説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】内層配線が薄くても内層配線とビアとの間の優れた電気伝導性を得ることができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1層と第2層との間に介在した所定の厚みの第1金属層と、前記第2層の表層に配置された第2金属層と、前記第1金属層、前記第1層及び前記第2層を貫通するビアホールと該ビアホールに形成された導電性組成物とからなるビアと、を具備し、前記ビアホールの外周に沿った第1金属層の端部は前記ビアホールの側面に接するように折れ曲がった形状であり、前記第1金属層の折れ曲がった表面で前記導電性組成物に導通している半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置を含む各種の電気機器に用いられる半導体装置ならびに半導体装置の製造方法、とりわけビアと電気的に接続した金属層を有する半導体装置ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、平板型のディスプレイ装置に対するニーズが高まっている。平板型ディスプレイ装置は、液晶や有機EL等を用いて表示媒体を形成している。そして、平板型ディスプレイ装置は、画面輝度の均一性や画像の書き換え速度を向上させるため、画像駆動用のアクティブ駆動素子(TFT素子)を基板上にマトリクス状に形成したアクティブマトリクス方式を用いることが多い。
【0003】
近年、ディスプレイの軽量化および耐久性向上を目的に、従来のガラス基板に代えてフレキシブルなフィルム基材(フレキ基材)を用い、その上に、より薄い例えばTFT素子のような半導体素子を形成した半導体装置が開発されている(例えば特許文献1)。また、このような半導体装置は、ディスプレイ以外の軽量化および/または耐久性向上のニーズがある各種の電気機器でも用いられている。
【0004】
図7は、このようなフレキ基材を用いた従来の半導体装置500の例を示す図である。半導体装置500は、フィルム等の可撓性を有するフレキ基材502と、フレキ基材502の一方の面に配置された銅等の金属よりなる内層配線501と、フレキ基材502の両側に形成された絶縁層503と、絶縁層503と内層配線501と基材502とを貫き、内部に導電性材料が充填されたビア505とを有している。
【0005】
この半導体装置500では、絶縁層503の上に、分離された表層配線507に跨るように有機半導体508を形成することにより半導体素子が形成されている。
【0006】
すなわち、半導体装置500では、表層配線507のうち有機半導体に覆われている部分をソース電極(有機半導体508の左側部が接触している表層配線507の部分)とドレイン電極(有機半導体508の右側部が接触している表層配線507の部分)として用い、内層配線501のうち、有機半導体508直下に位置する部分をゲート電極とするTFT(薄膜トランジスタ)が形成され、このTFTを用いて例えばスイッチング回路等の各種回路が形成される。
【特許文献1】特開2007−67263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、半導体装置500は軽量化等に伴い、内層配線501の一部をゲート電極としているために、内層配線501を例えば3μm以下と薄くする必要がある。この結果、ビア505と内層配線501との間の接触面積が小さくなり、ビア505と内層配線501との間の接続抵抗を小さくできないという問題があった。
【0008】
すなわち、図7からもわかるように、内層配線501とビア505との接触面積は内層配線501の厚さとビア505の外周の長さとの積で与えられる。このため、内層配線501の厚さが薄くなると、接触面積が十分確保できず、導電性が低下する。
【0009】
そこで本発明は、内層配線(金属層)が薄くても内層配線とビアとの間の優れた電気伝導性を得ることができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、第1層と第2層との間に介在した所定の厚みの第1金属層と、前記第2層の表層に配置された第2金属層と、前記第1金属層、前記第1層及び前記第2層を貫通するビアホールと該ビアホールに形成された導電性組成物とからなるビアと、を具備し、前記ビアホールの外周に沿った第1金属層の端部は前記ビアホールの側面に接するように折れ曲がった形状であり、前記第1金属層の折れ曲がった表面で前記導電性組成物に導通していることを特徴とする半導体装置である。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1金属層の折れ曲がった部分の長さは前記ビアの半径以下である第1の態様記載の半導体装置である。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記所定の厚みが、0.05μmから2μmである第1または第2の態様記載の半導体装置である。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記第2層は絶縁層であり、前記第1金属層の少なくとも一部からなるゲート電極と、それぞれ前記第2金属層の一部からなるソース電極及びドレイン電極とを有する第1〜第3の態様の何れか記載の半導体装置である。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記ゲート電極が前記絶縁層より薄い第4の態様記載の半導体装置である。
