説明

トランジスタアクティブ基板およびその製造方法並びに電気泳動ディスプレイ

【課題】活性層を保護するとともにドレイン電極と画素電極との電気的導通を十分確保できるような保護層を設けたトランジスタアクティブ基板を提供する。
【解決手段】トランジスタアクティブ基板は、基板301、ゲート電極302、ゲート絶縁膜303、ソース電極304、ドレイン電極305および活性層306から構成される薄膜トランジスタ上に、保護膜307および画素電極308が配置されており、ドレイン電極305の表面粗さをRa(M)、保護膜307の膜厚をD(I)としたときに、D(I)≦Ra(M)×15の関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタアクティブ基板、その製造方法および電気泳動ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マトリクス方式のディスプレイとして、互いに直交した走査電極とデータ電極を用いて駆動するパッシブ型のディスプレイと、トランジスタなどのスイッチング素子と記憶素子を用いて点灯画素を選択するアクティブ型のディスプレイが知られている。アクティブ型のディスプレイとしては、例えば「有機ELディスプレイ」に関する公開特許公報(特許文献1)、「能動素子及びそれを有する表示装置」に関する公開特許公報(特許文献2)、「有機能動素子及びそれを有する表示素子」に関する公開特許公報(特許文献3)、「有機半導体形成用インク、有機半導体パターン形成方法、電子素子および電子素子アレイ」に関する公開特許公報(特許文献4)などに開示されたものがある。アクティブ型のディスプレイは、単純マトリックス駆動の構造に加えて、画素の一つ一つにアクティブ素子(スイッチング素子)を付けたものである。このような構成によって、目的の画素をオンオフすることができ、高い画質と速い応答速度が要求される動画の表示に用いられている。
【0003】
上記のようなトランジスタアクティブ基板としては、ゲート電極、ゲート電極を中心に分離されてチャネル領域を定義するソース電極とドレイン電極及び半導体層を含んでいる。この半導体層としては、非晶質シリコンやポリシリコンが用いられるが、最近では、有機半導体の適用が進められている。
【0004】
有機半導体は常温、常圧で形成できるので、工程単価を低減することができ、熱に弱いプラスチック基板に適用できるという長所がある。しかし、このような有機半導体は耐化学物質性能及び耐プラズマ性能が脆弱であり、また大気中の酸素や水分または光などによる特性劣化という短所がある。これを補うために有機半導体層後に、厚い有機膜や無機膜を保護層として設けている。
【0005】
保護層を設けたものとしては、例えば「有機トランジスタアクティブ基板」に関する公開特許公報(特許文献5)に開示されたような樹脂をアルコール溶媒で溶解して得たペーストをスクリーン印刷法にて塗工し、形成したものがある。また「有機TFT素子及びその製造方法」に関する公開特許公報(特許文献6)に開示されたような有機トランジスタ上にパリレンのような有機絶縁膜を保護膜として形成したものがある。
【0006】
従来のアクティブ型のディスプレイの問題点について図1および図2を参照しながら説明する。図1および図2において、符号101はゲート電極、符号102はソース電極、符号103はドレイン電極、符号104は画素電極、符号105は走査線、符号106は信号線、符号107は基板、符号108はゲート絶縁膜、符号109は活性層、符号110は層間膜、符号111はスルーホールをそれぞれ示している。図1に示すように画素電極104を作製する場合、特許文献5に示すような有機半導体の保護層として設けられている層間膜110(絶縁ペースト膜)には、ドレイン電極103と画素電極104の導通がとれるように図2に示すようなスルーホール111が形成されている。しかしながら、絶縁ペーストに使用されているアルコール溶媒等の有機溶媒が下地の有機半導体(活性層109)またはゲート絶縁膜108を溶解する可能性が高く、その結果、保護層である層間膜110の作製直後に特性劣化する可能性がある。
【0007】
また特許文献6に示すようなパリレン膜のような蒸着膜を保護層として設けた場合、特許文献7のようにドレイン電極と画素電極の導通をとるために、ドライエッチングプロセスなどでスルーホール部を形成する必要がある。しかし、この際、プラズマダメージにより有機半導体に影響し、トランジスタ特性が劣化する可能性がある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−255857号
【特許文献2】特開2003−318196号
【特許文献3】特開2004−241527号
【特許文献4】特開2005−64122号
【特許文献5】特開2007−103913号
【特許文献6】特開2004−072049号
【特許文献7】特開平06―194689
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、活性層を保護するとともにドレイン電極と画素電極との電気的導通を十分確保できるような保護層を設けたトランジスタアクティブ基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、本発明の次の(1)〜(11)の観点により解決される。
(1)基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に第2の対電極が形成され、該第2の対電極上に半導体材料からなる活性層が形成されることによりトランジスタが構成され、該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、さらに該第2の絶縁膜より上に前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【0011】
