局所加熱装置
【課題】加熱対象となる基板以外に加熱の影響が及ぶことを防ぎつつ、基板に過剰なストレスを与えることなく、塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる、局所加熱装置を提供する。
【解決手段】基板1を搬送する搬送手段と、側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間11が形成され、上部開口端の全周が基板1の下面と接触して基板1を支持する基板支持部材4とを備える。また、基板支持部材4が基板1を支持した状態で上記空間11の内部に位置し、基板1の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して、非接触な状態で局所位置を加熱する非接触加熱手段3と、上記空間11と連通するように接続され、空間11に存在する空気を排出する排気手段とを備える。
【解決手段】基板1を搬送する搬送手段と、側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間11が形成され、上部開口端の全周が基板1の下面と接触して基板1を支持する基板支持部材4とを備える。また、基板支持部材4が基板1を支持した状態で上記空間11の内部に位置し、基板1の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して、非接触な状態で局所位置を加熱する非接触加熱手段3と、上記空間11と連通するように接続され、空間11に存在する空気を排出する排気手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に局所的に形成された塗布液または熱硬化性の部材を、加熱して乾燥させることにより、膜を形成させる局所加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体あるいは熱硬化性の部材を基板上に塗布し、乾燥させることで薄膜を形成する技術は、従来から多くの生産装置で利用されている。その中でも近年注目されているのは、基板上の任意の箇所に必要量だけ液体を塗布し、乾燥させることで膜を形成させるパターニング技術である。このような技術には、ディスペンサやインクジェットを用いた技術がある。これらは、従来のフォトリソグラフィによる、真空プロセスを用いたパターン生成方法に代わり、脱真空プロセスに使用可能な技術として注目が高まっている。
【0003】
たとえば、インクジェットによるパターニング技術を用いた生産装置としては、カラーフィルタパネルを形成する装置がある。この装置では、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色からなるインクをガラス基板上に形成されているRGB用画素領域内に着弾させる。そして、各画素を埋めることによって、カラーフィルタ(CF)が形成される。ここで、画素領域内に塗布されたインクは、オーブンなどによって基板全体が加熱されることによって、乾燥されて膜を形成する。
【0004】
このようなパターニング技術は、全面印刷技術としてのみならず、混色、夾雑物の混入または付着といった欠陥部を修復するための技術としても広く用いられている。たとえば、CFパネルにおいて、インクの混色が発生した欠陥画素や夾雑物が混入した欠陥画素の場合に、欠陥領域のインク層膜を除去し、除去部分に再度インクを塗布して加熱乾燥することで画素を再形成する技術がある。
【0005】
オーブンまたはホットプレートなどで基板全体を加熱することにより、塗布したインクを乾燥させる方法を開示した先行文献として特許文献1がある。基板全体を加熱する場合、専用の大型加熱装置や耐熱性に優れた搬送ロボットが必要である。また、加熱された基板を次工程に進めるために、冷却する場所や時間も必要となる。そのため、製造コストの上昇および製造時間が長くなるといった問題があった。
【0006】
特に、加熱して乾燥させる部位が少ない場合は、局所的に加熱して乾燥させる方が、製造コストおよび製造時間を削減することができる。そのため、インクを塗布した部分だけを、局所的に加熱して乾燥させる技術への期待は高い。
【0007】
局所的に加熱して乾燥させる方法としては、ホットプレートなどで使用される発熱体を基板に近接させて、乾燥させる方法が考えられる。それ以外にも、レーザーまたは赤外ランプ(赤外ヒータ)あるいはハロゲンヒータなどを用いて、基板を加熱する方法を開示した先行文献として、特許文献2、特許文献3または特許文献4がある。さらに、基板の上下両面から加熱する方法として、熱風を吹き付ける方法、あるいは、ヒータなどで加熱する方法を開示した先行文献として、特許文献5または特許文献6がある。
【0008】
基板を安定させて支持するために、基板の下面を支持する複数の支持部材の高さを変化させた加熱処理装置を開示した先行文献として、特許文献7がある。また、加熱空間となるチャンバを備える加熱容器を開示した先行文献として、特許文献8がある。
【0009】
カラーフィルタの修正方法を開示した先行文献として、特許文献9がある。特許文献9には、カラーフィルタ層の欠陥部に新たなカラーフィルタ材を埋め込み、加熱された部材をその欠陥部に上方から接近させて、カラーフィルタ材を硬化させる方法が開示されている。また、熱風によって半田の溶融を行なう半田溶融装置において、熱風が目的の箇所以外へ及ぶことをなくす方法を開示した参考文献として、特許文献10または特許文献11がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−160296号公報
【特許文献2】特開2004−95356号公報
【特許文献3】特開2004−165140号公報
【特許文献4】特開2006−224460号公報
【特許文献5】特開2000−315860号公報
【特許文献6】特開2005−223000号公報
【特許文献7】特開2006−237262号公報
【特許文献8】特表2005−530564号公報
【特許文献9】特許第4019475号公報
【特許文献10】特開平6−69641号公報
【特許文献11】特表2007−535120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載された、レーザーによる加熱方法では、基板上の加熱場所と非加熱場所との間の温度勾配が急であるため、基板にストレスが加わる。その結果、加熱場所近傍の機械的強度が弱くなるといった問題があった。一般的に、ランプを使用した方法では、加熱場所と非加熱場所との間の温度勾配はレーザーよりも緩やかになる。ただし、ランプ交換の頻度が高いため、その都度、装置を停止させなければならない。そのため、装置の操業度が低下し、生産効率が低下するといった問題がある。
【0012】
特許文献3、特許文献4または特許文献9に記載された、ヒータまたは高周波コイルによる加熱方式では、ヒータまたはコイルとインク滴との隙間を狭くしないと、インクが乾燥しない。一方、隙間を狭くしすぎると、溶媒蒸気が拡散しないため、高濃度溶媒雰囲気となり、乾燥が抑制されて、乾燥時間が長くなるといった問題がある。特許文献7に記載された、高さが異なる複数の支持部材により熱処理板上に基板を支持する加熱処理装置は、基板と熱処理板との距離を均一にするものではないため、基板の加熱温度が一定にならないといった問題がある。
【0013】
特許文献5および特許文献6に記載された加熱方法では、基板の上方および下方の両方に配置されるヒータユニットにより基板を加熱する際に、熱が基板の周辺に拡散してしまう。特許文献10および特許文献11に記載された、熱風を用いた半田溶融装置においては、加熱部周辺に熱風が拡がらないように加熱部を包囲する枠を設けているが、熱風を枠の開口部から上方に排出している。そのため、加熱装置の一部が部分的に高温になって熱変形を起こしたり、その高温部の熱がヒータユニットによる加熱に影響し、安定した加熱ができないという問題があった。
特許文献1に記載された、溶媒蒸気を制御する方法において、制御部材に加熱源を搭載する構成が考えられる。特許文献1に記載された方法では、乾燥速度を均一にするため、板材に複数の穴が空けられている。局所的に塗布した液滴を乾燥させるために、これを応用しようとすると、複数の穴と塗布部との相対位置により、乾燥速度が変動するといった問題がある。特許文献1では、これを解決する手段の記載がなく、応用は困難である。
【0014】
また、仮に、板材に加熱源を取り付け、板材が加熱器としての機能を持ったものとする。この場合、複数の穴があることにより、板材と基板との間に存在する気体(空気)を加熱できたとしても、あらゆる穴の近傍で、加熱された空気が上方に上がろうとする対流がおこる。その結果、加熱された空気が、塗布部のほうに流れるような流れが発生しにくくなり、乾燥効率が低下するといった問題もある。
【0015】
