半導体装置の製造方法
【課題】ゲート電極の形成後に熱処理が施される場合でも、金属から成るゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】nFET領域RnおよびpFET領域Rpの半導体基板1上にゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成した後、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3に不純物を注入する。これによって、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させることができるので、このゲート電極用金属膜3で形成されるpFET領域Rpのゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。
【解決手段】nFET領域RnおよびpFET領域Rpの半導体基板1上にゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成した後、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3に不純物を注入する。これによって、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させることができるので、このゲート電極用金属膜3で形成されるpFET領域Rpのゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、より詳細には、相補型金属絶縁膜半導体(Complementary Metal Insulator Semiconductor;略称:CMIS)トランジスタを備える半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMISトランジスタは、たとえば、ゲート絶縁膜として、従来用いられてきたシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜などと比較して高誘電率の高誘電性絶縁膜(以下「high−k膜」という)を用い、ゲート(gate)電極として、金属(metal)電極を用いたhigh−k/metal gate構造を有する。
【0003】
high−k/metal gate構造のCMISトランジスタにおいては、nチャネル型のnMISトランジスタと、pチャネル型のpMISトランジスタとで、異なる仕事関数を有するゲート電極が用いられる。ゲート電極の仕事関数を制御するために、金属自体の仕事関数を利用したデュアルメタルゲート構造(たとえば、非特許文献1参照)、またはキャッピング技術(たとえば、非特許文献2参照)などが用いられている。
【0004】
デュアルメタルゲート構造のCMISトランジスタでは、nMISトランジスタとpMISトランジスタとで、ゲート電極の材料自体を変えて、別々の金属でゲート電極を形成することによって、ゲート電極の仕事関数を調整する。キャッピング技術では、たとえばランタン(La)またはアルミニウム(Al)を含むキャッピング層上に、ゲート電極となる金属膜を形成し、金属膜にLaまたはAlを拡散させることによって、ゲート電極の仕事関数を調整する。
【0005】
デュアルメタルゲート構造のCMISトランジスタの製造フローでは、ゲート絶縁膜を成膜後、まず、nMISトランジスタが形成されるn領域およびpMISトランジスタが形成されるp領域の両方にわたって、nMISトランジスタ用のn型金属またはpMISトランジスタ用のp型金属を成膜する。成膜したn型金属またはp型金属のうち、p領域またはn領域の金属を除去し、その上に先に成膜した金属とは異なる導電型の金属、具体的にはp型金属またはn型金属を成膜して、n領域およびp領域にゲート電極をそれぞれ作製する。
【0006】
このように金属膜の除去と成膜とが繰返されるので、デュアルメタルゲート構造のように金属自体を別々にする方法では、製造フローが複雑であり、CMISトランジスタを作製することは困難である。またゲート電極の仕事関数は、ゲート電極を構成する金属膜とhigh−k膜とに依存するので、nMISトランジスタおよびpMISトランジスタの最低の閾値Vthは、金属膜およびhigh−k膜の材料によって一意に決まってしまう。またnMISトランジスタとpMISトランジスタとで、別々の仕事関数を有するゲート電極を作製したとしても、仕事関数がバンドエッジに充分に寄っていない場合があり、所望の閾値Vthを得ることは困難である。
【0007】
キャッピング技術を用いる場合、キャッピング層上では直接写真製版が不可能であるので、キャッピング層および金属膜を成膜した後、p領域またはn領域のキャッピング層および金属膜を同時に除去し、その上に新たなキャッピング層と金属膜とを成膜する必要がある。
【0008】
このように製造フローが複雑であるので、CMISトランジスタを作製することは困難である。またトランジスタの閾値Vthは、キャッピング層の種類および膜厚によって決定されるが、前述のように製造フロー上、金属膜まで形成し直す必要があるので、結局、nMISトランジスタおよびpMISトランジスタの最低の閾値Vthは、一意に決まってしまう。
【0009】
以上のように従来の技術では、仕事関数に差をつけるために製造フローが複雑になるという問題がある。また従来の技術では、nMISトランジスタとpMISトランジスタとで、別々の仕事関数を有するゲート電極を作製したとしても、仕事関数がバンドエッジに充分に寄らず、バンドエッジ以外の場所にゲート電極の仕事関数がある場合が多く、閾値Vthが比較的高い値に一意に決定してしまうという問題がある。
【0010】
ゲート電極の仕事関数を調整するための先行技術が、特許文献1〜3に開示されている。特許文献1は、チタンナイトライド(TiN)をゲート電極とするPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタの閾値最適化のために、TiN電極層に窒素をイオン注入して仕事関数を変化させて、閾値の最適化を行うことを開示している。
【0011】
特許文献2は、従来技術として、TiNなどのメタルゲート電極中に窒素注入することを開示するとともに、このメタルゲート電極中にインジウム(In)を注入することを開示している。また特許文献2は、メタルゲート電極への注入元素としてその他に、アンチモン(Sb)、ボロン(B)、リン(P)、炭素(C)などを開示している。
【0012】
特許文献3は、PMOSトランジスタのTiNなどから成る金属ゲート電極に、Inなどの金属または窒素などをイオン注入して、金属ゲート電極の仕事関数を調整することを開示している。
【0013】
【特許文献1】特開2001−203276号公報
【特許文献2】特開2002−299610号公報
【特許文献3】特開2002−118175号公報
【非特許文献1】T. Hayashi et.al, IEDM Tech. Dig., (2006) p.247.
【非特許文献2】V. Narayanan et.al, VLSI Tech. Symp., (2006) p.224.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に開示される先行技術は、ゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜を用いたトランジスタに関するものである。特許文献1には、ゲート絶縁膜としてhigh−k膜を用いたhigh−k/metal gate構造のCMISトランジスタについては開示されておらず、high−k/metal gate構造のCMISトランジスタにおいて、ゲート電極の仕事関数を制御するための方法については開示されていない。
【0015】
特許文献2および3に開示される先行技術は、ダマシンゲートプロセスによってゲート電極を形成するトランジスタに関するものである。ダマシンゲートプロセスは、ダミーゲートを作っておいて、そのダミーゲートを除去した後にゲート電極となる金属材料を埋め込んでゲート電極を形成する方法であり、ゲート電極を、半導体に添加された不純物の活性化のための熱処理後に形成するゲートラストプロセスの一種である。
【0016】
ゲートラストプロセスでは、ゲート電極となる金属材料を埋込んだ後に、熱処理工程がないので、埋込む金属材料の種類によって、ゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することが可能である。
【0017】
これに対し、ゲート電極を熱処理前に形成するゲートファーストプロセスでは、ゲート電極の形成後に熱処理が施されるので、この熱処理によってゲート電極の仕事関数が変化し易く、ゲート電極の仕事関数を制御することは困難である。
【0018】
特許文献2および3には、ゲートファーストプロセスにおいて、ゲート電極の仕事関数を制御する方法については開示されていない。
【0019】
本発明の目的は、ゲート電極の形成後に熱処理が施される場合でも、金属から成るゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することができる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法は、導電型が互いに異なる第1導電型半導体素子と第2導電型半導体素子とが並設される半導体装置の製造方法であって、前記第1導電型半導体素子が形成される第1導電型素子領域および前記第2導電型半導体素子が形成される第2導電型素子領域を有する半導体基板上に、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料から成るゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第1導電型素子領域および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜上に、金属材料から成るゲート電極用金属膜を形成する工程と、前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜に、不純物を注入する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、第1導電型素子領域および第2導電型素子領域を有する半導体基板上に、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料から成るゲート絶縁膜が形成され、このゲート絶縁膜上にゲート電極用金属膜が形成される。形成されたゲート電極用金属膜のうち、第2導電型素子領域のゲート電極用金属膜に不純物が注入される。これによって、第2導電型素子領域に形成されたゲート電極用金属膜の組成を変化させることができるので、このゲート電極用金属膜で形成される第2導電型素子領域のゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、第1導電型素子領域と第2導電型素子領域とに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。また第2導電型素子領域に形成されたゲート電極用金属膜の組成を変化させることによって、第2導電型半導体素子の閾値を容易に調整することができるので、所望の閾値を有する第1導電型半導体素子および第2導電型半導体素子を容易に形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための複数の形態について説明する。各実施の形態において、先行する実施の形態で説明している事項に対応する部分については同一の参照符を付して、重複する説明を省略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施の形態と同様である。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、相補型金属絶縁膜半導体(Complementary Metal Insulator Semiconductor;略称:CMIS)構造を有する半導体装置であり、具体的にはCMISトランジスタである。CMISトランジスタは、より詳細にはCMIS電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor;略称:FET)である。CMISFETには、nチャネル型のMISトランジスタであるn型MISトランジスタと、pチャネル型のMISトランジスタであるp型MISトランジスタとが並設される。n型MISトランジスタは、より詳細にはnMISFET(以下「nFET」という場合がある)であり、p型MISトランジスタは、より詳細にはpMISFET(以下「pFET」という場合がある)である。このようにCMISFETには、導電型が互いに異なるnMISFETとpMISFETとが並設される。nMISFETは、第1導電型半導体素子に相当し、pMISFETは、第2導電型半導体素子に相当する。
【0024】
図1は、ゲート電極用金属膜3の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。まず、従来のCMIS作製フローに則り、半導体基板1の表面から半導体基板1の内部に向けて延在した不図示のpウェル、nウェルおよび素子分離膜を順次に形成する。半導体基板1は、シリコン(Si)基板によって実現される。素子分離膜は、第1導電型素子領域であるnMISFETが形成されるnMISFET領域(以下「nFET領域」という場合がある)Rnと、第2導電型素子領域であるpMISFET領域(以下「pFET領域」という場合がある)Rpとを区分する絶縁膜であり、nFET領域Rnに形成されるpウェルと、pFET領域Rpに形成されるnウェルとの間に介在する。このように半導体基板1は、nFET領域RnおよびpFET領域Rpを有する。
【0025】
pウェル、nウェルおよび素子分離膜の形成後は、図1に示すように、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの半導体基板1上に、本実施の形態では、半導体基板1上に、全面にわたって、絶縁性材料から成るゲート絶縁膜2を形成する。ゲート絶縁膜2は、高誘電率材料であるhigh−k材料から成るhigh−k膜によって実現される。本実施の形態では、ゲート絶縁膜2として、たとえばハフニウムシリコンオキシナイトライド(HfSiON)を成膜する。ゲート絶縁膜2を構成する絶縁性材料としては、HfSiONに限らず、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料、具体的には、ハフニウムオキサイド(HfOx)、ハフニウムシリコンオキサイド(HfSiOx)およびハフニウムシリコンナイトライド(HfSiN)などの高誘電率材料、すなわちhigh−k材料が挙げられる。
【0026】
次に、図1に示すように、nFET領域RnおよびpFET領域Rpに形成されたゲート絶縁膜2上に、本実施の形態では、ゲート絶縁膜2上に、全面にわたって、スパッタ法などによって、ゲート電極用金属膜3を形成する。ゲート電極用金属膜3は、導電性材料から成る。ゲート電極用金属膜3の膜厚t1は、薄すぎるとゲート電極用金属膜3の膜厚制御が困難になり、また厚すぎると後述するイオン注入の材料の拡散が不充分となるので、本実施の形態では、15nm以上20nm以下の範囲内の値に選ばれる。本実施の形態において、ゲート電極用金属膜3を構成する導電性材料としては、窒化チタン(TiN)が用いられる。
【0027】
図2は、nFET領域Rnへのn側レジストマスク4の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。ゲート電極用金属膜3の形成後は、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布した後、写真製版を行うことによって、図2に示すように、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域、具体的にはpFET領域Rpのレジストを除去し、仕事関数を変化させたい領域にレジストが残存しないようにする。これによって、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域、具体的にはゲート電極用金属膜3の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面に、n側レジストマスク4を形成する。n側レジストマスク4の膜厚t2は、ゲート電極用金属膜3の膜厚t1および後述する図3に示すエッチバック後のゲート電極用金属膜3の膜厚t3を考慮して、後述する不純物の注入後に、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3に、不純物が注入されていない部分が残存するように選ばれる。
【0028】
その後、n側レジストマスク4が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3がn側レジストマスク4で覆われた状態で、n側レジストマスク4が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、不純物を注入、具体的にはイオン注入する。これによってpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3に不純物が注入される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3は、n側レジストマスク4で覆われているので、不純物が注入されないか、またはn側レジストマスク4に接する側の一部分のみに不純物が注入される。
【0029】
本実施の形態において、イオン注入される注入種である不純物は、窒素分子(N2)、珪素(Si)またはゲルマニウム(Ge)である。また不純物をイオン注入するときのイオン注入量は、たとえば4×1015/cm2である。不純物は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
図3は、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の一部およびn側レジストマスク4の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図4は、pFET領域Rpのp側レジストマスク5の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のイオン注入によってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、図3に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、本実施の形態ではN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属膜6が形成される。
