説明

金属・有機化学気相成長によって成長した非極性a平面窒化ガリウム薄膜

【課題】改善された表面および構造的品質を示すフィルムを成長させる、改善された方法を提供すること。
【解決手段】非極性のa平面窒化ガリウム薄膜を、r平面基板上で、金属・有機化学気相成長によって成長させる方法が提供される。この方法は、以下の工程:
(a)該基板をアニールする工程;
(b)窒化物ベースの核生成層を、該基板上に堆積させる工程;
(c)該非極性のa平面窒化ガリウムフィルムを、該核生成層上で成長させる工程;および
(d)窒素の過剰圧力下で、該非極性のa平面窒化ガリウムフィルムを冷却する工程、を包含する。この方法により、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法第119条第(e)項のもとで、以下の同時係属中の、同一人に譲渡された米国仮特許出願番号60/372,909(発明の名称「NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BASED THIN FILMS AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS」、2002年4月15日出願、Michael D.Craven,Stacia Keller,Steven P.DenBaars,Tal Margalith,James S.Speck,Shuji Nakamura,およびUmesh K.Mishra、代理人文書番号30794.95−US−P1)の利益を主張する。この出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本願は、以下の同時係属中の、同一人に譲渡された米国特許出願に関する:
出願番号−−/−−−,−−−、発明の名称「NON−POLAR(AL,B,IN,GA)N QUANTUM WELL AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS AND DEVICES」、本願と同日に出願、Michael D.Craven,Stacia Keller,Steven P.DenBaars,Tal Margalith,James S.Speck,Shuji Nakamura,およびUmesh K.Mishra、代理人文書番号30794.101−US−U1);ならびに
出願番号−−/−−−,−−−、発明の名称「DISLOCATION REDUCTION IN NON−POLAR GALLIUM NITRIDE THIN FILMS」、本願と同日に出願、Michael D.Craven,Steven P.DenBaars,およびJames S.Speck、代理人文書番号30794.102−US−U1);
これらの出願の両方が、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
(1.発明の分野)
本発明は、半導体材料、方法、およびデバイスに関し、そしてより具体的には、金属・有機化学気相成長(MOCVD)によって成長された、非極性のa平面窒化ガリウム(GaN)薄膜に関する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の説明)
(注:本願は、多数の異なる特許、出願および/または刊行物を、1つ以上の参照番号によって、本明細書全体に示されるように参照する。これらの異なる刊行物の、これらの参照番号に従った順序にしたリストは、以下の「参考文献」の表題の節に見出され得る。これらの刊行物の各々は、本明細書中に参考として援用される)。
【0005】
ウルツ鉱III窒化物化合物における分極は、分極によって誘導される電場が、窒化物ベースの光電子デバイスおよび電子デバイスにおいて通常使用されるヘテロ構造に対して有する大きい影響に起因して、増加した注意を引き付けている。窒化物ベースの光電子デバイスおよび電子デバイスは、分極により誘導される効果に供される。なぜなら、これらのデバイスは、極性c方向[0001](この軸に沿って、窒化物フィルムの自発的な圧電分極が整列する)に成長した窒化物フィルムを使用するからである。窒化物フィルムの全分極は、組成およびひずみ状態に依存するので、隣接するデバイス層の間の界面において不連続性が存在し、そして一定のシート電荷に関連し、これは、内部電場を生じる。
【0006】
分極により誘導される電場は、窒化物ベースのトランジスタ構造体における二次元電子気体(2DEG)形成のためには有利であるが、量子井戸(QW)構造体における電子およびホールの波動関数を空間的に分離し、これによって、QWベースのデバイス(例えば、レーザーダイオードおよび発光ダイオード)におけるキャリア再結合効率を減少させる。参考文献1を参照のこと。光学遷移の振動強度および赤色移動の対応する減少が、GaNc軸に沿って成長したAlGaN/GaNおよびGaN/InGaNの量子井戸について、報告されている。参考文献2〜7を参照のこと。
【0007】
これらの分極により誘導される場の効果を排除するための潜在的な手段は、GaNのc軸(非極性)の方向に対して垂直な方向で、構造を成長させることによる。例えば、m平面AlGaN/GaN量子井戸が、最近、アルミン酸リチウム基板上で、プラズマにより補助される分子線エピタキシー(MBE)によって、成長の方向に沿った分極により誘導される電場の存在なしで成長された。参考文献8を参照のこと。
【0008】
a平面窒化物半導体の成長はまた、ウルツ鉱窒化物量子構造における分極により誘導される電場の影響を排除する手段を提供する。例えば、先行技術において、a平面GaN成長が、MOCVDおよび分子線エピタキシー(MBE)を介して、r平面サファイア上で達成された。参考文献9〜15を参照のこと。しかし、これらの以前の努力によって報告されたフィルム成長は、低温緩衝層を利用せず、そして平滑な平坦な表面を有さず、従って、これらの層は、ヘテロ構造の成長および分析に、あまり適さなかった。その結果、以前に報告された、MOCVDによるr平面サファイア上でのGaNの成長と比較して、改善された表面および構造的品質を示すフィルムを成長させる、改善された方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
非極性のa平面窒化ガリウム薄膜を、r平面基板上で、金属・有機化学気相成長によって成長させる方法であって、以下の工程:
(a)該基板をアニールする工程;
(b)窒化物ベースの核生成層を、該基板上に堆積させる工程;
(c)該非極性のa平面窒化ガリウムフィルムを、該核生成層上で成長させる工程;および
(d)窒素の過剰圧力下で、該非極性のa平面窒化ガリウムフィルムを冷却する工程、を包含する、方法。
(項目2)
上記基板が、r平面サファイア基板である、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記窒化ガリウムフィルムの、上記r平面基板に対する面内配向が、
【数1】


