説明

ナビゲーション装置

【課題】電気自動車のバッテリ劣化を防止すると共に、そのために行うバッテリの放電エネルギーを有効に活用できるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置7を、電気自動車1の駆動用モータ3を制御するモータ制御装置10と通信可能に構成し、制御装置22は、電気自動車1が走行停止となっている期間が所定の閾値を超えると、駆動用モータ3を空転させる指令をモータ制御装置10に出力する。そして、駆動用モータ3が空転しない又は滑らかに回転しない等の異常だと判断した場合は、表示装置や音声出力装置によりその旨の報知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用モータにより車輪を駆動して走行する電気自動車に搭載され、前記駆動用モータを制御するモータ制御装置と通信が可能なナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車においては、駆動用モータに電源を供給するバッテリの管理が重要となる。例えば特許文献1では、ハイブリッド型の車両を自宅のように充電設備がある場所に駐車させている場合に、ユーザが車を使用する予定時刻までにバッテリを満充電状態にし、その予定時刻を10分経過しても走行が開始されない場合にはバッテリを強制的に放電して、バッテリ残量を80%程度に低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−278585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、バッテリの劣化(へたり)防止にしか着目しておらず、バッテリ残量を80%に低下させる際には、ヒータに通電してエンジンの暖機を行ったり、エアコンを作動させたりしている。しかしながら、ユーザが予定時刻を過ぎても車を使用しなかった場合には、外出自体を取り止めたことも十分に想定されるため、結局車が使用されなければ、エンジンの暖機やエアコンの作動は、バッテリの劣化防止に役立つ以外は無駄なエネルギーの消費となってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気自動車のバッテリ劣化を防止すると共に、そのために行うバッテリの放電エネルギーを有効に活用できるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のナビゲーション装置によれば、電気自動車の駆動用モータを制御するモータ制御装置との通信が可能となるように構成し、制御指令出力手段は、電気自動車が走行停止となっている期間が所定の閾値を超えると、駆動用モータを空転させる指令をモータ制御装置に出力する。そして、駆動用モータが空転しない又は滑らかに回転しない等の異常だと判断した場合は、報知手段によりその旨の報知を行う。すなわち、電気自動車の走行が比較的長い期間行われなかった場合は、駆動用モータを空転させて当該モータに電源を供給するバッテリを放電させると共に、駆動用モータが正常に回転するか否かを確認できる。したがって、バッテリの「へたり」を防止して機能を維持するための放電エネルギーをより有効に活用できる。
【0007】
請求項2記載のナビゲーション装置によれば、電気自動車が駆動輪と駆動用モータとを複数備えている場合に電気自動車の過去の走行履歴を記録し、その走行履歴に応じた各駆動用モータの使用状況を管理する。そして、制御指令出力手段は、走行履歴に基づいて把握される使用期間が短い、或いは可動負荷が高い駆動用モータを優先して空転させるように制御指令を出力する。
すなわち、駆動輪及び駆動用モータを複数備えている電気自動車については、走行状況及び車両の制御状況などに応じて駆動用モータの稼働状態が異なる場合が想定される。したがって、電気自動車の走行時に駆動輪を駆動するための使用期間が比較的短い、或いは可動負荷が高い駆動用モータを優先して、当該モータの駆動系の機能が正常か否かを確認できる。
【0008】
請求項3記載のナビゲーション装置によれば、ユーザが時刻設定手段を介して次回の走行開始予定時刻を入力設定すると、制御指令出力手段は、次回の空転予定時刻が前記走行開始予定時刻よりも先である場合は、走行開始予定時刻よりも前に駆動用モータを空転させるように制御指令を出力する。すなわち、ユーザが電気自動車の運転を開始しようとする前に駆動用モータの機能が正常か否かを確認することで、ユーザは事前に、電気自動車が走行可能な状態であるか否かを確認できる。
