説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】より高い耐熱性を有するシリサイド層を備えた半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置100の製造方法は、半導体基板2上にゲート絶縁膜4を介してゲート電極5を形成する工程と、半導体基板2上のゲート電極5の両側に、Ge含有領域8を形成する工程と、半導体基板2およびGe含有領域8のゲート電極5の両側の領域中に、ソース・ドレイン領域9を形成する工程と、Ge含有領域8上に、濃度5原子%以上のPdを含む金属シリサイドからなるシリサイド層11を形成する工程と、シリサイド層11を形成した後、半導体基板2に650〜750℃の熱処理を施す工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の微細化に伴い、ソース・ドレイン領域およびゲート電極上のシリサイド層のシート抵抗の低減化が求められている。また、FeRAM等、製造工程中のバックエンド工程において高温の熱処理が必要とされる装置においては、シリサイド層に耐熱性が求められる。
【0003】
シリサイド層の耐熱性を向上させる技術として、NiシリサイドにPtを添加する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。NiシリサイドにPtを添加することにより、比較的高い温度の熱処理を施した場合であっても、シリサイド層のシート抵抗の上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−99947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より高い耐熱性を有するシリサイド層を備えた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記基板上の前記ゲート電極の両側に、Geを含むSi系結晶からなる下地層を形成する工程と、前記基板および前記下地層の前記ゲート電極の両側の領域中に、ソース・ドレイン領域を形成する工程と、前記下地層上に、濃度5原子%以上のPdを含む金属シリサイドからなるシリサイド層を形成する工程と、前記シリサイド層を形成した後、前記基板に650〜750℃の熱処理を施す工程と、を含む半導体装置の製造方法を提供する。
【0007】
本発明の他の態様は、基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記基板上の前記ゲート電極の両側に形成された、Geを含むSi系結晶からなる下地層と、前記基板および前記下地層の前記ゲート電極の両側の領域中に形成されたソース・ドレイン領域と、前記下地層上に形成された、濃度5原子%以上のPdを含む金属シリサイドからなるシリサイド層と、を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より高い耐熱性を有するシリサイド層を備えた半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図2】Pdを含むNiシリサイドのシート抵抗の熱処理温度依存性を表すグラフ。
【図3】(a)、(b)は、Pdを含むNiシリサイドのシート抵抗のPd濃度依存性を表すグラフ。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】PtまたはPtを含むNiシリサイドのシート抵抗の形成温度依存性を表すグラフ。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の断面図である。半導体装置100は、半導体基板2上に素子分離領域3により他の素子と分離されたMOSFET1を有する。
【0011】
MOSFET1は、半導体基板2上にゲート絶縁膜4を介して形成されたゲート電極5と、ゲート電極5の側面上に形成されたオフセットスペーサ6と、オフセットスペーサ6の側面上に形成されたゲート側壁7と、半導体基板2内のゲート電極5の両側に形成されたGe含有領域8と、半導体基板2およびGe含有領域8内のゲート電極5の両側に形成されたソース・ドレイン領域9と、ゲート電極5上のシリサイド層10と、Ge含有領域8上のシリサイド層11と、を有する。なお、図示しないが、半導体基板2中のMOSFET1下の領域に、ウェルが形成されていてもよい。
【0012】
半導体基板2は、Si系基板からなり、その表面近傍にGe含有領域8を含む。Si系基板は、例えば、Si、SiGe、SiC、SiSn等のSi系単結晶、またはSi系多結晶からなる。なお、Si系基板としてSiGe基板を用いる場合は、元来Geを含んでいるため、Ge含有領域8を形成しなくてもよい。
【0013】
