説明

エンジン始動装置

【課題】ディーゼルエンジンをその状態に応じた手段により再始動し、スタータの使用回数を低減可能なエンジン始動装置を提供する。
【解決手段】ECU40は、エンジン11の複数の気筒2それぞれに設けられたインジェクタ15から、対応する気筒2に対して燃料を噴射する。スタータ12は、エンジン11のクランクシャフト5を回転させることによりエンジン11を始動可能である。ECU40は、エンジン停止条件が成立したとき、エンジン11を自動停止させる。ECU40は、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度以上のとき、インジェクタ15から膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射する。一方、前記筒内温度が前記所定の温度より低いとき、ECU40は、スタータ12を用いることによってエンジン11を再始動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が信号待ちや渋滞等で停止しているとき、エンジンを自動停止させることにより燃料消費および排出ガスの低減を図る技術が知られている。特許文献1には、エンジンの自動停止後に、膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射し、点火プラグにより燃料に点火することでスタータを用いることなくエンジンを再始動させるエンジン始動装置が開示されている。このように、スタータレスでエンジンを再始動させることによりスタータの使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータおよびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータによる電力消費を低減している。
【0003】
従来のエンジン始動装置は、特許文献1に記載されるようにガソリンエンジンを対象としている。ところで、ディーゼルエンジンは点火プラグを備えていないため、気筒に噴射した燃料を自着火させるには、気筒の筒内温度や筒内圧力などについて燃料が自着火可能な条件を満たす必要がある。そのため、ディーゼルエンジンに対して従来のエンジン始動装置を適用した場合、膨張行程で停止している気筒の筒内の状態によっては噴射した燃料が自着火せず、スタータレスでのエンジンの再始動に失敗するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−39038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ディーゼルエンジンをその状態に応じた手段により再始動し、スタータの使用回数や使用時間を低減可能なエンジン始動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、燃料噴射手段は、ディーゼルエンジンの複数の気筒それぞれに設けられた燃料噴射弁から、対応する気筒に対して燃料を噴射する。スタータは、ディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させることによりディーゼルエンジンを始動可能である。自動停止制御手段は、車両が停止していることが明らかなとき等エンジンを停止可能と判断したとき、すなわちエンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したときに、ディーゼルエンジンを自動停止させる。再始動手段は、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、アクセル操作の再開を検知したときや車両に搭載された機器の消費電力が上昇したとき等、すなわちエンジン始動の条件である再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度が所定の温度以上のとき、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射する。前記所定の温度は、燃料が自着火可能な温度の下限である。このとき燃料が噴射される気筒の筒内温度は燃料が自着火可能な温度のため、膨張行程で停止している当該気筒に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒の膨張行程が再開し、停止していたディーゼルエンジンが再始動する。なお、この場合(膨張行程で停止している気筒の筒内温度が所定の温度以上のとき)、スタータを用いることなくディーゼルエンジンを再始動させることができるため、スタータの使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータおよびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータによる電力消費を低減することができる。
【0007】
一方、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度が前記所定の温度より低いとき、再始動手段は、スタータを用いることによってディーゼルエンジンを再始動させる。すなわち、このときの気筒の状態は燃料が自着火しない状態のため、再始動手段は、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するのではなく、スタータによりエンジンのクランクシャフトを回転させることによってエンジンの再始動を可能とするのである。
このように、本発明のエンジン始動装置は、ディーゼルエンジンの気筒の筒内温度に基づいて手段を選択し、当該手段によりディーゼルエンジンを再始動させる。したがって、ディーゼルエンジンをその状態に応じた手段によって確実に再始動させつつ、スタータの使用回数や使用時間の増加を抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、燃料噴射手段は、ディーゼルエンジンの複数の気筒それぞれに設けられた燃料噴射弁から、対応する気筒に燃料を噴射する。スタータは、ディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させることによりディーゼルエンジンを始動可能である。自動停止制御手段は、車両が停止していることが明らかなとき等エンジンを停止可能と判断したとき、すなわちエンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したときに、ディーゼルエンジンを自動停止させる。再始動手段は、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、アクセル操作の再開を検知したときや車両に搭載された機器の消費電力が上昇したとき等、すなわちエンジン始動の条件である再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たすとき、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射する。前記所定の条件は、筒内温度と筒内圧力との関係について燃料が自着火可能であるときの関係をいう。このとき燃料が噴射される気筒の筒内は燃料が自着火可能な状態のため、膨張行程で停止している当該気筒に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒の膨張行程が再開し、停止していたディーゼルエンジンが再始動する。なお、この場合(膨張行程で停止している気筒の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たすとき)、スタータを用いることなくディーゼルエンジンを再始動させることができるため、スタータの使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータおよびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータによる電力消費を低減することができる。
【0009】
一方、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度と筒内圧力との関係が前記所定の条件を満たさないとき、再始動手段は、スタータを用いることによってディーゼルエンジンを再始動させる。すなわち、このときの気筒の状態は燃料が自着火しない状態のため、再始動手段は、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するのではなく、スタータによりエンジンのクランクシャフトを回転させることによってエンジンの再始動を可能とするのである。
このように、本発明のエンジン始動装置は、ディーゼルエンジンの気筒の筒内温度と筒内圧力との関係に基づいて手段を選択し、当該手段によりディーゼルエンジンを再始動させる。したがって、ディーゼルエンジンをその状態に応じた手段によって確実に再始動させつつ、スタータの使用回数や使用時間の増加を抑制することができる。
【0010】
請求項3記載の発明では、燃料噴射手段は、ディーゼルエンジンの複数の気筒それぞれに設けられた燃料噴射弁から、対応する気筒に対して燃料を噴射する。スタータは、ディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させることによりディーゼルエンジンを始動可能である。自動停止制御手段は、車両が停止していることが明らかなとき等エンジンを停止可能と判断したとき、すなわちエンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したときに、ディーゼルエンジンを自動停止させる。再始動手段は、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、アクセル操作の再開を検知したときや車両に搭載された機器の消費電力が上昇したとき等、すなわちエンジン始動の条件である再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度が、所定の温度である第1温度以上のとき、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射する。前記第1所定温度は、燃料が自着火可能な温度の範囲内の温度である。よって、このとき燃料が噴射される気筒の筒内温度は燃料が自着火可能な温度のため、膨張行程で停止している当該気筒に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒の膨張行程が再開し、停止していたディーゼルエンジンが再始動する。なお、この場合、スタータを用いることなくディーゼルエンジンを再始動させることができるため、スタータの使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータおよびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータによる電力消費を低減することができる。
