説明

不揮発性記憶装置の製造方法

【課題】磁気抵抗効果素子のスピン注入磁化反転特性の劣化が抑制され、製造歩留まりが高い不揮発性記憶装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、複数のメモリセルを有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、前記メモリセルのそれぞれは、第1電極を含む下地層と、前記下地層の上に設けられた磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子の上に設けられた第2電極と、を有する。前記磁気抵抗効果素子は、記憶層である第1磁性層と、前記第1磁性層の上に設けられたトンネルバリア層と、前記トンネルバリア層の上に設けられ、参照層である第2磁性層と、を含む。前記第2磁性層の表面の一部もしくは前記第1磁性層の表面の一部にイオン化されたガスクラスタを照射して、前記第2磁性層の一部および前記第1磁性層の一部をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不揮発性記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高集積の不揮発性記憶装置として、磁性体に電流を流すことにより磁化反転を起こす「スピン注入磁化反転方式」を利用する技術が注目されている。このスピン注入磁化反転方式を用いることにより、高集積のMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)が実現する。MRAMのメモリセルは、磁気抵抗効果素子を有する。磁気抵抗効果素子は、薄いトンネルバリア層を挟んで記憶層と参照層とが積層された積層構造を有する。高集積のMRAMを実現するには、磁気抵抗効果素子を数10nmのサイズにする必要がある。
【0003】
しかし、磁気抵抗効果素子に用いられる、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の磁性金属を含む材料は、一般にドライエッチングをし難い材料である。従って、通常のドライエッチング(例えば、RIE(Reactive Ion Etching))では、磁気抵抗効果素子の側壁の角度を垂直に近い形状にできない。例えば、通常のドライエッチングでは、磁気抵抗効果素子の下側ほど幅の広い形状になる。垂直磁化膜を用いた磁気抵抗効果素子は、磁気特性を向上させるため、一般に記憶層を参照層より下側に配置する。記憶層の幅が参照層の幅よりも大きくなると、参照層からの漏洩磁界が記憶層に不均一に働くため、スピン注入による磁化反転特性が劣化してしまう。
【0004】
また、磁気抵抗効果素子は、薄いトンネルバリア層を挟んで記憶層と参照層とが積層された構造を有するため、記憶層と参照層との距離が短くなっている。このため、磁気抵抗効果素子をドライエッチングによって加工すると、金属の再付着物が磁気抵抗効果素子の側面においてトンネルバリア層を跨って記憶層と参照層とに付着する可能性がある。この場合、再付着物によるリーク電流パスが記憶層と参照層との間に形成されるため、記憶層と参照層とがショートし、磁気抵抗効果素子が不良となってしまう。このため、磁気抵抗効果素子の歩留まりが低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−203408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、磁気抵抗効果素子のスピン注入磁化反転特性の劣化が抑制され、製造歩留まりが高い不揮発性記憶装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の不揮発性記憶装置の製造方法は、複数のメモリセルを有する不揮発性記憶装置の製造方法である。前記メモリセルのそれぞれは、第1電極を含む下地層と、前記下地層の上に設けられた磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子の上に設けられた第2電極と、を有する。前記磁気抵抗効果素子は、記憶層である第1磁性層と、前記第1磁性層の上に設けられたトンネルバリア層と、前記トンネルバリア層の上に設けられ、参照層である第2磁性層と、を含む。前記第2磁性層の表面の一部もしくは前記第1磁性層の表面の一部にイオン化されたガスクラスタを照射して、前記第2磁性層の一部および前記第1磁性層の一部をエッチングする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の模式図である。
【図2】真空処理装置の概要を説明するための断面模式図である。
【図3】加工後の不揮発性記憶装置の状態を説明するための断面模式図である。
【図4】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図5】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図6】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図7】第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図8】第2実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図9】第3実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図10】第3実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【図11】第4実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法によって製造された不揮発性記憶装置1について説明する。
図1は、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の模式図である。図1には、不揮発性記憶装置のメモリセルの部分が示されている。
【0011】
不揮発性記憶装置1は、磁気抵抗効果を利用したスピン注入磁化反転方式のスピン注入型MRAMである。不揮発性記憶装置1は、少なくとも1個のメモリセル20を備える。不揮発性記憶装置1には、このほか上部配線、層間絶縁膜等が設けられてもよい(後述)。
【0012】
図1に示すように、メモリセル20のそれぞれは、下部電極(第1電極)を含む下地層11と、下地層11の上に設けられ、記憶素子としての磁気抵抗効果素子30と、磁気抵抗効果素子30の上に設けられた上部電極(第2電極)15と、を有する。
【0013】
磁気抵抗効果素子30は、記憶層(第1磁性層)12と、記憶層12の上に設けられたトンネルバリア層13と、トンネルバリア層13の上に設けられ、参照層(第2磁性層)14と、を含む。磁気抵抗効果素子30は、記憶層12/トンネルバリア層13/参照層14の順に積層された積層構造を有する。磁気抵抗効果素子30には、この3層構造以外の被膜を含めてもよい。なお、この3層構造の積層膜は、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)膜である。磁気抵抗効果素子30の形状は、ピラー状である。
【0014】
図1には、結晶配向用の下地層11が下部電極と引き出し線とを含む1つの層として例示されている。第1実施形態では、結晶配向のための専用の下地層と下部電極とをそれぞれ個別に設け、これらを積層してもよい。あるいは、結晶配向用の下地層と下部電極とを1つの層とし、引き出し線を別途設けてもよい。上部電極15は、ハードマスクとしての機能を兼ね備えてもよい。
【0015】
