説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の全面にわたって均一な品質の処理を行うことができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を回転可能に保持する回転保持機構と、基板に処理液を吐出する吐出口を有する洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルを平面視で基板Wの略中心と周縁との間で移動する洗浄液ノズル用移動機構と、回転保持機構と洗浄液ノズル用移動機構を制御して、基板を回転させ、かつ、処理液供給部を移動させて、処理液供給部から吐出された処理液を基板Wの全面に対して直接着液させる制御部と、を備えている。そして、処理液を基板Wの全面に対して直接着液させることで、基板Wの全面にわたって均一な処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)を処理する基板処理装置および基板処理方法に係り、特に、基板の全面にわたって均一な品質の処理を行う技術に関する。
【0002】
従来、この種の装置として、基板を回転可能に保持する回転保持機構と、基板に処理液を供給するノズルと、ノズルを移動させる移動機構と、移動機構を制御して基板の周縁側ではノズルの移動速度を比較的高くさせ、基板の中央側ではノズルの移動速度を比較的低くさせる制御部とを備えているものがある。この装置によれば、基板の単位面積当たりの処理時間を基板の全体にわたって等しくさせることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−307492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、基板に処理液が着液する範囲は螺旋状に連ねられ、この螺旋状の隙間(基板に処理液が直接着液しない部分)には処理液が横方向に広がる。結局、処理液が直接着液するか、着液した範囲から処理液が広がることによって基板の全面に処理液が供給される。しかしながら、処理液が直接着液した範囲に比べて、直接着液しなかった範囲では処理品質が落ちるという不都合がある。たとえば、洗浄処理の場合では、直接着液しなかった範囲にパーティクルが比較的多く残存し、基板の全面にわたって処理品質がばらついてしまう。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板基板の全面にわたって均一な品質の処理を行うことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置において、基板を回転可能に保持する回転保持機構と、基板に処理液を吐出する吐出口を有する処理液供給部と、前記処理液供給部を平面視で基板の略中心と周縁との間で移動する移動機構と、前記回転保持機構と前記移動機構を制御して、基板を回転させ、かつ、前記処理液供給部を移動させて、前記処理液供給部から吐出された処理液を基板の全面に対して直接着液させる制御部と、を備えている。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御部は回転保持機構と移動機構を制御して、処理液供給部と基板との相対的な位置を任意に変えて、処理液を基板の全面に対して直接着液させる。これにより、処理液を基板の全面に直接着液するので、基板の全面にわたって均一な処理を行うことができる。
【0008】
本発明において、前記制御部は、相前後して基板が1回転する間に処理液がそれぞれ着液する範囲同士を重複させることが好ましい(請求項2)。基板に処理液が直接着液する範囲を同心円状または螺旋状に拡大することができる。よって、効率よく基板の全面に処理液を直接着液することができる。ここで、重複とは、処理液がそれぞれ着液する範囲同士が全部重複すること、および、処理液がそれぞれ着液する範囲同士が一部で重複することのいずれも含む。
【0009】
また、本発明において、前記制御部は、螺旋状に隙間無く連なるように処理液を着液させることが好ましい(請求項3)。基板に処理液が直接着液する範囲を螺旋状に拡大することができる。よって、効率よく基板の全面に処理液を直接着液することができる。
【0010】
