説明

印刷はんだ検査装置及び印刷はんだ検査方法

【課題】
プリント板に付された認識マーク(バーコード)からプリント板を特定する基板工程情報を取得するのに係る時間的、コスト的負担を軽減できる印刷はんだ検査装置の提供である。
【解決手段】
測定手段100によりプリント板の表面にレーザ光を走査しつつ照射させ、その反射光から得られるプリント板表面の各位置における高さ方向の変位を示す測定値を取得して測定値記憶手段6に記憶し、その測定値に基づいて判定手段8が印刷はんだの形成状態の良否を判定し、コード検出手段9が測定値記憶手段6に記憶された測定値から認識コードのパターンを検出し、検出された認識コードのパターンから翻訳手段10が基板工程情報を読み出す構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等を表面実装するための印刷はんだされたプリント板上に、レーザ光を走査しつつ照射し、その反射光を受けて、いわゆる三角測量を行って、印刷はんだ形成状態を測定し、検査する印刷はんだ検査装置及びその方法に関する。
【0002】
基板(以下、プリント板を単に「基板」と言う。)をレーザ光により三角測量して得られた測定値、例えば、基板上の印刷はんだ箇所の変位(高さを含む)や輝度(基板から反射した光の量、受光量(光の強さ)を含む。)の測定値を基に、印刷はんだ状態(印刷はんだ形成状態、或いは、はんだ印刷状態)の良否を判定する検査装置においては、その判定を含む検査結果と、基板及び工程を特定する基板工程情報とを対応させてデータベースとして保管管理し、後に、基板に不良発生等のトラブルがあれば、その基板の実物の認識コードから前記データベースにアクセスして、検査結果を参照して、解析できるようにしておく必要がある。基板工程情報とは、基板や工程の一部を特定できる情報であり、識別情報、ロット番号、製造年月(日)、基板の種類、製造所(者)、来歴等があり、その内少なくとも一つが含まれる。
【0003】
一般的には、基板は、当初から認識コード(例えば、バーコード)が付されており、印刷はんだ工程、そして検査工程に流される。したがって、印刷はんだ形成状態を検査するときは、その認識コードから基板工程情報を読み取って、上記の管理を行うことになる。
【0004】
特に、本発明は、基板を検査するためのレーザ光で、基板上の印刷はんだ箇所と認識コードとを一緒に三角測量し、その測定した認識コードから基板工程情報を取得することによって、簡易な構成で容易に基板情報を取得できるようにした印刷はんだ検査装置に係る。
【背景技術】
【0005】
従来、基板上の印刷はんだ形成状態を光学的に測定する方法としては、レーザ光を走査しながら照射して三角測量する方法(特許文献1)、や照射光を照射して撮影(撮像)する方法(特許文献2)がある。
【0006】
一般には、特許文献2の「従来技術」の項に記載のように、バーコードを読み取るコードリーダが別途準備され、(a)基板上のバーコードをセンシングして基板工程情報を取得する、バーコードのセンシングー読み取り工程と、(b)印刷はんだ形成状態をセンシングして検査する、印刷はんだ形成状態センシングー検査工程とは、センシング手段も別々、工程も別々に行われていた。
【0007】
そこで、特許文献2の撮影する方法では、同じ撮影手段でセンシングして、認識コードを検出する工程と印刷はんだ形成状態を検査するための検査工程とを分けて、それぞれの工程で認識コードを撮影して取得し、検査工程で印刷はんだ形成状態を撮影して取得している。いずれの場合も、基板上部の垂直方向から撮影して得られた輝度情報を処理して認識コードの取得と、印刷はんだ形成状態の取得を行っているが、工程が異なるのは、基板上の認識コードの分布領域と印刷はんだの分布領域が異なることの他に、輝度情報を処理する仕方がそれぞれ異なるためと認められる。
【0008】
例えば、特許文献2の実施例では、認識コード(1次元又は2次元シンボル)がレーザ光で基板上に刻印したもので説明されている。そうすると、刻印を撮影した場合と、印刷はんだ状態を撮影した場合とでは、撮影して得られる輝度が大きく異なることから、その後の所望のデータを得るまでの処理内容が異なるものと考えられる。つまり、この従来例では、認識コードと印刷はんだ形成状態を同一の撮影手段でセンシングしているが、利用できるデータにするまでの処理は、別工程を用意しておく必要がある。
【0009】
【特許文献1】特開2002−22412号公報(段落〔0030〕−〔0034〕、図4)
