基板処理装置
【課題】省スペース化及び低コスト化を実現可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】複数の基板処理室230,240,250と各基板処理室へ基板Wを搬送するための共通搬送室220とを有し、基板Wを起立姿勢で搬送しながら該基板Wに対して所定の処理を行う基板処理装置において、少なくとも一つの基板処理室230,240,250を共通搬送室220の上方又は下方に設け、該処理室と搬送室220の境界部に基板Wが通り抜け可能な基板通過口を設ける。
【解決手段】複数の基板処理室230,240,250と各基板処理室へ基板Wを搬送するための共通搬送室220とを有し、基板Wを起立姿勢で搬送しながら該基板Wに対して所定の処理を行う基板処理装置において、少なくとも一つの基板処理室230,240,250を共通搬送室220の上方又は下方に設け、該処理室と搬送室220の境界部に基板Wが通り抜け可能な基板通過口を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の基板に所定の処理を施すための基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶、薄膜太陽電池等の製造工程において、基板に対しCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)、スパッタリング、ドライエッチング等の処理を施すための基板処理装置には、該装置内の各処理室に基板を搬入出するための基板搬送機構が設けられている。こうした基板搬送機構においては、基板を水平に寝かせた状態で搬送するのが一般的であるが、近年のフラットパネルディスプレイの大画面化や太陽電池の大面積化に伴って、それらの主要部品であるガラス基板の大型化が進んでおり、これに起因して、基板が自重で撓むことによる損傷の発生や基板処理装置の設置面積の増大等の問題が発生している。
【0003】
こうした問題を解消するため、近年では、基板を起立させた状態で搬送及び処理を行う方式の基板処理装置が考案されており、例えば、特許文献1には、フラットパネルを斜めに起立させた状態で枚葉毎に搬送する機構を備えた基板処理装置が記載されている。このような構成とすることにより、ガラス基板の撓みを低減して基板の破損を防止できると共に、搬送ラインの専有面積を低減させることが可能となる。
【0004】
更に、特許文献1には、上記搬送ラインと複数の処理部で構成された生産ラインを上下に分離し、例えば、主な処理部を上層に、搬送ライン及び一部の処理部を下層に配置すると共に、該搬送ラインと上層の処理部との間で基板を上下に搬送するためのリフターを備えたものが記載されている。このように、搬送ラインと処理部を上下に配置した構成とすれば、基板処理装置全体の占有面積を一層低減することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2003-192127号公報([0013],[0031],図8,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置は、基板をリフターによって上層の処理部と同じ高さまで上昇させた上で該基板を処理部の前方から搬入し、その後、該処理部の後方から搬出された処理済み基板を別のリフターによって共通搬送室まで下降させる構成であるため、各処理部の前後にリフターを停留させるための空間を設ける必要がある。このため、処理室同士を大きく離間させて配置する必要があり、装置全体の専有面積を十分に縮小することができなかった。また、処理部毎に基板の搬入用と搬出用の2台のリフターを設ける必要があるため、設備コストが増大するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、省スペース化及び低コスト化を実現可能な基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る基板処理装置は、基板を起立姿勢で搬送しながら該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置において、a) 複数の基板処理室と、b) 各基板処理室へ基板を搬送するための共通搬送室とを有し、少なくとも一つの基板処理室が前記共通搬送室の上方又は下方に設けられ、該基板処理室と共通搬送室の境界部に基板が通り抜け可能な基板通過口が設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記本発明に係る基板処理装置は、共通搬送室と少なくとも一部の基板処理室とを上下に重ねて配置したものであり、該基板処理室は、共通搬送室の上方及び下方のいずれに設けてもよい。また、上記の「起立姿勢」とは、水平面に対し所定の角度をなした状態を意味する。従って、基板は斜めに傾けた状態としてもよいが、省スペース化の観点から水平面に対して垂直な状態(これを特に「垂直姿勢」と呼ぶ)とすることが望ましい。
【0010】
また、上記本発明に係る基板処理装置は、少なくとも一つの基板通過口がゲートバルブにより開閉可能に構成されたものとすることが望ましい。
【0011】
更に、上記本発明に係る基板処理装置は、起立姿勢の基板を共通搬送室内で水平方向に搬送可能であると共に、該基板を共通搬送室と基板処理室の間で上下方向に搬送可能な基板搬送手段を上記共通搬送室内に設けたものとすることが望ましい。
【0012】
また更に、上記本発明に係る基板処理装置は、上記共通搬送室内において垂直姿勢の基板を該基板の厚さ方向と直交する方向に搬送するものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明の基板処理装置によれば、基板処理室と共通搬送室を上下に配置すると共に、該基板処理室と共通搬送室との間の基板の出し入れを両者の境界部、すなわち、該基板処理室の床面又は天井面に設けられた基板通過口から行う構成としたことにより、該基板処理室の前後に基板の搬入出のためのスペースを設ける必要がなくなり、一層の省スペース化を図ることが可能となる。また、基板処理室への基板の搬入と搬出を一台の搬送装置で行うことができるため、設備コストを抑えることができる。
【0014】
更に、上記のように基板を水平方向及び上下方向に搬送可能な基板搬送手段を備えた構成とすれば、共通搬送室内での基板の搬送と共通搬送室から各基板処理室への基板の搬入出を一つの搬送手段で行うことができるため、これらをそれぞれ個別の搬送装置によって行う場合に比べ、製造コスト及び搬送装置の保守管理に要するコストをより低減することができる。
【0015】