【0015】
本発明の第6の態様は、前記第2層上に、前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に跨る有機半導体層を有する第4または第5の態様記載の半導体装置である。
【0016】
本発明の第7の態様は、第1層と第2層との間に所定の厚みの第1金属層を介在させる工程と、前記第1層、前記第1金属層および前記第2層を貫通するビアホールと、前記第1金属層の折れ曲がった部分とを、前記第1金属層に接触して押圧することを伴う穴空け加工により形成する工程と、前記ビアホールに導電性組成物を形成し、前記第1金属層の折れ曲がった部分と電気的に接続するビアを形成する工程と、前記第2層の表層に第2金属層を配置する工程と、を具備する半導体装置の製造方法である。
である。
【0017】
本発明の第8の態様は、前記穴空け加工がパンチャー加工である第7の態様記載の半導体装置である。
【0018】
本発明の第9の態様は、前記穴空け加工がドリル加工である、第7の態様に記載の半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体装置は、金属層よりなる内層配線がビアホールの側面に接するように折れ曲がった形状を有しているので、内層配線の端面のみでビアホールの導電性組成物と接している従来例に比較して、内層配線と導電性組成物間の接触面積を大きくできる。したがって、内層配線とビアホール内の導電性組成物の間の接続抵抗を低くでき、内層配線と表層配線間とを確実に接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明にかかる実施形態1の半導体装置100を示す断面図である。
この実施形態1の半導体装置100は、内層配線101の一部をゲート電極とする半導体素子を有してなり、例えば、その半導体素子をマトリクス状に形成することにより、平板型のディスプレイ装置の駆動用基板として用いることができる。
【0022】
この実施形態1の半導体装置100は、従来例と同様、内層配線101の一部をゲート電極とする半導体素子を含み、内層配線101は比較的薄く形成されているが、詳細を後述するように本発明に特有のビア構造を有しており、内層配線101と表層配線107の間に優れた電気的導通を確保している。
【0023】
尚、明細書において、内層配線101とは、フレキ基材102と絶縁層103の間に形成された2つの絶縁層間に埋設された配線をいい、例えば、フレキ基材102の一方の面に形成された金属層がパターンニングされることにより形成される。また、表層配線107とは、絶縁層103の上に形成された配線をいい、例えば、絶縁層103上に形成された金属層がパターンニングされることにより形成される。例えば、実施形態1の半導体装置100が、アクティブ駆動素子(TFT素子)を基板上にマトリクス状に形成したアクティブマトリクス方式の(平板型のディスプレイ装置)駆動用基板である場合には、内層配線101は、主としてゲート電極と配線電極からなり、表層配線107は、主としてソース電極、ドレイン電極及び配線電極からなる。
【0024】
以下、図1を参照しながら、実施形態1の半導体装置100について具体的に説明する。
本実施形態1の半導体装置100は、可撓性を有するフレキ基材102を用いて構成されており、そのフレキ基材102の一方の面上に内層配線(第1の金属層)101が設けられている。また、フレキ基材102の一方の面には、内層配線101を覆う絶縁材料よりなる絶縁層(接着層)103が形成されている。さらに、半導体装置100では、フレキ基材102の他方の面にも絶縁層103が設けられている。
そして、絶縁層103、内層配線101および基体(フレキ基材)102を貫くビアホール105aが設けられ、ビアホール105aの内部に導電性組成物105bを充填することによりビア105が構成される。
【0025】
ここで、本実施形態1において、内層配線101は、ビアホール105aの側面に接するように折れ曲がった湾曲部101aを有し、その湾曲部101aによって内層配線101とビアホール105a内に設けられた導電性組成物105bとの接触面積を大きくしている。すなわち、この湾曲部101aをビアホール105aの側面に沿って延在させることにより、その延在した湾曲部101aの表面で導電性組成物105bに接触させることで、内層配線101の端面のみが導電性組成物105bと接触する場合と比べ内層配線101と導電性組成物105bの接触面積を増加させている。
この結果、内層配線101とビアホール105a内に設けられた導電性組成物105bとの間の十分な導通(電気伝導性)を確保することが可能となる。