【特許文献2】特開2003−273507号公報(段落〔0033〕−〔0055〕、図1、図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2の例のように、認識コードと印刷はんだ形成状態をセンシングする手段が同一手段であっても、その後に、それぞれ利用できるデータにするまでのデータ処理が別工程であるという欠点がある。そのデータ処理工程の違い、大きさによっては、時間的負担、コスト的負担になりかねなかった。
【0011】
つまり、上記の時間的負担は、認識コード取得工程と印刷はんだ形成状態の取得工程がシリアルに行われ、かつ認識コード取得のためのデータ処理が複雑になるとトータルの検査時間に与える影響が大きくなるためである。コスト的負担は、データ処理のためのプログラム費用もあるが、むしろ認識コード取得のためのデータ処理が微妙、複雑になると、そのためのトラブルが生じ安くなり、その対策のためにトータルコストに影響してくる。
【0012】
また、従来のバーコード読み取りでは、基板上にある認識コードの向きに対応してバーコードリーダの向き(スキャン方向)を変更しなければならなかった。
【0013】
なお、初歩的なことであるが、検査工程の作業者は、印刷はんだされた基板を識別し、印刷はんだ検査装置を操作して、その基板のレイアウトに沿って測定して測定値を取得し判定させるのであるからして、基板工程情報の一部を把握しており、作業者が、認識コードに頼らずに、直接に、判定結果に対して基板工程情報を入力して記録すれば良いのではないかという疑問がでてくるところである。しかしながら、例えば、同種のプリント板100枚を検査する場合、印刷はんだ検査装置に対しては、初期に設定・調整を行えば、100枚は自動で検査できるが、操作者が直接記録するとなると、100枚分の基板工程情報を確認し、直接入力を行わなければならないこと、時間がかかること、間違い安いこと等の多くの問題があって、バーコード等が取り入れられるようになってきた経緯がある。
【0014】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点をより改良するものであって、基板工程情報の取得に係る時間的、コスト的負担を軽減でききる印刷はんだ検査装置及びその方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するため、本発明では、基板に認識コードを付す方法が刻印形式であれ、インクによる印字形式であれ、基板上の高低差(高さ方向の変位)として表現されることに着眼するとともに、レーザ光を用いた三角測量によって測定、検査する方法にあっては、基板表面の高さ方向の変位量(併せて光量も測定しても良い)を捉えられる特徴を有することを利用して、基板の印刷はんだ形成状態及び認識コードをセンシング、処理して測定値を得るまでは、同じ手段、工程で行う(つまり、測定手段としては、印刷はんだ形成状態と認識コードを格別、意識することなく、測定する。)。そして、測定値を取得後の認識コードから基板工程情報を取得する工程は、基板の良否判断の工程と並列に行う構成とした。
【0016】
具体的には、請求項1に記載の発明は、特有の基板工程情報を付された検査対象のプリント板表面にレーザ光を走査しつつ照射させ、その反射光から得られるプリント板表面の各位置における高さ方向の変位量を示す測定値を取得する測定手段と、該測定値を記憶する測定値記憶手段と、該測定値記憶手段の測定値に基づいてはんだの印刷状態を判定する判定手段とを備えた印刷はんだ検査装置であって、
前記判定手段が印刷状態を判定する動作と並列に、前記測定値記憶手段が記憶する測定値を基に認識コードを検出し、検出した該認識コードから検査対象とするプリント基板に特有の基板工程情報を読み取る基板情報取得手段を備えた。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基板情報取得手段は、
予めプリント板の種類に対応して、該プリント板の基板工程情報を示す認識コードがパターンとして付された一部領域、及び該認識コードのパターンを情報に変換する規約を記憶する設計情報記憶手段と、前記検査対象とするプリント板に対応した一部領域の測定値を前記測定値記憶手段から読み出し、読み出した該一部領域の測定値を基に、該検査対象のプリント板の認識コードのパターンを検出するコード検出手段と、該コード検出手段で検出された該認識コードのパターンを基に、前記設計情報記憶手段に記憶されている前記規約を参照して該検査対象のプリント板の基板工程情報を読み出す翻訳手段とを備えた。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記測定手段は、前記プリント板表面の各位置における高さ方向の変位量と共に反射光の光量を測定値として記憶し、