【0011】
また、再始動手段は、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度が、前記第1所定温度よりも低い所定の温度である第2所定温度以上、かつ、前記第1所定温度よりも低いとき、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するとともにスタータによりディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させる。前記第2所定温度は、燃料が自着火可能な温度の下限である。このとき燃料が噴射される気筒の筒内温度は燃料が自着火可能な温度のため、膨張行程で停止している当該気筒に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒の膨張行程が再開する。ところで、このときの気筒の筒内温度は、燃料が自着火可能な温度の下限近傍の温度の場合がある。この場合、気筒内で燃料が自着火しても、ディーゼルエンジンの回転力は小さいことが予想される。しかしながら、本発明では、このとき、気筒に対して燃料を噴射するとともにスタータによりディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させるため、回転初期から燃焼による回転力を得ることができる。これにより、エンジン再始動時間の短縮が可能となりスタータの使用時間の増加が抑制され、スタータ及びその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータによる消費電力を低減することができる。
【0012】
さらに、再始動手段は、少なくともエンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒の筒内温度が前記第2所定温度より低いとき、スタータを用いることによってディーゼルエンジンを再始動させる。すなわち、このときの気筒の状態は燃料が自着火しない状態のため、再始動手段は、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するのではなく、スタータによりエンジンのクランクシャフトを回転させることによってエンジンの再始動を可能とするのである。
このように、本発明のエンジン始動装置は、ディーゼルエンジンの気筒の筒内温度に基づいて手段を選択し、当該手段によりディーゼルエンジンを再始動させる。したがって、ディーゼルエンジンをその状態に応じた手段によって確実に再始動させつつ、スタータの使用回数や使用時間の増加を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明では、自動停止制御手段は、エンジン停止条件成立後、膨張行程にある気筒のピストンを上死点後所定の角度範囲内で停止させるピストン停止手段を有する。これにより、エンジン停止条件成立後、膨張行程にある気筒のピストンは、ピストン停止手段により上死点後の所定角度範囲内で停止する。前記所定の角度範囲とは、上死点後から下死点までの角度範囲を二等分したときの上死点側の範囲のことである。そのため、再始動手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料が噴射されたとき、自着火した燃料の爆発力をピストンおよびクランクシャフトに効果的に伝達することができる。したがって、再始動手段によるディーゼルエンジンの再始動時、エンジンをスムーズに回転させることができるとともに、エンジントルクを高めることができる。
【0014】
請求項5記載の発明では、ピストン停止手段は、圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させることにより膨張行程にある気筒のピストンの停止を補助する停止補助手段を有する。停止補助手段は、圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させる。これにより、圧縮行程にある気筒のピストンの上端面に圧力が作用する。この圧力は、上死点に向かって移動するピストンを停止させる方向に作用する。つまり、当該ピストンは、下死点方向に押圧される。そのため、膨張行程にある気筒のピストンの下死点に向かう移動が規制され、ピストンが停止する。すなわち、停止補助手段は、膨張行程にある気筒のピストンの停止を補助する。これにより、ピストン停止手段によって膨張行程にある気筒のピストンを停止させるとき、ピストンを上死点後所定の角度範囲内で容易かつ高精度に停止させることができる。
【0015】
請求項6記載の発明では、停止補助手段は、圧縮行程にある気筒の吸気弁を開弁することにより過給圧を導入し、圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させる。これにより、圧縮行程にある気筒のピストンの上死点に向かう移動が規制される。その結果、膨張行程にある気筒のピストンの下死点に向かう移動が規制され、当該ピストンを所定の角度範囲内で停止させることができる。
【0016】
請求項7記載の発明では、再始動手段は、圧縮行程で停止している気筒の筒内圧力を低減させる圧縮圧低減手段を有する。再始動手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料が噴射されると、燃料が自着火し膨張行程が再開する。膨張行程が再開すると、当該気筒のピストンは下死点に向かって移動する。本発明では、圧縮圧低減手段により圧縮行程で停止している気筒の筒内圧力が低減されるため、圧縮行程で停止している気筒のピストンを下死点方向へ押圧する力が低減される。これにより、膨張行程が再開した気筒のピストンの下死点方向への移動を阻害する力が低減される。したがって、再始動手段によるディーゼルエンジンの再始動時、エンジンをスムーズに回転させることができるとともに、エンジントルクを高めることができる。
【0017】
請求項8記載の発明では、圧縮圧低減手段は、圧縮行程で停止している気筒の排気弁を開弁することにより圧縮行程で停止している気筒の筒内圧力を低減させる。そのため、再始動手段により膨張行程が再開された気筒のピストンが下死点方向へ移動するとき、この移動を阻害する力は低減される。したがって、再始動手段によるディーゼルエンジンの再始動時、エンジンをスムーズに回転させることができるとともに、エンジントルクを高めることができる。
【0018】
請求項9記載の発明では、再始動手段は、燃料噴射手段により膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するとき、着火性の高い燃料を噴射する。そのため、膨張行程で停止している気筒に対して噴射された燃料は、容易に自着火する。したがって、ディーゼルエンジンの再始動をより確実なものとすることができるとともに、ディーゼルエンジン再始動時のエンジントルクを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のエンジン始動装置を適用したエンジンシステムを示す図。
【図2】本発明の第1実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理を示すフローチャート。
【図3】図2に示すメイン処理のサブルーチンを示す図であって、エンジン停止判定処理を示すフローチャート。
【図4】図2に示すメイン処理のサブルーチンを示す図であって、エンジン再始動判定処理を示すフローチャート。
【図5】図4に示すエンジン再始動判定処理のサブルーチンを示す図であって、自動始動判定処理を示すフローチャート。
【図6】図4に示すエンジン再始動判定処理のサブルーチンを示す図であって、AT車操作始動判定処理を示すフローチャート。
【図7】図4に示すエンジン再始動判定処理のサブルーチンを示す図であって、MT車操作始動判定処理を示すフローチャート。
【図8】本発明のエンジン始動装置を適用したエンジンシステムが備えるエンジンの各気筒の行程の遷移を示す図。
【図9】本発明のエンジン始動装置を適用したエンジンシステムが備えるエンジンの気筒のうち、膨張行程にある気筒および圧縮行程にある気筒の様子を示す図。
【図10】本発明の第1実施形態によるエンジン始動装置により決定される噴射パターンと気筒の筒内温度および噴射量との関係を示す図。
【図11】本発明のエンジン始動装置を適用したエンジンシステムが備えるエンジンの気筒のうち、膨張行程で停止していた気筒および圧縮行程で停止していた気筒の様子を示す図。
【図12】本発明の第2実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理を示すフローチャート。
【図13】本発明のエンジン始動装置を適用したエンジンシステムが備えるエンジンの気筒の筒内温度と筒内圧力との関係を示す図であって、燃料が自着火可能な領域を示す図。
【図14】本発明の第3実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理を示すフローチャート。
【図15】本発明の第3実施形態によるエンジン始動装置が気筒の筒内温度に応じてエンジン再始動の手段を選択することを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態によるエンジン始動装置を適用したエンジンシステムを、図1を用いて説明する。なお、当該エンジン始動装置は、車両に搭載された4気筒のディーゼルエンジンを制御の対象としている。エンジンシステム10は、エンジン11、スタータ12、コモンレール13、サプライポンプ14、インジェクタ15、および電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)40などを備えている。
【0021】
ディーゼルエンジンとしてのエンジン11は、四つの気筒2を有している。気筒2には、ピストン3が収容されている。ピストン3は、コンロッド4によりクランクシャフト5に接続している。これにより、気筒2内でのピストン3の往復運動がクランクシャフト5に伝達され回転運動に変換される。スタータ12は、クランクシャフト5に接続可能に設けられている。スタータ12は、クランクシャフト5に接続してクランクシャフト5を回転させることにより、エンジン11を始動可能である。スタータ12は、車両の運転開始時など、燃料の燃焼によらずエンジン11を始動させる必要があるとき等に使用される。
【0022】
