説明

対物レンズの調整方法、対物レンズユニット、および表面検査装置

【課題】環境温度の変化に伴う誤検出を防止した対物レンズの調整方法を提供する。
【解決手段】結晶質の材料を用いたレンズを含む複数のレンズからなる対物レンズの調整方法であって、環境温度の変化によって対物レンズに生じる熱応力を求め、求めた熱応力から、当該熱応力により生じる対物レンズを通る光の状態変化を求める変化量算出ステップ(ステップS101〜S103)と、対物レンズを通る光の状態が環境温度の変化に拘わらず一定となるように、求めた光の状態変化を打ち消すような結晶質の材料を用いたレンズ(第9レンズ)の結晶方位を算出する調整量算出ステップ(ステップS104)と、算出した結晶方位が得られるように結晶質の材料を用いたレンズ(第9レンズ)を光軸回りに回転させる調整ステップ(ステップS105)とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハや液晶基板等の表面を検査する表面検査装置に関し、さらに詳しくは、このような表面検査装置に用いられる対物レンズおよびその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ(以下、ウェハと称する)の表面に形成されたパターンの良否を判定する方法として、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと称する)を用いた観察により断面形状を検査する方法が種々提案されている。SEMによる断面形状の検査は、被検査基板(試料)上のパターンに照射した電子線を当該パターンの断面方向に走査し、パターンからの反射電子や二次電子を検出、解析して、走査した部分の断面形状を求める方法で行われる。上記の走査をパターン上の何点かで行うことにより、パターン全体の形状の良否を判定する。
【0003】
SEMによる検査方法は、パターン上に電子線を照射して走査する作業を何回も繰り返し行うため、パターンの形状を求めるのに膨大な時間を要してしまう。また、観察倍率が高いため、上述のように、ウェハ上の全てのパターン形状を求めるのは困難であり、何点かをサンプリングしてウェハ全体の良否を判定する。その結果、サンプリングされたパターン以外の部分に欠陥があっても見逃されてしまう。また、レジストパターンでは、電子線を照射すると加速電圧によって電子線がレジストに吸収、チャージされてパターンの目減りが起こる。場合によっては、放電が発生してパターンが倒れてしまい、その後の工程で不都合が生じるため、加速電圧や観察倍率を色々と変えながら最適な観察条件を求める必要がある。それゆえ、さらに計測に時間を要してしまう。
【0004】
また、パターンの良否を判定するその他の方法として、スキャトロメータによるCD計測やオーバーレイのインライン検査技術等がある。分光スキャトロメータは、波長の関数として固定角度にて散乱光の特性を調べる。なお通常は、キセノン、重水素、またはキセノンアーク灯のようなハロゲン系光源である広帯域光源を使用する。また、固定角度は、垂直入射か斜め入射でよい。角度分解スキャトロメータは、入射角の関数として固定波長にて散乱光の特性を調べる。なお通常は、単一波長の光源としてレーザーを使用する。
【0005】
角度分解スキャトロメータでの問題は、1回に1つの波長しか検出しないことである。したがって、複数の波長があるスペクトルは、その波長を時間分割多重化して検出しなければならず、スペクトルの検出および処理に時間を要するため、データの全取得時間が増加してしまう。また、分光スキャトロメータでは、小さい格子を入射角の小さい広がりで照明しなければならないので、拡張光源からの光量が無駄になる。その結果、光検出器に達する光のレベルが低くなって、データの取得時間が長くなり、スループットにマイナスの影響を及ぼす。また、データの取得時間を短くすると、検査結果が安定しないことがある。
【0006】
このような事情に鑑みて、微細パターンの線幅変化を構造性複屈折量変化として検出する方法(以下、APM‐PER検査法と称する)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この方法では、微細パターンを直線偏光で集光照明すると、その反射光が微細パターンでの構造性複屈折によって楕円偏光となる。これにより、(偏光子と)クロスニコル状態の検光子を通過する光量がパターンの線幅に応じて変化するので、その変化量を瞳像観察により計測する。この方法であれば、線幅と階調値(瞳像における光量)との関係を図13に示すように検出することができる。すなわち、瞳像における階調値を計測して、図13に基づくデータテーブルを参照することで、微細パターンの線幅換算値を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/015973号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなAPM‐PER検査法による計測では、環境温度が変化すると、対物レンズを介して検光子を通過する光量が変化するため、検査精度が低下するおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、環境温度の変化に伴う誤検出を防止した対物レンズの調整方法、対物レンズユニット、および表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的達成のため、本発明に係る対物レンズの調整方法は、結晶質の材料を用いたレンズを含む複数のレンズからなる対物レンズの調整方法であって、環境温度の変化によって前記対物レンズに生じる熱応力を求め、前記求めた熱応力から、前記熱応力により生じる前記対物レンズを通る光の状態変化を求める変化量算出ステップと、前記対物レンズを通る光の状態が前記環境温度の変化に拘わらず一定となるように、前記求めた光の状態変化を打ち消すような前記結晶質の材料を用いたレンズの結晶方位を算出する調整量算出ステップと、前記算出した結晶方位が得られるように前記結晶質の材料を用いたレンズを光軸回りに回転させる調整ステップとを有している。