前記コード検出手段は、前記一部領域の測定値の内、該変位量又は該光量のいずれか一つを基に、検査対象のプリント板の認識コードのパターンを検出する構成とした。
【0019】
請求項4に記載の発明は、予め、複数種類のプリント板の、識別情報、良否判定するための基準データ、プリント板の基板工程情報を含む認識コードのパターンが付された一部領域、及び該認識コードのパターンを情報に変換する規約を、予め対応させて設計情報記憶手段に記憶する準備段階と、
検査対象とするプリント板の識別情報が操作手段により指定される指定段階と、
前記検査対象のプリント板表面をレーザ光によって走査しつつ反射光を受けて求めた高さ方向の変位量を測定値として測定値記憶手段に記憶する測定段階と、
前記指定された識別情報に対応する前記基準データを参照して、該測定値記憶手段の測定値に基づいてはんだの印刷状態の良否を判定する判定段階と、
前記指定された識別情報に対応する前記一部領域を基に、前記測定値記憶手段から該一部領域における測定値を読み出し、該読み出した測定値を基に認識コードのパターンを検出するコード検出段階と、
該検出された認識コードのパターンを基に、前記指定された識別情報に対応する規約を参照して、基板工程情報を読み出す翻訳段階と、
該基板工程情報と前記判定段階における判定結果とを対応づける合成段階とを備えた。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、4の発明によれば、印刷はんだ形成状態を判定するため測定して求めた、高さ方向の変位を示す測定値を基に、判定動作とは並列に、認識コードを取得し、基板工程情報を取得できることから、測定(センシング)、そして変位を表す測定値までの処理は同じ処理で行え、その後の基板情報取得までの処理時間帯も改めて設ける必要がないので、時間的負担及びコスト的負担を軽減することができる。また、認識コードを変位データとして測定値とともに取得する構成からして、基板に付された認識コードの向きに応じて、読み取り方向を変更する必要がない。
【0021】
また測定は、認識コードに対しても印刷はんだに対しても同じ三角測量する構成であるから、認識コードが基板に付される領域は、印刷はんだ位置に対して、特別に離別した領域である必要はないので省スペースが図れる。また、認識コードを基板に付す態様は、刻印であれ、インク等による印字であれ、対応できる。認識コードの種類が変わっても、対応できる。さらには、走査型レーザ光で検出する方法では、撮影方法と異なって、プリント板の色に影響されることが少ない。
【0022】
請求項3の発明によれば、測定値として、高さ方向の変位量又は反射光のいずれかを利用できる構成なので、認識コードのパターンの付される態様(刻印、印字、等)、或いはパターンの大きさ、複雑さ、によって測定感度が異なることがあっても、いずれかの良好な感度の測定値を利用きる。したがって、より感度の良い状態で認識コードの検出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図1〜図4を用いて説明する。図1は、本発明の構成を示す機能ブロック図である。図2は、プリント板のレイアウトを説明する図である。図3、図4は、認識コードを測定(検出)する例を示す図である。
【0024】
図1における測定手段100は、いわば、走査型のレーザ変位計の例であって、センサ3は、基板1に対して走査してX軸、Y軸の各方向にレーザを照射可能なレーザ光源と、基板1からの反射光を受光する受光手段からなり、光源と受光手段とは、基板上の測定位置に対して三角測量の関係にあって、特に印刷はんだされたはんだ箇所の高さ方向の変位量、つまり高さ(Z軸方向)を位置と対応づけて測定する。そのとき印刷はんだ面からは、位置に対応した受光量(輝度)も得られる。レーザ変位計としての詳細の動作説明は省くが、原理としては、同一出願人が出願している特開平3−291512号公報のものがあり、その第4図及び第7図とそれらの説明のものと同様である。なお、受光手段としては、結象位置検出素子PSD(Posisiton Sensitive Detector)が用いられている。
【0025】
測定制御手段4は、検査対象である基板1を設計したときの印刷はんだ箇所或いはレジスト箇所等のレイアウト(図2に模式的に示したものを示す。)が後記する設計情報記憶手段13に記憶されているので、そのレイアウトを受けて、そのレイアウトに沿って相対的にセンサ3に対して走査測定を行わせ、印刷はんだ箇所の位置に対応して、検出した上記の変位量及び/又は受光量を測定値として出力し、後記するように2値化して測定値記憶手段6に記憶させる。
【0026】
