説明

マーク検出装置と移動量検出装置及び画像形成装置

【課題】各種移動体表面に形成されたマークとそれを検出するセンサとの距離変動や角度変動が生じたりあるいは速度変動が生じてもて高精度にマークを検出して各種移動体の移動量を安定して検出する。
【解決手段】2組の投光部23a,23bでスケール17の移動方向でスケール17のマーク周期の1/2周期だけずれた位置にビーム30a,30bを照射し、スケール17のスリット19を透過した光を2組の受光部24a,24bで受光したりあるいはスケール17の反射マーク18で反射した光を2組の受光部24a,24bで受光して180度位相がずれたマーク検出信号33a,33bを出力して2値化してオフセット変動を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機やプリンタ装置あるいはファクシミリ装置等の画像形成装置に使用する感光体ベルトや転写ベルト、用紙搬送ベルト、感光体ドラム、転写ドラム等の回転体の回転量や各種移動体の移動量を検出するときに使用するマーク検出装置とそれを使用した移動量検出装置及び画像形成装置、特にマーク検出精度の向上と安定化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光体ベルトや中間転写ベルト及び用紙搬送ベルトなどの画像形成用の回転体を備えた画像形成装置が広く普及している。このような画像形成装置では、回転体上やその回転体により搬送される転写材上における画像の位置合わせを高精度に行うために、その回転体の回転量(移動量)を正確に制御することが要求される。この回転体の回転量は何らかの原因で変動することが多く、画像位置の誤差を抑制することは困難である。特に、カラー画像形成装置では、回転体の回転量の変動により、本来重なるべき位置に画像が重ならず、形成する画像の色間で位置ずれが生ずるという問題が発生する。
【0003】
この回転体の速度変動(回転量の変動)による画像の位置誤差を抑制するために、特許文献1に示された画像形成装置は、回転体の表面速度を間接的に測定するために感光体ドラムや転写ドラム等の回転体の回転軸にロータリーエンコーダを直結し、このロータリーエンコーダで検出された回転体の回転軸の回転角速度に基づいて駆動モータの回転角速度を制御するようにしている。しかしながら、回転軸の回転角速度で検出して駆動モータの回転角速度を制御しても、回転体の回転軸の偏心により回転体の表面速度に変動が生じてしまい、回転体の回転量を精度良く制御することは困難である。
【0004】
また、感光体ベルトや中間転写ベルトなど回転体として無端ベルトを使用した場合、ベルトの速度変動(回転量の変動)は、ベルトの厚さ変動、ベルトを巻き回したローラの偏心及びベルトを移動させる駆動モータの速度ムラなどにより発生してしまう。特に、カラー画像形成装置では、ベルトの速度変動による位置決め誤差は、図16に示すように、ベルト1回転の間に複数の周波数成分を有する波形になってしまう。このベルトの速度変動中にシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),黒(K)の各色毎のトナー像を重ね合わせて形成された画像は、各色の位置が合わない画像となるため、ベルトの速度変動は色ずれや色変わりなどの画質劣化の原因になっている。
【0005】
このベルトの速度変動を防止するため、特許文献2に示された画像形成装置のベルト駆動制御装置は、ベルトを駆動する駆動ローラの回転軸にロータリーエンコーダを直結し、このロータリーエンコーダから出力するパルス信号により回転体の回転量と平均速度を演算し、演算した結果により駆動モータを制御している。このように駆動ローラの回転軸に設けたロータリーエンコーダからのパルス信号で間接的に回転体の回転量や平均速度を得ているため、回転体の回転量を精度良く制御することは困難である。
【0006】
この回転体の回転量を直接検出するため、特許文献3に示されたベルト搬送装置は、ベルトの表面に反射マークを形成し、その反射マークをセンサで検出して得た電気信号を2値化し、2値化信号のパルス間隔からベルト表面速度を算出してベルトの回転量をフィードバックしてベルトの速度を制御している。
【特許文献1】特開平6−175427号公報
