半導体装置の製造方法
【課題】ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料の濃度が異なるゲート絶縁膜を、従来よりも短い製造工程で形成可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、酸化膜30、窒化膜または酸窒化膜が設けられた第1の領域、および、半導体材料が露出した第2の領域を含む主面を有する半導体基板10を準備し、200℃〜260℃のもとでHfSiO膜を堆積することによって、ハフニウム濃度の異なるHfSiO膜40、50を、第1の領域および第2の領域に形成することを具備する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、酸化膜30、窒化膜または酸窒化膜が設けられた第1の領域、および、半導体材料が露出した第2の領域を含む主面を有する半導体基板10を準備し、200℃〜260℃のもとでHfSiO膜を堆積することによって、ハフニウム濃度の異なるHfSiO膜40、50を、第1の領域および第2の領域に形成することを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハフニウムシリケート(HfSiO)等の高誘電率材料を含むゲート絶縁膜が開発されている。また、MISFET(Metal Insulator Semiconductor)には、その仕様によって様々なリーク電流、様々な閾値、様々な動作電力等が要求される。様々な特性を有するMISFETを同一半導体基板上に形成するためには、ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料(例えば、ハフニウム)の濃度が異なるゲート絶縁膜を形成する必要がある。
【0003】
従来の半導体装置の製造方法では、このような様々な膜厚および様々な高誘電率材料濃度を有するゲート絶縁膜を形成するために、成膜、パターニング、エッチングなどの工程を多数回繰り返す必要があった。これにより半導体装置の製造工程数が多くなるので、半導体装置のコストが高くなるとともに、半導体装置の安定した特性を維持することが困難になるという問題があった。
【非特許文献1】Takeshi Watanabe et al. “Impact of Hf Concentration on Performance and Reliability for HfSiON-CMOSFET” IEDM Tech. Dig., pp. 507 - 510, December 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料の濃度が異なるゲート絶縁膜を、従来よりも短い製造工程で形成可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る実施形態に従った半導体装置の製造方法は、半導体酸化膜、半導体窒化膜または半導体酸窒化膜が設けられた第1の領域、および、半導体材料が露出した第2の領域を含む主面を有する半導体基板を準備し、200℃〜260℃のもとでHfSiO膜を堆積することによって、ハフニウム濃度の異なるHfSiO膜を、前記第1の領域および前記第2の領域に形成することを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明による半導体装置の製造方法は、ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料の濃度が異なるゲート絶縁膜を、従来よりも短い製造工程で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1から図6は、本発明に係る第1の実施形態に従った半導体装置の製造方法を示す断面図である。まず、図1に示すように、シリコン基板10に公知の方法を用いて素子分離領域としてのSTI(Shallow Trench Isolation)を形成する。
【0009】
STIは、例えば、次の方法で形成される。シリコン基板10上にバッファ膜(図示せず)およびシリコン窒化膜(図示せず)を堆積する。次に、フォトリソグラフィ技術およびRIE(Reactive Ion Etching)を用いてシリコン窒化膜をアクティブエリアのパターンに成形する。このパターニング後のシリコン窒化膜をマスクとして用いて、バッファ膜およびシリコン基板10を所定の深さまでエッチングし、シリコン基板10にトレンチ15を形成する。シリコン窒化膜上に残存するレジストを除去した後、シリコン酸化膜を堆積する。これにより、トレンチ15内にシリコン酸化膜を充填する。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等でシリコン酸化膜を平坦化する。さらに、シリコン窒化膜を除去することによってSTIが完成する。