【0031】
不純物注入金属膜6の形成後は、レジスト剥離液などによって前述の図2に示すnFET領域Rnのn側レジストマスク4を剥離する。その後、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、全面にわたって、再度レジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図3に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、pFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、p側レジストマスク5を形成する。
【0032】
その後、図3に示すように、p側レジストマスク5が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの不純物注入金属膜6がp側レジストマスク5で覆われた状態で、エッチングすることによって、nFET領域Rnの全体にわたって、ゲート電極用金属膜3をエッチバックして、ゲート電極用金属膜3の一部を厚み方向に除去する。エッチバックによってゲート電極用金属膜3の一部を除去するときは、エッチバック後のnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の膜厚t3が1nm以上4nm以下になるようにする。その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク5を剥離する。これによって、図4に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜3が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜6が形成された状態となる。
【0033】
p側レジストマスク5の剥離後は、図示は省略するが、ドライエッチング法などによって、nMISFETおよびpMISFETの各ゲート電極を形成するための加工を行う。具体的には、ゲート電極の部分とその下方のゲート絶縁膜2が残存するように、nFET領域Rpでは、ゲート電極となるゲート電極用金属膜3およびその下方のゲート絶縁膜2をエッチングし、pFET領域Rpでは、ゲート電極となる不純物注入金属膜6およびその下方のゲート絶縁膜2をエッチングする。
【0034】
ゲート電極の形成のためのエッチング後は、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、nMISFETおよびpMISFETを形成し、CMISFETを形成する。具体的には、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3およびゲート絶縁膜2の両側壁、ならびにpFET領域Rpの不純物注入金属膜6およびゲート絶縁膜2の両側壁に、たとえば二酸化珪素(SiO2)から成るサイドウォールスペーサを形成する。その後、イオン注入などによって半導体基板1に不純物を注入した後、熱処理を施して不純物を拡散させることによって、ソース領域およびドレイン領域を形成し、CMISFETを得る。
【0035】
図5は、ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときの実効仕事関数を示すグラフである。図5において、横軸は注入種を示し、縦軸は実効仕事関数(eV)を示す。ここで、「ゲート電極の実効仕事関数」とは、ゲート絶縁膜との界面におけるゲート電極の仕事関数のことであり、ゲート電極を構成する材料本来の「仕事関数」とは区別される。ゲート電極の実効仕事関数(Effective Work Function;略称:EWF)は、得られたnMISFETおよびpMISFETにおける後述する図6に示すMIS型キャパシタのC−V特性、すなわちゲート容量−ゲート電圧特性から求められるフラットバンド電圧から求められる。
【0036】
本実施の形態におけるイオン注入の注入種である不純物は、窒素分子(N2)、珪素(Si)およびゲルマニウム(Ge)である。図5のグラフには、不純物を注入したときと注入していないときとを比較するために、イオン注入なしの場合も示している。本実施の形態では、各不純物をイオン注入するときのイオン注入量は、4×1015/cm2である。図5に示すEWFは、ゲート絶縁膜2であるHfSiON膜上に、ゲート電極用金属膜3として、膜厚15nmのTiN膜を形成して、このTiN膜に対して、各注入種を4×1015/cm2注入したときの値である。
【0037】
図5に示すように、イオン注入なしのときのEWFは、4.84(eV)であり、注入種が窒素分子(N2)のときのEWFは、4.87(eV)であり、注入種が珪素(Si)のときのEWFは、4.54(eV)であり、注入種がゲルマニウム(Ge)のときのEWFは、4.42(eV)である。
【0038】
このことから、ゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、仕事関数を変化させることができることがわかる。具体的には、ゲート電極用金属膜3にN2を注入することによって、仕事関数が増大して、pチャネル側のバンドエッジに寄り、閾値Vthが下がることがわかる。またゲート電極用金属膜3にSiまたはGeを注入することによって、仕事関数が減少し、閾値Vthが上昇することがわかる。
【0039】
図6は、ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときのゲート電圧とゲート容量との関係を示すグラフである。図6において、横軸はゲート電圧(V)を示し、縦軸はゲート容量(F)を示す。図6のグラフには、不純物を注入したときと注入していないときとを比較するために、イオン注入なしの場合も示している。図6では、イオン注入なしの場合を記号「○」で示し、注入種が窒素(N2)の場合を記号「◇」で示し、注入種がゲルマニウム(Ge)の場合を記号「△」で示し、注入種が珪素(Si)の場合を記号「□」で示す。図6に示すゲート容量−ゲート電圧特性(CV特性)は、ゲート絶縁膜2であるHfSiON膜上に、ゲート電極用金属膜3として、膜厚15nmのTiN膜を形成して、このTiN膜に対して、各注入種を4×1015/cm2注入したときのMIS型キャパシタに関するものであり、このMIS型キャパシタは、n型半導体基板上において、p型MISに相当する。
【0040】
図6に示すように、ゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、CVカーブがシフトすることがわかる。これは、前述の図5に示すように、不純物の注入によって仕事関数がシフトすることに起因する。具体的には、ゲート電極用金属膜3にN2を注入した場合、CVカーブが、閾値Vthが下がる方向にシフトすることがわかる。またゲート電極用金属膜3にSiまたはGeを注入した場合、CVカーブが、閾値Vthが上がる方向にシフトすることがわかる。このようにゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、仕事関数を変化させ、閾値Vthを変化させることができる。
【0041】
以上のように本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの半導体基板1上にゲート絶縁膜2が形成され、このゲート絶縁膜2上にゲート電極用金属膜3が形成される。形成されたゲート電極用金属膜3のうち、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3に不純物が注入され、不純物注入金属膜6が形成される。これによって、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させることができるので、このゲート電極用金属膜3、すなわち不純物注入金属膜6で形成されるpFET領域Rpのゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。
【0042】
またpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させることによって、pMISFETの閾値Vthを容易に調整することができる。nMISFETの閾値Vthについては、たとえば、ゲート電極となるゲート電極用金属膜3の膜厚を調整することによって、容易に調整することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを容易に形成することが可能である。
【0043】
本実施の形態では、ゲート絶縁膜2を構成する絶縁性材料は、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料であるので、ゲート絶縁膜2上のゲート電極用金属膜3に前述の不純物を注入することによって、所望の閾値Vthを実現することができる。
【0044】
特に本実施の形態では、イオン注入後に、図3に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3をエッチバックすることによって、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3を、所望の閾値Vthに適した膜厚にすることができる。したがって、所望の閾値VthのnMISFETを実現することができる。
【0045】
また本実施の形態によれば、不純物を注入する工程では、不純物をイオン注入によって注入する。これによって、ゲート電極用金属膜3に不純物を容易に注入することができるので、ゲート電極用金属膜3の組成を容易に変化させることができ、ゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを形成することができる。
【0046】
また本実施の形態では、ゲート電極用金属膜3を構成する金属材料は、窒化チタン(TiN)であるので、前述の不純物を注入することによって、仕事関数を変化させることができ、所望の閾値Vthを実現することができる。
【0047】
また本実施の形態では、ゲート電極用金属膜3に注入される不純物は、窒素分子(N2)、ゲルマニウム(Ge)またはシリコン(Si)である。前述の図5および図6に示すように、pMISFETが形成されるpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3にN2を注入することによって、仕事関数を増大させ、閾値Vthを下げることができる。またpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3にGeまたはSiを注入することによって、仕事関数を減少させ、Vthを上げることができる。GeおよびSiは、それぞれ単独で用いられてもよく、併用されてもよい。
【0048】
前述の図1〜図4に示す半導体装置の製造方法では、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックよりもイオン注入を先に実行して半導体装置を製造する場合について説明したが、このような方法に限定されず、たとえばイオン注入よりもnFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックを先に実行して半導体装置を製造してもよい。すなわち、半導体装置は、以下の図7および図8に示す製造工程を経て製造してもよい。
【0049】
図7は、pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の一部の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述の図1に示すように半導体基板1上に、ゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成した後は、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布し、その後写真製版を行うことによって、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、ゲート電極用金属膜3の上面のうちでpFET領域Rp内に属する部分上全面にp側レジストマスク7を形成する。
【0050】
その後、図7に示すように、p側レジストマスク7が形成された状態、換言すればpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3がp側レジストマスク7で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、ゲート電極用金属膜3をエッチバックすることによって、ゲート電極用金属膜3の一部を厚み方向に除去する。エッチバックによってゲート電極用金属膜3の一部を除去するときは、エッチバック後のnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の膜厚t3が1nm以上4nm以下になるようにする。
【0051】
図8は、pFET領域Rpのp側レジストマスク7の除去およびnFET領域Rnへのn側レジストマスク8の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。エッチバックの終了後は、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク7を剥離し、nFET領域RnおよびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上に、全面にわたって、再度レジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図8に示すように、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域、具体的にはpFET領域Rpのレジストを除去する。これによって、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域、具体的にはゲート電極用金属膜3の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面に、n側レジストマスク8を形成する。n側レジストマスク8の膜厚t4は、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3の膜厚t1以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入するときに、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3まで不純物が注入されることを防ぐことができる。
【0052】
その後、n側レジストマスク8が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3がn側レジストマスク8で覆われた状態で、n側レジストマスク8が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、イオン注入量をたとえば4×1015/cm2として、不純物であるN2、SiまたはGeをイオン注入する。これによって、ゲート電極用金属膜3のうち、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3のみに不純物が注入される。イオン注入によってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、前述の図4に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、本実施の形態ではN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属膜6が形成される。
【0053】
不純物注入金属膜6の形成後は、図4に示すように、レジスト剥離液などによってnFET領域Rnのn側レジストマスク8を剥離する。これによって、前述の図4に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜3が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜6が形成された状態となる。その後は、前述の図1〜図4に示す製造工程を経て製造する場合と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0054】
以上のようにイオン注入よりもnFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックを先に先に実行しても、前述の図1〜図4に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックよりもイオン注入を先に実行する場合と同じ構成の半導体装置を製造することができる。
【0055】
また、このエッチバックによって、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3の膜厚を、所望の閾値Vthに適した膜厚にすることができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETを実現することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを実現することができる。
【0056】
<第2の実施の形態>
図9〜図12は、本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、半導体装置としてCMISFETを製造する。図9は、ゲート電極用金属膜3の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。図10は、nFET領域Rnへのn側レジストマスク4の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【0057】