【0026】
また、実施形態1の半導体装置100では、内層配線101の一部をゲート電極とし、表層配線107の一部をソース電極及びドレイン電極として、半導体素子(TFT素子)が以下のように構成される。
以下の説明において、ゲート電極は、特に断らない限り、内層配線101の一部により構成されているものであり、ソース電極及びドレイン電極はそれぞれ、特に断らない限り、表層配線107の一部により構成されているものとする。
【0027】
まず、ゲート電極上の絶縁層103上で分離されるように、ソース電極とドレイン電極が設けられる。その分離されたソース電極とドレイン電極に跨るように、有機半導体層108が設けられる。
すなわち、図1において、有機半導体108に覆われている表層配線207の2つの部分の一方(有機半導体層108の左側に覆われた部分)がソース電極となり、他方(有機半導体層108の右側に覆われた部分)がドレイン電極となる。また、絶縁層103のうち、ソース電極とドレイン電極の間に位置する有機半導体層108の直下部がゲート絶縁膜となり、内層配線101のうち、このゲート絶縁膜直下の部分がゲート電極となる。
【0028】
以下に、半導体装置100の詳細を説明する。
フレキ基材(フレキシブル基材)102は、例えば、ポリイミド、PEN、PETからなり、好ましくは耐熱性、寸法安定性に優れるポリイミドのような可撓性を有する材料よりなる。フレキ基材102は好ましくは5〜100μmの厚さを有する。
【0029】
フレキ基材102の一方の面に設けられる内層配線101は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金のような金属よりなる。内層配線101は、ビア105外周部において、ビアホール105aの側面に接するように折れ曲がった形状の部分である湾曲部101aを有している。本明細書では、必要に応じて、基材102の表面と平行な平坦部101bと、ビアホール105aの側面に沿って折れ曲がった部分である湾曲部101aとを区別して説明する。
【0030】
図1に示す実施形態1では、湾曲部101aは、ビアホール105aの側面に沿って図1下方向(ビアホール105aの貫通方向)に湾曲している。この湾曲部101aは、詳細を後述するようにビアホールを形成する際に穴空け加工の治具が内層配線(金属層)101に接触し、治具による押圧により内層配線101と治具が接触する部分がビアホール105aの側面に沿った形状に変形されて形成される。
【0031】
従って、用いる治具の種類、ビアホール形成方法、絶縁層103の材料、基材102の材料等を含む各種の要因によって、形成されるビアの側面形状が微妙に異なる。このため湾曲部101aの断面(基材102の表面に垂直な断面)における形状は、図1に示すようにある部分で急に折れ曲がる形状でもよく、また詳細を後述する本発明の実施例にかかる図5に示すように連続的に曲がる形状であってもよい。
【0032】
湾曲部101aを有することで内層配線101は、湾曲部101aの上下面の何れかがビアホール105aに形成された導電性組成物105bと接触するため、内層配線101とビア105との接触面積を、湾曲部101aがない場合の内層配線と導電性組成物との接触面積より広くできる。
【0033】
なお、ここで湾曲部がない場合の内層配線と導電性組成物の接触面積とは、図7に示す従来の半導体装置500において、湾曲部を有しない内層配線501の端部(側面)が導電性組成物と接触する面積を意味する。これは、本発明の実施形態である図1においては、内層配線101が取り囲む、ビアホール105aの外周の長さと内層配線101の厚さとの積として求めることができる。
【0034】
ここで、ビアホール105aの外周の長さは、ビアホール105aの形状が円筒形状である場合には、文字通り外周の長さを言うが、例えば、貫通方向の位置によって孔径が変化する場合には、基材102の一方の面におけるビアホール105aの外周端部の長さである。
【0035】
なお、ビアホール105aの外周の長さと内層配線の厚さの積から求まる面積を、本明細書の以下の部分ではでは「従来の内層配線とビアとの接触面積」という。
【0036】
また、本発明の実施形態において(即ち、湾曲部101aを有する場合)、内層配線101とビア105との接触面積は、断面観察により内層配線101とビア105(導電性組成物105b)とが接触している線分長さを測長し、この線分長さとビアホールの外周長さとの積を求めることより概算することができる。
【0037】
内層配線101とビアホール105a内の導電性組成物105b接触との面積は、好ましくは従来の内層配線とビアとの接触面積の2倍以上であり、より好ましくは10倍以上である。
【0038】
この好ましい接触面積を達成する1つの方法は、内層配線101の厚さを好ましい値、すなわち0.05μmから2μmにすることである。
【0039】
一方、図1の断面(基材102の表面に垂直な断面)において、湾曲部101aの長さは、ビア105(ビアホール105a)の半径の半分以下であることが好ましい。ビアの外周に均一に湾曲部101aを形成できるからである。
【0040】
