説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ゲート電極への水素の拡散を防止することにより、ゲート絶縁膜の劣化を抑制し、信頼性の高い半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置は、ポリシリコンを含むゲート電極と、ゲート電極の少なくとも上面を覆い、水素を貯蔵する機能を有する水素貯蔵層と、を備える。好ましくは、バリア層は、組成式Siの酸窒化膜を含有し、x:y:z=1:1:0.1〜0.7である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。特に、本発明は、ポリシリコンを有するゲート電極を備える半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置等の半導体装置において、ゲート絶縁膜中に拡散した水素がリークパスを形成し、リーク電流を増大させることが報告されている(非特許文献1参照)。半導体装置に製造プロセスにおいては、水素がゲート絶縁膜中に拡散する機会が多く存在する。このため、半導体デバイスの信頼性を高めるためには、水素の拡散を抑制する必要がある。
【0003】
このような水素は、SiO/SiN界面に形成されたSiOにおいて捕捉することができることが報告されている(非特許文献2及び3参照)。
【0004】
そこで、SiOは、水素の拡散を防止して、半導体記憶装置の信頼性を向上させるために半導体記憶装置に適用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1に記載の半導体記憶装置においては、シリコン基板とゲート電極の間に、シリコン基板側から順に第1シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、第2シリコン酸化膜が積層した絶縁膜が介在し、第1シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の間の界面、シリコン窒化膜と第2シリコン酸化膜の間の界面、及び第2シリコン酸化膜とゲート電極の間の界面の全て又は少なくとも1つの界面に水素吸蔵膜が介在している。特許文献2に記載の半導体記憶装置は、メモリセルと層間絶縁膜の間にてメモリセルを覆うカバー膜であり、シリコン窒化膜の表面に水素吸蔵膜が被覆された膜を有する。特許文献1及び2の半導体記憶装置において、この水素吸蔵膜にはSiOを含むシリコン窒化酸化膜が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−267366号公報
【特許文献2】特開2009−252841号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nissan-Cohen、外1名、「The Effect of Hydrogen on Trap Generation, Positive Charge Trapping, and Time-Dependent Dielectric Breakdown of Gate Oxides」、 IEEE Electron Device Letters, Vol. 9, No. 6 287 (1988)
【非特許文献2】Z. Liu、 外5名、「A hydrogen storage layer on the surface of silicon nitride films」、Applied Physics Letters, 92, 192115 (2008)
【非特許文献3】Z. Liu、 外6名、「Hydrogen Distribution in Oxide-Nitride-Oxide Stacks and Correlation with Data Retention of MONOS Memories」、 IEEE CFP08RPS-CDR 46th Annual International Reliability Physics Symposium, 2008, 705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0008】
半導体装置における層間絶縁膜や配線等の形成プロセスにおいては、ポリシリコンを含むゲート電極に水素が拡散してしまうことがある。この場合、水素は、ゲート電極に均一に侵入するわけではなく、ばらつきをもって侵入する。ゲート電極に水素が侵入するとポリシリコンゲート電極の比抵抗が変化するため、ゲート電極中の水素濃度のばらつきによってゲート電極の比抵抗にもばらつきが発生することになる。半導体装置の微細化の進展により、ポリシリコンゲート電極の比抵抗の変動が半導体装置の特性に影響を及ぼすようになった。
【0009】
非特許文献2及び3に記載されたSiO/SiNの積層では、水素と透過を防止することができない部分が生じるので、半導体装置の信頼性を十分に高めることはできない。
【0010】
特許文献1に記載の半導体記憶装置においては、ゲート電極への水素の拡散は防止することはできない。すなわち、水素がゲート電極を介してゲート絶縁膜に拡散することを防止することができない。