また、上記のように、共通搬送室内において垂直姿勢の基板を該基板の厚さ方向と直交する方向に搬送する構成とすれば、該共通搬送室の体積を低減することができる。これにより、共通搬送室の真空引きを比較的安価な小排気容量の真空ポンプによって行うことが可能となり、設備コストを抑えることができる。また、共通搬送室を小型化することにより装置の設置面積を抑えることができると共に、耐圧性確保のための補強材等が最小限で済むため、装置の軽量化を実現することができる。更に、搬送室内壁の表面積を減らすことができるため、真空引きの際に該搬送室の内壁から放出されるアウトガスを低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る基板処理装置の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施例に係る基板処理装置の概略構成図である。本実施例に係る基板処理装置は、プラズマ気相成長(PE−CVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)によって基板上に薄膜を形成するPE−CVD装置であり、大別して、ロード部100、処理ユニット200、及びアンロード部300で構成されている。
【0018】
処理ユニット200は、処理前の基板Wを予熱するための予熱室230、基板W上にそれぞれ異なる薄膜を形成するための複数の成膜室240、処理後の基板Wを冷却するための冷却室250、基板Wを処理ユニット200内へ出し入れするためのロードロック室210,260、及びこれら各室へガラス基板Wを搬送するための搬送台車270を備えた共通搬送室220で構成されている。なお、本実施例においては予熱室230、成膜室240、及び冷却室250が、本発明に係る「基板処理室」に相当する。
【0019】
予熱室230、成膜室240、及び冷却室250(以下、適宜「基板処理室」と総称する)は、いずれも共通搬送室220の上方に配置されている。これらの基板処理室230,240,250と共通搬送室220との間の境界部、すなわち各基板処理室230,240,250の床面には、基板Wを通過させることのできる開口(本発明の「基板通過口」に相当する)が設けられており、該開口を介して共通搬送室220と各基板処理室230,240,250の間で基板Wの搬入及び搬出が行われる。
【0020】
更に、共通搬送室220とロードロック室210,260との境界部、及びロードロック室210,260と処理ユニット200の外部との境界部にも同様の開口が設けられている。これらの開口のうち、予熱室230及び冷却室250と共通搬送室220との境界部以外には、それぞれ開閉可能なゲートバルブ211,212,241,261,262が設けられており、各成膜室240及び共通搬送室220は図示しない真空ポンプによって真空状態に保たれている。また、ロードロック室210,260は、ロード部100から搬入された基板W、又はアンロード部300へ搬出する基板Wを一時的に保持するための予備真空室であり、真空ポンプによって適宜真空状態とすることができる。
【0021】
また、ロード部100には、前段の工程から搬送されてきた基板Wをロードロック室210へと搬送するためのローラコンベアが設けられており、水平姿勢でロード部100に搬送されてきた被処理基板Wは、基板振り分け機構(図示略)によって左右方向(図1中のX軸方向)へ交互に振り分けられ、前記ローラコンベアによってロードロック室210の手前側左右の基板立ち上げ位置までそれぞれ搬送される。また、アンロード部300にも同様のローラコンベアが設けられており、ロードロック室260から搬出された基板Wは、該ローラコンベアによって後段の工程へ搬出される。
【0022】
以下、上記ローラコンベアについて詳述する。ロード部100に設けられたローラコンベアは、前段の工程から受け取ったガラス基板を水平姿勢で搬送するものであり、基板立ち上げ位置のローラコンベア110は、他の部分のローラコンベアとは別体に構成されている。該ローラコンベア110の構成を図2に示す。ローラコンベア110は枠体111と、枠体111により両端が軸支された複数のシャフト112を備えている。各シャフト112には複数のスリーブ113が取り付けられ、所定の駆動手段(図示略)によって各シャフト112を回転駆動することにより、スリーブ113上に載置された基板Wを一定方向に搬送することができる。また、枠体111は、回転軸114を中心に回動可能な構成となっており、所定の駆動機構(図示略)によって地面と垂直な状態に起立させることができる。
【0023】
更に、枠体111には、基板Wの左右二辺(すなわち起立時の上下二辺)に対応する位置に、起立状態の基板を搬送するための糸巻き状の起立搬送ローラ120が取り付けられている。起立搬送ローラ120は、回転軸と一体に形成された円柱形の筒状部と、筒状部の両端に設けられ基板Wの脱落を防止するためのフランジ部から成る。各ローラの回転軸は、それぞれ枠体111に設けられたローラ駆動部124に接続されており、枠体111Wを起立させた状態でこれらのローラ駆動部124によって各起立搬送ローラ120を一定方向に回転させることにより、上下の起立搬送ローラ120によって保持された基板Wを該ローラ120の配列方向に沿って移動させることができる。
【0024】
次に、上記ローラコンベア110からロードロック室210への基板Wの搬入手順について説明する。まず、ロード部100のローラコンベアによって、処理対象となる2枚のガラス基板Wをそれぞれ基板立ち上げ位置まで搬送する。図3は、このときの基板立ち上げ位置のローラコンベア110を示す側面図である。
【0025】
続いて、図4に示すように各ローラコンベア110を回転軸114を中心に回動させ、各コンベアに搭載された基板Wを互いに平行且つ地面に垂直な姿勢で対向させる。なお、このとき、基板Wはその上下2辺がローラコンベア110上の各起立搬送ローラ120のフランジによって保持されているため、ローラコンベア110を垂直状態まで起立させても該基板Wがローラコンベア110から脱落することはない。
【0026】
その後、ロードロック室210の真空側ゲートバルブ212を閉鎖した状態で大気側ゲートバルブ211を開放し、ローラコンベア110の各起立搬送ローラ120を所定の方向に回転させる。これによって、ローラコンベア110上の各基板Wがロードロック室210に向かって送り出され、開状態の大気側ゲートバルブ211を介してロードロック室210の内部へと搬入される。基板Wの搬入が完了するとロードロック室210の大気側ゲートバルブ211を閉鎖し、真空ポンプによってロードロック室210内を真空状態とする。
【0027】
図5は基板Wの搬入完了時点におけるロードロック室210を示す正面断面図であり、図6は図5のA−A’矢視断面図である。ロードロック室210の内部には、上記同様の起立搬送ローラ214を複数備えた2枚の基板保持プレート213が対向配置されており、ロードロック室210に搬入された基板Wは、該起立搬送ローラ214によって上下2辺を支持されて基板保持プレート213上に保持される。各起立搬送ローラ214の回転軸は、各基板保持プレート213に設けられたローラ駆動部215に接続されており、これらのローラ駆動部215によって各ローラ214を所定方向に回動させることにより、各基板保持プレート213上の基板Wを共通搬送室220の方向(図5の右方向)に向かって搬送することができる。
【0028】
