説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】オフトラ型ESD保護素子のESD耐量を増加する。
【解決手段】第2導電型ドレイン高濃度拡散層となる領域にトレンチを備え、トレンチ内に第2導電型の多結晶シリコン膜を埋め込むことで、第2導電型ドレイン高濃度拡散層の実効的な体積を増加することを実現する。これより、ゲート電極からドレインコンタクト孔の距離を大きくしたことと同じ効果が得られ、本発明の半導体装置はオフトラ型ESD保護素子として、素子サイズを変更しなくてもESD耐量の増加が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。特に、ゲートをオフとしたトランジスタによるESD保護素子の構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置である半導体集積回路(以下、IC)には、静電気による静電破壊(Electrostatic Discharge(あるいはDestroy)以下、ESDとする)から半導体装置を保護するための静電保護素子(以下、ESD保護素子とする)が設けられている。以下、そのESD保護素子の従来技術について説明する。
【0003】
例えば、図2に示すように、外部からの入力あるいは外部への出力へとつながっている半導体装置において、図2(A)に示すように、外部からの入力へとつながる半導体装置は、例えば、外部端子36と半導体装置の間にESD保護素子37を設置し、図2(B)に示すように、外部への出力とつながっている半導体装置は、例えば、半導体装置38と外部端子36間にESD保護素子37を設置している。
【0004】
さらに、ESD保護素子に関しては、いくつかある保護素子の中でも、特に図2(A)および(B)の37に示すように、MOSトランジスタの基板電極、ソース電極およびゲート電極を短絡し、図2(A)および(B)の35に示すように電気的に同電位として、例えば接地電位あるいはGND電位に接続して、ゲートをオフ状態にしたトランジスタあるいは省略してオフトラと呼ばれる保護素子が良く使用される。即ち、MOSトランジスタのオフトラ型ESD保護素子である(以下、オフトラ型ESD保護素子とする)。
【0005】
次に、このオフトラ型ESD保護素子を用いたESD保護素子の電気特性と動作原理を説明する。例えば、図3(A)はNチャネルMOSトランジスタのオフトラ型ESD保護素子(以下、NMOSオフトラ型ESD保護素子とする)の電気特性である。横軸はNMOSオフトラ型ESD保護素子のドレインに印加するプラス電位であり、縦軸はNMOSオフトラ型ESD保護素子のドレインに流れる電流である。
【0006】
ここで、上記ドレインに印加するプラス電位とは、先のESD保護素子の設置に関する記述における、図2(A)および(B)の外部端子36とGND電位35にかかる静電気の電位を想定している。なお、マイナス電位を印加する場合は、NMOSオフトラ型ESD保護素子のドレイン高濃度拡散層はN型であり、ドレイン高濃度拡散層に接する基板はP型であるため、構成するダイオードが順方向にオンすることになり、電流を逃すので、特別な装置は必要としない。
【0007】
図3(A)において、NMOSオフトラ型ESD保護素子のドレインにプラス電位を印加すると、まず、1stブレイクダウン39が発生する。このときのドレイン電圧はトリガー電圧と称されたり、Vtrigと記されたりすることがある。ここでのドレイン電流を39iとする。図3(A)の1stブレイクダウン39にいたるまでにドレイン電流は緩やかに立ち上がり始めた後に、急峻にドレイン電流39iまで増加している。これを図3(B)に示すNMOSオフトラ型ESD保護素子の動作の模式的断面図を用いて説明すると、ゲート電極44の基板表面でアバランシェブレイクダウンが発生する状況となる。図3(B)において、ドレイン電極45にプラス電位を印加すると、対する基板電極42はGND電位であり、ここでの基板はP型になるので、ドレイン−基板間に逆バイアスが印加されていることになり空乏層46が広がる。ただし、ゲート電極44も基板電極42およびソース電極43と同じくGND電位に固定しているので、ゲート電極44直下の基板においてはチャネル形成がされない。つまり、空乏層46は基板側には広がるが、ゲート電極44直下の基板表面では空乏層は広がらない。よって、その基板表面での電界は強くなり、基板表面にてアバランシェブレイクダウンを発生することによって電子−正孔対47が生成されて、図3(A)の1stブレイクダウン39に示すような電気特性を得る(以下、この基板表面でのアバランシェブレイクダウンを表面ブレイクダウンとする)。
【0008】