Ge含有領域8は、半導体基板2内の0.001〜50原子%、より好ましくは0.001〜30原子%のGeを含む領域である。Geは、Ge含有領域8上に形成されるPdを含む金属シリサイドであるシリサイド11の耐熱性を向上させる性質を有する。Geの濃度が0.001原子%よりも低い場合は、シリサイド11の耐熱性を十分に向上させることが難しい。また、Geの濃度が30原子%よりも高い場合は、半導体基板2の表面に結晶欠陥が生じるおそれがある。Ge含有領域8は、イオン注入法等を用いてGeを半導体基板2に注入することにより形成される。
【0014】
素子分離領域3は、例えば、SiO等の絶縁材料からなり、STI(Shallow Trench Isolation)構造を有する。
【0015】
ゲート絶縁膜4は、例えば、SiO、SiN、SiON等の絶縁材料、またはHfSiON等の高誘電率材料からなる。
【0016】
ゲート電極5は、例えば、導電型不純物を含む多結晶Si、多結晶SiGe等のSi系多結晶からなる。また、ゲート電極5は、金属からなるメタルゲート電極であってもよく、さらに、金属層と、金属層上のSi系多結晶層からなる二層構造を有してもよい。なお、ゲート電極5がメタルゲート電極である場合は、ゲート電極5上のシリサイド層10は形成されない。
【0017】
オフセットスペーサ6、およびゲート側壁7は、SiO、SiN等の絶縁材料からなる。また、ゲート側壁7は、SiN、SiO、TEOS(Tetraethoxysilane)等の複数種の絶縁材料からなる2層構造、更には3層以上の構造であってもよい。
【0018】
ソース・ドレイン領域9は、導電型不純物を半導体基板2に注入することにより形成される。n型のソース・ドレイン領域9を形成する場合は、As、P等のn型不純物が用いられる。また、p型のソース・ドレイン領域9を形成する場合は、B、BF等のn型不純物が用いられる。
【0019】
シリサイド層10、11は、Pdを含む金属シリサイドからなる。Pdは、金属シリサイドの耐熱性を向上させる性質を有する。金属シリサイドの耐熱性をより効果的に向上させるためには、金属シリサイドに含まれるPdの濃度は、5原子%以上であることが好ましい。なお、Pdの濃度が増加することにより発生する大きな問題はないため、濃度の上限は特にない。
【0020】
金属シリサイドとしては、Ni、V、Ti、Co、Rh、またはIr(以下、ベース金属と呼ぶ)とSiの化合物を用いることができる。金属シリサイドには、複数種のベース金属が含まれてもよい。また、金属シリサイドは、その結晶構造がMnP構造であるか、その結晶構造の点群の対称性がNiSiと近いことが好ましい。
【0021】
また、Pdは、金属シリサイドとシリコンとの界面に偏析する傾向があるため、金属シリサイドとシリコンの間の界面抵抗を低減して、直流電流値を増加させることができる。また、Pdが金属シリサイドとシリコンとの界面に偏析することにより、正孔に対するショットキー障壁の高さ(SBH: Schottky Barrier Height)を低減することができるため、MOSFET1がp型である場合にその動作性能を向上させることができる。
【0022】
図2は、Pdを含むNiシリサイドのシート抵抗の熱処理温度依存性を表すグラフである。図2の横軸はシリサイドに施す熱処理の温度[℃]を表し、縦軸は熱処理後のシリサイドの1平方ミリメートルあたりのシート抵抗[ohm/sq.]を表す。
【0023】
図2には、Si基板上に形成された4原子%のPdを含むNiシリサイドおよび8原子%のPdを含むNiシリサイドのプロファイル、およびGe含有領域8を含む半導体基板2と同様に表面近傍にGeを含むSi基板上に形成された8原子%のPdを含むNiシリサイドのプロファイルが示される。
【0024】
図2によれば、Si基板上に形成したNiシリサイドのプロファイルでは、熱処理温度が650℃を超えたあたりでシート抵抗が急激に上昇する。一方、表面近傍にGeを含むSi基板上に形成したNiシリサイドのプロファイルでは、熱処理温度が750℃に達するまでシート抵抗の急激な上昇が抑えられている。この結果から、Pdを含むNiシリサイドを表面近傍にGeを含むSi基板上に形成した場合、Geを含まないSi基板上に形成した場合よりも、Pdを含むNiシリサイドの耐熱性が高くなることがわかる。
【0025】
また、以上の実験において、Niシリサイドの代わりにシリサイド層11の材料として用いられる他の金属シリサイドを用いた場合であっても、同様の結果が得られると考えられる。この結果から、Ge含有領域8がシリサイド層11の耐熱性を高めることがわかる。
【0026】
図3(a)、(b)は、Pdを含むNiシリサイドのシート抵抗のPd濃度依存性を表すグラフである。図3(a)、(b)の横軸はNiシリサイドに含まれるPdの濃度[at%]を表し、縦軸は熱処理後のNiシリサイドの1平方ミリメートルあたりのシート抵抗[ohm/sq.]を表す。また、図3(a)、(b)は、比較例としてのPtを含むNiシリサイドのプロファイルを含む。
【0027】