である、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記基板が、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ケイ素、酸化亜鉛、窒化ホウ素、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ゲルマニウム、窒化アルミニウム、およびガリウム酸リチウムからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記アニールする工程(a)が、上記基板の高温アニールを包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記堆積させる工程(b)が、上記窒化物ベースの核生成層の、上記基板上への低温堆積を包含する、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記堆積させる工程(b)が、上記窒化物ベースの核生成層の、上記基板上への低圧堆積を包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記低温堆積条件が、約400〜900℃および大気圧を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記堆積させる工程(b)が、上記r平面基板上での窒化ガリウムの成長を開始させる、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記核生成層が、1〜100ナノメートルの窒化ガリウムを含有する、項目1に記載の方法。
(項目11)
上記成長させる工程(b)が、上記非極性のa平面窒化ガリウムフィルムの、上記核生成層上での高温成長を包含する、項目1に記載の方法。
(項目12)
上記高温層が、0.2気圧以下で堆積される、項目11に記載の方法。
(項目13)
上記高温成長条件が、約1100℃の成長温度、約0.2気圧以下の成長圧力、1分間あたり30μmolのガリウムフロー、および1分間あたり40,000μmの窒素フローを含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
上記成長させる工程(b)が、平坦な窒化ガリウムフィルムを生じる、項目1に記載の方法。
(項目15)
項目1に記載の方法を使用して製造されたデバイス。
(発明の要旨)
本発明は、デバイス品質の、非極性のa平面GaN薄膜を、MOCVDを介して、r平面サファイア基板上で成長させるための方法を記載する。本発明は、分極により誘導される効果のない、窒化物ベースのデバイスのための経路を提供する。なぜなら、非極性のa平面GaN薄膜の成長方向は、極性のc軸に対して垂直であるからである。分極により誘導される電場は、存在する場合、非極性のa平面GaN薄膜上で成長する(Al,B,In,Ga)Nデバイス層に対して、最小の影響を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、図面が参照される、図面において、類似の参照番号は、全体にわたって、対応する部品を表す。
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に従う、
【数33】