【0010】
次に、既知の方法を用いて、図2に示すように、シリコン基板10上にシリコン酸化膜30を形成する。例えば、酸素雰囲気中においてシリコン基板を熱酸化することによって、シリコン酸化膜30を形成してもよい。次に、フォトリソグラフィ技術およびRIEを用いて、所望の領域のシリコン酸化膜30を除去し、シリコン基板10を露出させる。シリコン酸化膜30は、例えば、弗酸を用いてウェットエッチングすればよい。もちろん、所望領域のシリコン酸化膜30は、RIE、CDE等のエッチング法を用いて除去してもかまわない。残存するシリコン酸化膜30はゲート絶縁膜の一部として用いられる。ここで、シリコン基板10の表面のうちシリコン酸化膜30が設けられた表面領域を第1の領域とし、シリコン基板10の表面のうち半導体材料が露出した表面領域を第2の領域とする。
【0011】
次に、ゲート絶縁膜としてのハフニウムシリケート(HfSiO)膜を、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて約200℃〜260℃のもとで堆積する。該HfSiO膜は、シリコン材料として少なくともテトラジメチルアミノシリコン、テトラジエチルアミノシリコン、テトラエチルメチルアミノシリコン、トリメチルアミノシリコン、トリエチルアミノシリコン、Bisジメチルアミノシラン、ジエチルシラン、あるいはジクロロシランを用い、ハフニウム原料として少なくともテトラジエチルアミノハフニウム、テトラエチルメチルハフニウム、テトラエチルアミノハフニウムHTTB (Hf(Ot−Bu)4)、あるいはHf(MMP)4(Hf(OC(CH3)2CH2OCH3)4)を用いて形成される。HfSiO膜を約200℃〜260℃のもとでMOCVDを用いて堆積すると、下地の材料によって堆積の遅延時間が異なる(図7(A)参照)。また、図7(B)に示すように、HfSiO膜の成膜時の気圧を下げることにより遅延時間は長くなる。本実施形態では、成膜圧力は7.5Torrであるが、2.5Torrから8Torrの範囲で充分な遅延時間を持つ気圧を選択することができる。これにより、図3に示すように、第2の領域(シリコン基板10上)にはHfSiO膜50が比較的薄く堆積され、第1の領域(シリコン酸化膜30上)にはHfSiO膜40が比較的厚く堆積される。さらに、第1の領域(シリコン酸化膜30上)に堆積されたHfSiO膜40のハフニウム濃度は、第2の領域(シリコン基板10上)に堆積されたHfSiO膜50のハフニウム濃度よりも高くなる。HfSiO膜40および50については、図7〜図9を参照して後述する。
【0012】
次に、図4に示すように、ゲート電極材料としてポリシリコン60をHfSiO膜40およびHfSiO膜50上に堆積する。
【0013】
次に、図5に示すように、ポリシリコン60、HfSiO膜40、HfSiO膜50およびシリコン酸化膜30をゲート電極パターンにエッチングする。これにより、ゲート電極61および62が形成される。
【0014】
続いて、必要に応じてエクステンション形成用のイオン注入および結晶回復のためのアニールを行う。これにより、エクステンション層85が形成される。シリコン窒化膜およびTEOS(tetraethoxysilane)と酸素またはオゾンとを用いて形成したSiO2膜(以下TEOS膜と略記)を堆積する。シリコン窒化膜およびTEOS膜を異方性エッチングすることによって、ゲート電極61、62の側面にSiNライナ層70およびサイドウォール80を形成する。
【0015】
次に、不純物をイオン注入し、これを活性化するためにアニールを行う。これにより、ソース・ドレイン拡散層を形成する。必要に応じて、ソース・ドレイン拡散層上にシリサイド膜を形成する。
その後、従来の方法を用いて、層間絶縁膜、コンタクト、配線等を形成すればよい。例えば、層間絶縁膜としてTEOS膜を全面に堆積したのち、このTEOS膜をCMPで平坦化する。続いて、このTEOS膜にコンタクトホールを形成する。次に、チタンまたは窒化チタンをソース・ドレイン拡散層上、あるいは、その上に形成されたシリサイド上に堆積し、熱処理する。その後、タングステンを堆積し、コンタクトホール内にタングステンを充填する。続いて、タングステンを平坦化することによってコンタクトを形成する。その後、チタン、窒化チタン、またはアルミニウム等からなる配線を形成して半導体装置が完成する。