また、湾曲部101aは、ビアホール105aの外周部全体に亘り形成するのが好ましい。しかし、内層配線101とビア105との接触面積が従来の内層配線とビアとの接触面積よりも広いという条件を満足すれば、ビアホール105aの外周の一部のみに湾曲部101aを設けてもよい。
【0041】
次に絶縁層103および表層配線107について説明する。
本実施形態1では、絶縁層103は、上述のようにゲート層として機能することから所定の絶縁性を有する必要があることは言うまでもないが、さらに薄くかつ絶縁性に優れていることが好ましい。また、好ましくはその表面に表層配線107を加圧加熱処理等により接着・固定できることが好ましい。このような絶縁性と接着性を満たす好ましい材料として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびポリイミド等の樹脂からなる接着層であることが好ましい。
【0042】
また、内層配線101を絶縁層103に完全に埋設させ、絶縁層103の表層に段差を発生させないために、内層配線101が絶縁層(接着層)103より薄くなることが好ましい。
絶縁層103の好ましい厚さは0.3μmから10μmである。
【0043】
表層配線107は、銅等の金属よりなる。基材102の上方および下方に配置された表層配線107のうち、基材102の上方に配置された表層配線107は、上述のようにその一部がソース電極とドレイン電極として機能することから、少なくとも2つの部分に分離されている。このようにソース電極とドレイン電極としても用いられることから、その好ましい厚さは0.1μmから3μmである。
【0044】
なお、図1に示す実施形態では、基材102の両方の面上に絶縁層103と表層配線107とを有するが、TFTを形成しない側(図1では基材102の下側の面上)の絶縁層103と表層配線107とについては、例えば外部配線を直接ビア105と接触させる等により省略してもよい。
【0045】
ビアホール105aは、絶縁層103と内層配線101と基材102とを貫通しており、ビアホール105a内に設けられた導電性組成物105bにより半導体装置100の一方の面の配線と他方の面の配線とを電気的に接続している。導電性を得るためにビアホール105aの内部に充填される導電性組成物105bは、導電性粉末と有機バインダからなる導電性ペーストが好適である。
【0046】
図1に示す実施形態では、ビアホール105aの開口の形状(基材102の表面に平行な断面の形状)が円で、垂直断面形状(基体102の表面に垂直な断面の形状)が長方形となる、円筒形状を有している。しかし、この形状に限定されるものではなく任意の形状をとり得る。従って、例えば開口の形状は、基体102の一方の面と他方の面で同じ円形であっても、ビア105の貫通方向上手側の円形の方が下手側の円形より面積が大きくなる円錐台のような形状にすることも可能である。
【0047】
次に半導体装置100の動作について例示する。表層配線107のソース電極部とドレイン電極部には概ね一定のドレイン電圧が印可されている。一方、ソース電極と内層電極101のゲート電極部間に所定の条件で変化するゲート電圧が印可されている。そしてゲート電圧の変化に併せて変化する所望のドレイン電流が、表層配線107のソース電極部、有機半導体層108、表層配線107のドレイン電極部およびビア105を通り、基材102の下側に配置された表層配線107および内層配線101の例えばゲート電極部とは接続されていない他の部分に流れる。
【0048】
以下に半導体装置100の製造方法について説明する。
図2は半導体装置100の製造方法について示す断面図である。
【0049】
図2(a)に示すように可撓性を有する基材(フレキ基材)102の一方の面上に例えば、スパッタリング、メッキおよびエッチング等により内層配線101を形成する。予め内層配線101を備えた市販のフレキ基材102を用いてもよい。
【0050】
次に、図2(b)に示すように、絶縁性を有する接着層103を、内層配線101を有するフレキ基材102の前記一方の面の内層配線101の上と、フレキ基材102の他方の面上に配置する。
【0051】
そして、図2(c)に示すように、絶縁層(接着層)103、内層配線101、基体102を貫通するビアホール105aを形成する。湾曲部101aを形成するようにビアホール105aは、内層配線101に接触して押圧することを伴う穴空け加工により形成される。このような穴空け加工としては、より面積の広い湾曲部101aを得ることができる、パンチャー加工、ドリル加工が好ましい。
【0052】
より広い接触面積、例えば従来の内層配線とビアとの接触面積と比べ2倍以上の接触面積を確保し、かつ湾曲部101aの長さをビア105の半径以下とすることは、上述のように内層配線101の厚さを好ましい範囲にすること以外に、パンチャー加工、ドリル加工の条件を好ましい範囲とすることでも実現できる。
【0053】
例えば、パンチャー加工においては、基材102等の加工物の材質、層構成に応じて、
適宜、穴開け治具(ピン)の押し込み量、押し込むスピード・戻りのスピード、材質等を調整することが好ましい。
