半導体装置の作製方法
【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化する。
【解決手段】酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、非晶質酸化物半導体膜を形成し、該非晶質酸化物半導体膜に酸素を導入して酸素を過剰に含む非晶質酸化物半導体膜を形成する。該非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成した後、加熱処理を行い該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜を形成する。
【解決手段】酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、非晶質酸化物半導体膜を形成し、該非晶質酸化物半導体膜に酸素を導入して酸素を過剰に含む非晶質酸化物半導体膜を形成する。該非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成した後、加熱処理を行い該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体は薄膜形成工程において、化学量論的組成からのずれや、電子供与体を形成する水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化してしまう。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、非晶質酸化物半導体膜を形成し、非晶質酸化物半導体膜に酸素を導入して酸素を過剰に含む非晶質酸化物半導体膜を形成する。該非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成した後、加熱処理を行い該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、結晶を含む酸化物半導体膜(結晶性酸化物半導体膜ともいう)を形成する。
【0009】
非晶質酸化物半導体膜への酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0010】
結晶性酸化物半導体膜は、結晶を含み、結晶性を有する酸化物半導体膜である。結晶性酸化物半導体膜における結晶状態は、結晶軸の方向が無秩序な状態でも、一定の配向性を有する状態であってもよい。
【0011】
本明細書に開示する発明の一形態においては、酸素が導入され、かつ酸化アルミニウム膜に覆われた非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜(結晶性酸化物半導体膜)を形成することができる。
【0012】
表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜は、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor; CAAC−OSともいう)膜である。
【0013】
CAAC−OSとは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体のことである。
【0014】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0015】
CAAC−OSは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OSは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0016】
CAAC−OSを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OS膜が形成される基板面やCAAC−OS膜の表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0017】
該結晶性酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0018】
酸素の導入工程により、酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜及び結晶性酸化物半導体膜)は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。このような酸化物半導体の組成はInGaZnmOm+3x(x>1)で表すことができる。例えば、m=1であるとき、酸化物半導体の組成はInGaZnO1+3x(x>1)となり、酸素過剰である場合には、1+3xが4を越える値を示す。
【0019】
酸化物半導体膜中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜は、酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜(例えば、CAAC−OS膜)であり、該結晶性酸化物半導体膜は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0020】
酸化物半導体膜上に設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0021】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0022】
また、非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、非晶質酸化物半導体膜を酸化アルミニウム膜によって覆った状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0023】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0024】
よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0025】
また、酸化アルミニウム膜の形成前に非晶質酸化物半導体膜に水素原子または水などの水素原子を含む不純物などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除する加熱処理による脱水化または脱水素化処理を行うことが好ましい。
【0026】
水素を酸化物半導体から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化し、酸素欠損を補填することによりI型(真性)の酸化物半導体、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体とすることができる。すなわち、水素や水等の不純物を極力除去し、酸素欠損を補填したことにより、高純度化されたI型(真性半導体)又はそれに近づけることができる。そうすることにより、酸化物半導体のフェルミ準位(Ef)を真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0027】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜と、酸化アルミニウム膜と、前記絶縁膜及び前記酸化アルミニウム膜に挟まれている非晶質酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜は、酸素を注入され、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている半導体装置の作製方法である。
【0028】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている半導体装置の作製方法である。
【0029】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、前記酸化アルミニウム膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている半導体装置の作製方法である。
【0030】
本発明の一形態は、トップゲート構造、又はボトムゲート構造、それらのスタガ型、若しくはプレーナ型など、様々な構造のトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。また、非晶質酸化物半導体膜への酸素の導入工程は、露出された非晶質酸化物半導体膜へ直接酸素を導入してもよく、非晶質酸化物半導体膜上に他の膜を形成し、該膜に酸素を通過させて非晶質酸化物半導体膜へ導入してもよい。該トランジスタの構造によって、半導体装置の作製工程における非晶質酸化物半導体膜への酸素の導入工程は、露出した非晶質酸化物半導体膜に対してであっても、非晶質酸化物半導体膜上に絶縁膜(ゲート絶縁膜、絶縁膜(酸化アルミニウム膜を含む)、若しくはゲート絶縁膜及び絶縁膜(酸化アルミニウム膜を含む)の積層)、又はゲート絶縁膜及びゲート電極層の積層が形成された非晶質酸化物半導体膜に対してであっても行うことができる。
【0031】
上記構成において、加熱処理による結晶化によって得られる結晶を含む酸化物半導体膜は、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む、結晶性酸化物半導体(CAAC−OS)膜であることが好ましい。
【0032】
また、絶縁膜において、非晶質酸化物半導体膜が接して形成される領域は、表面粗さの低減された表面であることが好ましい。具体的には、絶縁膜表面の平均面粗さが1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下であると好ましい。表面粗さの低減された絶縁膜表面に酸化物半導体膜を形成することで、安定及び良好な結晶性を有する酸化物半導体膜を得ることができる。
【0033】
また、上記構成において、ゲート電極層と、酸化アルミニウム膜との間に酸化絶縁膜を形成してもよい。また、酸化アルミニウム膜の形成前に、ゲート電極層の側面を覆うサイドウォール構造の側壁絶縁層を形成してもよい。
【0034】
また、上記構成において、酸素導入工程及び酸化アルミニウム膜の形成工程前の非晶質酸化物半導体膜に水素若しくは水分を放出させる加熱処理を行ってもよい。
【0035】
このように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
酸化物半導体膜に含まれる過剰な酸素が加熱処理で放出されないように酸化アルミニウム膜を結晶性酸化物半導体膜上に設けることにより、結晶性酸化物半導体中及びその上下で接する層との界面で欠陥が生成され、また欠陥が増加することを防ぐことができる。すなわち、結晶性酸化物半導体膜に含ませた過剰な酸素が、酸素空孔欠陥を埋めるように作用するので、安定した電気特性を有する信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0037】
よって、開示する発明の一形態は、安定した電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0038】
また、開示する発明の一形態は、電気特性が良好で信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図8】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図9】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】半導体装置の一形態を説明する図。
【図12】半導体装置の一形態を説明する図。
【図13】半導体装置の一形態を説明する図。
【図14】半導体装置の一形態を説明する図。
【図15】半導体装置の一形態を説明する図。
【図16】電子機器を示す図。
【図17】比較例試料AのSIMS測定結果を示す図。
【図18】実施例試料AのSIMS測定結果を示す図。
【図19】比較例試料BのTDS測定結果を示す図。
【図20】実施例試料BのTDS測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0042】
トランジスタの構造は特に限定されず、例えばトップゲート構造、又はボトムゲート構造のスタガ型及びプレーナ型などを用いることができる。また、トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造もしくは3つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、チャネル領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型でもよい。
【0043】
図1(E)に示すように、トランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、結晶性酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを含む。トランジスタ410上には、絶縁膜407が形成されている。
【0044】
また、絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402は酸化シリコン膜であり、絶縁膜407は酸化アルミニウム膜である。
【0045】
結晶性酸化物半導体膜403は、結晶を含む結晶性酸化物半導体膜である。結晶性酸化物半導体膜403としては、表面に平行なa−b面を有し、該表面に対して概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜であって、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(CAAC)であることが好ましい。結晶性酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタ410の電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0046】
図1(A)乃至(E)にトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0047】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0048】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0049】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に結晶性酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410を直接作製してもよいし、他の作製基板に結晶性酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410を作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0050】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極層401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0051】
また、ゲート電極層401の材料は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0052】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料、また透光性を有する導電性材料の窒化物を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0053】
また、ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として、In−Sn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の金属酸化物を用いてもよい。ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として特に仕事関数の大きな材料であるインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜(IGZON膜とも呼ぶ)を用いることが好ましい。インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜は、アルゴン及び窒素の混合ガス雰囲気下で成膜することにより得られる。
【0054】
例えば、ゲート電極層401として基板400側から銅膜と、タングステン膜と、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜(IGZON膜)との積層構造、タングステン膜と、窒化タングステン膜と、銅膜と、チタン膜との積層構造などを用いることができる。
【0055】
次いで、ゲート電極層401上にプラズマCVD法又はスパッタリング法等により、ゲート絶縁膜402を形成する。ゲート絶縁膜402の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。
【0056】
また、ゲート絶縁膜402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。
【0057】
ゲート絶縁膜402は単層でも積層でもよいが、結晶性酸化物半導体膜403に接する膜としては、酸化物絶縁膜が好ましい。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402として酸化シリコン膜を用いる。
【0058】
ゲート絶縁膜402は、結晶性酸化物半導体膜403と接するため、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論比を超える量の酸素が存在することが好ましい。このような酸素の含有量が過剰な領域(酸素過剰領域)は、ゲート絶縁膜402の一部(界面も含む)に存在していればよい。例えば、ゲート絶縁膜402として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。
【0059】
結晶性酸化物半導体膜403と接する酸化シリコン膜を、酸素を多く含む状態とすることによって、酸化物半導体膜へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0060】
よって、このようなゲート絶縁膜402を用いることで、結晶性酸化物半導体膜403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。結晶性酸化物半導体膜403へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0061】
酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含むゲート絶縁膜402を結晶性酸化物半導体膜403と接して設けることによって、該ゲート絶縁膜402から結晶性酸化物半導体膜403へ酸素を供給することができる。例えば、結晶性酸化物半導体膜403及びゲート絶縁膜402を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことによって結晶性酸化物半導体膜403への酸素の供給を行うことができる。
【0062】
また、ゲート絶縁膜402、ゲート絶縁膜402上に形成される酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層401が形成された基板400、又はゲート絶縁膜402までが形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、絶縁膜407の成膜前に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bまで形成した基板400にも同様に行ってもよい。
【0063】
なお、非晶質酸化物半導体膜491をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、ゲート絶縁膜402の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することが好ましい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0064】
次いで、ゲート絶縁膜402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の非晶質酸化物半導体膜491を形成する(図1(A)参照)。
【0065】
非晶質酸化物半導体膜491の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、非晶質酸化物半導体膜491は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置(Columnar Plasma Sputtering system)を用いて成膜してもよい。
【0066】
非晶質酸化物半導体膜491に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0067】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0068】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0069】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0070】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0071】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0072】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0073】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。
【0074】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a―A)2+(b―B)2+(c―C)2≦r2を満たすことを言い、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0075】
結晶性を有する酸化物半導体である結晶性酸化物半導体膜403は、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0076】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0077】
【数1】
【0078】
なお、上記において、S0は、測定面(座標(x1,y1)(x1,y2)(x2,y1)(x2,y2)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Z0は測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0079】
よって、ゲート絶縁膜402において結晶性酸化物半導体膜403(図1(A)においては非晶質酸化物半導体膜491)が接して形成される領域に、平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0080】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。
【0081】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、ゲート絶縁膜402表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0082】
本実施の形態では、非晶質酸化物半導体膜491をIn−Ga−Zn系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、非晶質酸化物半導体膜491を成膜する際の雰囲気としては、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0083】
なお、非晶質酸化物半導体膜491は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0084】
酸化物半導体膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn膜を成膜する。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比]の金属酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0085】
また、金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0086】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0087】
減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持する。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に非晶質酸化物半導体膜491を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した非晶質酸化物半導体膜491に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0088】
また、ゲート絶縁膜402と非晶質酸化物半導体膜491とを大気に解放せずに連続的に形成することが好ましい。ゲート絶縁膜402と非晶質酸化物半導体膜491とを大気に曝露せずに連続して形成すると、ゲート絶縁膜402表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0089】
また、非晶質酸化物半導体膜491に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0090】
なお、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜491の形成後、非晶質酸化物半導体膜491へ酸素の導入工程前であれば、トランジスタ410の作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。
【0091】
また、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜491が島状に加工される前に行うと、ゲート絶縁膜402に含まれる酸素が加熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0092】
なお、加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0093】
また、加熱処理で非晶質酸化物半導体膜491を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の二窒化酸素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは二窒化酸素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは二窒化酸素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは二窒化酸素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は二窒化酸素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった非晶質酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、非晶質酸化物半導体膜を高純度化及び電気的にI型(真性)化することができる。
【0094】
次に、非晶質酸化物半導体膜491に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜491に酸素の供給を行う。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0095】
本実施の形態におけるトランジスタ410の作製工程において、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜491の形成後、絶縁膜407として酸化アルミニウム膜が形成される前までに行う。なお、脱水化または脱水素化するための加熱処理は、酸素の導入工程の前に行う。また、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜に直接導入してもよいし、ゲート絶縁膜や絶縁膜などの他の膜を通過して非晶質酸化物半導体膜へ導入してもよい。酸素を非晶質酸化物半導体膜に他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、本実施の形態のように酸素を露出された非晶質酸化物半導体膜491へ直接導入する場合は、プラズマ処理なども用いることができる。
【0096】
本実施の形態では、イオン注入法により非晶質酸化物半導体膜491に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜491は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜441となる(図1(B)参照)。
【0097】
例えば、酸素431の導入工程によって導入された非晶質酸化物半導体膜441における酸素濃度を1×1018/cm3以上3×1021/cm3以下とするのが好ましい。なお、酸素過剰領域は、非晶質酸化物半導体膜441の一部(界面も含む)に存在していればよい。よって、酸素431を導入することにより、ゲート絶縁膜402、非晶質酸化物半導体膜441、及び絶縁膜407の積層において、ゲート絶縁膜402と非晶質酸化物半導体膜441との界面、非晶質酸化物半導体膜441中、又は非晶質酸化物半導体膜441と絶縁膜407との界面の少なくとも一に酸素を含有させる。
【0098】
非晶質酸化物半導体膜441は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。このような酸化物半導体の組成はInGaZnmOm+3x(x>1)で表すことができる。例えば、m=1であるとき、酸化物半導体の組成はInGaZnO1+3x(x>1)となり、酸素過剰である場合には、1+3xが4を越える値を示す。
【0099】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜441中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0100】
なお、酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜441中の非晶質状態を、より均一化することができる。
【0101】
なお、酸化物半導体において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体膜に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0102】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体膜中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜に意図的に酸素が添加されたか否かを判別してもよい。
【0103】
本実施の形態のように、酸素431を直接非晶質酸化物半導体膜441へ導入する場合は、非晶質酸化物半導体膜441と接する絶縁膜(ゲート絶縁膜402、絶縁膜407など)を、必ずしも酸素を多く含む膜とする必要はないが、非晶質酸化物半導体膜441と接する絶縁膜(ゲート絶縁膜402、絶縁膜407など)を、酸素を多く含む膜とし、さらに酸素431を直接非晶質酸化物半導体膜441に導入し、複数の酸素供給方法を行ってもよい。
【0104】
次いで、非晶質酸化物半導体膜441を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体膜443に加工する(図1(C)参照)。また、島状の非晶質酸化物半導体膜443を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0105】
なお、開示する発明の一形態において、酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜及び結晶性酸化物半導体膜)は、本実施の形態で示すように島状に加工してもよいし、形状を加工せず、膜状のまままでもよい。
【0106】
また、ゲート絶縁膜402にコンタクトホールを形成する場合、その工程は非晶質酸化物半導体膜443の加工時に同時に行うことができる。
【0107】
なお、ここでの非晶質酸化物半導体膜441のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、非晶質酸化物半導体膜441のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0108】
次いで、ゲート絶縁膜402、及び非晶質酸化物半導体膜443上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。該導電膜は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3―SnO2)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0109】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する。
【0110】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0111】
なお、導電膜のエッチングの際に、非晶質酸化物半導体膜443がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、非晶質酸化物半導体膜443を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に非晶質酸化物半導体膜443は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体膜となることもある。
【0112】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用い、非晶質酸化物半導体膜443にはIn−Ga−Zn系酸化物半導体を用いたので、エッチング液としてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0113】
次いで、非晶質酸化物半導体膜443の一部に接する絶縁膜407を形成する(図1(D)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0114】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。絶縁膜407は、スパッタリング法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁膜407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜への侵入、又は水素による酸化物半導体膜中の酸素の引き抜きが生じ酸化物半導体膜のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁膜407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0115】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。この場合、酸素の含有量は、酸化アルミニウムの化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化アルミニウムの格子間に酸素が存在する場合もある。組成がAlOx(x>0)で表現される場合、xは3/2を超える酸素過剰領域を有する酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。このような酸素過剰領域は、酸化アルミニウム膜の一部(界面も含む)に存在していればよい。
【0116】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。酸化アルミニウム膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0117】
酸化物半導体膜の成膜時と同様に、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁膜407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0118】
絶縁膜407を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0119】
絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(A)にトランジスタ410において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とするトランジスタ410aの例を示す。
【0120】