特許文献8に記載された加熱容器は、被加熱物を入れる容器としてチャンバを備え、食品の加熱に適した構造となっている。しかし、チャンバ内の気流などの条件を調整することが困難であるため、被加熱物の加熱温度を一定に保つことができない。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、加熱対象となる基板以外に加熱の影響が及ぶことを防ぎつつ、基板に過剰なストレスを与えることなく、塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる、局所加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る局所加熱装置は、基板を搬送する搬送手段と、側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間が形成され、上部開口端の全周が基板の下面と接触して基板を支持する基板支持部材とを備える。また、基板支持部材が基板を支持した状態で上記空間の内部に位置し、基板の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して、非接触な状態で局所位置を加熱する非接触加熱手段と、上記空間と連通するように接続され、空間に存在する空気を排出する排気手段とを備える。さらに、この局所加熱装置は、基板の下面に接触する基板支持部材の上面が所定の高さになるように調節する第1高さ調節手段と、非接触加熱手段を基板の局所位置に位置決めする移動手段とを備える。
【0018】
この局所加熱装置によると、加熱の際、基板の下面に接触して支持する基板支持部材の上面と非接触加熱手段とは、所定の距離になるように制御される。このため、基板を支持している加熱範囲の全体において基板の反りを低減し、基板の下面に対して熱風を噴射する距離を精度良く調節することができる。
【0019】
熱風を用いて加熱する場合、加熱対象と非接触加熱手段との距離がばらつくと加熱温度が安定しない。基板と非接触加熱手段との距離を調節することにより、基板の加熱温度を安定して管理することが可能となる。適した温度で乾燥されることにより、基板上の塗布液または熱硬化性の部材から形成される膜の高品質化を図ることが可能となる。
【0020】
また、加熱の際、非接触加熱手段は基板の下面と基板支持部材とに囲まれた空間の内部に位置している。この空間の内部には排気手段が接続されているため、非接触加熱手段から噴射された熱風は、基板の下面を加熱した後、局所加熱装置の外部に排出される。そのため、局所加熱装置において加熱に関与する加熱部以外の部分が熱風により加熱されて劣化するのを防ぐとともに、上記空間内の加熱雰囲気を調整することにより基板を安定して加熱することができる。
【0021】
局所加熱装置は、基板支持部材の上面から所定の距離に、非接触加熱手段を配置する第2高さ調節手段をさらに備えるようにしてもよい。この場合には、基板支持部材の上面に支持される基板と非接触加熱手段との距離を、基板上に形成される塗布液または熱硬化性の部材の種類に合わせて加熱に好適な距離に精度良く調節することができる。
【0022】
排気手段は、基板支持部材により支持された状態の基板の直下に接続されるようにしてもよい。この場合には、非接触加熱手段から噴射された熱風が基板の下面に誘導されるような気流を上記空間内に発生させることができるため、基板の加熱効率をあげることができる。
【0023】
非接触加熱手段の熱風の噴射量より排気手段の空気の排出量の方が、大きくなるように制御されるようにしてもよい。この場合には、上記空間の外部に熱風が流出して、装置の加熱部以外の部分が加熱されて劣化することを防ぐことができる。
【0024】
基板支持部材が、基板の下面に吸着して基板を支持する吸着部をさらに備えるようにしてもよい。この場合には、基板にねじれなどがあるために基板支持部材と基板との間に存在した隙間を、吸着部により基板を吸着することによりなくすことができる。このため、基板支持部材と基板との隙間から熱風が漏れることを防ぐことができる。
【0025】
局所加熱装置は、基板を加熱するとき以外は、基板搬送手段が配置される領域以外の待機領域において、非接触加熱手段および基板支持部材が待機するようにしてもよい。この場合には、乾燥工程を終えた基板に対して、不要な加熱を防ぐことができる。また、基板が搬出されて装置内に基板が無い状態において、装置自体を加熱してしまうことを防ぐことができる。
【0026】
上記待機領域において温度計測装置を含む温度校正用基板を用いて非接触加熱手段による基板加熱温度を調節するようにしてもよい。この場合には、加熱した温度校正用基板の温度計測結果に基づいて非接触加熱手段による基板加熱温度を調節することができるため、製品となる基板を所定の温度に精度良く加熱することができる。
【0027】
局所加熱装置は、基板を下面側から冷却する冷却装置を備えるようにしてもよい。この場合には、加熱処理後の基板の冷却速度をあげて、加熱乾燥工程のタクトタイムを短縮することができる。
【0028】
非接触加熱手段および冷却装置の基板の下面に対する距離をそれぞれ独立して制御することができるようにしてもよい。この場合には、非接触加熱手段と冷却装置を独立して上下移動させることが可能となる。そのため、加熱処理された基板から非接触加熱手段を遠ざけた後、冷却装置を基板に所定の距離まで接近させた状態で冷却を行なえるため、基板の冷却効率を高めて冷却時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、基板の下面に基板支持部材が接触して支持した状態で、基板の局所位置の下方に空間が形成され、この空間の内部に位置する非接触加熱手段および排気手段を調節して基板を加熱することにより、加熱対象となる基板以外に加熱の影響が及ぶことを防ぎつつ、空間内の加熱雰囲気を調整することができる。このように加熱することにより、基板に過剰なストレスを与えることなく、塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る局所加熱装置の平面模式図である。
【図2】図1のII−II線矢印方向から見た断面模式図である。
【図3】(A)は、基板が搬送ローラに支持されている状態を示す断面図、(B)は、基板が搬送ローラに偏って支持されている状態を示す断面図である。
【図4】基板を基板支持部材で支持した状態を示す断面模式図である。
【図5】基板を基板支持部材で支持しつつ、加熱している状態を示す断面模式図である。
【図6】同実施の形態に係る局所加熱装置との比較例として、非接触加熱手段を基板支持部材で囲まないで基板を加熱している状態を示す断面模式図である。
【図7】(A)は、1組の隣り合うローラ軸の間隔を広くした状態、(B)は、広くしていない状態を示す断面模式図である。
【図8】同実施の形態に係る局所加熱装置において、熱風ヒータを取囲むように配置される排気筒を通して、空間の内部の空気を排気する構成を示す断面模式図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【図10】反りの大きい基板を基板支持部材で支持して加熱している状態を示す断面模式図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【図12】局所加熱装置の加熱部の移動範囲を示す平面図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る、加熱部の待機領域を設けた局所加熱装置を示す平面模式図である。
【図14】本実施の形態に係る局所加熱装置において、基板の加熱処理を終えて、基板が搬出位置にある状態を示す平面模式図である。
【図15】本発明の実施の形態6に係る、待機領域に温度校正用基板を配置した局所加熱装置を示す平面模式図である。
【図16】温度校正用基板を加熱している状態を示す断面模式図である。
【図17】本発明の実施の形態7に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【図18】同実施の形態に係る局所加熱装置において、冷却装置により基板を冷却している状態を示す断面模式図である。
【図19】本発明の実施の形態8に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明に基づいた本発明の実施の形態における局所加熱装置について、図を参照しながら説明する。
【0032】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る局所加熱装置の平面模式図である。図2は、図1のII−II線矢印方向から見た断面模式図である。本実施の形態に係る局所加熱装置には、図1に示すように、基板1を搬送する搬送ローラ5が設けられている。搬送ローラ5は、ローラ軸8に所定の間隔で複数配置されている。搬送ローラ5が配置されたローラ軸8は、基板1の搬送方向に所定の間隔で複数設けられている。ローラ軸8が並ぶ方向をX方向とし、ローラ軸8と平行な方向をY方向とする。図1では、基板1を透明なものとして示している。
【0033】
基板1の搬送手段には、図示しないモータの回転力が搬送ローラ5に伝達され、搬送ローラ5自身が回転して基板1を搬送する方式、または、基板1をチャッキングする図示しない基板保持部材をモータにより駆動して搬送ローラ5上の基板1を搬送する方式などがある。基板保持部材は、基板1をエアシリンダなどによる押圧保持、または、真空吸着などの手段によりチャッキングする。
【0034】
1組の隣り合うローラ軸8の間には、基板1を加熱する加熱部2が移動することができるように、他の隣り合うローラ軸8同士の間隔より広い間隔が設けられている。図2に示すように、加熱部2には、非接触加熱手段3および基板支持部材4が備えられている。非接触加熱手段3として、たとえば、熱風を噴射する熱風ヒータを使用してもよい。上述のX方向およびY方向の両方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0035】