(2)基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に第2の対電極が形成され、該第2の対電極上に半導体材料からなる活性層が形成されることによりトランジスタが構成され、該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、該第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を堆積し、さらに該第3の絶縁膜より上に、該第3の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、前記活性層の表面粗さをRa(S)、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【0012】
(3)基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に半導体材料からなる活性層が形成され、該活性層上に第2の対電極が形成されることによりトランジスタが構成され、該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、さらに該第2の絶縁膜より上に前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【0013】
(4)基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に半導体材料からなる活性層が形成され、該活性層上に第2の対電極が形成されることによりトランジスタが構成され、該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、該第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を堆積し、さらに該第3の絶縁膜より上に、該第3の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、前記活性層の表面粗さをRa(S)、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【0014】
(5)前記第2の絶縁膜が前記活性層を保護するとともに、前記第2の対電極と前記第3の電極との間に前記第2の絶縁膜が介在した状態で前記第2の対電極の一方と前記第3の電極との間が電気的に導通していることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のトランジスタアクティブ基板。
【0015】
(6)前記活性層が有機半導体材料からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のトランジスタアクティブ基板。
【0016】
(7)前記活性層がトリアリールアミンを含むパイ共役高分子材料を主成分とすることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトランジスタアクティブ基板。
【0017】
(8)前記第2の絶縁膜が化学気相蒸着法を利用して形成される有機膜または無機膜であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のトランジスタアクティブ基板。
【0018】
(9)基板上に、第1の電極を形成し、該第1の電極上に第1の絶縁膜を形成し、該第1の絶縁膜上に第2の対電極を形成し、該第2の対電極上に半導体材料からなる活性層を形成することによりトランジスタを構成させ、該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、該第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を堆積し、さらに該第3の絶縁膜より上に、該第3の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにし、前記活性層の表面粗さをRa(S)、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15としたトランジスタアクティブ基板の製造方法であって、
前記第1の電極および前記第2の対電極が、インクジェット法により形成され、
前記第1の絶縁膜がコーティングにより形成され、
前記活性層がインクジェット法により形成され、
前記第3の電極がスクリーン印刷法により形成されてなることを特徴とするトランジスタアクティブ基板の製造方法。
【0019】
(10)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のトランジスタアクティブ基板上に、電気泳動表示素子を積層してなる電気泳動ディスプレイであって、前記電気泳動表示素子が、電界により白黒表示可能な媒体をカプセル化し、前記第3の電極上に配置されてなるものであることを特徴とする電気泳動ディスプレイ。
【0020】
(11)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のトランジスタアクティブ基板上に、電気泳動表示素子を積層してなる電気泳動ディスプレイであって、前記電気泳動表示素子が、前記トランジスタアクティブ基板と、透明電極を持つ支持基板と、これらの間に設けられた隔壁層と、を介して形成される空間に、電界により白黒表示可能な媒体を充填してなるものであることを特徴とする電気泳動ディスプレイ。
【発明の効果】
【0021】
本発明のトランジスタアクティブ基板によれば、第2の対電極(例えばソース・ドレイン電極)の表面粗さRa(M)と、第2の絶縁膜(例えば保護膜)の厚さD(I)との関係をD(I)≦Ra(M)×15としたことによって、活性層を保護するとともに第2の対電極と第3の電極(例えば画素電極)との電気的導通を十分に確保することが可能になり、良好なトランジスタ特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳しく説明する。
トランジスタアクティブ基板の層構成について図3に示す。このトランジスタアクティブ基板は、基板301、ゲート電極302、ゲート絶縁膜303、ソース電極304、ドレイン電極305および活性層306から構成される薄膜トランジスタ上に、保護膜307および画素電極308を配置した構成になる。図3の枠線で囲った部分についての詳細図を図4に示す。ドレイン電極305の表面粗さを大きくすることで、図4に示すようにドレイン電極305上を保護膜307で覆った場合においてもドレイン電極305と画素電極308との間で導通を取ることが可能になってくる。
【0023】
これに対して、図5に、従来のトランジスタアクティブ基板における図4に対応する部分の構造を示す。図5中、符号501はドレイン電極、符号502は活性層、符号503は保護膜、符号504は画素電極である。図5に示すように、ドレイン電極501の表面粗さが小さかったり、保護膜503が厚くなったりする場合、ドレイン電極501上を保護膜503で覆うと、ドレイン電極501と画素電極504との間で導通が取れなくなり、十分なトランジスタ特性が得られなくなる。
【0024】
本発明の別の実施の形態として、層間膜を用いたトランジスタアクティブ基板の層構成について図6に示す。このトランジスタアクティブ基板は、基板601、ゲート電極602、ゲート絶縁膜603、ソース電極604、ドレイン電極605および活性層606から構成される薄膜トランジスタ上に、保護膜607、スルーホールを有する層間膜608および画素電極609を配置した構成になる。図6の枠線で囲った部分についての詳細図を図7に示す。
【0025】
上記図4と同様、ドレイン電極605の表面粗さを大きくすることで、ドレイン電極605上を保護膜607で覆った場合においても、ドレイン電極605とスルーホール内の下端まで延びた画素電極609との間で導通を取ることが可能になってくる。また活性層606の表面粗さが小さければ、層間膜608中に含まれるアルコール等の有機溶剤が活性層606へ浸透することを、活性層606上の保護膜607が防ぐ役割を果たし、活性層606が溶解するといった不具合を抑えることができる。
【0026】
これに対して、図8に、従来のトランジスタアクティブ基板における図7に対応する部分の構造を示す。図8中、符号801はドレイン電極、符号802は活性層、符号803は保護膜、符号804は層間膜、符号805は画素電極である。図8に示すように活性層802の表面粗さが大きかったり、保護膜803が薄くなったりする場合、活性層802と層間膜804が接触し、層間膜804に含まれる有機溶媒が浸透して、活性層802を溶解する。その結果、十分なトランジスタ特性が得られなくなる。
【0027】
ここで、本発明におけるドレイン電極や活性層の「表面粗さRa」の定義について図9を用いて説明する。本発明では、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を測定長さLで割った値を、表面粗さRaとして定義している。
【0028】
図3のトランジスタアクティブ基板の層構成については、ドレイン電極305の表面粗さをRa(M)、保護膜307の膜厚をD(I)としたときに、D(I)≦Ra(M)×15の関係にあることが好ましく、D(I)≦Ra(M)×10の関係にあることがさらに好ましい。D(I)>Ra(M)×15の関係にある場合、図5に示したような構造となって好ましくない。すなわち、ドレイン電極501上を保護膜503で覆った場合にドレイン電極501と画素電極504との間で導通が取れなくなり、十分なトランジスタ特性が得られなくなる。
【0029】
保護膜307の膜厚D(I)としては、10〜2000nmが好ましい。10nmより薄くなると保護膜307としての機能を果たさなくなり、2000nmより厚くなると保護膜307の応力が素子に影響を与え、トランジスタ特性に悪影響を与える。ドレイン電極305の表面粗さRa(M)は、0.6nmより大きく100nm以下である範囲が好ましく、5nmより大きく50nm以下である範囲がさらに好ましい。表面粗さRa(M)が0.6nm以下では、保護膜を介してドレイン電極と画素電極を導通させることが困難となる場合があり、100nmより大では、配線抵抗が高くなり、トランジスタ動作に悪影響を及ぼす場合がある。
【0030】
上記図6のトランジスタアクティブ基板の層構成については、活性層606の表面粗さをRa(S)、ドレイン電極605の表面粗さをRa(M)、保護膜607の膜厚をD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15の関係にあることが好ましく、Ra(S)×30≦D(I)≦Ra(M)×10の関係にあることがさらに好ましい。
【0031】
D(I)<Ra(S)×15の関係にある場合、図8に示したような構造となって好ましくない。すなわち、活性層802の表面粗さが大きかったり、保護膜803が薄くなったりする場合、活性層802と層間膜804が接触し、層間膜804に含まれる有機溶媒が浸透して、活性層802を溶解してしまう。その結果トランジスタ特性が得られなくなる。
【0032】
図6において、保護膜607の膜厚D(I)としては、10〜2000nmが好ましい。10nmより薄くなると保護膜607としての機能を果たさなくなり、2000nmより厚くなると保護膜607の応力が素子に影響を与え、トランジスタ特性に悪影響を与える。
【0033】
ドレイン電極605の表面粗さRa(M)としては、図3のトランジスタアクティブ基板の場合と同様の理由により、0.6nmより大きく100nm以下である範囲が好ましく、5nmより大きく50nm以下である範囲がさらに好ましい。
【0034】
また、活性層の表面粗さRa(S)は、40nmより小さいことが好ましく、20nmより小さいことがさらに好ましい。表面粗さRa(S)が40nm以上では、トランジスタ特性として移動度が十分得られない。
【0035】