図10(A)に示すように、結晶性酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。絶縁膜407aは酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化物絶縁膜を用いると、結晶性酸化物半導体膜403への酸素の供給源となるために好ましい。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0121】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403は、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む。
【0122】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0123】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0124】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0125】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜(本実施の形態では表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む半導体(CAAC−OS)膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0126】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ410に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタ410のしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0127】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0128】
例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して酸素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0129】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0130】
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0131】
なお、結晶化のための加熱処理として、レーザ光やランプ光などによる光照射による加熱処理を用いてもよい。例えば、非晶質酸化物半導体膜が吸収する波長のレーザ光を照射し、非晶質酸化物半導体膜の結晶化を行うことができる。
【0132】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0133】
高純度化され、酸素欠損が補填された結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水などの不純物が十分に除去されており、結晶性酸化物半導体膜403中の水素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは5×1018/cm3以下である。なお、結晶性酸化物半導体膜403中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。
【0134】
このような結晶性酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満である。
【0135】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(図1(E)参照)。トランジスタ410は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0136】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0137】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0138】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0139】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図2を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0140】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、トランジスタ410上に設けられた絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0141】
図2(A)乃至(E)に本実施の形態におけるトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0142】
絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、ゲート電極層401を形成する。
【0143】
次いで、ゲート電極層401上にプラズマCVD法又はスパッタリング法等により、ゲート絶縁膜402を形成する。
【0144】
次いで、ゲート絶縁膜402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の非晶質酸化物半導体膜491を形成する(図2(A)参照)。
【0145】
また、非晶質酸化物半導体膜491に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0146】
次いで、非晶質酸化物半導体膜491をフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体膜492に加工する(図2(B)参照)。
【0147】
次いで、ゲート絶縁膜402、及び非晶質酸化物半導体膜492上に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する。
【0148】
次いで、非晶質酸化物半導体膜492の一部に接する絶縁膜407を形成する(図2(C)参照)。絶縁膜407も単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0149】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0150】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0151】
本実施の形態では、絶縁膜407の形成後に、イオン注入法により絶縁膜407を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図2(D)参照)。
【0152】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0153】
なお、酸素の導入条件によっては、絶縁膜を通過して、非晶質酸化物半導体膜へ酸素を導入する際、酸素を絶縁膜の一部(及び絶縁膜と非晶質酸化物半導体膜との界面)へも導入することができる。例えば、絶縁膜を酸化物絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)と酸化アルミニウム膜との積層構造とする場合、非晶質酸化物半導体膜に酸素を導入する際に非晶質酸化物半導体膜と接する酸化物絶縁膜、非晶質酸化物半導体膜及び酸化物絶縁膜との界面にも酸素を導入し、非晶質酸化物半導体膜及び酸化物絶縁膜との積層において、酸素過剰な領域を形成することができる。
【0154】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0155】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0156】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0157】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0158】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0159】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0160】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0161】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(図2(E)参照)。トランジスタ410は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0162】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0163】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0164】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を図3を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0165】
図3(A)乃至(E)に示すトランジスタ430は、ボトムゲート構造のトランジスタの例である。
【0166】
トランジスタ430は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及び結晶性酸化物半導体膜403を含む。また、トランジスタ430を覆い、絶縁膜407が形成されている。
【0167】
図3(A)乃至(E)にトランジスタ430の作製方法の一例を示す。
【0168】
まず、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成する(図3(A)参照)。
【0169】
ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402は、酸化シリコン膜を用いる。
【0170】
結晶性酸化物半導体膜403に接する酸化シリコン膜は該酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0171】
結晶性酸化物半導体膜403と接する酸化シリコン膜を、酸素を多く含む状態とすることによって、酸化物半導体膜へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0172】
次にゲート絶縁膜402上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0173】
次いで、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上に、非晶質酸化物半導体膜を形成し、島状に加工して非晶質酸化物半導体膜492を形成する(図3(B)参照)。
【0174】
非晶質酸化物半導体膜492として、本実施の形態では、In−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によりIn−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。
【0175】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜492が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0176】
脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜492に島状に加工される前に行ってもよい。
【0177】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0178】
本実施の形態では、イオン注入法により、露出した非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図3(C)参照)。
【0179】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0180】
次いで、非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407を形成する(図3(D)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0181】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。
【0182】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0183】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0184】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0185】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0186】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0187】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0188】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0189】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0190】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0191】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0192】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ430に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタ430のしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0193】
以上の工程でトランジスタ430が形成される(図3(E)参照)。トランジスタ430は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ430は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0194】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ430は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0195】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0196】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0197】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図4を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0198】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、トランジスタ430上に設けられた絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0199】
図4(A)乃至(E)に示すトランジスタ430は、ボトムゲート構造のトランジスタの例である。図4(A)乃至(E)にトランジスタ430の作製方法の一例を示す。
【0200】
まず、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成する(図4(A)参照)。
【0201】
ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402は、酸化シリコン膜を用いる。
【0202】
結晶性酸化物半導体膜403に接する酸化シリコン膜は該酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0203】
結晶性酸化物半導体膜403と接する酸化シリコン膜を、酸素を多く含む状態とすることによって、酸化物半導体膜へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0204】
次にゲート絶縁膜402上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0205】
次いで、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上に、非晶質酸化物半導体膜を形成し、島状に加工して非晶質酸化物半導体膜492を形成する(図4(B)参照)。
【0206】
非晶質酸化物半導体膜492として、本実施の形態では、In−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によりIn−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。
【0207】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜492が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0208】
脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜492に島状に加工される前に行ってもよい。
【0209】
次いで、非晶質酸化物半導体膜492上に絶縁膜407を形成する(図4(C)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0210】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。
【0211】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0212】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0213】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0214】
本実施の形態では、絶縁膜407の形成後に、イオン注入法により絶縁膜407を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図4(D)参照)。
【0215】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0216】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0217】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0218】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0219】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0220】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0221】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0222】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0223】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0224】
以上の工程でトランジスタ430が形成される(図4(E)参照)。トランジスタ430は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ430は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0225】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0226】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0227】
(実施の形態5)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図5を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0228】
図5(A)乃至(F)に示すトランジスタ440は、トップゲート構造のトランジスタの例である。
【0229】
図5(F)に示すように、トランジスタ440は、絶縁膜436が設けられた絶縁表面を有する基板400上に、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、結晶性酸化物半導体膜403、ゲート絶縁膜402、ゲート電極層401を含む。トランジスタ440上には、絶縁膜407が形成されている。
【0230】
絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。本実施の形態では、絶縁膜407は酸化アルミニウム膜を用いる。
【0231】
また、結晶性酸化物半導体膜403は、結晶性を有する酸化物半導体膜であり、本実施の形態では、表面に平行なa−b面を有し、該表面に対して概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜であって、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(CAAC−OS)である。結晶性酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0232】
図5(A)乃至(F)にトランジスタ440の作製方法の一例を示す。
【0233】
まず、絶縁表面を有する基板400上に絶縁膜436を形成する。
【0234】
絶縁膜436としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。
【0235】
絶縁膜436は、単層でも積層でもよいが、結晶性酸化物半導体膜403に接する膜には酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。本実施の形態では絶縁膜436としてスパッタリング法を用いて形成する酸化シリコン膜を用いる。
【0236】
次に、絶縁膜436上に非晶質酸化物半導体膜491を形成する(図5(A)参照)。
【0237】
絶縁膜436は、非晶質酸化物半導体膜491と接するため、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましい。例えば、絶縁膜436として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。このような絶縁膜436を用いることで、非晶質酸化物半導体膜491に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。非晶質酸化物半導体膜491へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0238】
例えば、酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含む絶縁膜436を非晶質酸化物半導体膜491と接して設けることによって、該絶縁膜436から非晶質酸化物半導体膜491へ酸素を供給することができる。非晶質酸化物半導体膜491及び絶縁膜436を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことによって結晶性酸化物半導体膜403への酸素の供給を行ってもよい。
【0239】
また、絶縁膜436において、結晶性酸化物半導体膜403(図5(A)の工程では非晶質酸化物半導体膜491)が接して形成される領域は、表面粗さの低減された表面であることが好ましい。具体的には、表面の平均面粗さは1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下であると好ましい。表面粗さの低減された表面に結晶性酸化物半導体膜403(図5(A)の工程では非晶質酸化物半導体膜491)を形成することで、安定及び良好な結晶性を有する結晶性酸化物半導体膜403を得ることができる。
【0240】
よって、絶縁膜436において結晶性酸化物半導体膜403(図5(A)の工程では非晶質酸化物半導体膜491)が接して形成される領域に、平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0241】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、絶縁膜436の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0242】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、絶縁膜436表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0243】
非晶質酸化物半導体膜491の形成工程において、非晶質酸化物半導体膜491に水素、又は水がなるべく含まれないようにするために、非晶質酸化物半導体膜491の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜436が形成された基板を予備加熱し、基板及び絶縁膜436に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。
【0244】
非晶質酸化物半導体膜491の膜厚は、1nm以上200nm以下(好ましくは5nm以上30nm以下)とし、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0245】
また、非晶質酸化物半導体膜491に、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0246】
加熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱工程を行う。加熱処理で非晶質酸化物半導体膜491を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の二窒化酸素ガス、又は超乾燥エアを導入してもよい。酸素ガス又は二窒化酸素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった非晶質酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することができる。
【0247】
脱水化又は脱水素化のための加熱工程を、非晶質酸化物半導体膜491が非晶質酸化物半導体膜492へ島状に加工される前に行うと、絶縁膜436に含まれる酸素が加熱工程によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0248】
なお、非晶質酸化物半導体膜491は、島状に加工してもよいし、形状を加工せず、膜状のままでもよい。また、非晶質酸化物半導体膜491を素子ごとに分離する絶縁膜からなる素子分離領域を設けてもよい。
【0249】
本実施の形態では、非晶質酸化物半導体膜491をフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体膜492に加工する。
【0250】
なお、非晶質酸化物半導体膜491のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、非晶質酸化物半導体膜491のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0251】
次いで、非晶質酸化物半導体膜492を覆うゲート絶縁膜442を形成する(図5(B)参照)。
【0252】
なお、非晶質酸化物半導体膜492上に形成するゲート絶縁膜442の被覆性を向上させるために、非晶質酸化物半導体膜492表面にも上記平坦化処理を行ってもよい。特にゲート絶縁膜442として膜厚の薄い絶縁膜を用いる場合、非晶質酸化物半導体膜492表面の平坦性が良好であることが好ましい。
【0253】
ゲート絶縁膜442の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。また、ゲート絶縁膜442は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0254】
ゲート絶縁膜442の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。ゲート絶縁膜442は、非晶質酸化物半導体膜492と接する部分において酸素を含むことが好ましい。特に、ゲート絶縁膜442は、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば、ゲート絶縁膜442として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。本実施の形態では、ゲート絶縁膜442として、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁膜442として用いることで、非晶質酸化物半導体膜492に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。さらに、ゲート絶縁膜442は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁膜442の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0255】
また、ゲート絶縁膜442の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁膜442は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0256】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0257】
本実施の形態におけるトランジスタ440の作製工程において、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜491の形成後、絶縁膜407として酸化アルミニウム膜が形成される前までに行う。なお、脱水化または脱水素化するための加熱処理は、酸素の導入工程の前に行う。また、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜に直接導入してもよいし、ゲート絶縁膜や絶縁膜などの他の膜を通過して非晶質酸化物半導体膜へ導入してもよい。酸素を非晶質酸化物半導体膜に他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、酸素を露出された非晶質酸化物半導体膜(例えば、非晶質酸化物半導体膜491形成後、非晶質酸化物半導体膜492形成後)へ直接導入する場合は、プラズマ処理なども用いることができる。
【0258】
本実施の形態では、イオン注入法によりゲート絶縁膜442を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図5(C)参照)。
【0259】
なお、酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜443中の非晶質状態を、より均一化することができる。
【0260】
例えば、酸素431の導入工程によって導入された非晶質酸化物半導体膜443における酸素濃度を1×1018/cm3以上3×1021/cm3以下とするのが好ましい。なお、酸素過剰領域は、非晶質酸化物半導体膜443の一部(界面も含む)に存在していればよい。よって、酸素431を導入することにより、絶縁膜436と非晶質酸化物半導体膜443との界面、非晶質酸化物半導体膜443中、又は非晶質酸化物半導体膜443とゲート絶縁膜442との界面の少なくとも一に酸素を含有させる。
【0261】
非晶質酸化物半導体膜443は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。このような酸化物半導体の組成はInGaZnmOm+3x(x>1)で表すことができる。例えば、m=1であるとき、酸化物半導体の組成はInGaZnO1+3x(x>1)となり、酸素過剰である場合には、1+3xが4を越える値を示す。
【0262】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0263】
本実施の形態のように、酸素を直接非晶質酸化物半導体膜へ導入する場合は、非晶質酸化物半導体膜と接する絶縁膜を、必ずしも酸素を多く含む膜とする必要はないが、非晶質酸化物半導体膜と接する絶縁膜を、酸素を多く含む膜とし、さらに酸素を直接非晶質酸化物半導体膜に導入し、複数の酸素供給方法を行ってもよい。
【0264】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜442上に形成する。ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0265】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0266】
また、ゲート絶縁膜442と接するゲート電極層401の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5電子ボルト、好ましくは5.5電子ボルト以上の仕事関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0267】
ゲート電極層401の側面にサイドウォール構造の側壁絶縁層412a、412b、ゲート絶縁膜402を形成する。側壁絶縁層412a、412bは、ゲート電極層401を覆う絶縁膜を形成した後、これをRIE(Reactive ion etching:反応性イオンエッチング)法による異方性のエッチングによって絶縁膜を加工し、ゲート電極層401の側壁に自己整合的にサイドウォール構造の側壁絶縁層412a、412bを形成すればよい。ここで、絶縁膜について特に限定はないが、例えば、TEOS(Tetraethyl−Ortho−Silicate)若しくはシラン等と、酸素若しくは亜酸化窒素等とを反応させて形成した段差被覆性のよい酸化シリコンを用いることができる。絶縁膜は熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD、スパッタリング等の方法によって形成することができる。また、低温酸化(LTO:Low Temperature Oxidation)法により形成する酸化シリコンを用いてもよい。
【0268】
ゲート絶縁膜402はゲート電極層401、及び側壁絶縁層412a、412bをマスクとしてゲート絶縁膜442をエッチングして形成することができる。
【0269】
また、本実施の形態では、絶縁膜をエッチングする際、ゲート電極層401上の絶縁膜を除去し、ゲート電極層401を露出させるが、絶縁膜をゲート電極層401上に残すような形状に側壁絶縁層412a、412bを形成してもよい。また、後工程でゲート電極層401上に保護膜を形成してもよい。このようにゲート電極層401を保護することによって、エッチング加工する際、ゲート電極層の膜減りを防ぐことができる。なお、エッチング方法は、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でもよく、種々のエッチング方法を用いることができる。
【0270】
次いで、側壁絶縁層412a、412bの一部、及び非晶質酸化物半導体膜443上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。該導電膜は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3―SnO2)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0271】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図5(D)参照)。
【0272】
次いで、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412b、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に、絶縁膜407を形成する(図5(E)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0273】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。絶縁膜407は、スパッタリング法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁膜407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜への侵入、又は水素による酸化物半導体膜中の酸素の引き抜きが生じ酸化物半導体膜が低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁膜407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0274】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。この場合、酸素の含有量は、酸化アルミニウムの化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化アルミニウムの格子間に酸素が存在する場合もある。組成がAlOx(x>0)で表現される場合、xは3/2を超える酸素過剰領域を有する酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。このような酸素過剰領域は、酸化アルミニウム膜の一部(界面も含む)に存在していればよい。
