層の走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察から測定ポイント10点による平均的な形成角を測定すると同時に、平均表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AMF)によって測定し、表1に示した。
【0054】そして、配線回路層を形成した転写フィルムとグリーンシートを位置合わせして、真空積層機により60℃、30kg/cm2 の圧力で30秒加圧して、配線回路層の表面とグリーンシートの表面とが同一平面となるように配線回路層を埋設した後、転写フィルムと接着層のみを剥離して配線回路層を転写して配線シートを作製した。さらに、同様にして配線回路層およびビアホール導体を有する5枚の配線シートを作製し、計6枚の配線シートを60℃、200kg/cm2 の圧力で積層一体化した。
【0055】最後に、この積層体を有機バインダー等の有機成分を分解除去するため、窒素雰囲気中で700℃で1時間保持した後、同一雰囲気中で積層体を200kg/cm2 の圧力で1軸加圧しながら900℃で1時間保持することにより、多層配線基板を作製した。
【0056】上記試料をそれぞれ200ヶ作製し、配線回路層の導通および配線回路層間の絶縁性を評価し不具合が認められるものを除去し最終的な歩留りを算出した。なお、歩留りは85%以上を合格とした。
【0057】また、得られた配線基板について、配線回路層の導通抵抗の評価を行った。幅50μm、長さ20mmの銅配線回路層の配線抵抗をテスターを用いて測定し、配線回路層の厚み、幅、長さをそれぞれ走査型電子顕微鏡写真(SEM)、あるいは光学顕微鏡にて測定し、配線回路層の抵抗率を算出した。なお、良否の判断は抵抗率が2.0μΩcm以下を良品とした。
【0058】そして、これらの配線基板に対して、表面に形成されている配線回路層の密着強度を測定した。測定には、配線回路層として形成した2mm□のパッドにSnめっきを施したCu線を半田付けした後、そのCu線を垂直に引っ張り、Cu線が取れてしまう時の荷重を測定した。なお、密着強度は2.0kgf/2mm□以上を良品とした。
【0059】比較のために、配線回路層の形成にあたり、グリーンシートの表面に上記のビアホール導体用の導体ペーストを用いてスクリーン印刷法で形成する以外は、上記と全く同様にして多層配線基板を作製し、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【0061】表1から明らかなように、本発明に従い、配線回路層を99重量%以上の高純度金属導体によって形成するとともに、該配線回路層を埋設し、かつ配線回路層の配線方向に直交する断面が逆台形形状からなり、その逆台形形状における下底と横辺とがなす形成角を45〜80°とすることにより、密着強度を2kgf/2mm□以上を有し、且つ抵抗率2μΩcm以下の低抵抗の配線回路層を形成することができ、しかも歩留りも85%以上が達成できた。なお、配線回路層の埋設側である上底側と横辺の表面粗さが大きくなるに従い密着強度が高くなる傾向にあり、200nm以上で良好な結果が得られた。
【0062】これに対して、配線回路層の導体形成方法を従来の印刷法とした試料No.19、20では、配線回路層の歩留りが50%以下と低く、かつ抵抗率も3μΩcm以上と高くなる。
【0063】また、形成角αが80°より大きい試料No.1、10においては、配線層の側面(横辺)を粗化するのが困難となりその結果、密着強度が低下する他、転写フィルム上の回路パターンをグリーンシートに圧着する際、埋設するのが難しく歩留りが低下した。さらに、形成角αが45°より小さい試料No.6、13でも密着強度が低下した。
【0064】また、表1における本発明品に対して、実装評価を行った。この評価では、得られた配線基板に予め接続パッドを形成し、接続パッドに半田(錫10〜60%、鉛40〜90%)からなる接続端子を取り付けた。なお、接続端子は、1cm2 あたり30端子の密度で配線基板の下面全体に形成した。一方、ガラス−エポキシ基板(熱膨張係数15ppm/℃)からなる配線導体が形成されたプリント基板を準備し、上記の配線基板をプリント基板上の配線導体とそれぞれの接続端子が接続されるように位置あわせし、これをN2 の雰囲気中、230℃で3分間熱処理し、配線基板をプリント基板表面に実装した。この熱処理により、配線基板の半田からなる接続端子が融けてプリント基板の配線導体と電気的に接続されたことを確認した。
【0065】このように、ガラスセラミック配線基板をプリント基板表面に実装したものを、大気中にて、−40℃と125℃の各温度に制御した恒温槽に試験サンプルを15分/15分の保持を1サイクルとして熱サイクルを印加した。その結果、1000サイクル後においてもプリント基板の配線導体と配線基板との電気抵抗に変化が生じることがなく、優れた実装信頼性を示した。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、配線回路層の低抵抗化とともに、配線回路層の絶縁基板への密着強度を高めることができる結果、微細配線化、低抵抗化を達成し、かつ配線回路層と絶縁基板との接着強度が高い配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の一例である多層配線基板の概略断面図である。
【図2】本発明の配線基板における配線回路層の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の配線基板の一例である多層配線基板の製造工程図である。
【図4】本発明の配線基板の一例である多層配線基板の図3に続く製造工程図である。
【図5】本発明の配線基板(a)と従来の配線基板(b)の違いを説明するための要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 多層配線基板
