説明

プラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置

【課題】
プラズマCVD及びプラズマエッチングの分野において、プラズマ励起周波数のVHF化、プラズマ励起電力の増大化及び使用電源の複数化等に伴う問題として、インピーダンス整合の調整不適合及び電力電送線路の破損等が注目されている。これは製品の歩留まり及び生産設備の稼働率を左右する問題であり、早期の解決が求められている。
【解決手段】
インピーダンスの整合器と放電電極の給電点の間に3端子サーキュレータを配置し、この3端子サーキュレータを介して前記給電点に電力を供給するとともに、前記放電電極からの反射波を前記3端子サーキュレータに接続された無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法及びその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用して基板の表面に所定の処理を施すプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置に関する。特に、薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ、電子写真用感光体及び半導体デバイ等に用いられる薄膜を形成するプラズマCVD法及びプラズマCVD装置、並びに各種電子デバイスの微細加工に用いられるプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池の発電膜であるアモルファスSi膜及び微結晶Si膜、並びに液晶デイスプレイの等薄膜トランジスタ等の絶縁性薄膜(窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等)の形成に用いられるプラズマCVD装置の応用分野では、製造する製品の生産コストを低減するために、製膜の高速化及び基板サイズの大面積化(1mx1mを超える面積)が求められている。このニーズに対応するために、プラズマ励起周波数のVHF化(周波数帯域30MHz〜300MHz)、プラズマ励起電力の増大化、及び使用電源の複数化等に関する技術開発が行われている。
また、多結晶シリコン太陽電池の反射膜及びパッシベーション膜等に用いられる窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜等の形成に用いられるプラズマCVD装置の応用分野においても、同様のニーズに対応するために、プラズマ励起周波数のVHF化(周波数帯域30MHz〜300MHz)、プラズマ励起電力の増大化、及び使用電源の複数化等に関する技術開発が行われている。
【0003】
上記技術開発において、近年、プラズマ励起周波数のVHF化(周波数帯域30MHz〜300MHz)、プラズマ励起電力の増大化、及び使用電源の複数化等に伴う問題として、
以下に示す特許文献1ないし5にも指摘されているように、インピーダンス整合の調整不適合及び電力伝送線路の破損(焼損)等に関わる問題が注目されている。
なお、この問題は、従来のプラズマ生成源の電極の構造が主として平行平板電極であり、その電極には、例えば非特許文献3に記載されているように多大な電力損失が生じるという問題が依然として残っている中で、例えば非特許文献2に記載されているような大電力を必要とする高品質微結晶シリコン系膜の応用が実用化され、その需要が増大していることから、重要視されるようになった。
【0004】
特許文献1には、VHFプラズマCVD装置に関わる課題及びその解決手段について、次のような記載がある。即ち、インピーダンス整合の調整不適合に起因する高周波破損の問題についての指摘がある。
製膜対象の基板サイズが大きくなるにつれて、プラズマを生成するための電力量が増大し、電極の端部で反射される反射波の電力が大きくなり、その影響が無視できなくなる。
特に、高周波電源からの高周波電力を電極に供給する電送線路の特性インピーダンスと電極のインピーダンスとの間で整合が取れない場合には、電極端部で反射された入射電力が直接、高周波電源に戻り、高周波電源が破損することが有る。例えば、1mx1m以上の面積の基板に製膜を施すには、20KW以上の高周波電力を電極に入射させることが必要であり、電極の電力入射端において40%が反射される場合、8KWが高周波電源に戻ってくることになり、高周波電源の故障原因となる。
そして、上記課題を解決する技術として次のことが記載されている。
真空室と、前記真空室の内部に設置される共通グランド上に載置され、基板に対向するように配設される電極と、前記電極に対して前記基板と反対方向に配設され、前記共通グランドと電気的に接続される防着板と、前記電極に規定の電圧周波数を有する高周波電力を供給し、前記電極における前記高周波電力の電圧位相を変化させるための移相部を備えた高周波電源と、前記電極の端部それぞれを前記真空室の外部に配置されている前記高周波電源に接続し、前記高周波電源から出力される前記高周波電力を前記電極の前記端部それぞれに伝送するための伝送線路と、前記伝送線路それぞれに直列に接続され、前記高周波電源と前記電極とのインピーダンスを整合するための整合器と、前記電極に接続されて、前記電極のインピーダンスの値を調整するための電極インピーダンス調整部と、を具備し、前記電極インピーダンス調整部は、前記電極と前記防着板とを並列に接続する、複数のインダクタ、またはコンデンサであり、前記インダクタ、またはコンデンサは、前記防着板に電気的に接続される導電性部材であるアースバーを介して前記防着板に接続される真空処理装置。
【0005】
特許文献2には、VHFプラズマCVD装置に関わる課題及びその解決手段について、次のような記載がある。即ち、インピーダンス整合の調整不適合に起因する高周波破損の問題についての指摘がある。
放電電極の互いに対向した端部のそれぞれの位置に給電点を設け、その給電点に同軸直管型の電送線路及び整合器を介して高周波電源の出力を供給するようにした構成を有するVHFプラズマCVD装置において、大面積の基板に製膜を行う場合、放電電極への電力を大量に供給する必要がある。
このような装置において、電送線路の特性インピーダンスと放電電極のインピーダンスの間で整合が取れない場合、放電電極で反射された反射電力により高周波電源の破損が起こることがある。
そして、上記課題を解決する技術として次のことが記載されている。
高周波電力によりプラズマを形成し、該プラズマにより基板を処理する基板処理装置であって、規定の周波数を有する高周波電力を出力する高周波電源と、前記基板を支持する対向電極と、前記高周波からの高周波電力が供給される給電点を両端部にそれぞれ有し、該高周波電力により前記対向電極との間にプラズマを形成する放電電極と、前記放電電極と前記高周波電源とを電気的に接続し、前記高周波電源から出力される高周波電力を前記放電電極の前記各給電点にそれぞれ電送する電送線路と、前記伝送線路に接続され、前記高周波電と前記放電電極とのインピーダンスを整合させる整合器と、前記伝送線路における前記整合器と前記放電電極の各給電都の間にそれぞれ接続点を設け、該接続点間を電気的に接続する第1のループ回路と、前記第1のループ回路に接続された第1のインピーダンス素子と、前記電送線路の前記接続点と前記放電電極との間に接続された第2のインピーダンス素子と、を備えた基板処理装置。
【0006】
特許文献3には、複数の高周波電源を有するスパッタ用のプラズマ装置に関わる課題及びその解決手段について、次のような記載がある。即ち、インピーダンス整合の調整不適合に起因する基板バイアスの管理不完全化の問題についての指摘がある。
スパッタ電極と基板電極を有するプラズマスパッタ装置において、例えば、2つの高周波電源、即ち第1及び第2の高周波電源を有し、それぞれの出力をそれぞれの整合器、即ち第1の整合器及び第2の整合器を介して該スパッタ電極及び基板電極に供給する場合、次の問題が起こる。
例えば、第2の高周波電源の出力を第2の整合器を介して基板電極に供給するに際し、インピーダンスの整合を取る場合、第1の高周波電源の出力が第1の整合器を介してスパッタ電極に供給された電力の誘導を受け、第2の高周波電源の出力の反射波と上記第1の高周波電源の出力の誘導に起因する干渉波との区別ができないので、第2の整合器によるインピーダンス整合が正しく出来ない、という課題がある。
上記の例では、基板電極に関するインピーダンス整合は、第2の整合器を調整し、反射波が最小となった時に最も正しく整合したことになるが、その整合調整に際し、複数電源からの出力の区別ができないことから、正しい整合ができない、という問題がある。
そして、上記課題を解決する技術として次のことが記載されている。
基板電極と対向電極との両電極にそれぞれ高周波エネルギを供給するか、もしくは前記両電極の少なくとも一方を複数の電極に分割し、その分割された各電極にそれぞれ高周波エネルギを供給して、プラズマを発生させ、前記基板電極上もしくはその近傍に配置された基板に表面にプラズマ処理を施す方法において、前記各電極に供給する高周波エネルギとしてそれぞれ互いに出力周波数の異なる高周波エネルギを供給し、かつ前記高周波エネルギを供給した電極からの反射波出力を検出して前記電極と高周波電源とのインピーダンス整合を図る手段を配設するとともに前記反射波出力の検出は他極に供給された前記周波数の異なる高周波エネルギの誘導からの干渉波出力を除去し自極に対応する高周波電源から直接供給された特定周波数の高周波エネルギに基づく反射波出力のみを選択的に検出して前記インピーダンス整合を図るようにしたことを特徴とするプラズマ処置方法。
【0007】
特許文献4には、複数の高周波電源を有するプラズマCVD装置に関わる課題及びその解決手段について、次のような記載がある。即ち、インピーダンス整合の調整不適合に起因するプラズマ生成の不安定化の問題についての指摘がある。
VHF帯の高周波電力を用いたVHFプラズマCVD法において、複数の異なる周波数の電力を反応容器中に同時に供給する場合、複数の高周波電力が干渉し、従来のインピーダンス調整法ではその干渉の影響で正確なインピーダンス調整が出来ない場合がある。
例えば、第1の高周波電力と、第2の高周波電力を同時に反応容器に供給する場合、第1の高周波電力は反応容器中を伝搬して第2の高周波電力供給系に入り込んでしまう。その結果、第2の高周波電力供給系では本来存在しないはずの第1の高周波電力が反射波として存在するかのような状態となってしまい、パワーメータや位相検出器、インピーダンス検出器の出力が整合状態を正確に反映しなくなってしまう場合がある。第1の高周波電力系においても、これと同様の現象が生じ、整合状態が正確に把握できない状態になってしまう場合がある。
その結果、真の整合ポイントとは大きく異なったインピーダンスの整合が行われ、プラズマの不安定さを引き起こす場合が生じる、という課題がある。
そして、上記課題を解決する技術として次のことが記載されている。
周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器に導入し、該反応容器中で原料ガスを分解することにより、前記反応容器中に設置した被処理物に処理を施すプラズマ処理方法において、少なくとも1つの高周波電力は高周波電源から出力された後、3ポート・サーキュレータ、整合器をこの順番で介した後、高周波電極から反応容器中に導入され、前記3ポート・サーキュレーターと前記高周波電源の間に設けられた入射電力検出手段から出力される信号、及び、前記3ポート・サーキュレーターの反射電力出力ポートと前記反射電力出力ポートに接続された無反射終端との間に設けられた反射電力検出手段から出力される信号とに基づいて前記整合器におけるインピーダンス調整を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【0008】
特許文献5には、プラズマCVD装置に関わる課題及びその解決手段について、次のような記載がある。即ち、インピーダンス整合の調整不適合に起因する高周波破損の問題についての指摘がある。
1つの放電用電極に複数の、例えば、2つの高周波電源が接続される構成のプラズマCVD装置において、一方の高周波電源からの電力が放電電極を介して他方の高周波電源に逆流・干渉する。その結果、それぞれの干渉波が2つの高周波電源に互いに侵入し、最悪の場合、それら高周波電源が損傷する恐れがある。
また、高周波電源が相互に干渉するため、それぞれの高周波電源に接続されている整合器の調整に際し、それぞれの整合条件を変化させてしまい、互いに適正な整合が行えなかった。
そして、上記課題を解決する技術として次のことが記載されている。
反応容器内に配置された放電用電極へ給電を行う複数の高周波電源と、前記放電用電極と前記高周波電源間に配置された、反射電力を分離処理する逆流防止回路とを具備したことを特徴とする高周波プラズマ生成装置。
前記逆流防止回路は、高周波電源からの電力を分岐するサーキュレータと、このサーキュレータに電気的接続されて電力を測定する方向性結合器と、前記サーキュレータに電気的に接続されて電力を消費する負荷とを具備することを特徴とする、上記高周波プラズマ生成装置。