記憶層12、参照層14は、それぞれ膜面(主面)に垂直方向の磁気異方性を有する。記憶層12、参照層14の容易磁化方向は、膜面(主面)に対して垂直である(以下、垂直磁化と言う)。すなわち、磁気抵抗効果素子30は、記憶層12、参照層14の磁化方向がそれぞれ膜面に対して垂直方向を向く、いわゆる垂直磁化型の磁気抵抗効果素子である。「膜面」については、記憶層12の膜面、参照層14の膜面のそれぞれの上に、被膜が積層されることから「積層面」と呼称してもよい。
【0016】
なお、容易磁化方向とは、あるマクロなサイズの強磁性体を想定して、外部磁界のない状態で自発磁化がその方向を向くと最も内部エネルギーが低くなる方向である。これに対し、困難磁化方向とは、あるマクロなサイズの強磁性体を想定して、外部磁界のない状態で自発磁化がその方向を向くと最も内部エネルギーが大きくなる方向である。
【0017】
また、磁気抵抗効果素子30は、MTJ膜を有する。MTJ膜は、磁性材料からなる記憶層12および参照層14と、記憶層12と参照層14とに挟まれたトンネルバリア層13との3層の薄膜を含み、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistive)効果を奏する。
【0018】
磁気抵抗効果素子30には、記憶層12および参照層14の磁化状態によって情報が記憶されたり、消去されたりする。スピン注入磁化反転方式のスピン注入型MRAMでは、磁気抵抗効果素子への情報の書き込みがMTJ膜の膜面(主面)に対して垂直方向に電流を流すことにより行われる。
【0019】
例えば、MTJ膜の膜面に対して垂直方向に電流を流すことによってスピン偏極された電子が発生する。スピン偏極された電子の角運動量が記憶層12の電子に伝達されることによって、記憶層12の磁化(あるいはスピン)の方向が反転する。磁気抵抗効果素子30では、電流の流す向きに応じて、記憶層12の磁化方向が反転する。具体的には、記憶層12の磁化方向は、記憶層12の主面に対して略垂直であって、略180°(°:度(degree))に反転可能である。
【0020】
これに対して、参照層14の磁化方向は、不変(固定)である。参照層14の磁化方向が「不変」とは、記憶層12の磁化方向を略180°に反転するための磁化反転電流を参照層14に流した場合でも、参照層14の磁化方向が変化しないことを意味する。つまり、参照層14の磁化方向は、参照層14の主面に対して略垂直に固定されている。
【0021】
換言すれば、記憶層12は、記憶層12の主面に対して略垂直な方向に磁化容易軸を有し、記憶層12の磁化方向は、可変である。これに対し、参照層14は、参照層14の主面に対して略垂直な方向に磁化容易軸を有し、参照層14の磁化方向は、固定されている。
【0022】
従って、参照層14として反転電流の大きな磁性体を用い、記憶層12として参照層14よりも反転電流の小さい磁性体を用いることによって、磁化方向が略180°に反転可能な記憶層12と、磁化方向が不変の参照層14と、を有する磁気抵抗効果素子30が形成される。
【0023】
スピン偏極された電子により磁化反転を引き起こす場合、その反転電流は減衰定数、異方性磁界、およびMTJ膜の体積に比例するため、これらを適切に調整して、記憶層12と参照層14との反転電流に差を設けることができる。なお、図1中の矢印は、磁化方向を示している。
【0024】
下地層11は、下部電極としての厚い金属層と、この金属層の上に、平坦な垂直磁化の磁性層を成長させるためのバッファ層と、を有する。下地層11の材料の一例として、タンタル(Ta)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、およびイリジウム(Ir)等よりなる群から選択された少なくとも2つ以上の金属層が積層された積層構造が挙げられる。下地層11については、タンタル(Ta)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、およびイリジウム(Ir)等よりなる群から選択されたいずれかからなる単層構造としてもよい。単層構造の場合、下地層11は、下部電極としての機能と、バッファ層としての機能と、をともに有する。
【0025】
記憶層12、参照層14の材料としては、FePd、FePt、CoPd、CoPt等のL1構造あるいはL1構造を有する強磁性材料、TbCoFe等のフェリ磁性材料、Ni、Fe、Co等の磁性材料とCu、Pd、Pt等の非磁性材料との積層構造からなる人工格子等が挙げられる。
【0026】
トンネルバリア層13の材料としては、酸化マグネシウム(MgO)、あるいは酸化アルミニウム(Al)等の絶縁材料が挙げられる。
【0027】
上部電極(ハードマスク層)15の材料としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)等の金属、あるいは窒化チタン(TiN)、窒化チタンシリコン(TiSiN)、窒化タンタルシリコン(TaSiN)等の導電性化合物が挙げられる。
【0028】
なお、第1実施形態においては、記憶層12および参照層14が面内磁化膜であってもよい。記憶層12および参照層14は、それぞれの膜面に対して平行方向の磁気異方性を有する。この場合、容易磁化方向が膜面(あるいは積層面)に対して平行である。
【0029】
面内磁化膜の記憶層12、参照層14の材料としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかを含む磁性金属が挙げられる。
【0030】
スピン注入磁化反転方式は、磁気抵抗効果素子30に書き込み電流としてのスピン注入電流を流し、そこで発生するスピン偏極された電子を用いて磁化反転を実行する。スピン偏極された電子の角運動量が磁気記憶層としての磁性材料内の電子に伝達されることにより磁気記憶層の磁化が略180°に反転する。
【0031】
このようなスピン注入磁化反転方式によれば、磁化状態をナノスケールで局所的に制御し易くなり、さらに、磁性材料の微細化に応じてスピン注入電流の値も小さくすることができる。このことは、高記録密度のハードディスクドライブや磁気ランダムアクセスメモリなどのスピンエレクトロニクスデバイスの実現に向けての手助けとなる。
【0032】
磁気抵抗効果素子30において、情報の書き込みは、具体的に以下のように行われる。情報の書き込み時、磁気抵抗効果素子30は、膜面に垂直な方向において双方向に電流が流れる。
【0033】
書き込み電流を記憶層12から参照層14の方向に流した場合、電子の流れは参照層14から記憶層12の方向になる。この場合、記憶層12の磁化は、参照層14の磁化と揃う方向にスピントルクを受ける。このため、記憶層12の磁化の向きが参照層14の磁化の向きと反平行であった場合、記憶層12の磁化は、略180°に反転して参照層14の磁化の向きと平行(同じ向き)になる。
【0034】
一方、書き込み電流を参照層14から記憶層12の方向に流した場合、電子の流れは記憶層12から参照層14の方向になる。この場合、記憶層12の磁化は参照層14の磁化の向きと反平行を向く方向にスピントルクを受ける。このため、記憶層12の磁化の向きが参照層14の磁化の向きと平行であった場合、記憶層12の磁化は、略180°に反転して参照層14の磁化の向きと反平行になる。
【0035】
磁気抵抗効果素子30に、膜面に対して垂直方向の読み出し電流を流した場合の抵抗値は、磁気抵抗効果により、記憶層12と参照層14との磁化の相対的な向きに依存して変化する。つまり、磁気抵抗効果素子30の抵抗値は、記憶層12と参照層14との磁化の向きが互いに平行の場合は低抵抗となり、反平行の場合は高抵抗となる。
【0036】
図1においては、記憶層12内に描かれた矢印が上向きの状態が平行状態を示し、下向きの状態が反平行状態を示す。第1実施形態においては、例えば、低抵抗状態をデータ「0」、高抵抗状態をデータ「1」とする。これにより、磁気抵抗効果素子30に1ビットの情報を記憶させることができる。低抵抗状態をデータ「1」、高抵抗状態をデータ「0」としてもよい。
