ハイブリッド車両
【課題】 蓄電装置の残容量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、蓄電装置の損傷を発生させないように変速又はプレシフトをして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】 制御手段21a1は、蓄電池1の蓄電量が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合に、モータMGを停止して、第1クラッチC1又は第1噛合機構SM1の摩擦力によって第1入力軸34の回転数を第1入力軸34の駆動ギアの回転数に近づける、或いは、第1入力軸34の回転抵抗力によって第1入力軸34の回転数を低下させることにより、第1入力軸34の回転数と第1入力軸34の駆動ギアの回転数との差を所定値以下にしてから、第1噛合機構SM1によって第1入力軸34の駆動ギアを第1入力軸34に連結するように制御する。
【解決手段】 制御手段21a1は、蓄電池1の蓄電量が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合に、モータMGを停止して、第1クラッチC1又は第1噛合機構SM1の摩擦力によって第1入力軸34の回転数を第1入力軸34の駆動ギアの回転数に近づける、或いは、第1入力軸34の回転抵抗力によって第1入力軸34の回転数を低下させることにより、第1入力軸34の回転数と第1入力軸34の駆動ギアの回転数との差を所定値以下にしてから、第1噛合機構SM1によって第1入力軸34の駆動ギアを第1入力軸34に連結するように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、電動機及び自動変速機を備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)とモータ(電動機)とを駆動源とし、2つの入力軸を備えたデュアルクラッチ式自動有段変速機の片方の入力軸に電動機が接続されたハイブリッド車両が知られている(特許文献1)。
【0003】
このハイブリッド車両では、モータを駆動又は回生することによって、モータが接続された入力軸の回転数と変速機の出力軸を介して入力軸に伝達される回転数との差を所定の値以下にして(以下、「回転数合わせ」という)から、モータが接続された入力軸の変速段の切り替えを行なうことで、クラッチの摩耗を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータの電源である蓄電装置の蓄電量によっては、モータによる回転数合わせを行なうことによって、蓄電装置が損傷する可能性がある。例えば、蓄電量が上限に近いときには、回転数を下げるためにモータを回生すると、蓄電装置の蓄電量が増加することで蓄電装置の過充電により蓄電装置が損傷する可能性がある。また、蓄電量が下限に近いときには、回転数を上げるためにモータを駆動すると、蓄電装置の蓄電量が減ることで蓄電装置の過放電により蓄電装置が損傷する可能性がある。
【0006】
上記の特許文献1には、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いときの回転数合わせに関して開示されていない。
【0007】
そこで、本発明では、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、蓄電装置の損傷を発生させないようにプレシフト又は変速をして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であって、
前記内燃機関及び前記電動機から入力された駆動力を変速して出力する変速機と、
前記電動機に給電するための蓄電装置と、
前記蓄電装置の蓄電量に応じて、前記変速機、前記内燃機関及び前記電動機を制御する制御手段とを備え、
前記変速機は、
前記電動機の駆動力及び前記内燃機関の駆動力が入力される第1入力軸と、
前記内燃機関の駆動力が入力される第2入力軸と、
前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を変速するための複数の駆動ギア(G3a、G5a、G7a又はG2a、G4a、G6a)と、
前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と噛合する複数の従動ギア(Go1、Go2、Go3)が固定され、前記駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とを介して変速された駆動力を出力する出力軸と、
前記内燃機関の駆動力の全部を前記第1入力軸に伝達する伝達状態、前記内燃機関の駆動力の一部を摩擦力により前記第1入力軸に伝達する伝達過渡状態、及び伝達しない開放状態を有する第1伝達手段と、
前記内燃機関の駆動力を前記第2入力軸に伝達する伝達状態、及び伝達しない開放状態を有する第2伝達手段と、
前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の全部を前記出力軸に伝達する伝達状態、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の一部を摩擦力により前記出力軸に伝達する伝達過渡状態、及び前記第1入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第3伝達手段と、
前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のいずれか1つを選択的に前記第2入力軸に連結することで、前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達する伝達状態、及び前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第4伝達手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を伝達状態として、前記第2入力軸に入力された前記内燃機関の駆動力により前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)を介して前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)が回転駆動しているときに、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つの駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するとき、
前記蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合には、前記第1入力軸の回転数が前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数になるように前記電動機を作動して、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第1の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とし、
前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記電動機の作動を停止し、前記第1伝達手段又は前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけること、或いは、前記第1入力軸の回転抵抗力によって前記第1入力軸の回転数が低下することにより、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とすることを特徴とする(第1発明)。
【0009】
本発明によれば、制御手段は次のように動作する。
【0010】
まず、第1及び第3伝達手段を開放状態、第2及び第4伝達手段を伝達状態として、第2入力軸に入力された内燃機関の駆動力により出力軸に固定された従動ギア(Go1、Go2、Go3)を介して第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)が回転しているときに、該駆動ギアのいずれか1つ(G3a、G5a又はG7a)を第1入力軸に連結するとき、
蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合には、第1入力軸の回転数が第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数になるように電動機を作動させる。そして、第1入力軸の回転数と第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第1の所定値以下になったとき、第3伝達手段を伝達状態として第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結する。
【0011】
上記のように電動機を作動させる、すなわち、電動機に給電することで回転数を増加させ、或いは回生発電させて回転数を減少させることにより、第1入力軸の回転数と第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差を第1の所定値以下にしてから、第3伝達手段を伝達状態にすることで、第3伝達手段の摩耗が抑えられる。
【0012】
また、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合には、電動機を停止して、第1伝達手段又は第3伝達手段を伝達過渡状態にしたときに発生する摩擦力によって第1入力軸の回転数を第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけること、或いは、第1入力軸の回転抵抗力によって第1入力軸の回転数を低下することにより、第1入力軸の回転数と第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、第3伝達手段を伝達状態として第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結する。このとき、第1伝達手段が開放状態のままであればプレシフトとなり、第1伝達手段を伝達状態且つ第2伝達手段を開放状態とすれば変速段の切り替え(変速)となる。
【0013】
これにより、蓄電装置の過放電又は過充電の発生を抑えるために電動機を停止しているときでも、蓄電装置が損傷しないようにプレシフト又は変速することを可能にしている。
【0014】
従って、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、蓄電装置の損傷を発生させないようにプレシフト又は変速することができ、走行に影響を与えないハイブリッド車両が実現される。
【0015】
上記第1発明において、前記制御手段は、前記第1入力軸に連結する駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は前記第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えを、当該車両の駆動力を決定する変数の値に応じて行なうものであり、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)は、前記変数の値が増大して第1閾値以上になったとき切り替えられ、前記変数の値が減少して、前記第1閾値より小さい第2閾値以下になったとき、前記第1閾値以上になる前の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)に切り替えられ、前記第1伝達手段は、前記変数の値が増大して第3閾値以上になったとき、伝達状態から開放状態へ切り替えられ、前記第3閾値以上になる前に前記第1入力軸に連結されていた前記駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)と同じ駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が前記第1入力軸に連結されている場合に、前記変数の値が減少して前記第3閾値より小さい第4閾値以下になったとき、開放状態から伝達状態へ切り替えられ、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも、前記第1閾値と前記第2閾値との差及び前記第3閾値と前記第4閾値との差を共に大きくすることが好ましい(第2発明)。
【0016】
これによれば、制御手段は、第1入力軸に連結する駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えを、当該車両の駆動力を決定する変数(例えば、車両の走行速度、要求駆動力、電動機の効率又は電動機の発熱量)の値に応じて行なう。
【0017】
変数の値が増大して第1閾値以上になったとき、第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が切り替えられ、変数の値が減少して、第1閾値より小さい第2閾値以下になったとき、第1閾値以上になる前の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)に切り替えられる。
【0018】
更に、変数の値が増大して第3閾値以上になったとき、第1伝達手段が伝達状態から開放状態へ切り替えられる。第3閾値以上になる前に第1入力軸に連結されていた駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)と同じ駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が第1入力軸に連結されている場合に、変数の値が減少して、第3閾値より小さい第4閾値以下になったとき、第1伝達手段が開放状態から伝達状態へ切り替えられる。
【0019】
このようにして、当該車両の駆動力を決定する変数の値が、第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えが発生する境界点付近にあるときに、変数の値の多少の変動によって切り替えが頻繁に発生することを抑制している。
【0020】
更に、蓄電装置の蓄電量が、所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合には、蓄電装置の蓄電量が、所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合のときよりも、第1閾値と第2閾値との差を大きくし、第3閾値と第4閾値との差を大きくしている。
【0021】
これによって、電動機による回転数合わせができないときに、第1入力軸と第1入力軸の駆動ギアとの回転数合わせを行なう頻度を下げ、第1伝達手段又は第3伝達手段の摩耗を抑えることができる。
【0022】
上記第1発明又は第2発明において、前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)は、前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)と噛合うことで決定される変速比の大きさの順に、前記第1入力軸と前記第2入力軸とに交互に配置され、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のうち前記変速比の大きさの順に隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とが噛合うことで決定される2つの変速比の間の変速比を、前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)及び前記隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)のうちいずれか1つの駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a又はG6a)を介して、前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、前記2つの変速比の間の変速比を前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にしていることが好ましい(第3発明)。
【0023】
これによれば、蓄電量が所定の下限値以下又は所定の上限値以上の場合には、制御手段は、第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のうち変速比の大きさの順に隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)と従動ギア(Go1、Go2、Go3)とが噛合うことで決定される2つの変速比の間の変速比を、従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)と、前記隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)とのいずれか1つの駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a又はG6a)を介して、第1入力軸又は第2入力軸に入力された駆動力を出力軸に伝達する。ここで、変速比とは出力トルクを入力トルクで除算することによって得られる比である。
【0024】
このとき、制御手段は、前記2つの変速比の間の変速比を前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)を選択するように第3伝達手段を伝達状態にしている。
【0025】
従って、第3伝達手段によって第1入力軸の駆動ギアを第1入力軸に連結した状態が維持されることになり、第1入力軸と第1入力軸の駆動ギアとの回転数合わせを行なう頻度を下げ、第1伝達手段又は第3伝達手段の摩耗を抑えることができる。
【0026】
上記第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも前記第3伝達手段を開放状態から伝達過渡状態にするタイミングを早め、前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることが好ましい(第4発明)。
【0027】
これによれば、蓄電量が所定の下限値以下又は所定の上限値以上の場合には、制御手段は、第3伝達手段の伝達過渡状態における摩擦力によって、第1入力軸の回転数を第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づける。
【0028】
第3伝達手段の摩擦力によって回転数を近づけるため、電動機を作動させて回転数を近づけるときよりも時間がかかる。このため、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合には、蓄電装置の蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合に比べ、第3伝達手段を伝達過渡状態にするタイミングを早める。これによって、変速動作の遅れを抑制している。
【0029】
従って、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、第3伝達手段の摩擦力によって回転数合わせができ、更に走行に影響を与えないことができる。
【0030】
上記第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合に、現時点で前記第2入力軸に連結されている前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にし、且つ前記第1伝達手段を伝達状態にするときは、前記第1伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることが好ましい(第5発明)。
【0031】
これによれば、蓄電量が所定の下限値以下又は所定の上限値以上の場合に、現時点で第2入力軸に連結されている第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)と従動ギア(Go1、Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を従動ギア(Go1、Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にし、且つ第1伝達手段を伝達状態にするときは、第1伝達手段の伝達過渡状態(例えば、半クラッチ状態)における摩擦力によって、第1入力軸の回転数を第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づける。
【0032】
第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)を介して出力軸に駆動力を伝達しているときに、第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)より変速比の小さい第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数は、第2入力軸の回転数よりも低い。このとき、第2入力軸の回転数は内燃機関の回転数と等しい。
【0033】
従って、現時点で第2入力軸に連結されている第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)より変速比の小さい第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を第1入力軸に連結するときは、第1伝達手段を伝達過渡状態にすることによって、内燃機関の回転数よりも低い回転数に第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数を近づけることができる。
【0034】
これによって、第1入力軸の回転数を第1入力軸の駆動ギアの回転数に近づけるように第1伝達手段の伝達過渡状態の摩擦力を調整することで、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、第1伝達手段の摩擦力によって回転数合わせができる。
【0035】
上記第1発明から第5発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を伝達状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を開放状態として、前記第1入力軸の駆動ギアのうち変速比の大きい駆動ギア(G3a又はG5a)を介して変速された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段を伝達状態とし、前記伝達している駆動ギア(G3a又はG5a)と前記従動ギア(Go1又はGo2)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように前記第4伝達手段を伝達状態とした後に、前記選択された駆動ギア(G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するときに、前記第1伝達手段の開放により、前記第1入力軸の回転抵抗力によって減少していく前記第1入力軸の回転数と、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数との差が、前記第2の所定値以下になったとき、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にすることが好ましい(第6発明)。
【0036】
これによれば、制御手段は、第1入力軸のうち変速比の大きい駆動ギア(G3a又はG5a)から、当該駆動ギア(G3a又はG5a)より小さい変速比を前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように第4伝達手段を伝達状態とした後に、当該選択された駆動ギア(G4a又はG6a)と従動ギア(Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(Go5又はG7a)を第1入力軸に連結する。
【0037】
このときに、第1伝達手段の開放により、第1入力軸の回転抵抗力によって減少していく第1入力軸の回転数と、出力軸の従動ギア(Go2又はGo3)を介して回転している第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)を選択するように第3伝達手段を伝達状態にする。
【0038】
選択された第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように第4伝達手段を伝達状態にした直後は、第1入力軸の回転数と連結されていた第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)の回転数とは等しく、時間が経過するにつれ、第1入力軸の回転数は、第1入力軸の回転抵抗力によって回転数が減少していく。
【0039】
連結されていた第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)より第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の方が変速比が小さいため、出力軸の回転数が同じ場合には、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数は連結されていた第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)より低くなる。
【0040】
すなわち、第1伝達手段と第3伝達手段を開放状態にし、第2伝達手段を伝達状態にし、第4伝達手段を伝達状態にすることで選択された第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を第2入力軸に連結した直後は、第1入力軸の回転数は、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数より大きい。従って、この第1入力軸の回転数は、第1入力軸の回転抵抗力によって減少していくため、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数に近づいていく。
【0041】
このようにして、蓄電装置の蓄電量が上限値又は下限値に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、第1伝達手段又は第3伝達手段の摩耗を抑えるようにプレシフト又は変速ができる。
【0042】
上記第1発明から第6発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうこと、又は前記第1伝達手段を伝達状態のまま前記内燃機関を停止して前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうことが好ましい(第7発明)。
【0043】
これによれば、制御手段は、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上の場合には、蓄電装置の蓄電量を減少させるように電動機を動作させるために、電動機の駆動力のみによる走行を行なう。
【0044】
