説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】直接トンネル電流が流れる程度に薄膜化されたゲート絶縁膜におけるゲート電極からのドーパント原子の基板への拡散を防止すると共に、ゲートリーク電流を低減できるようにする。
【解決手段】第1の素子形成領域51及び第2の素子形成領域52に区画された半導体基板11上に、酸化膜からなる第1のゲート絶縁膜13Aを形成する。次に、第1のゲート絶縁膜13Aの第2の素子形成領域52に含まれる部分を除去し、半導体基板11に対して酸窒化性雰囲気で熱処理を行なうことにより、第2の素子形成領域52上に膜厚が第1のゲート絶縁膜13Aよりも小さい酸窒化膜からなる第2のゲート絶縁膜15Bを形成する。次に、第1のゲート絶縁膜13B及び第2のゲート絶縁膜15Bを窒素プラズマに暴露することにより、窒素原子をさらに導入された第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特にMISトランジスタに用いられるゲート絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なMOS型デバイスであるMOSトランジスタは、例えば相補型MOS(CMOS)トランジスタ等において、膜厚が相対的に小さいゲート絶縁膜を要求される高速駆動用トランジスタと、膜厚が相対的に大きいゲート絶縁膜を要求され比較的高電圧の入出力信号を扱う高耐圧用トランジスタとを1つの半導体基板上に形成される。
【0003】
高速駆動用トランジスタにおけるゲート絶縁膜の膜厚は1nm〜3nm程度を要求され、その上、高い耐絶縁破壊信頼性と低リーク電流性とを強く要求される。
【0004】
CMOSトランジスタにおいては、Pチャネルトランジスタのゲート電極に硼素(B)をドーパントとするP導電型を用いると共に、Nチャネルトランジスタのゲート電極に燐(P)をドーパントとするN導電型を用いる、いわゆるデュアルゲート構造を採用している。この場合、P型ドーパントである硼素はN型ドーパントである燐と比べて拡散係数が大きいため、トランジスタ形成後の熱処理により、高速駆動用トランジスタのゲート絶縁膜を拡散してチャネル領域にまで到達する。この硼素の拡散現象は浸み出しと呼ばれており、トランジスタにおけるしきい値電圧の大幅な変動及び駆動能力の劣化等を招く。この硼素の浸み出しは、当然ながらゲート絶縁膜の薄膜化を進める程顕著となり、ゲート絶縁膜に二酸化シリコン(SiO )を用いる場合に特に顕著となる。
【0005】
さらに、ゲート絶縁膜の薄膜化は該ゲート絶縁膜を介したゲートリーク電流の増大をも招く。ここでも、ゲート絶縁膜を二酸化シリコンとすると、その伝導機構は、膜厚が3.5nm以上ではFowler−Nordheim型のトンネル電流であり、膜厚が3.5nm以下では、直接トンネル電流が支配的となる。このとき、ゲート絶縁膜の膜厚が0.2nm減少するに従いゲートリーク電流は1桁ずつ増加する。このため、ゲート絶縁膜の膜厚を2.6nm以下に設定すると、ゲートリーク電流を無視することができなくなる。
【0006】
前述したように、ゲート絶縁膜に熱酸化膜を用いると、もはや硼素の浸み出し及びゲートリーク電流を抑制することができず、そこで、ゲート絶縁膜に窒素を導入した酸窒化膜が用いられるようになってきている。
【0007】
以下、従来のシリコン酸窒化膜を用いるMOS型半導体装置のゲート絶縁膜の形成方法について図面を参照しながら説明する。
【0008】
図12(a)〜図12(c)は従来のゲート絶縁膜の形成方法の工程順の断面構成を示している。
【0009】
まず、シリコンからなる半導体基板101の上部に、複数の素子形成領域同士を区画する素子分離領域102を形成し、その後、半導体基板101上の全面に膜厚が約7.5nmの熱酸化膜からなる第1のゲート酸化膜103Aを形成する。続いて、第1のゲート酸化膜103Aの上に第2の領域202を開口するレジストパターン104を形成した後、形成したレジストパターン104を用いて、第1のゲート酸化膜103Aの第2の領域202に含まれる部分にエッチングを行なうことにより半導体基板101の第2の領域を露出して、図12(a)に示す状態を得る。
【0010】
次に、図12(b)に示すように、半導体基板101に熱処理を行なって第2の領域202に膜厚が約2.6nmの熱酸化膜からなる第2のゲート酸化膜105Aを形成する。このとき、第1のゲート酸化膜103Aの膜厚は増大する。
【0011】
次に、図12(c)に示すように、半導体基板101に、一酸化窒素(NO)からなる酸窒化性雰囲気において900℃の温度で30秒〜数十分間の熱処理を行なうことにより、第1のゲート酸化膜103A及び第2のゲート酸化膜105Aに窒素を導入して、それぞれ第1のゲート酸窒化膜103B及び第2のゲート酸窒化膜105Bを得る。なお、熱処理による酸窒化処理には、一酸化窒素(NO)以外に、一酸化二窒素(NO)、又は希にアンモニア(NH)が用いられる。
【0012】
一酸化窒素(NO)を用いる場合は、酸窒化処理による膜厚の増加は0.3nm以下と小さいが、一酸化二窒素を用いる場合は、約1000℃〜1150℃の高温下で数十秒〜数十分間の酸窒化処理が必要となる。このため、一酸化二窒素(NO)による酸窒化処理は、膜厚が最大で数ナノメートルも増大するため、プロセス上の注意が必要である。
【0013】
図13(a)及び図13(b)は一酸化窒素(NO)からなる酸窒化性雰囲気により酸窒化膜としたゲート酸窒化膜における窒素濃度プロファイルであって、図13(a)は第1のゲート酸窒化膜103Bを示し、図13(b)は第2のゲート酸窒化膜105Bを示している。図13(b)に示すように、膜厚が2.6nmの第2のゲート酸窒化膜105Bにおいて、窒素原子のピークは第2のゲート酸窒化膜105Bと半導体基板101との界面付近に位置し、そのピーク濃度は酸窒化温度にもよるが、4atm%程度が最大である。なお、酸窒化処理を一酸化二窒素(NO)を用いて行なった場合でも、窒素の濃度プロファイルは図13(b)と同様であり、さらにそのピーク濃度はせいぜい1atm%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−173187号公報
【特許文献2】特開平10−209449号公報
【特許文献3】特開平11−238810号公報
【特許文献4】特開平11−317458号公報
【特許文献5】特開2000−216257号公報
【特許文献6】特開平11−233758号公報
【特許文献7】特開2000−353753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記従来の酸化窒化処理法による第2のゲート酸窒化膜105Bは、図13(b)に示すような窒素の濃度プロファイルと濃度ピークを持つため、Pチャネルトランジスタを構成するp型ゲート電極に注入された硼素イオンは、熱処理温度にもよるが比較的容易に第2のゲート酸窒化膜105Bを拡散して、半導体基板101中のチャネル領域にまで達する。もちろん、二酸化シリコンのみで構成されたゲート酸化膜と比べれば硼素の拡散は抑制されているものの、第2のゲート酸窒化膜105Bのように薄膜化された場合には、窒素のピーク濃度が4atm%程度で且つそのピーク位置が半導体基板101との界面付近に位置する窒素濃度プロファイルでは硼素の拡散を実質的に防止することができないという第1の問題がある。
【0016】
さらに、このように、濃度が4atm%程度で且つ基板界面に局在した窒素を含むシリコン酸窒化膜は、膜全体としての窒素の含有量は二酸化シリコン(SiO )の誘電率及び屈折率を変化させるには十分ではなく、ましてや電気的容量の増大及びゲートリーク電流の低減をも望めないという第2の問題がある。
【0017】