【0011】
なお、上述の調整方法において、前記光の状態は、前記対物レンズを通る偏光の位相であり、前記変化量算出ステップにおいて、前記複数のレンズのうち前記結晶質の材料を用いたレンズを除くレンズについてそれぞれ、前記熱応力により生じる前記レンズを通る偏光の位相変化量を個別に求めるとともに、前記個別に求めた位相変化量の合計を算出し、前記調整量算出ステップにおいて、前記対物レンズを通る偏光の位相が前記環境温度の変化に拘わらず一定となるように、前記算出した前記位相変化量の合計を打ち消すような前記結晶質の材料を用いたレンズの結晶方位を算出することが好ましい。
【0012】
なお、上述の調整方法において、前記光の状態は、前記対物レンズを通る偏光の偏光状態であり、前記変化量算出ステップにおいて、前記複数のレンズのうち前記結晶質の材料を用いたレンズを除くレンズについてそれぞれ、前記熱応力により生じる前記レンズを通る偏光の偏光状態変化量を個別に求めるとともに、前記個別に求めた偏光状態変化量の合計を算出し、前記調整量算出ステップにおいて、前記対物レンズを通る偏光の偏光状態が前記環境温度の変化に拘わらず一定となるように、前記算出した前記偏光状態変化量の合計を打ち消すような前記結晶質の材料を用いたレンズの結晶方位を算出するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る対物レンズユニットは、結晶質のレンズを含む複数のレンズからなる対物レンズと、前記対物レンズを保持する保持部とを備え、前記保持部は、前記結晶質のレンズを光軸中心に回転させる回転機構を有し、前記回転機構により前記結晶質のレンズを回転させることで、本発明に係る対物レンズの調整方法を用いた前記対物レンズの調整を行うようになっている。
【0014】
また、本発明に係る表面検査装置は、表面に所定の繰り返しパターンが形成された基板を支持するステージと、対物レンズおよび前記対物レンズを前記ステージと対向するように保持する保持部を有した対物レンズユニットと、前記ステージに支持された前記基板の表面に、落射照明により前記対物レンズを介して直線偏光を照射する照明部と、前記照明光が照射された前記基板の表面からの反射光を、前記対物レンズを介して受光し、前記対物レンズの瞳面もしくは瞳面と共役な面において、前記対物レンズに受光された前記反射光のうち前記直線偏光の偏光方向と略垂直な偏光成分を検出する検出部と、前記検出部に検出された前記偏光成分の情報に基づいて、前記繰り返しパターンにおける欠陥の有無を検査する検査部とを備え、前記対物レンズユニットが本発明に係る対物レンズユニットになっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境温度の変化に伴う誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る対物レンズの調整方法を示すフローチャートである。
【図2】第2実施形態に係る対物レンズの調整方法を示すフローチャートである。
【図3】表面検査装置の概要を示す図である。
【図4】(a)、(b)ともに瞳像の分割の例を示す図である。
【図5】ウェハの表面を示す図である。
【図6】対物レンズの詳細を示す図である。
【図7】第9レンズの温度変動によるリタデーション変化量の一例を示す図である。
【図8】第9レンズを除いたトータルのリタデーション変化量の一例を示す図である。
【図9】第9レンズを除いたトータルのリタデーション変化量に、第9レンズの温度変動によるリタデーション変化量を加えた結果の一例を示す図である。
【図10】第9レンズの温度変動による漏れ光変化量の一例を示す図である。
【図11】第9レンズを除いたトータルの漏れ光変化量の一例を示す図である。
【図12】第9レンズを除いたトータルの漏れ光変化量に、第9レンズの温度変動による漏れ光変化量を加えた結果の一例を示す図である。
【図13】線幅と階調値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る表面検査装置1を図3に示している。この表面検査装置1は、ウェハ5を支持するステージ10と、対物レンズユニット50およびハーフミラー12と、ステージ10に支持されたウェハ5の表面にハーフミラー12および対物レンズユニット50を介して照明光を照射する照明部20と、照明光が照射されてウェハ5の表面で反射した反射光を対物レンズユニット50およびハーフミラー12を介して検出する検出部30と、データ処理部45とを備えて構成される。
【0018】
対物レンズユニット50は、対物レンズ51と、この対物レンズ51をステージ10と対向するように保持する保持部52とを有して構成される。また、保持部52には、対物レンズ51の一部(後述の第9レンズG9)を光軸中心に回転させる回転機構53が内蔵されている。
