パターン計測装置、パターン計測方法およびプログラム
【課題】少ない情報で波形ライブラリの作成を可能にし、かつ、小さな波形ライブラリで高い計測分解能を達成する。
【解決手段】プロセスパラメータを変化させてパターンの断面形状をシミュレーションにて予測し、予測した断面形状から分光波形をシミュレーションにて算出し、各プロセスパラメータに対応づけることにより波形ライブラリを形成する。該波形ライブラリを参照することにより、所望の形状が得られるように設定されたプロセスパラメータを用いて実際に作成された計測対象としてのパターンから実際に取得した分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出し、得られた最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成して計測を行う。
【解決手段】プロセスパラメータを変化させてパターンの断面形状をシミュレーションにて予測し、予測した断面形状から分光波形をシミュレーションにて算出し、各プロセスパラメータに対応づけることにより波形ライブラリを形成する。該波形ライブラリを参照することにより、所望の形状が得られるように設定されたプロセスパラメータを用いて実際に作成された計測対象としてのパターンから実際に取得した分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出し、得られた最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成して計測を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン計測装置、パターン計測方法およびプログラムに関し、例えば光を用いたパターンの断面計測を対象とする。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造には、リソグラフィ工程や成膜工程およびエッチング工程等の製造工程に加えて、歩留まり向上のために、これらの工程により作成される微細パターンの計測工程が必須となっている。パターン計測としては、従来、CDSEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)を用いたCD計測が実施されている。
【0003】
近年、デバイスに対する高性能化、高機能化の要求を満たすために、パターンはそのサイズが微細になってきているだけでなく、ダブルパターニング技術に代表されるようにその二次元および三次元的な形状もますます複雑になってきている。これら複雑な形状のパターンを評価するためには、パターン断面の特定部分のCDのみを計測する従来のCD計測と異なり、パターンの断面形状を計測する必要がある。従来、パターンの断面計測としては、断面SEMやTEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)等の破壊計測による方法が用いられているが、非破壊でパターン断面を計測したいという要求の高まりから、近年、光を用いた光波散乱計測(scatterometry:スキャトロメトリ)が台頭してきた。スキャトロメトリは、計測対象パターンに光を照射し、その反射光の分光波形を、予め数値計算により構築したパターン断面形状に依存する波形ライブラリを参照することで、対応するパターン断面形状を推定する手法である。
【0004】
スキャトロメトリには、非破壊計測であることに加え、CDは勿論、パターンの高さや側壁角等をも計測できるという長所がある。この一方、スキャトロメトリには、波形ライブラリを予め構築することが必須となり、これに多大な労力を要するという問題点がある。特に、パターン断面形状を台形等で近似したモデルを作成するためには、プロセス変動に対応したパターン断面形状の変化を予め知る必要があり、そのためにはパターンの断面写真を見てモデリングするノウハウが要求される。このように、高精度の計測結果を得るためには良い波形ライブラリを作成するための多大なコスト(熟練した技術者の労力と時間)がかかり、大きな負担となっていた。また、このようにコストを費やして計測を実施しても、プロセス変動等の要因で波形ライブラリに含まれない想定外のパターン断面形状に対しては、正しい計測値が出ないという計測ロバストネスの問題もあった。
【特許文献1】特開2005−142535
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少ない情報で波形ライブラリを作成でき、かつ、小さな波形ライブラリにもかかわらず高い計測分解能を達成することが可能なパターン計測装置、パターン計測方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する断面形状取得手段と、前記複数の断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出するシミュレータと、を含み、算出された前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加して波形ライブラリを形成するライブラリ作成手段と、
所望の形状が得られるように設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンを実際に作成して得られた計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する分光波形取得手段と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出するプロセスパラメータ算出手段と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する断面形状生成手段と、
前記最適なパターン断面形状を計測する計測手段と、
を備えるパターン計測装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する過程と、
取得した複数の前記断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、算出した前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加することにより波形ライブラリを形成する過程と、
所望の形状が得られるようにプロセスパラメータを設定し、設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンから実際に作成された計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する過程と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出する過程と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する過程と、
前記最適なパターン断面形状を計測する過程と、