【特許文献2】特開平9−114348号公報
【特許文献3】特開平6−263281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら画像形成用などの回転体に使われるベルトは、柔軟で変形し易いとともに厚さに偏差を有しており、ベルトが回転しているときに、ベルト表面に形成されたマークとそれを検出するセンサとの距離変動や角度変動が生じてしまう。このようにマークとセンサとの距離変動や角度変動が生じるとセンサで受光する受光量が変化してしまうため、センサが出力する電気信号の振幅は図17に示すように変動する。このためセンサが出力する電気信号を、基準レベル電圧(0V)を中心にして定めた上下の振幅規定レベルH,Lとコンパレータで比較して得た振幅レベル判断出力である2値化信号のパルス間隔も変動してしまう。また、回転体の移動速度が一定でない場合、センサからの電気信号からオフセットを取り除くためにハイパスフィルタを使うと、ハイパスフィルタの通過帯域以外の速度では電気信号が減衰して検出できなくなってしまう。
【0008】
この発明は、このような短所を改善し、回転体や各種移動体表面に形成されたマークとそれを検出するセンサとの距離変動や角度変動が生じたり、あるいは回転体や各種移動体の速度変動が生じてもて高精度にマークを検出して回転体や各種移動体の移動量を安定して検出することができるマーク検出装置とそれを使用した移動量検出装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のマーク検出装置は、所定の周期パターンで配列されて設けられた複数のマークによって構成されるスケールに光を照射し、スケールのマークから反射した光あるいはスケールのマークを透過した光を検出するマーク検出装置において、光ビームを出射する光源と、該光源から出射された光ビームを所定の形状に整形して前記スケールに照射する光整形手段を有する投光部と、該投光部から前記スケールに照射されて前記スケールのマークから反射した光あるいは前記スケールのマークを透過した光を受光して電気信号に変換する受光部とで構成される光ヘッドを複数有し、前記複数の光ヘッドの各投光部から射出される複数の光ビームは、前記スケールの移動方向に垂直な面内で角度が互いに異なり、かつ、前記スケールに対する照射位置が前記スケールのマーク周期以内だけずれていることを特徴とする。
【0010】
前記複数の光ヘッドは、前記スケールに照射する光ビームがスケールの法線を挟んで対向するように配置されていることが望ましい。
【0011】
この発明の他のマーク検出装置は、所定の周期パターンで配列されて設けられた複数のマークによって構成されるスケールに光を照射し、スケールのマークから反射した光あるいはスケールのマークを透過した光を検出するマーク検出装置において、光ビームを出射する光源と、該光源から出射された光ビームを複数の光ビームに分割する光分割手段と、該光分割手段で分割した複数の光ビームを所定の形状に整形して前記スケールに照射する光整形手段を有する投光部と、該投光部から前記スケールに照射された複数の光ビームの前記スケールのマークから反射した光あるいは前記スケールのマークを透過した光を受光して電気信号に変換する複数の受光部とで構成される光ヘッドを有し、前記スケールに照射する複数の光ビームは、前記スケールの移動方向に垂直な面内で入射角度が互いに異なり、かつ、前記スケールに対する照射位置が前記スケールのマーク周期以内だけずれていることを特徴とする。
【0012】
前記光分割手段は、透過パターンと反射パターンの組み合わせを有する透過・反射スリットと、該透過・反射スリットで反射した光ビームを反射するミラーとを有すると良い。
【0013】
また、前記スケールに照射する複数の光ビームの位置は、前記スケールのマーク周期の1/2周期だけずれていることが望ましい。
【0014】
また、前記光整形手段は、前記光源から出射した光ビームを略平行光束に光学補正するコリメートレンズと、該コリメートレンズで略平行光束にした光ビームのなかから所定のパターンの光ビームを透過する1又は複数のスリットが設けられた固定マスクを有する。
【0015】
さらに、前記固定マスクは、光ビームを透過する1又は複数のスリットを有する複数の領域を有し、前記スケールに照射する複数の光ビームを1つの固定マスクで所定の形状に整形しても良い。