【0019】
対物レンズ51は、図6に示すように、ウェハ5側から順に並んだ、像側に凸のメニスカスレンズである第1レンズG1と、像側に凸のメニスカスレンズである第2レンズG2と、凹レンズである第3レンズG3と、凸レンズである第4レンズG4と、凸レンズである第5レンズG5と、凹レンズである第6レンズG6と、凸レンズである第7レンズG7と、物体側(ウェハ5側)に凸のメニスカスレンズである第8レンズG8と、凸レンズである第9レンズG9と、凸レンズである第10レンズG10と、凹レンズである第11レンズG11と、凸レンズである第12レンズG12と、凹レンズである第13レンズG13とから構成される。なお、第1〜第13レンズG1〜G13のうち、第5レンズG5および第9レンズG9の材料は結晶質の蛍石であり、残りのレンズの材料は非晶質のガラス材となっている。また、図3において、対物レンズ51の記載は簡略化している。
【0020】
図3に示すように、照明部20は、光源側から順に、例えば白色LEDやハロゲンランプ等の光源21と、コンデンサレンズ22と、干渉フィルタを含む均一化照明ユニット23と、開口絞り24と、第1視野絞り25と、リレーレンズ26と、偏光子27とを有して構成され、光軸上にこの順に並んで配置されている。このような照明部20において、光源21から射出された光は、コンデンサレンズ22および均一化照明ユニット23を介して、開口絞り24および第1視野絞り25を通過し、リレーレンズ26によってコリメートされる。リレーレンズ26によりコリメートされた光は、偏光子27を透過し、ハーフミラー12で下方へ反射した後、対物レンズ51を介してステージ10上に載置されたウェハ5の表面に導かれる。
【0021】
なお、開口絞り24および第1視野絞り25はそれぞれ、開口部の形状(特に、光軸と開口部とを結ぶ直線方向の径の大きさ)および光軸と直交する面内での開口部の位置を変化させることが可能な構造となっている。そのため、開口絞り24の開口部の形状および位置を変化させると、ウェハ5の表面に照射される照明光の開口角が変化し、第1視野絞り25の開口部の形状および位置を変化させると、ウェハ5の表面における照明領域の大きさ(照明の範囲)を変化させることができる。
【0022】
また、開口絞り24および対物レンズ51の瞳面は、リレーレンズ26を挟んで、それぞれこのリレーレンズ26の焦点距離の略2倍の位置に配置されている。そのため、開口絞り24の開口部の像が対物レンズ51の瞳面上もしくはその近傍に結像され、さらに、対物レンズ51で集光されてウェハ5の表面に照射される。すなわち、開口絞り24と対物レンズ51の瞳面とは共役関係になっている。また、照明部20の光軸は、ハーフミラー12で検出部30の光軸と略一致するように配置され、ステージ10上のウェハ5を同軸落射照明するように構成されている。
【0023】
ここで、同軸落射照明の光軸をZ軸とし、Z軸と垂直な面内において当該Z軸を通り互いに直交する軸をそれぞれX軸およびY軸とすると、ステージ10は、X軸、Y軸、Z軸方向に移動可能で、かつZ軸と平行な軸の回りに回転可能に構成されている。また、偏光子27は、図3の紙面と垂直な方向(X軸方向)に振動する直線偏光を出射させるように設定されている。同軸落射照明によりウェハ5の表面に照射された照明光(直線偏光)は、ウェハ5の表面で反射して再び対物レンズ51に戻り、ハーフミラー12を透過して検出部30に入射することができる。
【0024】
検出部30は、ウェハ5側から順に、検光子31と、第1結像レンズ32と、ハーフプリズム33と、第2結像レンズ34と、第2視野絞り35と、2つの撮像素子41,42とを有して構成され、光軸上にこの順に並んで配置されている。このような検出部30において、ハーフミラー12を透過したウェハ5からの反射光は、検光子31を透過して第1結像レンズ32で集光され、ハーフプリズム33に入射する。ハーフプリズム33は、一部の光を透過させ、残りの光を反射させるものであり、このハーフプリズム33で反射した光は、第2撮像素子42に達してウェハ5の像が結像される。一方、ハーフプリズム33を透過した光は、さらに第2結像レンズ34で集光され、第2視野絞り35に達してウェハ5の像が結像されるとともに、第1撮像素子41に達して対物レンズ51の瞳像が結像される。
【0025】
第1撮像素子41は、対物レンズ51の瞳面の像(瞳像)を検出する位置、すなわち対物レンズ51の瞳面と共役な位置に配置されており、対物レンズ51の瞳面の像を撮像(検出)して、検出信号をデータ処理部45に出力する。第2撮像素子42は、ウェハ5の像を検出する位置、すなわちウェハ5の表面と共役な位置に配置されており、ウェハ5の像を撮像(検出)して、検出信号をデータ処理部45に出力する。なお、第2視野絞り35は、ウェハ5の表面と共役な位置に配置されており、光軸(Z軸)に対してX軸およびY軸方向に移動可能な開口形状を有している。第1撮像素子41および第2撮像素子42でそれぞれ検出された像は、データ処理部45を介して画像表示装置46で観察することができる。したがって、第2撮像素子42により検出された像を画像表示装置46で観察すると、ウェハ5上のどの位置に照明光が照射されているかを確認することができる。また、データ処理部45には、後述するデータテーブルが記憶された記憶部47が電気的に接続されている。
【0026】
また、偏光子27と検光子31とは、クロスニコルの条件を満足するように設定されている。このため、ウェハ5表面の繰り返しパターン6(図5を参照)で偏光主軸が回転しない限り、検出される光量がほぼ零となる。