前記放電用電極と逆流防止回路間に整合器を配置し、逆流防止回路で処理する反射電力値が極大となるように制御することを特徴とする高周波プラズマ生成装置。
前記逆流防止回路で処理する反射電力値をモニターし、この反射電力値を基に前記整合器の条件を制御することを特徴とする高周波プラズマ生成装置。
【0009】
次に、上記問題の関連技術に関わる非特許文献1ないし3に記載の事項を以下に列記する。
【0010】
非特許文献1には、平行平板電極を用いたプラズマCVDにより得られる膜の均一性に関する理論的及び実験的研究結果が示されている。膜の均一性は、使用する電源周波数に依存し、次式に従うことが記載されている。
I(x)=cos(2πx/λ)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
この式は、膜の均一性は、使用される電力のプラズマ中での波長に依存することを示している。
例えば周波数が60MHz(真空中の波長λ=5m)、プラズマ中での波長短縮率λ/λが0.65の場合、cos(2πx/λ)の平坦部は基板中央点近傍のλ/8の範囲であるとすると、直径40cm程度の面積に亘ってほぼ均一な膜が得られる、という意味である。
したがって、プラズマ励起にVHF(30MHz〜300MHz)帯域の周波数を用いると、波長が短くなるので、基板サイズが1mx1m程度以上になれば、一般に、膜の均一化は出来ない、と言える。
【0011】
非特許文献2には、平行平板電極を用いたVHFプラズマCVDにより、集積化タンデム型薄膜太陽電池用の結晶質i層膜の高品質、高速製膜に関する技術が示されている。即ち、VHFプラズマCVDによる高品質の微結晶シリコンの製膜では大電力の供給が必要である、ということが記載されている。
実験条件として、平行平板電極のサイズ:直径10cm、原料ガス:高水素希釈SiH4、圧力:2〜4Torr(133〜532Pa)、基板温度:250℃、電源周波数:60MHz、投入電力:製膜速度1.7nm/sの場合、2.54W/cm2、2.5nm/sの場合、3.4W/cm2とすることにより、高品質の微結晶Siが得られることが示されている。
また、1.7〜2.5nm/sという高速製膜条件においても、周波数60MHzのVHFプラズマCVDを用いることにより、高品質の微結晶Siが得られることが示されている。
上記の製膜速度と投入電力のデータによれば、投入電力は、製膜速度1.7nm/sの場合、2.54W/cm2であり、2.5nm/sの場合、3.4W/cm2である。これは、平行平板電極を用いたVHFプラズマCVD装置により高品質の結晶質i層膜を製造するには、非常に大きい電力が必要である、ということを示している。例えば、基板面積が110cmx140cm(15400cm2)の場合には、単純に比例計算すれば、製膜速度1.7nm/sの場合は39.1KWの大電力が必要で、2.5nm/sの場合は52.4KWが必要であることを意味している。
【0012】
非特許文献3には、平行平板電極を用いたプラズマ生成における電力消費に関する研究結果が示されている。
即ち、直径30cmの真空容器に設置された平行平板電極(サイズ:直径15cm、電極間隔:5cm)に13.56MHzの電力を、インピーダンス整合器を介して投入して、N2プラズマの生成実験が行われ、投入された電力の消費量が測定され、そのデータが示されている。
具体的データとして、電源出力(300W)の約52%が平行平板電極間で消費され、残り48%はそれ以外の場所で消費(インピーダンス整合器12%、伝送回路24%、電極と真空容器内壁間などでの無効プラズマ生成12%)される、ということが示されている。
上記データによれば、平行平板電極を用いたRFプラズマCVD装置では、電源から投入された電力の有効消費量は約52%、即ち、目的とする電極間で消費されるのは電源出力の約52%である、ということを意味している。
したがって、平行平板電極を用いたプラズマ生成装置では、投入された電力の約50%は目的のプラズマ生成以外で消費されている、と言える。
【0013】
【特許文献1】特許第4786289号(図1〜図5、図8)
【特許文献2】特開2011−17076(図3〜図8)
【特許文献3】特公平7−10083(図1、図2、図4、図6、図7)
【特許文献4】特開2004−156059(図1〜図7)
【特許文献5】特開2002−110566(図1、図3)
【0014】
【非特許文献1】A.Perret、P.Chabert、J.P.Booth、J.Jolly、J.Guillon and Ph.Auvray:Applied Physics Letters、Vol.83、No.2(14 July 2003)、243−245.
【非特許文献2】M.Kondo、M.Fukawa、L.Guo、A.Matsuda:High rate growth of microcrystalline silicon at low temperatures、Journal of Non−Crystalline Solids 266−269(2000)、84−89.
【非特許文献3】J.A.Baggerman、R.J.Visser、and E.J.H.Collart:Power dissipation measurements in a low−pressure N2 radio−frequency discharge、J.Appl.Phys.、Vol.76、No.2、15 July 1994、738−746.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献1〜5において、従来のプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置が有する課題がいろいろと指摘されているが、依然として解決されていない状況にある。
この課題の所在を明確にするために、上記課題、即ち、生産設備の稼働率低下及び製品の歩留まりの低下の原因である高周波固有の定在波の発生による電力供給系の破損(焼損)問題、並びに複数の整合器を有するプラズマ表面処理装置における整合の不適合問題について、以下に、具体的に説明する。
【0016】
先ず、高周波固有の定在波の発生に関する問題について説明する。
図7ないし図9に、従来のプラズマ表面処理装置の代表例として、平行平板電極を有するプラズマCVD装置の説明図を示す。図7は従来の平行平板電極を有するプラズマCVD装置の構成図、図8はインピーダンスの整合方法を説明するための、高周波電源と整合器と電極との関係を示すブロック図、図9は従来装置に用いられる整合器の構成図である。
【0017】
図7ないし図9において、反応容器101にはプラズマを発生させるためのガスシャワー孔(ガス噴出孔)114を有する第1の電極102と基板104を載置する電気的に接地された第2の電極103が平行に設置されている。第1及び第2の電極102、103には、高周波電源105、同軸ケーブル107、整合器106、同軸ケーブル108、電流導入端子111、真空用同軸管112及び給電点113からなる電力供給系から、例えば周波数が13.56MHzの電力が供給される。
【0018】
ガスシャワー孔(ガス噴出孔)114には、ガス供給源109及びガス導入管110から成るガス供給系から、例えばシランガス(SiH4)と水素ガス(H2)の混合ガスが供給され、該ガスシャワー孔(ガス噴出孔)114からその混合ガスが噴出する。噴出した混合ガスは、図示しない真空ポンプにより、排気管115a、115bを介して排気される。基板103は第2の電極103に内蔵された電気ヒータ(図示しない)により所定の温度に加熱される。
【0019】
図7の装置を用いて基板103の表面に、例えば微結晶シリコン薄膜を形成する場合、ガスシャワー孔(ガス噴出孔)114からシランガス(SiH4)と水素ガス(H2)の混合ガスを噴出させ、第1の電極と第2の電極間に、例えば周波数が13.56MHzの電力を供給する。該電力により該一対の電極間に強い電界が発生する。
強い電界が発生すると、その電界により加速された電子がシランガス(SiH4)と水素ガス(H2)の分子に衝突し、電離作用が発生する。ガス分子が電離すると、グロー放電即ちプラズマが発生する。プラズマが発生すると、プラズマ中の電子及びイオン等がシランガス(SiH4)と水素ガス(H2)の分子に衝突し、それを解離・分解させるので、種々のプラスイオン及びマイナスイオンの他に、化学的に活性で、電気的には中性の種々のラジカルが発生する。この場合、ラジカルとしては、例えば、SiH、SiH、SiH、H等が発生する。そして、ラジカルは、プラズマの中から基板表面まで拡散現象で移動し、基板の面上に堆積する。その結果、基板上に微結晶シリコンが形成される。
【0020】
製膜されたシリコン系薄膜の膜厚分布は、図7の装置を用いる場合、非特許文献1に記載のように、概略、次式で表わされる。
I(x)=cos(2πx/λ)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
この式は、膜の均一性は、使用される電力のプラズマ中での波長に依存することを示している。例えば周波数が60MHz(真空中の波長λ=5m)、プラズマ中での波長短縮率λ/λが0.65の場合、cos(2πx/λ)の平坦部は基板中央点近傍のλ/8の範囲であるとすると、直径40cm程度の面積に亘ってほぼ均一な膜が得られる、という意味である。
【0021】
高周波電源105は、一般的なプラズマ表面処理装置の場合、図8に示すように、発振器126、電力増幅器125、サーキュレータ123、反射波吸収負荷124、方向性結合器120、進行波検出器121、反射波検出器122から構成される。
高周波電源105の出力である進行波W(0)は、進行波検出器121により検出され、その値が表示される。また、高周波電源に戻ってくる反射波W(110)は、反射波検出器122により検出され、その値が表示される。
高周波電源105、同軸ケーブル107、整合器106及び同軸ケーブル108等からなる電力供給系を用いて電極の給電点113に電力を供給するに際し、整合器106を用い、電力供給の電送線路のインピーダンスと電力を消費する側の回路、即ち放電電極のインピーダンスの整合を図る。
【0022】
上記整合器106は、一般に、インダクタと可変コンダクターで構成される。その一例を図9に示す。
なお、後述のインピーダンスの整合の調整方法では、図9のインダクタLと可変コンダクターC1、C2を調整することにより、電力供給の電送線路と電極のインピーダンスの整合を図る。
【0023】
インピーダンスの整合調整は次のように行う。図7ないし図9において、先ず、電力増幅器125の出力を進行波検出器121で検出する。これを、例えば進行波W(0)とする。次に、整合器106を通りぬけて上流側に戻ってくる反射波を反射波検出器122で検出する。これを、例えば反射波W(110)とする。次に、整合器106のインダクタLとコンダクターC1、C2を調整し、反射波W(110)が発生しないようにする。
【0024】
通常のプラズマCVD装置では、一般に整合器106の出力W(1)が供給されると、一対の電極側から反射波W(11)が戻り、整合器106を通り、反射波W(110)が高周波電源内部に侵入する。反射波W(110)は、高周波電源105の構成部品である方向性結合器120、反射検出器122で検出され、表示される。
反射波W(110)はサーキュレータ123で反射波吸収負荷124に電送される。反射波吸収負荷124に電送された電力は吸収されて、消滅する。
【0025】
整合器106を調整するに際し、高周波電源105の反射波W(110)がゼロにならない場合は、一般に、反射波W(110)が最小の値になるように、調整する。例えば、反射波W(110)の値が進行波W(0)の10%程度以下に設定される。
この場合、給電点113と整合器106の間、あるいは高周波電源105の間に、進行波W(0)と反射波W(110)で定在波が発生する。定在波の腹の位置では電圧が最大になり、絶縁破壊あるいは放電がおこることがある。その結果、焼損に到る。
【0026】
また、上記定在波による焼損問題は、基板面積が1mx1mを超える大面積の基板を対象にしたプラズマCVD装置で、頻繁に発生する。大面積の基板を対象にすると、一般に供給電力が大電力になるので、上記反射波の電力が増大し、電力供給系の構成部材である高周波電源、整合器及び同軸ケーブル等のいずれかに焼損(破損)が発生する頻度が高くなる。
例えば、特許文献1及び2に記載されているように、供給電力が数10KW級になり反射波が供給電力の10〜40%級になると、電力供給系の構成部材である高周波電源、整合器及び同軸ケーブル等のいずれかに焼損(破損)が発生する。
その結果、装置の修理及びメインテナンスを頻繁に行うことが必要となり、生産設備の稼働率及び製品の歩留まりが著しく低下する、という課題がある。
【0027】
次に、複数の整合器を有するプラズマ表面処理装置において整合を取る際に発生する問題について、図10を参照して説明する。
なお、図10は複数の給電点を有する放電電極に高周波電源の出力が供給される場合の課題を説明するためのブロック図である。