或いは、第1伝達手段を伝達状態のまま内燃機関を停止して電動機の駆動力のみによる走行を行なう。第1伝達手段が伝達状態のため、電動機は走行するための駆動力と停止した内燃機関を回転させる駆動力とを出力することになり、より多くの蓄電装置の蓄電量を消費することができる。
【0045】
従って、蓄電装置の蓄電量の上昇を抑え、蓄電装置の損傷を防止している。
【0046】
上記第7発明において、当該車両の車載機器の電源である第2蓄電装置を備え、前記第2蓄電装置は、前記制御手段による制御下で、前記蓄電装置から供給される電力によって充電可能に構成され、前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、前記第2蓄電装置に前記蓄電装置から電力を供給することが好ましい(第8発明)。
【0047】
これによれば、制御手段は、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上の場合には、第2蓄電装置に蓄電装置から電力を供給する。従って、蓄電装置の蓄電量の上昇を抑え、蓄電量を減少し、蓄電装置の損傷を防止している。
【0048】
上記第1発明から第8発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下の場合には、前記内燃機関の駆動力によって前記電動機を回転駆動させて前記蓄電装置を充電すること、当該車両の減速時に前記電動機の回生によって前記蓄電装置を充電すること、又は前記内燃機関の停止を禁止することが好ましい(第9発明)。
【0049】
これによれば、制御手段は、蓄電装置の蓄電量が所定の下限値以下の場合には、内燃機関の駆動力によって電動機を回転させる、すなわち電動機を回生させて蓄電装置を充電する。或いは、当該車両の減速時に電動機の回生によって減速させると共に蓄電装置を充電する。或いは、内燃機関を停止を禁止して、電動機の作動を停止する。従って、蓄電装置の蓄電量の減少を抑え、蓄電量を増加し、蓄電装置の損傷を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図。
【図2】2速段におけるエンジンの駆動力の伝達経路を示す図。
【図3】2速段における3速段プレシフト時のエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図4】3速段におけるエンジンの駆動力の伝達経路を示す図。
【図5】3速段におけるエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図6】4速段におけるエンジンの駆動力の伝達経路を示す図。
【図7】4速段における3速段プレシフト時のエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図8】4速段における5速段プレシフト時のエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図9】蓄電池のSOCのゾーン分けを示す説明図。
【図10】蓄電池のSOCのゾーンに応じた減速回生の許可、制限又は禁止を示す表。
【図11】第1噛合機構SM1の摩擦力による回転数合わせのタイミングチャート。(a)第1噛合機構SM1の伝達状態の時間変化、(b)第1入力軸34及び3速駆動ギアG3aの時間変化。
【図12】第1入力軸34の回転数が回転抵抗によって自然降下する回転数合わせのタイミングチャート。
【図13】モータ出力不可時の車速及び要求駆動力とプレシフト及び変速との関係を示すマップの一例を示す図。
【図14】図1のECU21が実行する回転数制御の処理手順を示すフローチャート。
【図15】本発明の第2実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図。
【図16】図15のECU21が実行する回転数制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。図1に示すように、ハイブリッド車両は、エンジンからなる内燃機関ENG、電動機(モータ)MG、モータMGと電力を授受する二次電池からなる蓄電池1、当該車両の車載機器に対して電力を供給する12Vのバッテリ2、蓄電池1からバッテリ2へ電圧を変換して電力を供給するDC/DCコンバータ3、自動変速機31、及びエンジンENG、モータMG、自動変速機31、DC/DCコンバータ3の各部を制御する電子制御装置ECU(Electronic Control Unit)21を備える。
【0052】
ECU21は、各種演算処理を実行するCPU21aとこのCPU21aで実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果などを記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(メモリ)21bとを備え、各種電気信号を入力すると共に、演算結果などに基づいて駆動信号を外部に出力する。
【0053】
ECU21には、アクセルペダル(図示省略)の操作量を検知するアクセル開度センサ22の出力信号が供給される。アクセル開度センサ22の出力信号に応じて当該車両の加速要求を要求駆動力として検知している。
【0054】
第1実施形態では、ECU21のCPU21aが、本発明における制御手段21a1として機能する。
【0055】
自動変速機31は、エンジンENGの駆動力(出力トルク)が伝達されるエンジン出力軸32と、図外のディファレンシャルギアを介して駆動輪としての左右の前輪に動力を出力する出力ギアからなる出力部材33と、変速比の異なる複数のギア列G2〜G5とを備える。
【0056】
また、自動変速機31は、変速比順位で奇数番目の各変速段を確立する奇数番ギア列G3,G5の駆動ギアG3a,G5aを回転自在に軸支する第1入力軸34と、変速比順位で偶数番目の変速段を確立する偶数番ギア列G2,G4の駆動ギアG2a,G4aを回転自在に軸支する第2入力軸35と、リバースギアGRを回転自在に軸支するリバース軸36を備える。尚、第1入力軸34はエンジン出力軸32と同一軸線上に配置され、第2入力軸35及びリバース軸36は第1入力軸34と平行に配置されている。
【0057】
また、自動変速機31は、第1入力軸34に回転自在に軸支されたアイドル駆動ギアGiaと、アイドル軸37に固定されアイドル駆動ギアGiaに噛合する第1アイドル従動ギアGibと、第2入力軸35に固定された第2アイドル従動ギアGicと、リバース軸36に固定され第1アイドル従動ギアGibに噛合する第3アイドル従動ギアGidとで構成されるアイドルギア列Giを備える。尚、アイドル軸37は第1入力軸34と平行に配置されている。
【0058】
自動変速機31は、油圧作動型の乾式摩擦クラッチ又は湿式摩擦クラッチからなる第1クラッチC1及び第2クラッチC2を備える。第1クラッチC1は、エンジン出力軸32に伝達されたエンジンENGの駆動力を第1入力軸34に伝達度合いを変化させて伝達させることができる伝達状態と、この伝達を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第2クラッチC2は、エンジン出力軸32に伝達されたエンジンENGの駆動力を第2入力軸35に伝達度合いを変化させて伝達させることができる伝達状態と、この伝達を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第2クラッチC2を締結させて伝達状態とすると、エンジン出力軸32は第1アイドル従動ギアGib及び第2アイドル従動ギアGicを介して第2入力軸35に連結される。
【0059】
両クラッチC1,C2は、素早く状態が切り換えられるように電気式アクチュエータにより作動されるものであることが好ましい。尚、両クラッチC1,C2は、油圧式アクチュエータにより作動されるものであってもよい。
【0060】
また、自動変速機31には、エンジン出力軸32と同軸上に位置させて、差動回転機構である遊星歯車機構PGが配置されている。遊星歯車機構PGは、サンギアSaと、リングギアRaと、サンギアSa及びリングギアRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型で構成される。
【0061】
遊星歯車機構PGのサンギアSa、キャリアCa、リングギアRaからなる3つの回転要素を、速度線図(各回転要素の相対的な回転速度を直線で表すことができる図)におけるギア比に対応する間隔での並び順にサンギアSa側からそれぞれ第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素とすると、第1回転要素はサンギアSa、第2回転要素はキャリアCa、第3回転要素はリングギアRaとなる。
【0062】
そして、遊星歯車機構PGのギア比(リングギアRaの歯数/サンギアSaの歯数)をgとして、第1回転要素たるサンギアSaと第2回転要素たるキャリアCaの間の間隔と、第2回転要素たるキャリアCaと第3回転要素たるリングギアRaの間の間隔との比が、g:1となる。
【0063】
第1回転要素たるサンギアSaは、第1入力軸34に固定されている。第2回転要素たるキャリアCaは、3速ギア列G3の3速駆動ギアG3aに連結されている。第3回転要素たるリングギアRaは、ロック機構R1により変速機ケース等の不動部に解除自在に固定される。
【0064】
ロック機構R1は、リングギアRaが不動部に固定される固定状態、又はリングギアRaが回転自在な開放状態の何れかの状態に切換自在なシンクロメッシュ機構で構成されている。
【0065】
尚、ロック機構R1は、シンクロメッシュ機構に限らず、スリーブ等による摩擦係合解除機構の他、湿式多板ブレーキ、ハブブレーキ、バンドブレーキ等のブレーキや、ワンウェイクラッチ、2ウェイクラッチなどで構成してもよい。また、遊星歯車機構PGは、サンギアと、リングギアと、互いに噛合し一方がサンギア、他方がリングギアに噛合する一対のピニオンPa、Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなるダブルピニオン型で構成してもよい。この場合、例えば、サンギア(第1回転要素)を第1入力軸34に固定し、リングギア(第2回転要素)を3速ギア列G3の3速駆動ギアG3aに連結し、キャリア(第3回転要素)をロック機構R1で不動部に解除自在に固定するように構成すればよい。
【0066】
遊星歯車機構PGの径方向外方には、中空のモータMGが配置されている。換言すれば、遊星歯車機構PGは、中空のモータMGの内方に配置されている。モータMGは、ステータMGaとロータMGbとを備える。
【0067】
また、モータMGは、ECU21の指示信号に基づき、パワードライブユニットPDUを介して制御される。ECU21は、パワードライブユニットPDUを、蓄電池1の電力を消費してモータMGを駆動させる駆動状態と、ロータMGbの回転力を抑制させて発電し、発電した電力をパワードライブユニットPDUを介して蓄電池1に充電する回生状態とに適宜切り換える。
【0068】
バッテリ2は、当該車両の車載機器に対して電力を供給し、12Vの電圧を出力する。また、ECU21の制御信号によって、蓄電池1の電力がDC/DCコンバータ3を介してバッテリ2に充電が可能である。
【0069】
出力部材33を軸支する出力軸33aには、2速駆動ギアG2a及び3速駆動ギアG3aに噛合する第1従動ギアGo1が固定されている。出力軸33aには、4速駆動ギアG4a及び5速駆動ギアG5aに噛合する第2従動ギアGo2が固定されている。
【0070】
このように、2速ギア列G2と3速ギア列G3の従動ギア、及び4速ギア列G4と5速ギア列G5の従動ギアとをそれぞれ1つのギアGo1,Go2で構成することにより、自動変速機の軸長を短くすることができ、FF(前輪駆動)方式の車両への搭載性を向上させることができる。
【0071】
また、第1入力軸34には、リバースギアGRに噛合するリバース従動ギアGRaが固定されている。
【0072】
第1入力軸34には、シンクロメッシュ機構で構成され、3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態、5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、3速駆動ギアG3a及び5速駆動ギアG5aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切換選択自在な第3伝達手段である第1噛合機構SM1が設けられている。
【0073】
第2入力軸35には、シンクロメッシュ機構で構成され、2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結した2速側連結状態、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結した4速側連結状態、2速駆動ギアG2a及び4速駆動ギアG4aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切換選択自在な第4伝達手段である第2噛合機構SM2が設けられている。
【0074】
リバース軸36には、シンクロメッシュ機構で構成され、リバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態と、この連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切換選択自在な第3噛合機構SM3が設けられている。
【0075】
次に、上記のように構成された自動変速機31の作動について説明する。
【0076】
自動変速機31では、第1クラッチC1を係合させることにより、モータMGの駆動力を用いてエンジンENGを始動させるIMA始動を行うことができる。
【0077】
エンジンENGの駆動力を用いて1速段を確立する場合には、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とし、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。エンジンENGの駆動力のみによる走行をENG走行という。
【0078】
エンジンENGの駆動力は、エンジン出力軸32、第1クラッチC1、第1入力軸34を介して、遊星歯車機構PGのサンギアSaに入力され、エンジン出力軸32に入力されたエンジンENGの回転数が1/(g+1)に減速されて、キャリアCaを介し3速駆動ギアG3aに伝達される。
【0079】
3速駆動ギアG3aに伝達された駆動力は、3速駆動ギアG3a及び第1従動ギアGo1で構成される3速ギア列G3のギア比(3速駆動ギアG3aの歯数/第1従動ギアGo1の歯数)をiとして、1/i(g+1)に変速されて第1従動ギアGo1及び出力軸33aを介し出力部材33から出力され、1速段が確立される。
【0080】
このように、自動変速機31では、遊星歯車機構PG及び3速ギア列で1速段を確立できるため、1速段専用の噛合機構が必要なく、これにより、自動変速機の軸長の短縮化を図ることができる。
【0081】
尚、1速段において、車両が減速状態にあり、且つ蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、ECU21は、モータMGでブレーキをかけることにより発電を行う減速回生運転を行う。また、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、モータMGを駆動させて、エンジンENGの駆動力を補助するHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行、又はモータMGの駆動力のみで走行するEV(Electric Vehicle)走行を行うことができる。
【0082】
また、EV走行中であって車両の減速が許容された状態であり且つ車両速度が一定速度以上の場合には、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、モータMGの駆動力を用いることなく、車両の運動エネルギーを用いてエンジンENGを始動させることができる。
【0083】
また、1速段で走行中に2速段にアップシフトされることをECU21が車両速度やアクセルペダルの開度等の車両情報から予測した場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結させる2速側連結状態又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0084】
エンジンENGの駆動力を用いて2速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結させた2速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結して伝達状態とする。
【0085】
図2に示すように、エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、2速ギア列G2及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
【0086】
尚、2速段において、ECU21がアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0087】
逆に、ECU21がダウンシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を、第3駆動ギアG3a及び第5駆動ギアG5aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態とする。
【0088】
これにより、アップシフト又はダウンシフトを、第1クラッチC1を伝達状態とし、第2クラッチC2を開放状態とするだけで行うことができ、変速段の切り換えを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0089】
また、2速段においても、車両が減速状態にある場合、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、ECU21は、減速回生運転を行う。2速段において減速回生運転を行う場合には、第1噛合機構SM1が3速側連結状態であるか、ニュートラル状態であるかで異なる。
【0090】
第1噛合機構SM1が3速側連結状態である場合には、第2駆動ギアG2aで回転される第1従動ギアGo1によって回転する第3駆動ギアG3aが第1入力軸34を介してモータMGのロータMGbを回転させるため、このロータMGbの回転を抑制しブレーキをかけることにより発電して回生を行う。
【0091】
第1噛合機構SM1がニュートラル状態である場合には、ロック機構R1を固定状態とすることによりリングギアRaの回転数を「0」とし、第1従動ギアGo1に噛合する3速駆動ギアG3aと共に回転するキャリアCaの回転数を、サンギアSaに連結させたモータMGにより発電させることによりブレーキをかけて、回生を行う。
【0092】
また、2速段においてHEV走行する場合には、例えば、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態として、ロック機構R1を開放状態とすることにより遊星歯車機構PGを各回転要素が相対回転不能な状態とし、モータMGの駆動力を3速ギア列G3を介して出力部材33に伝達することにより行うことができる。または、第1噛合機構SM1をニュートラル状態として、ロック機構R1を固定状態としてリングギアRaの回転数を「0」とし、モータMGの駆動力を1速段の経路で第1従動ギアGo1に伝達することによっても、2速段によるHEV走行を行うことができる。
【0093】
図3は、2速段におけるHEV走行時に、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図2に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、3速ギア列G3、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0094】
エンジンENGの駆動力を用いて3速段を確立する場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態として、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。
【0095】
図4に示すように、エンジンENGの駆動力は、エンジン出力軸32、第1クラッチC1、第1入力軸34、第1噛合機構SM1、3速ギア列G3を介して、出力部材33に伝達され、1/iの回転数で出力される。
【0096】
3速段においては、第1噛合機構SM1が3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態となっているため、遊星歯車機構PGのサンギアSaとキャリアCaとが同一回転となる。
【0097】
従って、遊星歯車機構PGの各回転要素が相対回転不能な状態となり、モータMGでサンギアSaにブレーキをかければ減速回生となり、モータMGでサンギアSaに駆動力を伝達させれば、HEV走行を行うことができる。
【0098】
図5は、3速段におけるHEV走行時の、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図4に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、3速ギア列G3、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0099】
また、第1クラッチC1を開放して、モータMGの駆動力のみで走行するEV走行も可能である。
【0100】
3速段において、ECU21は、車両速度やアクセルペダルの開度等の車両情報に基づきダウンシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結する2速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とし、アップシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結する4速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0101】
これにより、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とし、第1クラッチC1を開放させて開放状態とするだけで、変速段の切換えを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
【0102】
エンジンENGの駆動力を用いて4速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させた4速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。
【0103】
図6に示すように、エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、4速ギア列G4及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
【0104】
4速段で走行中は、ECU21が車両情報からダウンシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0105】
逆に、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、又は、この状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とし、第2クラッチC2を開放させて開放状態とするだけで、ダウンシフト又はアップシフトを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
【0106】
4速段で走行中に減速回生又はHEV走行を行う場合には、動力伝達装置ECU21がダウンシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態とし、モータMGでブレーキをかければ減速回生、駆動力を伝達すればHEV走行を行うことができる。
【0107】
図7は、4速段におけるHEV走行時に、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図6に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、3速ギア列G3、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0108】
ECU21がアップシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態とし、モータMGによりブレーキをかければ減速回生、モータMGから駆動力を伝達させればHEV走行を行うことができる。
【0109】
図8は、4速段におけるHEV走行時に、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図6に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、5速ギア列G5、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0110】
エンジンENGの駆動力を用いて5速段を確立する場合には、第1噛合機構SM1を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態とする。5速段においては、第1クラッチC1が伝達状態とされることによりエンジンENGとモータMGとが直結された状態となるため、モータMGから駆動力を出力すればHEV走行を行うことができ、モータMGでブレーキをかけ発電すれば減速回生を行うことができる。
【0111】
尚、5速段でEV走行を行う場合には、第1クラッチC1を開放状態とすればよい。また、5速段でのEV走行中に、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、エンジンENGの始動を行うこともできる。
【0112】
ECU21は、5速段で走行中に車両情報から4速段へのダウンシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させた4速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、4速段へのダウンシフトを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0113】
エンジンENGの駆動力を用いて後進段を確立する場合には、ロック機構R1を固定状態とし、第3噛合機構SM3をリバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態として、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。これにより、エンジン出力軸32の駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、リバースギアGR、リバース従動ギアGRa、サンギアSa、キャリアCa、3速ギア列G3及び出力軸33aを介して後進方向の回転として、出力部材33から出力され、後進段が確立される。
【0114】
図9は、蓄電池1のSOCに基づき、最大蓄電量を複数の領域(ゾーン)に分割した例を示す。
【0115】