基板支持部材4は、内部にZ方向に貫通した空間を有している。この空間と接する基板支持部材4の内周に排気口6を有する排気筒7が設けられている。排気筒7には、排気管10が接続され、排気管10に図示しない排気ポンプが接続されている。排気ポンプにより排気筒7および排気管10の中に存在する空気が排気され、さらに、排気口6から基板支持部材4の内部の空間に存在する空気が排気される。
【0036】
図3(A)は、基板が搬送ローラに支持されている状態を示す断面図、(B)は、基板が搬送ローラに偏って支持されている状態を示す断面図である。図3(A)に示すように、隣り合う搬送ローラ5同士の間において、基板1は自重によるたわみが発生して高さがばらついている。また、搬送ローラ5上の基板1の高さは、搬送ローラ5の偏芯およびローラ軸8のアライメントなどの装置自体の精度によってもばらつきが発生する。
【0037】
図3(B)に示すように、基板端部周辺を加熱処理する場合など、基板1は搬送ローラ5によって片持ち状態で支持される。そのため、片持ち状態になっている部分の基板1の自重により、大きなたわみが発生する場合がある。
【0038】
熱風ヒータによって基板1を加熱する場合、基板1と熱風ヒータの噴出し口との距離が変化すると、加熱時の基板1の温度も変わる。基板1上の塗布液または熱硬化性の部材が乾燥されて形成される膜は、基板1の加熱時の温度により品質が異なるため、適した温度で加熱される必要がある。高品質の膜を基板1上に形成するためには、基板1の加熱される温度を膜形成に好適な温度で一定に保つことが必要である。そのためには、基板1と熱風ヒータの噴出し口との距離を一定に保った状態で、基板1を加熱するのが望ましい。
【0039】
そこで、加熱される位置の基板1の高さを一定に保つために、基板支持部材4を基板1の下方から基板1に接触させて基板1を支持する。図4は、基板を基板支持部材で支持した状態を示す断面模式図である。上記のように基板1の高さのばらつきの要因には、搬送ローラ5の基板1を支持する高さのずれによるものもある。
【0040】
よって、加熱位置の基板1の高さを確実に一定に保つためには、図4に示すように、搬送ローラ5が基板1と接触して支持する高さ、いわゆるパスライン9よりもわずかに高い位置で基板支持部材4の上面が基板1と接触して支持するようにすることが望ましい。そのため、基板1の下面に接触する基板支持部材4の上面が所定の高さになるように調節する第1高さ調節手段が設けられている。このようにすることにより、搬送ローラ5の基板1の支持高さのばらつきの影響を低減して、加熱位置において基板1を一定の高さで支持することができる。
【0041】
図5は、基板を基板支持部材で支持しつつ、加熱している状態を示す断面模式図である。図1,5に示すように、基板支持部材4は、側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間11が形成され、上部開口端の全周が基板1の下面と接触して基板1を支持する。熱風ヒータなどの非接触加熱手段3は、基板支持部材4が基板1を支持した状態で上記空間11の内部に位置し、基板1の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して非接触な状態で加熱する。
【0042】
基板1は、通常、0.7mm程度の厚さで形成され、熱容量が小さく加熱により昇温されやすい。このため、基板1の上面に形成された塗布液または熱硬化性の部材を基板1の下面から加熱しても、エネルギロスはほとんど無い。また、塗布液または熱硬化性の部材の乾燥品質的にも、基板1の下面から乾燥させることに問題はない。
【0043】
図5中の矢印で示すように、上記空間11の内部に配置される排気口6から排気筒7および排気管10を通じて、空間11に存在する空気が排出される。局所加熱装置には、加熱の際、基板支持部材4の上面から所定の距離に非接触加熱手段3を配置する、図示しない第2高さ調節手段が備えられるようにしてもよい。この場合には、基板1上に形成される塗布液または熱硬化性の部材の種類に合わせて、基板支持部材4に支持される基板1と非接触加熱手段3との距離を加熱に好適な距離に調節することができる。
【0044】
さらに局所加熱装置には、非接触加熱手段3を基板1の局所位置に位置決めする移動手段が備えられている。図5に示すように、非接触加熱手段3が基板支持部材4の内部の空間の略中心に位置するようにしてもよい。非接触加熱手段3と基板支持部材4とを含む加熱部2は一体で、Y方向を移動することができる。
【0045】
上記移動手段として、図示しない第1リニアアクチュエータが使用され、加熱部2がY方向に移動可能に構成されている。リニアアクチュエータは、リニアガイド手段とリニアモータまたはステッピングモータなどの駆動手段との組合せで構成され、リニアアクチュエータとして一般に市販されているものを使用することができる。上記第1高さ調節手段として、図示しない第2リニアアクチュエータが使用され、基板支持部材4がZ方向に移動できるように構成されている。上記第2高さ調節手段を備える場合には、図示しない第3リニアアクチュエータが使用され、非接触加熱手段3がZ方向に移動できるように構成される。
【0046】
基板搬送手段、第1リニアアクチュエータ、第2リニアアクチュエータおよび第3リニアアクテュエータは、それぞれ移動量を検出するエンコーダを有している。よって、基板1に対して加熱部2を相対的に、X方向、Y方向およびZ方向において正確に位置決め制御することが可能になっている。
【0047】
以下、本実施の形態に係る局所加熱装置において、基板1上の局所位置を加熱する方法を説明する。局所加熱装置に基板1が投入される以前に、塗布液または熱硬化性の部材は、塗布液または熱硬化性の部材の吐出装置により基板1上に形成されているものとする。その形成面積および中心位置座標などの情報は既知であるものとして説明する。
【0048】
本実施の形態に係る局所加熱装置では、基板1の端面を検出する図示しない位置センサを搭載しており、基板1が投入されると基板1の端面を検出して、第1アクテュエータの制御における座標のゼロ点を認識する。基板1の上記中心位置座標を基に、基板搬送手段による基板1のX方向への必要送り量、および、第1リニアアクテュエータによる加熱部2のY方向への必要移動量を算出する。この算出結果にしたがって、基板1および非接触加熱手段3を含む加熱部2を互いに移動させることによって、加熱対象となる局所位置に非接触加熱手段3を位置決めする。
【0049】
非接触加熱手段3の位置決めが完了した後、基板支持部材4を上昇させて基板1の下面に接触させる。この接触した状態を感知する端子を基板支持部材4の上面付近に設け、接触した位置を第2リニアアクテュエータの制御における座標のゼロ点として認識させる。その後、加熱位置近傍の基板1の高さを所定の高さまで上昇させるように、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4が移動させられる。また、基板支持部材4が基板1を支持する高さをあらかじめ設定しておき、この設定高さまで基板支持部材4を第2リニアアクテュエータにより移動させるようにしてもよい。
【0050】
局所加熱装置が第2高さ調節手段を備える場合には、基板1を基板支持部材4が支持した状態で、基板1の下面に対して所定の距離に熱風ヒータの噴出し口が配置されるように、第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータがZ方向に移動させられる。
【0051】
このように、加熱の際、基板1の下面に接触して支持する基板支持部材4の上面と非接触加熱手段3とは、所定の距離になるように制御される。このため、基板1を支持している加熱範囲の全体において基板1の反りを低減し、基板1の下面に対して熱風を噴射する距離を精度良く調節することができる。よって、加熱の際、基板1と非接触加熱手段3との距離が近すぎて基板1に過剰なストレスを与えることを防ぎつつ、基板1上の塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる。なお、本実施の形態においては、基板支持部材4自身が加熱主体となる加熱は行なわない。
【0052】
図6は、本実施の形態に係る局所加熱装置との比較例として、非接触加熱手段を基板支持部材で囲まないで基板を加熱している状態を示す断面模式図である。図6に示すように、基板1は搬送ローラ5上に支持され、非接触加熱手段3である熱風ヒータにより加熱されている。加熱時の熱風ヒータが隣り合うローラ軸8同士の略中間の位置に配置されるように、基板1が搬送ローラ5により搬送される。
【0053】
熱風ヒータから噴射されて基板1を加熱した熱風は、外気よりも温度が高いため、外気より比重が軽く上方に拡散しやすい。しかし、基板1により上方を遮断されているため、基板1の下面に沿って拡散していく。そのため、基板1の下面近傍に存在する搬送ローラ5に熱風の熱が伝達してしまう。
【0054】
搬送ローラ5は基板1と接触するため、基板搬送時に基板1にキズをつけないために超高分子ポリエチレンなどの硬度の低い樹脂材料で形成されている。しかし、熱風の熱の影響を繰り返し受けると、耐熱性を有さない樹脂材料では劣化して変質を起こしてしまう。このため、耐熱性を有するポリイミド樹脂などを用いて搬送ローラ5を形成する必要性が生じるが、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂材料は高価であるため、搬送ローラ5を耐熱性樹脂材料で形成することは装置コストの上昇を招いてしまい好ましくない。