を備えるパターン計測方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少ない情報で波形ライブラリを作成でき、かつ、小さな波形ライブラリにもかかわらず高い計測分解能を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。各図において同一の部分には同一の参照番号を付し、その重複説明は適宜省略する。また、以下の実施の形態では、リソグラフィ工程やエッチング工程等の半導体装置の製造工程で作成される微細パターンを計測する場合を取り上げて説明するが、本発明はこの場合に限定されるものでは決してなく、例えば、液晶パネル製造工程等他の様々な産業分野におけるパターン評価全般に適用可能である点に留意されたい。
【0010】
(1)パターン計測装置の実施の一形態
図1は、本発明にかかるパターン計測装置の実施の一形態の概略構成を示すブロック図である。同図に示すパターン計測装置1は、光源10と、偏光子12と、ステージSと、検光子14と、アレイ状の検出器16と、コンピュータ20と、ライブラリ作成部30と、記憶装置MR1,MR3とを備える。光源110は、白色光を発光する。ステージSは、回転運動(RV方向)および並進運動(TR方向)によりウェーハWを移動する。ウェーハWの表面には、任意のパターンをウェーハW上に実際に作成して得られた計測対象としてのパターンTPが作成されている。パターンTPの作成に際して所望の形状が得られるようにプロセスパラメータが設定され、設定されたプロセスパラメータを用いてパターンTPがウェーハWの表面に作成される。検出器16は分光器を含み、パターンTPの実際の分光波形を出力する。本実施形態において、光源10、偏光子12、ステージS、検光子14および検出器16は、例えば分光波形取得手段に対応する。
【0011】
コンピュータ20は、ライブラリ作成部30、記憶装置MR1,MR3に接続される。コンピュータ20は、後述する本発明にかかるパターン計測方法の実施の形態の各処理過程を記述したレシピファイルを記憶装置MR1から読み込み、後述するライブラリ作成およびパターン計測を実行する。記憶装置MR1は、複数の記憶領域を有し、上述のレシピファイルを格納する他、検出器16からコンピュータ20へ送られた、パターンTPの実際の分光波形図を格納する。
【0012】
ライブラリ作成部30は、コンピュータ20の制御信号を受けて後述する処理過程により波形ライブラリを作成する。
【0013】
図2は、図1に示すパターン計測装置1が備えるコンピュータ20およびライブラリ作成部30のより詳細な構成を示すブロック図である。
【0014】
図2に示すように、コンピュータ20は、制御部22、プロセスパラメータ算出部24、断面形状生成部26およびパターン断面形状計測部28を含む。制御部22は、プロセスパラメータ算出部24、断面形状生成部26およびパターン断面形状計測部28の他、記憶装置MR1,MR3にも接続され、プロセスパラメータ算出部24、断面形状生成部26、パターン断面形状計測部28および記憶装置MR1,MR3に制御信号を供給する。プロセスパラメータ算出部24は、検出器16に接続され、検出器16から計測対象としてのパターンTPの実際の分光波形の入力を受け、制御部22を介して記憶装置MR3に格納された波形ライブラリを参照しながら、実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出する。断面形状生成部26は、プロセスパラメータ算出部24およびパターン断面形状計測部28にも接続され、プロセスパラメータ算出部24から最適なプロセスパラメータの供給を受けてこれに対応する最適なパターン断面形状を生成する。パターン断面形状計測部28は、本実施形態において、例えば計測手段に対応し、断面形状生成部26から最適なパターン断面形状の供給を受けて計測を行う。
【0015】
ライブラリ作成部30は、第1シミュレータ32および第2シミュレータ34を含む。第1シミュレータ32は、本実施形態において例えば断面形状取得手段に対応する。第2シミュレータ34は、第1シミュレータ32および記憶装置MR3に接続される。第2シミュレータ34は、本実施形態において例えばシミュレータに対応する。
【0016】
第1シミュレータ32は、図示しない入力手段を介してパターンTPの設計データおよび複数のプロセスパラメータの入力を受け、パターンTPの仕上がりにおける断面形状を予測し、プロセスパラメータの数量に応じた数の予測断面形状を出力し、第2シミュレータ34に供給する。第2シミュレータ34は、図示しない入力手段からシミュレーションパラメータの供給を受け、第1シミュレータ32から与えられた予測断面形状を用いてパターンTPに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、各予測分光波形に、それぞれ対応するプロセスパラメータの情報を付加して波形ライブラリを形成し、記憶装置MR3に格納する。
【0017】
図1に示すパターン計測装置1のより具体的な動作について、本発明にかかるパターン計測方法の実施の形態として、図3乃至図10を参照しながら説明する。
【0018】
(2)パターン計測方法の第1の実施の形態
図3は、本発明にかかるパターン計測方法の第1の実施の形態における処理過程を概略的に示すフローチャートであり、また、図4は、図3に示す処理過程のうち、波形ライブラリの作成方法の詳細過程を示すフローチャートである。以下では、図5に示すようなほぼ台形の断面形状を有するラインパターンLPを取り上げて説明する。
【0019】
最初に、ラインパターンLPついて波形ライブラリを作成する(図3、ステップS10)。図4を参照しながらより詳細に説明すると、まず、ラインパターンLPを作成するためのプロセスパラメータの範囲とウェーハW上での位置範囲を設定する(ステップS11)。ラインパターンLPは、幾つかのパターン製造工程を経て作成され、前述したとおり、狙いの形状通りのパターンが作成されるようにプロセスパラメータが設定される。しかしながら、現実の製造工程ではプロセスパラメータの予期しない変動が生じ、この変動に応じてその形状が変動する。例えばエッチング工程による配線パターンでは、ガス流量や圧力およびRF(Radio Frequency)パワー等により、リソグラフィ工程によるレジストパターンの形状がフォーカス(Focus)位置とドーズ(Dose)量とにより変動する。従って、波形ライブラリの作成に使用するプロセスパラメータは、現実の加工工程でのばらつきを考慮して様々な値を設定する必要がある。しかしながら、本実施形態では、説明を簡易にするため、二つのプロセスパラメータAとBとでパターンの形状が規定されるとする。プロセスパラメータAとしてA1、A2、A3の3通りの値を設定し、パラメータBとしてB1、B2、B3の3通りの値を設定し、設定したそれぞれの値をライブラリ作成部30の第1シミュレータ32に入力する。
【0020】
次に、第1シミュレータ32により、設定した範囲内でプロセスパラメータを変動させてラインパターンLPの形状シミュレーションを実行し、パターン断面形状を予測する(図4、ステップS12)。プロセスパラメータの変動に際しては、例えばA2、B2の値をパラメータのターゲット値と規定し、A1、B1の値をパラメータの下限値、A3、B3の値を上限値と規定する。ここで、上限値および下限値は実際のプロセスの変動幅から決定すればよい。
【0021】
結果として、図6に示すように、パラメータ平面の9個の座標点上でパターン断面形状シミュレーションが行われる。このようなシミュレーション技術として、近年では物理法則をベースにしたT−CAD(Technical−Computer Aided Design)技術を用いることが可能である。なお、シミュレーションによらず、上記9個の条件で実際にラインパターンLPを加工し、その断面形状を断面SEMやAFM(Atomic Force Microscope)等で取得してもよい。