図10に示す構成を有する装置では、高周波電源105の2つの出力は、それぞれ、放電電極102の互いに対向する位置に設置された給電点113a、113bにそれぞれの整合器106a、106bを介して供給される。
図10において、実線の矢印は、高周波電源の2つの出力の一方の出力に関する進行波及び反射波を示し、点線の矢印は、他方の出力に関する進行波及び反射波を示す。
図10において、インピーダンスの整合は、次のように行なわれる。高周波電源105の一方の出力Wa(0)を同軸ケーブル107aを介して、整合器106aに入力し、その出力の進行波Wa(1)を放電電極の給電点113aへ供給する。進行波Wa(1)が給電点113aに供給されると、給電点113aあるいはその近傍から反射波Wa(11)が戻ってくる。
インピーダンスの整合の際、反射波Wa(11)が進行波Wa(1)に比べて十分に小さい値になるように、整合器106aが調整される。
他方、高周波電源105の他方の出力Wb(0)を同軸ケーブル107bを介して整合器106bに入力し、その出力の進行波Wb(1)を放電電極の給電点113bへ供給する。そうすると、給電点113bあるいはその近傍から反射波Wb(11)が戻ってくる。
インピーダンスの整合の際、その反射波Wb(11)が進行波Wb(1)に比べて十分に小さい値になるように、整合器106bが調整される。
【0028】
ところが、高周波電源の2つの出力を上記2つの整合器106a及び106bを同時に使って一対の電極の給電点に供給すると、図10に示すように、整合器106aから供給された進行波Wa(1)の一部分が一対の電極を通り、給電点113bから整合器106b側に侵入する。その進入波Wa(12)は、整合器106bでは反射波Wb(11)と同様の方向に入るので、整合器106bは反射波の値として、Wb(11)+Wa(12)を認識する。整合器106bは、Wb(11)+Wa(12)が最小値となるように、調整される。
その結果、真の整合ポイントとは大きく異なったインピーダンスの整合が行われ、プラズマの不安定さを引き起こすことが多々ある。即ち、本来のインピーダンス整合の状態が得られない、という問題が起こる。
同様に、図10に示すように、整合器106bから供給された進行波Wb(1)の一部分が放電電極を通り、給電点113aから整合器106a側に侵入する。その進入波Wb(12)は、整合器106aでは反射波Wa(11)と同様の方向に入るので、整合器106aにWa(11)+Wb(12)の反射波として認識される。整合器106aは、Wa(11)+Wb(12)が最小値となるように、調整される。
その結果、真の整合ポイントとは大きく異なったインピーダンスの整合が行われ、プラズマの不安定さを引き起こすことが多々ある。即ち、本来のインピーダンス整合の状態が得られない、という問題が起こる。
【0029】
したがって、単一の高周波電源の出力を分岐して複数の給電点に供給するという構成を有するプラズマ表面処理装置では、プラズマの安定した生成あるいは制御が困難となる。その結果、プラズマ生成状況が不安定になる。そのため、生産設備の稼働率及び製品の歩留まりが著しく低下する、という課題がある。
また、複数の高周波電源の出力を放電電極に供給するという構成を有するプラズマ表面処理装置においても、上記と同様に、プラズマの安定した生成あるいは制御が困難である。その結果、プラズマ生成状況が不安定になる。そのため、生産設備の稼働率及び製品の歩留まりが著しく低下する、という課題がある。
【0030】
上述の通り、従来のプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置には、大別して、2つの課題が有る。
第1の課題は、電力供給線路での定在波の発生に起因する装置の破損(焼損)問題に起因する生産設備の稼働率及び製品の歩留まりの著しい低下、という課題がある。
例えば、図7及び図8に示すような装置構成において、高周波電源105の出力が整合器106を介して給電点113に供給される場合、供給電力の一部分が給電点113あるいはその近傍で反射し、整合器106の方へ戻ってくるが、この反射波が定在波を発生する。
定在波が発生しても、供給電力が小さい場合は焼損問題を起こすことにならないが、大電力が供給されると、整合器106と給電点113の間で進行波と反射波が干渉して定在波を発生し、振幅が最大となる位置にはジュール熱が発生する。あるいは、絶縁破壊及び放電がおこる。その結果、電力供給系を構成する高周波電源、同軸ケーブル及び整合器のいずれかが破損(焼損)する、という問題が起こる。
【0031】
第2の課題は、複数の高周波電源が用いられる場合及び一対の電極に複数の電力供給点が設置される場合、インピーダンスの整合が取れないという問題が起こる。即ち、インピーダンス整合の不適合の問題である。これにより、プラズマの安定した生成あるいは制御が困難となる。その結果、製品の歩留まりが著しく低下する。
この問題は、特許文献1、2及び5に記載のプラズマ表面処理装置、即ち、一対の電極の互いに対向する位置に給電点を設置し、それぞれの給電点にそれぞれの整合器を介して、高周波電源からの電力を供給するという構成を有する場合に起こる。
また、同様に、特許文献3及び特許文献4に記載のプラズマ表面処理装置、即ち、複数の高周波電源のそれぞれの出力をそれぞれの整合器を介して電極に供給する場合にも起こる。
【0032】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものである。即ち、従来のプラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理方法が有するインピーダンス整合の調整不適合及び電力伝送線路の破損(焼損)等に関わる問題を解消することが可能なプラズマ表面処理及びプラズマ表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決可能なアイデイアを見出した。
【0034】
本願に係る第1の発明のプラズマ表面処理方法は、排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、
前記整合器と前記一対の電極の間に3端子サーキュレータを配置し、該3端子サーキュレータを介して該一対の電極に電力を供給するとともに、該一対の電極からの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該3端子サーキュレータに接続された無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とする。
【0035】
なお、上記無反射終端器は、反射波吸収負荷と呼ばれることもある。無反射終端器は入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。
【0036】
本願に係る第2の発明のプラズマ表面処理方法は、排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータを、前記整合器と前記一対の電極の間に配置し、該3端子サーキュレータの第1の端子と前記整合器を接続し、該3端子サーキュレータの第2の端子と前記一対の電極を接続して前記高周波電源の出力を前記一対の電極に供給するとともに、該3端子サーキュレータの第3の端子に無反射終端器を接続して前記一対の電極から伝播する反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を前記無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とする。
【0037】
本願に係る第3の発明のプラズマ表面処理方法は、排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する複数の高周波電源と、該複数の高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスをそれぞれに整合する複数の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータを、前記一対の電極と前記複数の整合器との間にそれぞれに配置し、該3端子サーキュレータのそれぞれの第1の端子と前記複数の整合器を個別に接続し、該3端子サーキュレータのそれぞれの第2の端子と前記一対の電極を個別に接続して前記複数の高周波電源の出力を前記一対の電極に供給するとともに、該3端子サーキュレータのそれぞれの第3の端子に個別に無反射終端器を接続して前記一対の電極から伝播する反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とする。
【0038】
本願に係る第4の発明のプラズマ表面処理方法は、上記本願に係る第1から第3までのいずれか1つの発明のプラズマ表面処理方法において、前記反応容器にプラズマ発光状況が観測される観測窓を設置し、その観測窓から観測されるプラズマ発光のスペクトルを測定するプラズマ発光スペクトル分析器を設置するとともに、前記高周波電源と前記一対の電極のインピーダンスの整合を取るに際し、前記観測窓から観測されるプラズマの発光スペクトルの中から選定される任意の波長の光の強さが最大となるように、前記整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とする。
【0039】
本願に係る第5の発明のプラズマ表面処理方法は、上記本願に係る第1から第3までのいずれか1つの発明のプラズマ表面処理方法において、前記3端子サーキュレータと前記無反射終端器の間に方向性結合器を配置し、該方向性結合器を介して前記一対の電極からの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を検知する電力検出器を設置するとともに、前記高周波電源と前記一対の電極のインピーダンスの整合を取るに際し、該電力検出器で検出される電力値が最小となるように、前記整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とする。
【0040】
本願に係る第6の発明のプラズマCVD装置は、排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、
前記整合器と前記一対の電極の給電点の間に3端子サーキュレータを配置し、かつ、該3端子サーキュレータに前記一対の電極からの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を消費させる無反射終端器を接続したことを特徴とする。
【0041】
本願に係る第7の発明のプラズマCVD装置は、排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータが、前記整合器と前記一対の電極の間に配置され、該3端子サーキュレータの第1の端子と前記整合器が接続され、該3端子サーキュレータの第2の端子と前記一対の電極が接続されるとともに、該3端子サーキュレータの第3の端子に無反射終端器が接続されるという構造を有することを特徴とする。
【0042】
本願に係る第8の発明のプラズマCVD装置は、排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する複数の高周波電源と、該複数の高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスをそれぞれに整合する複数の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータが前記一対の電極と前記複数の整合器の間にそれぞれに配置され、前記複数の整合器にそれぞれに該3端子サーキュレータのそれぞれの第1の端子が個別に接続され、該3端子サーキュレータのそれぞれの第2の端子に前記一対の電極が接続されるとともに、該3端子サーキュレータのそれぞれの第3の端子に個別に無反射終端器が接続されるという構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、従来のプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置が有する課題、即ち、電力供給線路での定在波の発生に起因する装置の破損(焼損)による生産設備の稼働率低下及び製品の歩留まりの低下、並びに複数の高周波電源が用いられる場合及び一対の電極に複数の電力供給点が設置される場合に起こるインピーダンス整合の不適合による生産設備の稼働率低下及び製品の歩留まりの低下等の課題が解消される。
本発明によれば、電力供給線路での定在波の生成要因である一対の電極からの反射波を無反射終端器で消滅することが可能となる。また、複数の高周波電源を用いる場合及び複数の給電点を有する場合のインピーダンス整合での干渉波(反射波と同じ方向に伝播してくる電力)を無反射終端器で消滅することが可能となる。したがって、従来の装置での課題が解消される。
これにより、従来の方法及び装置では困難視されているプラズマの安定した生成及び制御が可能となる。その結果、生産設備の稼働率及び製品の歩留まりが著しく向上する。