【0011】
特許文献2に記載の半導体記憶装置においては、水素吸蔵膜はシリコン窒化膜の表面に形成されているが、この場合、シリコン窒化膜を形成する際にゲート電極に水素が拡散してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1視点によれば、ポリシリコンを含むゲート電極と、ゲート電極の少なくとも上面を覆い、水素を貯蔵する機能を有する水素貯蔵層と、を備える半導体装置が提供される。
【0013】
本発明の第2視点によれば、ポリシリコンを含むゲート電極前駆層を形成する工程と、ゲート電極前駆層の表面の少なくとも一部を第1酸化膜にする工程と、第1酸化膜を不活性ガス雰囲気下においてアニール処理する工程と、を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0015】
本発明によれば、ゲート電極への水素の拡散を防止することができる。これにより、ゲート電極の比抵抗を一定に維持し、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、ゲート電極を介してゲート絶縁膜へ水素が拡散することを防止され、ゲート絶縁膜の劣化が抑制される。これにより、リークパスを抑制して、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図6】本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図7】第5実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記第1視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水素貯蔵層は、ゲート電極の側面をさらに覆う。
【0020】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水素貯蔵層はシリコン酸窒化膜を含む。
【0021】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水素貯蔵層は、組成式Siの酸窒化膜を含有する。x:y:z=1:1:0.1〜0.7である。
【0022】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水素貯蔵層における水素濃度は、3×1019atom/cm以上1×1022atom/cm以下である。
【0023】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水素貯蔵層の厚さは、0.05nm以上1nm以下である。
【0024】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ゲート電極の少なくとも一部はシリサイド化されている。
【0025】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ゲート電極と水素貯蔵層とが互い違いに複数積層されている。
【0026】
上記第2視点の好ましい形態によれば、半導体装置の製造方法は、酸化膜をアニール処理する工程後に、ゲート電極前駆層の形状を加工し、ゲート電極を形成する工程をさらに含む。
【0027】
上記第2視点の好ましい形態によれば、半導体装置の製造方法は、ゲート電極前駆層の形状を加工する工程後に、ゲート電極の側面の表面の少なくとも一部を第2酸化膜にする工程と、第2酸化膜を不活性ガス雰囲気下においてアニール処理する工程と、をさらに含む。
【0028】
上記第2視点の好ましい形態によれば、不活性ガスは窒素ガスである。
【0029】
本発明の第1実施形態に係る半導体装置について説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。
【0030】
半導体装置10は、第1拡散領域12a及び第2拡散領域12bが形成された半導体基板11と、半導体基板11上に形成されたゲート絶縁膜13と、ゲート絶縁膜13上に形成されたゲート電極14と、ゲート電極14の少なくとも上面を覆うように形成された水素貯蔵層15と、半導体基板11上に積層体13〜15を覆うように形成される絶縁層(不図示)と、を備える。第1実施形態におけるゲート絶縁膜13においては、第1シリコン酸化膜13a、シリコン窒化膜13b及び第2シリコン酸化膜13bが順に積層されている。半導体基板11としては、例えばシリコン基板を使用することができる。なお、図1以降において、各層は、明瞭化のために一定の厚さをもって図示しているが、実際の相対的な厚さを必ずしも反映するものではない。
【0031】
ゲート電極14は、例えば、ポリシリコンを含有する。また、ゲート電極14の少なくとも一部はシリサイド化されていてもよい。
【0032】
水素貯蔵層15は、水素を貯蔵又は吸蔵する機能を有する。水素貯蔵層15は、例えば、シリコン酸窒化膜であると好ましく、例えば組成式Siを有するシリコン酸窒化膜であると好ましい。このとき、x、y及びzの比は、x:y:z=1:1:0.1〜0.7であると好ましく、より好ましくは1:1:0.4〜0.5である。水素貯蔵層15としては、例えば、SiOを含有する膜を使用することができる。