【0027】
以上のように、本実施形態の表面検査装置1は、ウェハ5表面の微細な繰り返しパターン6(図5を参照)の線幅変化を構造性複屈折量変化として検出するように構成される。構造性複屈折を有するパターンからの反射光は、ウェハ5表面のパターン形状および下層構造に応じて、入射光(直線偏光)の振動面に平行な成分と垂直な成分との間で位相差と振幅が変化し、楕円偏光になる。このため、本実施形態の表面検査装置1では、偏光子27による直線偏光でウェハ5表面の微細な繰り返しパターン6を集光照明し、この微細な繰り返しパターン6で楕円偏光化した反射光がクロスニコル状態の検光子31を透過する光量の変化を、瞳像を用いて計測する。すなわち、ウェハ5の表面に照射された直線偏光は、楕円偏光となり反射して検光子31を透過し、第1撮像素子41の撮像面に結像される瞳像内に輝度および色相の変化が生じるので、これを計測してウェハ5の表面検査を行う。
【0028】
具体的な検査方法としては、例えば、本実施形態の表面検査装置1により正常なパターンを有するウェハ(基準となるウェハであって、以下「基準ウェハ」と称する)の瞳像(基準像)を撮像取得し、次に検査対象となるウェハ5の瞳像(検出像)を撮像取得して、データ処理部45で基準像と検出像との画素毎の輝度(階調値)の差を比較し、ある画素においてその差が所定の閾値を超えたときに欠陥があると判定するようにしてもよい。なお、比較する画素は、全画素でなくてもよく、光軸を通る所定の線上(放射方向)の画素のみを比較対象としてもよい。また、欠陥があると、反射光の対称性が崩れ、瞳像の光軸に対して対称な部分同士の輝度または色相に差が出てくるので、この差を検出することにより欠陥を検出することができる。
【0029】
また、本実施形態の表面検査装置1は、前述したように、開口絞り24の開口部の位置を変化させることにより、ウェハ5に照射される照明光の開口角を変化させることができる。すなわち、第1撮像素子41で撮像される瞳像において、光軸上が開口角0°に相当し、瞳像の周辺部に行くほどこの開口角が大きくなる。そのため、瞳像を、ウェハ5への入射角が45°である場合に対応する円の内側と外側の領域に分け、この各領域における基準像と検出像との差を検出して、その結果に基づいて欠陥の有無を検査するようにしてもよい。
【0030】
また例えば、図4(a)に示すように、瞳像60を、中心部の円状の領域Eと、その周りの領域を中心から放射状に広がる4つの領域A,B,C,Dとに分割して、これら5つの各領域A〜Eにおける基準像と検出像との差を検出して、その結果に基づいて欠陥を検出するようにしてもよい。あるいは、図4(b)に示すように、瞳像60を、中心部の円状の領域Iと、その周辺部分に中心部の領域Iを囲むように同心円状に配置される8つの円状の領域A〜Hとに分割して、これら9つの各領域A〜Iにおける基準像と検出像との差を検出して、その結果に基づいて欠陥を検出するようにしてもよい。
【0031】
なお、このような欠陥の検出方法として、対物レンズ51の瞳面の像の比較を用いているのは、単なるウェハ5の表面の画像では、繰り返しパターン6(図5を参照)のピッチが表面検査装置1の分解能以下となり、欠陥があっても光学的に検出できないからである。また、第2視野絞り35の開口部の位置や形状が可変に構成されているのは、ウェハ5における適当な位置および大きさの領域の情報を検出可能とするためである。さらに、開口絞り24により照明σ(照明のNA/対物レンズのNA)が可変とされており、適当な明るさでウェハ5を照明することができる。
【0032】
以上に説明したように、基準像と検出像との階調値を比較することにより検査対象のウェハ5の欠陥を検出することができるが、図13に示すような関係を有する階調値と線幅とを対応付けたデータテーブルを記憶部47に記憶しておけば、検出像の階調値からウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン6(図5を参照)の線幅を算出することができる。これにより、ウェハ5毎の線幅の数値管理を行うことができる。
【0033】
ところで、図5に示すように、ウェハ5の表面には、複数の半導体チップのための繰り返しパターン6が焼き付けられている。そのため、本実施形態の表面検査装置1によるウェハ5の検査は、ウェハ5表面の複数の検査点に対して行われる。例えば図5の場合、検査開始点P1から検査を開始し、順次隣接する検査点P2,P3,…で検査を行いながら検査終了点Peまで繰り返し検査が行われる。そのため、前述したように、検査開始前に基準ウェハを用いて当該基準ウェハの表面に形成された基準パターンの瞳像(基準像)を撮像取得し、次にウェハ5表面の各検査点において検出像を撮像取得して、各検査点での検出像と基準像とをそれぞれ比較するという手順をとると、その間に環境温度が変化した場合に、各像の階調値が変化して正確な検査ができないおそれがある。例えば、図13に示すようなデータテーブルを使用する場合、環境温度が基準温度から+1℃上昇すると、階調値と線幅との相関に約12階調の差が生じて、線幅換算で約0.8nmの誤差が発生してしまう。
【0034】
原因は、環境温度の変化によって対物レンズ51内のレンズ膨張により応力歪が発生することで、対物レンズ51内部を通過する光にリタデーション(retardation:位相差)が生じることにある。これにより、対物レンズ51に入射した直線偏光(照明光)は、ウェハ5に到達する前に楕円偏光に変化し、クロスニコル状態になっている検光子31を透過する光量が変化することになる。そのため、ウェハ5の検査開始時点と検査終了時点での温度差や、基準ウェハの撮像時の環境温度とウェハ5の検査時の環境温度の差等によって、検査の信頼性が低下してしまう。