本発明は、前記従来の問題を一挙に解決し、直接トンネル電流が流れる程度に薄膜化されたゲート絶縁膜におけるゲート電極からのドーパント原子の基板への拡散を防止すると共に、ゲートリーク電流を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明者は、薄膜化されたゲート絶縁膜における硼素の拡散による浸み出しを抑制し且つゲートリーク電流を低減できるように、種々検討を重ねた結果、ゲート絶縁膜の窒素濃度が十分に高く、且つ絶縁膜中の窒素分布がなだらか(ブロード)であり、さらには、薄膜の膜厚の制御性が向上するように低温プロセスを用いることが好ましいという知見を得ている。また、一酸化窒素又は一酸化二窒素を用いた酸窒化処理において、窒素濃度を高めようとすれば、酸窒化処理の熱処理温度を高める必要があり、膜厚が極めて小さい極薄のゲート絶縁膜の形成には適さないという知見をも得ている。
【0019】
従って、ゲート絶縁膜における硼素の浸み出しを防止すると共に、窒素濃度を高めて誘電率及び屈折率を増大させることにより、ゲートリーク電流を低減するには、薄膜化されたゲート絶縁膜にブロードな窒素分布で且つ窒素のピーク濃度が10atm%を越える濃度の酸窒化膜を形成する必要がある。
【0020】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、半導体基板の上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極とを備え、ゲート絶縁膜は窒素が導入され、その窒素濃度はゲート絶縁膜の表面付近又は膜厚方向の中央付近に第1のピークを持つ。
【0021】
本発明の半導体装置によると、ゲート絶縁膜は窒素が導入され、その窒素濃度はゲート絶縁膜の表面付近又は膜厚方向の中央付近に第1のピークを持つため、薄膜化されたゲート絶縁膜であっても、ゲート電極からのドーパント原子の基板への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができる。さらには、ゲート絶縁膜の誘電率が増大するため、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【0022】
本発明の半導体装置において、ゲート絶縁膜の窒素濃度は、ゲート絶縁膜における半導体基板との界面付近に第2のピークを持つことが好ましい。
【0023】
このようにすると、ゲート絶縁膜における半導体基板との界面において、ゲート絶縁膜の耐ストレス性が向上すると共に、ゲートリーク電流が低減する。
【0024】
本発明の半導体装置において、ゲート絶縁膜における窒素濃度の第1のピーク値が約10atm%以上で且つ約40atm%以下であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の半導体装置において、ゲート絶縁膜における半導体基板との界面部分の窒素濃度は約0.2atm%以上で且つ約3atm%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁用膜を形成する工程(a)と、ゲート絶縁用膜を窒素プラズマに暴露することにより、ゲート絶縁用膜に窒素原子を導入してゲート絶縁用膜からゲート絶縁膜を形成する工程(b)とを備えている。
【0027】
第1の半導体装置の製造方法によると、ゲート絶縁用膜を窒素プラズマに暴露することにより、ゲート絶縁用膜に窒素原子を導入してゲート絶縁用膜からゲート絶縁膜を形成するため、薄膜化されたゲート絶縁膜に相対的にブロードな窒素分布で且つ窒素のピーク濃度が10atm%を越える濃度の酸窒化膜を形成できる。その結果、薄膜化されたゲート絶縁膜であっても、ゲート電極からのドーパント原子の基板への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができ、さらには、ゲート絶縁膜の誘電率が増大するため、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【0028】
第1の半導体装置の製造方法において、工程(a)では、半導体基板に対して酸化性雰囲気で熱処理を行なうことにより、半導体基板上に酸化膜からなるゲート絶縁用膜を形成することが好ましい。
【0029】
また、第1の半導体装置の製造方法において、工程(a)では、半導体基板に対して水素を含まない酸窒化性雰囲気で熱処理を行なうことにより、半導体基板上に酸窒化膜からなるゲート絶縁用膜を形成することが好ましい。
【0030】
このように、工程(a)において、水素を含まない酸窒化性雰囲気で熱処理を行なうことによりゲート絶縁用膜を形成するため、ゲート絶縁用膜における半導体基板との界面付近にも窒素原子が導入される。その結果、ゲート絶縁用膜の耐ストレス性が向上して、ゲートリーク電流が低減する。
【0031】
この場合に、酸窒化性雰囲気が、一酸化窒素と酸素とを含む雰囲気、又は一酸化二窒素からなる雰囲気であることが好ましい。
【0032】
この場合に、工程(a)の前に、半導体基板に増速酸化効果を生じさせる不純物イオンを注入する工程をさらに備えていることが好ましい。
【0033】
このようにすると、半導体基板上に成膜されるゲート絶縁用膜の膜厚が増速酸化効果により増大する。従って、増速酸化効果を生じさせる不純物イオンを選択的に注入すると、不純物イオンを注入した領域と注入しない領域とにおいてゲート絶縁用膜の膜厚を変えることができる。
【0034】
第1の半導体装置の製造方法において、工程(a)では、半導体基板に対して一酸化二窒素から生成された窒素プラズマ及び酸素プラズマを含む酸窒化性雰囲気で処理を行なうことにより、半導体基板上に酸窒化膜からなるゲート絶縁用膜を形成することが好ましい。
【0035】
第1の半導体装置の製造方法において、工程(a)よりも前に、半導体基板を第1の領域及び第2の領域に区画する第1の工程と、第1の領域上及び第2の領域上に、熱酸化膜からなる第1のゲート絶縁用膜を形成する第2の工程と、第1のゲート絶縁用膜における第2の領域に含まれる部分を除去する第3の工程とをさらに備え、工程(a)では、半導体基板における第2の領域上に、膜厚が第1のゲート絶縁用膜よりも小さいゲート絶縁用膜となる第2のゲート絶縁用膜を形成し、工程(b)では、第1のゲート絶縁用膜及び第2のゲート絶縁用膜を窒素プラズマに暴露して、第1のゲート絶縁用膜及び第2のゲート絶縁用膜に窒素原子を導入することにより、第1のゲート絶縁用膜から第1のゲート絶縁膜を形成すると共に、第2のゲート絶縁用膜からゲート絶縁膜となる第2のゲート絶縁膜を形成することが好ましい。
【0036】
このようにすると、半導体基板における第1の領域上及び第2の領域上に、互いに膜厚が異なる第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜を形成することができると共に、各ゲート絶縁膜に窒素原子を確実に導入することができる。
【0037】
この場合に、第1のゲート絶縁膜の膜厚は3.5nm以上で且つ9nm以下であり、その窒素濃度は第1のゲート絶縁膜の表面付近及び半導体基板との界面付近にそれぞれピークを持ち、第2のゲート絶縁膜の膜厚は1.0nm以上で且つ3.0nm以下であり、その窒素濃度は第2のゲート絶縁膜における膜厚方向の中央付近にピークを持つことが好ましい。
【0038】
第1の半導体装置の製造方法において、工程(a)よりも前に、半導体基板を第1の領域、第2の領域及び第3の領域に区画する第1の工程と、第1の領域上、第2の領域上及び第3の領域上に、熱酸化膜からなる第1のゲート絶縁用膜を形成する第2の工程と、第2の工程の後に、半導体基板の第2の領域に増速酸化効果を生じさせる不純物イオンを注入する第3の工程と、第1のゲート絶縁用膜における第2の領域及び第3の領域に含まれる部分を除去する第4の工程とをさらに備え、工程(a)では、半導体基板における第2の領域上に、膜厚が第1のゲート絶縁用膜よりも小さい第2のゲート絶縁用膜を形成し、且つ、第3の領域上に膜厚が第2のゲート絶縁用膜よりも小さいゲート絶縁用膜となる第3のゲート絶縁用膜を形成し、工程(b)では、第1のゲート絶縁用膜、第2のゲート絶縁用膜及び第3のゲート絶縁用膜を窒素プラズマに暴露して、第1のゲート絶縁用膜、第2のゲート絶縁用膜及び第3のゲート絶縁用膜に窒素原子を導入することにより、第1のゲート絶縁用膜から第1のゲート絶縁膜を形成し、第2のゲート絶縁用膜から第2のゲート絶縁膜を形成し、第3のゲート絶縁用膜からゲート絶縁膜となる第3のゲート絶縁膜を形成することが好ましい。
【0039】