サプライポンプ14は、図示しない燃料タンクに蓄えられている燃料を加圧してコモンレール13へ吐出する。コモンレール13は、サプライポンプ14で加圧された燃料を、圧力を維持したまま、すなわち蓄圧状態で蓄える。コモンレール13には、エンジン11の各気筒2に設置されているインジェクタ15が接続している。図1に示す四気筒のエンジン11の場合、コモンレール13には四本のインジェクタ15が接続している。
【0023】
燃料噴射弁としてのインジェクタ15は、エンジン11の各気筒2に設けられ、コモンレール13に蓄圧状態で蓄えられている燃料を各気筒2へ噴射する。インジェクタ15は、図示しない噴孔からの燃料の噴射を断続する図示しないニードル、およびニードルを駆動する図示しない電磁駆動部を有している。電磁駆動部は、ECU40に電気的に接続している。これにより、各インジェクタ15は、ECU40から出力される電気的な制御信号に基づいて燃料の噴射を断続する。
【0024】
エンジン11には、吸気系20および排気系30が接続している。吸気系20は、エアクリーナ21、インタクーラ22、電子スロットル23および吸気管24を有している。吸気管24は、吸気通路25を形成している。吸気通路25は、エアクリーナ21、インタクーラ22、およびエンジン11を接続している。エンジン11へ吸入される空気は、エアクリーナ21において異物が除去される。エアクリーナ21を通過した空気は、電子スロットル23および吸気弁26を経由してエンジン11の各気筒2へ供給される。電子スロットル23は、吸気通路25を開閉する。電子スロットル23で吸気通路25を開閉することにより、エンジン11に吸入される吸気の流量が調整される。
【0025】
排気系30は、排気管31および触媒32を有している。排気管31は、排気通路33を形成している。排気管31は、エンジン11から排気弁34を経由して排出された排気を外部へ導く。触媒32は、排気管31の途中に設置されている。触媒32は、排気中に含まれる例えば炭化水素あるいは窒素酸化物などを還元または酸化させ、これらの物質を無害化する。
【0026】
吸気系20と排気系30との間には、過給機50が設置されている。過給機50は、排気通路33を流れる排気によって回転するタービン51と、タービン51の回転によって回転し吸気通路25を流れる吸気を加圧するコンプレッサ52とを有している。コンプレッサ52によって加圧され高温になった吸気は、インタクーラ22によって冷却される。エンジンシステム10には、排気再循環装置35が設けられている。排気再循環装置35は、排気の一部を、通路36を通じて吸気系20に還流する。
【0027】
エンジン始動装置としてのECU40は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータによって構成されている。また、ECU40は、ROMに記録されているプログラムにしたがってエンジンシステム10およびエンジンシステム10が搭載されている車両を統合して制御する。ECU40には、インジェクタ15、電子スロットル23、サプライポンプ14、排気再循環装置35およびスタータ12が接続している。また、ECU40には、コモンレール圧センサ41、アクセルセンサ42、クランク角センサ43、気筒判別センサ44、車速センサ45、気筒内温度センサ46、気筒内圧力センサ47および水温センサ48が接続している。また、ECU40は、特許請求の範囲における「燃料噴射手段」、「自動停止制御手段」、「再始動手段」、「ピストン停止手段」、「停止補助手段」および「圧縮圧低減手段」として機能する。
【0028】
コモンレール圧センサ41は、コモンレール13に設置され、コモンレール13に蓄えられている燃料の圧力、すなわちコモンレール圧を検出する。コモンレール圧センサ41は、検出したコモンレール圧を電気信号としてECU40に出力する。
アクセルセンサ42は、アクセルペダル16に設置され、アクセルペダル16の開度を検出する。アクセルセンサ42は、検出したアクセルペダル16の開度を電気信号としてECU40に出力する。
【0029】
クランク角センサ43は、エンジン11のクランクシャフト5とともに回転するNEパルサ17の外周側に設けられている。クランク角センサ43は、クランクシャフト5の角度、すなわちクランク角に対応する電気信号をECU40に出力する。気筒判別センサ44は、図示しないカムシャフトとともに回転するGパルサ18の外周側に設けられている。NEパルサ17は、Gパルサ18が1回転する間に2回転する。NEパルサ17の外周には、単位時間当たりにクランク角センサ43が検出する歯数によりクランクシャフト5の回転速度、すなわちエンジン11の回転速度を算出するための複数の歯が形成されている。クランク角センサ43は、検出したエンジン11の回転数を電気信号としてECU40に出力する。ECU40は、クランク角センサ43から出力された回転数に基づいてエンジン11の回転速度を算出する。Gパルサ18の外周には、各気筒(#1〜4)を判別するための歯が形成されている。気筒判別センサ44は、判別した気筒に対応する電気信号をECU40に出力する。なお、ECU40は、気筒判別センサ44およびクランク角センサ43からの信号に基づき、各気筒のその時点の行程を推定可能である。
【0030】
車速センサ45は、例えば車両の車輪に接続するシャフトの外周側に設けられ、車輪の回転数を電気信号としてECU40に出力する。ECU40は、車速センサ45から出力された回転数に基づいて車両の車速を算出する。
気筒内温度センサ46は、気筒2のそれぞれに設けられ、各気筒の筒内温度を検出し、検出した筒内温度を電気信号としてECU40に出力する。
【0031】
気筒内圧力センサ47は、気筒内温度センサ46と同様に気筒2のそれぞれに設けられ、各気筒の筒内圧力を検出し、検出した筒内圧力を電気信号としてECU40に出力する。
水温センサ48は、ラジエータ19に設置され、エンジン11を冷却する冷却水の温度を検出する。水温センサ48は、検出した冷却水の温度を電気信号としてECU40に出力する。
【0032】
ECU40は、アクセルセンサ42で検出されたアクセルペダル16の開度に応じて、電子スロットル23の開度を調整する。また、ECU40は、アクセルセンサ42からの出力、クランク角センサ43からの出力、水温センサ48からの出力に基づいてエンジン11の負荷を予測する。そして、ECU40は、予測したエンジン11の負荷に基づいて、エンジン11へ供給すべき燃料量を算出する。ECU40は、コモンレール圧センサ41によって所定の周期でコモンレール圧を検出しつつ、算出した燃料量に基づいて、コモンレール圧が所定の圧力となるように、燃料タンクからサプライポンプ14へ供給する燃料の流量を調整する。これとともに、ECU40は、インジェクタ15の開弁時間を調整して所定量の燃料をエンジン11へ供給する。
【0033】
エンジンシステム10では、エンジン11は四つの気筒2(#1〜4)を有している。また、各気筒2それぞれには、インジェクタ15が一つずつ設置されている。インジェクタ15は、ECU40からの電気的な制御信号によって各気筒2へ燃料を噴射する。すなわち、インジェクタ15の電磁駆動部は、ECU40から燃料噴射を示す制御信号を受けると、ニードルを駆動する。これにより、ニードルは、インジェクタ15の噴孔とは反対側へ移動し噴孔が開放される。その結果、インジェクタ15の噴孔から燃料が噴射される。このように、ECU40は、燃料噴射手段として機能し、エンジン11の各気筒2へ燃料を噴射する。
【0034】
ECU40は、上述のように各センサからの検出信号によりエンジン11の負荷を予測し、予測した負荷に基づいて、最適な目標噴射量および目標噴射時期になるように制御信号としての噴射パルスを生成するパルス幅およびパルスの立ち上がり時期と運転状態との対応を、マップとしてRAMに記憶している。通常運転時、ECU40は、マップに基づいて各インジェクタを制御し、エンジン11の負荷に応じた量の燃料を各インジェクタから各気筒に噴射する。
【0035】
次に、ECU40によるエンジン11の再始動処理について説明する。
本実施形態では、ECU40は、メイン処理において自動停止制御手段として機能することにより、例えば信号待ちなどで車両が停止していることが明らかなとき等エンジン11を停止可能と判断したときに、エンジン11を自動停止させる。また、ECU40は、再始動手段として機能することにより、エンジン11が停止した後、運転者によるアクセル操作の再開を検知したときや車両に搭載された機器の消費電力が上昇したとき等エンジン11を再始動させる必要が生じたときに、エンジン11の気筒2のうち膨張行程で停止している気筒2のその時点の筒内温度が所定の温度以上の場合、スタータを用いることなくエンジン11を再始動させる。一方、ECU40は、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度より低い場合、スタータ12を用いてエンジン11を再始動させる。この一連の処理の流れを、図2〜7に示すフローを用いて説明する。
【0036】
図2のフローはメイン処理の流れを示し、図3〜7のフローはそれぞれメイン処理のサブルーチン処理の流れを示している。図2に示すメイン処理は、車両の運転開始時、すなわち例えば運転者が車両のイグニッションキーをオンしたときに開始される。また、ECU40によるメイン処理は、一連の処理を実行することによりエンジン11が再始動すると一旦終了するが、終了後、再び処理の先頭から開始される。なお、メイン処理またはサブルーチン処理の途中で運転者がイグニッションキーをオフした場合など、ECU40は実行中の処理を中止する。
【0037】
図2に示すように、メイン処理が開始されると、ECU40は、先ずエンジン停止判定処理としてのステップS200(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)を実行する。
図3に示すS200は、車両が停止していることが明らかなとき等エンジン11を停止可能と判断したとき、すなわちエンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したことを判定する処理である。図3に示すS200の一連の処理が実行されたとき、エンジン停止条件が成立したと判定され、処理はメイン処理に戻る。
【0038】
S200が開始されると、処理は先ずS201へ移行する。
S201では、ECU40は、システムが正常か否かを判断する。システムが正常であると判断した場合(S201:Y)、処理はS202へ移行する。一方、システムが異常であると判断した場合(S201:N)、処理はS201へ戻る。すなわち、ECU40によってシステムが正常であると判断されるまで、S201は繰り返し実行される。
【0039】
S202では、ECU40は、車速センサ45からの信号に基づき車速を算出し、車速の値が所定値以下かどうかを判断する。車速の値が所定値以下であると判断した場合(S202:Y)、処理はS203へ移行する。一方、車速の値が所定値よりも大きいと判断した場合(S202:N)、処理はS201へ戻る。
【0040】