各領域は、具体的には、通常の使用領域であり基準領域となるAゾーン、Aゾーンより蓄電池1のSOCが小さく放電が一部制限される放電一部制限領域であるBゾーン、Bゾーンより更に蓄電池1のSOCが小さく放電が制限される放電制限領域であるCゾーン、及び、Aゾーンより蓄電池1のSOCが大きく充電が制限される充電制限領域であるDゾーンに区分されている。
【0116】
温度によって充放電の特性が変化するため、最大蓄電量をSOCの他に、温度を加味して分割してもよい。
【0117】
Aゾーンは、更に、蓄電池1のSOCが最適な中間領域AゾーンM、AゾーンMより蓄電池1のSOCが小さいAゾーンL、及び、AゾーンMより蓄電池1のSOCが大きいAゾーンHに区分されている。
【0118】
図10に示すように、ECU21は、領域に基づいて各種動作を許可、制限又は禁止するように制御(以下、「領域動作制御」という)する。以下、各種動作の領域動作制御について説明する。
【0119】
まず、減速回生の領域動作制御について説明する。減速回生とは、減速時の回生動作により蓄電池1が充電されることである。
【0120】
減速回生は、Dゾーンでは過充電を防止するために制限され、CゾーンからAゾーンHまでは蓄電池1のSOCの低下を抑制するために許可される。Dゾーンのときには急制動など、回生による制動力が必要とされるときのみ減速回生が許可される。
【0121】
次に、アイドル充電の領域動作制御について説明する。アイドル充電とは、エンジンENGの回転によってモータMGが回転し、この回転による回生で蓄電池1が充電されることである。アイドル状態とは車両が停車したときにエンジンENGを停止せずに動作させたままの状態のことである。
【0122】
アイドル充電は、DゾーンからAゾーンHまでは、蓄電池1の過充電の防止や燃料消費量を削減するために禁止され、AゾーンMからAゾーンLまでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、蓄電池1のSOCの低下を抑制するために許可される。
【0123】
次に、アイドルストップの領域動作制御について説明する。アイドルストップとはアイドル状態を停止することである。燃料消費量を削減するために、可能な限りアイドルストップが許可されることが望ましい。
【0124】
アイドルストップは、DゾーンからAゾーンMまでは許可され、AゾーンLでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、アイドル充電が許可されているため禁止される。
【0125】
次に、走行充電の領域動作制御について説明する。走行充電とは、エンジンENGの駆動力のみで走行しているときに、その駆動力の一部によってモータMGを回転させることで回生させて、蓄電池1が充電されることである。
【0126】
走行充電は、DゾーンからAゾーンHまでは、過充電の防止や燃料消費量を削減するために禁止され、AゾーンMからAゾーンLまでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、蓄電池1のSOCの低下を抑制するために許可される。
【0127】
次に、EV走行の領域動作制御について説明する。EV走行は、DゾーンからAゾーンMまでは、蓄電池1のSOCをAゾーンMの領域内にするために許可され、AゾーンLでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、蓄電池1のSOCの低下を抑制するために禁止される。
【0128】
次に、エンジン切り離しの領域動作制御について説明する。エンジン切り離しとは、第1クラッチC1を開放状態にして、エンジンENGの駆動力が第1入力軸34に伝達されないようにすることである。エンジン切り離しをしているときは、モータMGの駆動力で走行するため、蓄電池1のSOCが減少する。
【0129】
エンジン切り離しは、Dゾーンでは、減速回生が制限されるため、モータMGの回生による減速の変わりにエンジンブレーキによって減速するために制限される。AゾーンHからAゾーンMまでは蓄電池1のSOCをAゾーンMの領域内にするために許可され、AゾーンLでは制限され、BゾーンからCゾーンまでは、蓄電池1のSOCの減少を抑制するために禁止される。
【0130】
次に、アシストの領域動作制御について説明する。アシストとは、エンジンENGの駆動力にモータMGの駆動力を加えて走行、すなわちHEV走行のことである。
【0131】
アシストは、DゾーンからAゾーンMまでは、蓄電池1の過充電の防止や燃料消費量を削減するために許可され、AゾーンLからBゾーンまでは制限され、Cゾーンでは蓄電池1のSOCの低下を抑制するために禁止される。
【0132】
次に、モータ回転数合わせの領域動作制御について説明する。モータ回転数合わせとは、偶数段(2速段、4速段)で走行中に3速側連結状態又は5速側連結状態にするときに、モータMGを駆動させることで、第1入力軸34の回転数を出力軸33aの第1従動ギアGo1又は第2従動ギアGo2によって空転している3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aの回転数に合わせることである。このとき、3速側連結状態にするときは3速駆動ギアG3aの回転数、5速側連結状態にするときは5速駆動ギアG5aの回転数に合わせる。
【0133】
第1入力軸34の回転数と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aの回転数とが合っていない状態で第1噛合機構SM1を伝達状態にすると、伝達過渡状態において、第1噛合機構SM1の摩擦力によって、両者の回転数が合ってから又は両者の回転数の差が所定値D1以下になってから接続が完了する。このときの摩擦力によって第1噛合機構SM1が摩耗する恐れがある。この所定値D1が第1発明における第1の所定値に相当する。
【0134】
従って、モータ回転数あわせによって第1噛合機構SM1の摩耗を抑制することができる。そのため、モータ回転数あわせは可能な限り許可されることが望ましい。
【0135】
モータ回転数合わせは、Dゾーンでは、モータMGの回生によって第1入力軸34の回転数を下げる制御が行なわれないように制限され、AゾーンHからBゾーンまでは許可され、Cゾーンでは、モータMGの駆動によって第1入力軸34の回転数を上げる制御が行なわれないように制限される。
【0136】
上記のように、ECU21によって、車両の各動作は、蓄電池1のSOCに応じて制御される。
【0137】
また、蓄電池1のSOCに応じた各動作の変更(例えば、許可から制限への変更)は、蓄電池1のSOCが領域に入ったときにすぐに行なうと、蓄電池1のSOCが領域の境目にあるときに、少しの増減によって動作の変更が頻繁に発生する可能性があるため、蓄電池1のSOCが領域に入ってから所定の値以上増加又は減少してから動作を変更してもよい(所謂、ヒステリシスの設定)。これによって、少しの増減によって頻繁に動作の変更が発生することを抑制できる。
【0138】
次に、蓄電池1のSOCがDゾーン又はCゾーンにあるときに、制御手段21a1によって制御される変速及びプレシフトについて説明する。
【0139】
上述のとおり、蓄電池1のSOCがDゾーン又はCゾーンにあるときには、モータMGの回転数合わせが制限される(以下、「モータ出力不可時」という)。
【0140】
モータ出力不可時には、第1噛合機構SM1の伝達過渡状態において発生する摩擦力によって、第1入力軸34の回転数と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aの回転数との差を徐々に小さくして、この差が所定値D1以下になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にして3速側連結状態又は5速側連結状態にする(第4発明の制御手段に相当)。
【0141】
この所定値D1は、予め実験などによって決定された値であり、メモリ21bに記憶されている。この所定値D1が第1発明における第2の所定値に相当する。第1実施形態では、第1の所定値と第2の所定値とを同じ所定値D1としているが、異なる値に設定してもよい。
【0142】
図11(a)は、第1噛合機構SM1による伝達状態の時間変化、図11(b)は、3速駆動ギアG3a及び第1入力軸回転数の時間変化を示す。
【0143】
第1噛合機構SM1は、時刻ta1以前では開放状態にあり、時刻ta1から時刻ta2の間では伝達過渡状態にあり、時刻ta2移行では伝達状態にある。
【0144】
偶数段での走行によって、出力軸33aの第1従動ギアGo1を介して回転されている3速駆動ギアG3aの回転数が、第1入力軸34の回転数よりも高いとき、第1噛合機構SM1を徐々に締結して伝達過渡状態にすることで、両者の回転数の差が小さくなっていく。時刻ta2で両者の差が所定値D1になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にすることで両者の差が0になる。
【0145】
また、偶数段で走行中に、奇数段側のプレシフトが完了していないときに、現在の偶数段より変速比の小さい奇数段への変速を行なう場合がある。
【0146】
例えば、4速段で走行中に、5速段へのプレシフトが完了していないときに5速段への変速を行なう場合、4速段より5速段の変速比が小さいため、走行速度が同じときには、4速段より5速段の方が回転数が低くなる。すなわち、4速段から5速段へ変速を行なう場合には、4速段で走行しているときに、出力軸33aの第2従動ギアGo2を介して空転している5速駆動ギアG5aの回転数は、このときのエンジンENGの回転数より低い。
【0147】
従って、制御手段は、第1クラッチC1を半クラッチ状態(伝達過渡状態)にして、エンジンENGの駆動力の伝達の度合いを調整することで、エンジンENGの回転数より低い5速駆動ギアG5aの回転数に近づけるように第1入力軸34の回転数を制御する。
【0148】
このようにして、第1クラッチC1を半クラッチ状態(伝達過渡状態)にすることで発生する摩擦力によって、4速段で走行しているときのエンジンENGの駆動力の一部を第1入力軸34に伝達することで、第1入力軸34の回転数を5速駆動ギアG5aの回転数に近づける。両者の差が所定値D2以下になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にして5速側連結状態にし(第5発明の制御手段に相当)、第1クラッチC1を伝達状態にして変速する。
【0149】
この所定値D2は、予め実験などによって決定された値であり、メモリ21bに記憶されている。所定値D2が、本発明における第2の所定値に相当する。
【0150】
また、奇数段で走行中に偶数段にアップシフトを行ない、更に加速されることで、一つ上の奇数段へプレシフトを行なう場合がある。
【0151】
例えば、3速段で走行中に4速段にアップシフトを行ない、4速段で走行中に加速されることで5速段にプレシフトを行なう。このような場合には、まず、第2クラッチC2及び第2噛合機構SM2が伝達状態になって4速段を確立する。その後、第1クラッチC1が開放状態になった後に、第1噛合機構SM1を開放状態にする。ここで、3速駆動ギアG3aに伝達される駆動力を0にすることで第1噛合機構SM1の摩耗を防止するため、第1クラッチC1が開放状態になった後に、第1噛合機構SM1を開放状態にしている。
【0152】
第1入力軸34の回転数は、モータMGなどの第1入力軸34に作用する回転抵抗によって、3速段で走行していたときの車両の走行速度(車速)に応じた回転数から徐々に下がっていく。4速段で走行することで、出力軸33aの第2駆動ギアGo2を介して5速駆動ギアG5aが回転する。4速段が確立した直後の車速は、3速段のときの車速とほぼ同じとみなすことができ、更に5速段は3速段より変速比が小さいため、第1入力軸34の回転数は5速駆動ギアG5aの回転数より多い。また、車速が増加すれば、5速駆動ギアG5aの回転数も増加する。
【0153】
第1入力軸34の回転数は、上述のように回転抵抗によって自然に降下していくため、第1入力軸34の回転数と5速駆動ギアG5aの回転数との差は徐々に縮まっていく。この差が所定値D3以下になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にして5速側連結状態にする(第6発明の制御手段に相当)。
【0154】
この所定値D3は、予め実験などによって決定された値であり、メモリ21bに記憶されている。所定値D3が、本発明における第2の所定値に相当する。
【0155】
図12は、第1入力軸34の回転数と5速駆動ギアG5aの回転数の時間変化を示す。時刻tb1以前では3速段で走行しており、時刻tb1以降では4速段で走行し、時刻tb2で5速段にプレシフトする。
【0156】
時刻tb1以降では、第1入力軸34の回転数は、3速段で走行していたときの回転数から回転抵抗によって徐々に下がっている。また、5速駆動ギアG5aの回転数は、4速段で加速走行が行なわれ、徐々に上がっている。時刻tb2で両者の回転数の差が所定値D3になり、5速段へプレシフトする。
【0157】
モータ出力不可時には、使用する奇数段を、その奇数段の変速比より、変速比が大きい偶数段と小さい偶数段とが存在する奇数段にする。そして、この奇数段とその前後の偶数段を可能な限り使用して走行する。例えば、2速段(変速比の大きい偶数段)と4速段(変速比の小さい偶数段)とが存在する3速段(奇数段)を使用する。
【0158】
2速段で走行中の3速段プレシフト時には、図3に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合している。また、4速段で走行中の3速段プレシフト時には、図7に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合している。また、3速段で走行時には、図4に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合している。
【0159】
一方、4速段で走行中の5速段プレシフト時には、図8に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と5速駆動ギアG5aとを結合している。
【0160】
すなわち、2速段、3速段又は4速段を可能な限り使用することで、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合したままの状態を保つことができ、奇数段のプレシフトが頻繁に発生することを防止し、第1クラッチC1や第1噛合機構SM1の摩耗を抑制することができる(第3発明の制御手段に相当)。
【0161】
第1実施形態では、モータ出力不可時には、可能な限り2速段、3速段又は4速段にて走行できるような変速マップに変更する。この変速マップはメモリ21bに記憶している。ここで、変速マップとは、車速と要求駆動力とに応じてギア段を割り当てたテーブルのことである。制御手段21a1は、車速と要求駆動力とから、この変速マップに応じて変速段を決定する。
【0162】
図13は、第1実施形態における、モータ出力不可時の車速及び要求駆動力とプレシフト及び変速との関係を示す変速マップの一例を示す。
【0163】
制御手段21a1は、図13に示す変速マップに応じて、車両の走行状態(ENG走行、EV走行、HEV走行の何れか)及び自動変速機31の変速段を決定する。この変速マップには、車速及び要求駆動力に対応して、1速段、3速段、及び5速段の各変速段に応じてEV走行可能領域の境界が、それぞれ「1E」、「3E」、「5E」で示す曲線で設定されている。これら曲線より図13の左下側(原点0)はEV走行可能領域であり、図13の右上側はEV走行不可能領域である。
【0164】
これにより、車両運転状態の変化により、車速と要求駆動力とによって定まる点が、EV走行可能領域内にあれば、原則として、EV走行と決定する。但し、蓄電池1のSOCがゾーンがBゾーン又はCゾーンにある場合は、図10を参照してEV走行不可であるので、ENG走行と決定する。あるいは、蓄電池1のSOCがAゾーンL又はBゾーンにある場合は、ENG走行と決定する。但し、Bゾーンの場合、状況に応じてHEV走行と決定することもある。
【0165】
一方、車速と要求駆動力とによって定まる点が、EV走行不可能領域内にあれば、ENG走行又はHEV走行と決定する。そして、蓄電池1のSOCがAゾーンMからDゾーンにある場合は、図10を参照してモータMGによるアシストを積極的に行わせるので、HEV走行と決定する。蓄電池1のSOCがAゾーンL又はBゾーンにある場合は、図10を参照してモータMGによるアシストを積極的に行わないので、ENG走行又はHEV走行と決定する。一方、蓄電池1のSOCがCゾーンにある場合は、図10を参照してEV走行不可であるので、ENG走行と決定する。
【0166】
この変速マップには、変速線図も設定されている。変速線図として、1速から2速へのアップシフト線(1→2)、2速から3速へのアップシフト線(2→3)、3速から4速へのアップシフト線(3→4)、及び4速から5速へのアップシフト線(4→5)の計4本のアップシフト線と、2速から1速へのダウンシフト線(2→1)、3速から2速へのダウンシフト線(3→2)、4速から3速へのダウンシフト線(4→3)、及び5速から4速へのダウンシフト線(5→4)の計4本のダウンシフト線とが設定されている。
【0167】
また、この変速マップには、プレシフト線図も設定されている。プレシフト線図として、1速から3速へのアッププレシフト線(プレシフト1→3)、2速から4速へのアッププレシフト線(図示省略)、3速から5速へのアッププレシフト線(プレシフト3→5)の計3本のアッププレシフト線と、3速から1速へのダウンプレシフト線(プレシフト3→1)、4速から2速へのダウンプレシフト線(図示省略)、5速から3速へのダウンプレシフト線(プレシフト5→3)の計3本のダウンプレシフト線とが設定されている。
【0168】
これにより、例えば、車両運転状態の変化により車速と要求駆動力とによって定まる点が、2速から3速へのアップシフト線(2→3)を図13の左方から右方に横切ると、原則として、制御手段21a1は、変速段を2速段から3速段にアップシフトする。あるいは、車両運転状態の変化により車速と要求駆動力とによって定まる点が、3速から2速へのダウンシフト線(3→2)を図13の右方から左方に横切ると、原則として、制御手段21a1は、変速段を3速段から2速段にダウンシフトする。
【0169】
プレシフトも同様に、車両運転状態の変化により車速と要求駆動力とによって定まる点が、3速から5速へのアッププレシフト線(プレシフト3→5)を図13の左方から右方に横切ると、制御手段21a1は、3速段から5速段にプレシフトする。5速から3速へのダウンプレシフト線(プレシフト5→3)を図13の右方から左方に横切ると、制御手段21a1は、5速段から3速段にプレシフトする。
【0170】
このように、車速又は要求駆動力が増加することで所定の条件を満たしてアップシフトした後に、アップシフトする前の変速段にダウンシフトするときの条件は、アップシフトしたときより車速又は要求駆動力が低いときにダウンシフトするようにする。また、車速又は要求駆動力が減少することで所定の条件を満たしてダウンシフトした後に、ダウンシフトする前の変速段にアップシフトするときの条件は、ダウンシフトしたときより車速又は要求駆動力が高いときにアップシフトするようにする。プレシフトも同様である。
【0171】
このようにすることで、変速マップ上で、車速と要求駆動力とによって決定される位置がプレシフト又は変速段の切り替えの境界付近にあるときに、車速又は要求駆動力のわずかな変化によって、プレシフト又は変速段の切り替えの発生を抑制している。
【0172】
すなわち、プレシフト又は変速段の切り替えにヒステリシスを設定している。例えば、図13の変速マップで、3速段から4速段へのアップシフト線と4速段から3速段へのダウンシフト線との間隔を大きく設定すると、ヒステリシスを大きく設定することになる。
【0173】
図13の変速マップに設定された変速線図は、蓄電池1のSOCや蓄電池1の温度などに応じて補正される。例えば、蓄電池1のSOCがAゾーンM以上にある場合、図10を参照してモータMGによりアシストが積極的を行うよう、各ダウンシフト線を上方にオフセットするよう補正される。但し、蓄電池1の温度が所定の閾値以上の温度であるとき、モータMGを積極的に作動させないように、蓄電池1のSOCがAゾーンM以上である場合であっても、各ダウンシフト線を上方にオフセットさせない。
【0174】
モータ出力不可時では、奇数段へのプレシフト及び変速において、第1噛合機構の摩擦力によって回転数を合わせるために、回転数合わせに時間がかかるため、モータ出力不可時以外のときに比べて、プレシフト及び変速のタイミングを早める。ここで、タイミングを早めるとは、アップシフト線及びアッププレシフト線では図13の左方へ、ダウンシフト線及びダウンプレシフト線では図13の右方へ設定することである。
【0175】
更に、モータ出力不可時には、モータMGが接続されている第1入力軸34側にある奇数段のプレシフト及び変速のヒステリシスを大きく設定する。こうすることで、変速マップ上で、プレシフト又は変速の境目に位置するような車速及び要求駆動力で走行しているときに、車速又は要求駆動力の変動で、頻繁にプレシフト又は変速が発生することを抑制する。このようにして、第1クラッチC1や第1噛合機構SM1の摩耗を抑制することができる(第2発明の制御手段に相当)。
【0176】
第1実施形態では、モータ出力不可時には、上記のようにヒステリシスを取った変速マップに変更する。この変速マップはメモリ21bに記憶している。
【0177】
従って、モータ出力不可時以外のときは、例えば、3速から5速へのアッププレシフト線(プレシフト3→5)は図13の位置より右方へ、5速から3速へのダウンプレシフト線(プレシフト5→3)は図13の位置より左方へ設定され、両者の間隔は狭くなる。2速から3速へのアップシフト線(2→3)は図13の位置より右方へ、3速から4速へのアップシフト線(3→4)は図13の位置より左方へ設定され、両者の間隔は狭くなる。3速から2速へのダウンシフト線(3→2)は図13の位置より右方へ、4速から3速へのダウンシフト線(4→3)は図13の位置より左方へ設定され、他の偶数段と奇数段のプレシフト及び変速についても同様である。
【0178】
第1実施形態では、変速マップとして、車速と要求駆動力とを変数として、第1入力軸34に連結する駆動ギアの切り替え、又は第1クラッチC1の伝達状態と開放状態との切り替えをしているが、例えば、モータMGの回転数と要求駆動力とによる効率によって決定してもよい。更に、モータMGの回転数と要求駆動力とによる発熱量に応じて決定してもよい。
【0179】
第1実施形態では、奇数段はモータMGが接続された第1入力軸34と出力軸33aによって構成され、偶数段はモータMGが接続されていない第2入力軸35と出力軸33aによって構成されているが、デュアルクラッチ式変速機を搭載したハイブリッド車両では、偶数段にモータMGが接続され、奇数段にモータMGが接続されていない構成であってもよい。
【0180】
また、変速機は5段変速機である必要はなく、例えば、7段変速機であってもよい。
【0181】
次に、第1実施形態のECU21のCPU21aによって実行される制御の処理について説明する。
【0182】
第1実施形態では、CPU21aが、本発明における制御手段21a1として動作する。
【0183】
図14は、制御手段21a1が実行する本発明の変速機の回転数制御の処理の手順を示すフローチャートである。本フローチャートで示される制御処理プログラムは、車両の運転状況の変化によって、奇数段の変速段のプレシフトが必要になったときに呼び出されて実行される。
【0184】
最初のステップST1は、蓄電池1のSOCが所定値α1より大きく且つ所定値α2未満であるか否かを判定する。所定値α1は、例えば、図9のBゾーンとCゾーンとの境目又はこの境目に所定値減じた値に設定される。所定値α2は、例えば、図9のDゾーンとAゾーンHとの境目又はこの境目に所定値加えた値に設定される。判定結果がNOのときは、ステップST2に進む。
【0185】
ステップST2では、変速マップを上述したようなモータ出力不可時用の変速マップに変更する。この変速マップは、上述したように、プレシフト及び変速で、偶数段より奇数段のヒステリシスが大きく設定され、且つ、2速段、3速段及び4速段が優先的に使用されるように設定されている。ステップST2の処理が、第2発明又は第3発明に相当する。
【0186】
また、ステップST2に進んだとき、蓄電池1のSOCが所定値α1以下のときは、減速回生の許可、アイドル充電の許可、アイドルストップの禁止、又は走行充電の許可を行なう。このようにして、蓄電池1のSOCがCゾーンより上のゾーンになるように制御する(第9発明の制御手段に相当)。
【0187】
蓄電池1のSOCが所定値α2以上のときは、アシスト(HEV走行)の許可、エンジン切り離しの禁止、又はDC/DCコンバータ3を介して蓄電池1の電力をバッテリ2に充電するように設定する。このようにして、蓄電池1のSOCがDゾーンより下のゾーンになるように制御する(第7発明、第8発明の制御手段に相当)。
【0188】
ステップST3では、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にするか否かを判定する。判定結果がNOのときは、ステップST4に進む。
【0189】
ステップST4では、3速段から4速段へアップシフトをした後で、5速側連結状態にするか否かを判定する。判定結果がNOのときは、ステップST5に進む。
【0190】
ステップST5では、上述のように、第1噛合機構SM1の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST5の処理が、第4発明の制御手段に相当する。
【0191】
ステップST4の判定結果がYESのときは、ステップST6に進み、上述のように、第1入力軸34の回転数が回転抵抗によって自然降下することで、第1入力軸34と5速駆動ギアG5aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST6の処理が、第6発明の制御手段に相当する。
【0192】
ステップST3の判定結果がYESのときは、ステップST7に進み、上述のように、第1クラッチC1の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aとの回転数合わせ後にプレシフトする。
【0193】
ステップST1の判定結果がYESのときは、蓄電池1のSOCは、モータ回転数合わせを行なっても問題ないため、ステップST8に進み、モータMGによる回転数合わせが実行される。
【0194】
ステップST5、ST6、ST7、ST8の処理が終了したら、本制御処理を終了し、第1噛合機構SM1を伝達状態にすることで、第1入力軸34の駆動ギアを第1入力軸34に連結するように制御され、変速が必要な場合には、第1クラッチC1を伝達状態にする。
【0195】
ステップST3とステップST7の処理が第5発明の制御手段に相当する。
【0196】
以上のように、蓄電池1のSOCによってモータ回転合わせが行なえないと判定された場合(ステップST1でNO)、変速マップをモータ出力不可時用に変更する(ステップST2)。次に、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にする場合(ステップST3でYES)には、第1クラッチC1の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST7)。一方、それ以外の場合(ステップST3でNO)には、3速段から4速段にアップシフトをした後で、且つ5速側連結状態にするとき(ステップST4でYES)には、回転抵抗の自然降下で回転数合わせをする(ステップST6)。それ以外の場合(ステップST4でNO)には、第1噛合機構SM1の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST5)。
