説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】車両の乗員が走行挙動に違和感を与えることを防止しつつ燃費効率を向上させるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド・マネジメントECU36は、車速VPをセット車速VCに追従させるクルーズコントロールの制御時のパラレル運転モードの状態で、パワープラント要求トルクの加算側の更新を規制し、ロックアップ上限トルクに係る所定トルク値に保持するようにし、車速VPが、セット車速VCから車速偏差の上限値ΔVを減算して得た値未満に低下したとき、シリーズ運転モードに切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)およびモータを併用して走行駆動するハイブリッド車両に搭載され、少なくとも内燃機関またはモータのいずれか一方の駆動力を駆動輪に伝達するハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、駆動源としての内燃機関およびモータを備え、少なくとも内燃機関またはモータのいずれか一方の駆動力を駆動輪に伝達して走行するハイブリッド車両において、車両の運転状態に応じて、内燃機関に要求されるエンジントルクとモータに要求されるモータトルクとを設定するハイブリッド車両の制御装置が知られている。
そして、このようなハイブリッド車両の制御装置において、例えば、車速センサにより検出される車両の速度(車速)が車速の目標値であるセット車速に追従するようにして車両を走行駆動させる定速走行装置を備える制御装置が知られており、この定速走行装置は、検出された車速とセット車速との速度偏差が生じると、この速度偏差を打ち消すようにして内燃機関およびモータから出力されるトルクを増減させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−207622号公報(段落[0057]〜[0098]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来技術の一例に係るハイブリッド車両において、内燃機関の出力をジェネレータモータにより発電し、その発電された電力で駆動用モータを駆動して駆動輪に伝える「シリーズ運転」のモードと、内燃機関と駆動輪をロックアップ手段により機械的に締結し、内燃機関で駆動輪を駆動し、必要に応じて駆動用モータおよびジェネレータモータの少なくとも一方で駆動輪をアシスト駆動する「パラレル運転」のモードと、を備え、車両の運転状態に応じて、シリーズ運転とパラレル運転のモードの切換を行なうように設定した場合には、検出される車速がセット車速となるように車両を走行駆動させる状態で、単に、検出される車速とセット車速との速度偏差を打ち消すようにして内燃機関およびモータのトルクを増減させるだけでは、例えば、シリーズ運転とパラレル運転とのモードの切換が頻繁に繰り返されるハンチングが生じてしまい、走行挙動に対して、車両の乗員に違和感を与えてしまう虞がある。
また、このようなロックアップ手段を備えたハイブリッド車両の制御装置においては、例えば、アクセルペダル踏み込み量や車速等の車両状態量に対して、パラレル運転を継続する領域を拡大することによって、燃費効率を向上させることが望まれている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、走行挙動に対して、車両の乗員に違和感を与えることを防止し、かつ、燃費効率を向上させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決してかかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関の駆動力を、駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、駆動用モータの駆動力を、駆動輪へ伝達する第2の伝達経路とを備え、これを択一的に選択または併用して走行するハイブリッド車両の制御装置であって、車両の運転状態に応じて、第2の伝達経路を用いた走行と、第1の伝達経路を用いた走行と、を切り換えるロックアップ手段(ロックアップクラッチ21)と、少なくとも、車両の速度を所定の目標速度に追従させるように車両を走行駆動させる要求トルクを設定してクルーズコントロールの制御を行なう、または車両を先行車両に対して所定の車間距離を維持して走行させる要求トルクを設定してクルーズコントロールの制御を行なう、いずれか一方の制御を行なうクルーズコントロール手段(クルーズコントロール制御部53)と、第1の伝達経路を用いた運転時に、内燃機関から出力可能なエンジントルクの上限値を算出する上限エンジントルク算出手段(パラレル/シリーズ切換制御部59aにおけるフローチャートのステップS101)と、内燃機関の出力を、駆動用モータの出力により補助するアシスト動作時に、駆動用モータから出力可能なモータトルクの上限値を算出する上限モータトルク算出手段(パラレル/シリーズ切換制御部59aにおけるフローチャートのステップS101)と、ロックアップ手段およびクルーズコントロール手段の作動時に、内燃機関と駆動用モータとからなるパワープラントから出力可能なパワープラントトルクに対する要求トルクを、エンジントルクの上限値とモータトルクの上限値とを加算して得たロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下に制限するトルク制限手段(クルーズコントロール制御部53におけるフローチャートのステップS112)と、を備え、クルーズコントロール手段は、トルク制限手段の作動時に、ロックアップ上限トルクに係る所定トルクにもとづき要求トルクを設定し、車両の速度が目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下したときに、ロックアップ手段によるロックアップを解除して、第2の伝達経路を用いた走行を行なわせることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、ロックアップ手段によって第1の伝達経路による走行をしている状態でのクルーズコントロールの制御のとき、車両の速度が目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下するまではパワープラントから出力可能なパワープラントトルクに対する要求トルクを、エンジントルクの上限値とモータトルクの上限値とを加算して得たロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下に制限するので、第1の伝達経路による走行状態を継続する時間が増加する。
【0007】
請求項2に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、さらに、トルク制限手段の作動時に、車両の速度が目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下したときに、ロックアップ手段(ロックアップクラッチ21)によるロックアップを解除する時点で、ロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下の要求トルクに第1の所定時間維持させることを特徴とする。
請求項2に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、第2の伝達経路による走行状態に切り換えられた後も、第1の所定時間は、要求トルクが第1の伝達経路による走行状態時のロックアップ上限トルクに係る所定トルクの要求トルクに保持される。
【0008】
請求項3に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置は、請求項2に記載の発明の構成に加えて、さらに、第2の伝達経路を用いた走行時において、車両の速度が目標速度から所定速度を減算して得た速度以上となり、要求トルクがヒステリシスを有するロックアップ上限トルクの低ロックアップ上限トルク以下となった後に、ロックアップ手段を作動させて第1の伝達経路を用いた走行へ切り換えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、従来のように目標速度に達したときに、要求トルクが第1の伝達経路によって出力可能な値になっても、第2の伝達経路による走行状態から第1の伝達経路に走行状態に切り換わらない。
【0009】
請求項4に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置は、請求項3に記載の発明の構成に加えて、さらに、前記要求トルクが低ロックアップ上限トルク以下となり、かつ、第2の所定時間が経過した後に、第1の伝達経路を用いた走行へ切り換えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、要求トルクが十分安定した値になってから、第1の伝達経路を用いた走行へ切り換えることができる。
【0010】