【0037】
平行状態の抵抗値をR0、反平行状態の抵抗値をR1とすると、「(R1−R0)/R0」で定義される値を磁気抵抗比(MR比)と呼ぶ。MR比は磁気抵抗効果素子30を構成する材料やプロセス条件によって異なる。第1実施形態では、MR比が数10%から数100%程度に調整される。
【0038】
このように、不揮発性記憶装置1は、磁気抵抗効果を利用して、磁気抵抗効果素子30に記憶された情報の読み出しを行う。読み出し動作時に磁気抵抗効果素子30に流す読み出し電流は、スピン注入により記憶層12の磁化の向きが略180°に反転する電流よりも十分小さい電流値に設定する。
【0039】
次に、不揮発性記憶装置1の製造過程について説明する。第1実施形態では、後述するように、参照層14の表面の一部もしくは記憶層12の表面の一部にイオン化されたガスクラスタを照射することによって参照層14の一部および記憶層12の一部をエッチングする。まず、このような加工ができる真空処理装置の概要を説明する。
【0040】
図2は、真空処理装置の概要を説明するための断面模式図である。
図2に示す真空処理装置100は、イオン化されたガスクラスタ発生させて、このガスクラスタを被膜に照射することによって被膜をエッチング加工することができる真空処理装置である。
【0041】
真空処理装置100は、クラスタ生成室101と、イオン化室102と、クラスタ照射室103と、を備える。クラスタ生成室101には、ノズル部104が取り付けられている。ノズル部104には、ガス加圧機構120が取り付けられている。クラスタ生成室101とイオン化室102との間には、スキマ105が設けられている。
【0042】
イオン化室102の内部には、クラスタ生成室101からクラスタ照射室103の方向に、イオナイザ106、アクセラレータ107、マグネット108、圧力セル(Pressure Cell)109が設けられている。圧力セル109には、パイプ110を介して、ガス供給機構111が設けられている。ガス供給機構111には、例えば、アルゴン(Ar)等の不活性ガスが充填されている。ガス供給機構111と、圧力セル109と、の間には、ガス供給機構111から圧力セル109へのガス供給を制御するバルブ(不図示)が設けられている。
【0043】
クラスタ照射室103の内部には、イオン化室102側からアパーチャ112、基板支持台113が設けられている。
【0044】
図2では、基板支持台113の上に、被処理基板30sが設置された状態が示されている。被処理基板30sは、下地層11/磁気抵抗効果素子30/上部電極15の順に積層された積層膜である。基板支持台113は、被処理基板30sの面内方向に移動可能である。基板支持台113を移動させることにより、ビーム状のガスクラスタを被処理基板30sの全面に照射することができる。
【0045】
このほか、真空処理装置100には、ガスクラスタ中に含まれる原子数(もしくは、分子数)の数を計測する計測手段150と、イオン化されたガスクラスタの加速電圧(kV)を計測する計測手段151が付設されている。
【0046】
真空処理装置100内の減圧雰囲気は、1×10−5Torr(1.3×10−3Pa)程度に維持される。ガス加圧機構120には、ハロゲン含有ガス(F、CHF、CF、NF、SF、Cl、CHCl、Br等)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、窒素(N)、酸素(O)、または、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe)等が充填されている。
【0047】
ガス加圧機構120内で加圧されたガスがノズル部104を通じてクラスタ生成室101内に放出されると、ガスがノズル部104の先端近傍で断熱膨張する。すると、ガスがクラスタ生成室101内で冷却されて、クラスタ生成室101内に複数のガスクラスタが発生する。ガスクラスタのそれぞれは、スキマ105内を流れることによりビーム状になり、その後、イオン化室102に導かれる。イオン化室102では、イオナイザ106を用いて、ビーム状のガスクラスタに電子線が照射される。これにより、ビーム状のガスクラスタがイオン化される。
【0048】
イオン化室102では、ガスクラスタ中の分子もしくは原子が1個から数個程度、イオン化されて、ガスクラスタイオン(イオン化されたガスクラスタ)40が発生する。ガスクラスタイオン40として使用されるガスは、ハロゲン含有ガス(F、CHF、CF、NF、SF、Cl、CHCl、Br等)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、窒素(N)、酸素(O)、または、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe)等である。
【0049】
例えば、F、CHF、CF、NF、SF、Cl、CHCl、Br、CO、CO、N、O、He、Ne、Ar、Kr、Xeよりなる群から選択される少なくとも1種のガスがガスクラスタイオン40として用いられる。すなわち、ガスクラスタイオン40として用いられるガスは、上記に例示したガスから選択された1種のガス、もしくは、2種以上を混合させたガスである。
【0050】
ガスクラスタは、分子および原子の少なくともいずれかの集合体である。例えば、ガスクラスタは、複数の分子の集合体、複数の原子の集合体、あるいは1つ以上の分子と1つ以上の原子の集合体、のいずれかである。また、イオン化されたガスクラスタとは、ガスクラスタ中の分子および原子の少なくとも1個から数個程度が、イオン化したものを言う。
【0051】
さらに、ビーム状のガスクラスタイオン40は、アクセラレータ107によって加速され、マグネット108を通過して、クラスタ照射室103にまで導かれる。そして、ガスクラスタイオン40は、クラスタ照射室103内のアパーチャ112を介して、被処理基板30sに入射する。
【0052】
真空処理装置100では、ガスクラスタイオン40に含まれる原子数(もしくは、分子数)を適宜調整することができる。以下、原子数を例に挙げて説明する。
【0053】
ガスクラスタイオン40に含まれる原子数をより少なく制御する方法としては、ノズル部104の喉部(先端部分)の直径をより大きくしたり、ノズル部104に供給するガス流量をより少なくしたりする、という方法がある。そのほか、以下の方法に従ってもよい。例えば、比較的大きい原子数のガスクラスタイオン40(例えば、10000個以下の原子数)を、ガス供給機構111から圧力セル109内に供給されたアルゴン(Ar)と衝突させ、この衝突によって1つのガスクラスタイオン40をさらに細かく分割する。これにより、より少ない原子数を含むガスクラスタが形成される。
【0054】
アクセラレータ107によって、ガスクラスタイオン40の加速度を調整することにより、被処理基板30sにガスクラスタイオン40が照射される直前のガスクラスタイオン40中の原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーが所定のエネルギーに調整される。被処理基板30sにガスクラスタイオン40が照射される直前のガスクラスタイオン40中の原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーの下限は、被処理基板30sがエッチングされる閾値エネルギー以上に調整する。また、第1実施形態では、ガスクラスタイオン40に含まれる原子数もしくは分子数が、例えば、1000個以上、10000個以下に調整される。そして、ガスクラスタイオン40が被処理基板30sに照射されて、被処理基板30sが加工される。
【0055】
図3は、加工後の不揮発性記憶装置の状態を説明するための断面模式図である。