また、図3、図6に示すようなソース・ドレイン電極が活性層の下に構成されるボトムコンタクト型のトランジスタアクティブ基板以外にも、例えば図10、図11に示すようなソース・ドレイン電極が活性層の上に構成されるトップコンタクト型のトランジスタアクティブ基板でも同様な作製方法が可能である。図10のトランジスタアクティブ基板は、基板1001、ゲート電極1002、ゲート絶縁膜1003、活性層1004、ソース電極1005、ドレイン電極1006から構成される薄膜トランジスタ上に、保護膜1007および画素電極1008を配置した構成である。また、図11のトランジスタアクティブ基板は、基板1101、ゲート電極1102、ゲート絶縁膜1103、活性層1104、ソース電極1105、ドレイン電極1106から構成される薄膜トランジスタ上に、保護膜1107、層間膜1108および画素電極1109を配置した構成である。
【0036】
以下に本発明のトランジスタアクティブ基板に用いる各構成の材料、工法について具体的に説明する。
【0037】
基板:
基板は、ガラスまたはプラスチックで形成することができる。プラスチックで構成される場合、トランジスタアクティブ基板に柔軟性を付与することができる長所があるが、基板が熱に弱いという短所がある。ここで、好ましいプラスチックの種類として、例えばポリカーボン、ポリイミド、PES(ポリエーテルサルフォン)、PAR(ポリアリレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などを使用することが可能である。
【0038】
ゲート電極(第1の電極):
ゲート電極の材料としては、導電性材料であれば特に限定されず、例えば白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機および有機半導体、たとえばシリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。
【0039】
ゲート電極の作製工法としては、真空成膜後にフォトエッチング工程でパターニングして形成する方法が好ましい。また、ナノメタルインクを用いてインクジェット方法(特許文献4参照)やその他の印刷工法にて形成する方法がさらに好ましい。
【0040】
ゲート絶縁膜(第1の絶縁膜):
ゲート絶縁膜の材料としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン等の無機系材料や、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の有機系材料が挙げられ、これらの材料を2つ以上合わせて用いてもよい。
【0041】
作製工法としては特に制限はなく、例えばCVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法、スピンコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
【0042】
また、上記材料の中でも、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリパラキシリレン等の高分子材料をゲート絶縁膜中に含有している場合には、ゲート絶縁膜に紫外線を照射することにより、照射された領域の表面エネルギーを増大させることができる。その結果、印刷法を用いて、表面エネルギーを増大させた領域に、高精細なソース・ドレイン電極のパターンを直接描画することができる。さらに、表面エネルギーが小さいポリイミドを用いることにより、有機半導体層を高精細にパターニングすることが可能になる。紫外線で表面エネルギーを増大させることが可能な高分子材料としては、例えば特開2006−060079号公報に記載されている材料を用いることができる。
【0043】
ゲート絶縁膜の膜厚範囲としては10〜1000nmが好ましく、100〜1000nmであれば更に好ましい。
【0044】
ソース・ドレイン電極(第2の対電極):
ソース・ドレイン電極の材料としては、ゲート電極材料で挙げた導電性物質の中でも半導体層との接触面においてオーミックに接続される材質のものが好ましい。
【0045】
ソース・ドレイン電極の作製工法としては、シャドーマスクを利用して金属膜を蒸着するか、真空成膜後にフォトエッチング工程でパターニングして形成することが好ましい。また、ナノメタルインクを用いてインクジェット方法(特許文献4参照)やその他印刷工法にて形成することがさらに好ましい。インクジェット塗工による電極形成においては、下地の表面エネルギーを変化させ、インクになじみやすい表面、なじみにくい表面を光処理することで簡便に電極を形成することができるとともに、塗布インクの自己排除機構により、5ミクロン間隔のパターン化が可能である(特許文献3参照)。トランジスタの第2の対電極であるソース・ドレイン電極において、チャネル領域を微小間隔で形成することはトランジスタ性能を向上させる点で非常に重要である。また、特許文献4においてインクジェット法による配線化技術が提案されており、それも利用できる。ソース・ドレイン電極の厚みは、適宜設定することができるが、10nm〜100nmの範囲に設定することが好ましい。
【0046】
活性層:
活性層の材料としては、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。また、その他にも、一般的に用いられる公知の有機半導体物質を活性層の材料として用いてもよい。
【0047】
また、活性層の材料として半導体ナノ粒子を用いることもできる。典型的な半導体ナノ粒子はII−VI材料、III−V材料、第IV族材料またはそれらの組合せからなる。適切なII−VI材料は、最も典型的にはSe、TeおよびSからなる群から選択される任意の数の第VI族材料を有する、最も典型的にはZn、Cd、Be、およびMgからなる群から選択される任意の数の第II族材料の合金からなってもよい。適切なII−VI材料は、酸化亜鉛または酸化マグネシウムを含んでもよい。適切なIII−V材料は、最も典型的にはAs、PおよびSbからなる群からから選択される任意の数の第V族材料を有する、最も典型的にはIn、Al、およびGaからなる群から選択される任意の数の第III族材料からなってもよい。適切な第IV族材料は、SiおよびGeを含んでいてもよい。
【0048】
さらに、活性層の材料として特に好ましいものの例として、下式で表されるトリアリールアミンを含むパイ共役高分子材料を主成分とするものを挙げることができる。