2 絶縁基板
2a〜d 絶縁層
3a,3b 配線回路層
3c ビアホール導体
5 上底
6 下底
7 横辺
8 電子部品
9 接着剤
α 形成角

【特許請求の範囲】
【請求項1】セラミック系絶縁基板の少なくとも表面に、金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体からなる配線回路層を前記絶縁基板表面と同一平面となるように埋設してなるとともに、前記配線回路層の配線方向に直交する断面が逆台形形状からなり、その逆台形形状における下底と横辺とがなす形成角が45〜80°であることを特徴とする配線基板。
【請求項2】前記表面の配線回路層の前記絶縁基板への埋設側の平均表面粗さが200nm以上であることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】前記絶縁基板の40〜400℃における平均熱膨張係数が6ppm/℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の配線基板。
【請求項4】前記高純度金属導体が金属箔からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の配線基板。
【請求項5】前記高純度金属導体がCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt及びPdから選ばれる少なくとも1種以上を主とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載の配線基板。
【請求項6】前記絶縁基板内部に、金属粉末を含有する導体ペーストを充填してなるビアホール導体を具備するとともに、該ビアホール導体の一方の端部が、前記表面の配線回路層と接続されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか記載の配線基板。
【請求項7】前記絶縁基板がガラス粉末、ガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物、あるいはセラミック粉末を焼成したものからなる請求項1乃至請求項6のいずれか記載の配線基板。
【請求項8】(a)セラミック系絶縁材料からなるグリーンシートを作製する工程と、(b)転写フィルムの表面に接着された金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体層をエッチング処理して配線方向に直交する断面が台形形状からなり、その台形形状における下底と横辺とがなす形成角が45〜80°の配線回路層を形成する工程と、(c)上記配線回路層が形成された転写フィルムを、前記グリーンシートの表面に圧接して前記配線回路層を前記グリーンシート表面に埋設した後、前記転写フィルムを剥がすことによって、前記配線回路層を転写させる工程と、(d)前記配線回路層を形成したグリーンシートを前記高純度金属導体の融点よりも低い温度で焼成する工程と、を具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】(a)セラミック系絶縁材料からなる複数のグリーンシートを作製する工程と、(b)前記グリーンシートのうち、所定のグリーンシートにビアホール導体を形成する工程と、(c)転写フィルムの表面に接着された金属含有量が99重量%以上の高純度金属導体層をエッチング処理して配線方向に直交する断面が、前記転写フィルム接着側の線幅が表面側の線幅よりも大きく且つ形成角が45〜80°の台形形状の配線回路層を形成する工程と、(d)上記配線回路層が形成された転写フィルムを、前記各グリーンシートの表面に圧接して前記配線回路層を前記グリーンシート表面に埋設した後、前記転写フィルムを剥がすことによって、前記配線回路層を転写させる工程と、(e)前記(a)〜(d)工程を経て作製された複数のグリーンシートを積層する工程と、(f)該積層物を前記高純度金属導体の融点よりも低い温度で焼成する工程とを具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項10】前記高純度金属導体層の表面を平均表面粗さ200nm以上に粗化する工程を具備する請求項8または請求項9記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】前記グリーンシートの焼成後の40〜400℃における平均熱膨張係数が6ppm/℃以上であることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】前記高純度金属導体が金属箔からなることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】前記高純度金属導体がCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt及びPdから選ばれる少なくとも1種以上を主とすることを特徴とする請求項7乃至請求項12のいずれか記載の配線基板の製造方法。
【請求項14】前記セラミック系絶縁材料が、ガラス粉末、ガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物、あるいはセラミック粉末からなることを特徴とする請求項7乃至請求項13のいずれか記載の配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開2001−15895(P2001−15895A)
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−185829
【出願日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】