S203では、ECU40は、アクセルセンサ42からの信号に基づき、アクセルペダル16の開度がゼロかどうか、すなわちアクセルペダル16が踏まれていない(OFF)状態かどうかを判断する。アクセルペダル16は踏まれていないと判断した場合(S203:Y)、処理はS204へ移行する。一方、アクセルペダル16は踏まれていると判断した場合(S203:N)、処理はS201へ戻る。
【0041】
S204では、ECU40は、水温センサ48からの信号に基づき、冷却水の温度の値が所定値以上かどうかを判断する。冷却水の温度の値が所定値以上であると判断した場合(S204:Y)、処理はS205へ移行する。一方、冷却水の温度の値が所定値よりも小さいと判断した場合(S204:N)、処理はS201へ戻る。
【0042】
S205では、ECU40は、カウンターの値などに基づいて、前回のエンジン始動から所定時間経過しているかどうかを判断する。前回のエンジン始動から所定時間経過していると判断した場合(S205:Y)、処理はS206へ移行する。一方、前回のエンジン始動から所定時間経過していないと判断した場合(S205:N)、処理はS201へ戻る。
【0043】
S206では、ECU40は、前回のエンジン始動後、所定の速度以上の車速履歴があるかどうかを判断する。ECU40は、車速センサ45からの信号に基づき車速を算出し、車速の履歴をRAMに記憶している。RAMに記憶された車速の履歴に所定の速度以上の履歴があると判断した場合(S206:Y)、処理はS207へ移行する。一方、RAMに記憶された車速の履歴に所定の速度以上の履歴がないと判断した場合(S206:N)、処理はS201へ戻る。
【0044】
S207では、ECU40は、車両がAT車かどうかを判断する。車両がAT車であると判断した場合(S207:Y)、処理はS208へ移行する。一方、車両がAT車でない、すなわちMT車であると判断した場合(S207:N)、処理はS210へ移行する。
S208では、ECU40は、シフトポジションがNまたはPかどうかを判断する。シフトポジションがNまたはPであると判断した場合(S208:Y)、エンジン停止条件が成立したと判定し、エンジン停止判定処理(S200)を終了してメイン処理へ戻る。一方、シフトポジションがNまたはPでないと判断した場合(S208:N)、処理はS209へ移行する。
【0045】
S209では、ECU40は、シフトポジションがD、かつ、ブレーキペダルが踏まれているかどうかを判断する。シフトポジションがD、かつ、ブレーキペダルが踏まれていると判断した場合(S209:Y)、エンジン停止条件が成立したと判定し、エンジン停止判定処理(S200)を終了してメイン処理へ戻る。一方、シフトポジションはDではない、またはブレーキペダルは踏まれていないと判断した場合(S209:N)、処理はS201へ戻る。
【0046】
S210では、ECU40は、シフトポジションがNである、またはシフトポジションがN以外かつクラッチペダルが踏まれていると判断した場合(S210:Y)、エンジン停止条件が成立したと判定し、エンジン停止判定処理(S200)を終了してメイン処理へ戻る。一方、シフトポジションがN以外かつクラッチペダルが踏まれていないと判断した場合(S210:N)、処理はS201へ戻る。
【0047】
図2に示すように、エンジン停止判定処理(S200)が終了しエンジン停止条件が成立したと判定されると、処理はS101へ移行する。
S101では、ECU40は、インジェクタ15への噴射制御信号の出力を停止する。これにより、インジェクタ15から気筒2への燃料の噴射が停止する。その結果、エンジン11の回転数は、徐々に低下していく。S101の後、処理はS102へ移行する。
【0048】
S102では、ECU40は、電子スロットル23の開度をゼロにする。これにより、吸気通路25を通じた気筒2への空気の流入が停止する。その結果、新気の流入によって生じ得るエンジン11の振動が低減される。その後、処理はS103へ移行する。
S103では、ECU40は、エンジン11の回転数の値が所定値以下かどうかを判断する。エンジン11の回転数の値が所定値以下であると判断した場合(S103:Y)、処理はS104へ移行する。一方、エンジン11の回転数の値が所定値よりも大きいと判断した場合(S103:N)、処理はS103へ戻る。すなわち、この場合、S103の処理が繰り返される。
【0049】
S104では、ECU40は、エンジン11の回転数に応じて電子スロットル23の開度を決定し、決定した開度となるように電子スロットル23の開度を調節する。このとき、エンジン11の回転数の値が大きいときほど、電子スロットル23の開度としては小さな開度が決定される。一方、エンジン11の回転数の値が小さいときほど、電子スロットル23の開度としては大きな開度が決定される。すなわち、エンジン11の回転が停止状態に近づくにつれ、電子スロットル23の開度は大きくなる。このように電子スロットル23の開度を調節することにより、クランク角が所望の角度となるようにエンジン11を停止させることが容易となる。S104の後、処理はS105へ移行する。
【0050】
S105では、ECU40は、エンジン11の回転数の値が所定値以下で、かつ、クランク角が所定の角度範囲にあるかどうかを判断する。エンジン11の回転数の値が所定値以下で、かつ、クランク角が所定の角度範囲にあると判断した場合(S105:Y)、処理はS106へ移行する。一方、エンジン11の回転数の値が所定値よりも大きい場合、あるいはクランク角が所定の角度範囲にない場合(S105:N)、処理はS104へ戻る。
【0051】
S105におけるクランク角の所定の角度範囲について説明する。図8に示すように、各気筒(#1〜4)は、時間の経過とともに膨張行程、排気行程、吸気行程、圧縮行程の四つの行程を繰り返している。前記所定の角度範囲は、例えば、膨張行程にある気筒2のピストン3が、上死点(TDC)から上死点と下死点(BDC)とのほぼ中間の位置までの範囲(図8に網掛けで示す範囲)にあるときのクランク角の角度範囲である。すなわち、前記所定の角度範囲は、膨張行程にある気筒2の上死点後0°〜90°の範囲である。第1気筒の膨張行程が終了すると第3気筒の膨張行程が開始し、第3気筒の膨張行程が終了すると第4気筒の膨張行程が開始する。このように、ある気筒の膨張行程が終了すると別の気筒の膨張行程が開始するため、前記所定の角度範囲には複数の範囲が含まれる。
【0052】
S106では、ECU40は、電子スロットル23の開度をゼロにする。その後、処理はS107へ移行する。
S107では、ECU40は、圧縮行程にある気筒2の吸気弁26を開弁する。これにより、圧縮行程にある気筒2に過給圧が導入され、当該気筒2の筒内圧力が増大する。
【0053】
このとき膨張行程にある気筒、および圧縮行程にある気筒の様子を図9に示す。例えば第1気筒が膨張行程にあるとき、第3気筒は圧縮行程にある。膨張行程にある第1気筒では、燃料噴射停止中であるが、圧縮行程を経ているため筒内圧力が高まっている。この圧力は、第1気筒のピストン3の上端面に作用し、ピストン3を下死点方向へ押圧する力F1となる。一方、圧縮行程にある第3気筒のピストン3は、第1気筒のピストン3が下死点方向に移動することで生じるクランクシャフト5の回転力により、上死点方向に移動している。S107では、圧縮行程にある第3気筒の吸気弁26が開弁され、第3気筒に過給圧が導入される。これにより、第3気筒の筒内圧力が増大し、第3気筒のピストン3の上端面に圧力が作用する。この圧力は、上死点に向かって移動するピストン3を、下死点方向へ押圧する力F2となる。これにより、力F1は力F2で相殺される。その結果、第1気筒のピストン3の下死点に向かう移動が規制され、当該ピストン3が停止する。なお、ここでは、当該ピストン3は、膨張行程にある第1気筒の上死点後10°〜30°の範囲内で停止していることが望ましい。S107の処理により、当該ピストン3を上死点後所定の角度範囲内の所望の角度で停止させることが容易となる。
【0054】
図2に示すように、S107の後、処理はS108へ移行する。
S108では、ECU40は、エンジン11が停止したことを確認し、クランク角情報を保持する。その後、処理はS109へ移行する。
S109では、ECU40は、クランク角が所定の角度範囲内で停止しているかどうかを判断する。ここでの所定の角度範囲とは、S105の処理で説明した所定の角度範囲と同様、例えば、膨張行程にある気筒2の上死点後0°〜90°の範囲である。クランク角が所定の角度範囲内で停止していると判断した場合(S109:Y)、処理はS110へ移行する。一方、クランク角が所定の角度範囲外で停止していると判断した場合(S109:N)、処理はS112へ移行する。
【0055】
S110では、ECU40は、スタータ判定フラグの値として0をRAMに記憶する。その後、処理はS111へ移行する。
S111では、ECU40は、電子スロットル23の開度を最大にする。その後、処理はエンジン再始動判定処理としてのS300へ移行する。
S112では、ECU40は、スタータ判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、処理はS300へ移行する。
【0056】
図4に示すS300は、アクセル操作の再開を検知したときや車両に搭載された機器の消費電力が上昇したとき等、すなわちエンジン始動の条件である再始動条件が成立したことを判定する処理である。S300の一連の処理が実行されたとき、再始動条件が成立したと判定され、処理はメイン処理に戻る。S300が開始されると、処理は先ずS301へ移行する。
【0057】
S301では、ECU40は、再始動判定フラグの値として0をRAMに記憶する。その後、処理は自動始動判定処理としてのS400へ移行する。
図5に示すS400が開始されると、処理は先ずS401へ移行する。
S401では、ECU40は、システムに異常が発生しているかどうかを判断する。システムに異常が発生していると判断した場合(S401:Y)、処理はS407へ移行する。一方、システムに異常は発生していない、すなわちシステムは正常であると判断した場合(S401:N)、処理はS402へ移行する。
【0058】
S402では、ECU40は、車速センサ45からの信号に基づき、車両に車速が発生しているかどうかを判断する。車両に車速が発生していると判断した場合(S402:Y)、処理はS407へ移行する。一方、車両に車速は発生していない、すなわち車両は停止していると判断した場合(S402:N)、処理はS403へ移行する。
【0059】
S403では、ECU40は、車両に搭載された空調装置の空調能力が低下しているか、すなわち空調条件が成立したかどうかを判断する。空調条件が成立したと判断した場合(S403:Y)、処理はS407へ移行する。一方、空調条件は成立していないと判断した場合(S403:N)、処理はS404へ移行する。
【0060】