特に、半導体や電子デバイス等の分野における大面積基板を対象にした高速、高品質シリコン系膜製造での生産性向上及び製造コストの低減に寄与できる効果は著しく大きい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を示す模式的な説明図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマCVD装置の電力供給系のブロック図である。
【図3】図3は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を示す模式的な説明図である
【図4】図4は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマCVD装置の電力供給系のブロック図である。
【図5】図5は本発明の第3の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を示す模式的な説明図である
【図6】図6は本発明の第3の実施形態に係わるプラズマCVD装置の電力供給系のブロック図である。
【図7】図7は従来の平行平板電極を有するプラズマCVD装置の構成図である。
【図8】図8はインピーダンスの整合方法を説明するための、高周波電源と整合器と電極との関係を示すブロック図である。
【図9】図9は従来装置に用いられる整合器の構成図である。
【図10】図10は複数の給電点を有する放電電極に高周波電源の出力が供給される場合の課題を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施例での説明では、プラズマCVD装置及びプラズマCVD装置を用いたシリコン膜の製造方法の一例として、シリコン系薄膜を製作する装置及び方法が記載されているが、本願の発明対象が下記の例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマCVD装置及びプラズマCVD装置を用いたシリコン系膜の製造方法を図1及び図2を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を示す模式的な説明図である。図2は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマCVD装置の電力供給系のブロック図である。
なお、本実施例ではプラズマを利用した製膜装置、即ち、プラズマCVD装置を説明しているので、放電用ガスにシラン(SiH4)及び水素(H2)を用いているが、プラズマを利用したエッチング装置、即ち、プラズマエッチング装置の場合には、放電用ガスにエッチング用ガス、例えば、塩素(Cl2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)などが用いられる。また、プラズマによるスパッタ装置の場合には、Ar、N2、O2などが用いられる。
【0047】
先ず、装置の構成を、図1及び図2を参照して説明する。
符番1は反応容器である。この反応容器1には、後述の放電用ガスをプラズマ化する一対の電極、即ち非接地の第1の電極2と図示しない基板ヒータを内臓した接地された第2の電極3が配置されている。
符番2は第1の電極で、絶縁物で製作された支持手段17を介して反応容器1に固着されている。なお、ここでは、第1の電極2を放電電極と呼ぶこともある。第1の電極2は、内部に放電用ガス噴出孔14を有し、その形状は、例えば、箱形で、その材料はアルミニウム、アルミニウム系合金、あるいはSUS等の金属で、例えばアルミニウムである。サイズは、例えば、外寸法で、長さ1.2mx幅1.2mx高さ8cmとする。なお、図示しない冷媒を通すパイプを内蔵しており、第1の電極2の温度を制御することが可能である。
符番3は第2の電極で、図示しない基板ヒータを内臓し、その上に設置される基板4の温度を100〜350℃の範囲で、任意の温度に設定可能である。なお、第2の電極3は基板ヒータの他に、冷媒を通すパイプを内蔵しており、第2の電極3の温度を制御することが可能である。また、第2の電極3の形状は、例えば、矩形で、その材料は金属で、第1の電極2に平行に対向して設置される。その具体的なサイズは、例えば、外寸法で、長さ約1.3mx幅約1.3mx高さ約8cmとする。
符番4は基板である。基板4は、図示しない基板搬入搬出装置で、第2の電極3に設置され、また、取り出される。ここでは、この基板4に微結晶シリコン膜が形成される。
符番17は第1の電極2の支持手段で、材料は絶縁物、例えばセラミックである。第1の電極2を反応容器1に固定する。また、第1の電極2と反応容器1とを電気的に絶縁する。
【0048】
第1及び第2の電極2、3の間隔は、図示しない第2の電極3の移動手段で上下に作動させることにより、予め、任意に設定可能であり、5mm〜50mmの範囲で、例えば10mmに設定される。
【0049】
符番9は、放電用ガス供給源であり、放電用ガスを供給する。ここでは、放電用ガスとして、シランガスSiHと水素H2の混合ガスを、後述のガス供給管10、絶縁性真空フランジ18、放電用ガス噴出孔14を介して、第1及び第2の電極2、3間に供給する。そのガスの流量は、放電用ガス供給源9に付属する流量計で制御される。
また、放電用ガス供給源9は、その出口の圧力を、1〜10Kg/cm程度の範囲で調整できる。ここでは、例えば3.5Kg/cmに設定する。また、そのガスの流量は、2〜20SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で設定される。
符番10は放電用ガス供給管である。放電用ガス供給源9から供給される放電用ガスを、絶縁性真空用フランジ18を介して放電用ガス噴出孔14に供給する。
符番18は絶縁性真空用フランジである。絶縁性真空用フランジ18は、気密性と電気的絶縁性を有し、放電用ガス供給管10から供給される放電用ガスを放電用ガス噴出孔14に送出する。
【0050】
符番14は放電用ガス噴出孔である。放電用ガス噴出孔14は、直径約0.4〜1.0mm、例えば直径約0.5mmで、多数個が設置される。噴出した放電用ガスは、排気管15a、15bから図示しない真空ポンプにより反応容器1の外部へ排出される。
符番15a、15bは排気管である。排気管15a、15bは図示しない真空ポンプと組み合わせて用いられ、反応容器1内のガスを排出する。
【0051】
反応容器1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。
なお、ここでは、放電用ガスが流量2〜20SLMの範囲で、圧力1.333Pa(0.01Torr)〜1333Pa(10Torr)程度に調整できる。
なお、放電用ガスを供給しない場合、反応容器1の真空到達圧力は2.66〜3.99E−5Pa(2〜3E−7Torr)程度である。
【0052】
符番5は高周波電源である。高周波電源5は、周波数10〜100MHzの任意の周波数の正弦波の信号を発生し、電力増幅して、出力する。高周波電源5には、図示しない出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、その反射波による電力増幅器の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
符番7、符番8a、符番8b、符番51は同軸ケーブルで、高周波数の電力を電送することができる。
符番6は整合器である。整合器6の内部には、図9に示されるように、インダクタと可変コンダクターが配置されている。整合器6は、同軸ケーブル7を介して入力された高周波電源5の出力を、同軸ケーブル8a、後述の3端子サーキュレータ50、同軸ケーブル8b、後述の電流導入端子11、後述の同軸型電力供給棒12及び給電点13から成る電力供給線路を介して、第1及び第2の電極2、3に供給する。そして、その一対の電極2、3のインピーダンスと電力供給線路のインピーダンスの整合を取ることができる。なお、整合を取ることについては、以下に詳しく説明する。
【0053】
符番50は3端子サーキュレータで、第1、第2及び第3の端子を有する。そして、第1の端子から入力された電力は矢印(図1を参照)の方向に沿って第2の端子に出力される。第2の端子から入力された電力は矢印(図1を参照)の方向に沿って第3の端子に出力される。第3の端子からの入力された電力は矢印(図1を参照)の方向に沿って第1の端子に出力される。なお、3端子サーキュレータ50として、電力用途の市販品を用いることができる。
符番52は無反射終端器である。反射波吸収負荷と呼ばれることもある。無反射終端器52は入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。なお、無反射終端は純抵抗Rのみで構成する。なお、純抵抗Rの値は同軸ケーブルのインピーダンスを考慮し、調整する。
符番11は電流導入端子で、反応容器1の気密を保持して、同軸ケーブル8bと同軸型電力供給棒12を接続する。
符番12は同軸型電力供給棒である。同軸型電力供給棒12は電流導入端子11を介して供給された同軸ケーブル8bからの電力を給電点13に電送する。
符番13は給電点である。給電点13は電極2と同軸型電力供給棒12との接続点であり、高周波電源5の出力が供給される。なお、高周波電源5の出力が給電点13に給電されると、一対の電極2、3の間に、プラズマが生成される。
【0054】
ここで、3端子サーキュレータ50及び無反射終端器52の機能及び電力電送線路での役割を説明する。
図1及び図2において、3端子サーキュレータ50の第1の端子に入力された電力W(1)は第2の端子からW(1)として出力され、電流導入端子11、同軸型電力供給棒12を介して給電点13に供給される。そうすると、給電点13及びその近傍で反射波W(11)が発生する。その反射波W(11)は同軸ケーブル8bを逆流し、3端子サーキュレータ50の第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波W(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51を介して無反射終端器52に入力される。無反射終端器52に入力された反射波W(11)は無反射終端器52内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波W(11)は消滅する。
したがって、3端子サーキュレータ50から整合器6へ伝搬する電力は無い。これは、3端子サーキュレータ50から上流側の電力電送線路において定在波が発生しない、ということを意味する。
また、給電点13と3端子サーキュレータ50間には定在波が発生しない条件が整う。これは、3端子サーキュレータ50と給電点13との間に定在波が発生しない、ということを意味する。
【0055】
符番53は観測窓である。観測窓53は反応容器1内部のプラズマ生成状況を観測する窓で石英ガラスが用いられる。石英ガラスは気密性を保つように取り付けられる。また、放電用ガスのプラズマからの汚れを防ぐために、シャッター機構を有する。
符番54は光検出器である。光検出器54はプラズマから発せられる光を検出し、その信号を後述のプラズマ発光スペクトル分析器55に送信する。
符番55はプラズマ発光スペクトル分析器で、光検出器54から送信されたプラズマ発光のスペクトルを分析し、表示する。
放電用ガスが、例えば、SiH4やH2を含む場合は、414nm(SiH発光)あるいは656nm(Hα線)を検出し、表示する。また、放電用ガスが、例えば、N2やO2を含む場合は、337nm(N2発光)あるいは185〜210nm(O2発光)を検出し、表示する。
放電用ガスが、例えば、塩素(Cl2)や六フッ化硫黄(SF6)、を含む場合は、726nm(Cl発光)あるいは624nm(F発光)を検出し、表示する。
【0056】
次に、上述のプラズマCVD装置を用いて、微結晶シリコン膜を製膜する方法を説明する。なお、図1及び図2を参照する。
【0057】
図1において、予め、基板4を第2の電極3の上に設置し、図示しない真空ポンプを稼動させ、反応容器1内の空気及び不純物ガス等を除去した後、放電用ガス供給源9から放電用ガスとしてシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスを、放電用ガス供給管10及び絶縁性真空用フランジ18を介して放電用ガス噴出孔14に供給する。混合ガスのシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合比は、例えば、1対10とし、混合ガスの流量を、5〜20SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば10SLMを供給しつつ、圧力を533.2Pa(4Torr)に維持する。基板温度は100〜350℃の範囲、例えば220℃に保持する。
なお、基板4のサイズは、第1の電極2のサイズに合わせて、長さ1mx幅1m(厚み4mm)とする。
【0058】
インピーダンスの整合を取る際は、観測窓53から光検出器54及び プラズマ発光スペクトル分析器55を用いてプラズマ発光の強さを見ながら、即ち、観測窓53から検出されるプラズマの発光スペクトルを観測しながら、例えば414nm(SiH発光)のピーク値が最大値を持つように、整合器6のリアクタンス(LとC)を調整する。
