説明

半導体装置

【課題】不揮発性メモリを構成するメモリセルのサイズを縮小できる技術を提供する。
【解決手段】本発明では、ソース線S1がメモリセルMC1AとメモリセルMC8Aで共通となっている。これにより、メモリセルMC1AやメモリセルMC8Aごとに電気的に独立したソース線を設ける必要がなく、メモリセルのサイズを縮小化することができる。具体的に、共通するソース線S1は、ビット線D1やビット線D8と並行するように配置されているのではなく、選択ゲート線CGL1やメモリゲート線MGL1と並行するように延在している。これにより、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8A間の間隔を狭めることができるので、メモリセルアレイ全体の占有面積を縮小化することができる。このソース線S1は、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bとも共通化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを有する半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003−309193号公報(特許文献1)の図11には、メモリゲート構造体と、選択ゲート構造体とを備えるメモリセルにおいて、選択ゲート構造体をソース領域側に配置している回路図が記載されている。
【0003】
特開2005−332502号公報(特許文献2)には、メモリセル毎に電気的に独立したソース線が設けられた構造(回路)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−309193号公報
【特許文献2】特開2005−332502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気的に書き込み・消去が可能な不揮発性半導体記憶装置として、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリが広く使用されている。現在広く用いられているEEPROMやフラッシュメモリに代表されるこれらの不揮発性半導体記憶装置(不揮発性メモリ)は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのゲート電極下に、酸化シリコン膜で囲まれた導電性の浮遊ゲート電極やトラップ性絶縁膜など電荷蓄積膜を有しており、浮遊ゲート電極やトラップ性絶縁膜での電荷蓄積状態によってトランジスタのしきい値が異なることを利用して情報を記憶する。
【0006】
このトラップ性絶縁膜とは、電荷の蓄積可能なトラップ準位を有する絶縁膜をいい、一例として、窒化シリコン膜等があげられる。トラップ性絶縁膜を有する不揮発性半導体記憶装置では、トラップ性絶縁膜への電荷の注入・放出によってMOSトランジスタのしきい値をシフトさせ記憶素子として動作させる。このようなトラップ性絶縁膜を電荷蓄積膜とする不揮発性半導体記憶装置をMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)型トランジスタと呼んでおり、電荷蓄積膜に導電性の浮遊ゲート電極を使用する場合に比べ、離散的なトラップ準位に電荷を蓄積するためにデータ保持の信頼性に優れる。また、データ保持の信頼性に優れているためにトラップ性絶縁膜上下の酸化シリコン膜の膜厚を薄膜化でき、書き込み・消去動作の低電圧化が可能である等の利点を有する。
【0007】
MONOS型トランジスタを利用したメモリセルの構造として、例えば、ソース線とビット線の間にメモリゲート構造体と選択ゲート構造体とを備えるものがある。このメモリゲート構造体は、半導体基板上に形成された第1電位障壁膜と、第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、第2電位障壁膜上に形成されたメモリゲート電極を有する。また、選択ゲート構造体は、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成された選択ゲート電極を有する。上述した構成を有するメモリセルでは、ソース線側にメモリゲート構造体が配置され、ドレイン線側に選択ゲート構造体が配置されている。
【0008】
このように構成されているメモリセルでは、例えば、情報「1」をメモリセルへ書き込む場合、選択ゲート電極に「1.5V」を印加し、メモリゲート電極に「1.5V」を印加する。さらに、ウェル(半導体基板)に「−10.7V」を印加し、ビット線に「−10.7V」を印加するとともに、ソース線をフローティング状態とする。この場合、FN(Fowler Nordheim)トンネル電流により、電子がメモリゲート構造体にある電荷蓄積膜に注入されて、メモリセルに情報「1」が記憶される。このとき、選択ゲート構造体とメモリゲート構造体の直下の半導体基板内にチャネルが形成されるので、ビット線とソース線が電気的に接続されソース線の電位が「−10.7V」となる。
【0009】
一方、メモリセルに、例えば、情報「0」を書き込む場合、選択ゲート電極に「1.5V」を印加し、メモリゲート電極に「1.5V」を印加する。さらに、ウェル(半導体基板)に「−10.7V」を印加し、ビット線の「−0.5V」を印加するとともに、ソース線をフローティング状態とする。この場合、電子が電荷蓄積膜に注入されないままであるので、メモリセルは消去状態を維持することになる。つまり、この場合のメモリセルには、情報「0」が書き込まれることになる。このときも、選択ゲート構造体とメモリゲート構造体の直下の半導体基板内にチャネルが形成されるので、ビット線とソース線が電気的に接続されソース線の電位が「−0.5V」となる。
【0010】
したがって、例えば、それぞれの選択ゲート電極が電気的に接続され、かつ、それぞれのメモリゲート電極が電気的に接続されている2つのメモリセルを考えた場合、一方のメモリセルに情報「1」を書き込み、他方のメモリセルに情報「0」を書き込むとき、それぞれのビット線に異なる電位を印加することになる。上述した例によれば、情報「1」を書き込む一方のメモリセルのビット線には「−10.5V」を印加し、情報「0」を書き込む他方のメモリセルのビット線には「−0.5V」を印加する。このとき、それぞれのメモリセルのビット線はそれぞれのメモリセルのソース線と電気的に接続されることになることから、一方のメモリセルのソース線(例えば、「−10.5V」が印加される)と、他方のメモリセルのソース線(例えば、「−0.5V」が印加される)には、異なる電位が印加されることになる。したがって、複数のメモリセルでソース線を共通にすることができず、個々のメモリセルにビット線と並行するソース線をそれぞれ設ける必要がある。このことは、メモリセルごとに電気的に独立したソース線を設ける必要があることを意味しており、この結果、メモリセルの縮小化が困難になる問題点がある。
【0011】
本発明の目的は、不揮発性メモリを構成するメモリセルのサイズを縮小できる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
代表的な実施の形態による半導体装置は、半導体基板上に形成されたメモリセルを備える。前記メモリセルは、(a)前記半導体基板内に形成されたソース領域と、(b)前記ソース領域と離間した前記半導体基板内に形成されたドレイン領域と、(c)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成されたメモリゲート構造体と、(d)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成された選択ゲート構造体とを含む。前記メモリゲート構造体は、(c1)前記半導体基板上に形成された第1電位障壁膜と、(c2)前記第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、(c3)前記電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、(c4)前記第2電位障壁膜上に形成されたメモリゲート電極とを有する。前記選択ゲート構造体は、(d1)前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、(d2)前記ゲート絶縁膜上に形成された選択ゲート電極とを有する。そして、前記選択ゲート構造体が前記ソース領域側に配置されている。ここで、前記メモリセルへの書き込み動作および消去動作は、FNトンネル現象により前記電荷蓄積膜に電荷を出し入れすることで行なわれることを特徴とするものである。
【0015】
また、代表的な実施の形態による半導体装置は、半導体基板上に形成されたメモリセルを備える。前記メモリセルは、(a)前記半導体基板内に形成されたソース領域と、(b)前記ソース領域と離間した前記半導体基板内に形成されたドレイン領域と、(c)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成されたメモリゲート構造体とを含む。さらに、(d)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成された第1選択ゲート構造体と、(e)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成された第2選択ゲート構造体とを含む。前記メモリゲート構造体は、(c1)前記半導体基板上に形成された第1電位障壁膜と、(c2)前記第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、(c3)前記電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、(c4)前記第2電位障壁膜上に形成されたメモリゲート電極とを有する。前記第1選択ゲート構造体は、(d1)前記半導体基板上に形成された第1ゲート絶縁膜と、(d2)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1選択ゲート電極とを有する。また、前記第2選択ゲート構造体は、(e1)前記半導体基板上に形成された第2ゲート絶縁膜と、(e2)前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2選択ゲート電極とを有する。そして、前記第1選択ゲート構造体が前記ソース領域側に配置され、前記第2選択ゲート構造体が前記ドレイン領域側に配置され、かつ、前記第1選択ゲート構造体と前記第2選択ゲート構造体に挟まれるように前記メモリゲート構造体が配置されている。ここで、前記メモリセルへの書き込み動作および消去動作は、FNトンネル現象により前記電荷蓄積膜に電荷を出し入れすることで行なわれることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
不揮発性メモリを構成するメモリセルのサイズを縮小できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のMONOS型トランジスタを使用した不揮発性メモリの回路構成を示す図であり、書き込み動作の電圧条件を示す図である。
【図2】従来のMONOS型トランジスタを使用した不揮発性メモリの回路構成を示す図であり、消去動作の電圧条件を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるMONOS型トランジスタの一構成例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるMONOS型トランジスタの他の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるMONOS型トランジスタの回路表記を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、書き込み動作の電圧条件を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、消去動作の電圧条件を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、読み出し動作の電圧条件を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1におけるメモリセルアレイの構造と、比較例1や比較例2におけるメモリセルアレイの構造とを対比して示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、書き込み動作の電圧条件を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、消去動作の電圧条件を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、読み出し動作の電圧条件を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4におけるスプリットゲート型のメモリセルの構造を示す図である。
【図14】図13の丸印領域を拡大した図である。
【図15】本発明の実施の形態5におけるMONOS型トランジスタの構成を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態5におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、書き込み動作の電圧条件を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態5におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、消去動作の電圧条件を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態5におけるMONOS型トランジスタを行列状に配置したメモリセルアレイを示す図であり、読み出し動作の電圧条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
不揮発性メモリであるMONOS型トランジスタでは、例えば、電荷蓄積膜に負電荷(電子)を蓄積することにより、MONOS型トランジスタのしきい値電圧を上昇させて情報「1」を記憶する(書き込み状態)。一方、電荷蓄積膜に正電荷(正孔)を蓄積することにより、MONOS型トランジスタのしきい値電圧を低下させて情報「0」を記憶する(消去状態)。このようにMONOS型トランジスタでは、電荷蓄積膜に対して電荷(電子または正孔)を出し入れすることにより情報を記憶するが、電荷蓄積膜に対して電荷(電子または正孔)を出し入れする方法は2種類ある。
【0025】
第1の方法は、FNトンネル電流を使用して電荷蓄積膜に対して負電荷(電子)を出し入れする方法である。第2の方法は、ホットエレクトロンを使用して電荷蓄積膜に負電荷(電子)を注入し、バンド間トンネリングで発生したホットホール(正孔)を電荷蓄積膜に注入する方法である。
【0026】
この2種類の方法の中でFNトンネル電流を使用する方法は、ホットエレクトロンとホットホールを使用する方法に比べて書き換え動作に必要とされる電力が小さいという利点を有している。さらに、どちらの方法も、電荷蓄積膜の下層に形成されている第1電位障壁膜を介して電荷蓄積膜へ負電荷(電子)を出し入れする。このとき、FNトンネル電流を使用する第1の方法では、第2の方法のように、エネルギーの高いホットエレクトロンやホットホールを使用しないことから、第1電位障壁膜に与えるダメージを少なくすることができる。つまり、FNトンネル電流を使用する第1の方法では、エネルギーの高いホットエレクトロンやホットホールを使用する第2の方法に比べて、第1電位障壁膜に与える損傷を抑制できることから、書き換え耐性に優れるという利点もある。
【0027】
そこで、本実施の形態1では、書き換え動作にFNトンネル電流を使用するMONOS型トランジスタについて説明する。まず、FNトンネル電流を使用して書き換え動作を行なう従来のMONOS型トランジスタの問題点について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、従来のMONOS型トランジスタを使用した不揮発性メモリの回路構成を示す図である。図1において、従来の不揮発性メモリでは、図1の横方向に選択ゲート線CGL1とメモリゲート線MGL1が並行して延在している。さらに、図1の横方向に、選択ゲート線CGL2とメモリゲート線MGL2も並行して延在している。
【0029】
一方、図1の縦方向には、ソース線S1〜S16とビット線D1〜D16が並行して延在している。図1では、これらのソース線S1〜S16およびビット線D1〜D16のうち、ソース線S1、S8、S9、S16とビット線D1、D8、D9、D16が図示されている。
【0030】