また、本発明において、前記制御部は、基板が一回転する間に前記処理液供給部を移動させる距離を、前記処理液供給部の移動方向に対する前記吐出口の長さより小さくさせることが好ましい(請求項4)。基板が1回転する前の時点で処理液が直接着液した範囲に重複するように、処理液を直接着液させることができる。
【0011】
また、本発明において、前記制御部は、基板が一回転する間に前記処理液供給部を移動させる距離を、前記処理液供給部の移動方向に対する前記吐出口の長さより小さい範囲で調整することが好ましい(請求項5)。基板が1回転する前後で処理液が直接着液した範囲同士の重なりの度合いを調整することができる。
【0012】
また、本発明において、前記制御部は、基板を一定の回転数で回転させつつ、平面視で基板の略中心と周縁との間にわたって前記処理液供給部を一定の移動速度で移動させることが好ましい(請求項6)。基板の全面に処理液を好適に直接着液することができる。
【0013】
また、本発明において、前記制御部はさらに、基板の回転数と前記処理液供給部の移動速度を制御して、基板の全面に対して処理液を直接着液させる処理に要する処理時間を調整することが好ましい(請求項7)。基板の全面にわたって均一な処理品質を保ちつつ、処理時間の変更に好適に対応することができる。
【0014】
また、本発明において、前記移動機構は、平面視で基板の略中心を通る水平1軸方向に前記処理液供給部を移動することが好ましい(請求項8)。基板の略中心と周縁との間を最短距離で移動させることができる。
【0015】
また、本発明において、前記処理液供給部が供給する処理液は洗浄液であり、前記制御部は、前記処理液供給部によって洗浄液を基板の全面に対して直接着液させて基板に洗浄処理を行うことが好ましい(請求項9)。基板の全面にわたって品質よく洗浄処理を行うことができる。
【0016】
また、本発明において、現像液を供給する現像液供給部を備え、前記制御部は、前記現像液供給部によって基板に現像液を供給し、引き続いて、その基板に前記洗浄処理を行うことが好ましい(請求項10)。基板上に現像液を確実に洗い流すことができる。これにより、現像欠陥の発生を好適に抑制することができる。
【0017】
また、請求項11に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法において、基板を回転させるとともに、処理液供給部を平面視で基板の略中心と周縁との間で移動させつつ処理液供給部から処理液を吐出させて、吐出された処理液を基板の全面に対して直接着液させる全面着液工程を備える。
【0018】
[作用・効果]請求項11に記載の発明によれば、基板を回転させるとともに、処理液供給部を平面視で基板の略中心と周縁との間で移動させつつ処理液供給部から処理液を吐出させるので、基板の全面に対して処理液を好適に直接着液させることができる。このような全面着液工程を備える基板処理方法によれば、基板の全面にわたって均一な処理を行うことができる。
【0019】
本発明において、前記全面着液工程は、相前後して基板が1回転する間に処理液がそれぞれ着液する範囲同士を重複させることが好ましい(請求項12)。基板に処理液が直接着液する範囲を同心円状または螺旋状に拡大することができる。よって、効率よく基板の全面に処理液を直接着液することができる。
【0020】
また、本発明において、前記全面着液工程は、螺旋状に隙間無く連なるように処理液を着液させることが好ましい(請求項13)。基板に処理液が直接着液する範囲を螺旋状に拡大することができる。よって、効率よく基板の全面に処理液を直接着液することができる。
【0021】
また、本発明において、前記全面着液工程は、処理液として洗浄液を使用して基板に洗浄処理を行うことが好ましい(請求項14)。基板の全面にわたって品質よく洗浄処理を行うことができる。
【0022】
また、本発明において、基板に現像液を供給する現像工程を備え、前記現像工程の後に前記全面着液工程を行うことが好ましい(請求項15)。これにより、現像欠陥の発生を好適に抑制することができる。
【0023】
なお、本明細書は、次のような基板処理装置に係る発明も開示している。
【0024】
(1)請求項1に記載の基板処理装置において、前記制御部は、基板が1回転する間に処理液が直接着液する略円環状の範囲を、その前に基板が1回転する間に処理液が直接着液した略円環状の範囲と周方向にわたって隙間無く重複させる基板処理装置。
【0025】