【0009】
請求項4記載のナビゲーション装置によれば、バッテリより駆動用モータに印加される最大電圧と、駆動用モータが回転する場合の平滑性を示す平滑性レベルとを測定して記録し、制御指令出力手段は、最大電圧に対する駆動用モータの平滑性レベルが目標とするレベルに到達していない場合は、所定の閾値を短くするように変更する。例えば、モータの軸受け等の回転機構部の状態や、当該機構部に注入されている潤滑油の粘性が変化するなどして、印加される最大電圧に比較して駆動用モータが滑らかに回転していない場合には、そのモータの機能に異常があると推定されるので、駆動用モータの機能確認をより早期に実行して判定することができる。
【0010】
請求項5記載のナビゲーション装置によれば、電気自動車が、パワーステアリング用のステアリング用モータを備える場合、電気自動車の過去の走行履歴を記録し、ステアリング用モータ管理手段は、前記走行履歴に応じたステアリング用モータの使用状況を管理する。そして、制御指令出力手段は、走行停止期間が所定の閾値を超えた場合に、走行履歴に基づいて把握されるステアリング用モータの切り角が最大範囲まで達していない場合は、その切り角が最大範囲に達するまでステアリング用モータを回転させる指令を制御装置に出力する。その結果、ステアリング用モータが最大範囲に達するまで回転しなかった場合にも、報知手段は報知を行う。斯様に構成すれば、電気自動車の走行が比較的長い期間行われなかった場合に、ステアリング用モータの駆動系の機能についても正常か否かを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例であり、電気自動車,モータ制御装置及びナビゲーション装置からなる制御システムの構成を示す機能ブロック図
【図2】ナビゲーション装置の機能ブロック図
【図3】ナビゲーション装置の制御装置を中心に実行される処理内容を示すフローチャート
【図4】ステップS2の詳細を示すフローチャート
【図5】ステップS10の詳細を示すフローチャート
【図6】本発明の第2実施例であり、駆動輪を複数備える電気自動車の構成を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図5を参照して説明する。図1は、電気自動車と、その電気自動車に搭載されるモータ制御装置及びナビゲーション装置からなる制御システムの構成を示す機能ブロック図であり、(a)は駆動輪となる後輪部分,(b)は前輪部分を示す。図1(a)において、電気自動車1は、バッテリ2から図示しないインバータ回路などの駆動回路を介して駆動用モータ3に駆動用電源を供給し、駆動用モータ3を回転させて駆動力(トルク)を発生させる。その駆動力は、クラッチ4及びトランスミッション5を介して、後輪6RL,6RRに伝達される。
【0013】
ナビゲーション装置7は、バッテリ2の出力電圧や出力電流などを監視するバッテリ監視装置8より、バッテリ2の監視情報を得るようになっている。また、ナビゲーション装置7は、車内LAN(Local Area Network)などの通信プロトコルを介して車両制御装置9(例えばボディECU(Electronic Control Unit)等)との通信が可能に構成され、車両制御装置9を介して電気自動車1の各部の情報を取得する。その車両制御装置9もまた、車内LANなどによりモータ制御装置10,クラッチ制御装置11,図1(b)に示すステアリング制御装置15と通信を行う。モータ制御装置10は、電気自動車1のユーザ:運転者による図示しないアクセルの操作などに応じて駆動用モータ3の駆動制御を行い、クラッチ制御装置11は、トランスミッション5が自動的にギアチェンジを行うタイミング等でクラッチ4の開閉(ON/OFF)を制御する。
【0014】
図1(b)において、バッテリ2の電源は、ステアリング用モータ13に対しても駆動用電源を供給している。ステアリング用モータ13は、駆動用モータ3と同様に図示しない駆動回路を介して発生させた駆動力をステアリング駆動装置14に伝達して、電気自動車1の前輪6FL,6FRの方向を変化させる。ステアリング制御装置15は、運転者が操作するステアリング16の回転方向に応じて、ステアリング用モータ13の駆動を制御する。
【0015】