請求項5に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置は、請求項2に記載の発明の構成に加えて、さらに、トルク制限手段(クルーズコントロール制御部53におけるフローチャートのステップS112)の作動時に、車両の速度が目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下したときに、ロックアップ手段(ロックアップクラッチ21)によるロックアップを解除する時点で、ロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下の要求トルクに所定期間維持させ、その後、クルーズコントロール手段(クルーズコントロール制御部53)は、車両の速度を所定の目標速度に追従させるようにして車両を走行駆動させる要求トルク、または車両を先行車両に対して所定の車間距離を維持して走行させる要求トルクを、第2の伝達経路を用いた走行状態に対して設定してクルーズコントロールの制御をすることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、第1の伝達経路によるクルーズコントロールの制御による走行状態から第2の伝達経路によるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換わった後、第2の伝達経路によって出力可能な駆動力にまで要求トルクを増加させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、請求項1に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、第1の伝達経路によるクルーズコントロールの制御による走行状態において、パワープラントトルクに対して算出された目標トルクが、例えば、内燃機関の出力可能なエンジントルクと、駆動用モータのアシスト作動時の出力可能トルクとを加算した値を超えた場合であっても、パワープラントトルクに対する要求トルクを前記加算した値に制限して、車両の乗員に違和感を与えることがない程度の減速を許容することによって、ロックアップ状態を継続させ、パラレル運転モードからシリーズ運転モードへと切り換えるタイミングを遅延させることによって燃費効率を向上させることができる。
【0013】
さらに、請求項2に記載の本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、シリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換わった直後の急激なトルク変動が防止でき、乗員に違和感を与える加速を防止できる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、シリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態において、車両の速度が目標速度の所定幅内に入り、要求トルクがヒステリシスを有するロックアップ上限トルクの低ロックアップ上限トルク以下でパラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換えられるので、シリーズ運転モードとパラレル運転モードの頻繁な切換のハンチングを生じない。
【0015】
さらに、請求項4に記載の本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、シリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態において、車両の速度が目標速度の所定幅内に入り、要求トルクがヒステリシスを有するロックアップ上限トルクの低ロックアップ上限トルク以下で十分安定してからパラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換えられるので、シリーズ運転モードからパラレル運転モードに切り換えられた後の、クルーズコントロールの制御による走行状態を安定する。
【0016】
さらに、請求項5に記載の本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、パラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態からシリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換わった後、パラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態で制限を受けていた要求トルクを越えて、要求トルクが設定でき、クルーズコントロールの制御が十分機能できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置ついて、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置およびこれを適用したハイブリッド車両の構成を示し、モータおよび内燃機関(エンジン)の駆動力の固定ギアによる伝達経路の構成を示す図である。図2はハイブリッド車両の制御装置の機能ブロック図である。図3は本実施形態のハイブリッド車両における駆動力特性図である。図3において横軸は車速を示し、縦軸は駆動力および走行抵抗を示す。
本実施の形態のハイブリッド車両50は、内燃機関Eの駆動力を左右の駆動輪(前輪または後輪)DWに伝達して車両を走行させる第1の伝達経路と、駆動用モータGM2の駆動力を駆動輪DWに伝達して車両を走行させる第2の伝達経路とを備え、これらの第1の伝達経路と第2の伝達経路を択一的に選択または併用して走行するように構成されたものである。
【0018】
(駆動力の伝達経路)
先ず、第1の伝達経路を説明する。図1に示すように多気筒、例えば、6気筒からなる内燃機関Eのクランク軸ESは、フライホイルFWを介してセルモータを兼ねるジェネレータモータGM1のロータ軸PSの一端に直結され、ロータ軸PSの他端にはエンジン出力ギア22が設けられている。エンジン出力ギア22は、アイドル軸23aの一端に設けられたオーバドライブギア23に噛み合い、内燃機関EおよびジェネレータモータGM1の駆動力をアイドル軸23aに伝える。アイドル軸23aの他端には、アイドル軸23aとアイドル軸44aを接続、または切断するロックアップクラッチ(ロックアップ手段)21が設けられている。ロックアップクラッチ21に接続される被駆動側のアイドル軸44aの他端には終減速小歯車であるファイナルドライブギア24が配され、これに噛み合うように終減速大歯車であるファイナルドリブンギア25が設けられている。ファイナルドリブンギア25はディファレンシャルギアDEFと組み合わされており、アイドル軸44aに伝達された駆動力は、ファイナルドリブンギア25に入力された後に、ディファレンシャルギアDEFを介して左右のディファレンシャル軸から駆動輪DWに出力される。
【0019】
第1の伝達経路は、クランク軸ES、ロータ軸PS、エンジン出力ギア22、オーバドライブギア23、アイドル軸23a、ロックアップクラッチ21、このロックアップクラッチ21によってアイドル軸23aと接続または切離しされるアイドル軸44a、ファイナルドライブギア24、このファイナルドライブギア24に噛み合うファイナルドリブンギア25、およびこのファイナルドリブンギア25から入力され駆動輪DWを駆動するディファレンシャルギアDEFから構成されている。この第1の伝達経路により内燃機関Eの駆動力が駆動輪DWへ伝達される。
なお、この第1の伝達経路はエンジン出力ギア22とオーバドライブギア23のギア比、およびファイナルドライブギア24とファイナルドリブンギア25のギア比の積で決まる固定の第1の減速比を有している。
また、ジェネレータモータGM1が内燃機関EをアシストするときのジェネレータモータGM1の駆動力も、前記第1の伝達経路で駆動輪DWに伝えられる。
【0020】
次に、第2の伝達経路を説明する。図1に示すようにジェネレータモータGM1が内燃機関Eの駆動力で発電してパワードライブユニット(以下、PDUと称する)2Aで直流に変換した電力、またはバッテリ(図1中、Ni−MH BATTと表示)3からの直流電力を、PDU2Bを介して電力供給されて駆動される駆動用モータGM2は、そのモータ軸26aの一端に直結されたモータギア26を有し、そのモータギア26が、前記アイドル軸44aに設けられたアイドルギア27と噛み合っている。
第2の伝達経路は、モータギア26、アイドルギア27、このアイドルギア27と同軸にアイドル軸44aによって駆動されるファイナルドライブギア24、このファイナルドライブギア24に噛み合うファイナルドリブンギア25、およびこのファイナルドリブンギア25から入力され駆動輪DWを駆動するディファレンシャルギアDEFから構成されている。この第2の伝達経路により駆動用モータGM2の駆動力が駆動輪DWへ伝達される。
なお、この第2の伝達経路はモータギア26とアイドルギア27のギア比、およびファイナルドライブギア24とファイナルドリブンギア25のギア比の積で決まる固定の第2の減速比を有している。
【0021】
なお、ハイブリッド車両50の減速時に駆動輪DW側からジェネレータモータGM1または駆動用モータGM2側に駆動力が伝達されると、ジェネレータモータGM1または駆動用モータGM2は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギをPDU2A、またはPDU2Bを介して電気エネルギとして回収し、バッテリ3に充電する。
エンジン出力ギア22、オーバドライブギア23、ファイナルドライブギア24、ファイナルドリブンギア25、モータギア26、アイドルギア27、およびこれらの各ギアの軸は、内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2による駆動輪DWの駆動に対する減速機RGを構成している。
【0022】
ここで、減速機RGの第1の減速比は、以下の様に設定されている。本ハイブリッド車両50の定常走行時における内燃機関Eのほぼ最大出力時の駆動力特性は図3の特性曲線aに示すように、前記第1の減速比による車速に対する内燃機関Eの回転速度とトルクの関係から、最高速度Vmax近傍において、走行抵抗特性曲線bよりも駆動力が下回り、車速Vまでしか出せない駆動力のレベルに設定されている。つまり、内燃機関Eの駆動力だけでは最高速度Vmaxが出せないように減速機RGのギア比が設定されている。
なお、図3の走行抵抗特性曲線bは、駆動輪DWの転がり抵抗と、空気抵抗等車速に応じて増加する抵抗を加算したものである。
【0023】
(制御装置の説明)
以下に、内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2を動作させる構成について説明する。
ジェネレータモータGM1は、例えば、3相のDCブラシレスモータ等からなり、PDU2Aに接続されている。PDU2Aは、例えば、半導体スイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備え、ジェネレータモータGM1と電力(ジェネレータモータGM1の力行、つまり駆動動作時に、ジェネレータモータGM1に供給される供給電力や、回生動作時にジェネレータモータGM1から出力される回生電力)の授受を行なう高圧系のバッテリ3、例えば、ニッケル−水素バッテリが接続されている。
