半導体装置の製造方法
【課題】素子が微細化されても優れたプロセス安定性を有し、かつシリサイドが形成された領域での抵抗増大を抑制する。
【解決手段】基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、このシリコン酸化膜を形成した基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理によりシリコン領域に形成されたシリコン酸化膜を第2の金属によって還元する工程と、熱処理により第1の金属とシリコン領域のシリコンとを反応させてシリコン領域の表面にのみシリサイド膜を形成する工程とを有し、第1の金属はCo、Ni、Pt又はPdであり、第2の金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrである。
【解決手段】基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、このシリコン酸化膜を形成した基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理によりシリコン領域に形成されたシリコン酸化膜を第2の金属によって還元する工程と、熱処理により第1の金属とシリコン領域のシリコンとを反応させてシリコン領域の表面にのみシリサイド膜を形成する工程とを有し、第1の金属はCo、Ni、Pt又はPdであり、第2の金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法、特にゲート長の短い微細なMISトランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の素子の微細化に伴う寄生抵抗の増大に対応するために、MOSFETのポリシリコンゲート電極及びソース・ドレイン拡散層上に自己整合的に金属珪化物(以下、シリサイドという)を貼り付けるサリサイド(SALICIDE:Self ALIgned siliCIDE)プロセスが、広く用いられるようになってきている。
【0003】
図3(a)〜(f)を用いて、従来広く用いられてきたチタニウムを用いたサリサイドプロセスの一例を説明する。
【0004】
まず、シリコン基板101上に、素子分離用絶縁膜(シリコン酸化膜)領域102を形成後、MOSFETのゲート酸化膜103、多結晶シリコンゲート電極104、浅いソース・ドレイン拡散層105を形成し、さらにシリコン窒化膜を用いた側壁膜106をマスクとして深いソース・ドレイン拡散層107を形成する(図3(a))。
【0005】
次に、希フッ酸処理又は希フッ酸処理後にRCA等の処理を行い、全面にチタニウム膜108及びチタニウム窒化膜109を堆積する(図3(b))。
【0006】
次に、ランプアニール装置等により650〜750℃程度の温度で短時間アニールを行い、露出しているシリコン基板101及び多結晶シリコン膜104とチタニウム膜108を反応させて、C49結晶構造のチタニウムダイシリサイド(TiSi2 )膜110を形成する。その後、硫酸と過酸化水素水の混合液のようなエッチング液を用いて、チタニウム窒化膜109や未反応のチタニウム膜108をエッチング除去する(図3(c))。
【0007】
次に、ランプアニール装置等により750〜900℃程度の温度で短時間アニールを行い、チタニウムダイシリサイド(TiSi2 )膜110をC54結晶構造を有する低抵抗のチタニウムダイシリサイド(TiSi2 )膜111に変化させる(図3(d))。
【0008】
次に、全面に減圧CVD法及びプラズマCVD法によりシリコン酸化膜112及び113を堆積し、CMP工程等により平坦化を行う(図3(e))。
【0009】
次に、シリコン酸化膜112及び113に対してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内部にタングステン等の金属114を埋め込む。その後、アルミニウム等の配線層115をソース・ドレイン拡散層及びゲート電極に接続する(図3(f))。
【0010】
このようなチタニウムを用いたサリサイドプロセスは、ソース・ドレイン拡散層やゲート多結晶シリコン領域の寄生抵抗を大幅に低減させる効果がある。しかしながら、素子の微細化が進みゲート長が0.2μm以下にまで小さくなると、TiSi2 膜の結晶構造が2回目のランプアニールによってもC54に変化しなくなるために抵抗が低下しなくなるといった、いわゆる細線効果が生じるために、半導体素子に適用するメリットが小さくなってくる。
【0011】
そのため、近年ではチタニウムシリサイドよりも細線効果が起こりにくいコバルトシリサイド膜を用いたサリサイドプロセスが注目を集めている。
【0012】
図4(a)〜(d)を用いて、コバルトを用いたサリサイドプロセスの一例を説明する。
【0013】
図3(a)の状態のMOSFET素子に対して、希フッ酸処理によってシリコン基板101表面及び多結晶シリコン膜104表面の自然酸化膜を除去した後、全面にコバルト膜116及びチタニウム窒化膜109を堆積する(図4(a))。
【0014】
次に、ランプアニール装置等により、450〜550℃程度の温度で短時間アニールを行い、露出しているシリコン基板101及び多結晶シリコン膜104とコバルト膜116を反応させてコバルトモノシリサイド(CoSi)膜117を形成する。続いて、硫酸と過酸化水素水の混合液のようなエッチング液を用いて、チタニウム窒化膜109及び未反応のコバルト膜116をエッチング除去する(図4(b))。
【0015】
次に、ランプアニール装置等により、700〜850℃程度の温度で短時間のアニールを行い、コバルトモノシリサイド(CoSi)膜117を低抵抗のコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜118に変化させる(図4(c))。
【0016】
次に、全面に減圧CVD法及びプラズマCVD法によりシリコン酸化膜112及び113を堆積し、CMP工程等により平坦化を行う。続いて、シリコン酸化膜112及び113に対してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内部にタングステン等の金属114を埋め込み、アルミニウム等の配線層115をソース・ドレイン拡散層及びゲート電極に接続する(図4(d))。
【0017】
このようなコバルトシリサイド膜を用いたサリサイドプロセスでは、チタニウムシリサイド膜を用いたサリサイドプロセスに比べて細線効果が起こりにくいという利点はあるが、以下のような欠点も持つ。
【0018】
すなわち、チタニウムに比べてコバルトはシリコン酸化膜を還元させる能力に乏しいため、コバルトを堆積する際にシリコン基板や多結晶シリコン膜表面にRCA処理後に生成されるような自然酸化膜が存在した場合には、シリサイド反応が阻害される。そのため、図4(b)のようなコバルトモノシリサイド(CoSi)膜117が全く形成されないことがある。また、希フッ酸を用いた前処理によって自然酸化膜を除去した状態でコバルト膜を堆積しようとした場合においても、前処理後の経過時間等の要因によって不均一な自然酸化膜ができると、図5に示すようにコバルトモノシリサイド(CoSi)膜117の成膜が不均一になるといった問題がある。また、希フッ酸系の処理のみを前処理として用いた場合には、露出したシリコン基板表面や多結晶シリコン膜表面、特に素子分離絶縁膜との界面付近にウォーターマーク又は水ガラスと呼ばれるシリコン系酸化膜が付着し、シリサイド化反応を阻害する場合もある。
【0019】
さらに、コバルトシリサイド膜は耐熱性といった観点でもチタニウムシリサイド膜に対して劣っているため、サリサイドプロセス終了後の層間膜用のシリコン酸化膜の堆積時の熱によって、図6に示すようにコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜118が凝集を起こし、そのため抵抗の上昇を招くといった問題点も発生する。
【0020】
一方、コバルトサリサイドプロセスでは、コンタクトプラグの低抵抗化を目的としたアモルファスシリコン−アルミニウム置換プロセスにおいて、様々な問題が発生する。
【0021】
図7(a)〜(c)を用いて、この問題点を説明する。
【0022】
図4(c)に示すコバルトシリサイド膜118を貼り付けた構造に対して、層間絶縁膜112及び113を堆積する。層間絶縁膜112及び113にコンタクトホールを形成した後、アモルファスシリコン膜119を堆積してエッチバックを行い、コンタクトホール内部にのみアモルファスシリコン膜119を残す。続いて、全面にアルミニウム膜120及びチタニウム膜121を堆積する(図7(a))。
【0023】
次に、600℃以下の熱工程によりアモルファスシリコン119、アルミニウム120及びチタニウム121を反応させて、コンタクトホール内部のアモルファスシリコン119をアルミニウム122と置換する。その後、CMP工程等により、コンタクトホール外部に残るアルミニウム120、チタニウム121及び置換反応によって吸い出されたシリコン119を研磨して、これらを除去する(図7(b))。