【0049】
【化1】

【0050】
活性層の作製工法としては、蒸着法、アーク放電、プラズマ化学気相成長(PECVD)、物理気相成長等の他に、湿式成膜法を用いることができる。湿式成膜法としては、スピンコート法、ディッピング法、ブレード塗工法、スプレー塗工法、キャスト法、インクジェット法、印刷法等の公知の湿式成膜技術を採用することが可能であり、これによって活性層を薄膜化することができる。
【0051】
保護膜(第2の絶縁膜):
保護膜の材料としては、窒化ケイ素または酸化ケイ素などの無機絶縁物、パリレンなどの有機絶縁物などを用いることができる。保護膜の形成方法としては、化学気相蒸着法(CVD)を利用することができ、より具体的には、LPCVD、PECVD、PECVDよりなる群から選択することができる。またパリレンは高い疎水性、耐溶剤性及び耐化学性により活性層以後の製造過程において有機溶媒等の溶剤から活性層を保護する役割をする。保護膜の膜厚としては10〜2000nmが好ましい。
【0052】
層間膜(第3の絶縁膜):
層間絶縁膜を構成する混合物に含有される微粒子は、層間絶縁膜が形成された後に、粒子として存在することができる材料であれば、有機粒子、無機粒子のいずれでも良いが、現実的には、粒度制御がし易く、溶媒中で溶けずに有機材料中に分散させることが可能な無機粒子を用いることが好ましい。この場合、有機材料の例としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル系樹脂、エチルセルロース樹脂などを含む材料が挙げられる。また、無機粒子の例としては、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO)等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナ、酸化亜鉛などの比較的比誘電率の低い材料が好ましい。また、例えばメソポーラスシリカのように、構造中にメソ孔あるいはマイクロ孔を有する無機多孔質粒子であってもよい。
【0053】
本発明における層間絶縁膜の形成手段としては、例えばスクリーン印刷、凹版印刷などの印刷プロセスが適しており、本発明での層間絶縁膜の膜厚範囲は印刷の手法を用いて好適に形成できる範囲にあたる。例えば、スクリーン印刷を用いて、本発明にて想定するような精細度のパターンを形成する場合においては、線径が15〜50μm、開口率が40〜60%のメッシュ中に充填されたペースト状材料を転写することで膜を形成することになるため、スルーホールとともに形成することができる。層間絶縁膜の厚みは2μm以上40μm以下である。層間絶縁膜に厚みを持たせることにより静電容量を小さくする効果があるので、少なくとも2μm、より望ましくは4μm以上の厚みが好ましい。
【0054】
画素電極(第3の電極):
画素電極の材料としては、以下のような市販されているペースト材料が好ましい。市販のペースト材料の例としては、パーフェクトゴールド(登録商標)(金ペースト、真空冶金社製商品名)、パーフェクトカッパー(銅ペースト、真空冶金社製商品名)、Orgacon
Paste variant 1/4、Paste variant 1/3(以上、印刷用透明PEDOT/PSSインク、日本アグファ・ゲバルト社製商品名)、Orgacon
Carbon Paste variant 2/2(カーボン電極ペースト、日本アグファ・ゲバルト社製商品名)、BAYTRON(登録商標) P(PEDT/PSS水溶液、日本スタルクヴィテック社製商品名)を挙げることができる。上記材料をスクリーン印刷にて塗布することにより画素電極を形成することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を説明する。
<実施例1>
(1)有機トランジスタの形成
ガラス基板に、市販のナノ銀インクを、インクジェット装置を用いて所望するパターンに印刷後、200℃で熱処理し、第1の電極を形成した。次に、第1の絶縁膜として熱重合型ポリイミドをスピンコートにより塗布し、280℃で熱処理したのち、フォトマスクを介して、所望する部位(後述、第2の電極形成部位)に紫外線照射を行い、表面改質を実施した。
【0056】
次に、第1の電極形成と同様にナノ銀インクを用いIJ(インクジェット)法にて第2の電極を形成した。露光部位はCCD観察ではパターン認識ができない。従って、第1のパターンに対し、基板整合させ、印刷データに基づくIJ印刷を実施した。
【0057】
活性層として、前記構造のトリアリールアミン骨格を有する有機半導体材料をキシレンに溶解し、インク化した。インク濃度は1wt%、粘度約5mPa・秒、表面張力:約30mN/mであった。その後、IJ法にて所望する部位に膜形成することで、有機トランジスタを得た。
【0058】
また、第2の電極形成後および活性層形成後に走査型プローブ顕微鏡(AFM)を用いて走査領域10μm×10μmの範囲で、第2の電極および活性層の表面粗さを測定した。
【0059】
(2)第2の絶縁膜形成
化学蒸着法を用いてパリレン膜を100nmの厚みで形成した。
【0060】
(3)第3の電極形成
大研化学社製銀ペーストをスクリーン印刷し、120℃で乾燥することで、第3の電極(個別電極,画素電極)を形成し、図3と同様の構成の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0061】
<実施例2>
実施例1で第2の絶縁膜の膜厚を50nmとした以外は、実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0062】
<実施例3>
実施例1で第2の絶縁膜の膜厚を20nmとし、第2の電極の熱処理温度を280℃とした以外は、実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0063】
<実施例4>
実施例1で第2の絶縁膜の膜厚を20nmとし、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は、実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0064】