このようにすると、半導体基板における第1の領域上、第2の領域上及び第3の領域上に、互いに膜厚が異なる第1のゲート絶縁膜、第2のゲート絶縁膜及び第3のゲート絶縁膜を形成することができると共に、各ゲート絶縁膜に窒素原子を確実に導入することができる。
【0040】
第1の半導体装置の製造方法において、増速酸化効果を生じさせる不純物イオンは、フッ素又はシリコンであり、フッ素又はシリコンを半導体基板の表面近傍に1×1014cm−2以上で且つ5×1015cm−2以下のドーズ量で注入することが好ましい。
【0041】
第1の半導体装置の製造方法において、窒素プラズマは温度が室温から500℃までの高密度プラズマであることが好ましい。
【0042】
第1の半導体装置の製造方法において、ゲート絶縁膜における窒素濃度のピーク値は、10atm%以上で且つ40atm%以下であることが好ましい。
【0043】
第1の半導体装置の製造方法において、窒素プラズマに酸素プラズマを加えることが好ましい。
【0044】
本発明に係る第2の半導体装置の製造方法は、半導体基板の全面を窒素プラズマ及び酸素プラズマに暴露することにより、半導体基板上に酸窒化膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程(a)と、ゲート絶縁膜上にゲート電極を選択的に形成する工程(b)とを備えている。
【0045】
第2の半導体装置の製造方法によると、半導体基板の全面を窒素プラズマ及び酸素プラズマに暴露することにより、半導体基板の上に形成されるゲート絶縁膜として、相対的にブロードな窒素分布で且つ窒素のピーク濃度が10atm%を越える濃度の酸窒化膜を形成できる。その結果、薄膜化されたゲート絶縁膜であっても、ゲート電極からのドーパント原子の基板への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができる。さらには、ゲート絶縁膜の誘電率が増大するため、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【0046】
第2の半導体装置の製造方法において、工程(a)よりも前に、半導体基板を第1の領域及び第2の領域に区画する第1の工程と、第1の領域上及び第2の領域上に、熱酸化膜からなる第1のゲート絶縁用膜を形成する第2の工程と、第1のゲート絶縁用膜における第2の領域に含まれる部分を除去する第3の工程とをさらに備え、工程(a)では、第1のゲート絶縁用膜を含む半導体基板の全面を窒素プラズマ及び酸素プラズマに暴露することにより、第2の領域上に膜厚が第1のゲート絶縁用膜よりも小さいゲート絶縁膜となる第2のゲート絶縁膜を形成すると共に、第1のゲート絶縁用膜に窒素原子を導入して第1のゲート絶縁用膜から第1のゲート絶縁膜を形成することが好ましい。
【0047】
このようにすると、半導体基板における第1の領域上及び第2の領域上に、互いに膜厚が異なり、且つ窒素原子が導入された第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜を形成することができる。
【0048】
この場合に、第1のゲート絶縁膜の膜厚は3.5nm以上で且つ9nm以下であり、その窒素濃度は第1のゲート絶縁膜の表面付近にピークを持ち、第2のゲート絶縁膜の膜厚は1.0nm以上で且つ3.0nm以下であり、その窒素濃度は第2のゲート絶縁膜における膜厚方向の中央付近にピークを持つことが好ましい。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る半導体装置によると、例えば膜厚が3.5nm以下と、直接トンネル電流が流れる程度に薄膜化されたゲート絶縁膜であっても、ゲート電極からのドーパント原子の基板への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができる。その上、ゲート絶縁膜の誘電率が増大することにより、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)〜(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図3】(a)及び(b)は図2(a)に示す第2のゲート絶縁膜を形成した直後の各ゲート絶縁膜における窒素濃度プロファイルを表わし、(a)は第1のゲート絶縁膜を示すグラフであり、(b)は第2のゲート絶縁膜を示すグラフである。
【図4】(a)及び(b)は図2(b)に示すプラズマ窒化処理後の各ゲート絶縁膜における窒素濃度プロファイルを表わし、(a)は第1のゲート絶縁膜を示すグラフであり、(b)は第2のゲート絶縁膜を示すグラフである。(c)は比較用であって、第2のゲート絶縁膜の膜厚を大きくした場合の窒素濃度プロファイルを表わすグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法におけるP型ゲート電極からの硼素の浸み出しによるしきい値電圧の変化の熱処理時間依存性を従来例と比較して表わしたグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法におけるゲートリーク電流と二酸化シリコンに換算した容量換算膜厚値との関係を従来例と比較して表わしたグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における窒素プラズマの暴露温度と絶縁膜の窒素濃度との関係を表わすグラフである。
【図8】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図9】(a)及び(b)は図8(c)に示すプラズマ窒化処理後の各ゲート絶縁膜における窒素濃度プロファイルを表わし、(a)は第1のゲート絶縁膜を示すグラフであり、(b)は第2のゲート絶縁膜を示すグラフである。
【図10】(a)〜(c)は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図11】(a)及び(b)は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図12】(a)〜(c)は従来のMOS型半導体装置におけるゲート酸窒化膜の形成方法を示す工程順の構成断面図である。
【図13】(a)及び(b)は図12(c)に示す酸窒化処理後の各ゲート絶縁膜における窒素濃度プロファイルを表わし、(a)は第1のゲート絶縁膜を示すグラフであり、(b)は第2のゲート絶縁膜を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0052】
図1(a)〜図1(c)及び図2(a)〜図2(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
【0053】
まず、図1(a)に示すように、例えば、厚さが約5μmで比抵抗が約11Ωcm〜14ΩcmのP型シリコンからなるエピタキシャル層(図示せず)を上部に有し、比抵抗が約0.01Ωcm〜約0.02Ωcmの半導体基板11を用意する。続いて、半導体基板11の上部に、該半導体基板11の主面を少なくとも第1の素子形成領域51及び第2の素子形成領域52に区画するシャロートレンチ分離からなる素子分離領域12を形成する。続いて、図示はしていないが、半導体基板11にP型ウェル領域及びN型ウェル領域をそれぞれ形成し、さらにトランジスタのしきい値電圧調整用のチャネルドープを行なう。
【0054】
次に、素子分離領域12を形成した半導体基板11の表面に対して、温度が約50℃の水酸化アンモニウム(NHOH)、過酸化水素水(H)及び水(HO)との混合溶液によるSC1洗浄と、希釈フッ酸(HF)による洗浄とを行なって、半導体基板11の自然酸化膜を除去する。その後、洗浄された半導体基板11を縦型電気炉に投入し、温度が約800℃のパイロジェニック酸化を行なうことにより、半導体基板11の主面上に膜厚が約5.5nmの二酸化シリコンからなる第1のゲート絶縁膜13Aを形成する。続いて、フォトリソグラフィ法により、半導体基板11上に第2の素子形成領域52を開口部するレジストパターン14を形成して、図1(b)に示す状態となる。
【0055】