【0035】
これに対し、本実施形態においては、対物レンズ51を通る光が環境温度変化による影響を受けないように、対物レンズ51の調整を行っている。そこで、第1実施形態に係る対物レンズ51の調整方法について、図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、対物レンズ51における熱応力発生量を、構造解析ソフトを用いたシミュレーションにより算出する(ステップS101)。具体的には、対物レンズ51について、構造解析ソフト(I‐DEAS等)を用いて有限要素モデルを作成し、各レンズG1〜G13の材料と保持部52の材料の熱膨張率の違いにより、例えば環境温度が1℃上昇したときに発生する各レンズG1〜G13の応力分布データを算出する。なお、対物レンズ51を保持する保持部52の材料は、本実施形態では真鍮である。
【0036】
対物レンズ51における熱応力発生量を算出すると、材料が蛍石であるレンズG5,G9の中から一つ(応力に対するリタデーション変化量の大きい蛍石レンズが好ましい)を選択し、ある瞳位置を通過する光線についての、例えば環境温度が1℃上昇したときに生じる蛍石レンズ(本実施形態では、第9レンズG9)の熱応力歪によるリタデーション変化量を、選択した蛍石レンズ(第9レンズG9)の結晶軸の方向を(光軸回りに)変えながら調べる(ステップS102)。なお、蛍石レンズの結晶軸の方向(結晶方位)は、対物レンズ51に入射する直線偏光の偏光方向を基準とした結晶軸の光軸回りの回転方向であり、光軸と垂直な蛍石の結晶面方位を(1,1,1)面に設定する。これにより、光軸中心に蛍石レンズを回転させると、120°の周期で蛍石レンズの結晶軸の方向が変化する。
【0037】
リタデーション変化量を求めるには、まず、ステップS101で算出した応力分布データ、各レンズG1〜G13の屈折率、および各レンズG1〜G13の光弾性定数(材料が蛍石の場合、ピエゾ光学係数)から、各レンズG1〜G13の逆誘電率テンソルをそれぞれ算出する。なお、通常の硝材を用いたレンズの場合、主応力をそれぞれσ1,σ2,σ3とし、主応力方向の電場が感じる屈折率をそれぞれn1,n2,n3とし、応力を受けていない状態での屈折率をn0とし、直接応力光定数をc1とし、横応力光定数をc2としたとき、応力による屈折率変化は、次の(1)式のように表わすことができる。
【0038】
【数1】

【0039】
σ3方向に光が進む場合、電場の向きはσ1方向とσ2方向となる。レンズにσ1方向の応力がかかった場合、次の(2)式のようになる。
【0040】
【数2】

【0041】
ここで、比例係数cは光弾性定数であり、一般にカタログ等に記載されているのはこの数字である。
【0042】
蛍石を用いたレンズの場合、ピエゾ光学係数をπijklとし、逆誘電率をβijとし、応力をTklとし、真空の誘電率をε0としたとき、応力と逆誘電率の微小変化との関係は、次の(3)式のように表わされる(この関係についての詳細は、小川智哉著、「結晶工学の基礎」(裳華房)等に記載されており、詳細な説明を省略する)。ここで、添え字i,jは電束密度ベクトルの成分を指定し、添え字k,lは応力テンソルの成分を指定する。
【0043】
【数3】

【0044】
なお、吸収がない材料であれば、逆誘電率βは、屈折率nを用いて次の(4)式のように表わされる。
【0045】
【数4】

【0046】
すなわち、逆誘電率テンソルは屈折率の応力方向ごとの違いを示している。
【0047】
次に、直線偏光が対物レンズ51に入射したときに、NA=0.58となる瞳上(45°方向)を通過する光の進相固有ベクトルと遅延固有ベクトルとの位相差(リタデーション)を、偏光方向による屈折率差を考慮した光線追跡シミュレーションを行うことで算出する。なお、偏光方向による屈折率差をΔnとし、レンズ内光路長をdとし、基準波長をλ0としたとき、リタデーションΔφは、次の(5)式のように表わされる。
【0048】
【数5】

【0049】
次に、選択した蛍石レンズである第9レンズG9のパラメータとして、(3)式を用いて求めた逆誘電率テンソルを入力することにより、第9レンズG9について環境温度が1℃上昇したときのリタデーションを、上述の光線追跡シミュレーションを行うことで算出する。
【0050】
そして、先に求めた通常のリタデーションと、第9レンズG9について環境温度が1℃上昇したときのリタデーションとの差分をとることで、第9レンズG9の温度変動によるリタデーション変化量を求める。なおこのとき、第9レンズG9を光軸回りに回転させながら、第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)が所定角度(例えば、1°や5°等)回転する毎のリタデーション変化量をそれぞれ求める。なお、このようにして求めたリタデーション変化量の一例を図7に示す。
【0051】