前記(1)に記載の発明によれば、基板に処理液が直接着液する範囲を同心円状または螺旋状に拡大することができる。よって、効率よく基板の全面に処理液を直接着液することができる。
【0026】
(2)請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板処理装置において、前記制御部は、基板を一定の回転数で回転させつつ、前記処理液供給部の移動速度を平面視で基板の中央側では基板の周縁側に比べて大きくさせる基板処理装置。
【0027】
前記(2)に記載の発明によれば、基板に対する処理液供給部の相対的な速度が、基板の全面にわたってばらつくことを抑制できる。このため、基板の全面にわたる処理品質の均一性をさらに高めることができる。
【0028】
(3)請求項1から請求項7のいずれかに記載の基板処理装置において、前記移動機構は、平面視で基板から外れた位置を通る縦軸心回りに前記処理液供給部を揺動移動する基板処理装置。
【0029】
前記(3)に記載の発明によれば、効率よく基板の全面に処理液を直接着液させることができる。
【0030】
(4)請求項1から請求項10のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液供給部は複数の吐出口を有する基板処理装置。
【0031】
前記(4)に記載の発明によれば、複数の吐出口が並行して処理液を基板に吐出することで、処理効率を高めることができる。
【0032】
(5)前記(4)に記載の基板処理装置において、前記吐出口は前記処理液供給部の移動方向に一列に並んで配置されている基板処理装置。
【0033】
前記(5)に記載の発明によれば、各吐出口がそれぞれ基板の全面に対して処理液を直接着液させることができる。
【0034】
(6)請求項1から請求項10のいずれかに記載の基板処理装置において、前記吐出口は細長いスリット形状であり、前記処理液供給部は、前記吐出口の長手方向が前記処理液供給部の移動方向と略一致するように前記移動機構に支持されている基板処理装置。
【0035】
前記(6)に記載の発明によれば、基板が一回転する間に基板に処理液が直接着液する範囲を大きくすることができ、効率がよい。
【0036】
(7)請求項1から請求項10のいずれかに記載の基板処理装置において、前記吐出口は略円形状、または、略正多角形状である基板処理装置。
【0037】
前記(7)に記載の発明によれば、吐出口が略円形状、または、略正多角形状であるので、吐出口から吐出された処理液は、その断面形状が略一定に保たれた状態で流下する。したがって、基板に処理液を安定的に直接着液させることができる。
【発明の効果】
【0038】
この発明に係る基板処理装置によれば、制御部は回転保持機構と移動機構を制御して、処理液供給部と基板との相対的な位置を任意に変えて、処理液を基板の全面に対して直接着液させる。これにより、処理液を基板の全面に直接着液するので、基板の全面にわたって均一な処理を行うことができる。
【0039】
また、この発明に係る基板処理方法によれば、基板を回転させるとともに、処理液供給部を平面視で基板の略中心と周縁との間で移動させつつ処理液供給部から処理液を吐出させるので、基板の全面に対して処理液を好適に直接着液させることができる。このような全面着液工程を備える基板処理方法によれば、基板の全面にわたって均一な処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。本実施例では基板処理装置として現像処理を行う装置を例にとって説明する。図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図であり、図2は、実施例に係る基板処理装置の平面図であり、図3は洗浄液ノズルの底面図である。
【0041】
本実施例に係る基板処理装置1は、回転保持機構11と、現像液ノズル13と、洗浄液ノズル15と、洗浄液ノズル用移動機構17と、制御部19とを備えている。
【0042】
回転保持機構11は、スピンチャック21とモータ23とを備えている。スピンチャック21は、基板Wの下面中央部を吸着して、基板Wを水平姿勢で保持する。スピンチャック21の下部中央にはモータ23の出力軸23aの先端が連結されている。モータ23の出力軸23aが回転駆動することで、スピンチャック21と基板Wを鉛直軸AX周りに回転させる。鉛直軸AXは基板Wの略中心を通る。なお、回転保持機構11の構成は、上記の例に限られない。たとえば、スピンチャック21を、基板Wの端縁を保持する複数のピンが設けられた回転板に変更してもよい。