【0275】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。酸化アルミニウム膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0276】
酸化物半導体膜の成膜時と同様に、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁膜407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0277】
絶縁膜407を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0278】
絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(B)にトランジスタ440において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とする例としてトランジスタ440aを示す。
【0279】
図10(B)に示すように、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412b、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンとして結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0280】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0281】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0282】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0283】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0284】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0285】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0286】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ440に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0287】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上650℃以下、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0288】
例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して酸素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0289】
高純度化され、酸素欠損が補填された結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水などの不純物が十分に除去されており、結晶性酸化物半導体膜403中の水素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは5×1018/cm3以下である。
【0290】
このような結晶性酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満である。
【0291】
以上の工程でトランジスタ440が形成される(図5(F)参照)。トランジスタ440は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ440は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0292】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ440は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0293】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0294】
(実施の形態6)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図6を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0295】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、ゲート電極層を形成後にゲート絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0296】
図6(A)乃至(E)に本実施の形態におけるトランジスタ440の作製方法の一例を示す。
【0297】
まず、基板400上に絶縁膜436を形成する。そして絶縁膜436上に非晶質酸化物半導体膜492を形成する。非晶質酸化物半導体膜492を覆うようにゲート絶縁膜442を形成する。
【0298】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜442上に形成する(図6(A)参照)。
【0299】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0300】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0301】
本実施の形態では、ゲート電極層401の形成後に、イオン注入法によりゲート絶縁膜442を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図6(B)参照)。
【0302】
酸素導入の際、ゲート電極層401がマスクとなり、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜492の領域には酸素431が直接導入されない場合があるが、ゲート電極層401の幅は狭い(例えばサブミクロンレベル)ため、非晶質酸化物半導体膜443の結晶化のための加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443中に導入された酸素を、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜443の領域にも拡散させることができる。
【0303】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0304】
ゲート電極層401の側面にサイドウォール構造の側壁絶縁層412a、412b、ゲート絶縁膜402を形成する。
【0305】
ゲート絶縁膜402はゲート電極層401、及び側壁絶縁層412a、412bをマスクとしてゲート絶縁膜442をエッチングして形成することができる。
【0306】
次いで、側壁絶縁層412a、412bの一部、及び非晶質酸化物半導体膜443上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。
【0307】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図6(C)参照)。
【0308】
次いで、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412b、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に、絶縁膜407を形成する(図6(D)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0309】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0310】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。さらにこの加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443全体に酸素が拡散し、膜全体にわたって酸素が供給される。
【0311】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0312】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0313】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0314】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0315】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0316】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0317】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ440に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0318】
以上の工程でトランジスタ440が形成される(図6(E)参照)。トランジスタ440は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ440は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0319】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ440は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0320】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0321】
(実施の形態7)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図7を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0322】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、トランジスタ上に設けられた絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0323】
図7(A)乃至(E)に本実施の形態におけるトランジスタ420の作製方法の一例を示す。
【0324】
まず、基板400上に絶縁膜436を形成する。そして絶縁膜436上に非晶質酸化物半導体膜492を形成する。非晶質酸化物半導体膜492を覆うようにゲート絶縁膜442を形成する。
【0325】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜442上に形成する(図7(A)参照)。
【0326】
なお、本実施の形態では、サイドウォール構造の側壁絶縁層を形成せず、ゲート絶縁膜も島状に加工せず、連続膜として設けられるゲート絶縁膜442を用いる例を示す。
【0327】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0328】
次いで、ゲート絶縁膜442及びゲート電極層401上に、絶縁膜407を形成する(図7(B)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0329】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0330】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0331】
本実施の形態では、絶縁膜407の形成後に、イオン注入法によりゲート絶縁膜442及び絶縁膜407を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図7(C)参照)。
【0332】
酸素導入の際、ゲート電極層401がマスクとなり、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜492の領域には酸素431が直接導入されない場合があるが、ゲート電極層401の幅は狭い(例えば0.35μm)ため、非晶質酸化物半導体膜443の結晶化のための加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443中に導入された酸素を、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜443の領域にも拡散させることができる。
【0333】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0334】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する(図7(D)参照)。さらにこの加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443全体に酸素が拡散し、膜全体にわたって酸素が供給される。
【0335】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0336】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0337】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0338】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0339】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0340】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0341】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ420に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0342】
また、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0343】
本実施の形態では、絶縁膜407上に平坦化絶縁膜415を形成する。また、ゲート絶縁膜442、絶縁膜407、及び平坦化絶縁膜415に結晶性酸化物半導体膜403に達する開口を形成し、開口に結晶性酸化物半導体膜403と電気的に接続するソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0344】
以上の工程でトランジスタ420が形成される(図7(E)参照)。トランジスタ420は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ420は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0345】
また、絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(C)にトランジスタ420において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とする例としてトランジスタ420aを示す。
【0346】
図10(C)に示すように、ゲート絶縁膜402及びゲート電極層401上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0347】
絶縁膜407が絶縁膜407a、407bの積層構造の場合、非晶質酸化物半導体膜492への酸素導入工程は、積層する絶縁膜407a、407bを通過して行うことができる。
【0348】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ420は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0349】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0350】
(実施の形態8)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図8を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0351】
本実施の形態では、上記実施の形態5とソース電極層及びドレイン電極層と結晶性酸化物半導体膜との接続構造が異なるトランジスタの作製方法の例を示す。
【0352】
図8(A)乃至(F)に本実施の形態におけるトランジスタ450の作製方法の一例を示す。
【0353】
まず、基板400上に絶縁膜436を形成する。
【0354】
次いで、絶縁膜436上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。
【0355】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図8(A)参照)。
【0356】
そして絶縁膜436、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上に非晶質酸化物半導体膜492を形成する(図8(B)参照)。非晶質酸化物半導体膜492を覆うようにゲート絶縁膜402を形成する(図8(C)参照)。
【0357】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0358】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0359】
本実施の形態では、イオン注入法によりゲート絶縁膜402を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図8(D)参照)。
【0360】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0361】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜402上に形成する。
【0362】
本実施の形態では、ゲート電極層401の側面にサイドウォール構造の側壁絶縁層を設けない例を示すが、実施の形態5で示すようにサイドウォール構造の側壁絶縁層を設け、ゲート絶縁膜402を島状に加工してもよい。
【0363】
次いで、ゲート絶縁膜402、及びゲート電極層401上に、絶縁膜407を形成する(図8(E)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0364】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0365】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0366】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0367】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0368】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0369】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0370】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0371】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0372】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ450に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0373】
また、絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(D)にトランジスタ450において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とする例としてトランジスタ450aを示す。
【0374】
図10(D)に示すように、ゲート絶縁膜402及びゲート電極層401上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0375】
以上の工程でトランジスタ450が形成される(図8(F)参照)。トランジスタ450は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ450は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0376】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ450は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0377】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0378】
(実施の形態9)
本実施の形態では、半導体装置の作製方法の他の一形態を説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0379】
なお、本実施の形態では、実施の形態8で示したトランジスタ450の作製工程において、適用可能な酸素導入工程の例を、トランジスタ450cを用いて示す。
【0380】
図9(A)は、図8(B)の工程後、非晶質酸化物半導体膜492に直接酸素431を導入する例である。酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる。供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。なお、図9(A)のように、露出された非晶質酸化物半導体膜492に直接酸素を導入する場合、プラズマ処理を用いることができる。
【0381】
本発明の一形態によって作製することのできるトランジスタにおいて、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの位置関係は、ゲート絶縁膜402を間に介して、重畳せずに形成されても、一部重畳して形成されてもよい。
【0382】
例えば、実施の形態8において図8に示したトランジスタ450は、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bと、ゲート電極層401とが、ゲート絶縁膜402、及び結晶性酸化物半導体膜403を間に介して一部重畳する構造の例である。
【0383】
本実施の形態において図9(B)(C)に示すトランジスタ450cは、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bと、ゲート電極層401とが、ゲート絶縁膜402、及び結晶性酸化物半導体膜403を間に介して重畳しない構造の例である。
【0384】
図9(B)は、ゲート絶縁膜402上にゲート電極層401を形成後、非晶質酸化物半導体膜492にゲート絶縁膜402を通過して酸素431を導入する例である。酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる。供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0385】
図9(C)は、ゲート絶縁膜402及びゲート電極層401上に絶縁膜407を形成後、非晶質酸化物半導体膜492にゲート絶縁膜402及び絶縁膜407を通過して酸素431を導入する例である。酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる。供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0386】
図9(B)(C)のように、非晶質酸化物半導体膜492への酸素431の導入工程をゲート絶縁膜402及びゲート電極層401の形成後に行う場合、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとが重畳しない構造であると、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの間に位置する非晶質酸化物半導体膜492への酸素431の導入を比較的容易に行うことができる。
【0387】
このように、結晶性酸化物半導体膜への酸素の導入工程は、脱水化又は脱水素化処理を行った後であればよく、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0388】
以上の工程で作製されるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0389】
安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0390】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0391】
(実施の形態10)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図11を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0392】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、結晶性酸化物半導体膜にソース領域及びドレイン領域として機能する不純物領域を形成する例である。ソース領域及びドレイン領域として機能する不純物領域は、結晶性酸化物半導体膜への導電率を変化させる不純物(ドーパントともいう)を導入して形成することができる。
【0393】
ソース領域及びドレイン領域として機能する不純物領域におけるドーパントの濃度は、5×1018/cm3以上1×1022/cm3以下であることが好ましい。
【0394】
導入するドーパントは、15族元素およびホウ素とし、具体的にはリン、砒素、およびアンチモンならびにホウ素のいずれかから選択される一以上とする。また、結晶性酸化物半導体膜にドーパントを導入する方法として、イオンドーピング法またはイオン注入法を用いることができる。
【0395】
イオンドーピング法またはイオン注入法によりドーパントを導入する際に、基板を加熱しながら行ってもよい。
【0396】
なお、結晶性酸化物半導体膜にドーパントを導入する処理は、複数回行ってもよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0397】
ドーパントを導入した不純物領域は、ドーパントの導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、ドーパントの導入後に加熱処理を行うことによって、結晶性を回復することができる。
【0398】
図11(A)に実施の形態5又は実施の形態6で示したトランジスタ440において、結晶性酸化物半導体膜403にソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域404a、404bを設けたトランジスタ440bの例を示す。不純物領域404a、404bは、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412bをマスクとしてソース電極層405a、ドレイン電極層405bの形成前に結晶性酸化物半導体膜403にドーパントを導入することで形成することができる。
【0399】
図11(B)に実施の形態7で示したトランジスタ420において、結晶性酸化物半導体膜403にソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域404a、404bを設けたトランジスタ420bの例を示す。不純物領域404a、404bは、ゲート電極層401をマスクとして結晶性酸化物半導体膜403にドーパントを導入することで形成することができる。
【0400】
図11(C)に実施の形態8で示したトランジスタ450において、結晶性酸化物半導体膜403にソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域404a、404bを設けたトランジスタ450bの例を示す。不純物領域404a、404bは、ゲート電極層401をマスクとして結晶性酸化物半導体膜403にドーパントを導入することで形成することができる。
【0401】
ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域を設けることによって、不純物領域の間に形成されるチャネル形成領域に加わる電界を緩和させることができる。また、不純物領域において結晶性酸化物半導体膜と電極層とを電気的に接続させることによって、結晶性酸化物半導体膜と電極層との接触抵抗を低減することができる。従って、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0402】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0403】
(実施の形態11)
実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0404】
図13(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図13(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0405】
図13(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図13(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図13(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0406】
また図13(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0407】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図13(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図13(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図13(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0408】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0409】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0410】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0411】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0412】
半導体装置の一形態について、図13及び図14を用いて説明する。図14は、図13(A)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0413】
図13及び図14で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0414】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0415】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図14では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図14(A)では、トランジスタ4010、4011上には絶縁膜4020、絶縁膜4032が設けられ、図14(B)ではさらに、絶縁膜4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0416】
トランジスタ4010、トランジスタ4011としては、実施の形態1乃至10のいずれかで示したトランジスタを適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ410と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0417】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0418】
よって、図13及び図14で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0419】
また、本実施の形態では、絶縁膜上において駆動回路用のトランジスタ4011の結晶性酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に導電層が設けられている例である。導電層を結晶性酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、バイアス−熱ストレス試験(BT試験)前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0420】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0421】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0422】
図14(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図14(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0423】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0424】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0425】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液晶組成物を用いることはより効果的である。
【0426】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0427】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。高純度の結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0428】
本実施の形態で用いる高純度化された結晶性酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0429】
また、本実施の形態で用いる高純度化された結晶性酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0430】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0431】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0432】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0433】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0434】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0435】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0436】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0437】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0438】
図14(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0439】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0440】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0441】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0442】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0443】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0444】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0445】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0446】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0447】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0448】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0449】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0450】