【0022】
次に、このようにして得られたパターン予測断面形状に、第2シミュレータ34により光学シミュレーションを実行し、ラインパターンLPに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、算出した予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報を付加して波形ライブラリを形成する(ステップS13)。
【0023】
光学シミュレーションは、後述する処理過程で計測対象としてのパターンTPの分光波形を実際に取得する際に使用する光Liの波長や入射角度θ等の条件で行う。
【0024】
従来のスキャトロメトリではパターンの断面形状が変動することを見越してパターン断面形状を幾つかの形状パラメータで表現し、それらを変化させて波形ライブラリを作成していたが、本実施形態の特徴は、形状パラメータを変化させる代わりに、プロセスパラメータを変化させて波形ライブラリを作成する点にある。
【0025】
一見すると、従来技術のように形状パラメータを用いて波形ライブラリを構築する方が合理的であるかのように思える。しかしながら、最終目的はパターンの形状を得ることであり、新しい製造工程の場合のように、作成されるパターンの断面形状についての知見が少ない場合は、パターンの変化として無限のバリエーションを考えなければならないため、ライブラリ作成に多大の労力を強いられることになる。本実施形態によれば、プロセスパラメータをもとに波形ライブラリを作成するので、設定値およびそのばらつきを考慮すれば足り、波形ライブラリを比較的小さくすることが可能になる。
【0026】
形状パラメータとして、例えば図7に示すような台形モデリングを採用した場合、例えば図8に示すように8個の台形を組み合わせて16個もの形状パラメータによる波形ライブラリを作成する必要がある。計測対象パターンの形状がより複雑である場合や、より高い計測精度が要求される場合は、更にパラメータが増えることになる。ここで、従来の技術における問題は、パラメータの数ではなく、予めパターンに対する知見がなければいかなる波形ライブラリも作成できない点にある。このため、最初は最も単純な一つの台形によるモデルによる波形ライブラリから始め、その結果を参照しながら徐々に複雑な形状に対応するという手順をとる場合があった。この手続きを容易にするために、予めパターン断面形状を断面SEM等により観察したり、パターン断面形状をコンピュータシミュレーションで計算したりして、ある程度までパターン断面形状の変動を予測することも実施されていた。しかしながら、断面SEM写真やシミュレーション結果を取得するためには多大な労力が必要であった。
【0027】
本実施形態によれば、デバイスの工程やウェーハ上の位置等、最小限の情報があれば波形ライブラリを作成することが可能になる。
【0028】
図3に戻り、設定されたプロセスパラメータを用いてラインパターンLPをウェーハW上に実際に作成して得られた計測対象としてのパターンTPに光源10から光Liを照射し、検光子14を介して検出器16に反射回折光Lrを取り込むことにより、実際にパターンTPの分光波形を取得する(ステップS30)。
【0029】
次に、実際に得られた分光波形と波形ライブラリの分光波形とのマッチングを行う(ステップS40)。この結果、マッチング毎にマッチングスコアが得られる。図6に示す例では9個のマッチングスコアが得られることになる。
【0030】
続いて、応答曲面法により最大のマッチングスコアを与える最適なパラメータ座標を求める(ステップS50)。本実施形態では、図6のグラフ上で座標(Am、Bm)にて特定される点が最大のスコアを与えるものとする。従って、計測対象としてのパターンTPはパラメータAをAm、パラメータBをBmという条件で作成されているものと推定できる。
【0031】
次に、最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する(図3、ステップS60)。そのような形状は、シミュレーションを実施しても導出可能である。しかしながら、本実施形態では、計測のリアルタイム性を損なわずに所望の結果を得るために、モーフィング技術を用いて最適なプロセスパラメータ(Am、Bm)に近似する複数のプロセスパラメータに対応するパターンのパターン断面形状を、プロセスパラメータ間の大小関係に応じた割合で合成することにより求める。モーフィングとは、形状Aから形状Bへ連続的に変形していく様を動画で表示する場合に、中割り、即ち異なる形状間の形状を生成する画像処理技術である。この技術を用いて、本実施形態では(Am、Bm)の周囲の4つの座標、即ち、(A2、B2)、(A2、B3)、(A3、B2)、(A3、B3)におけるシミュレーション形状を合成して、(Am、Bm)における形状を予測する。説明を簡単にするために、図9に示すように一次元のモーフィングの場合を説明する。この例では、パターンAとパターンBとの形状を2:8との比率で合成した新たなパターン形状を次の手順により生成している。
【0032】
1.シミュレーションの際に、パターンAとBとで互いに対応する点を設定する。
2.パターンAとBとを任意の離れた距離に置いた上で互いに対応する点同士を線分で繋ぎ、その線分を8:2に分ける点を生成する。
3.上記生成された点を接続して新たなパターンを生成する。
【0033】
上述した方法は、容易に二次元に拡張することができ、その結果、図10(b)に示すように、(Am、Bm)の条件で作成されたパターンの予測断面形状を得ることができる。なお、参考のため、座標(A2、B2)および(A3、B2)の各条件で作成されたパターンの予測断面形状をそれぞれ図10の(a)および(c)に示す。
【0034】
最後に、このようにして生成された最適なパターン断面形状に対して計測を実施する(図3、ステップS70)ことでCD等所望の結果を得ることができる。
【0035】
(3)パターン計測方法の第2の実施の形態
上述した第1の実施の形態では、ラインパターンLPの断面形状をシミュレーションから得ていたが、本実施形態の特徴は、波形ライブラリの作成に際し、断面SEMまたはAFMによる実際のパターン計測結果からラインパターンLPの断面形状を得る点にある。この場合、前述した実施の形態と異なり、次の二つのステップが必要になる。一つは、波形ライブラリの作成の詳細過程において、図4のステップS12に対応するステップにおいて、図11に示すように、得られた断面SEM画像(ステップS22)に対して輪郭検出を行う過程(ステップS23)である。これは、断面SEM画像の輪郭が自明ではない点に起因するものである。もう一つ追加されるステップは、断面形状を合成する際(図3、ステップS60)に、対応点をとるステップである。後者のステップを実現するためにも様々な方法が考えられるが、本実施例では、下記の文献で提案されているロバスト・ポイント・マッチング(Robust point matching)の手法を用いる。
【0036】
Haili Chui、 Anand Rangarajan、 A new algorithm for non−rigid point matching、 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR)、 volume II、 44−51、 2000。