ロードロック室210内が所定の真空度に達したら、ロードロック室210の真空側ゲートバルブ212を開放し、基板保持プレート213上の起立搬送ローラ214を回転させて基板Wを共通搬送室220へ送出する(図7)。
【0029】
共通搬送室220には、ロードロック室210と同様に2枚の基板保持プレート221が設けられており、共通搬送室220内に進入した基板Wはその上下の端面が該基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222によって保持され、該ローラ222の回転によって更に共通搬送室220の奥へと導かれる。
【0030】
なお、図12〜14に示すように、各基板保持プレート221は共通搬送室220の外部に設けられたシリンダ225によって、互いに接近又は離間する方向(すなわち図1のX軸方向)に移動可能な構成となっている。また、共通搬送室220の各基板保持プレート221は、上下2枚のプレートを回転軸223を介して回動可能に連結した構成を有し、回転軸223を中心に上側のプレート221aを共通搬送室220の外側へ回動させることによって、該上側プレート221aに取り付けられたローラ222(すなわち基板上辺側の起立搬送ローラ)を、基板Wの上端縁を保持する保持位置と、基板Wの上方(すなわち基板昇降時の該基板Wの進路上)から退避した退避位置との間で移動させることができる(詳細は後述する)。
【0031】
次に、該基板保持プレート221に保持された基板Wが、共通搬送室220内に設けられた搬送台車270へと受け渡される。図8に搬送台車270の構成を示す。搬送台車270は、垂直姿勢の基板をその厚さ方向と直交する方向に搬送するものであり、共通搬送室220内に敷設されたレール226上を走行するためのタイヤ273を備えた走行基台272と、走行基台272の上部に搭載された基板保持体271、及び走行基台272と基板保持体271との間に伸縮自在に連結されたパンタグラフ機構274を備えており、電動シリンダ275によってパンタグラフ機構274を伸縮させることにより基板保持体271を走行基台272上で上下移動させることができる構成となっている。なお、走行基台272の前後には基板の前後方向(図1のY軸方向)の移動を規制するための回転ストッパ276が設けられている。各ストッパ276は図示しない駆動機構によって回動可能な構成となっており、図8(b)に示すように、適宜、基板と干渉しない位置に退避させることができる。
【0032】
基板保持体271は、走行基台272上方の前後両側に立設された一対のアームから成る。各アームの表裏両面には、基板Wの上辺及び下辺に対応する位置に、図9、図10に示すような基板保持ローラ280がそれぞれ取り付けられており、該ローラによって基板Wの上下2辺を保持することにより前記一対のアームの表側及び裏側に各1枚の基板Wを垂直姿勢で保持することができる。
【0033】
基板保持ローラ280は、回転軸281と一体に形成された円柱形の筒状部282と、筒状部282の両端面の外周の一部に設けられた保持フランジ283a,bを備えている。各ローラの回転軸281は、それぞれ基板保持体271に設けられたローラ駆動部(図示略)に接続されており、これらのローラ駆動部によって各基板保持ローラ280を回転駆動することにより、その回転角度に応じて、基板Wを保持したり(図9)、解放したり(図10)することができる。以下、図9の状態を「基板保持状態」、図10の状態を「保持解除状態」と呼ぶ。基板保持状態では、図9(b)に示すように基板Wの端縁が両保持フランジ283a,bの間に位置した状態となるため、基板Wの厚さ方向の動きが規制される。一方、保持解除状態では、図10(b)に示すように基板Wと保持フランジ283a,bが干渉しない位置関係となるため、基板Wの厚さ方向の動きが規制されることはない。
【0034】
共通搬送室220内の基板保持プレート221から搬送台車270へ基板Wを移載する際には、まず、図11、12に示すように搬送台車270を2枚の基板保持プレート221の間の空間に移動させる。続いて、シリンダ225によって各基板保持プレート221を基板搬送室の中央方向へ移動させることにより基板保持プレート221上の各基板Wを搬送台車270の基板保持体271に接近させる(図13)。なお、このとき、基板保持体271上の基板保持ローラ280は保持解除状態となっており、更に、基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222と基板保持体271上の基板保持ローラ280は、図11に示すように互いに干渉しない位置に設けられているため、基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222と基板保持体271上の基板保持ローラ280、及び基板保持体271上の基板保持ローラ280と基板Wとを接触させることなく各基板Wを基板保持体271に接近させることができる。
【0035】
その後、搬送台車270の基板保持体271上の基板保持ローラ280を回動させて基板保持状態とする。これにより、各基板Wが基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222と基板保持体271上の基板保持ローラ280の双方によって保持された状態となる。
【0036】
続いて、各基板保持プレート221の上側プレート221aが回転軸223を中心に外側へ回動し、基板Wの上辺を保持していた起立搬送ローラ222が退避位置へ移動する(図14)。その後、パンタグラフ機構274が伸長して基板保持体271が上昇し、該基板保持体271に搭載された2枚の基板Wが共通搬送室220の上方に設けられた予熱室230に搬入される(図15)。
【0037】
以上により、予熱室230に搬入された基板Wは、搬送台車270の基板保持体271から予熱室230内に設けられた所定の基板保持機構へと受け渡される。
【0038】
ここで、該基板保持機構としては、例えば、図16に示すようなものを採用することができる。これは、共通搬送室220の基板保持プレート221とほぼ同様のものを上下に反転させた構成を有しており、2枚の基板保持プレート231をシリンダ234によって互いに接近又は離間させることができると共に、各基板保持プレート231の下側プレート231aを回動軸233を中心として予熱室230の外側へ回動させることで基板下辺を支持するためのローラ232を基板Wの進路上から退避させることができる。但し、予熱室230内では基板Wの水平方向への搬送は行わないため、各基板保持プレート231上のローラ232は回動可能とする必要はない。
【0039】
上記のような基板保持機構を備えた予熱室230に基板を搬入する際には、まず、下側プレート231aに取り付けられたローラ232を退避位置に移動させた上で搬送台車270の基板保持体271を両基板保持プレート231の間に進入させる(図16(a))。続いて、前記下側プレート231a上のローラ232を保持位置に戻して基板Wを保持すると共に基板保持体271の基板保持ローラ280を保持解除状態とする(図16(b))。その後、シリンダ234によって各基板保持プレート231を予熱室230の外側方向に移動させた上で、搬送台車270のパンタグラフ機構274を縮めて基板保持体271を共通搬送室220へと下降させる。
