説明

半導体加工方法

【課題】high−k膜/メタルゲート構造を有する半導体素子のドライエッチングにおいて、メタルゲート部分を垂直にエッチングする。
【解決手段】減圧処理室204と、該減圧処理室に処理ガスを供給するガス供給手段と、前記減圧処理室内に、半導体基板を載置して保持する試料台205と、前記減圧処理室に供給された処理ガスに高周波エネルギを供給してプラズマを生成するプラズマ生成手段を備え、生成したプラズマにより前記半導体基板にプラズマエッチング処理を施す半導体加工方法において、前記試料台上に、HfあるいはZrを含む高誘電率絶縁膜、TiあるいはTaを含む仕事関数制御金属導体膜、およびレジストを順次形成した半導体基板206を載置し、前記レジストを用いて前記導体膜をエッチング加工するに際して、前記試料台にオンオフ変調された基板バイアス電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加工方法に係り、特に高誘電率絶縁膜上に金属を堆積した構造の半導体を加工する半導体加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体素子の加工に用いるプラズマを用いた表面処理装置において、試料にかかる高周波電圧の振幅Vppを20V以下の期間と300V以上の期間に分けて交互に印加することにより、酸化膜の絶縁破壊を防ぐ方法が示されている。
【0003】
特許文献2には、半導体素子のエッチング装置において、エッチングガスに堆積性のガスを添加し、かつ試料に印加する高周波バイアスを周期的にオンオフ変調することにより、下地絶縁膜とのエッチング速度の選択比を高くする技術が示されている。
【0004】
特許文献3には、poly−Siを加工するエッチング装置において、試料に印加するバイアス電力をオンオフ変調すると同時に、エッチングガスに塩素と酸素の混合ガスを用いることにより、poly−SiとSiO2のエッチング速度の選択比を高くする技術が示されている。
【特許文献1】特開平11−67734号公報
【特許文献2】特開平11−3879号公報
【特許文献3】特開2000−294539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1,2,3には、試料に印加するバイアス電力をオンオフ変調して、選択比などのエッチング特性を向上する技術が示されている。なお、後述するhigh−k/メタルゲート構造を有する素子をエッチング対象とするものでない。また、前記バイアス電力をオンオフ変調する技術は、エッチングガスあるいはバイアス電圧の振幅を限定する記述がなされてされていることから分かるように、試料に印加するバイアス電力をオンオフ変調するだけでは、十分なエッチング特性の向上は望めない。
【0006】
すなわち、オンオフ変調の特性を生かすためには、加工対象となる材料と構造に応じたプロセス領域を確定しておく必要がある。
【0007】
本発明は、トランジスタのより高速化のために提案されている、一般にhigh−k/メタルゲートと呼ばれる構造を有する半導体素子における微細なドライエッチング加工を目的としている。この半導体素子は、ゲートの絶縁膜(例えばHf酸化物やZr酸化物)の上にTiNあるいはTaNのような仕事関数を制御する目的の金属を堆積して、さらにその上にpoly−SiあるいはWやMoなどの高融点金属を堆積させた構造を有し、該構造をレジストをマスクとしてエッチングするものである。
【0008】
high−k/メタルゲート構造を有する半導体素子のエッチングにおいては、メタルゲートの材料として使われるTiあるいはTaのハロゲン化物の蒸気圧が比較的低いために、エッチング中に発生する反応生成物が側壁に堆積して徐々に太ってしまい、該側壁はテーパ形状になる。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、high−k/メタルゲート構造を有する半導体素子のドライエッチングにおいて、メタルゲート部分を垂直にエッチングすることのできる加工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0011】
減圧処理室と、該減圧処理室に処理ガスを供給するガス供給手段と、前記減圧処理室内に、半導体基板を載置して保持する試料台と、前記減圧処理室に供給された処理ガスに高周波エネルギを供給してプラズマを生成するプラズマ生成手段を備え、生成したプラズマにより前記半導体基板にプラズマエッチング処理を施す半導体加工方法において、