【0024】
次に、全面にアルミニウム等の配線用金属124を堆積してパターニングを行うことにより、半導体素子部と配線層を接続する(図7(c))。
【0025】
このような工程によりコンタクト部分を形成する場合、アモルファスシリコンとアルミニウムの置換を行う熱工程においてコバルトシリサイド118に対してアルミニウムのスパイク123が入り込み、場合によっては拡散層にまで達することがある。このようなアルミニウムのスパイクが発生した場合には、接合特性の劣化の原因となる。
【0026】
このようなアルミニウムのスパイクの発生を予防するために、コンタクトホール内部に予め拡散バリアとして有効なチタニウム窒化膜を堆積しておくといった手法も用いられる。図8(a)〜(c)を用いて、このチタニウム窒化膜を予め堆積するプロセスについて説明する。
【0027】
まず、図4(c)に示すコバルトシリサイド膜118を貼り付けた構造に対して、層間絶縁膜112及び113を堆積し、コンタクトホールを形成する。その後、チタニウム窒化膜125及びアモルファスシリコン膜119を順次堆積してエッチバックを行い、コンタクトホール内部にのみアモルファスシリコン膜119を残す。続いて、全面にアルミニウム膜120及びチタニウム膜121を堆積する(図8(a))。
【0028】
次に、600℃以下の熱工程によりアモルファスシリコン119、アルミニウム120及びチタニウム121を反応させてコンタクトホール内部のアモルファスシリコン119をアルミニウム122に置換した後、CMP工程等によりコンタクトホール外部に残るアルミニウム120、チタニウム121、置換反応によって吸い出されたシリコン119及びチタニウム窒化膜125を除去する(図8(b))。
【0029】
次に、全面にアルミニウム等の配線用金属124を堆積してパターニングを行うことにより、半導体素子部と配線層を接続する(図8(c))。
【0030】
このような工程を用いれば、シリサイド層やその下の拡散層に対してアルミニウムのスパイクが入り込むことはなくなるが、その反面、チタニウム窒化膜成膜工程の増加、アルミニウムと比較して高抵抗のチタニウム窒化膜によってコンタクトホールが狭められることによる抵抗の上昇といった問題点が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
以上述べたように、従来、チタニウムを用いたサリサイドプロセスでは、ゲート長が0.2μm以下になると細線効果によって抵抗が十分に低下しなくなるという問題があった。また、コバルトを用いたサリサイドプロセスでは、自然酸化膜によってシリサイド反応が阻害されたり、層間膜堆積時の熱工程によってシリサイドが凝集するといった問題があった。さらに、コバルトを用いたサリサイドプロセスでは、コンタクトプラグの低抵抗化を目的としたアモルファスシリコン−アルミニウム置換プロセスにおいて、コバルトシリサイドにアルミニウムのスパイクが入り込むといった問題があった。このようなアルミニウムのスパイクの発生を予防するために、コンタクトホール内部に予め拡散バリアとしてチタニウム窒化膜等を堆積しておくことも考えられるが、チタニウム窒化膜形成工程の増加や、チタニウム窒化膜によってコンタクトホールが狭められることによる抵抗の上昇といった問題が生じる。
【0032】
本発明は上記従来の問題に対してなされたものであり、素子が微細化されても、シリサイドが形成された領域での抵抗増大を抑制でき、しかもプロセス安定性に優れた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明に係る半導体装置は、基板主表面側の絶縁膜によって区分されたシリコン領域表面にのみ第1の金属及びシリコンを主成分とするシリサイド膜が形成され、このシリサイド膜の表面又はこのシリサイド膜の表面及び結晶粒界に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜が形成されていることを特徴とする。
【0034】
前記シリコン領域としては、MISトランジスタのゲート電極を構成するシリコン領域(多結晶シリコンで形成される領域)及びMISトランジスタのソース・ドレイン拡散層(単結晶シリコン基板に形成される領域)を構成するシリコン領域の少なくとも一方の領域があげられる。
【0035】
前記第1の金属としてはCo、Ni、Pt又はPdがあげられ、前記第2の金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrがあげられる。また、前記絶縁膜としては、素子分離絶縁膜やゲート側壁絶縁膜等をあげることができる。さらに、前記窒化物膜には、第2の金属及び窒素の他にシリコンが含まれていてもよい。
【0036】
前記発明によれば、MISトランジスタが微細化されてもゲート部或いはソース・ドレイン部での寄生抵抗を十分に低減することが可能となる。また、ゲート電極やソース・ドレイン拡散層上の開口部に金属等を埋め込む場合、窒化物膜がシリサイド膜の表面のみ又はシリサイド膜の表面及び結晶粒界のみに選択的に形成されていれば、開口部側壁にも窒化物膜が形成されている場合に比べて、開口部が狭められることによる抵抗の増大を抑えることができる。
【0037】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域が形成された基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理により前記第1の金属及び第2の金属と前記シリコン領域のシリコンとを反応させて前記シリコン領域の表面にのみ第1のシリサイド膜を形成する工程と、この第1のシリサイド膜を窒化性の雰囲気で熱処理することにより第2のシリサイド膜並びにこの第2のシリサイド膜の表面又はこの第2のシリサイド膜の表面及び結晶粒界に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0038】
前記発明によれば、第2の金属によってシリコン領域上の自然酸化膜等を還元することが可能となり、シリコン領域上に良好なシリサイド膜を形成することができる。また、第2のシリサイド膜の表面等に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜を形成することにより、シリサイド膜の熱的安定性が低下するといった問題を防止することができる。よって、MISトランジスタが微細化されても高いプロセス安定性でゲート部或いはソース・ドレイン部での寄生抵抗を低減することが可能となる。
【0039】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、このシリコン酸化膜を形成した基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理により前記シリコン領域に形成されたシリコン酸化膜を前記第2の金属によって還元する工程と、熱処理により前記第1の金属と前記シリコン領域のシリコンとを反応させて前記シリコン領域の表面にのみシリサイド膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0040】
なお、前記シリコン酸化膜を還元する工程及び前記シリサイド膜を形成する工程における熱処理は同一の熱処理工程によって行うことが好ましい。
【0041】
前記発明によれば、第2の金属によってシリコン酸化膜を還元する際に、第1の金属及び第2の金属の混合膜とシリコン領域との界面にアモルファス層が形成され、このアモルファス層の作用によりアモルファス層とシリコン領域との界面において単結晶のシリサイド膜を成長させることが可能となる。したがって、シリサイド膜の均一性の向上等をはかることができ、MISトランジスタが微細化されても高いプロセス安定性で特性に優れたデバイスを作製することが可能となる。
【0042】
なお、第2の金属によってシリコン酸化膜の還元を十分に行う観点から、シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚は、前記混合膜の膜厚に該混合膜中の第2の金属の割合(混合膜中の第1及び第2の金属の原子数に対する第2の金属の原子数の割合)を乗じた値以下とすることが好ましい。
【0043】
また、シリコン酸化膜が薄すぎるとアモルファス層が薄くなり、単結晶のシリサイド膜の形成が困難になるため、シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚を0.5nm以上とすることが好ましい。