本実施の形態においても、まず、前述の第1の実施の形態と同様に、不図示のpウェル、nウェルおよび素子分離膜を形成した後、半導体基板1上に、pウェル、nウェルおよび素子分離膜が形成された表面側から、全面にわたってゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成する。その後、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図10に示すように、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域であるpFET領域Rpのレジストを除去する。これによって、第1の実施の形態と同様に、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域である、ゲート電極用金属膜3の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面にn側レジストマスク4を形成する。
【0058】
その後、n側レジストマスク4が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3がn側レジストマスク4で覆われた状態で、前述の第1の実施の形態と同様の注入条件に基づいて、n側レジストマスク4が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、前述の第1の実施の形態と同様の不純物をイオン注入する。これによってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物が注入される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3は、n側レジストマスク4で覆われているので、不純物が注入されないか、またはn側レジストマスク4に接する側の一部分のみに不純物が注入される。
【0059】
図11は、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3およびn側レジストマスク4の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図12は、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上への他のゲート電極用金属膜11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のイオン注入によってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、図11に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、本実施の形態ではN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属層6が形成される。
【0060】
不純物注入金属膜6の形成後は、レジスト剥離液などによって、前述の図10に示すnFET領域Rnのn側レジストマスク4を剥離する。その後、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、全面にわたってレジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図11に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、pFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、p側レジストマスク5を形成する。
【0061】
p側レジストマスク5の形成後、本実施の形態では、図11に示すように、p側レジストマスク5が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの不純物注入金属膜6がp側レジストマスク5で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、ゲート電極用金属膜3をエッチングして、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を厚み方向の全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート絶縁膜2が露出した状態になる。その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク5を剥離する。
【0062】
次に、図12に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpに形成された不純物注入金属膜6上に、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2の表面およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6の表面の全体を覆うように、他のゲート電極用金属膜11を堆積する。他のゲート電極用金属膜11は、ゲート電極用金属膜3と同様に導電性材料から成る。本実施の形態における他のゲート電極用金属膜11を構成する導電性材料としては、TiNが用いられる。他のゲート電極用金属膜11は、その膜厚t11が1nm以上4nm以下になるように、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に堆積される。
【0063】
他のゲート電極用金属膜11の形成後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0064】
以上の本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、ゲート電極用金属膜3のうち、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3には不純物が注入され、不純物注入金属膜6が形成されるので、第1の実施の形態と同様の効果が達成される。具体的には、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させ、ゲート電極の仕事関数を変化させることができるので、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。またpMISFETの閾値Vthを容易に調整することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを容易に形成することが可能である。
【0065】
特に本実施の形態では、イオン注入後に、図11に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を除去した後、図12に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上、およびpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3である不純物注入金属膜6上に、他のゲート電極用金属膜11が形成される。これによって、nFET領域Rnに、所望の閾値Vthに適した膜厚を有する他のゲート電極用金属膜11を形成することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETを実現することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを実現することができる。
【0066】
前述の図9〜図12に示す半導体装置の製造方法では、ゲート電極用金属膜3のエッチングよりもイオン注入を先に実行して半導体装置を製造する場合について説明したが、このような方法に限定されず、たとえばイオン注入よりもゲート電極用金属膜3のエッチングを先に実行して半導体装置を製造してもよい。すなわち、半導体装置は、以下の図13〜図15に示す製造工程を経て製造してもよい。
【0067】
図13は、pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図14は、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上への他のゲート電極用金属膜11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。図15は、nFET領域Rnにn側レジストマスク12を形成した状態で、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3および他のゲート電極用金属膜11にイオン注入するときの様子を示す断面図である。
【0068】
前述の図9に示すように半導体基板1上に、ゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成した後は、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布し、その後写真製版を行うことによって、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、ゲート電極用金属膜3の上面のうちでpFET領域Rp内に属する部分上全面に、p側レジストマスク7を形成する。
【0069】
その後、図13に示すように、p側レジストマスク7が形成された状態、換言すればpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3がp側レジストマスク7で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたってエッチングして、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を厚み方向全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート絶縁膜2が露出した状態になる。その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク7を剥離する。
【0070】
次に、図14に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3上に、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2の表面およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3の表面全体を覆うように、他のゲート電極用金属膜11を堆積する。他のゲート電極用金属膜11は、その膜厚t11が1nm以上4nm以下になるように、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上に堆積される。
【0071】
次いで、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜11上に、全面にわたってレジストを塗布した後、写真製版を行うことによって、図15に示すように、残存するゲート電極用金属膜3であるpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3を覆うレジストを除去する。これによって、他のゲート電極用金属膜11のnFET領域Rn内に属する部分のうちで、ゲート電極用金属膜3の側面を覆う部分を除く残余の部分上全面に、n側レジストマスク12を形成する。n側レジストマスク12の膜厚t12は、pFET領域Rpで残存するゲート電極用金属膜3の膜厚t1と、他のゲート電極用金属膜11の膜厚t11とを加算した値(t1+t11)以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入するときに、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜11まで不純物が注入されることを防ぐことができる。
【0072】
その後、n側レジストマスク12が形成された状態、換言すればnFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜11がn側レジストマスク12で覆われた状態で、n側レジストマスク12が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、イオン注入量をたとえば4×1015/cm2として、不純物であるN2、SiまたはGeをイオン注入する。これによって、pFET領域Rpで残存するゲート電極用金属膜3に不純物が注入される。この注入によって、前述の図12に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、具体的にはN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属膜6が形成される。本実施の形態では、他のゲート電極用金属膜11のうち、n側レジストマスク12で覆われる部分を除く残余の部分、すなわちpFET領域Rpに形成された他のゲート電極用金属膜11にも不純物が注入されて、不純物注入金属膜となる。
【0073】
不純物注入金属膜6の形成後は、レジスト剥離液などによってnFET領域Rnのn側レジストマスク12を剥離する。これによって、前述の図12に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていない他のゲート電極用金属膜11が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜6が形成され、この不純物注入金属膜6上に、他のゲート電極用金属膜11に不純物が注入された他の不純物注入金属膜が形成された状態となる。その後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0074】
以上のようにイオン注入よりもゲート電極用金属膜3のエッチングを先に実行しても、前述の図9〜図12に示すように、ゲート電極用金属膜3のエッチングよりもイオン注入を先に実行する場合と同じ構成の半導体装置を製造することができる。
【0075】
また、このエッチングによって、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を除去した後、イオン注入前に、図14に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3上に、他のゲート電極用金属膜11が形成される。これによって、nFET領域Rnに、所望の閾値Vthに適した膜厚を有する他のゲート電極用金属膜11を形成することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETを実現することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを実現することができる。
【0076】
<第3の実施の形態>
図16〜図21は、本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、半導体装置としてCMISFETを製造する。図16は、ゲート電極用金属膜21の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【0077】
本実施の形態においても、まず、前述の第1の実施の形態と同様に、不図示のpウェル、nウェルおよび素子分離膜を形成した後、半導体基板1上に、pウェル、nウェルおよび素子分離膜が形成された表面側から、全面にわたってゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜21を順次に形成する。本実施の形態では、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21は、第1の実施の形態で形成されるゲート電極用金属膜3の膜厚t1よりも小さく、具体的には、1nm以上4nm以下に選ばれる。
【0078】
図17は、ハードマスク22の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。本実施の形態では、ゲート電極用金属膜21の形成後は、ゲート電極用金属膜21上に、全面にわたって、ハードマスク材料を堆積させる。その後、エッチングによって、図17に示すように、ゲート電極用金属膜21のうちで仕事関数を変化させたい領域であるpFET領域Rpのハードマスク材料を除去する。これによって、ゲート電極用金属膜21のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域である、ゲート電極用金属膜21の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面に、ハードマスク22を形成する。
【0079】
ハードマスク22の材料としては、たとえば酸化ケイ素(SiOx)および窒化ケイ素(SiNx)が挙げられる。ハードマスク22の膜厚t22は、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21に不純物を注入するときに、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21まで不純物が注入されることを防ぐことができる。
【0080】
図18は、nFET領域Rnのハードマスク22上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21上への他のゲート電極用金属膜23の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。ハードマスク22の形成後は、nFET領域Rnのハードマスク22上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21上に、nFET領域Rnのハードマスク22の表面およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21の表面の全体を覆うように、他のゲート電極用金属膜23を堆積する。他のゲート電極用金属膜23は、ゲート電極用金属膜21と同様に導電性材料から成る。本実施の形態における他のゲート電極用金属膜23を構成する導電性材料としては、TiNが用いられる。他のゲート電極用金属膜23の膜厚t23は、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21を考慮して、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21と他のゲート電極用金属膜23の膜厚t23とを加算した値t24(=t21+t23)が、15nm以上20nm以下になるように選ばれる。
【0081】