前記試料台上に、HfあるいはZrを含む高誘電率絶縁膜、TiあるいはTaを含む仕事関数制御金属導体膜、およびレジストを順次形成した半導体基板を載置し、前記レジストを用いて前記導体膜をエッチング加工するに際して、前記試料台にオンオフ変調された基板バイアス電圧を印加する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上の構成を備えるため、high−k膜/メタルゲート構造を有する半導体素子のドライエッチングにおいて、メタルゲート部分を垂直にエッチングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる半導体素子の加工方法を説明する図である。
【0014】
図1(a)は加工対象となる半導体素子の断面図である。半導体素子は、図1(a)に示すようにSi基板101、Si基板101上に順次形成した高誘電率絶縁膜としてのHfSiON膜102、仕事関数制御金属導体膜としてのTaSiN膜103、電極材料としてのpoly−Si膜104、キャップとしてのSiN膜105、反射防止膜106を備える。
【0015】
ここで、高誘電率のHfSiON膜102をFETのゲート絶縁膜(high−k膜)として利用し、TaSiN103をメタルゲートとして利用することにより、high−k膜/メタルゲート構造を備えるFETを形成することができる。
【0016】
なお、それぞれの膜厚はHfSiON膜102が2nm、TaSiN膜103が10nm、poly−Si膜104が50nm、SiN膜105が50nm、反射防止膜106が80nm、レジスト膜107が200nmである。
【0017】
図1(a)は、処理の初期状態を表し、リソグラフィーによりパターニングされたレジスト107が最上層にある。
【0018】
図2は、半導体素子を加工する加工装置(プラズマエッチング装置)を説明する図である。この装置は電子スピン共鳴(ECR)方式と呼ばれる装置であり、プラズマ電源201から放出された電磁波をアンテナ202、石英などの電磁波を透過する窓203を通して真空チャンバ(減圧処理室)204内に導入する。チャンバ204内はエッチングガスが一定の圧力で保持されており、前記電磁波によりガスをプラズマ化し、生成された反応性イオンをウエハ206に入射させることでエッチングが進行する。
【0019】
ウエハ206を保持する試料台205には入射イオンを加速するためのバイアス電源207が接続されている。試料台に印加されるバイアス電力は図2(b)に示すようにオンオフ変調される。
【0020】
この装置では電磁コイル208によりチャンバ204内に磁場を発生する。プラズマ中の電子スピン周波数と、プラズマ電源201の周波数が一致するように磁場強度を設定すると、電力が効率よくプラズマに吸収されて、低圧にて高いプラズマ密度を維持することができる。また、ECRを生じる磁場強度は電磁コイル208に流す電流値を変えることにより設定することができる。したがって、ECR方式のプラズマ源は、低圧力を必要とする本発明の実施には適している。
【0021】
図1(b)は、最上層にあるレジスト膜107を用いてエッチングを開始し、poly−Si膜104までのエッチングが終了したときの形状である。
【0022】
図1(c)は仕事関数制御金属膜103(ここではTaSiN)をエッチングしている途中を表す図でり、バイアス電力がオン期間の様子を表している。
【0023】
TaSiN膜103のエッチングに際しては、SF2ガスを20ml/分、Cl2ガスを20ml/分、CHF3ガスを40ml/分、N2ガスを100ml/分の流量で供給し、圧力0.4Paのプラズマを用いた。図1(c)は、バイアス電力オン期間の様子を表しており、この期間には、イオン108が高エネルギーで加速されエッチング反応が促進される。反応生成物の多くは表面から脱離するために、側壁に堆積物109の多くが付着する。 図1(d)は、仕事関数制御金属膜103のエッチング途中でバイアス電力がオフ期間の様子を表している。バイアス電力のオフ期間ではイオンが加速されないために、素子の上面(底面)でのエッチング反応は減速される。一方、中性のF原子は素子の上面あるいは側面(側壁)に等方的に入射する。これにより、側壁に堆積しているTaFx(x=1〜4)は蒸気圧の高いTaF5に変換される。
【0024】