図2は、ナビゲーション装置7の電気的構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置7は、マイコンを主体として構成された制御装置22(停止期間測定手段,制御指令出力手段,空転判別手段,報知手段,最大電圧記録手段,平滑性記録手段,走行履歴記録手段,駆動用モータ管理手段,ステアリング用モータ管理手段)、車両の現在位置を検出するための位置検出器23、地図データ提供部(地図データベース)24、操作部25(時刻設定手段)、外部情報受信部26、表示装置27(報知手段)、スピーカなどの音声出力装置28(報知手段)、車内通信インターフェイス(I/F)29を備えて構成されている。制御装置22は、CPU22a、ROM22b、RAM22c、フラッシュメモリなどからなる不揮発性メモリ22d、タイマ22eなどを備えて構成されている。
【0016】
位置検出器23は、図示しないが車両のピッチ角を検出するためのGセンサ、車両のロール角を検出するためのジヤイロスコープ、車両の走行距離を検出する距離センサ、人工衛星からの送信電波に基づいて車両の現在位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機を有している。制御装置22は、この位置検出器23からの信号に基づいて、車両の現在位置、進行方向、速度、走行距離、現在時刻等を高精度で検出する。なお、位置検出器23には、上記構成要素以外にステアリングの回転センサや各駆動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0017】
地図データ提供部24は、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。
【0018】
上記道路地図データは、道路形状、道路状況(転がり抵抗、勾配抵抗)、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むとともに、その道路地図を表示装置27の画面上に表示するためのデータを含んでいる。また、目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの電話番号や住所、緯度および経度等のデータが含まれるとともに、施設を示すランドマーク等を、表示装置27の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0019】
操作部25は、詳しく図示はしないが、表示装置27の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチや、表示装置27の画面上に設けられるタッチパネル、リモコンスイッチを含んで構成されている。ユーザ(ドライバ)は、この操作部25を用いて、目的地、目的地の検索に必要な情報の入力、および表示装置27の画面や表示態様の切り替え等を行う各種のコマンドの入力を行う。
前記外部情報受信部26は、外部例えばVICS(VehicleInformation & Communication System:VICSは登録商標)センターや種々の情報センター等との間で無線通信によりデータの受信を行うもので、渋滞情報などを取得可能である。
【0020】
前記表示装置27の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)が表示される。また、目的地までのルート探索時には、探索された複数ルートを同時に表示する。この目的地までのルート案内の実行時には、ルート案内用の画面が表示される。さらに、表示装置27には、利用者が目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示される。前記音声出力装置28は、ルート案内時のメッセージを音声で出力する他、種々の音声報知を行なう。
【0021】
ここで、前記制御装置22におけるルート探索手段としての機能は、車両の出発地(現在位置)から目的地までの推奨する走行ルートを自動計算するものであり、その手法としては、例えばダイクストラ法が用いられている。車内通信インターフェイス29は、図1に示すように、ナビゲーション装置7が、上述した車内LAN等により車両制御装置9を介して他の装置と通信を行うためのインターフェイスである。
【0022】