次に、図1(c)に示すように、レジストパターン14をマスクとして、第1のゲート絶縁膜13Aの第2の素子形成領域52に含まれる部分を緩衝フッ酸溶液を用いて除去する。その後、硫酸(HSO)と過酸化水素水との混合溶液によるピラニア(piranha)洗浄(=SPM洗浄)を行なってレジストパターン14を除去する。続いて、半導体基板11の第2の素子形成領域52に対して、第2のゲート絶縁膜形成の前洗浄として、50℃の温度でSC1洗浄を行なう。このSC1洗浄により、第1のゲート絶縁膜13Aの膜厚は約0.2nm減じて5.3nm程度となる。
【0056】
次に、図2(a)に示すように、急速熱処理装置(ラピッドサーマルプロセッサ:RTP)に、図1(c)の状態の半導体基板11を投入し、温度が約900℃の、常圧又は減圧の一酸化二窒素(NO)ガスからなる酸窒化性雰囲気で酸窒化処理を行なうことにより、半導体基板11の第2の素子形成領域52に、膜厚が約1.8nmの酸窒化シリコンからなる第2のゲート絶縁膜15Bを形成する。このとき、第1のゲート絶縁膜13Aにも酸窒化処理により窒素原子が導入されると共にその膜厚が約5.5nmに増大して、シリコン酸窒化膜からなる第1のゲート絶縁膜13Bに改質される。なお、酸窒化性雰囲気には、一酸化二窒素に代えて、体積比が約10%の一酸化窒素(NO)と約90%の酸素(O)との混合ガスを用いても良い。
【0057】
次に、図2(b)に示すように、第1のゲート絶縁膜13B及び第2のゲート絶縁膜15Bを窒素(N)プラズマに暴露する窒化処理を行なう。ここで、図2(b)に示すN は窒素ラジカルを表わす。窒素プラズマの生成には、例えば、誘導結合型プラズマ装置又はヘリコン波プラズマ装置を用いる。誘導結合型プラズマ装置を用いる場合には、プラズマ生成の周波数は約13.56MHz、高周波電力は約500W、チャンバの圧力は約1.33Pa、基板温度は約30℃として、窒素プラズマに約90秒間暴露する。ここでは、基板バイアスは印加していない。ヘリコン波プラズマ装置を用いる場合には、プラズマ生成の周波数は約13.56MHz、高周波電力は約500W、チャンバの圧力は約1.33Pa、基板温度は約30℃として、窒素プラズマに約120秒間暴露する。これらのうちいずれかの窒化処理を行なうことにより、第1のゲート絶縁膜13B及び第2のゲート絶縁膜15Bはそれぞれがさらに窒化されて第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cに改質される。
【0058】
次に、窒素プラズマによる窒化処理をされた第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cの上に、例えばCVD法により、膜厚が約150nmで粒径が約20nmの微小グレイン構造を持つ多結晶シリコンからなる導体膜を680℃の堆積温度で堆積する。その後、堆積した導体膜に対して所定のパターニングを行なうことにより、導体膜からなるゲート電極16を形成し、図2(c)に示す状態を得る。
【0059】
この後、図示はしていないが、第1の素子形成領域51及び第2の素子形成領域52のそれぞれに所定のイオン注入を行なってLDD領域及びソースドレイン領域を形成し、トランジスタ構造を形成する。このとき、第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cは同時に形成され、その膜厚はそれぞれ約5.5nmと約1.8nmとなる。
【0060】
なお、図2(a)に示した第2のゲート絶縁膜15Bの形成工程における酸窒化処理は、RTPに代えて、一酸化二窒素から生成した窒素プラズマ及び酸素プラズマを含む酸窒化性雰囲気で行なってもよい。このようにすると、一酸化二窒素であっても低温で酸窒化処理を行なうことができるため、第1のゲート絶縁膜13Bの膜厚の不要な増大を防止することができる。
【0061】
また、図2(c)に示すゲート電極形成用の導体膜を堆積する前に、第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cにおける窒素原子の安定化を図るため、常圧又は減圧下の非反応性雰囲気において約700℃〜約1000℃の温度で数十秒間のアニールを加えても良い。但し、本実施形態ではこの窒素安定化のアニールは行なっていない。
【0062】
以下、第1のゲート絶縁膜13B、13C及び第2のゲート絶縁膜15B、15Cの窒素濃度プロファイルを説明する。
【0063】
図3(a)及び図3(b)は図2(a)に示した状態の第1のゲート絶縁膜13B及び第2のゲート絶縁膜15Bにおける窒素濃度プロファイルであって、図3(a)は第1のゲート絶縁膜13Bを示し、図3(b)は第2のゲート絶縁膜15Bを示している。
【0064】
図3(a)に示すように、膜厚が約5.5nmの第1のゲート絶縁膜13Bにおける窒素分布は、半導体基板11との界面付近に約1.0atm%のピーク値を持つ。一方、図3(b)に示す膜厚が約1.8nmの第2のゲート絶縁膜15Bにおける窒素分布は絶縁膜中でブロードな分布を持ち、その濃度ピークは膜厚方向(基板面に垂直な方向)のほぼ中央付近に位置する。このときの窒素濃度は、二次イオン質量分析(SIMS)法により約1.5atm%と評価される。
【0065】
次に、誘導結合プラズマによる窒化処理後の窒素濃度プロファイルを説明する。
【0066】
図4(a)及び図4(b)は図2(b)に示した状態の第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cにおける窒素濃度プロファイルであって、図4(a)は第1のゲート絶縁膜13Cを示し、図4(b)は第2のゲート絶縁膜15Cを示している。
【0067】
図4(a)に示すように、比較的に膜厚が大きい第1のゲート絶縁膜13Cにおける窒素分布は、その表面付近に約14atm%の濃度を持つ第1のピークと、半導体基板11との界面付近に約1atm%の濃度を持つ第2のピークとを持つ。
【0068】
一方、図4(b)に示すように、比較的に膜厚が小さい第2のゲート絶縁膜15Cにおける実線で表わした窒素分布は、破線で示すプラズマ窒化処理による濃度プロファイルと、一点鎖線で示す熱酸窒化処理による濃度プロファイルとの積分値となる。ここで、第2のゲート絶縁膜15Cはその膜厚が約1.8nmと、第1のゲート絶縁膜13Cの膜厚の約3分の1であるため、窒素分布は膜中で相対的にブロードな分布を持つ。また、その濃度ピークは膜厚方向の中央付近よりに約14atm%の濃度を持つ。
【0069】
図4(c)は、比較用であって、第2のゲート絶縁膜15Cの膜厚を約2.6nmとして形成した場合の窒素濃度プロファイルを実線で表わしている。このように、第2のゲート絶縁膜15Cの膜厚を約2.6nmとやや厚くしても、窒素分布はほとんど変化しないことが分かる。窒素分布に影響を与えるのはプラズマ生成用の周波数と高周波電力とであるからである。
【0070】
ここで、図4(a)及び図4(b)に示すように、第1のゲート絶縁膜13C及び第2のゲート絶縁膜15Cにおける半導体基板11との界面での窒素濃度は、いずれも約0.5atm%を示している。このように、各ゲート絶縁膜13C、15Cにおける半導体基板11との界面での窒素濃度が0.2atm%〜3atm%程度、より好ましくは0.5atm%〜1atm%程度に設定すると、各ゲート絶縁膜13C、15Cにおける半導体基板11との界面特性が良好となるため、各ゲート絶縁膜13C、15Cにおける耐ストレス性が向上すると共に、該ゲート絶縁膜13C、15Cを介したゲートリーク電流を低減することができる。なお、各ゲート絶縁膜13C、15Cにおける半導体基板11との界面での窒素濃度が3atm%を越えると、MOSトランジスタのしきい値電圧が不安定となったり、キャリアの移動度が低下したりするため、好ましくない。
【0071】
以下、第1の実施形態に係る第2のゲート絶縁膜15Cを用いたPチャネルトランジスタの電気的特性を説明する。
【0072】
図5はPチャネルトランジスタを構成する硼素がドープされたP型ゲート電極からの硼素の浸み出しによるしきい値電圧の変化の熱処理時間依存性を表わしている。図5の実線で示すように、膜厚が約1.8nmの第2のゲート絶縁膜15Cは、熱処理温度が約1050℃の場合には熱処理時間が60秒までしきい値電圧の変動がない。さらには、熱処理温度を約1000℃とすると、熱処理時間が75秒を超えてもしきい値電圧の変動がない。破線は比較用であって、従来例による膜厚が2.6nmのゲート絶縁膜は、熱処理温度が約1000℃の場合であっても、30秒間の加熱で既に0.3Vのしきい値電圧の変動が現われている。