また、前記オフ期間には、プラズマ電位程度の電位加速された方向性が良くない(ウエハに対する垂直性が良くない)低エネルギーのイオンが側壁に入射する。この低エネルギのイオンにより、前記側壁に付着したTaF5は側壁から脱離し排出ガスとともに外部に排出される。このようにして側壁堆積物は減少し、前記テーパ形状は抑制される。
【0025】
図1(e)は、エッチングの終了時点における様子を示す図である。バイアス電力を周期的にオンオフすることで、図1(c)と(d)が繰り返されて、図1(e)に示すように仕事関数制御金属膜103を側壁を垂直にエッチングすることができる。
【0026】
図1(f)は、印加するバイアス電力にオフ期間を設けずに連続的に印加した例を示す図である。この場合には、側壁に付着する堆積物が多くなるため、仕事関数制御金属膜103の側壁はテーパ形状になってしまう。このテーパ形状は、素子(FET)のゲート長を設計寸法から変えてしまうことになる。また、ゲート長のばらつきも大きくなるので、素子特性の劣化につながる。
【0027】
以上説明したように、仕事関数制御金属膜(メタルゲート)をエッチングする際にバイアス電力をオンオフ変調することにより、仕事関数制御金属膜の側壁を垂直にエッチング加工することができ、これにより素子特性の向上を図ることができる。
【0028】
次に、仕事関数制御金属膜(メタルゲート)103の垂直エッチングを達成するための条件(実験的に求めたガス組成などの条件)の詳細を説明する。
【0029】
まず、TaN,TaSiNのようにTaを含むメタルゲートをエッチングする場合には処理ガスとして、SF6、NF3、CF4、CHF3のようなFを含むガスが必要で、Fを含むガスを希ガス、窒素、Cl2などのガスと混合する場合はその流量の割合をSF6ならば3%以上、NF3ならば6%以上、CF4ならば10%以上、CHF3ならば40%以上にすることが必要である。なお、前記流量の割合はSF6ならば10%ないし30%、NF3ならば20%ないし60%、CF4ならば30%ないし80%、CHF3ならば40%ないし60%がより好ましい。
【0030】
また、TiNのようにTiを含むメタルゲートをエッチングする場合には、塩素を含むガスが必要で、Cl2を希ガス、窒素、SF6、NF3、CF4、CHF3などと混合する場合はその割合を30%以上にする必要がある。なお、Cl2の割合は40%ないし80%がより好ましい。Fを含むガスあるいは塩素を含むガスの割合が多すぎると、仕事関数制御金属の上に堆積されているほかの金属あるいは多結晶Siの形状が乱れてしまうからである。
【0031】
なお、TiNをエッチングする場合において、表面にTiの酸化物などのCl2では除去しにくい物質が存在することがある。このような場合には、Fを多く含むガスによる数秒のブレークスルーステップを追加すればよい。
【0032】
エッチングガスの圧力は、イオンの割合を多くして、高異方性を保つために1Pa以下が望ましい。なお、前記エッチングガスの圧力は0.1Paないし0.4Paがより好ましい。試料温度は0℃から100℃の範囲で良好な加工形状が得られた。試料に印加する電圧の振幅は下地のhigh−k膜の材料(ここではHfSiON)との選択比を上げるために200V以下が望ましい。また、バイアス電力ののデューティ比(オン期間/(オン期間+オフ期間))は5%以上50%以下が適当である。なお、前記デューティ比は10%ないし30%がより好ましい。エッチングガスの圧力0.1Paないし0.4Pa、デューティ比10%ないし30%が制御しやすく、かつ形状の異方性が良好に得られるからである。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、TiあるいはTaを含む仕事関数制御金属膜(メタルゲート)の垂直加工を実現するために、その側壁に堆積するTiあるいはTaを含んだ反応生成物を除去しながらエッチング加工を進行させる。
【0034】
反応生成物はエッチング反応が進行する期間、すなわち高エネルギーのイオンが基板に入射している期間に多く生じる。
【0035】
たとえば、TaとFとの反応生成物TaFxの蒸気圧はTaと結合するフッ素原子の数xが多いほど蒸気圧は高くなりx=5のTaF5は200℃程度で気化する。しかしイオンが高エネルギーで試料に入射すると化学的な反応に加えて、物理的なスパッタが生じるためにxが5より小さくて蒸気圧が低い反応生成物(ハロゲン化が不十分な反応生成物)であっても試料表面から脱離する。そして、離脱した反応生成物がメタルゲートの側壁に堆積すると、メタルゲートがテーパ形状になる原因となる。