【0040】
なお、予熱室230内に設けられる基板保持機構は上記構成のものに限られず、例えば、一方の面に図9、10と同様の複数の基板保持ローラを備え、該基板保持ローラによって基板Wの上下2辺を保持可能な2枚の板状部材を予熱室230の内部に設け、該2枚の板状部材をローラ取付面を内側にして対向配置すると共に、各板状部材を互いに接近又は離間する方向へ移動可能な構成としたものであってもよい。このような基板保持機構を備えた予熱室230に基板Wを搬入する際には、まず、該2枚の板状部材を離間させた状態で両者の間に搬送台車270の基板保持体271を進入させ、その後、各板状部材を移動させて基板保持体271に接近させる。続いて、各板状部材の基板保持ローラを基板保持状態に、基板保持体271の基板保持ローラ280を保持解除状態とすることにより、各基板Wを基板保持体271の基板保持ローラ280から前期板状部材上の基板保持ローラへと掴み換え、基板Wを搭載した各板状部材を再び互いに離間する方向へ移動させた上で、基板保持体271を予熱室230から退避させる。
【0041】
予熱室230での処理が完了すると、上記搬入時とは逆の手順により各ガラス基板Wが予熱室230内の各基板保持プレート231から搬送台車270の基板保持体271へと受け渡され、共通搬送室220へ搬出される。その後、共通搬送室220に敷設されたレール226に沿って走行基台272を走行させることで後段の成膜室240の直下に搬送台車270を移動させ、上記と同様の手順により基板Wの搬入出を行う。
【0042】
このときの成膜室240の断面を図18に示す。成膜室240の中央には給電部243を備えた電極242が設けられ、該電極242を挟んで対向する位置に上記予熱室230と同様の基板保持プレート231が設けられている(図16と対応する構成については同一符号を付し、説明を省略する)。なお、電極242の前後方向(図1のY軸方向)の長さは、搬送台車270上の基板保持体271の一対のアームの間隔よりも小さくなっており、成膜室240へ基板保持体271を進入させた際には電極242が両アームの間に位置した状態となるため、基板保持体271と電極242とが干渉することはない。また、成膜室240と共通搬送室220との間の開口は通常はゲートバルブ241によって閉鎖されており、基板Wを搬入及び搬出するときのみ該ゲートバルブを241開放して基板Wを通過させる。
【0043】
以上のように、本実施例に係る基板処理装置によれば、各基板処理室を共通搬送室の上に重ねて配置すると共に、共通搬送室−基板処理室間での基板の出し入れを両者の境界部、すなわち、各基板処理室の床面に設けられた開口(基板通過口)から行う構成としたことにより、各基板処理室間の間隔を短くすることができ、一層の省スペース化を図ることができる。また、上記のように共通搬送室内を走行可能且つ基板を上下に昇降可能な搬送台車を設けることにより、共通搬送室内における基板の水平搬送と各基板処理室への基板の上下搬送とを一台の搬送台車で行うことが可能となる。このため、水平搬送装置と上下搬送装置を別途設ける場合に比べ、製造コスト及び搬送装置の保守管理に要するコストを抑えることができる。また更に、共通搬送室内において垂直姿勢の基板をその厚さ方向と直交する方向に搬送する構成としたことにより、該共通搬送室の体積を低減し、更なる省スペース化、低コスト化、及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例に係る基板処理装置の概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’矢視断面図である。
【図2】同実施例の基板処理装置におけるローラコンベアの構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】上記コンベアに基板を水平姿勢で搭載した状態を示す側面図。
【図4】同コンベアを起立させた状態を示す側面図。
【図5】基板搬入後のロードロック室を示す正面断面図。
【図6】図5のA−A’矢視断面図。
【図7】ロードロック室から共通搬送室への基板の搬入過程を示す正面断面図。
【図8】搬送台車の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A’矢視断面図である。
【図9】基板保持状態の基板保持ローラを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】保持解除状態の基板保持ローラを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図11】搬送台車への受け渡し開始状態を示す正面断面図。
【図12】図11のA−A’矢視断面図。
【図13】搬送台車への受け渡し過程を示す断面図。
【図14】搬送台車への受け渡し完了状態を示す断面図。
【図15】予熱室への基板の搬入過程を示す正面断面図。
【図16】予熱室への基板の搬入過程を示す側面断面図であり、(a)はローラを退避させた状態を示し、(b)はローラを保持位置に戻した状態を示す。
【図17】基板を成膜室の直下に移動させた状態を示す正面断面図。
【図18】成膜室への基板の搬入過程を示す側面断面図であり、(a)はローラを退避させた状態を示し、(b)はローラを保持位置に戻した状態を示す。
【符号の説明】
【0045】
110…ローラコンベア
120,214,222…起立搬送ローラ
210,260…ロードロック室
211,212,241,261,262…ゲートバルブ
213,221,231…基板保持プレート
214,222…起立搬送ローラ
220…共通搬送室
221a…上側プレート
226…レール
230…予熱室
231a…下側プレート
240…成膜室
250…冷却室
270…搬送台車
271…基板保持体
272…走行基台
274…パンタグラフ機構
280…基板保持ローラ
W…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の基板に所定の処理を施すための基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶、薄膜太陽電池等の製造工程において、基板に対しCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)、スパッタリング、ドライエッチング等の処理を施すための基板処理装置には、該装置内の各処理室に基板を搬入出するための基板搬送機構が設けられている。こうした基板搬送機構においては、基板を水平に寝かせた状態で搬送するのが一般的であるが、近年のフラットパネルディスプレイの大画面化や太陽電池の大面積化に伴って、それらの主要部品であるガラス基板の大型化が進んでおり、これに起因して、基板が自重で撓むことによる損傷の発生や基板処理装置の設置面積の増大等の問題が発生している。
【0003】