【0044】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板主表面側の第1の絶縁膜によって区分されたシリコン領域表面にのみ第1の金属及びシリコンを主成分とするシリサイド膜を、このシリサイド膜の表面又はこのシリサイド膜の表面及び結晶粒界に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜を形成する工程と、この窒化物膜表面上に開口部を有する第2の絶縁膜を形成する工程と、前記開口部内にアモルファスシリコンを埋め込む工程と、少なくともこのアモルファスシリコン上にアルミニウムを形成する工程と(通常はアルミニウム上にさらにチタニウムを形成する)、熱処理により前記アモルファスシリコンとアルミニウムとを置換して前記開口部内にアルミニウムを埋め込む工程とを有することを特徴とする。
【0045】
前記発明によれば、予めシリサイド膜表面に窒化物膜が形成されているため、アルミニウムによるスパイクの発生を防止することができる。また、あらためて開口部内部に窒化物膜を堆積する必要がないので、工程数の増加や開口部が狭められることによる抵抗の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、シリコン領域上に良質のシリサイド膜を形成することができ、またシリサイド膜の熱的安定性が低下するといった問題を防止することが可能となり、素子が微細化されても優れたプロセス安定性で寄生抵抗の低減等、特性に優れた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0048】
まず、本発明の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。
【0049】
まず、シリコン基板1上に、素子分離用絶縁膜(シリコン酸化膜)2を形成する。続いて、MOSFETのゲート酸化膜3、多結晶シリコンからなるゲート電極4及び浅いソース・ドレイン拡散層5を形成し、さらにシリコン窒化膜からなるゲート側壁膜6をマスクとして深いソース・ドレイン拡散層7を形成する(図1(a))。
【0050】
次に、希フッ酸処理等により多結晶シリコンゲート電極4表面及び深いソース・ドレイン拡散層7表面のシリコン酸化膜を除去する。その後、オゾン水、または過酸化水素水などの酸化剤を含む水溶液と塩酸、硫酸、アンモニア水などとの混合液等による表面処理を行うことにより、シリサイド膜形成領域の表面に均一で薄い自然酸化膜(図示せず)を形成する。続いて、全面に10〜30%程度のチタニウムを含むコバルト膜8を堆積し、さらにその上にチタニウム窒化膜9を堆積する。この時、チタニウム窒化膜9の堆積を省略することも可能である(図1(b))。
【0051】
次に、ランプアニール装置等により、550〜700℃程度の温度で短時間アニールを行い、シリコン基板1及び多結晶シリコン膜4とチタニウムを含むコバルト膜8とを反応させて、チタニウムを含むコバルトモノシリサイド(CoSi)膜10を形成する。その後、硫酸と過酸化水素水の混合液のようなエッチング液を用いて、チタニウム窒化膜9及び未反応のチタニウムを含むコバルト膜8をエッチング除去する(図1(c))。
【0052】
次に、ランプアニール装置等により窒素又はアンモニア雰囲気中で800〜900℃程度の温度で短時間アニールを行い、チタニウムを含むコバルトモノシリサイド(CoSi)膜10を低抵抗のコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜11に変化させるとともに、膜中に含まれていたチタニウムを膜表面の窒化反応によって吸い出し、コバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜11の表面にチタニウム窒化膜12を選択的に形成する。このとき、コバルトダイシリサイドが多結晶である場合には、その結晶粒界にもチタニウム窒化物(膜)が選択的に形成される(図1(d))。
【0053】
次に、全面に減圧CVD法及びプラズマCVD法により、シリコン酸化膜13及び14を堆積し、CMP工程等により平坦化を行う(図1(e))。
【0054】
次に、シリコン酸化膜13及び14に対してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内部にコンタクトプラグとしてタングステン等の金属膜15を埋め込み、さらにアルミニウム等の配線層16を形成してソース・ドレイン拡散層及びゲート電極と接続する(図1(f))。
【0055】
以上の工程により、多結晶シリコンゲート電極4上及びソース・ドレイン拡散層7上にのみコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜11が形成され、かつ、コバルトダイシリサイド膜11の表面上に選択的にチタニウム窒化膜12が形成される。コバルトダイシリサイドが多結晶の場合には、結晶粒界にも選択的にチタニウム窒化膜が形成される。
【0056】
本実施形態によれば、ゲート長0.2μm以下の細線領域での寄生抵抗の低減はもちろんのこと、コバルト膜にシリコン酸化膜に対して還元性の高いチタニウムが含まれているため、従来のサリサイドプロセスで問題となっていた自然酸化膜によるシリサイド反応の阻害や不均一な反応が起こることを防止することができる。また、フッ酸系の前処理で発生するウォーターマークの発生といった問題も生じなくなる。また、コバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜表面に自己整合的に耐熱性の高いチタニウム窒化膜を形成することができるため、層間膜としてのシリコン酸化膜堆積時の熱によってコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜が凝集を起こすといった問題も防止することができる。さらに、チタニウム窒化膜がコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜表面にのみ形成されていることから、コンタクトホール側壁にもチタニウム窒化膜が形成されている場合に比べて、コンタクトホールが狭められることによる抵抗の増大を抑えることができる。
【0057】
ところで、本実施形態の図1(b)の工程において、チタニウムを含むコバルト膜8を堆積する際に、多結晶シリコンゲート電極4及びソース・ドレイン拡散層7の表面に形成するシリコン酸化膜の厚さは、堆積するチタニウムを含むコバルト膜8の厚さ(T)及びチタニウム濃度(N)によって決定される。すなわち、このシリコン酸化膜の還元に寄与し得るチタニウムの量は、膜厚換算でT×Nということになる。
【0058】
図9は、チタニウムを含むコバルト膜(コバルト−チタニウム合金)の膜厚を10、15、20nmと変化させたときの、チタニウム濃度(原子%)に対するチタニウムによって還元可能な酸化膜厚の上限を示した測定結果である。例えば、多結晶シリコンゲート電極4及びソース・ドレイン拡散層7の表面に形成するシリコン酸化膜の厚さは、コバルト−チタニウム合金の膜厚が10nmでチタニウム濃度が10%とすると、膜厚換算でT×N=1nmとなり、この値は縦軸に示した酸化膜厚の上限値とほぼ一致している。他の値についても図9から同様の結果となることがわかる。すなわち、チタニウムによって還元し得るシリコン酸化膜の最大膜厚は、チタニウムの換算膜厚(T×N)とほぼ同程度であるといえる。したがって、均一なコバルト珪化物の膜を得るためには、コバルト珪化物を形成するシリコン表面のシリコン酸化膜の膜厚を、チタニウムの換算膜厚(T×N)以下に抑えることが必要となる。
【0059】
また、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度に対しても、形成されるコバルト珪化物の抵抗率の観点から制限を加える必要がある。図10に、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度と形成されるコバルト珪化物の抵抗率の関係を示す。この図から、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度が上昇するにしたがって、形成されるコバルト珪化物の抵抗率が上昇していくことがわかる。この抵抗率の上昇カーブは、コバルト珪化物を形成する熱工程等によって変化するが、30%以上のチタニウム濃度になると、抵抗率が許容範囲を上回ってしまうものと考えられる。したがって、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度は30%以下に抑える必要がある。
【0060】
以上のことから、均一なコバルト珪化物の膜を得るためには、コバルト珪化物を形成するシリコン表面のシリコン酸化膜膜厚を図12に示す範囲にすることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態によれば、(100)面方位のシリコン基板上において形成されるコバルトダイシリサイド膜を多結晶ではなく単結晶にすることが可能である。
【0062】
