説明

ワーク寸法測定装置

【課題】円形ワーク等を含む種々のワークの形状を短時間で簡易かつ正確に測定できるワーク寸法測定装置を提供する。
【解決手段】ワークWを挟んで両側に位置させられ、ワークWに向けて一定長の線状レーザ光Lを照射する一対のレーザ変位計4A,4Bと、これらレーザ変位計4A,4Bを互いに対向する方向で離間ないし接近方向へ移動させるスライダ機構2A,2Bと、ワークWに照射された線状レーザ光LがワークWの表面に線像を生じさせた際の移動距離に基づいてワークWの外形寸法を算出するパソコン6とを備える。ワークWは円形であり、その外周面に生じる線像は頂点を有する円弧状をなし、パソコン6は上記移動距離と頂点の位置に基づいてワークWの外径を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの外形寸法を迅速かつ正確に測定できるワーク寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク外形を自動測定する測定装置としては特許文献1に示すようなものが知られている。これは三次元空間を移動可能としたZ軸スピンドルの先端にタッチセンサを設けたものである。また、特許文献2には、測定寸法方向へ移動可能に配設した一対のCCDカメラの光学的中心軸をワークの測定対象部の端に一致させることによってワークの平面的寸法を測定するものが示されている。さらに、特許文献3には、平行光線をワークに照射して、ワークの背後と側方にそれぞれ設置したCCD受光器の受光状況からワークの寸法を測定するものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−159151
【特許文献2】特開平7−294219
【特許文献3】特開2007−17202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では正確なワーク外形を得ようとするとタッチセンサをかなり多くのワーク外形点に順次接触させる必要があって測定に時間を要するという問題がある。また、特許文献2に記載の装置では帯状ワークの幅寸法等を測定することはできるが、円形ワーク等の直径を正確に測定することは困難である。さらに特許文献3に記載の装置ではワークの背後や側方に複数設けたCCD受光器の受光状況を判定するアルゴリズムが比較的複雑であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、円形ワーク等を含む種々のワークの形状を短時間で簡易かつ正確に測定できるワーク寸法測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、ワーク(W)を挟んで両側に位置させられ、ワーク(W)に向けて一定長の線状レーザ光(L)を照射する一対のレーザ光照射手段(4A,4B)と、これらレーザ光照射手段(4A,4B)を互いに対向する方向で離間ないし接近方向へ移動させる移動駆動手段(2A,2B)と、ワーク(W)に照射された線状レーザ光(L)がワーク(W)の表面に線像(M)を生じさせた際の移動距離に基づいてワーク(W)の外形寸法を算出する外形算出手段(6)とを備える。
【0007】
本第1発明においては、レーザ光照射手段からワークに照射された線状レーザ光がワークの表面に線像を生じさせた際の移動距離に基づいてワークの外形寸法を算出しているから、ワークの形状を短時間で簡易かつ正確に測定できる。
【0008】
本第2発明では、ワーク(W)は円形であり、その外周面に生じる線像(M)は頂点(M1)を有する円弧状をなし、外形算出手段(6)は上記移動距離と頂点(M1)の位置に基づいてワーク(W)の外径を算出するものである。
【0009】
本第2発明においては、レーザ光照射手段によって頂点を有する円弧状の線像を生じさせ、線像を生じさせた際の移動距離と頂点の位置より円形ワークの外径を短時間で簡易かつ正確に測定できる。
【0010】
本第3発明では、移動駆動手段(2A,2B)によって互いに対向する方向で離間ないし接近方向へ移動させられる一対の接触式検知器(5A,5B)を設け、外形算出手段(6)は頂点(M1)間を結ぶ線上で接触式検知器(5A,5B)がワーク(W)の内周面に接触した際の移動距離よりワーク(W)の内径を算出するものである。
【0011】
本第3発明においては、線像の頂点を結ぶ線上で接触式検知器がワークの内周面に接触した際の移動距離よりワークの内径を短時間で簡易かつ正確に測定できる。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のワーク寸法測定装置によれば、円形ワーク等を含む種々のワークの形状を短時間で簡易かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ワーク測定装置の全体側面図である。
【図2】外径測定時の円形ワークの平面図である。
【図3】内径測定時の円形ワークの平面図である。
【図4】他の円形ワークの側面図である。
【図5】他の円形ワークの側面図である。
【図6】他の円形ワークの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1にはワーク測定装置の側面図を示す。図1において、一定幅の長板状の基体1には下面の両側に長手方向へ延びる移動駆動手段としてのスライダ機構2A,2Bが設けられている。スライダ機構2A,2Bは本実施形態では基体1を長手方向へ等分する同一長としてあり、小間隙をおいて対向位置している。各スライダ機構2A,2Bには支持部材3A,3Bが垂設されており、これら支持部材3A,3Bにはそれぞれレーザ光照射手段たるレーザ変位計(例えば(株)キーエンス製LJ−G080)4A,4Bが互いに対向させて設けてある。
【0016】
レーザ変位計4A,4Bは、一定長の線状レーザ光を出力するレーザ出力器41と、線状レーザ光の反射光を受光するCCD受光器42を備えている。また、各支持部材3A,3Bには側面に接触式検知器たるタッチプローブ5A,5Bが設けられて、その接触子51が下方へ突出している。CCD受光器42およびタッチプローブ5A,5Bの出力信号は外形算出手段としてのパソコン6に入力している。なお、上記スライド機構2A,2Bの駆動モータ21がパソコン6の出力信号で制御されるようになっている。