S404では、ECU40は、ブレーキブースターへの負圧が減少しているかどうかを判断する。通常、エンジン11の回転力は、ブレーキ負圧を所定の圧力に保つための力として働く。そのため、エンジン11が停止すると、ブレーキブースターへの負圧が減少することがある。ブレーキブースターへの負圧が減少していると判断した場合(S404:Y)、処理はS407へ移行する。一方、ブレーキブースターへの負圧は低下していないと判断した場合(S404:N)、処理はS405へ移行する。
【0061】
S405では、ECU40は、車両に搭載された機器へ電力を供給する鉛電池の電圧が低下しているか、すなわち鉛電池条件が成立したかどうかを判断する。鉛電池条件が成立したと判断した場合(S405:Y)、処理はS407へ移行する。一方、鉛電池条件は成立していないと判断した場合(S405:N)、処理はS406へ移行する。
【0062】
S406では、ECU40は、車両に搭載された機器の電力消費量の値が所定値以上かどうかを判断する。電力消費量の値が所定値以上であると判断した場合(S406:Y)、処理はS407へ移行する。一方、電力消費量の値は所定値よりも小さいと判断した場合(S406:N)、再始動判定フラグの値は0のまま、自動始動判定処理(S400)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
【0063】
S407では、ECU40は、再始動判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、自動始動判定処理(S400)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
図4に示すように、S400の後、処理はS302へ移行する。
S302では、ECU40は、RAMに記憶されている再始動判定フラグの値が1かどうかを判断する。再始動判定フラグの値が1であると判断した場合(S302:Y)、再始動条件が成立したと判定し、エンジン再始動判定処理(S300)を終了してメイン処理へ戻る。一方、再始動判定フラグの値が1でない、すなわち再始動判定フラグの値が0であると判断した場合(S302:N)、処理はS303へ移行する。
【0064】
S303では、ECU40は、車両がAT車かどうかを判断する。車両がAT車であると判断した場合(S303:Y)、処理はAT車操作始動判定処理としてのS500へ移行する。一方、車両がAT車でない、すなわちMT車であると判断した場合(S303:N)、処理はMT車操作始動判定処理としてのS600へ移行する。
図6に示すS500が開始されると、処理は先ずS501へ移行する。
【0065】
S501では、ECU40は、シフトポジションがDかどうかを判断する。シフトポジションがDであると判断した場合(S501:Y)、処理はS502へ移行する。一方、シフトポジションがDではない、すなわちシフトポジションがNまたはPであると判断した場合(S501:N)、処理はS505へ移行する。
【0066】
S502では、ECU40は、ブレーキペダルが踏まれていない(OFF)状態かどうかを判断する。ブレーキペダルは踏まれていないと判断した場合(S502:Y)、処理はS504へ移行する。一方、ブレーキペダルは踏まれていると判断した場合(S502:N)、処理はS503へ移行する。
S503では、ECU40は、アクセルペダル16が踏まれている(ON)状態かどうかを判断する。アクセルペダル16は踏まれていると判断した場合(S503:Y)、処理はS504へ移行する。一方、アクセルペダル16は踏まれていないと判断した場合(S503:N)、再始動判定フラグの値は0のまま、AT車操作始動判定処理(S500)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
【0067】
S504では、ECU40は、再始動判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、AT車操作始動判定処理(S500)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
S505では、ECU40は、ブレーキペダルが踏まれている(ON)状態でシフトチェンジの操作が行われたかどうかを判断する。ブレーキペダルが踏まれている状態でシフトチェンジの操作が行われたと判断した場合(S505:Y)、処理はS506へ移行する。一方、ブレーキペダルは踏まれておらず、シフトチェンジの操作も行われていないと判断した場合(S505:N)、再始動判定フラグの値は0のまま、AT車操作始動判定処理(S500)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
【0068】
S506では、ECU40は、再始動判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、AT車操作始動判定処理(S500)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
図7に示すMT車操作始動判定処理としてのS600が開始されると、処理は先ずS601へ移行する。
【0069】
S601では、ECU40は、シフトポジションがNかどうかを判断する。シフトポジションがNであると判断した場合(S601:Y)、処理はS602へ移行する。一方、シフトポジションがNではないと判断した場合(S601:N)、処理はS604へ移行する。
S602では、ECU40は、クラッチペダルが踏まれている(ON)状態かどうかを判断する。クラッチペダルは踏まれていると判断した場合(S602:Y)、処理はS603へ移行する。一方、クラッチペダルは踏まれていないと判断した場合(S602:N)、再始動判定フラグの値は0のまま、MT車操作始動判定処理(S600)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
【0070】
S603では、ECU40は、再始動判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、MT車操作始動判定処理(S600)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
S604では、ECU40は、ブレーキペダルが踏まれていない(OFF)状態かどうかを判断する。ブレーキペダルは踏まれていないと判断した場合(S604:Y)、処理はS606へ移行する。一方、ブレーキペダルは踏まれていると判断した場合(S604:N)、処理はS605へ移行する。
【0071】
S605では、ECU40は、クラッチペダルが踏まれていない(OFF)状態かどうかを判断する。クラッチペダルは踏まれていないと判断した場合(S605:Y)、処理はS606へ移行する。一方、クラッチペダルは踏まれていると判断した場合(S605:N)、再始動判定フラグの値は0のまま、MT車操作始動判定処理(S600)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
【0072】
S606では、ECU40は、再始動判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、MT車操作始動判定処理(S600)を終了してエンジン再始動判定処理へ戻る。
図4に示すように、S500またはS600の後、処理はS304へ移行する。
【0073】
S304では、ECU40は、RAMに記憶されている再始動判定フラグの値が1かどうかを判断する。再始動判定フラグの値が1であると判断した場合(S304:Y)、再始動条件が成立したと判定し、エンジン再始動判定処理(S300)を終了してメイン処理へ戻る。一方、再始動判定フラグの値が1でない、すなわち再始動判定フラグの値が0であると判断した場合(S304:N)、処理はS400へ戻る。
【0074】
図2に示すように、S300の一連の処理が終了することで再始動条件が成立したと判定されると、処理はS113へ移行する。
S113では、ECU40は、RAMに記憶されているスタータ判定フラグの値が0かどうかを判断する。スタータ判定フラグの値が0であると判断した場合(S113:Y)、処理はS120へ移行する。一方、スタータ判定フラグの値が0でない、すなわちスタータ判定フラグの値が1であると判断した場合(S113:N)、処理はS183へ移行する。
【0075】
S120では、ECU40は、エンジン停止時に保持したクランク角情報、および気筒2に設けられた気筒内温度センサ46からの信号に基づき、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度以上かどうかを判断する。前記所定の温度としては、燃料が自着火可能な温度の下限が設定されている。膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度以上であると判断した場合(S120:Y)、処理はS180へ移行する。一方、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度より低いと判断した場合(S120:N)、処理はS183へ移行する。
【0076】
S180では、ECU40は、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度に基づき、膨張行程で停止している気筒2に噴射する燃料の噴射パターンおよび噴射量を決定する。ここで決定する噴射パターンおよび噴射量は、図10に示す筒内温度の範囲に基づいて決定する。
図10に示す筒内温度aは、気筒内において燃料が自着火可能な温度の下限である。筒内温度bは、筒内温度aよりも所定の温度だけ高い温度である。筒内温度cは、筒内温度bよりも所定の温度だけ高い温度である。S180では、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度がa以上およびbより低いとき、噴射パターンとしてパターンAが決定される。膨張行程で停止している気筒2の筒内温度がb以上およびcより低いとき、噴射パターンとしてパターンBが決定される。膨張行程で停止している気筒2の筒内温度がc以上のときは、噴射パターンとしてパターンCが決定される。図中、パターンA、パターンB、パターンCに示されるそれぞれの波形は、各噴射パターンにおいてECU40からインジェクタ15に出力される噴射パルスを表している。各パターンに示される噴射パルスがインジェクタ15に出力されると、噴射パルスの立ち上がり時期に応じて、噴射パルスの山の面積に応じた量の燃料がインジェクタ15から気筒2に対して噴射される。
【0077】
本実施形態では、パターンAに示す噴射パルスがインジェクタ15に出力された場合、メイン噴射に先立って、メイン噴射時の噴射量よりも少ない量の噴射が2回行われる。このように燃料が気筒内に分割噴射されると、燃料が自着火し易くなるとともに、気筒内に燃料の良好な燃焼状態を形成することができる。パターンBに示す噴射パルスがインジェクタ15に出力された場合、メイン噴射に先立って、メイン噴射時の噴射量よりも少ない量の噴射が1回行われる。一方、パターンCに示す噴射パルスがインジェクタ15に出力された場合、メイン噴射に先立つ噴射は行われず、メイン噴射のみ行われる。