【0073】
図6はゲートリーク電流と二酸化シリコンに換算した容量換算膜厚値との関係を表わしている。ここで、○印は二酸化シリコンからなるゲート絶縁膜を表わし、△印は従来例によるゲート絶縁膜を表わし、×印が第1の実施形態に係る形成方法による第2のゲート絶縁膜を表わしている。また、各換算膜厚値には括弧内にエリプソメトリによる膜厚値を併記している。
【0074】
図6に示すように、第1の実施形態に係る第2のゲート絶縁膜の膜厚を変化させることによって得られるシリコン酸窒化膜のゲートリーク電流と換算後の容量膜厚値との関係から、本実施形態に係るゲート絶縁膜は、換算後の容量膜厚値が従来例と同等であれば、ゲートリーク電流を1桁程度低減できることが分かる。
【0075】
なお、第1の実施形態においては、第1のゲート酸化膜13Aは熱酸化膜として形成し、第2のゲート絶縁膜15Bは、一酸化二窒素雰囲気又は一酸化窒素と酸素との混合雰囲気による熱酸窒化膜として形成したが、第2のゲート絶縁膜15Bも熱酸化膜により形成しても同様の効果を得られることはいうまでもない。
【0076】
但し、第2のゲート絶縁膜15Bを熱酸化膜によって形成すると、絶縁膜の窒素濃度は第1の実施形態における第2のゲート絶縁膜15Cほどの高濃度にすることはできない。なお、ここでいう窒素濃度はピーク値ではなく、窒素濃度の絶縁膜中における積分値である。なぜなら、ピーク濃度はプラズマ酸窒化により決定されるからである。この窒素濃度の絶縁膜中における積分値は、硼素の浸み出しの低減及びゲートリーク電流の低減に重要な影響を与える。
【0077】
次に、窒素プラズマの暴露温度と絶縁膜の窒素濃度との関係を説明する。
【0078】
図7は窒素プラズマの暴露温度を室温、300℃、550℃及び750℃と変化させた場合の、二酸化シリコンからなる絶縁膜とシリコンからなる基板とにおける窒素分布を表わしている。なお、本願において、室温とは20℃〜40℃程度の温度をいう。図7から分かるように、絶縁膜に高い窒素濃度と非常に急峻な濃度分布を得るには室温付近での暴露が好ましい。基板温度は500℃程度までであれば、窒素濃度及び窒素分布に与える影響は小さくほとんど無視できるため、プロセス温度としては室温から500℃付近であればよい。
【0079】
さらに、図7から分かるように、550℃以上の温度で窒素プラズマに暴露した場合は、基板が著しく窒化されてしまうと共に、図には示さないが絶縁膜における面内の膜厚分布及び窒素の濃度分布が著しく劣化する。さらに、温度を600℃以上にまで高めた場合には、窒素ラジカルの絶縁膜表面での分解と熱拡散により、絶縁膜における均一で且つ浅い窒素分布を実現することは困難である。従って、窒素プラズマの暴露は室温付近が好ましく、最大でも500℃程度以下とすることが好ましい。
【0080】
なお、室温以下の暴露温度も可能ではあるが、著しい低温下では基板表面に結露等が発生するため、室温付近が推奨される。さらに、プロセスの簡便性、安定性、及び装置の実現性を考えると、プラズマの暴露温度は室温又は室温よりやや高めに設定するのが適当である。このように、第1の実施形態においては、室温付近で行なうプラズマによる窒化が重要な要因の一つとなる。
【0081】
このように、室温から500℃程度までのプロセス温度としては比較的に低温のプロセスにより絶縁膜(二酸化シリコン膜)に高濃度の窒素を導入するには、窒素ラジカルを高濃度とする必要がる。そこで、本実施形態においては、高濃度の窒素ラジカルを容易に得られるように、高密度プラズマをプラズマ源として用いている。また、水素原子はゲート絶縁膜の特性を劣化させるため、窒素ラジカルの発生に用いるガスは水素を含まない窒素が好ましい。
【0082】
また、一般的なマイクロ波等を用いた低密度プラズマでは十分な窒素ラジカルを供給することができないため、絶縁膜に窒素を高濃度に導入することは極めて困難である。
【0083】
さらに、第1の実施形態に係るゲート絶縁膜はチャージアップによる絶縁破壊を防止するため、チャージアップを発生させないようなプラズマ、すなわち均一なプラズマ分布が要求される。本実施形態の場合には、径が200mm程度のウェハ面内の膜厚分布は、絶縁膜の膜厚が1.8nmの場合で、±0.1nm(3σ:但し、σは標準偏差を表わす)を実現している。このような均一な膜厚分布、並びに窒素の濃度プロファイルは、ゲートリーク電流が0.2nmの膜厚変化で1桁も変化することを考慮すれば必須である。
【0084】
以上説明したように、第1の実施形態によると、第2のゲート絶縁膜15Cは薄膜化されていても、ゲート電極16からのドーパント原子の半導体基板11への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができる。さらには、第2のゲート絶縁膜15Cの誘電率が増大し、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【0085】
なお、第1の実施形態においては、第2のゲート絶縁膜15Bの形成からプラズマ暴露による窒化処理までは個々の装置で行なっても良く、また、マルチチャンバ装置を用いることにより連続して、すなわち、第2ゲート絶縁膜15Bを一のチャンバ内で形成した後、他のチャンバ内で窒化処理を行なっても良い。
【0086】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0087】
図8(a)〜図8(d)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
【0088】
まず、P型シリコンからなる半導体基板21の上部の少なくとも第1の素子形成領域51及び第2の素子形成領域52を区画するシャロートレンチ分離からなる素子分離領域22を形成する。続いて、図示はしていないが、半導体基板21の上部にP型ウェル領域及びN型ウェル領域をそれぞれ形成し、さらにトランジスタのしきい値電圧調整用のチャネルドープを行なう。続いて、素子分離領域22を形成した半導体基板21の表面に対して、温度が約50℃のSC1洗浄と、希釈フッ酸(HF)による洗浄とを行なって、半導体基板21の自然酸化膜を除去する。その後、半導体基板21をRTP装置に投入し、温度が約1000℃の水蒸気雰囲気でパイロジェニック酸化を行なうことにより、半導体基板21の主面上に膜厚が約7.5nmの二酸化シリコンからなる第1のゲート絶縁膜23Aを形成する。続いて、フォトリソグラフィ法により、半導体基板21上に第2の素子形成領域52を開口するレジストパターン24を形成して、図8(a)に示す状態を得る。
【0089】
次に、図8(b)に示すように、レジストパターン24をマスクとして、第1のゲート絶縁膜23Aの第2の素子形成領域52に含まれる部分を緩衝フッ酸溶液を用いて除去し、続いて、レジストパターン24をピラニア洗浄により除去する。その後、半導体基板21の第2の素子形成領域52に対して、第2のゲート絶縁膜形成の前洗浄として、50℃の温度でSC1洗浄を行なう。このSC1洗浄により、第1のゲート絶縁膜23Aの膜厚は約0.2nm減じて7.3nm程度となる。
【0090】
次に、図8(c)に示すように、第2の素子形成領域52を露出した半導体基板21を、誘導結合プラズマによる窒素プラズマ及び酸素プラズマに暴露する。ここでは、プラズマガスに窒素が約95%で酸素が約5%の混合ガスを用いると共に、周波数は約13.56MHz、高周波電力は約500W、チャンバの圧力は約1.33Pa、基板温度は約30℃としている。この酸素プラズマ及び窒素プラズマによって、半導体基板21には酸化と窒化とが同時に起こり、第2の素子形成領域52に膜厚が約1.6nmのプラズマ酸窒化膜である第2のゲート絶縁膜25Cが形成される。このとき、第1のゲート絶縁膜23Aは窒素プラズマ及び酸素プラズマによる酸窒化により改質されて、第1のゲート絶縁膜23Cとなり、その膜厚は7.5nmとなる。
【0091】