【0059】
高周波電源5の周波数を選定し、例えば13.56MHzとし、その出力を所要電力の10%〜30%、例えば2KWとし、その電力を整合器6、同軸ケーブル8a、3端子サーキュレータ50、同軸ケーブル8b、電流導入端子11及び 同軸型電力供給棒12を介して、給電点13に供給する。
そして、インピーダンスの整合は次のように行う。観測窓から検出されるプラズマの発光スペクトルを観測しながら、414nm(SiH発光)のピーク値が最大値を持つように、整合器6のリアクタンス(LとC)を調整する。ここでは、供給された2KWの電力値一定において、整合器6のリアクタンス(LとC)を調整により、414nm(SiH発光)のピーク値が最大値になると、整合が取れたと考える。
次に、高周波電源5の出力を所要の数値、例えば20KWに設定し、その出力で、再度、観測窓から検出されるプラズマの発光スペクトルを観測しながら、414nm(SiH発光)のピーク値が最大値を持つように、整合器6のリアクタンス(LとC)を調整する。
【0060】
この状態において、整合が完全でなければ給電点13及びその近傍で発生する反射波W(11)が逆流してくるが、この反射波W(11)は、上述したように、3端子サーキュレータ50から無反射終端器52に伝播し、その内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波W(11)は消滅する。
即ち、図1及び図2において、3端子サーキュレータ50の第1の端子に入力された電力W(1)は第2の端子からW(1)として出力され、電流導入端子11、同軸型電力供給棒12を介して給電点13に供給される。そうすると、給電点13及びその近傍で反射波W(11)が発生する。その反射波W(11)は同軸ケーブル8bを逆流し、3端子サーキュレータ50の第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波W(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51を介して無反射終端器52に入力される。無反射終端器52に入力された反射波W(11)は無反射終端器52内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波W(11)は消滅する。
なお、無反射終端器52で反射波W(112)が発生することがあるが、反射波W(11)に比べて著しく小さい。
【0061】
したがって、反射波W(11)は3端子サーキュレータ50の上流側に位置する同軸ケーブル8aに戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、3端子サーキュレータ50より上流側の電力電送線路には反射波が戻らないので、従来の装置で起こる整合器あるいは高周波電源等の焼損(破損)問題は発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、3端子サーキュレータ50の上流側では発生しない。
また、3端子サーキュレータ50と給電点13との間にも、定在波が発生しない。
なお、既に実用化され、市販されている電力用途の3端子サーキュレータは空冷あるいは水冷機能を有しているので、3端子サーキュレータ50の破損(焼損)の問題はないと、考えられる。
【0062】
上記の条件で、10〜20分程度の時間、プラズマを生成すると、基板4に微結晶シリコン膜が堆積する。なお、シランガスの他に大量の水素ガスが供給されるので、得られる膜はアモルファスSiではなく、微結晶膜になる。
基板4に堆積されたi型微結晶シリコン膜の膜厚分布は、正弦的な分布となる。即ち、製膜されたシリコン系薄膜の膜厚分布は、概略、次式で表わされる。
I(x)=cos(2πx/λ)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
結晶化率の測定には、ラマンスペクトル分析器を用い、膜中の結晶Siピーク(517cm−1)IcとアモルファスSiピーク(470〜480cm−1)Iaを求めて、結晶化率(%)=100xIc/(Ia+Ic)と定義し、評価される。
【0063】
上述の装置構成(図1、図2)において、3端子サーキュレータ50と電流導入端子11の間に同軸ケーブル8bを配置しているが、この同軸ケーブル8bを用いないで、3端子サーキュレータ50を電流導入端子11に直接、接続しても良い。
この場合は、電力電送線路の中の接続点が減るので、電力電送の損失が減少する。また、給電点13と整合器6の出力端子の間の距離が短縮し、その距離が高周波電力の波長の四分の一以下であれば、定在波発生の抑制という効果が期待される。
【0064】
(実施例2)
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマCVD装置及びその装置を用いたシリコン系膜の製造方法を、図3及び図4を参照して説明する。
図3は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を示す模式的な説明図である。図4は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマCVD装置の電力供給系のブロック図である。
なお、本実施例ではプラズマを利用した製膜装置、即ち、プラズマCVD装置を説明しているので、放電用ガスにシラン(SiH4)及び水素(H2)を用いているが、プラズマを利用したエッチング装置、即ち、プラズマエッチング装置の場合には、放電用ガスにエッチング用ガス、例えば、塩素(Cl2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)などが用いられる。また、プラズマによるスパッタ装置の場合には、Ar、N2、O2などが用いられる。
【0065】
先ず、電力供給系の構成を、図3及び図4を参照して説明する。
符番5は高周波電源である。高周波電源5は、周波数10〜100MHzの任意の周波数の正弦波の信号を発生し、電力増幅して、出力する。高周波電源5には、図示しない出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、その反射波による電力増幅器の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
符番7a、7b、8aa、8ab、8ba、8bb、51a、51bは同軸ケーブルで、高周波数の電力を電送することができる。
符番6aは第1の整合器である。第1の整合器6aの内部には、インダクタと可変コンダクターが配置されている。第1の整合器6aは、同軸ケーブル7aを介して入力された高周波電源5の出力を、同軸ケーブル8aa、後述の第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル8ba、後述の第1の電流導入端子11a、後述の第1の同軸型電力供給棒12a及び第1の給電点13aから成る第1の電力供給線路を介して、第1及び第2の電極2、3に電力を供給する。そして、第1の整合器はその一対の電極2、3のインピーダンスと第1の電力供給線路のインピーダンスの整合を図ることができる。
【0066】
符番50aは第1の3端子サーキュレータで、第1、第2及び第3の端子を有する。そして、第1の端子から入力された電力は矢印(図3、図4を参照)の方向に沿って第2の端子に出力される。第2の端子から入力された電力は矢印(図3、図4を参照)の方向に沿って第3の端子に出力される。第3の端子からの入力された電力は矢印(図3、図4を参照)の方向に沿って第1の端子に出力される。なお、第1の3端子サーキュレータ50aとして、電力用途の市販品を用いることができる。
符番52aは第1の無反射終端器である。第1の無反射終端器52aは入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。なお、第1の無反射終端は純抵抗Rのみで構成する。また、純抵抗Rの値は同軸ケーブルのインピーダンスを考慮し、調整する。
符番11aは第1の電流導入端子で、反応容器1の気密を保持して、同軸ケーブル8baと第1の同軸型電力供給棒12aを接続する。
符番12aは第1の同軸型電力供給棒である。第1の同軸型電力供給棒12aは第1の電流導入端子11aを介して供給された同軸ケーブル8baからの電力を給電点13aに電送する。
符番13aは第1の給電点である。第1の給電点13aは、電極2の端部に後述の第2の給電点13bと対向して設置され、電極2と第1の同軸型電力供給棒12aとの接続点であり、高周波電源の出力が供給される。なお、高周波電源の出力電力が第1の給電点13aに給電されると、一対の電極2、3の間に、電界が発生し、プラズマが生成される。
【0067】
ここで、第1の3端子サーキュレータ50a及び第1の無反射終端器52aの機能及び電力電送線路での役割を説明する。
図3及び図4において、第1の3端子サーキュレータ50aの第1の端子に入力された電力Wa(1)は第2の端子からWa(1)として出力され、同軸ケーブル8ba、第1の電流導入端子11a、第1の同軸型電力供給棒12aを介して第1の給電点13aに供給される。そうすると、第1の給電点13a及びその近傍で反射波Wa(11)が発生する。その反射波Wa(11)は同軸ケーブル8baを逆流し、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wa(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端52aに入力された反射波Wa(11)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wa(11)は消滅する。
【0068】
他方、後述するように、上記第2の給電点13bに入射した電力Wb(1)の一部分は、電極間を通過して第1の電流導入端子11a、同軸ケーブル8baを介して、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。その電力をWb(12)とする。これは、反射波Wa(11)と同じ方向に伝搬する電力である。
第2の端子に入射した電力Wb(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された電力Wb(12)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wb(12)は消滅する。
したがって、3端子サーキュレータ50aから整合器6aへ伝搬する電力は無い。これは、3端子サーキュレータ50aから上流側の電力電送線路において定在波が発生しない、ということを意味する。
また、給電点13と3端子サーキュレータ50間には定在波が発生しない条件が整う。これは、3端子サーキュレータ50と給電点13との間に定在波が発生しない、ということを意味する。
【0069】
符番6bは第2の整合器である。第2の整合器6bの内部には、インダクタと可変コンダクターが配置されている。第2の整合器6bは、同軸ケーブル7bを介して入力された高周波電源5の出力を、同軸ケーブル8ab、後述の3端子サーキュレータ50b、同軸ケーブル8bb、後述の第2の電流導入端子11b、後述の第2の同軸型電力供給棒12b及び第2の給電点13bから成る第2の電力供給線路を介して、第1及び第2の電極2、3に供給する。そして、その一対の電極2、3のインピーダンスと第2の電力供給線路のインピーダンスの整合を図ることができる。
【0070】
符番50bは第2の3端子サーキュレータで、第1、第2及び第3の端子を有する。そして、第1の端子から入力された電力は矢印(図3、図4を参照)の方向に沿って第2の端子に出力される。第2の端子から入力された電力は矢印(図3、図4を参照)の方向に沿って第3の端子に出力される。第3の端子からの入力された電力は矢印(図3、図4を参照)の方向に沿って第1の端子に出力される。なお、第2の3端子サーキュレータ50bとして、電力用途の市販品を用いることができる。
符番52bは第2の無反射終端器である。第2の無反射終端器52bは入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。なお、第2の無反射終端は純抵抗Rのみで構成する。なお、純抵抗Rの値は同軸ケーブルのインピーダンスを考慮し、調整する。
符番11bは第2の電流導入端子で、反応容器1の気密を保持して、同軸ケーブル8bbと第2の同軸型電力供給棒12bを接続する。
符番12bは第2の同軸型電力供給棒である。第2の同軸型電力供給棒12bは第2の電流導入端子11bを介して供給された同軸ケーブル8bbからの電力を第2の給電点13bに電送する。
符番13bは第2の給電点である。第2の給電点13bは、第1の給電点13aと対向して設置され、電極2と第2の同軸型電力供給棒12bとの接続点であり、高周波電源の出力が供給される。なお、高周波電源の出力電力が第2の給電点13bに給電されると、一対の電極2、3の間に電界が発生し、プラズマが生成される。