そして、ジェネレータモータGM1の駆動および回生動作は、ハイブリッド車両の制御装置(以下、制御装置と称する)1からの制御指令を受けてPDU2Aにより行われる。すなわち、PDU2Aは、例えば、ジェネレータモータGM1の駆動時には、制御装置1から出力されるトルク指令にもとづき、バッテリ3から出力される直流電力を3相交流電力に変換してジェネレータモータGM1へ供給する。一方、ジェネレータモータGM1の回生動作時には、ジェネレータモータGM1から出力される3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ3を充電する。
【0024】
同様に、駆動用モータGM2は、例えば、3相のDCブラシレスモータ等からなり、PDU2Bに接続されている。PDU2Bは、例えば、半導体スイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するPWMインバータを備え、駆動用モータGM2と電力(駆動用モータGM2の駆動動作時に、駆動用モータGM2に供給される供給電力や、回生動作時に駆動用モータGM2から出力される回生電力)の授受を行なうバッテリ3が接続されている。
そして、駆動用モータGM2の駆動および回生動作は、制御装置1からの制御指令を受けてPDU2Bにより行われる。すなわち、PDU2Bは、例えば、駆動用モータGM2の駆動時には、制御装置1から出力されるトルク指令にもとづき、バッテリ3から出力される直流電力、またはジェネレータモータGM1が内燃機関Eにより駆動されて発電して、PDU2Aにおいて直流変換された電力を、3相交流電力に変換して駆動用モータGM2へ供給する。一方、駆動用モータGM2の回生動作時には、駆動用モータGM2から出力される3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ3を充電する。
なお、駆動用モータGM2は、ジェネレータモータGM1よりも駆動力が大きく、内燃機関Eにより駆動されたジェネレータモータGM1が発電した電力で駆動輪DWを駆動するシリーズ運転モードのとき、図3に示す最大出力特性曲線cの駆動力特性を発揮するようになっている。
【0025】
そして、各種補機類を駆動するための12ボルトの補助バッテリ(図1中、12V BATTと表示)4は、DC/DCコンバータであるダウンバータ(図1中、DC/DCコンバータと表示)5を介して、PDU2A、2Bおよびバッテリ3に対して並列に接続されている。制御装置1により制御されるダウンバータ5は、PDU2A、2Bやバッテリ3の電圧を降圧して補助バッテリ4を充電する。
【0026】
また、内燃機関Eのクランク軸ESには、例えば、図示しないベルトおよびクラッチ等を介して、空調装置用のハイブリッドエアコンコンプレッサ(図1中、HBACと表示)6に具備される図示しない空調装置用モータの回転軸が接続され、この空調装置用モータは、空調装置用インバータ(図1中、HBAC INVと表示)7に接続されている。空調装置用インバータ7は、PDU2A、2Bおよびバッテリ3に対して並列に接続され、制御装置1の制御により、PDU2Aやバッテリ3から出力される直流電力を3相交流電力に変換して空調装置用モータへ供給し、ハイブリッドエアコンコンプレッサ6を駆動制御する。
すなわち、前記ハイブリッドエアコンコンプレッサ6は、少なくとも内燃機関Eの駆動力または空調装置用モータの駆動力のいずれか一方の駆動力により、駆動負荷量、例えば、冷媒の吐出容量が可変制御される。
なお、ハイブリッドエアコンコンプレッサ6における「ハイブリッド」とは、内燃機関Eと空調装置用モータの何れでも駆動できることを意味している。
【0027】
なお、内燃機関Eと空調装置用モータとの間には、例えば内燃機関Eのクランク軸ESと一体に設けられたクランク軸プーリと、このクランク軸プーリと対をなし、クラッチを介して空調装置用モータの回転軸と接続可能な駆動軸と一体に設けられた駆動軸プーリと、クランク軸プーリおよび駆動軸プーリ間に掛け渡されたベルトとが備えられている。すなわち、クランク軸プーリおよび駆動軸プーリ間においては、ベルトを介して駆動力が伝達される。
【0028】
内燃機関Eは、例えば、SOHCのV型6気筒内燃機関であって、一方のバンクの3つの気筒は気筒休止運転(休筒運転)が可能な可変バルブタイミング機構VTを備えた構造で、他方のバンクの3つの気筒は気筒休止運転を行わない図示しない通常の動弁機構を備えた構造となっている。そして、気筒休止可能な3気筒は各々2つの吸気弁と2つの排気弁が、油圧ポンプ(図1中、Pで表示)11、スプールバルブ12、気筒休止側通路13、気筒休止解除側通路14を介して可変バルブタイミング機構VTにより閉状態を維持できるような構造となっている。
すなわち、内燃機関Eは、片側のバンクの3つの気筒が休止した状態の3気筒運転(休筒運転)と、両方のバンクの6気筒全部が駆動する6気筒運転(全筒運転)とが切り換えられることとなる。
【0029】
具体的には、油圧ポンプ11から潤滑系配管11aを介してエンジン潤滑系へ供給される作動油の一部が、制御装置1により制御されるソレノイドを具備するスプールバルブ12を介して、気筒休止可能なバンクの気筒休止側通路13に供給されると、各々ロッカーシャフト15に支持され、それまで一体で駆動していたカムリフト用ロッカーアーム16a(16b)と弁駆動用ロッカーアーム17a(17b)が分離して駆動可能となるため、カムシャフト18の回転により駆動するカムリフト用ロッカーアーム16a、16bの駆動力が弁駆動用ロッカーアーム17a、17bに伝達されず、吸気弁と排気弁が閉状態のままとなる。これにより3つの気筒の吸気弁と排気弁が閉状態となる休筒運転を行なうことができる。
そして、内燃機関Eは制振装置[図1中、ACM(Active Control Engine Mount)と表示]19を介して車体に搭載され、制振装置19は、内燃機関Eの運転状態つまり3気筒運転(休筒運転)と6気筒運転(全筒運転)との切換に伴う車体振動の発生を抑制するようになっている。この制振装置19は、制御装置1の制御による図示しない制振用モータの回転駆動により動作し、そのために制御装置1はPDU2Aを制御して、ジェネレータモータGM1に必要に応じてそのための電力の発電をさせる。
【0030】
また、この内燃機関Eには、図示しないスロットルバルブを電子制御する電子制御スロットル[図1中、ETCS(Electronic Throttle Control System)と表示]20が備えられている。
電子制御スロットル20は、例えば、運転者による図示しないアクセルペダルの操作量に係るアクセルペダル踏み込み量や、例えば、車速(車両の速度)VPやエンジン回転速度NE等の車両の運転状態や、例えば、内燃機関Eと、ジェネレータモータGM1と、駆動用モータGM2との間のトルク配分等にもとづいて制御装置1にて算出されるスロットル開度に応じて、図示しないETCSドライバを駆動し、スロットルバルブを直接的に制御する。
【0031】
また、減速機RGは、前記したようにロックアップクラッチ21を備えて構成され、その動作源とするための油圧を発生する電動オイルポンプ(図1中、EOPと表示)28が備えられている。
なお、電動オイルポンプ28は、図示しないがバッテリ3から電力供給され、制御装置1により駆動制御される。
【0032】
駆動輪DWにはブレーキデバイス29が備えられ、このブレーキデバイス29は制御装置1の制御によって車両の急激な挙動変化の発生を抑制するものであって、例えば、滑りやすい路面等での駆動輪DWの空転を防止したり、オーバーステアやアンダーステア等の横すべリの発生を抑制したり、制動時に駆動輪DWがロック状態となることを防止して、車両の所望の駆動力および操舵能力を確保し、車両の姿勢を安定化させると共に、クリープ力による走行を補助し、例えば、内燃機関Eの停止時における勾配路での後退防止等を行なう。
【0033】
制御装置1には、例えば、車速VPを検出する車速センサS1からの検出信号と、エンジン回転速度NEを検出するエンジン回転速度センサS2からの検出信号と、図示しないシフトレバーのシフトポジションSHを検出するシフトポジションセンサS3からの検出信号と、ブレーキ(BR)ペダルの操作状態BRK_SWを検出するブレーキスイッチS4からの検出信号と、アクセルペダルのアクセルペダル踏み込み量APを検出するアクセルペダル踏み込み量センサS5からの検出信号と、スロットル開度THを検出するスロットル開度センサS6からの検出信号と、吸気管負圧PBを検出する吸気管負圧センサS7からの検出信号と、バッテリ3の温度TBATを検出するバッテリ温度センサS8からの検出信号と、気筒休止時において気筒休止解除側通路14の油圧を検出するセンサS10からの検出信号と、PDU2AおよびPDU2Bのそれぞれの温度TPDUA、TPDUBを検出するPDU温度センサS11AおよびPDU温度センサS11Bからの検出信号と、ダウンバータ5の温度TDVを検出するDV温度センサS12からの検出信号等と、が入力されている。
【0034】
そして、制御装置1は、例えば、ブレーキデバイス29を駆動制御してハイブリッド車両50の挙動を安定化させるVSA(VSA:Vehicle Stability Assist)ECU31と、制振装置19の前記した制振用モータを駆動制御して内燃機関Eの運転状態に起因する車体振動の発生を抑制するACMECU32と、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2の駆動および回生動作を制御するモータECU(図1中、MOTECUと表示)33と、空調装置用のハイブリッドエアコンコンプレッサ6および空調装置用インバータ7を駆動制御するエアコンデショナECU(図1中、A/CECUと表示)34と、例えば、PDU2A、2Bおよびバッテリ3およびダウンバータ5およびジェネレータモータGM1、駆動用モータGM2等からなる高圧電装系の監視および保護やPDU2A、2Bおよびダウンバータ5の動作制御を行なう高圧電装系ECU(図1中、HVECUと表示)35と、内燃機関Eの回転速度や出力トルクを制御したり、シリーズ運転モードとパラレル運転モードの切換制御をしたり、内燃機関EとジェネレータモータGM1、駆動用モータGM2とのトルク分配等の制御をしたりするハイブリッド・マネジメントECU(図1中、ハイブリッドMGECUと表示)36とを備えて構成され、各ECU31〜36は相互に通信可能に接続されている。また、各ECU31〜36は各種の状態量を表示する運転席のインストルメントパネルに設けられた表示装置、計器類等からなるメータ37に接続されている。