引き続き、図3(A)の電気特性では、1stブレイクダウン39発生時より低いプラス電位でも1stブレイクダウン電流39iと同じかそれ以上の電流を流すことが可能な保持電圧40(Vholdと記されたりする)になる。このドレイン電圧39から40をスナップバック特性と呼ぶ。
【0009】
これは図3(B)を用いて説明すると、表面ブレイクダウンによって生じた電子−正孔対47の正孔に着目した場合、ドレイン電極45にはプラス電位が印加されているので、正孔は基板内部を伝ってGND電位の基板電極42へと流れることになる。このとき、NMOSのソース、基板、ドレインはNPNバイポーラトランジスタ48とみなすことができる。構造上、基板の抵抗値は高いため、少しの基板電流49でも基板電位の電位増加に影響する。このNPNバイポーラトランジスタのエネルギーバンド図を図3(C)に示す。図には伝導帯下端のエネルギーEc、価電子帯上端のエネルギーEv、真性フェルミ準位Eiおよびフェルミ準位Efがそれぞれ示してある。図ではプラス電位が大きいほどエネルギーバンドでは下に向かうようになっている。このNPNバイポーラトランジスタ48に基板電流49が流れると、基板電位の電位増加が起き、図3(C)のEcおよびEvは点線のようにエネルギーバンドが下がり、結果として、ソースに対して基板が順方向になり、低いドレイン電位でもソースから電子が流れることになる。これがスナップバック特性であり、図3(A)の保持電圧40とドレイン電流40iを得る。
【0010】
引き続き、バイポーラ動作したNMOSオフトラ型ESD保護素子は図3(A)に示すようにドレイン電流を流し続ける。これは、図3(B)のソース−ドレイン間電流50およびドレイン電流51であり、図2(A)および(B)において述べたように、静電気などの突然の大電流が、静電破壊から守りたい半導体装置へと流れないようにしている。
【0011】
しかしながら、これまでに述べたスナップバック特性からの大電流を流し続けるだけの耐量(以下、ESD耐量とする)がESD保護素子に不足していると、図3(A)に示す2ndブレイクダウン41のようになり、ドレイン電流41iによりESD保護素子そのものが破壊してしまう。そこで、本発明でも着目しているESD耐量について述べる。
【0012】
ESD耐量の不足による素子破壊の代表的な原因因子に、電流が流れることで発生する熱が考えられる。その熱の発生原因は、ドレイン高濃度拡散層の体積が小さいことで放熱しにくいこと、あるいは、従来のゲート電極に対するセルフアラインイオン注入によるドレイン高濃度拡散層を形成した場合、ゲート絶縁膜を介してゲート電極とドレイン高濃度拡散層のオーバーラップが生じ、そこに表面ブレイクダウンによって発生した正孔がトラップされ、電流に流れやすさのバラツキを生じさせて電流集中させることで局所的に熱を発生することなどが考えられている。これまでにも、ESD保護素子のESD耐量を増加させる技術としてゲート電極からドレイン高濃度拡散層のメタルコンタクトまでの距離を大きくすることで、ドレイン高濃度拡散層に流れる体積を増やすことで、発生する熱を抑制させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
あるいは、ゲート絶縁膜へのトラップによる電流集中を防止するために、ゲート電極からある一定の距離をおいてドレイン高濃度拡散層を形成するなどの技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
従来のオフトラ型ESD保護素子およびその製造方法について、工程順模式的断面図フローである図5を基に説明する。
【0015】
図5(A)において、第1導電型半導体基板20は、例えばホウ素添加した抵抗率20Ωcmから30Ωcmの不純物濃度のP型半導体基板であり、ここではオフトラ型ESD保護素子の基板とする。あわせて、素子分離のための厚膜酸化膜、例えばLOCOS酸化膜21を備えている。
【0016】
引き続き、図5(B)に示すように、ゲート絶縁膜22を、例えば膜厚が数十nmとなるように熱酸化し、その上に多結晶シリコン膜23を好ましくは膜厚が100nm〜500nmで堆積し、プリデポジションあるいはイオン注入法により不純物を導入する。
【0017】
次に図5(C)のように、多結晶シリコン膜23の上にレジスト膜24を用いて、ゲート電極25とするためのパターニングとエッチングをおこなう。その後、図5(D)のように、酸化膜26を、例えば膜厚が数十nmで堆積して、ソース領域およびドレイン領域を形成するための不純物添加をイオン注入でおこなう。導電型をN型とするならば、例えば砒素あるいは燐を、好ましくは1×1015atom/cm2から1×1016atom/cm2のドーズ量でイオン注入する。なお、ここでのイオン注入はゲート電極に対して自己整合的にセルフアラインとなるようにおこなう。
【0018】