こうした問題を解消するため、近年では、基板を起立させた状態で搬送及び処理を行う方式の基板処理装置が考案されており、例えば、特許文献1には、フラットパネルを斜めに起立させた状態で枚葉毎に搬送する機構を備えた基板処理装置が記載されている。このような構成とすることにより、ガラス基板の撓みを低減して基板の破損を防止できると共に、搬送ラインの専有面積を低減させることが可能となる。
【0004】
更に、特許文献1には、上記搬送ラインと複数の処理部で構成された生産ラインを上下に分離し、例えば、主な処理部を上層に、搬送ライン及び一部の処理部を下層に配置すると共に、該搬送ラインと上層の処理部との間で基板を上下に搬送するためのリフターを備えたものが記載されている。このように、搬送ラインと処理部を上下に配置した構成とすれば、基板処理装置全体の占有面積を一層低減することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2003-192127号公報([0013],[0031],図8,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置は、基板をリフターによって上層の処理部と同じ高さまで上昇させた上で該基板を処理部の前方から搬入し、その後、該処理部の後方から搬出された処理済み基板を別のリフターによって共通搬送室まで下降させる構成であるため、各処理部の前後にリフターを停留させるための空間を設ける必要がある。このため、処理室同士を大きく離間させて配置する必要があり、装置全体の専有面積を十分に縮小することができなかった。また、処理部毎に基板の搬入用と搬出用の2台のリフターを設ける必要があるため、設備コストが増大するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、省スペース化及び低コスト化を実現可能な基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る基板処理装置は、基板を起立姿勢で搬送しながら該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置において、a) 複数の基板処理室と、b) 各基板処理室へ基板を搬送するための共通搬送室とを有し、少なくとも一つの基板処理室が前記共通搬送室の上方又は下方に設けられ、該基板処理室と共通搬送室の境界部に基板が通り抜け可能な基板通過口が設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記本発明に係る基板処理装置は、共通搬送室と少なくとも一部の基板処理室とを上下に重ねて配置したものであり、該基板処理室は、共通搬送室の上方及び下方のいずれに設けてもよい。また、上記の「起立姿勢」とは、水平面に対し所定の角度をなした状態を意味する。従って、基板は斜めに傾けた状態としてもよいが、省スペース化の観点から水平面に対して垂直な状態(これを特に「垂直姿勢」と呼ぶ)とすることが望ましい。
【0010】
また、上記本発明に係る基板処理装置は、少なくとも一つの基板通過口がゲートバルブにより開閉可能に構成されたものとすることが望ましい。
【0011】
更に、上記本発明に係る基板処理装置は、起立姿勢の基板を共通搬送室内で水平方向に搬送可能であると共に、該基板を共通搬送室と基板処理室の間で上下方向に搬送可能な基板搬送手段を上記共通搬送室内に設けたものとすることが望ましい。
【0012】
また更に、上記本発明に係る基板処理装置は、上記共通搬送室内において垂直姿勢の基板を該基板の厚さ方向と直交する方向に搬送するものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明の基板処理装置によれば、基板処理室と共通搬送室を上下に配置すると共に、該基板処理室と共通搬送室との間の基板の出し入れを両者の境界部、すなわち、該基板処理室の床面又は天井面に設けられた基板通過口から行う構成としたことにより、該基板処理室の前後に基板の搬入出のためのスペースを設ける必要がなくなり、一層の省スペース化を図ることが可能となる。また、基板処理室への基板の搬入と搬出を一台の搬送装置で行うことができるため、設備コストを抑えることができる。
【0014】
更に、上記のように基板を水平方向及び上下方向に搬送可能な基板搬送手段を備えた構成とすれば、共通搬送室内での基板の搬送と共通搬送室から各基板処理室への基板の搬入出を一つの搬送手段で行うことができるため、これらをそれぞれ個別の搬送装置によって行う場合に比べ、製造コスト及び搬送装置の保守管理に要するコストをより低減することができる。
【0015】
また、上記のように、共通搬送室内において垂直姿勢の基板を該基板の厚さ方向と直交する方向に搬送する構成とすれば、該共通搬送室の体積を低減することができる。これにより、共通搬送室の真空引きを比較的安価な小排気容量の真空ポンプによって行うことが可能となり、設備コストを抑えることができる。また、共通搬送室を小型化することにより装置の設置面積を抑えることができると共に、耐圧性確保のための補強材等が最小限で済むため、装置の軽量化を実現することができる。更に、搬送室内壁の表面積を減らすことができるため、真空引きの際に該搬送室の内壁から放出されるアウトガスを低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る基板処理装置の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施例に係る基板処理装置の概略構成図である。本実施例に係る基板処理装置は、プラズマ気相成長(PE−CVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)によって基板上に薄膜を形成するPE−CVD装置であり、大別して、ロード部100、処理ユニット200、及びアンロード部300で構成されている。
【0018】
処理ユニット200は、処理前の基板Wを予熱するための予熱室230、基板W上にそれぞれ異なる薄膜を形成するための複数の成膜室240、処理後の基板Wを冷却するための冷却室250、基板Wを処理ユニット200内へ出し入れするためのロードロック室210,260、及びこれら各室へガラス基板Wを搬送するための搬送台車270を備えた共通搬送室220で構成されている。なお、本実施例においては予熱室230、成膜室240、及び冷却室250が、本発明に係る「基板処理室」に相当する。
【0019】
予熱室230、成膜室240、及び冷却室250(以下、適宜「基板処理室」と総称する)は、いずれも共通搬送室220の上方に配置されている。これらの基板処理室230,240,250と共通搬送室220との間の境界部、すなわち各基板処理室230,240,250の床面には、基板Wを通過させることのできる開口(本発明の「基板通過口」に相当する)が設けられており、該開口を介して共通搬送室220と各基板処理室230,240,250の間で基板Wの搬入及び搬出が行われる。
【0020】