図19は、pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23およびゲート電極用金属膜21にイオン注入するときの様子を示す断面図である。他のゲート電極用金属膜23の形成後は、前述の第1の実施の形態と同様の注入条件に基づいて、他のゲート電極用金属膜23が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、不純物を注入、具体的にはイオン注入する。これによって、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23、ならびにpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21に不純物が注入される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3は、ハードマスク22で覆われているので、不純物が注入されない。
【0082】
図20は、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のイオン注入によって、図19に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜21に不純物が注入されて、不純物注入金属膜25が形成され、また他のゲート電極用金属膜23に不純物が注入されて、他の不純物注入金属膜26が形成される。
【0083】
イオン注入後は、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23上およびpFET領域Rpの他の不純物注入金属膜26上に、全面にわたってレジストを塗布し、写真製版を行うことによって、図20に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去し、pFET領域Rpの他の不純物注入金属膜26上に、p側レジストマスク24を形成する。
【0084】
その後、p側レジストマスク24が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの他の不純物注入金属膜26がp側レジストマスク24で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、他のゲート電極用金属膜23をエッチングして、厚み方向全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ハードマスク22が露出した状態になる。
【0085】
図21は、ハードマスク22の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去後は、p側レジストマスク24が形成された状態で、nFET領域Rnのハードマスク22をエッチングして除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート電極用金属膜21が露出した状態になる。
【0086】
その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク24を剥離する。これによって、図21に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜21が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜25および他の不純物注入金属膜26が順次に形成された状態となる。
【0087】
p側レジストマスク24の剥離後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0088】
以上のように本実施の形態によれば、前述の第1の実施の形態と同様に、ゲート電極用金属膜21のうち、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21には不純物が注入されて不純物注入金属膜25が形成され、この不純物注入金属膜25上には、不純物が注入された他の不純物注入金属膜26が形成されるので、第1の実施の形態と同様の効果が達成される。具体的には、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜21および他のゲート電極用金属膜23の組成を変化させ、ゲート電極の仕事関数を変化させることができるので、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。またpMISFETの閾値Vthを容易に調整することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを容易に形成することが可能である。
【0089】
前述の図16〜図21に示す半導体装置の製造方法では、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去よりもイオン注入を先に実行して半導体装置を製造する場合について説明したが、このような方法に限定されず、たとえばイオン注入よりもnFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去を先に実行して半導体装置を製造してもよい。すなわち、半導体装置は、以下の図22〜図23に示す製造工程を経て製造してもよい。
【0090】
図22は、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図22〜図23に示す製造工程を経て半導体装置を製造する場合、前述の図18に示すように他のゲート電極用金属膜23を形成した後は、他のゲート電極用金属膜23上に、全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、レジストを塗布する。その後、写真製版を行うことによって、図22に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去し、pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23上に、p側レジストマスク27を形成する。
【0091】
その後、p側レジストマスク27が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23がp側レジストマスク27で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、他のゲート電極用金属膜23をエッチングして、厚み方向全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ハードマスク22が露出した状態になる。
【0092】
図23は、pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23およびゲート電極用金属膜21にイオン注入するときの様子を示す断面図である。nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去後は、p側レジストマスク27が形成された状態で、nFET領域Rnのハードマスク22をエッチングして除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート電極用金属膜21が露出した状態になる。
【0093】
ハードマスク22の除去後は、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク27を剥離する。その後、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21上およびpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23上に、全面にわたって、再度レジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図23に示すように、nFET領域Rnのレジストを残して、pFET領域Rpのレジストを除去する。これによって、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21上に、n側レジストマスク28を形成する。n側レジストマスク28の厚み寸法t25は、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21と他のゲート電極用金属膜23の膜厚t23とを加算した値t24(=t21+t23)以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21および他のゲート電極用金属膜23に不純物を注入するときに、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21にまで不純物が注入されてしまうことを防ぐことができる。
【0094】
その後、n側レジストマスク28が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜21がn側レジストマスク28で覆われた状態で、n側レジストマスク28が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、イオン注入量をたとえば4×1015/cm2として、不純物であるN2、SiまたはGeをイオン注入する。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21および他のゲート電極用金属膜23に不純物が注入され、前述の図21に示すように、不純物注入金属膜25および他の不純物注入金属膜26が形成される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21は、n側レジストマスク28で覆われているので、不純物が注入されない。
【0095】
イオン注入後は、レジスト剥離液などによってnFET領域Rnのn側レジストマスク28を剥離する。これによって、前述の図21に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜21が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜25および他の不純物注入金属膜26が順次に形成された状態となる。その後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0096】
以上のようにイオン注入よりもnFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去を先に実行しても、前述の図16〜図21に示すように、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去よりもイオン注入を先に実行する場合と同じ構成の半導体装置を製造することができる。
【0097】
前述の各実施の形態では、ゲート電極の形成後に熱処理が施されるゲートファーストプロセスに基づいてゲート電極を形成しているが、前述の各実施の形態によれば、ゲートファーストプロセスにおいて、金属から成るゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図5】ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときの実効仕事関数を示すグラフである。
【図6】ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときのゲート電圧とゲート容量との関係を示すグラフである。
【図7】pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の一部の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図8】pFET領域Rpのp側レジストマスク7の除去およびnFET領域Rnへのn側レジストマスク8の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図13】pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図14】nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上への他のゲート電極用金属膜11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図15】nFET領域Rnにn側レジストマスク12を形成した状態で、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3および他のゲート電極用金属膜11にイオン注入するときの様子を示す断面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図22】nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図23】pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23およびゲート電極用金属膜21にイオン注入するときの様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 半導体基板、2 ゲート絶縁膜、3,21 ゲート電極用金属膜、4,8,12,28 n側レジストマスク、5,7,24,27 p側レジストマスク、6,25 不純物注入金属膜、11,23 他のゲート電極用金属膜、22 ハードマスク、26 他の不純物注入金属膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、より詳細には、相補型金属絶縁膜半導体(Complementary Metal Insulator Semiconductor;略称:CMIS)トランジスタを備える半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMISトランジスタは、たとえば、ゲート絶縁膜として、従来用いられてきたシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜などと比較して高誘電率の高誘電性絶縁膜(以下「high−k膜」という)を用い、ゲート(gate)電極として、金属(metal)電極を用いたhigh−k/metal gate構造を有する。
【0003】
high−k/metal gate構造のCMISトランジスタにおいては、nチャネル型のnMISトランジスタと、pチャネル型のpMISトランジスタとで、異なる仕事関数を有するゲート電極が用いられる。ゲート電極の仕事関数を制御するために、金属自体の仕事関数を利用したデュアルメタルゲート構造(たとえば、非特許文献1参照)、またはキャッピング技術(たとえば、非特許文献2参照)などが用いられている。
【0004】
デュアルメタルゲート構造のCMISトランジスタでは、nMISトランジスタとpMISトランジスタとで、ゲート電極の材料自体を変えて、別々の金属でゲート電極を形成することによって、ゲート電極の仕事関数を調整する。キャッピング技術では、たとえばランタン(La)またはアルミニウム(Al)を含むキャッピング層上に、ゲート電極となる金属膜を形成し、金属膜にLaまたはAlを拡散させることによって、ゲート電極の仕事関数を調整する。
【0005】
デュアルメタルゲート構造のCMISトランジスタの製造フローでは、ゲート絶縁膜を成膜後、まず、nMISトランジスタが形成されるn領域およびpMISトランジスタが形成されるp領域の両方にわたって、nMISトランジスタ用のn型金属またはpMISトランジスタ用のp型金属を成膜する。成膜したn型金属またはp型金属のうち、p領域またはn領域の金属を除去し、その上に先に成膜した金属とは異なる導電型の金属、具体的にはp型金属またはn型金属を成膜して、n領域およびp領域にゲート電極をそれぞれ作製する。
【0006】
このように金属膜の除去と成膜とが繰返されるので、デュアルメタルゲート構造のように金属自体を別々にする方法では、製造フローが複雑であり、CMISトランジスタを作製することは困難である。またゲート電極の仕事関数は、ゲート電極を構成する金属膜とhigh−k膜とに依存するので、nMISトランジスタおよびpMISトランジスタの最低の閾値Vthは、金属膜およびhigh−k膜の材料によって一意に決まってしまう。またnMISトランジスタとpMISトランジスタとで、別々の仕事関数を有するゲート電極を作製したとしても、仕事関数がバンドエッジに充分に寄っていない場合があり、所望の閾値Vthを得ることは困難である。
【0007】
キャッピング技術を用いる場合、キャッピング層上では直接写真製版が不可能であるので、キャッピング層および金属膜を成膜した後、p領域またはn領域のキャッピング層および金属膜を同時に除去し、その上に新たなキャッピング層と金属膜とを成膜する必要がある。
【0008】
このように製造フローが複雑であるので、CMISトランジスタを作製することは困難である。またトランジスタの閾値Vthは、キャッピング層の種類および膜厚によって決定されるが、前述のように製造フロー上、金属膜まで形成し直す必要があるので、結局、nMISトランジスタおよびpMISトランジスタの最低の閾値Vthは、一意に決まってしまう。
【0009】
以上のように従来の技術では、仕事関数に差をつけるために製造フローが複雑になるという問題がある。また従来の技術では、nMISトランジスタとpMISトランジスタとで、別々の仕事関数を有するゲート電極を作製したとしても、仕事関数がバンドエッジに充分に寄らず、バンドエッジ以外の場所にゲート電極の仕事関数がある場合が多く、閾値Vthが比較的高い値に一意に決定してしまうという問題がある。
【0010】
ゲート電極の仕事関数を調整するための先行技術が、特許文献1〜3に開示されている。特許文献1は、チタンナイトライド(TiN)をゲート電極とするPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタの閾値最適化のために、TiN電極層に窒素をイオン注入して仕事関数を変化させて、閾値の最適化を行うことを開示している。
【0011】
特許文献2は、従来技術として、TiNなどのメタルゲート電極中に窒素注入することを開示するとともに、このメタルゲート電極中にインジウム(In)を注入することを開示している。また特許文献2は、メタルゲート電極への注入元素としてその他に、アンチモン(Sb)、ボロン(B)、リン(P)、炭素(C)などを開示している。
【0012】
特許文献3は、PMOSトランジスタのTiNなどから成る金属ゲート電極に、Inなどの金属または窒素などをイオン注入して、金属ゲート電極の仕事関数を調整することを開示している。
【0013】
【特許文献1】特開2001−203276号公報
【特許文献2】特開2002−299610号公報
【特許文献3】特開2002−118175号公報
【非特許文献1】T. Hayashi et.al, IEDM Tech. Dig., (2006) p.247.