【0071】
ここで、第2の3端子サーキュレータ50b及び第2の無反射終端器52bの機能及び電力電送線路での役割を説明する。
図3及び図4において、第2の3端子サーキュレータ50bの第1の端子に入力された電力Wb(1)は第2の端子からWb(1)として出力され、同軸ケーブル8bb、第2の電流導入端子11b、第2の同軸型電力供給棒12bを介して第2の給電点13bに供給される。そうすると、第2の給電点13b及びその近傍で反射波Wb(11)が発生する。その反射波Wb(11)は同軸ケーブル8bbを逆流し、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wb(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端52bに入力された反射波Wb(11)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wb(11)は消滅する。
したがって、3端子サーキュレータ50bから整合器6bへ伝搬する電力は無い。これは、3端子サーキュレータ50bから上流側の電力電送線路において定在波が発生しない、ということを意味する。
また、給電点13と3端子サーキュレータ50間には定在波が発生しない条件が整う。これは、3端子サーキュレータ50と給電点13との間に定在波が発生しない、ということを意味する。
【0072】
他方、上記第1の給電点13aに入射した電力Wa(1)の一部分は、電極間を通過して第2の電流導入端子11b、同軸ケーブル8bbを介して、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に入射する。その電力をWa(12)とする。これは、反射波Wb(11)と同じ方向に伝播する電力である。
第2の端子に入射した電力Wa(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された電力Wa(12)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wa(12)は消滅する。
【0073】
また、上記第2の給電点13bに入射した電力Wb(1)の一部分は、電極間を通過して第1の電流導入端子11a、同軸ケーブル8baを介して、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。その電力をWb(12)とする。第2の端子に入射した電力Wb(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された電力Wb(12)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wb(12)は消滅する。
【0074】
その結果、上記第1の電力供給線路及び第2の電力供給線路での電力の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側に上記Wa(12)及びWb(12)が伝播しないので、従来の装置で起こるような焼損(破損)問題は発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側では発生しない。
なお、既に実用化され、市販されている電力用途の3端子サーキュレータは空冷あるいは水冷機能を有しているので、3端子サーキュレータ50の破損(焼損)の問題はないと、
考えられる。
【0075】
次に、上述のプラズマCVD装置を用いて、微結晶シリコン膜を製膜する方法を説明する。なお、図3及び図4参照する。
【0076】
図3及び図4において、予め、基板4を第2の電極3の上に設置し、図示しない真空ポンプを稼動させ、反応容器1内の空気及び不純物ガス等を除去した後、放電用ガス供給源9から放電用ガスとしてシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスを、放電用ガス供給管10及び絶縁性真空用フランジ18を介して放電用ガス噴出孔14に供給する。混合ガスのシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合比は、例えば、1対10とし、混合ガスの流量を、5〜20SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば10SLMを供給しつつ、圧力を533.2Pa(4Torr)に維持する。基板温度は100〜350℃の範囲、例えば220℃に保持する。
なお、基板4のサイズは、第1の電極2のサイズに合わせて、長さ1mx幅1m(厚み4mm)とする。
【0077】
次に、高周波電源の周波数を選定し、例えば13.56MHzとし、2つの出力の一方を所要電力の10%〜30%、例えば2KWとし、その電力を整合器6aに供給し、同軸ケーブル8aa、第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル8ba、第1の電流導入端子11a及び第1の同軸型電力供給棒12aを介して、第1の給電点13aに供給する。
そして、インピーダンスの整合は次のように行う。インピーダンスの整合は観測窓53から光検出器54及びプラズマ発光スペクトル分析器55を用いてプラズマ発光の強さを見ながら、調整する。即ち、観測窓53から検出されるプラズマの発光スペクトルを観測しながら、例えば414nm(SiH発光)のピーク値が最大値を持つように、第1の整合器6aのリアクタンス(LとC)を調整する。
ここでは、供給された2KWの電力値一定において、第1の整合器6aのリアクタンス(LとC)を調整により、414nm(SiH発光)のピーク値が最大値になると、整合が取れたと考える。そして、上記高周波電源の出力を一旦、ゼロに戻す。
【0078】
次に、高周波電源の2つの出力の他方を所要電力の10%〜30%、例えば2KWとし、その電力を第2の整合器6bに供給し、同軸ケーブル8ab、第2の3端子サーキュレータ50b、同軸ケーブル8bb、第2の電流導入端子11b及び第2の同軸型電力供給棒12bを介して、第2の給電点13bに供給する。
そして、インピーダンスの整合は次のように行う。インピーダンスの整合は観測窓53から光検出器54及びプラズマ発光スペクトル分析器55を用いてプラズマ発光の強さを見ながら、調整する。即ち、観測窓53から検出されるプラズマの発光スペクトルを観測しながら、例えば414nm(SiH発光)のピーク値が最大値を持つように、第2の整合器6bのリアクタンス(LとC)を調整する。
ここでは、供給された2KWの電力値一定において、第2の整合器6bのリアクタンス(LとC)を調整により、414nm(SiH発光)のピーク値が最大値になると、整合が取れたと考える。そして、上記高周波電源の出力を一旦、ゼロに戻す。
【0079】
次に、上記高周波電源の2つの出力を同時に、第1及び第2の整合器6a、6bに供給し、その出力を所要電力に、例えば20KWに設定する。
【0080】
この状態において、整合が完全でなければ第1及び第2の給電点13a、13b及びその近傍で発生する反射波が、それぞれに逆流してくるが、この反射波は、上述の第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50b、第1及び第2の無反射終端器52a、52bにより吸収される。その結果、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流には流れない。
即ち、図3及び図4において、第1の3端子サーキュレータ50aの第1の端子に入力された電力Wa(1)は第2の端子からWa(1)として出力され、第1の電流導入端子11a、第1の同軸型電力供給棒12aを介して第1の給電点13に供給される。そうすると、第1の給電点13a及びその近傍で反射波Wa(11)が発生する。その反射波Wa(11)は同軸ケーブル8baを逆流し、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wa(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端52aに入力された反射波Wa(11)第1の無反射終端器52内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wa(11)は消滅する。
また、上記第2の給電点13bに入射した電力Wb(1)の一部分は、電極間を通過して第1の電流導入端子11a、同軸ケーブル8baを介して、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に干渉波として、入射する。その電力をWb(12)とする。第2の端子に入射した電力Wb(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された電力Wb(12)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wb(12)は消滅する。
【0081】
他方、図3及び図4において、第2の3端子サーキュレータ50bの第1の端子に入力された電力Wb(1)は第2の端子からWb(1)として出力され、第2の電流導入端子11b、第2の同軸型電力供給棒12bを介して第2の給電点13bに供給される。そうすると、第2の給電点13b及びその近傍で反射波Wb(11)が発生する。その反射波Wb(11)は同軸ケーブル8bbを逆流し、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wb(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端52bに入力された反射波Wb(11)は第2の無反射終端器52内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wb(11)は消滅する。
また、上記第1の給電点13aに入射した電力Wa(1)の一部分は、電極間を通過して第2の電流導入端子11b、同軸ケーブル8bbを介して、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に干渉波として、入射する。その電力をWa(12)とする。第2の端子に入射した電力Wa(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された電力Wa(12)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wa(12)は消滅する。
【0082】
したがって、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側に上記供給電力の反射波及び反射波Wb(11)と同じ方向に伝播する電力(干渉波)は戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側の電力電送線路には反射波及び干渉波が戻らないので、従来の装置で起こる焼損(破損)問題は発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側では発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1の3端子サーキュレータ50aと給電点13a近傍の間に発生しない。第2の3端子サーキュレータ50bと給電点13b近傍の間に発生しない。
なお、既に実用化され、市販されている電力用途の3端子サーキュレータは空冷あるいは水冷機能を有しているので、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの破損(焼損)の問題はないと、考えられる。
【0083】
上記の条件で、10〜20分程度の時間、プラズマを生成すると、基板4に微結晶シリコン膜が堆積する。なお、シランガスの他に大量の水素ガスが供給されるので、得られる膜はアモルファスSiではなく、微結晶膜になる。
基板4に堆積された微結晶シリコン膜の膜厚分布は、正弦的な分布となる。即ち、製膜されたシリコン系薄膜の膜厚分布は、概略、次式で表わされる。
I(x)=cos(2πx/λ)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
結晶化率の測定には、ラマンスペクトル分析器を用い、膜中の結晶Siピーク(517cm−1)IcとアモルファスSiピーク(470〜480cm−1)Iaを求めて、結晶化率(%)=100xIc/(Ia+Ic)と定義し、評価される。
【0084】
上述の装置構成(図3、図4)において、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50b及び電流導入端子11a、11bの間にそれぞれ、同軸ケーブル8ba、8bbを配置しているが、この同軸ケーブル8ba、8bbを用いないで、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bを電流導入端子11a、11bに直接、接続しても良い。