次に、本実施例の作用について図3乃至図5も参照して説明する。図3は、ナビゲーション装置7を構成する制御装置22を中心として実行される処理内容を示すフローチャートである。制御装置22は、電気自動車1が走行中である間は(ステップS1:YES)、車両制御装置9を介して得られる走行中の各種ステータスを不揮発性メモリ22dに書き込んで記憶させる(ステップS2)。
【0023】
図4は、ステップS2の詳細を示すフローチャートであり、電気自動車1が走行しているルートの情報(走行履歴)、例えば道路の勾配や左右のカーブ,右左折を行った等の情報を記録すると共に(ステップS21)、駆動用モータ3,ステアリング用モータ13などのステータス、例えばこれらのモータに出力される最大電圧や、モータ回転時の平滑性レベルなどを記録する(ステップS22)。尚、モータの平滑性については、例えば電気自動車1が平坦な直線道路を走行している場合に、所定期間内における回転数の変動幅により検知したり、モータ制御装置10がベクトル制御を行っている場合にはトルク電流Iqの変動により検知する。また、電気自動車に駆動用モータが複数設けられている場合については、後述する第2実施例で説明する。
【0024】
再び図3を参照する。続くステップS3では、キーシリンダスイッチのACC(アクセサリ)がOFFか否かを判断し、OFFでなければ(NO)ステップS1に戻る。一方、「ACC=OFF」であれば(YES)、モータ制御を開始するための時間(時刻)Tactを設定する(ステップS4)。ここで、モータ制御開始時間Tactは、電気自動車1が停車状態にあり走行が長期間行われていないと判定するための時間閾値を加味して設定する。前記閾値は、電気自動車1が停止していることでバッテリ2が放電されない状態が継続し、バッテリ2の特性が劣化する時間よりも短くなるように(例えば、3日間程度)設定する。
【0025】
続くステップS5では、ステップS3と同様に「ACC=OFF」か否かを判断し、「NO」と判断するとステップS1に戻る。「ACC=OFF」であれば(YES)、制御装置22は、現在時刻を参照し、その時刻を時間TOFFnに設定し(ステップS6)、次のステップS7で「TOFFn≧Tact」となったか否かを判断する。そして、「NO」と判断するとステップS5に戻る。
【0026】
ステップS5〜S7のループを回っている間に、「TOFFn≧Tact」となり、ステップS7において「YES」と判断すると、制御装置22は、バッテリ2の状態,残存容量をチェックする(ステップS8)。そして、バッテリ2の残存容量が、駆動用モータ3,ステアリング用モータ13の制御を行うのに十分(OK)であれば(ステップS9:YES)モータ制御を実行し、(ステップS10)、次回にモータ制御を開始するための時間Tactを設定すると(ステップS11)ステップS5に戻る。また、ステップS9において、バッテリ2の残存容量が、駆動用モータ3,ステアリング用モータ13の制御を行うのに不足している場合は(NO)、そこからステップS11に移行する。
【0027】
図5は、ステップS10におけるモータ制御の内容を示すフローチャートである。先ず、ステップS2で記録したルート情報に基づいて駆動用モータ3,ステアリング用モータ13の使用状況をチェックし(ステップS31)、更に各モータの走行中のステータスをチェックする(ステップS32)。そして、これらのチェック結果に基づいて保守対象モータ及びその制御時間を決定する(ステップS33)。本実施例では、制御対象が駆動用モータ3,ステアリング用モータ13だけなので、ここでは駆動用モータ3が保守対象であるとする。
【0028】
続くステップS34,S35では、制御開始時刻Tcs,制御時間Tmcをそれぞれ設定すると、クラッチ制御装置11を介してクラッチ4をOFFにしてから(ステップS36)、保守対象モータ:駆動用モータ3を駆動して空転させる(ステップS37)。それから、「ACC=ON」か否かを判断し(ステップS38)、「ACC=ON」でなければ(NO)リアルタイムクロックなどから現在時刻Tcnを取得する(ステップS39)。そして、「Tcn−Tcs>Tmc」か否か、すなわち、ステップS37で駆動用モータ3の空転を開始させてから制御時間Tmcが経過したか否かを判定し(ステップS40)、制御時間Tmcが経過していなければ(NO)ステップS38に戻る。
【0029】