ここで、例えば、ソース線S1とビット線D1の間にメモリセルMC1Aが形成されている。このメモリセルMC1AはMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S1とビット線D1の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S1側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D1側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL1に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL1に接続されている。
【0031】
同様に、ソース線S1とビット線D1の間にはメモリセルMC1Bが形成されている。このメモリセルMC1BもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S1とビット線D1の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S1側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D1側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL2に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL2に接続されている。
【0032】
また、ソース線S8とビット線D8の間にメモリセルMC8Aが形成されている。このメモリセルMC8AもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S8とビット線D8の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S8側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D8側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL1に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL1に接続されている。
【0033】
同様に、ソース線S8とビット線D8の間にメモリセルMC8Bが形成されている。このメモリセルMC8BもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S8とビット線D8の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S8側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D8側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL2に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL2に接続されている。
【0034】
さらに、ソース線S9とビット線D9の間にメモリセルMC9Aが形成されている。このメモリセルMC9AもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S9とビット線D9の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S9側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D9側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL1に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL1に接続されている。
【0035】
同様に、ソース線S16とビット線D16の間にもメモリセルMC16Aが形成されている。このメモリセルMC16AもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S16とビット線D16の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S16側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D16側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL1に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL1に接続されている。
【0036】
また、ソース線S9とビット線D9の間にメモリセルMC9Bが形成されている。このメモリセルMC9BもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S9とビット線D9の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S9側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D9側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL2に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL2に接続されている。
【0037】
同様に、ソース線S16とビット線D16の間にもメモリセルMC16Bが形成されている。このメモリセルMC16BもMONOS型トランジスタから構成されており、情報を記憶するメモリトランジスタMTと、セルを選択する選択トランジスタSTとを有している。そして、ソース線S16とビット線D16の間にメモリトランジスタMTと選択トランジスタSTが直列に接続されている。このとき、メモリトランジスタMTがソース線S16側に配置され、選択トランジスタSTがビット線D16側に配置されている。さらに、メモリトランジスタMTのメモリゲート電極はメモリゲート線MGL2に接続され、選択トランジスタSTの選択ゲート電極は選択ゲート線CGL2に接続されている。
【0038】
以上のことから、選択ゲート線CGL1とメモリゲート線MGL1とに接続し、かつ、横方向(行方向)に配列するようにメモリセルMC1A、メモリセルMC8A、メモリセルMC9AおよびメモリセルMC16Aが形成されている。同様に、選択ゲート線CGL2とメモリゲート線MGL2とに接続し、かつ、横方向(行方向)に配列するようにメモリセルMC1B、メモリセルMC8B、メモリセルMC9BおよびメモリセルMC16Bが形成されている。そして、ソース線S1とビット線D1との間に接続され、かつ、縦方向(列方向)に配列するようにメモリセルMC1AとメモリセルMC1Bが形成され、ソース線S8とビット線D8との間に接続され、かつ、縦方向(列方向)に配列するようにメモリセルMC8AとメモリセルMC8Bが形成されている。同様に、ソース線S9とビット線D9との間に接続され、かつ、縦方向(列方向)に配列するようにメモリセルMC9AとメモリセルMC9Bが形成され、ソース線S16とビット線D16との間に接続され、かつ、縦方向(列方向)に配列するようにメモリセルMC16AとメモリセルMC16Bが形成されている。
【0039】
ここで、ソース線S1とビット線D1の間に形成されているメモリセルMC1Aと、ソース線S8とビット線D8の間に形成されているメモリセルMC8Aの間には、図示を省略している6つのメモリセルが配置されている。すなわち、同一の選択ゲート線CGL1および同一のメモリゲート線MGL1には、8つのメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aが形成されている。この8つのメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aによって1バイト(8ビット)の不揮発性メモリが構成されていることになる。さらに、メモリセルMC9AとメモリセルMC16Aの間にも6つのメモリセルが形成されており、8つのメモリセルMC9A〜メモリセルMC16Aにより1バイト(8ビット)の不揮発性メモリが構成される。同様に、メモリセルMC1BとメモリセルMC8Bの間にも6つのメモリセルが形成されており、8つのメモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bにより1バイト(8ビット)の不揮発性メモリが構成されている。また、メモリセルMC9BとメモリセルMC16Bの間にも6つのメモリセルが形成されており、8つのメモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bにより1バイト(8ビット)の不揮発性メモリが構成されている。
【0040】
従来の不揮発性メモリは上記のように構成されており、以下に、その動作について説明する。まず、図1を使用して書き込み動作について説明する。図1では、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに情報を書き込む例について説明する。つまり、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト(選択バイト)に情報を書き込む例について説明する。具体的に、例えば、メモリセルMC1Aに情報「1」を書き込み、メモリセルMC8Aに情報「0」を書き込むこととする。
【0041】
図1に示すように、選択ゲート線CGL1に「1.5V」、メモリゲート線MGL1に「1.5V」を印加し、選択ゲート線CGL2に「0V」、メモリゲート線MGL2に「−10.7V」を印加する。そして、ウェルW1(半導体基板)に「−10.7V」を印加し、ウェルW2にも「−10.7V」を印加する。
【0042】
この状態で、メモリセルMC1Aに情報「1」を書き込むために、ソース線S1をフローティング状態にし、ビット線D1に「−10.7V」を印加する。この場合、FN(Fowler Nordheim)トンネル電流により、電子がメモリトランジスタにある電荷蓄積膜に注入されて、メモリセルMC1Aに情報「1」が記憶される。このとき、選択トランジスタとメモリトランジスタにチャネルが形成されるので、ビット線D1とソース線S1が電気的に接続されソース線S1の電位が「−10.7V」となる。
【0043】
また、メモリセルMC8Aに情報「0」を書き込むために、ソース線S8をフローティング状態にし、ビット線D8に「−0.5V」を印加する。この場合、電子が電荷蓄積膜に注入されないままであるので、メモリセルMC8Aは消去状態を維持することになる。つまり、この場合のメモリセルMC8Aには、情報「0」が書き込まれることになる。このときも、選択トランジスタとメモリトランジスタにチャネルが形成されるので、ビット線D8とソース線S8が電気的に接続されソース線S8の電位が「−0.5V」となる。
【0044】
このようにメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト分のメモリにおいて、情報「1」を書き込むメモリセルには、ソース線をフローティング状態にし、ビット線に「−10.7V」を印加する。一方、情報「0」を書き込むメモリセルには、ソース線をフローティング状態にし、ビット線に「−0.5V」を印加する。これにより、バイト単位で書き込み動作を行なうことができる。
【0045】
なお、上述した電圧条件では、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bに情報の書き込みは行なわれない。同様に、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16Aや、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bでも、ソース線S9〜ソース線S16に「1.5V」を印加し、ビット線D9〜ビット線D16をフローティング状態にする。このときメモリゲート線MGL1とソース線S9〜ソース線S16は同電位となり、情報の書き込みは行なわれない。
【0046】
続いて、図2を使用して消去動作について説明する。図2では、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報を消去する例について説明する。つまり、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト(選択バイト)に記憶されている情報を一括して消去する例について説明する。
【0047】
図2に示すように、選択ゲート線CGL1に「1.5V」、メモリゲート線MGL1に「−8.5V」を印加し、選択ゲート線CGL2に「0V」、メモリゲート線MGL2に「1.5V」を印加する。そして、ソース線S1〜ソース線S16に「1.5V」を印加し、ビット線D1〜ビット線D16をフローティング状態とする。このとき、ウェルW1に「1.5V」を印加し、ウェルW2に「−8.5V」を印加する。
【0048】
すると、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aにおいては、FNトンネル電流により、電子がメモリトランジスタにある電荷蓄積膜から半導体基板側(ウェルW1側)に引き抜かれて、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報が消去される。一方、上述した電圧条件では、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8B、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16A、あるいは、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bにおいて、消去動作は行なわれない。これにより、選択バイト単位で情報を消去することができる。
【0049】
ここで、上述した書き込み動作に着目する。例えば、それぞれの選択ゲート電極が電気的に接続され、かつ、それぞれのメモリゲート電極が電気的に接続されている2つのメモリセル(例えば、メモリセルMC1AとメモリセルMC8A)を考える。一方のメモリセルMC1Aに情報「1」を書き込み、他方のメモリセルMC8Aに情報「0」を書き込むとき、それぞれのビット線D1とビット線D8に異なる電位を印加することになる。上述した例によれば、情報「1」を書き込む一方のメモリセルMC1Aのビット線D1には「−10.7V」を印加し、情報「0」を書き込む他方のメモリセルMC8Aのビット線D8には「−0.5V」を印加する。このとき、メモリセルMC1Aのビット線D1はメモリセルMC1Aのソース線S1と電気的に接続され、メモリセルMC8Aのビット線D8はメモリセルMC8Aのソース線S8と電気的に接続されることになる。このことから、一方のメモリセルMC1Aのソース線S1(例えば、「−10.7V」が印加される)と、他方のメモリセルMC8Aのソース線S8(例えば、「−0.5V」が印加される)には、異なる電位が印加されることになる。したがって、複数のメモリセルでソース線を共通にすることができず、個々のメモリセルにビット線と並行するソース線をそれぞれ設ける必要がある。このことは、メモリセルごとに電気的に独立したソース線を設ける必要があることを意味しており、この結果、メモリセルの縮小化が困難になる。
【0050】
さらに、従来技術においては、図1に示す書き込み動作時および図2に示す消去動作時に、選択ゲート電極と半導体基板に挟まれたゲート絶縁膜に高電圧が印加される。例えば、図1に示す書き込み動作において、メモリセルMC1Bでは、選択ゲート線CGL2に「0V」が印加され、ウェルW1に「−10.7V」が印加される。このため、選択ゲート線CGL2とウェルW1で挟まれたゲート絶縁膜には、10.7Vの高電圧が印加される。その他のメモリセルにおいてもゲート絶縁膜に高電圧が印加されることがわかる。また、図2に示す消去動作においても、例えば、メモリセルMC9Aでは、選択ゲート線CGL1に「1.5V」が印加され、ウェルW2に「−8.5V」が印加される。このため、選択ゲート線CGL1とウェルW2で挟まれたゲート絶縁膜には、10Vの高電圧が印加される。したがって、従来技術においては、選択トランジスタのゲート絶縁膜の膜厚を厚くして耐圧を確保する必要があることがわかる。トランジスタでは、ゲート絶縁膜を厚くする場合、スケーリング則より、トランジスタのサイズが大きくなってしまう。すると、メモリセルの縮小化を図ることができなくなる。
【0051】
そこで、本実施の形態1では、情報の書き換え動作にFNトンネル電流を使用する不揮発性メモリにおいて、メモリセルの縮小化を実現できる工夫を施している。以下では、この工夫を施した不揮発性メモリについて説明する。
【0052】