更に、共通搬送室220とロードロック室210,260との境界部、及びロードロック室210,260と処理ユニット200の外部との境界部にも同様の開口が設けられている。これらの開口のうち、予熱室230及び冷却室250と共通搬送室220との境界部以外には、それぞれ開閉可能なゲートバルブ211,212,241,261,262が設けられており、各成膜室240及び共通搬送室220は図示しない真空ポンプによって真空状態に保たれている。また、ロードロック室210,260は、ロード部100から搬入された基板W、又はアンロード部300へ搬出する基板Wを一時的に保持するための予備真空室であり、真空ポンプによって適宜真空状態とすることができる。
【0021】
また、ロード部100には、前段の工程から搬送されてきた基板Wをロードロック室210へと搬送するためのローラコンベアが設けられており、水平姿勢でロード部100に搬送されてきた被処理基板Wは、基板振り分け機構(図示略)によって左右方向(図1中のX軸方向)へ交互に振り分けられ、前記ローラコンベアによってロードロック室210の手前側左右の基板立ち上げ位置までそれぞれ搬送される。また、アンロード部300にも同様のローラコンベアが設けられており、ロードロック室260から搬出された基板Wは、該ローラコンベアによって後段の工程へ搬出される。
【0022】
以下、上記ローラコンベアについて詳述する。ロード部100に設けられたローラコンベアは、前段の工程から受け取ったガラス基板を水平姿勢で搬送するものであり、基板立ち上げ位置のローラコンベア110は、他の部分のローラコンベアとは別体に構成されている。該ローラコンベア110の構成を図2に示す。ローラコンベア110は枠体111と、枠体111により両端が軸支された複数のシャフト112を備えている。各シャフト112には複数のスリーブ113が取り付けられ、所定の駆動手段(図示略)によって各シャフト112を回転駆動することにより、スリーブ113上に載置された基板Wを一定方向に搬送することができる。また、枠体111は、回転軸114を中心に回動可能な構成となっており、所定の駆動機構(図示略)によって地面と垂直な状態に起立させることができる。
【0023】
更に、枠体111には、基板Wの左右二辺(すなわち起立時の上下二辺)に対応する位置に、起立状態の基板を搬送するための糸巻き状の起立搬送ローラ120が取り付けられている。起立搬送ローラ120は、回転軸と一体に形成された円柱形の筒状部と、筒状部の両端に設けられ基板Wの脱落を防止するためのフランジ部から成る。各ローラの回転軸は、それぞれ枠体111に設けられたローラ駆動部124に接続されており、枠体111Wを起立させた状態でこれらのローラ駆動部124によって各起立搬送ローラ120を一定方向に回転させることにより、上下の起立搬送ローラ120によって保持された基板Wを該ローラ120の配列方向に沿って移動させることができる。
【0024】
次に、上記ローラコンベア110からロードロック室210への基板Wの搬入手順について説明する。まず、ロード部100のローラコンベアによって、処理対象となる2枚のガラス基板Wをそれぞれ基板立ち上げ位置まで搬送する。図3は、このときの基板立ち上げ位置のローラコンベア110を示す側面図である。
【0025】
続いて、図4に示すように各ローラコンベア110を回転軸114を中心に回動させ、各コンベアに搭載された基板Wを互いに平行且つ地面に垂直な姿勢で対向させる。なお、このとき、基板Wはその上下2辺がローラコンベア110上の各起立搬送ローラ120のフランジによって保持されているため、ローラコンベア110を垂直状態まで起立させても該基板Wがローラコンベア110から脱落することはない。
【0026】
その後、ロードロック室210の真空側ゲートバルブ212を閉鎖した状態で大気側ゲートバルブ211を開放し、ローラコンベア110の各起立搬送ローラ120を所定の方向に回転させる。これによって、ローラコンベア110上の各基板Wがロードロック室210に向かって送り出され、開状態の大気側ゲートバルブ211を介してロードロック室210の内部へと搬入される。基板Wの搬入が完了するとロードロック室210の大気側ゲートバルブ211を閉鎖し、真空ポンプによってロードロック室210内を真空状態とする。
【0027】
図5は基板Wの搬入完了時点におけるロードロック室210を示す正面断面図であり、図6は図5のA−A’矢視断面図である。ロードロック室210の内部には、上記同様の起立搬送ローラ214を複数備えた2枚の基板保持プレート213が対向配置されており、ロードロック室210に搬入された基板Wは、該起立搬送ローラ214によって上下2辺を支持されて基板保持プレート213上に保持される。各起立搬送ローラ214の回転軸は、各基板保持プレート213に設けられたローラ駆動部215に接続されており、これらのローラ駆動部215によって各ローラ214を所定方向に回動させることにより、各基板保持プレート213上の基板Wを共通搬送室220の方向(図5の右方向)に向かって搬送することができる。
【0028】
ロードロック室210内が所定の真空度に達したら、ロードロック室210の真空側ゲートバルブ212を開放し、基板保持プレート213上の起立搬送ローラ214を回転させて基板Wを共通搬送室220へ送出する(図7)。
【0029】
共通搬送室220には、ロードロック室210と同様に2枚の基板保持プレート221が設けられており、共通搬送室220内に進入した基板Wはその上下の端面が該基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222によって保持され、該ローラ222の回転によって更に共通搬送室220の奥へと導かれる。
【0030】
なお、図12〜14に示すように、各基板保持プレート221は共通搬送室220の外部に設けられたシリンダ225によって、互いに接近又は離間する方向(すなわち図1のX軸方向)に移動可能な構成となっている。また、共通搬送室220の各基板保持プレート221は、上下2枚のプレートを回転軸223を介して回動可能に連結した構成を有し、回転軸223を中心に上側のプレート221aを共通搬送室220の外側へ回動させることによって、該上側プレート221aに取り付けられたローラ222(すなわち基板上辺側の起立搬送ローラ)を、基板Wの上端縁を保持する保持位置と、基板Wの上方(すなわち基板昇降時の該基板Wの進路上)から退避した退避位置との間で移動させることができる(詳細は後述する)。
【0031】
次に、該基板保持プレート221に保持された基板Wが、共通搬送室220内に設けられた搬送台車270へと受け渡される。図8に搬送台車270の構成を示す。搬送台車270は、垂直姿勢の基板をその厚さ方向と直交する方向に搬送するものであり、共通搬送室220内に敷設されたレール226上を走行するためのタイヤ273を備えた走行基台272と、走行基台272の上部に搭載された基板保持体271、及び走行基台272と基板保持体271との間に伸縮自在に連結されたパンタグラフ機構274を備えており、電動シリンダ275によってパンタグラフ機構274を伸縮させることにより基板保持体271を走行基台272上で上下移動させることができる構成となっている。なお、走行基台272の前後には基板の前後方向(図1のY軸方向)の移動を規制するための回転ストッパ276が設けられている。各ストッパ276は図示しない駆動機構によって回動可能な構成となっており、図8(b)に示すように、適宜、基板と干渉しない位置に退避させることができる。