<実施例5>
実施例1で第2の絶縁膜の膜厚を30nmとし、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は、実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0065】
<比較例1>
実施例1で、マスク蒸着機を用い、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0066】
<比較例2>
実施例1で蒸着機を用いて活性層としてペンタセンを蒸着で作製し、第2の絶縁膜の膜厚を600nmとし、第2の電極の熱処理温度を280℃とした以外は実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0067】
<実施例6>
(1)有機トランジスタの形成
ガラス基板に市販のナノ銀インクを用い、リコープリンティングシステムズ社製のインクジェット装置を用い、所望するパターンに印刷後、200℃で熱処理し、第1の電極を形成した。
【0068】
次に、第1の絶縁膜として熱重合型ポリイミドをスピンコートにより塗布し、280℃
で熱処理したのち、フォトマスクを介して、所望する部位(後述、第2の電極形成部位)に紫外線照射を行い、表面改質を実施した。第1の電極パターンに対しフォトマスクの重ね合わせ精度を求めたところ、トータルピッチ200mmに対し±10μmのずれ範囲内で重ね合わせができた。
【0069】
次に、第1の電極形成と同様にナノ銀インクを用いIJ法にて第2の電極を形成した。露光部位はCCD観察ではパターン認識ができない。従って、第1のパターンに対し、基板整合させ、印刷データに基づくIJ印刷を実施した。このようにして得られた積層パターンの重ね合わせ精度を求めたところ、トータルピッチ200mmに対し±10μmのずれ範囲内で重ね合わせができた。これは濡れ性制御面に対するインク再現性はほぼ100%の割合でパターン再現ができ、±10μmのずれはフォトマスク露光時の重ね合わせずれに起因していた。
【0070】
活性層として、前記構造のトリアリールアミン骨格を有する有機半導体材料をキシレンに溶解し、インク化した。インク濃度は1wt%、粘度約5mPa秒、表面張力:約30mN/mであった。その後、IJ法にて所望する部位に膜形成することで、有機トランジスタを得た。
【0071】
(2)第2の絶縁膜形成
化学蒸着法を用いてパリレン膜を100nmの厚みで形成した。
【0072】
(3)第3の絶縁膜形成
積水化学社製ポリビニルブチラール樹脂をテルピネオール、ブトキシエタノールに溶解し、印刷適正粘度(6万〜20万mPa・s)に調整すべく、絶縁性フィラーを添加し、三本ロールミルにて混練してスクリーン印刷用ペーストを調整した。絶縁性フィラーとして均一な粒が容易に得られやすい材料として、堺化学社製水熱合成チタン酸バリウム(平均粒径0.1ミクロン)を添加した。具体的な処方はポリビニルブチラール濃度:5wt%(テルピネオール+ブトキシエタノール)バインダーに対し、70wt%のチタン酸バリウムフィラーを添加した。このように調整したペーストを用い、スクリーン印刷(カレンダーメッシュ:500番、乳厚5ミクロンのスクリーン版)を行い、120℃で乾燥することで、第2の絶縁膜を形成した。この第2の絶縁膜の試料は、約100μm×100μmのスルーホールが形成できていることが確認できた。
【0073】
(4)第3の電極形成
大研化学社製銀ペーストをスクリーン印刷し、120℃で乾燥することで、第3の電極(個別電極,画素電極)を形成し、図6と同様の構成の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0074】
<実施例7>
実施例6で第2の絶縁膜の膜厚を50nmとした以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0075】
<実施例8>
実施例6で第2の絶縁膜の膜厚を20nmとし、第2の電極の熱処理温度を280℃とした以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0076】
<実施例9>
実施例6で第2の絶縁膜の膜厚を20nmとし、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0077】
<実施例10>
実施例6で第2の絶縁膜の膜厚を30nmとし、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は実施例1と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0078】
<比較例3>
実施例6で、マスク蒸着機を用い、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0079】
<比較例4>
実施例6で蒸着機を用いて、活性層としてペンタセンを蒸着で作製し、第2の絶縁膜の膜厚を600nmとし、第2の電極の熱処理温度を280℃とした以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0080】
<比較例5>
実施例6で蒸着機を用いてペンタセンを蒸着で作製し、第2の電極の熱処理温度を280℃とした以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0081】
<比較例6>
実施例6で第2の絶縁膜の膜厚を10nmとし、第2の電極としてAu電極をマスク蒸着で作製した以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0082】
<比較例7>
実施例6で第2の絶縁膜を形成せずに作製した以外は実施例6と同様の有機トランジスタアクティブ基板を作製した。
【0083】