コバルト珪化物を形成するシリコン表面にシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜をコバルト−チタニウム合金膜中のチタニウムによって還元させると、シリコン基板とコバルト−チタニウム合金膜の界面に、チタニウム、シリコン及び酸素を主成分とするアモルファス層が形成される。このようなアモルファス層がない場合には、コバルトとシリコンとの反応は、双方が拡散する結果、コバルト−チタニウム合金膜中のあらゆる部分で生じ、図12に示すように、
Co→Co2 Si→CoSi→CoSi2
というように順番に形成されていく。一方、前述のようなアモルファス層が界面に存在する場合には、コバルト原子のシリコン基板への供給がアモルファス層によって律速され、なおかつアモルファス層とシリコン基板の界面でのみ、
Co→CoSi2
という反応が生じるようになる。このコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜は、シリコンと結晶構造が非常に近似しているため、アモルファス層とシリコンの界面でコバルトダイシリサイドがエピタキシャル成長し、単結晶のコバルトダイシリサイドが形成される。したがって、図1(b)の工程においてチタニウムを含むコバルト膜を形成する際に、所望膜厚のシリコン酸化膜を形成しておくことにより、図1(c)の熱処理工程において単結晶のコバルトダイシリサイドを形成することも可能となる。
【0063】
このように、(100)面方位のシリコン基板上に単結晶のコバルトダイシリサイドを形成する場合、コバルト−チタニウム合金膜とシリコン基板の界面に形成されるチタニウム、シリコン及び酸素を主成分とするアモルファス層が重要な役割をはたす。図1(b)の工程において、チタニウムを含むコバルト膜8を堆積する際にソース・ドレイン拡散層7の表面に形成しておく酸化シリコン膜の厚さは、薄すぎると形成されるコバルトダイシリサイド膜が多結晶になってしまう。単結晶のコバルトダイシリサイド膜を形成するために必要なシリコン酸化膜の膜厚は、最低でも0.5nm以上必要であることを実験により確認している。
【0064】
以上のように、チタニウムを含むコバルト膜を堆積する際、シリコン上に形成しておくシリコン酸化膜の膜厚を制御することが非常に重要である。このシリコン酸化膜の膜厚を制御するためには、チタニウムを含むコバルト膜を堆積する前に行う処理において、シリコン酸化膜の剥離工程後に再度化学的にシリコン表面を所望の厚さだけ酸化するために、処理液中のオゾン、活性酸素、窒素酸化物、ハロゲン酸化物、過酸化水素水等の酸化剤の濃度や、処理時間を制御することは勿論のこと、処理を終えてからチタニウムを含むコバルト膜を堆積するまでの間にシリコン酸化膜厚を変化させないようにすることが重要となる。
【0065】
大気中では、大気中の酸素及び水蒸気によってシリコン酸化膜厚が時間とともに増大していく。そのため、酸化膜厚を制御する処理を行った後、チタニウムを含むコバルト膜を堆積するまでの間は、大気中に比べて酸素及び水蒸気の濃度が低い雰囲気に基板を保持しておくことが重要である。本願発明者らの検討結果によれば、酸素と窒素の混合比率が1:4であるような混合ガス雰囲気或いは大気中において、室温で湿度が50%を越えた時には自然酸化膜厚が最大3nmにまで成長することが判明している。したがって、これよりも湿度を低く保つか、或いは酸素や炭酸ガスの少ない雰囲気に保管することが必要である。シリカゲル、マグネシア(MgO)或いは活性炭を入れた乾燥ボックスを用いて、湿度を20%以下に保つことにより、自然酸化膜の膜厚を1nm以下に抑制することが可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態においては、(100)面方位のシリコン基板上において単結晶のコバルトダイシリサイド膜を得ることが可能であり、多結晶のコバルトダイシリサイドに比べて膜の均一性が向上し、コバルトダイシリサイド膜底面とゲート酸化膜及びソース・ドレイン拡散層の接合位置との最小距離を大きく保つことが可能となり、ゲート耐圧の劣化や接合リークの発生を抑制することが可能になるとともに、コバルト珪化物の耐熱性も向上する。
【0067】
なお、上記実施形態では、チタニウムを含むコバルト膜8を用いたが、チタニウムの代わりにZr、Hf、V、Nb、Ta又はCrを、Coの代わりにNi、Pt又はPdを用いることも可能である。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について、図2を参照して説明する。
【0069】
なお、MOSトランジスタの作製工程等については図1に示した第1の実施形態と同様であるため、途中の工程までは第1の実施形態を参照することとし、説明は省略する。
【0070】
図1(d)に示す表面がチタニウム窒化膜12で覆われたコバルトシリサイド膜11を貼り付けた構造を形成した後、層間絶縁膜(シリコン酸化膜)13及び14を全面に堆積し、コンタクトホールを形成する。その後、アモルファスシリコン膜17を堆積してエッチバックを行い、コンタクトホール内部にのみアモルファスシリコン17を残す。続いて、全面にアルミニウム膜18及びチタニウム膜19を堆積する(図2(a))。
【0071】
次に、600℃以下の熱工程によりアモルファスシリコン17、アルミニウム18及びチタニウム19を反応させて、コンタクトホール内部のアモルファスシリコン17をアルミニウム20に置換する。その後、CMP工程等により、コンタクトホール外部に残るアルミニウム18、チタニウム19及び置換反応によって吸い出されたシリコン17を除去する(図2(b))。
【0072】
次に、全面にアルミニウム等の配線用金属21を堆積してパターニングを行うことにより、半導体素子部と配線層とを接続する(図2(c))。
【0073】
このように本実施形態によれば、予めシリサイド膜11表面が拡散バリア性の高いチタニウム窒化膜12で覆われているため、アルミニウムによるスパイクの発生を防止することができる。また、あらためてコンタクトホール内部にチタニウム窒化膜を堆積する必要がないので、工程数の増加やコンタクトホールが狭められることによる抵抗の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造工程を示した工程断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る製造工程を示した工程断面図。
【図3】従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図4】他の従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図5】従来技術の問題点について示した断面図。
【図6】従来技術の問題点について示した断面図。
【図7】他の従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図8】他の従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図9】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面に形成し得るシリコン酸化膜厚の上限について示した図。
【図10】コバルト−チタニウム合金中のチタニウム濃度の上限について示した図。
【図11】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面に形成し得るシリコン酸化膜厚の範囲について示した図。
【図12】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面にシリコン酸化膜が存在しない場合のシリサイド化反応について示した図。
【図13】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面に一定量以上のシリコン酸化膜が存在する場合のシリサイド化反応について示した図。
【符号の説明】
【0075】
1…シリコン基板
2…素子分離絶縁膜
3…ゲート絶縁膜
4…多結晶シリコンゲート電極
5、7…ソース・ドレイン拡散層
6…ゲート側壁膜
8…チタニウムを含んだコバルト膜
9…チタニウム窒化膜
10…チタニウムを含んだコバルトモノシリサイド膜
11…コバルトダイシリサイド膜
12…チタニウム窒化膜
13、14…シリコン酸化膜
15…コンタクトプラグ
16…配線
17…アモルファスシリコン膜
18…アルミニウム膜
19…チタニウム膜
20…シリコンと置換したアルミニウム
21…配線
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法、特にゲート長の短い微細なMISトランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の素子の微細化に伴う寄生抵抗の増大に対応するために、MOSFETのポリシリコンゲート電極及びソース・ドレイン拡散層上に自己整合的に金属珪化物(以下、シリサイドという)を貼り付けるサリサイド(SALICIDE:Self ALIgned siliCIDE)プロセスが、広く用いられるようになってきている。