r平面サファイア上での非極性
【数34】


a平面GaN薄膜の成長のための、MOCVDプロセスの工程を示すフローチャートである。
【図2】図2(a)は、
【数35】


a平面GaNとしてGaNフィルムの成長方向を示す、2θ−ω回折走査を示す。
図2(b)は、GaNとr−サファイアとの間の面内エピタキシャル関係を決定するために使用される、オフ軸φ走査の編集であり、ここで、傾斜角ψを使用して、各走査について記載されるオフ軸投影に接近した。
図2(c)は、GaNとr平面サファイアとの間のエピタキシャル関係の概略図である。
【図3】図3(a)および3(b)は、それぞれ、r平面サファイア上のa平面GaNフィルムの欠損構造の、透過型電子顕微鏡(TEM)画像の断面図および平面図である。
【図4】図4(a)および4(b)は、それぞれ、成長したままのa平面GaNフィルムの表面の、原子力顕微鏡(AFM)の振幅画像および高さ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
以下の好ましい実施形態の説明において、添付の図面に対して参照がなされる。この図面は、本明細書の一部を形成し、そしてこの図面において、例として、本発明が実施され得る特定の実施形態が説明され得る。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、そして構造的変化がなされ得ることが、理解されるべきである。
【0012】
(概説)
本発明は、デバイス品質の非極性の
【0013】
【数2】


a平面GaN薄膜を、MOCVDを介して、
【0014】
【数3】


r平面サファイア基板上に成長させるための方法を記載する。この方法は、大気圧で成長した低温緩衝層を使用して、r平面サファイア上でのGaN成長を開始させる。その後、平坦なフィルムを生じるために、高温成長工程が低圧(例えば、約0.1気圧(atm))で実施される。
【0015】
平坦な成長表面が、本発明を使用して達成された。具体的には、r平面サファイア基板に対するGaNの面内配向が、
【0016】
【数4】


であることが確認された。
【0017】
得られるフィルムは、引き続く(Al,B,In,Ga)Nデバイス層の成長のために適切な表面を保有する。具体的には、分極により誘導される電場が、存在する場合、非極性のa平面GaNベース層上で成長する(Al,B,In,Ga)Nデバイス層に対して最小の影響を有する。
【0018】
(プロセス工程)
図1は、本発明の好ましい実施形態に従って、非極性の
【0019】
【数5】


a平面GaN薄膜の、
【0020】
【数6】


r平面サファイア基板上での成長のためのMOCVDプロセスの工程を示すフローチャートである。この成長プロセスは、c−サファイア上でのc−GaNの成長に対して標準となった、2工程プロセスの後にモデル化された。
【0021】
ブロック100は、サファイア基板を、垂直な、間隔の狭い、回転ディスクのMOCVD反応器への装填を示す。この工程について、+/−2°以内のサファイアr平面
【0022】
【数7】


で結晶学的に配向した表面を有する、準備前のサファイア基板が、市場の販売者から入手され得る。エキソサイチュ(ex−situ)ではない調製は、サファイア基板をMOCVD反応器に装填する前に実施される必要があるが、サファイア基板のエキソサイチュクリーニングは、予防上の手段として使用され得る。
【0023】
ブロック102は、サファイア基板をインサイチュで高温(>1000℃)でアニールすることを表し、これは、原子規模で、基板表面の質を改善する。アニール後、基板の温度は、引き続く低温核生成層堆積のために低下される。
【0024】
ブロック104は、薄い、低温の、低圧の窒化物ベースの核生成層を、緩衝層として、サファイア基板上に堆積させることを表す。好ましい実施形態において、この核生成層は、1〜100ナノメートル(nm)のGaNからなるが、これに限定されず、そして約400〜900℃および1atmの低温、低圧の堆積条件で堆積される。このような層は、通常、c平面(0001)窒化物半導体のヘテロエピタキシャル成長において使用される。具体的には、この堆積工程は、r平面サファイア基板上でのGaN成長を開始させる。
【0025】
核生成層を堆積させた後に、反応温度は高温に上昇され、そしてブロック106は、非平面の
【0026】
【数8】


a平面GaN薄膜を、この基板上で成長させることを表す。好ましい実施形態において、この高温成長条件としては、約1100℃の成長温度、約0.2atm以下の成長圧力、1分間あたり30μmolのGaフロー、および1分間あたり40,000μmolのNフローが挙げられるが、これらに限定されず、これによって、約1300のV/III比を与える。好ましい実施形態において、第III族の供給源および第V族の供給源として使用される前駆体は、それぞれ、例えば、トリメチルガリウムおよびアンモニアであるが、代替の前駆体が同様に使用され得る。さらに、成長条件は、本発明の範囲から逸脱せずに、異なる成長速度(例えば、1秒間あたり5Åと9Åとの間)を生じるために変動され得る。約1.5μmの厚さの非極性GaNが、成長され、そして特徴付けられた。
【0027】
高温成長工程の完了の際に、ブロック108は、非極性
【0028】
【数9】