図3(a)に示すように、上部電極15をマスクとして、参照層14、トンネルバリア層13、および記憶層12の順にビーム状のガスクラスタイオン40によって加工する。例えば、下地層11の主面に対して垂直にガスクラスタイオン40を照射する。ガスクラスタイオン40としては、例えば、ハロゲン含有ガスによるガスクラスタイオンを用いる。
【0056】
第1実施形態では、上部電極15をマスクとするほか、上部電極15の上に専用のハードマスクを用いてもよい(不図示)。ハードマスクの材料としては、ビーム状のガスクラスタイオン40の照射によって磁気抵抗効果素子のドライエッチング加工を施すために、耐性の強い、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、カーボン(C)、および炭化シリコン(SiC)等よりなる群から選択されるいずれかを用いる。ハードマスクを用いる場合は、コンタクト層としての上部電極15(例えば、Ta電極)を、上述したハードマスクもしくはその上に形成されたレジストマスクを用いてRIEによって加工する。
【0057】
その後、ハードマスクをマスクにして、参照層14、トンネルバリア層13、記憶層12の順にガスクラスタイオン40の照射によってエッチングする。第1実施形態では、このような製造方法も含む。すなわち、上部電極15自体をマスクとする場合を含めると、マスク材の材料としては、タンタル、酸化シリコン、酸化アルミニウム、カーボン、および炭化シリコン等よりなる群から選択される少なくとも1つの材料を用いる。
【0058】
ここで、ガスクラスタイオン40と被エッチング材(参照層14/トンネルバリア層13/記憶層12)との表面反応は、数1000個以上の粒子の多体衝突によって進む。このため、被エッチング材の表面は、選択的に数10000℃程度の高温になる。さらに、被エッチング材の表面近傍は、数10GPa程度の高圧になる。ここで、被エッチング材の表面とは、被エッチング材の極浅領域の表面をいい、極浅領域から下方のバルクは含まない。そのため、第1実施形態では、通常のRIEにおけるモノマーイオンの表面反応とは異なり、被エッチング材の温度(バルク温度)が室温程度のまま、化学エッチングにおける吸着、反応、脱離が進行する。その結果、通常のRIEでは難エッチング材である磁性金属のエッチング反応が容易に進行する。
【0059】
第1実施形態におけるエッチングは、被エッチング材の極浅領域をエッチングし、その極浅領域の下の被エッチング材を露出させ、この露出面からの極浅領域を続けてエッチングし、その極浅領域の下の被エッチング材を露出させる、という過程を繰り返して進める。
【0060】
これにより、図3(a)に示すように、難エッチング材の磁性金属を有する磁気抵抗効果素子30を、磁気抵抗効果素子30の側壁30wと下地層11の表面11sとのなす角θが垂直(θ=90°)に近い形状で加工することができる。第1実施形態では、θ=90°に近い形状の磁気抵抗効果素子30を「垂直形状」の磁気抵抗効果素子30と呼称する。
【0061】
さらに、第1実施形態では、微細加工が実現する。例えば、加工後の磁気抵抗効果素子30の幅は、数10nm(例えば、40nm以下)である。ここで、「幅」とは、例えば、下地層11の表面11sに対して平行な方向における磁気抵抗効果素子30の最短の長さを言う。また、第1実施形態では、垂直形状の磁気抵抗効果素子30が形成されるので、参照層14の幅と記憶層12の幅とがおよそ等しく形成される。
【0062】
また、イオン化されたガスクラスタを予め形成した後、ガスクラスタイオン40が被エッチング材に照射される直前のガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーは、30eV以下に調整する。これにより、被エッチング材の表面の平坦性が良好になり、かつダメージが極力抑えられたエッチング面が得られる。
【0063】
被エッチング材に照射される直前のガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーは、次のように調整される。
例えば、ガスクラスタイオン40に含まれる原子(もしくは、分子)の数を上述した方法で調整し、イオナイザ106を用いてガスクラスタイオン40の価数が一価になるように調整する。そして、アクセラレータ107によって、それぞれのガスクラスタイオン40を所定の速度になるまで加速する。所定の速度にまで加速されたガスクラスタイオン40は、その後、所定の速度で被エッチング材に入射する。
【0064】
この際、真空処理装置100に設定された加速電圧(kV)によって、所定の速度にまでガスクラスタイオン40が加速される。この加速電圧(kV)の値をガスクラスタイオン40に含まれる原子数(または、分子数)の数で除算して、被エッチング材に照射される直前のガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーを求める。ここで、原子数(もしくは、分子数)は、計測手段150で測定でき、加速電圧は、計測手段151で測定できる。なお、例示した値「30eV」は一例であり、この値以外の値を運動エネルギーの上限値としてもよい。
【0065】
なお、実際には、ガスクラスタイオン40に含まれる原子数(または、分子数)の数は所定の分布でばらつくが、それぞれのガスクラスタイオン40に含まれる原子数(または、分子数)の最頻値(最も頻繁に計測される原子数(もしくは分子数))で加速電圧(kV)を除算した値をガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーとしてもよい。
【0066】
ガスクラスタイオン40によるエッチング加工では、クラスタの運動エネルギーが大き過ぎる場合には、被エッチング材の表面にクレーター状の凹部が生じる虞がある。エッチング面にクレーター状の凹部が発生すると、エッチング面が凸凹になりエッチング面が荒れてしまう。例えば、上述した材料で構成されたMTJ膜では、ガスクラスタのサイズが10000個程度のガスクラスタイオンに対して、例えば、60kVの加速電圧でガスクラスタイオンを照射すると、MTJ膜に最大20nm程度の凹凸を生じることが判明している。ここで、ガスクラスタの「サイズ」とは、ガスクラスタに含まれる原子もしくは分子の数を意味する。
【0067】
しかし、ガスクラスタイオン40の加速電圧を30kV以下に調整したり、圧力セル109を利用して、ガスクラスタイオン40のサイズを縮小したりすれば、エッチング表面の平坦性が良好になる。なお、ガスクラスタイオン40のサイズ調整は、ガスクラスタが複数の分子もしくは複数の原子の集合体であるので、ガスクラスタに含まれる原子もしくは分子の個数を調整して行う。
【0068】
このように、ガスクラスタイオン40が被エッチング材に照射される直前のガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーを30eV以下に調整することが望ましい。
【0069】
また、第1実施形態では、図3(b)に示すように、ガスクラスタイオン40を、例えば、下地層11の主面に対して非垂直に照射してもよい。さらに、ガスクラスタイオン40を被処理基板30sに照射中に、被処理基板30sをその面内で回転してもよい。これにより、MTJ膜の側壁30wと下地層11の表面11sとのなす角θが90°より小さい、いわゆる逆テーパ型の磁気抵抗効果素子30が形成される。
【0070】
また、MRAMの大容量化に対応させるために、磁気抵抗効果素子30の幅を100nm以下に加工する必要がある。この場合には、ガスクラスタイオン40の加速電圧を10kV以下にすることが望ましい。ガスクラスタイオン40の総エネルギーは、加速電圧(kV)によって決まる。総エネルギーが大きい場合には、上記したようにガスクラスタと被エッチング材との表面反応による発熱が大きくなる。