まず、本実施の形態1における不揮発性メモリのメモリセルを構成するMONOS型トランジスタの構成例について説明する。図3は、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタ(メモリセル)の構成例を示す断面図である。図3において、半導体基板1Sには、ボロン(ホウ素)などのp型不純物を導入したp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWLの表面に所定距離だけ離間してソース領域とドレイン領域が形成されている。ソース領域およびドレイン領域は、リンや砒素などのn型不純物を導入したn型半導体領域から形成されている。具体的に、ソース領域は、浅い低濃度不純物拡散領域EX2と深い高濃度不純物拡散領域SRから構成されており、ドレイン領域は、浅い低濃度不純物拡散領域EX1と深い高濃度不純物拡散領域DRから構成されている。このソース領域とドレイン領域の間にあるp型ウェルPWLの表面には、n型半導体領域NRが形成され、このn型半導体領域NRの外側(ドレイン領域側)に浅い低濃度不純物拡散領域EX1が形成され、n型半導体領域NRの外側(ソース領域側)に浅い低濃度不純物拡散領域EX2が形成されている。そして、ソース領域の一部を構成する深い高濃度不純物拡散領域SRの表面、ドレイン領域の一部を構成する深い高濃度不純物拡散領域DRの表面およびn型半導体領域NRの表面には、低抵抗化のためのシリサイド膜CSが形成されている。このシリサイド膜CSは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などから構成される。
【0053】
以上のように、ソース領域とドレイン領域を浅い低濃度不純物拡散領域EX1、EX2と深い高濃度不純物拡散領域DR、SRで形成することにより、ソース領域とドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。これにより、ソース領域端部やドレイン領域端部における電界集中を抑制することができる。
【0054】
次に、ソース領域とn型半導体領域NRの間の半導体基板1S上に選択ゲート構造体CGSが形成されており、ドレイン領域とn型半導体領域NRの間の半導体基板1S上にメモリゲート構造体MGSが形成されている。
【0055】
選択ゲート構造体CGSは、半導体基板1S上に形成されたゲート絶縁膜GOX1と、このゲート絶縁膜GOX1上に形成された選択ゲート電極(コントロールゲート電極)CGを有している。そして、選択ゲート電極CGの両側の側壁に、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜からなるサイドウォールSWが形成されている。
【0056】
ゲート絶縁膜GOX1は、例えば、酸化シリコン膜や、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成されている。選択ゲート電極CGは、ポリシリコン膜PF2と、このポリシリコン膜PF2の表面に形成されたシリサイド膜CSから形成される。この選択ゲート電極CGにおいても、ポリシリコン膜PF2の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。上述した選択ゲート構造体CGSは、メモリセルを選択する機能を有している。つまり、選択ゲート構造体CGSによって特定のメモリセルを選択し、選択したメモリセルに対して書き込み動作や消去動作あるいは読み出し動作をするようになっている。
【0057】
続いて、メモリゲート構造体MGSは、半導体基板1S上に形成された積層絶縁膜と、積層絶縁膜上に形成されたメモリゲート電極MGを有している。そして、メモリゲート電極MGの両側の側壁には、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜からなるサイドウォールSWが形成されている。
【0058】
この積層絶縁膜は、半導体基板1S上に形成されている電位障壁膜EB1と、電位障壁膜EB1上に形成されている電荷蓄積膜ECと、電荷蓄積膜EC上に形成されている電位障壁膜EB2から構成されている。電位障壁膜EB1は、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜から形成されており、メモリゲート電極MGと半導体基板1Sとの間に形成されるゲート絶縁膜として機能する。この酸化シリコン膜からなる電位障壁膜EB1は、トンネル絶縁膜としての機能も有する。例えば、メモリゲート構造体MGSでは、半導体基板1Sから電位障壁膜EB1を介して電荷蓄積膜ECに電子を注入したり、電荷蓄積膜ECに正孔を注入したりして情報の記憶や消去を行なうため、電位障壁膜EB1は、トンネル絶縁膜として機能する。
【0059】
そして、この電位障壁膜EB1上に形成されている電荷蓄積膜ECは、電荷を蓄積する機能を有している。具体的に、本実施の形態1では、電荷蓄積膜ECを窒化シリコン膜から形成している。本実施の形態1におけるメモリゲート構造体MGSは、電荷蓄積膜ECに蓄積される電荷の有無によって、メモリゲート電極MG下の半導体基板1S内を流れる電流を制御することにより、情報を記憶するようになっている。つまり、電荷蓄積膜ECに蓄積される電荷の有無によって、メモリゲート電極MG下の半導体基板1S内を流れる電流のしきい値電圧が変化することを利用して情報を記憶している。
【0060】
本実施の形態1では、電荷蓄積膜ECとしてトラップ準位を有する絶縁膜を使用している。このトラップ準位を有する絶縁膜の一例として窒化シリコン膜が挙げられるが、窒化シリコン膜に限らず、例えば、酸化アルミニウム膜(アルミナ)、酸化ハフニウム膜または酸化タンタル膜など、窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する高誘電率膜を使用してもよい。また、電荷蓄積膜ECは、シリコンナノドットから構成してもよい。電荷蓄積膜ECとしてトラップ準位を有する絶縁膜を使用する場合、電荷は絶縁膜に形成されているトラップ準位に捕獲される。このようにトラップ準位に電荷を捕獲させることにより、絶縁膜中に電荷を蓄積するようになっている。
【0061】
従来、電荷蓄積膜ECとしてポリシリコン膜が主に使用されてきたが、電荷蓄積膜ECとしてポリシリコン膜を使用した場合、電荷蓄積膜ECを取り囲む電位障壁膜EB1あるいは電位障壁膜EB2のどこか一部に欠陥があると、電荷蓄積膜ECが導体膜であるため、異常リークにより電荷蓄積膜ECに蓄積された電荷がすべて抜けてしまうことが起こりうる。
【0062】
そこで、電荷蓄積膜ECとして、絶縁体である窒化シリコン膜が使用されてきている。この場合、データ記憶に寄与する電荷は、窒化シリコン膜中に存在する離散的なトラップ準位(捕獲準位)に蓄積される。したがって、電荷蓄積膜ECを取り巻く電位障壁膜EB1や電位障壁膜EB2中の一部に欠陥が生じても、電荷は電荷蓄積膜ECの離散的なトラップ準位に蓄積されているため、すべての電荷が電荷蓄積膜ECから抜け出てしまうことがない。このため、データ保持の信頼性向上を図ることができる。
【0063】
このような理由から、電荷蓄積膜ECとして、窒化シリコン膜に限らず、離散的なトラップ準位を含むような膜を使用することにより、データ保持の信頼性を向上することができる。さらに、本実施の形態1では、電荷蓄積膜ECとしてデータ保持特性に優れた窒化シリコン膜を使用している。このため、電荷蓄積膜ECからの電荷の流出を防止するために設けられている電位障壁膜EB1および電位障壁膜EB2の膜厚を薄くすることができる。これにより、メモリセルを駆動する電圧を低電圧化することができる利点も有していることになる。
【0064】
また、電位障壁膜EB2は、電荷蓄積膜ECとメモリゲート電極MGとの間の絶縁性を確保するための絶縁膜である。この電位障壁膜EB2は、例えば、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜のような絶縁膜で形成されている。
【0065】
次に、メモリゲート電極MGは、積層絶縁膜上に形成されたポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1の表面に形成されたシリサイド膜CSから構成されている。このメモリゲート電極MGにおいても、ポリシリコン膜PF1の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。
【0066】
以上のように、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタは、ソース領域と、ドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域の間上に形成された選択ゲート構造体CGSとメモリゲート構造体MGSとを有していることがわかる。図3では、選択ゲート構造体CGSとメモリゲート構造体MGSが離間して配置されている構造のMONOS型トランジスタが図示されているが、本実施の形態1の技術的思想は、これに限らず、選択ゲート構造体CGSの側壁にメモリゲート構造体MGSが形成されているスプリットゲート型のMONOS型トランジスタにも適用することができる。
【0067】
図4は、本実施の形態1に適用できるスプリットゲート型のMONOS型トランジスタの構成を示す断面図である。図4において、半導体基板1Sにはp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWLの表面にソース領域とドレイン領域が形成されている。具体的に、ソース領域とドレイン領域は所定距離だけ離間して配置されており、ソース領域は、浅い低濃度不純物拡散領域EX1(n型半導体領域)と、この浅い低濃度不純物拡散領域EX1の外側に形成された深い高濃度不純物拡散領域SR(n型半導体領域)から形成されている。同様に、ドレイン領域は、浅い低濃度不純物拡散領域EX1(n型半導体領域)と、この浅い低濃度不純物拡散領域EX1の外側に形成された深い高濃度不純物拡散領域DR(n型半導体領域)から形成されている。そして、ソース領域の一部を構成する深い高濃度不純物拡散領域SRの表面と、ドレイン領域の一部を構成する深い高濃度不純物拡散領域DRの表面には、シリサイド膜CSが形成されている。このシリサイド膜CSは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などから形成されている。
【0068】
離間して配置されているソース領域とドレイン領域の間の半導体基板1S上には選択ゲート構造体CGSとメモリゲート構造体MGSが形成されている。このとき、メモリゲート構造体MGSは、選択ゲート構造体CGSの片側の側壁に形成されており、例えば、サイドウォール形状をしている。そして、選択ゲート構造体CGSのもう一方の側壁と、メモリゲート構造体MGSの側壁には、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜からなるサイドウォールSWが形成されている。
【0069】
選択ゲート構造体CGSは、半導体基板1S上に形成されたゲート絶縁膜GOX1と、このゲート絶縁膜GOX1上に形成された選択ゲート電極(コントロールゲート電極)CGを有している。
【0070】
ゲート絶縁膜GOX1は、例えば、酸化シリコン膜や、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成されている。選択ゲート電極CGは、ポリシリコン膜PF2と、このポリシリコン膜PF2の表面に形成されたシリサイド膜CSから形成される。この選択ゲート電極CGにおいても、ポリシリコン膜PF2の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。
【0071】
一方、メモリゲート構造体MGSは、半導体基板1S上から選択ゲート電極CGの片側の側壁上にわたって形成された積層絶縁膜と、積層絶縁膜上に形成されたメモリゲート電極MGを有している。
【0072】
この積層絶縁膜は、半導体基板1S上に形成されている電位障壁膜EB1と、電位障壁膜EB1上に形成されている電荷蓄積膜ECと、電荷蓄積膜EC上に形成されている電位障壁膜EB2から構成されている。電位障壁膜EB1は、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜から形成されており、電位障壁膜EB2は、例えば、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜などの絶縁膜から形成されている。そして、電荷蓄積膜ECは、例えば、電子を捕獲するトラップ準位が多数存在する窒化シリコン膜などから形成されている。
【0073】
メモリゲート電極MGは、サイドウォール形状をしており、積層絶縁膜上に形成されたポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1の表面に形成されたシリサイド膜CSから構成されている。このメモリゲート電極MGにおいても、ポリシリコン膜PF1の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。
【0074】
以上のように本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタは、図3に示す構造や図4に示す構造をしている。図3や図4に示す本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタの特徴は、ソース領域とドレイン領域の半導体基板1S上に配置されている選択ゲート構造体CGSとメモリゲート構造体MGSにおいて、選択ゲート構造体CGSがソース領域側に配置され、メモリゲート構造体MGSがドレイン領域側に配置されていることにある。つまり、図1や図2に示す従来技術のMONOS型トランジスタでは、ソース線側にメモリトランジスタ(メモリゲート構造体)が配置され、ビット線側に選択トランジスタ(選択ゲート構造体)が配置されている。これに対し、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタでは、従来技術とは逆に、ソース領域側に選択ゲート構造体CGSが配置され、ドレイン領域側にメモリゲート構造体MGSが配置されている。このように構成する場合、動作条件を工夫することにより、複数のメモリセルでソース領域を共通化することができるのである。すなわち、従来技術では、個々のメモリセルごとにビット線と並行する電気的に独立したソース線をそれぞれ設ける必要があり、メモリセルのサイズを縮小化することが困難となっている。これに対し、本実施の形態1におけるメモリセルでは、ソース領域側に選択ゲート構造体CGSを配置し、ドレイン領域側にメモリゲート構造体MGSを配置するという特徴的構成をとっているので、この構成のもと、動作条件に工夫を施すことにより、メモリセルのソース線を共通化できるのである。このことは、メモリセルごとにビット線と並行する電気的に独立したソース線を設ける必要がなくなることを意味し、メモリセルのサイズを縮小化することができることを意味している。つまり、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタによれば、ソース領域側に選択ゲート構造体CGSを配置し、ドレイン領域側にメモリゲート構造体MGSを配置するという特徴的構成をとることにより、メモリセルのサイズを縮小化することができる。
【0075】
なお、図4に示すMONOS型トランジスタは、図3に示すMONOS型トランジスタよりもメモリセルのサイズが小さい。これは、図4に示されるように、メモリゲート電極MGが選択ゲート構造体CGSの側壁に、サイドウォール状に形成されているため、ゲート長方向におけるメモリセルのサイズを縮小することができるからである。
【0076】
以下では、ソース領域側に選択ゲート構造体CGSを配置し、ドレイン領域側にメモリゲート構造体MGSを配置するという特徴的構成をとることを前提として、メモリセルでソース線を共通化することができる動作条件についての工夫を説明する。
【0077】
まず、図5は、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタの回路表記を示す図である。図5に示すように、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタは、ソース領域SR1とドレイン領域DR1の間に選択ゲート構造体CGSとメモリゲート構造体MGSを有している。そして、ソース領域SR1側に選択ゲート構造体CGSが配置され、ドレイン領域DR1側にメモリゲート構造体MGSが配置されている。ここで、本明細書では、選択ゲート構造体CGSを選択トランジスタと呼び、メモリゲート構造体MGSをメモリトランジスタと呼ぶことにする。
【0078】