a平面GaN薄膜の、窒素過剰圧力下での冷却を表す。
【0029】
最後に、ブロック110は、処理工程の最終結果を表し、これは、r平面サファイア基板上の非極性
【0030】
【数10】


a平面GaNフィルムである。これらのプロセス工程を使用して製造され、引き続くデバイス成長のための非極性
【0031】
【数11】


a平面GaNベース層を形成する潜在的なデバイス層としては、レーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、共振空洞LED(RC−LED)、垂直空洞表面発光レーザー(VCSEL)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ヘテロ結合双極トランジスタ(HBT)、ヘテロ結合電場効果トランジスタ(HFET)ならびにUV光検出器および近UV光検出器が挙げられる。
【0032】
(実験結果)
成長したままのGaNフィルムおよびr平面サファイアの結晶学的配向および構造の質を、4バウンスGe(220)単色Cu Kα放射線および1.2mmのスリットを検出器アームに有する受容スリットモードで作動する、PhilipsTM4サイクル高解像度X線回折計(HR−XRD)を使用して決定した。集束ビーム電子回折(CBED)を使用して、サファイア基板に対するa−GaNフィルムの極性を規定した。ウェッジポリシングおよびイオンミリングによって調製した、透過型電子顕微鏡(TEM)サンプルの平面図および断面図を分析して、a−GaNの欠損構造を決定した。タッピングモードのDigital Instruments D3000 原子力顕微鏡(AFM)は、表面形態学の画像を生じた。
【0033】
図2(a)は、GaNフィルムの成長方向を
【0034】
【数12】


a平面GaNとして示す、2θ−ω回折走査を示す。この走査は、サファイアの
【0035】
【数13】


回折、およびGaNの
【0036】
【数14】


回折を検出した。これらの測定の感度の範囲内で、2θ=34.604°に対応するGaN(0002)回折は検出されなかった。このことは、これらのフィルムにc平面(0002)成分が存在せず、従って、GaNの成長方向の不安定性が考慮されないことを示す。
【0037】
図2(b)は、GaNとr−サファイアとの間の面内エピタキシャル関係を決定するために使用される、オフ軸φ走査の比較であり、ここで、傾斜角ψが、各走査について記載されるオフ軸投影に近付くために使用された。a平面成長表面に閉じ込められるので、オフ軸回折のピークを使用して、GaNとr−サファイアとの間のインエピタキシャル関係を決定した。オフ軸投影を回折計の散乱面にもたらすために、2つのサンプル回転φおよびψを調節した。ここで、φは、サンプル表面の法線の周りでの回転の角度であり、そしてψは、ブラッグ面と散乱面との交差によって形成される軸の周りでのサンプルの傾きの角度である。サンプルを傾けてψを特定のオフ軸回折について補正した後に、φ走査は、図2(b)に示されるように、
【0038】
【数15】


およびサファイア(0006)のピークを検出した。これらのピークのφ位置の間の相関を、以下のエピタキシャル関係:
【0039】
【数16】


に従って決定した。
【0040】
図2(c)は、GaNとr平面サファイアとの間のエピタキシャル関係の概略図である。結晶学的配向のX線分析を補償するために、a−GaN極性を、CBEDを使用して決定した。極性の符号は、GaNのc軸に沿って整列した極性Ga−N結合の方向によって規定される;正のc軸[0001]は、ガリウム原子から窒素原子を指す。その結果、ガリウム面のc−GaNフィルムは、[0001]の成長方向を有し、一方で、窒素面のc−GaN結晶は、
【0041】
【数17】


の成長方向を有する。r−サファイア上でのa−GaN成長について、[0001]GaNは、サファイアのc軸投影
【0042】
【数18】


と整列し、従って、上で規定されるエピタキシャル関係は、極性の観点で正確である。その結果、正のGaNのc軸は、成長表面上(CBEDによって決定される)で、サファイアのc軸投影と同じ方向を指す。この関係は、種々の成長技術を使用するグループによって以前に報告されたエピタキシャル関係と一致する。参考文献9、12および14を参照のこと。従って、エピタキシャル関係は、r平面サファイア基板上でのGaNの成長について、特に規定される。
【0043】
図3(a)および3(b)は、r平面サファイア基板上のa平面GaNフィルムの欠損構造の、それぞれ断面TEM画像および平面TEM画像である。これらの画像は、それぞれ、線および面の欠損の存在を明らかにする。図3(a)および3(b)の回折条件は、それぞれ、
【0044】
【数19】