【非特許文献2】V. Narayanan et.al, VLSI Tech. Symp., (2006) p.224.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に開示される先行技術は、ゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜を用いたトランジスタに関するものである。特許文献1には、ゲート絶縁膜としてhigh−k膜を用いたhigh−k/metal gate構造のCMISトランジスタについては開示されておらず、high−k/metal gate構造のCMISトランジスタにおいて、ゲート電極の仕事関数を制御するための方法については開示されていない。
【0015】
特許文献2および3に開示される先行技術は、ダマシンゲートプロセスによってゲート電極を形成するトランジスタに関するものである。ダマシンゲートプロセスは、ダミーゲートを作っておいて、そのダミーゲートを除去した後にゲート電極となる金属材料を埋め込んでゲート電極を形成する方法であり、ゲート電極を、半導体に添加された不純物の活性化のための熱処理後に形成するゲートラストプロセスの一種である。
【0016】
ゲートラストプロセスでは、ゲート電極となる金属材料を埋込んだ後に、熱処理工程がないので、埋込む金属材料の種類によって、ゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することが可能である。
【0017】
これに対し、ゲート電極を熱処理前に形成するゲートファーストプロセスでは、ゲート電極の形成後に熱処理が施されるので、この熱処理によってゲート電極の仕事関数が変化し易く、ゲート電極の仕事関数を制御することは困難である。
【0018】
特許文献2および3には、ゲートファーストプロセスにおいて、ゲート電極の仕事関数を制御する方法については開示されていない。
【0019】
本発明の目的は、ゲート電極の形成後に熱処理が施される場合でも、金属から成るゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することができる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法は、導電型が互いに異なる第1導電型半導体素子と第2導電型半導体素子とが並設される半導体装置の製造方法であって、前記第1導電型半導体素子が形成される第1導電型素子領域および前記第2導電型半導体素子が形成される第2導電型素子領域を有する半導体基板上に、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料から成るゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第1導電型素子領域および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜上に、金属材料から成るゲート電極用金属膜を形成する工程と、前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜に、不純物を注入する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、第1導電型素子領域および第2導電型素子領域を有する半導体基板上に、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料から成るゲート絶縁膜が形成され、このゲート絶縁膜上にゲート電極用金属膜が形成される。形成されたゲート電極用金属膜のうち、第2導電型素子領域のゲート電極用金属膜に不純物が注入される。これによって、第2導電型素子領域に形成されたゲート電極用金属膜の組成を変化させることができるので、このゲート電極用金属膜で形成される第2導電型素子領域のゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、第1導電型素子領域と第2導電型素子領域とに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。また第2導電型素子領域に形成されたゲート電極用金属膜の組成を変化させることによって、第2導電型半導体素子の閾値を容易に調整することができるので、所望の閾値を有する第1導電型半導体素子および第2導電型半導体素子を容易に形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための複数の形態について説明する。各実施の形態において、先行する実施の形態で説明している事項に対応する部分については同一の参照符を付して、重複する説明を省略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施の形態と同様である。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、相補型金属絶縁膜半導体(Complementary Metal Insulator Semiconductor;略称:CMIS)構造を有する半導体装置であり、具体的にはCMISトランジスタである。CMISトランジスタは、より詳細にはCMIS電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor;略称:FET)である。CMISFETには、nチャネル型のMISトランジスタであるn型MISトランジスタと、pチャネル型のMISトランジスタであるp型MISトランジスタとが並設される。n型MISトランジスタは、より詳細にはnMISFET(以下「nFET」という場合がある)であり、p型MISトランジスタは、より詳細にはpMISFET(以下「pFET」という場合がある)である。このようにCMISFETには、導電型が互いに異なるnMISFETとpMISFETとが並設される。nMISFETは、第1導電型半導体素子に相当し、pMISFETは、第2導電型半導体素子に相当する。
【0024】
図1は、ゲート電極用金属膜3の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。まず、従来のCMIS作製フローに則り、半導体基板1の表面から半導体基板1の内部に向けて延在した不図示のpウェル、nウェルおよび素子分離膜を順次に形成する。半導体基板1は、シリコン(Si)基板によって実現される。素子分離膜は、第1導電型素子領域であるnMISFETが形成されるnMISFET領域(以下「nFET領域」という場合がある)Rnと、第2導電型素子領域であるpMISFET領域(以下「pFET領域」という場合がある)Rpとを区分する絶縁膜であり、nFET領域Rnに形成されるpウェルと、pFET領域Rpに形成されるnウェルとの間に介在する。このように半導体基板1は、nFET領域RnおよびpFET領域Rpを有する。
【0025】
pウェル、nウェルおよび素子分離膜の形成後は、図1に示すように、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの半導体基板1上に、本実施の形態では、半導体基板1上に、全面にわたって、絶縁性材料から成るゲート絶縁膜2を形成する。ゲート絶縁膜2は、高誘電率材料であるhigh−k材料から成るhigh−k膜によって実現される。本実施の形態では、ゲート絶縁膜2として、たとえばハフニウムシリコンオキシナイトライド(HfSiON)を成膜する。ゲート絶縁膜2を構成する絶縁性材料としては、HfSiONに限らず、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料、具体的には、ハフニウムオキサイド(HfOx)、ハフニウムシリコンオキサイド(HfSiOx)およびハフニウムシリコンナイトライド(HfSiN)などの高誘電率材料、すなわちhigh−k材料が挙げられる。
【0026】
次に、図1に示すように、nFET領域RnおよびpFET領域Rpに形成されたゲート絶縁膜2上に、本実施の形態では、ゲート絶縁膜2上に、全面にわたって、スパッタ法などによって、ゲート電極用金属膜3を形成する。ゲート電極用金属膜3は、導電性材料から成る。ゲート電極用金属膜3の膜厚t1は、薄すぎるとゲート電極用金属膜3の膜厚制御が困難になり、また厚すぎると後述するイオン注入の材料の拡散が不充分となるので、本実施の形態では、15nm以上20nm以下の範囲内の値に選ばれる。本実施の形態において、ゲート電極用金属膜3を構成する導電性材料としては、窒化チタン(TiN)が用いられる。
【0027】
図2は、nFET領域Rnへのn側レジストマスク4の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。ゲート電極用金属膜3の形成後は、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布した後、写真製版を行うことによって、図2に示すように、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域、具体的にはpFET領域Rpのレジストを除去し、仕事関数を変化させたい領域にレジストが残存しないようにする。これによって、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域、具体的にはゲート電極用金属膜3の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面に、n側レジストマスク4を形成する。n側レジストマスク4の膜厚t2は、ゲート電極用金属膜3の膜厚t1および後述する図3に示すエッチバック後のゲート電極用金属膜3の膜厚t3を考慮して、後述する不純物の注入後に、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3に、不純物が注入されていない部分が残存するように選ばれる。
【0028】
その後、n側レジストマスク4が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3がn側レジストマスク4で覆われた状態で、n側レジストマスク4が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、不純物を注入、具体的にはイオン注入する。これによってpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3に不純物が注入される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3は、n側レジストマスク4で覆われているので、不純物が注入されないか、またはn側レジストマスク4に接する側の一部分のみに不純物が注入される。
【0029】
本実施の形態において、イオン注入される注入種である不純物は、窒素分子(N2)、珪素(Si)またはゲルマニウム(Ge)である。また不純物をイオン注入するときのイオン注入量は、たとえば4×1015/cm2である。不純物は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
図3は、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の一部およびn側レジストマスク4の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図4は、pFET領域Rpのp側レジストマスク5の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のイオン注入によってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、図3に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、本実施の形態ではN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属膜6が形成される。
【0031】
不純物注入金属膜6の形成後は、レジスト剥離液などによって前述の図2に示すnFET領域Rnのn側レジストマスク4を剥離する。その後、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、全面にわたって、再度レジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図3に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、pFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、p側レジストマスク5を形成する。
【0032】
その後、図3に示すように、p側レジストマスク5が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの不純物注入金属膜6がp側レジストマスク5で覆われた状態で、エッチングすることによって、nFET領域Rnの全体にわたって、ゲート電極用金属膜3をエッチバックして、ゲート電極用金属膜3の一部を厚み方向に除去する。エッチバックによってゲート電極用金属膜3の一部を除去するときは、エッチバック後のnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の膜厚t3が1nm以上4nm以下になるようにする。その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク5を剥離する。これによって、図4に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜3が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜6が形成された状態となる。
【0033】
p側レジストマスク5の剥離後は、図示は省略するが、ドライエッチング法などによって、nMISFETおよびpMISFETの各ゲート電極を形成するための加工を行う。具体的には、ゲート電極の部分とその下方のゲート絶縁膜2が残存するように、nFET領域Rpでは、ゲート電極となるゲート電極用金属膜3およびその下方のゲート絶縁膜2をエッチングし、pFET領域Rpでは、ゲート電極となる不純物注入金属膜6およびその下方のゲート絶縁膜2をエッチングする。
【0034】
ゲート電極の形成のためのエッチング後は、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、nMISFETおよびpMISFETを形成し、CMISFETを形成する。具体的には、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3およびゲート絶縁膜2の両側壁、ならびにpFET領域Rpの不純物注入金属膜6およびゲート絶縁膜2の両側壁に、たとえば二酸化珪素(SiO2)から成るサイドウォールスペーサを形成する。その後、イオン注入などによって半導体基板1に不純物を注入した後、熱処理を施して不純物を拡散させることによって、ソース領域およびドレイン領域を形成し、CMISFETを得る。
【0035】
図5は、ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときの実効仕事関数を示すグラフである。図5において、横軸は注入種を示し、縦軸は実効仕事関数(eV)を示す。ここで、「ゲート電極の実効仕事関数」とは、ゲート絶縁膜との界面におけるゲート電極の仕事関数のことであり、ゲート電極を構成する材料本来の「仕事関数」とは区別される。ゲート電極の実効仕事関数(Effective Work Function;略称:EWF)は、得られたnMISFETおよびpMISFETにおける後述する図6に示すMIS型キャパシタのC−V特性、すなわちゲート容量−ゲート電圧特性から求められるフラットバンド電圧から求められる。
【0036】
本実施の形態におけるイオン注入の注入種である不純物は、窒素分子(N2)、珪素(Si)およびゲルマニウム(Ge)である。図5のグラフには、不純物を注入したときと注入していないときとを比較するために、イオン注入なしの場合も示している。本実施の形態では、各不純物をイオン注入するときのイオン注入量は、4×1015/cm2である。図5に示すEWFは、ゲート絶縁膜2であるHfSiON膜上に、ゲート電極用金属膜3として、膜厚15nmのTiN膜を形成して、このTiN膜に対して、各注入種を4×1015/cm2注入したときの値である。
【0037】
図5に示すように、イオン注入なしのときのEWFは、4.84(eV)であり、注入種が窒素分子(N2)のときのEWFは、4.87(eV)であり、注入種が珪素(Si)のときのEWFは、4.54(eV)であり、注入種がゲルマニウム(Ge)のときのEWFは、4.42(eV)である。
【0038】
このことから、ゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、仕事関数を変化させることができることがわかる。具体的には、ゲート電極用金属膜3にN2を注入することによって、仕事関数が増大して、pチャネル側のバンドエッジに寄り、閾値Vthが下がることがわかる。またゲート電極用金属膜3にSiまたはGeを注入することによって、仕事関数が減少し、閾値Vthが上昇することがわかる。
【0039】