第9レンズG9の熱応力歪によるリタデーション変化量を求めると、環境温度が1℃上昇したときに生じる第9レンズG9以外の各レンズの熱応力歪によるリタデーション変化量をそれぞれ調べ、そのトータルの変化量を求める(ステップS103)。具体的には、第9レンズG9以外のレンズの温度変動によるリタデーション変化量をそれぞれ先のステップS102と同様に算出し、第9レンズG9以外のレンズの温度変動によるリタデーション変化量の合計を算出する。すなわち、第9レンズG9以外のレンズの温度変動によるリタデーション変化量を足し合わせることにより、第9レンズG9を除いた温度変動によるトータルのリタデーション変化量を得る。なおこのとき、第5レンズG5等の各レンズの回転は行わない。なお、このようにして求めたトータルのリタデーション変化量の一例を図8に示す。
【0052】
第9レンズG9以外の各レンズによるトータルのリタデーション変化量を求めると、第9レンズG9の結晶軸の方向を変えながら求めたリタデーション変化量のうち、ステップS103で求めたトータルのリタデーション変化量を打ち消すような第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)を算出する(ステップS104)。具体的には、第9レンズG9以外のレンズの温度変動によるリタデーション変化量の合計に、第9レンズG9の温度変動によるリタデーション変化量を加えた結果、リタデーション変化量が最も小さくなる第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)を算出する。
【0053】
本実施形態においては、第9レンズG9の結晶軸の方向を105°回転させると、加え合わせたトータルのリタデーション変化量が最も小さくなる。一方、第9レンズG9の結晶軸の方向を30°あるいは60°回転させると、トータルのリタデーション変化量が大きくなる。また、第9レンズG9の結晶軸の方向を15°あるいは75°回転させると、トータルのリタデーション変化量はあまり変化せず、リタデーション変化に対する第9レンズG9の寄与はなくなる。なお、第9レンズG9以外のレンズの温度変動によるリタデーション変化量の合計に、第9レンズG9の温度変動によるリタデーション変化量を加えた結果を、第9レンズG9の結晶軸の方向を30°、75°、および105°回転させた場合についてそれぞれ図9に示す。図9から、第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)により、温度変動によるリタデーション変化量をコントロールできることがわかる。
【0054】
そして、トータルのリタデーション変化量を打ち消すような第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)を求めると、回転機構53により、求めた結晶軸の方向(結晶方位)が得られるように第9レンズG9を光軸回りに回転させる(ステップS105)。本実施形態においては、第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)が105°となるように第9レンズG9を回転させる。なお、回転機構53は、電気モータ等により第9レンズG9を回転駆動する構成として、データ処理部45等からの駆動信号を受けて第9レンズG9を回転させるようにしてもよく、また、手動で第9レンズG9を回転させる構成であってもよい。
【0055】
この結果、本実施形態によれば、温度変動によるリタデーション変化量が少ないレンズ系を実現することができる。したがって、環境温度の変化に伴う誤検出を防止することができ、高精度な検査が可能となる。
【0056】
なお、リタデーション変化量は、クロスニコル状態の検光子31を透過する漏れ光量の変化にも対応している。この漏れ光量は、ストークスパラメータの変化量から算出することができる。X軸方向の偏光方向の光量をIxとし、Y軸方向の偏光方向の光量をIyとしたとき、ストークスパラメータS0は、次の(6)式のように表わされる。
【0057】
【数6】

【0058】
また、ストークスパラメータS1は、次の(7)式のように表わされる。
【0059】
【数7】

【0060】
偏光子27からの直線偏光がX軸方向に偏光した光であるとすると、クロスニコル状態の検光子31を透過する光はY軸方向に偏光した光のみである。すなわち、クロスニコル状態の検光子31を透過する漏れ光量は、Y軸方向の偏光方向の光量Iyとなり、次の(8)式のように表わされる。
【0061】
【数8】

【0062】
そのため、応力を加えたときの漏れ光量が応力を加えないときの漏れ光量に対してどれだけ変化したか、その変化率の大小を評価することでも、環境温度変化に起因する対物レンズ51を通る光の光量変化を第1実施形態の場合と同様に評価することができる。そこで、第2実施形態に係る対物レンズ51の調整方法について、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、対物レンズ51における熱応力発生量を、構造解析ソフトを用いたシミュレーションにより算出する(ステップS201)。すなわち、第1実施形態の場合と同様にして、各レンズG1〜G13の応力分布データを算出する。
【0063】
対物レンズ51における熱応力発生量を算出すると、応力に対する漏れ光変化量の大きい蛍石の第9レンズG9を選択し、ある瞳位置を通過する光線についての、環境温度が1℃上昇したときに生じる第9レンズG9の熱応力歪による漏れ光変化量を、第9レンズG9の結晶軸の方向を(光軸回りに)変えながら調べる(ステップS202)。漏れ光変化量を求めるには、まず、第1実施形態の場合と同様にして、各レンズG1〜G13の逆誘電率テンソルをそれぞれ算出する。
【0064】