【0078】
また、気筒内に噴射される燃料は、気筒内の温度が高いほど燃焼可能な量が多くなる。各パターンに示される噴射パルスは、パターンAの噴射パルスによる噴射燃料の総量よりもパターンBの噴射パルスによる噴射燃料の総量のほうが多くなるように、パターンBの噴射パルスによる噴射燃料の総量よりもパターンCの噴射パルスによる噴射燃料の総量のほうが多くなるように設定されている。
【0079】
図2に示すように、S180の後、処理はS181へ移行する。
S181では、ECU40は、圧縮行程で停止している気筒2の排気弁34を開弁する。これにより、圧縮行程で停止している気筒2から、圧縮された空気が排気通路33へ排出される。その結果、当該気筒2の筒内圧力、すなわち圧縮圧が低減する。S181の後、処理はS182へ移行する。
【0080】
S182では、ECU40は、膨張行程で停止している気筒2に対してインジェクタ15から燃料を噴射する。このとき、ECU40からインジェクタ15に出力される噴射パルスの噴射パターンは、S180で決定した噴射パターンである。なお、本実施形態では、S182で噴射する燃料は、高着火性の燃料である。この高着火性の燃料は、例えば、通常噴射する燃料が蓄えられている燃料タンクとは別のタンクに蓄えられ、インジェクタ15または専用のインジェクタから噴射される。
【0081】
このとき膨張行程で停止していた気筒、および圧縮行程で停止していた気筒の様子を図11に示す。例えば第1気筒が膨張行程で停止しているとき、第3気筒は圧縮行程で停止している。S182での処理により膨張行程で停止している第1気筒に対して燃料が噴射されると、燃料が自着火し膨張行程が再開する。第1気筒の膨張行程が再開すると、当該気筒のピストン3の上端面には力F3が作用し、ピストン3は下死点に向かって移動する。本実施形態では、S181の処理により、圧縮行程で停止している第3気筒の筒内圧力は低減されている。そのため、第3気筒のピストン3を下死点方向へ押圧する力F4は低減されている。すなわち、膨張行程が再開した第1気筒のピストン3の下死点方向への移動を阻害する力は低減されている。これにより、第1気筒のピストン3は、容易に下死点方向へ移動することができる。その結果、第1気筒のピストン3に作用する力F3を効率的にクランクシャフト5に伝達することができ、エンジン11をスムーズに回転させることができる。
【0082】
図2に示すように、S182の後、処理はS184へ移行する。
S183では、ECU40は、スタータ12を作動させることによってエンジン11のクランクシャフト5を回転させる。その後、処理はS184へ移行する。
S184では、ECU40は、S182またはS183の処理によってエンジン11が再始動したことを確認する。
【0083】
S184の処理が実行されると、メイン処理が終了する。その後、再び図2に示すメイン処理が開始され、S200の処理が実行される。
上述のように、ECU40は、S200、S101〜S107において自動停止制御手段として機能する。また、ECU40は、S102〜S107においてピストン停止手段として機能する。また、ECU40は、S107において停止補助手段として機能する。また、ECU40は、S300、S113、S120、S180〜S184において再始動手段として機能する。さらに、ECU40は、S181において圧縮圧低減手段として機能する。
【0084】
以上説明したように、第1実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度以上のとき、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射する。このとき燃料が噴射される気筒2の筒内温度は燃料が自着火可能な温度のため、膨張行程で停止している当該気筒2に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒2の膨張行程が再開し、停止していたエンジン11が再始動する。なお、この場合(膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度以上のとき)、スタータ12を用いることなくエンジン11を再始動させることができるため、スタータ12の使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータ12およびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータ12による電力消費を低減することができる。
【0085】
一方、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が所定の温度より低いとき、エンジン始動装置は、スタータ12を用いることによってエンジン11を再始動させる。すなわち、このときの気筒2の状態は燃料が自着火しない状態のため、エンジン始動装置は、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射するのではなく、スタータ12によりエンジン11のクランクシャフト5を回転させることによってエンジン11の再始動を可能とするのである。
このように、本実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン11の気筒の筒内温度に基づいて手段を選択し、当該手段によりエンジン11を再始動させる。したがって、エンジン11をその状態に応じた手段によって確実に再始動させつつ、スタータの使用回数や使用時間の増加を抑制することができる。
【0086】
また、第1実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン停止条件成立後、膨張行程にある気筒2のピストン3を上死点後所定の角度範囲内で停止させるピストン停止手段を有する。これにより、エンジン停止条件成立後、膨張行程にある気筒2のピストン3は、上死点後の所定角度範囲内で停止する。前記所定の角度範囲とは、上死点後から下死点までの角度範囲を二等分したときの上死点側の範囲のことである。そのため、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料が噴射されたとき、自着火した燃料の爆発および燃焼により生じる筒内圧力をピストン3およびクランクシャフト5に効果的に伝達することができる。したがって、エンジン11の再始動時、エンジン11をスムーズに回転させることができるとともに、エンジン11のトルクを高めることができる。
【0087】
また、第1実施形態によるエンジン始動装置は、膨張行程にある気筒2のピストン3を上死点後所定の角度範囲内で停止させるとき、圧縮行程にある気筒2の吸気弁26を開弁して筒内圧力を増大させることにより膨張行程にある気筒2のピストン3の停止を補助する停止補助手段を有する。これにより、圧縮行程にある気筒2のピストン3の上端面に圧力が作用し、当該ピストン3は下死点方向に押圧される。そのため、膨張行程にある気筒2のピストン3の下死点に向かう移動が規制され、ピストン3が停止する。その結果、膨張行程にある気筒2のピストン3を停止させるとき、ピストン3を上死点後所定の角度範囲内で容易かつ高精度に停止させることができる。
【0088】
また、第1実施形態によるエンジン始動装置は、再始動条件が成立し、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射するときに、圧縮行程で停止している気筒2の排気弁を開弁して筒内圧力を低減させる圧縮圧低減手段を有する。これにより、圧縮行程で停止している気筒2のピストン3を下死点方向へ押圧する力が低減される。その結果、膨張行程が再開した気筒2のピストン3の下死点方向への移動を阻害する力が低減される。したがって、エンジン11の再始動時、エンジン11をスムーズに回転させることができるとともに、エンジン11のトルクを高めることができる。
【0089】
さらに、第1実施形態によるエンジン始動装置は、再始動条件が成立し、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射するとき、着火性の高い燃料を噴射する。そのため、膨張行程で停止している気筒2に対して噴射された燃料は、容易に自着火する。したがって、エンジン11の再始動をより確実なものとすることができるとともに、エンジン再始動時のエンジン11のトルクを高めることができる。
【0090】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理を図12に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態によるエンジン始動装置は、第1実施形態によるエンジン始動装置と同様、図1に示すエンジンシステム10に適用される。図12に示すように、第2実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理は、第1実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理とほぼ同一であるが、S113での判断においてスタータ判定フラグの値が0であると判断した場合(S113:Y)、S120の代わりにS130が実行される点で第1実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理と異なる。以下、エンジン始動装置としてのECU40によるS130での処理について説明する。
【0091】
S130では、ECU40は、エンジン停止時に保持したクランク角情報、ならびに気筒2に設けられた気筒内温度センサ46および気筒内圧力センサ47からの信号に基づき、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たしているかどうかを判断する。図13に示すように、エンジン11が停止すると、時間の経過とともにエンジン11の気筒2の筒内温度と筒内圧力とは、燃料の自着火可能領域から外れる方向に遷移する。前記所定の条件としては、「筒内温度および筒内圧力が自着火可能領域内にあること」という条件が設定されている。膨張行程で停止している気筒2の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たしていると判断した場合(S130:Y)、処理はS180へ移行する。一方、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度と筒内圧力との関係は所定の条件を満たしていないと判断した場合(S130:N)、処理はS183へ移行する。