【0197】
従って、蓄電池1のSOCが上限又は下限に近いことによってモータMGによる回転数合わせができないときでも、蓄電池1に損傷を発生させないように変速及びプレシフトをして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供できる。
【0198】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。図15は、第2実施形態のハイブリッド車両の概略構成を示す。図15を参照しながら、第1実施形態との相違点について説明する。
【0199】
自動変速機31は、前進7段後進1段の変速段で構成されており、第1実施形態に対して前進段として6速段及び7速段の変速段が追加される。
【0200】
第1入力軸34に、変速比順位で奇数番目の変速段を確立する奇数番ギア列として、第1実施形態に7速ギア列G7が追加され、7速ギア列G7の駆動ギアG7aは第1入力軸34に回転自在に軸支される。また、変速比順位で偶数番目の変速段を確立する偶数番ギア列として、第1実施形態に6速ギア列G6が追加され、6速ギア列G6の駆動ギアG6aは第2入力軸35に回転自在に軸支される。
【0201】
出力軸33aには、6速駆動ギアG6a及び7速駆動ギアG7aに噛合する第3従動ギアGo3が、第1従動ギアGo1と第2従動ギアGo2と共に固定される。
【0202】
第2実施形態では、3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a及び7速駆動ギアG7aが第1入力軸34の駆動ギアに相当する。また、2速駆動ギアG2a、4速駆動ギアG4a及び6速駆動ギアG6aが第2入力軸35の駆動ギアに相当する。また、第1従動ギアGo1及び第2従動ギアGo2に第3従動ギアGo3が従動ギアに相当する。
【0203】
第1噛合機構SM1は、シンクロメッシュ機構で構成され、3速側連結状態、7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態、3速駆動ギアG3a及び7速駆動ギアG7aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第1入力軸34に設けられる。
【0204】
第2噛合機構SM2は、シンクロメッシュ機構で構成され、2速側連結状態、6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結した6速側連結状態、2速駆動ギアG2a及び6速駆動ギアG6aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第2入力軸35に設けられる。
【0205】
第4噛合機構SM4は、シンクロメッシュ機構で構成され、5速駆動ギアG5aと第1入力軸35とを連結した5速側連結状態、5速駆動ギアG5aと第1入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第1入力軸34に設けられる。
【0206】
第5噛合機構SM5は、シンクロメッシュ機構で構成され、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結した4速側連結状態、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第2入力軸35に設けられる。
【0207】
第2実施形態では、第1噛合機構SM1及び第4噛合機構SM4が、本発明における第3伝達手段に相当し、第2噛合機構SM2及び第5噛合機構SM5が、本発明における第4伝達手段に相当する。
【0208】
次に、上記のように構成された第2実施形態の自動変速機31の作動について説明する。1速段から3速段は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0209】
4速段を確立する場合、4速側連結状態とするときに、第2噛合機構SM2ではなく第5噛合機構SM5によって4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させる点が、第1実施形態と相違する。
【0210】
5速段を確立する場合、5速側連結状態とするときに、第1噛合機構SM1ではなく第4噛合機構SM4によって5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結させる点が、第1実施形態と相違する。
【0211】
また、5速段で走行中、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合は、第2噛合機構SM2を6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結する6速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、6速段へのアップシフトを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0212】
エンジンENGの駆動力を用いて6速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結させた6速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、6速ギア列G6及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
【0213】
6速段で走行中、ECU21が車両情報からダウンシフトを予測している場合は、第4噛合機構SM4を5速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0214】
逆に、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態、又は、この状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、ダウンシフト又はアップシフトを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
【0215】
6速段で走行中、減速回生又はHEV走行を行う場合は、動力伝達装置ECU21がダウンシフトを予測しているときには、第4噛合機構SM4を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態とし、モータMGでブレーキをかければ減速回生、駆動力を伝達すればHEV走行を行うことができる。
【0216】
ECU21がアップシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態とし、モータMGによりブレーキをかければ減速回生、モータMGから駆動力を伝達させればHEV走行を行うことができる。
【0217】
エンジンENGの駆動力を用いて7速段を確立する場合は、第1噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態とする。7速段においては、第1クラッチC1が伝達状態とされることによりエンジンENGとモータMGとが直結された状態となるため、モータMGから駆動力を出力すればHEV走行を行うことができ、モータMGでブレーキをかけ発電すれば減速回生を行うことができる。
【0218】
尚、7速段でEV走行を行う場合は、第1クラッチC1を開放状態とすればよい。また、7速段でのEV走行中に、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、エンジンENGの始動を行うこともできる。
【0219】
ECU21は、7速段で走行中に車両情報から6速段へのダウンシフトが予測される場合は、第2噛合機構SM2を6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結させた6速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、6速段へのダウンシフトを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0220】
上記のように構成された自動変速機31に対して、制御手段21a1は、図13の変速マップに6速段、7速段が追加された変速マップに応じて、変速を制御する。
【0221】
次に、第2実施形態において、モータ出力不可時の回転数合わせについて説明する。
【0222】
モータ出力不可時の回転数合わせは、第1噛合機構SM1に加え第4噛合機構SM4の伝達過渡状態において発生する摩擦力によって行なわれる。3速側連結状態又は7速側連結状態にするときは、第1噛合機構SM1の摩擦力によって回転数合わせを行ない、5速側連結状態にするときは、第4噛合機構SM4の摩擦力によって回転数合わせを行なう。
【0223】
これによって、第1入力軸34の回転数と3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aの回転数との差を徐々に小さくして、この差が上述の所定値D1以下になったときに第1噛合機構SM1又は第4噛合機構SM4を伝達状態にして3速側連結状態、5速側連結状態又は7速側連結状態にする(第4発明の制御手段に相当)。
【0224】
また、偶数段で走行中に、奇数段側のプレシフトが完了していないときに、現在の偶数段より変速比の小さい奇数段への変速を行なう場合(第5発明の制御手段に相当)については、第1クラッチC1の摩擦力によって回転数合わせを行なう点は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。但し、上述のように7速段が追加されているため、2速段から3速段への変速、4速段から5速段への変速に加え、6速段から7速段への変速の場合にも第1クラッチC1の摩擦力で回転数合わせが行なわれる。
【0225】
また、奇数段で走行中に偶数段にアップシフトを行ない、更に加速されることで、一つ上の奇数段へプレシフトを行なう場合(第6発明の制御手段に相当)については、第1実施形態に、5速段で走行中に6速段にアップシフトを行ない、6速段で走行中に加速されることで7速段にプレシフトを行なう場合も追加される。この場合の回転抵抗による自然降下による回転数合わせは、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0226】
また、モータ出力不可時に、使用する奇数段を、その奇数段の変速比より変速比が大きい偶数段と小さい偶数段とが存在する奇数段とその前後の偶数段を可能な限り使用して走行する場合、第1実施形態では、前進5段の変速機であるため、2速段、3速段、4速段の変速段の組み合わせのみであったが、第2実施形態では、前進7段の変速機であるため、この組み合わせに加え、4速段(変速比の大きい偶数段)、5速段(奇数段)、6速段(変速比の小さい偶数段)の組み合わせも可能である(第3発明の制御手段に相当)。
【0227】
第2実施形態では、低速走行をしている場合には、2速段、3速段、4速段の組み合わせを使用し、高速走行している場合には、4速段、5速段、6速段の組み合わせを使用することができる。これによって、奇数段のプレシフトが頻繁に発生することを防止し、第1クラッチC1、第1噛合機構SM1及び第4噛合機構SM4の摩耗を抑制する。更に、車速に対して変速比が大きすぎる変速段又は変速比が小さすぎる変速段での走行を抑制することができる。
【0228】
次に、第2実施形態での制御手段21a1の回転数制御の処理について、図16を参照しながら説明する。
【0229】
ステップST11は、第1実施形態のステップST1と同様に、蓄電池1のSOCが所定値α1より大きく且つ所定値α2未満であるか否かを判定する。所定値α1及び所定値α2は、第1実施形態と同様に設定される。ステップST11の判定結果がNOのときは、ステップST12に進む。
【0230】
ステップST12では、第1実施形態のステップST2の処理の、2速段、3速段及び4速段の組み合わせが優先的に使用されるように設定されることに加え、4速段、5速段及び6速段の組み合わせも優先的に使用されるように設定される。どちらの組み合わせを優先的に使用するかは、上述したように、車両の走行状態(低速走行又は高速走行)に応じて変更される。
【0231】
次にステップST13に進み、第1実施形態のステップST3と同じように、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にするか否かを判定する。判定結果がNOのときは、ステップST14に進む。
【0232】
ステップST14では、3速段から4速段へアップシフトをした後で、5速側連結状態にするか否か、又は5速段から6速段へアップシフトをした後で、7速側連結状態にするか否かを判定する。どちらも条件を満たしていないときはNOとなり、どちらかが条件を満たしているときはYESとなる。ステップST14の判定結果がNOのときは、ステップST15に進む。
【0233】
ステップST15では、上述のように、第1噛合機構SM1又は第4噛合機構SM4の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST15の処理が、第4発明の制御手段に相当する。
【0234】
ステップST14の判定結果がYESのときは、ステップST16に進み、第1入力軸34の回転数が、回転抵抗によって自然降下することで、第1入力軸34と5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST16の処理が、第6発明の制御手段に相当する。
【0235】
ステップST13の判定結果がYESのときは、ステップST17に進み、第1クラッチC1の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST13とステップST17の処理が第5発明の制御手段に相当する。
【0236】
ステップST11の判定結果がYESのときは、蓄電池1のSOCは、モータ回転数合わせを行なっても問題ないため、ステップST18に進み、モータMGによる回転数合わせが実行される。
【0237】
ステップST15、ST16、ST17、ST18の処理が終了したら、本制御処理を終了し、第1噛合機構SM1又は打4噛合機構SM4を伝達状態にすることで、第1入力軸34の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を第1入力軸34に連結するように制御され、変速が必要な場合には、第1クラッチC1を伝達状態にする。
【0238】
以上のように、第2実施形態では、蓄電池1のSOCによってモータ回転合わせが行なえないと判定された場合(ステップST11でNO)、変速マップをモータ出力不可時用に変更する(ステップST12)。次に、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にする場合(ステップST13でYES)には、第1クラッチC1の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST17)。一方、それ以外の場合(ステップST13でNO)には、3速段から4速段にアップシフトをした後で5速側連結状態か、又は5速段から6速段にアップシフトをした後で7速側連結状態にするとき(ステップST14でYES)には、回転抵抗の自然降下で回転数合わせをする(ステップST16)。それ以外の場合(ステップST14でNO)には、第1噛合機構SM1又は第4噛合機構SM4の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST15)。
【0239】
従って、蓄電池1のSOCが上限又は下限に近いことによってモータMGによる回転数合わせができないときでも、蓄電池1に損傷を発生させないように変速及びプレシフトをして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供できる。
【符号の説明】
【0240】
1…蓄電池(蓄電装置)、2…12Vバッテリ(第2蓄電装置)、3…DC/DCコンバータ、21…ECU、21a…CPU、21a1…制御手段、21b…メモリ、31…自動変速機、33a…出力軸、34…第1入力軸、35…第2入力軸、C1…第1クラッチ(第1伝達手段)、C2…第2クラッチ(第2伝達手段)、ENG…エンジン(内燃機関)、G2a…2速駆動ギア、G3a…3速駆動ギア、G4a…4速駆動ギア、G5a…5速駆動ギア、G6a…6速駆動ギア、G7a…7速駆動ギア、Go1…第1従動ギア、Go2…第2従動ギア、Go3…第3従動ギア、MG…モータ(電動機)、SM1…第1噛合機構(第3伝達手段)、SM2…第2噛合機構(第4伝達手段)、SM4…第4噛合機構(第3伝達手段)、SM5…第5噛合機構(第4伝達手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、電動機及び自動変速機を備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)とモータ(電動機)とを駆動源とし、2つの入力軸を備えたデュアルクラッチ式自動有段変速機の片方の入力軸に電動機が接続されたハイブリッド車両が知られている(特許文献1)。
【0003】
このハイブリッド車両では、モータを駆動又は回生することによって、モータが接続された入力軸の回転数と変速機の出力軸を介して入力軸に伝達される回転数との差を所定の値以下にして(以下、「回転数合わせ」という)から、モータが接続された入力軸の変速段の切り替えを行なうことで、クラッチの摩耗を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータの電源である蓄電装置の蓄電量によっては、モータによる回転数合わせを行なうことによって、蓄電装置が損傷する可能性がある。例えば、蓄電量が上限に近いときには、回転数を下げるためにモータを回生すると、蓄電装置の蓄電量が増加することで蓄電装置の過充電により蓄電装置が損傷する可能性がある。また、蓄電量が下限に近いときには、回転数を上げるためにモータを駆動すると、蓄電装置の蓄電量が減ることで蓄電装置の過放電により蓄電装置が損傷する可能性がある。
【0006】
上記の特許文献1には、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いときの回転数合わせに関して開示されていない。
【0007】
そこで、本発明では、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、蓄電装置の損傷を発生させないようにプレシフト又は変速をして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であって、
前記内燃機関及び前記電動機から入力された駆動力を変速して出力する変速機と、
前記電動機に給電するための蓄電装置と、
前記蓄電装置の蓄電量に応じて、前記変速機、前記内燃機関及び前記電動機を制御する制御手段とを備え、
前記変速機は、
前記電動機の駆動力及び前記内燃機関の駆動力が入力される第1入力軸と、
前記内燃機関の駆動力が入力される第2入力軸と、
前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を変速するための複数の駆動ギア(G3a、G5a、G7a又はG2a、G4a、G6a)と、
前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と噛合する複数の従動ギア(Go1、Go2、Go3)が固定され、前記駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とを介して変速された駆動力を出力する出力軸と、
前記内燃機関の駆動力の全部を前記第1入力軸に伝達する伝達状態、前記内燃機関の駆動力の一部を摩擦力により前記第1入力軸に伝達する伝達過渡状態、及び伝達しない開放状態を有する第1伝達手段と、
前記内燃機関の駆動力を前記第2入力軸に伝達する伝達状態、及び伝達しない開放状態を有する第2伝達手段と、
前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の全部を前記出力軸に伝達する伝達状態、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の一部を摩擦力により前記出力軸に伝達する伝達過渡状態、及び前記第1入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第3伝達手段と、
前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のいずれか1つを選択的に前記第2入力軸に連結することで、前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達する伝達状態、及び前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第4伝達手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を伝達状態として、前記第2入力軸に入力された前記内燃機関の駆動力により前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)を介して前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)が回転駆動しているときに、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つの駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するとき、
前記蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合には、前記第1入力軸の回転数が前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数になるように前記電動機を作動して、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第1の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とし、
前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記電動機の作動を停止し、前記第1伝達手段又は前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけること、或いは、前記第1入力軸の回転抵抗力によって前記第1入力軸の回転数が低下することにより、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とすることを特徴とする(第1発明)。
【0009】
本発明によれば、制御手段は次のように動作する。
【0010】
まず、第1及び第3伝達手段を開放状態、第2及び第4伝達手段を伝達状態として、第2入力軸に入力された内燃機関の駆動力により出力軸に固定された従動ギア(Go1、Go2、Go3)を介して第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)が回転しているときに、該駆動ギアのいずれか1つ(G3a、G5a又はG7a)を第1入力軸に連結するとき、
蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合には、第1入力軸の回転数が第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数になるように電動機を作動させる。そして、第1入力軸の回転数と第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第1の所定値以下になったとき、第3伝達手段を伝達状態として第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結する。
【0011】
上記のように電動機を作動させる、すなわち、電動機に給電することで回転数を増加させ、或いは回生発電させて回転数を減少させることにより、第1入力軸の回転数と第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差を第1の所定値以下にしてから、第3伝達手段を伝達状態にすることで、第3伝達手段の摩耗が抑えられる。
【0012】
また、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合には、電動機を停止して、第1伝達手段又は第3伝達手段を伝達過渡状態にしたときに発生する摩擦力によって第1入力軸の回転数を第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけること、或いは、第1入力軸の回転抵抗力によって第1入力軸の回転数を低下することにより、第1入力軸の回転数と第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、第3伝達手段を伝達状態として第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結する。このとき、第1伝達手段が開放状態のままであればプレシフトとなり、第1伝達手段を伝達状態且つ第2伝達手段を開放状態とすれば変速段の切り替え(変速)となる。
【0013】
これにより、蓄電装置の過放電又は過充電の発生を抑えるために電動機を停止しているときでも、蓄電装置が損傷しないようにプレシフト又は変速することを可能にしている。
【0014】
従って、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、蓄電装置の損傷を発生させないようにプレシフト又は変速することができ、走行に影響を与えないハイブリッド車両が実現される。
【0015】
上記第1発明において、前記制御手段は、前記第1入力軸に連結する駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は前記第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えを、当該車両の駆動力を決定する変数の値に応じて行なうものであり、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)は、前記変数の値が増大して第1閾値以上になったとき切り替えられ、前記変数の値が減少して、前記第1閾値より小さい第2閾値以下になったとき、前記第1閾値以上になる前の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)に切り替えられ、前記第1伝達手段は、前記変数の値が増大して第3閾値以上になったとき、伝達状態から開放状態へ切り替えられ、前記第3閾値以上になる前に前記第1入力軸に連結されていた前記駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)と同じ駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が前記第1入力軸に連結されている場合に、前記変数の値が減少して前記第3閾値より小さい第4閾値以下になったとき、開放状態から伝達状態へ切り替えられ、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも、前記第1閾値と前記第2閾値との差及び前記第3閾値と前記第4閾値との差を共に大きくすることが好ましい(第2発明)。