【0016】
この発明の移動量検出装置は、前記マーク検出装置を有し、前記複数の受光部から出力する信号を2値化して前記移動体の移動量を算出することを特徴とする。
【0017】
この発明の画像形成装置は、前記移動量検出装置を有し、前記移動体は、感光体ベルト、感光体ドラム、転写ベルト、用紙搬送ベルト又は転写ドラムのいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、所定の周期パターンで配列されて設けられた複数のマークによって構成されるスケールに、スケールの移動方向に垂直な面内で入射角度が互いに異なる複数の光ビームを照射して、スケールに照射する光ビームを移動体の移動方向に対して角度を持たないようにしてスケールのマークから反射した光あるいはスケールのマークを透過した光を検出することにより、投光部とスケールとのギャップ変動が有っても観測位置が変化せずに高精度なマーク検出を行うことができる。
【0019】
また、スケールに対する複数の光ビームの照射位置をほぼ同じ位置に照射してスケールのマークから反射した光あるいはスケールのマークを透過した光を検出することにより、位相がずれた複数のマーク検出信号をスケールの近傍の位置から得ることができ、スケールの傷や汚れによって発生する短時間の変動に対してもずれが少なく、確実なオフセット除去を可能にすることができる。
【0020】
また、スケールに照射する複数の光ビームの位置を、スケールのマーク周期の1/2周期だけずらすことにより、複数のマーク検出信号をスケールの近傍の位置から確実に得ることができる。
【0021】
さらに、複数のマーク検出信号を2値化して移動体の移動量を算出することにより、移動体の移動量を安定して検出することができる。また、複数のマーク検出信号を2値化するとき、スケールに大きな反射むら等がある場合には、複数のマーク検出信号にオフセット変動が生じるが、複数のマーク検出信号はスケール上の隣接した位置の反射光や透過光であるので、複数のマーク検出信号にはほぼ同じレベルのオフセット変動が重畳するので、2値化される位置は複数のマーク検出信号の振幅のほぼ中心となり、オフセット変動を除去した精度の高い2値化信号を得ることができる。
【0022】
また、複数のマーク検出信号から画像形成装置の感光体ベルトや感光体ドラム、転写ベルト、用紙搬送ベルト又は転写ドラムの移動量を検出することにより、色ずれ等がない良質な画像を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1はこの発明の画像形成装置の構成を示す配置図である。図に示すように、画像形成装置1は、記録用紙2を搬送する搬送ベルト3に沿って、搬送ベルト3の回転方向(搬送方向)の上流側から順に配列された複数の画像形成ユニット4K,4M,4Y,4Cと、搬送ベルト3を挟んで各画像形成ユニット4K,4M,4Y,4Cと対向する位置に設けられた転写器5K,5M,5Y,5C及び搬送ベルト3の下流側に設けられた定着器6を有する。
【0024】
画像形成ユニット4Kはブラックの画像を形成し、画像形成ユニット4Mはマゼンタの画像を形成し、画像形成ユニット4Yはイエローの画像を形成し、画像形成ユニット4Cはシアンの画像を形成する。各画像形成ユニット4K,4M,4Y,4Cは、像担持体としての感光体ドラム7と、感光体ドラム7の周囲に配置された帯電器8と露光器9と現像器10と感光体クリーナ11などを有する。露光器9はレーザスキャナが用いられ、レーザ光源からのレーザ光をポリゴンミラーで反射させ、fθレンズや偏向ミラーなどを用いた光学系を介して出射する。
【0025】
搬送ベルト3は、駆動回転させられる駆動ローラ12と従動ローラ13に巻き回された無端ベルトで形成され、矢印A方向に回転する。搬送ベルト3の下方には、記録用紙2が収納された給紙トレイ14を有する。この給紙トレイ14に収納された記録用紙2のうち最上位置にある記録用紙2は、画像形成時に送り出されて搬送ベルト4に静電吸着して搬送され、各画像形成ユニット4K,4M,4Y,4Cで形成された画像が転写される。
【0026】