【0037】
その他の処理ステップは、第1の実施の形態と同一であるため、重複説明は省略する。
【0038】
本実施形態によれば、波形ライブラリの作成に際して実際にパターンを作成するので、その分だけ煩雑なステップを必要とするが、第1の実施の形態と比較してより精度の高い波形ライブラリを得ることができる。
【0039】
(4)プログラム
上述した実施の形態においては、パターン計測方法の一連の手順を、レシピファイルとして記憶装置MR1に記憶させてパターン計測装置1に読み込ませて実行させた。しかしながら、上述したパターン計測方法の一連の手順は、これをプログラムに組み込んで汎用のコンピュータに読み込ませて実行させても良い。これにより、本発明にかかるパターン計測方法を、パターンの分光波形を取得する装置に接続され、画像処理可能な汎用コンピュータを用いて実現することができる。また、上述したパターン計測方法の一連の手順をコンピュータに実行させるプログラムとしてフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、パターンの分光波形を取得する装置に接続され、画像処理可能な汎用コンピュータに読み込ませて実行させても良い。
【0040】
記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の携帯可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でも良い。また、上述したパターン計測方法の一連の手順を組込んだプログラムをインターネット等の通信回線(無線通信を含む)を介して頒布しても良い。
【0041】
(5)半導体装置の製造方法
上述したパターン計測方法を、例えば半導体装置の製造工程中で用いることにより、高い効率および分解能でパターンを評価することができるので、短いTAT(Turn Around Time)で、並びに、より高いスループットおよび歩留まりで半導体装置を製造することができる。
【0042】
より具体的には、製造ロット単位で基板を抜き出し、抜き出された基板に作成されたパターンを上述した計測方法により計測して評価する。評価の結果、良品と判定された場合、計測された基板が属する製造ロット全体について、引き続き残余の製造プロセスを実行する。この一方、評価の結果不良品と判定された場合でリワーク処理が可能な場合には、不良品と判定された基板が属する製造ロットに対してリワーク処理を実行する。リワーク処理が終了すると、その製造ロットから基板を抜き取って再度パターンを計測して再評価する。抜き取られた基板が再評価により良品と判定されると、リワーク処理を終えたその製造ロットに対し残余の製造プロセスを実行する。また、リワーク処理が不可能な場合には、不良品と判定された基板が属する製造ロットは廃棄し、不良発生原因を解析して設計担当や上流のプロセス担当等へフィードバックする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかるパターン計測装置の実施の一形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すパターン計測装置が備えるコンピュータおよびライブラリ作成部のより詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るパターン計測方法の第1の実施の形態における処理過程を概略的に示すフローチャートである。
【図4】図3に示す処理過程のうち、波形ライブラリの作成方法の詳細過程を示すフローチャートである。
【図5】計測対象パターンの一例の断面形状を示す図である。
【図6】パターン断面形状シミュレーションの結果の一例を示すグラフである。
【図7】従来の技術による波形ライブラリ作成方法を説明する図である。
【図8】従来の技術による波形ライブラリ作成方法を説明する図である。
【図9】モーフィング技術の説明図である。
【図10】モーフィング技術を用いた断面形状の合成により生成された最適なパターン断面形状の一例を示す図である。
【図11】本発明にかかるパターン計測方法の第2の実施の形態における波形ライブラリの作成方法の詳細過程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1:パターン計測装置
10:光源
12:偏光子
14:検光子
16:検出器
20:コンピュータ
22:制御部
24:プロセスパラメータ算出部
26:断面形状生成部
28:パターン断面形状計測部
30:ライブラリ作成部
32:第1シミュレータ
34:第2シミュレータ
Li:入射光
Lr:反射回折光
MR1,MR3:記憶装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン計測装置、パターン計測方法およびプログラムに関し、例えば光を用いたパターンの断面計測を対象とする。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造には、リソグラフィ工程や成膜工程およびエッチング工程等の製造工程に加えて、歩留まり向上のために、これらの工程により作成される微細パターンの計測工程が必須となっている。パターン計測としては、従来、CDSEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)を用いたCD計測が実施されている。
【0003】
近年、デバイスに対する高性能化、高機能化の要求を満たすために、パターンはそのサイズが微細になってきているだけでなく、ダブルパターニング技術に代表されるようにその二次元および三次元的な形状もますます複雑になってきている。これら複雑な形状のパターンを評価するためには、パターン断面の特定部分のCDのみを計測する従来のCD計測と異なり、パターンの断面形状を計測する必要がある。従来、パターンの断面計測としては、断面SEMやTEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)等の破壊計測による方法が用いられているが、非破壊でパターン断面を計測したいという要求の高まりから、近年、光を用いた光波散乱計測(scatterometry:スキャトロメトリ)が台頭してきた。スキャトロメトリは、計測対象パターンに光を照射し、その反射光の分光波形を、予め数値計算により構築したパターン断面形状に依存する波形ライブラリを参照することで、対応するパターン断面形状を推定する手法である。
【0004】
スキャトロメトリには、非破壊計測であることに加え、CDは勿論、パターンの高さや側壁角等をも計測できるという長所がある。この一方、スキャトロメトリには、波形ライブラリを予め構築することが必須となり、これに多大な労力を要するという問題点がある。特に、パターン断面形状を台形等で近似したモデルを作成するためには、プロセス変動に対応したパターン断面形状の変化を予め知る必要があり、そのためにはパターンの断面写真を見てモデリングするノウハウが要求される。このように、高精度の計測結果を得るためには良い波形ライブラリを作成するための多大なコスト(熟練した技術者の労力と時間)がかかり、大きな負担となっていた。また、このようにコストを費やして計測を実施しても、プロセス変動等の要因で波形ライブラリに含まれない想定外のパターン断面形状に対しては、正しい計測値が出ないという計測ロバストネスの問題もあった。