【0016】
図7および図8は、MOCVD法を用いてHfSiOを堆積したときの堆積遅延時間を示すグラフである。図7に示すように、約200℃〜260℃という比較的低温の温度条件のもとでは、HfSiOは、堆積処理の開始後、ある程度の遅延時間をおいてから実際に堆積し始める。例えば、下地材料がシリコン基板10である場合、HfSiOは、堆積処理の開始後、遅延時間D1が経過してから実際に堆積し始める。また、下地材料がシリコン酸化膜30である場合、HfSiOは、堆積処理の開始後、遅延時間D2が経過してから実際に堆積し始める。遅延時間D1は、遅延時間D2よりも短い。
【0017】
一方、図8に示すように、500℃以上という比較的高温の温度条件のもとでは、HfSiOは、堆積処理の開始時点からすでに実際に堆積されている。即ち、500℃以上の場合には、堆積遅延時間が観測されない。
【0018】
図9は、HfSiO膜40および50の成膜後、ハフニウム濃度を調査するためにHfSiO膜40および50に対する蛍光X線分析法による特性X線強度を調査した結果である。2つのピークP1およびP2がハフニウムのスペクトルを示している。曲線C1は第1の領域(シリコン酸化膜30上)に堆積されたHfSiO膜40のX線強度を示し、曲線C2は、第2の領域(シリコン基板10上)に堆積されたHfSiO膜50のX線強度を示す。
【0019】
曲線C1とX軸とによって囲まれる領域の面積S1は、HfSiO膜40中に含まれているハフニウム量を示す。また、曲線C2とX軸とによって囲まれる領域の面積S2は、低濃度HfSiO膜50中に含まれているハフニウム量を示す。よって、面積S1をHfSiO膜40の膜厚で割り算し、面積S2を低濃度HfSiO膜50の膜厚で割り算することによって、HfSiO膜40および低濃度HfSiO膜50のそれぞれにおけるハフニウムの相対濃度が分かる。
【0020】
図10は、HfSiO膜40およびHfSiO膜50のそれぞれのハフニウム濃度を示すグラフである。このグラフによれば、第1の領域(シリコン酸化膜30)上に形成されたHfSiO膜40のハフニウム濃度は、第2の領域(シリコン基板10)上に形成されたHfSiO膜50のハフニウム濃度よりも高いことが分かる。
【0021】
図11は、本実施形態におけるHfSiO膜の形成工程の一具体例を示す表である。図11に示す具体例を用いてさらにHfSiO膜40およびHfSiO膜50のHf濃度を比較する。この具体例では、MOCVDを用いて約230℃のもとで約3分間、HfSiO膜40、50を堆積した。シリコン酸化膜30の膜厚は約3nmであった。
【0022】
この場合、HfSiO膜40の膜厚は約9.20nmであり、HfSiO50の膜厚は約5.87であった。また、面積S1は1455.95であり、面積S2は704.20であった。面積S1をHfSiO膜40の膜厚で割り算すると、158.2である。面積S2をHfSiO50の膜厚で割り算すると、120.0である。
【0023】
即ち、上記の条件でHfSiO膜40および50を形成した場合、HfSiO膜50のハフニウム濃度は、HfSiO膜40のそれよりも約24%低くなる。
【0024】
一般に、ハフニウム濃度を高くすると、ゲート絶縁膜は、高誘電率となるものの、耐圧および寿命等の信頼性が低下する。従って、HfSiO膜40は、ハフニウム濃度が比較的高いので高誘電率を維持することができる。また、HfSiO膜40は、ハフニウム濃度が比較的高いが、物理膜厚が比較的厚いので、ある程度の高信頼性を保つことができる。このようなHfSiO膜40は、高速動作が要求されるMISFETのゲート絶縁膜として使用される。
【0025】
一方、HfSiO膜50は、ハフニウム濃度が比較的低いので、誘電率がHfSiO膜40ほど高くない。また、HfSiO膜50は、物理膜厚がHfSiO膜40よりも薄い。しかし、HfSiO膜50は、ハフニウム濃度がHfSiO膜40よりも低いので、信頼性が高い。このようなHfSiO膜50は、低速であっても信頼性の高い(例えば、寿命が長く、耐圧の高い)MISFETのゲート絶縁膜として使用される。
【0026】
本実施形態は、図7に示す遅延時間を利用し、高いハフニウム濃度が求められる領域にはシリコン酸化膜を予め形成し、低いハフニウム濃度が求められる領域ではシリコンを露出する。その上で、図7に示す遅延時間が得られる温度条件のもとでHfSiO膜を堆積する。シリコン上には薄い物理膜厚で低いハフニウム濃度のHfSiO膜が形成され、シリコン酸化膜上には厚い物理膜厚で高いハフニウム濃度のHfSiO膜が形成される。このように本実施形態は、互いにハフニウム濃度が異なり、かつ、膜厚が異なるHfSiO膜40および50を同一のMOCVD工程で形成することができる。これにより、互いに特性の異なるMISFETを短い製造工程で形成することができる。これは、半導体装置のコスト低減および特性の安定性につながる。