【0092】
以上説明したように、第2実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たしたとき、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射する。このとき燃料が噴射される気筒2の筒内温度および筒内圧力は燃料が自着火可能な状態のため、膨張行程で停止している当該気筒2に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒2の膨張行程が再開し、停止していたエンジン11が再始動する。なお、この場合(膨張行程で停止している気筒2の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たすとき)、スタータ12を用いることなくエンジン11を再始動させることができるため、スタータ12の使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータ12およびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータ12による電力消費を低減することができる。
【0093】
一方、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度と筒内圧力との関係が前記所定の条件を満たさないとき、エンジン始動装置は、スタータ12を用いることによってエンジン11を再始動させる。すなわち、このときの気筒2の状態は燃料が自着火しない状態のため、エンジン始動装置は、第1実施形態と同様、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射するのではなく、スタータ12によりエンジン11のクランクシャフト5を回転させることによってエンジン11の再始動を可能とするのである。
このように、本実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン11の気筒の筒内温度と筒内圧力との関係に基づいて手段を選択し、当該手段によりエンジン11を再始動させる。したがって、エンジン11をその状態に応じた手段によって確実に再始動させつつ、スタータの使用回数や使用時間の増加を抑制することができる。
【0094】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理を図14に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態によるエンジン始動装置は、第1実施形態によるエンジン始動装置と同様、図1に示すエンジンシステム10に適用される。図14に示すように、第3実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理は、第1実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理と類似するが、S113以降の処理が異なる。
【0095】
第3実施形態によるエンジン始動装置のメイン処理では、S113での判断においてスタータ判定フラグの値が0であると判断した場合(S113:Y)、処理はS140へ移行する。一方、スタータ判定フラグの値が0でない、すなわちスタータ判定フラグの値が1であると判断した場合(S113:N)、処理はS183へ移行する。
S140では、ECU40は、エンジン停止時に保持したクランク角情報、および気筒2に設けられた気筒内温度センサ46からの信号に基づき、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が、所定の温度である第1所定温度以上かどうかを判断する。前記第1所定温度としては、燃料が自着火可能な温度の範囲内の温度が設定されている。膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度以上であると判断した場合(S140:Y)、処理はS180へ移行する。一方、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度より低いと判断した場合(S140:N)、処理はS141へ移行する。
【0096】
S141では、ECU40は、エンジン停止時に保持したクランク角情報、および気筒2に設けられた気筒内温度センサ46からの信号に基づき、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が、所定の温度である第2所定温度以上かどうかを判断する。前記第2所定温度としては、燃料が自着火可能な温度の下限が設定されている。すなわち、第2所定温度は、第1所定温度よりも低い温度である。膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第2所定温度以上であると判断した場合(S141:Y)、処理はS142へ移行する。一方、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第2所定温度より低いと判断した場合(S141:N)、処理はS183へ移行する。
S142では、ECU40は、スタータ判定フラグの値として1をRAMに記憶する。その後、処理はS180へ移行する。
【0097】
本実施形態では、S180〜S182の後、S143が実行される。
S143では、ECU40は、RAMに記憶されているスタータ判定フラグの値が0かどうかを判断する。スタータ判定フラグの値が0であると判断した場合(S143:Y)、処理はS184へ移行する。一方、スタータ判定フラグの値が0でない、すなわちスタータ判定フラグの値が1であると判断した場合(S143:N)、処理はS183へ移行する。
【0098】
本実施形態のエンジン始動装置によれば、ECU40は、クランク角が所定の角度範囲内で停止し(S109:Y、スタータ判定フラグ=0)、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度以上のとき(S140:Y)、S180〜182の処理により膨張行程で停止している気筒2に燃料を噴射することでエンジン11を再始動させる。
また、ECU40は、クランク角が所定の角度範囲内で停止し(S109:Y、スタータ判定フラグ=0)、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が、第1所定温度より低く第2所定温度以上のとき(S140:N、S141:Y、スタータ判定フラグ=1)、S180〜182の処理により膨張行程で停止している気筒2への燃料噴射と併せ、S183の処理によりスタータ12でエンジン11のクランクシャフト5を回転させてエンジン11を再始動させる。
さらに、ECU40は、クランク角が所定の角度範囲内で停止しなかったとき(S109:N、スタータ判定フラグ=1)、またはクランク角が所定の角度範囲内で停止し(S109:Y、スタータ判定フラグ=0)、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度および第2所定温度より低いとき(S140:N、S141:N)、S180〜182の処理は実行せず、S183の処理によりスタータ12でエンジン11のクランクシャフト5を回転させてエンジン11を再始動させる。
【0099】
このように、本実施形態のエンジン始動装置は、クランク角が所定の角度範囲内で停止しなかった場合、スタータ12のみによりエンジン11を再始動させる。一方、クランク角が所定の角度範囲内で停止した場合、エンジン始動装置は、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度以上のときは、気筒2に燃料を噴射することのみでエンジン11を再始動させ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度より低く第2所定温度以上のときは、気筒2への燃料噴射と併せ、スタータ12でエンジン11のクランクシャフト5を回転させてエンジン11を再始動させ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度および第2所定温度より低いときは、スタータ12のみによりエンジン11を再始動させる(図15参照)。すなわち、本実施形態のエンジン始動装置は、エンジン11の気筒2の状態(筒内温度)に応じて、エンジン11を再始動させる手段を選択するのである。
【0100】
以上説明したように、第3実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度以上のとき、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射する。このとき燃料が噴射される気筒2の筒内温度は燃料が自着火可能な温度のため、膨張行程で停止している当該気筒2に噴射された燃料は自着火する。これにより、当該気筒2の膨張行程が再開し、停止していたエンジン11が再始動する。なお、この場合(膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が第1所定温度以上のとき)、スタータ12を用いることなくエンジン11を再始動させることができるため、スタータ12の使用回数や使用時間の増加が抑制され、スタータ12およびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータ12による電力消費を低減することができる。
【0101】
また、本実施形態では、エンジン停止条件が成立することでディーゼルエンジンが停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が前記第1所定温度よりも低く第2所定温度以上のとき、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射するとともにスタータ12によりエンジン11のクランクシャフト5を回転させる。このとき燃料が噴射される気筒2の筒内温度は燃料が自着火可能な温度のため、当該気筒2に噴射された燃料は自着火し、当該気筒2の膨張行程が再開する。ところで、このときの気筒2の筒内温度は、燃料が自着火可能な温度の下限近傍の温度の場合がある。この場合、気筒内で燃料が自着火しても、エンジン11の回転力は小さいことが予想される。しかしながら、本実施形態では、このとき、気筒2に対して燃料を噴射するとともにスタータ12によりエンジン11のクランクシャフト5を回転させるため、回転初期から燃焼による回転力を得ることができる。これにより、エンジン再始動時間の短縮が可能となりスタータ使用時間の増加が抑制され、スタータおよびその周辺部品の寿命の短縮を防ぐとともにスタータによる電力消費を低減することができる。
【0102】