【0055】
熱風ヒータから噴射される熱風の熱による影響は、熱風ヒータとの距離が近いほど顕著に現れる。基板1の加熱温度は、乾燥させる塗布液または熱硬化性の部材の種類によって異なるが、300℃に近い温度となる場合もある。この場合、熱風ヒータから噴射され基板1を加熱した後の熱風は、依然300℃に近い温度を有している。
【0056】
そのため、加熱時の熱風ヒータが位置する加熱位置から搬送ローラ5を遠ざける方法も考えられる。図7(A)は、1組の隣り合うローラ軸の間隔を広くした状態、(B)は、広くしていない状態を示す断面模式図である。図7(A),(B)では、基板1が図中の右から左に搬送されている状態を示している。
【0057】
図7(A)に示すように、熱風ヒータと搬送ローラ5との距離を遠くするために、1組の隣り合うローラ軸8同士の間隔L1は広くされている。この場合、搬送ローラ5上を基板1が搬送され、間隔L1を越えて次の搬送ローラ5に乗り移る際に、基板1の片持ち状態となる部分が長くなって大きなたわみが発生する。図7(B)に示すように、ローラ軸8同士の間隔L2を広くしていない場合の基板1では、間隔L2を越えて次の搬送ローラ5に乗り移る際に発生するたわみは小さい。
【0058】
基板1が次の搬送ローラ5に乗り移る際、基板1の先端と搬送ローラ5との接触がスムーズに行なわれることが望ましい。具体的には、基板1の先端との接触位置が、搬送ローラ5の上端に近いほど接触時に基板1に加わる負荷が小さくなる。逆に、基板1の先端との接触位置が、搬送ローラ5の上端から離れるにつれて、次の搬送ローラ5に乗り移る時の基板1にかかる負荷が大きくなる。搬送速度が速い場合には、基板1にかかる負荷が衝撃力となるため、基板1が割れてしまう可能性もある。よって、熱風ヒータと搬送ローラ5との距離を遠くすることによって、熱風の熱影響への対策とすることは好ましくない。
【0059】
熱風の熱影響は搬送ローラ5のみではなく、装置本体にも及ぶ。たとえば、非接触加熱手段駆動用ガイド軸の軸受け部には、潤滑用グリスが使用されている。この軸受け部が加熱されて高温になると、グリスの粘度が低下して軸受け部からグリスが流出する場合がある。この場合、潤滑性を失った軸受け部が焼付けを起こしたり、流出したグリスが基板1に付着してしまう可能性がある。また、熱風の熱影響により、基板搬送手段または非接触加熱手段駆動用ガイド軸の固定部などにひずみが生じ、基板1および非接触加熱手段を精度良く位置決めすることができなくなる可能性もある。
【0060】
このような、熱風ヒータから噴射される熱風の熱影響を低減させる、本実施の形態に係る局所加熱装置の作用を説明する。図5に示すように、基板1および加熱部2の配置が完了した後、熱風ヒータから熱風が噴射される。このとき、熱風ヒータは基板支持部材4の上面を基板1で蓋をしたような空間11の内部に位置している。熱風ヒータから噴射され、基板1を加熱した後の熱風の温度は、300℃に近い場合もある。この温度の高い空気は、外気より高温で比重が外気より軽いため、空間11の上方に溜まりやすい。
【0061】
このように、高温の空気を空間11に滞留させることにより、熱風が周囲に直接拡散するのを防ぐことができる。上述のように、空間11と連通するように排気手段が接続されている。排気手段は、基板支持部材4の内周に設けられた排気口6と、この排気口6から空気を基板支持部材4の外部に排気する流路となる排気筒7を含む。さらに、排気手段は、排気筒7に接続される排気管10、および排気管10に繋がれている図示しない排気ポンプまたは排気ダクトを含む。
【0062】
排気筒7には高温の空気が流入するため、排気筒7は耐熱性を有する金属製のパイプで形成されていることが望ましい。排気される空気は、排気筒7内を通過している間に温度が下がるため、排気筒7に接続される排気管10には、金属より低い耐熱性を有するテフロン(登録商標)チューブなどを使用することができる。排気ポンプにより負圧を発生させることにより、空間11内の高温の空気は、排気口6から排気筒7および排気管10内を通過して外部に排出される。
【0063】
図5に示すように、空間11は下方が開放されているが、高温の空気は空間11の上方から満たされていくため、空間11の体積一杯になるまで、空間11の下方から高温の空気は漏れにくい。さらに、空間11に排気手段を接続して高温の空気を外部に排出するため、空間11の下方からの高温の空気の漏れをより抑えることができる。仮に、基板支持部材4の下方から高温の空気がわずかに拡散したとしても、熱風ヒータから直接拡散するのに比べて、搬送ローラ5に到達するまでの距離が大きいため、与える熱影響は小さくなる。
【0064】
本実施の形態においては、空間11の下方が開放された構造としているが、基板支持部材4の下方を熱風ヒータが位置する部分を除いて、図示しない密閉部材で覆ってもよい。このようにすることにより、空間11は、基板1、基板支持部材4、密閉部材および熱風ヒータによって、略密閉状態とされる。よって、空間11から高温の空気が拡散することをより確実に防ぐことができる。
【0065】
図8は、本実施の形態に係る局所加熱装置において、熱風ヒータを取囲むように配置される排気筒を通して、空間の内部の空気を排気する構成を示す断面模式図である。図8に示すように、排気筒7は上方に排気口6となる開口部を有し、下方は閉口部を有して、その閉口部に排気管10が接続されている。このような構成によっても、空間11の内部の空気を排気することができる。
【0066】
さらに、排気筒7の外周を基板支持部材4の内周に接近するように設け、空間11の下方における開放面積を減じる構成にしてもよい。このような構成にした場合には、空間11を略閉鎖空間とすることができ、高温の空気が外部に拡散するのを低減することができる。
【0067】
本実施の形態に係る局所加熱装置は、上記の構成により加熱部の加熱の影響が装置本体に及ぶのを防ぐことにより、装置精度を維持して基板を精度良く加熱することができる。また、基板の局所位置の下方に形成される空間内の加熱雰囲気を、非接触加熱手段および排気手段を調節することにより調整することができ、基板を安定して加熱することができる。このように、加熱することにより、基板に過剰なストレスを与えることなく、基板上の塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる。
【0068】
実施の形態2
図9は、本発明の実施の形態2に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。図9に示すように、本実施の形態に係る局所加熱装置では、排気筒7の排気口6が基板支持部材4により支持された状態の基板1の直下に配置されている。
【0069】
非接触加熱手段3である熱風ヒータから噴射された熱風は、基板1を加熱した後、空間11の内部で滞留する。空間11の内部の空気は、空間11の内部に接続される排気手段により外部へ排出される。熱風ヒータから噴射された熱風が排気口6にたどり着くまでの間の経路は、排気口6の配置により変化する。
【0070】
排気口6を基板1から大きく下方に離れた位置に形成した場合、排気筒7には空間11外の空気が多量に流入して、空間11内の高温の空気を十分に排気できないことがある。その結果、排気できなかった高温の空気が空間11から外部に漏れて、装置本体に熱影響が及ぶ可能性がある。また、排気口6を熱風ヒータの噴出し口よりも下方に設けると、空間11内における熱風の経路が、熱風ヒータから基板1を経由せずに直接排気口6へ向かうように形成され、基板1の加熱効率が低下するおそれがある。
【0071】
そこで、本実施の形態に係る局所加熱装置では、図9に示すように、排気手段が、基板支持部材4により支持された状態の基板1の直下に接続されるようにしている。このようにすると、熱風ヒータから噴射された熱風は、基板1の下面に到達した後、基板1の下面に沿って拡散し、排気口6から排気筒7に流入する。よって、空間11の下方から外部に漏れる高温の空気の量を減少させることができる。また、熱風ヒータから噴射された熱風が基板1の下面に誘導されるような気流を空間11内に発生させることができるため、基板1の加熱が確実に行なわれ、基板1の加熱効率の低下を防ぐことができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
実施の形態3
非接触加熱手段である熱風ヒータを動作させるには、動力となる電力および加熱媒体となるガスをヒータの発熱体に供給する必要がある。一般に、加熱媒体となるガスとして窒素またはドライエアなどが用いられる。熱風ヒータのガス供給口に供給される低温のガスは、高温に発熱した発熱体により加熱および昇温されて、ガス噴出し口から熱風として噴射される。噴射される熱風の温度は、熱風ヒータの内部に設けられた熱電対によりモニターされ、所定温度となるように発熱体への電力供給量が調整される。
【0073】
図5に示すように、基板1を加熱する際、熱風ヒータの熱風の噴射量Q1が排気手段による排出量Q2より大きい場合、排気能力が不足して、空間11の下方から高温の空気が漏れ出してしまう。
【0074】