図3(a)は、700℃の熱処理を施されたPdまたはPtを含むNiシリサイドのプロファイルを示す。図3(a)によれば、Pdを含むNiシリサイドのプロファイルでは、Pdの濃度が8原子%であるときにシート抵抗が最も小さく、Pdの濃度が8原子%から大きくなるに従って、シート抵抗が緩やかに増加する。
【0028】
また、Pdを含むNiシリサイドのプロファイルとPtを含むNiシリサイドのプロファイルとを比較することにより、Pdを含むNiシリサイドの方がPtを含むNiシリサイドよりも耐熱性に優れることがわかる。
【0029】
図3(b)は、750℃の熱処理を施されたPdまたはPtを含むNiシリサイドのプロファイルを示す。図3(b)によれば、図3(a)と同様に、Pdを含むNiシリサイドのプロファイルでは、Pdの濃度が8原子%であるときにシート抵抗が最も小さく、Pdの濃度が8原子%から大きくなるに従って、シート抵抗が緩やかに増加する。この場合、Pdの濃度が5原子%以上である場合に、Pdによる金属シリサイドの耐熱性の向上の効果が表れる。
【0030】
また、Pdを含むNiシリサイドのプロファイルとPtを含むNiシリサイドのプロファイルとを比較することにより、Pdを含むNiシリサイドの方がPtを含むNiシリサイドよりも耐熱性に優れることがわかる。
【0031】
また、以上の実験において、Niシリサイドの代わりにシリサイド層11の材料として用いられる他の金属シリサイドを用いた場合であっても、同様の結果が得られると考えられる。
【0032】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す。
【0033】
(半導体装置の製造)
図4(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【0034】
まず、図4(a)に示すように、半導体基板2上に素子分離領域3を形成して、MOSFET1を形成するための素子領域を区画し、その後、素子領域にゲート絶縁膜4およびゲート電極5を形成する。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、ゲート電極5の側面にオフセットスペーサ6を形成し、その後、ソース・ドレイン領域9の浅い領域を形成する。ソース・ドレイン領域9の浅い領域は、ゲート電極5およびオフセットスペーサ6をマスクとして用いたイオン注入法により、半導体基板2に導電型不純物を注入することにより形成される。
【0036】
次に、図4(c)に示すように、オフセットスペーサ6の側面にゲート側壁7を形成し、その後、Ge含有領域8およびソース・ドレイン領域9の深い領域を形成する。Ge含有領域8およびソース・ドレイン領域9の深い領域は、ゲート電極5、オフセットスペーサ6およびゲート側壁7をマスクとして用いたイオン注入法により、半導体基板2に導電型不純物を注入することにより形成される。
【0037】
次に、図4(d)に示すように、ゲート電極5およびソース・ドレイン領域8上に、それぞれシリサイド層10およびシリサイド層11を形成する。
【0038】
シリサイド層10、11を形成する工程は、ゲート電極5およびGe含有領域8を覆うように金属膜を形成する工程と、熱処理によりゲート電極5と金属膜、およびGe含有領域8と金属膜を反応させる工程を含む。
【0039】
シリサイド層10、11を形成する具体的な方法として、例えば、次のような方法がある。(1)Ni等のベース金属と、Pdを同時にスパッタリングし、ベース金属とPdを含む金属膜を形成した後、熱処理を行う方法。(2)ベース金属を含む金属膜上にPdを含む金属膜を積層した後、熱処理を行う方法。(3)Pdを含む金属膜上にベース金属を含む金属膜を積層した後、熱処理を行う方法。(4)ベース金属を含む金属膜を形成し、熱処理によりベース金属を含むシリサイドを形成した後、イオン注入法によりPdをシリサイドに注入し、さらに熱処理を行う方法。(5)ベース金属を含む金属膜を形成し、熱処理によりベース金属を含むシリサイドを形成した後、シリサイド上にPdを含む金属膜を形成し、さらに熱処理を行う方法。(6)Pdを含む金属膜を形成し、熱処理によりPdを含むシリサイドを形成した後、シリサイド上にベース金属を含む金属膜を形成し、さらに熱処理を行う方法。なお、上記の各方法において、金属膜はPVD法、CVD法等により形成される。
【0040】
なお、Ge含有領域8は、シリサイド層11を形成する前であれば、どのタイミングで形成されてもよい。例えば、オフセットスペーサ6の形成後、ゲート側壁7の形成前にGe含有領域8を形成した場合は、ゲート側壁7下にもGe含有領域8が形成される。また、ゲート絶縁膜4を形成する前にGe含有領域8を形成した場合は、ゲート絶縁膜4下にもGe含有領域8が形成される。
【0041】
MOSFET1を形成した後、MOSFET1上に層間絶縁膜(図示しない)を形成し、MOSFET1の上方にメモリ素子を形成する。このメモリ素子を形成する際に、高温の熱処理が行われる。ここで、高温とは、650℃以上の温度をいう。メモリ素子を形成する際には、650〜750℃の高温の熱処理が行われる場合がある。