この場合は、電力電送線路の中の接続点が減るので、電力電送の損失が減少する。また、給電点13a、13bと整合器6a、6bの出力端子のそれぞれの間の距離が短縮し、その距離が高周波電力の波長の四分の一以下であれば、定在波発生の抑制という効果が期待される。
【0085】
(実施例3)
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマCVD装置及びその装置を用いたシリコン系膜の製造方法を、図5及び図6を参照して説明する。なお、図1〜図4で説明した同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図5は本発明の第3の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を示す模式的な説明図である。図6は本発明の第3の実施形態に係わるプラズマCVD装置の電力供給系のブロック図である。
なお、本実施例ではプラズマを利用した製膜装置、即ち、プラズマCVD装置を説明しているので、放電用ガスにシラン(SiH4)及び水素(H2)を用いているが、プラズマを利用したエッチング装置、即ち、プラズマエッチング装置の場合には、放電用ガスにエッチング用ガス、例えば、塩素(Cl2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)などが用いられる。また、プラズマによるスパッタ装置の場合には、Ar、N2、O2などが用いられる。
【0086】
先ず、電力供給系の構成を、図5及び図6を参照して説明する。
符番53aは第1の方向性結合器である。第1の方向性結合器53aは、同軸ケーブル51a内を、第1の3端子サーキュレータ50aから第1の無反射終端52aへ伝播する電力を検知し、その信号を後述の第1の電力検知器54aに送信する。
符番54aは第1の電力検知器である。第1の電力検知器54aは、第1の方向性結合器53aから送信された電気信号を受信し、その受信信号を電力値に変換して、その値を表示する。
符番53bは第2の方向性結合器である。第2の方向性結合器53bは、同軸ケーブル51b内を、第2の3端子サーキュレータ50bから第2の無反射終端52bへ伝播する電力を検知し、その信号を後述の第2の電力検知器54bに送信する。
符番54bは第2の電力検知器である。第2の電力検知器54bは、第2の方向性結合器53bから送信された電気信号を受信し、その受信信号を電力値に変換して、その値を表示する。
【0087】
第1の3端子サーキュレータ50a及び第1の無反射終端器52aの機能及び電力電送線路での役割を説明する。
図5及び図6において、第1の3端子サーキュレータ50aの第1の端子に入力された電力Wa(1)は第2の端子からWa(1)として出力され、同軸ケーブル8ba、第1の電流導入端子11a、第1の同軸型電力供給棒12aを介して第1の給電点13aに供給される。そうすると、第1の給電点13a及びその近傍で反射波Wa(11)が発生する。その反射波Wa(11)は同軸ケーブル8baを逆流し、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wa(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。
第1の無反射終端器52aに入力された反射波Wa(11)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wa(11)は消滅する。
同軸ケーブル51a内を第1の3端子サーキュレータ50aの第3の端子から第1の無反射終端器52aの方向へ伝播する電力は、第1の方向性結合器53aと第1の電力検知器54aにより検知され、その値が表示される。
【0088】
第2の3端子サーキュレータ50b及び第2の無反射終端器52bの機能及び電力電送線路での役割を説明する。
図5及び図6において、第2の3端子サーキュレータ50bの第1の端子に入力された電力Wb(1)は第2の端子からWb(1)として出力され、同軸ケーブル8bb、第2の電流導入端子11b、第2の同軸型電力供給棒12bを介して第2の給電点13bに供給される。そうすると、第2の給電点13b及びその近傍で反射波Wb(11)が発生する。その反射波Wb(11)は同軸ケーブル8bbを逆流し、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wb(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された反射波Wb(11)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wb(11)は消滅する。
同軸ケーブル51b内を第2の3端子サーキュレータ50bの第3の端子から第2の無反射終端器52bの方向へ伝播する電力は、第2の方向性結合器53bと第2の電力検知器54bにより検知され、その値が表示される。
【0089】
他方、上記第1の給電点13aに入射した電力Wa(1)の一部分は、電極間を通過して第2の電流導入端子11b、同軸ケーブル8bbを介して、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に入射する。その電力をWa(12)とする。第2の端子に入射した電力Wa(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された電力Wa(12)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wa(12)は消滅する。
【0090】
また、上記第2の給電点13bに入射した電力Wb(1)の一部分は、電極間を通過して第1の電流導入端子11a、同軸ケーブル8baを介して、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。その電力をWb(12)とする。第2の端子に入射した電力Wb(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された電力Wb(12)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wb(12)は消滅する。
【0091】
その結果、上記第1の電力供給線路及び第2の電力供給線路での電力の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側に上記Wa(12)及びWb(12)が伝播しないので、従来の装置で起こるような焼損(破損)問題は発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側では発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1の3端子サーキュレータ50aと給電点13a近傍の間に発生しない。第2の3端子サーキュレータ50bと給電点13b近傍の間に発生しない。
なお、既に実用化され、市販されている電力用途の3端子サーキュレータは空冷あるいは水冷機能を有しているので、3端子サーキュレータ50の破損(焼損)の問題はないと、
考えられる。
【0092】
次に、上述のプラズマCVD装置を用いて、微結晶シリコン膜を製膜する方法を説明する。なお、図5及び図6を参照する。
【0093】
図5及び図6において、予め、基板4を第2の電極3の上に設置し、図示しない真空ポンプを稼動させ、反応容器1内の空気及び不純物ガス等を除去した後、放電用ガス供給源9から放電用ガスとしてシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスを、放電用ガス供給管10及び絶縁性真空用フランジ18を介して放電用ガス噴出孔14に供給する。混合ガスのシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合比は、例えば、1対10とし、混合ガスの流量を、5〜20SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば10SLMを供給しつつ、圧力を533.2Pa(4Torr)に維持する。基板温度は100〜350℃の範囲、例えば220℃に保持する。
なお、基板4のサイズは、第1の電極2のサイズに合わせて、長さ1mx幅1m(厚み4mm)とする。
【0094】
次に、高周波電源の周波数を選定し、例えば13.56MHzとし、2つの出力の一方を所要電力の10%〜30%、例えば2KWとし、その電力を整合器6aに供給し、同軸ケーブル8aa、第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル8ba、第1の電流導入端子11a及び第1の同軸型電力供給棒12aを介して、第1の給電点13aに供給する。
そして、インピーダンスの整合は次のように行う。即ち、インピーダンスの整合は、第1の方向性結合器53aと第1の電力検知器54aにより検知されて表示される同軸ケーブル51a内を第1の3端子サーキュレータ50aの第3の端子から第1の無反射終端52aの方向へ伝播する電力の値が、最小値となるように、第1の整合器6aのリアクタンス(LとC)を調整する。
ここでは、供給された2KWの電力値一定において、第1の整合器6aのリアクタンス(LとC)を調整により、第1の電力検知器54aの値が最小値になると、整合が取れたと考える。そして、上記高周波電源の出力を一旦、ゼロに戻す。
【0095】
次に、高周波電源の2つの出力の他方を所要電力の10%〜30%、例えば2KWとし、その電力を第2の整合器6bに供給し、同軸ケーブル8ab、第2の3端子サーキュレータ50b、同軸ケーブル8bb、第2の電流導入端子11b及び第2の同軸型電力供給棒12bを介して、第2の給電点13bに供給する。
そして、インピーダンスの整合は次のように行う。即ち、インピーダンスの整合は、第2の方向性結合器53bと第2の電力検知器54bにより検知されて表示される同軸ケーブル51b内を第2の3端子サーキュレータ50bの第3の端子から第2の無反射終端器52bの方向へ伝播する電力の値が、最小値となるように、第2の整合器6bのリアクタンス(LとC)を調整する。
ここでは、供給された2KWの電力値一定において、第2の整合器6bのリアクタンス(LとC)を調整により、第2の電力検知器54bの値が最小値になると、整合が取れたと考える。そして、上記高周波電源の出力を一旦、ゼロに戻す。
【0096】
次に、上記高周波電源の2つの出力を同時、第1及び第2の整合器6a、6bに供給し、その出力を所要電力に、例えば20KWに設定する。
【0097】
この状態において、整合が完全でなければ第1及び第2の給電点13a、13b及びその近傍で発生する反射波が、それぞれに逆流してくるが、この反射波は、上述の第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50b、第1及び第2の無反射終端器52a、52bにより吸収される。その結果、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流には流れない。
即ち、図5及び図6において、第1の3端子サーキュレータ50aの第1の端子に入力された電力Wa(1)は第2の端子からWa(1)として出力され、第1の電流導入端子11a、第1の同軸型電力供給棒12aを介して第1の給電点13に供給される。そうすると、第1の給電点13a及びその近傍で反射波Wa(11)が発生する。その反射波Wa(11)は同軸ケーブル8baを逆流し、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wa(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された反射波Wa(11)第1の無反射終端器52内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wa(11)は消滅する。
また、上記第2の給電点13bに入射した電力Wb(1)の一部分は、電極間を通過して第1の電流導入端子11a、同軸ケーブル8baを介して、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に干渉波として、入射する。その電力をWb(12)とする。第2の端子に入射した電力Wb(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された電力Wb(12)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wb(12)は消滅する。
【0098】