上記の相対的な走査は、例えば、移動制御部4aが、レイアウトのX軸方向にセンサ3を移動させることにより主走査し、Y軸方向に沿って移動台2を移動させて副走査させることにより行っている。したがって、測定値は、レイアウト上のX、Yの位置におけるZ軸(高さ)方向のデータ(変位量)を得ることになる。
【0027】
具体的に図3を用いて、認識コードの変位量を得る過程を説明する。センサ3は、図3下段の基板1上を点線のようにX軸方向に主走査とY軸方向に副走査(これは移動台2、つまり基板1が移動する。)を行う。そしてセンサ3の受光手段から受けた受光量を基に電気処理することにより、図3の中段の実線に示すように、主走査ライン(X軸方向)に沿って、刻印の深さに応じたアナログの高さデータとしての測定値が得られる。そして、副走査を行って主走査ラインをY軸方向にずらしながら測定することにより、X軸とY軸からなる平面の位置に対応して刻印の深さ方向のほぼ一定の測定値が得られる。認識コードのパターン(X軸、Y軸、いずれか一方の一次元情報又は双方の2次元情報)に対応した測定値(この時点で、アナログ)が得られる。これを図3の中段の一点鎖線で示すしきい値と比較することにより、図3の上段に示すような2値化したデジタルの測定値(変位量)が得られる。この2値化した測定値(変位量)をX軸上の位置情報、Y軸上の位置情報をアドレスとして測定値記憶手段6に記憶する。当然ながら反射光を受けながら測定しているので、そのときの受光量(輝度)もその位置(X、Y)に対応して測定値として記憶することができる。
【0028】
このように、本発明では、最終的には、測定(センシング)して、X軸及び/又はY軸における、一次元又は2次元で表される認識コードのパターンを検出するのであるが、その過程において、高さ方向(Z軸方向の)情報が関与することが技術的特徴である。
【0029】
図3における2値化するためのしきい値は、調整可能にされている。その調整は、受光量を参考にして行うこともできる。それは、刻印(図4では、印字)の仕方、パターンの大きさ、プリント板の種類等により、照射されるレーザ光を反射する程度が異なり、結果として受光手段が受光したときの受光量と雑音成分との比が変わり、受光感度、測定感度に影響してくるためである。これは認識コードの検出の場合だけではなく、他の印刷はんだ形成状態を検出するときも同じである。
【0030】
つまり、図3は、図2のレイアウトの内、認識コードが存在する一部領域内の刻印パターン部分だけ拡大して示したものであるが、センサ3による走査は、基板1の全体に対して行われる。そのとき、印刷はんだのパターンの形状や印刷はんだ箇所のはんだ状況に応じて反射量(結果として受光量)が異なることが原因で雑音の影響が異なるため、印刷はんだ箇所毎に或いは所定の領域毎に2値化するためのしきい値を変更可能にしている。したがって、このようなしきい値の調整も認識コードの検出の場合も、印刷はんだ形成状態の測定と同じ考えで調整できる。
【0031】
図4は、基板2に付された認識コードがインク等で印字された場合であり、この場合は、基板1上のインク等の厚さ(つまり高さ)を測定することになる。この場合も、図4の上段に示すように、アナログの測定値を所定のしきい値で2値化して、2値化した測定値をその位置(X、Y)に対応させて測定値記憶手段6に記憶する。
【0032】
基板情報取得手段200は、設計情報記憶手段13,コード検出手段9及び翻訳手段10で構成され、後記する判定手段8が印刷状態を判定する動作と並列に、前記測定値記憶手段が記憶する測定値を基に認識コードを検出し、該認識コードから検査対象とするプリント基板に特有の基板工程情報を読み取る。
【0033】
設計情報記憶手段13は、設計した基板1のはんだ箇所、やレジスト箇所を示すレイアウトと、判定手段8によってはんだ形成状態の良否を判定するときの基準となる基準データと、基板1に認識コードが印された一部領域、認識コードの種類と、認識コードから情報を得るための規約とを基板の種類毎に予め記憶している。
【0034】
レイアウトは、検査対象とする基板1の設計されたときの配置図であって、例えば図2に模式的に示すように、印刷はんだ箇所、印刷はんだののらないレジスト箇所及び認識コード等の基板上の配置情報を記憶している。一部領域は、図2の認識コードが存在する領域のアドレスを示すものである。このレイアウトそのものを画像として(レイアウト画面として)、表示制御手段12bを介して表示手段12cに表示することができる。
【0035】