【0042】
MOSFET1を形成した後の高温の熱処理工程において、MOSFET1が高温下におかれても、シリサイド層11のシート抵抗は上昇しにくい。
【0043】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、ソース・ドレイン領域上のシリサイド層として、耐熱性の高いPdを含む金属シリサイドからなるシリサイド層11を用いることにより、シリサイド層形成後の工程において比較的高温の熱処理が基板に施される場合であっても、シリサイド層の電気抵抗の上昇やシリサイド層の素子分離領域3のエッジ部分近傍での異常成長を抑えることができる。
【0044】
そのため、本実施の形態は、後工程(Back-End Process)において高温処理が必要なトランジスタの製造に適用する場合に、より高い効果を発揮する。後工程において高温処理が必要なトランジスタとしては、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)、FeRAM, DRAM, MRAM, PCRAM等のメモリ素子のセルトランジスタや、FeRAM, DRAM, MRAM, PCRAM, ReRAM等の混載メモリ素子の周辺回路トランジスタがある。
【0045】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態は、シリサイド層11がPdに加えてPtも含むという点において第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0046】
(半導体装置の構成)
シリサイド層11は、PdおよびPtを含む、Niシリサイド等の金属シリサイドからなる。Pdは、金属シリサイドの耐熱性を向上させる性質を有し、Ptは、金属シリサイドの形成温度の下限を低減する性質を有する。
【0047】
金属シリサイドの形成温度の下限をより低減するためには、金属シリサイドに含まれるPtの濃度は、8〜15原子%であることが好ましい。また、第1の実施の形態と同様に、金属シリサイドの耐熱性をより効果的に向上させるためには、金属シリサイドに含まれるPdの濃度は、5原子%以上であることが好ましい。
【0048】
図5は、PtまたはPtを含むNiシリサイドのシート抵抗の形成温度依存性を表すグラフである。図5の横軸はNiシリサイドの形成温度[℃]を表し、縦軸はNiシリサイドの1平方ミリメートルあたりのシート抵抗[ohm/sq.]を表す。ここで、形成温度とは、金属膜とSi結晶をシリサイド反応させるための熱処理の温度をいう。
【0049】
図5には、半導体基板2と同様に表面近傍にGeを含むSi基板上に形成された、8原子%のPt、15原子%のPt、8原子%のPd、15原子%のPd、または30原子%のPdを含むNiシリサイドのプロファイルが示される。
【0050】
図5によれば、Ptを含むNiシリサイドは、Pdを含むNiシリサイドよりも低い形成温度で低いシート抵抗を得ることができることがわかる。例えば、Pdを含むNiシリサイドを350℃で形成した場合、いずれのシート抵抗も45[ohm/sq.]より大きい。一方、Ptを含むNiシリサイドを350℃で形成した場合、いずれのシート抵抗も30[ohm/sq.]よりも小さい。
【0051】
また、図5によれば、8%のPtを含むNiシリサイドの方が15%のPtを含むNiシリサイドよりも低い形成温度で低いシート抵抗を得ることができることがわかる。なお、Ptの濃度が8原子%であるときに最も低い形成温度で低いシート抵抗を得ることができ、Ptの濃度が8原子%から大きくなるに従って、低いシート抵抗を得るために必要な形成温度が緩やかに増加する。
【0052】
また、以上の実験において、Niシリサイドの代わりにシリサイド層11の材料として用いられる他の金属シリサイドを用いた場合であっても、同様の結果が得られると考えられる。
【0053】
これらの結果から、十分低いシート抵抗を得るために必要なシリサイド層11の形成温度の下限を低減するためには、シリサイド層11の金属シリサイドが8原子%以上のPtを含むことが好ましいことがわかる。一方、Ptの濃度が増加すると金属シリサイドのシート抵抗が上昇する傾向がある。シート抵抗を低く保つためには、シリサイド層11の金属シリサイド中のPtの濃度は15原子%以下であることが好ましい。
【0054】
シリサイド層10、11を形成する工程は、ゲート電極5およびGe含有領域8を覆うように金属膜を形成する工程と、熱処理によりゲート電極5と金属膜、およびGe含有領域8と金属膜を反応させる工程を含む。
【0055】