【特許文献1】特開2005−142535
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少ない情報で波形ライブラリを作成でき、かつ、小さな波形ライブラリにもかかわらず高い計測分解能を達成することが可能なパターン計測装置、パターン計測方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する断面形状取得手段と、前記複数の断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出するシミュレータと、を含み、算出された前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加して波形ライブラリを形成するライブラリ作成手段と、
所望の形状が得られるように設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンを実際に作成して得られた計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する分光波形取得手段と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出するプロセスパラメータ算出手段と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する断面形状生成手段と、
前記最適なパターン断面形状を計測する計測手段と、
を備えるパターン計測装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する過程と、
取得した複数の前記断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、算出した前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加することにより波形ライブラリを形成する過程と、
所望の形状が得られるようにプロセスパラメータを設定し、設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンから実際に作成された計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する過程と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出する過程と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する過程と、
前記最適なパターン断面形状を計測する過程と、
を備えるパターン計測方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少ない情報で波形ライブラリを作成でき、かつ、小さな波形ライブラリにもかかわらず高い計測分解能を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。各図において同一の部分には同一の参照番号を付し、その重複説明は適宜省略する。また、以下の実施の形態では、リソグラフィ工程やエッチング工程等の半導体装置の製造工程で作成される微細パターンを計測する場合を取り上げて説明するが、本発明はこの場合に限定されるものでは決してなく、例えば、液晶パネル製造工程等他の様々な産業分野におけるパターン評価全般に適用可能である点に留意されたい。
【0010】
(1)パターン計測装置の実施の一形態
図1は、本発明にかかるパターン計測装置の実施の一形態の概略構成を示すブロック図である。同図に示すパターン計測装置1は、光源10と、偏光子12と、ステージSと、検光子14と、アレイ状の検出器16と、コンピュータ20と、ライブラリ作成部30と、記憶装置MR1,MR3とを備える。光源110は、白色光を発光する。ステージSは、回転運動(RV方向)および並進運動(TR方向)によりウェーハWを移動する。ウェーハWの表面には、任意のパターンをウェーハW上に実際に作成して得られた計測対象としてのパターンTPが作成されている。パターンTPの作成に際して所望の形状が得られるようにプロセスパラメータが設定され、設定されたプロセスパラメータを用いてパターンTPがウェーハWの表面に作成される。検出器16は分光器を含み、パターンTPの実際の分光波形を出力する。本実施形態において、光源10、偏光子12、ステージS、検光子14および検出器16は、例えば分光波形取得手段に対応する。
【0011】
コンピュータ20は、ライブラリ作成部30、記憶装置MR1,MR3に接続される。コンピュータ20は、後述する本発明にかかるパターン計測方法の実施の形態の各処理過程を記述したレシピファイルを記憶装置MR1から読み込み、後述するライブラリ作成およびパターン計測を実行する。記憶装置MR1は、複数の記憶領域を有し、上述のレシピファイルを格納する他、検出器16からコンピュータ20へ送られた、パターンTPの実際の分光波形図を格納する。
【0012】
ライブラリ作成部30は、コンピュータ20の制御信号を受けて後述する処理過程により波形ライブラリを作成する。
【0013】
図2は、図1に示すパターン計測装置1が備えるコンピュータ20およびライブラリ作成部30のより詳細な構成を示すブロック図である。
【0014】
図2に示すように、コンピュータ20は、制御部22、プロセスパラメータ算出部24、断面形状生成部26およびパターン断面形状計測部28を含む。制御部22は、プロセスパラメータ算出部24、断面形状生成部26およびパターン断面形状計測部28の他、記憶装置MR1,MR3にも接続され、プロセスパラメータ算出部24、断面形状生成部26、パターン断面形状計測部28および記憶装置MR1,MR3に制御信号を供給する。プロセスパラメータ算出部24は、検出器16に接続され、検出器16から計測対象としてのパターンTPの実際の分光波形の入力を受け、制御部22を介して記憶装置MR3に格納された波形ライブラリを参照しながら、実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出する。断面形状生成部26は、プロセスパラメータ算出部24およびパターン断面形状計測部28にも接続され、プロセスパラメータ算出部24から最適なプロセスパラメータの供給を受けてこれに対応する最適なパターン断面形状を生成する。パターン断面形状計測部28は、本実施形態において、例えば計測手段に対応し、断面形状生成部26から最適なパターン断面形状の供給を受けて計測を行う。
【0015】
ライブラリ作成部30は、第1シミュレータ32および第2シミュレータ34を含む。第1シミュレータ32は、本実施形態において例えば断面形状取得手段に対応する。第2シミュレータ34は、第1シミュレータ32および記憶装置MR3に接続される。第2シミュレータ34は、本実施形態において例えばシミュレータに対応する。
【0016】