【0033】
組成式Siを有するシリコン酸窒化膜は、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との遷移相となる不安定な相を形成する。このとき、シリコン酸窒化膜中のシリコンはダングリングボンドを有する。このダングリングボンドには水素が結合することができる。シリコン酸窒化膜の水素貯蔵効果は、水素がこのダングリングボンドに結合することにより発現されると推測される。ダングリングボンドに結合した水素は、そのままシリコン酸窒化膜に残存することになる。また、シリコン窒化膜に補足された水素はその移動を阻害されているので、シリコン酸窒化膜は、シリコン酸窒化膜が水素雰囲気に曝された際にも、水素を透過させないようにするバリア効果を発揮しているものと考えられる。すなわち、水素を貯蔵したシリコン酸窒化膜は、水素の補足機能及びバリア機能を有することになる。組成式Siを有するシリコン酸窒化膜においては、x:y:z=1:1:0.1〜0.7のとき、シリコン酸窒化膜中にダングリングボンドが形成され、特に1:1:0.4〜0.5のときに最も効果的にダングリングボンドが形成されると考えられる。
【0034】
水素貯蔵層15は、シリコン酸化膜よりも多くの水素原子を含有する。水素貯蔵層15中の水素濃度が低いと水素貯蔵層としての機能が低下してしまうので、水素貯蔵層15中の水素濃度は、3×1019atom/cm以上であると好ましい。また、水素濃度が高すぎると、水素貯蔵機能が低下してしまうと考えられるので、水素貯蔵層15中の水素濃度は、1×1022atom/cm以下であると好ましく、5×1021atom/cm以下であるとより好ましい。なお、ここでいう「水素」とは、共鳴核反応法によって検出される「水素」を意味する。水素貯蔵層15中の水素濃度の測定方法は、例えば、特開2008−157805に記載された水素共鳴核反応を用いた方法を用いることができる。ただし、本発明の水素貯蔵層15の厚さは好ましくは1nmであるので、シリコン窒化膜に対して斜めからイオンを入射して実効的な膜厚を確保するようにする。
【0035】
ONO膜上に1nmのシリコン酸窒化膜からなる水素貯蔵層を設けた評価サンプルによる測定においては、水素貯蔵層中の水素濃度を3×1021atom/cmにしたときは、2×1021atom/cmにしたときに比べて、基板/ONO膜界面の水素濃度を1/2程度に抑えることができた。水素濃度5×1021atom/cmのサンプルでは、基板/ONO膜界面の水素素濃度がさらに抑制されることが確認された。つまり、シリコン酸窒化膜に貯蔵される水素濃度が高いほど、水素に対するバリア性が高いことが確認された。水素貯蔵層中における好ましい水素濃度の範囲の上限は、シリコン酸窒化膜の原子密度と水素吸蔵メカニズムから1×1022atom/cmである。好ましい水素濃度の範囲の下限は、バルクのシリコン窒化膜やシリコン酸化膜に含まれる水素濃度よりも高ければよく、3×1019atom/cmであり、より好ましくは3×1021atom/cmである。
【0036】
水素貯蔵層15中の水素濃度は、加熱によって高めることができる。水素貯蔵層15は、水素原子濃度を高めることによってゲート絶縁膜への水素の浸入を抑制することができる。水素貯蔵層15の厚さは0.5nm以上であると好ましい。水素貯蔵層15は、少なくともSiNを1分子層有することが必要であるからである。また、水素貯蔵層15の厚さは、1nm以下であると好ましい。一方、水素貯蔵層15は厚いほうが水素貯蔵効果を高めることができる。しかし、水素貯蔵層15を厚くするためには、高温かつ長時間のアニール処理が必要となる。これにより、プロセス時間が長くなるという問題に加え、基板内に形成されたウェル(不図示)の不純物プロファイルが変化してしまうという問題もある。そこで、水素貯蔵層15の厚さは、特性に影響が及ばないような厚さにすると好ましい。
【0037】
水素貯蔵層15は、例えば、ゲート電極14をポリシリコンで形成し、水素貯蔵層15を形成するゲート電極14の領域を自然酸化させた後、窒素ガス雰囲気下において温度範囲700℃〜1150℃、より好ましくは900℃〜1150℃で1分〜60分アニール処理を施すことにより形成することができる。水素貯蔵層15の別の形成方法としては、例えば、ゲート電極をポリシリコンで形成した後、表面酸化膜をフッ化水素(HF)で除去する。次に、処理面を大気に曝すことなく、アンモニア/過酸化水素(APM;Ammonia hydrogen Peroxide Mixture)洗浄及び硫酸/過酸化水素(SPM;Sulfuric acid-hydrogen Peroxide Mixture)洗浄を実施する。次に、洗浄面を不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気下において600℃〜750℃でアニール処理を実施する。
【0038】