【0043】
スピンチャック21の周囲には、飛散防止カップ25が配備されている。飛散防止カップ25は、基板Wの外周から周囲に飛散する現像液等を下方へ案内するとともに回収する機能を備える。
【0044】
現像液ノズル13は、現像液を基板Wに供給する。現像液ノズル13の下面には、複数個(本実施例では3個)の吐出口a1、a2、a3が一列に並んで形成されている。現像液ノズル13には現像液配管31の一端が連通接続されている。現像液配管31の他端は現像液供給源33に連通接続されている。現像液配管31には流路を開閉する開閉弁35が設けられている。現像液ノズル13は、図示省略の現像液ノズル用移動機構によって支持されている。現像液ノズル用移動機構は、基板Wの上方の位置と、基板Wの上方から外れた位置との間にわたって現像液ノズル13を移動する。現像液ノズル13は、この発明における現像液供給部に相当する。
【0045】
洗浄液ノズル15は、洗浄液を基板Wに供給する。洗浄液ノズル15の下面には吐出口bが形成されている。吐出口bは、半径rの円形状を呈する(図3参照)。洗浄液ノズル15には洗浄液配管41の一端が連通接続されている。洗浄液配管41の他端は洗浄液供給源43に連通接続されている。洗浄液配管41には流路を開閉する開閉弁45が設けられている。洗浄液ノズル15は、この発明における処理液供給部に相当する。
【0046】
洗浄液ノズル用移動機構17は、洗浄液ノズル15を平面視で基板Wの略中心の位置(図2において点線で示す洗浄液ノズル15の位置)と、基板Wの周縁の上方位置(図2において実線で示す洗浄液ノズル15の位置)との間で移動する。
【0047】
洗浄液ノズル用移動機構17は、レール部51と自走台53とアーム部55とを備えている。レール部51は飛散防止カップ5の側方に設けられている。自走台53はレール部51に取り付けられている。自走台53はレール部51に案内されて水平方向に前進移動および後退移動する。アーム部55の一端は自走台53に連結されている。アーム部55は略水平方向に延びて飛散防止カップ25の上方に張り出している。アーム部55の他端には洗浄ノズル15が連結されている。そして、自走台53が前進移動及び後退移動することで、洗浄液ノズル15は、平面視で基板Wの略中心を通る水平1軸方向dに前後移動する。これにより、洗浄液ノズル15は、基板Wの半径方向に直線的に移動して、基板Wの略中心の上方位置および基板Wの周縁の上方位置に移動可能である。洗浄液ノズル15は、さらに基板Wの上方から外れた位置に移動可能である。洗浄液ノズル用移動機構17は、この発明における移動機構に相当する。以下の説明では、洗浄液ノズル用移動機構17を、適宜「移動機構17」と略記する。
【0048】
制御部19は、回転保持機構11(モータ23)と移動機構17(自走台53)を制御して、洗浄液ノズル15から吐出された洗浄液を基板Wの全面に対して直接着液させる。
【0049】
図4(a)、(b)を参照する。図4(a)は洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が基板Wに直接着液する様子を模式的に示す断面図であり、図4(b)はその平面図である。図4(a)、(b)に示すように、洗浄液ノズル15の吐出口bから吐出された洗浄液は、鉛直下方に流下する。流下する洗浄液は、その断面形状を吐出口bと略同形状に保ったまま、基板Wの上面に着液する。したがって、基板Wに直接着液する範囲Cは、図4(b)に示すように略円形となる。なお、基板Wに直接着液する範囲Cは、基板Wの上面に着液した処理液がその後に横に広がる範囲を含まない。このため、基板Wに対する洗浄ノズル15の相対的な位置が変わらない限り、基板Wに直接着液する範囲Cが広がることはなく、一定のままである。
【0050】
このような基板Wに対する洗浄液の供給を実現するため、制御部19は、基板Wを所定の回転数で回転させるとともに、基板Wが一回転する間に吐出口bの半径rと略等しい距離だけ洗浄液ノズル15が移動するように、洗浄液ノズル15を移動させる。ここで、基板Wの回転数をn[rpm]、基板Wが一回転する間に洗浄液ノズル15が移動する距離をL[m]、吐出口bの半径をr[m]、洗浄液ノズル15の移動速度をv[m/s]とすると、次式が成立する。