本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタの書き換え動作は、FNトンネル電流を使用して実施する。具体的に、本実施の形態1では、例えば、図3や図4に示す構造において、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB1を介して、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECとの間にFNトンネル電流を流すことにより、電荷蓄積膜ECに電荷を出し入れする方式について説明する。この方式を本明細書では、ボトムトンネル方式と呼ぶことにする。
【0079】
このボトムトンネル方式を実現するために、図3や図4に示す電位障壁膜EB1、電荷蓄積膜ECおよび電位障壁膜EB2の構成は、例えば、以下に示すようになっている。すなわち、電位障壁膜EB1は、酸化シリコン膜から形成され、電荷蓄積膜ECは、窒化シリコン膜から形成され、電位障壁膜EB2は、酸化シリコン膜から形成されている。そして、電位障壁膜EB1の膜厚、電荷蓄積膜ECの膜厚および電位障壁膜EB2の膜厚のうち、電荷蓄積膜ECの膜厚が最も厚く、電位障壁膜EB1の膜厚が最も薄くなっている。例えば、電位障壁膜EB1の膜厚が1nm、電荷蓄積膜ECの膜厚が10nm、電位障壁膜EB2の膜厚が3nmとなっている。このような構成のもと、ボトムトンネル方式を用いた書き換え動作について説明する。
【0080】
図6は、本実施の形態1におけるMONOS型トランジスタ(メモリセル)を行列状(アレイ状)に配置したメモリセルアレイを示す図である。図6において、1行目の横方向に選択ゲート線CGL1とメモリゲート線MGL1が並行して延在している。そして、2行目の横方向に選択ゲート線CGL2とメモリゲート線MGL2が並行して延在している。一方、1列目の縦方向にビット線D1が延在している。同様に、8列目の縦方向にビット線D8が延在し、9列目の縦方向にビット線D9が延在している。さらに、16列目の縦方向にビット線D16が延在している。図6では、ビット線D1、D8、D9、D16だけを図示しているが、実際には、ビット線D1とビット線D8の間には6本のビット線が縦方向に延在し、ビット線D9とビット線D16の間にも6本のビット線が縦方向に延在している。
【0081】
横方向に延在する選択ゲート線CGL1およびメモリゲート線MGL1と、縦方向に延在するビット線D1、D8、D9、D16のそれぞれの交差領域にメモリセルMC1A、MC8A、MC9A、MC16Aが形成されている。このとき、メモリセルMC1AとメモリセルMC8Aの間には6つのメモリセルが配置されており、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aによって8ビット(1バイト)の不揮発性メモリが構成されている。同様に、メモリセルMC9AとメモリセルMC16Aの間には6つのメモリセルが配置されており、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16Aによって8ビット(1バイト)の不揮発性メモリが構成されている。
【0082】
また、横方向に延在する選択ゲート線CGL2およびメモリゲート線MGL2と、縦方向に延在するビット線D1、D8、D9、D16のそれぞれの交差領域にメモリセルMC1B、MC8B、MC9B、MC16Bが形成されている。このとき、メモリセルMC1BとメモリセルMC8Bの間には6つのメモリセルが配置されており、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bによって8ビット(1バイト)の不揮発性メモリが構成されている。同様に、メモリセルMC9BとメモリセルMC16Bの間には6つのメモリセルが配置されており、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bによって8ビット(1バイト)の不揮発性メモリが構成されている。
【0083】
個々のメモリセルMC1A〜メモリセルMC8A、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16A、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8B、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bは同様の構成をしているので、代表してメモリセルMC1AとメモリセルMC8Aを取り上げて説明する。
【0084】
メモリセルMC1Aは、メモリトランジスタMTと選択トランジスタSTとを有しており、ビットD1線側にメモリトランジスタMTが配置され、ソース線S1側に選択トランジスタSTが配置されている。同様に、メモリセルMC8Aも、メモリトランジスタMTと選択トランジスタSTとを有しており、ビット線D8側にメモリトランジスタMTが配置され、ソース線S1側に選択トランジスタSTが配置されている。このとき、本実施の形態1では、ソース線S1がメモリセルMC1AとメモリセルMC8Aで共通となっている点が特徴である。これにより、メモリセルMC1AやメモリセルMC8Aごとに電気的に独立したソース線を設ける必要がなく、メモリセルのサイズを縮小化することができる。具体的に、共通するソース線S1は、ビット線D1やビット線D8と並行するように配置されているのではなく、選択ゲート線CGL1やメモリゲート線MGL1と並行するように延在している。これにより、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8A間の間隔を狭めることができるので、メモリセルアレイ全体の占有面積を縮小化することができる。このソース線S1は、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bとも共通化されている。
【0085】
同様に、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16Aと、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bとにおいてもソース線S2が共通化されている。
【0086】
本実施の形態1におけるメモリセルアレイ(不揮発性メモリ)は上記のように構成されており、まず、書き込み動作について説明する。
【0087】
図6では、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに情報を書き込む例について説明する。つまり、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト(選択バイト)に情報を書き込む例について説明する。具体的に、例えば、メモリセルMC1Aに情報「1」を書き込み、メモリセルMC8Aに情報「0」を書き込むこととする。本実施の形態1では、情報「1」が記憶された状態とは、電荷蓄積膜に電子が蓄積されてメモリトランジスタMTのしきい値電圧が高くなっている状態を意味し、情報「0」が記憶された状態とは、電荷蓄積膜から電子が引き抜かれてメモリトランジスタMTのしきい値電圧が低くなっている状態を意味するものとする。つまり、本実施の形態1で、メモリセルの書き込み状態とは、電荷蓄積膜に負電荷が蓄積されている状態を示し、メモリセルの消去状態とは、書き込み状態よりも電荷蓄積膜に負電荷が蓄積されていない状態を示すと定義する。したがって、本実施の形態1では、情報「1」が記憶される状態を書き込み状態と呼び、情報「0」が記憶される状態を消去状態と呼ぶ。
【0088】
図6に示すように、選択ゲート線CGL1に「−10V」、メモリゲート線MGL1に「1.5V」を印加し、選択ゲート線CGL2に「−10V」、メモリゲート線MGL2に「−10V」を印加する。そして、ウェルW1(半導体基板)に「−10V」を印加し、ウェルW2にも「−10V」を印加する。そして、共通するソース線S1に「−5V」を印加し、ソース線S2に「−10V」を印加する。
【0089】
この状態で、メモリセルMC1Aに情報「1」を書き込むために、ビット線D1に「−10V」を印加する。この場合、FN(Fowler Nordheim)トンネル電流により、電子がメモリトランジスタMTにある電荷蓄積膜に注入されて、メモリセルMC1Aに情報「1」が記憶される。このとき、メモリトランジスタMTはオンして、メモリトランジスタMTにチャネルが形成される。しかし、メモリセルMC1Aでは、ソース線S1の電位(−5V)に対し、選択ゲート線CGL1の電位(−10V)が低くなっているので、選択トランジスタSTはオフする。言い換えれば、選択トランジスタSTにはチャネルが形成されない。この結果、ビット線D1とソース線S1とは電気的に接続されない。したがって、メモリゲート線MGL1とビット線D1との間の電界を利用して、FN(Fowler Nordheim)トンネル現象による書き込みを行なうことができる。
【0090】
一方、メモリセルMC8Aに情報「0」を書き込むために、ビット線D8に「−5V」を印加する。メモリゲート線MGL1とビット線D8との間で電界が発生するが、メモリセルMC1Aに発生する電界よりは小さい。よって、電子が電荷蓄積膜に注入されないままであるので、メモリセルMC8Aは消去状態を維持することになる。つまり、この場合のメモリセルMC8Aには、情報「0」が書き込まれることになる。このとき、メモリセルMC8Aでは、ソース線S1の電位(−5V)に対し、選択ゲート線CGL1の電位(−10V)が低くなっているので、選択トランジスタSTはオフする。言い換えれば、選択トランジスタSTにはチャネルが形成されない。この結果、ビット線D8とソース線S1とは電気的に接続されない。
【0091】
このようにメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト分のメモリにおいて、情報「1」を書き込むメモリセルには、ビット線に「−10V」を印加する。一方、情報「0」を書き込むメモリセルには、ビット線に「−5V」を印加する。これにより、バイト単位で書き込み動作を行なうことができる。
【0092】
なお、上述した電圧条件では、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bに情報の書き込みは行なわれない。同様に、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16Aや、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bでも、ビット線D9〜ビット線D16に「1.5V」を印加することにより、情報の書き込みは行なわれない。
【0093】
ここで、本実施の形態1の特徴は、書き込みの対象となっているメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aにおいて、選択トランジスタSTをオフした状態で書き込み動作を実施している点にある。これにより、例えば、情報「1」を書き込むメモリセルMC1Aのビット線D1に「−10V」を印加し、情報「0」を書き込むメモリセルMC8Aのビット線D8に「−5V」を印加する場合であっても、ビット線D1とソース線S1が電気的に接続されず、かつ、ビット線D8とソース線S1が電気的に接続されないので、ソース線S1をメモリセルMC1AとメモリセルMC8Aで共通化することができるのである。つまり、選択バイト内のメモリセルにおいて、情報「1」を書き込むメモリセルのビット線の電位と、情報「0」を書き込むビット線の電位は異なるが、それぞれのメモリセルにおいて、ソース線側に配置されている選択トランジスタをオフ状態としているので、ソース線を共通化することができる。
【0094】
例えば、従来技術では、選択バイト内のメモリセルにおいて、メモリトランジスタMTと選択トランジスタSTがオンした状態で書き込み動作が行なわれるため、ビット線とソース線が電気的に接続される。したがって、選択バイトの中に、情報「1」を書き込むメモリセルと情報「0」を書き込むメモリセルが存在する場合、それぞれのビット線に異なる電位が印加されることになるため、ソース線を共通化することができない。すなわち、従来技術では、メモリセルごとに電気的に独立したソース線を設ける必要がある。
【0095】
これに対し、本実施の形態1では、図6に示すように、ソース線S1側に選択トランジスタを配置し、ビット線D1側やビット線D8側にメモリトランジスタMTを配置している。この結果、書き込みの対象となっているメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aにおいて、選択トランジスタSTをオフした状態で書き込み動作を実施できる。これにより、メモリセルMC1Aのビット線D1やメモリセルMC8Aのビット線D8に異なる電位を印加する場合であっても、ビット線D1やビット線D8がソース線S1と電気的に接続されることはないから、ソース線S1を共通化することができるのである。したがって、本実施の形態1によれば、ソース線S1側に選択トランジスタSTを配置し、ビット線D1側やビット線D8側にメモリトランジスタMTを配置するという構造上の特徴と、書き込みの対象となっているメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aにおいて、選択トランジスタSTをオフした状態で書き込み動作を実施するという動作条件上の特徴とを組み合わせることにより、ソース線S1をメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aで共通化することができる。このことは、メモリセルごとに電気的に独立したソース線をビット線と並行して延在させる必要がなくなり、メモリセルの縮小化を実現できることを意味する。すなわち、本実施の形態1によれば、メモリセルのサイズを縮小化することができる。
【0096】
続いて、図7を使用して消去動作について説明する。図7では、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報を消去する例について説明する。つまり、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト(選択バイト)に記憶されている情報を一括して消去する例について説明する。ここでいう消去とは、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報を「0」とすることを意味する。
【0097】
図7に示すように、選択ゲート線CGL1に「0V」、メモリゲート線MGL1に「−10V」を印加し、選択ゲート線CGL2に「0V」、メモリゲート線MGL2に「0V」を印加する。そして、ソース線S1およびソース線S2に「0V」を印加し、ビット線D1〜ビット線D16に「0V」を印加する。このとき、ウェルW1に「0V」を印加し、ウェルW2に「−10V」を印加する。
【0098】
すると、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aにおいては、FNトンネル電流により、電子がメモリトランジスタMTにある電荷蓄積膜から半導体基板側(ウェルW1側)に引き抜かれて、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報が消去される。一方、上述した電圧条件では、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8B、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16A、あるいは、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bにおいて、消去動作は行なわれない。これにより、選択バイト単位で情報を消去することができる。このとき、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8A、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8B、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16A、あるいは、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bにおいて、選択トランジスタSTがオフしているので、ソース線S1を共通化するとともに、ソース線S2を共通化しても問題ない。
【0099】
次に、図8を使用して読み出し動作について説明する。図8では、メモリセルMC1Aに記憶されている情報を読み出す例について説明する。つまり、読み出しは、1ビット単位で行なわれる。
【0100】