【0032】
基板保持体271は、走行基台272上方の前後両側に立設された一対のアームから成る。各アームの表裏両面には、基板Wの上辺及び下辺に対応する位置に、図9、図10に示すような基板保持ローラ280がそれぞれ取り付けられており、該ローラによって基板Wの上下2辺を保持することにより前記一対のアームの表側及び裏側に各1枚の基板Wを垂直姿勢で保持することができる。
【0033】
基板保持ローラ280は、回転軸281と一体に形成された円柱形の筒状部282と、筒状部282の両端面の外周の一部に設けられた保持フランジ283a,bを備えている。各ローラの回転軸281は、それぞれ基板保持体271に設けられたローラ駆動部(図示略)に接続されており、これらのローラ駆動部によって各基板保持ローラ280を回転駆動することにより、その回転角度に応じて、基板Wを保持したり(図9)、解放したり(図10)することができる。以下、図9の状態を「基板保持状態」、図10の状態を「保持解除状態」と呼ぶ。基板保持状態では、図9(b)に示すように基板Wの端縁が両保持フランジ283a,bの間に位置した状態となるため、基板Wの厚さ方向の動きが規制される。一方、保持解除状態では、図10(b)に示すように基板Wと保持フランジ283a,bが干渉しない位置関係となるため、基板Wの厚さ方向の動きが規制されることはない。
【0034】
共通搬送室220内の基板保持プレート221から搬送台車270へ基板Wを移載する際には、まず、図11、12に示すように搬送台車270を2枚の基板保持プレート221の間の空間に移動させる。続いて、シリンダ225によって各基板保持プレート221を基板搬送室の中央方向へ移動させることにより基板保持プレート221上の各基板Wを搬送台車270の基板保持体271に接近させる(図13)。なお、このとき、基板保持体271上の基板保持ローラ280は保持解除状態となっており、更に、基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222と基板保持体271上の基板保持ローラ280は、図11に示すように互いに干渉しない位置に設けられているため、基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222と基板保持体271上の基板保持ローラ280、及び基板保持体271上の基板保持ローラ280と基板Wとを接触させることなく各基板Wを基板保持体271に接近させることができる。
【0035】
その後、搬送台車270の基板保持体271上の基板保持ローラ280を回動させて基板保持状態とする。これにより、各基板Wが基板保持プレート221上の起立搬送ローラ222と基板保持体271上の基板保持ローラ280の双方によって保持された状態となる。
【0036】
続いて、各基板保持プレート221の上側プレート221aが回転軸223を中心に外側へ回動し、基板Wの上辺を保持していた起立搬送ローラ222が退避位置へ移動する(図14)。その後、パンタグラフ機構274が伸長して基板保持体271が上昇し、該基板保持体271に搭載された2枚の基板Wが共通搬送室220の上方に設けられた予熱室230に搬入される(図15)。
【0037】
以上により、予熱室230に搬入された基板Wは、搬送台車270の基板保持体271から予熱室230内に設けられた所定の基板保持機構へと受け渡される。
【0038】
ここで、該基板保持機構としては、例えば、図16に示すようなものを採用することができる。これは、共通搬送室220の基板保持プレート221とほぼ同様のものを上下に反転させた構成を有しており、2枚の基板保持プレート231をシリンダ234によって互いに接近又は離間させることができると共に、各基板保持プレート231の下側プレート231aを回動軸233を中心として予熱室230の外側へ回動させることで基板下辺を支持するためのローラ232を基板Wの進路上から退避させることができる。但し、予熱室230内では基板Wの水平方向への搬送は行わないため、各基板保持プレート231上のローラ232は回動可能とする必要はない。
【0039】
上記のような基板保持機構を備えた予熱室230に基板を搬入する際には、まず、下側プレート231aに取り付けられたローラ232を退避位置に移動させた上で搬送台車270の基板保持体271を両基板保持プレート231の間に進入させる(図16(a))。続いて、前記下側プレート231a上のローラ232を保持位置に戻して基板Wを保持すると共に基板保持体271の基板保持ローラ280を保持解除状態とする(図16(b))。その後、シリンダ234によって各基板保持プレート231を予熱室230の外側方向に移動させた上で、搬送台車270のパンタグラフ機構274を縮めて基板保持体271を共通搬送室220へと下降させる。
【0040】
なお、予熱室230内に設けられる基板保持機構は上記構成のものに限られず、例えば、一方の面に図9、10と同様の複数の基板保持ローラを備え、該基板保持ローラによって基板Wの上下2辺を保持可能な2枚の板状部材を予熱室230の内部に設け、該2枚の板状部材をローラ取付面を内側にして対向配置すると共に、各板状部材を互いに接近又は離間する方向へ移動可能な構成としたものであってもよい。このような基板保持機構を備えた予熱室230に基板Wを搬入する際には、まず、該2枚の板状部材を離間させた状態で両者の間に搬送台車270の基板保持体271を進入させ、その後、各板状部材を移動させて基板保持体271に接近させる。続いて、各板状部材の基板保持ローラを基板保持状態に、基板保持体271の基板保持ローラ280を保持解除状態とすることにより、各基板Wを基板保持体271の基板保持ローラ280から前期板状部材上の基板保持ローラへと掴み換え、基板Wを搭載した各板状部材を再び互いに離間する方向へ移動させた上で、基板保持体271を予熱室230から退避させる。
【0041】
予熱室230での処理が完了すると、上記搬入時とは逆の手順により各ガラス基板Wが予熱室230内の各基板保持プレート231から搬送台車270の基板保持体271へと受け渡され、共通搬送室220へ搬出される。その後、共通搬送室220に敷設されたレール226に沿って走行基台272を走行させることで後段の成膜室240の直下に搬送台車270を移動させ、上記と同様の手順により基板Wの搬入出を行う。
【0042】
このときの成膜室240の断面を図18に示す。成膜室240の中央には給電部243を備えた電極242が設けられ、該電極242を挟んで対向する位置に上記予熱室230と同様の基板保持プレート231が設けられている(図16と対応する構成については同一符号を付し、説明を省略する)。なお、電極242の前後方向(図1のY軸方向)の長さは、搬送台車270上の基板保持体271の一対のアームの間隔よりも小さくなっており、成膜室240へ基板保持体271を進入させた際には電極242が両アームの間に位置した状態となるため、基板保持体271と電極242とが干渉することはない。また、成膜室240と共通搬送室220との間の開口は通常はゲートバルブ241によって閉鎖されており、基板Wを搬入及び搬出するときのみ該ゲートバルブを241開放して基板Wを通過させる。