次に、第1のゲート絶縁膜23C及び第2のゲート絶縁膜25Cが形成された半導体基板21に、CVD法により、膜厚が約150nmで粒径が約20nmの微小グレイン構造を持つ多結晶シリコンからなる導体膜を680℃の堆積温度で堆積する。その後、堆積した導体膜に対して所定のパターニングを行なうことにより、導体膜からなるゲート電極26を形成し、図8(d)に示す状態を得る。
【0092】
この後、図示はしていないが、第1の素子形成領域51及び第2の素子形成領域52のそれぞれに所定のイオン注入を行なってLDD領域及びソースドレイン領域を形成し、トランジスタ構造を形成する。
【0093】
以下、第2の実施形態に係る誘導結合プラズマによる酸窒化処理による第1のゲート絶縁膜23C及び第2のゲート絶縁膜25Cの窒素の濃度プロファイルを説明する。
【0094】
図9(a)及び図9(b)は第1のゲート絶縁膜23C及び第2のゲート絶縁膜25Cにおける窒素濃度プロファイルであって、図9(a)は第1のゲート絶縁膜23Cを示し、図9(b)は第2のゲート絶縁膜25Cを示している。
【0095】
図9(a)に示すように、第1のゲート絶縁膜23Cにおける窒素分布は、膜の表面付近に約15atm%の濃度ピークを持つ。一方、図9(b)に示す第2のゲート絶縁膜25Cの窒素分布は膜中でブロードな分布を持ち、その濃度ピークは膜厚方向のほぼ中央付近に約15atm%の濃度を持つ。
【0096】
第1及び第2のゲート絶縁膜23C、25Cにおける窒素濃度は、プラズマ源である酸素ガスと窒素ガスとの分圧を調整することによって行なうことができる。また、酸素ガスの導入と窒素ガスの導入とに時間差を与えることによっても窒素濃度を制御することができる。基本的には、窒素プラズマと酸素プラズマとを同時に発生させれば良いため、一酸化窒素等のガスを用いても同様の効果を期待できる。但し、一酸化二窒素は酸化力が強いため、薄膜の形成には適さない可能性がある。
【0097】
以上説明したように、第2の実施形態によると、第2のゲート絶縁膜25Cは薄膜化されていても、ゲート電極26からのドーパント原子の半導体基板21への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができる。さらには、第2のゲート絶縁膜25Cの誘電率が増大し、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【0098】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0099】
図10(a)〜図10(c)並びに図11(a)及び図11(b)は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
【0100】
まず、P型シリコンからなる半導体基板31の上部の少なくとも第1の素子形成領域51、第2の素子形成領域52及び第3の素子形成領域53を区画するシャロートレンチ分離からなる素子分離領域32を形成する。続いて、図示はしていないが、半導体基板31の上部にP型ウェル領域及びN型ウェル領域をそれぞれ形成し、さらにトランジスタのしきい値電圧調整用のチャネルドープを行なう。続いて、素子分離領域32を形成した半導体基板31の表面に対して、温度が約50℃のSC1洗浄と、希釈フッ酸(HF)による洗浄とを行なって、半導体基板31の自然酸化膜を除去する。その後、半導体基板31をRTP装置に投入し、温度が約1050℃の水蒸気雰囲気でパイロジェニック酸化を行なうことにより、半導体基板31の主面上に膜厚が約5.5nmの二酸化シリコンからなる第1のゲート絶縁膜33Aを形成する。続いて、フォトリソグラフィ法により、半導体基板31上に第2の素子形成領域52を開口する第1のレジストパターン34を形成する。続いて、第1のレジストパターンをマスクとして、第2の素子形成領域52に、例えばフッ素(F )イオンを約5×1014/cm のドーズ量で且つ約5keVの加速エネルギーでイオン注入を行なって、図10(a)に示す状態を得る。ここで、フッ素イオン注入の代わりにシリコン(Si)イオンを用いても良いが、Siイオンを用いる場合には、注入エネルギー及びドーズ量を最適化する必要がある。
【0101】
次に、図10(b)に示すように、第1のレジストパターン34を除去した後、フォトリソグラフィ法により第1の素子形成領域51を覆う第2のレジストパターン44を形成する。続いて、第2のレジストパターン44をマスクとして、第1のゲート絶縁膜33Aにおける第2の素子形成領域52及び第3の素子形成領域53に含まれる部分を希釈フッ酸溶液を用いて除去する。
【0102】
次に、図10(c)に示すように、第2のレジストパターン44をピラニア洗浄により除去した後、半導体基板31の第2の素子形成領域52に対して、第2のゲート絶縁膜及び第3のゲート絶縁膜形成の前洗浄として50℃の温度でSC1洗浄を行なう。ここでは希釈フッ酸による洗浄は行なわない。なぜなら、希釈フッ酸による最終処理は、第1の素子形成領域51の第1のゲート絶縁膜33Aを選択的にエッチングして、その絶縁破壊信頼性を著しく劣化させるからである。続いて、RTP装置に、半導体基板31を投入し、体積比が約70%の一酸化窒素(NO)と約30%の酸素(O)との混合ガスからなり、温度が約850℃の酸窒化性雰囲気で酸窒化処理を行なう。これにより、半導体基板31の第2の素子形成領域52上には、膜厚が約2.2nmの酸窒化シリコンからなる第2のゲート絶縁膜35Bが形成されると共に、第3の素子形成領域53上には、膜厚が約1.8nmの酸窒化シリコンからなる第3のゲート絶縁膜36Bが形成される。
【0103】
このように、半導体基板31における第2の素子形成領域52には、その表面近傍に増速酸化効果を有するフッ素イオンが高濃度に注入されているため、第2の素子形成領域52に形成される第2のゲート絶縁膜35Bの膜厚は、フッ素イオンが注入されていない第3の素子形成領域53に形成される第3のゲート絶縁膜36Bの膜厚よりも大きくなる。また、この酸窒化処理により、第1のゲート絶縁膜33Aにも酸窒化処理により窒素原子が導入されたシリコン酸窒化膜からなる第1のゲート絶縁膜33Bに改質される。なお、このときの第1のゲート絶縁膜33Bの膜厚の増大は僅かである。
【0104】
第1のゲート絶縁膜33Bの窒素分布は、半導体基板31との界面付近のパイルアップ(蓄積)が主であるのに対し、第2のゲート絶縁膜35B及び第3のゲート絶縁膜36Bの窒素分布は膜厚方向のほぼ中央付近にピークを持つ。また、窒素濃度のピーク値は約6atm%〜約8atm%程度である。
【0105】
次に、図11(a)に示すように、第1のゲート絶縁膜33B、第2のゲート絶縁膜35B及び第3のゲート絶縁膜36Bを形成した半導体基板31を、誘導結合プラズマによる窒素プラズマに約120秒間暴露する。ここでは、プラズマ発生用の周波数は約13.56MHz、高周波電力は約500W、チャンバの圧力は約1.33Pa、基板温度は30℃程度としている。この窒素プラズマを用いた窒化処理によって、第1のゲート絶縁膜33Bは、表面付近と半導体基板31との界面付近との2つのピークを持つシリコン酸窒化膜からなる第1のゲート絶縁膜33Cに改質される。また、第2のゲート絶縁膜35B及び第3のゲート絶縁膜36Bは絶縁膜中の濃度分布がブロードで且つそのピーク値が約15atm%の高濃度の窒素を含むシリコン酸窒化膜からなる第2のゲート絶縁膜35C及び第3のゲート絶縁膜36Cにそれぞれ改質される。
【0106】
次に、窒素プラズマによる窒化処理をなされた第1のゲート絶縁膜33C、第2のゲート絶縁膜35C及び第3のゲート絶縁膜36Cの上に、CVD法により、膜厚が約150nmで約20atm%のゲルマニウム(Ge)を含む多結晶シリコンゲルマニウムからなる導体膜を約550℃の堆積温度で堆積する。その後、堆積した導体膜に対して所定のパターニングを行なうことにより、導体膜からなるゲート電極37をそれぞれ形成し、図11(b)に示す状態を得る。
【0107】
この後、図示はしていないが、第1の素子形成領域51及び第2の素子形成領域52のそれぞれに所定のイオン注入を行なってLDD領域及びソースドレイン領域を形成し、トランジスタ構造を形成する。
【0108】