そこで、熱風ヒータの熱風の噴射量Q1より排気手段による排出量Q2が大きくなるように制御する。このように設定することにより、空間11内の空気を排気手段により確実に外部に排出することができる。このようにすることにより、装置の加熱部以外の部分が加熱されて劣化することを防ぎ、装置精度を維持して基板を精度良く加熱することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
実施の形態4
図10は、反りの大きい基板を基板支持部材で支持して加熱している状態を示す断面模式図である。基板1に自重によるたわみ、または、軽度の反りが発生していても、基板支持部材4により基板1を支持する際には、基板支持部材4の上面と基板1の下面とは略全面で接触する。しかし、大きい反りまたはねじれが発生している基板1を基板支持部材4で支持する場合、その反りまたはねじれの影響で基板支持部材4の上面と基板1の下面とが一部しか接触しないことがある。この状態で加熱を行なうと、基板1と基板支持部材4の間の隙間から高温の空気が漏れ出し、搬送ローラ5などの装置本体に熱影響を及ぼしてしまう。
【0076】
図11は、本発明の実施の形態4に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。図11に示すように、本実施の形態に係る局所加熱装置は、基板支持部材4が基板1の下面に吸着して支持する吸着部を備えている。吸着部は、基板支持部材4の上面に形成される少なくとも1つ以上の吸着孔12、この吸着孔12に接続される吸着用配管13、および、吸着用配管13に繋がれる図示しないポンプなどで構成される。
【0077】
基板支持部材4の上面を基板1の下面に接触させた状態で、ポンプなどにより吸着用配管13内を真空引きすることにより、吸着孔12に基板1を吸着させる。このようにして、基板1を基板支持部材4に吸着させることにより、基板1と基板支持部材4とを隙間無く密着させることができる。そのため、空間11の上方から高温の空気が漏れ出すことを防ぐことができる。
【0078】
加熱処理終了後、基板1の吸着を解除するには、吸着用配管13に圧縮空気または窒素を供給することにより、容易に吸着解除することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
実施の形態5
図12は、局所加熱装置の加熱部の移動範囲を示す平面図である。上述のように、基板1は、基板搬送手段によりX方向に搬送可能とされている。加熱部2は、第1リニアアクチュエータによってY方向に搬送可能とされている。図12に示すように、通常、加熱部2は基板1のY方向の幅に相当する距離だけ移動できればよい。
【0080】
しかし、本実施の形態に係る局所加熱装置では、非接触加熱手段3として熱風ヒータを用いている。熱風ヒータは、電力を供給されてから、基板1を加熱可能な状態に昇温されるまで時間がかかる。そのため、基板1が局所加熱装置に投入されてから熱風ヒータに電力を供給したのでは、熱風ヒータの温度が上昇するまでの時間が待機時間となり、加熱処理終了までの処理時間が長くなる。
【0081】
そこで、基板1の加熱処理時間を短縮するために、熱風ヒータに常時電力を供給しておくことが有効となる。本発明の実施の形態5に係る局所加熱装置は、常時、熱風ヒータから熱風を噴射させた状態で、基板1を加熱処理するものである。
【0082】
加熱部2の移動範囲が基板1の幅相当に限られた状態で、熱風ヒータが常時熱風を噴射している場合、基板1が局所加熱装置に投入されてから熱風ヒータが基板1の局所位置に位置決めされるまでの間、熱風ヒータは基板1の下面から下方に離れた位置で待機している。この待機中に噴射された熱風は基板1の下面の下方から上昇して、基板1の下面に沿って拡散する。そのため、基板1上の加熱対象ではない部位が加熱されてしまう。
【0083】
また、加熱処理後の基板1を局所加熱装置から搬出する際も同様に、基板1上の加熱対象ではない部位を加熱してしまうことになる。加熱されて温度が高い状態で基板1が局所加熱装置から搬出された場合、基板1を次工程に送る基板搬送手段、または、次工程の基板処理プロセス自身に悪影響を与える危険性がある。また、基板1が局所加熱装置に投入されていない待機時においても、基板搬送手段などの装置本体に熱風の熱影響が及んで、装置精度の低下を招く可能性がある。
【0084】
図13は、本発明の実施の形態5に係る、加熱部の待機領域を設けた局所加熱装置を示す平面模式図である。図13に示すように、本発明の実施の形態5に係る局所加熱装置では、基板1のY方向の幅に相当する範囲以外に、加熱部2が移動可能とされている。さらに、局所加熱装置には、基板搬送手段が配置される領域以外の待機領域14が設けられている。基板1を加熱するとき以外は、非接触加熱手段3である熱風ヒータおよび基板支持部材4を含む加熱部2が、待機領域14において待機するようにされている。
【0085】
待機領域14は、基板搬送手段が配置される領域以外に設けられているため、加熱部2が待機領域14で待機中は、搬送ローラ5およびローラ軸8などの基板搬送手段が加熱されることがない。基板1が局所加熱装置に投入されて、基板1の局所位置に非接触加熱手段3が位置決めされるまでの間は、基板1上の加熱対象ではない部位が加熱されてしまうが、常に基板1の下方に加熱部2が待機している場合に比べて、基板1の不要な加熱を低減することができる。
【0086】
図14は、本実施の形態に係る局所加熱装置において、基板の加熱処理を終えて、基板が搬出位置にある状態を示す平面模式図である。図14に示すように、加熱処理後の基板1を局所加熱装置から搬出する際は、基板支持部材4を第2リニアアクテュエータにより基板1の下方に移動させた後、第1リニアアクテュエータにより加熱部2を待機領域14へ移動させる。その後、基板搬送手段により基板搬出位置まで基板1を搬送し、さらに局所加熱装置外へ搬出する。
【0087】
一方、装置内に基板1が投入される場合には、上記の基板搬出時とは逆の動作が行なわれる。よって、局所加熱装置をこのような構成にすることにより、基板の投入から搬出まで基板1を不要に加熱することがなく、基板1を次工程に送る基板搬送手段、または、次工程の基板処理プロセス自身に悪影響を与える危険性を低減することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
実施の形態6
図15は、本発明の実施の形態6に係る、待機領域に温度校正用基板を配置した局所加熱装置を示す平面模式図である。図16は、温度校正用基板を加熱している状態を示す断面模式図である。本発明の実施の形態6においても、実施の形態5と同様に局所加熱装置に待機領域を設けている。図15に示すように、この待機領域に、温度校正用基板15を配置する。
【0089】
図16に示すように、温度校正用基板15は、製品となる基板1と同一の材質および板厚で形成され、温度計測装置として熱電対16が埋め込まれている。また、温度校正用基板15は、搬送ローラ5上の基板1と略同一の高さで、X,Y,Zの各方向に若干の自由度を持って図示しない保持部材により保持されている。
【0090】
以下、温度校正用基板15を用いて非接触加熱手段3の調節する方法を説明する。待機領域に加熱部2を移動させた後、温度校正用基板15の熱電対16が埋め込まれている位置に、非接触加熱手段3である熱風ヒータが位置決めされる。第1高さ調節手段として第2リニアアクチュエータにより基板支持部材4を温度校正用基板15の下面に接触するまで移動させる。この接触した位置を第2リニアアクテュエータの制御における座標のゼロ点として認識させる。その後、温度校正用基板15の高さを所定の高さまで上昇させるように、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4が移動させられる。
【0091】
温度校正用基板15を基板支持部材4が支持した状態で、温度校正用基板15の下面に対して所定の距離に熱風ヒータの噴出し口が配置されるように、第2高さ調節手段として第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータが移動させられる。
【0092】
このように、温度校正用基板15を加熱する際、温度校正用基板15の下面に接触して支持する基板支持部材4の上面と非接触加熱手段3との距離は、製品となる基板1を加熱するときと同じ距離になるように制御される。この状態で、熱風ヒータにより温度校正用基板15は加熱される。温度校正用基板15の温度は、熱電対16により測定される。
【0093】
この測定された温度は、製品となる基板1と略同一の条件により加熱処理した時の基板温度である。よって、温度校正用基板15を用いて測定された温度は、製品となる基板1を加熱処理した時の基板温度とみなすことができる。
【0094】
ここで、非接触加熱手段3の基板の加熱設定温度がTc1、温度校正用基板15により測定された基板温度がTc2とする。加熱設定温度Tc1は、基板1上に形成されている塗布液または熱硬化性の部材を乾燥させるのに好適な温度である。そのため、実際の基板温度Tc2が設定温度Tc1になるように、手動または自動で熱風ヒータの設定温度を校正する。この校正後の設定温度に熱風ヒータを設定して、基板1を加熱することにより、局所位置の基板温度を目標温度に管理することができる。
【0095】