【0036】
この間題を解決するために、本実施形態では、試料に入射するイオンの加速を休止する期間を設けた。すなわち、試料に印加するバイアス電力に周期的にオフ期間を設けた。オフ期間にはFラジカルが等方的に試料上面および側面に入射してハロゲン化が進み、同時にバイアスが0Wでも生じるプラズマ電位により加速された低エネルギのイオンの入射により堆積物が側壁から離脱して、テーパ形状が緩和される。これにより、メタルゲート部分をほぼ垂直にエッチング加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態にかかる半導体素子の加工方法を説明する図である。
【図2】半導体素子を加工する加工装置(プラズマエッチング装置)を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
101 Si基板
102 HfSiON膜
103 仕事関数制御金属膜
104 poly−Si膜
105 SiN膜
106 反射防止膜
107 レジスト
108 イオン
109 堆積物
110 F原子
201 プラズマ電源
202 アンテナ
203 窓
204 真空チャンバ
205 試料台
206 ウエハ
207 バイアス電源
208 電磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧処理室と、該減圧処理室に処理ガスを供給するガス供給手段と、前記減圧処理室内に、半導体基板を載置して保持する試料台と、前記減圧処理室に供給された処理ガスに高周波エネルギを供給してプラズマを生成するプラズマ生成手段を備え、生成したプラズマにより前記半導体基板にプラズマエッチング処理を施す半導体加工方法において、
前記試料台上に、HfあるいはZrを含む高誘電率絶縁膜、TiあるいはTaを含む仕事関数制御金属導体膜、およびレジストを順次形成した半導体基板を載置し、前記レジストを用いて前記導体膜をエッチング加工するに際して、前記試料台にオンオフ変調された基板バイアス電圧を印加することを特徴とする半導体加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体加工方法において、
前記金属導体膜がTaを含むとき、前記処理ガスとしてFを含むガスを選択することを特徴とする半導体加工方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体加工方法において、
前記金属導体膜がTaを含むとき、前記処理ガスとして、少なくともSF6、NF3、CF4、CHF3の何れかを選択することを特徴とする半導体加工方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体加工方法において
SF6ガスを他のガスと混合する場合は3%以上、NF3ガスを他のガスと混合する場合は6%以上、CF4ガスを他のガスと混合する場合は10%以上、CHF3ガスを他のガスと混合する場合は40%以上の流量割合となるように他のガスと混合することを特徴とする半導体加工方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体加工方法において、
前記金属導体膜がTiを含むとき、前記処理ガスとしてCl2を含むガスを選択することを特徴とする半導体加工方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体加工方法において
Cl2ガスを他のガスと混合する場合は30%以上の流量割合となるように他のガスと混合することを特徴とする半導体加工方法
【請求項7】
請求項1記載の半導体加工方法において、
前記処理ガスの圧力は1Pa以下、半導体基板温度は0ないし100℃、基板バイアス電圧は200V以下、デューティ比は5ないし50%であることを特徴とする半導体加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−27727(P2010−27727A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184894(P2008−184894)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】