【0027】
本実施形態において、シリコン酸化膜30は、シリコン基板10を熱酸化することによって形成された。しかし、代替的に、シリコン酸化膜30は、シリコン基板10をラジカル酸化、プラズマ酸化、あるいは、化学酸化することによって形成されてもよい。
【0028】
本実施形態において、第2の領域のシリコン酸化膜30は、フォトリソグラフィ技術およびウェットエッチングで除去された。しかし、第1の領域をフォトレジストで被覆し、第1および第2の領域にシリコン酸化膜を堆積してから、第1の領域上のフォトレジストをシリコン酸化膜とともにリフトオフしてもよい。このようにしても、第2の領域のみにシリコン酸化膜30を形成することができる。
【0029】
本実施形態では、第2領域上のシリコン酸化膜30に代えて、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜を形成してもよい。シリコン窒化膜またはシリコン酸窒化膜を下地材料として用いても、シリコン酸化膜30と同様に作用する。シリコン窒化膜またはシリコン酸窒化膜は、ラジカル窒化、プラズマ窒化、アンモニア雰囲気を用いた熱窒化のいずれを用いて形成してもよい。
【0030】
本実施形態では、シリコン基板10を用いたが、これに代えてSOI(Silicon On Insulator)基板を用いてもよい。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従った半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図2】図1に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図3】図2に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図4】図3に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図5】図4に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図6】図5に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図7】MOCVDの堆積遅延時間を示すグラフ。
【図8】MOCVDの堆積遅延時間を示すグラフ。
【図9】HfSiO膜40および50の成膜後、ハフニウム濃度を調査するためにHfSiO膜40および50に対する蛍光X線分析法による特性X線強度を調査した結果を示すグラフ。
【図10】HfSiO膜40およびHfSiO膜50のそれぞれのハフニウム濃度を示すグラフ。
【図11】本実施形態におけるHfSiO膜の形成工程の一具体例を示す表。
【符号の説明】
【0033】
10…シリコン基板
20…STI
30…シリコン酸化膜
40、50…HfSiO膜
60…ポリシリコン
70…SiNライナ
80…サイドウォール
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハフニウムシリケート(HfSiO)等の高誘電率材料を含むゲート絶縁膜が開発されている。また、MISFET(Metal Insulator Semiconductor)には、その仕様によって様々なリーク電流、様々な閾値、様々な動作電力等が要求される。様々な特性を有するMISFETを同一半導体基板上に形成するためには、ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料(例えば、ハフニウム)の濃度が異なるゲート絶縁膜を形成する必要がある。
【0003】
従来の半導体装置の製造方法では、このような様々な膜厚および様々な高誘電率材料濃度を有するゲート絶縁膜を形成するために、成膜、パターニング、エッチングなどの工程を多数回繰り返す必要があった。これにより半導体装置の製造工程数が多くなるので、半導体装置のコストが高くなるとともに、半導体装置の安定した特性を維持することが困難になるという問題があった。