である。
【0045】
図3(a)における断面TEM画像は、線の方向が成長方向
【0046】
【数20】


に平行な、サファイア/GaN界面にいて始まる螺旋転位(threadingdislocation)(TD)の大きい密度を明らかにする。平面TEMによって決定されるTD密度は、2.6×1010cm−2であった。TD線の方向が成長方向と平行であるので、純粋な螺旋転位(screw dislocation)は、成長方向
【0047】
【数21】


に沿って整列したバーガースベクトルを有し、一方で、純粋な刃状転位は、b=±[0001]を有する。c−GaNに対して減少したa−GaN表面の対称性は、混合した転位の特徴付けを複雑にする。なぜなら、結晶学的に等価な
【0048】
【数22】


方向は、
【0049】
【数23】


族として処理され得ないからである。具体的には、混合された転位の可能なバーガースベクトルは、以下の3つの細分:
【0050】
【数24】


に分割され得る。
【0051】
線の欠損に加えて、図3(b)における平面TEM画像は、a−GaNフィルムにおいて観察される面の欠損を明らかにする。c軸に対して垂直に、3.8×10cm−1の密度で整列した積層欠損が、平面TEM画像において観察された。この積層欠損(通常、密に充填された面のエピタキシャル成長に関連する)は、三次元(3D)の島のc面側壁に最も生じやすく、この島は、高温成長の開始段階の間に形成される。その結果、積層欠損は、現在固有であると仮定され、そして逆の符号のショックレー部分転位によって終わる。類似の特徴を有する積層欠損が、r平面サファイア基板上で成長したa面A1Nフィルムにおいて観察された。参考文献17を参照のこと。積層欠損は、密に充填された(0001)に対して平行な、約3.8×10cm−1の密度の共通の欠損面を有する。
【0052】
ωロッキングカーブを、GaNのオン軸
【0053】
【数25】


反射およびオフ軸
【0054】
【数26】


反射の両方について測定し、a平面GaN結晶の質を特徴付けた。オン軸ピークの全半値幅(FWHM)は、0.29°(1037”)であり、一方で、オフ軸ピークは、0.46°(1659”)のFWHMで間隔を空けた、より大きい配向を示した。大きいFWHM値が予測される。なぜなら、微細構造が、かなりの転位密度を含むからである。Heyingらによって提供された、c−サファイア上のc−GaNフィルムについての分析によれば、オン軸ピーク幅は、螺旋転位および混合転位によって広くされ、一方で、オフ軸幅は、刃状成分TDによって広くされる(TD線がフィルムの法線に平行であると仮定する)。参考文献18を参照のこと。オン軸ピークと比較したオフ軸ピークの幅広化に起因して、比較的大きい刃状転位密度が、r−サファイア上のa−GaNについて予測される。さらなる微細構造分析が、a−GaN TDジオメトリーをロッキングカーブ測定に相関付けるために必要とされる。
【0055】
図4(a)および4(b)は、成長したままのa平面GaNフィルムの表面の、それぞれAFM振幅画像およびAFM高さ画像である。図4(a)のAFM振幅画像における表面の穴は、GaNのc軸に平行に均一に整列し、一方で、図4(b)のAFM高さ画像において見られる段は、c軸に対して垂直に整列する。
【0056】
2.6nmの表面RMS粗さで光学的に透過性(specular)であるが、a−GaNの成長表面は、図4(a)に示されるAFM振幅画像に明らかに観察され得るように、ミクロン未満の規模で穴があいている。表面の穴は、表面で転位の終結を修飾していることが提唱されている;平面TEMによって決定される転位密度は、1桁以内で、表面の穴の密度に相関する。
【0057】
GaNのc軸[0001]にそって整列した小さい表面の穴に加えて、図4(b)におけるAFM高さ画像は、c軸に対して垂直な、わずかな段を明らかにする。継ぎ目は、明らかには規定されない原子段階であるが、これらの結晶学的特徴は、表面成長様式の初期の兆候であり得る。a平面成長プロセスの発達におけるこの初期の時点において、穴も段もいずれも、特定の欠損構造に相関しなかった。
【0058】
(参考文献)
以下の参考文献が、本明細書中に参考として援用される:
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