シリサイド層10、11を形成する具体的な方法として、例えば、次のような方法がある。(1)Ni等のベース金属、PdおよびPtを同時にスパッタリングし、ベース金属、PdおよびPtを含む金属膜を形成した後、熱処理を行う方法。(2)ベース金属を含む金属膜上にPdおよびPtを含む金属膜を積層した後、熱処理を行う方法。(3)PdおよびPtを含む金属膜上にベース金属を含む金属膜を積層した後、熱処理を行う方法。(4)ベース金属を含む金属膜を形成し、熱処理によりベース金属を含むシリサイドを形成した後、イオン注入法によりPdおよびPtをシリサイドに注入し、さらに熱処理を行う方法。(5)ベース金属を含む金属膜を形成し、熱処理によりベース金属を含むシリサイドを形成した後、シリサイド上にPdおよびPtを含む金属膜を形成し、さらに熱処理を行う方法。(6)Pdを含む金属膜を形成し、熱処理によりPdおよびPtを含むシリサイドを形成した後、シリサイド上にベース金属を含む金属膜を形成し、さらに熱処理を行う方法。
【0056】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、ソース・ドレイン領域上のシリサイド層として、PdおよびPtを含む金属シリサイドからなるシリサイド層11を用いることにより、比較的低い温度で低いシート抵抗を有するシリサイド層を形成することができ、さらに、シリサイド層形成後の工程において比較的高温の熱処理が基板に施される場合であっても、シリサイド層の電気抵抗の上昇やシリサイド層の素子分離領域3のエッジ部分近傍での異常成長を抑えることができる。
【0057】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態は、半導体基板上にエピタキシャル成長させたSiGe結晶上にシリサイド層を形成する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0058】
(半導体装置の構成)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置200の断面図である。半導体装置200は、半導体基板2上に素子分離領域3により他の素子と分離されたMOSFET20を有する。
【0059】
MOSFET20は、半導体基板2上にゲート絶縁膜4を介して形成されたゲート電極5と、ゲート電極5の側面上に形成されたオフセットスペーサ6と、オフセットスペーサ6の側面上に形成されたゲート側壁7と、半導体基板2上のゲート電極5の両側に形成されたSiGeエピタキシャル層21と、半導体基板2内のゲート電極5の両側およびSiGeエピタキシャル層21内に形成されたソース・ドレイン領域9と、ゲート電極5上のシリサイド層10と、SiGeエピタキシャル層21上のシリサイド層11と、を有する。なお、図示しないが、半導体基板2中のMOSFET20下の領域に、ウェルが形成されていてもよい。
【0060】
SiGeエピタキシャル層21は、ゲート側壁7の両側の半導体基板2の表面を下地としてエピタキシャル成長したSiGe結晶からなる。SiGeエピタキシャル層21中のGe濃度は、第1の実施の形態のGe含有領域8中のGe濃度と同様に、0.001〜50原子%、より好ましくは0.001〜30原子%である。Geは、SiGeエピタキシャル層21上に形成されるPdを含む金属シリサイドであるシリサイド11の耐熱性を向上させる性質を有する。
【0061】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置200の製造方法の一例を示す。
【0062】
(半導体装置の製造)
図7(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置200の製造工程を示す断面図である。
【0063】
まず、図7(a)に示すように、図4(a)、(b)に示したソース・ドレイン領域9の浅い領域を形成するまでの工程を第1の実施の形態と同様に行う。
【0064】
次に、図7(b)に示すように、オフセットスペーサ6の側面にゲート側壁7を形成し、その後、ゲート側壁7の両側にSiGeエピタキシャル層21を形成する。
【0065】
SiGeエピタキシャル層21は、ゲート側壁7の両側の半導体基板2の表面を下地としてSiGe結晶をエピタキシャル成長させることにより形成される。また、SiGeエピタキシャル層21は、Si結晶をエピタキシャル成長させた後に、イオン注入法等によりGeをSi結晶に注入することにより形成されてもよい。
【0066】
次に、図7(c)に示すように、ソース・ドレイン領域9の深い領域を形成する。ソース・ドレイン領域9の深い領域は、ゲート電極5、オフセットスペーサ6およびゲート側壁7をマスクとして用いたイオン注入法により、SiGeエピタキシャル層21および半導体基板2に導電型不純物を注入することにより形成される。
【0067】
次に、図7(d)に示すように、ゲート電極5およびSiGeエピタキシャル層21上に、それぞれシリサイド層10およびシリサイド層11を形成する。
【0068】