なお、図13及び図14において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0451】
本実施の形態では、絶縁膜4020として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜4020はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0452】
酸化物半導体膜上に絶縁膜4020として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0453】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0454】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、結晶性酸化物半導体膜を酸素の導入工程により酸素過剰とした非晶質酸化物半導体膜を結晶化した結晶性酸化物半導体膜を有する。非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、酸化アルミニウム膜に覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0455】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタ4010及びトランジスタ4011に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0456】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜を形成してもよい。
【0457】
絶縁膜4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0458】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0459】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0460】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0461】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0462】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0463】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0464】
以上のように実施の形態1乃至10のいずれかで示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0465】
(実施の形態12)
実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0466】
図15(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図15(A)はフォトセンサの等価回路であり、図15(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0467】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0468】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図15(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1乃至10に示したトランジスタが適用でき、結晶性酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ410と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0469】
図15(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0470】
トランジスタ640上には絶縁膜631、絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、層間絶縁膜633上に形成した電極層641と、層間絶縁膜634上に設けられた電極層642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0471】
電極層641は、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641を介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0472】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0473】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0474】
第2半導体膜606bは、I型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0475】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0476】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0477】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0478】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH4、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などの珪素を含む化合物を水素で希釈して形成することができる。また、珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH4、C2H6等の炭化物気体、GeH4、GeF4等のゲルマニウム化気体、F2等を混入させてもよい。
【0479】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0480】
絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いて形成することができる。
【0481】
本実施の形態では、絶縁膜631として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜631はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0482】
酸化物半導体膜上に絶縁膜631として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0483】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0484】
本実施の形態において、トランジスタ640は、酸素を過剰に導入された非晶質酸化物半導体膜を結晶化した結晶性酸化物半導体膜を有する。非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、酸化アルミニウム膜に覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0485】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入せず、酸素放出が防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタ640に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0486】
絶縁膜632としては、無機絶縁材料としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0487】
層間絶縁膜633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜が好ましい。層間絶縁膜633、634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0488】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0489】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0490】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0491】
(実施の形態13)
実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタは、複数のトランジスタを積層する集積回路を有する半導体装置に好適に用いることができる。本実施の形態では、半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)の例を示す。
【0492】
実施の形態では、単結晶半導体基板に作製された第1のトランジスタであるトランジスタ140と絶縁膜を介してトランジスタ140の上方に半導体膜を用いて作製された第2のトランジスタであるトランジスタ162を含む半導体装置を作製する。実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタは、トランジスタ162に好適に用いることができる。本実施の形態では、トランジスタ162として実施の形態5で示したトランジスタ440と同様な構造を有するトランジスタを用いる例を示す。
【0493】
積層するトランジスタ140、トランジスタ162の半導体材料、及び構造は、同一でもよいし異なっていてもよい。本実施の形態では、記憶媒体(メモリ素子)の回路に好適な材料及び構造のトランジスタをそれぞれ用いる例である。
【0494】
図12は、半導体装置の構成の一例である。図12(A)には、半導体装置の断面を、図12(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図12(A)は、図12(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、図12(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図12(A)および図12(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ140を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する。本実施の形態では、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0495】
図12における半導体装置の作製方法を図12(A)乃至(C)を用いて説明する。
【0496】
トランジスタ140は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板185に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上に設けられたゲート電極110とを有する。
【0497】
半導体材料を含む基板185は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0498】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体膜を形成する方法等を用いることができる。
【0499】
例えば、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、又は素子基板上のどちらか一方に絶縁膜を形成する。単結晶半導体基板と素子基板を、絶縁膜を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体膜として単結晶半導体膜を素子基板上に形成する。上記方法を用いて作製されたSOI基板も好適に用いることができる。
【0500】
基板185上にはトランジスタ140を囲むように素子分離絶縁層106が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図12に示すようにトランジスタ140がサイドウォールとなる側壁絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ140の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォールとなる側壁絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120を設けてもよい。
【0501】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ140は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ140を覆うように絶縁膜を2層形成する。トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、該絶縁膜2層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜128、絶縁膜130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0502】
絶縁膜128、絶縁膜130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜128、絶縁膜130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0503】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜128、絶縁膜130を形成してもよい。
【0504】
なお、絶縁膜130において、半導体膜と接する膜は酸化シリコン膜を用いる。
【0505】
本実施の形態では、絶縁膜128としてスパッタリング法により膜厚50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜130としてスパッタリング法により膜厚550nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0506】
CMP処理により十分に平坦化した絶縁膜130上に半導体膜を形成する。本実施の形態では、半導体膜としてIn−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む非晶質酸化物半導体膜を形成する。
【0507】
次に非晶質酸化物半導体膜を選択的にエッチングして島状の非晶質酸化物半導体膜を形成し、非晶質酸化物半導体膜に酸素導入工程を行う。非晶質酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜146、ゲート電極層148、側壁絶縁層136a、136bを形成する。
【0508】
ゲート絶縁膜146として、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を形成することができる。
【0509】
ゲート電極層148は、ゲート絶縁膜146上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。
【0510】
次に、ゲート電極110、絶縁膜128、絶縁膜130などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bを形成する。
【0511】
導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0512】
導電層は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0513】
次に、非晶質酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜146、ゲート電極層148、側壁絶縁層136a、136b上に、酸化アルミニウム膜を含む絶縁膜150を形成する。絶縁膜150を積層構造とする場合、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を酸化アルミニウム膜と積層して形成してもよい。
【0514】
次に非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜144を形成する。
【0515】
酸化物半導体膜上に絶縁膜150として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0516】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0517】
非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜150として設けられた酸化アルミニウム膜に覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜144は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0518】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜144は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。よって、該結晶性酸化物半導体膜144をトランジスタ162に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0519】
非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0520】
絶縁膜150上において、ソース電極またはドレイン電極142aと重畳する領域に電極層153を形成する。
【0521】
次にトランジスタ162、及び絶縁膜150上に、絶縁膜152を形成する。絶縁膜152は、スパッタリング法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0522】
次に、ゲート絶縁膜146、絶縁膜150、及び絶縁膜152に、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0523】
その後、上記開口にソース電極またはドレイン電極142bに接する配線156を形成する。なお、図12にはソース電極またはドレイン電極142bと配線156との接続箇所は図示していない。
【0524】
配線156は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をエッチング加工することによって形成される。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極またはドレイン電極142aなどと同様である。
【0525】
以上の工程でトランジスタ162及び容量素子164が完成する。トランジスタ162は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜144を有するトランジスタである。よって、トランジスタ162は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。容量素子164は、ソース電極またはドレイン電極142a、結晶性酸化物半導体膜144、ゲート絶縁膜146、および電極層153、で構成される。
【0526】
なお、図12の容量素子164では、結晶性酸化物半導体膜144とゲート絶縁膜146を積層させることにより、ソース電極またはドレイン電極142aと、電極層153との間の絶縁性を十分に確保することができる。もちろん、十分な容量を確保するために、結晶性酸化物半導体膜144を有しない構成の容量素子164を採用してもよい。また、絶縁膜を有する構成の容量素子164を採用してもよい。さらに、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0527】
図12(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図12(C)において、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ140のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ140のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0528】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0529】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0530】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0531】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ140は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ140をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ140を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ140は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ140は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ140のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0532】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0533】
本実施の形態で示すトランジスタ162は、高純度化され、酸素を過剰に含む酸化物半導体膜を結晶性酸化物半導体膜144に用いることで、トランジスタ162のオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0534】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0535】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0536】
(実施の形態14)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0537】
図16(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0538】
図16(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0539】
図16(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0540】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図16(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図16(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0541】
また、図16(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0542】
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0543】
図16(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0544】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図16(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0545】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図16(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0546】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0547】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0548】
図16(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0549】
図16(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0550】
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0551】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0552】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0553】
本実施例では、開示する発明に係る半導体装置において用いる酸化アルミニウム膜のバリア膜としての特性について評価を行った。図17乃至図20に結果を示す。評価方法としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)と、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析法を用いた。
【0554】
まず、SIMS分析によって行った評価を示す。試料は、比較例としてガラス基板上にスパッタリング法による酸化シリコン膜が膜厚100nm形成された比較例試料Aと、実施例としてガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚100nm形成された実施例試料Aを作製した。
【0555】
比較例試料A及び実施例試料Aにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO2)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0556】
実施例試料Aにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al2O3)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0557】
比較例試料A及び実施例試料Aにプレッシャークッカー試験(PCT:Pressure Cooker Test)を行った。本実施例ではPCT試験として、温度130℃、湿度85%、H2O(水):D2O(重水)=3:1雰囲気、2.3気圧(0.23MPa)の条件で比較例試料A及び実施例試料Aを100時間保持した。
【0558】
SIMS分析としてSSDP(Substrate Side Depth Profile)−SIMSを用いて、PCT試験前とPCT試験後の比較例試料A及び実施例試料Aに対して、各試料のH原子及びD(重水素)原子の濃度を測定した。なお、D原子とは、元素記号2Hで表される水素の同位体の1つである。
【0559】
図17(A1)に比較例試料AのPCT試験前、図17(A2)に比較例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。図17(A1)及び図17(A2)において、D原子expectedプロファイルは、D原子の存在比が0.015%としてH原子のプロファイルから算出した自然界に存在するD原子の濃度プロファイルである。よって、PCT試験によって試料中に混入したD原子量は、実測のD原子濃度とD原子expected濃度との差分となる。実測のD原子濃度からD原子expected濃度を差し引いたD原子の濃度プロファイルを、PCT試験前を図17(B1)、PCT試験後を図17(B2)に示す。
【0560】
同様に、図18(A1)に実施例試料AのPCT試験前、図18(A2)に実施例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。また、実測のD原子濃度からD原子expected濃度を差し引いたD原子の濃度プロファイルを、PCT試験前を図18(B1)、PCT試験後を図18(B2)に示す。
【0561】
なお、本実施例のSIMS分析結果は、すべて酸化シリコン膜の標準試料により定量した結果を示している。
【0562】
図17に示すように、PCT試験前は重なっていた実測のD原子の濃度プロファイルとD原子expectedプロファイルが、PCT試験後は実測のD原子の濃度プロファイルが高濃度に増大しており、酸化シリコン膜中にD原子が混入したことがわかる。従って、比較例試料の酸化シリコン膜は、外部からの水分(H2O、D2O)に対し、バリア性が低いことが確認できた。
【0563】
一方、図18に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を積層した実施例試料Aは、PCT試験後でも酸化アルミニウム膜表面にややD原子の侵入が見られるだけで、酸化アルミニウム膜深さ30nm付近以降、及び酸化シリコン膜にはD原子の侵入が見られない。従って、酸化アルミニウム膜は外部からの水分(H2O、D2O)に対し、バリア性が高いことが確認できた。
【0564】
次に、TDS分析によって行った評価を示す。試料は、実施例として、ガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚20nm形成された実施例試料Bを作製した。また、比較例として、実施例試料BをTDS分析によって測定後、実施例試料Bから酸化アルミニウム膜を除去し、ガラス基板上に酸化シリコン膜のみが形成された比較例試料Bを作製した。
【0565】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO2)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0566】
実施例試料Bにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al2O3)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0567】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、さらに300℃加熱処理、450℃加熱処理、600℃加熱処理の条件で、それぞれ窒素雰囲気下で1時間処理を行い、試料を作成した。
【0568】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、加熱処理なし、300℃加熱処理、450℃加熱処理、600℃加熱処理と4つの条件で作製された試料にそれぞれTDS分析を行った。比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、図19(A)及び図20(A)に加熱処理なし、図19(B)及び図20(B)に300℃加熱処理、図19(C)及び図20(C)に450℃加熱処理、図19(D)及び図20(D)に600℃加熱処理を行った各試料の測定されたM/z=32(O2)のTDS結果を示す。
【0569】
図19(A)乃至(D)に示すように、比較例試料Bは加熱処理なしの図19(A)では酸化シリコン膜から酸素の放出が見られるが、図19(B)の300℃加熱処理を行った試料では酸素の放出量が大きく減少し、図19(C)の450℃加熱処理を行った試料及び図19(D)の600℃加熱処理を行った試料においては、TDS測定のバックグラウンド以下となってしまった。
【0570】
図19(A)乃至(D)の結果から、酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素の9割以上が300℃の加熱処理によって酸化シリコン膜中から外部へ放出され、450℃、600℃の加熱処理によってはほぼ全ての酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素が酸化シリコン膜外部へ放出されたことがわかる。従って、酸化シリコン膜は酸素に対するバリア性が低いことが確認できた。
【0571】
一方、図20(A)乃至(D)に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を形成した実施例試料Bにおいては、300℃、450℃、600℃の加熱処理を行った試料においても、加熱処理なしの試料と同等の量の酸素の放出が見られた。
【0572】
図20(A)乃至(D)の結果から、酸化アルミニウム膜を酸化シリコン膜上に形成することで、加熱処理を行っても酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素は容易に外部へ放出されず、酸化シリコン膜中に含有した状態がかなりの程度保持されることがわかる。従って酸化アルミニウム膜は酸素に対するバリア性が高いことが確認できた。
【0573】
以上の結果から、酸化アルミニウム膜は水素及び水分に対するバリア性と、酸素に対するバリア性の両方を有しており、水素、水分、及び酸素に対するバリア膜として好適に機能することが確認できた。
【0574】
従って、酸化アルミニウム膜は、酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能することができる。
【0575】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体は薄膜形成工程において、化学量論的組成からのずれや、電子供与体を形成する水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化してしまう。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、非晶質酸化物半導体膜を形成し、非晶質酸化物半導体膜に酸素を導入して酸素を過剰に含む非晶質酸化物半導体膜を形成する。該非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成した後、加熱処理を行い該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、結晶を含む酸化物半導体膜(結晶性酸化物半導体膜ともいう)を形成する。
【0009】
非晶質酸化物半導体膜への酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0010】
結晶性酸化物半導体膜は、結晶を含み、結晶性を有する酸化物半導体膜である。結晶性酸化物半導体膜における結晶状態は、結晶軸の方向が無秩序な状態でも、一定の配向性を有する状態であってもよい。
【0011】
本明細書に開示する発明の一形態においては、酸素が導入され、かつ酸化アルミニウム膜に覆われた非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜(結晶性酸化物半導体膜)を形成することができる。
【0012】
表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜は、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor; CAAC−OSともいう)膜である。
【0013】
CAAC−OSとは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体のことである。
【0014】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0015】
CAAC−OSは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OSは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0016】
CAAC−OSを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OS膜が形成される基板面やCAAC−OS膜の表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0017】
該結晶性酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0018】
酸素の導入工程により、酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜及び結晶性酸化物半導体膜)は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。このような酸化物半導体の組成はInGaZnmOm+3x(x>1)で表すことができる。例えば、m=1であるとき、酸化物半導体の組成はInGaZnO1+3x(x>1)となり、酸素過剰である場合には、1+3xが4を越える値を示す。
【0019】