(結論)
これは、発明の好ましい実施形態の説明を結論付ける。以下は、本発明を達成するための、いくつかの代替の実施形態を記載する。
【0061】
例えば、上記説明の内容が示すように、非極性の
【数27】


a平面GaN薄膜を
【数28】


r平面サファイア基板上で成長させるために使用され得る、MOCVD技術および設備の多数の改変およびバリエーションが存在する。さらに、異なる成長条件が、異なるMOCVD反応器設計について最適であり得る。このプロセスの多くのバリエーションが、産業および学問において現在使用されている種々の反応器設計を用いて、可能である。これらの差異にもかかわらず、成長パラメータは、フィルムの質を改善するために最適化され得るようである。MOCVD成長のための最も重要な変数としては、成長温度、V/III比、前駆体フロー、および成長圧力が挙げられる。
【0062】
MOCVD成長技術を用いて可能な多数の改変に加えて、他の改変が可能である。例えば、r平面サファイア基板の特定の結晶学的配向が、引き続くエピタキシャルなGaN成長を最適化するために、変化され得る。さらに、特定の結晶学的解説において特定の程度のミスカット(miscut)を有するr平面サファイア基板が、成長のために最適であり得る。
【0063】
さらに、核生成層の堆積が、平滑な成長表面および最小の結晶欠損を有するエピタキシャルGaNフィルムを達成するために重要である。基本的なMOCVDパラメータを最適化する以外に、GaNの代わりにAlNまたはAlGaNの核生成層の使用が、高品質のa平面GaNフィルムを得る際に有用であることが示され得る。
【0064】
さらに、非極性のa平面GaN薄膜が、本明細書中に記載されるが、同じ技術が、非極性のm平面GaN薄膜に対して適用可能である。さらに、非極性のInN薄膜、AlN薄膜、およびAlInGaN薄膜が、GaN薄膜の代わりに作製され得る。
【0065】
最後に、サファイア基板以外の基板が、非極性GaN成長のために使用され得る。これらの基板としては、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ケイ素、酸化亜鉛、窒化ホウ素、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ゲルマニウム、窒化アルミニウム、およびガリウム酸リチウムが挙げられる。
【0066】
要約すると、本発明は、エピタキシャル
【0067】
【数29】


a平面GaNフィルムの高温成長の前に、低温核生成層を緩衝層として使用することによって、非極性の
【数30】


a平面GaN薄膜の、r平面
【数31】


サファイア基板上への成長を記載する。エピタキシャル関係は、
【数32】


であり、正のGaNのc軸位置は、成長表面上のサファイアのc軸投影と同じ方向にある。
【0068】
本発明の1つ以上の実施形態の上記説明は、例示および説明の目的で提供された。排他的であることも、本発明を開示された正確な形態に限定することも、意図されない。多くの改変およびバリエーションが、上記教示を考慮して、可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、本明細書に添付された特許請求の範囲によって限定されることが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3.8×10cm−1以下の積層欠損密度を有する平滑な平坦な成長表面を有する、非極性のIII窒化物フィルム。
【請求項2】
2.6×1010cm−2以下の螺旋転位密度を有する平滑な平坦な成長表面を有する、非極性のIII窒化物フィルム。
【請求項3】
前記フィルムにc平面成分が実質的に存在しない、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムが、a平面フィルムまたはm平面フィルムである、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記平坦な表面が、a平面またはm平面の平坦な表面である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項6】
前記III窒化物フィルムが、GaN、InN、AlN、またはAlInGaNである、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムが、該フィルムのc軸に対して垂直な方向に成長している、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項8】
前記平坦な表面が、光学的に透過性である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項9】
前記非極性のIII窒化物フィルムの基板が、ミスカット基板上に成長している、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、前記平坦な表面上での引き続く(Al,B,In,Ga)Nデバイス成長のためのベース層である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項11】
前記平坦な表面が、ヘテロ構造の成長のために適切である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項12】
前記平坦な表面が、2.6nm以下の表面粗さを有する、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項13】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−260386(P2009−260386A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181101(P2009−181101)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【分割の表示】特願2003−586402(P2003−586402)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(500025503)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (26)
【Fターム(参考)】