水素貯蔵層15により、製造プロセスにおいてゲート電極14に水素が侵入することを防止することができる。これにより、ゲート電極14の比抵抗にばらつきが生じることを防止することができる。また、ゲート電極14を介してゲート絶縁膜13に不純物が拡散することを防止することができる。
【0039】
次に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図を示す。以下の説明においては、ゲート電極14をポリシリコンで形成する例について説明する。
【0040】
まず、半導体基板11表面の自然酸化膜を除去するため、半導体基板11表面を酸洗浄する。次に、半導体基板11上に、ゲート絶縁膜13の前駆層となる第1シリコン酸化膜前駆層13aA、シリコン窒化膜前駆層13bA及び第2シリコン酸化膜前駆層13bA、並びに、ポリシリコンでゲート電極前駆層14Aを形成する(図2(a))。第1シリコン酸化膜前駆層13aAは、シリコン基板11の熱酸化により形成することができる。シリコン窒化膜前駆層13bAは、例えば、シランとアンモニアを原料ガスとするCVD法により成膜することができる。ゲート電極前駆層14Aは、例えば、CVD法またはスパッタ法により形成することができる。
【0041】
次に、ゲート電極前駆層14Aの表面を大気に触れさせる。これにより、ポリシリコンのゲート電極前駆層14A上に、自然酸化膜15Aが形成される(図2(b))。
【0042】
次に、不活性ガス中でアニール処理(加熱処理)を施す。アニール条件は、例えば、窒素雰囲気下、加熱温度900℃〜1150℃とすることができる。アニール処理により、自然酸化膜15Aを、組成式Si(x:y:z=1:1:0.1〜0.7)の水素貯蔵層前駆層15Bとすることができる(図2(c))。
【0043】
次に、第1シリコン酸化膜前駆層13aA、シリコン窒化膜前駆層13bA、第2シリコン酸化膜前駆層13bA、ゲート電極前駆層14A及び水素貯蔵層前駆層15Bを、ゲート電極の形状に加工する。加工処理は、例えば、ハードマスク及びレジストマスクでパターニングした後、ドライエッチングで行うことができる。
【0044】
次に、ゲート構造をマスクとして、イオン注入により、半導体基板11に第1拡散領域12a及び第2拡散領域12bを形成する。これにより、半導体装置10を製造することができる(図1)。
【0045】
本発明の第2実施形態に係る半導体装置について説明する。図3に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。
【0046】
第2実施形態においては、酸化膜/窒化膜/酸化膜(ONO)ゲートスタック構造ではなく、ゲート絶縁膜23は1層のみ(例えばシリコン酸化膜のみ)で形成されている。それ以外の形態は、第1実施形態と同様である。
【0047】
本発明の第3実施形態に係る半導体装置について説明する。図4に、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。
【0048】
第3実施形態においては、複数の水素貯蔵層35a,35bが積層されている。すなわち、第1ゲート電極34aの上に第1水素貯蔵層35aが形成され、その積層体上に、さらに第2ゲート電極34b及び第2水素貯蔵層35bの積層体が積層されている。それ以外の形態は、第1実施形態と同様である。
【0049】
本発明の第4実施形態に係る半導体装置について説明する。図5に、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。
【0050】
第4実施形態においては、ゲート電極は、ポリシリコン層44aと、ポリシリコンの上面をシリサイド化して形成したシリサイド層44bと、を有する。水素貯蔵層45は、シリサイド層44bの上面を覆うように形成されている。それ以外の形態は、第1実施形態と同様である。
【0051】
本発明の第5実施形態に係る半導体装置について説明する。図6に、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。
【0052】
第5実施形態においては、第4実施形態に係る半導体装置において、ゲート電極の側面にも水素貯蔵層が形成されている。すなわち、水素貯蔵層55は、ゲート電極54の両側面及び上面を覆うように形成されている。それ以外の形態は、第1実施形態と同様である。第5実施形態によればゲート電極側面からの水素の侵入を抑制することができる。
【0053】
ゲート電極54の側面から侵入した水素によるゲート電極54の高抵抗化の影響は、ゲート長が短いほど、すなわち半導体装置が微細化するほど大きくなる。ゲート長が短い場合、水素の侵入深さが浅くても、高抵抗化された領域の割合が大きくなるためである。第5実施形態によれば、半導体装置が微細化しても、半導体装置の特性劣化を抑制することができる。
【0054】
第2〜第5実施形態における水素貯蔵層の作製方法は、第1実施形態と同様にして作成することができる。すなわち、水素貯蔵層を形成する領域にゲート電極前駆層の自然酸化膜を形成し、当該自然酸化膜をアニール処理することにより水素貯蔵層を作製することができる。
【0055】