図6は、ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときのゲート電圧とゲート容量との関係を示すグラフである。図6において、横軸はゲート電圧(V)を示し、縦軸はゲート容量(F)を示す。図6のグラフには、不純物を注入したときと注入していないときとを比較するために、イオン注入なしの場合も示している。図6では、イオン注入なしの場合を記号「○」で示し、注入種が窒素(N2)の場合を記号「◇」で示し、注入種がゲルマニウム(Ge)の場合を記号「△」で示し、注入種が珪素(Si)の場合を記号「□」で示す。図6に示すゲート容量−ゲート電圧特性(CV特性)は、ゲート絶縁膜2であるHfSiON膜上に、ゲート電極用金属膜3として、膜厚15nmのTiN膜を形成して、このTiN膜に対して、各注入種を4×1015/cm2注入したときのMIS型キャパシタに関するものであり、このMIS型キャパシタは、n型半導体基板上において、p型MISに相当する。
【0040】
図6に示すように、ゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、CVカーブがシフトすることがわかる。これは、前述の図5に示すように、不純物の注入によって仕事関数がシフトすることに起因する。具体的には、ゲート電極用金属膜3にN2を注入した場合、CVカーブが、閾値Vthが下がる方向にシフトすることがわかる。またゲート電極用金属膜3にSiまたはGeを注入した場合、CVカーブが、閾値Vthが上がる方向にシフトすることがわかる。このようにゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、仕事関数を変化させ、閾値Vthを変化させることができる。
【0041】
以上のように本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの半導体基板1上にゲート絶縁膜2が形成され、このゲート絶縁膜2上にゲート電極用金属膜3が形成される。形成されたゲート電極用金属膜3のうち、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3に不純物が注入され、不純物注入金属膜6が形成される。これによって、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させることができるので、このゲート電極用金属膜3、すなわち不純物注入金属膜6で形成されるpFET領域Rpのゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。
【0042】
またpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させることによって、pMISFETの閾値Vthを容易に調整することができる。nMISFETの閾値Vthについては、たとえば、ゲート電極となるゲート電極用金属膜3の膜厚を調整することによって、容易に調整することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを容易に形成することが可能である。
【0043】
本実施の形態では、ゲート絶縁膜2を構成する絶縁性材料は、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料であるので、ゲート絶縁膜2上のゲート電極用金属膜3に前述の不純物を注入することによって、所望の閾値Vthを実現することができる。
【0044】
特に本実施の形態では、イオン注入後に、図3に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3をエッチバックすることによって、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3を、所望の閾値Vthに適した膜厚にすることができる。したがって、所望の閾値VthのnMISFETを実現することができる。
【0045】
また本実施の形態によれば、不純物を注入する工程では、不純物をイオン注入によって注入する。これによって、ゲート電極用金属膜3に不純物を容易に注入することができるので、ゲート電極用金属膜3の組成を容易に変化させることができ、ゲート電極の仕事関数を変化させることができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを形成することができる。
【0046】
また本実施の形態では、ゲート電極用金属膜3を構成する金属材料は、窒化チタン(TiN)であるので、前述の不純物を注入することによって、仕事関数を変化させることができ、所望の閾値Vthを実現することができる。
【0047】
また本実施の形態では、ゲート電極用金属膜3に注入される不純物は、窒素分子(N2)、ゲルマニウム(Ge)またはシリコン(Si)である。前述の図5および図6に示すように、pMISFETが形成されるpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3にN2を注入することによって、仕事関数を増大させ、閾値Vthを下げることができる。またpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3にGeまたはSiを注入することによって、仕事関数を減少させ、Vthを上げることができる。GeおよびSiは、それぞれ単独で用いられてもよく、併用されてもよい。
【0048】
前述の図1〜図4に示す半導体装置の製造方法では、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックよりもイオン注入を先に実行して半導体装置を製造する場合について説明したが、このような方法に限定されず、たとえばイオン注入よりもnFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックを先に実行して半導体装置を製造してもよい。すなわち、半導体装置は、以下の図7および図8に示す製造工程を経て製造してもよい。
【0049】
図7は、pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の一部の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述の図1に示すように半導体基板1上に、ゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成した後は、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布し、その後写真製版を行うことによって、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、ゲート電極用金属膜3の上面のうちでpFET領域Rp内に属する部分上全面にp側レジストマスク7を形成する。
【0050】
その後、図7に示すように、p側レジストマスク7が形成された状態、換言すればpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3がp側レジストマスク7で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、ゲート電極用金属膜3をエッチバックすることによって、ゲート電極用金属膜3の一部を厚み方向に除去する。エッチバックによってゲート電極用金属膜3の一部を除去するときは、エッチバック後のnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の膜厚t3が1nm以上4nm以下になるようにする。
【0051】
図8は、pFET領域Rpのp側レジストマスク7の除去およびnFET領域Rnへのn側レジストマスク8の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。エッチバックの終了後は、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク7を剥離し、nFET領域RnおよびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上に、全面にわたって、再度レジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図8に示すように、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域、具体的にはpFET領域Rpのレジストを除去する。これによって、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域、具体的にはゲート電極用金属膜3の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面に、n側レジストマスク8を形成する。n側レジストマスク8の膜厚t4は、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3の膜厚t1以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入するときに、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3まで不純物が注入されることを防ぐことができる。
【0052】
その後、n側レジストマスク8が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3がn側レジストマスク8で覆われた状態で、n側レジストマスク8が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、イオン注入量をたとえば4×1015/cm2として、不純物であるN2、SiまたはGeをイオン注入する。これによって、ゲート電極用金属膜3のうち、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3のみに不純物が注入される。イオン注入によってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、前述の図4に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、本実施の形態ではN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属膜6が形成される。
【0053】
不純物注入金属膜6の形成後は、図4に示すように、レジスト剥離液などによってnFET領域Rnのn側レジストマスク8を剥離する。これによって、前述の図4に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜3が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜6が形成された状態となる。その後は、前述の図1〜図4に示す製造工程を経て製造する場合と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0054】
以上のようにイオン注入よりもnFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックを先に先に実行しても、前述の図1〜図4に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3のエッチバックよりもイオン注入を先に実行する場合と同じ構成の半導体装置を製造することができる。
【0055】
また、このエッチバックによって、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3の膜厚を、所望の閾値Vthに適した膜厚にすることができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETを実現することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを実現することができる。
【0056】
<第2の実施の形態>
図9〜図12は、本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、半導体装置としてCMISFETを製造する。図9は、ゲート電極用金属膜3の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。図10は、nFET領域Rnへのn側レジストマスク4の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【0057】
本実施の形態においても、まず、前述の第1の実施の形態と同様に、不図示のpウェル、nウェルおよび素子分離膜を形成した後、半導体基板1上に、pウェル、nウェルおよび素子分離膜が形成された表面側から、全面にわたってゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成する。その後、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図10に示すように、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域であるpFET領域Rpのレジストを除去する。これによって、第1の実施の形態と同様に、ゲート電極用金属膜3のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域である、ゲート電極用金属膜3の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面にn側レジストマスク4を形成する。
【0058】
その後、n側レジストマスク4が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3がn側レジストマスク4で覆われた状態で、前述の第1の実施の形態と同様の注入条件に基づいて、n側レジストマスク4が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、前述の第1の実施の形態と同様の不純物をイオン注入する。これによってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物が注入される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3は、n側レジストマスク4で覆われているので、不純物が注入されないか、またはn側レジストマスク4に接する側の一部分のみに不純物が注入される。
【0059】
図11は、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3およびn側レジストマスク4の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図12は、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上への他のゲート電極用金属膜11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のイオン注入によってpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入することによって、図11に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、本実施の形態ではN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属層6が形成される。
【0060】
不純物注入金属膜6の形成後は、レジスト剥離液などによって、前述の図10に示すnFET領域Rnのn側レジストマスク4を剥離する。その後、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、全面にわたってレジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図11に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、pFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に、p側レジストマスク5を形成する。
【0061】
p側レジストマスク5の形成後、本実施の形態では、図11に示すように、p側レジストマスク5が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの不純物注入金属膜6がp側レジストマスク5で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、ゲート電極用金属膜3をエッチングして、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を厚み方向の全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート絶縁膜2が露出した状態になる。その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク5を剥離する。
【0062】
次に、図12に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpに形成された不純物注入金属膜6上に、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2の表面およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6の表面の全体を覆うように、他のゲート電極用金属膜11を堆積する。他のゲート電極用金属膜11は、ゲート電極用金属膜3と同様に導電性材料から成る。本実施の形態における他のゲート電極用金属膜11を構成する導電性材料としては、TiNが用いられる。他のゲート電極用金属膜11は、その膜厚t11が1nm以上4nm以下になるように、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpの不純物注入金属膜6上に堆積される。