この画像形成装置1でカラー画像を形成するときは、まず、画像形成ユニット4Kの感光体ドラム7の表面を帯電器8一様に帯電した後、露光器9で黒画像に対応したレーザ光により露光して静電潜像を形成する。この感光体ドラム7に形成された静電潜像を現像器10で黒トナーにより可視像化して感光体ドラム7に黒のトナー像を形成する。感光体ドラム7に形成されたトナー像は、搬送ベルト3で搬送されている記録用紙2が感光体ドラム7と接する転写位置で転写器5Kにより記録用紙2に転写されて記録用紙2に黒の画像を形成する。トナー像を記録用紙2に転写した感光体ドラム7に残留している不要なトナーは感光体クリーナ11により除去され、次の画像形成に備える。
【0027】
このようにして、画像形成ユニット4Kで黒のトナー像が転写された記録用紙2は搬送ベルト3によって次の画像形成ユニット4Mに搬送され、画像形成ユニット4Mで画像形成ユニット4Kと同様にして感光体ドラム7に形成されたマゼンタのトナー像が記録用紙2の黒のトナー像に重ね合わせて転写される。以下同様にして搬送ベルト3により搬送されている記録用紙2に画像形成ユニット4Yで形成したイエローのトナー像を重ね合わせて転写し、画像形成ユニット4Cで形成されたシアンのトナー像が重ね合わされて転写して記録用紙2にフルカラーのカラー画像を形成する。このフルカラーのカラー画像が形成された記録用紙2は画像形成ユニット4Cを通過した後、搬送ベルト3から剥離されて定着器6にて熱と圧力で定着されて排紙される。
【0028】
この記録用紙2を搬送する搬送ベルト3を回転する駆動ローラ12は、図2の斜視図に示すように、減速機15を介して駆動モータ16に接続されており、駆動モータ16による駆動力によって回転駆動される。この駆動ベルト3の端部にはスケール17を有する。スケール17は、図3の概略構成図に示すように、搬送ベルト3の回転方向、すなわち搬送ベルト3の外周面の移動方向に交互に並ぶ複数の反射マーク18と複数のスリット19とが所定のマーク周期で設けられている。そして反射光を検出する場合は反射マーク18が基準マークとして機能し、透過光を検出する場合はスリット19が基準マークとして機能する。すなわち、反射マーク18とスリット19は反射率と透過率が変化すれば良く、反射光を検出する場合は例えば白や黒などの色の違う印刷パターンでも良いし、アルミ蒸着膜などのような全反射パターンでも良い。このような反射マーク18とスリット19はその数に応じて単一又は連続した反射率変化を生じさせる。
【0029】
このスケール17の反射マーク18又はスリット19を検出するマーク検出装置21は、スケール17と対向して搬送ベルト3から所定の距離だけ離れた位置に設けられている。このマーク検出装置21は、図3及び図4に示すように、複数、例えば2組の光ヘッド部22a,22bを有する。各光ヘッド部22a,22bは投光部23と受光部24を有する。
【0030】
投光部23は光ビームを出射する光源25と光整形手段26を有する。光源25は、例えば発光ダイオード(LED)を使用するが、半導体レーザや電球などを用いても良い。特に平行度が良い光ビームを用いることが望ましいので、半導体レーザや点光源LEDなどのように発光面積の小さいものを使用すると良い。光整形手段26は光源25から出射した光ビームを集光して所望の形状に整形する。この光整形手段26としては、例えば図4に示すように、コリメートレンズ27と、図5(a)に示すように、光を通過するスリット28を有する固定マスク29を有し、光源25から出射された光ビームをコリメートレンズ27で平行ビームにして固定マスク29でビーム整形して、例えば図5(b)に示すように、スケール17にライン状ビーム30a,30bを照射する。
【0031】
受光部24は、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタなどを有し、図3に示すように、スケール17のスリット19を透過した光、または図4に示すように、スケール17の反射マーク18で反射した光を受光素子で受光して光電変換を行う。2組の光ヘッド部22a,22bの受光部24a,24bは、図6のブロック図に示すように、駆動モータ17の制御部31の増幅器やコンパレータなどの比較器32に接続されている。なお、受光部24にスケール17のスリット19を透過した光や反射マーク18で反射した光を集光するレンズを設けても良い。
【0032】