このように、加熱時の局所加熱位置の基板温度を目標温度に管理することにより、加熱処理後の塗布液または熱硬化性の部材により形成される膜の高品質化を図ることができる。また、熱風ヒータの設定温度の校正は、装置に基板1が投入されるまでの待機時間に行なわれるため、基板1の加熱乾燥工程のタクトタイムは、実施の形態5の局所加熱装置と変わらない。本実施の形態においては、温度校正用基板15として熱電対16を埋め込んだ基板を用いたが、温度校正用基板15の基板温度を放射温度計を用いて非接触で測定するようにしてもよい。他の構成については、実施の形態1,5と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
実施の形態7
図17は、本発明の実施の形態7に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。図17に示すように、本発明の実施の形態7に係る局所加熱装置は、基板1を下面側から冷却する冷却装置を備えている。
【0097】
熱風ヒータにより加熱処理された基板1は、300℃に近い温度まで上昇することがある。加熱処理後の基板1は、基板搬送手段により搬出位置まで搬送される。基板1を支持する搬送ローラ5は、基板1にキズをつけないように硬度の低い樹脂材料が使用されている。加熱処理後の高温の基板1が搬送ローラ5上を移動または停止するとき、搬送ローラ5の基板1と接触する箇所に熱影響が及ぶ。この熱影響により、搬送ローラ5が変形、または、搬送ローラ5が変質して基板1に搬送ローラ5の軌跡が付着する可能性がある。また、加熱されて温度が高い状態で基板1が装置から搬出された場合、基板1を次工程に送る基板搬送手段、または、次工程の基板処理プロセス自身に悪影響を与える危険性がある。
【0098】
基板1の厚さは0.7mm程度で単位面積当たりの熱容量は小さいが、300℃に近い温度まで加熱されると、基板温度が自然冷却により搬出に適した40℃以下まで下がるまで長時間を要する。そのため、基板1の加熱乾燥工程のタクトタイムを短縮するためには、加熱処理後の基板1を短時間で冷却することが必要である。
【0099】
そこで、本実施の形態に係る局所加熱装置では、図17に示すように、空間11の内部に、基板1を下面側から冷却する冷却装置が備えられている。冷却装置は、たとえば、エアノズル17、エアノズル17に接続される配管および配管に繋がれるコンプレッサを含む。冷却ガスとして、コンプレッサにより圧縮される圧縮空気または窒素を用いることができる。図17に示すように、空間11の中央に熱風ヒータを、その周囲にエアノズル17を配置してもよい。
【0100】
図18は、本実施の形態に係る局所加熱装置において、冷却装置により基板を冷却している状態を示す断面模式図である。図18に示すように、基板1の加熱が終了すると、基板支持部材4は第1高さ調節手段である第2リニアアクテュエータにより基板1の下方に離れて配置される。同様に、非接触加熱手段3は第2高さ調節手段である第3リニアアクテュエータにより基板1の下方に離れて配置される。
【0101】
その後、エアノズル17の先端から冷却ガスが加熱された基板1の局所位置に噴射される。基板1の下面に到達した冷却ガスは、基板1から熱を奪い、基板1を急速に冷却する。冷却中も熱風ヒータからは熱風が噴射されているため、冷却ガスの流量Q3は、熱風ヒータの噴射量Q1よりかなり多くなるように設定される。エアノズル17は、基板1の下方に離れて配置されているため、冷却ガスの噴射圧力は高めに設定される。このように設定することによって、冷却中も熱風ヒータから熱風が噴射されていても基板1の冷却を十分行なうことができる。
【0102】
本実施の形態に係る局所加熱装置を、このような構成にすることにより、加熱処理後の基板1の冷却速度をあげて、次工程への基板の払出し時間を短縮することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0103】
実施の形態8
図19は、本発明の実施の形態8に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。実施の形態7と同様に基板1を冷却する際、さらに冷却速度を向上させるためには、基板1に対して熱風ヒータは遠ざけ、エアノズル17は基板1の近くに配置することが望ましい。そのようにすると、熱風ヒータから噴射される熱風の影響を少なくした状態で、冷却ガスを基板1の局所位置の下面に集中的に噴射することができ、より効率的に基板1を冷却することができる。
【0104】
上記の効果を実現するために、本実施の形態に係る局所加熱装置は、冷却装置と非接触加熱手段3との高さを独立して制御することができる構成にされている。非接触加熱手段3には、第2高さ調節手段である第3リニアアクテュエータが備えられ、Z方向に移動可能とされている。
【0105】
冷却装置は、第1高さ調節手段と接続され、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4と共にZ方向に移動するようにされてもよい。または、第1高さ手段とは別の第3高さ調節手段を冷却装置が備え、エアノズル17をZ方向に移動できるようにしてもよい。第3高さ調節手段として、第4リニアアクテュエータを用いてもよい。
【0106】
第4リニアアクテュエータは、リニアガイド手段とリニアモータまたはステッピングモータなどの駆動手段との組合せで構成され、リニアアクテュエータとして一般に市販されているものを使用することができる。第4リニアアクテュエータも第2,3リニアアクテュエータと同様に第1リニアアクテュエータ上に構成されて、冷却装置を加熱部2と同時にY方向に位置制御することが可能にされている。
【0107】
以下、本実施の形態に係る局所加熱装置における、基板1の加熱および冷却の際の動作を説明する。なお、冷却装置が第3高さ調節手段を備えている場合について説明する。基板1が局所加熱装置に投入されると、基板1が基板搬送手段により搬送されてX方向の位置決めがされる。次に、第1リニアアクテュエータにより加熱部2および冷却装置が、基板1の局所位置に熱風ヒータが位置するようにY方向の位置決めがされる。
【0108】
その後、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4がZ方向に移動させられて、基板1を所定の高さに支持する。この基板支持部材4が基板1を支持した状態で、第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータがZ方向に移動され、基板1の下面に対して所定の距離に熱風ヒータの噴出し口が配置される。エアノズル17は、熱風ヒータの周囲に配置されている。このとき、局所加熱装置は、図17に示す状態となっており、この状態において、基板1が加熱される。
【0109】
基板1の加熱が終了すると、第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータが基板1の下方に離される。次に、第4リニアアクテュエータによりエアノズル17がZ方向に移動させられて、エアノズル17の噴出し口が基板1の局所位置の下面に近づけられる。このときも加熱時に引き続き、空間11に接続されている排気手段により、空間11内の高温の空気は装置外に排気されている。よって、熱風ヒータから噴射される熱風の影響をさらに低減することができる。この状態で、図19に示すように、エアノズル17から冷却ガスが基板1の局所位置の下面に噴射され、基板1を冷却する。
【0110】
局所加熱装置をこのような構成にすることにより、熱風ヒータから噴射される熱風の影響を低減するとともに、エアノズル17を冷却に適した位置に配置して基板1を冷却することができる。なお、冷却装置が第3高さ調節手段を備えていない場合にも、予めエアノズル17を基板支持部材4の上面に対して所定の距離に配置することにより、同様の効果を得ることができる。その結果、基板の冷却効率を高めて冷却時間を短縮することができ、基板の加熱乾燥工程のタクトタイムを削減することができる。他の構成については、実施の形態1,7と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
本発明の実施の形態において、熱風ヒータから常時、熱風が噴射されている場合について説明したが、基板を加熱するたびに熱風ヒータの電量供給をON/OFFするようにしてもよい。
【0112】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1 基板、2 加熱部、3 非接触加熱手段、4 基板支持部材、5 搬送ローラ、6 排気口、7 排気筒、8 ローラ軸、9 パスライン、10 排気管、11 空間、12 吸着孔、13 吸着用配管、14 待機領域、15 温度校正用基板、16 熱電対、17 エアノズル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に局所的に形成された塗布液または熱硬化性の部材を、加熱して乾燥させることにより、膜を形成させる局所加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体あるいは熱硬化性の部材を基板上に塗布し、乾燥させることで薄膜を形成する技術は、従来から多くの生産装置で利用されている。その中でも近年注目されているのは、基板上の任意の箇所に必要量だけ液体を塗布し、乾燥させることで膜を形成させるパターニング技術である。このような技術には、ディスペンサやインクジェットを用いた技術がある。これらは、従来のフォトリソグラフィによる、真空プロセスを用いたパターン生成方法に代わり、脱真空プロセスに使用可能な技術として注目が高まっている。
【0003】