ステップS40において制御時間Tmcが経過すると(YES)、制御装置22は駆動用モータ3の空転を停止させる(ステップS41)。ここで、ステップS37〜S41における空転制御を実行した結果、駆動用モータ3が正常に空転したか否かを、例えば駆動用モータ3に配置されているロータリエンコーダやホールICのような位置センサ,若しくは回転センサなどにより判定する(ステップS42)。駆動用モータ3が正常に空転していれば(YES)駆動用モータ3の駆動系の機能は正常であるから、駆動用モータ3の使用状況(ステータス)を更新して(ステップS43)リターンする。
【0030】
一方、ステップS41において、駆動用モータ3が空転しなかった場合は(NO)、駆動用モータ3の駆動系の機能に何らかの異常があると判断される。したがって、制御装置22は、表示装置27や音声出力装置28によってユーザに対する報知処理を行う(ステップS44)。例えば、「駆動モータに異常があります。点検を行ってください。」といったメッセージを表示装置27に表示させたり、音声出力装置28より音声によって出力する。尚、これらの報知は、ユーザが報知に気付いてナビゲーション装置7の操作部25を操作するまでの間は、所定の間隔をおいて間欠的に行うようにする。
【0031】
その他、上述した駆動用モータ3の空転制御に替えて、以下のような処理を実行しても良い。
・ユーザが、ナビゲーション装置7の操作部25を介して、電気自動車1を次回に走行させる予定日時を入力設定する。この場合、図3のステップS7において「NO」と判断した場合でも、上記走行予定日時の所定時間前、例えば24時間前になるとステップS8〜S11を実行する。すなわち、電気自動車1の走行を開始する前の段階で駆動用モータ3の機能をチェックする。
【0032】
・バッテリ2より駆動用モータ3に印加される最大電圧に対して、駆動用モータ3が回転する場合の平滑性レベルが目標レベルに到達していない場合は、空転制御の実行判定を行う閾値を短くするように変更する。すなわち、駆動用モータ3の軸受け等の回転機構部の状態や、その回転機構部に注入されている潤滑油の粘性が変化するなどして、印加される最大電圧に比較して駆動用モータ3が滑らかに回転していない場合はその機能に異常があると推定されるので、駆動用モータ3の機能確認をより早く実行する。
【0033】
・ステアリング用モータ13について、ステップS22で記録させたステータスから、左右のカーブを走行した場合や右左折を行った場合のステアリング16の切り角をチェックする。そして、その切り角が、ステアリング用モータ13により最大範囲まで達していない場合は、ステアリング用モータ13を最大範囲まで駆動させて当該モータ13の駆動系をチェックする。この時、ステアリング用モータ13が、切り角を最大範囲とするまで回転できなかった場合は、ステップS43で同様に報知処理を行う。
【0034】
以上のように本実施例によれば、ナビゲーション装置7を、電気自動車1の駆動用モータ3を制御するモータ制御装置10と通信可能に構成し、制御装置22は、電気自動車1が走行停止となっている期間が所定の閾値を超えると、駆動用モータ3を空転させる指令をモータ制御装置10に出力する。そして、駆動用モータ3が空転しない又は滑らかに回転しない等の異常だと判断した場合、表示装置27や音声出力装置8によりその旨の報知を行う。
したがって、電気自動車1の走行が比較的長い期間行われなかった場合に、駆動用モータ3に電源を供給するバッテリ2を放電させると共に駆動用モータ3が正常に回転するか否かを確認し、バッテリ2の「へたり」を防止して機能を維持するための放電エネルギーをより有効に活用できる。
【0035】
また、ユーザがナビゲーション装置7に次回の走行開始予定時刻を入力設定すると、制御装置22は、次回の空転予定時刻が走行開始予定時刻よりも先である場合は、走行開始予定時刻よりも前に駆動用モータ3を空転させるように制御指令を出力するので、ユーザが電気自動車1の運転を開始しようとする前に駆動用モータ3の機能が正常か否かを確認し、ユーザは事前に、電気自動車1が走行可能な状態であるか否かを確認できる。
更に、制御装置22は、バッテリ2より駆動用モータ3に印加される最大電圧と、駆動用モータ3が回転する場合の平滑性レベルとを測定して記録し、最大電圧に対する駆動用モータ3の平滑性レベルが目標とするレベルに到達していない場合は、空転制御の開始判定を行う閾値を短くするように変更するので、駆動用モータ3の機能に異常があると判定できる場合に、空転制御をより早期に実行して判定できる。
【0036】