【0016】
これによれば、制御手段は、第1入力軸に連結する駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えを、当該車両の駆動力を決定する変数(例えば、車両の走行速度、要求駆動力、電動機の効率又は電動機の発熱量)の値に応じて行なう。
【0017】
変数の値が増大して第1閾値以上になったとき、第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が切り替えられ、変数の値が減少して、第1閾値より小さい第2閾値以下になったとき、第1閾値以上になる前の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)に切り替えられる。
【0018】
更に、変数の値が増大して第3閾値以上になったとき、第1伝達手段が伝達状態から開放状態へ切り替えられる。第3閾値以上になる前に第1入力軸に連結されていた駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)と同じ駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が第1入力軸に連結されている場合に、変数の値が減少して、第3閾値より小さい第4閾値以下になったとき、第1伝達手段が開放状態から伝達状態へ切り替えられる。
【0019】
このようにして、当該車両の駆動力を決定する変数の値が、第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えが発生する境界点付近にあるときに、変数の値の多少の変動によって切り替えが頻繁に発生することを抑制している。
【0020】
更に、蓄電装置の蓄電量が、所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合には、蓄電装置の蓄電量が、所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合のときよりも、第1閾値と第2閾値との差を大きくし、第3閾値と第4閾値との差を大きくしている。
【0021】
これによって、電動機による回転数合わせができないときに、第1入力軸と第1入力軸の駆動ギアとの回転数合わせを行なう頻度を下げ、第1伝達手段又は第3伝達手段の摩耗を抑えることができる。
【0022】
上記第1発明又は第2発明において、前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)は、前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)と噛合うことで決定される変速比の大きさの順に、前記第1入力軸と前記第2入力軸とに交互に配置され、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のうち前記変速比の大きさの順に隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とが噛合うことで決定される2つの変速比の間の変速比を、前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)及び前記隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)のうちいずれか1つの駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a又はG6a)を介して、前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、前記2つの変速比の間の変速比を前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にしていることが好ましい(第3発明)。
【0023】
これによれば、蓄電量が所定の下限値以下又は所定の上限値以上の場合には、制御手段は、第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のうち変速比の大きさの順に隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)と従動ギア(Go1、Go2、Go3)とが噛合うことで決定される2つの変速比の間の変速比を、従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)と、前記隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)とのいずれか1つの駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a又はG6a)を介して、第1入力軸又は第2入力軸に入力された駆動力を出力軸に伝達する。ここで、変速比とは出力トルクを入力トルクで除算することによって得られる比である。
【0024】
このとき、制御手段は、前記2つの変速比の間の変速比を前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)を選択するように第3伝達手段を伝達状態にしている。
【0025】
従って、第3伝達手段によって第1入力軸の駆動ギアを第1入力軸に連結した状態が維持されることになり、第1入力軸と第1入力軸の駆動ギアとの回転数合わせを行なう頻度を下げ、第1伝達手段又は第3伝達手段の摩耗を抑えることができる。
【0026】
上記第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも前記第3伝達手段を開放状態から伝達過渡状態にするタイミングを早め、前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることが好ましい(第4発明)。
【0027】
これによれば、蓄電量が所定の下限値以下又は所定の上限値以上の場合には、制御手段は、第3伝達手段の伝達過渡状態における摩擦力によって、第1入力軸の回転数を第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づける。
【0028】
第3伝達手段の摩擦力によって回転数を近づけるため、電動機を作動させて回転数を近づけるときよりも時間がかかる。このため、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の場合には、蓄電装置の蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合に比べ、第3伝達手段を伝達過渡状態にするタイミングを早める。これによって、変速動作の遅れを抑制している。
【0029】
従って、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、第3伝達手段の摩擦力によって回転数合わせができ、更に走行に影響を与えないことができる。
【0030】
上記第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合に、現時点で前記第2入力軸に連結されている前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にし、且つ前記第1伝達手段を伝達状態にするときは、前記第1伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることが好ましい(第5発明)。
【0031】
これによれば、蓄電量が所定の下限値以下又は所定の上限値以上の場合に、現時点で第2入力軸に連結されている第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)と従動ギア(Go1、Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を従動ギア(Go1、Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にし、且つ第1伝達手段を伝達状態にするときは、第1伝達手段の伝達過渡状態(例えば、半クラッチ状態)における摩擦力によって、第1入力軸の回転数を第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づける。
【0032】
第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)を介して出力軸に駆動力を伝達しているときに、第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)より変速比の小さい第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数は、第2入力軸の回転数よりも低い。このとき、第2入力軸の回転数は内燃機関の回転数と等しい。
【0033】
従って、現時点で第2入力軸に連結されている第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)より変速比の小さい第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を第1入力軸に連結するときは、第1伝達手段を伝達過渡状態にすることによって、内燃機関の回転数よりも低い回転数に第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数を近づけることができる。
【0034】
これによって、第1入力軸の回転数を第1入力軸の駆動ギアの回転数に近づけるように第1伝達手段の伝達過渡状態の摩擦力を調整することで、蓄電装置の蓄電量が上限又は下限に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、第1伝達手段の摩擦力によって回転数合わせができる。
【0035】
上記第1発明から第5発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を伝達状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を開放状態として、前記第1入力軸の駆動ギアのうち変速比の大きい駆動ギア(G3a又はG5a)を介して変速された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段を伝達状態とし、前記伝達している駆動ギア(G3a又はG5a)と前記従動ギア(Go1又はGo2)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように前記第4伝達手段を伝達状態とした後に、前記選択された駆動ギア(G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するときに、前記第1伝達手段の開放により、前記第1入力軸の回転抵抗力によって減少していく前記第1入力軸の回転数と、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数との差が、前記第2の所定値以下になったとき、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にすることが好ましい(第6発明)。
【0036】
これによれば、制御手段は、第1入力軸のうち変速比の大きい駆動ギア(G3a又はG5a)から、当該駆動ギア(G3a又はG5a)より小さい変速比を前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように第4伝達手段を伝達状態とした後に、当該選択された駆動ギア(G4a又はG6a)と従動ギア(Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(Go5又はG7a)を第1入力軸に連結する。
【0037】
このときに、第1伝達手段の開放により、第1入力軸の回転抵抗力によって減少していく第1入力軸の回転数と、出力軸の従動ギア(Go2又はGo3)を介して回転している第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)を選択するように第3伝達手段を伝達状態にする。
【0038】
選択された第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように第4伝達手段を伝達状態にした直後は、第1入力軸の回転数と連結されていた第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)の回転数とは等しく、時間が経過するにつれ、第1入力軸の回転数は、第1入力軸の回転抵抗力によって回転数が減少していく。
【0039】
連結されていた第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)より第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の方が変速比が小さいため、出力軸の回転数が同じ場合には、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数は連結されていた第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)より低くなる。
【0040】
すなわち、第1伝達手段と第3伝達手段を開放状態にし、第2伝達手段を伝達状態にし、第4伝達手段を伝達状態にすることで選択された第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を第2入力軸に連結した直後は、第1入力軸の回転数は、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数より大きい。従って、この第1入力軸の回転数は、第1入力軸の回転抵抗力によって減少していくため、第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数に近づいていく。
【0041】
このようにして、蓄電装置の蓄電量が上限値又は下限値に近いことによって電動機による回転数合わせができないときでも、第1伝達手段又は第3伝達手段の摩耗を抑えるようにプレシフト又は変速ができる。
【0042】
上記第1発明から第6発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうこと、又は前記第1伝達手段を伝達状態のまま前記内燃機関を停止して前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうことが好ましい(第7発明)。
【0043】
これによれば、制御手段は、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上の場合には、蓄電装置の蓄電量を減少させるように電動機を動作させるために、電動機の駆動力のみによる走行を行なう。
【0044】
或いは、第1伝達手段を伝達状態のまま内燃機関を停止して電動機の駆動力のみによる走行を行なう。第1伝達手段が伝達状態のため、電動機は走行するための駆動力と停止した内燃機関を回転させる駆動力とを出力することになり、より多くの蓄電装置の蓄電量を消費することができる。
【0045】
従って、蓄電装置の蓄電量の上昇を抑え、蓄電装置の損傷を防止している。
【0046】
上記第7発明において、当該車両の車載機器の電源である第2蓄電装置を備え、前記第2蓄電装置は、前記制御手段による制御下で、前記蓄電装置から供給される電力によって充電可能に構成され、前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、前記第2蓄電装置に前記蓄電装置から電力を供給することが好ましい(第8発明)。
【0047】
これによれば、制御手段は、蓄電装置の蓄電量が所定の上限値以上の場合には、第2蓄電装置に蓄電装置から電力を供給する。従って、蓄電装置の蓄電量の上昇を抑え、蓄電量を減少し、蓄電装置の損傷を防止している。
【0048】
上記第1発明から第8発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下の場合には、前記内燃機関の駆動力によって前記電動機を回転駆動させて前記蓄電装置を充電すること、当該車両の減速時に前記電動機の回生によって前記蓄電装置を充電すること、又は前記内燃機関の停止を禁止することが好ましい(第9発明)。
【0049】
これによれば、制御手段は、蓄電装置の蓄電量が所定の下限値以下の場合には、内燃機関の駆動力によって電動機を回転させる、すなわち電動機を回生させて蓄電装置を充電する。或いは、当該車両の減速時に電動機の回生によって減速させると共に蓄電装置を充電する。或いは、内燃機関を停止を禁止して、電動機の作動を停止する。従って、蓄電装置の蓄電量の減少を抑え、蓄電量を増加し、蓄電装置の損傷を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図。
【図2】2速段におけるエンジンの駆動力の伝達経路を示す図。
【図3】2速段における3速段プレシフト時のエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図4】3速段におけるエンジンの駆動力の伝達経路を示す図。
【図5】3速段におけるエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図6】4速段におけるエンジンの駆動力の伝達経路を示す図。
【図7】4速段における3速段プレシフト時のエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図8】4速段における5速段プレシフト時のエンジン及びモータの駆動力の伝達経路を示す図。
【図9】蓄電池のSOCのゾーン分けを示す説明図。
【図10】蓄電池のSOCのゾーンに応じた減速回生の許可、制限又は禁止を示す表。
【図11】第1噛合機構SM1の摩擦力による回転数合わせのタイミングチャート。(a)第1噛合機構SM1の伝達状態の時間変化、(b)第1入力軸34及び3速駆動ギアG3aの時間変化。
【図12】第1入力軸34の回転数が回転抵抗によって自然降下する回転数合わせのタイミングチャート。
【図13】モータ出力不可時の車速及び要求駆動力とプレシフト及び変速との関係を示すマップの一例を示す図。
【図14】図1のECU21が実行する回転数制御の処理手順を示すフローチャート。
【図15】本発明の第2実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図。
【図16】図15のECU21が実行する回転数制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。図1に示すように、ハイブリッド車両は、エンジンからなる内燃機関ENG、電動機(モータ)MG、モータMGと電力を授受する二次電池からなる蓄電池1、当該車両の車載機器に対して電力を供給する12Vのバッテリ2、蓄電池1からバッテリ2へ電圧を変換して電力を供給するDC/DCコンバータ3、自動変速機31、及びエンジンENG、モータMG、自動変速機31、DC/DCコンバータ3の各部を制御する電子制御装置ECU(Electronic Control Unit)21を備える。
【0052】
ECU21は、各種演算処理を実行するCPU21aとこのCPU21aで実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果などを記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(メモリ)21bとを備え、各種電気信号を入力すると共に、演算結果などに基づいて駆動信号を外部に出力する。
【0053】
ECU21には、アクセルペダル(図示省略)の操作量を検知するアクセル開度センサ22の出力信号が供給される。アクセル開度センサ22の出力信号に応じて当該車両の加速要求を要求駆動力として検知している。
【0054】
第1実施形態では、ECU21のCPU21aが、本発明における制御手段21a1として機能する。
【0055】
自動変速機31は、エンジンENGの駆動力(出力トルク)が伝達されるエンジン出力軸32と、図外のディファレンシャルギアを介して駆動輪としての左右の前輪に動力を出力する出力ギアからなる出力部材33と、変速比の異なる複数のギア列G2〜G5とを備える。
【0056】
また、自動変速機31は、変速比順位で奇数番目の各変速段を確立する奇数番ギア列G3,G5の駆動ギアG3a,G5aを回転自在に軸支する第1入力軸34と、変速比順位で偶数番目の変速段を確立する偶数番ギア列G2,G4の駆動ギアG2a,G4aを回転自在に軸支する第2入力軸35と、リバースギアGRを回転自在に軸支するリバース軸36を備える。尚、第1入力軸34はエンジン出力軸32と同一軸線上に配置され、第2入力軸35及びリバース軸36は第1入力軸34と平行に配置されている。
【0057】
また、自動変速機31は、第1入力軸34に回転自在に軸支されたアイドル駆動ギアGiaと、アイドル軸37に固定されアイドル駆動ギアGiaに噛合する第1アイドル従動ギアGibと、第2入力軸35に固定された第2アイドル従動ギアGicと、リバース軸36に固定され第1アイドル従動ギアGibに噛合する第3アイドル従動ギアGidとで構成されるアイドルギア列Giを備える。尚、アイドル軸37は第1入力軸34と平行に配置されている。
【0058】
自動変速機31は、油圧作動型の乾式摩擦クラッチ又は湿式摩擦クラッチからなる第1クラッチC1及び第2クラッチC2を備える。第1クラッチC1は、エンジン出力軸32に伝達されたエンジンENGの駆動力を第1入力軸34に伝達度合いを変化させて伝達させることができる伝達状態と、この伝達を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第2クラッチC2は、エンジン出力軸32に伝達されたエンジンENGの駆動力を第2入力軸35に伝達度合いを変化させて伝達させることができる伝達状態と、この伝達を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第2クラッチC2を締結させて伝達状態とすると、エンジン出力軸32は第1アイドル従動ギアGib及び第2アイドル従動ギアGicを介して第2入力軸35に連結される。
【0059】
両クラッチC1,C2は、素早く状態が切り換えられるように電気式アクチュエータにより作動されるものであることが好ましい。尚、両クラッチC1,C2は、油圧式アクチュエータにより作動されるものであってもよい。
【0060】
また、自動変速機31には、エンジン出力軸32と同軸上に位置させて、差動回転機構である遊星歯車機構PGが配置されている。遊星歯車機構PGは、サンギアSaと、リングギアRaと、サンギアSa及びリングギアRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型で構成される。
【0061】
遊星歯車機構PGのサンギアSa、キャリアCa、リングギアRaからなる3つの回転要素を、速度線図(各回転要素の相対的な回転速度を直線で表すことができる図)におけるギア比に対応する間隔での並び順にサンギアSa側からそれぞれ第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素とすると、第1回転要素はサンギアSa、第2回転要素はキャリアCa、第3回転要素はリングギアRaとなる。
【0062】
そして、遊星歯車機構PGのギア比(リングギアRaの歯数/サンギアSaの歯数)をgとして、第1回転要素たるサンギアSaと第2回転要素たるキャリアCaの間の間隔と、第2回転要素たるキャリアCaと第3回転要素たるリングギアRaの間の間隔との比が、g:1となる。
【0063】
第1回転要素たるサンギアSaは、第1入力軸34に固定されている。第2回転要素たるキャリアCaは、3速ギア列G3の3速駆動ギアG3aに連結されている。第3回転要素たるリングギアRaは、ロック機構R1により変速機ケース等の不動部に解除自在に固定される。
【0064】
ロック機構R1は、リングギアRaが不動部に固定される固定状態、又はリングギアRaが回転自在な開放状態の何れかの状態に切換自在なシンクロメッシュ機構で構成されている。
【0065】
尚、ロック機構R1は、シンクロメッシュ機構に限らず、スリーブ等による摩擦係合解除機構の他、湿式多板ブレーキ、ハブブレーキ、バンドブレーキ等のブレーキや、ワンウェイクラッチ、2ウェイクラッチなどで構成してもよい。また、遊星歯車機構PGは、サンギアと、リングギアと、互いに噛合し一方がサンギア、他方がリングギアに噛合する一対のピニオンPa、Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなるダブルピニオン型で構成してもよい。この場合、例えば、サンギア(第1回転要素)を第1入力軸34に固定し、リングギア(第2回転要素)を3速ギア列G3の3速駆動ギアG3aに連結し、キャリア(第3回転要素)をロック機構R1で不動部に解除自在に固定するように構成すればよい。
【0066】
遊星歯車機構PGの径方向外方には、中空のモータMGが配置されている。換言すれば、遊星歯車機構PGは、中空のモータMGの内方に配置されている。モータMGは、ステータMGaとロータMGbとを備える。
【0067】
また、モータMGは、ECU21の指示信号に基づき、パワードライブユニットPDUを介して制御される。ECU21は、パワードライブユニットPDUを、蓄電池1の電力を消費してモータMGを駆動させる駆動状態と、ロータMGbの回転力を抑制させて発電し、発電した電力をパワードライブユニットPDUを介して蓄電池1に充電する回生状態とに適宜切り換える。
【0068】
バッテリ2は、当該車両の車載機器に対して電力を供給し、12Vの電圧を出力する。また、ECU21の制御信号によって、蓄電池1の電力がDC/DCコンバータ3を介してバッテリ2に充電が可能である。
【0069】
出力部材33を軸支する出力軸33aには、2速駆動ギアG2a及び3速駆動ギアG3aに噛合する第1従動ギアGo1が固定されている。出力軸33aには、4速駆動ギアG4a及び5速駆動ギアG5aに噛合する第2従動ギアGo2が固定されている。
【0070】
このように、2速ギア列G2と3速ギア列G3の従動ギア、及び4速ギア列G4と5速ギア列G5の従動ギアとをそれぞれ1つのギアGo1,Go2で構成することにより、自動変速機の軸長を短くすることができ、FF(前輪駆動)方式の車両への搭載性を向上させることができる。
【0071】
また、第1入力軸34には、リバースギアGRに噛合するリバース従動ギアGRaが固定されている。
【0072】
第1入力軸34には、シンクロメッシュ機構で構成され、3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態、5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、3速駆動ギアG3a及び5速駆動ギアG5aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切換選択自在な第3伝達手段である第1噛合機構SM1が設けられている。