他方、図5及び図6において、第2の3端子サーキュレータ50bの第1の端子に入力された電力Wb(1)は第2の端子からWb(1)として出力され、第2の電流導入端子11b、第2の同軸型電力供給棒12bを介して第2の給電点13bに供給される。そうすると、第2の給電点13b及びその近傍で反射波Wb(11)が発生する。その反射波Wb(11)は同軸ケーブル8bbを逆流し、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wb(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された反射波Wb(11)は第2の無反射終端器52内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wb(11)は消滅する。
また、上記第1の給電点13aに入射した電力Wa(1)の一部分は、電極間を通過して第2の電流導入端子11b、同軸ケーブル8bbを介して、第2の3端子サーキュレータ50bの第2の端子に干渉波として、入射する。その電力をWa(12)とする。第2の端子に入射した電力Wa(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された電力Wa(12)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wa(12)は消滅する。
【0099】
したがって、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側に上記供給電力の反射波及び干渉波は戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側の電力電送線路には反射波及び干渉波(該反射波と同じ方向に伝播する電力)が戻らないので、従来の装置で起こる焼損(破損)問題は発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側では発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は、第1の3端子サーキュレータ50aと給電点13a近傍の間に発生しない。第2の3端子サーキュレータ50bと給電点13b近傍の間に発生しない。
なお、既に実用化され、市販されている電力用途の3端子サーキュレータは空冷あるいは水冷機能を有しているので、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの破損(焼損)の問題はないと、考えられる。
【0100】
また、インピーダンスの整合において、第1の整合器6a及び第2の整合器6bのそれぞれのリアクタンス(LとC)を調整は、時間をずらして別々に行うので、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(11)及びWa(12)の影響はない。
第1の整合器6a及び第2の整合器6bを同時に用いる場合、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(11)及びWa(12)は第1及び第2の無反射終端器52a、52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、それぞれの干渉波の影響はない。
【0101】
上記の条件で、10〜20分程度の時間、プラズマを生成すると、基板4に微結晶シリコン膜が堆積する。なお、シランガスの他に大量の水素ガスが供給されるので、得られる膜はアモルファスSiではなく、微結晶膜になる。
基板4に堆積された微結晶シリコン膜の膜厚分布は、正弦的な分布となる。即ち、製膜されたシリコン系薄膜の膜厚分布は、概略、次式で表わされる。
I(x)=cos(2πx/λ)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
結晶化率の測定には、ラマンスペクトル分析器を用い、膜中の結晶Siピーク(517cm−1)IcとアモルファスSiピーク(470〜480cm−1)Iaを求めて、結晶化率(%)=100xIc/(Ia+Ic)と定義し、評価される。
【0102】
上述のように、実施例3によれば、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側に上記供給電力の反射波及び干渉波は戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側の電力電送線路には反射波及び干渉波が戻らないので、従来の装置で起こる焼損(破損)問題は発生しない。
また、インピーダンスの整合において、第1の整合器6a及び第2の整合器6bのそれぞれのリアクタンス(LとC)を調整は、時間をずらして別々に行うので、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(11)及びWa(12)の影響はない。第1の整合器6a及び第2の整合器6bを同時に用いる場合においても、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(11)及びWa(12)は第1及び第2の無反射終端器52a、52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、それぞれの干渉波の影響はない。
したがって、本実施例では、従来の技術では問題視される電力供給線路での定在波の発生に起因する装置の破損(焼損)問題及びインピーダンス整合の不適合の問題は、解消される。
【0103】
上述の装置構成(図5、図6)において、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50b及び電流導入端子11a、11bの間にそれぞれ、同軸ケーブル8ba、8bbを配置しているが、この同軸ケーブル8ba、8bbを用いないで、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bを電流導入端子11a、11bに直接、接続しても良い。
この場合は、電力電送線路の中の接続点が減るので、電力電送の損失が減少する。また、給電点13a、13bと整合器6a、6bの出力端子のそれぞれの間の距離が短縮し、その距離が高周波電力の波長の四分の一以下であれば、定在波発生の抑制という効果が期待される。
【符号の説明】
【0104】
1・・・反応容器、
2・・・第1の電極、
3・・・第2の電極、
4・・・基板、
5・・・高周波電源、
6、6a、6b・・・整合器
7、7a、7b、8a、8b、8aa、8ab、8ba、8bb、51・・・同軸ケーブル
9・・・放電用ガス供給源、
10・・・放電用ガス供給管、
11、11a、11b・・・電流導入端子、
12、12a、12b・・・同軸型電力供給棒、
13、13a、13b・・・給電点、
14・・・放電用ガス噴出孔、
50、50a、50b・・・3端子サーキュレータ、
52、52a、52b・・・無反射終端器、
53a、53b・・・方向性結合器、
54・・・光検出器
54a、54b・・・電力検知器、
55・・・プラズマ発光スペクトル分析器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、
前記整合器と前記一対の電極の間に3端子サーキュレータを配置し、該3端子サーキュレータを介して該一対の電極に電力を供給するとともに、該一対の電極からの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該3端子サーキュレータに接続された無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項2】
排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータを、前記整合器と前記一対の電極の間に配置し、該3端子サーキュレータの第1の端子と前記整合器を接続し、該3端子サーキュレータの第2の端子と前記一対の電極を接続して前記高周波電源の出力を前記一対の電極に供給するとともに、該3端子サーキュレータの第3の端子に無反射終端器を接続して前記一対の電極から伝播する反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を前記無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項3】
排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する複数の高周波電源と、該複数の高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスをそれぞれに整合する複数の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータを、前記一対の電極と前記複数の整合器との間にそれぞれに配置し、該3端子サーキュレータのそれぞれの第1の端子と前記複数の整合器を個別に接続し、該3端子サーキュレータのそれぞれの第2の端子と前記一対の電極を個別に接続して前記複数の高周波電源の出力を前記一対の電極に供給するとともに、該3端子サーキュレータのそれぞれの第3の端子に個別に無反射終端器を接続して前記一対の電極から伝播する反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のプラズマ表面処理方法において、
前記反応容器にプラズマ発光状況が観測される観測窓を設置し、その観測窓から観測されるプラズマ発光のスペクトルを測定するプラズマ発光スペクトル分析器を設置するとともに、前記高周波電源と前記一対の電極のインピーダンスの整合を取るに際し、前記観測窓から観測されるプラズマの発光スペクトルの中から選定される任意の波長の光の強さが最大となるように、前記整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のプラズマ表面処理方法において、
前記3端子サーキュレータと前記無反射終端器の間に方向性結合器を配置し、該方向性結合器を介して前記一対の電極からの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を検知する電力検出器を設置するとともに、前記高周波電源と前記一対の電極のインピーダンスの整合を取るに際し、該電力検出器で検出される電力値が最小となるように、前記整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項6】
排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、
前記整合器と前記一対の電極の給電点の間に3端子サーキュレータを配置し、かつ、該3端子サーキュレータに前記一対の電極からの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を消費させる無反射終端器を接続したことを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項7】
排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスを整合する整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータが、前記整合器と前記一対の電極の間に配置され、該3端子サーキュレータの第1の端子と前記整合器が接続され、該3端子サーキュレータの第2の端子と前記一対の電極が接続されるとともに、該3端子サーキュレータの第3の端子に無反射終端器が接続されるという構造を有することを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項8】
排気系を備えた反応容器と、該反応容器に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、非接地の第1の電極と該第1の電極に対向して設置され、基板が載置される第2の電極からなる一対の電極と、該一対の電極に高周波電力を供給する複数の高周波電源と、該複数の高周波電源と該一対の電極とのインピーダンスをそれぞれに整合する複数の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、第1、第2及び第3の端子を有し、第1の端子に入力した電力を第2の端子から出力し、第2の端子に入力した電力を第3の端子から出力し、第3の端子に入力した電力を第1の端子から出力する3端子サーキュレータが前記一対の電極と前記複数の整合器の間にそれぞれに配置され、前記複数の整合器にそれぞれに該3端子サーキュレータのそれぞれの第1の端子が個別に接続され、該3端子サーキュレータのそれぞれの第2の端子に前記一対の電極が接続されるとともに、該3端子サーキュレータのそれぞれの第3の端子に個別に無反射終端器が接続されるという構造を有することを特徴とするプラズマ表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−124184(P2012−124184A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−73831(P2012−73831)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(303034908)
【Fターム(参考)】