上記実施例、比較例では、トランジスタチャネル長5μm、チャネル幅1000μm、ゲート絶縁膜の比誘電率3.6、膜厚400nmのトランジスタを作製し、トランジスタ性能を半導体パラメータアナライザにて評価した。測定条件は以下のとおりである。
【0084】
ソース・ドレイン電圧:−20V
ゲート電圧:20〜―20V
Vth:ソース・ドレイン電圧:−20V、ゲート電圧20〜―20Vに挿引したときのソース・ドレイン電流を測定し、ゲート電圧に対するソース・ドレイン電流の平方根をプロットし、示される直線領域を外挿し、X軸と交わる点を閾値電圧と定義する。
【0085】
算出方法については下記(1)の式より評価した。
Ids=μCinW(Vg−Vth)/2L ・・・(1)
【0086】
ここで、μは移動度、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソース・ドレイン電流を意味する。
【0087】
また、上記トランジスタとは別に第2電極と第3電極との導通が確認できるパターンを用意し、電気的導通が取れているかどうかの確認を行った。
【0088】
さらに、実施例6〜10と比較例3〜7では、層間絶縁膜形成用に用いる印刷ペースト(インク)が主ポリマー(ポリビニルブチラール樹脂)、粘度調整用フィラーおよび有機溶剤からなるため、下地に配置した有機半導体膜を溶解し、トランジスタ不良が生じる可能性がある。そこで、活性層作製直後にトランジスタ性能を評価し、その後のプロセスと比較し特性劣化が生じているかどうかを確認した。
【0089】
上記トランジスタをアクティブ基板として用いて、図12に示すような透明電極(ITO ;Indium Tin Oxide)1204を共通電極として配置した支持基板1202と、実施例1〜10と比較例1〜7記載の製法で作成したトランジスタアクティブ基板1201の第3の電極(画素電極)間に、白黒表示する電気泳動マイクロカプセル1203を挟み画素を形成した。走査線に−20V、(画素)信号線に±20Vを印加し、画素の白黒変化を確認した。
【0090】
表1に結果を示すが、比較例1〜4の結果では画素電極作製後に電気的な導通が取れず、トランジスタ性能が評価できなかった。また比較例5、6の結果では画素電極作製後に電気的な導通は確認できたが、層間絶縁膜形成用に用いる印刷ペーストが有機半導体膜を溶解し、トランジスタ性能を大きく劣化させた。実施例1〜10の結果では画素電極作製後に電気的な導通を確認でき、またトランジスタ性能についても画素電極作製前後で大きな差はなく、画素の白黒変化ができていることを確認した。また実施例2、7についてはその他実施例と比較しコントラストが非常に良好であることを確認した。なお、表1中、「D(P)」、「D」は第2の絶縁膜の膜厚(nm)を意味し、「層間前」は層間絶縁膜形成前を、「画素後」は画素電極形成後を、それぞれ意味する。
【0091】
【表1】

【0092】
以上の結果より、ドレイン電極、活性層の表面粗さと保護膜の厚みを制御することで、ドレイン電極と画素電極との電気的導通を十分確保することが可能であり、良好なトランジスタ性能を有するトランジスタアクティブ基板を提供することができる。
【0093】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、図12に示したように共通電極として配置した支持基板と、トランジスタアクティブ基板の第3の電極(画素電極)との間に、白黒表示する電気泳動マイクロカプセルを挟み画素を形成した電気泳動ディスプレイを挙げて説明したが、電気泳動ディスプレイの構成は図12のものに限定されるものではない。例えば、図13に示したように、トランジスタアクティブ基板上に隔壁12を介して透明電極10を備えた支持基板11を接合してなる空間に、電気泳動分散液13を充填してなる構成の電気泳動ディスプレイにおいても、本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】従来のトランジスタアクティブ基板の基本構成を説明する図面である。
【図2】図1のトランジスタアクティブ基板の要部断面を説明する図面である。
【図3】本発明の一実施形態に係るトランジスタアクティブ基板の断面構造を説明する図面である。
【図4】図3の一部を拡大して示す説明図である。
【図5】図4との対比において従来のトランジスタアクティブ基板の一部を拡大して示す説明図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係るトランジスタアクティブ基板の断面構造を説明する図面である。
【図7】図6の一部を拡大して示す説明図である。
【図8】図7との対比において従来のトランジスタアクティブ基板の一部を拡大して示す説明図である。
【図9】表面粗さの定義を説明するための図面である。
【図10】本発明に係るトランジスタアクティブ基板の別の構成例を説明する図面である。
【図11】本発明に係るトランジスタアクティブ基板のさらに別の構成例を説明する図面である。
【図12】本発明の一実施形態に係る電気泳動ディスプレイの概略構成を説明する図面である。
【図13】本発明の別の実施形態に係る電気泳動ディスプレイの概略構成を説明する図面である。
【符号の説明】
【0095】
101…ゲート電極
102…ソース電極
103…ドレイン電極
104…画素電極
105…走査線
106…信号線
107…基板
108…ゲート絶縁膜
109…活性層
110…層間膜
111…スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に第2の対電極が形成され、該第2の対電極上に半導体材料からなる活性層が形成されることによりトランジスタが構成され、
該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、さらに該第2の絶縁膜より上に前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、
前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【請求項2】