【0035】
《ハイブリッド・マネジメントECUの詳細な説明》
例えば、図2に示すように、ハイブリッド・マネジメントECU36は、内燃機関Eへの燃料供給を制御するA/F(空燃比)制御部41と、点火タイミングを制御するIG(イグニッション)制御部42と、後記するトルク・パワー・マネジメント部43と、エネルギ・マネジメント部45と、ロックアップクラッチ21を制御するロックアップクラッチ油圧制御部(図2中、LC油圧制御部と表示)47とを備えて構成されている。
ハイブリッド・マネジメントECU36の前記した機能構成部は、例えば、ハイブリッド・マネジメントCPU(図2中、ハイブリッドMG−CPUと表示)46におけるプログラム処理によって行われる。
【0036】
(トルク・パワー・マネジメント部)
トルク・パワー・マネジメント部43において、ドライバ要求トルク算出部51は、例えば、アクセルペダル踏み込み量APと、エンジン回転速度NEと、車速VPと、「パーキング」、「ドライブ」、「バック」等のシフトポジションSHと、ブレーキペダルの操作状態BRK_SWと、ハイブリッド車両50の制動時に駆動輪DWがロックされることをブレーキデバイス29によって防止するアンチロックブレーキ動作の作動状態ABSとの各検出信号にもとづき、ハイブリッド車両50の運転者のアクセル操作に応じて運転者から要求されるトルク値であるドライバ要求トルクを算出し、後記する第1トルク選択部52へ出力する。
なお、以下で用いる内燃機関Eへの要求トルク、ジェネレータモータGM1への制限トルクおよび要求トルク、駆動用モータGM2への制限トルクおよび要求トルクなどは原則としてクランク軸のトルク(以下、クランク端トルクと称する)に換算した値として扱う。そのため、駆動用モータGM2のトルクは第1の伝達経路と第2の伝達経路の減速比の差を補正してクランク端トルクに換算して扱うものとする。
【0037】
(C/C制御部)
また、クルーズコントロール(C/C)制御部(クルーズコントロール手段)53は、例えば、車速センサS1にて検出される車速VPが、ハイブリッド車両50の走行速度の目標値であるセット車速(目標速度)VCとなるように内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2を制御する定速走行制御時や、先行車両に対して所定車間距離を維持した状態で追従する追従走行制御時等のように、予めハイブリッド車両50の運転者の入力操作に応じて設定された所定の走行条件を満たす走行制御時、つまりクルーズコントロールの制御時に目標とされるトルク値であるC/C要求トルクを算出し、後記する第1トルク選択部52へ出力する。
【0038】
(第1トルク選択部)
第1トルク選択部52は、ドライバ要求トルクまたはC/C要求トルクのいずれか大きい方のトルク値を選択し、後記する第2トルク選択部55へ出力する。これにより、例えば、クルーズコントロールの制御時であっても、ハイブリッド車両50の運転者によるアクセル操作に応じたドライバ要求トルクがC/C要求トルクを超える場合には、ドライバ要求トルクに応じたトルクが出力されるようになっている。
【0039】
(第2トルク選択部)
第2トルク選択部55は、第1トルク選択部52から入力されるトルク値、またはVSAECU31から入力されるハイブリッド車両50の挙動を安定化させるVSA要求トルクの、いずれか小さい方のトルク値を選択し、このトルク値を駆動輪DWの実質的な回転に対する目標のトルク値として設定し、第1加算部56へ出力する。
【0040】
(補機トルク−エンジンフリクション算出部)
また、補機トルク−エンジンフリクション算出部[図2中、補記トルク(HAC)−ENGフリション算出部と表示]57は、例えば空調装置の突出圧(PD)にもとづき、補機駆動に要する補機トルクを算出すると共に、内燃機関Eの暖機運転完了後のエンジンフリクションの値を基準とした際の低温状態でのエンジンフリクションの増大分にもとづき、内燃機関Eのエンジンフリクションに係るトルク値を算出し、第1加算部56へ出力する。
【0041】
(第1加算部)
第1加算部56は、駆動輪DWの実質的な回転に対する前記目標のトルク値と補機トルク−エンジンフリクション算出部57から入力されるトルク値とを加算して得た値を、パワープラント(つまり内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2)から出力されるパワープラントトルクに対する要求パワープラント(P/P)トルクとして設定し、トルク配分算出部58と、後記するモード切換制御部59のパラレル/シリーズ切換制御部59aと、に入力される。
なお、要求P/Pトルクは、前記したようにクランク端トルクに換算して扱われる。
【0042】
(モード切換制御部の概要)
モード切換制御部59は、前記したパラレル運転モード、シリーズ運転モードの切換制御を行なうパラレル/シリーズ切換制御部59aと、内燃機関Eの休筒運転と全筒運転との切換制御をする気筒休止制御部59bを備えている。
パラレル/シリーズ切換制御部59aでは、入力された前記要求P/Pトルクに対して、車速VPに応じた、内燃機関Eの出力可能なエンジントルク(出力可能なエンジントルクの上限値)と、ジェネレータモータGM1に対する第1のモータ制限トルクおよび駆動用モータGM2にたいする第2のモータ制限トルク(モータから出力可能なモータトルクの上限値)とを算出して、パラレル運転モードまたはシリーズ運転モードの選択をし、そのパラレル運転モードまたはシリーズ運転モードの選択結果、出力可能なエンジントルクおよび第1および第2のモータ制限トルクは気筒休止制御部59bおよびトルク配分算出部58に出力される。第1および第2のモータ制限トルクについては、モータ要求トルクの算出の説明のところに後記する。
また、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、パラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御において用いる、LC上限トルク(ヒスHi)、LC上限トルク(ヒスLow)を算出し、それらとパラレル運転モードまたはシリーズ運転モードの選択結果などにもとづきロックアップクラッチ油圧制御部47にロックアップクラッチ12の接続/切断の制御をさせる。LC上限トルク(ヒスHi)およびLC上限トルク(ヒスLow)の算出方法、ロックアップクラッチ12の接続/切断の制御の詳細については、図4から図6を参照しながら説明するパラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御のところに後記する。
気筒休止制御部59bは、パラレル運転モードまたはシリーズ運転モードの選択結果、出力可能なエンジントルク、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2に対する第1、第2のモータ制限トルク、ならびに要求P/Pトルクに応じて休筒運転の実行有無を判定している。
【0043】
(トルク配分算出部)
トルク配分算出部58は、パラレル/シリーズ切換制御部59aおよび気筒休止制御部59bから出力される内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2に対する、所定運転状態を指定する運転モードと、それぞれのクランク端トルクに換算した後記する第1および第2のモータ制限トルク、後記する出力可能なエンジントルクならびに要求P/Pトルクにもとづき、内燃機関Eの休筒運転の実行有無に係る休筒判断と、内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2への各トルク指令のためのパワープラント(P/P)トルクの配分を設定する。
【0044】
(パラレル運転モード時のモータ要求トルクの算出)
パラレル/シリーズ切換制御部59aは、パラレル運転モード時において、例えば、高圧電装系ECU35から出力されるバッテリ(BATT)保護制限電力またはエネルギ・マネジメント部45から出力される充放電制限電力量のいずれか小さい方にもとづいて、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2のそれぞれの出力可能なモータトルクを算出する。そして、算出された前記ジェネレータモータGM1の出力可能なモータトルクと高圧電装系ECU35から出力されるジェネレータモータ巻線保護制限トルク(図2中、GM1巻線保護制限トルクと表示)とのいずれか小さい方を第1のモータ制限トルクとし、算出された前記駆動用モータGM2の出力可能なモータトルクと高圧電装系ECU35から出力される駆動用モータ巻線保護制限トルク(図2中、GM2巻線保護制限トルクと表示)とのいずれか小さい方を第2のモータ制限トルクとして、トルク配分算出部58および気筒休止制御部59bへ出力する。
【0045】
また、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、例えば、高圧電装系ECU35から出力されるバッテリ(BATT)保護制限電力またはエネルギ・マネジメント部45から出力される要求充放電電力量のいずれか小さい方にもとづいてジェネレータモータ要求トルクを算出し、算出されたジェネレータモータ要求トルクまたは高圧電装系ECU35から出力されるジェネレータモータ巻線保護制限トルクいずれか小さい方を第1のモータ要求トルクとする。同様に、高圧電装系ECU35から出力されるバッテリ(BATT)保護制限電力またはエネルギ・マネジメント部45から出力される要求充放電電力量のいずれか小さい方にもとづいて駆動用モータ要求トルクを算出し、算出された駆動用モータ要求トルクまたは高圧電装系ECU35から出力される駆動用モータ巻線保護制限トルクのいずれか小さい方を第2のモータ要求トルクとする。そして、前記第1のモータ要求トルクと第2のモータ要求トルクをトルク配分算出部58および気筒休止制御部59bへ出力する。