このマーク検出装置21の投光部23は光軸を搬送ベルト3の表面に対して傾けて、かつ搬送ベルト3の移動方向(回転方向)に対して直交する面内に設けることが望ましい。このように投光部23の光軸を搬送ベルト3の移動方向に対して直交する面内に設けることにより、投光部23からスケール17に照射する光ビームは搬送ベルト3の移動方向に対して角度を持たず、搬送ベルト3とのギャップ変動が有っても観測位置が変化せずに高精度なマーク検出を行うことができる。
【0033】
この2組の光ヘッド部22a,22bの投光部23a,23bでスケール17に照射するビーム30a,30bの照射位置はスケール17の移動方向、すなわち駆動ベルト3の移動方向でスケール17のマーク周期の1/2周期だけずれた位置に照射するように、光ヘッド部22a,22bがスケール17に対してそれぞれ配置されている。
【0034】
この光ヘッド部22a,22bの各投光部23a,23bからスケール17に照射し、スケール17のスリット19を透過した光を2組の受光部24a,24bで受光したり、あるいはスケール17の反射マーク18で反射した光を2組の受光部24a,24bで受光して光電変換した電気信号(マーク検出信号)は、図7の波形図に示すように、受光部24aから出力するマーク検出信号33aに対して1/2周期すなわち180度位相がずれたマーク検出信号33bが受光部24bから出力される。この180度位相がずれたマーク検出信号33a,33bを比較器32で2値化したデジタル信号を用いてに駆動モータ16を制御する。
【0035】
このように2組の投光部23a,23bでスケール17の移動方向でスケール17のマーク周期の1/2周期だけずれた位置にビーム30a,30bを照射し、スケール17のスリット19を透過した光を2組の受光部24a,24bで受光したり、あるいはスケール17の反射マーク18で反射した光を2組の受光部24a,24bで受光して180度位相がずれたマーク検出信号33a,33bを比較器32で比較演算すると、図7に示す2値化信号のように、マーク検出信号33aとマーク検出信号33bが同じ電圧のところで2値化レベルを切り換えることができる。例えばスケール17に大きな反射むら等がある場合には、マーク検出信号33a,33bにオフセット変動が生じるが、マーク検出信号33a,33bはスケール17上の隣接した位置の反射光や透過光であるので、マーク検出信号33a,33bには、図7に示すように、ほぼ同じレベルのオフセット変動が重畳するので、2値化される位置はマーク検出信号33a,33bの振幅のほぼ中心となり、オフセット変動を除去した精度の高い2値化信号を得ることができる。
【0036】
また、180度位相がずれたマーク検出信号33a,33bをスケール17の近傍の位置から得ることができるから、スケール17の傷や汚れによって発生する短時間の変動に対してもずれが少なく、確実なオフセット除去が可能になる。さらに、マーク検出信号33a,33bを得るために2組の投光部23a,23bでスケール17に照射する光ビームは異なるビーム入射角度でスケール17に入射するから信号の干渉や混信も防ぐことができ、高精度にマークを検出することができる。
【0037】
前記説明では180度位相がずれたマーク検出信号33a,33bによりオフセット除去をする場合について説明したが、複数ビームの位相差は180度である必要はなく、目的のよって必要な位相差、例えば90度や120度を選んで良い。
【0038】
また、前記説明では投光部23a,23bに設けた光整形手段26の固定マスク29に1つのスリット28を設けた場合について示したが、図8(a)に示すように、複数のスリット28を固定マスク29aに設け、図8(b)に示すように、複数ビーム30a,30bにより位相差のあるマーク検出信号33a,33bを得るようにしても良い。この場合も、投光部23a,23bからスケール17に照射する2つのビームパターンはビームパターンの大きさだけずらす必要はなく、必要とする位相差の分だけずらせば良い。
【0039】
さらに、投光部23a,23bの光整形手段26にそれぞれ設けた固定マスク29,29aを設けた場合について説明したが、図9に示すように、固定マスク29bに複数のスリット28を有するビーム30aの通過領域34aとビーム30bの通過領域34bをそれぞれ設け、図10に示すように、固定マスク29bを投光部23a,23bの光整形手段26で共通に使用しても良い。このように固定マスク29bを2組の投光部23a,23bの光整形手段26で共通に使用することにより、マーク検出装置21の構成部品を削減するとともに組立時の位相調整を容易に行うことができる。