加えて、電気自動車1がパワーステアリング用のステアリング用モータ13を備える場合、制御装置22は、電気自動車1の走行履歴に応じたステアリング用モータ13の使用状況を管理し、走行履歴に基づいて把握されるステアリング用モータ13の切り角が最大範囲まで達していない場合は、その切り角が最大範囲に達するまでステアリング用モータ13を回転させる指令をステアリング制御装置15に出力する。そして、ステアリング用モータ13が最大範囲に達するまで回転しなかった場合にも報知を行うので、ステアリング用モータ13の駆動系の機能についても正常か否かを確認できる。
【0037】
(第2実施例)
図6は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。図6は、電気自動車31の概略的な構成図である。第2実施例の電気自動車31は、各車輪6(FL,FR,RL,RR)毎に、駆動用モータ32(FL,FR,RL,RR)を個別に配置した構成となっている。そして、これらの駆動用モータ32には、バッテリ33より駆動用電源が供給され、モータ制御装置34は、各駆動用モータ32によって発生させる駆動力を個別に制御可能となっている。また、図6では、クラッチ4やバッテリ監視装置8,車両制御装置9等の図示を省略している。
【0038】
例えば、電気自動車31が坂道を登る場合には、後輪6RL,6RRの駆動力が前輪6FL,6FRの駆動力よりも大となるように制御し、右カーブを曲がる場合には、左側の車輪6FL,6RLの駆動力が、右側の車輪6FR,6RRの駆動力よりも大となるように制御する。また、走行時には必ずしも全ての車輪6を駆動輪とする必要はなく、例えば平坦な直線道路を走行する場合には、後輪6RL,6RRだけ、若しくは前輪6FL,6FRだけを駆動輪としても良い。したがって、4つの駆動用モータ32(FL,FR,RL,RR)の使用状況は、それぞれ相違する場合がある。
【0039】
以上のように構成される電気自動車31について、ナビゲーション装置7は、第1実施例の図5に示す処理では、記録したルート情報に基づいて各駆動用モータ32(FL,FR,RL,RR)の使用状況をチェックし(ステップS31)、更に駆動用モータ32のステータスをチェックする(ステップS32)。そして、これらのチェック結果に基づいて保守対象モータ及びその制御時間を決定する(ステップS33)。すなわち、各駆動用モータ32の使用状況がそれぞれ相違することから、使用時間が比較的短い、或いは可動負荷が比較的高い駆動用モータ32を優先して、ステップS37における「保守対象モータ」とする。
この場合、空転制御は、全ての駆動用モータ32について行うが、その実行順序を使用時間の短さに応じて決定しても良いし、使用時間が最も短い駆動用モータ32だけを空転させて機能確認を行っても良い。
【0040】
以上のように第2実施例によれば、電気自動車31が駆動輪6と駆動用モータ32とを複数備えている場合に、電気自動車の過去の走行履歴に応じた各駆動用モータ32の使用状況を管理する。そして、ナビゲーション装置7の制御装置22は、走行履歴に基づいて把握される使用期間が短い駆動用モータ32を優先して空転させるように制御指令を出力する。したがって、使用期間が比較的短い、或いは可動負荷が比較的高い駆動用モータ32を優先して駆動系の機能が正常か否かを確認できる。
【0041】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
ユーザがフィールドにおいて走行させる場合に限らず、例えばメーカーで製造された電気自動車をユーザが入手する以前の段階で、ヤード或いはディーラーに保管されている場合に、同様の処理を実行しても良い。またこの場合、電気自動車に搭載されているバッテリを使用せず、ディーラーなどに用意されているサブバッテリを一時的に接続した状態で保管されている場合についても、同様の処理を実行しても良い。
ステアリング用モータ13に電源を供給するバッテリは、バッテリ2と別個に設けても良い。また、パワーステアリング機能を備えていない電気自動車に適用しても良い。
ステップS9において「NO」と判断した場合も、ユーザに対する報知処理を行っても良い。
【0042】
報知手段は、表示装置27,音声出力装置28の何れか一方でも良い。
モータ制御の開始判定を行うための閾値は、3日間に限らず適宜変更して良い。
また、ユーザが走行開始予定時刻を設定した場合に、それ以前にモータ制御を開始する時点も1日前に限ることなく、適宜変更して良い。
