説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 トンネル絶縁膜を有するトランジスタにおいて、トンネル絶縁膜の電子トラップが増加することによるトランジスタの電気特性の劣化を抑制することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供する
【解決手段】 実施形態に係る半導体装置は、半導体基板1と、前記半導体基板1上に形成されたトンネル絶縁膜2を含むトランジスタと、前記トランジスタの上方に形成されたBを含むシリコン窒化膜7と、を備える。前記シリコン窒化膜7は、B−N結合を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置におけるパッシベーション膜としてプラズマCVD法により形成されたシリコン窒化膜が広く用いられている。このシリコン窒化膜はN−H結合を有しており、このN−H結合中のHがトランジスタまで拡散し、トンネル絶縁膜の電子トラップ量が増加し、トランジスタの電気特性が劣化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−170660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、パッシベーション膜に含まれるHによるトランジスタの電気特性劣化を抑制することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたトランジスタと、前記トランジスタ上方に形成されたBを含むシリコン窒化膜と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パッシベーション膜に含まれるHによるトランジスタの電気特性の劣化を抑制することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図4】シリコン窒化膜の製造方法を説明する図。
【図5】シリコン窒化膜のFT−IR吸収スペクトルを示す図。
【図6】電子トラップ量の測定に用いたサンプル構造を示す断面図。
【図7】電子トラップ量の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置として、MOSトランジスタを例にその製造方法を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1から図3は実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0010】
図1に示すように、周知の方法でシリコンを主成分とする半導体基板1上にシリコン酸化膜からなるトンネル絶縁膜2、ポリシリコンからなるゲート電極3、及び図示していない拡散層を有するMOSトランジスタを形成する。
【0011】
さらに、図2に示すようにMOSトランジスタを覆うように、シリコン酸化膜からなる第1の層間絶縁膜4と紙面の奥行き方向に延伸するタングステンからなる配線5を形成する。ここでは、配線は1層のみの場合を示したが、もちろん層間絶縁膜と配線が交互に積層されている所謂、多層配線構造でも良い。
【0012】
続いて、図3に示すようにシリコン酸化膜からなる第2の層間絶縁膜6を形成し、さらにパッシベーション膜としてシリコン窒化膜7を形成する。このシリコン窒化膜7の形成方法については、後で詳しく述べる。その後、例えばH2ガスとN2ガスの混合雰囲気で400度、20分間の熱処理により、シンターを行う。このようにして、MOSトランジスタを有する半導体装置を形成する。
【0013】
シリコン窒化膜7は、次のようなプラズマCVD法で形成する。10Torr以下の真空状態を維持可能な反応容器内部で、半導体基板1を400度に加熱する。この反応容器は図4に示すように、容器の上部と下部に平行平板電極を有している。なお、下部の電極は半導体基板1を加熱するヒーターとしても働く。
【0014】
次に、反応容器内部に、SiH4、NH3、及びN2で希釈したB2H6のガスを流し入れる。ここでB2H6の体積はN2の体積の約5%が望ましい。反応容器内部の圧力を一定に維持し、電極間に高周波電力を供給することで反応容器内部にプラズマを発生させ、半導体基板1上にBを含むシリコン窒化膜7を形成する。
【0015】
従来技術のようにB2H6を用いず、SiH4、NH3及びN2のガスを用いて形成したシリコン窒化膜には、NH3が分解されたNHxが含まれている。シリコン窒化膜形成後に行うシンターなどの熱処理によってNHxがシリコン窒化膜から脱離し、シリコン窒化膜とトランジスタの間に存在する第2の層間絶縁膜6中にNが取り込まれる。よってN−H結合が切断され、活性化したHがトランジスタ中のトンネル絶縁膜2に到達する。
【0016】
それに対して、本実施例ではB2H6を用いることで、シリコン窒化膜7成膜時にはNHxに代わってBNxが多く形成され、BNxつまりB−N結合を含むシリコン窒化膜7が形成出来る。Hは活性化した状態では無く、H2の状態でシリコン窒化膜7から放出されるため、トランジスタの電気特性劣化が抑制出来る。
【0017】
図5に、N2で希釈したB2H6の流量を0、100、200、400、800、1200sccmと変化させて形成したシリコン窒化膜のFT−IR吸収スペクトルを示す。B2H6の流量が増加するに従い、1350cm−1付近のB−N結合のピークが増加し、3350cm-1付近のN−H結合のピークが減少する。B2H6を用いることで、N−H結合の量が減少することが分かる。
【0018】
さらに、シリコン窒化膜の形成をB2H6が0sccmで行った場合と、200sccmで行った場合におけるトンネル絶縁膜への影響を図6に示す構造のサンプルを用いて調べた。図6のサンプルは次のような方法で形成した。シリコン基板上に7.4nmのシリコン酸化膜から成るトンネル絶縁膜と、Pをドーピングした200nmのPoly−Si膜を形成した。それらを覆うように、LP−CVD法で形成した200nmのシリコン酸化膜及び、プラズマCVD法で形成した200nmのシリコン窒化膜を形成した。このトンネル絶縁膜が実施例におけるトンネル絶縁膜2に相当し、このシリコン窒化膜が実施例におけるシリコン窒化膜7に相当する。
【0019】
図6のサンプルに対して、N2雰囲気で350度、20分のアニールを行う前後における電子トラップ量を測定した結果を図7に示す。このアニールは例えばシンター工程に相当する。このようにシリコン窒化膜形成時にB2H6を添加することで、アニール後におけるトンネル絶縁膜の電子トラップ量を低減し、トランジスタの電気特性劣化抑制が可能であることが分かる。
【0020】
なお、本実施例ではB2H6を添加したが、BCl3やB(CH3)3などのBを含むガスを用いても同様の効果が得られる。
【0021】
さらに、本実施例ではシリコン窒化膜7形成後の熱処理としてシンターを行っているが、熱処理はこれに限らず、例えば本実施例で示した工程の後にポリイミド形成をし、その後、熱処理を行った場合も同様の効果が得られる。
【0022】
本発明は上記実施例1に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・ 半導体基板
2・・・ トンネル絶縁膜
3・・・ ゲート電極
4・・・ 第1の層間絶縁膜
5・・・ 配線
6・・・ 第2の層間絶縁膜
7・・・ シリコン窒化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたトランジスタと、
前記トランジスタ上方に形成されたBを含むシリコン窒化膜と、
を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記シリコン窒化膜はB−N結合を有していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記トランジスタと前記シリコン窒化膜の間に、層間絶縁膜を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上にトランジスタを形成する工程と、
前記トランジスタ上方にBを含むシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜形成後の熱処理工程を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜の形成には、SiH4、NH3、N2及びB2H6を含むガスを用いることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−79891(P2012−79891A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223214(P2010−223214)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】