【0040】
また、前記説明では、2組の光ヘッド部22a,22bにそれぞれ受光部24a,24bを設けた場合について説明したが、図11に示すように、2つの受光領域35a,35bを有する受光部24cを光ヘッド部22a,22bで共通に使用しても良い。
【0041】
さらに、2組の光ヘッド部22a,22bの投光部23a,23bをスケール17に対して同一方向に配置した場合について説明したが、図12の構成図に示すように、投光部23aと投光部23bをスケール17に対して反対側に配置し、投光部23a側に光ヘッド部22bの受光部24bを配置し、投光部23b側に光ヘッド部22aの受光部24aを配置しても良い。このように2組の光ヘッド部22a,22bを配置することにより、投光部23a,23bで照射した光ビームが他方の受光部23b,23aに入射しにくくしてスケール17からの光散乱による信号の混信を防ぐことができ、ノイズの少ないマーク検出信号33a,33bを得ることができる。
【0042】
また、図13の構成図に示すように、光整形手段26に例えば1対のハーフミラー36a,36bなどの光分割素子36を設け、光源25から出射した光ビームを2分割することにより、投光部23を1つに集約することができる。
【0043】
また、図14に示すように、反射マーク領域37と透過スリット領域38とを所定のピッチで複数有する反射・透過マスク39を利用し、図15の構成図に示すように、光整形手段26に反射・透過マスク39と、反射・透過マスク39の反射マーク領域37で反射した光ビームを反射するミラー40を設けても良い。この反射・透過マスク39を利用することにより、投光部23を1つに集約することができるとともに、光源25から出射した光ビームを有効に利用することができる。
【0044】
前記説明ではマーク検出装置21で記録用紙2を搬送する搬送ベルト3に設けたスケール17のマークを検出して搬送ベルト3の回転量を制御する場合について説明したが、感光体ドラム7等の回転体に設けたスケールのマークも同様に検出して回転体の回転量を制御することができる。
【0045】
さらに、各種測長機器や計測装置で移動体に移動量を検出するときも、各種スケールに設けたマークを精度良く検出して移動体の移動量を安定して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の画像形成装置の構成を示す配置図である。
【図2】搬送ベルトの構成を示す斜視図である。
【図3】透過型のマーク検出装置とスケールの構成を示す斜視図である。
【図4】反射形のマーク検出装置の構成図である。
【図5】固定マスクとスケールに照射された光ビームを示す構成図である。
【図6】駆動モータの制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】マーク検出信号と2値化信号を示す波形図である。
【図8】第2の固定マスクとスケールに照射された光ビームを示す構成図である。
【図9】第2の固定マスクの構成図である。
【図10】第2の反射形マーク検出装置の構成図である。
【図11】2つの受光領域を有する受光部の構成図である。
【図12】第3の反射形マーク検出装置の構成図である。
【図13】第4の反射形マーク検出装置の構成図である。
【図14】反射・透過マスクの構成図である。
【図15】反射・透過マスクを有するマーク検出装置の構成図である。
【図16】ベルトの速度変動による位置決め誤差の変化特性図である。
【図17】マークとセンサとの距離変動等が生じたときのセンサ出力信号と2値化信号の変化を示す波形図である。
【符号の説明】
【0047】
1;画像形成装置、2;記録用紙、3;搬送ベルト、4;画像形成ユニット、
5;転写器、6;定着器、7;感光体ドラム、8;帯電器、9;露光器、
10;現像器、11;感光体クリーナ、12;駆動ローラ、13;従動ローラ、
14;給紙トレイ、16;駆動モータ、17;スケール、18;反射マーク、
19;スリット、21;マーク検出装置、22;光ヘッド部、23;投光部、