第1シミュレータ32は、図示しない入力手段を介してパターンTPの設計データおよび複数のプロセスパラメータの入力を受け、パターンTPの仕上がりにおける断面形状を予測し、プロセスパラメータの数量に応じた数の予測断面形状を出力し、第2シミュレータ34に供給する。第2シミュレータ34は、図示しない入力手段からシミュレーションパラメータの供給を受け、第1シミュレータ32から与えられた予測断面形状を用いてパターンTPに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、各予測分光波形に、それぞれ対応するプロセスパラメータの情報を付加して波形ライブラリを形成し、記憶装置MR3に格納する。
【0017】
図1に示すパターン計測装置1のより具体的な動作について、本発明にかかるパターン計測方法の実施の形態として、図3乃至図10を参照しながら説明する。
【0018】
(2)パターン計測方法の第1の実施の形態
図3は、本発明にかかるパターン計測方法の第1の実施の形態における処理過程を概略的に示すフローチャートであり、また、図4は、図3に示す処理過程のうち、波形ライブラリの作成方法の詳細過程を示すフローチャートである。以下では、図5に示すようなほぼ台形の断面形状を有するラインパターンLPを取り上げて説明する。
【0019】
最初に、ラインパターンLPついて波形ライブラリを作成する(図3、ステップS10)。図4を参照しながらより詳細に説明すると、まず、ラインパターンLPを作成するためのプロセスパラメータの範囲とウェーハW上での位置範囲を設定する(ステップS11)。ラインパターンLPは、幾つかのパターン製造工程を経て作成され、前述したとおり、狙いの形状通りのパターンが作成されるようにプロセスパラメータが設定される。しかしながら、現実の製造工程ではプロセスパラメータの予期しない変動が生じ、この変動に応じてその形状が変動する。例えばエッチング工程による配線パターンでは、ガス流量や圧力およびRF(Radio Frequency)パワー等により、リソグラフィ工程によるレジストパターンの形状がフォーカス(Focus)位置とドーズ(Dose)量とにより変動する。従って、波形ライブラリの作成に使用するプロセスパラメータは、現実の加工工程でのばらつきを考慮して様々な値を設定する必要がある。しかしながら、本実施形態では、説明を簡易にするため、二つのプロセスパラメータAとBとでパターンの形状が規定されるとする。プロセスパラメータAとしてA1、A2、A3の3通りの値を設定し、パラメータBとしてB1、B2、B3の3通りの値を設定し、設定したそれぞれの値をライブラリ作成部30の第1シミュレータ32に入力する。
【0020】
次に、第1シミュレータ32により、設定した範囲内でプロセスパラメータを変動させてラインパターンLPの形状シミュレーションを実行し、パターン断面形状を予測する(図4、ステップS12)。プロセスパラメータの変動に際しては、例えばA2、B2の値をパラメータのターゲット値と規定し、A1、B1の値をパラメータの下限値、A3、B3の値を上限値と規定する。ここで、上限値および下限値は実際のプロセスの変動幅から決定すればよい。
【0021】
結果として、図6に示すように、パラメータ平面の9個の座標点上でパターン断面形状シミュレーションが行われる。このようなシミュレーション技術として、近年では物理法則をベースにしたT−CAD(Technical−Computer Aided Design)技術を用いることが可能である。なお、シミュレーションによらず、上記9個の条件で実際にラインパターンLPを加工し、その断面形状を断面SEMやAFM(Atomic Force Microscope)等で取得してもよい。
【0022】
次に、このようにして得られたパターン予測断面形状に、第2シミュレータ34により光学シミュレーションを実行し、ラインパターンLPに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、算出した予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報を付加して波形ライブラリを形成する(ステップS13)。
【0023】
光学シミュレーションは、後述する処理過程で計測対象としてのパターンTPの分光波形を実際に取得する際に使用する光Liの波長や入射角度θ等の条件で行う。
【0024】
従来のスキャトロメトリではパターンの断面形状が変動することを見越してパターン断面形状を幾つかの形状パラメータで表現し、それらを変化させて波形ライブラリを作成していたが、本実施形態の特徴は、形状パラメータを変化させる代わりに、プロセスパラメータを変化させて波形ライブラリを作成する点にある。
【0025】
一見すると、従来技術のように形状パラメータを用いて波形ライブラリを構築する方が合理的であるかのように思える。しかしながら、最終目的はパターンの形状を得ることであり、新しい製造工程の場合のように、作成されるパターンの断面形状についての知見が少ない場合は、パターンの変化として無限のバリエーションを考えなければならないため、ライブラリ作成に多大の労力を強いられることになる。本実施形態によれば、プロセスパラメータをもとに波形ライブラリを作成するので、設定値およびそのばらつきを考慮すれば足り、波形ライブラリを比較的小さくすることが可能になる。
【0026】
形状パラメータとして、例えば図7に示すような台形モデリングを採用した場合、例えば図8に示すように8個の台形を組み合わせて16個もの形状パラメータによる波形ライブラリを作成する必要がある。計測対象パターンの形状がより複雑である場合や、より高い計測精度が要求される場合は、更にパラメータが増えることになる。ここで、従来の技術における問題は、パラメータの数ではなく、予めパターンに対する知見がなければいかなる波形ライブラリも作成できない点にある。このため、最初は最も単純な一つの台形によるモデルによる波形ライブラリから始め、その結果を参照しながら徐々に複雑な形状に対応するという手順をとる場合があった。この手続きを容易にするために、予めパターン断面形状を断面SEM等により観察したり、パターン断面形状をコンピュータシミュレーションで計算したりして、ある程度までパターン断面形状の変動を予測することも実施されていた。しかしながら、断面SEM写真やシミュレーション結果を取得するためには多大な労力が必要であった。
【0027】
本実施形態によれば、デバイスの工程やウェーハ上の位置等、最小限の情報があれば波形ライブラリを作成することが可能になる。
【0028】
図3に戻り、設定されたプロセスパラメータを用いてラインパターンLPをウェーハW上に実際に作成して得られた計測対象としてのパターンTPに光源10から光Liを照射し、検光子14を介して検出器16に反射回折光Lrを取り込むことにより、実際にパターンTPの分光波形を取得する(ステップS30)。
【0029】
次に、実際に得られた分光波形と波形ライブラリの分光波形とのマッチングを行う(ステップS40)。この結果、マッチング毎にマッチングスコアが得られる。図6に示す例では9個のマッチングスコアが得られることになる。
【0030】
続いて、応答曲面法により最大のマッチングスコアを与える最適なパラメータ座標を求める(ステップS50)。本実施形態では、図6のグラフ上で座標(Am、Bm)にて特定される点が最大のスコアを与えるものとする。従って、計測対象としてのパターンTPはパラメータAをAm、パラメータBをBmという条件で作成されているものと推定できる。
【0031】