【0071】
このとき、磁気抵抗効果素子30の幅が100nm以下であり、磁気抵抗効果素子30が微細のピラー形状になる場合には、熱が逃げる場所が充分に確保されないため、磁性材料およびマスクが高温になってしまう。これにより、異常に高速なエッチング現象が起こり、ハードマスク自体の消失、磁気抵抗効果素子30の異常エッチング(例えば、サイドエッチング)、磁気抵抗効果素子30の積層膜間における材料の拡散が発生する。
【0072】
一方、ガスクラスタイオン40の加速電圧を下げていくと、原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーが低下する。このため、エッチングレートが低下してしまい、プロセス時間が非常に長くなる場合もある。第1実施形態では、加速電圧の低下とともに、ガスクラスタのサイズも低下させる。この際、原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーが低下し過ぎないようにプロセス条件を設定する。これにより、異常エッチングが抑制され、かつエッチングレートの低下も抑制される。
【0073】
次に、第1実施形態のより具体的な製造過程を説明する。
図4〜図7は、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。図4〜図7の断面模式図は、図1の断面の向きに対応している。
【0074】
まず、図4(a)に示すように、層間絶縁膜21が準備された後、層間絶縁膜21内に下部配線あるいはMOSトランジスタ等に電気的に接続されるコンタクト22を形成する。層間絶縁膜21は、半導体基板上に形成されたMOSトランジスタ、FEOL(Front End Of Line)工程を経た層等の上に形成される(不図示)。
【0075】
層間絶縁膜21については、CMP(Chemical Mechanical Polishing)およびエッチバックにより、その上面を平坦化してもよい。層間絶縁膜21の材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)が用いられる。コンタクト22の材料としては、例えば、タングステン(W)が用いられる。
【0076】
次に、図4(b)に示すように、コンタクト22を覆うように、下地層11、記憶層12、トンネルバリア層13、参照層14、および上部電極15を、この順に、例えば、スパッタ法により形成する。
【0077】
下地層11は、コンタクト22に接続されるとともに、平坦な垂直磁化の磁性層を成長させるために必要な層である。記憶層12および参照層14の材料としては、例えば、FePd、FePt、CoPd、CoPt等のL1構造あるいはL1構造を有する強磁性材料、TbCoFe等のフェリ磁性材料、Ni、Fe、Co等の磁性材料とCu、Pd、Pt等の非磁性材料との積層構造からなる人工格子が用いられる。トンネルバリア層13としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)が用いられる。参照層14については、参照層14からの漏洩磁界を打ち消す機能を持つバイアス磁界層を含む場合がある。同様に、下地層11は、バイアス磁界層を含む場合がある。
【0078】
図4(b)に示す上部電極15は、ハードマスク層を兼ねている。上部電極15の材料としては、例えば、タンタル(Ta)が用いられる。
【0079】
この段階での記憶層12、トンネルバリア層13、参照層14、および上部電極15は、いわゆるブランケット状である。
【0080】
次に、図5(a)に示すように、フォトリソグラフィおよび異方性エッチングによって、上部電極15をパターニングする。上部電極15のパターニングは、予め、ブランケット状の上部電極15上に、フォトレジストからなるマスクを形成し(不図示)。このマスクを用いて、異方性エッチング(例えば、RIE)により、上部電極15をパターニングする。この段階で、上述した被処理基板30sが形成される。そして、被処理基板30sを上述した真空処理装置100内に設置する。
【0081】
次に、図5(b)に示すように、参照層14、トンネルバリア層13、および記憶層12を、この順にビーム状のガスクラスタイオン40によりエッチングする。例えば、上部電極15をマスクとして、このマスクから露出された参照層14を最初にエッチングし、続いて、参照層14から露出されたトンネルバリア層13をエッチングし、さらに、トンネルバリア層13から露出された記憶層12をエッチングする。
【0082】
これにより、メモリセル20が形成される。また、メモリセル20に含まれる磁気抵抗効果素子30は、この段階で、磁気抵抗効果素子30の側壁が下地層11の表面に対して垂直に近いピラー状になる(図1参照)。
【0083】
次に、図6(a)に示すように、下地層11、記憶層12、トンネルバリア層13、参照層14、および上部電極15からなるメモリセル20の表面を薄い絶縁膜24で被覆する。この際、メモリセル20と絶縁膜24との間に隙間を設けないようにする。メモリセル20と絶縁膜24との間に隙間があると、後工程での熱処理等により、隙間が膨張する可能性がある。これにより、磁気抵抗効果素子30が損傷し、磁気抵抗効果素子30の特性が劣化するからである。
【0084】
続いて、絶縁膜24を形成した後、絶縁膜24の全面に、層間絶縁膜25を形成する。層間絶縁膜25の材料は、例えば、酸化シリコン(SiO)あるいは窒化シリコン(Si)である。層間絶縁膜25については、その上面を例えば、CMPにより平坦化してもよい。
【0085】
次に、図6(b)に示すように、隣接するメモリセル同士を電気的に絶縁するために、層間絶縁膜25、絶縁膜24、および下地層11を異方性エッチングによってパターニングする。このパターニングは、例えば、層間絶縁膜25の上面を平坦化した後に、フォトレジストからなるマスクを形成し(不図示)、このマスクを用いて、層間絶縁膜25、絶縁膜24、および下地層11をパターニングする。
【0086】
続いて、パターニングされた層間絶縁膜25、絶縁膜24、および下地層11を覆うように層間絶縁膜27を堆積する。
【0087】
次に、図7(a)に示すように、CMPにより、層間絶縁膜27の平坦化を行う。続いて、層間絶縁膜27、層間絶縁膜25、および絶縁膜24を研磨し、上部電極15の上面を露出させる。
【0088】
次に、図7(b)に示すように、磁気抵抗効果素子30の上に、上部電極15に電気的に接続される上部配線28を形成する。上部配線28の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等が挙げられる。
【0089】
ガスクラスタイオン40の照射は、後処理用に適用してもよい。例えば、ガスクラスタイオン40を加速する電圧を下げたり、ガスクラスタのサイズを大きくしたりして、ガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーを下げる。この場合のガスクラスタイオン40は、窒素(N)、希ガス等の不活性ガスで構成される。この後、被処理基板30sの表面に、このガスクラスタイオン40を照射する。
【0090】
このようなガスクラスタイオン40を被処理基板30sの表面に照射することにより、被処理基板30sの表面に付着している塩化物等を簡便に除去できる。
このようにして、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置1が形成される。
【0091】
上述したように、磁気抵抗効果素子30に用いられる記憶層12としては、磁化方向が膜面に対して垂直方向を向く垂直磁化膜と、磁化方向が面内方向を向く面内磁化膜とがある。垂直磁化膜を採用した場合、参照層14の磁化によって発生する漏洩磁界は記憶層の膜面に対して垂直方向を向いているため、記憶層12に大きな垂直成分を持つ磁界が作用する。記憶層12に作用する参照層14からの漏洩磁界は、通常、記憶層12の磁化を参照層14の磁化と平行になるように作用する。そして、このような磁気抵抗効果素子30は、通常のRIEによっても加工できると思われる。