次に、偏光方向がX軸方向である直線偏光が対物レンズ51に入射したときに、NA=0.58となる瞳上(45°方向)を通過する光のY軸方向の偏光成分、すなわちクロスニコル状態の検光子31を透過する漏れ光量を、偏光を考慮した光線追跡シミュレーションを行うことで算出する。次に、第9レンズG9のパラメータとして、先に求めた逆誘電率テンソルを入力することにより、第9レンズG9について環境温度が1℃上昇したときの漏れ光量を、上述の光線追跡シミュレーションを行うことで算出する。
【0065】
そして、先に求めた通常の漏れ光量と、第9レンズG9について環境温度が1℃上昇したときの漏れ光量との差分をとることで、第9レンズG9の温度変動による漏れ光変化量を求める。なおこのとき、第9レンズG9を光軸回りに回転させながら、第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)が所定角度(例えば、1°や5°等)回転する毎の漏れ光変化量をそれぞれ求める。なお、このようにして求めた漏れ光変化量の一例を図10に示す。
【0066】
第9レンズG9の熱応力歪による漏れ光変化量を求めると、環境温度が1℃上昇したときに生じる第9レンズG9以外の各レンズの熱応力歪による漏れ光変化量をそれぞれ調べ、そのトータルの変化量を求める(ステップS203)。具体的には、第9レンズG9以外のレンズの温度変動による漏れ光変化量をそれぞれ先のステップS202と同様に算出し、第9レンズG9以外のレンズの温度変動による漏れ光変化量の合計を算出する。すなわち、第9レンズG9以外のレンズの温度変動による漏れ光変化量を足し合わせることにより、第9レンズG9を除いた温度変動によるトータルの漏れ光変化量を得る。なおこのとき、第5レンズG5等の各レンズの回転は行わない。なお、このようにして求めたトータルの漏れ光変化量の一例を図11に示す。
【0067】
第9レンズG9以外の各レンズによるトータルの漏れ光変化量を求めると、第9レンズG9の結晶軸の方向を変えながら求めた漏れ光変化量のうち、ステップS203で求めたトータルの漏れ光変化量を打ち消すような第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)を算出する(ステップS204)。具体的には、第9レンズG9以外のレンズの温度変動による漏れ光変化量の合計に、第9レンズG9の温度変動による漏れ光変化量を加えた結果、漏れ光変化量が最も小さくなる第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)を算出する。
【0068】
本実施形態においては、第9レンズG9の結晶軸の方向を95°回転させると、加え合わせたトータルの漏れ光変化量が最も小さくなる。一方、第9レンズG9の結晶軸の方向を30°あるいは60°回転させると、トータルの漏れ光変化量が大きくなる。なお、第9レンズG9以外のレンズの温度変動による漏れ光変化量の合計に、第9レンズG9の温度変動による漏れ光変化量を加えた結果を、第9レンズG9の結晶軸の方向を30°、95°、および105°回転させた場合についてそれぞれ図12に示す。図12から、第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)により、温度変動によるリタデーション変化量をコントロールできることがわかる。
【0069】
そして、トータルの漏れ光変化量を打ち消すような第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)を求めると、回転機構53により、求めた結晶軸の方向(結晶方位)が得られるように第9レンズG9を光軸回りに回転させる(ステップS205)。本実施形態においては、第9レンズG9の結晶軸の方向(結晶方位)が95°となるように第9レンズG9を回転させる。なお、回転機構53は、電気モータ等により第9レンズG9を回転駆動する構成として、データ処理部45等からの駆動信号を受けて第9レンズG9を回転させるようにしてもよく、また、手動で第9レンズG9を回転させる構成であってもよい。
【0070】
この結果、本実施形態によれば、温度変動による漏れ光変化量が少ないレンズ系を実現することができる。したがって、環境温度の変化に伴う誤検出を防止することができ、高精度な検査が可能となる。
【0071】
なお、上述の各実施形態において、結晶軸の方向(結晶方位)を調整する蛍石レンズとして第9レンズG9を選択した理由は、第5レンズG5と比べて、環境温度変化に対するリタデーション変化量(および漏れ光変化量)が大きく、リタデーション変化量(および漏れ光量変化)のコントロールを簡便な演算で効果的に行えるからである。そこで、結晶軸の方向(結晶方位)を調整する蛍石レンズとして、第9レンズG9に加えて第5レンズG5を選択することで、演算は複雑になるが、リタデーション変化量(および漏れ光量変化)のコントロールの幅を広げることが可能になる。すなわち、回転機構53は、第9レンズG9に限らず、第9レンズG9および第5レンズG5をそれぞれ独立して回転させることが可能な構成であってもよい。
【0072】
また、上述の各実施形態において、環境温度の変化として1℃の上昇を例に演算を行っているが、これに限られるものではなく、例えば、2℃の上昇や3℃の上昇であってもよく、1℃の下降や2℃の下降であってもよい。また、環境温度の変化は、対物レンズ51を構成する各レンズG1〜G13で異なるように設定してもよい。
【0073】