【0051】
L=60・v/n=r ……… (1)
【0052】
この式(1)によれば、基板Wの回転数n[rpm]と吐出口bの半径r[m]に応じて、洗浄液ノズル15の移動速度v[m/s]は一義的に決まる。なお、基板Wの回転数n[rpm]に代えて、基板Wの回転速度N[1/s](N=n/60)や、基板Wの角速度ω[rad/s](ω=2π・n/60)を使用してもよい。
【0053】
制御部19は、上述した制御を行うほか、その他の基板処理装置1の各構成を統括的に制御する。具体的には、各開閉弁35、45を開放・閉止させて現像液の供給量および洗浄液の供給量を制御する。
【0054】
この制御部19には、基板Wを処理するための処理条件が予め設定されている処理レシピのほかに、洗浄液ノズル15の吐出口bの形状に関するノズル情報が予め記憶されている。処理条件としては、上述した距離L[m]の設定値や、現像、洗浄または乾燥などの各種処理時間や、現像液供給量および洗浄液供給量などを含む。ノズル情報としては、上述した吐出口bの半径r[m]を含む。
【0055】
制御部19は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0056】
次に、実施例に係る基板処理装置の動作について説明する。ここでは、レジスト膜が被着された基板Wが既にスピンチャック21に吸着保持されているものとして説明する。
【0057】
<ステップS1> 現像液の供給(現像工程)
制御部19は、モータ23を駆動し、開閉弁35を開放するとともに図示省略の現像液ノズル用移動機構を駆動する。これにより、基板Wを回転させるとともに、各吐出口a1、a2、a3から現像液を吐出させつつ、現像液ノズル13を基板Wの周縁上方から基板Wの略中心の上方に向かって移動させる。そして、現像液ノズル13が基板Wの略中心の上方まで移動すると、制御部19は現像液ノズル13の移動を停止させる。これにより、各吐出口a1、a2、a3から吐出された現像液は基板Wの表面に供給されて、基板Wを現像する。所定の期間が経過すると開閉弁35を閉止して、現像液ノズル13を待機位置に戻す。
【0058】
<ステップS2> 洗浄液の供給(全面着液工程)
制御部19は洗浄液ノズル15を基板Wの略中心の上方位置まで移動させるとともに、基板Wの回転数を所定の回転数n[rpm]に調整する。回転数n[rpm]は、例えば1000[rpm]である。そして、開閉弁45を開放するとともに、平面視で基板Wの略中心から周縁へ移動速度v[m/s]で洗浄液ノズル15を移動させる。なお、移動速度v[m/s]と回転数n[rpm]とは式(1)を満たす値である。
【0059】
図5は、ある時点において基板Wに直接処理液が着液した範囲Cを模式的に示している。図示するように、基板Wは回転方向eの方向に回転している。基板Wに処理液が着液した範囲Cは、基板Wの中心から螺旋状に隙間無く連なることで拡大している。また、各時点において基板Wに直接着液する範囲は、その1回転前の時点において基板Wに直接着液した範囲と重複している。図5においては、図示した時点まで基板Wが90度回転する期間に処理液が着液した範囲のうち、それ以前に処理液が直接着液した範囲と重複している範囲を、特に符号「Cc」を付して明示している。この重複した範囲Ccの幅はr[m]である。
【0060】
そして、洗浄液ノズル15が平面視で基板Wの周縁に到達したとき、基板Wの全面に隙間無く処理液が直接着液される。洗浄液ノズル15が平面視で基板Wの周縁に到達すると、開閉弁45を閉止して、洗浄液ノズル15を待機位置に戻す。
【0061】
<ステップS3> 回転乾燥(乾燥工程)
制御部19は基板Wをより高速に回転させる。これにより、洗浄液を基板Wから振り切りつつ、基板Wを乾燥する。
【0062】
このように、実施例に係る基板処理装置によれば、ステップS2において、制御部19は、基板Wを回転数n[rpm]で回転させつつ、洗浄液ノズル15を平面視で基板Wの略中心から周縁へ移動速度v[m/s]で移動させる。これにより、基板Wに螺旋状に隙間無く連なるように処理液を直接着液させることができる。よって、効率よく基板Wの全面に処理液を直接着液することができる。これにより、基板Wの全面を均一に洗浄することができる。
【0063】