読み出し動作では、選択ゲート線CGL1に「1.5V」を印加し、メモリゲート線MGL1に「0V」を印加する。また、選択ゲート線CGL2に「0V」を印加し、メモリゲート線MGL2に「0V」を印加する。そして、ソース線S1およびソース線S2に「0V」を印加する。また、ビット線D1に「1.5V」を印加し、それ以外のビット線に「0V」を印加する。この場合、選択ゲート線CGL1の電位(1.5V)がソース線S1やソース線S2の電位(0V)よりも高いので、選択ゲート線CGL1に接続されているメモリセルMC1A〜メモリセルMC16Aの選択トランジスタSTがオンする。だだし、メモリセルMC1A以外のメモリセルでは、ビット線の電位とソース線の電位がともに「0V」であり、ビット線とソース線の間に電位差がないので電流は流れない。一方、メモリセルMC1Aでは、選択トランジスタSTがオンし、かつ、ビット線D1の電位(1.5V)とソース線S1の電位(0V)に電位差があるため、メモリセルMC1Aだけ読み出し動作ができる。具体的に、メモリセルMC1Aが書き込み状態にありしきい値電圧が高い場合には、メモリセルに電流が流れない。一方、メモリセルMC1Aが消去状態にあり、しきい値電圧が低い場合には、メモリセルに電流が流れる。なお、選択ゲート線CGL2に接続されているメモリセルMC1B〜メモリセルMC16Bの選択トランジスタはオフするため選択されない。
【0101】
このように上述した動作条件では、メモリセルMC1Aだけを読み出し対象として選択することができる。このメモリセルMC1Aでは、メモリセルMC1Aが書き込み状態にあるか、あるいは、消去状態にあるかをメモリセルMC1Aに流れる電流の有無を検出することで判別することができる。具体的には、センスアンプによってメモリセルMC1Aに流れる電流の有無を検出する。例えば、メモリセルMC1Aに流れる電流の有無を検出するために、基準電流(リファレンス電流)を使用する。つまり、メモリセルMC1Aが消去状態にある場合、読み出し時に読み出し電流が流れるが、この読み出し電流と基準電流とを比較する。基準電流は、消去状態の読み出し電流よりも低く設定されており、読み出し電流と基準電流とを比較した結果、基準電流よりも読み出し電流が大きい場合、メモリセルMC1Aは消去状態にあると判断できる。一方、メモリセルMC1Aが書き込み状態にある場合、読み出し電流は流れない。すなわち、読み出し電流と基準電流とを比較した結果、基準電流よりも読み出し電流が小さい場合、メモリセルは書き込み状態にあると判断できる。このようにして読み出し動作を行なうことができる。
【0102】
なお、図8では読み出し動作の対象としてメモリセルMC1Aのみを選択する方式を説明したが、選択するセルは1ビットに限られるわけではなく、メモリセルMC1AからメモリセルMC8Aの8ビットを選択セルとしたバイト単位で読み出す方式や、それらのビットに加えてメモリセルMC9AからメモリセルMC16Aなどメモリゲート線MGL1によって連結された単位(ページ単位と呼ぶ)を一括して読み出す方式であっても可能である。
【0103】
以上のように本実施の形態1の特徴は、例えば、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8A(1バイト分のメモリセル)に着目すると、ソース線S1側に選択トランジスタSTを配置し、ビット線D1側〜ビット線D8側にメモリトランジスタMTを配置するという構造上の特徴を有する。また、本実施の形態1は、書き込みの対象となっているメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aにおいて、選択トランジスタSTをオフした状態で書き込み動作を実施するという動作条件上の特徴も有する。本実施の形態1では、これらの特徴を組み合わせることにより、ソース線S1をメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aで共通化することができる。このことは、メモリセルごとに電気的に独立したソース線をビット線と並行して延在させる必要がなくなり、メモリセルの縮小化を実現できることを意味する。したがって、本実施の形態1によれば、メモリセルのサイズを縮小化するという顕著な効果が得られるのである。
【0104】
さらに、図6に示す本実施の形態1の書き込み動作では、選択トランジスタSTの選択ゲート電極と半導体基板(p型ウェル)の間に電位差を生じない状態で書き込み動作を行なうことができる。このことは、選択トランジスタを高耐圧MISFETとする必要はなく、選択トランジスタのゲート絶縁膜の膜厚を、例えば、電流駆動力を必要とする周辺回路(CPUなど)の低耐圧MISFETと同等の膜厚とすることができることを意味している。
【0105】
また、図7に示すように、消去動作では、例えば、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16AやメモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bのように、選択トランジスタのゲート絶縁膜と半導体基板間に電位差が印加されてしまう場合がある。しかし、この場合、ソース領域(ソース拡散層)およびドレイン領域(ドレイン拡散層)から半導体基板にむけて空乏層が形成されるのみで、ゲート絶縁膜に強い電界が印加されることはない。したがって、本実施の形態1のメモリセルにおいて、選択トランジスタSTのゲート絶縁膜を薄膜化することができる。このようにゲート絶縁膜を薄膜化することができるということは、スケーリング則により、選択トランジスタSTの大きさを縮小化できることを意味する。したがって、本実施の形態1によれば、ソース線を共通化することによるメモリサイズの縮小化と、ゲート絶縁膜の薄膜化による選択トランジスタSTの縮小化の相乗効果により、大幅にメモリセルのサイズを縮小化することができる。
【0106】
なお、選択トランジスタSTのゲート絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜等の絶縁膜から形成され、例えば熱酸化法を使用して形成することができる。ただし、選択トランジスタのゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、選択トランジスタのゲート絶縁膜を酸窒化シリコン膜(SiON)としてもよい。すなわち、選択トランジスタのゲート絶縁膜と半導体基板(p型ウェル)との界面に窒素を偏析させる構造としてもよい。酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて膜中における界面準位の発生を抑制したり、電子トラップを低減する効果が高い。したがって、選択トランジスタのゲート絶縁膜のホットキャリア耐性を向上でき、絶縁耐性を向上させることができる。また、酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて不純物が貫通しにくい。このため、選択トランジスタのゲート絶縁膜に酸窒化シリコン膜を用いることにより、選択ゲート電極中の不純物が半導体基板側に拡散することに起因するしきい値電圧の変動を抑制することができる。酸窒化シリコン膜を形成するのは、例えば、半導体基板をNO、NOまたはNHといった窒素を含む雰囲気中で熱処理すればよい。また、半導体基板の表面に酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜を形成した後、窒素を含む雰囲気中で半導体基板を熱処理し、ゲート絶縁膜と半導体基板との界面に窒素を偏析させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0107】
また、選択トランジスタのゲート絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜より誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。従来、絶縁耐性が高い、シリコン−酸化シリコン界面の電気的・物性的安定性などが優れているとの観点から、ゲート絶縁膜として酸化シリコン膜が使用されている。このとき、上述したように、本実施の形態1における選択トランジスタでは、選択トランジスタのゲート絶縁膜の膜厚を薄くすることができる。このように薄い酸化シリコン膜をゲート絶縁膜として使用すると、選択トランジスタのチャネルを流れる電子が酸化シリコン膜によって形成される障壁をトンネルしてゲート電極に流れる、いわゆるトンネル電流が発生してしまう。
【0108】
そこで、酸化シリコン膜より誘電率の高い材料を使用することにより、容量が同じでも物理的膜厚を増加させることができる高誘電率膜が使用されるようになってきている。高誘電率膜によれば、容量を同じにしても物理的膜厚を増加させることができるので、リーク電流を低減することができる。特に、窒化シリコン膜も酸化シリコン膜よりも誘電率の高い膜であるが、本実施の形態1では、この窒化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を使用することが望ましい。
【0109】
例えば、窒化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜として、ハフニウム酸化物の一つである酸化ハフニウム膜(HfO膜)が使用されるが、酸化ハフニウム膜に変えて、HfAlO膜(ハフニウムアルミネート膜)、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)のような他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。さらに、これらのハフニウム系絶縁膜に酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの酸化物を導入したハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。ハフニウム系絶縁膜は、酸化ハフニウム膜と同様、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜より誘電率が高いので、酸化ハフニウム膜を用いた場合と同様の効果が得られる。このように選択トランジスタのゲート絶縁膜を薄膜化する場合、選択トランジスタのゲート絶縁膜として、酸化シリコン膜以外に高誘電率膜も使用することができる。
【0110】
最後に、本実施の形態1の構造上の特徴を比較例1および比較例2と対比して説明する。図9は、本実施の形態1におけるメモリセルアレイの構造と、比較例1や比較例2におけるメモリセルアレイの構造とを対比して示す模式図である。図9において、左図は比較例1におけるメモリセルアレイの構造を示しており、中央図は比較例2におけるメモリセルアレイの構造を示している。そして、右図は本実施の形態1におけるメモリセルアレイの構造を示している。
【0111】
まず、図9の左図に記載されている比較例1におけるメモリセルアレイの構造について説明する。図9の左図に示すように、縦方向にビット線D1、ソース線S1、ビット線D2およびソース線S2が並行して延在している。このビット線D1とソース線S1の間にメモリセルMC1とメモリセルMC2が縦方向に配列されている。一方、ビット線D2とソース線S2の間にメモリセルMC3とメモリセルMC4が縦方向に配列されている。このように構成されている比較例1では、ビット線D1に対応してソース線S1が設けられ、ビット線D2に対応してソース線S2が設けられている。このため、メモリセルのサイズが大きくなる問題点がある。
【0112】
続いて、図9の中央図に記載されている比較例2におけるメモリセルアレイの構造について説明する。図9の中央図に示すように、縦方向にビット線D1とビット線D2が並行して延在しているが、ソース線Sは共通化されており、ビット線D1やビット線D2と交差する横方向に延在している。そして、ソース線Sとビット線D1の間にメモリセルMC1とメモリセルMC2が配置されており、ソース線Sとビット線D2の間にメモリセルMC3とメモリセルMC4が配置されている。この比較例2によれば、ソース線Sを共通化することができるので、メモリセルのサイズを縮小化することができる。
【0113】
ただし、比較例2では、ソース線S側にメモリトランジスタが配置され、ビット線D1側やビット線D2側に選択トランジスタが配置されている。例えば、メモリセルMC1とメモリセルMC3に異なる情報(情報「1」と情報「0」)を書き込むとき、ビット線D1とビット線D2に異なる電位を印加することになる。この場合、メモリセルMC1の選択トランジスタとメモリセルMC3の選択トランジスタは電気的につながっている。ここで、メモリセルMC1の選択トランジスタをオンしなければ、メモリセルMC1のメモリトランジスタに情報「1」を書き込むことができない。このとき、メモリセルMC3の選択トランジスタもオン状態となるため、ソース線Sとビット線D2が電気的に接続されてしまい正常な書き込みができなくなる。つまり、比較例2のレイアウトでは、ソース線Sを共通化することができるが、FNトンネル電流による書き込み動作を行なうことができないのである。この比較例2の構造は、ソースサイドインジェクション方式によるホットエレクトロンを使用した書き込み動作を対象にした構造であり、この比較例2の構造で、そのままFNトンネル電流を使用した書き込み動作を実施することはできないのである。
【0114】
そこで、本実施の形態1では、ソース線Sを共通化してメモリセルのサイズを縮小化することができるとともに、FNトンネル電流による書き込み動作を行なえるように工夫を施している。図9の右図は、本実施の形態1におけるメモリセルアレイの構造を示す図である。図9の右図に示すように、縦方向にビット線D1とビット線D2が並行して延在しているが、ソース線Sは共通化されており、ビット線D1やビット線D2と交差する横方向に延在している。そして、ソース線Sとビット線D1の間にメモリセルMC1とメモリセルMC2が配置されており、ソース線Sとビット線D2の間にメモリセルMC3とメモリセルMC4が配置されている。この本実施の形態1によれば、ソース線Sを共通化することができるので、メモリセルのサイズを縮小化することができる。
【0115】
さらに、本実施の形態1では、比較例2と相違して、ソース線S側に選択トランジスタを配置し、ビット線D1側やビット線D2側にメモリトランジスタを配置している。このように構成することにより、書き込みの対象となっているメモリセルの選択トランジスタをオフした状態で、メモリセルのメモリトランジスタにFNトンネル電流を使用して書き込みを行なうことができる。つまり、図9の右図に示すように構成することにより、FNトンネル電流を使用した書き込み動作を維持しつつ、ソース線Sを共通化することができ、メモリセルサイズの縮小化を図ることができるのである。
【0116】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、ボトムトンネル方式を使用した書き換え動作について説明したが、本実施の形態2では、トップトンネル方式を使用した書き換え動作について説明する。
【0117】
本実施の形態2におけるMONOS型トランジスタの書き換え動作は、FNトンネル電流を使用して実施する。具体的に、本実施の形態2では、例えば、図3や図4に示す構造において、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB2を介して、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECとの間にFNトンネル電流を流すことにより、電荷蓄積膜ECに負電荷(電子)を出し入れする方式について説明する。この方式を本明細書では、トップトンネル方式と呼ぶことにする。
【0118】
このトップトンネル方式を実現するために、図3や図4に示す電位障壁膜EB1、電荷蓄積膜ECおよび電位障壁膜EB2の構成は、例えば、以下に示すようになっている。すなわち、電位障壁膜EB1は、酸化シリコン膜から形成され、電荷蓄積膜ECは、窒化シリコン膜から形成され、電位障壁膜EB2は、酸窒化シリコン膜から形成されている。そして、電位障壁膜EB1の膜厚、電荷蓄積膜ECの膜厚および電位障壁膜EB2の膜厚のうち、電位障壁膜EB2の膜厚が最も厚くなっている。このとき、電位障壁膜EB2を酸窒化シリコン膜から構成することにより、電位障壁膜EB2を介してメモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECの間にFNトンネル電流が発生しやすくなる。つまり、酸窒化シリコン膜の障壁は、酸化シリコン膜の障壁よりも小さいので、電位障壁膜EB2を酸窒化シリコン膜から構成することにより、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECの間にFNトンネル電流が発生しやすくなるのである。例えば、電位障壁膜EB1の膜厚が4nm、電荷蓄積膜ECの膜厚が4nm、電位障壁膜EB2の膜厚が17nmとなっている。
【0119】