【0003】
図3(a)〜(f)を用いて、従来広く用いられてきたチタニウムを用いたサリサイドプロセスの一例を説明する。
【0004】
まず、シリコン基板101上に、素子分離用絶縁膜(シリコン酸化膜)領域102を形成後、MOSFETのゲート酸化膜103、多結晶シリコンゲート電極104、浅いソース・ドレイン拡散層105を形成し、さらにシリコン窒化膜を用いた側壁膜106をマスクとして深いソース・ドレイン拡散層107を形成する(図3(a))。
【0005】
次に、希フッ酸処理又は希フッ酸処理後にRCA等の処理を行い、全面にチタニウム膜108及びチタニウム窒化膜109を堆積する(図3(b))。
【0006】
次に、ランプアニール装置等により650〜750℃程度の温度で短時間アニールを行い、露出しているシリコン基板101及び多結晶シリコン膜104とチタニウム膜108を反応させて、C49結晶構造のチタニウムダイシリサイド(TiSi2 )膜110を形成する。その後、硫酸と過酸化水素水の混合液のようなエッチング液を用いて、チタニウム窒化膜109や未反応のチタニウム膜108をエッチング除去する(図3(c))。
【0007】
次に、ランプアニール装置等により750〜900℃程度の温度で短時間アニールを行い、チタニウムダイシリサイド(TiSi2 )膜110をC54結晶構造を有する低抵抗のチタニウムダイシリサイド(TiSi2 )膜111に変化させる(図3(d))。
【0008】
次に、全面に減圧CVD法及びプラズマCVD法によりシリコン酸化膜112及び113を堆積し、CMP工程等により平坦化を行う(図3(e))。
【0009】
次に、シリコン酸化膜112及び113に対してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内部にタングステン等の金属114を埋め込む。その後、アルミニウム等の配線層115をソース・ドレイン拡散層及びゲート電極に接続する(図3(f))。
【0010】
このようなチタニウムを用いたサリサイドプロセスは、ソース・ドレイン拡散層やゲート多結晶シリコン領域の寄生抵抗を大幅に低減させる効果がある。しかしながら、素子の微細化が進みゲート長が0.2μm以下にまで小さくなると、TiSi2 膜の結晶構造が2回目のランプアニールによってもC54に変化しなくなるために抵抗が低下しなくなるといった、いわゆる細線効果が生じるために、半導体素子に適用するメリットが小さくなってくる。
【0011】
そのため、近年ではチタニウムシリサイドよりも細線効果が起こりにくいコバルトシリサイド膜を用いたサリサイドプロセスが注目を集めている。
【0012】
図4(a)〜(d)を用いて、コバルトを用いたサリサイドプロセスの一例を説明する。
【0013】
図3(a)の状態のMOSFET素子に対して、希フッ酸処理によってシリコン基板101表面及び多結晶シリコン膜104表面の自然酸化膜を除去した後、全面にコバルト膜116及びチタニウム窒化膜109を堆積する(図4(a))。
【0014】
次に、ランプアニール装置等により、450〜550℃程度の温度で短時間アニールを行い、露出しているシリコン基板101及び多結晶シリコン膜104とコバルト膜116を反応させてコバルトモノシリサイド(CoSi)膜117を形成する。続いて、硫酸と過酸化水素水の混合液のようなエッチング液を用いて、チタニウム窒化膜109及び未反応のコバルト膜116をエッチング除去する(図4(b))。
【0015】
次に、ランプアニール装置等により、700〜850℃程度の温度で短時間のアニールを行い、コバルトモノシリサイド(CoSi)膜117を低抵抗のコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜118に変化させる(図4(c))。
【0016】
次に、全面に減圧CVD法及びプラズマCVD法によりシリコン酸化膜112及び113を堆積し、CMP工程等により平坦化を行う。続いて、シリコン酸化膜112及び113に対してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内部にタングステン等の金属114を埋め込み、アルミニウム等の配線層115をソース・ドレイン拡散層及びゲート電極に接続する(図4(d))。
【0017】
このようなコバルトシリサイド膜を用いたサリサイドプロセスでは、チタニウムシリサイド膜を用いたサリサイドプロセスに比べて細線効果が起こりにくいという利点はあるが、以下のような欠点も持つ。
【0018】
すなわち、チタニウムに比べてコバルトはシリコン酸化膜を還元させる能力に乏しいため、コバルトを堆積する際にシリコン基板や多結晶シリコン膜表面にRCA処理後に生成されるような自然酸化膜が存在した場合には、シリサイド反応が阻害される。そのため、図4(b)のようなコバルトモノシリサイド(CoSi)膜117が全く形成されないことがある。また、希フッ酸を用いた前処理によって自然酸化膜を除去した状態でコバルト膜を堆積しようとした場合においても、前処理後の経過時間等の要因によって不均一な自然酸化膜ができると、図5に示すようにコバルトモノシリサイド(CoSi)膜117の成膜が不均一になるといった問題がある。また、希フッ酸系の処理のみを前処理として用いた場合には、露出したシリコン基板表面や多結晶シリコン膜表面、特に素子分離絶縁膜との界面付近にウォーターマーク又は水ガラスと呼ばれるシリコン系酸化膜が付着し、シリサイド化反応を阻害する場合もある。
【0019】
さらに、コバルトシリサイド膜は耐熱性といった観点でもチタニウムシリサイド膜に対して劣っているため、サリサイドプロセス終了後の層間膜用のシリコン酸化膜の堆積時の熱によって、図6に示すようにコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜118が凝集を起こし、そのため抵抗の上昇を招くといった問題点も発生する。
【0020】
一方、コバルトサリサイドプロセスでは、コンタクトプラグの低抵抗化を目的としたアモルファスシリコン−アルミニウム置換プロセスにおいて、様々な問題が発生する。
【0021】
図7(a)〜(c)を用いて、この問題点を説明する。
【0022】
図4(c)に示すコバルトシリサイド膜118を貼り付けた構造に対して、層間絶縁膜112及び113を堆積する。層間絶縁膜112及び113にコンタクトホールを形成した後、アモルファスシリコン膜119を堆積してエッチバックを行い、コンタクトホール内部にのみアモルファスシリコン膜119を残す。続いて、全面にアルミニウム膜120及びチタニウム膜121を堆積する(図7(a))。
【0023】
次に、600℃以下の熱工程によりアモルファスシリコン119、アルミニウム120及びチタニウム121を反応させて、コンタクトホール内部のアモルファスシリコン119をアルミニウム122と置換する。その後、CMP工程等により、コンタクトホール外部に残るアルミニウム120、チタニウム121及び置換反応によって吸い出されたシリコン119を研磨して、これらを除去する(図7(b))。
【0024】
次に、全面にアルミニウム等の配線用金属124を堆積してパターニングを行うことにより、半導体素子部と配線層を接続する(図7(c))。
【0025】
このような工程によりコンタクト部分を形成する場合、アモルファスシリコンとアルミニウムの置換を行う熱工程においてコバルトシリサイド118に対してアルミニウムのスパイク123が入り込み、場合によっては拡散層にまで達することがある。このようなアルミニウムのスパイクが発生した場合には、接合特性の劣化の原因となる。
【0026】
このようなアルミニウムのスパイクの発生を予防するために、コンタクトホール内部に予め拡散バリアとして有効なチタニウム窒化膜を堆積しておくといった手法も用いられる。図8(a)〜(c)を用いて、このチタニウム窒化膜を予め堆積するプロセスについて説明する。
【0027】
まず、図4(c)に示すコバルトシリサイド膜118を貼り付けた構造に対して、層間絶縁膜112及び113を堆積し、コンタクトホールを形成する。その後、チタニウム窒化膜125及びアモルファスシリコン膜119を順次堆積してエッチバックを行い、コンタクトホール内部にのみアモルファスシリコン膜119を残す。続いて、全面にアルミニウム膜120及びチタニウム膜121を堆積する(図8(a))。
【0028】
次に、600℃以下の熱工程によりアモルファスシリコン119、アルミニウム120及びチタニウム121を反応させてコンタクトホール内部のアモルファスシリコン119をアルミニウム122に置換した後、CMP工程等によりコンタクトホール外部に残るアルミニウム120、チタニウム121、置換反応によって吸い出されたシリコン119及びチタニウム窒化膜125を除去する(図8(b))。
【0029】
次に、全面にアルミニウム等の配線用金属124を堆積してパターニングを行うことにより、半導体素子部と配線層を接続する(図8(c))。
【0030】