【0054】
なお、図2(c)の実施例では、穴空け加工の治具(パンチ、ドリル等)が図2(c)の上から下に向けて移動し、ビアホール105aを形成したため、湾曲部101aは、同図の下方向に向いて湾曲している。しかし、治具を下から上に移動させて湾曲部101aが上を向いてビアホール108aの側面に沿って湾曲するように形成してもよい。
【0055】
図2(d)に示すように、ビアホール105aに導電性組成物105bを、例えばビアホール105a内のみに導電性組成物105bが充填されるように、マスクを介してスキージ印刷して導電性組成物を充填してビア105を形成する。これにより、内層配線101の湾曲部101aとビア105の導電性組成物105bは、広い接触面を介して電気的に接続される。
【0056】
次に図2(e)に示すように、金属箔106を接着層103の上に配置した後、例えば加熱加圧し、接着層103を硬化させ、金属箔106を基体102上に固定する。
【0057】
その後、図2(f)に示すように、金属箔106をパターニングして、表層配線107を形成する。
図2(f)に示す状態で、3層フレキシブル基板として用いることができる。上述した簡易な工程により、3層フレキシブル基板を作製できるのも本願発明の効果である。
【0058】
最後に蒸着、スクリーン印刷、スピンコート等により、図2(g)に示すように所定の位置に有機半導体層108を形成することで半導体装置100を得る。
【0059】
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2にかかる半導体装置200の製造方法を示す断面図である。実施形態1と共通の部分は、同じ番号を付してある。これら同じ番号の部分は特に断らない限りその詳細も実施形態1の相当する部分と同じであることから詳細な説明は省略する。
【0060】
図3(g)は、半導体装置200を示す。
実施形態2にかかるフレキ基材102は、その一方の面上の内層配線101に加えて、他方の面(図3(d)で下側の面)にも内層配線101’を有している。また、内層配線101’の形成方法、材質等は実施形態1で示した内層配線101と同じでよい。実施形態2では、内層配線101’も、内層配線101と同様、平坦部101’bと湾曲部101’aとから成る。内層配線101’は、ビアホール105aの側面に沿って折れ曲がる湾曲部101’aを有することから、内層配線101’はビア105(図3(d)の左側のビア)との接触面積を従来の内層配線とビアホール105aの導電性組成物105bとの接触面積よりも広くでき、従ってより低い電気抵抗を実現できる。
【0061】
図3(d)に示す実施形態では、1つのビア105は基体102の片方の面でしか内層配線101(または内層配線101’)と接触していないが、ビア105の両側に内層配線101が存在し、ビア105の両側がそれぞれ内層配線101または101’の湾曲部101aまたは101’aと接触する実施形態も本発明に含まれる。
【0062】
半導体装置200は、基体102の両面それぞれの上に内層配線(内層配線101、内層配線101’)と表層配線107を有する4層フレキシブル基板を含んでいることから、より複雑な回路構成にも対応できる。
【0063】
また、図3(g)に示す実施形態では、基体102の下側の面には有機半導体層108が形成されていない。しかし、例えば、内層配線101’の一部をゲート電極として用い、図3(g)で基体102より下に位置する表層配線107にソース電極部およびドレイン電極部を設け、このソース電極部およびドレイン電極部を跨ぐ有機半導体層を形成して、基体102の下側の面にもTFT等の半導体素子を形成してもよい。すなわち、基体102の下側の面にもTFT等の半導体素子を具備した半導体装置も本発明の技術的範囲に属する。
【0064】
次に半導体装置200の製造方法を説明する。
図3(a)に示すように、一方の面に内層配線101を、他方の面に101’を備えたフレキ基体102を用意する。接着層103を設けて、さらに実施形態1同様にビアホール105(図3(c)の実施形態では2つ)を形成する。
【0065】
これにより、内層配線101には湾曲部101aが形成され、内層配線101’には湾曲部101’aが形成される。そして、導電性組成物(導電性材料)105bを充填してビア105を形成することで、内層配線101と内層配線101’のいずれもが、従来の内層配線とビアとの接触面積よりも広い接触面積でビア105(導電性組成物105b)と電気的に接続される。
【0066】
その後、図3(f)に示すように、金属箔106をパターニングして、ソース電極およびドレイン電極を含む表層配線107を形成する。
図3(f)に示す状態は半導体装置200としては未完成であるが、このままでも4層フレキシブル基板として用いることができる。すなわち上述した簡易な工程により、4層フレキシブル基板を作製できるという効果も本実施形態は有している。
【0067】
さらに、図3(g)に示すように有機半導体層108を形成することで、TFT等の素子を有し、例えばスイッチング回路等の回路が形成された半導体装置200を得ることができる。