【0073】
第2入力軸35には、シンクロメッシュ機構で構成され、2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結した2速側連結状態、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結した4速側連結状態、2速駆動ギアG2a及び4速駆動ギアG4aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切換選択自在な第4伝達手段である第2噛合機構SM2が設けられている。
【0074】
リバース軸36には、シンクロメッシュ機構で構成され、リバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態と、この連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切換選択自在な第3噛合機構SM3が設けられている。
【0075】
次に、上記のように構成された自動変速機31の作動について説明する。
【0076】
自動変速機31では、第1クラッチC1を係合させることにより、モータMGの駆動力を用いてエンジンENGを始動させるIMA始動を行うことができる。
【0077】
エンジンENGの駆動力を用いて1速段を確立する場合には、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とし、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。エンジンENGの駆動力のみによる走行をENG走行という。
【0078】
エンジンENGの駆動力は、エンジン出力軸32、第1クラッチC1、第1入力軸34を介して、遊星歯車機構PGのサンギアSaに入力され、エンジン出力軸32に入力されたエンジンENGの回転数が1/(g+1)に減速されて、キャリアCaを介し3速駆動ギアG3aに伝達される。
【0079】
3速駆動ギアG3aに伝達された駆動力は、3速駆動ギアG3a及び第1従動ギアGo1で構成される3速ギア列G3のギア比(3速駆動ギアG3aの歯数/第1従動ギアGo1の歯数)をiとして、1/i(g+1)に変速されて第1従動ギアGo1及び出力軸33aを介し出力部材33から出力され、1速段が確立される。
【0080】
このように、自動変速機31では、遊星歯車機構PG及び3速ギア列で1速段を確立できるため、1速段専用の噛合機構が必要なく、これにより、自動変速機の軸長の短縮化を図ることができる。
【0081】
尚、1速段において、車両が減速状態にあり、且つ蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、ECU21は、モータMGでブレーキをかけることにより発電を行う減速回生運転を行う。また、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、モータMGを駆動させて、エンジンENGの駆動力を補助するHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行、又はモータMGの駆動力のみで走行するEV(Electric Vehicle)走行を行うことができる。
【0082】
また、EV走行中であって車両の減速が許容された状態であり且つ車両速度が一定速度以上の場合には、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、モータMGの駆動力を用いることなく、車両の運動エネルギーを用いてエンジンENGを始動させることができる。
【0083】
また、1速段で走行中に2速段にアップシフトされることをECU21が車両速度やアクセルペダルの開度等の車両情報から予測した場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結させる2速側連結状態又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0084】
エンジンENGの駆動力を用いて2速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結させた2速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結して伝達状態とする。
【0085】
図2に示すように、エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、2速ギア列G2及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
【0086】
尚、2速段において、ECU21がアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0087】
逆に、ECU21がダウンシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を、第3駆動ギアG3a及び第5駆動ギアG5aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態とする。
【0088】
これにより、アップシフト又はダウンシフトを、第1クラッチC1を伝達状態とし、第2クラッチC2を開放状態とするだけで行うことができ、変速段の切り換えを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0089】
また、2速段においても、車両が減速状態にある場合、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、ECU21は、減速回生運転を行う。2速段において減速回生運転を行う場合には、第1噛合機構SM1が3速側連結状態であるか、ニュートラル状態であるかで異なる。
【0090】
第1噛合機構SM1が3速側連結状態である場合には、第2駆動ギアG2aで回転される第1従動ギアGo1によって回転する第3駆動ギアG3aが第1入力軸34を介してモータMGのロータMGbを回転させるため、このロータMGbの回転を抑制しブレーキをかけることにより発電して回生を行う。
【0091】
第1噛合機構SM1がニュートラル状態である場合には、ロック機構R1を固定状態とすることによりリングギアRaの回転数を「0」とし、第1従動ギアGo1に噛合する3速駆動ギアG3aと共に回転するキャリアCaの回転数を、サンギアSaに連結させたモータMGにより発電させることによりブレーキをかけて、回生を行う。
【0092】
また、2速段においてHEV走行する場合には、例えば、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態として、ロック機構R1を開放状態とすることにより遊星歯車機構PGを各回転要素が相対回転不能な状態とし、モータMGの駆動力を3速ギア列G3を介して出力部材33に伝達することにより行うことができる。または、第1噛合機構SM1をニュートラル状態として、ロック機構R1を固定状態としてリングギアRaの回転数を「0」とし、モータMGの駆動力を1速段の経路で第1従動ギアGo1に伝達することによっても、2速段によるHEV走行を行うことができる。
【0093】
図3は、2速段におけるHEV走行時に、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図2に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、3速ギア列G3、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0094】
エンジンENGの駆動力を用いて3速段を確立する場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態として、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。
【0095】
図4に示すように、エンジンENGの駆動力は、エンジン出力軸32、第1クラッチC1、第1入力軸34、第1噛合機構SM1、3速ギア列G3を介して、出力部材33に伝達され、1/iの回転数で出力される。
【0096】
3速段においては、第1噛合機構SM1が3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態となっているため、遊星歯車機構PGのサンギアSaとキャリアCaとが同一回転となる。
【0097】
従って、遊星歯車機構PGの各回転要素が相対回転不能な状態となり、モータMGでサンギアSaにブレーキをかければ減速回生となり、モータMGでサンギアSaに駆動力を伝達させれば、HEV走行を行うことができる。
【0098】
図5は、3速段におけるHEV走行時の、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図4に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、3速ギア列G3、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0099】
また、第1クラッチC1を開放して、モータMGの駆動力のみで走行するEV走行も可能である。
【0100】
3速段において、ECU21は、車両速度やアクセルペダルの開度等の車両情報に基づきダウンシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結する2速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とし、アップシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結する4速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0101】
これにより、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とし、第1クラッチC1を開放させて開放状態とするだけで、変速段の切換えを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
【0102】
エンジンENGの駆動力を用いて4速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させた4速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。
【0103】
図6に示すように、エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、4速ギア列G4及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
【0104】
4速段で走行中は、ECU21が車両情報からダウンシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0105】
逆に、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、又は、この状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とし、第2クラッチC2を開放させて開放状態とするだけで、ダウンシフト又はアップシフトを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
【0106】
4速段で走行中に減速回生又はHEV走行を行う場合には、動力伝達装置ECU21がダウンシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態とし、モータMGでブレーキをかければ減速回生、駆動力を伝達すればHEV走行を行うことができる。
【0107】
図7は、4速段におけるHEV走行時に、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図6に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、3速ギア列G3、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0108】
ECU21がアップシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態とし、モータMGによりブレーキをかければ減速回生、モータMGから駆動力を伝達させればHEV走行を行うことができる。
【0109】
図8は、4速段におけるHEV走行時に、モータMG及びエンジンENGの駆動力の伝達経路を示す。図6に示したエンジンENGの駆動力に加えて、モータMGの駆動力が、入力軸34、5速ギア列G5、出力軸33aを介して出力部材33に伝達される。
【0110】
エンジンENGの駆動力を用いて5速段を確立する場合には、第1噛合機構SM1を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態とする。5速段においては、第1クラッチC1が伝達状態とされることによりエンジンENGとモータMGとが直結された状態となるため、モータMGから駆動力を出力すればHEV走行を行うことができ、モータMGでブレーキをかけ発電すれば減速回生を行うことができる。
【0111】
尚、5速段でEV走行を行う場合には、第1クラッチC1を開放状態とすればよい。また、5速段でのEV走行中に、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、エンジンENGの始動を行うこともできる。
【0112】
ECU21は、5速段で走行中に車両情報から4速段へのダウンシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させた4速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、4速段へのダウンシフトを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0113】
エンジンENGの駆動力を用いて後進段を確立する場合には、ロック機構R1を固定状態とし、第3噛合機構SM3をリバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態として、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。これにより、エンジン出力軸32の駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、リバースギアGR、リバース従動ギアGRa、サンギアSa、キャリアCa、3速ギア列G3及び出力軸33aを介して後進方向の回転として、出力部材33から出力され、後進段が確立される。
【0114】
図9は、蓄電池1のSOCに基づき、最大蓄電量を複数の領域(ゾーン)に分割した例を示す。
【0115】
各領域は、具体的には、通常の使用領域であり基準領域となるAゾーン、Aゾーンより蓄電池1のSOCが小さく放電が一部制限される放電一部制限領域であるBゾーン、Bゾーンより更に蓄電池1のSOCが小さく放電が制限される放電制限領域であるCゾーン、及び、Aゾーンより蓄電池1のSOCが大きく充電が制限される充電制限領域であるDゾーンに区分されている。
【0116】
温度によって充放電の特性が変化するため、最大蓄電量をSOCの他に、温度を加味して分割してもよい。
【0117】
Aゾーンは、更に、蓄電池1のSOCが最適な中間領域AゾーンM、AゾーンMより蓄電池1のSOCが小さいAゾーンL、及び、AゾーンMより蓄電池1のSOCが大きいAゾーンHに区分されている。
【0118】
図10に示すように、ECU21は、領域に基づいて各種動作を許可、制限又は禁止するように制御(以下、「領域動作制御」という)する。以下、各種動作の領域動作制御について説明する。
【0119】
まず、減速回生の領域動作制御について説明する。減速回生とは、減速時の回生動作により蓄電池1が充電されることである。
【0120】
減速回生は、Dゾーンでは過充電を防止するために制限され、CゾーンからAゾーンHまでは蓄電池1のSOCの低下を抑制するために許可される。Dゾーンのときには急制動など、回生による制動力が必要とされるときのみ減速回生が許可される。
【0121】
次に、アイドル充電の領域動作制御について説明する。アイドル充電とは、エンジンENGの回転によってモータMGが回転し、この回転による回生で蓄電池1が充電されることである。アイドル状態とは車両が停車したときにエンジンENGを停止せずに動作させたままの状態のことである。
【0122】
アイドル充電は、DゾーンからAゾーンHまでは、蓄電池1の過充電の防止や燃料消費量を削減するために禁止され、AゾーンMからAゾーンLまでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、蓄電池1のSOCの低下を抑制するために許可される。
【0123】
次に、アイドルストップの領域動作制御について説明する。アイドルストップとはアイドル状態を停止することである。燃料消費量を削減するために、可能な限りアイドルストップが許可されることが望ましい。
【0124】
アイドルストップは、DゾーンからAゾーンMまでは許可され、AゾーンLでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、アイドル充電が許可されているため禁止される。
【0125】
次に、走行充電の領域動作制御について説明する。走行充電とは、エンジンENGの駆動力のみで走行しているときに、その駆動力の一部によってモータMGを回転させることで回生させて、蓄電池1が充電されることである。
【0126】
走行充電は、DゾーンからAゾーンHまでは、過充電の防止や燃料消費量を削減するために禁止され、AゾーンMからAゾーンLまでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、蓄電池1のSOCの低下を抑制するために許可される。
【0127】
次に、EV走行の領域動作制御について説明する。EV走行は、DゾーンからAゾーンMまでは、蓄電池1のSOCをAゾーンMの領域内にするために許可され、AゾーンLでは制限され、BゾーンからCゾーンでは、蓄電池1のSOCの低下を抑制するために禁止される。
【0128】
次に、エンジン切り離しの領域動作制御について説明する。エンジン切り離しとは、第1クラッチC1を開放状態にして、エンジンENGの駆動力が第1入力軸34に伝達されないようにすることである。エンジン切り離しをしているときは、モータMGの駆動力で走行するため、蓄電池1のSOCが減少する。
【0129】
エンジン切り離しは、Dゾーンでは、減速回生が制限されるため、モータMGの回生による減速の変わりにエンジンブレーキによって減速するために制限される。AゾーンHからAゾーンMまでは蓄電池1のSOCをAゾーンMの領域内にするために許可され、AゾーンLでは制限され、BゾーンからCゾーンまでは、蓄電池1のSOCの減少を抑制するために禁止される。
【0130】
次に、アシストの領域動作制御について説明する。アシストとは、エンジンENGの駆動力にモータMGの駆動力を加えて走行、すなわちHEV走行のことである。
【0131】
アシストは、DゾーンからAゾーンMまでは、蓄電池1の過充電の防止や燃料消費量を削減するために許可され、AゾーンLからBゾーンまでは制限され、Cゾーンでは蓄電池1のSOCの低下を抑制するために禁止される。
【0132】
次に、モータ回転数合わせの領域動作制御について説明する。モータ回転数合わせとは、偶数段(2速段、4速段)で走行中に3速側連結状態又は5速側連結状態にするときに、モータMGを駆動させることで、第1入力軸34の回転数を出力軸33aの第1従動ギアGo1又は第2従動ギアGo2によって空転している3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aの回転数に合わせることである。このとき、3速側連結状態にするときは3速駆動ギアG3aの回転数、5速側連結状態にするときは5速駆動ギアG5aの回転数に合わせる。
【0133】
第1入力軸34の回転数と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aの回転数とが合っていない状態で第1噛合機構SM1を伝達状態にすると、伝達過渡状態において、第1噛合機構SM1の摩擦力によって、両者の回転数が合ってから又は両者の回転数の差が所定値D1以下になってから接続が完了する。このときの摩擦力によって第1噛合機構SM1が摩耗する恐れがある。この所定値D1が第1発明における第1の所定値に相当する。
【0134】
従って、モータ回転数あわせによって第1噛合機構SM1の摩耗を抑制することができる。そのため、モータ回転数あわせは可能な限り許可されることが望ましい。
【0135】
モータ回転数合わせは、Dゾーンでは、モータMGの回生によって第1入力軸34の回転数を下げる制御が行なわれないように制限され、AゾーンHからBゾーンまでは許可され、Cゾーンでは、モータMGの駆動によって第1入力軸34の回転数を上げる制御が行なわれないように制限される。
【0136】
上記のように、ECU21によって、車両の各動作は、蓄電池1のSOCに応じて制御される。
【0137】
また、蓄電池1のSOCに応じた各動作の変更(例えば、許可から制限への変更)は、蓄電池1のSOCが領域に入ったときにすぐに行なうと、蓄電池1のSOCが領域の境目にあるときに、少しの増減によって動作の変更が頻繁に発生する可能性があるため、蓄電池1のSOCが領域に入ってから所定の値以上増加又は減少してから動作を変更してもよい(所謂、ヒステリシスの設定)。これによって、少しの増減によって頻繁に動作の変更が発生することを抑制できる。
【0138】
次に、蓄電池1のSOCがDゾーン又はCゾーンにあるときに、制御手段21a1によって制御される変速及びプレシフトについて説明する。
【0139】
上述のとおり、蓄電池1のSOCがDゾーン又はCゾーンにあるときには、モータMGの回転数合わせが制限される(以下、「モータ出力不可時」という)。
【0140】
モータ出力不可時には、第1噛合機構SM1の伝達過渡状態において発生する摩擦力によって、第1入力軸34の回転数と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aの回転数との差を徐々に小さくして、この差が所定値D1以下になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にして3速側連結状態又は5速側連結状態にする(第4発明の制御手段に相当)。
【0141】
この所定値D1は、予め実験などによって決定された値であり、メモリ21bに記憶されている。この所定値D1が第1発明における第2の所定値に相当する。第1実施形態では、第1の所定値と第2の所定値とを同じ所定値D1としているが、異なる値に設定してもよい。
【0142】
図11(a)は、第1噛合機構SM1による伝達状態の時間変化、図11(b)は、3速駆動ギアG3a及び第1入力軸回転数の時間変化を示す。
【0143】
第1噛合機構SM1は、時刻ta1以前では開放状態にあり、時刻ta1から時刻ta2の間では伝達過渡状態にあり、時刻ta2移行では伝達状態にある。
【0144】
偶数段での走行によって、出力軸33aの第1従動ギアGo1を介して回転されている3速駆動ギアG3aの回転数が、第1入力軸34の回転数よりも高いとき、第1噛合機構SM1を徐々に締結して伝達過渡状態にすることで、両者の回転数の差が小さくなっていく。時刻ta2で両者の差が所定値D1になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にすることで両者の差が0になる。
【0145】
また、偶数段で走行中に、奇数段側のプレシフトが完了していないときに、現在の偶数段より変速比の小さい奇数段への変速を行なう場合がある。
【0146】
例えば、4速段で走行中に、5速段へのプレシフトが完了していないときに5速段への変速を行なう場合、4速段より5速段の変速比が小さいため、走行速度が同じときには、4速段より5速段の方が回転数が低くなる。すなわち、4速段から5速段へ変速を行なう場合には、4速段で走行しているときに、出力軸33aの第2従動ギアGo2を介して空転している5速駆動ギアG5aの回転数は、このときのエンジンENGの回転数より低い。
【0147】
従って、制御手段は、第1クラッチC1を半クラッチ状態(伝達過渡状態)にして、エンジンENGの駆動力の伝達の度合いを調整することで、エンジンENGの回転数より低い5速駆動ギアG5aの回転数に近づけるように第1入力軸34の回転数を制御する。
【0148】
このようにして、第1クラッチC1を半クラッチ状態(伝達過渡状態)にすることで発生する摩擦力によって、4速段で走行しているときのエンジンENGの駆動力の一部を第1入力軸34に伝達することで、第1入力軸34の回転数を5速駆動ギアG5aの回転数に近づける。両者の差が所定値D2以下になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にして5速側連結状態にし(第5発明の制御手段に相当)、第1クラッチC1を伝達状態にして変速する。
【0149】
この所定値D2は、予め実験などによって決定された値であり、メモリ21bに記憶されている。所定値D2が、本発明における第2の所定値に相当する。
【0150】
また、奇数段で走行中に偶数段にアップシフトを行ない、更に加速されることで、一つ上の奇数段へプレシフトを行なう場合がある。
【0151】
例えば、3速段で走行中に4速段にアップシフトを行ない、4速段で走行中に加速されることで5速段にプレシフトを行なう。このような場合には、まず、第2クラッチC2及び第2噛合機構SM2が伝達状態になって4速段を確立する。その後、第1クラッチC1が開放状態になった後に、第1噛合機構SM1を開放状態にする。ここで、3速駆動ギアG3aに伝達される駆動力を0にすることで第1噛合機構SM1の摩耗を防止するため、第1クラッチC1が開放状態になった後に、第1噛合機構SM1を開放状態にしている。
【0152】
第1入力軸34の回転数は、モータMGなどの第1入力軸34に作用する回転抵抗によって、3速段で走行していたときの車両の走行速度(車速)に応じた回転数から徐々に下がっていく。4速段で走行することで、出力軸33aの第2駆動ギアGo2を介して5速駆動ギアG5aが回転する。4速段が確立した直後の車速は、3速段のときの車速とほぼ同じとみなすことができ、更に5速段は3速段より変速比が小さいため、第1入力軸34の回転数は5速駆動ギアG5aの回転数より多い。また、車速が増加すれば、5速駆動ギアG5aの回転数も増加する。
【0153】
第1入力軸34の回転数は、上述のように回転抵抗によって自然に降下していくため、第1入力軸34の回転数と5速駆動ギアG5aの回転数との差は徐々に縮まっていく。この差が所定値D3以下になったときに第1噛合機構SM1を伝達状態にして5速側連結状態にする(第6発明の制御手段に相当)。
【0154】
この所定値D3は、予め実験などによって決定された値であり、メモリ21bに記憶されている。所定値D3が、本発明における第2の所定値に相当する。
【0155】
図12は、第1入力軸34の回転数と5速駆動ギアG5aの回転数の時間変化を示す。時刻tb1以前では3速段で走行しており、時刻tb1以降では4速段で走行し、時刻tb2で5速段にプレシフトする。