また、トップトンネル方式を実現する構造は、上述した構成に限らず、以下に示す構成も考えられる。すなわち、図3や図4に示す電位障壁膜EB1、電荷蓄積膜ECおよび電位障壁膜EB2の構成を、次のようにすることもできる。電位障壁膜EB1は、酸化シリコン膜から形成され、電荷蓄積膜ECは、窒化シリコン膜から形成され、電位障壁膜EB2は、酸化シリコン膜から形成されている。そして、電位障壁膜EB1の膜厚、電荷蓄積膜ECの膜厚および電位障壁膜EB2の膜厚のうち、電位障壁膜EB2の膜厚が最も薄くなっている。例えば、電位障壁膜EB1の膜厚が5nm、電荷蓄積膜ECの膜厚が6nm、電位障壁膜EB2の膜厚が3nmとなっている。このような構成のもと、トップトンネル方式を用いた書き換え動作について説明する。
【0120】
図10では、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに情報を書き込む例について説明する。つまり、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト(選択バイト)に情報を書き込む例について説明する。具体的に、例えば、メモリセルMC1Aに情報「0」を書き込み、メモリセルMC8Aに情報「1」を書き込むこととする。本実施の形態2では、情報「1」が記憶された状態とは、電荷蓄積膜に電子が蓄積されてメモリトランジスタMTのしきい値電圧が高くなっている状態を意味し、情報「0」が記憶された状態とは、電荷蓄積膜から電子が引き抜かれてメモリトランジスタMTのしきい値電圧が低くなっている状態を意味するものとする。本実施の形態2では、前記実施の形態1とは逆であり、情報「0」が記憶される状態を書き込み状態と呼び、情報「1」が記憶される状態を消去状態と呼ぶ。
【0121】
図10に示すように、選択ゲート線CGL1に「−10V」、メモリゲート線MGL1に「1.5V」を印加し、選択ゲート線CGL2に「−10V」、メモリゲート線MGL2に「−10V」を印加する。そして、ウェルW1(半導体基板)に「−10V」を印加し、ウェルW2にも「−10V」を印加する。そして、共通するソース線S1に「−5V」を印加し、ソース線S2に「−10V」を印加する。
【0122】
この状態で、メモリセルMC1Aに情報「0」を書き込むために、ビット線D1に「−10V」を印加する。この場合、FN(Fowler Nordheim)トンネル電流により、電子が電荷蓄積膜からメモリゲート電極へ引き抜かれて、メモリセルMC1Aに情報「0」が記憶される。このとき、メモリトランジスタMTはオンして、メモリトランジスタMTにチャネルが形成される。しかし、メモリセルMC1Aでは、ソース線S1の電位(−5V)に対し、選択ゲート線CGL1の電位(−10V)が低くなっているので、選択トランジスタSTはオフする。言い換えれば、選択トランジスタSTにはチャネルが形成されない。この結果、ビット線D1とソース線S1とは電気的に接続されない。
【0123】
一方、メモリセルMC8Aに情報「1」を書き込むために、ビット線D8に「−5V」を印加する。この場合、電子が電荷蓄積膜に注入されないままであるので、メモリセルMC8Aは消去状態を維持することになる。つまり、この場合のメモリセルMC8Aには、情報「1」が書き込まれることになる。このとき、メモリセルMC8Aでは、ソース線S1の電位(−5V)に対し、選択ゲート線CGL1の電位(−10V)が低くなっているので、選択トランジスタSTはオフする。言い換えれば、選択トランジスタSTにはチャネルが形成されない。この結果、ビット線D8とソース線S1とは電気的に接続されない。
【0124】
このようにメモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト分のメモリにおいて、情報「0」を書き込むメモリセルには、ビット線に「−10V」を印加する。一方、情報「1」を書き込むメモリセルには、ビット線に「−5V」を印加する。これにより、バイト単位で書き込み動作を行なうことができる。
【0125】
なお、上述した電圧条件では、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8Bに情報の書き込みは行なわれない。同様に、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16Aや、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bでも、ビット線D9〜ビット線D16に「1.5V」を印加することにより、情報の書き込みは行なわれない。
【0126】
ここで、本実施の形態2の特徴は、書き込みの対象となっているメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aにおいて、選択トランジスタSTをオフした状態で書き込み動作を実施している点にある。これにより、例えば、情報「0」を書き込むメモリセルMC1Aのビット線D1に「−10V」を印加し、情報「1」を書き込むメモリセルMC8Aのビット線D8に「−5V」を印加する場合であっても、ビット線D1とソース線S1が電気的に接続されず、かつ、ビット線D8とソース線S1が電気的に接続されないので、ソース線S1をメモリセルMC1AとメモリセルMC8Aで共通化することができるのである。つまり、選択バイト内のメモリセルにおいて、情報「0」を書き込むメモリセルのビット線の電位と、情報「1」を書き込むビット線の電位は異なるが、それぞれのメモリセルにおいて、ソース線側に配置されている選択トランジスタをオフ状態としているので、ソース線を共通化することができる。
【0127】
したがって、本実施の形態2によれば、ソース線S1側に選択トランジスタSTを配置し、ビット線D1側やビット線D8側にメモリトランジスタMTを配置するという構造上の特徴と、書き込みの対象となっているメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aにおいて、選択トランジスタSTをオフした状態で書き込み動作を実施するという動作条件上の特徴とを組み合わせることにより、ソース線S1をメモリセルMC1AやメモリセルMC8Aで共通化することができる。このことは、メモリセルごとに電気的に独立したソース線をビット線と並行して延在させる必要がなくなり、メモリセルの縮小化を実現できることを意味する。すなわち、本実施の形態2によれば、メモリセルのサイズを縮小化することができる。
【0128】
続いて、図11を使用して消去動作について説明する。図11では、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報を消去する例について説明する。つまり、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aからなる1バイト(選択バイト)に記憶されている情報を一括して消去する例について説明する。ここでいう消去とは、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報を「1」とすることを意味する。
【0129】
図11に示すように、選択ゲート線CGL1に「0V」、メモリゲート線MGL1に「−10V」を印加し、選択ゲート線CGL2に「0V」、メモリゲート線MGL2に「0V」を印加する。そして、ソース線S1およびソース線S2に「0V」を印加し、ビット線D1〜ビット線D16に「0V」を印加する。このとき、ウェルW1に「0V」を印加し、ウェルW2に「−10V」を印加する。
【0130】
すると、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aにおいては、FNトンネル電流により、電子がメモリトランジスタMTにあるメモリゲート電極から電荷蓄積膜に注入されて、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8Aに記憶されている情報が消去される。一方、上述した電圧条件では、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8B、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16A、あるいは、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bにおいて、消去動作は行なわれない。これにより、選択バイト単位で情報を消去することができる。このとき、メモリセルMC1A〜メモリセルMC8A、メモリセルMC1B〜メモリセルMC8B、メモリセルMC9A〜メモリセルMC16A、あるいは、メモリセルMC9B〜メモリセルMC16Bにおいて、選択トランジスタSTがオフしているので、ソース線S1を共通化するとともに、ソース線S2を共通化しても問題ない。
【0131】
次に、図12を使用して読み出し動作について説明する。図12では、メモリセルMC1Aに記憶されている情報を読み出す例について説明する。つまり、読み出しは、1ビット単位で行なわれる。
【0132】
読み出し動作では、選択ゲート線CGL1に「1.5V」を印加し、メモリゲート線MGL1に「0V」を印加する。また、選択ゲート線CGL2に「0V」を印加し、メモリゲート線MGL2に「0V」を印加する。そして、ソース線S1およびソース線S2に「0V」を印加する。また、ビット線D1に「1.5V」を印加し、それ以外のビット線に「0V」を印加する。この場合、選択ゲート線CGL1の電位(1.5V)がソース線S1やソース線S2の電位(0V)よりも高いので、選択ゲート線CGL1に接続されているメモリセルMC1A〜メモリセルMC16Aの選択トランジスタSTがオンする。だだし、メモリセルMC1A以外のメモリセルでは、ビット線の電位とソース線の電位がともに「0V」であり、ビット線とソース線の間に電位差がないので電流は流れない。一方、メモリセルMC1Aでは、選択トランジスタSTがオンし、かつ、ビット線D1の電位(1.5V)とソース線S1の電位(0V)に電位差があるため、メモリセルMC1Aだけ読み出し動作ができる。具体的に、メモリセルMC1Aが消去状態にありしきい値電圧が高い場合には、メモリセルに電流が流れない。一方、メモリセルMC1Aが書き込み状態にあり、しきい値電圧が低い場合には、メモリセルに電流が流れる。なお、選択ゲート線CGL2に接続されているメモリセルMC1B〜メモリセルMC16Bの選択トランジスタはオフするため選択されない。
【0133】
このように上述した動作条件では、メモリセルMC1Aだけを読み出し対象として選択することができる。このメモリセルMC1Aでは、メモリセルMC1Aが書き込み状態にあるか、あるいは、消去状態にあるかをメモリセルMC1Aに流れる電流の有無を検出することで判別することができる。具体的には、センスアンプによってメモリセルMC1Aに流れる電流の有無を検出する。例えば、メモリセルMC1Aに流れる電流の有無を検出するために、基準電流(リファレンス電流)を使用する。つまり、メモリセルMC1Aが書き込み状態にある場合、読み出し時に読み出し電流が流れるが、この読み出し電流と基準電流とを比較する。基準電流は、書き込み状態の読み出し電流よりも低く設定されており、読み出し電流と基準電流とを比較した結果、基準電流よりも読み出し電流が大きい場合、メモリセルMC1Aは書き込み状態にあると判断できる。一方、メモリセルMC1Aが消去状態にある場合、読み出し電流は流れない。すなわち、読み出し電流と基準電流とを比較した結果、基準電流よりも読み出し電流が小さい場合、メモリセルは消去状態にあると判断できる。このようにして読み出し動作を行なうことができる。また、読み出しの単位がバイト単位、ページ単位であっても良いことは言うまでもない。
【0134】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、ボトムトンネル方式について説明し、前記実施の形態2では、トップトンネル方式について説明したが、本実施の形態3では、両方の方式を組み合わせる場合について説明する。つまり、ボトムトンネル方式は、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB1を介して、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECとの間にFNトンネル電流を流すことにより、電荷蓄積膜ECに電荷を出し入れする方式である。また、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB2を介して、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECとの間にFNトンネル電流を流すことにより、電荷蓄積膜ECに電荷を出し入れする方式である。これに対し、本実施の形態3では、例えば、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB1を介して、半導体基板1S(p型ウェルPWL)から電荷蓄積膜ECへ負電荷(電子)を注入する一方、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB2を介して、メモリゲート電極MGへ電荷蓄積膜ECから負電荷(電子)を引き抜く動作を用いる。この場合であっても、前記実施の形態1で説明した技術的思想を利用することができる。なお、例えば、メモリゲート電極MGと電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB2を介して、メモリゲート電極MGから電荷蓄積膜ECへ負電荷(電子)を注入する一方、半導体基板1Sと電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB1を介して、半導体基板1Sへ電荷蓄積膜ECから負電荷(電子)を引き抜く動作を用いる場合にも、本発明の技術的思想を利用することができる。
【0135】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、トップトンネル方式で書き換え動作を行なう場合の変形例について説明する。図13は、本実施の形態4におけるスプリットゲート型のメモリセルの構造を示す図であり、この図13に示すメモリセルの構造は、前記実施の形態1で説明したスプリットゲート型のメモリセルと同様の構造をしている。ただし、本実施の形態4では、電荷蓄積膜ECに電子を蓄積する領域を局所領域に限定する点に特徴がある。具体的に、本実施の形態4では、電荷蓄積膜ECのうち、選択ゲート構造体CGSの側壁と並行する第1部分と、半導体基板1Sの主面と並行する第2部分が交差する角部(図13の丸印領域)で局所的に電荷を蓄積する点に特徴点がある。
【0136】
例えば、半導体基板1SからFNトンネル電流で電荷蓄積膜ECへ電子を注入する場合、電荷蓄積膜ECのうち、半導体基板1Sの主面と並行する第2部分の全体で電子の注入が生じる。これに対し、本実施の形態4では、電荷蓄積膜ECのうち、選択ゲート構造体CGSの側壁と並行する第1部分と、半導体基板1Sの主面と並行する第2部分が交差する角部(図13の丸印領域)だけで電子の注入が生じるようにしている。
【0137】
図14は、図13の丸印領域を拡大した図である。図14に示すように、メモリゲート電極MGの角部から電荷蓄積膜ECの角部へ局所的に電子が注入されていることがわかる。このような電子の局所的な注入を実現するためには、トンネル電流が流れないように電位障壁膜EB1と電位障壁膜EB2の膜厚を厚くする。この場合、電荷蓄積膜ECの角部以外の場所ではトンネル電流が流れにくくなる一方、メモリゲート電極MGの角部では電界強度が強い。このため、メモリゲート電極MGの角部では電界強度が強いため、電界電子放出により、メモリゲート電極MGの角部から電荷蓄積膜ECの角部(局所領域)にだけ電子の注入が起こる。同様に、メモリゲート電極MGに逆電圧を印加する場合も、メモリゲート電極MGの角部に高電界が発生し、この高電界により電荷蓄積膜ECの角部に蓄積された電子をメモリゲート電極MGへ引き抜くことができる。このように、電位障壁膜EB1および電位障壁膜EB2の膜厚を厚くしても、角部での電子放出がされる条件にすれば、電荷蓄積膜ECの角部(局所領域)で電子の出し入れをすることができ、メモリセルの書き換え動作が可能となる。
【0138】
以上のように、電荷蓄積膜ECの角部に電子を蓄積する利点について説明する。まず、第1の利点は、FNトンネル電流を使用するにもかかわらず、電位障壁膜EB1と電位障壁膜EB2の膜厚を厚くすることができる点である。これにより、電荷蓄積膜ECに蓄積された電子が、電位障壁膜EB1を介して半導体基板1Sへリークする現象や、電位障壁膜EB2を介してメモリゲート電極MGへリークする現象を抑制することができる。つまり、本実施の形態4によれば、電位障壁膜EB1や電位障壁膜EB2の膜厚を厚くすることにより、電荷蓄積膜ECに蓄積された電子のリークを抑制できるので、リテンション特性が優れているという利点を有している。したがって、本実施の形態4における不揮発性メモリによれば、情報保持の信頼性を向上することができる。
【0139】
次に、第2の利点は、電荷蓄積膜ECへ電子を出し入れする際、ホットエレクトロン(ホットキャリア)を使用していないので、電位障壁膜EB1にダメージを与えにくい点である。この第2の利点により、書き換えを多数回行なっても、電位障壁膜EB1へのトラップ準位の発生などのダメージを抑制できるので、不揮発性メモリの書き換え耐性を向上することができる。