このように、第3の実施形態によると、膜厚が約5.5nmの第1のゲート絶縁膜33C、膜厚が約2.2nmの第2のゲート絶縁膜35C及び膜厚が約1.8nmの第3のゲート絶縁膜36Cと、それぞれ膜厚が異なる3種類のゲート絶縁膜を1つの半導体基板31上に同時に形成できる。その上、相対的に膜厚が小さいシリコン酸窒化膜からなる第2及び第3のゲート絶縁膜35C、36Cは、その窒素の濃度プロファイルがブロードとなり、窒素濃度のピークが膜厚方向のほぼ中央付近に位置し且つそのピーク値が約15atm%と高濃度とすることができる。
【0109】
これにより、第2及び第3のゲート絶縁膜35C、36Cは薄膜化されていても、ゲート電極37からのドーパント原子の半導体基板31への拡散を防止できると共にゲートリーク電流をも低減することができる。さらには、各ゲート絶縁膜35C、36Cの誘電率が増大し、耐絶縁破壊性を向上することができる。
【0110】
なお、第3の実施形態においては、図11(a)に示す工程でプラズマ窒化処理を行なうため、図10(c)に示す工程で形成する第2のゲート絶縁膜35B及び第3のゲート絶縁膜36Bの形成方法を、酸窒化処理に代えて酸化処理としてもよい。但し、各ゲート絶縁膜35C、36Cを酸化処理による酸化シリコンで形成すると、酸窒化シリコンで形成した場合と比べて、各絶縁膜35C、36Cの窒素濃度の積分値は小さくなる。従って、第2及び第3のゲート絶縁膜35C、36Cにおける各窒素濃度は、ゲートリーク電流が低減する度合い、及び硼素の浸み出しが抑制される度合い等に応じて窒化方法を決定すれば良い。
【0111】
また、第2及び第3のゲート絶縁膜35B、36Bの組成を酸窒化シリコンとする場合であっても、酸窒化性雰囲気は一酸化窒素と酸素との混合雰囲気に限られず、一酸化窒素と一酸化二窒素との混合雰囲気、又は一酸化二窒素のみの雰囲気を用いても良い。すなわち、第2及び第3のゲート絶縁膜35C、36Cにおける各窒素濃度により、その形成方法を選択すればよい。
【0112】
さらに、図10(c)に示すプラズマ窒化工程において、プラズマ源は窒素ガスに限られず、例えば、一酸化窒素ガスを用いた窒素プラズマ及び酸素プラズマによる酸窒化処理としても良い。言い換えれば、水素を含まない窒素プラズマを生成できれば良い。
【0113】
また、第3の実施形態においては、MOS型半導体装置のうち3種類の膜厚を持つゲート絶縁膜の形成方法について説明したが、膜厚を4種類以上とする場合には、フッ素イオンの注入ドーズ量が異なる素子形成領域を形成した後に、前述の酸窒化処理及びプラズマ窒化処理を行なえばよい。
【符号の説明】
【0114】
11 半導体基板
12 素子分離領域
13A 第1のゲート絶縁膜
13B 第1のゲート絶縁膜
13C 第1のゲート絶縁膜
14 レジストパターン
15B 第2のゲート絶縁膜
15C 第2のゲート絶縁膜
16 ゲート電極
21 半導体基板
22 素子分離領域
23A 第1のゲート絶縁膜
23C 第1のゲート絶縁膜
24 レジストパターン
25C 第2のゲート絶縁膜
26 ゲート電極
31 半導体基板
32 素子分離領域
33A 第1のゲート絶縁膜
33B 第1のゲート絶縁膜
33C 第1のゲート絶縁膜
34 第1のレジストパターン
35B 第2のゲート絶縁膜
35C 第2のゲート絶縁膜
36B 第3のゲート絶縁膜
36C 第3のゲート絶縁膜
37 ゲート電極
44 第2のレジストパターン
51 第1の素子形成領域
52 第2の素子形成領域
53 第3の素子形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面を少なくとも第1の領域及び第2の領域に区画する素子分離領域と、
前記第1の領域に形成された第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜の上に形成された第1のゲート電極と、
前記第2の領域に形成された第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜の上に形成された第2のゲート電極とを備え、
前記第2のゲート絶縁膜の膜厚は、前記第1のゲート絶縁膜の膜厚よりも薄く形成されており、
前記第1のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第1のゲート絶縁膜における膜厚方向の表面部に第1のピークと前記半導体基板の界面に前記第1のピークよりも小さい第2のピークとを有し、
前記第2のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第2のゲート絶縁膜における膜厚方向の中央部にピークを持ち、且つ窒素が前記半導体基板との界面に達するように導入され、
前記第2のゲート絶縁膜の膜厚は2.0nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、0.2atm%以上で且つ3atm%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、0.5atm%以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、1atm%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜の膜厚は3.5nm以上で且つ9nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜には、窒素が前記半導体基板との界面に到達しないように表面部のみに導入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜及び前記第2のゲート絶縁膜における窒素濃度のピーク値は、10atm%以上で且つ40atm%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板の主面にさらに第3の領域に区画する素子分離領域を有し、
前記第3の領域には、第3のゲート絶縁膜と、該第3のゲート絶縁膜の上に第3のゲート電極とが形成されており、
前記第3のゲート絶縁膜の膜厚は、前記第1のゲート絶縁膜の膜厚よりも薄く、且つ前記第2のゲート絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
半導体基板を第1の領域及び第2の領域に区画する第1の工程と、
前記第1の領域上及び前記第2の領域上に、熱酸化膜からなる第1のゲート絶縁用膜を形成する第2の工程と、
前記第1のゲート絶縁用膜における前記第2の領域に含まれる部分を除去する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記半導体基板における前記第2の領域上に、酸窒化性雰囲気で酸窒化処理を行うことにより、膜厚が前記第1のゲート絶縁用膜よりも薄い第2のゲート絶縁用膜を形成する第4の工程と、
前記第1のゲート絶縁用膜及び前記第2のゲート絶縁用膜を窒素プラズマに暴露して、前記第1のゲート絶縁用膜及び前記第2のゲート絶縁用膜に窒素原子を導入することにより、前記第1のゲート絶縁用膜から第1のゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第2のゲート絶縁用膜から第2のゲート絶縁膜を形成する第5の工程とを備え、
前記第5の工程の窒素プラズマによって、
前記第1のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第1のゲート絶縁膜における膜厚方向の表面部に第1のピークと前記半導体基板の界面に前記第1のピークよりも小さい第2のピークとを有し、
前記第2のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第2のゲート絶縁膜における膜厚方向の中央部にピークを持ち、且つ窒素が前記半導体基板との界面に達するように導入され、
前記第2のゲート絶縁膜の膜厚は2.0nm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板を第1の領域及び第2の領域に区画する第1の工程と、