酸化物半導体膜中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜は、酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜(例えば、CAAC−OS膜)であり、該結晶性酸化物半導体膜は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0020】
酸化物半導体膜上に設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0021】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0022】
また、非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、非晶質酸化物半導体膜を酸化アルミニウム膜によって覆った状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0023】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0024】
よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0025】
また、酸化アルミニウム膜の形成前に非晶質酸化物半導体膜に水素原子または水などの水素原子を含む不純物などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除する加熱処理による脱水化または脱水素化処理を行うことが好ましい。
【0026】
水素を酸化物半導体から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化し、酸素欠損を補填することによりI型(真性)の酸化物半導体、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体とすることができる。すなわち、水素や水等の不純物を極力除去し、酸素欠損を補填したことにより、高純度化されたI型(真性半導体)又はそれに近づけることができる。そうすることにより、酸化物半導体のフェルミ準位(Ef)を真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0027】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜と、酸化アルミニウム膜と、前記絶縁膜及び前記酸化アルミニウム膜に挟まれている非晶質酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜は、酸素を注入され、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている半導体装置の作製方法である。
【0028】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている半導体装置の作製方法である。
【0029】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、前記非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、前記酸化アルミニウム膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている半導体装置の作製方法である。
【0030】
本発明の一形態は、トップゲート構造、又はボトムゲート構造、それらのスタガ型、若しくはプレーナ型など、様々な構造のトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。また、非晶質酸化物半導体膜への酸素の導入工程は、露出された非晶質酸化物半導体膜へ直接酸素を導入してもよく、非晶質酸化物半導体膜上に他の膜を形成し、該膜に酸素を通過させて非晶質酸化物半導体膜へ導入してもよい。該トランジスタの構造によって、半導体装置の作製工程における非晶質酸化物半導体膜への酸素の導入工程は、露出した非晶質酸化物半導体膜に対してであっても、非晶質酸化物半導体膜上に絶縁膜(ゲート絶縁膜、絶縁膜(酸化アルミニウム膜を含む)、若しくはゲート絶縁膜及び絶縁膜(酸化アルミニウム膜を含む)の積層)、又はゲート絶縁膜及びゲート電極層の積層が形成された非晶質酸化物半導体膜に対してであっても行うことができる。
【0031】
上記構成において、加熱処理による結晶化によって得られる結晶を含む酸化物半導体膜は、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む、結晶性酸化物半導体(CAAC−OS)膜であることが好ましい。
【0032】
また、絶縁膜において、非晶質酸化物半導体膜が接して形成される領域は、表面粗さの低減された表面であることが好ましい。具体的には、絶縁膜表面の平均面粗さが1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下であると好ましい。表面粗さの低減された絶縁膜表面に酸化物半導体膜を形成することで、安定及び良好な結晶性を有する酸化物半導体膜を得ることができる。
【0033】
また、上記構成において、ゲート電極層と、酸化アルミニウム膜との間に酸化絶縁膜を形成してもよい。また、酸化アルミニウム膜の形成前に、ゲート電極層の側面を覆うサイドウォール構造の側壁絶縁層を形成してもよい。
【0034】
また、上記構成において、酸素導入工程及び酸化アルミニウム膜の形成工程前の非晶質酸化物半導体膜に水素若しくは水分を放出させる加熱処理を行ってもよい。
【0035】
このように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
酸化物半導体膜に含まれる過剰な酸素が加熱処理で放出されないように酸化アルミニウム膜を結晶性酸化物半導体膜上に設けることにより、結晶性酸化物半導体中及びその上下で接する層との界面で欠陥が生成され、また欠陥が増加することを防ぐことができる。すなわち、結晶性酸化物半導体膜に含ませた過剰な酸素が、酸素空孔欠陥を埋めるように作用するので、安定した電気特性を有する信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0037】
よって、開示する発明の一形態は、安定した電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0038】
また、開示する発明の一形態は、電気特性が良好で信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図8】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図9】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】半導体装置の一形態を説明する図。
【図12】半導体装置の一形態を説明する図。
【図13】半導体装置の一形態を説明する図。
【図14】半導体装置の一形態を説明する図。
【図15】半導体装置の一形態を説明する図。
【図16】電子機器を示す図。
【図17】比較例試料AのSIMS測定結果を示す図。
【図18】実施例試料AのSIMS測定結果を示す図。
【図19】比較例試料BのTDS測定結果を示す図。
【図20】実施例試料BのTDS測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0042】
トランジスタの構造は特に限定されず、例えばトップゲート構造、又はボトムゲート構造のスタガ型及びプレーナ型などを用いることができる。また、トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造もしくは3つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、チャネル領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型でもよい。
【0043】
図1(E)に示すように、トランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、結晶性酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを含む。トランジスタ410上には、絶縁膜407が形成されている。
【0044】
また、絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402は酸化シリコン膜であり、絶縁膜407は酸化アルミニウム膜である。
【0045】
結晶性酸化物半導体膜403は、結晶を含む結晶性酸化物半導体膜である。結晶性酸化物半導体膜403としては、表面に平行なa−b面を有し、該表面に対して概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜であって、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(CAAC)であることが好ましい。結晶性酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタ410の電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0046】
図1(A)乃至(E)にトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0047】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0048】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0049】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に結晶性酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410を直接作製してもよいし、他の作製基板に結晶性酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410を作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0050】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極層401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0051】
また、ゲート電極層401の材料は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0052】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料、また透光性を有する導電性材料の窒化物を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0053】
また、ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として、In−Sn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の金属酸化物を用いてもよい。ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として特に仕事関数の大きな材料であるインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜(IGZON膜とも呼ぶ)を用いることが好ましい。インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜は、アルゴン及び窒素の混合ガス雰囲気下で成膜することにより得られる。
【0054】
例えば、ゲート電極層401として基板400側から銅膜と、タングステン膜と、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜(IGZON膜)との積層構造、タングステン膜と、窒化タングステン膜と、銅膜と、チタン膜との積層構造などを用いることができる。
【0055】
次いで、ゲート電極層401上にプラズマCVD法又はスパッタリング法等により、ゲート絶縁膜402を形成する。ゲート絶縁膜402の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。
【0056】
また、ゲート絶縁膜402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。
【0057】
ゲート絶縁膜402は単層でも積層でもよいが、結晶性酸化物半導体膜403に接する膜としては、酸化物絶縁膜が好ましい。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402として酸化シリコン膜を用いる。
【0058】
ゲート絶縁膜402は、結晶性酸化物半導体膜403と接するため、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論比を超える量の酸素が存在することが好ましい。このような酸素の含有量が過剰な領域(酸素過剰領域)は、ゲート絶縁膜402の一部(界面も含む)に存在していればよい。例えば、ゲート絶縁膜402として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。
【0059】
結晶性酸化物半導体膜403と接する酸化シリコン膜を、酸素を多く含む状態とすることによって、酸化物半導体膜へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0060】
よって、このようなゲート絶縁膜402を用いることで、結晶性酸化物半導体膜403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。結晶性酸化物半導体膜403へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0061】
酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含むゲート絶縁膜402を結晶性酸化物半導体膜403と接して設けることによって、該ゲート絶縁膜402から結晶性酸化物半導体膜403へ酸素を供給することができる。例えば、結晶性酸化物半導体膜403及びゲート絶縁膜402を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことによって結晶性酸化物半導体膜403への酸素の供給を行うことができる。
【0062】
また、ゲート絶縁膜402、ゲート絶縁膜402上に形成される酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層401が形成された基板400、又はゲート絶縁膜402までが形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、絶縁膜407の成膜前に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bまで形成した基板400にも同様に行ってもよい。
【0063】
なお、非晶質酸化物半導体膜491をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、ゲート絶縁膜402の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することが好ましい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0064】
次いで、ゲート絶縁膜402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の非晶質酸化物半導体膜491を形成する(図1(A)参照)。
【0065】
非晶質酸化物半導体膜491の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、非晶質酸化物半導体膜491は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置(Columnar Plasma Sputtering system)を用いて成膜してもよい。
【0066】
非晶質酸化物半導体膜491に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0067】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0068】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0069】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0070】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0071】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0072】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0073】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。
【0074】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a―A)2+(b―B)2+(c―C)2≦r2を満たすことを言い、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0075】
結晶性を有する酸化物半導体である結晶性酸化物半導体膜403は、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0076】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0077】
【数1】
【0078】
なお、上記において、S0は、測定面(座標(x1,y1)(x1,y2)(x2,y1)(x2,y2)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Z0は測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0079】
よって、ゲート絶縁膜402において結晶性酸化物半導体膜403(図1(A)においては非晶質酸化物半導体膜491)が接して形成される領域に、平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0080】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。
【0081】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、ゲート絶縁膜402表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0082】
本実施の形態では、非晶質酸化物半導体膜491をIn−Ga−Zn系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、非晶質酸化物半導体膜491を成膜する際の雰囲気としては、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0083】
なお、非晶質酸化物半導体膜491は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0084】
酸化物半導体膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn膜を成膜する。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比]の金属酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0085】
また、金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0086】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0087】
減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持する。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に非晶質酸化物半導体膜491を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した非晶質酸化物半導体膜491に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0088】
また、ゲート絶縁膜402と非晶質酸化物半導体膜491とを大気に解放せずに連続的に形成することが好ましい。ゲート絶縁膜402と非晶質酸化物半導体膜491とを大気に曝露せずに連続して形成すると、ゲート絶縁膜402表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0089】
また、非晶質酸化物半導体膜491に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0090】
なお、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜491の形成後、非晶質酸化物半導体膜491へ酸素の導入工程前であれば、トランジスタ410の作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。
【0091】
また、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜491が島状に加工される前に行うと、ゲート絶縁膜402に含まれる酸素が加熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0092】
なお、加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0093】
また、加熱処理で非晶質酸化物半導体膜491を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の二窒化酸素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは二窒化酸素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは二窒化酸素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは二窒化酸素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は二窒化酸素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった非晶質酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、非晶質酸化物半導体膜を高純度化及び電気的にI型(真性)化することができる。
【0094】
次に、非晶質酸化物半導体膜491に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜491に酸素の供給を行う。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0095】
本実施の形態におけるトランジスタ410の作製工程において、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜491の形成後、絶縁膜407として酸化アルミニウム膜が形成される前までに行う。なお、脱水化または脱水素化するための加熱処理は、酸素の導入工程の前に行う。また、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜に直接導入してもよいし、ゲート絶縁膜や絶縁膜などの他の膜を通過して非晶質酸化物半導体膜へ導入してもよい。酸素を非晶質酸化物半導体膜に他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、本実施の形態のように酸素を露出された非晶質酸化物半導体膜491へ直接導入する場合は、プラズマ処理なども用いることができる。
【0096】
本実施の形態では、イオン注入法により非晶質酸化物半導体膜491に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜491は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜441となる(図1(B)参照)。
【0097】
例えば、酸素431の導入工程によって導入された非晶質酸化物半導体膜441における酸素濃度を1×1018/cm3以上3×1021/cm3以下とするのが好ましい。なお、酸素過剰領域は、非晶質酸化物半導体膜441の一部(界面も含む)に存在していればよい。よって、酸素431を導入することにより、ゲート絶縁膜402、非晶質酸化物半導体膜441、及び絶縁膜407の積層において、ゲート絶縁膜402と非晶質酸化物半導体膜441との界面、非晶質酸化物半導体膜441中、又は非晶質酸化物半導体膜441と絶縁膜407との界面の少なくとも一に酸素を含有させる。
【0098】
非晶質酸化物半導体膜441は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。このような酸化物半導体の組成はInGaZnmOm+3x(x>1)で表すことができる。例えば、m=1であるとき、酸化物半導体の組成はInGaZnO1+3x(x>1)となり、酸素過剰である場合には、1+3xが4を越える値を示す。
【0099】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜441中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0100】
なお、酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜441中の非晶質状態を、より均一化することができる。
【0101】
なお、酸化物半導体において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体膜に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0102】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体膜中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜に意図的に酸素が添加されたか否かを判別してもよい。
【0103】
本実施の形態のように、酸素431を直接非晶質酸化物半導体膜441へ導入する場合は、非晶質酸化物半導体膜441と接する絶縁膜(ゲート絶縁膜402、絶縁膜407など)を、必ずしも酸素を多く含む膜とする必要はないが、非晶質酸化物半導体膜441と接する絶縁膜(ゲート絶縁膜402、絶縁膜407など)を、酸素を多く含む膜とし、さらに酸素431を直接非晶質酸化物半導体膜441に導入し、複数の酸素供給方法を行ってもよい。
【0104】
次いで、非晶質酸化物半導体膜441を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体膜443に加工する(図1(C)参照)。また、島状の非晶質酸化物半導体膜443を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0105】
なお、開示する発明の一形態において、酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜及び結晶性酸化物半導体膜)は、本実施の形態で示すように島状に加工してもよいし、形状を加工せず、膜状のまままでもよい。
【0106】
また、ゲート絶縁膜402にコンタクトホールを形成する場合、その工程は非晶質酸化物半導体膜443の加工時に同時に行うことができる。
【0107】
なお、ここでの非晶質酸化物半導体膜441のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、非晶質酸化物半導体膜441のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0108】
次いで、ゲート絶縁膜402、及び非晶質酸化物半導体膜443上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。該導電膜は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3―SnO2)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0109】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する。
【0110】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0111】
なお、導電膜のエッチングの際に、非晶質酸化物半導体膜443がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、非晶質酸化物半導体膜443を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に非晶質酸化物半導体膜443は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体膜となることもある。
【0112】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用い、非晶質酸化物半導体膜443にはIn−Ga−Zn系酸化物半導体を用いたので、エッチング液としてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0113】
次いで、非晶質酸化物半導体膜443の一部に接する絶縁膜407を形成する(図1(D)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0114】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。絶縁膜407は、スパッタリング法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁膜407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜への侵入、又は水素による酸化物半導体膜中の酸素の引き抜きが生じ酸化物半導体膜のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁膜407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0115】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。この場合、酸素の含有量は、酸化アルミニウムの化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化アルミニウムの格子間に酸素が存在する場合もある。組成がAlOx(x>0)で表現される場合、xは3/2を超える酸素過剰領域を有する酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。このような酸素過剰領域は、酸化アルミニウム膜の一部(界面も含む)に存在していればよい。
【0116】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。酸化アルミニウム膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0117】
酸化物半導体膜の成膜時と同様に、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁膜407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0118】
絶縁膜407を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0119】
絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(A)にトランジスタ410において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とするトランジスタ410aの例を示す。
【0120】
図10(A)に示すように、結晶性酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。絶縁膜407aは酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化物絶縁膜を用いると、結晶性酸化物半導体膜403への酸素の供給源となるために好ましい。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0121】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403は、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む。
【0122】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0123】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0124】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0125】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜(本実施の形態では表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む半導体(CAAC−OS)膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0126】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ410に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタ410のしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0127】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0128】
例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して酸素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0129】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0130】
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0131】
なお、結晶化のための加熱処理として、レーザ光やランプ光などによる光照射による加熱処理を用いてもよい。例えば、非晶質酸化物半導体膜が吸収する波長のレーザ光を照射し、非晶質酸化物半導体膜の結晶化を行うことができる。
【0132】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0133】
高純度化され、酸素欠損が補填された結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水などの不純物が十分に除去されており、結晶性酸化物半導体膜403中の水素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは5×1018/cm3以下である。なお、結晶性酸化物半導体膜403中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。
【0134】
このような結晶性酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満である。
【0135】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(図1(E)参照)。トランジスタ410は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0136】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0137】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0138】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0139】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図2を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0140】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、トランジスタ410上に設けられた絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0141】