【非特許文献1】Takeshi Watanabe et al. “Impact of Hf Concentration on Performance and Reliability for HfSiON-CMOSFET” IEDM Tech. Dig., pp. 507 - 510, December 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料の濃度が異なるゲート絶縁膜を、従来よりも短い製造工程で形成可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る実施形態に従った半導体装置の製造方法は、半導体酸化膜、半導体窒化膜または半導体酸窒化膜が設けられた第1の領域、および、半導体材料が露出した第2の領域を含む主面を有する半導体基板を準備し、200℃〜260℃のもとでHfSiO膜を堆積することによって、ハフニウム濃度の異なるHfSiO膜を、前記第1の領域および前記第2の領域に形成することを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明による半導体装置の製造方法は、ゲート絶縁膜の膜厚およびゲート絶縁膜中の高誘電率材料の濃度が異なるゲート絶縁膜を、従来よりも短い製造工程で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1から図6は、本発明に係る第1の実施形態に従った半導体装置の製造方法を示す断面図である。まず、図1に示すように、シリコン基板10に公知の方法を用いて素子分離領域としてのSTI(Shallow Trench Isolation)を形成する。
【0009】
STIは、例えば、次の方法で形成される。シリコン基板10上にバッファ膜(図示せず)およびシリコン窒化膜(図示せず)を堆積する。次に、フォトリソグラフィ技術およびRIE(Reactive Ion Etching)を用いてシリコン窒化膜をアクティブエリアのパターンに成形する。このパターニング後のシリコン窒化膜をマスクとして用いて、バッファ膜およびシリコン基板10を所定の深さまでエッチングし、シリコン基板10にトレンチ15を形成する。シリコン窒化膜上に残存するレジストを除去した後、シリコン酸化膜を堆積する。これにより、トレンチ15内にシリコン酸化膜を充填する。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等でシリコン酸化膜を平坦化する。さらに、シリコン窒化膜を除去することによってSTIが完成する。
【0010】
次に、既知の方法を用いて、図2に示すように、シリコン基板10上にシリコン酸化膜30を形成する。例えば、酸素雰囲気中においてシリコン基板を熱酸化することによって、シリコン酸化膜30を形成してもよい。次に、フォトリソグラフィ技術およびRIEを用いて、所望の領域のシリコン酸化膜30を除去し、シリコン基板10を露出させる。シリコン酸化膜30は、例えば、弗酸を用いてウェットエッチングすればよい。もちろん、所望領域のシリコン酸化膜30は、RIE、CDE等のエッチング法を用いて除去してもかまわない。残存するシリコン酸化膜30はゲート絶縁膜の一部として用いられる。ここで、シリコン基板10の表面のうちシリコン酸化膜30が設けられた表面領域を第1の領域とし、シリコン基板10の表面のうち半導体材料が露出した表面領域を第2の領域とする。
【0011】
次に、ゲート絶縁膜としてのハフニウムシリケート(HfSiO)膜を、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて約200℃〜260℃のもとで堆積する。該HfSiO膜は、シリコン材料として少なくともテトラジメチルアミノシリコン、テトラジエチルアミノシリコン、テトラエチルメチルアミノシリコン、トリメチルアミノシリコン、トリエチルアミノシリコン、Bisジメチルアミノシラン、ジエチルシラン、あるいはジクロロシランを用い、ハフニウム原料として少なくともテトラジエチルアミノハフニウム、テトラエチルメチルハフニウム、テトラエチルアミノハフニウムHTTB (Hf(Ot−Bu)4)、あるいはHf(MMP)4(Hf(OC(CH3)2CH2OCH3)4)を用いて形成される。HfSiO膜を約200℃〜260℃のもとでMOCVDを用いて堆積すると、下地の材料によって堆積の遅延時間が異なる(図7(A)参照)。また、図7(B)に示すように、HfSiO膜の成膜時の気圧を下げることにより遅延時間は長くなる。本実施形態では、成膜圧力は7.5Torrであるが、2.5Torrから8Torrの範囲で充分な遅延時間を持つ気圧を選択することができる。これにより、図3に示すように、第2の領域(シリコン基板10上)にはHfSiO膜50が比較的薄く堆積され、第1の領域(シリコン酸化膜30上)にはHfSiO膜40が比較的厚く堆積される。さらに、第1の領域(シリコン酸化膜30上)に堆積されたHfSiO膜40のハフニウム濃度は、第2の領域(シリコン基板10上)に堆積されたHfSiO膜50のハフニウム濃度よりも高くなる。HfSiO膜40および50については、図7〜図9を参照して後述する。