【0046】
そして、トルク配分算出部58において、前記第1のモータ制限トルクと第2のモータ制限トルクの値の大きい方のモータが、パラレル運転モードにおけるアシスト作動させるモータとして、優先的にトルク分担を引き受ける。また前記第1のモータ要求トルクと第2のモータ要求トルクの一方が、前記第1のモータ制限トルクと第2のモータ制限トルクを満足している場合は、満足しているモータがアシスト作動におけるトルク分担を優先的に引き受けることになる。
【0047】
なお、エネルギ・マネジメント部45から出力される充放電制限電力量および要求充放電電力量は、例えば、バッテリ3および補助バッテリ4の充電状態に応じて設定される充電および放電に対する制限量および要求量である。
また、高圧電装系ECU35から出力されるバッテリ(BATT)保護制限電力は、例えば、バッテリ3および補助バッテリ4および他の高圧電装機器の温度状態に応じて設定されるバッテリ3の出力電力の制限値であり、ジェネレータモータ巻線保護制限トルクおよび駆動用モータ巻線保護トルクは、ジェネレータモータGM1、駆動用モータGM2の温度状態に応じて、それぞれに対して設定されるジェネレータモータGM1、駆動用モータGM2それぞれの出力トルクの制限値である。
【0048】
(シリーズ運転モード時のモータ要求トルクの算出)
パラレル/シリーズ切換制御部59aは、シリーズ運転モード時において、例えば、高圧電装系ECU35から出力されるジェネレータモータ巻線保護制限トルクと、駆動用モータ巻線保護制限トルクとを、それぞれ第1のモータの制限トルクおよび第2のモータの制限トルクとして設定し、トルク配分算出部58および気筒休止制御部59bへ出力する。
【0049】
また、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、例えば、ドライバ要求トルク算出部51から出力されたドライバ要求トルクまたはC/C制御部53から出力されたC/C要求トルクに対する、第1トルク選択部52、第2トルク選択部55および第1加算部56を介した目標とするパワープラントトルクに対する駆動用モータ要求トルクを算出する。
算出された駆動用モータ要求トルクまたは高圧電装系ECU35から出力される駆動用モータ巻線保護制限トルクのいずれか小さい方を第2のモータ要求トルクとする。
【0050】
パラレル/シリーズ切換制御部59aは、前記第2のモータ要求トルクにもとづいて発電機として機能するときのジェネレータモータ要求トルクを算出する。このジェネレータモータ要求トルクとは、内燃機関Eによって駆動されるジェネレータモータGM1の負荷トルクを意味する。
このジェネレータモータ要求トルク算出に当たっては、前記第2のモータ要求トルクにもとづいて、PDU2A、2Bにおける電力変換におけるロス分も加算して、発電機として機能するときのジェネレータモータ要求トルクを算出する。そして算出されたジェネレータモータ要求トルクまたは高圧電装系ECU35から出力されるジェネレータモータ巻線保護制限トルクのいずれか小さい方を第1のモータ要求トルクとする。
そして、算出された第1および第2のモータ要求トルクを気筒休止制御部59bとトルク配分算出部58に出力する。
【0051】
そして、トルク配分算出部58において、前記第1のモータ制限トルクを満たす範囲内において、ジェネレータモータGM1に対する第1のモータ要求トルクに、必要に応じて補機用(例えば、バッテリ3の充電用)の電力分を加算して発電可能とするように、内燃機関Eへのトルク分配をする。また、前記第2のモータ制限トルクを満たす範囲内で、駆動用モータGM2に対して、第2の要求トルクを分配する。
【0052】
(トルク配分算出部から出力されたトルク指令以降の下流における制御)
トルク配分算出部58にて算出された内燃機関Eのトルク指令は減算部60に入力されており、減算部60は内燃機関Eのトルク指令から後記するフィードバック(以下、F/Bと称する)処理部67から入力されるトルク値を減算して得た値を後記する目標スロットル開度算出部(図2中、目標TH算出部と表示する)61へ入力する。目標スロットル開度算出部61は、入力されたトルク値にもとづいて、前記のETCSドライバ64の駆動に係るスロットル開度THに対する目標値を算出し、第3トルク選択部62へ出力する。
【0053】
第3トルク選択部62は、目標スロットル開度算出部61から入力されるスロットル開度THの目標値またはアイドル制御部63から出力されるアイドル開度のいずれか大きい方のスロットル開度値を選択し、このスロットル開度値をETCSドライバ64へ出力する。
なお、アイドル制御部63から出力されるアイドル開度は、例えば、内燃機関Eのアイドル運転時において、エンジン回転速度NEが所定回転速度未満となることを防止するためのスロットル開度THに対する制限値である。
【0054】
また、トルク・パワー・マネジメント部43のエンジントルク算出部(図2中、ENGトルク算出部と表示)65には、エアーフローメータ(AFM)66にて検出された内燃機関Eの吸気空気量(もしくは供給酸素量)の検出信号が入力され、エンジントルク算出部65は吸気空気量の検出値にもとづいて内燃機関Eから出力されるエンジントルクを算出し、F/B処理部67および第3加算部68へ出力する。
F/B処理部67は、トルク配分算出部58にて算出された内燃機関Eのトルク指令に対して、例えば、エアーフローメータ66の検出値にもとづくエンジントルクの算出誤差や、例えば、内燃機関Eの応答特性や経年劣化や内燃機関Eの量産時における性能ばらつき等をフィードバック処理によって補正するものであって、エンジントルク算出部65にて算出されたエンジントルクを減算部60へ入力する。
【0055】
第3加算部68は、エンジントルク算出部65にて算出されたエンジントルクと、補機トルク−エンジンフリクション算出部57から入力されるトルク値と、モータECU33から入力されるジェネレータモータ実トルク(図2中、GM1モータ実トルクと表示)および駆動用モータ実トルク(図2中、GM2モータ実トルクと表示)とを加算して得たトルク値を実トルク算出部69へ入力しており、実トルク算出部69は入力されたトルク値にもとづき、実際にパワープラント(つまり内燃機関E、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2)から出力される実トルク値を算出する。
なお、ジェネレータモータGM1が発電機として作動している場合は、モータECU33は、ジェネレータモータ実トルクとして、負荷としての負のトルクを算出する。
また、モータECU33には、トルク・パワー・マネジメント部43のトルク配分算出部58にて算出されたジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2に対するそれぞれのトルク指令が高圧電装系ECU35を介して入力されており、モータECU33は、入力されたそれぞれのトルク指令にもとづき、実際にジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2から出力されるモータ実トルクを算出し、高圧電装系ECU35を介してトルク・パワー・マネジメント部43の第3加算部68へ入力する。
【0056】
なお、トルク・パワー・マネジメント部43において算出される各トルク値は、A/F制御部41およびIG制御部42において制御される内燃機関Eの点火タイミングや空燃比やフューエルカット(燃料供給停止)の有無等に応じて補正されるようになっている。
【0057】
《モード切換制御》
次に、前記したようにモード切換制御部59における、パラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換、および気筒休止制御について説明する。ここで気筒休止制御とは、ハイブリッド車両50の一時停車中、発進時などの全筒休筒は含まず、例えば、6気筒の内燃機関Eにおける全筒運転と3/6気筒休止などの部分気筒休止運転との切換制御のことである。
パラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換および気筒休止制御については、モータ要求トルク、モータ制限トルクにもとづいて柔軟に制御されるとして「モード切換制御部の概要」のところに前記したが、モード切換制御部59において、基本的に図3に示すような横軸に車速VPをとり、縦軸に駆動輪DWの駆動力をとった、予め設定した駆動特性マップを記憶しており、駆動特性マップの各領域は、駆動力と車速をパラメータに設定されており、駆動力を必要に応じてクランク端トルクに換算して、ドライバ要求トルク、またはC/C要求トルクにもとづいてパラレル運転モード、シリーズ運転モードの切換制御および気筒休止制御をする。
【0058】
特性曲線dより下側の予め設定された車速V〜Vまでの領域は、図3に示すように内燃機関Eの前記した休筒運転時と全筒運転時のトルク特性および、バッテリ3および補助バッテリ4からの電力によるジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2のパラレル運転モード時の発生トルクの特性によって、予め設定された所定の車速Vを境に、気筒休止運転、全気筒運転、それらにジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2の少なくとも一方を内燃機関Eにアシストさせる運転モードに切換制御されるようになっている。
例えば、図3における車速V〜Vの領域Aは、内燃機関Eを休筒運転し、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2ともアシスト作動しない状態で走行する「休筒ロックアップ」モードである。
【0059】
車速V〜Vの領域B1は、領域Aより駆動力が大きくて車速範囲の低い側であるが、前記「休筒ロックアップ」モードに、駆動用モータGM2によるアシストと、休筒運転による内燃機関Eの振動を抑制する制振装置19をジェネレータモータGM1の発電電力で作動させることを組み合わせた「休筒ロックアップ+駆動用モータアシスト+ACM」モードである。内燃機関Eへの要求トルクによっては、全筒運転で、ジェネレータモータGM1、駆動用モータGM2とも作動させない「全筒ロックアップ」モードとなる。