【0063】
他のゲート電極用金属膜11の形成後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0064】
以上の本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、ゲート電極用金属膜3のうち、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3には不純物が注入され、不純物注入金属膜6が形成されるので、第1の実施の形態と同様の効果が達成される。具体的には、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3の組成を変化させ、ゲート電極の仕事関数を変化させることができるので、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。またpMISFETの閾値Vthを容易に調整することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを容易に形成することが可能である。
【0065】
特に本実施の形態では、イオン注入後に、図11に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を除去した後、図12に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上、およびpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3である不純物注入金属膜6上に、他のゲート電極用金属膜11が形成される。これによって、nFET領域Rnに、所望の閾値Vthに適した膜厚を有する他のゲート電極用金属膜11を形成することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETを実現することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを実現することができる。
【0066】
前述の図9〜図12に示す半導体装置の製造方法では、ゲート電極用金属膜3のエッチングよりもイオン注入を先に実行して半導体装置を製造する場合について説明したが、このような方法に限定されず、たとえばイオン注入よりもゲート電極用金属膜3のエッチングを先に実行して半導体装置を製造してもよい。すなわち、半導体装置は、以下の図13〜図15に示す製造工程を経て製造してもよい。
【0067】
図13は、pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図14は、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上への他のゲート電極用金属膜11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。図15は、nFET領域Rnにn側レジストマスク12を形成した状態で、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3および他のゲート電極用金属膜11にイオン注入するときの様子を示す断面図である。
【0068】
前述の図9に示すように半導体基板1上に、ゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜3を順次に形成した後は、ゲート電極用金属膜3上に、全面にわたってレジストを塗布し、その後写真製版を行うことによって、nFET領域Rnのレジストを除去する。これによって、ゲート電極用金属膜3の上面のうちでpFET領域Rp内に属する部分上全面に、p側レジストマスク7を形成する。
【0069】
その後、図13に示すように、p側レジストマスク7が形成された状態、換言すればpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3がp側レジストマスク7で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたってエッチングして、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を厚み方向全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート絶縁膜2が露出した状態になる。その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク7を剥離する。
【0070】
次に、図14に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3上に、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2の表面およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3の表面全体を覆うように、他のゲート電極用金属膜11を堆積する。他のゲート電極用金属膜11は、その膜厚t11が1nm以上4nm以下になるように、nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上に堆積される。
【0071】
次いで、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜11上に、全面にわたってレジストを塗布した後、写真製版を行うことによって、図15に示すように、残存するゲート電極用金属膜3であるpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3を覆うレジストを除去する。これによって、他のゲート電極用金属膜11のnFET領域Rn内に属する部分のうちで、ゲート電極用金属膜3の側面を覆う部分を除く残余の部分上全面に、n側レジストマスク12を形成する。n側レジストマスク12の膜厚t12は、pFET領域Rpで残存するゲート電極用金属膜3の膜厚t1と、他のゲート電極用金属膜11の膜厚t11とを加算した値(t1+t11)以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3に不純物を注入するときに、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜11まで不純物が注入されることを防ぐことができる。
【0072】
その後、n側レジストマスク12が形成された状態、換言すればnFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜11がn側レジストマスク12で覆われた状態で、n側レジストマスク12が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、イオン注入量をたとえば4×1015/cm2として、不純物であるN2、SiまたはGeをイオン注入する。これによって、pFET領域Rpで残存するゲート電極用金属膜3に不純物が注入される。この注入によって、前述の図12に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜3に不純物、具体的にはN2、SiまたはGeが注入されて、不純物注入金属膜6が形成される。本実施の形態では、他のゲート電極用金属膜11のうち、n側レジストマスク12で覆われる部分を除く残余の部分、すなわちpFET領域Rpに形成された他のゲート電極用金属膜11にも不純物が注入されて、不純物注入金属膜となる。
【0073】
不純物注入金属膜6の形成後は、レジスト剥離液などによってnFET領域Rnのn側レジストマスク12を剥離する。これによって、前述の図12に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていない他のゲート電極用金属膜11が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜6が形成され、この不純物注入金属膜6上に、他のゲート電極用金属膜11に不純物が注入された他の不純物注入金属膜が形成された状態となる。その後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0074】
以上のようにイオン注入よりもゲート電極用金属膜3のエッチングを先に実行しても、前述の図9〜図12に示すように、ゲート電極用金属膜3のエッチングよりもイオン注入を先に実行する場合と同じ構成の半導体装置を製造することができる。
【0075】
また、このエッチングによって、nFET領域Rnに形成されたゲート電極用金属膜3を除去した後、イオン注入前に、図14に示すように、nFET領域Rnに形成されたゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜3上に、他のゲート電極用金属膜11が形成される。これによって、nFET領域Rnに、所望の閾値Vthに適した膜厚を有する他のゲート電極用金属膜11を形成することができる。したがって、所望の閾値Vthを有するnMISFETを実現することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを実現することができる。
【0076】
<第3の実施の形態>
図16〜図21は、本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、半導体装置としてCMISFETを製造する。図16は、ゲート電極用金属膜21の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【0077】
本実施の形態においても、まず、前述の第1の実施の形態と同様に、不図示のpウェル、nウェルおよび素子分離膜を形成した後、半導体基板1上に、pウェル、nウェルおよび素子分離膜が形成された表面側から、全面にわたってゲート絶縁膜2およびゲート電極用金属膜21を順次に形成する。本実施の形態では、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21は、第1の実施の形態で形成されるゲート電極用金属膜3の膜厚t1よりも小さく、具体的には、1nm以上4nm以下に選ばれる。
【0078】
図17は、ハードマスク22の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。本実施の形態では、ゲート電極用金属膜21の形成後は、ゲート電極用金属膜21上に、全面にわたって、ハードマスク材料を堆積させる。その後、エッチングによって、図17に示すように、ゲート電極用金属膜21のうちで仕事関数を変化させたい領域であるpFET領域Rpのハードマスク材料を除去する。これによって、ゲート電極用金属膜21のうちで仕事関数を変化させたい領域を除く残余の領域である、ゲート電極用金属膜21の上面のうちでnFET領域Rn内に属する部分上全面に、ハードマスク22を形成する。
【0079】
ハードマスク22の材料としては、たとえば酸化ケイ素(SiOx)および窒化ケイ素(SiNx)が挙げられる。ハードマスク22の膜厚t22は、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21に不純物を注入するときに、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21まで不純物が注入されることを防ぐことができる。
【0080】
図18は、nFET領域Rnのハードマスク22上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21上への他のゲート電極用金属膜23の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。ハードマスク22の形成後は、nFET領域Rnのハードマスク22上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21上に、nFET領域Rnのハードマスク22の表面およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21の表面の全体を覆うように、他のゲート電極用金属膜23を堆積する。他のゲート電極用金属膜23は、ゲート電極用金属膜21と同様に導電性材料から成る。本実施の形態における他のゲート電極用金属膜23を構成する導電性材料としては、TiNが用いられる。他のゲート電極用金属膜23の膜厚t23は、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21を考慮して、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21と他のゲート電極用金属膜23の膜厚t23とを加算した値t24(=t21+t23)が、15nm以上20nm以下になるように選ばれる。
【0081】
図19は、pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23およびゲート電極用金属膜21にイオン注入するときの様子を示す断面図である。他のゲート電極用金属膜23の形成後は、前述の第1の実施の形態と同様の注入条件に基づいて、他のゲート電極用金属膜23が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、不純物を注入、具体的にはイオン注入する。これによって、nFET領域RnおよびpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23、ならびにpFET領域Rpのゲート電極用金属膜21に不純物が注入される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜3は、ハードマスク22で覆われているので、不純物が注入されない。
【0082】
図20は、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のイオン注入によって、図19に示すように、pFET領域Rpでは、ゲート電極用金属膜21に不純物が注入されて、不純物注入金属膜25が形成され、また他のゲート電極用金属膜23に不純物が注入されて、他の不純物注入金属膜26が形成される。
【0083】
イオン注入後は、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23上およびpFET領域Rpの他の不純物注入金属膜26上に、全面にわたってレジストを塗布し、写真製版を行うことによって、図20に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去し、pFET領域Rpの他の不純物注入金属膜26上に、p側レジストマスク24を形成する。
【0084】
その後、p側レジストマスク24が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの他の不純物注入金属膜26がp側レジストマスク24で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、他のゲート電極用金属膜23をエッチングして、厚み方向全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ハードマスク22が露出した状態になる。
【0085】
図21は、ハードマスク22の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去後は、p側レジストマスク24が形成された状態で、nFET領域Rnのハードマスク22をエッチングして除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート電極用金属膜21が露出した状態になる。
【0086】
その後、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク24を剥離する。これによって、図21に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜21が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜25および他の不純物注入金属膜26が順次に形成された状態となる。
【0087】
p側レジストマスク24の剥離後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0088】
以上のように本実施の形態によれば、前述の第1の実施の形態と同様に、ゲート電極用金属膜21のうち、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21には不純物が注入されて不純物注入金属膜25が形成され、この不純物注入金属膜25上には、不純物が注入された他の不純物注入金属膜26が形成されるので、第1の実施の形態と同様の効果が達成される。具体的には、pFET領域Rpに形成されたゲート電極用金属膜21および他のゲート電極用金属膜23の組成を変化させ、ゲート電極の仕事関数を変化させることができるので、nFET領域RnとpFET領域Rpとに、異なる仕事関数を有するゲート電極を容易に形成することができる。またpMISFETの閾値Vthを容易に調整することができるので、所望の閾値Vthを有するnMISFETおよびpMISFETを容易に形成することが可能である。