【0017】
上記支持部材3A,3Bの移動位置はスライダ機構2A,2B内に設けたリニアスケール(図示略)によって検出されている。また、基体1は中央上面がロボットアームHに結合されており、ロボットアームHによって、支持台S上に載置されたワークWに対して予めティーチングされた所定の位置に位置決めされる。すなわち各支持部材3A,3Bが基体1の中央から遠い外端にあるときに、これら支持部材3A,3BがワークWの中心線から大きくずれない範囲で、ワークWを挟んでその両側に位置するように基体1が水平姿勢で位置決めされる。
【0018】
ワークWが円形の場合は、左右の支持部材3A,3Bを互いに接近する方向へ移動させて、図1に示すように線状レーザ光LをワークWの外周面に照射する。支持部材3A,3Bは、レーザ出力器41の光軸とCCD受光器42の光軸が交差する点がワークWの外周面上になる距離までワークWの外周面に接近させられる。そして、図2に示すように、この時ワークWの外周面に生じた線像Mが各レーザ変位計4A,4BのCCD受光器42で捉えられる。線像Mは、ロボットアームHの軸心を中心に回転することで図2に示すようにワークWの外周面に沿った円弧となる。
【0019】
この円弧は頂点M1を有するから、左右のCCD受光器42で捉えられた各線像Mの頂点M1を結ぶ線がワークWの中心Oを通る中心線Cであり、上記頂点M1を結ぶ線の長さがワークWの外径Dとなる。そこで、パソコン6内では、両支持部材3A,3Bが移動した際の、基体1の中央から両支持部材3A,3Bまでの距離Yl,Yr(図1)と、レーザ変位計4A,4Bの寸法X、および各レーザ変位計4A,4Bから頂点M1までの、基体1の長手方向に沿った距離Sl,Srから以下の計算式(1)で円形ワークの直径Dを算出する。なお、ワークWの周方向の複数個所で直径Dを算出する必要がある場合にはロボットアームHの軸心を中心に左右の支持部材3A,3Bを適当角度旋回させることによって行う。
D=Yl−(Sl+X)+Yr−(Sr+X)
=Yl+Yr−(Sl+Sr+2X) …(1)
【0020】
ワークWの内径Eを測定する必要がある場合には、各支持部材3A,3Bを基体1の中央に近い内端へ移動させた状態で、左右のタッチプローブ5A,5Bを結ぶ線が、上述の方法で検出されたワークWの中心線Cと一致するようにロボットアームHによって基体1を平行移動させる(図3)。そして、スライダ機構2A、2Bにより各支持部材3A,3Bを、タッチプローブ5A,5Bの接触子51がワークWの内周面に当接するまで互いに外方へ移動させ、この間の支持部材3A,3Bの移動距離からパソコン6内でワークWの内径Eを算出する。このようにタッチプローブ5A,5Bの接触子51をワークWの内周面に一回接触させるだけでその内径Eを迅速かつ正確に測定することができる。
【0021】
以上のように、本実施形態のワーク寸法測定装置によれば、円形ワークWの外径Dと内径Eを短時間で簡易かつ正確に測定することができる。本実施形態のワーク寸法測定装置は、例えばスパッタリングターゲット(ターゲット材)のようなワークWの各部寸法を迅速かつ正確に測定することができる。例えば、図4に示す凹陥部のある円形ワークWの場合、ワークWの厚み寸法J,Kは基体1の姿勢を垂直にして、スライダ機構2A、2Bにより各支持部材3A,3B上のレーザ変位計4A,4Bを上下方向からワークWを挟むように接近させることによって測定する。なお、この場合の線像は頂点の無い直線状のものとなり、各CCD受光器42で得られた直線間の距離がワークWの厚み寸法J,Kとなる。外径D1,D2および内径Eは基体1の姿勢を水平に戻して上述の方法で迅速に測定できる。
【0022】
また、図5に示すような段付きの円形ワークWについても、その厚みJ,K、外径D1,D2を上述の方法で迅速に測定でき、さらには図6に示すような円錐台形ワークWについてもその厚みJと外径Dを上述の方法で迅速に測定できる。
【符号の説明】
【0023】
1…基体、2A,2B…スライダ機構(移動駆動手段)、4A,4B…レーザ変位計(レーザ光照射手段)、5A,5B‥タッチプローブ(接触式検知器)、6…パソコン(外形算出手段)、H‥ロボットアーム、L…線状レーザ光、M‥線像、M1…頂点、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを挟んで両側に位置させられ、前記ワークに向けて一定長の線状レーザ光を照射する一対のレーザ光照射手段と、これらレーザ光照射手段を互いに対向する方向で離間ないし接近方向へ移動させる移動駆動手段と、前記ワークに照射された前記線状レーザ光が前記ワークの表面に線像を生じさせた際の移動距離に基づいて前記ワークの外形寸法を算出する外形算出手段とを備えるワーク寸法測定装置。
【請求項2】
前記ワークは円形であり、その外周面に生じる前記線像は頂点を有する円弧状をなし、前記外形算出手段は前記移動距離と前記頂点の位置に基づいて前記ワークの外径を算出するものである請求項1に記載のワーク寸法測定装置。
【請求項3】
前記移動駆動手段によって互いに対向する方向で離間ないし接近方向へ移動させられる一対の接触式検知器を設け、前記外形算出手段は前記頂点間を結ぶ線上で前記接触式検知器が前記ワークの内周面に接触した際の移動距離より前記ワークの内径を算出するものである請求項2に記載のワーク寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−145441(P2012−145441A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3975(P2011−3975)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(591113437)オーム電機株式会社 (23)
【Fターム(参考)】