車速V〜Vの領域B2は、領域Aより駆動力が大きくて車速範囲の高い側であるが、前記「休筒ロックアップ」モードにジェネレータモータGM1によるアシストを組み合わせた「休筒ロックアップ+ジェネレータモータアシスト」モードである。内燃機関Eへの要求トルクによっては、全筒運転で、ジェネレータモータGM1、駆動用モータGM2とも作動させない「全筒ロックアップ」モードとなる。
【0060】
車速V〜Vの領域C1は、領域B1より駆動力が大きい場合であるが、前記「休筒ロックアップ+駆動用モータアシスト+ACM」モードである。
車速V〜Vの領域C2は、領域B2より駆動力が大きい場合であるが、前記「全筒ロックアップ」モードとなる。
車速V〜Vの領域D1は、領域C1より駆動力が大きい場合であるが、前記「全筒ロックアップ」モードに駆動用モータGM2のアシストを組み合わせた「全筒ロックアップ+駆動用モータアシスト」モードである。
車速V〜Vの領域D2は、領域C2より駆動力が大きい場合であるが、前記「全筒ロックアップ」モードにジェネレータモータGM1のアシストを組み合わせた「全筒ロックアップ+ジェネレータモータアシスト」モードである。
そして、前記した領域外の、車速0から最高速度Vmaxまでの駆動用モータの最大出力特性曲線cより下側の白地の領域SRがシリーズ運転モードの領域である。
【0061】
本実施の形態によるハイブリッド車両50の制御装置1は上記構成を備えており、クルーズコントロールの制御時における内燃機関Eの全筒運転と休筒運転との切換を行なう気筒休止制御部59bにおける処理については、本願出願人の出願にかかる特開2005−42699号公報の図3から図9および段落0041から段落0069に詳細に記載されているので省略する。
前記の特開2005−42699号公報記載のような休筒運転と全筒運転の切換制御を行なうことによって、車速VPだけによって休筒運転と全筒運転の切換制御を行なう場合にハンチングを生じて、クルーズコントロールの制御時に乗員に違和感を生じさせることが防止できる。また、休筒運転時間を長くすることによる燃費効率の向上が得られる。
【0062】
(パラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御)
次に、図4から図6を参照しながら本実施の形態の特徴であるクルーズコントロールの制御時のパラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御の方法について説明する。図4および図5は、クルーズコントロールの制御時のパラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御の流れを示すフローチャートであり、図6は定速走行時における車速VP、C/C要求トルク、HEV側およびC/C側のフラグ値、ロックアップクラッチの状態およびハイブリッド車両50の走行路の勾配の時間変化の一例を示すグラフである。
この制御は、主にC/C制御部53とパラレル/シリーズ切換制御部59aにおいて処理される。前記したC/C制御部53から出力されるC/C要求トルクに対する第2トルク選択部55における小さい方のトルク値の選択および第1加算部56における加算は、ここでのパラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御の本質的な部分ではないので、説明を単純化するため無視する。
【0063】
ここでは、運転者がハイブリッド車両50を、パラレル運転モードで走行中に所定のセット車速VCに設定して、その車速で定速走行するようにハイブリッド・マネジメントECU36を設定して走行している状態であると仮定する。そして、前記したトルク・パワー・マネジメント部43のC/C制御部がC/C要求トルクを算出してパラレル/シリーズ切換制御部59aに入力している。
また、制御装置1は、図1に示した各種センサ以外に、図示しないハイブリッド車両50の加速度を検出する加速度センサ、ハイブリッド車両50が走行している道路の勾配を車体の姿勢変化から検出する勾配センサを備え、ハイブリッド・マネジメントECU36に各センサの検出信号が入力されている。ハイブリッド・マネジメントECU36におけるこの制御は、所定の時間周期の繰り返し処理で行われている。
例えば、図6の下から2つ目の走行道路の勾配の時間変化を示した曲線例のように、平坦道路を定速走行中に、地点Pから地点Pまでの上り道路が存在し、その後、地点Pから地点Pまで平坦道路が続き、さらに地点Pから地点Pまでの上り道路の後、平坦道路が続くとすると、車速VPはセット車速VCから落ち始め、予め設定した車速偏差の制限値ΔV、例えば、3km/hに近づいていくとする。
【0064】
ステップS101では、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、車速VPに応じたロックアップクラッチ上限トルク(ヒスHi)およびロックアップクラッチ上限トルク(ヒスLow)の値を算出する(図4中では「LC上限トルク(ヒスHi)」および「LC上限トルク(ヒスLow)」と表示)。
ここで、ロックアップクラッチ上限トルクとは、ロックアップクラッチ(図4、図5ではLCと表示)21を接続した状態で、車速VPに応じた内燃機関Eの可能な最大駆動力(出力可能なエンジントルクの上限値)と、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2の少なくとも一方の駆動力を内燃機関Eにアシスト作動させるときの、出力可能なモータトルク(出力可能なモータトルクの上限値)を加算したものである。
【0065】
パラレル/シリーズ切換制御部59aは、エネルギ・マネジメント部45からの充放電制限電力量および、高圧電装系ECU35からのバッテリ保護制限電力、ジェネレータモータ巻線保護制限トルクおよび駆動用モータ巻線保護制限トルクからジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2の出力可能な各モータトルクの上限値である第1および第2のモータ制限トルクを算出しているので、巻線保護制限トルクやバッテリ保護制限電力を考えなければ、車速VPによって基本的に決まる図3の曲線dの駆動力をクランク端トルクに換算したものが、前記したLC上限トルクのヒステリシス特性を持たせたHi値(図4、図5でヒスHiと表示)である。また、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、前記算出したLC上限トルク(ヒスHi)の値から所定値減じた値をLC上限トルク(ヒスLow)(ヒステリシスを有するロックアップ上限トルクの低ロックアップ上限トルク)とする。
【0066】
ステップS102では、C/C制御部53は、車速VPとセット車速VCとの車速偏差ΔV、加速度、勾配、繰り返し計算の前回設定したパワープラントトルクに対する要求トルクであるC/C要求トルク(C/C要求トルク前回値)からC/C目標トルクを算出する。ここで、C/C要求トルクは、C/C制御部53が第1トルク選択部52へ出力したパワープラントトルクに対するトルク値であり、C/C目標トルクはC/C要求トルクを設定するための基になる算出されたパワープラントトルクに対するトルク値である。
ステップS103では、C/C制御部53は、ロックアップクラッチ21が接続状態(LC−ON)か否かをチェックする。LC−ONの場合(Yes)はステップS104へ進み、ロックアップクラッチ21が切断状態(LC−OFF)の場合(No)は、ステップS118へ進む。
【0067】
ステップS104では、C/C制御部53は、C/C目標トルクがステップS101にて算出されたLC上限トルク(ヒスHi)以上か否かをチェックする。C/C目標トルクが前記LC上限トルク(ヒスHi)以上の場合(Yes)は、ステップS111へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS105へ進む。定速走行状態を開始した最初の段階では、道路の起伏の変化は小さいので、車速VPはセット車速VCと略同じであり、C/C目標トルクがLC上限トルク(ヒスHi)以上になることはないので、ステップS105へ進む。
【0068】
ステップS105では、C/C制御部53は、ステップS102において算出されたC/C目標トルクをC/C要求トルクとして(C/C要求トルク=C/C目標トルク)、第1トルク選択部52、第2トルク選択部55および第1加算部56を介して、トルク配分算出部58およびパラレル/シリーズ切換制御部59aに出力する。ステップS106では、C/C制御部53は、C/C側LC−OFF要求フラグF_CCLC−OFF=0とする。このフラグは、「0」のときロックアップクラッチ21の接続状態を要求し、「1」のときロックアップクラッチ21の切断状態を要求するフラグである。
【0069】
ステップS107では、C/C制御部53は、HEV側LC−OFF判定フラグF_HEVLC−OFF=0とする。このフラグは、C/C制御部53における繰り返し処理によって、ロックアップクラッチが切断状態になって、シリーズ運転モードによる定速走行を行なっている状態において、算出されたC/C要求トルクの値が、所定のトルク、例えば、LC上限トルク(ヒスLow)以下の場合、F_HEVLC−OFF=0とし、算出されたC/C要求トルクの値が、所定のトルク、例えば、LC上限トルク(ヒスLow)を超える場合、F_HEVLC−OFF=1とし、「0」のときロックアップクラッチ21の接続状態を要求し、「1」のときロックアップクラッチ21の切断状態を要求するフラグである。ロックアップクラッチ21が接続状態の場合は、当然、HEV側LC−OFF判定フラグF_HEVLC−OFF=0である。
これらのC/C側LC−OFF要求フラグF_CCLC−OFFおよびHEV側LC−OFF判定フラグF_HEVLC−OFFの値は、C/C制御部53からパラレル/シリーズ切換制御部59aに出力される。
【0070】
ステップS108では、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、F_HEVLC−OFF=0か否かをチェックする。F_HEVLC−OFF=0の場合(Yes)はステップS109へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS117へ進む。ここでは、ステップS107においてF_HEVLC−OFF=0なので、ステップS109へ進む。