【0089】
前述の図16〜図21に示す半導体装置の製造方法では、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去よりもイオン注入を先に実行して半導体装置を製造する場合について説明したが、このような方法に限定されず、たとえばイオン注入よりもnFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去を先に実行して半導体装置を製造してもよい。すなわち、半導体装置は、以下の図22〜図23に示す製造工程を経て製造してもよい。
【0090】
図22は、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。図22〜図23に示す製造工程を経て半導体装置を製造する場合、前述の図18に示すように他のゲート電極用金属膜23を形成した後は、他のゲート電極用金属膜23上に、全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、レジストを塗布する。その後、写真製版を行うことによって、図22に示すように、pFET領域Rpのレジストを残して、nFET領域Rnのレジストを除去し、pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23上に、p側レジストマスク27を形成する。
【0091】
その後、p側レジストマスク27が形成された状態、換言すればpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23がp側レジストマスク27で覆われた状態で、nFET領域Rnの全体にわたって、他のゲート電極用金属膜23をエッチングして、厚み方向全体にわたって除去する。これによってnFET領域Rnは、ハードマスク22が露出した状態になる。
【0092】
図23は、pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23およびゲート電極用金属膜21にイオン注入するときの様子を示す断面図である。nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去後は、p側レジストマスク27が形成された状態で、nFET領域Rnのハードマスク22をエッチングして除去する。これによってnFET領域Rnは、ゲート電極用金属膜21が露出した状態になる。
【0093】
ハードマスク22の除去後は、レジスト剥離液などによってpFET領域Rpのp側レジストマスク27を剥離する。その後、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21上およびpFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23上に、全面にわたって、再度レジストを塗布する。そして、写真製版を行うことによって、図23に示すように、nFET領域Rnのレジストを残して、pFET領域Rpのレジストを除去する。これによって、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21上に、n側レジストマスク28を形成する。n側レジストマスク28の厚み寸法t25は、ゲート電極用金属膜21の膜厚t21と他のゲート電極用金属膜23の膜厚t23とを加算した値t24(=t21+t23)以上の値に選ばれる。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21および他のゲート電極用金属膜23に不純物を注入するときに、nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21にまで不純物が注入されてしまうことを防ぐことができる。
【0094】
その後、n側レジストマスク28が形成された状態、換言すればnFET領域Rnのゲート電極用金属膜21がn側レジストマスク28で覆われた状態で、n側レジストマスク28が形成された側から全面にわたって、すなわちnFET領域RnおよびpFET領域Rpにわたって、イオン注入量をたとえば4×1015/cm2として、不純物であるN2、SiまたはGeをイオン注入する。これによって、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜21および他のゲート電極用金属膜23に不純物が注入され、前述の図21に示すように、不純物注入金属膜25および他の不純物注入金属膜26が形成される。nFET領域Rnのゲート電極用金属膜21は、n側レジストマスク28で覆われているので、不純物が注入されない。
【0095】
イオン注入後は、レジスト剥離液などによってnFET領域Rnのn側レジストマスク28を剥離する。これによって、前述の図21に示すように、nFET領域Rnでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入されていないゲート電極用金属膜21が形成され、pFET領域Rpでは、ゲート絶縁膜2上に、不純物が注入された不純物注入金属膜25および他の不純物注入金属膜26が順次に形成された状態となる。その後は、前述の第1の実施の形態と同様にして、ゲート電極を形成した後、公知のCMISFET形成プロセスフローを順次に経ることによって、CMISFETを得る。
【0096】
以上のようにイオン注入よりもnFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去を先に実行しても、前述の図16〜図21に示すように、nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去よりもイオン注入を先に実行する場合と同じ構成の半導体装置を製造することができる。
【0097】
前述の各実施の形態では、ゲート電極の形成後に熱処理が施されるゲートファーストプロセスに基づいてゲート電極を形成しているが、前述の各実施の形態によれば、ゲートファーストプロセスにおいて、金属から成るゲート電極の仕事関数を比較的容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図5】ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときの実効仕事関数を示すグラフである。
【図6】ゲート電極用金属膜3に不純物をイオン注入したときのゲート電圧とゲート容量との関係を示すグラフである。
【図7】pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の一部の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図8】pFET領域Rpのp側レジストマスク7の除去およびnFET領域Rnへのn側レジストマスク8の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図13】pFET領域Rpへのp側レジストマスク7の形成およびnFET領域Rnのゲート電極用金属膜3の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図14】nFET領域Rnのゲート絶縁膜2上およびpFET領域Rpのゲート電極用金属膜3上への他のゲート電極用金属膜11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図15】nFET領域Rnにn側レジストマスク12を形成した状態で、pFET領域Rpのゲート電極用金属膜3および他のゲート電極用金属膜11にイオン注入するときの様子を示す断面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態である半導体装置の製造方法における各製造工程の状態を示す断面図である。
【図22】nFET領域Rnの他のゲート電極用金属膜23の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図23】pFET領域Rpの他のゲート電極用金属膜23およびゲート電極用金属膜21にイオン注入するときの様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 半導体基板、2 ゲート絶縁膜、3,21 ゲート電極用金属膜、4,8,12,28 n側レジストマスク、5,7,24,27 p側レジストマスク、6,25 不純物注入金属膜、11,23 他のゲート電極用金属膜、22 ハードマスク、26 他の不純物注入金属膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電型が互いに異なる第1導電型半導体素子と第2導電型半導体素子とが並設される半導体装置の製造方法であって、
(a)前記第1導電型半導体素子が形成される第1導電型素子領域および前記第2導電型半導体素子が形成される第2導電型素子領域を有する半導体基板上に、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料から成るゲート絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記第1導電型素子領域および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜上に、金属材料から成るゲート電極用金属膜を形成する工程と、
(c)前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜に、不純物を注入する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程では、前記不純物をイオン注入によって注入することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート電極用金属膜を構成する前記金属材料は、窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2導電型半導体素子は、pチャネル型MISトランジスタであり、
前記不純物は、窒素分子(N2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ゲート電極用金属膜に窒素分子(N2)を注入することにより、前記pチャネル型MISトランジスタの仕事関数が増大することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電型半導体素子は、pチャネル型MISトランジスタであり、
前記不純物は、ゲルマニウム(Ge)およびシリコン(Si)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ゲート電極用金属膜にゲルマニウム(Ge)およびシリコン(Si)の少なくとも一方を注入することにより、前記pチャネル型MISトランジスタの仕事関数が減少することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記(c)工程の後、
(d)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜をエッチバックする工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記(b)工程の後であって前記(c)工程の前に、
(e)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜をエッチバックする工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(c)工程の後、
(f)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜を除去する工程と、
(g)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜上に他のゲート電極用金属膜を形成する工程とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記(b)工程の後であって前記(c)工程の前に、
(h)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜を除去する工程と、
(i)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜上に他のゲート電極用金属膜を形成する工程とをさらに備え、
前記(c)工程では、前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜および前記他のゲート電極用金属膜に不純物を注入することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
導電型が互いに異なる第1導電型半導体素子と第2導電型半導体素子とが並設される半導体装置の製造方法であって、
(a)前記第1導電型半導体素子が形成される第1導電型素子領域および前記第2導電型半導体素子が形成される第2導電型素子領域を有する半導体基板上に、ハフニウム(Hf)を含むハフニウム系材料から成るゲート絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記第1導電型素子領域および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜上に、金属材料から成るゲート電極用金属膜を形成する工程と、
(c)前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜に、不純物を注入する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程では、前記不純物をイオン注入によって注入することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート電極用金属膜を構成する前記金属材料は、窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2導電型半導体素子は、pチャネル型MISトランジスタであり、
前記不純物は、窒素分子(N2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ゲート電極用金属膜に窒素分子(N2)を注入することにより、前記pチャネル型MISトランジスタの仕事関数が増大することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電型半導体素子は、pチャネル型MISトランジスタであり、
前記不純物は、ゲルマニウム(Ge)およびシリコン(Si)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ゲート電極用金属膜にゲルマニウム(Ge)およびシリコン(Si)の少なくとも一方を注入することにより、前記pチャネル型MISトランジスタの仕事関数が減少することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記(c)工程の後、
(d)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜をエッチバックする工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記(b)工程の後であって前記(c)工程の前に、
(e)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜をエッチバックする工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(c)工程の後、
(f)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜を除去する工程と、
(g)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜上に他のゲート電極用金属膜を形成する工程とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記(b)工程の後であって前記(c)工程の前に、
(h)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜を除去する工程と、
(i)前記第1導電型素子領域に形成された前記ゲート絶縁膜および前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜上に他のゲート電極用金属膜を形成する工程とをさらに備え、
前記(c)工程では、前記第2導電型素子領域に形成された前記ゲート電極用金属膜および前記他のゲート電極用金属膜に不純物を注入することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−109214(P2010−109214A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280836(P2008−280836)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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