その後、図5(E)に示すように、800℃〜1000℃で数時間熱処理することで、第2導電型ソース高濃度拡散層27および第2導電型ドレイン高濃度拡散層28を形成する。引き続き、酸化膜29を、例えば膜厚が数100nmで堆積し、その上に層間絶縁膜30を、膜厚が例えば500nm程度で堆積した後に、コンタクト孔31を形成し、例えばタングステンなどのプラグ32を埋め込み、それぞれソース電極33およびドレイン電極34とする。なお、ESD耐量を増加させるため、ドレイン電極34を形成するコンタクト孔31は、ゲート電極からの距離を大きくし、数um離して設ける場合もある。以上でオフトラ型ESD保護素子が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11−354649号公報
【特許文献2】特開2009−26890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従来のオフトラ型ESD保護素子の製造方法では、ESD耐量を増加させるため、ドレイン電極を形成するコンタクト孔をゲート電極から離して備えることで、電流が通過するドレイン高濃度拡散層の実効的な体積増加を得ていた。このことが、熱の局所的な発生を抑制していた。しかしながら、距離を離す分素子サイズが大きくなるという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑み成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段を用いた。
まず、第1導電型半導体基板の表面にゲート絶縁膜を介して第2導電型多結晶シリコン膜をある一定の長さと幅に形成したゲート電極と、その一方の側に第2導電型ソース高濃度拡散層および反対側に第2導電型ドレイン高濃度拡散層を形成したMOSトランジスタ構造を有する半導体装置において、前記半導体基板の基板電位、前記ソース高濃度拡散層のソース電位および前記ゲート電極のゲート電位を同電位に固定した半導体装置であって、第2導電型ドレイン高濃度拡散層となる領域にトレンチを備えて、かつ、そのトレンチに第2導電型の多結晶シリコン膜を埋め込んであることを特徴とする半導体装置とした。
【0022】
また、前記トレンチは、ゲート電極と離間して配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置とした。
【0023】
そして、第1導電型半導体基板の表面にゲート絶縁膜を介して第2導電型多結晶シリコン膜をある一定の長さと幅に形成したゲート電極と、その一方の側に第2導電型ソース高濃度拡散層および反対側に第2導電型ドレイン高濃度拡散層を形成したMOSトランジスタ構造を有する半導体装置の製造方法において、後に第2導電型ドレイン高濃度拡散層となる領域にトレンチを形成する工程と、前記半導体基板の表面および前記トレンチ内表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記トレンチ内のゲート絶縁膜を選択的に除去する工程と、前記ゲート絶縁膜および前記トレンチ内に多結晶シリコンを堆積した後、第2導電型のゲート電極および、前記トレンチ内に第2導電型多結晶シリコンを形成する工程とからなることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いた。
【発明の効果】
【0024】
上記手段を用いることにより、オフトラ型ESD保護素子として素子サイズを変更することなく、ESD耐量の増加が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施例に係る半導体装置およびその製造方法の模式的断面図フローである。
【図2】半導体装置における代表的なESD保護素子の回路図例である。
【図3】オフトラ型ESD保護素子の代表的な電気特性例および動作特性例である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る半導体装置の模式的断面図である。
【図5】従来の半導体装置およびその製造方法の模式的断面図によるフロー図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る半導体装置の模式的平面図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る半導体装置の模式的断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係る半導体装置およびその製造方法の模式的断面図によるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係る半導体装置、例えばオフトラ型ESD保護素子の製造方法の実施例を示す模式的断面図フローである。