第2実施例については、必ずしも四輪全てに駆動用モータが配置されるものに限らず、例えば、前輪側と後輪側とにそれぞれ配置される2つの駆動用モータを備えて、前輪駆動と後輪駆動とを切り換える構成の電気自動車に適用しても良い。
電気自動車については、駆動用モータとガソリンエンジンとの組み合わせで構成されるハイブリッドタイプの電気自動車も含むものとする。
【符号の説明】
【0043】
図面中、1は電気自動車、2はバッテリ、3は駆動用モータ、6は車輪、7はナビゲーション装置、10はモータ制御装置、13はステアリング用モータ、15はステアリング制御装置、22は制御装置(停止期間測定手段,制御指令出力手段,空転判別手段,報知手段,最大電圧記録手段,平滑性記録手段,走行履歴記録手段,駆動用モータ管理手段,ステアリング用モータ管理手段)、25は操作部(時刻設定手段)、27は表示装置(報知手段)、28は音声出力装置(報知手段)、31は電気自動車、32は駆動用モータ、33はバッテリ、34はモータ制御装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから駆動用モータに電源を供給し、前記駆動用モータにより車輪を駆動して走行する電気自動車に搭載され、前記駆動用モータを制御するモータ制御装置と通信が可能に構成されるナビゲーション装置において、
前記電気自動車が走行停止となっている期間を測定する停止期間測定手段を備え、
前記走行停止期間が所定の閾値を超えると、前記駆動用モータを空転させる指令を前記モータ制御装置に出力する制御指令出力手段と、
前記駆動用モータが空転したか否かを判別する空転判別手段と、
前記駆動用モータが空転しない又は滑らかに回転しない等の異常だと判断した場合に報知を行う報知手段とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記電気自動車が駆動輪と駆動用モータとを複数備えている場合、
前記電気自動車の過去の走行履歴を記録する走行履歴記録手段と、
前記走行履歴に応じた、前記駆動用モータの使用状況を管理する駆動用モータ管理手段とを備え、
前記制御指令出力手段は、前記走行履歴に基づいて把握される使用期間が短い、或いは可動負荷が高い駆動用モータを優先して空転させるように制御指令を出力することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
ユーザが次回の走行開始予定時刻を入力設定するための時刻設定手段を備え、
前記制御指令出力手段は、次回の空転予定時刻が前記走行開始予定時刻よりも先である場合には、前記走行開始予定時刻よりも前に前記駆動用モータを空転させるように制御指令を出力することを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記バッテリから前記駆動用モータに印加される最大電圧を測定して記録する最大電圧記録手段と、
前記駆動用モータが回転する場合の平滑性を示す平滑性レベルを測定して記録する平滑性記録手段とを備え、
前記制御指令出力手段は、前記最大電圧に対する前記駆動用モータの平滑性レベルが目標とするレベルに到達していない場合は、前記所定の閾値を短くするように変更することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記電気自動車が、パワーステアリング用のステアリング用モータを備える場合、
前記電気自動車の過去の走行履歴を記録する走行履歴記録手段と、
前記走行履歴に応じた、前記ステアリング用モータの使用状況を管理するステアリング用モータ管理手段とを備え、
前記制御指令出力手段は、前記走行停止期間が所定の閾値を超えた場合に、前記走行履歴に基づいて把握される、前記ステアリング用モータの切り角が最大範囲まで達していない場合は、前記切り角が最大範囲に達するまでステアリング用モータを回転させる指令を当該モータの制御装置に対して出力し、
前記報知手段は、前記ステアリング用モータが前記最大範囲に達するまで回転しなかった場合にも報知を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−213533(P2010−213533A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59443(P2009−59443)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】