【0068】
(実施形態3)
図4は本発明の実施形態3にかかる半導体装置300とその製造方法を示す断面図である。実施形態1と共通の部分は、同じ番号を付してある。これら同じ番号の部分は特に断らない限りその詳細も実施形態1の相当する部分と同じであることから詳細な説明は省略する。
【0069】
実施形態3にかかる半導体装置300の構成は、実施形態1にかかる半導体装置100と同じであるが製造工程が異なっている。具体的には、実施形態3の半導体装置300は、その表層配線307を形成する方法に特徴を有する。従って、それ以前の工程である図4(a)〜(d)に示した工程は、実施形態1にかかる図2(a)〜(d)に示す工程と同じである。
【0070】
表層配線307を形成する工程では、図4(e)に示すように、その表面に表層配線307が予め形成されている配線転写材309を用いる。配線転写材309を、フレキ基材102の両側に配置し、表層配線307が接着層103の所定の部分に位置するようにそれぞれの配線転写材309を対向するそれぞれの接着層103と接触させる。そして、加熱加圧して接着層103を硬化させ、配線転写材309と基体102とを接着層103を介して一体とする。その後配線転写材309のキャリア(表層配線307を除く部分)を除去し、図4(f)に示すように接着層(絶縁層)103の上に表層配線307を形成する。
【0071】
最後に、図4(g)に示すように所定に位置に有機半導体層108を形成して半導体装置300を得る。
【0072】
このように配線転写材309を用いて、表層配線307を形成することで、フォトリソグラフィーによるパターニング工程がない。従って、これに続く金属配線のエッチング等のウェットプロセスを経ることなく簡易なプロセスにより図4(f)に示す3層フレキシブル基板および図4(g)に示す半導体装置300を得ることができるという効果を本実施形態は有する。
【実施例】
【0073】
図2(f)に示す本発明の半導体装置100に含まれる3層フレキシブル基板を、以下の(i)〜(iv)の手順に従って作製した。
(i)基材の準備
厚さ40μmのポリイミドフィルムよりなるフレキ基材102の一方の面に厚さ0.2μmの銅層がスパッタで形成されている三菱伸銅株式会社製ダイアファインを準備し、この銅層をパターニングして内層配線101を形成した。
【0074】
次に、内層配線101の上に接着層(絶縁層)103として厚さ2μmのナミックス株式会社製接着フィルムADFLEMAを貼り付けた。同様に、基体102の他方の面上(内層配線101が形成されていない方の面上)にもADFLEMAよりなる接着層103を貼り付けた。
【0075】
(ii)ビアの形成
前記基材102に、UHT株式会社製パンチャー加工機MP−7150Zを用い、接着層103と内層配線101と基体102とを貫通する50μmφのビアホール105aを形成した。続いて、このビアホール105aに導電性ペースト(導電性組成物)105bをスクリーン印刷法により充填した。ここで使用した導電性ペーストは、球形状の銅粒子85重量%と、樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製エポキシ樹脂「828」)3重量%と、グリシジルエステル系エポキシ樹脂(東都化成株式会社製「YD−171」)9重量%と、硬化剤としてアミンアダクト硬化剤(味の素ファインテクノ株式会社製「MY−24」)3重量%とを三本ロールを用いて混錬し作製した。
【0076】
(iii)接着層103と導電性ペーストの硬化
前記導電性ペーストが充填された基材102の両面に、表層配線107となる福田金属箔粉工業株式会社製の厚さ3μmの極薄銅箔CKPFよりなる金属層106を貼り付けた後、熱プレス機を用いて、加熱温度200℃、圧力3MPa、保持時間2時間の条件で、加熱加圧し、導電性ペーストおよび接着層103を硬化させ、導電性ペーストを充填したビア105と内層銅配線101と金属層106を電気接続させた。
(iv)表層銅配線の形成
金属層106をパターニングして、表層配線107とし、図2(f)に示す、本発明にかかる半導体装置100に含まれる3層フレキシブル基板を得た。
併せて、(ii)の工程で、パンチャー加工機の代わりにYAGレーザ加工機を用いてビアホール505aを形成し、他の工程は同じにした比較例を作製した。
【0077】
図5は、上記実施例の3層フレキシブル基板の断面写真であり、図6は上記比較例の3層フレキシブル基板の断面写真である。実施例の3層フレキシブル基板では、内層配線101がビア105のビアホールの側面に接して折れ曲がっている湾曲部を有しているため、内層配線101の端面(側面)ではなく上面が接触し、比較例と比べビア(導電性組成物)との接触面積が大きくなっているのがわかる。
【0078】
断面観察により測定した実施例サンプルの内層配線101とビア105との接触面積は6.9×10−10mm(接触幅2.2μm×ビア周囲長さ50μm×2×3.14)であり、内層配線101の厚さとビア105の外周との積から求まる接触面積の11倍であった。
【0079】