【0140】
さらに、第3の利点は、電子が電荷蓄積膜ECの角部に局在して蓄積されているため、ドレイン領域(深い高濃度不純物拡散領域DRと浅い低濃度不純物拡散領域EX1)と半導体基板1S(p型ウェルPWL)との境界に形成されるpn接合から充分離れた位置に電子を局在させることができる点である。このため、所定の電圧印加条件により、上述したpn接合で生成される正孔・電子対が電荷蓄積膜ECの局在領域へ到達しにくくなるので、誤書き込みや誤消去などのディスターブによって、メモリセルのしきい値電圧が変動する現象の発生を抑制することができる。この結果、不揮発性メモリの信頼性を向上することができる。
【0141】
以上のように、本実施の形態4によれば、前記実施の形態1の技術的思想を適用し、さらに、上述した電荷蓄積膜EC中の角部での電子の局在化を実現することにより、メモリセルの縮小化と不揮発性メモリの信頼性向上を図ることができる。
【0142】
(実施の形態5)
本実施の形態5では、メモリゲート構造体(メモリトランジスタ)の両側に選択ゲート構造体(選択トランジスタ)が配置されている例について説明する。
【0143】
図15は、本実施の形態5におけるメモリセル(MONOS型トランジスタ)の構成を示す断面図である。図15において、半導体基板1Sにはp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWLの表面にソース領域とドレイン領域が形成されている。具体的に、ソース領域とドレイン領域は所定距離だけ離間して配置されており、ソース領域は、浅い低濃度不純物拡散領域EX1(n型半導体領域)と、この浅い低濃度不純物拡散領域EX1の外側に形成された深い高濃度不純物拡散領域SR(n型半導体領域)から形成されている。同様に、ドレイン領域は、浅い低濃度不純物拡散領域EX1(n型半導体領域)と、この浅い低濃度不純物拡散領域EX1の外側に形成された深い高濃度不純物拡散領域DR(n型半導体領域)から形成されている。そして、ソース領域の一部を構成する深い高濃度不純物拡散領域SRの表面と、ドレイン領域の一部を構成する深い高濃度不純物拡散領域DRの表面には、シリサイド膜CSが形成されている。このシリサイド膜CSは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などから形成されている。
【0144】
離間して配置されているソース領域とドレイン領域の間の半導体基板1S上には、メモリゲート構造体MGSが配置されており、このメモリゲート構造体MGSを挟むように選択ゲート構造体CGS1と選択ゲート構造体CGS2が配置されている。このとき、選択ゲート構造体CGS1がソース領域側に配置され、選択ゲート構造体CGS2がドレイン領域側に配置されている。選択ゲート構造体CGS1および選択ゲート構造体CGS2上に乗り上げているメモリゲート構造体MGSの側壁と、選択ゲート構造体CGS1の片側の側壁および選択ゲート構造体CGS2の片側の側壁には、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜からなるサイドウォールSWが形成されている。
【0145】
選択ゲート構造体CGS1は、半導体基板1S上に形成されたゲート絶縁膜GOX1と、このゲート絶縁膜GOX1上に形成された選択ゲート電極(コントロールゲート電極)CG1を有している。
【0146】
ゲート絶縁膜GOX1は、例えば、酸化シリコン膜や、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成されている。選択ゲート電極CG1は、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1の表面に形成されたシリサイド膜CSから形成される。この選択ゲート電極CG1においても、ポリシリコン膜PF1の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。
【0147】
同様に、選択ゲート構造体CGS2は、半導体基板1S上に形成されたゲート絶縁膜GOX2と、このゲート絶縁膜GOX2上に形成された選択ゲート電極(コントロールゲート電極)CG2を有している。
【0148】
ゲート絶縁膜GOX2も、例えば、酸化シリコン膜や、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成されている。選択ゲート電極CG2は、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1の表面に形成されたシリサイド膜CSから形成される。この選択ゲート電極CG2においても、ポリシリコン膜PF1の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。
【0149】
一方、メモリゲート構造体MGSは、半導体基板1S上から選択ゲート電極CG1と選択ゲート電極CG2に乗り上げるように形成された積層絶縁膜と、積層絶縁膜上に形成されたメモリゲート電極MGを有している。
【0150】
この積層絶縁膜は、半導体基板1S上に形成されている電位障壁膜EB1と、電位障壁膜EB1上に形成されている電荷蓄積膜ECと、電荷蓄積膜EC上に形成されている電位障壁膜EB2から構成されている。電位障壁膜EB1は、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜から形成されており、電位障壁膜EB2は、例えば、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜などの絶縁膜から形成されている。そして、電荷蓄積膜ECは、例えば、電子を捕獲するトラップ準位が多数存在する窒化シリコン膜などから形成されている。
【0151】
メモリゲート電極MGは、T字形状をしており、積層絶縁膜上に形成されたポリシリコン膜PF2と、このポリシリコン膜PF2の表面に形成されたシリサイド膜CSから構成されている。このメモリゲート電極MGにおいても、ポリシリコン膜PF2の表面に、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、プラチナニッケルシリサイド膜などからなるシリサイド膜CSを形成することにより、ゲート抵抗の低抵抗化を図ることができる。
【0152】
本実施の形態5におけるメモリセル(MONOS型トランジスタ)は上記のように構成されており、その特徴点は、メモリゲート構造体MGSを挟むように選択ゲート構造体CGS1と選択ゲート構造体CGS2が形成されている点にある。これにより、メモリゲート構造体MGSを構成する電荷蓄積膜ECを、ドレイン領域(深い高濃度不純物拡散領域DRと浅い低濃度不純物拡散領域EX1)と半導体基板1S(p型ウェルPWL)との境界や、ソース領域(深い高濃度不純物拡散領域SRと浅い低濃度不純物拡散領域EX1)と半導体基板1S(p型ウェルPWL)との境界に形成されるpn接合から充分離れた位置に配置することができる。このため、所定の電圧印加条件により、上述したpn接合で生成される正孔・電子対が電荷蓄積膜ECの内部へ到達しにくくなるので、誤書き込みや誤消去などのディスターブによって、メモリセルのしきい値電圧が変動する現象の発生を抑制することができる。この結果、不揮発性メモリの信頼性を向上することができる。
【0153】
次に、本実施の形態5における不揮発性メモリの動作について説明する。本実施の形態5におけるMONOS型トランジスタの書き換え動作は、FNトンネル電流を使用して実施する。具体的に、本実施の形態5では、例えば、図15に示す構造において、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECの間に存在する電位障壁膜EB1を介して、半導体基板1S(p型ウェルPWL)と電荷蓄積膜ECとの間にFNトンネル電流を流すことにより、電荷蓄積膜ECに負電荷(電子)を出し入れするボトムトンネル方式について説明する。
【0154】
図16は、本実施の形態5におけるMONOS型トランジスタ(メモリセル)を行列状(アレイ状)に配置したメモリセルアレイを示す図である。図16において、1行目の横方向に選択ゲート線CGLd1とメモリゲート線MGL1が並行して延在しており、さらに、選択ゲート線CGLsも横方向に並行して延在している。そして、2行目でも横方向に選択ゲート線CGLd2とメモリゲート線MGL2と選択ゲート線CGLsが並行して延在している。そして、1行目に配置されている選択ゲート線CGLsと2行目に配置されている選択ゲート線CGLsは電気的に接続されている。
【0155】
一方、1列目の縦方向にビット線D1が延在している。同様に、256列目の縦方向にビット線D256が延在している。図16では、ビット線D1とビット線D256だけを図示しているが、実際には、ビット線D1とビット線D256の間には254本のビット線が縦方向に延在している。
【0156】
横方向に延在する選択ゲート線CGLd1およびメモリゲート線MGL1と、縦方向に延在するビット線D1やビット線D256のそれぞれの交差領域にメモリセルMC1、MC2が形成されている。このとき、メモリセルMC1とメモリセルMC2の間には254個のメモリセルが配置されている。
【0157】
また、横方向に延在する選択ゲート線CGLd2およびメモリゲート線MGL2と、縦方向に延在するビット線D1やビット線D256のそれぞれの交差領域にメモリセルMC3、MC4が形成されている。このとき、メモリセルMC3とメモリセルMC4の間には254個のメモリセルが配置されている。
【0158】
個々のメモリセルMC1〜メモリセルMC4は同様の構成をしているので、代表してメモリセルMC1とメモリセルMC2を取り上げて説明する。
【0159】
メモリセルMC1は、メモリトランジスタMTと選択トランジスタST1と選択トランジスタST2とを有しており、メモリトランジスタMTを挟むように選択トランジスタST1と選択トランジスタST2が配置されている。このとき、選択トランジスタST1がソース線S側に配置され、選択トランジスタST2がビット線D1側に配置されている。
【0160】
同様に、メモリセルMC2も、メモリトランジスタMTと選択トランジスタST1と選択トランジスタST2とを有しており、メモリトランジスタMTを挟むように選択トランジスタST1と選択トランジスタST2が配置されている。このとき、選択トランジスタST1がソース線S側に配置され、選択トランジスタST2がビット線D256側に配置されている。
【0161】
本実施の形態5では、ソース線SがメモリセルMC1とメモリセルMC2で共通となっている点が特徴である。これにより、メモリセルMC1やメモリセルMC2ごとに電気的に独立したソース線を設ける必要がなく、メモリセルのサイズを縮小化することができる。具体的に、共通するソース線Sは、ビット線D1やビット線D256と並行するように配置されているのではなく、選択ゲート線CGLd1、選択ゲート線CGLsやメモリゲート線MGL1と並行するように延在している。これにより、メモリセルMC1〜メモリセルMC2間の間隔を狭めることができるので、メモリセルアレイ全体の占有面積を縮小化することができる。このソース線Sは、メモリセルMC3〜メモリセルMC4とも共通化されている。
【0162】
本実施の形態5におけるメモリセルアレイ(不揮発性メモリ)は上記のように構成されており、まず、書き込み動作について説明する。
【0163】
図16では、メモリセルMC1〜メモリセルMC2に情報を書き込む例について説明する。つまり、同一の選択ゲート線CGLd1に接続されている256個(一例)のメモリセルMC1〜メモリセルMC2(選択ページ)に情報を書き込む例について説明する。具体的に、例えば、メモリセルMC1に情報「1」を書き込み、メモリセルMC2に情報「0」を書き込むこととする。本実施の形態5では、情報「1」が記憶された状態とは、電荷蓄積膜に電子が蓄積されてメモリトランジスタMTのしきい値電圧が高くなっている状態を意味し、情報「0」が記憶された状態とは、電荷蓄積膜から電子が引き抜かれてメモリトランジスタMTのしきい値電圧が低くなっている状態を意味するものとする。つまり、本実施の形態5で、メモリセルの書き込み状態とは、電荷蓄積膜に負電荷が蓄積されている状態を示し、メモリセルの消去状態とは、書き込み状態よりも電荷蓄積膜に負電荷が蓄積されていない状態を示すと定義する。したがって、本実施の形態5では、情報「1」が記憶される状態を書き込み状態と呼び、情報「0」が記憶される状態を消去状態と呼ぶ。
【0164】
図16に示すように、選択ゲート線CGLd1に「−5V」、メモリゲート線MGL1に「1.5V」を印加し、選択ゲート線CGLd2に「−10V」、メモリゲート線MGL2に「−10V」を印加する。そして、選択ゲート線CGLsに「−10V」を印加する。さらに、ウェルW1(半導体基板)に「−10V」を印加する。また、共通するソース線Sに「−5V〜−10V」を印加する。
【0165】
この状態で、メモリセルMC1に情報「1」を書き込むために、ビット線D1に「−10V」を印加する。この場合、FN(Fowler Nordheim)トンネル電流により、電子がメモリトランジスタMTにある電荷蓄積膜に注入されて、メモリセルMC1に情報「1」が記憶される。このとき、選択トランジスタST2とメモリトランジスタMTはオンして、選択トランジスタST2とメモリトランジスタMTにチャネルが形成される。しかし、メモリセルMC1では、ソース線Sの電位(−5V〜−10V)に対し、選択ゲート線CGLsの電位(−10V)が低くなっているので、選択トランジスタST1はオフする。言い換えれば、選択トランジスタST1にはチャネルが形成されない。この結果、ビット線D1とソース線Sとは電気的に接続されない。
【0166】
一方、メモリセルMC2に情報「0」を書き込むために、ビット線D256に「−5V」を印加する。この場合、電子が電荷蓄積膜に注入されないままであるので、メモリセルMC3は消去状態を維持することになる。つまり、この場合のメモリセルMC2には、情報「0」が書き込まれることになる。このとき、メモリセルMC2では、ソース線Sの電位(−5V〜−10V)に対し、選択ゲート線CGLsの電位(−10V)が低くなっているので、選択トランジスタST1はオフする。言い換えれば、選択トランジスタST1にはチャネルが形成されない。この結果、ビット線D256とソース線Sとは電気的に接続されない。
【0167】
このようにメモリセルMC1〜メモリセルMC2のようにページ単位で情報を書き込む場合、情報「1」を書き込むメモリセルには、ビット線に「−10V」を印加する。一方、情報「0」を書き込むメモリセルには、ビット線に「−5V」を印加する。これにより、ページ単位で書き込み動作を行なうことができる。
【0168】
なお、上述した電圧条件では、メモリセルMC3〜メモリセルMC4に情報の書き込みは行なわれない。本実施の形態5では、メモリトランジスタMTを挟むように選択トランジスタST1と選択トランジスタST2が形成されている。これにより、メモリトランジスタMTを、ドレイン領域と半導体基板との境界や、ソース領域と半導体基板との境界に形成されるpn接合から充分離れた位置に配置することができる。このため、所定の電圧印加条件により、上述したpn接合で生成される正孔・電子対がメモリトランジスタMTの電荷蓄積膜ECの内部へ到達しにくくなるので、誤書き込みや誤消去などのディスターブによって、メモリセルのしきい値電圧が変動する現象の発生を抑制することができる。この結果、不揮発性メモリの信頼性を向上することができる。
【0169】
ここで、本実施の形態5の特徴は、書き込みの対象となっているメモリセルMC1やメモリセルMC2において、選択トランジスタST1をオフした状態で書き込み動作を実施している点にある。これにより、例えば、情報「1」を書き込むメモリセルMC1のビット線D1に「−10V」を印加し、情報「0」を書き込むメモリセルMC2のビット線D256に「−5V」を印加する場合であっても、ビット線D1とソース線Sが電気的に接続されず、かつ、ビット線D256とソース線Sが電気的に接続されないので、ソース線SをメモリセルMC1とメモリセルMC2で共通化することができるのである。つまり、選択ページ内のメモリセルにおいて、情報「1」を書き込むメモリセルのビット線の電位と、情報「0」を書き込むビット線の電位は異なるが、それぞれのメモリセルにおいて、ソース線側に配置されている選択トランジスタST1をオフ状態としているので、ソース線を共通化することができる。
【0170】