【0027】
図1(A)において、第1導電型半導体基板1は、例えばホウ素添加した抵抗率20Ωcmから30Ωcmの不純物濃度のP型半導体基板であり、半導体装置の基板とする。あわせて、本図においては、素子分離のための厚膜酸化膜、例えばLOCOS酸化膜2が既に形成されている。LOCOS酸化膜2で周囲を囲まれた領域がアクティブ領域であり、アクティブ領域内にオフトラ型ESD保護素子が形成される。
【0028】
次に、図1(B)に示すように、本発明の特徴をなすトレンチを形成するためにレジスト膜3を形成してからパターニングをおこなって開口部を設け、後に第2導電型ドレイン高濃度拡散層となる領域にトレンチを形成するためのエッチングをおこなう。ここでトレンチの開口端部は、後にゲート電極を配置する領域と離間して位置する。これはゲート電極形成とトレンチ形成を異なるマスクを用いて行なう時の重ね合わせ精度や後にトレンチ内に埋め込む不純物層からの不純物拡散を考慮しなければならないからである。なお、このときのトレンチを形成するためのパターニングは、後にトレンチに埋め込む第2導電型ドレイン高濃度拡散層と同じ導電型の多結晶シリコン膜の抵抗、第2導電型ソース高濃度拡散層とのパンチスルー、後に形成するコンタクト孔に充填されたプラグとのコンタクト抵抗およびESD耐量などを考慮して適切に決定されなければならない。一般にトレンチはアクティブ領域内にLOCOS酸化膜からは一定の距離をおいて配置される。
【0029】
さらに、レジスト膜3には様々な膜が使用可能である。例えば膜厚を数百nm〜1μmとした堆積酸化膜でも可能であり、熱酸化膜および堆積酸化膜の積層構造でも可能である。加えて、レジスト膜3は窒化膜でも問題はない。
【0030】
引き続き、上記パターニングされたレジスト膜3を用いてエッチングによりトレンチ4を形成する。トレンチ4の深さは、後に形成されるドレイン高濃度拡散層の拡散深さよりも大きくなるよう形成され、要求されるESD耐量にあわせた体積になるように深さを決定する。その後、レジスト膜3を除去した後、図1(C)に示すように半導体基板1表面およびトレンチ4の内表面にゲート絶縁膜5を膜厚が数百〜数千Åとなるように熱酸化にて形成する。
【0031】
次に図1(D)に示すように、レジスト膜6でトレンチ4部分を開口するパターニングをおこなって、ウェットエッチングによってトレンチ4内のゲート絶縁膜5を選択的に除去する。その後、図1(E)に示すように多結晶シリコン膜7を、好ましくは膜厚が100nm〜500nmでゲート絶縁膜5上およびトレンチ4内に堆積する。ここでトレンチ内が多結晶シリコン膜により充填されるようにトレンチの大きさと多結晶シリコン膜の膜厚を設定すべきことは言うまでもない。その後、多結晶シリコン7にプリデポジションあるいはイオン注入法と熱処理により第2導電型の不純物を導入する。なお、プリデポジション等の不純物導入に代えて、成膜時に第2導電型不純物を導入した多結晶シリコン(doped polysilicon)を堆積するという手法を利用しても構わない。本工程により、第2導電型ドレイン高濃度拡散層の体積が従来に比べ大幅に増加することになる。
【0032】
第2導電型多結晶シリコンの形成のために引き続き、多結晶シリコン膜7をゲート電極10とするためにレジスト膜8でパターニングをする。このときの多結晶シリコン膜7のエッチングは、オーバーエッチングが少ない、より好ましくはオーバーエッチングしないようなエッチング条件でおこなう。
【0033】
その結果、図1(F)のように、第2導電型ゲート電極の形成と同一工程にてトレンチ4に第2導電型の多結晶シリコン膜9を埋め込んだ素子構造が整う。
【0034】
ここで、上記の第2導電型の多結晶シリコン膜9を埋め込むトレンチ4は、図6(A)のようにドレイン形成領域において連続した一つの領域であることが好ましいが、図6(B)のように複数に分割された領域の集合体であっても構わない。
【0035】
引き続き、図1(G)に示すように、酸化膜11を、例えば膜厚は数十nmで堆積してセルフアライン法でソース領域およびドレイン領域を形成するための不純物添加を行う。ソース領域およびドレイン領域の不純物添加は、例えば導電型がN型ならば、砒素あるいは燐を好ましくは1×1015atom/cm2から1×1016atom/cm2のドーズ量でイオン注入する。
【0036】
その後、800℃〜1000℃で数時間熱処理することで、図1(H)に示すように、第2導電型ソース高濃度拡散層12および第2導電型ドレイン高濃度拡散層13を形成する。引き続き、酸化膜14を膜厚は例えば数100nmで堆積し、その上に層間絶縁膜15を膜厚は例えば500nm程度で堆積した後に、コンタクト孔16を形成したのち、例えばタングステンなどのプラグ17を埋め込み、金属配線と接続し、それぞれソース電極18およびドレイン電極19とする。ここで、ドレイン電極19の下に設けられたプラグ17は、トレンチに充填された多結晶シリコン膜の表面と直接接続されている。こうしてESD保護素子として機能する半導体装置が得られる。