たとえば、インクジェットによるパターニング技術を用いた生産装置としては、カラーフィルタパネルを形成する装置がある。この装置では、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色からなるインクをガラス基板上に形成されているRGB用画素領域内に着弾させる。そして、各画素を埋めることによって、カラーフィルタ(CF)が形成される。ここで、画素領域内に塗布されたインクは、オーブンなどによって基板全体が加熱されることによって、乾燥されて膜を形成する。
【0004】
このようなパターニング技術は、全面印刷技術としてのみならず、混色、夾雑物の混入または付着といった欠陥部を修復するための技術としても広く用いられている。たとえば、CFパネルにおいて、インクの混色が発生した欠陥画素や夾雑物が混入した欠陥画素の場合に、欠陥領域のインク層膜を除去し、除去部分に再度インクを塗布して加熱乾燥することで画素を再形成する技術がある。
【0005】
オーブンまたはホットプレートなどで基板全体を加熱することにより、塗布したインクを乾燥させる方法を開示した先行文献として特許文献1がある。基板全体を加熱する場合、専用の大型加熱装置や耐熱性に優れた搬送ロボットが必要である。また、加熱された基板を次工程に進めるために、冷却する場所や時間も必要となる。そのため、製造コストの上昇および製造時間が長くなるといった問題があった。
【0006】
特に、加熱して乾燥させる部位が少ない場合は、局所的に加熱して乾燥させる方が、製造コストおよび製造時間を削減することができる。そのため、インクを塗布した部分だけを、局所的に加熱して乾燥させる技術への期待は高い。
【0007】
局所的に加熱して乾燥させる方法としては、ホットプレートなどで使用される発熱体を基板に近接させて、乾燥させる方法が考えられる。それ以外にも、レーザーまたは赤外ランプ(赤外ヒータ)あるいはハロゲンヒータなどを用いて、基板を加熱する方法を開示した先行文献として、特許文献2、特許文献3または特許文献4がある。さらに、基板の上下両面から加熱する方法として、熱風を吹き付ける方法、あるいは、ヒータなどで加熱する方法を開示した先行文献として、特許文献5または特許文献6がある。
【0008】
基板を安定させて支持するために、基板の下面を支持する複数の支持部材の高さを変化させた加熱処理装置を開示した先行文献として、特許文献7がある。また、加熱空間となるチャンバを備える加熱容器を開示した先行文献として、特許文献8がある。
【0009】
カラーフィルタの修正方法を開示した先行文献として、特許文献9がある。特許文献9には、カラーフィルタ層の欠陥部に新たなカラーフィルタ材を埋め込み、加熱された部材をその欠陥部に上方から接近させて、カラーフィルタ材を硬化させる方法が開示されている。また、熱風によって半田の溶融を行なう半田溶融装置において、熱風が目的の箇所以外へ及ぶことをなくす方法を開示した参考文献として、特許文献10または特許文献11がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−160296号公報
【特許文献2】特開2004−95356号公報
【特許文献3】特開2004−165140号公報
【特許文献4】特開2006−224460号公報
【特許文献5】特開2000−315860号公報
【特許文献6】特開2005−223000号公報
【特許文献7】特開2006−237262号公報
【特許文献8】特表2005−530564号公報
【特許文献9】特許第4019475号公報
【特許文献10】特開平6−69641号公報
【特許文献11】特表2007−535120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載された、レーザーによる加熱方法では、基板上の加熱場所と非加熱場所との間の温度勾配が急であるため、基板にストレスが加わる。その結果、加熱場所近傍の機械的強度が弱くなるといった問題があった。一般的に、ランプを使用した方法では、加熱場所と非加熱場所との間の温度勾配はレーザーよりも緩やかになる。ただし、ランプ交換の頻度が高いため、その都度、装置を停止させなければならない。そのため、装置の操業度が低下し、生産効率が低下するといった問題がある。
【0012】
特許文献3、特許文献4または特許文献9に記載された、ヒータまたは高周波コイルによる加熱方式では、ヒータまたはコイルとインク滴との隙間を狭くしないと、インクが乾燥しない。一方、隙間を狭くしすぎると、溶媒蒸気が拡散しないため、高濃度溶媒雰囲気となり、乾燥が抑制されて、乾燥時間が長くなるといった問題がある。特許文献7に記載された、高さが異なる複数の支持部材により熱処理板上に基板を支持する加熱処理装置は、基板と熱処理板との距離を均一にするものではないため、基板の加熱温度が一定にならないといった問題がある。
【0013】
特許文献5および特許文献6に記載された加熱方法では、基板の上方および下方の両方に配置されるヒータユニットにより基板を加熱する際に、熱が基板の周辺に拡散してしまう。特許文献10および特許文献11に記載された、熱風を用いた半田溶融装置においては、加熱部周辺に熱風が拡がらないように加熱部を包囲する枠を設けているが、熱風を枠の開口部から上方に排出している。そのため、加熱装置の一部が部分的に高温になって熱変形を起こしたり、その高温部の熱がヒータユニットによる加熱に影響し、安定した加熱ができないという問題があった。
特許文献1に記載された、溶媒蒸気を制御する方法において、制御部材に加熱源を搭載する構成が考えられる。特許文献1に記載された方法では、乾燥速度を均一にするため、板材に複数の穴が空けられている。局所的に塗布した液滴を乾燥させるために、これを応用しようとすると、複数の穴と塗布部との相対位置により、乾燥速度が変動するといった問題がある。特許文献1では、これを解決する手段の記載がなく、応用は困難である。
【0014】
また、仮に、板材に加熱源を取り付け、板材が加熱器としての機能を持ったものとする。この場合、複数の穴があることにより、板材と基板との間に存在する気体(空気)を加熱できたとしても、あらゆる穴の近傍で、加熱された空気が上方に上がろうとする対流がおこる。その結果、加熱された空気が、塗布部のほうに流れるような流れが発生しにくくなり、乾燥効率が低下するといった問題もある。
【0015】
特許文献8に記載された加熱容器は、被加熱物を入れる容器としてチャンバを備え、食品の加熱に適した構造となっている。しかし、チャンバ内の気流などの条件を調整することが困難であるため、被加熱物の加熱温度を一定に保つことができない。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、加熱対象となる基板以外に加熱の影響が及ぶことを防ぎつつ、基板に過剰なストレスを与えることなく、塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる、局所加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る局所加熱装置は、基板を搬送する搬送手段と、側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間が形成され、上部開口端の全周が基板の下面と接触して基板を支持する基板支持部材とを備える。また、基板支持部材が基板を支持した状態で上記空間の内部に位置し、基板の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して、非接触な状態で局所位置を加熱する非接触加熱手段と、上記空間と連通するように接続され、空間に存在する空気を排出する排気手段とを備える。さらに、この局所加熱装置は、基板の下面に接触する基板支持部材の上面が所定の高さになるように調節する第1高さ調節手段と、非接触加熱手段を基板の局所位置に位置決めする移動手段とを備える。
【0018】
この局所加熱装置によると、加熱の際、基板の下面に接触して支持する基板支持部材の上面と非接触加熱手段とは、所定の距離になるように制御される。このため、基板を支持している加熱範囲の全体において基板の反りを低減し、基板の下面に対して熱風を噴射する距離を精度良く調節することができる。
【0019】
熱風を用いて加熱する場合、加熱対象と非接触加熱手段との距離がばらつくと加熱温度が安定しない。基板と非接触加熱手段との距離を調節することにより、基板の加熱温度を安定して管理することが可能となる。適した温度で乾燥されることにより、基板上の塗布液または熱硬化性の部材から形成される膜の高品質化を図ることが可能となる。
【0020】
また、加熱の際、非接触加熱手段は基板の下面と基板支持部材とに囲まれた空間の内部に位置している。この空間の内部には排気手段が接続されているため、非接触加熱手段から噴射された熱風は、基板の下面を加熱した後、局所加熱装置の外部に排出される。そのため、局所加熱装置において加熱に関与する加熱部以外の部分が熱風により加熱されて劣化するのを防ぐとともに、上記空間内の加熱雰囲気を調整することにより基板を安定して加熱することができる。
【0021】
局所加熱装置は、基板支持部材の上面から所定の距離に、非接触加熱手段を配置する第2高さ調節手段をさらに備えるようにしてもよい。この場合には、基板支持部材の上面に支持される基板と非接触加熱手段との距離を、基板上に形成される塗布液または熱硬化性の部材の種類に合わせて加熱に好適な距離に精度良く調節することができる。