また、処理液が基板Wに直接着液する範囲を螺旋状に拡大することによって、効率良く基板Wの全面に処理液を直接着液させることができる。また、基板Wの回転数n[rpm]および洗浄液ノズル15の移動速度v[m/s]は一定であるので、基板の全面に処理液を確実に直接着液させることができる。
【0064】
また、移動機構17は、平面視で基板Wの略中心を通る水平1軸方向dに洗浄液ノズル15を移動させる。これにより、基板Wの略中心と周縁との間で洗浄液ノズル15を最短距離(基板Wの半径に相当する距離)で移動させることができる。
【0065】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0066】
(1)上述した実施例では、基板Wの回転数n[rpm]と洗浄液ノズル15の移動速度v[m/s]とは、式(1)を満たす値を採用したが、これに限られない。基板Wが一回転する間に洗浄ノズル15が移動する距離Lが、吐出口bの直径2rより小さい範囲であれば、回転数n[rpm]と移動速度v[m/s]の各値を適宜に選択することができる。
【0067】
式で説明すると、次式(2)を満たす回転数n[rpm]と移動速度v[m/s]であれば、適宜に変更してもよい。
【0068】
L=60・v/n<2r ……… (2)
【0069】
(2)上述した実施例では、制御部19は、基板Wが一回転する間に洗浄液ノズル15が移動する距離Lと、基板Wの回転数nを与えることで、洗浄液ノズル15の移動速度vを決定したが、これに限られない。距離Lと移動速度vの値を与えることで、回転数nを決定してもよいし、移動速度vと回転数nを与えることで、距離Lを決定してもよい。あるいは、回転数nと移動速度vをそれぞれ可変して距離Lを調整してもよい。
【0070】
また、これら回転数n、移動速度vおよび距離Lの組み合わせを候補として複数準備し、これらの候補の中から適当なものを選択するように構成してもよい。
【0071】
図6を参照する。図6は、回転数n、距離L、移動速度vの組み合わせのバリエーションを示す模式図である。3種類の回転数n(1200[rpm]、1000[rpm]、800[rpm])と、3種類の距離L(La[m]、Lb[m]、Lc[m]:但し、いずれも2r[m]以下である)の組み合わせで9種類の組み合わせができる。なお、各組み合わせにおいて、移動速度vはそれぞれva、vb、…、viと一義的に決まる。また、基板Wの半径をRr[m]とすると、基板Wの全面に対して処理液を直接着液させる処理に要する処理時間t[s]についても、各移動速度va、vb、…、viに応じてそれぞれTa、Tb、…、Tiと一義的に求まる。そして、これら9種の候補の中から、処理対象の基板Wに応じて選択するように制御部19を構成してもよいし、処理レシピを参照して選択するように制御部19を構成してもよい。あるいは、ユーザーに複数の候補を提示(出力)してユーザーから指示命令を受け付けるように構成してもよい。
【0072】
(3)上述した実施例では、洗浄液ノズル15は単一の吐出口bを有していたが、複数の吐出口を有するように変更してもよい。この場合においては、各吐出口は洗浄液ノズル15の移動方向(本実施例では水平1軸方向d)に1列の並んでいることが好ましい。各吐出口がそれぞれ基板Wの全面に対して処理液を直接着液させることができるからである。
【0073】
(4)上述した実施例では、洗浄液ノズル15の吐出口bは円形であるが、これに限られない。吐出口bの形状を、長方形、菱形、正方形などの四角形に変更してもよい。また、その他の3角形、5角形以上の多角形に変更してもよい。
【0074】
あるいは、吐出口bの形状を細長いスリット形状に変更してもよい。この場合には、洗浄液ノズル15は、吐出口の長手方向が洗浄液ノズル15の移動方向と略一致させることが好ましい。基板Wが一回転する間に基板Wに処理液が直接着液する範囲が比較的に大きくなり、効率がよく基板Wの全面に処理液を直接着液させることができる。
【0075】
また、上述の変形実施例のように吐出口bの形状が円形でない場合、基板Wが一回転する間に洗浄液ノズル15を移動させる距離L[m]を、洗浄液ノズル15の移動方向に対する吐出口の長さより小さくするように変更すればよい。これによって、基板Wが1回転する前の時点で処理液が直接着液した範囲に重複するように、処理液を直接着液させることができる。
【0076】
(5)移動機構17は、洗浄液ノズル15を水平1軸方向dに移動させるものであったが、これに限られない。たとえば、洗浄液ノズル15の移動は直線的であってもよいし、曲線的であってもよい。