ステップS109では、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、F_CCLC−OFF=0か否かをチェックする。F_CCLC−OFF=0の場合(Yes)はステップS110へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS117へ進む。ここでは、ステップS106においてF_CCLC−OFF=0なので、ステップS110へ進む。
ステップS110では、パラレル/シリーズ切換制御部59aは、ロックアップクラッチ21を接続状態継続として、次の繰り返し処理に戻る。
【0071】
図6の地点Pに近づくに従って、最上段の曲線に示すように、ハイブリッド車両50の車速VPは低下して車速偏差ΔVが制限値ΔVに近づく。また、その下に示すC/C要求トルクは、地点Pを通過後増加して、地点P通過後、LC上限トルク(ヒスHi)に張り付く制御を受けている。
この一連の繰り返し処理で、ステップS104において、ステップS102で算出されたC/C目標トルクが、車速VPをセット車速VCに維持しようと増加され、ステップS101にて算出されたLC上限トルク(ヒスHi)以上になる。その場合(Yes)は、ステップS111へ進み、C/C制御部53において、VC−VP(ΔV)がΔV以下か否かをチェックする。ΔV以下の場合(Yes)は、ステップS112へ進み、そうでない場合は、ステップS113へ進む。
ステップS112では、C/C制御部53は、LC上限トルク(ヒスHi)をC/C要求トルクとして[C/C要求トルク=LC上限トルク(ヒスHi)]、ステップS106へ移行する。その後、S107〜S110と進み、次の繰り返し処理に戻る。
【0072】
なお、C/C制御においてパラレル運転モードの状態の場合、C/C制御部53は前記したLC上限トルク(ヒスHi)の値に所定トルクを加算した「C/C中の上限要求トルク」(図6参照)の値を算出して第1のトルク選択部52へ出力するようにする。第1のトルク選択部52は、ドライバ要求トルク算出部51からのドライバ要求トルクが、前記の「C/C中の上限要求トルク」の値を超えた場合は、ドライバ要求トルクを第2トルク選択部55へ出力する。
このようにすることによって、ステップS112の処理がなされているときに、運転者がアクセルペダルを操作してドライバ要求トルクが「C/C中の上限要求トルク」を超えたとき、第2トルク選択部55に入力される要求トルクはLC上限トルク(ヒスHi)に固定されず、この時点でシリーズ運転モードに切り換わって、運転者の加速意思が優先される。
【0073】
この一連の繰り返し処理で、ステップS111において、VC−VPがΔVより大きい場合(No)は、ステップS113へ進み、C/C制御部53は、C/C側LC−OFF要求フラグF_CCLC−OFF=1とし、ステップS114でタイマTをスタートさせ、ステップS115でタイマTをスタートさせる。ここで、タイマTの後記する設定値TLBはタイマTの後記する設定値TLAより大きい値である。
その後、ステップS116では、C/C制御部53は、C/C要求トルク=LC上限トルク(ヒスHi)として、ステップS107へ進む。次のステップS108ではF_HEVLC−OFF=0(Yes)なのでS109へ進む。そして、F_CCLC−OFF=1(S109、No)なのでS117へ進み、ステップS117において、パラレル/シリーズ切換制御部59aが、ロックアップクラッチ21を切断状態(LC−OFF)にして、つまり、LC油圧制御部47に油圧低下を指令し、次の繰り返し処理に戻る。
ステップS117における状態は、図6における地点Pを通過時の状態であり、車速VPがセット車速−3km/hを割り込み、C/C側LC−OFF要求フラグが「1」の状態となり、ロックアップクラッチ21が切断状態(LC−OFF)となり、それまでのパラレル運転モードからシリーズ運転モードに切り替わったタイミングである。
【0074】
この一連の繰り返し処理で、ステップS103において、ロックアップクラッチ21が切断状態の場合(No)は、ステップS118へ進み、C/C制御部53は、タイマTが設定値TLA(第1の所定時間)以上か否かをチェックする。タイマTが設定値TLA未満の場合(No)はステップS116に移行する。その後、S107、S108、S109、S117へと進み、次の繰り返し処理に戻る。
ステップS114では、タイマTがスタートし、タイマTが設定値TLA未満の間、つまり、地点Pから地点Pまでの間、C/C要求トルクをLC上限トルク(ヒスHi)にホールドして、シリーズ運転モードに切り換わった直後の急激なトルク変動が発生すること、つまり加速ショックを防止する。
【0075】
この一連の繰り返し処理で、ステップS118においてタイマTが設定値TLA以上の場合(Yes)はステップS119へ進み、C/C制御部53は、タイマTをリセットし、ステップS120において、タイマTが設定値TLB(第2の所定時間)以上か否かをチェックする。タイマTが設定値TLB未満の場合(No)はステップS121へ進み、C/C制御部53は、C/C要求トルク=C/C目標トルクとする。その後、ステップS122において、C/C制御部53は、ステップS121で設定されたC/C要求トルクがステップS101にて算出されたLC上限トルク(ヒスLow)を超えているか否かをチェックする。
この場合は、図6において地点Pを通過しても、C/C要求トルクはLC上限トルク(ヒスLow)より大きいので(S122、Yes)、ステップS123へ進み、HEV側LC−OFF判定フラグF_HEVLC−OFF=1として、S108、S117へと進み、次の繰り返し処理に戻る。
【0076】
この一連の繰り返し処理で、図6において地点Pを通過すると、ステップS122において、C/C要求トルクが前記LC上限トルク(ヒスLow)以下まで下がった場合(No)となり、ステップS107へ進む。その後、S108、S109、S117へと進み、次の繰り返し処理に戻る。
【0077】
この一連の繰り返し処理で、ステップS120において、タイマTが設定値TLB以上の場合(Yes)はステップS124へ進み、C/C制御部53は、タイマTをリセットし、ステップS125において、C/C側LC−OFF要求フラグF_CCLC−OFF=0とし、ステップS121へ移行する。その後、S122、S107、S108、S109、S110へと進み、ステップS110において、ロックアップクラッチ21を接続状態(LC−ON)とする。つまり、パラレル/シリーズ切換制御部59aがLC油圧制御部47に油圧増加および保持を指令する。
ステップS120、S124、S125、S121、S122、S123、S108〜S110は、図6における地点P通過の状態に対応し、C/C要求トルクがLC上限トルク(ヒスLow)以下となって(S122、No)、HEV側LC−OFF判定フラグF_HEVLC−OFF=0となっても、タイマTが設定値TLB以上になった時点で、初めて、ロックアップクラッチ21を接続状態に戻し、シリーズ運転モードからパラレル運転モードに切り換えることを示している。
【0078】
なお、ステップS122の判定条件を前記のステップS121で設定されたC/C要求トルクが前記LC上限トルク(ヒスLow)を超えているか否かだけでなく、同時に車速VPがセット車速VCを中心値とした所定幅のセット車速ウインドW内に入っているか否かをアンド条件で加えても良い。
【0079】
以上により、パラレル運転モードでC/C制御をしている場合に、パラレル運転モードにおいて出力可能なLC上限トルク(ヒスHi)を超えるようなC/C要求トルクとなって、シリーズ運転モードに切り換え、再びパラレル運転モードに戻す一連の制御が終了する。
なお、本実施の形態におけるC/C制御部53におけるフローチャートのステップS101は、本発明の上限エンジントルク算出手段と上限モータトルク算出手段を、ステップS112は、トルク制限手段を構成する。
【0080】
《実施の形態の効果》
以上のように本実施の形態によれば、パラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態において、パワープラントトルクに対する目標トルクが、例えば、車速VPに応じた内燃機関Eの出力可能なエンジントルクとジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2の少なくとも一方のアシスト作動時の出力可能トルクとを加算した値であるLC上限トルク(ヒスHi)を超えた場合であっても、パワープラントトルクに対する要求トルクをLC上限トルク(ヒスHi)に制限し、ハイブリッド車両50の乗員に違和感を与えることがない程度の減速を許容することによって、ロックアップ状態を継続させ、パラレル運転モードからシリーズ運転モードへと切り換えるタイミングを遅延させることによって燃費効率を向上させることができる。
【0081】
さらに、車速VPがセット車速VCより車速偏差の上限値ΔVを超えて減速した場合に、パラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態からシリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換わり、タイマTにより所定時間C/C要求トルクをLC上限トルク(ヒスHi)を超えないように保持するので、モード切り換わり直後の急激なトルク変動が防止でき、乗員に違和感を与える加速を防止できる。
【0082】
さらに、シリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態において、車速VPがセット車速VCのセット車速ウインドW内に入り、かつ、C/C要求トルクがLC上限トルク(ヒスLow)以下でパラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換えられるので、シリーズ運転モードとパラレル運転モードの頻繁な切換のハンチングを生じない。
【0083】