【0156】
時刻tb1以降では、第1入力軸34の回転数は、3速段で走行していたときの回転数から回転抵抗によって徐々に下がっている。また、5速駆動ギアG5aの回転数は、4速段で加速走行が行なわれ、徐々に上がっている。時刻tb2で両者の回転数の差が所定値D3になり、5速段へプレシフトする。
【0157】
モータ出力不可時には、使用する奇数段を、その奇数段の変速比より、変速比が大きい偶数段と小さい偶数段とが存在する奇数段にする。そして、この奇数段とその前後の偶数段を可能な限り使用して走行する。例えば、2速段(変速比の大きい偶数段)と4速段(変速比の小さい偶数段)とが存在する3速段(奇数段)を使用する。
【0158】
2速段で走行中の3速段プレシフト時には、図3に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合している。また、4速段で走行中の3速段プレシフト時には、図7に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合している。また、3速段で走行時には、図4に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合している。
【0159】
一方、4速段で走行中の5速段プレシフト時には、図8に示すように、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と5速駆動ギアG5aとを結合している。
【0160】
すなわち、2速段、3速段又は4速段を可能な限り使用することで、第1噛合機構SM1は、第1入力軸34と3速駆動ギアG3aとを結合したままの状態を保つことができ、奇数段のプレシフトが頻繁に発生することを防止し、第1クラッチC1や第1噛合機構SM1の摩耗を抑制することができる(第3発明の制御手段に相当)。
【0161】
第1実施形態では、モータ出力不可時には、可能な限り2速段、3速段又は4速段にて走行できるような変速マップに変更する。この変速マップはメモリ21bに記憶している。ここで、変速マップとは、車速と要求駆動力とに応じてギア段を割り当てたテーブルのことである。制御手段21a1は、車速と要求駆動力とから、この変速マップに応じて変速段を決定する。
【0162】
図13は、第1実施形態における、モータ出力不可時の車速及び要求駆動力とプレシフト及び変速との関係を示す変速マップの一例を示す。
【0163】
制御手段21a1は、図13に示す変速マップに応じて、車両の走行状態(ENG走行、EV走行、HEV走行の何れか)及び自動変速機31の変速段を決定する。この変速マップには、車速及び要求駆動力に対応して、1速段、3速段、及び5速段の各変速段に応じてEV走行可能領域の境界が、それぞれ「1E」、「3E」、「5E」で示す曲線で設定されている。これら曲線より図13の左下側(原点0)はEV走行可能領域であり、図13の右上側はEV走行不可能領域である。
【0164】
これにより、車両運転状態の変化により、車速と要求駆動力とによって定まる点が、EV走行可能領域内にあれば、原則として、EV走行と決定する。但し、蓄電池1のSOCがゾーンがBゾーン又はCゾーンにある場合は、図10を参照してEV走行不可であるので、ENG走行と決定する。あるいは、蓄電池1のSOCがAゾーンL又はBゾーンにある場合は、ENG走行と決定する。但し、Bゾーンの場合、状況に応じてHEV走行と決定することもある。
【0165】
一方、車速と要求駆動力とによって定まる点が、EV走行不可能領域内にあれば、ENG走行又はHEV走行と決定する。そして、蓄電池1のSOCがAゾーンMからDゾーンにある場合は、図10を参照してモータMGによるアシストを積極的に行わせるので、HEV走行と決定する。蓄電池1のSOCがAゾーンL又はBゾーンにある場合は、図10を参照してモータMGによるアシストを積極的に行わないので、ENG走行又はHEV走行と決定する。一方、蓄電池1のSOCがCゾーンにある場合は、図10を参照してEV走行不可であるので、ENG走行と決定する。
【0166】
この変速マップには、変速線図も設定されている。変速線図として、1速から2速へのアップシフト線(1→2)、2速から3速へのアップシフト線(2→3)、3速から4速へのアップシフト線(3→4)、及び4速から5速へのアップシフト線(4→5)の計4本のアップシフト線と、2速から1速へのダウンシフト線(2→1)、3速から2速へのダウンシフト線(3→2)、4速から3速へのダウンシフト線(4→3)、及び5速から4速へのダウンシフト線(5→4)の計4本のダウンシフト線とが設定されている。
【0167】
また、この変速マップには、プレシフト線図も設定されている。プレシフト線図として、1速から3速へのアッププレシフト線(プレシフト1→3)、2速から4速へのアッププレシフト線(図示省略)、3速から5速へのアッププレシフト線(プレシフト3→5)の計3本のアッププレシフト線と、3速から1速へのダウンプレシフト線(プレシフト3→1)、4速から2速へのダウンプレシフト線(図示省略)、5速から3速へのダウンプレシフト線(プレシフト5→3)の計3本のダウンプレシフト線とが設定されている。
【0168】
これにより、例えば、車両運転状態の変化により車速と要求駆動力とによって定まる点が、2速から3速へのアップシフト線(2→3)を図13の左方から右方に横切ると、原則として、制御手段21a1は、変速段を2速段から3速段にアップシフトする。あるいは、車両運転状態の変化により車速と要求駆動力とによって定まる点が、3速から2速へのダウンシフト線(3→2)を図13の右方から左方に横切ると、原則として、制御手段21a1は、変速段を3速段から2速段にダウンシフトする。
【0169】
プレシフトも同様に、車両運転状態の変化により車速と要求駆動力とによって定まる点が、3速から5速へのアッププレシフト線(プレシフト3→5)を図13の左方から右方に横切ると、制御手段21a1は、3速段から5速段にプレシフトする。5速から3速へのダウンプレシフト線(プレシフト5→3)を図13の右方から左方に横切ると、制御手段21a1は、5速段から3速段にプレシフトする。
【0170】
このように、車速又は要求駆動力が増加することで所定の条件を満たしてアップシフトした後に、アップシフトする前の変速段にダウンシフトするときの条件は、アップシフトしたときより車速又は要求駆動力が低いときにダウンシフトするようにする。また、車速又は要求駆動力が減少することで所定の条件を満たしてダウンシフトした後に、ダウンシフトする前の変速段にアップシフトするときの条件は、ダウンシフトしたときより車速又は要求駆動力が高いときにアップシフトするようにする。プレシフトも同様である。
【0171】
このようにすることで、変速マップ上で、車速と要求駆動力とによって決定される位置がプレシフト又は変速段の切り替えの境界付近にあるときに、車速又は要求駆動力のわずかな変化によって、プレシフト又は変速段の切り替えの発生を抑制している。
【0172】
すなわち、プレシフト又は変速段の切り替えにヒステリシスを設定している。例えば、図13の変速マップで、3速段から4速段へのアップシフト線と4速段から3速段へのダウンシフト線との間隔を大きく設定すると、ヒステリシスを大きく設定することになる。
【0173】
図13の変速マップに設定された変速線図は、蓄電池1のSOCや蓄電池1の温度などに応じて補正される。例えば、蓄電池1のSOCがAゾーンM以上にある場合、図10を参照してモータMGによりアシストが積極的を行うよう、各ダウンシフト線を上方にオフセットするよう補正される。但し、蓄電池1の温度が所定の閾値以上の温度であるとき、モータMGを積極的に作動させないように、蓄電池1のSOCがAゾーンM以上である場合であっても、各ダウンシフト線を上方にオフセットさせない。
【0174】
モータ出力不可時では、奇数段へのプレシフト及び変速において、第1噛合機構の摩擦力によって回転数を合わせるために、回転数合わせに時間がかかるため、モータ出力不可時以外のときに比べて、プレシフト及び変速のタイミングを早める。ここで、タイミングを早めるとは、アップシフト線及びアッププレシフト線では図13の左方へ、ダウンシフト線及びダウンプレシフト線では図13の右方へ設定することである。
【0175】
更に、モータ出力不可時には、モータMGが接続されている第1入力軸34側にある奇数段のプレシフト及び変速のヒステリシスを大きく設定する。こうすることで、変速マップ上で、プレシフト又は変速の境目に位置するような車速及び要求駆動力で走行しているときに、車速又は要求駆動力の変動で、頻繁にプレシフト又は変速が発生することを抑制する。このようにして、第1クラッチC1や第1噛合機構SM1の摩耗を抑制することができる(第2発明の制御手段に相当)。
【0176】
第1実施形態では、モータ出力不可時には、上記のようにヒステリシスを取った変速マップに変更する。この変速マップはメモリ21bに記憶している。
【0177】
従って、モータ出力不可時以外のときは、例えば、3速から5速へのアッププレシフト線(プレシフト3→5)は図13の位置より右方へ、5速から3速へのダウンプレシフト線(プレシフト5→3)は図13の位置より左方へ設定され、両者の間隔は狭くなる。2速から3速へのアップシフト線(2→3)は図13の位置より右方へ、3速から4速へのアップシフト線(3→4)は図13の位置より左方へ設定され、両者の間隔は狭くなる。3速から2速へのダウンシフト線(3→2)は図13の位置より右方へ、4速から3速へのダウンシフト線(4→3)は図13の位置より左方へ設定され、他の偶数段と奇数段のプレシフト及び変速についても同様である。
【0178】
第1実施形態では、変速マップとして、車速と要求駆動力とを変数として、第1入力軸34に連結する駆動ギアの切り替え、又は第1クラッチC1の伝達状態と開放状態との切り替えをしているが、例えば、モータMGの回転数と要求駆動力とによる効率によって決定してもよい。更に、モータMGの回転数と要求駆動力とによる発熱量に応じて決定してもよい。
【0179】
第1実施形態では、奇数段はモータMGが接続された第1入力軸34と出力軸33aによって構成され、偶数段はモータMGが接続されていない第2入力軸35と出力軸33aによって構成されているが、デュアルクラッチ式変速機を搭載したハイブリッド車両では、偶数段にモータMGが接続され、奇数段にモータMGが接続されていない構成であってもよい。
【0180】
また、変速機は5段変速機である必要はなく、例えば、7段変速機であってもよい。
【0181】
次に、第1実施形態のECU21のCPU21aによって実行される制御の処理について説明する。
【0182】
第1実施形態では、CPU21aが、本発明における制御手段21a1として動作する。
【0183】
図14は、制御手段21a1が実行する本発明の変速機の回転数制御の処理の手順を示すフローチャートである。本フローチャートで示される制御処理プログラムは、車両の運転状況の変化によって、奇数段の変速段のプレシフトが必要になったときに呼び出されて実行される。
【0184】
最初のステップST1は、蓄電池1のSOCが所定値α1より大きく且つ所定値α2未満であるか否かを判定する。所定値α1は、例えば、図9のBゾーンとCゾーンとの境目又はこの境目に所定値減じた値に設定される。所定値α2は、例えば、図9のDゾーンとAゾーンHとの境目又はこの境目に所定値加えた値に設定される。判定結果がNOのときは、ステップST2に進む。
【0185】
ステップST2では、変速マップを上述したようなモータ出力不可時用の変速マップに変更する。この変速マップは、上述したように、プレシフト及び変速で、偶数段より奇数段のヒステリシスが大きく設定され、且つ、2速段、3速段及び4速段が優先的に使用されるように設定されている。ステップST2の処理が、第2発明又は第3発明に相当する。
【0186】
また、ステップST2に進んだとき、蓄電池1のSOCが所定値α1以下のときは、減速回生の許可、アイドル充電の許可、アイドルストップの禁止、又は走行充電の許可を行なう。このようにして、蓄電池1のSOCがCゾーンより上のゾーンになるように制御する(第9発明の制御手段に相当)。
【0187】
蓄電池1のSOCが所定値α2以上のときは、アシスト(HEV走行)の許可、エンジン切り離しの禁止、又はDC/DCコンバータ3を介して蓄電池1の電力をバッテリ2に充電するように設定する。このようにして、蓄電池1のSOCがDゾーンより下のゾーンになるように制御する(第7発明、第8発明の制御手段に相当)。
【0188】
ステップST3では、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にするか否かを判定する。判定結果がNOのときは、ステップST4に進む。
【0189】
ステップST4では、3速段から4速段へアップシフトをした後で、5速側連結状態にするか否かを判定する。判定結果がNOのときは、ステップST5に進む。
【0190】
ステップST5では、上述のように、第1噛合機構SM1の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST5の処理が、第4発明の制御手段に相当する。
【0191】
ステップST4の判定結果がYESのときは、ステップST6に進み、上述のように、第1入力軸34の回転数が回転抵抗によって自然降下することで、第1入力軸34と5速駆動ギアG5aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST6の処理が、第6発明の制御手段に相当する。
【0192】
ステップST3の判定結果がYESのときは、ステップST7に進み、上述のように、第1クラッチC1の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a又は5速駆動ギアG5aとの回転数合わせ後にプレシフトする。
【0193】
ステップST1の判定結果がYESのときは、蓄電池1のSOCは、モータ回転数合わせを行なっても問題ないため、ステップST8に進み、モータMGによる回転数合わせが実行される。
【0194】
ステップST5、ST6、ST7、ST8の処理が終了したら、本制御処理を終了し、第1噛合機構SM1を伝達状態にすることで、第1入力軸34の駆動ギアを第1入力軸34に連結するように制御され、変速が必要な場合には、第1クラッチC1を伝達状態にする。
【0195】
ステップST3とステップST7の処理が第5発明の制御手段に相当する。
【0196】
以上のように、蓄電池1のSOCによってモータ回転合わせが行なえないと判定された場合(ステップST1でNO)、変速マップをモータ出力不可時用に変更する(ステップST2)。次に、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にする場合(ステップST3でYES)には、第1クラッチC1の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST7)。一方、それ以外の場合(ステップST3でNO)には、3速段から4速段にアップシフトをした後で、且つ5速側連結状態にするとき(ステップST4でYES)には、回転抵抗の自然降下で回転数合わせをする(ステップST6)。それ以外の場合(ステップST4でNO)には、第1噛合機構SM1の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST5)。
【0197】
従って、蓄電池1のSOCが上限又は下限に近いことによってモータMGによる回転数合わせができないときでも、蓄電池1に損傷を発生させないように変速及びプレシフトをして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供できる。
【0198】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。図15は、第2実施形態のハイブリッド車両の概略構成を示す。図15を参照しながら、第1実施形態との相違点について説明する。
【0199】
自動変速機31は、前進7段後進1段の変速段で構成されており、第1実施形態に対して前進段として6速段及び7速段の変速段が追加される。
【0200】
第1入力軸34に、変速比順位で奇数番目の変速段を確立する奇数番ギア列として、第1実施形態に7速ギア列G7が追加され、7速ギア列G7の駆動ギアG7aは第1入力軸34に回転自在に軸支される。また、変速比順位で偶数番目の変速段を確立する偶数番ギア列として、第1実施形態に6速ギア列G6が追加され、6速ギア列G6の駆動ギアG6aは第2入力軸35に回転自在に軸支される。
【0201】
出力軸33aには、6速駆動ギアG6a及び7速駆動ギアG7aに噛合する第3従動ギアGo3が、第1従動ギアGo1と第2従動ギアGo2と共に固定される。
【0202】
第2実施形態では、3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a及び7速駆動ギアG7aが第1入力軸34の駆動ギアに相当する。また、2速駆動ギアG2a、4速駆動ギアG4a及び6速駆動ギアG6aが第2入力軸35の駆動ギアに相当する。また、第1従動ギアGo1及び第2従動ギアGo2に第3従動ギアGo3が従動ギアに相当する。
【0203】
第1噛合機構SM1は、シンクロメッシュ機構で構成され、3速側連結状態、7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態、3速駆動ギアG3a及び7速駆動ギアG7aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第1入力軸34に設けられる。
【0204】
第2噛合機構SM2は、シンクロメッシュ機構で構成され、2速側連結状態、6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結した6速側連結状態、2速駆動ギアG2a及び6速駆動ギアG6aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第2入力軸35に設けられる。
【0205】
第4噛合機構SM4は、シンクロメッシュ機構で構成され、5速駆動ギアG5aと第1入力軸35とを連結した5速側連結状態、5速駆動ギアG5aと第1入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第1入力軸34に設けられる。
【0206】
第5噛合機構SM5は、シンクロメッシュ機構で構成され、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結した4速側連結状態、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替選択自在に第2入力軸35に設けられる。
【0207】
第2実施形態では、第1噛合機構SM1及び第4噛合機構SM4が、本発明における第3伝達手段に相当し、第2噛合機構SM2及び第5噛合機構SM5が、本発明における第4伝達手段に相当する。
【0208】
次に、上記のように構成された第2実施形態の自動変速機31の作動について説明する。1速段から3速段は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0209】
4速段を確立する場合、4速側連結状態とするときに、第2噛合機構SM2ではなく第5噛合機構SM5によって4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させる点が、第1実施形態と相違する。
【0210】
5速段を確立する場合、5速側連結状態とするときに、第1噛合機構SM1ではなく第4噛合機構SM4によって5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結させる点が、第1実施形態と相違する。
【0211】
また、5速段で走行中、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合は、第2噛合機構SM2を6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結する6速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、6速段へのアップシフトを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0212】
エンジンENGの駆動力を用いて6速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結させた6速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、6速ギア列G6及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
【0213】
6速段で走行中、ECU21が車両情報からダウンシフトを予測している場合は、第4噛合機構SM4を5速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
【0214】
逆に、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態、又は、この状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、ダウンシフト又はアップシフトを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
【0215】
6速段で走行中、減速回生又はHEV走行を行う場合は、動力伝達装置ECU21がダウンシフトを予測しているときには、第4噛合機構SM4を5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態とし、モータMGでブレーキをかければ減速回生、駆動力を伝達すればHEV走行を行うことができる。
【0216】
ECU21がアップシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態とし、モータMGによりブレーキをかければ減速回生、モータMGから駆動力を伝達させればHEV走行を行うことができる。
【0217】
エンジンENGの駆動力を用いて7速段を確立する場合は、第1噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態とする。7速段においては、第1クラッチC1が伝達状態とされることによりエンジンENGとモータMGとが直結された状態となるため、モータMGから駆動力を出力すればHEV走行を行うことができ、モータMGでブレーキをかけ発電すれば減速回生を行うことができる。
【0218】
尚、7速段でEV走行を行う場合は、第1クラッチC1を開放状態とすればよい。また、7速段でのEV走行中に、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、エンジンENGの始動を行うこともできる。
【0219】
ECU21は、7速段で走行中に車両情報から6速段へのダウンシフトが予測される場合は、第2噛合機構SM2を6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結させた6速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。これにより、6速段へのダウンシフトを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
【0220】
上記のように構成された自動変速機31に対して、制御手段21a1は、図13の変速マップに6速段、7速段が追加された変速マップに応じて、変速を制御する。
【0221】
次に、第2実施形態において、モータ出力不可時の回転数合わせについて説明する。
【0222】
モータ出力不可時の回転数合わせは、第1噛合機構SM1に加え第4噛合機構SM4の伝達過渡状態において発生する摩擦力によって行なわれる。3速側連結状態又は7速側連結状態にするときは、第1噛合機構SM1の摩擦力によって回転数合わせを行ない、5速側連結状態にするときは、第4噛合機構SM4の摩擦力によって回転数合わせを行なう。
【0223】
これによって、第1入力軸34の回転数と3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aの回転数との差を徐々に小さくして、この差が上述の所定値D1以下になったときに第1噛合機構SM1又は第4噛合機構SM4を伝達状態にして3速側連結状態、5速側連結状態又は7速側連結状態にする(第4発明の制御手段に相当)。
【0224】
また、偶数段で走行中に、奇数段側のプレシフトが完了していないときに、現在の偶数段より変速比の小さい奇数段への変速を行なう場合(第5発明の制御手段に相当)については、第1クラッチC1の摩擦力によって回転数合わせを行なう点は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。但し、上述のように7速段が追加されているため、2速段から3速段への変速、4速段から5速段への変速に加え、6速段から7速段への変速の場合にも第1クラッチC1の摩擦力で回転数合わせが行なわれる。
【0225】
また、奇数段で走行中に偶数段にアップシフトを行ない、更に加速されることで、一つ上の奇数段へプレシフトを行なう場合(第6発明の制御手段に相当)については、第1実施形態に、5速段で走行中に6速段にアップシフトを行ない、6速段で走行中に加速されることで7速段にプレシフトを行なう場合も追加される。この場合の回転抵抗による自然降下による回転数合わせは、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0226】
また、モータ出力不可時に、使用する奇数段を、その奇数段の変速比より変速比が大きい偶数段と小さい偶数段とが存在する奇数段とその前後の偶数段を可能な限り使用して走行する場合、第1実施形態では、前進5段の変速機であるため、2速段、3速段、4速段の変速段の組み合わせのみであったが、第2実施形態では、前進7段の変速機であるため、この組み合わせに加え、4速段(変速比の大きい偶数段)、5速段(奇数段)、6速段(変速比の小さい偶数段)の組み合わせも可能である(第3発明の制御手段に相当)。
【0227】
第2実施形態では、低速走行をしている場合には、2速段、3速段、4速段の組み合わせを使用し、高速走行している場合には、4速段、5速段、6速段の組み合わせを使用することができる。これによって、奇数段のプレシフトが頻繁に発生することを防止し、第1クラッチC1、第1噛合機構SM1及び第4噛合機構SM4の摩耗を抑制する。更に、車速に対して変速比が大きすぎる変速段又は変速比が小さすぎる変速段での走行を抑制することができる。
【0228】
次に、第2実施形態での制御手段21a1の回転数制御の処理について、図16を参照しながら説明する。
【0229】
ステップST11は、第1実施形態のステップST1と同様に、蓄電池1のSOCが所定値α1より大きく且つ所定値α2未満であるか否かを判定する。所定値α1及び所定値α2は、第1実施形態と同様に設定される。ステップST11の判定結果がNOのときは、ステップST12に進む。
【0230】
ステップST12では、第1実施形態のステップST2の処理の、2速段、3速段及び4速段の組み合わせが優先的に使用されるように設定されることに加え、4速段、5速段及び6速段の組み合わせも優先的に使用されるように設定される。どちらの組み合わせを優先的に使用するかは、上述したように、車両の走行状態(低速走行又は高速走行)に応じて変更される。