また、設計情報記憶手段13は、レイアウトの種類、一部領域と対応して、認識コードのパターンと、そのパターンが意味する情報を規定する規約等を記憶している。例えば、認識コードとして良く用いられるバーコードのパターンや規約は、公的機関(例えば、JIS)、或いは民間(例えば、JAN(EAN、UPC))が定めた各種のものがあり、数多くのコード、パターンが使用されているので、いずれの種類の認識コードでも利用できる。またそれらに限らず、数字、符号、それらの組み合わせでも良い。このように規約等を予め記憶し、測定手段100による測定がいずれの認識コードも検出できる構成であれば、従来のバーコードリーダのように、バーコードの種類を変えるとバーコードリーダを交換する必要が無くなる。
【0036】
また、設計情報記憶手段13は、基板1を検査して良否判定を行うための基準データとして、検査対象とする基板1に対応して記憶している。基準データは、具体的には、例えば印刷はんだ箇所の高さ、面積、体積、及びはんだの欠損等の値をはんだ箇所毎に準備され、データ生成手段7が生成する判定用データに対応して準備されている。また、これらの基準データは、はんだ箇所の印刷はんだを量的(画像的)に認識しやすい情報である。
【0037】
なお、検査対象の基板1の種類が多い場合は、それらの基板工程情報を設計情報記憶手段13に識別情報を付して記憶しておき、識別情報のリスト及び/又はレイアウト画面を表示手段12cに表示して操作手段12aで画面上でマーカ等により識別情報を指定することによって、指定された識別情報の(検査対象とする)プリント板を選択できるようにしている。
【0038】
データ生成手段7は、測定値記憶手段6に記憶されている基板1のはんだ箇所の位置とその位置における変位データ(変位量)又は輝度データ(受光量)等を受けて、例えば、フィルタ、はんだブリッジやはんだパターンエッジ等の繊細パターンを識別する感度を示す数々の所定の画像パラメータ値を基に、測定データを各はんだ箇所の印刷はんだ量を表す判定用データに加工処理する。また、データ生成手段7は、測定値(2値化されたデータ)を用いて印刷はんだ箇所における高さ、面積及び/又は体積等の演算を行う演算手段等を有している。
【0039】
そして、判定用データとしては、印刷はんだ箇所におけるはんだ量を表す要素となるデータであって、上記基準データと同様に、それぞれのはんだ箇所の高さ、面積、体積、及び欠損(存在すべきはんだ量が無い状態の検出)等がある。これら高さ、面積、体積等のデータは3次元画像情報ともなりうる情報である。
【0040】
なお、基板1を判定するには上記の判定用データの全てを必要とするとは限らないが、高さ、面積、体積の内、少なくともいずれか1つは不可欠である。判定にあたって、検査しようとする基板1の判定用データとして何を用いるか、或いはどの判定用データの組み合わせで判定するかは、基板1の種類、内容によって異なることがある。
【0041】
判定手段8は、上記データ生成手段7が出力する判定用データと、設計情報記憶手段13が記憶している検査対象とする基板に対応する基準データとを比較し、判定用データが基準データに対して許容値以内であれば、良と判定し、それ以外は否と判定する。そのとき、判定手段8は、印刷はんだ箇所毎に判定するので、否と判定された箇所の位置情報も検知できる。判定手段8は、印刷はんだ箇所毎の判定用データと基準データとの差、その判定結果、基板1の全体としての判定結果等の各種の検査結果を出力できる。
【0042】
コード検出手段9は、設計情報記憶手段13から検査対象とする基板1に対応する認識コードが存在する一部領域情報を受けて、測定値記憶手段6からその一部領域内の測定値(領域内のX、Y座標上のデータ)を読み取って、認識コードであるパターン(X、Y座標上の一次元、2次元情報)を検出する。測定値として変位量を用いれば、認識コードのパターンが図3のように刻印であれ、図4のように印字であれ、いずれも厚さ(高さ)があるので同じ方法で検出できる。ただし、図3と図4とではパターンの表れる極性が異なる。これは、検査対象とする基板1に対応していずれかを反転して、認識コードのパターンとする。
【0043】
また、認識コードのパターンを検出するにあたって、受光感度のことを考慮するなら、測定値としては、上記した変位量、受光量或いはそれらの組み合わせのいずれか一つ、より感度の良い測定値を選択して用いることが良い。例えば、図3の刻印では、パターン部分からは十分な光量は得られないが、図4の印字形態で、印字部分からの反射光が十分に得られる可能性が高い場合は、受光量だけを用いても良い。また、上記したように受光量で調整された変位量を用いても良い、変位量と受光量との相関値を用いても良い。
【0044】