【0077】
図7を参照する。図7は、変形実施例に係る基板処理装置の平面図である。図7に示すように、洗浄液ノズル用移動機構18は、回転台61とアーム部63とを備えている。回転台61は、平面視で基板Wから外れた位置を通る縦軸心BX回りに回転する。アーム部63の一端は回転台61に連結されているとともに、アーム部63の他端は洗浄液ノズル16に連結されている。そして、洗浄液ノズル用移動機構18は、洗浄液ノズル16を平面視で基板Wの略中心を通る円弧上で揺動移動させる。これにより、洗浄液ノズル16は、平面視で基板Wの略中心と周縁とにわたって移動する。なお、図7に示す洗浄液ノズル16は、上述の(3)で説明した変形実施例のように、3つの吐出口b1、b2、b3を有している。
【0078】
(6)上述した実施例では、洗浄液ノズル15を平面視で基板Wの略中心から周縁へ移動させたが、これに限られない。洗浄ノズル15の移動経路は適宜に変更することができる。たとえば、洗浄液ノズル15を平面視で基板Wの周縁から略中心へ移動させてもよいし、基板Wの対向する周縁同士の間で移動させてもよい。また、洗浄液ノズル15を往復移動させてもよい。
【0079】
(7)上述した実施例では、洗浄液ノズル15の移動速度v[m/s]は一定であったが、これに限られない。たとえば、洗浄液ノズル15の移動速度v[m/s]を平面視で基板Wの中央側では基板Wの周縁側に比べて大きくさせるように変更してもよい。これによれば、基板Wに対する洗浄液ノズル15の相対的な速度が、基板Wの全面にわたってばらつくことを抑制できる。このため、基板Wの全面にわたる処理品質の均一性をさらに高めることができる。
【0080】
あるいは、基板Wの1回転あるいは複数回転ごとに、洗浄液ノズル15の移動と停止を繰り返すように構成してもよい。これによれば、基板Wが1回転する間に処理液が直接着液する範囲は略円環形状となる。そして、この略円環状の範囲を、その前に基板が1回転する間に処理液が直接着液した略円環状の範囲と周方向にわたって隙間無く重複させることができる。したがって、基板Wに処理液が直接着液する範囲を同心円状に拡大することができる。なお、2回転以上にわたって洗浄ノズル15を停止させた場合は、相前後して基板Wが1回転する間に処理液がそれぞれ着液する範囲同士は一致し、全部が重複することになる。
【0081】
(8)上述した実施例では、基板Wを現像する基板処理装置を例にとって説明したが、これに限られない。レジスト膜材料を塗布する装置など、種々の処理を行う装置に適用してもよい。また、洗浄液を基板Wの全面に直接着液させる装置を例示したが、これに限られない。洗浄液に代えて基板Wに薬液、塗膜材料などの各種の処理液を採用してもよい。
【0082】
(9)上述した実施例および各変形実施例(1)乃至(8)の各構成を適宜に組み合わせるように変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施例に係る基板処理装置の平面図である。
【図3】洗浄液ノズルの底面図である。
【図4】(a)洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が基板に直接着液する様子を模式的に示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図5】ある時点において基板に直接処理液が着液した範囲を模式的に示している。
【図6】回転数、距離および移動速度の組み合わせ候補を示す模式図である。
【図7】変形実施例に係る基板処理装置の平面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 … 基板処理装置
11 … 回転保持機構
13 … 現像液ノズル
15 … 洗浄液ノズル
17、18 … 洗浄液ノズル用移動機構
19 … 制御部
b、b1、b2、b3 … 吐出口
C …基板に処理液が直接着液する範囲
d … 水平1軸方向
r … 吐出口の半径
n … 基板の回転数
L … 基板が一回転する間に洗浄液ノズルが移動する距離
t … 処理時間
v … 洗浄液ノズルの移動速度
W … 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置において、
基板を回転可能に保持する回転保持機構と、
基板に処理液を吐出する吐出口を有する処理液供給部と、