図7に、第5実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図を示す。第5実施形態においては、まず、第1実施形態(図2)と同様にして、ゲート電極前駆層の上面に、第1自然酸化膜を形成し、これをアニール処理して第1水素貯蔵層前駆層を形成する。次に、ゲート電極前駆層をゲート電極形状に加工し、ゲート電極54を形成する(図7(a))。このとき、ゲート電極54等は、第6実施形態と同様となり、上面に第1水素貯蔵層55aが形成された状態となる。次に、ゲート電極54の側面(新たに露出した面)を大気に曝して、ゲート電極54の側面に第2自然酸化膜55bAを形成する(図7(b))。次に、第2自然酸化膜55bAをアニール処理して、ゲート電極54の側面領域に第2水素貯蔵層55bを形成する(図7(c))。このようにしてゲート電極54の上面及び側面に水素貯蔵層55を有する半導体装置50を製造することができる。
【0056】
本発明の半導体装置及びその製造方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0057】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の半導体装置及びその製造方法は、例えば、MOSトランジスタを有する半導体装置、不揮発性メモリ等の半導体記憶装置等、種々の半導体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10,20,30,40,50 半導体装置
11,21,31,41,51 半導体基板
12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b 拡散領域
13a,13b,13c,23,33,43,53 ゲート絶縁膜
13aA,13bA,13cA ゲート絶縁膜前駆層
14,24,34a,34b,44,54 ゲート電極
14A ゲート電極前駆層
44a,54a ポリシリコン層
44b,54b シリサイド層
15,25,35a,35b,45,55 水素貯蔵層
15A 自然酸化膜
15B 水素貯蔵層前駆層
55a 第1水素貯蔵層
55b 第2水素貯蔵層
55bA 第2自然酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシリコンを含むゲート電極と、
前記ゲート電極の少なくとも上面を覆い、水素を貯蔵する機能を有する水素貯蔵層と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記水素貯蔵層は、前記ゲート電極の側面をさらに覆うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記水素貯蔵層はシリコン酸窒化膜を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記水素貯蔵層は、組成式Siの酸窒化膜を含有し、
x:y:z=1:1:0.1〜0.7であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記水素貯蔵層における水素濃度は、3×1019atom/cm以上1×1022atom/cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記水素貯蔵層の厚さは、0.05nm以上1nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極の少なくとも一部はシリサイド化されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート電極と前記水素貯蔵層とが互い違いに複数積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
ポリシリコンを含むゲート電極前駆層を形成する工程と、
前記ゲート電極前駆層の表面の少なくとも一部を第1酸化膜にする工程と、
前記第1酸化膜を不活性ガス雰囲気下においてアニール処理する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記酸化膜をアニール処理する工程後に、
前記ゲート電極前駆層の形状を加工し、ゲート電極を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ゲート電極前駆層の形状を加工する工程後に、
前記ゲート電極の側面の表面の少なくとも一部を第2酸化膜にする工程と、
前記第2酸化膜を不活性ガス雰囲気下においてアニール処理する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記不活性ガスは窒素ガスであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210999(P2011−210999A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77993(P2010−77993)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】