【0231】
次にステップST13に進み、第1実施形態のステップST3と同じように、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にするか否かを判定する。判定結果がNOのときは、ステップST14に進む。
【0232】
ステップST14では、3速段から4速段へアップシフトをした後で、5速側連結状態にするか否か、又は5速段から6速段へアップシフトをした後で、7速側連結状態にするか否かを判定する。どちらも条件を満たしていないときはNOとなり、どちらかが条件を満たしているときはYESとなる。ステップST14の判定結果がNOのときは、ステップST15に進む。
【0233】
ステップST15では、上述のように、第1噛合機構SM1又は第4噛合機構SM4の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST15の処理が、第4発明の制御手段に相当する。
【0234】
ステップST14の判定結果がYESのときは、ステップST16に進み、第1入力軸34の回転数が、回転抵抗によって自然降下することで、第1入力軸34と5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST16の処理が、第6発明の制御手段に相当する。
【0235】
ステップST13の判定結果がYESのときは、ステップST17に進み、第1クラッチC1の摩擦力で、第1入力軸34と3速駆動ギアG3a、5速駆動ギアG5a又は7速駆動ギアG7aとの回転数合わせ後にプレシフトする。ステップST13とステップST17の処理が第5発明の制御手段に相当する。
【0236】
ステップST11の判定結果がYESのときは、蓄電池1のSOCは、モータ回転数合わせを行なっても問題ないため、ステップST18に進み、モータMGによる回転数合わせが実行される。
【0237】
ステップST15、ST16、ST17、ST18の処理が終了したら、本制御処理を終了し、第1噛合機構SM1又は打4噛合機構SM4を伝達状態にすることで、第1入力軸34の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を第1入力軸34に連結するように制御され、変速が必要な場合には、第1クラッチC1を伝達状態にする。
【0238】
以上のように、第2実施形態では、蓄電池1のSOCによってモータ回転合わせが行なえないと判定された場合(ステップST11でNO)、変速マップをモータ出力不可時用に変更する(ステップST12)。次に、偶数段から奇数段へアップシフトをし、且つ第1クラッチC1を伝達状態にする場合(ステップST13でYES)には、第1クラッチC1の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST17)。一方、それ以外の場合(ステップST13でNO)には、3速段から4速段にアップシフトをした後で5速側連結状態か、又は5速段から6速段にアップシフトをした後で7速側連結状態にするとき(ステップST14でYES)には、回転抵抗の自然降下で回転数合わせをする(ステップST16)。それ以外の場合(ステップST14でNO)には、第1噛合機構SM1又は第4噛合機構SM4の摩擦力で回転数合わせをする(ステップST15)。
【0239】
従って、蓄電池1のSOCが上限又は下限に近いことによってモータMGによる回転数合わせができないときでも、蓄電池1に損傷を発生させないように変速及びプレシフトをして、走行に影響を与えないハイブリッド車両を提供できる。
【符号の説明】
【0240】
1…蓄電池(蓄電装置)、2…12Vバッテリ(第2蓄電装置)、3…DC/DCコンバータ、21…ECU、21a…CPU、21a1…制御手段、21b…メモリ、31…自動変速機、33a…出力軸、34…第1入力軸、35…第2入力軸、C1…第1クラッチ(第1伝達手段)、C2…第2クラッチ(第2伝達手段)、ENG…エンジン(内燃機関)、G2a…2速駆動ギア、G3a…3速駆動ギア、G4a…4速駆動ギア、G5a…5速駆動ギア、G6a…6速駆動ギア、G7a…7速駆動ギア、Go1…第1従動ギア、Go2…第2従動ギア、Go3…第3従動ギア、MG…モータ(電動機)、SM1…第1噛合機構(第3伝達手段)、SM2…第2噛合機構(第4伝達手段)、SM4…第4噛合機構(第3伝達手段)、SM5…第5噛合機構(第4伝達手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であって、
前記内燃機関及び前記電動機から入力された駆動力を変速して出力する変速機と、
前記電動機に給電するための蓄電装置と、
前記蓄電装置の蓄電量に応じて、前記変速機、前記内燃機関及び前記電動機を制御する制御手段とを備え、
前記変速機は、
前記電動機の駆動力及び前記内燃機関の駆動力が入力される第1入力軸と、
前記内燃機関の駆動力が入力される第2入力軸と、
前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を変速するための複数の駆動ギア(G3a、G5a、G7a又はG2a、G4a、G6a)と、
前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と噛合する複数の従動ギア(Go1、Go2、Go3)が固定され、前記駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とを介して変速された駆動力を出力する出力軸と、
前記内燃機関の駆動力の全部を前記第1入力軸に伝達する伝達状態、前記内燃機関の駆動力の一部を摩擦力により前記第1入力軸に伝達する伝達過渡状態、及び伝達しない開放状態を有する第1伝達手段と、
前記内燃機関の駆動力を前記第2入力軸に伝達する伝達状態、及び伝達しない開放状態を有する第2伝達手段と、
前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の全部を前記出力軸に伝達する伝達状態、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の一部を摩擦力により前記出力軸に伝達する伝達過渡状態、及び前記第1入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第3伝達手段と、
前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のいずれか1つを選択的に前記第2入力軸に連結することで、前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達する伝達状態、及び前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第4伝達手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を伝達状態として、前記第2入力軸に入力された前記内燃機関の駆動力により前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)を介して前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)が回転駆動しているときに、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つの駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するとき、
前記蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合には、前記第1入力軸の回転数が前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数になるように前記電動機を作動して、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第1の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とし、
前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記電動機の作動を停止し、前記第1伝達手段又は前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけること、或いは、前記第1入力軸の回転抵抗力によって前記第1入力軸の回転数が低下することにより、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記第1入力軸に連結する駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は前記第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えを、当該車両の駆動力を決定する変数の値に応じて行なうものであり、
前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)は、前記変数の値が増大して第1閾値以上になったとき切り替えられ、前記変数の値が減少して、前記第1閾値より小さい第2閾値以下になったとき、前記第1閾値以上になる前の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)に切り替えられ、
前記第1伝達手段は、前記変数の値が増大して第3閾値以上になったとき、伝達状態から開放状態へ切り替えられ、前記第3閾値以上になる前に前記第1入力軸に連結されていた前記駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)と同じ駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が前記第1入力軸に連結されている場合に、前記変数の値が減少して前記第3閾値より小さい第4閾値以下になったとき、開放状態から伝達状態へ切り替えられ、
前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも、前記第1閾値と前記第2閾値との差及び前記第3閾値と前記第4閾値との差を共に大きくすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両において、
前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)は、前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)と噛合うことで決定される変速比の大きさの順に、前記第1入力軸と前記第2入力軸とに交互に配置され、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、
前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のうち前記変速比の大きさの順に隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とが噛合うことで決定される2つの変速比の間の変速比を、前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)及び前記隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)のうちいずれか1つの駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a又はG6a)を介して、前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、
前記2つの変速比の間の変速比を前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にしていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも前記第3伝達手段を開放状態から伝達過渡状態にするタイミングを早め、前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合に、現時点で前記第2入力軸に連結されている前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にし、且つ前記第1伝達手段を伝達状態にするときは、
前記第1伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を伝達状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を開放状態として、前記第1入力軸の駆動ギアのうち変速比の大きい駆動ギア(G3a又はG5a)を介して変速された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、
前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段を伝達状態とし、前記伝達している駆動ギア(G3a又はG5a)と前記従動ギア(Go1又はGo2)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように前記第4伝達手段を伝達状態とした後に、
前記選択された駆動ギア(G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するときに、
前記第1伝達手段の開放により、前記第1入力軸の回転抵抗力によって減少していく前記第1入力軸の回転数と、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数との差が、前記第2の所定値以下になったとき、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、
前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうこと、又は前記第1伝達手段を伝達状態のまま前記内燃機関を停止して前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項8】
請求項7に記載のハイブリッド車両において、
当該車両の車載機器の電源である第2蓄電装置を備え、
前記第2蓄電装置は、前記制御手段による制御下で、前記蓄電装置から供給される電力によって充電可能に構成され、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、前記第2蓄電装置に前記蓄電装置から電力を供給することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下の場合には、
前記内燃機関の駆動力によって前記電動機を回転駆動させて前記蓄電装置を充電すること、当該車両の減速時に前記電動機の回生によって前記蓄電装置を充電すること、又は前記内燃機関の停止を禁止することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項1】
内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であって、
前記内燃機関及び前記電動機から入力された駆動力を変速して出力する変速機と、
前記電動機に給電するための蓄電装置と、
前記蓄電装置の蓄電量に応じて、前記変速機、前記内燃機関及び前記電動機を制御する制御手段とを備え、
前記変速機は、
前記電動機の駆動力及び前記内燃機関の駆動力が入力される第1入力軸と、
前記内燃機関の駆動力が入力される第2入力軸と、
前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を変速するための複数の駆動ギア(G3a、G5a、G7a又はG2a、G4a、G6a)と、
前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と噛合する複数の従動ギア(Go1、Go2、Go3)が固定され、前記駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とを介して変速された駆動力を出力する出力軸と、
前記内燃機関の駆動力の全部を前記第1入力軸に伝達する伝達状態、前記内燃機関の駆動力の一部を摩擦力により前記第1入力軸に伝達する伝達過渡状態、及び伝達しない開放状態を有する第1伝達手段と、
前記内燃機関の駆動力を前記第2入力軸に伝達する伝達状態、及び伝達しない開放状態を有する第2伝達手段と、
前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の全部を前記出力軸に伝達する伝達状態、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つを選択的に前記第1入力軸に連結することで、前記第1入力軸に入力された駆動力の一部を摩擦力により前記出力軸に伝達する伝達過渡状態、及び前記第1入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第3伝達手段と、
前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のいずれか1つを選択的に前記第2入力軸に連結することで、前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達する伝達状態、及び前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しない開放状態を有する第4伝達手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を伝達状態として、前記第2入力軸に入力された前記内燃機関の駆動力により前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)を介して前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)が回転駆動しているときに、前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a、G7a)のいずれか1つの駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するとき、
前記蓄電量が所定の下限値と所定の上限値との間の値である場合には、前記第1入力軸の回転数が前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数になるように前記電動機を作動して、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第1の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とし、
前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記電動機の作動を停止し、前記第1伝達手段又は前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけること、或いは、前記第1入力軸の回転抵抗力によって前記第1入力軸の回転数が低下することにより、前記第1入力軸の回転数と前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数との差が第2の所定値以下になったとき、前記第3伝達手段を伝達状態とすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記第1入力軸に連結する駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の切り替え、又は前記第1伝達手段の伝達状態と開放状態との切り替えを、当該車両の駆動力を決定する変数の値に応じて行なうものであり、
前記第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)は、前記変数の値が増大して第1閾値以上になったとき切り替えられ、前記変数の値が減少して、前記第1閾値より小さい第2閾値以下になったとき、前記第1閾値以上になる前の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)に切り替えられ、
前記第1伝達手段は、前記変数の値が増大して第3閾値以上になったとき、伝達状態から開放状態へ切り替えられ、前記第3閾値以上になる前に前記第1入力軸に連結されていた前記駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)と同じ駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)が前記第1入力軸に連結されている場合に、前記変数の値が減少して前記第3閾値より小さい第4閾値以下になったとき、開放状態から伝達状態へ切り替えられ、
前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも、前記第1閾値と前記第2閾値との差及び前記第3閾値と前記第4閾値との差を共に大きくすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両において、
前記複数の駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a、G6a、G7a)は、前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)と噛合うことで決定される変速比の大きさの順に、前記第1入力軸と前記第2入力軸とに交互に配置され、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、
前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a、G6a)のうち前記変速比の大きさの順に隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)と前記従動ギア(Go1、Go2、Go3)とが噛合うことで決定される2つの変速比の間の変速比を、前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)及び前記隣り合う2つの駆動ギア(G2a、G4a又は、G4a、G6a)のうちいずれか1つの駆動ギア(G2a、G3a、G4a、G5a又はG6a)を介して、前記第1入力軸又は前記第2入力軸に入力された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、
前記2つの変速比の間の変速比を前記従動ギア(Go1又はGo2)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G3a又はG5a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にしていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合には、前記蓄電量が前記下限値と前記上限値との間の値である場合よりも前記第3伝達手段を開放状態から伝達過渡状態にするタイミングを早め、前記第3伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下又は前記上限値以上の場合に、現時点で前記第2入力軸に連結されている前記第2入力軸の駆動ギア(G2a、G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go1、Go2又はGo3)と噛合うことで決定する第1入力軸の駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にし、且つ前記第1伝達手段を伝達状態にするときは、
前記第1伝達手段を伝達過渡状態として前記第1入力軸の回転数を前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G3a、G5a又はG7a)の回転数に近づけることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を伝達状態とし、前記第2伝達手段及び前記第4伝達手段を開放状態として、前記第1入力軸の駆動ギアのうち変速比の大きい駆動ギア(G3a又はG5a)を介して変速された駆動力を前記出力軸に伝達しているとき、
前記第1伝達手段及び前記第3伝達手段を開放状態とし、前記第2伝達手段を伝達状態とし、前記伝達している駆動ギア(G3a又はG5a)と前記従動ギア(Go1又はGo2)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第2入力軸の駆動ギア(G4a又はG6a)を選択するように前記第4伝達手段を伝達状態とした後に、
前記選択された駆動ギア(G4a又はG6a)と前記従動ギア(Go2又はGo3)とが噛合うことで決定される変速比より小さい変速比を、前記従動ギア(Go2又はGo3)と噛合うことで決定する前記第1入力軸の駆動ギア(G5a又はG7a)を前記第1入力軸に連結するときに、
前記第1伝達手段の開放により、前記第1入力軸の回転抵抗力によって減少していく前記第1入力軸の回転数と、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)の回転数との差が、前記第2の所定値以下になったとき、前記第1入力軸に連結される駆動ギア(G5a又はG7a)を選択するように前記第3伝達手段を伝達状態にすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、
前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうこと、又は前記第1伝達手段を伝達状態のまま前記内燃機関を停止して前記電動機の駆動力のみによる走行を行なうことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項8】
請求項7に記載のハイブリッド車両において、
当該車両の車載機器の電源である第2蓄電装置を備え、
前記第2蓄電装置は、前記制御手段による制御下で、前記蓄電装置から供給される電力によって充電可能に構成され、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記上限値以上の場合には、前記第2蓄電装置に前記蓄電装置から電力を供給することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記蓄電量が前記下限値以下の場合には、
前記内燃機関の駆動力によって前記電動機を回転駆動させて前記蓄電装置を充電すること、当該車両の減速時に前記電動機の回生によって前記蓄電装置を充電すること、又は前記内燃機関の停止を禁止することを特徴とするハイブリッド車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−6527(P2012−6527A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145625(P2010−145625)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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