さらに、本実施形態では、エンジン停止条件が成立することでエンジン11が停止した後、再始動条件が成立し、かつ、膨張行程で停止している気筒2の筒内温度が前記第2所定温度より低いとき、スタータ12を用いることによってエンジン11を再始動させる。すなわち、このときの気筒2の状態は燃料が自着火しない状態のため、エンジン始動装置は、第1実施形態と同様、膨張行程で停止している気筒2に対して燃料を噴射するのではなく、スタータ12によりエンジン11のクランクシャフト5を回転させることによってエンジン11の再始動を可能とするのである。
このように、本実施形態によるエンジン始動装置は、エンジン11の気筒2の筒内温度に基づいて手段を選択し、当該手段によりエンジン11を再始動させる。したがって、エンジン11をその状態に応じた手段によって確実に再始動させつつ、スタータの使用回数や使用時間の増加を抑制することができる。
【0103】
(その他の実施形態)
本発明のその他の実施形態では、ECUが停止補助手段として機能し、圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させるとき、吸気弁を開弁することにより過給圧を導入しなくとも、例えば高圧の空気を供給可能な装置を各気筒に設けることにより圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させてもよい。
【0104】
また、気筒の筒内温度は、各気筒に設けられた温度センサでの検出信号によらず、例えばラジエータに設置された水温センサなどの検出信号に基づいて推測してもよい。
また、筒内温度に基づいて決定する燃料の噴射パターンは、上述の実施形態で示した3つのパターンに限らず、任意数の複数のパターンから選択してもよい。あるいは、ここで決定する噴射パターンを1つのパターンに固定してもよい。
【0105】
また、ECUが圧縮圧低減手段として機能し、圧縮行程で停止している気筒の圧縮圧を低減するとき、排気弁を開弁することにより気筒内の空気を排気通路へ排出しなくとも、例えば排気弁とは別の弁体などを開弁することにより気筒内の空気を気筒外へ排出し圧縮圧を低減してもよい。
また、再始動条件成立後、膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するとき、高着火性の燃料でなく、通常の燃料を噴射してもよい。
【0106】
また、ECUは、エンジンの再始動時、具体的には上述のS182またはS183などにおいて、エンジンの回転に対する負荷を低減する処理を行ってもよい。この処理としては、例えば、エンジン回転の負荷となり得る空調装置等の作動を停止させておく、エンジン回転の負荷となり得るクラッチの係合を解除しておく、あるいはエンジンの回転力を必要とするサプライポンプへの燃料の供給を停止しておく、などといったことが考えられる。このように、エンジンの再始動時にエンジンの回転に対する負荷を低減することによって、エンジンをより確実に再始動させることができる。
【0107】
さらに、本発明のその他の実施形態では、予期せぬエンジン停止時など、自動停止制御手段によらずエンジンが停止した時、上述の実施形態のメイン処理のS109以降の処理を実行することとしてもよい。これにより、自動停止制御手段によらずエンジンが停止した時でも、エンジン停止時のクランク角およびエンジンの気筒内の状態によっては、スタータを用いることなくエンジンを再始動することができる。
【0108】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
2:気筒、11:エンジン(ディーゼルエンジン)、15:インジェクタ(燃料噴射弁)、40:ECU(エンジン始動装置、燃料噴射手段、自動停止制御手段、再始動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの複数の気筒それぞれに設けられた燃料噴射弁から、対応する気筒に対して燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記ディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させることにより前記ディーゼルエンジンを始動可能なスタータと、
エンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したときに、前記ディーゼルエンジンを自動停止させる自動停止制御手段と、
少なくとも前記エンジン停止条件が成立することで前記ディーゼルエンジンが停止した後、エンジン始動の条件である再始動条件が成立し、かつ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度が所定の温度以上のとき、前記燃料噴射手段により前記膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射することによって前記スタータを用いることなく前記ディーゼルエンジンを再始動させ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度が前記所定の温度より低いとき、前記スタータを用いることによって前記ディーゼルエンジンを再始動させる再始動手段と、
を備えることを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項2】
ディーゼルエンジンの複数の気筒それぞれに設けられた燃料噴射弁から、対応する気筒に対して燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記ディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させることにより前記ディーゼルエンジンを始動可能なスタータと、
エンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したときに、前記ディーゼルエンジンを自動停止させる自動停止制御手段と、
少なくとも前記エンジン停止条件が成立することで前記ディーゼルエンジンが停止した後、エンジン始動の条件である再始動条件が成立し、かつ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度と筒内圧力との関係が所定の条件を満たすとき、前記燃料噴射手段により前記膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射することによって前記スタータを用いることなく前記ディーゼルエンジンを再始動させ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度と筒内圧力との関係が前記所定の条件を満たさないとき、前記スタータを用いることによって前記ディーゼルエンジンを再始動させる再始動手段と、
を備えることを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項3】
ディーゼルエンジンの複数の気筒それぞれに設けられた燃料噴射弁から、対応する気筒に対して燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記ディーゼルエンジンのクランクシャフトを回転させることにより前記ディーゼルエンジンを始動可能なスタータと、
エンジン停止の条件であるエンジン停止条件が成立したときに、前記ディーゼルエンジンを自動停止させる自動停止制御手段と、
少なくとも前記エンジン停止条件が成立することで前記ディーゼルエンジンが停止した後、エンジン始動の条件である再始動条件が成立し、かつ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度が、所定の温度である第1所定温度以上のとき、前記燃料噴射手段により前記膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射することによって前記スタータを用いることなく前記ディーゼルエンジンを再始動させ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度が、前記第1所定温度よりも低い所定の温度である第2所定温度以上、かつ、前記第1所定温度よりも低いとき、前記燃料噴射手段により前記膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するとともに前記スタータを用いて前記ディーゼルエンジンを再始動させ、
膨張行程で停止している気筒の筒内温度が前記第2所定温度より低いとき、前記スタータを用いることによって前記ディーゼルエンジンを再始動させる再始動手段と、
を備えることを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項4】
前記自動停止制御手段は、前記エンジン停止条件成立後、膨張行程にある気筒のピストンを上死点後所定の角度範囲内で停止させるピストン停止手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン始動装置。
【請求項5】
前記ピストン停止手段は、圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させることにより前記膨張行程にある気筒のピストンの停止を補助する停止補助手段を有することを特徴とする請求項4記載のエンジン始動装置。
【請求項6】
前記停止補助手段は、前記圧縮行程にある気筒の吸気弁を開弁することにより過給圧を導入し前記圧縮行程にある気筒の筒内圧力を増大させることを特徴とする請求項5記載のエンジン始動装置。
【請求項7】
前記再始動手段は、圧縮行程で停止している気筒の筒内圧力を低減させる圧縮圧低減手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のエンジン始動装置。
【請求項8】
前記圧縮圧低減手段は、前記圧縮行程で停止している気筒の排気弁を開弁することにより前記圧縮行程で停止している気筒の筒内圧力を低減させることを特徴とする請求項7記載のエンジン始動装置。
【請求項9】
前記再始動手段は、前記燃料噴射手段により前記膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射するとき、着火性の高い燃料を噴射することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のエンジン始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−31834(P2010−31834A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30045(P2009−30045)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】