本実施の形態5は、ソース線S側に選択トランジスタST1を配置し、ビット線D1側やビット線D256側に選択トランジスタST2を配置し、かつ、選択トランジスタST1と選択トランジスタST2に挟まれるようにメモリトランジスタMTを配置するという構造上の特徴を有する。さらに、書き込みの対象となっているメモリセルMC1やメモリセルMC2において、選択トランジスタST1をオフした状態で書き込み動作を実施するという動作条件上の特徴も有する。本実施の形態5では、これらの特徴を組み合わせることにより、ソース線SをメモリセルMC1やメモリセルMC2で共通化することができる。このことは、メモリセルごとに電気的に独立したソース線をビット線と並行して延在させる必要がなくなり、メモリセルの縮小化を実現できることを意味する。すなわち、本実施の形態5によれば、メモリセルのサイズを縮小化することができる。さらに、本実施の形態5によれば、ディスターブも抑制することができ、不揮発性メモリの信頼性を向上させることができる。
【0171】
続いて、図17を使用して消去動作について説明する。図17では、メモリセルMC1〜メモリセルMC2に記憶されている情報を消去する例について説明する。つまり、メモリセルMC1〜メモリセルMC2からなる1ページ(選択ページ)に記憶されている情報を一括して消去する例について説明する。ここでいう消去とは、メモリセルMC1〜メモリセルMC2に記憶されている情報を「0」とすることを意味する。
【0172】
図17に示すように、選択ゲート線CGLd1に「0V」、メモリゲート線MGL1に「−10V」を印加し、選択ゲート線CGLd2に「0V」、メモリゲート線MGL2に「0V」を印加する。また、選択ゲート線CGLsに「0V」を印加する。そして、ソース線Sに「0V」を印加し、ビット線D1〜ビット線D256に「0V」を印加する。このとき、ウェルW1に「0V」を印加する。
【0173】
すると、メモリセルMC1〜メモリセルMC2においては、FNトンネル電流により、電子がメモリトランジスタMTにある電荷蓄積膜から半導体基板側(ウェルW1側)に引き抜かれて、メモリセルMC1〜メモリセルMC2に記憶されている情報が消去される。一方、上述した電圧条件では、メモリセルMC3〜メモリセルMC4において、消去動作は行なわれない。これにより、選択ページ単位で情報を消去することができる。
【0174】
次に、図18を使用して読み出し動作について説明する。図18では、メモリセルMC1に記憶されている情報を読み出す例について説明する。つまり、読み出しは、1ビット単位で行なわれる。
【0175】
読み出し動作では、選択ゲート線CGLd1に「1.5V」を印加し、メモリゲート線MGL1に「0V」を印加する。また、選択ゲート線CGLd2に「0V」を印加し、メモリゲート線MGL2に「0V」を印加する。また、選択ゲート線CGLsに「1.5V」を印加する。そして、ソース線Sに「0V」を印加する。また、ビット線D1に「1.5V」を印加し、それ以外のビット線に「0V」を印加する。
【0176】
この場合、メモリセルMC1では、選択トランジスタST1がオンする。そして、メモリトランジスタMTに情報「0」が記憶されているとき(しきい値が低下している状態のとき)、メモリトランジスタMTがオンし、さらに、選択トランジスタST2もオンするので、メモリセルMC1のビット線D1とソース線Sの間に電流が流れる。一方、メモリトランジスタMTに情報「1」が記憶されているとき(しきい値が上昇している状態のとき)、メモリトランジスタMTがオフするので、メモリセルMC1のビット線D1とソース線Sの間に電流が流れない。
【0177】
これに対し、メモリセルMC2とメモリセルMC4では、ビット線D256とソース線Sとの間に電位差が発生していないので、メモリセルMC2やメモリセルMC4のメモリトランジスタMTに記憶されている情報の如何にかかわらず、ビット線D256とソース線Sとの間を電流が流れない。また、メモリセルMC2においては、選択トランジスタST2がオフするため電流が流れない。
【0178】
したがって、上述した動作条件では、メモリセルMC1だけを読み出し対象として選択することができる。このメモリセルMC1では、メモリセルMC1が書き込み状態にあるか、あるいは、消去状態にあるかをメモリセルMC1に流れる電流の有無を検出することで判別することができる。具体的には、センスアンプによってメモリセルMC1に流れる電流の有無を検出する。例えば、メモリセルMC1に流れる電流の有無を検出するために、基準電流(リファレンス電流)を使用する。つまり、メモリセルMC1が消去状態にある場合、読み出し時に読み出し電流が流れるが、この読み出し電流と基準電流とを比較する。基準電流は、消去状態の読み出し電流よりも低く設定されており、読み出し電流と基準電流とを比較した結果、基準電流よりも読み出し電流が大きい場合、メモリセルMC1は消去状態にあると判断できる。一方、メモリセルMC1が書き込み状態にある場合、読み出し電流は流れない。すなわち、読み出し電流と基準電流とを比較した結果、基準電流よりも読み出し電流が小さい場合、メモリセルは書き込み状態にあると判断できる。このようにして読み出し動作を行なうことができる。
【0179】
なお、本実施の形態5では、ボトムトンネル方式を使用して情報の書き換え動作を行なう例について説明したが、トップトンネル方式を使用して情報の書き換え動作を行なってもよい。
【0180】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0182】
1S 半導体基板
CG 選択ゲート電極
CGL1 選択ゲート線
CGL2 選択ゲート線
CGLd1 選択ゲート線
CGLd2 選択ゲート線
CGLs 選択ゲート線
CGS 選択ゲート構造体
CS シリサイド膜
CG1 選択ゲート電極
CG2 選択ゲート電極
CGS1 選択ゲート構造体
CGS2 選択ゲート構造体
DR 深い高濃度不純物拡散領域
DR1 ドレイン領域
D1 ビット線
D2 ビット線
D8 ビット線
D9 ビット線
D16 ビット線
D256 ビット線
EB1 電位障壁膜
EB2 電位障壁膜
EC 電荷蓄積膜
EX1 浅い低濃度不純物拡散領域
EX2 浅い低濃度不純物拡散領域
GOX1 ゲート絶縁膜
GOX2 ゲート絶縁膜
MC1 メモリセル
MC1A メモリセル
MC1B メモリセル
MC2 メモリセル
MC3 メモリセル
MC4 メモリセル
MC8A メモリセル
MC8B メモリセル
MC9A メモリセル
MC9B メモリセル
MC16A メモリセル
MC16B メモリセル
MG メモリゲート電極
MGL1 メモリゲート線
MGL2 メモリゲート線
MGS メモリゲート構造体
MT メモリトランジスタ
NR n型半導体領域
PF1 ポリシリコン膜
PF2 ポリシリコン膜
PWL p型ウェル
SR 深い高濃度不純物拡散領域
SR1 ソース領域
ST 選択トランジスタ
SW サイドウォール
ST1 選択トランジスタ
ST2 選択トランジスタ
S ソース線
S1 ソース線
S2 ソース線
S8 ソース線
S9 ソース線
S16 ソース線
W1 ウェル
W2 ウェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成されたメモリセルを備え、
前記メモリセルは、
(a)前記半導体基板内に形成されたソース領域と、
(b)前記ソース領域と離間した前記半導体基板内に形成されたドレイン領域と、
(c)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成されたメモリゲート構造体と、
(d)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成された選択ゲート構造体とを含み、
前記メモリゲート構造体は、
(c1)前記半導体基板上に形成された第1電位障壁膜と、
(c2)前記第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、
(c3)前記電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、
(c4)前記第2電位障壁膜上に形成されたメモリゲート電極とを有し、
前記選択ゲート構造体は、
(d1)前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
(d2)前記ゲート絶縁膜上に形成された選択ゲート電極とを有し、
前記選択ゲート構造体が前記ソース領域側に配置されている半導体装置であって、
前記メモリセルへの書き込み動作および消去動作は、FNトンネル現象により前記電荷蓄積膜に電荷を出し入れすることで行なわれることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記メモリセルの書き込み状態とは、前記電荷蓄積膜に負電荷が蓄積されている状態を示し、前記メモリセルの消去状態とは、前記書き込み状態よりも前記電荷蓄積膜に負電荷が蓄積されていない状態を示すと定義する場合において、
前記メモリセルへの書き込み動作は、前記半導体基板から前記第1電位障壁膜を介して前記電荷蓄積膜にFNトンネル現象で負電荷を移動させることにより、前記電荷蓄積膜に負電荷を蓄積することで行なわれ、
前記メモリセルへの消去動作は、前記電荷蓄積膜から前記第1電位障壁膜を介して前記半導体基板にFNトンネル現象で負電荷を移動させることにより、前記電荷蓄積膜に蓄積されている負電荷を前記書き込み状態よりも減少させることで行なわれ、
前記メモリセルの読出し動作は、前記ドレイン領域に前記ソース領域よりも高い電圧を印加することによって行なわれることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記メモリセルの消去状態とは、前記電荷蓄積膜に電子が蓄積されている状態を示し、前記メモリセルの書き込み状態とは、前記消去状態よりも前記電荷蓄積膜に電子が蓄積されていない状態を示すと定義する場合において、
前記メモリセルへの消去動作は、前記メモリゲート電極から前記第2電位障壁膜を介して前記電荷蓄積膜にFNトンネル現象で電荷を移動させることにより、前記電荷蓄積膜に負電荷を蓄積することで行なわれ、
前記メモリセルへの書き込み動作は、前記電荷蓄積膜から前記第2電位障壁膜を介して前記メモリゲート電極にFNトンネル現象で電荷を移動させることにより、前記電荷蓄積膜に蓄積されている負電荷を前記消去状態よりも減少させることで行なわれ、
前記メモリセルの読出し動作は、前記ドレイン領域に前記ソース領域よりも高い電圧を印加することによって行なわれることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項2記載の半導体装置であって、
前記第1電位障壁膜は、酸化シリコン膜から形成され、
前記電荷蓄積膜は、窒化シリコン膜から形成され、
前記第2電位障壁膜は、酸化シリコン膜から形成され、
前記第1電位障壁膜の膜厚、前記電荷蓄積膜の膜厚および前記第2電位障壁膜の膜厚のうち、前記電荷蓄積膜の膜厚が最も厚く、前記第1電位障壁膜の膜厚が最も薄いことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項3記載の半導体装置であって、
前記第1電位障壁膜は、酸化シリコン膜から形成され、
前記電荷蓄積膜は、窒化シリコン膜から形成され、
前記第2電位障壁膜は、酸窒化シリコン膜から形成され、
前記第1電位障壁膜の膜厚、前記電荷蓄積膜の膜厚および前記第2電位障壁膜の膜厚のうち、前記第2電位障壁膜の膜厚が最も厚いことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項3記載の半導体装置であって、
前記第1電位障壁膜は、酸化シリコン膜から形成され、
前記電荷蓄積膜は、窒化シリコン膜から形成され、
前記第2電位障壁膜は、酸化シリコン膜から形成され、
前記第1電位障壁膜の膜厚、前記電荷蓄積膜の膜厚および前記第2電位障壁膜の膜厚のうち、前記第2電位障壁膜の膜厚が最も薄いことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記メモリセルは複数存在し、
前記ソース領域は、前記選択ゲート電極および前記メモリゲート電極が延在する方向に沿って形成されており、
前記ソース領域は、少なくとも2つ以上の複数の前記メモリセルと電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記メモリセルの書き換え動作は、バイト単位で行なわれることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記メモリセルへの書き込み動作や前記メモリセルへの消去動作は、前記選択ゲート構造体の直下の前記半導体基板内にチャネルが形成されない状態で行なわれることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記メモリゲート構造体と前記選択ゲート構造体は、離間して配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記メモリゲート構造体は、前記選択ゲート構造体の側壁に形成されており、
前記メモリゲート構造体は、前記選択ゲート構造体の側壁および前記半導体基板上にわたって形成された前記第1電位障壁膜と、前記第1電位障壁膜上に形成された前記電荷蓄積膜と、前記電荷蓄積膜上に形成された前記第2電位障壁膜と、前記第2電位障壁膜上に形成された前記メモリゲート電極とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置であって、
前記メモリゲート構造体は、サイドウォール形状をしていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置であって、
前記メモリセルへの書き込み動作や前記メモリセルへの消去動作を行なう際、
前記電荷蓄積膜のうち、前記選択ゲート構造体の側壁と並行する第1部分と、前記半導体基板の主面と並行する第2部分が交差する角部で電荷の出し入れを行なうことを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
半導体基板上に形成されたメモリセルを備え、
前記メモリセルは、
(a)前記半導体基板内に形成されたソース領域と、
(b)前記ソース領域と離間した前記半導体基板内に形成されたドレイン領域と、
(c)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成されたメモリゲート構造体と、
(d)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成された第1選択ゲート構造体と、
(e)前記ソース領域と前記ドレイン領域の間の前記半導体基板上に形成された第2選択ゲート構造体とを含み、
前記メモリゲート構造体は、
(c1)前記半導体基板上に形成された第1電位障壁膜と、
(c2)前記第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、
(c3)前記電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、
(c4)前記第2電位障壁膜上に形成されたメモリゲート電極とを有し、
前記第1選択ゲート構造体は、
(d1)前記半導体基板上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
(d2)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1選択ゲート電極とを有し、
前記第2選択ゲート構造体は、
(e1)前記半導体基板上に形成された第2ゲート絶縁膜と、
(e2)前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2選択ゲート電極とを有し、
前記第1選択ゲート構造体が前記ソース領域側に配置され、前記第2選択ゲート構造体が前記ドレイン領域側に配置され、かつ、前記第1選択ゲート構造体と前記第2選択ゲート構造体に挟まれるように前記メモリゲート構造体が配置されている半導体装置であって、
前記メモリセルへの書き込み動作および消去動作は、FNトンネル現象により前記電荷蓄積膜に電荷を出し入れすることで行なわれることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置であって、
前記メモリセルは複数存在し、
前記ソース領域は、前記第1選択ゲート電極、前記第2選択ゲート電極および前記メモリゲート電極が延在する方向に沿って形成されており、
前記ソース領域は、少なくとも2つ以上の複数の前記メモリセルと電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置であって、
複数の前記メモリセルのそれぞれの前記第1選択ゲート電極は、電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−129816(P2011−129816A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289123(P2009−289123)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】