【0043】
以上のように、本実施例に係る基板処理装置によれば、各基板処理室を共通搬送室の上に重ねて配置すると共に、共通搬送室−基板処理室間での基板の出し入れを両者の境界部、すなわち、各基板処理室の床面に設けられた開口(基板通過口)から行う構成としたことにより、各基板処理室間の間隔を短くすることができ、一層の省スペース化を図ることができる。また、上記のように共通搬送室内を走行可能且つ基板を上下に昇降可能な搬送台車を設けることにより、共通搬送室内における基板の水平搬送と各基板処理室への基板の上下搬送とを一台の搬送台車で行うことが可能となる。このため、水平搬送装置と上下搬送装置を別途設ける場合に比べ、製造コスト及び搬送装置の保守管理に要するコストを抑えることができる。また更に、共通搬送室内において垂直姿勢の基板をその厚さ方向と直交する方向に搬送する構成としたことにより、該共通搬送室の体積を低減し、更なる省スペース化、低コスト化、及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例に係る基板処理装置の概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’矢視断面図である。
【図2】同実施例の基板処理装置におけるローラコンベアの構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】上記コンベアに基板を水平姿勢で搭載した状態を示す側面図。
【図4】同コンベアを起立させた状態を示す側面図。
【図5】基板搬入後のロードロック室を示す正面断面図。
【図6】図5のA−A’矢視断面図。
【図7】ロードロック室から共通搬送室への基板の搬入過程を示す正面断面図。
【図8】搬送台車の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A’矢視断面図である。
【図9】基板保持状態の基板保持ローラを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】保持解除状態の基板保持ローラを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図11】搬送台車への受け渡し開始状態を示す正面断面図。
【図12】図11のA−A’矢視断面図。
【図13】搬送台車への受け渡し過程を示す断面図。
【図14】搬送台車への受け渡し完了状態を示す断面図。
【図15】予熱室への基板の搬入過程を示す正面断面図。
【図16】予熱室への基板の搬入過程を示す側面断面図であり、(a)はローラを退避させた状態を示し、(b)はローラを保持位置に戻した状態を示す。
【図17】基板を成膜室の直下に移動させた状態を示す正面断面図。
【図18】成膜室への基板の搬入過程を示す側面断面図であり、(a)はローラを退避させた状態を示し、(b)はローラを保持位置に戻した状態を示す。
【符号の説明】
【0045】
110…ローラコンベア
120,214,222…起立搬送ローラ
210,260…ロードロック室
211,212,241,261,262…ゲートバルブ
213,221,231…基板保持プレート
214,222…起立搬送ローラ
220…共通搬送室
221a…上側プレート
226…レール
230…予熱室
231a…下側プレート
240…成膜室
250…冷却室
270…搬送台車
271…基板保持体
272…走行基台
274…パンタグラフ機構
280…基板保持ローラ
W…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を起立姿勢で搬送しながら該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置において、
a) 複数の基板処理室と、
b) 各基板処理室へ基板を搬送するための共通搬送室と、
を有し、少なくとも一つの基板処理室が前記共通搬送室の上方又は下方に設けられ、該基板処理室と共通搬送室の境界部に基板が通り抜け可能な基板通過口が設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
少なくとも一つの基板通過口がゲートバルブにより開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
起立姿勢の基板を共通搬送室内で水平方向に搬送可能であると共に、該基板を共通搬送室と基板処理室の間で上下方向に搬送可能な基板搬送手段を上記共通搬送室内に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
上記共通搬送室内において垂直姿勢の基板を該基板の厚さ方向と直交する方向に搬送することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項1】
基板を起立姿勢で搬送しながら該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置において、
a) 複数の基板処理室と、
b) 各基板処理室へ基板を搬送するための共通搬送室と、
を有し、少なくとも一つの基板処理室が前記共通搬送室の上方又は下方に設けられ、該基板処理室と共通搬送室の境界部に基板が通り抜け可能な基板通過口が設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
少なくとも一つの基板通過口がゲートバルブにより開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
起立姿勢の基板を共通搬送室内で水平方向に搬送可能であると共に、該基板を共通搬送室と基板処理室の間で上下方向に搬送可能な基板搬送手段を上記共通搬送室内に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
上記共通搬送室内において垂直姿勢の基板を該基板の厚さ方向と直交する方向に搬送することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−105081(P2009−105081A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272694(P2007−272694)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(591066018)株式会社エバテック (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(591066018)株式会社エバテック (13)
【Fターム(参考)】
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