また、上述の各実施形態において、ウェハ5の表面を検査しているが、これに限られるものではなく、例えば、ガラス基板の表面を検査することも可能である。
【0074】
また、上述の各実施形態において、表面検査装置1に取り付けられた対物レンズ51(対物レンズユニット50)を例に説明を行っているが、これに限られるものではなく、例えば偏光顕微鏡等、偏光を取り扱う光学機器に取り付けられる対物レンズにおいても適用可能である。
【0075】
また、上述の各実施形態において、結晶軸の方向(結晶方位)を調整するレンズとして蛍石のレンズを使用しているが、これに限られるものではなく、結晶質の材料を用いたレンズであればよい。また、対物レンズ51が13枚のレンズG1〜G13から構成されているが、これに限られるものではなく、装置によって例えば10枚や15枚等でもよく、結晶質の材料を用いたレンズを含む複数のレンズから構成されていればよい。
【符号の説明】
【0076】
1 表面検査装置
5 ウェハ 6 繰り返しパターン
10 ステージ 20 照明部
30 検出部 45 データ処理部(検査部)
50 対物レンズユニット 51 対物レンズ
52 保持部 53 回転機構
G1 第1レンズ G2 第2レンズ
G3 第3レンズ G4 第4レンズ
G5 第5レンズ G6 第6レンズ
G7 第7レンズ G8 第8レンズ
G9 第9レンズ G10 第10レンズ
G11 第11レンズ G12 第12レンズ
G13 第13レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質の材料を用いたレンズを含む複数のレンズからなる対物レンズの調整方法であって、
環境温度の変化によって前記対物レンズに生じる熱応力を求め、前記求めた熱応力から、前記熱応力により生じる前記対物レンズを通る光の状態変化を求める変化量算出ステップと、
前記対物レンズを通る光の状態が前記環境温度の変化に拘わらず一定となるように、前記求めた光の状態変化を打ち消すような前記結晶質の材料を用いたレンズの結晶方位を算出する調整量算出ステップと、
前記算出した結晶方位が得られるように前記結晶質の材料を用いたレンズを光軸回りに回転させる調整ステップとを有することを特徴とする対物レンズの調整方法。
【請求項2】
前記光の状態は、前記対物レンズを通る偏光の位相であり、
前記変化量算出ステップにおいて、前記複数のレンズのうち前記結晶質の材料を用いたレンズを除くレンズについてそれぞれ、前記熱応力により生じる前記レンズを通る偏光の位相変化量を個別に求めるとともに、前記個別に求めた位相変化量の合計を算出し、
前記調整量算出ステップにおいて、前記対物レンズを通る偏光の位相が前記環境温度の変化に拘わらず一定となるように、前記算出した前記位相変化量の合計を打ち消すような前記結晶質の材料を用いたレンズの結晶方位を算出することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズの調整方法。
【請求項3】
前記光の状態は、前記対物レンズを通る偏光の偏光状態であり、
前記変化量算出ステップにおいて、前記複数のレンズのうち前記結晶質の材料を用いたレンズを除くレンズについてそれぞれ、前記熱応力により生じる前記レンズを通る偏光の偏光状態変化量を個別に求めるとともに、前記個別に求めた偏光状態変化量の合計を算出し、
前記調整量算出ステップにおいて、前記対物レンズを通る偏光の偏光状態が前記環境温度の変化に拘わらず一定となるように、前記算出した前記偏光状態変化量の合計を打ち消すような前記結晶質の材料を用いたレンズの結晶方位を算出することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズの調整方法。
【請求項4】
結晶質のレンズを含む複数のレンズからなる対物レンズと、
前記対物レンズを保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記結晶質のレンズを光軸中心に回転させる回転機構を有し、
前記回転機構により前記結晶質のレンズを回転させることで、請求項1から3のいずれか一項に記載の対物レンズの調整方法を用いた前記対物レンズの調整を行うことを特徴とする対物レンズユニット。
【請求項5】
表面に所定の繰り返しパターンが形成された基板を支持するステージと、
対物レンズおよび前記対物レンズを前記ステージと対向するように保持する保持部を有した対物レンズユニットと、
前記ステージに支持された前記基板の表面に、落射照明により前記対物レンズを介して直線偏光を照射する照明部と、
前記照明光が照射された前記基板の表面からの反射光を、前記対物レンズを介して受光し、前記対物レンズの瞳面もしくは瞳面と共役な面において、前記対物レンズに受光された前記反射光のうち前記直線偏光の偏光方向と略垂直な偏光成分を検出する検出部と、
前記検出部に検出された前記偏光成分の情報に基づいて、前記繰り返しパターンにおける欠陥の有無を検査する検査部とを備え、
前記対物レンズユニットが請求項4に記載の対物レンズユニットであることを特徴とする表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−118269(P2011−118269A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277408(P2009−277408)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】