【0092】
しかし、磁性金属は、RIEにおいて難エッチング材に属す。例えば、RIEによって磁性金属のエッチング加工を施しても、エッチング中に被処理基板30sの表面に発生した反応生成物は、揮発し難い成分であることが知られている。RIEでは、反応生成物の揮発性を高めるために、エッチング中の磁性金属の温度を高温にする方策がある(例えば、300℃以上)。ところが、磁性金属が高温のままエッチングガスに晒されると、磁性金属中の特定成分のみが選択的にエッチングされて、メモリセル20の一部が局所的にサイドエッチングされる場合がある。これは、磁気抵抗効果素子30の劣化に繋がる。
【0093】
一方、RIEでは、磁性金属の温度を300℃より低くすると、エッチング自体が起き難くなる。この場合、磁性金属をエッチングしても、実際の磁気抵抗効果素子30の断面形状はいわゆる順テーパ状になってしまう。すなわち、記憶層12の幅が参照層14の幅よりも大きくなる。このような形状では、参照層14からの漏洩磁界が記憶層12に不均一に働く。このため、磁気抵抗効果素子30の使用とともに、スピン注入による磁化反転特性が劣化してしまう。
【0094】
また、磁気抵抗効果素子30は、上述したように、記憶層12と参照層14との距離が短くなっている。このため、RIEによって磁気抵抗効果素子30のエッチングを試みると、トンネルバリア層を跨って金属の再付着物が磁気抵抗効果素子30の側面に付着する可能性がある。これにより、記憶層12と参照層14との間で電流リークが生じ、磁気抵抗効果素子30が不良となってしまう。
【0095】
また、RIEでは、メモリセルの各層に最適なエッチング加工を施すためにエッチング条件(投入電力、ガス種、雰囲気圧等)を各層に逐次変える必要もある。従って、プロセス条件が複雑になる。
【0096】
また、RIEでは、単原子から数原子のイオンを用いるために、被エッチング材の表面から内部にまでカスケード現象が起こり、被エッチング材がダメージを受ける場合もある。また、上記のようにRIEでは、イオン照射によるカスケード現象により、被エッチング材の表面にエッチングガス種が注入されて、エッチングガス種の成分がエッチング面に残留する場合もある。エッチングガス種の成分が磁気抵抗効果素子30の内部に残留すると、磁気抵抗効果素子30の使用とともに、磁気抵抗効果素子30が腐食する要因になる。
【0097】
これに対して、第1実施形態では、ハードマスクから露出された磁性金属をビーム状のガスクラスタイオン40によってエッチングする。ビーム状のガスクラスタイオン40は、被エッチング材の主面に対して垂直に入射される。この場合、磁性金属の反応に係る表面のみが高温(数10000℃)になり、その表面下の磁性金属のバルク温度は、室温に近い温度を維持する。従って、ハードマスクから露出された被エッチング材の表面のみが効率よくエッチングされ、被エッチング材の表面に生成した反応生成物は、効率よく被エッチング材の表面から揮発する。
【0098】
これにより、図3に示すように、垂直形状の磁気抵抗効果素子30が形成される。すなわち、記憶層12の幅と参照層14の幅とは略同じである。このような垂直形状が得られれば、磁気抵抗効果素子30を長時間使用しても、スピン注入による磁化反転特性が劣化し難くなる。さらに、金属の再付着物が磁気抵抗効果素子30の側面に付着し難い。その結果、電流リークも起き難い。
【0099】
さらに、第1実施形態では、ビーム状のガスクラスタイオン40を被エッチング材の主面に対して垂直に照射するので、磁気抵抗効果素子30がサイドエッチングされることもない。また、ガスクラスタイオン40中の原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーを30eV以下に調整しているので、上述したカスケード現象も起き難い。このため、エッチングガス種の成分が磁気抵抗効果素子30の内部に残留することもない。すなわち、第1実施形態によれば、磁気抵抗効果素子30の劣化、ダメージ、腐食が抑制される。
【0100】
また、大容量の不揮発性記憶装置のメモリセル20は、磁気抵抗効果素子30がピラー状に延在する方向に対して略垂直な方向に、数100nm以下の狭ピッチで周期的に配列されている。第1実施形態では、ビーム状のガスクラスタイオン40を下地層11の主面に対して垂直に照射する。このため、それぞれのメモリセル20を加工する際には、隣接するメモリセル20によってガスクラスタイオンビームが遮蔽され難い。すなわち、ビーム状のガスクラスタイオン40は、下地層11にまで確実に到達する。
【0101】
これにより、高アスペクト比で、狭ピッチの磁気抵抗効果素子30が形成され、高密度の不揮発性記憶装置が得られる。
【0102】
このように、第1実施形態によれば、磁気抵抗効果素子のスピン注入磁化反転特性の劣化が抑制される。さらに、不揮発性記憶装置を高い製造歩留まりで製造することができる。
【0103】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【0104】
第2実施形態では、ガスクラスタイオン40として、ガス種の異なる第1ガスと第2ガスと、を用いる。第2実施形態では、ガスクラスタのガス種を交互に変更して照射する。例えば、第1ガスを含むイオン化されたガスクラスタと、第1ガスとはガス種が異なる第2ガスを含むイオン化されたガスクラスタと、を交互に参照層14の表面の一部もしくは記憶層12の表面の一部に照射する。
【0105】
例えば、図8(a)に示すように、第1ガスである塩素(Cl)によるガスクラスタイオン40Aを記憶層12もしくは参照層14のいずれかの表面の一部に照射した後に、図8(b)に示すように、第2ガスである窒素(N)、酸素(O)もしくはアルゴン(Ar)によるガスクラスタイオン40Bを、参照層14の表面の一部もしくは記憶層12の表面の一部に照射する。そして、図8(a)に示す処理と、図8(b)に示す処理と、を交互に繰り返す。
【0106】
すなわち、第2実施形態では、塩素によるガスクラスタイオン40Aによって被エッチング材をエッチング加工した後、窒素、酸素、もしくはアルゴンによるガスクラスタイオン40Bを被エッチング材に照射したり、あるいは、ガスクラスタイオン40Bによって被エッチング材をエッチング加工した後、ガスクラスタイオン40Aを被エッチング材に照射したりする。このようにして、参照層14の一部および記憶層12の一部がエッチングされる。
【0107】
第1ガスによるガスクラスタイオンの照射によって被エッチング材の表面に生成した第1反応生成物(例えば、Co、Fe等の塩化物)は、表面から脱離するために要されるエネルギーバリアが高く、被エッチング材の表面から脱離し難い可能性がある。第2実施形態では、この第1反応生成物に第2ガスによるガスクラスタイオンを照射して、第1反応生成物をエネルギーバリアが低い第2反応生成物(例えば、Co、Fe等の酸塩化物)に置き換える。これにより、反応生成物の脱離のために要されるエネルギーバリアが下がり、被エッチング材の表面から反応生成物を容易に脱離し易くしている。これにより、被エッチング材の表面で生成する反応生成物が被エッチング材の表面から効率よく脱離する。
【0108】
例えば、第1実施形態では、Clガスによるガスクラスタイオン40Aによって磁気抵抗効果素子30のエッチング加工を行った後に、別のガス種のガスクラスタイオン40Bを照射することにより、磁気抵抗効果素子30を構成する磁性材料等の腐食が抑制される。
【0109】