翻訳手段10は、コード検出手段9が検出したパターンを基に設計情報記憶手段13の認識コード種類を特定し、その特定した種類の認識コードの規約を基に、パターンが意味する基板工程情報に変換して出力する。基板工程情報としては、上記のように検査対象の基板1の識別情報、ロット番号、製造番号、製造年月日等である。
【0045】
検査データ管理手段11は、判定手段8が出力する検査結果と翻訳手段10が出力する基板工程情報を対応させて記憶する。ユーザインタフェース12で、閲覧可能にデータベースにしておくことが望ましい。また、外部のコンピュータへネットワークを介して送信しても良い。検査データ管理手段11そのものを外部のコンピュータで行い、検査装置としては、検査結果と基板工程情報を送る構成でも良い。
【0046】
ユーザインタフェース12は、操作手段12a、表示制御手段12b、表示手段12c、を含んで構成される。また、表示制御手段12bは表示手段12cに操作案内を表示させる。そして、その案内にしたがって操作者により操作手段12aが操作されたときは、その操作内容に応じて、各部と連携して、例えば、レイアウトを表示させたり、判定結果を表示させたり、データ生成手段7が生成した高さ、面積、体積等を表示したり、或いは、検査データ管理手段11が管理するデータベースを一覧表示したりすることができる。
【0047】
上記構成の中で、測定制御手段4、データ生成手段7、コード検出手段9、翻訳手段10、検査データ管理手段11及び表示制御手段12bの各機能部は、CPU及びCPUを各機能部の機能を発揮させるためのプログラムを記憶したROM等で構成される。測定値記憶手段6及び設計情報記憶手段13は、主にRAMで構成され、上記CPUで管理される。
【0048】
次に動作の流れを説明する。
(1)予め、検査が行われる予定のある複数種類の基板1の、識別情報、レイアウト、判定するための基準データ、プリント板の認識コードの在る一部領域、認識コードの種類、及び認識コードから基板工程情報を読み出す規約を予め対応させて設計情報記憶手段13に記憶する。これは、表示制御手段12bが予め入力フォーマットを準備し、それを表示手段12cに表示させて入力を案内し、操作手段12aで入力されたのを受けて、設計情報記憶手段13にデータベースとして記憶させる構成としても良いし、設計情報記憶手段13に外部メモリから転送して記憶させる構成でも良い。
【0049】
(2)表示制御手段12bが、設計情報記憶手段13に記憶された基板1の少なくとも識別情報(名称,ID或いはレイアウト等の区別出きる情報)を一覧を表示させ、操作者がその中から、検査対象とする基板1の識別情報を操作手段12aにより表示画面上で選択する。
(3)測定手段100が検査対象のプリント板上をレーザ光によって走査しつつ反射光を受けて、求めた変位量及び受光量(変化量だけでも良い。)を2値化して測定値として測定値記憶手段6に記憶させる。
【0050】
(4)コード検出手段9が、設計情報記憶手段13から選択した基板1の領域情報を受けて、測定値記憶手段6からその領域情報で示される領域の測定値を読み出して、認識コードのパターンを検出する。なお、測定値の種類として、変位量及び受光量を記憶した場合は、変位量を用いるか、受光量を用いるか或いはそれらの組み合わせを用いるかは、予め設計情報記憶手段13に基板1に対応して記憶しておいて、その記憶した測定値の種類にしたがって採用する構成としても良い。というのは、基板1に付与される認識コードのパターンの態様は、既知の情報であるから、その態様に応じた測定値の種類を決めておくことができるからである。
【0051】
(5)翻訳手段10は、検出された認識コードのパターンを基に、設計情報記憶手段13に記憶されている当該検査対象の基板に対応する規約を参照して、基板工程情報を取得する。
(6)一方、データ生成手段7は、測定値を基に、判定用データである印刷はんだ箇所における高さ、面積、体積についてのデータを生成し、判定手段8は、それらの判定用データと対応する基準データを設計情報記憶手段13から受けて、判定用データと基準データを比較することによって、良否判定をするとともに、その判定結果を含む検査結果を出力する。
(7)検査データ管理手段11は、検査結果と基板工程情報を対応づけて合成し、表示手段12cやネットワークで閲覧可能なデータベースとして記憶、管理する。
【0052】
上記のように、本発明の実施形態の動作では、上記(4)及び(5)の動作と、(6)の動作は並列に行われるので、認識コードから基板工程情報を取得する時間を特別に必要としていないこと、印刷はんだ形成状態をセンシングするのも認識コードのパターンをセンシングするのも測定手段100であることから、改めて別に認識コードをセンシングする手段、データ処理する工程を必要としていないこと、が特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態の機能ブロックを説明するための図である。