【0037】
ここで、図4(A)および(B)を用いてオフトラ型ESD保護素子となる半導体素子がトレンチ4を備えることの利点を示す。
【0038】
図4(A)は従来の製造方法によるオフトラ型ESD保護素子を示し、図4(B)は本発明の製造方法によるオフトラ型ESD保護素子を示している。双方の図中には、ゲート電極からドレインコンタクト孔までの距離52と第2導電型ドレイン高濃度拡散層の深さ53があわせて記してあり、双方とも同じ距離および深さとなっている。これらの図から本発明の製造方法によるオフトラ型ESD保護素子においては、多結晶シリコン膜9埋め込んだトレンチにより第2導電型ドレイン高濃度拡散層の実効的な体積の増加が可能であることがわかる。
【0039】
以上より、本発明の特徴である、第2導電型ドレイン高濃度拡散層12の領域にトレンチ4を備え、かつ、トレンチ4に第2導電型の多結晶シリコン膜9を埋め込んだ半導体装置が構成される。
【0040】
第2の実施例として、本発明の特徴であるドレイン形成領域に存在する第2導電型多結晶シリコン膜9を埋め込むトレンチ4とコンタクト孔16について、以下、図7を用いて述べる。なお、トレンチ4の形成方法と第2導電型多結晶シリコン膜9を埋め込む形成方法については、前述の図1(A)から(F)で述べているのでここでは省略する。図7(A)に示すように第2導電型多結晶シリコン膜9を埋め込んだトレンチ4の幅54が、前記トレンチ4の表面で接するコンタクト孔16の幅55より小さくなる場合は、後に形成するドレイン形成領域を可能な限り広くすることとコンタクト孔16を複数個配置することで、本発明の効果を発揮することが可能である。
【0041】
あわせて、前述では前記トレンチ4がコンタクト孔16より小さい場合を想定したが、第1の実施例の図1(F)に示したような、前記トレンチ4の表面で接するコンタクト孔16の幅より大きくなる場合でも、図7(B)に示すようにコンタクト孔16を複数個配置することで、本発明の効果を発揮することが可能である。
【0042】
第3の実施例として、本発明の特徴であるドレイン形成領域に存在する第2導電型多結晶シリコン膜9を埋め込むトレンチ4と第2導電型ドレイン高濃度拡散層13について、以下、図8を用いて述べる。なお、トレンチ4の形成方法と第2導電型多結晶シリコン膜9を埋め込む形成方法については、前述の図1(A)から(F)で述べているのでここでは省略する。
【0043】
図8(A)に示すように、ゲート電極10とトレンチ4に第2導電型多結晶シリコン膜9を埋め込んだ構造が整った後に、レジスト膜56をパターニングして第2導電型ドレイン高濃度拡散層を形成するためのイオン注入を行う。ここで、イオン注入されるのは、本素子のドレイン形成領域のみで角度を好ましくは7°以上でイオン注入する。
【0044】
ここで、素子分離のための厚膜酸化膜の直下にイオン注入されることで、第1の実施例の図1(H)に示した第2導電型ドレイン高濃度拡散層13より高濃度拡散層の体積の増加が可能になる。ただし、素子分離のための厚膜酸化膜直下に拡散層が存在する、あるいは素子分離のための厚膜酸化膜を介して隣接する素子の高濃度拡散層が存在する場合は、耐圧との関係でイオン注入の注入角度を調整することが好ましい。
【0045】
引き続き、図8(B)に示すように、セルフアライン法でソース領域およびドレイン領域を形成するための不純物添加を行う。ソース領域およびドレイン領域の不純物添加は、例えば導電型がN型ならば、砒素あるいは燐を好ましくは1×1015atom/cm2から1×1016atom/cm2のドーズ量でイオン注入する。
【0046】
その後、800℃〜1000℃で数時間熱処理することで、図8(C)に示すように、第2導電型ソース高濃度拡散層12および第2導電型ドレイン高濃度拡散層13を形成する。第2導電型ドレイン高濃度拡散層13は厚膜酸化膜2の側面および底面の一部にも形成され、高濃度拡散層の体積が実施例1よりも増加している。引き続き、酸化膜14を膜厚は例えば数100nmで堆積し、その上に層間絶縁膜15を膜厚は例えば500nm程度で堆積した後に、コンタクト孔16を形成したのち、例えばタングステンなどのプラグ17を埋め込み、金属配線と接続し、それぞれソース電極18およびドレイン電極19とする。ここで、ドレイン電極19の下に設けられたプラグ17は、トレンチに充填された多結晶シリコン膜の表面と直接接続されている。こうしてESD保護素子として機能する半導体装置が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1 第1導電型半導体基板