例えば、Nガスによるガスクラスタイオン40Bを1nm以下のエッチング量となるドーズ量で照射することにより、Clでエッチング加工したエッチング面のCl原子の脱離を促進させるとともに、磁気抵抗効果素子30の表面に一種の保護膜が形成されて、大気暴露をした際のOやHOの侵入を抑制することができる。これにより、磁性材料等の腐食を防止することができる。また、Nガス以外のほか、Oガス、Arガス等によるガスクラスタイオン40Bを同様に後処理に用いても、磁性材料等の腐食抑制効果がある。
【0110】
また、ガスクラスタイオン40Aと、ガスクラスタイオン40Bと、を混合し、混合ガスクラスタイオンによってエッチング加工を実施してもよい。但し、混合ガスによるガスクラスタは、その混合比の通りにそれぞれのガスがガスクラスタ内で分散されているとは限らない。すなわち、混合ガスのガスクラスタには、濃度分布が生じている可能性もある。従って、第2実施形態のように、異種のガスを交互に切り替えて、それぞれのガスクラスタイオン40A、40Bを交互に被エッチング材に照射することが望ましい。このような方法によれば、被エッチング材の表面全域で、ガスクラスタイオン40Aによるエッチングと、ガスクラスタイオン40Bによるエッチングと、が確実に進行する。
【0111】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【0112】
第3実施形態では、ガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)1個あたりの運動エネルギーおよびガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)の数の少なくともいずれかを変えながら、参照層14の表面の一部もしくは記憶層12の表面の一部にガスクラスタイオン40を照射する。第3実施形態では、ガスクラスタイオン40を加速する電圧、真空処理装置100内に供給するガス流量、圧力セル109に供給するガス流量等のいずれかを多段ステップ状に変更する。このようにして、参照層14の一部および記憶層12の一部がエッチングされる。
【0113】
例えば、図9(a)に示すように、高電圧で加速されたガスクラスタイオン40Hを被エッチング材に照射した後に、図9(b)に示すように、低電圧で加速されたガスクラスタイオン40Lを被エッチング材に照射して、被エッチング材のエッチングを行う。
【0114】
高電圧で加速されたガスクラスタイオン40Hを照射し続けると、高いエッチングレートが得られるが、エッチング面が荒れる可能性がある。従って、ガスクラスタイオン40Hを照射した後に、低電圧で加速されたガスクラスタイオン40Lをエッチング面に照射して、エッチング面の平坦化を行う。
【0115】
図10は、第3実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【0116】
例えば、参照層14の膜厚が記憶層12の膜厚に比べて厚く、参照層14がビーム状のガスクラスタイオン40に対して耐性の強い材料で構成されている場合には、図10(a)に示すように、参照層14の途中までは、高電圧(例えば、60kV)で加速されたガスクラスタイオン40Hを照射して加工する。続いて、ガスクラスタイオンを加速する電圧を下げる。そして、図10(b)に示すように、記憶層12を低電圧(例えば、10kV)で加速されたガスクラスタイオン40Lを照射して、残りの参照層14、トンネルバリア層13、および記憶層12を加工する。
【0117】
これにより、スループット(処理能力)が損なわれることがなく、良好なエッチング形状が得られ、さらに磁気抵抗効果素子30へのダメージが抑制される。高加速電圧でのエッチングによってエッチング面の荒れが顕著になる場合には、真空処理装置100に供給するガス流量を下げたり、圧力セル109を利用してガスクラスタのサイズを小さくすれば、表面荒れが回避できる。このように、第3実施形態では、信頼性の高い磁気抵抗効果素子30が形成される。
【0118】
また、上述したように、高電圧で加速されたガスクラスタイオン40Hを被エッチング材に長く照射し続けると、被エッチング材がイオンの照射によって加熱されて被エッチング材が熱ダメージを受ける可能性がある。第3実施形態では、最初に高電圧で加速されたガスクラスタイオン40Hを被エッチング材に照射した後、低電圧で加速されたガスクラスタイオン40Lの照射に切り替えるので、上述した加熱が緩和される。これにより、被エッチング材への熱ダメージが抑制される。
【0119】
なお、低電圧で加速されたガスクラスタイオン40Lを用いる際には、ガスクラスタに含まれる原子(もしくは、分子)の数をより少なくしてもよい。これにより、原子(もしくは、分子)1個当たりのエネルギーが過小にならず、被エッチング材を効率よく加工できる。
【0120】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造過程を説明するための断面模式図である。
【0121】
下地層11の下に、エッチングストップ層50を形成した後、ガスクラスタイオン40を参照層14の表面の一部もしくは記憶層12の表面の一部に照射する。エッチングストップ層50の下には、例えば、上述した層間絶縁膜21が形成されている(不図示)。エッチングストップ層50の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとを組み合わせたものを用いる。このようにして、参照層14の一部および記憶層12の一部がエッチングされる。
【0122】
第4実施形態では、図11(a)、(b)に示すように、下地層11もガスクラスタイオン40によってエッチングして、エッチングストップ層50によってエッチングを停止して磁気抵抗効果素子30を形成する。このような方法によれば、Cl系ガスのガスクラスタイオン40によるドライエッチングにおいて磁気抵抗効果素子30の材料とエッチングストップ層50との選択比が良好になる。
【0123】
例えば、図11(a)に示すように、ガスクラスタイオン40の照射によって、一時的に順テーパ型(θ>90°)の磁気抵抗効果素子30が形成されても、図11(b)に示すように、ガスクラスタイオン40の照射を続けることで、垂直形状の磁気抵抗効果素子30が容易に得られる(θ=90°)。エッチングの際、下地層11の下方には、エッチングストップ層50が配置されている。このため、ガスクラスタイオン40を照射し続けても、下地層11の下方に存在する下部配線あるいはMOSトランジスタ等がエッチングされたり、この下方に存在する下部配線あるいはMOSトランジスタ等がダメージを受けたりすることはない。このように、エッチングストップ層50を用いることにより、磁気抵抗効果素子30の垂直形状を容易に得ることができる。これにより、微細化に最適な素子構造を形成することができる。
【0124】
エッチングストップ層50として絶縁体材料を用いると、下部電極を横方向に引き出す必要があり、不揮発性記憶装置の構造が複雑になる。第4実施形態では、エッチングストップ層50内に、ビア状のコンタクト電極51を設けている。これにより、磁気抵抗効果素子30と、エッチングストップ層50の下方に設けられた配線(不図示)との接続が可能になる。ビア状のコンタクト電極51を用いと、下地層11内に、下部電極の引き出しに必要となる厚い金属配線層が不要になる。下地層11は、このような厚い金属配線層を含まず、平坦な垂直磁化の磁性層を成長させるためのバッファ層と、バリアメタル層と、を有する。
【0125】
図11(b)に示す不揮発性記憶装置2は、複数のメモリセル20を備える。不揮発性記憶装置2のメモリセル20のそれぞれは、下地層11と、下地層11の上に設けられた磁気抵抗効果素子30、下地層11の下に設けられたエッチングストップ層50と、磁気抵抗効果素子30の上に設けられた上部電極15と、有する。磁気抵抗効果素子30の記憶層12はコンタクト電極51を通じて、下地層11の下に設けられた配線に電気的に接続されている。