さらに、実施例および比較例の両方について、それぞれ内層配線101とビア105との電気接続の抵抗値およびを内層配線501とビア505との電気接続の抵抗値をそれぞれ120箇所測定して電気抵抗の評価を行なった。
【0080】
実施例では抵抗値の平均が105mΩ、標準偏差が5mΩであった。
一方、比較例では48箇所のビアが電気接続されておらず、残りの電気接続された内層配線501とビア505とで評価した抵抗値の平均は381mΩ、標準偏差185mΩであった。
【0081】
このように実施例では、内層配線101とビアとの間の電気抵抗値が小さいことに加え、電気抵抗値のばらつきが小さくなるという効果も有していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明にかかる半導体装置は、内層配線とビアとの電気接続を、低抵抗で、ばらつきの少ないものにすることができ、平板型のディスプレイ装置などの電気機器の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明にかかる半導体装置100の断面図である。
【図2】本発明にかかる半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる半導体装置200の製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる半導体装置300の製造工程を示す断面図である。
【図5】実施例の断面を示す写真である。
【図6】比較例の断面を示す写真である。
【図7】従来の半導体装置500を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
100,200,300,500 半導体装置
101,101’,501 内層配線
101a 内層配線の湾曲部
101b 内層配線の「平坦部
102,502 フレキ基体
103,503 絶縁層(接着層)
105,505 ビア
105a,505a ビアホール
105b,105b 導電性組成物
106 金属箔
107,307,507 表層配線
108,508 有機半導体
309 配線転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と第2層との間に介在した所定の厚みの第1金属層と、
前記第2層の表層に配置された第2金属層と、
前記第1金属層、前記第1層及び前記第2層を貫通するビアホールと該ビアホールに形成された導電性組成物とからなるビアと、を具備し、
前記ビアホールの外周に沿った第1金属層の端部は前記ビアホールの側面に接するように折れ曲がった形状であり、前記第1金属層の折れ曲がった表面で前記導電性組成物に導通していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1金属層の折れ曲がった部分の長さは前記ビアホールの半径以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記所定の厚みは、0.05μmから2μmであることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2層は絶縁層であり、前記第1金属層の少なくとも一部からなるゲート電極と、それぞれ前記第2金属層の一部からなるソース電極及びドレイン電極とを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極は、前記絶縁層より薄いことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2層上に、前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に跨る有機半導体層を有することを特徴とする請求項4または5記載の半導体装置。
【請求項7】
第1層と第2層との間に所定の厚みの第1金属層を介在させる工程と、
前記第1金属層に接触して押圧することを伴う穴空け加工により前記第1層、前記第1金属層および前記第2層を貫通するビアホールを形成して、前記第1金属層の端部が前記ビアホールの側面に接するように折れ曲がってなる湾曲部を形成する工程と、
前記湾曲部に電気的に接続するように前記ビアホールに導電性組成物を形成する工程と、
前記第1層及び/又は第2層の表層に前記導電性組成物と導通する第2金属層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記穴空け加工は、パンチャー加工であることを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記穴空け加工は、ドリル加工であることを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−302363(P2009−302363A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156339(P2008−156339)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】