前記第1の領域上及び前記第2の領域上に、熱酸化膜からなる第1のゲート絶縁用膜を形成する第2の工程と、
前記第1のゲート絶縁用膜における前記第2の領域に含まれる部分を除去する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記第1のゲート絶縁膜用膜を含む前記半導体基板の全面を窒素プラズマ及び酸素プラズマに暴露することにより、前記第2の領域上に膜厚が前記第1のゲート絶縁用膜よりも薄い第2のゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第1のゲート絶縁膜を形成する第4の工程とを備え、
前記第4の工程の窒素プラズマ及び酸素プラズマによって、
前記第1のゲート絶縁膜には、前記窒素が前記半導体基板との界面に到達しないように表面部のみに導入され、
前記第1のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第1のゲート絶縁膜における膜厚方向の表面部に第1のピークと前記半導体基板の界面に前記第1のピークよりも小さい第2のピークとを有し、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2のゲート絶縁膜における膜厚方向の中央部にピークを持ち、且つ前記窒素が前記半導体基板との界面に到達するように導入され、
前記前記第2のゲート絶縁膜の膜厚は2.0nm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、0.2atm%以上で且つ3atm%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、0.5atm%以上で且つ1atm%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第4の工程では、前記半導体基板に対して水素を含まない酸窒化性雰囲気で熱処理を行なうことにより、前記半導体基板上に酸窒化膜からなる前記第2のゲート絶縁用膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記酸窒化性雰囲気は、一酸化窒素と酸素とを含む雰囲気、又は一酸化二窒素からなる雰囲気であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第4の工程では、前記半導体基板に対して一酸化二窒素から生成された窒素プラズマ及び酸素プラズマを含む酸窒化性雰囲気で処理を行なうことにより、前記半導体基板上に酸窒化膜からなる前記第2のゲート絶縁用膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第4の工程では、前記半導体基板に対して前記酸窒化性雰囲気で熱処理を行なうことにより、前記第1のゲート絶縁膜にも窒素が導入され、前記第1のゲート絶縁用膜が酸窒化膜に改質されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記窒素プラズマは、温度が室温から500℃までの高密度プラズマであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項9〜17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のゲート絶縁膜における窒素濃度のピーク値は、10atm%以上で且つ40atm%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項9〜18のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面での窒素濃度は、0.2atm%〜3atm%であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項9〜19のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面での窒素濃度は、0.5atm%〜1atm%であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項9、13〜17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第5の工程において、前記窒素プラズマに酸素プラズマを加えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項22】
半導体基板を第1の領域、第2の領域及び第3の領域に区画する第1の工程と、
前記第1の領域上、前記第2の領域上及び前記第3の領域上に、熱酸化膜からなる第1のゲート絶縁用膜を形成する第2の工程と、
前記第1のゲート絶縁用膜における前記第2の領域及び前記第3の領域に含まれる部分を除去する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、酸窒化雰囲気で酸窒化処理を行うことにより、前記半導体基板における前記第2の領域上に、膜厚が前記第1のゲート絶縁用膜よりも小さい第2のゲート絶縁用膜を形成し、且つ、前記第3の領域上に膜厚が前記第2のゲート絶縁用膜よりも小さい第3のゲート絶縁用膜を形成する第4の工程と、
前記第1のゲート絶縁用膜、前記第2のゲート絶縁用膜及び前記第3のゲート絶縁用膜を窒素プラズマに暴露して、前記第1のゲート絶縁用膜、前記第2のゲート絶縁用膜及び前記第3のゲート絶縁用膜に窒素原子を導入することにより、前記第1のゲート絶縁用膜から第1のゲート絶縁膜を形成し、前記第2のゲート絶縁用膜から第2のゲート絶縁膜を形成し、前記第3のゲート絶縁用膜から第3のゲート絶縁膜を形成する第5の工程とを備え、
前記第5の工程の窒素プラズマによって、
前記第1のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第1のゲート絶縁膜における膜厚方向の表面部に第1のピークと前記半導体基板の界面に前記第1のピークよりも小さい第2のピークとを有し、
前記第3のゲート絶縁膜の窒素濃度分布は、前記第3のゲート絶縁膜における膜厚方向の中央部にピークを持ち、且つ窒素が前記半導体基板との界面に達するように導入され、
前記第3のゲート絶縁膜の膜厚は2.0nm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、0.2atm%以上で且つ3atm%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項24】
請求項22に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3のゲート絶縁膜における前記半導体基板との界面部分の窒素濃度は、0.5atm%以上で且つ1atm%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項22に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の工程の後に、前記半導体基板の前記第2の領域に増速酸化効果を生じさせる不純物イオンを注入する第6の工程をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物イオンはフッ素又はシリコンであり、前記フッ素又はシリコンを前記半導体基板の表面近傍に1×1014cm-2以上で且つ5×1015cm-2以下のドーズ量で注入することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−212716(P2010−212716A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104059(P2010−104059)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【分割の表示】特願2005−268440(P2005−268440)の分割
【原出願日】平成14年7月11日(2002.7.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】