【0012】
次に、図4に示すように、ゲート電極材料としてポリシリコン60をHfSiO膜40およびHfSiO膜50上に堆積する。
【0013】
次に、図5に示すように、ポリシリコン60、HfSiO膜40、HfSiO膜50およびシリコン酸化膜30をゲート電極パターンにエッチングする。これにより、ゲート電極61および62が形成される。
【0014】
続いて、必要に応じてエクステンション形成用のイオン注入および結晶回復のためのアニールを行う。これにより、エクステンション層85が形成される。シリコン窒化膜およびTEOS(tetraethoxysilane)と酸素またはオゾンとを用いて形成したSiO2膜(以下TEOS膜と略記)を堆積する。シリコン窒化膜およびTEOS膜を異方性エッチングすることによって、ゲート電極61、62の側面にSiNライナ層70およびサイドウォール80を形成する。
【0015】
次に、不純物をイオン注入し、これを活性化するためにアニールを行う。これにより、ソース・ドレイン拡散層を形成する。必要に応じて、ソース・ドレイン拡散層上にシリサイド膜を形成する。
その後、従来の方法を用いて、層間絶縁膜、コンタクト、配線等を形成すればよい。例えば、層間絶縁膜としてTEOS膜を全面に堆積したのち、このTEOS膜をCMPで平坦化する。続いて、このTEOS膜にコンタクトホールを形成する。次に、チタンまたは窒化チタンをソース・ドレイン拡散層上、あるいは、その上に形成されたシリサイド上に堆積し、熱処理する。その後、タングステンを堆積し、コンタクトホール内にタングステンを充填する。続いて、タングステンを平坦化することによってコンタクトを形成する。その後、チタン、窒化チタン、またはアルミニウム等からなる配線を形成して半導体装置が完成する。
【0016】
図7および図8は、MOCVD法を用いてHfSiOを堆積したときの堆積遅延時間を示すグラフである。図7に示すように、約200℃〜260℃という比較的低温の温度条件のもとでは、HfSiOは、堆積処理の開始後、ある程度の遅延時間をおいてから実際に堆積し始める。例えば、下地材料がシリコン基板10である場合、HfSiOは、堆積処理の開始後、遅延時間D1が経過してから実際に堆積し始める。また、下地材料がシリコン酸化膜30である場合、HfSiOは、堆積処理の開始後、遅延時間D2が経過してから実際に堆積し始める。遅延時間D1は、遅延時間D2よりも短い。
【0017】
一方、図8に示すように、500℃以上という比較的高温の温度条件のもとでは、HfSiOは、堆積処理の開始時点からすでに実際に堆積されている。即ち、500℃以上の場合には、堆積遅延時間が観測されない。
【0018】
図9は、HfSiO膜40および50の成膜後、ハフニウム濃度を調査するためにHfSiO膜40および50に対する蛍光X線分析法による特性X線強度を調査した結果である。2つのピークP1およびP2がハフニウムのスペクトルを示している。曲線C1は第1の領域(シリコン酸化膜30上)に堆積されたHfSiO膜40のX線強度を示し、曲線C2は、第2の領域(シリコン基板10上)に堆積されたHfSiO膜50のX線強度を示す。
【0019】
曲線C1とX軸とによって囲まれる領域の面積S1は、HfSiO膜40中に含まれているハフニウム量を示す。また、曲線C2とX軸とによって囲まれる領域の面積S2は、低濃度HfSiO膜50中に含まれているハフニウム量を示す。よって、面積S1をHfSiO膜40の膜厚で割り算し、面積S2を低濃度HfSiO膜50の膜厚で割り算することによって、HfSiO膜40および低濃度HfSiO膜50のそれぞれにおけるハフニウムの相対濃度が分かる。
【0020】
図10は、HfSiO膜40およびHfSiO膜50のそれぞれのハフニウム濃度を示すグラフである。このグラフによれば、第1の領域(シリコン酸化膜30)上に形成されたHfSiO膜40のハフニウム濃度は、第2の領域(シリコン基板10)上に形成されたHfSiO膜50のハフニウム濃度よりも高いことが分かる。
【0021】
図11は、本実施形態におけるHfSiO膜の形成工程の一具体例を示す表である。図11に示す具体例を用いてさらにHfSiO膜40およびHfSiO膜50のHf濃度を比較する。この具体例では、MOCVDを用いて約230℃のもとで約3分間、HfSiO膜40、50を堆積した。シリコン酸化膜30の膜厚は約3nmであった。