前記処理液供給部を平面視で基板の略中心と周縁との間で移動する移動機構と、
前記回転保持機構と前記移動機構を制御して、基板を回転させ、かつ、前記処理液供給部を移動させて、前記処理液供給部から吐出された処理液を基板の全面に対して直接着液させる制御部と、
を備えている基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、相前後して基板が1回転する間に処理液がそれぞれ着液する範囲同士を重複させる基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、螺旋状に隙間無く連なるように処理液を着液させる基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記制御部は、基板が一回転する間に前記処理液供給部が移動する距離を、前記処理液供給部の移動方向に対する前記吐出口の長さより小さくさせる基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、基板が一回転する間に前記処理液供給部が移動する距離を、前記処理液供給部の移動方向に対する前記吐出口の長さより小さい範囲で調整する基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記制御部は、基板を一定の回転数で回転させつつ、平面視で基板の略中心と周縁との間にわたって前記処理液供給部を一定の移動速度で移動させる基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記制御部はさらに、基板の回転数と前記処理液供給部の移動速度を制御して、基板の全面に対して処理液を直接着液させる処理に要する処理時間を調整する基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記移動機構は、平面視で基板の略中心を通る水平1軸方向に前記処理液供給部を移動する基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給部が供給する処理液は洗浄液であり、
前記制御部は、前記処理液供給部によって洗浄液を基板の全面に対して直接着液させて基板に洗浄処理を行う基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置において、
現像液を供給する現像液供給部を備え、
前記制御部は、前記現像液供給部によって基板に現像液を供給し、引き続いて、その基板に前記洗浄処理を行う基板処理装置。
【請求項11】
基板を処理する基板処理方法において、
基板を回転させるとともに、処理液供給部を平面視で基板の略中心と周縁との間で移動させつつ処理液供給部から処理液を吐出させて、吐出された処理液を基板の全面に対して直接着液させる全面着液工程を備える基板処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理方法において、
前記全面着液工程は、相前後して基板が1回転する間に処理液がそれぞれ着液する範囲同士を重複させる基板処理方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の基板処理方法において、
前記全面着液工程は、螺旋状に隙間無く連なるように処理液を着液させる基板処理方法。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記全面着液工程は、処理液として洗浄液を使用して基板に洗浄処理を行う基板処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の基板処理方法において、
基板に現像液を供給する現像工程を備え、
前記現像工程の後に前記全面着液工程を行う基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153474(P2010−153474A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327898(P2008−327898)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(506322684)株式会社SOKUDO (158)
【Fターム(参考)】