さらに、シリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態において、車速VPがセット車速VCのセット車速ウインドW内に入り、C/C要求トルクがLC上限トルク(ヒスLow)以下で十分安定してからパラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換えられるので、車速偏差を打ち消すようにC/C要求トルクを出力した後に、実際に駆動輪DWに駆動力が出力されるまでの時間遅れによる、図6の車速VPおよびC/C要求トルクの曲線に破線で示したような車速およびC/C要求トルクの揺らぎが防止でき、シリーズ運転モードからパラレル運転モードに切り換わり後の、クルーズコントロールの制御による走行状態が安定になる。
【0084】
さらに、パラレル運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態からシリーズ運転モードにおけるクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換わった後は、パラレル運転モードにおける車速VPに応じて設定していたLC上限トルク(ヒスHi)のC/C要求トルクの制限が外れるので、セット車速VCに追随するようにC/C要求トルクが設定でき、クルーズコントロールの制御が十分機能する。
また、本実施の形態によれば、LC上限トルクの算出、ジェネレータモータGM1および駆動用モータGM2のモータ要求トルク等をクランク端トルクで算出して、一元的に処理しているので、第1トルク選択部52、第2トルク選択部55、第1加算部56等での演算処理が簡単になる。
なお、クランク端トルクに統一する代わりに、駆動輪DWの駆動力に統一して演算処理するようにしても良い。
【0085】
本実施の形態では、タイマTを車速VPがセット車速VCより車速偏差の上限値ΔVを超えて下回ったときに経時をスタートさせることとしたが、それに限定されるものではない。例えば、パラレル運転モードのクルーズコントロールの制御による走行状態からシリーズ運転モードのクルーズコントロールの制御による走行状態に移行後、車速VPがセット車速VCのセット車速ウインドW内に入ったときにタイマTの経時をスタートさせても良いし、C/C要求トルクがLC上限トルク(ヒスLow)を下回ったときにタイマTの経時をスタートさせても良い。
さらに、タイマTを設定してC/C要求トルクの安定を判定してシリーズ運転モードのクルーズコントロールの制御による走行状態からパラレル運転モードのクルーズコントロールの制御による走行状態に切り換える代わりに、C/C要求トルクがLC上限トルク(ヒスLow)を下回った後の、所定時間内のC/C要求トルクの移動平均を監視して、その移動平均の時間変化が所定値以内であることを判定して、切り換えることとしても良い。
【0086】
以上の説明では、本実施の形態における定速走行制御を例に取り説明したが、先行車両に対して所定車間距離を維持した状態で追従する追従走行制御にも適用できる。その場合は、車速VPおよびセット車速VCの代わりにそれぞれ車間距離およびセット車間距離を用いて、C/C制御部53において、車間距離およびセット車間距離の偏差を打ち消すように目標車速を算出し、その目標車速になるようにC/C要求トルクを算出すれば、その後の制御は、前記の定速制御の場合の考え方を応用して容易に行なうことができる。
【0087】
また、以上の実施の形態の説明では、図1に示したような減速機RGを例に本ハイブリッド車両の制御装置1の説明を行なったが、減速機RGの構成はそれに限定されるものではなく、他の構成の減速機でも良い。例えば、図3に示した駆動特性に近い第1の伝達経路および第2の伝達経路の減速機を適用したハイブリッド車両であれば、前記した効果と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置およびそれを搭載したハイブリッド車両の構成図である。
【図2】実施の形態のハイブリッド車両の制御装置の機能ブロック図である。
【図3】ハイブリッド車両の駆動力特性図と運転モードの切換を説明する図である。
【図4】クルーズコントロールの制御時のパラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御の処理を示すフローチャートである。
【図5】クルーズコントロールの制御時のパラレル運転モードとシリーズ運転モードの切換制御の処理を示すフローチャートである。
【図6】定速走行時における車速VP、C/C要求トルク、HEV側およびC/C側のフラグ値、ロックアップクラッチの状態および車両の走行路の勾配の時間変化の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
1 制御装置
2A、2B パワードライブユニット
3 バッテリ
4 補助バッテリ
5 ダウンバータ
21 ロックアップクラッチ(ロックアップ手段)
22 エンジン出力ギア
23 オーバドライブギア
23a、24a アイドル軸
24 ファイナルドライブギア
25 ファイナルドリブンギア
26 モータギア
26a モータ軸
27 アイドルギア
33 モータECU
35 高圧電装系ECU
45 エネルギ・マネジメント部
47 ロックアップクラッチ油圧制御部
50 ハイブリッド車両
51 ドライバ要求トルク算出部
53 クルーズコントロール制御部(クルーズコントロール手段)
58 トルク配分算出部
59 モード切換制御部
59a パラレル/シリーズ切換制御部
59b 気筒休止制御部
DEF ディファレンシャルギア
E 内燃機関
ES クランク軸
GM1 ジェネレータモータ
GM2 駆動用モータ
DW 駆動輪
ES クランク軸
PS ロータ軸
RG 減速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の駆動力を、駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、駆動用モータの駆動力を、前記駆動輪へ伝達する第2の伝達経路とを備え、これを択一的に選択または併用して走行するハイブリッド車両の制御装置であって、
車両の運転状態に応じて、前記第2の伝達経路を用いた走行と、前記第1の伝達経路を用いた走行と、を切り換えるロックアップ手段と、
少なくとも、車両の速度を所定の目標速度に追従させるように車両を走行駆動させる要求トルクを設定してクルーズコントロールの制御を行なう、または前記車両を先行車両に対して所定の車間距離を維持して走行させる要求トルクを設定してクルーズコントロールの制御を行なう、いずれか一方の制御を行なうクルーズコントロール手段と、
前記第1の伝達経路を用いた運転時に、前記内燃機関から出力可能なエンジントルクの上限値を算出する上限エンジントルク算出手段と、
前記内燃機関の出力を、前記駆動用モータにより補助するアシスト動作時に、前記駆動用モータから出力可能なモータトルクの上限値を算出する上限モータトルク算出手段と、
前記ロックアップ手段および前記クルーズコントロール手段の作動時に、前記内燃機関と前記駆動用モータとからなるパワープラントから出力可能なパワープラントトルクに対する要求トルクを、前記エンジントルクの上限値と前記モータトルクの上限値とを加算して得たロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下に制限するトルク制限手段と、を備え、
前記クルーズコントロール手段は、前記トルク制限手段の作動時に、前記ロックアップ上限トルクに係る所定トルクにもとづき前記要求トルクを設定し、
前記車両の速度が前記目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下したときに、ロックアップ手段によるロックアップを解除して、前記第2の伝達経路を用いた走行を行なわせることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記トルク制限手段の作動時に、前記車両の速度が前記目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下したときに、前記ロックアップ手段によるロックアップを解除する時点で、前記ロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下の要求トルクに第1の所定時間維持させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記第2の伝達経路を用いた走行時に、前記車両の速度が前記目標速度から所定速度を減算して得た速度以上となり、前記要求トルクがヒステリシスを有する前記ロックアップ上限トルクの低ロックアップ上限トルク以下となった後に、前記ロックアップ手段を作動させて前記第1の伝達経路を用いた走行へ切り換えることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記要求トルクが低ロックアップ上限トルク以下となり、かつ、第2の所定時間が経過した後に、第1の伝達経路を用いた走行へ切り換えることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記トルク制限手段の作動時に、前記車両の速度が前記目標速度から所定速度を減算して得た速度以下に低下したときに、前記ロックアップ手段によるロックアップを解除する時点で、前記ロックアップ上限トルクに係る所定トルクと同等の値以下の要求トルクに所定期間維持させ、
その後、前記クルーズコントロール手段は、前記車両の速度を所定の目標速度に追従させるようにして車両を走行駆動させる前記要求トルク、または前記車両を先行車両に対して所定の車間距離を維持して走行させる前記要求トルクを、第2の伝達経路を用いた走行状態に対して設定してクルーズコントロールの制御をすることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−62894(P2008−62894A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245776(P2006−245776)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】