このような工程を用いれば、シリサイド層やその下の拡散層に対してアルミニウムのスパイクが入り込むことはなくなるが、その反面、チタニウム窒化膜成膜工程の増加、アルミニウムと比較して高抵抗のチタニウム窒化膜によってコンタクトホールが狭められることによる抵抗の上昇といった問題点が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
以上述べたように、従来、チタニウムを用いたサリサイドプロセスでは、ゲート長が0.2μm以下になると細線効果によって抵抗が十分に低下しなくなるという問題があった。また、コバルトを用いたサリサイドプロセスでは、自然酸化膜によってシリサイド反応が阻害されたり、層間膜堆積時の熱工程によってシリサイドが凝集するといった問題があった。さらに、コバルトを用いたサリサイドプロセスでは、コンタクトプラグの低抵抗化を目的としたアモルファスシリコン−アルミニウム置換プロセスにおいて、コバルトシリサイドにアルミニウムのスパイクが入り込むといった問題があった。このようなアルミニウムのスパイクの発生を予防するために、コンタクトホール内部に予め拡散バリアとしてチタニウム窒化膜等を堆積しておくことも考えられるが、チタニウム窒化膜形成工程の増加や、チタニウム窒化膜によってコンタクトホールが狭められることによる抵抗の上昇といった問題が生じる。
【0032】
本発明は上記従来の問題に対してなされたものであり、素子が微細化されても、シリサイドが形成された領域での抵抗増大を抑制でき、しかもプロセス安定性に優れた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明に係る半導体装置は、基板主表面側の絶縁膜によって区分されたシリコン領域表面にのみ第1の金属及びシリコンを主成分とするシリサイド膜が形成され、このシリサイド膜の表面又はこのシリサイド膜の表面及び結晶粒界に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜が形成されていることを特徴とする。
【0034】
前記シリコン領域としては、MISトランジスタのゲート電極を構成するシリコン領域(多結晶シリコンで形成される領域)及びMISトランジスタのソース・ドレイン拡散層(単結晶シリコン基板に形成される領域)を構成するシリコン領域の少なくとも一方の領域があげられる。
【0035】
前記第1の金属としてはCo、Ni、Pt又はPdがあげられ、前記第2の金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrがあげられる。また、前記絶縁膜としては、素子分離絶縁膜やゲート側壁絶縁膜等をあげることができる。さらに、前記窒化物膜には、第2の金属及び窒素の他にシリコンが含まれていてもよい。
【0036】
前記発明によれば、MISトランジスタが微細化されてもゲート部或いはソース・ドレイン部での寄生抵抗を十分に低減することが可能となる。また、ゲート電極やソース・ドレイン拡散層上の開口部に金属等を埋め込む場合、窒化物膜がシリサイド膜の表面のみ又はシリサイド膜の表面及び結晶粒界のみに選択的に形成されていれば、開口部側壁にも窒化物膜が形成されている場合に比べて、開口部が狭められることによる抵抗の増大を抑えることができる。
【0037】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域が形成された基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理により前記第1の金属及び第2の金属と前記シリコン領域のシリコンとを反応させて前記シリコン領域の表面にのみ第1のシリサイド膜を形成する工程と、この第1のシリサイド膜を窒化性の雰囲気で熱処理することにより第2のシリサイド膜並びにこの第2のシリサイド膜の表面又はこの第2のシリサイド膜の表面及び結晶粒界に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0038】
前記発明によれば、第2の金属によってシリコン領域上の自然酸化膜等を還元することが可能となり、シリコン領域上に良好なシリサイド膜を形成することができる。また、第2のシリサイド膜の表面等に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜を形成することにより、シリサイド膜の熱的安定性が低下するといった問題を防止することができる。よって、MISトランジスタが微細化されても高いプロセス安定性でゲート部或いはソース・ドレイン部での寄生抵抗を低減することが可能となる。
【0039】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、このシリコン酸化膜を形成した基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理により前記シリコン領域に形成されたシリコン酸化膜を前記第2の金属によって還元する工程と、熱処理により前記第1の金属と前記シリコン領域のシリコンとを反応させて前記シリコン領域の表面にのみシリサイド膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0040】
なお、前記シリコン酸化膜を還元する工程及び前記シリサイド膜を形成する工程における熱処理は同一の熱処理工程によって行うことが好ましい。
【0041】
前記発明によれば、第2の金属によってシリコン酸化膜を還元する際に、第1の金属及び第2の金属の混合膜とシリコン領域との界面にアモルファス層が形成され、このアモルファス層の作用によりアモルファス層とシリコン領域との界面において単結晶のシリサイド膜を成長させることが可能となる。したがって、シリサイド膜の均一性の向上等をはかることができ、MISトランジスタが微細化されても高いプロセス安定性で特性に優れたデバイスを作製することが可能となる。
【0042】
なお、第2の金属によってシリコン酸化膜の還元を十分に行う観点から、シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚は、前記混合膜の膜厚に該混合膜中の第2の金属の割合(混合膜中の第1及び第2の金属の原子数に対する第2の金属の原子数の割合)を乗じた値以下とすることが好ましい。
【0043】
また、シリコン酸化膜が薄すぎるとアモルファス層が薄くなり、単結晶のシリサイド膜の形成が困難になるため、シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚を0.5nm以上とすることが好ましい。
【0044】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板主表面側の第1の絶縁膜によって区分されたシリコン領域表面にのみ第1の金属及びシリコンを主成分とするシリサイド膜を、このシリサイド膜の表面又はこのシリサイド膜の表面及び結晶粒界に第2の金属及び窒素を主成分とする窒化物膜を形成する工程と、この窒化物膜表面上に開口部を有する第2の絶縁膜を形成する工程と、前記開口部内にアモルファスシリコンを埋め込む工程と、少なくともこのアモルファスシリコン上にアルミニウムを形成する工程と(通常はアルミニウム上にさらにチタニウムを形成する)、熱処理により前記アモルファスシリコンとアルミニウムとを置換して前記開口部内にアルミニウムを埋め込む工程とを有することを特徴とする。
【0045】
前記発明によれば、予めシリサイド膜表面に窒化物膜が形成されているため、アルミニウムによるスパイクの発生を防止することができる。また、あらためて開口部内部に窒化物膜を堆積する必要がないので、工程数の増加や開口部が狭められることによる抵抗の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、シリコン領域上に良質のシリサイド膜を形成することができ、またシリサイド膜の熱的安定性が低下するといった問題を防止することが可能となり、素子が微細化されても優れたプロセス安定性で寄生抵抗の低減等、特性に優れた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0048】
まず、本発明の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。
【0049】
まず、シリコン基板1上に、素子分離用絶縁膜(シリコン酸化膜)2を形成する。続いて、MOSFETのゲート酸化膜3、多結晶シリコンからなるゲート電極4及び浅いソース・ドレイン拡散層5を形成し、さらにシリコン窒化膜からなるゲート側壁膜6をマスクとして深いソース・ドレイン拡散層7を形成する(図1(a))。
【0050】
次に、希フッ酸処理等により多結晶シリコンゲート電極4表面及び深いソース・ドレイン拡散層7表面のシリコン酸化膜を除去する。その後、オゾン水、または過酸化水素水などの酸化剤を含む水溶液と塩酸、硫酸、アンモニア水などとの混合液等による表面処理を行うことにより、シリサイド膜形成領域の表面に均一で薄い自然酸化膜(図示せず)を形成する。続いて、全面に10〜30%程度のチタニウムを含むコバルト膜8を堆積し、さらにその上にチタニウム窒化膜9を堆積する。この時、チタニウム窒化膜9の堆積を省略することも可能である(図1(b))。