基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に第2の対電極が形成され、該第2の対電極上に半導体材料からなる活性層が形成されることによりトランジスタが構成され、
該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、該第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を堆積し、さらに該第3の絶縁膜より上に、該第3の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、
前記活性層の表面粗さをRa(S)、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【請求項3】
基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に半導体材料からなる活性層が形成され、該活性層上に第2の対電極が形成されることによりトランジスタが構成され、
該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、さらに該第2の絶縁膜より上に前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、
前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【請求項4】
基板上に、第1の電極が形成され、該第1の電極上に第1の絶縁膜が形成され、該第1の絶縁膜上に半導体材料からなる活性層が形成され、該活性層上に第2の対電極が形成されることによりトランジスタが構成され、
該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、該第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を堆積し、さらに該第3の絶縁膜より上に、該第3の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにしたトランジスタアクティブ基板であって、
前記活性層の表面粗さをRa(S)、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15となることを特徴とするトランジスタアクティブ基板。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜が前記活性層を保護するとともに、前記第2の対電極と前記第3の電極との間に前記第2の絶縁膜が介在した状態で前記第2の対電極の一方と前記第3の電極との間が電気的に導通していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のトランジスタアクティブ基板。
【請求項6】
前記活性層が有機半導体材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のトランジスタアクティブ基板。
【請求項7】
前記活性層がトリアリールアミンを含むパイ共役高分子材料を主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のトランジスタアクティブ基板。
【請求項8】
前記第2の絶縁膜が化学気相蒸着法を利用して形成される有機膜または無機膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のトランジスタアクティブ基板。
【請求項9】
基板上に、第1の電極を形成し、該第1の電極上に第1の絶縁膜を形成し、該第1の絶縁膜上に第2の対電極を形成し、該第2の対電極上に半導体材料からなる活性層を形成することによりトランジスタを構成させ、該トランジスタ上に第2の絶縁膜を堆積し、該第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を堆積し、さらに該第3の絶縁膜より上に、該第3の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して前記第2の対電極の一方と電気的導通がとられた第3の電極を積層するようにし、前記活性層の表面粗さをRa(S)、前記第2の対電極の表面粗さをRa(M)、前記第2の絶縁膜の厚さをD(I)としたときに、Ra(S)×15≦D(I)≦Ra(M)×15としたトランジスタアクティブ基板の製造方法であって、
前記第1の電極および前記第2の対電極が、インクジェット法により形成され、
前記第1の絶縁膜がコーティングにより形成され、
前記活性層がインクジェット法により形成され、
前記第3の電極がスクリーン印刷法により形成されてなることを特徴とするトランジスタアクティブ基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のトランジスタアクティブ基板上に、電気泳動表示素子を積層してなる電気泳動ディスプレイであって、前記電気泳動表示素子が、電界により白黒表示可能な媒体をカプセル化し、前記第3の電極上に配置されてなるものであることを特徴とする電気泳動ディスプレイ。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のトランジスタアクティブ基板上に、電気泳動表示素子を積層してなる電気泳動ディスプレイであって、前記電気泳動表示素子が、前記トランジスタアクティブ基板と、透明電極を持つ支持基板と、これらの間に設けられた隔壁層と、を介して形成される空間に、電界により白黒表示可能な媒体を充填してなるものであることを特徴とする電気泳動ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−40743(P2010−40743A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201688(P2008−201688)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】