24;受光部、25;光源、26;光整形手段、27;コリメートレンズ、
28;スリット、29;固定マスク、30;光ビーム、31;制御部、
32;比較器、33;マーク検出信号、35;受光領域、36;光分割素子、
37;反射マーク領域、38;透過スリット領域、39;反射・透過マスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動方向に所定の周期パターンで配列されて設けられた複数のマークによって構成されるスケールに光を照射し、スケールのマークから反射した光あるいはスケールのマークを透過した光を検出するマーク検出装置において、
光ビームを出射する光源と、該光源から出射された光ビームを所定の形状に整形して前記スケールに照射する光整形手段を有する投光部と、該投光部から前記スケールに照射されて前記スケールのマークから反射した光あるいは前記スケールのマークを透過した光を受光して電気信号に変換する受光部とで構成される光ヘッドを複数有し、
前記複数の光ヘッドの各投光部から射出される複数の光ビームは、前記スケールの移動方向に垂直な面内で角度が互いに異なり、かつ、前記スケールに対する照射位置が前記スケールのマーク周期以内だけずれていることを特徴とするマーク検出装置。
【請求項2】
前記複数の光ヘッドは、前記スケールに照射する光ビームがスケールの法線を挟んで対向するように配置されている請求項1に記載のマーク検出装置。
【請求項3】
移動体の移動方向に所定の周期パターンで配列されて設けられた複数のマークによって構成されるスケールに光を照射し、スケールのマークから反射した光あるいはスケールのマークを透過した光を検出するマーク検出装置において、
光ビームを出射する光源と、該光源から出射された光ビームを複数の光ビームに分割する光分割手段と、該光分割手段で分割した複数の光ビームを所定の形状に整形して前記スケールに照射する光整形手段を有する投光部と、該投光部から前記スケールに照射された複数の光ビームの前記スケールのマークから反射した光あるいは前記スケールのマークを透過した光を受光して電気信号に変換する複数の受光部とで構成される光ヘッドを有し、
前記スケールに照射する複数の光ビームは、前記スケールの移動方向に垂直な面内で入射角度が互いに異なり、かつ、前記スケールに対する照射位置が前記スケールのマーク周期以内だけずれていることを特徴とするマーク検出装置。
【請求項4】
前記光分割手段は、透過パターンと反射パターンの組み合わせを有する透過・反射スリットと、該透過・反射スリットで反射した光ビームを反射するミラーとを有する請求項3記載のマーク検出装置。
【請求項5】
前記スケールに照射する複数の光ビームの位置は、前記スケールのマーク周期の1/2周期だけずれている請求項1乃至4のいずれかに記載のマーク検出装置。
【請求項6】
前記光整形手段は、前記光源から出射した光ビームを略平行光束に光学補正するコリメートレンズと、該コリメートレンズで略平行光束にした光ビームのなかから所定のパターンの光ビームを透過する1又は複数のスリットが設けられた固定マスクを有する請求項1乃至5のいずれかに記載のマーク検出装置。
【請求項7】
前記固定マスクは、光ビームを透過する1又は複数のスリットを有する複数の領域を有し、前記スケールに照射する複数の光ビームを1つの固定マスクで所定の形状に整形する請求項6記載のマーク検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のマーク検出装置を有し、前記複数の受光部から出力する信号を2値化して前記移動体の移動量を算出することを特徴とする移動量検出装置。
【請求項9】
請求項8記載の移動量検出装置を有し、前記移動体は、感光体ベルト、感光体ドラム、転写ベルト、用紙搬送ベルト又は転写ドラムのいずれかであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−139755(P2007−139755A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247469(P2006−247469)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】