【0051】
次に、ランプアニール装置等により、550〜700℃程度の温度で短時間アニールを行い、シリコン基板1及び多結晶シリコン膜4とチタニウムを含むコバルト膜8とを反応させて、チタニウムを含むコバルトモノシリサイド(CoSi)膜10を形成する。その後、硫酸と過酸化水素水の混合液のようなエッチング液を用いて、チタニウム窒化膜9及び未反応のチタニウムを含むコバルト膜8をエッチング除去する(図1(c))。
【0052】
次に、ランプアニール装置等により窒素又はアンモニア雰囲気中で800〜900℃程度の温度で短時間アニールを行い、チタニウムを含むコバルトモノシリサイド(CoSi)膜10を低抵抗のコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜11に変化させるとともに、膜中に含まれていたチタニウムを膜表面の窒化反応によって吸い出し、コバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜11の表面にチタニウム窒化膜12を選択的に形成する。このとき、コバルトダイシリサイドが多結晶である場合には、その結晶粒界にもチタニウム窒化物(膜)が選択的に形成される(図1(d))。
【0053】
次に、全面に減圧CVD法及びプラズマCVD法により、シリコン酸化膜13及び14を堆積し、CMP工程等により平坦化を行う(図1(e))。
【0054】
次に、シリコン酸化膜13及び14に対してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内部にコンタクトプラグとしてタングステン等の金属膜15を埋め込み、さらにアルミニウム等の配線層16を形成してソース・ドレイン拡散層及びゲート電極と接続する(図1(f))。
【0055】
以上の工程により、多結晶シリコンゲート電極4上及びソース・ドレイン拡散層7上にのみコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜11が形成され、かつ、コバルトダイシリサイド膜11の表面上に選択的にチタニウム窒化膜12が形成される。コバルトダイシリサイドが多結晶の場合には、結晶粒界にも選択的にチタニウム窒化膜が形成される。
【0056】
本実施形態によれば、ゲート長0.2μm以下の細線領域での寄生抵抗の低減はもちろんのこと、コバルト膜にシリコン酸化膜に対して還元性の高いチタニウムが含まれているため、従来のサリサイドプロセスで問題となっていた自然酸化膜によるシリサイド反応の阻害や不均一な反応が起こることを防止することができる。また、フッ酸系の前処理で発生するウォーターマークの発生といった問題も生じなくなる。また、コバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜表面に自己整合的に耐熱性の高いチタニウム窒化膜を形成することができるため、層間膜としてのシリコン酸化膜堆積時の熱によってコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜が凝集を起こすといった問題も防止することができる。さらに、チタニウム窒化膜がコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜表面にのみ形成されていることから、コンタクトホール側壁にもチタニウム窒化膜が形成されている場合に比べて、コンタクトホールが狭められることによる抵抗の増大を抑えることができる。
【0057】
ところで、本実施形態の図1(b)の工程において、チタニウムを含むコバルト膜8を堆積する際に、多結晶シリコンゲート電極4及びソース・ドレイン拡散層7の表面に形成するシリコン酸化膜の厚さは、堆積するチタニウムを含むコバルト膜8の厚さ(T)及びチタニウム濃度(N)によって決定される。すなわち、このシリコン酸化膜の還元に寄与し得るチタニウムの量は、膜厚換算でT×Nということになる。
【0058】
図9は、チタニウムを含むコバルト膜(コバルト−チタニウム合金)の膜厚を10、15、20nmと変化させたときの、チタニウム濃度(原子%)に対するチタニウムによって還元可能な酸化膜厚の上限を示した測定結果である。例えば、多結晶シリコンゲート電極4及びソース・ドレイン拡散層7の表面に形成するシリコン酸化膜の厚さは、コバルト−チタニウム合金の膜厚が10nmでチタニウム濃度が10%とすると、膜厚換算でT×N=1nmとなり、この値は縦軸に示した酸化膜厚の上限値とほぼ一致している。他の値についても図9から同様の結果となることがわかる。すなわち、チタニウムによって還元し得るシリコン酸化膜の最大膜厚は、チタニウムの換算膜厚(T×N)とほぼ同程度であるといえる。したがって、均一なコバルト珪化物の膜を得るためには、コバルト珪化物を形成するシリコン表面のシリコン酸化膜の膜厚を、チタニウムの換算膜厚(T×N)以下に抑えることが必要となる。
【0059】
また、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度に対しても、形成されるコバルト珪化物の抵抗率の観点から制限を加える必要がある。図10に、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度と形成されるコバルト珪化物の抵抗率の関係を示す。この図から、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度が上昇するにしたがって、形成されるコバルト珪化物の抵抗率が上昇していくことがわかる。この抵抗率の上昇カーブは、コバルト珪化物を形成する熱工程等によって変化するが、30%以上のチタニウム濃度になると、抵抗率が許容範囲を上回ってしまうものと考えられる。したがって、コバルト−チタニウム合金膜中のチタニウム濃度は30%以下に抑える必要がある。
【0060】
以上のことから、均一なコバルト珪化物の膜を得るためには、コバルト珪化物を形成するシリコン表面のシリコン酸化膜膜厚を図12に示す範囲にすることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態によれば、(100)面方位のシリコン基板上において形成されるコバルトダイシリサイド膜を多結晶ではなく単結晶にすることが可能である。
【0062】
コバルト珪化物を形成するシリコン表面にシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜をコバルト−チタニウム合金膜中のチタニウムによって還元させると、シリコン基板とコバルト−チタニウム合金膜の界面に、チタニウム、シリコン及び酸素を主成分とするアモルファス層が形成される。このようなアモルファス層がない場合には、コバルトとシリコンとの反応は、双方が拡散する結果、コバルト−チタニウム合金膜中のあらゆる部分で生じ、図12に示すように、
Co→Co2 Si→CoSi→CoSi2
というように順番に形成されていく。一方、前述のようなアモルファス層が界面に存在する場合には、コバルト原子のシリコン基板への供給がアモルファス層によって律速され、なおかつアモルファス層とシリコン基板の界面でのみ、
Co→CoSi2
という反応が生じるようになる。このコバルトダイシリサイド(CoSi2 )膜は、シリコンと結晶構造が非常に近似しているため、アモルファス層とシリコンの界面でコバルトダイシリサイドがエピタキシャル成長し、単結晶のコバルトダイシリサイドが形成される。したがって、図1(b)の工程においてチタニウムを含むコバルト膜を形成する際に、所望膜厚のシリコン酸化膜を形成しておくことにより、図1(c)の熱処理工程において単結晶のコバルトダイシリサイドを形成することも可能となる。
【0063】
このように、(100)面方位のシリコン基板上に単結晶のコバルトダイシリサイドを形成する場合、コバルト−チタニウム合金膜とシリコン基板の界面に形成されるチタニウム、シリコン及び酸素を主成分とするアモルファス層が重要な役割をはたす。図1(b)の工程において、チタニウムを含むコバルト膜8を堆積する際にソース・ドレイン拡散層7の表面に形成しておく酸化シリコン膜の厚さは、薄すぎると形成されるコバルトダイシリサイド膜が多結晶になってしまう。単結晶のコバルトダイシリサイド膜を形成するために必要なシリコン酸化膜の膜厚は、最低でも0.5nm以上必要であることを実験により確認している。
【0064】
以上のように、チタニウムを含むコバルト膜を堆積する際、シリコン上に形成しておくシリコン酸化膜の膜厚を制御することが非常に重要である。このシリコン酸化膜の膜厚を制御するためには、チタニウムを含むコバルト膜を堆積する前に行う処理において、シリコン酸化膜の剥離工程後に再度化学的にシリコン表面を所望の厚さだけ酸化するために、処理液中のオゾン、活性酸素、窒素酸化物、ハロゲン酸化物、過酸化水素水等の酸化剤の濃度や、処理時間を制御することは勿論のこと、処理を終えてからチタニウムを含むコバルト膜を堆積するまでの間にシリコン酸化膜厚を変化させないようにすることが重要となる。