シリサイド層10、11を形成する工程は、ゲート電極5およびSiGeエピタキシャル層21を覆うように金属膜を形成する工程と、熱処理によりゲート電極5と金属膜、およびSiGeエピタキシャル層21と金属膜を反応させる工程を含む。
【0069】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、エピタキシャル成長したSiGe結晶からなるSiGeエピタキシャル層21上にシリサイド層10を形成することにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、図8に示すように、SiGeエピタキシャル層21は、半導体基板2中のゲート側壁7の両側に形成した溝の中に形成されてもよい。この場合、SiGeエピタキシャル層21のSiGe結晶中のGe濃度が10〜50原子%であるときには、半導体基板2中のゲート絶縁膜4下のチャネル領域に歪みを発生させて、チャネル領域中の正孔の移動度を向上させることができる。このため、MOSFET20がp型である場合にその動作性能を向上させることができる。
【0071】
〔第4の実施の形態〕
本発明の第4の実施の形態は、シリサイド層11がPdに加えてPtも含むという点において第3の実施の形態と異なる。なお、第3の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0072】
(半導体装置の構成)
シリサイド層11は、PdおよびPtを含む、Niシリサイド等の金属シリサイドからなる。Pdは、金属シリサイドの耐熱性を向上させる性質を有し、Ptは、金属シリサイドの形成温度の下限を低減する性質を有する。
【0073】
金属シリサイドの形成温度の下限をより低減するためには、金属シリサイドに含まれるPtの濃度は、8〜15原子%であることが好ましい。また、第1の実施の形態と同様に、金属シリサイドの耐熱性をより効果的に向上させるためには、金属シリサイドに含まれるPdの濃度は、5原子%以上であることが好ましい。
【0074】
(第4の実施の形態の効果)
本発明の第4の実施の形態によれば、ソース・ドレイン領域上のシリサイド層として、PdおよびPtを含む金属シリサイドからなるシリサイド層11を用いることにより、比較的低い温度で低いシート抵抗を有するシリサイド層を形成することができ、さらに、シリサイド層形成後の工程において比較的高温の熱処理が基板に施される場合であっても、シリサイド層の電気抵抗の上昇やシリサイド層の素子分離領域3のエッジ部分近傍での異常成長を抑えることができる。
【0075】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0076】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
100、200 半導体装置、 2 半導体基板、 4 ゲート絶縁膜、 5 ゲート電極、 8 Ge含有領域、 9 ソース・ドレイン領域、 11 シリサイド層、 21 SiGeエピタキシャル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記基板上の前記ゲート電極の両側に、Geを含むSi系結晶からなる下地層を形成する工程と、
前記基板および前記下地層の前記ゲート電極の両側の領域中に、ソース・ドレイン領域を形成する工程と、
前記下地層上に、濃度5原子%以上のPdを含む金属シリサイドからなるシリサイド層を形成する工程と、
前記シリサイド層を形成した後、前記基板に650〜750℃の熱処理を施す工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリサイド層の前記金属シリサイドは、濃度8〜15原子%のPtをさらに含み、350℃以下の熱処理により生じるシリサイド反応により形成される、
請求項1に記載された半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記基板上の前記ゲート電極の両側に形成された、Geを含むSi系結晶からなる下地層と、
前記基板および前記下地層の前記ゲート電極の両側の領域中に形成されたソース・ドレイン領域と、
前記下地層上に形成された、濃度5原子%以上のPdを含む金属シリサイドからなるシリサイド層と、
を有する半導体装置。
【請求項4】
前記シリサイド層の前記金属シリサイドは、濃度8〜15原子%のPtをさらに含む、
請求項3に記載された半導体装置。
【請求項5】
前記下地層は、前記基板中のGeを含む領域、またはSiGeエピタキシャル結晶からなる、
請求項3または4に記載された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−71224(P2011−71224A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219539(P2009−219539)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】