図2(A)乃至(E)に本実施の形態におけるトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0142】
絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、ゲート電極層401を形成する。
【0143】
次いで、ゲート電極層401上にプラズマCVD法又はスパッタリング法等により、ゲート絶縁膜402を形成する。
【0144】
次いで、ゲート絶縁膜402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の非晶質酸化物半導体膜491を形成する(図2(A)参照)。
【0145】
また、非晶質酸化物半導体膜491に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0146】
次いで、非晶質酸化物半導体膜491をフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体膜492に加工する(図2(B)参照)。
【0147】
次いで、ゲート絶縁膜402、及び非晶質酸化物半導体膜492上に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する。
【0148】
次いで、非晶質酸化物半導体膜492の一部に接する絶縁膜407を形成する(図2(C)参照)。絶縁膜407も単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0149】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0150】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0151】
本実施の形態では、絶縁膜407の形成後に、イオン注入法により絶縁膜407を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図2(D)参照)。
【0152】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0153】
なお、酸素の導入条件によっては、絶縁膜を通過して、非晶質酸化物半導体膜へ酸素を導入する際、酸素を絶縁膜の一部(及び絶縁膜と非晶質酸化物半導体膜との界面)へも導入することができる。例えば、絶縁膜を酸化物絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)と酸化アルミニウム膜との積層構造とする場合、非晶質酸化物半導体膜に酸素を導入する際に非晶質酸化物半導体膜と接する酸化物絶縁膜、非晶質酸化物半導体膜及び酸化物絶縁膜との界面にも酸素を導入し、非晶質酸化物半導体膜及び酸化物絶縁膜との積層において、酸素過剰な領域を形成することができる。
【0154】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0155】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0156】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0157】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0158】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0159】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0160】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0161】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(図2(E)参照)。トランジスタ410は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0162】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0163】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0164】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を図3を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0165】
図3(A)乃至(E)に示すトランジスタ430は、ボトムゲート構造のトランジスタの例である。
【0166】
トランジスタ430は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及び結晶性酸化物半導体膜403を含む。また、トランジスタ430を覆い、絶縁膜407が形成されている。
【0167】
図3(A)乃至(E)にトランジスタ430の作製方法の一例を示す。
【0168】
まず、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成する(図3(A)参照)。
【0169】
ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402は、酸化シリコン膜を用いる。
【0170】
結晶性酸化物半導体膜403に接する酸化シリコン膜は該酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0171】
結晶性酸化物半導体膜403と接する酸化シリコン膜を、酸素を多く含む状態とすることによって、酸化物半導体膜へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0172】
次にゲート絶縁膜402上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0173】
次いで、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上に、非晶質酸化物半導体膜を形成し、島状に加工して非晶質酸化物半導体膜492を形成する(図3(B)参照)。
【0174】
非晶質酸化物半導体膜492として、本実施の形態では、In−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によりIn−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。
【0175】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜492が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0176】
脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜492に島状に加工される前に行ってもよい。
【0177】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0178】
本実施の形態では、イオン注入法により、露出した非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図3(C)参照)。
【0179】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0180】
次いで、非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407を形成する(図3(D)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0181】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。
【0182】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0183】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0184】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0185】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0186】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0187】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0188】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0189】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0190】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0191】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0192】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ430に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタ430のしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0193】
以上の工程でトランジスタ430が形成される(図3(E)参照)。トランジスタ430は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ430は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0194】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ430は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0195】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0196】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0197】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図4を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0198】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、トランジスタ430上に設けられた絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0199】
図4(A)乃至(E)に示すトランジスタ430は、ボトムゲート構造のトランジスタの例である。図4(A)乃至(E)にトランジスタ430の作製方法の一例を示す。
【0200】
まず、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成する(図4(A)参照)。
【0201】
ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402は、酸化シリコン膜を用いる。
【0202】
結晶性酸化物半導体膜403に接する酸化シリコン膜は該酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0203】
結晶性酸化物半導体膜403と接する酸化シリコン膜を、酸素を多く含む状態とすることによって、酸化物半導体膜へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0204】
次にゲート絶縁膜402上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0205】
次いで、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上に、非晶質酸化物半導体膜を形成し、島状に加工して非晶質酸化物半導体膜492を形成する(図4(B)参照)。
【0206】
非晶質酸化物半導体膜492として、本実施の形態では、In−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によりIn−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。
【0207】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜492が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0208】
脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、非晶質酸化物半導体膜492に島状に加工される前に行ってもよい。
【0209】
次いで、非晶質酸化物半導体膜492上に絶縁膜407を形成する(図4(C)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0210】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。
【0211】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。
【0212】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0213】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0214】
本実施の形態では、絶縁膜407の形成後に、イオン注入法により絶縁膜407を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図4(D)参照)。
【0215】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0216】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0217】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0218】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0219】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0220】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0221】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0222】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0223】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0224】
以上の工程でトランジスタ430が形成される(図4(E)参照)。トランジスタ430は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ430は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0225】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0226】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0227】
(実施の形態5)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図5を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0228】
図5(A)乃至(F)に示すトランジスタ440は、トップゲート構造のトランジスタの例である。
【0229】
図5(F)に示すように、トランジスタ440は、絶縁膜436が設けられた絶縁表面を有する基板400上に、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、結晶性酸化物半導体膜403、ゲート絶縁膜402、ゲート電極層401を含む。トランジスタ440上には、絶縁膜407が形成されている。
【0230】
絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。本実施の形態では、絶縁膜407は酸化アルミニウム膜を用いる。
【0231】
また、結晶性酸化物半導体膜403は、結晶性を有する酸化物半導体膜であり、本実施の形態では、表面に平行なa−b面を有し、該表面に対して概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜であって、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(CAAC−OS)である。結晶性酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0232】
図5(A)乃至(F)にトランジスタ440の作製方法の一例を示す。
【0233】
まず、絶縁表面を有する基板400上に絶縁膜436を形成する。
【0234】
絶縁膜436としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。
【0235】
絶縁膜436は、単層でも積層でもよいが、結晶性酸化物半導体膜403に接する膜には酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。本実施の形態では絶縁膜436としてスパッタリング法を用いて形成する酸化シリコン膜を用いる。
【0236】
次に、絶縁膜436上に非晶質酸化物半導体膜491を形成する(図5(A)参照)。
【0237】
絶縁膜436は、非晶質酸化物半導体膜491と接するため、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましい。例えば、絶縁膜436として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。このような絶縁膜436を用いることで、非晶質酸化物半導体膜491に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。非晶質酸化物半導体膜491へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0238】
例えば、酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含む絶縁膜436を非晶質酸化物半導体膜491と接して設けることによって、該絶縁膜436から非晶質酸化物半導体膜491へ酸素を供給することができる。非晶質酸化物半導体膜491及び絶縁膜436を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことによって結晶性酸化物半導体膜403への酸素の供給を行ってもよい。
【0239】
また、絶縁膜436において、結晶性酸化物半導体膜403(図5(A)の工程では非晶質酸化物半導体膜491)が接して形成される領域は、表面粗さの低減された表面であることが好ましい。具体的には、表面の平均面粗さは1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下であると好ましい。表面粗さの低減された表面に結晶性酸化物半導体膜403(図5(A)の工程では非晶質酸化物半導体膜491)を形成することで、安定及び良好な結晶性を有する結晶性酸化物半導体膜403を得ることができる。
【0240】
よって、絶縁膜436において結晶性酸化物半導体膜403(図5(A)の工程では非晶質酸化物半導体膜491)が接して形成される領域に、平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0241】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、絶縁膜436の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0242】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、絶縁膜436表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0243】
非晶質酸化物半導体膜491の形成工程において、非晶質酸化物半導体膜491に水素、又は水がなるべく含まれないようにするために、非晶質酸化物半導体膜491の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜436が形成された基板を予備加熱し、基板及び絶縁膜436に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。
【0244】
非晶質酸化物半導体膜491の膜厚は、1nm以上200nm以下(好ましくは5nm以上30nm以下)とし、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0245】
また、非晶質酸化物半導体膜491に、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体膜が結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上400℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0246】
加熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱工程を行う。加熱処理で非晶質酸化物半導体膜491を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の二窒化酸素ガス、又は超乾燥エアを導入してもよい。酸素ガス又は二窒化酸素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった非晶質酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することができる。
【0247】
脱水化又は脱水素化のための加熱工程を、非晶質酸化物半導体膜491が非晶質酸化物半導体膜492へ島状に加工される前に行うと、絶縁膜436に含まれる酸素が加熱工程によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0248】
なお、非晶質酸化物半導体膜491は、島状に加工してもよいし、形状を加工せず、膜状のままでもよい。また、非晶質酸化物半導体膜491を素子ごとに分離する絶縁膜からなる素子分離領域を設けてもよい。
【0249】
本実施の形態では、非晶質酸化物半導体膜491をフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体膜492に加工する。
【0250】
なお、非晶質酸化物半導体膜491のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、非晶質酸化物半導体膜491のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0251】
次いで、非晶質酸化物半導体膜492を覆うゲート絶縁膜442を形成する(図5(B)参照)。
【0252】
なお、非晶質酸化物半導体膜492上に形成するゲート絶縁膜442の被覆性を向上させるために、非晶質酸化物半導体膜492表面にも上記平坦化処理を行ってもよい。特にゲート絶縁膜442として膜厚の薄い絶縁膜を用いる場合、非晶質酸化物半導体膜492表面の平坦性が良好であることが好ましい。
【0253】
ゲート絶縁膜442の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。また、ゲート絶縁膜442は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0254】
ゲート絶縁膜442の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。ゲート絶縁膜442は、非晶質酸化物半導体膜492と接する部分において酸素を含むことが好ましい。特に、ゲート絶縁膜442は、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば、ゲート絶縁膜442として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。本実施の形態では、ゲート絶縁膜442として、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁膜442として用いることで、非晶質酸化物半導体膜492に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。さらに、ゲート絶縁膜442は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁膜442の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0255】
また、ゲート絶縁膜442の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁膜442は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0256】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0257】
本実施の形態におけるトランジスタ440の作製工程において、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜491の形成後、絶縁膜407として酸化アルミニウム膜が形成される前までに行う。なお、脱水化または脱水素化するための加熱処理は、酸素の導入工程の前に行う。また、酸素の導入工程は、非晶質酸化物半導体膜に直接導入してもよいし、ゲート絶縁膜や絶縁膜などの他の膜を通過して非晶質酸化物半導体膜へ導入してもよい。酸素を非晶質酸化物半導体膜に他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、酸素を露出された非晶質酸化物半導体膜(例えば、非晶質酸化物半導体膜491形成後、非晶質酸化物半導体膜492形成後)へ直接導入する場合は、プラズマ処理なども用いることができる。
【0258】
本実施の形態では、イオン注入法によりゲート絶縁膜442を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図5(C)参照)。
【0259】
なお、酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜443中の非晶質状態を、より均一化することができる。
【0260】
例えば、酸素431の導入工程によって導入された非晶質酸化物半導体膜443における酸素濃度を1×1018/cm3以上3×1021/cm3以下とするのが好ましい。なお、酸素過剰領域は、非晶質酸化物半導体膜443の一部(界面も含む)に存在していればよい。よって、酸素431を導入することにより、絶縁膜436と非晶質酸化物半導体膜443との界面、非晶質酸化物半導体膜443中、又は非晶質酸化物半導体膜443とゲート絶縁膜442との界面の少なくとも一に酸素を含有させる。
【0261】
非晶質酸化物半導体膜443は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。このような酸化物半導体の組成はInGaZnmOm+3x(x>1)で表すことができる。例えば、m=1であるとき、酸化物半導体の組成はInGaZnO1+3x(x>1)となり、酸素過剰である場合には、1+3xが4を越える値を示す。
【0262】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0263】
本実施の形態のように、酸素を直接非晶質酸化物半導体膜へ導入する場合は、非晶質酸化物半導体膜と接する絶縁膜を、必ずしも酸素を多く含む膜とする必要はないが、非晶質酸化物半導体膜と接する絶縁膜を、酸素を多く含む膜とし、さらに酸素を直接非晶質酸化物半導体膜に導入し、複数の酸素供給方法を行ってもよい。
【0264】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜442上に形成する。ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0265】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0266】
また、ゲート絶縁膜442と接するゲート電極層401の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5電子ボルト、好ましくは5.5電子ボルト以上の仕事関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0267】
ゲート電極層401の側面にサイドウォール構造の側壁絶縁層412a、412b、ゲート絶縁膜402を形成する。側壁絶縁層412a、412bは、ゲート電極層401を覆う絶縁膜を形成した後、これをRIE(Reactive ion etching:反応性イオンエッチング)法による異方性のエッチングによって絶縁膜を加工し、ゲート電極層401の側壁に自己整合的にサイドウォール構造の側壁絶縁層412a、412bを形成すればよい。ここで、絶縁膜について特に限定はないが、例えば、TEOS(Tetraethyl−Ortho−Silicate)若しくはシラン等と、酸素若しくは亜酸化窒素等とを反応させて形成した段差被覆性のよい酸化シリコンを用いることができる。絶縁膜は熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD、スパッタリング等の方法によって形成することができる。また、低温酸化(LTO:Low Temperature Oxidation)法により形成する酸化シリコンを用いてもよい。
【0268】
ゲート絶縁膜402はゲート電極層401、及び側壁絶縁層412a、412bをマスクとしてゲート絶縁膜442をエッチングして形成することができる。
【0269】
また、本実施の形態では、絶縁膜をエッチングする際、ゲート電極層401上の絶縁膜を除去し、ゲート電極層401を露出させるが、絶縁膜をゲート電極層401上に残すような形状に側壁絶縁層412a、412bを形成してもよい。また、後工程でゲート電極層401上に保護膜を形成してもよい。このようにゲート電極層401を保護することによって、エッチング加工する際、ゲート電極層の膜減りを防ぐことができる。なお、エッチング方法は、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でもよく、種々のエッチング方法を用いることができる。
【0270】
次いで、側壁絶縁層412a、412bの一部、及び非晶質酸化物半導体膜443上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。該導電膜は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3―SnO2)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0271】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図5(D)参照)。
【0272】
次いで、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412b、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に、絶縁膜407を形成する(図5(E)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0273】
絶縁膜407に含まれる酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下とする。絶縁膜407は、スパッタリング法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁膜407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜への侵入、又は水素による酸化物半導体膜中の酸素の引き抜きが生じ酸化物半導体膜が低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁膜407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0274】
酸化アルミニウム膜も、該酸化アルミニウムが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることが好ましい。この場合、酸素の含有量は、酸化アルミニウムの化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化アルミニウムの格子間に酸素が存在する場合もある。組成がAlOx(x>0)で表現される場合、xは3/2を超える酸素過剰領域を有する酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。このような酸素過剰領域は、酸化アルミニウム膜の一部(界面も含む)に存在していればよい。
【0275】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。酸化アルミニウム膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0276】
酸化物半導体膜の成膜時と同様に、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁膜407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0277】
絶縁膜407を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0278】
絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(B)にトランジスタ440において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とする例としてトランジスタ440aを示す。
【0279】
図10(B)に示すように、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412b、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンとして結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0280】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0281】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0282】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0283】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0284】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0285】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0286】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ440に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0287】
非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上650℃以下、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0288】
例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して酸素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0289】
高純度化され、酸素欠損が補填された結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水などの不純物が十分に除去されており、結晶性酸化物半導体膜403中の水素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは5×1018/cm3以下である。
【0290】
このような結晶性酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満である。
【0291】