【図2】プリント板を説明するための図である。
【図3】プリント板に認識コードが刻印された場合の測定を説明するための図である。
【図4】プリント板にインク等で認識コードが印字された場合の測定を説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板(プリント板)、 2 移動台、 3 センサ、 4 測定制御手段
4a 移動制御部、 5 移動機構部、 6 測定値記憶手段、 7 データ生成手段
8 判定手段、 9 コード検出手段、 10 翻訳手段、
11 検査データ管理手段、 12 ユーザインタフェース、 12a 操作手段、
12b 表示制御手段、 12c 表示手段、 13 設計情報記憶手段、
100 測定手段、 200 基板情報取得手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特有の基板工程情報を付された検査対象のプリント板表面にレーザ光を走査しつつ照射させ、その反射光から得られるプリント板表面の各位置における高さ方向の変位量を示す測定値を取得する測定手段(100)と、該測定値を記憶する測定値記憶手段(6)と、該測定値記憶手段の測定値に基づいてはんだの印刷状態を判定する判定手段(8)とを備えた印刷はんだ検査装置であって、
前記判定手段が印刷状態を判定する動作と並列に、前記測定値記憶手段が記憶する測定値を基に認識コードを検出し、検出した該認識コードから検査対象とするプリント基板に特有の基板工程情報を読み取る基板情報取得手段(200)を備えたことを特徴とする印刷はんだ検査装置。
【請求項2】
前記基板情報取得手段は、
予めプリント板の種類に対応して、該プリント板の基板工程情報を示す認識コードがパターンとして付された一部領域、及び該認識コードのパターンを情報に変換する規約を記憶する設計情報記憶手段(13)と、
前記検査対象とするプリント板に対応した前記一部領域の測定値を前記測定値記憶手段から読み出し、読み出した該一部領域の測定値を基に、該検査対象のプリント板の認識コードのパターンを検出するコード検出手段(9)と、
該コード検出手段により検出された該認識コードのパターンを基に、前記設計情報記憶手段に記憶されている前記規約を参照して該検査対象のプリント板の基板工程情報を読み出す翻訳手段(10)とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記プリント板表面の各位置における高さ方向の変位量と共に反射光の光量を測定値として記憶し、
前記コード検出手段は、前記一部領域の測定値の内、該変位量又は該光量のいずれか一つを基に、検査対象のプリント板の認識コードのパターンを検出することを特徴とする請求項2に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項4】
予め、複数種類のプリント板の、識別情報、良否判定するための基準データ、プリント板の基板工程情報を含む認識コードのパターンが付された一部領域、及び該認識コードのパターンを情報に変換する規約を、予め対応させて設計情報記憶手段(13)に記憶する準備段階と、
検査対象とするプリント板の識別情報が操作手段により指定される指定段階と、
前記検査対象のプリント板表面をレーザ光によって走査しつつ反射光を受けて求めた高さ方向の変位量を測定値として測定値記憶手段(6)に記憶する測定段階と、
前記指定された識別情報に対応する前記基準データを参照して、該測定値記憶手段の測定値に基づいてはんだの印刷状態の良否を判定する判定段階と、
前記指定された識別情報に対応する前記一部領域を基に、前記測定値記憶手段から該一部領域における測定値を読み出し、該読み出した測定値を基に認識コードのパターンを検出するコード検出段階と、
該検出された認識コードのパターンを基に、前記指定された識別情報に対応する規約を参照して、基板工程情報を読み出す翻訳段階と、
該基板工程情報と前記判定段階における判定結果とを対応づける合成段階とを備えたことを特徴とする印刷はんだ検査方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−90721(P2006−90721A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273083(P2004−273083)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】