2 LOCOS酸化膜
3、6、8、56 レジスト膜
4 トレンチ
5 ゲート絶縁膜
7、9 多結晶シリコン膜
10 ゲート電極
11、14 酸化膜
12 第2導電型ソース高濃度拡散層
13 第2導電型ドレイン高濃度拡散層
15 層間絶縁膜
16 コンタクト孔
17 プラグ
18 ソース電極
19 ドレイン電極
52 ゲート電極−ドレインコンタクト孔間距離
53 ドレイン高濃度拡散層深さ
54 トレンチ幅
55 コンタクト孔幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体基板と、
前記第1導電型半導体基板の表面にゲート絶縁膜を介して配置された一定の長さと幅を有するゲート電極と、
前記ゲート電極の一方の側の前記第1導電型半導体基板の表面領域に配置された第2導電型ソース高濃度拡散層と、
前記ゲート電極の他方の側の前記第1導電型半導体基板の表面領域に配置された第2導電型ドレイン高濃度拡散層と、
前記第2導電型ドレイン高濃度拡散層の内側に配置された多結晶シリコン膜が充填されたドレインとして機能するトレンチと、
を備え、
前記トレンチは前記第1導電型半導体基板の表面近傍では前記第2導電型ドレイン高濃度拡散層によって周囲を取り囲まれており、前記第2導電型ドレイン高濃度拡散層と前記多結晶シリコン膜とが接触し、
前記トレンチは前記ゲート電極とは離間して配置され、
前記トレンチの深さは前記第2導電型ドレイン高濃度拡散層の拡散深さより深く設定されている半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は多結晶シリコン膜からなり、前記トレンチに充填されている前記多結晶シリコン膜と同時に形成される請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
第1導電型半導体基板の表面にゲート絶縁膜を介して第2導電型多結晶シリコン膜をある一定の長さと幅に形成したゲート電極と、その一方の側に第2導電型ソース高濃度拡散層および反対側に第2導電型ドレイン高濃度拡散層を形成したMOSトランジスタ構造を有する半導体装置において、前記半導体基板の基板電位、前記ソース高濃度拡散層のソース電位および前記ゲート電極のゲート電位を同電位に固定した半導体装置であって、第2導電型ドレイン高濃度拡散層となる領域にトレンチを備えて、かつ、そのトレンチに第2導電型の多結晶シリコン膜を埋め込んであることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記トレンチは、ゲート電極と離間して配置されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電型半導体基板の表面にゲート絶縁膜を介して第2導電型多結晶シリコン膜をある一定の長さと幅に形成したゲート電極と、その一方の側に第2導電型ソース高濃度拡散層および反対側に第2導電型ドレイン高濃度拡散層を形成したMOSトランジスタ構造を有する半導体装置の製造方法において、
後に第2導電型ドレイン高濃度拡散層となる領域にトレンチを形成する工程と、
前記半導体基板の表面および前記トレンチ内表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記トレンチ内のゲート絶縁膜を選択的に除去する工程と、
前記ゲート絶縁膜および前記トレンチ内に多結晶シリコンを堆積した後、第2導電型のゲート電極および、前記トレンチ内に第2導電型多結晶シリコンを形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電型ドレイン高濃度拡散層は複数に分割された領域の集合体であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トレンチの幅が前記トレンチの表面で接するコンタクト孔の幅より小さくなる場合、コンタクト孔を複数配置することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2導電型ドレイン高濃度拡散層が素子分離のための厚膜酸化膜と接する領域の拡散深さは、前記厚膜酸化膜より深く、部分的に前記厚膜酸化膜の底面に達することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−222971(P2011−222971A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46808(P2011−46808)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】