以上の工程でトランジスタ440が形成される(図5(F)参照)。トランジスタ440は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ440は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0292】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ440は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0293】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0294】
(実施の形態6)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図6を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0295】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、ゲート電極層を形成後にゲート絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0296】
図6(A)乃至(E)に本実施の形態におけるトランジスタ440の作製方法の一例を示す。
【0297】
まず、基板400上に絶縁膜436を形成する。そして絶縁膜436上に非晶質酸化物半導体膜492を形成する。非晶質酸化物半導体膜492を覆うようにゲート絶縁膜442を形成する。
【0298】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜442上に形成する(図6(A)参照)。
【0299】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0300】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0301】
本実施の形態では、ゲート電極層401の形成後に、イオン注入法によりゲート絶縁膜442を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図6(B)参照)。
【0302】
酸素導入の際、ゲート電極層401がマスクとなり、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜492の領域には酸素431が直接導入されない場合があるが、ゲート電極層401の幅は狭い(例えばサブミクロンレベル)ため、非晶質酸化物半導体膜443の結晶化のための加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443中に導入された酸素を、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜443の領域にも拡散させることができる。
【0303】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0304】
ゲート電極層401の側面にサイドウォール構造の側壁絶縁層412a、412b、ゲート絶縁膜402を形成する。
【0305】
ゲート絶縁膜402はゲート電極層401、及び側壁絶縁層412a、412bをマスクとしてゲート絶縁膜442をエッチングして形成することができる。
【0306】
次いで、側壁絶縁層412a、412bの一部、及び非晶質酸化物半導体膜443上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。
【0307】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図6(C)参照)。
【0308】
次いで、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412b、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に、絶縁膜407を形成する(図6(D)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0309】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0310】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。さらにこの加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443全体に酸素が拡散し、膜全体にわたって酸素が供給される。
【0311】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0312】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0313】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0314】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0315】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0316】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0317】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ440に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0318】
以上の工程でトランジスタ440が形成される(図6(E)参照)。トランジスタ440は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ440は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0319】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ440は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0320】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0321】
(実施の形態7)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図7を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0322】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、非晶質酸化物半導体膜への酸素導入工程を、トランジスタ上に設けられた絶縁膜を通過して行う例を示す。
【0323】
図7(A)乃至(E)に本実施の形態におけるトランジスタ420の作製方法の一例を示す。
【0324】
まず、基板400上に絶縁膜436を形成する。そして絶縁膜436上に非晶質酸化物半導体膜492を形成する。非晶質酸化物半導体膜492を覆うようにゲート絶縁膜442を形成する。
【0325】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜442上に形成する(図7(A)参照)。
【0326】
なお、本実施の形態では、サイドウォール構造の側壁絶縁層を形成せず、ゲート絶縁膜も島状に加工せず、連続膜として設けられるゲート絶縁膜442を用いる例を示す。
【0327】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0328】
次いで、ゲート絶縁膜442及びゲート電極層401上に、絶縁膜407を形成する(図7(B)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0329】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0330】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0331】
本実施の形態では、絶縁膜407の形成後に、イオン注入法によりゲート絶縁膜442及び絶縁膜407を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図7(C)参照)。
【0332】
酸素導入の際、ゲート電極層401がマスクとなり、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜492の領域には酸素431が直接導入されない場合があるが、ゲート電極層401の幅は狭い(例えば0.35μm)ため、非晶質酸化物半導体膜443の結晶化のための加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443中に導入された酸素を、ゲート電極層401が重畳する非晶質酸化物半導体膜443の領域にも拡散させることができる。
【0333】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0334】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する(図7(D)参照)。さらにこの加熱処理によって、非晶質酸化物半導体膜443全体に酸素が拡散し、膜全体にわたって酸素が供給される。
【0335】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0336】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0337】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0338】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0339】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0340】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0341】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ420に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0342】
また、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0343】
本実施の形態では、絶縁膜407上に平坦化絶縁膜415を形成する。また、ゲート絶縁膜442、絶縁膜407、及び平坦化絶縁膜415に結晶性酸化物半導体膜403に達する開口を形成し、開口に結晶性酸化物半導体膜403と電気的に接続するソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0344】
以上の工程でトランジスタ420が形成される(図7(E)参照)。トランジスタ420は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ420は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0345】
また、絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(C)にトランジスタ420において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とする例としてトランジスタ420aを示す。
【0346】
図10(C)に示すように、ゲート絶縁膜402及びゲート電極層401上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0347】
絶縁膜407が絶縁膜407a、407bの積層構造の場合、非晶質酸化物半導体膜492への酸素導入工程は、積層する絶縁膜407a、407bを通過して行うことができる。
【0348】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ420は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0349】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0350】
(実施の形態8)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図8を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0351】
本実施の形態では、上記実施の形態5とソース電極層及びドレイン電極層と結晶性酸化物半導体膜との接続構造が異なるトランジスタの作製方法の例を示す。
【0352】
図8(A)乃至(F)に本実施の形態におけるトランジスタ450の作製方法の一例を示す。
【0353】
まず、基板400上に絶縁膜436を形成する。
【0354】
次いで、絶縁膜436上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。
【0355】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図8(A)参照)。
【0356】
そして絶縁膜436、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上に非晶質酸化物半導体膜492を形成する(図8(B)参照)。非晶質酸化物半導体膜492を覆うようにゲート絶縁膜402を形成する(図8(C)参照)。
【0357】
また、非晶質酸化物半導体膜492に過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。
【0358】
次に、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素の供給を行う。
【0359】
本実施の形態では、イオン注入法によりゲート絶縁膜402を通過して、非晶質酸化物半導体膜492に酸素431を注入する。酸素431の注入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる(図8(D)参照)。
【0360】
供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0361】
そして、ゲート電極層401をゲート絶縁膜402上に形成する。
【0362】
本実施の形態では、ゲート電極層401の側面にサイドウォール構造の側壁絶縁層を設けない例を示すが、実施の形態5で示すようにサイドウォール構造の側壁絶縁層を設け、ゲート絶縁膜402を島状に加工してもよい。
【0363】
次いで、ゲート絶縁膜402、及びゲート電極層401上に、絶縁膜407を形成する(図8(E)参照)。絶縁膜407は単層でも積層でもよいが、酸化アルミニウム膜を含む構造とする。
【0364】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0365】
次に非晶質酸化物半導体膜443に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜443の少なくとも一部を結晶化させて、結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0366】
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜403として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜403を形成する。
【0367】
非晶質酸化物半導体膜443上に絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0368】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜(非晶質酸化物半導体膜443及び結晶性酸化物半導体膜403)からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0369】
非晶質酸化物半導体膜443を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜407として設けられた酸化アルミニウム膜によって非晶質酸化物半導体膜443が覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜443から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる結晶性酸化物半導体膜403は、非晶質酸化物半導体膜443の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0370】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜403は、水素、水分などの不純物の混入、及び過剰に導入された酸素の放出が酸化アルミニウム膜によって防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。
【0371】
結晶性酸化物半導体膜403中において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在する。酸素を過剰に含まない酸化物半導体は、酸素欠損が生じてもその欠損部分を他の酸素で補うことができない。しかしながら、開示する発明の一形態に係る結晶性酸化物半導体膜403は、酸素を過剰に含む膜(本実施の形態では酸素を過剰に含むCAAC−OS膜)であり、結晶性酸化物半導体膜403は、酸素欠損が生じたとしても、膜中に過剰の酸素(好ましくは化学量論的組成比より過剰の酸素)を含有することで、この過剰酸素が欠損部分に作用して、直ちに酸素を欠損部分に補填することができる。
【0372】
よって、該結晶性酸化物半導体膜403をトランジスタ450に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0373】
また、絶縁膜407を積層する場合、酸化アルミニウム膜の他に、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。図10(D)にトランジスタ450において、絶縁膜407を絶縁膜407a、絶縁膜407bの積層構造とする例としてトランジスタ450aを示す。
【0374】
図10(D)に示すように、ゲート絶縁膜402及びゲート電極層401上に絶縁膜407aを形成し、絶縁膜407a上に絶縁膜407bを形成する。例えば、本実施の形態では、絶縁膜407aとして、酸化シリコンが結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている酸化シリコン膜を用い、絶縁膜407bとして酸化アルミニウム膜を用いる。
【0375】
以上の工程でトランジスタ450が形成される(図8(F)参照)。トランジスタ450は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ450は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0376】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ450は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0377】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0378】
(実施の形態9)
本実施の形態では、半導体装置の作製方法の他の一形態を説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0379】
なお、本実施の形態では、実施の形態8で示したトランジスタ450の作製工程において、適用可能な酸素導入工程の例を、トランジスタ450cを用いて示す。
【0380】
図9(A)は、図8(B)の工程後、非晶質酸化物半導体膜492に直接酸素431を導入する例である。酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる。供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。なお、図9(A)のように、露出された非晶質酸化物半導体膜492に直接酸素を導入する場合、プラズマ処理を用いることができる。
【0381】
本発明の一形態によって作製することのできるトランジスタにおいて、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの位置関係は、ゲート絶縁膜402を間に介して、重畳せずに形成されても、一部重畳して形成されてもよい。
【0382】
例えば、実施の形態8において図8に示したトランジスタ450は、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bと、ゲート電極層401とが、ゲート絶縁膜402、及び結晶性酸化物半導体膜403を間に介して一部重畳する構造の例である。
【0383】
本実施の形態において図9(B)(C)に示すトランジスタ450cは、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bと、ゲート電極層401とが、ゲート絶縁膜402、及び結晶性酸化物半導体膜403を間に介して重畳しない構造の例である。
【0384】
図9(B)は、ゲート絶縁膜402上にゲート電極層401を形成後、非晶質酸化物半導体膜492にゲート絶縁膜402を通過して酸素431を導入する例である。酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる。供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0385】
図9(C)は、ゲート絶縁膜402及びゲート電極層401上に絶縁膜407を形成後、非晶質酸化物半導体膜492にゲート絶縁膜402及び絶縁膜407を通過して酸素431を導入する例である。酸素431の導入工程により、非晶質酸化物半導体膜492は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている非晶質酸化物半導体膜443となる。供給された酸素431によって、非晶質酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0386】
図9(B)(C)のように、非晶質酸化物半導体膜492への酸素431の導入工程をゲート絶縁膜402及びゲート電極層401の形成後に行う場合、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとが重畳しない構造であると、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの間に位置する非晶質酸化物半導体膜492への酸素431の導入を比較的容易に行うことができる。
【0387】
このように、結晶性酸化物半導体膜への酸素の導入工程は、脱水化又は脱水素化処理を行った後であればよく、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0388】
以上の工程で作製されるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0389】
安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0390】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0391】
(実施の形態10)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図11を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0392】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、結晶性酸化物半導体膜にソース領域及びドレイン領域として機能する不純物領域を形成する例である。ソース領域及びドレイン領域として機能する不純物領域は、結晶性酸化物半導体膜への導電率を変化させる不純物(ドーパントともいう)を導入して形成することができる。
【0393】
ソース領域及びドレイン領域として機能する不純物領域におけるドーパントの濃度は、5×1018/cm3以上1×1022/cm3以下であることが好ましい。
【0394】
導入するドーパントは、15族元素およびホウ素とし、具体的にはリン、砒素、およびアンチモンならびにホウ素のいずれかから選択される一以上とする。また、結晶性酸化物半導体膜にドーパントを導入する方法として、イオンドーピング法またはイオン注入法を用いることができる。
【0395】
イオンドーピング法またはイオン注入法によりドーパントを導入する際に、基板を加熱しながら行ってもよい。
【0396】
なお、結晶性酸化物半導体膜にドーパントを導入する処理は、複数回行ってもよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0397】
ドーパントを導入した不純物領域は、ドーパントの導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、ドーパントの導入後に加熱処理を行うことによって、結晶性を回復することができる。
【0398】
図11(A)に実施の形態5又は実施の形態6で示したトランジスタ440において、結晶性酸化物半導体膜403にソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域404a、404bを設けたトランジスタ440bの例を示す。不純物領域404a、404bは、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、412bをマスクとしてソース電極層405a、ドレイン電極層405bの形成前に結晶性酸化物半導体膜403にドーパントを導入することで形成することができる。
【0399】
図11(B)に実施の形態7で示したトランジスタ420において、結晶性酸化物半導体膜403にソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域404a、404bを設けたトランジスタ420bの例を示す。不純物領域404a、404bは、ゲート電極層401をマスクとして結晶性酸化物半導体膜403にドーパントを導入することで形成することができる。
【0400】
図11(C)に実施の形態8で示したトランジスタ450において、結晶性酸化物半導体膜403にソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域404a、404bを設けたトランジスタ450bの例を示す。不純物領域404a、404bは、ゲート電極層401をマスクとして結晶性酸化物半導体膜403にドーパントを導入することで形成することができる。
【0401】
ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域を設けることによって、不純物領域の間に形成されるチャネル形成領域に加わる電界を緩和させることができる。また、不純物領域において結晶性酸化物半導体膜と電極層とを電気的に接続させることによって、結晶性酸化物半導体膜と電極層との接触抵抗を低減することができる。従って、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0402】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0403】
(実施の形態11)
実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0404】
図13(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図13(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0405】
図13(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図13(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図13(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0406】
また図13(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0407】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図13(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図13(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図13(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0408】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0409】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0410】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0411】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0412】
半導体装置の一形態について、図13及び図14を用いて説明する。図14は、図13(A)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0413】
図13及び図14で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0414】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0415】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図14では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図14(A)では、トランジスタ4010、4011上には絶縁膜4020、絶縁膜4032が設けられ、図14(B)ではさらに、絶縁膜4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0416】
トランジスタ4010、トランジスタ4011としては、実施の形態1乃至10のいずれかで示したトランジスタを適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ410と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0417】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0418】
よって、図13及び図14で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0419】
また、本実施の形態では、絶縁膜上において駆動回路用のトランジスタ4011の結晶性酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に導電層が設けられている例である。導電層を結晶性酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、バイアス−熱ストレス試験(BT試験)前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0420】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0421】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0422】
図14(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図14(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0423】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0424】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0425】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液晶組成物を用いることはより効果的である。
【0426】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0427】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。高純度の結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0428】
本実施の形態で用いる高純度化された結晶性酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0429】
また、本実施の形態で用いる高純度化された結晶性酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0430】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0431】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0432】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0433】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0434】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0435】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0436】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0437】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0438】
図14(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0439】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0440】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0441】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0442】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0443】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0444】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0445】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0446】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0447】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0448】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0449】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0450】
なお、図13及び図14において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0451】
本実施の形態では、絶縁膜4020として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜4020はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0452】
酸化物半導体膜上に絶縁膜4020として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0453】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0454】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、結晶性酸化物半導体膜を酸素の導入工程により酸素過剰とした非晶質酸化物半導体膜を結晶化した結晶性酸化物半導体膜を有する。非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、酸化アルミニウム膜に覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0455】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタ4010及びトランジスタ4011に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0456】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜を形成してもよい。