【0022】
この場合、HfSiO膜40の膜厚は約9.20nmであり、HfSiO50の膜厚は約5.87であった。また、面積S1は1455.95であり、面積S2は704.20であった。面積S1をHfSiO膜40の膜厚で割り算すると、158.2である。面積S2をHfSiO50の膜厚で割り算すると、120.0である。
【0023】
即ち、上記の条件でHfSiO膜40および50を形成した場合、HfSiO膜50のハフニウム濃度は、HfSiO膜40のそれよりも約24%低くなる。
【0024】
一般に、ハフニウム濃度を高くすると、ゲート絶縁膜は、高誘電率となるものの、耐圧および寿命等の信頼性が低下する。従って、HfSiO膜40は、ハフニウム濃度が比較的高いので高誘電率を維持することができる。また、HfSiO膜40は、ハフニウム濃度が比較的高いが、物理膜厚が比較的厚いので、ある程度の高信頼性を保つことができる。このようなHfSiO膜40は、高速動作が要求されるMISFETのゲート絶縁膜として使用される。
【0025】
一方、HfSiO膜50は、ハフニウム濃度が比較的低いので、誘電率がHfSiO膜40ほど高くない。また、HfSiO膜50は、物理膜厚がHfSiO膜40よりも薄い。しかし、HfSiO膜50は、ハフニウム濃度がHfSiO膜40よりも低いので、信頼性が高い。このようなHfSiO膜50は、低速であっても信頼性の高い(例えば、寿命が長く、耐圧の高い)MISFETのゲート絶縁膜として使用される。
【0026】
本実施形態は、図7に示す遅延時間を利用し、高いハフニウム濃度が求められる領域にはシリコン酸化膜を予め形成し、低いハフニウム濃度が求められる領域ではシリコンを露出する。その上で、図7に示す遅延時間が得られる温度条件のもとでHfSiO膜を堆積する。シリコン上には薄い物理膜厚で低いハフニウム濃度のHfSiO膜が形成され、シリコン酸化膜上には厚い物理膜厚で高いハフニウム濃度のHfSiO膜が形成される。このように本実施形態は、互いにハフニウム濃度が異なり、かつ、膜厚が異なるHfSiO膜40および50を同一のMOCVD工程で形成することができる。これにより、互いに特性の異なるMISFETを短い製造工程で形成することができる。これは、半導体装置のコスト低減および特性の安定性につながる。
【0027】
本実施形態において、シリコン酸化膜30は、シリコン基板10を熱酸化することによって形成された。しかし、代替的に、シリコン酸化膜30は、シリコン基板10をラジカル酸化、プラズマ酸化、あるいは、化学酸化することによって形成されてもよい。
【0028】
本実施形態において、第2の領域のシリコン酸化膜30は、フォトリソグラフィ技術およびウェットエッチングで除去された。しかし、第1の領域をフォトレジストで被覆し、第1および第2の領域にシリコン酸化膜を堆積してから、第1の領域上のフォトレジストをシリコン酸化膜とともにリフトオフしてもよい。このようにしても、第2の領域のみにシリコン酸化膜30を形成することができる。
【0029】
本実施形態では、第2領域上のシリコン酸化膜30に代えて、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜を形成してもよい。シリコン窒化膜またはシリコン酸窒化膜を下地材料として用いても、シリコン酸化膜30と同様に作用する。シリコン窒化膜またはシリコン酸窒化膜は、ラジカル窒化、プラズマ窒化、アンモニア雰囲気を用いた熱窒化のいずれを用いて形成してもよい。
【0030】
本実施形態では、シリコン基板10を用いたが、これに代えてSOI(Silicon On Insulator)基板を用いてもよい。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従った半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図2】図1に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図3】図2に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図4】図3に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図5】図4に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図6】図5に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図7】MOCVDの堆積遅延時間を示すグラフ。