【0126】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、実施形態の特徴を備えている限り、実施形態の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0127】
例えば、参照層14の一部および記憶層12の一部をガスクラスタイオン40を用いてエッチングするほか、参照層14の一部もしくは記憶層12の一部をガスクラスタイオン40を用いてエッチングする方法も実施形態に含まれる。参照層14の一部もしくは記憶層12の一部をガスクラスタイオン40を用いてエッチングする場合も、加工後の参照層14の側壁もしくは加工後の記憶層12の側壁は、当然に下地層11の主面に対して略垂直になる。
【0128】
また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも実施形態の特徴を含む限り実施形態の範囲に包含される。その他、実施形態の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても実施形態の範囲に属するものと了解される。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1、2 不揮発性記憶装置
11 下地層
11s 表面
12 記憶層
13 トンネルバリア層
14 参照層
15 上部電極
20 メモリセル
21、25、27 層間絶縁膜
22 コンタクト
24 絶縁膜
28 上部配線
30 磁気抵抗効果素子
30w 側壁
30s 被処理基板
40、40A、40B、40H、40L ガスクラスタイオン
50 エッチングストップ層
51 コンタクト電極
100 真空処理装置
101 クラスタ生成室
102 イオン化室
103 クラスタ照射室
104 ノズル部
105 スキマ
106 イオナイザ
107 アクセラレータ
108 マグネット
109 圧力セル
110 パイプ
111 ガス供給機構
112 アパーチャ
113 基板支持台
120 ガス加圧機構
150、151 計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルを有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、
前記メモリセルのそれぞれは、
第1電極を含む下地層と、
前記下地層の上に設けられた磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子の上に設けられた第2電極と、
を有し、
前記磁気抵抗効果素子は、
記憶層である第1磁性層と、
前記第1磁性層の上に設けられたトンネルバリア層と、
前記トンネルバリア層の上に設けられ、参照層である第2磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、前記第1磁性層の主面に対して略垂直な方向に磁化容易軸を有し、前記第1磁性層の磁化方向は、可変であり、前記第2磁性層は、前記第2磁性層の主面に対して略垂直な方向に磁化容易軸を有し、前記第2磁性層の磁化方向は、固定され、
イオン化されたガスクラスタを形成した後、前記ガスクラスタに含まれる原子もしくは分子1個あたりの運動エネルギーを30eV以下に調整し、前記第2磁性層の表面の一部もしくは前記第1磁性層の表面の一部に、イオン化された前記ガスクラスタを照射して、前記第2磁性層の一部および前記第1磁性層の一部をエッチングすることを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項2】
複数のメモリセルを有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、
前記メモリセルのそれぞれは、
第1電極を含む下地層と、
前記下地層の上に設けられた磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子の上に設けられた第2電極と、
を有し、
前記磁気抵抗効果素子は、
記憶層である第1磁性層と、
前記第1磁性層の上に設けられたトンネルバリア層と、
前記トンネルバリア層の上に設けられ、参照層である第2磁性層と、
を含み、
前記第2磁性層の表面の一部もしくは前記第1磁性層の表面の一部にイオン化されたガスクラスタを照射して、前記第2磁性層の一部および前記第1磁性層の一部をエッチングすることを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1磁性層は、前記第1磁性層の主面に対して略垂直な方向に磁化容易軸を有し、前記第1磁性層の磁化方向は、可変であり、
前記第2磁性層は、前記第2磁性層の主面に対して略垂直な方向に磁化容易軸を有し、前記第2磁性層の磁化方向は、固定されていることを特徴とする請求項2記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項4】
前記ガスクラスタが前記第2磁性層の前記表面の前記一部もしくは前記第1磁性層の前記表面の前記一部に照射される直前の前記ガスクラスタに含まれる原子もしくは分子1個あたりの運動エネルギーは、30eV以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項5】
イオン化された前記ガスクラスタを形成した後、前記運動エネルギーを30eV以下に調整することを特徴とする請求項4記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項6】
第1ガスを含むイオン化された前記ガスクラスタと、前記第1ガスとはガス種が異なる第2ガスを含むイオン化された前記ガスクラスタと、を交互に前記第2磁性層の前記表面の前記一部もしくは前記第1磁性層の前記表面の前記一部に照射することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記ガスクラスタに含まれる原子もしくは分子1個あたりの前記運動エネルギー、および前記ガスクラスタに含まれる原子もしくは分子の数の少なくともいずれかを変えながら、前記第2磁性層の前記表面の前記一部もしくは前記第1磁性層の前記表面の前記一部にイオン化された前記ガスクラスタを照射することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2磁性層の一部および前記第1磁性層の一部をエッチングする際に、前記第1磁性層および前記第2磁性層のマスク材として、タンタル、酸化シリコン、酸化アルミニウム、カーボン、炭化シリコンよりなる群から選択される少なくとも1つの材料を用いることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記下地層の下に、エッチングストップ層を形成した後、イオン化された前記ガスクラスタを前記第2磁性層の前記表面の前記一部もしくは前記第1磁性層の前記表面の前記一部に照射することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記ガスクラスタは、ハロゲンもしくは二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項2〜9のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−12546(P2013−12546A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143417(P2011−143417)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】