次に、最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する(図3、ステップS60)。そのような形状は、シミュレーションを実施しても導出可能である。しかしながら、本実施形態では、計測のリアルタイム性を損なわずに所望の結果を得るために、モーフィング技術を用いて最適なプロセスパラメータ(Am、Bm)に近似する複数のプロセスパラメータに対応するパターンのパターン断面形状を、プロセスパラメータ間の大小関係に応じた割合で合成することにより求める。モーフィングとは、形状Aから形状Bへ連続的に変形していく様を動画で表示する場合に、中割り、即ち異なる形状間の形状を生成する画像処理技術である。この技術を用いて、本実施形態では(Am、Bm)の周囲の4つの座標、即ち、(A2、B2)、(A2、B3)、(A3、B2)、(A3、B3)におけるシミュレーション形状を合成して、(Am、Bm)における形状を予測する。説明を簡単にするために、図9に示すように一次元のモーフィングの場合を説明する。この例では、パターンAとパターンBとの形状を2:8との比率で合成した新たなパターン形状を次の手順により生成している。
【0032】
1.シミュレーションの際に、パターンAとBとで互いに対応する点を設定する。
2.パターンAとBとを任意の離れた距離に置いた上で互いに対応する点同士を線分で繋ぎ、その線分を8:2に分ける点を生成する。
3.上記生成された点を接続して新たなパターンを生成する。
【0033】
上述した方法は、容易に二次元に拡張することができ、その結果、図10(b)に示すように、(Am、Bm)の条件で作成されたパターンの予測断面形状を得ることができる。なお、参考のため、座標(A2、B2)および(A3、B2)の各条件で作成されたパターンの予測断面形状をそれぞれ図10の(a)および(c)に示す。
【0034】
最後に、このようにして生成された最適なパターン断面形状に対して計測を実施する(図3、ステップS70)ことでCD等所望の結果を得ることができる。
【0035】
(3)パターン計測方法の第2の実施の形態
上述した第1の実施の形態では、ラインパターンLPの断面形状をシミュレーションから得ていたが、本実施形態の特徴は、波形ライブラリの作成に際し、断面SEMまたはAFMによる実際のパターン計測結果からラインパターンLPの断面形状を得る点にある。この場合、前述した実施の形態と異なり、次の二つのステップが必要になる。一つは、波形ライブラリの作成の詳細過程において、図4のステップS12に対応するステップにおいて、図11に示すように、得られた断面SEM画像(ステップS22)に対して輪郭検出を行う過程(ステップS23)である。これは、断面SEM画像の輪郭が自明ではない点に起因するものである。もう一つ追加されるステップは、断面形状を合成する際(図3、ステップS60)に、対応点をとるステップである。後者のステップを実現するためにも様々な方法が考えられるが、本実施例では、下記の文献で提案されているロバスト・ポイント・マッチング(Robust point matching)の手法を用いる。
【0036】
Haili Chui、 Anand Rangarajan、 A new algorithm for non−rigid point matching、 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR)、 volume II、 44−51、 2000。
【0037】
その他の処理ステップは、第1の実施の形態と同一であるため、重複説明は省略する。
【0038】
本実施形態によれば、波形ライブラリの作成に際して実際にパターンを作成するので、その分だけ煩雑なステップを必要とするが、第1の実施の形態と比較してより精度の高い波形ライブラリを得ることができる。
【0039】
(4)プログラム
上述した実施の形態においては、パターン計測方法の一連の手順を、レシピファイルとして記憶装置MR1に記憶させてパターン計測装置1に読み込ませて実行させた。しかしながら、上述したパターン計測方法の一連の手順は、これをプログラムに組み込んで汎用のコンピュータに読み込ませて実行させても良い。これにより、本発明にかかるパターン計測方法を、パターンの分光波形を取得する装置に接続され、画像処理可能な汎用コンピュータを用いて実現することができる。また、上述したパターン計測方法の一連の手順をコンピュータに実行させるプログラムとしてフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、パターンの分光波形を取得する装置に接続され、画像処理可能な汎用コンピュータに読み込ませて実行させても良い。
【0040】
記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の携帯可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でも良い。また、上述したパターン計測方法の一連の手順を組込んだプログラムをインターネット等の通信回線(無線通信を含む)を介して頒布しても良い。
【0041】
(5)半導体装置の製造方法
上述したパターン計測方法を、例えば半導体装置の製造工程中で用いることにより、高い効率および分解能でパターンを評価することができるので、短いTAT(Turn Around Time)で、並びに、より高いスループットおよび歩留まりで半導体装置を製造することができる。
【0042】
より具体的には、製造ロット単位で基板を抜き出し、抜き出された基板に作成されたパターンを上述した計測方法により計測して評価する。評価の結果、良品と判定された場合、計測された基板が属する製造ロット全体について、引き続き残余の製造プロセスを実行する。この一方、評価の結果不良品と判定された場合でリワーク処理が可能な場合には、不良品と判定された基板が属する製造ロットに対してリワーク処理を実行する。リワーク処理が終了すると、その製造ロットから基板を抜き取って再度パターンを計測して再評価する。抜き取られた基板が再評価により良品と判定されると、リワーク処理を終えたその製造ロットに対し残余の製造プロセスを実行する。また、リワーク処理が不可能な場合には、不良品と判定された基板が属する製造ロットは廃棄し、不良発生原因を解析して設計担当や上流のプロセス担当等へフィードバックする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかるパターン計測装置の実施の一形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すパターン計測装置が備えるコンピュータおよびライブラリ作成部のより詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るパターン計測方法の第1の実施の形態における処理過程を概略的に示すフローチャートである。
【図4】図3に示す処理過程のうち、波形ライブラリの作成方法の詳細過程を示すフローチャートである。
【図5】計測対象パターンの一例の断面形状を示す図である。
【図6】パターン断面形状シミュレーションの結果の一例を示すグラフである。
【図7】従来の技術による波形ライブラリ作成方法を説明する図である。
【図8】従来の技術による波形ライブラリ作成方法を説明する図である。
【図9】モーフィング技術の説明図である。
【図10】モーフィング技術を用いた断面形状の合成により生成された最適なパターン断面形状の一例を示す図である。