【図8】MOCVDの堆積遅延時間を示すグラフ。
【図9】HfSiO膜40および50の成膜後、ハフニウム濃度を調査するためにHfSiO膜40および50に対する蛍光X線分析法による特性X線強度を調査した結果を示すグラフ。
【図10】HfSiO膜40およびHfSiO膜50のそれぞれのハフニウム濃度を示すグラフ。
【図11】本実施形態におけるHfSiO膜の形成工程の一具体例を示す表。
【符号の説明】
【0033】
10…シリコン基板
20…STI
30…シリコン酸化膜
40、50…HfSiO膜
60…ポリシリコン
70…SiNライナ
80…サイドウォール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体酸化膜、半導体窒化膜または半導体酸窒化膜が設けられた第1の領域、および、半導体材料が露出した第2の領域を含む主面を有する半導体基板を準備し、
200℃〜260℃のもとでHfSiO膜を堆積することによって、ハフニウム濃度の異なるHfSiO膜を、前記第1の領域および前記第2の領域に形成することを具備する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の領域に形成されたHfSiO膜のハフニウム濃度は、前記第1の領域に形成されたHfSiO膜のハフニウム濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の領域に形成されたHfSiO膜の物理膜厚は、前記第1の領域に形成されたHfSiO膜の物理膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体酸化膜、前記半導体窒化膜または前記半導体酸窒化膜と、前記第1の領域に形成されたHfSiO膜とは前記第1の領域内に形成されるMISFETのゲート絶縁膜として設けられ、
前記第2の領域に形成されたHfSiO膜は前記第2の領域内に形成されるMISFETのゲート絶縁膜として設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記HfSiO膜は、少なくともアミノ配位子を持つ有機シリコン化合物、あるいはシラン系の無機シリコン化合物およびアミノ配位子を持つ有機ハフニウム化合物を用いた化学気相成長法により形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体酸化膜、半導体窒化膜または半導体酸窒化膜が設けられた第1の領域、および、半導体材料が露出した第2の領域を含む主面を有する半導体基板を準備し、
200℃〜260℃のもとでHfSiO膜を堆積することによって、ハフニウム濃度の異なるHfSiO膜を、前記第1の領域および前記第2の領域に形成することを具備する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の領域に形成されたHfSiO膜のハフニウム濃度は、前記第1の領域に形成されたHfSiO膜のハフニウム濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の領域に形成されたHfSiO膜の物理膜厚は、前記第1の領域に形成されたHfSiO膜の物理膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体酸化膜、前記半導体窒化膜または前記半導体酸窒化膜と、前記第1の領域に形成されたHfSiO膜とは前記第1の領域内に形成されるMISFETのゲート絶縁膜として設けられ、
前記第2の領域に形成されたHfSiO膜は前記第2の領域内に形成されるMISFETのゲート絶縁膜として設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記HfSiO膜は、少なくともアミノ配位子を持つ有機シリコン化合物、あるいはシラン系の無機シリコン化合物およびアミノ配位子を持つ有機ハフニウム化合物を用いた化学気相成長法により形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−234740(P2007−234740A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52166(P2006−52166)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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