【0065】
大気中では、大気中の酸素及び水蒸気によってシリコン酸化膜厚が時間とともに増大していく。そのため、酸化膜厚を制御する処理を行った後、チタニウムを含むコバルト膜を堆積するまでの間は、大気中に比べて酸素及び水蒸気の濃度が低い雰囲気に基板を保持しておくことが重要である。本願発明者らの検討結果によれば、酸素と窒素の混合比率が1:4であるような混合ガス雰囲気或いは大気中において、室温で湿度が50%を越えた時には自然酸化膜厚が最大3nmにまで成長することが判明している。したがって、これよりも湿度を低く保つか、或いは酸素や炭酸ガスの少ない雰囲気に保管することが必要である。シリカゲル、マグネシア(MgO)或いは活性炭を入れた乾燥ボックスを用いて、湿度を20%以下に保つことにより、自然酸化膜の膜厚を1nm以下に抑制することが可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態においては、(100)面方位のシリコン基板上において単結晶のコバルトダイシリサイド膜を得ることが可能であり、多結晶のコバルトダイシリサイドに比べて膜の均一性が向上し、コバルトダイシリサイド膜底面とゲート酸化膜及びソース・ドレイン拡散層の接合位置との最小距離を大きく保つことが可能となり、ゲート耐圧の劣化や接合リークの発生を抑制することが可能になるとともに、コバルト珪化物の耐熱性も向上する。
【0067】
なお、上記実施形態では、チタニウムを含むコバルト膜8を用いたが、チタニウムの代わりにZr、Hf、V、Nb、Ta又はCrを、Coの代わりにNi、Pt又はPdを用いることも可能である。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について、図2を参照して説明する。
【0069】
なお、MOSトランジスタの作製工程等については図1に示した第1の実施形態と同様であるため、途中の工程までは第1の実施形態を参照することとし、説明は省略する。
【0070】
図1(d)に示す表面がチタニウム窒化膜12で覆われたコバルトシリサイド膜11を貼り付けた構造を形成した後、層間絶縁膜(シリコン酸化膜)13及び14を全面に堆積し、コンタクトホールを形成する。その後、アモルファスシリコン膜17を堆積してエッチバックを行い、コンタクトホール内部にのみアモルファスシリコン17を残す。続いて、全面にアルミニウム膜18及びチタニウム膜19を堆積する(図2(a))。
【0071】
次に、600℃以下の熱工程によりアモルファスシリコン17、アルミニウム18及びチタニウム19を反応させて、コンタクトホール内部のアモルファスシリコン17をアルミニウム20に置換する。その後、CMP工程等により、コンタクトホール外部に残るアルミニウム18、チタニウム19及び置換反応によって吸い出されたシリコン17を除去する(図2(b))。
【0072】
次に、全面にアルミニウム等の配線用金属21を堆積してパターニングを行うことにより、半導体素子部と配線層とを接続する(図2(c))。
【0073】
このように本実施形態によれば、予めシリサイド膜11表面が拡散バリア性の高いチタニウム窒化膜12で覆われているため、アルミニウムによるスパイクの発生を防止することができる。また、あらためてコンタクトホール内部にチタニウム窒化膜を堆積する必要がないので、工程数の増加やコンタクトホールが狭められることによる抵抗の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造工程を示した工程断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る製造工程を示した工程断面図。
【図3】従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図4】他の従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図5】従来技術の問題点について示した断面図。
【図6】従来技術の問題点について示した断面図。
【図7】他の従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図8】他の従来技術に係る製造工程を示した工程断面図。
【図9】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面に形成し得るシリコン酸化膜厚の上限について示した図。
【図10】コバルト−チタニウム合金中のチタニウム濃度の上限について示した図。
【図11】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面に形成し得るシリコン酸化膜厚の範囲について示した図。
【図12】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面にシリコン酸化膜が存在しない場合のシリサイド化反応について示した図。
【図13】コバルト−チタニウム合金を堆積する際にシリコン表面に一定量以上のシリコン酸化膜が存在する場合のシリサイド化反応について示した図。
【符号の説明】
【0075】
1…シリコン基板
2…素子分離絶縁膜
3…ゲート絶縁膜
4…多結晶シリコンゲート電極
5、7…ソース・ドレイン拡散層
6…ゲート側壁膜
8…チタニウムを含んだコバルト膜
9…チタニウム窒化膜
10…チタニウムを含んだコバルトモノシリサイド膜
11…コバルトダイシリサイド膜
12…チタニウム窒化膜
13、14…シリコン酸化膜
15…コンタクトプラグ
16…配線
17…アモルファスシリコン膜
18…アルミニウム膜
19…チタニウム膜
20…シリコンと置換したアルミニウム
21…配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、このシリコン酸化膜を形成した基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理により前記シリコン領域に形成されたシリコン酸化膜を前記第2の金属によって還元する工程と、熱処理により前記第1の金属と前記シリコン領域のシリコンとを反応させて前記シリコン領域の表面にのみシリサイド膜を形成する工程とを有し、
前記第1の金属はCo、Ni、Pt又はPdであり、前記第2の金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚を、前記混合膜の膜厚に該混合膜中の第2の金属の割合を乗じた値以下とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚を0.5nm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板主表面側に絶縁膜によって区分されたシリコン領域を形成する工程と、このシリコン領域表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、このシリコン酸化膜を形成した基板上に第1の金属及び第2の金属の混合膜を形成する工程と、熱処理により前記シリコン領域に形成されたシリコン酸化膜を前記第2の金属によって還元する工程と、熱処理により前記第1の金属と前記シリコン領域のシリコンとを反応させて前記シリコン領域の表面にのみシリサイド膜を形成する工程とを有し、
前記第1の金属はCo、Ni、Pt又はPdであり、前記第2の金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚を、前記混合膜の膜厚に該混合膜中の第2の金属の割合を乗じた値以下とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン領域表面に形成するシリコン酸化膜の膜厚を0.5nm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−60594(P2008−60594A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263671(P2007−263671)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【分割の表示】特願平10−162154の分割
【原出願日】平成10年6月10日(1998.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【分割の表示】特願平10−162154の分割
【原出願日】平成10年6月10日(1998.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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