【図11】本発明にかかるパターン計測方法の第2の実施の形態における波形ライブラリの作成方法の詳細過程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1:パターン計測装置
10:光源
12:偏光子
14:検光子
16:検出器
20:コンピュータ
22:制御部
24:プロセスパラメータ算出部
26:断面形状生成部
28:パターン断面形状計測部
30:ライブラリ作成部
32:第1シミュレータ
34:第2シミュレータ
Li:入射光
Lr:反射回折光
MR1,MR3:記憶装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する断面形状取得手段と、前記複数の断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出するシミュレータと、を含み、算出された前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加して波形ライブラリを形成するライブラリ作成手段と、
所望の形状が得られるように設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンを実際に作成して得られた計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する分光波形取得手段と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出するプロセスパラメータ算出手段と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する断面形状生成手段と、
前記最適なパターン断面形状を計測する計測手段と、
を備えるパターン計測装置。
【請求項2】
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する過程と、
取得した複数の前記断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、算出した前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加することにより波形ライブラリを形成する過程と、
所望の形状が得られるようにプロセスパラメータを設定し、設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンから実際に作成された計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する過程と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出する過程と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する過程と、
前記最適なパターン断面形状を計測する過程と、
を備えるパターン計測方法。
【請求項3】
前記パターンの複数の断面形状は、設計データを用いたシミュレーションにより取得されることを特徴とする請求項2に記載のパターン計測方法。
【請求項4】
前記最適なパターン断面形状を生成する過程は、
前記波形ライブラリ内で前記最適なプロセスパラメータに近似する複数のプロセスパラメータに対応するパターンの断面形状を、前記最適なプロセスパラメータと前記近似する複数のプロセスパラメータとの大小関係に応じた割合で合成する過程を含む、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のパターン計測方法。
【請求項5】
パターンの分光波形を取得する装置に接続され、画像処理可能なコンピュータに、請求項2乃至4のいずれかに記載のパターン計測方法を実行させるプログラム。
【請求項1】
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する断面形状取得手段と、前記複数の断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出するシミュレータと、を含み、算出された前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加して波形ライブラリを形成するライブラリ作成手段と、
所望の形状が得られるように設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンを実際に作成して得られた計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する分光波形取得手段と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出するプロセスパラメータ算出手段と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する断面形状生成手段と、
前記最適なパターン断面形状を計測する計測手段と、
を備えるパターン計測装置。
【請求項2】
パターンを作成するための複数のプロセスパラメータにそれぞれ対応させて前記パターンの複数の断面形状を取得する過程と、
取得した複数の前記断面形状を用いて前記パターンに光を照射した場合に得られる予測分光波形を算出し、算出した前記予測分光波形に、対応するプロセスパラメータの情報をそれぞれ付加することにより波形ライブラリを形成する過程と、
所望の形状が得られるようにプロセスパラメータを設定し、設定されたプロセスパラメータを用いて前記パターンから実際に作成された計測対象としてのパターンの分光波形を実際に取得する過程と、
前記波形ライブラリを参照して実際の分光波形に対応する最適なプロセスパラメータを算出する過程と、
前記最適なプロセスパラメータに対応する最適なパターン断面形状を生成する過程と、
前記最適なパターン断面形状を計測する過程と、
を備えるパターン計測方法。
【請求項3】
前記パターンの複数の断面形状は、設計データを用いたシミュレーションにより取得されることを特徴とする請求項2に記載のパターン計測方法。
【請求項4】
前記最適なパターン断面形状を生成する過程は、
前記波形ライブラリ内で前記最適なプロセスパラメータに近似する複数のプロセスパラメータに対応するパターンの断面形状を、前記最適なプロセスパラメータと前記近似する複数のプロセスパラメータとの大小関係に応じた割合で合成する過程を含む、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のパターン計測方法。
【請求項5】
パターンの分光波形を取得する装置に接続され、画像処理可能なコンピュータに、請求項2乃至4のいずれかに記載のパターン計測方法を実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−48777(P2010−48777A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215703(P2008−215703)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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