【0457】
絶縁膜4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0458】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0459】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0460】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0461】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0462】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0463】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0464】
以上のように実施の形態1乃至10のいずれかで示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0465】
(実施の形態12)
実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0466】
図15(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図15(A)はフォトセンサの等価回路であり、図15(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0467】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0468】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図15(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1乃至10に示したトランジスタが適用でき、結晶性酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ410と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0469】
図15(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0470】
トランジスタ640上には絶縁膜631、絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、層間絶縁膜633上に形成した電極層641と、層間絶縁膜634上に設けられた電極層642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0471】
電極層641は、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641を介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0472】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0473】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0474】
第2半導体膜606bは、I型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0475】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0476】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0477】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0478】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH4、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などの珪素を含む化合物を水素で希釈して形成することができる。また、珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH4、C2H6等の炭化物気体、GeH4、GeF4等のゲルマニウム化気体、F2等を混入させてもよい。
【0479】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0480】
絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いて形成することができる。
【0481】
本実施の形態では、絶縁膜631として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜631はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0482】
酸化物半導体膜上に絶縁膜631として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0483】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0484】
本実施の形態において、トランジスタ640は、酸素を過剰に導入された非晶質酸化物半導体膜を結晶化した結晶性酸化物半導体膜を有する。非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、酸化アルミニウム膜に覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0485】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入せず、酸素放出が防止されるため、高純度であり、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタ640に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0486】
絶縁膜632としては、無機絶縁材料としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0487】
層間絶縁膜633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜が好ましい。層間絶縁膜633、634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0488】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0489】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0490】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0491】
(実施の形態13)
実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタは、複数のトランジスタを積層する集積回路を有する半導体装置に好適に用いることができる。本実施の形態では、半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)の例を示す。
【0492】
実施の形態では、単結晶半導体基板に作製された第1のトランジスタであるトランジスタ140と絶縁膜を介してトランジスタ140の上方に半導体膜を用いて作製された第2のトランジスタであるトランジスタ162を含む半導体装置を作製する。実施の形態1乃至10のいずれかで一例を示したトランジスタは、トランジスタ162に好適に用いることができる。本実施の形態では、トランジスタ162として実施の形態5で示したトランジスタ440と同様な構造を有するトランジスタを用いる例を示す。
【0493】
積層するトランジスタ140、トランジスタ162の半導体材料、及び構造は、同一でもよいし異なっていてもよい。本実施の形態では、記憶媒体(メモリ素子)の回路に好適な材料及び構造のトランジスタをそれぞれ用いる例である。
【0494】
図12は、半導体装置の構成の一例である。図12(A)には、半導体装置の断面を、図12(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図12(A)は、図12(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、図12(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図12(A)および図12(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ140を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する。本実施の形態では、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0495】
図12における半導体装置の作製方法を図12(A)乃至(C)を用いて説明する。
【0496】
トランジスタ140は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板185に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上に設けられたゲート電極110とを有する。
【0497】
半導体材料を含む基板185は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0498】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体膜を形成する方法等を用いることができる。
【0499】
例えば、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、又は素子基板上のどちらか一方に絶縁膜を形成する。単結晶半導体基板と素子基板を、絶縁膜を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体膜として単結晶半導体膜を素子基板上に形成する。上記方法を用いて作製されたSOI基板も好適に用いることができる。
【0500】
基板185上にはトランジスタ140を囲むように素子分離絶縁層106が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図12に示すようにトランジスタ140がサイドウォールとなる側壁絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ140の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォールとなる側壁絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120を設けてもよい。
【0501】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ140は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ140を覆うように絶縁膜を2層形成する。トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、該絶縁膜2層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜128、絶縁膜130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0502】
絶縁膜128、絶縁膜130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜128、絶縁膜130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0503】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜128、絶縁膜130を形成してもよい。
【0504】
なお、絶縁膜130において、半導体膜と接する膜は酸化シリコン膜を用いる。
【0505】
本実施の形態では、絶縁膜128としてスパッタリング法により膜厚50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜130としてスパッタリング法により膜厚550nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0506】
CMP処理により十分に平坦化した絶縁膜130上に半導体膜を形成する。本実施の形態では、半導体膜としてIn−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む非晶質酸化物半導体膜を形成する。
【0507】
次に非晶質酸化物半導体膜を選択的にエッチングして島状の非晶質酸化物半導体膜を形成し、非晶質酸化物半導体膜に酸素導入工程を行う。非晶質酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜146、ゲート電極層148、側壁絶縁層136a、136bを形成する。
【0508】
ゲート絶縁膜146として、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を形成することができる。
【0509】
ゲート電極層148は、ゲート絶縁膜146上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。
【0510】
次に、ゲート電極110、絶縁膜128、絶縁膜130などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bを形成する。
【0511】
導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0512】
導電層は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0513】
次に、非晶質酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜146、ゲート電極層148、側壁絶縁層136a、136b上に、酸化アルミニウム膜を含む絶縁膜150を形成する。絶縁膜150を積層構造とする場合、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を酸化アルミニウム膜と積層して形成してもよい。
【0514】
次に非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い、該非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させて、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜144を形成する。
【0515】
酸化物半導体膜上に絶縁膜150として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0516】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0517】
非晶質酸化物半導体膜を結晶化させる加熱処理を、絶縁膜150として設けられた酸化アルミニウム膜に覆われた状態で行うため、結晶化のための加熱処理によって非晶質酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。従って、得られる結晶性酸化物半導体膜144は、非晶質酸化物半導体膜の含む酸素量を維持し、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0518】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜144は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。よって、該結晶性酸化物半導体膜144をトランジスタ162に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0519】
非晶質酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させる加熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃、さらに好ましくは550℃以上とする。
【0520】
絶縁膜150上において、ソース電極またはドレイン電極142aと重畳する領域に電極層153を形成する。
【0521】
次にトランジスタ162、及び絶縁膜150上に、絶縁膜152を形成する。絶縁膜152は、スパッタリング法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0522】
次に、ゲート絶縁膜146、絶縁膜150、及び絶縁膜152に、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0523】
その後、上記開口にソース電極またはドレイン電極142bに接する配線156を形成する。なお、図12にはソース電極またはドレイン電極142bと配線156との接続箇所は図示していない。
【0524】
配線156は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をエッチング加工することによって形成される。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極またはドレイン電極142aなどと同様である。
【0525】
以上の工程でトランジスタ162及び容量素子164が完成する。トランジスタ162は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜144を有するトランジスタである。よって、トランジスタ162は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。容量素子164は、ソース電極またはドレイン電極142a、結晶性酸化物半導体膜144、ゲート絶縁膜146、および電極層153、で構成される。
【0526】
なお、図12の容量素子164では、結晶性酸化物半導体膜144とゲート絶縁膜146を積層させることにより、ソース電極またはドレイン電極142aと、電極層153との間の絶縁性を十分に確保することができる。もちろん、十分な容量を確保するために、結晶性酸化物半導体膜144を有しない構成の容量素子164を採用してもよい。また、絶縁膜を有する構成の容量素子164を採用してもよい。さらに、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0527】
図12(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図12(C)において、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ140のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ140のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0528】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0529】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0530】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0531】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ140は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ140をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ140を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ140は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ140は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ140のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0532】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0533】
本実施の形態で示すトランジスタ162は、高純度化され、酸素を過剰に含む酸化物半導体膜を結晶性酸化物半導体膜144に用いることで、トランジスタ162のオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0534】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0535】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0536】
(実施の形態14)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0537】
図16(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0538】
図16(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0539】
図16(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0540】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図16(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図16(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0541】
また、図16(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0542】
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0543】
図16(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0544】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図16(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0545】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図16(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0546】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0547】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0548】
図16(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0549】
図16(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至13のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0550】
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0551】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0552】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0553】
本実施例では、開示する発明に係る半導体装置において用いる酸化アルミニウム膜のバリア膜としての特性について評価を行った。図17乃至図20に結果を示す。評価方法としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)と、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析法を用いた。
【0554】
まず、SIMS分析によって行った評価を示す。試料は、比較例としてガラス基板上にスパッタリング法による酸化シリコン膜が膜厚100nm形成された比較例試料Aと、実施例としてガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚100nm形成された実施例試料Aを作製した。
【0555】
比較例試料A及び実施例試料Aにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO2)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0556】
実施例試料Aにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al2O3)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0557】
比較例試料A及び実施例試料Aにプレッシャークッカー試験(PCT:Pressure Cooker Test)を行った。本実施例ではPCT試験として、温度130℃、湿度85%、H2O(水):D2O(重水)=3:1雰囲気、2.3気圧(0.23MPa)の条件で比較例試料A及び実施例試料Aを100時間保持した。
【0558】
SIMS分析としてSSDP(Substrate Side Depth Profile)−SIMSを用いて、PCT試験前とPCT試験後の比較例試料A及び実施例試料Aに対して、各試料のH原子及びD(重水素)原子の濃度を測定した。なお、D原子とは、元素記号2Hで表される水素の同位体の1つである。
【0559】
図17(A1)に比較例試料AのPCT試験前、図17(A2)に比較例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。図17(A1)及び図17(A2)において、D原子expectedプロファイルは、D原子の存在比が0.015%としてH原子のプロファイルから算出した自然界に存在するD原子の濃度プロファイルである。よって、PCT試験によって試料中に混入したD原子量は、実測のD原子濃度とD原子expected濃度との差分となる。実測のD原子濃度からD原子expected濃度を差し引いたD原子の濃度プロファイルを、PCT試験前を図17(B1)、PCT試験後を図17(B2)に示す。
【0560】
同様に、図18(A1)に実施例試料AのPCT試験前、図18(A2)に実施例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。また、実測のD原子濃度からD原子expected濃度を差し引いたD原子の濃度プロファイルを、PCT試験前を図18(B1)、PCT試験後を図18(B2)に示す。
【0561】
なお、本実施例のSIMS分析結果は、すべて酸化シリコン膜の標準試料により定量した結果を示している。
【0562】
図17に示すように、PCT試験前は重なっていた実測のD原子の濃度プロファイルとD原子expectedプロファイルが、PCT試験後は実測のD原子の濃度プロファイルが高濃度に増大しており、酸化シリコン膜中にD原子が混入したことがわかる。従って、比較例試料の酸化シリコン膜は、外部からの水分(H2O、D2O)に対し、バリア性が低いことが確認できた。
【0563】
一方、図18に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を積層した実施例試料Aは、PCT試験後でも酸化アルミニウム膜表面にややD原子の侵入が見られるだけで、酸化アルミニウム膜深さ30nm付近以降、及び酸化シリコン膜にはD原子の侵入が見られない。従って、酸化アルミニウム膜は外部からの水分(H2O、D2O)に対し、バリア性が高いことが確認できた。
【0564】
次に、TDS分析によって行った評価を示す。試料は、実施例として、ガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚20nm形成された実施例試料Bを作製した。また、比較例として、実施例試料BをTDS分析によって測定後、実施例試料Bから酸化アルミニウム膜を除去し、ガラス基板上に酸化シリコン膜のみが形成された比較例試料Bを作製した。
【0565】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO2)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0566】
実施例試料Bにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al2O3)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0567】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、さらに300℃加熱処理、450℃加熱処理、600℃加熱処理の条件で、それぞれ窒素雰囲気下で1時間処理を行い、試料を作成した。
【0568】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、加熱処理なし、300℃加熱処理、450℃加熱処理、600℃加熱処理と4つの条件で作製された試料にそれぞれTDS分析を行った。比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、図19(A)及び図20(A)に加熱処理なし、図19(B)及び図20(B)に300℃加熱処理、図19(C)及び図20(C)に450℃加熱処理、図19(D)及び図20(D)に600℃加熱処理を行った各試料の測定されたM/z=32(O2)のTDS結果を示す。
【0569】
図19(A)乃至(D)に示すように、比較例試料Bは加熱処理なしの図19(A)では酸化シリコン膜から酸素の放出が見られるが、図19(B)の300℃加熱処理を行った試料では酸素の放出量が大きく減少し、図19(C)の450℃加熱処理を行った試料及び図19(D)の600℃加熱処理を行った試料においては、TDS測定のバックグラウンド以下となってしまった。
【0570】
図19(A)乃至(D)の結果から、酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素の9割以上が300℃の加熱処理によって酸化シリコン膜中から外部へ放出され、450℃、600℃の加熱処理によってはほぼ全ての酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素が酸化シリコン膜外部へ放出されたことがわかる。従って、酸化シリコン膜は酸素に対するバリア性が低いことが確認できた。
【0571】
一方、図20(A)乃至(D)に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を形成した実施例試料Bにおいては、300℃、450℃、600℃の加熱処理を行った試料においても、加熱処理なしの試料と同等の量の酸素の放出が見られた。
【0572】
図20(A)乃至(D)の結果から、酸化アルミニウム膜を酸化シリコン膜上に形成することで、加熱処理を行っても酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素は容易に外部へ放出されず、酸化シリコン膜中に含有した状態がかなりの程度保持されることがわかる。従って酸化アルミニウム膜は酸素に対するバリア性が高いことが確認できた。
【0573】
以上の結果から、酸化アルミニウム膜は水素及び水分に対するバリア性と、酸素に対するバリア性の両方を有しており、水素、水分、及び酸素に対するバリア膜として好適に機能することが確認できた。
【0574】
従って、酸化アルミニウム膜は、酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能することができる。
【0575】
従って、形成される結晶性酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。よって、該結晶性酸化物半導体膜をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、酸化アルミニウム膜と、前記絶縁膜及び前記酸化アルミニウム膜に挟まれている非晶質酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜は、酸素を注入され、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、
前記酸化アルミニウム膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記結晶を含む酸化物半導体膜は表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記非晶質酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に前記酸素を注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記非晶質酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成し、
前記ゲート絶縁膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に前記酸素を注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記酸素を注入する前に、前記非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い、前記非晶質酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水分を放出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、イオン注入法を用いて前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、前記非晶質酸化物半導体膜と酸化アルミニウム膜の間に酸化物絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項1】
絶縁膜と、酸化アルミニウム膜と、前記絶縁膜及び前記酸化アルミニウム膜に挟まれている非晶質酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜は、酸素を注入され、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に非晶質酸化物半導体膜を形成し、
前記非晶質酸化物半導体膜上に酸化アルミニウム膜を形成し、
前記酸化アルミニウム膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜に、加熱処理を行い少なくとも一部を結晶化させて結晶を含む酸化物半導体膜を形成し、
前記酸素を注入した非晶質酸化物半導体膜は、該酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記結晶を含む酸化物半導体膜は表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記非晶質酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に前記酸素を注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記非晶質酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成し、
前記ゲート絶縁膜を通過して前記非晶質酸化物半導体膜に前記酸素を注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記酸素を注入する前に、前記非晶質酸化物半導体膜に加熱処理を行い、前記非晶質酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水分を放出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、イオン注入法を用いて前記非晶質酸化物半導体膜に酸素を注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、前記非晶質酸化物半導体膜と酸化アルミニウム膜の間に酸化物絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−256871(P2012−256871A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107270(P2012−107270)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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