【0022】
排気手段は、基板支持部材により支持された状態の基板の直下に接続されるようにしてもよい。この場合には、非接触加熱手段から噴射された熱風が基板の下面に誘導されるような気流を上記空間内に発生させることができるため、基板の加熱効率をあげることができる。
【0023】
非接触加熱手段の熱風の噴射量より排気手段の空気の排出量の方が、大きくなるように制御されるようにしてもよい。この場合には、上記空間の外部に熱風が流出して、装置の加熱部以外の部分が加熱されて劣化することを防ぐことができる。
【0024】
基板支持部材が、基板の下面に吸着して基板を支持する吸着部をさらに備えるようにしてもよい。この場合には、基板にねじれなどがあるために基板支持部材と基板との間に存在した隙間を、吸着部により基板を吸着することによりなくすことができる。このため、基板支持部材と基板との隙間から熱風が漏れることを防ぐことができる。
【0025】
局所加熱装置は、基板を加熱するとき以外は、基板搬送手段が配置される領域以外の待機領域において、非接触加熱手段および基板支持部材が待機するようにしてもよい。この場合には、乾燥工程を終えた基板に対して、不要な加熱を防ぐことができる。また、基板が搬出されて装置内に基板が無い状態において、装置自体を加熱してしまうことを防ぐことができる。
【0026】
上記待機領域において温度計測装置を含む温度校正用基板を用いて非接触加熱手段による基板加熱温度を調節するようにしてもよい。この場合には、加熱した温度校正用基板の温度計測結果に基づいて非接触加熱手段による基板加熱温度を調節することができるため、製品となる基板を所定の温度に精度良く加熱することができる。
【0027】
局所加熱装置は、基板を下面側から冷却する冷却装置を備えるようにしてもよい。この場合には、加熱処理後の基板の冷却速度をあげて、加熱乾燥工程のタクトタイムを短縮することができる。
【0028】
非接触加熱手段および冷却装置の基板の下面に対する距離をそれぞれ独立して制御することができるようにしてもよい。この場合には、非接触加熱手段と冷却装置を独立して上下移動させることが可能となる。そのため、加熱処理された基板から非接触加熱手段を遠ざけた後、冷却装置を基板に所定の距離まで接近させた状態で冷却を行なえるため、基板の冷却効率を高めて冷却時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、基板の下面に基板支持部材が接触して支持した状態で、基板の局所位置の下方に空間が形成され、この空間の内部に位置する非接触加熱手段および排気手段を調節して基板を加熱することにより、加熱対象となる基板以外に加熱の影響が及ぶことを防ぎつつ、空間内の加熱雰囲気を調整することができる。このように加熱することにより、基板に過剰なストレスを与えることなく、塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る局所加熱装置の平面模式図である。
【図2】図1のII−II線矢印方向から見た断面模式図である。
【図3】(A)は、基板が搬送ローラに支持されている状態を示す断面図、(B)は、基板が搬送ローラに偏って支持されている状態を示す断面図である。
【図4】基板を基板支持部材で支持した状態を示す断面模式図である。
【図5】基板を基板支持部材で支持しつつ、加熱している状態を示す断面模式図である。
【図6】同実施の形態に係る局所加熱装置との比較例として、非接触加熱手段を基板支持部材で囲まないで基板を加熱している状態を示す断面模式図である。
【図7】(A)は、1組の隣り合うローラ軸の間隔を広くした状態、(B)は、広くしていない状態を示す断面模式図である。
【図8】同実施の形態に係る局所加熱装置において、熱風ヒータを取囲むように配置される排気筒を通して、空間の内部の空気を排気する構成を示す断面模式図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【図10】反りの大きい基板を基板支持部材で支持して加熱している状態を示す断面模式図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【図12】局所加熱装置の加熱部の移動範囲を示す平面図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る、加熱部の待機領域を設けた局所加熱装置を示す平面模式図である。
【図14】本実施の形態に係る局所加熱装置において、基板の加熱処理を終えて、基板が搬出位置にある状態を示す平面模式図である。
【図15】本発明の実施の形態6に係る、待機領域に温度校正用基板を配置した局所加熱装置を示す平面模式図である。
【図16】温度校正用基板を加熱している状態を示す断面模式図である。
【図17】本発明の実施の形態7に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【図18】同実施の形態に係る局所加熱装置において、冷却装置により基板を冷却している状態を示す断面模式図である。
【図19】本発明の実施の形態8に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明に基づいた本発明の実施の形態における局所加熱装置について、図を参照しながら説明する。
【0032】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る局所加熱装置の平面模式図である。図2は、図1のII−II線矢印方向から見た断面模式図である。本実施の形態に係る局所加熱装置には、図1に示すように、基板1を搬送する搬送ローラ5が設けられている。搬送ローラ5は、ローラ軸8に所定の間隔で複数配置されている。搬送ローラ5が配置されたローラ軸8は、基板1の搬送方向に所定の間隔で複数設けられている。ローラ軸8が並ぶ方向をX方向とし、ローラ軸8と平行な方向をY方向とする。図1では、基板1を透明なものとして示している。
【0033】
基板1の搬送手段には、図示しないモータの回転力が搬送ローラ5に伝達され、搬送ローラ5自身が回転して基板1を搬送する方式、または、基板1をチャッキングする図示しない基板保持部材をモータにより駆動して搬送ローラ5上の基板1を搬送する方式などがある。基板保持部材は、基板1をエアシリンダなどによる押圧保持、または、真空吸着などの手段によりチャッキングする。
【0034】
1組の隣り合うローラ軸8の間には、基板1を加熱する加熱部2が移動することができるように、他の隣り合うローラ軸8同士の間隔より広い間隔が設けられている。図2に示すように、加熱部2には、非接触加熱手段3および基板支持部材4が備えられている。非接触加熱手段3として、たとえば、熱風を噴射する熱風ヒータを使用してもよい。上述のX方向およびY方向の両方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0035】
基板支持部材4は、内部にZ方向に貫通した空間を有している。この空間と接する基板支持部材4の内周に排気口6を有する排気筒7が設けられている。排気筒7には、排気管10が接続され、排気管10に図示しない排気ポンプが接続されている。排気ポンプにより排気筒7および排気管10の中に存在する空気が排気され、さらに、排気口6から基板支持部材4の内部の空間に存在する空気が排気される。
【0036】
図3(A)は、基板が搬送ローラに支持されている状態を示す断面図、(B)は、基板が搬送ローラに偏って支持されている状態を示す断面図である。図3(A)に示すように、隣り合う搬送ローラ5同士の間において、基板1は自重によるたわみが発生して高さがばらついている。また、搬送ローラ5上の基板1の高さは、搬送ローラ5の偏芯およびローラ軸8のアライメントなどの装置自体の精度によってもばらつきが発生する。
【0037】
図3(B)に示すように、基板端部周辺を加熱処理する場合など、基板1は搬送ローラ5によって片持ち状態で支持される。そのため、片持ち状態になっている部分の基板1の自重により、大きなたわみが発生する場合がある。
【0038】
熱風ヒータによって基板1を加熱する場合、基板1と熱風ヒータの噴出し口との距離が変化すると、加熱時の基板1の温度も変わる。基板1上の塗布液または熱硬化性の部材が乾燥されて形成される膜は、基板1の加熱時の温度により品質が異なるため、適した温度で加熱される必要がある。高品質の膜を基板1上に形成するためには、基板1の加熱される温度を膜形成に好適な温度で一定に保つことが必要である。そのためには、基板1と熱風ヒータの噴出し口との距離を一定に保った状態で、基板1を加熱するのが望ましい。
【0039】
そこで、加熱される位置の基板1の高さを一定に保つために、基板支持部材4を基板1の下方から基板1に接触させて基板1を支持する。図4は、基板を基板支持部材で支持した状態を示す断面模式図である。上記のように基板1の高さのばらつきの要因には、搬送ローラ5の基板1を支持する高さのずれによるものもある。
【0040】
よって、加熱位置の基板1の高さを確実に一定に保つためには、図4に示すように、搬送ローラ5が基板1と接触して支持する高さ、いわゆるパスライン9よりもわずかに高い位置で基板支持部材4の上面が基板1と接触して支持するようにすることが望ましい。そのため、基板1の下面に接触する基板支持部材4の上面が所定の高さになるように調節する第1高さ調節手段が設けられている。このようにすることにより、搬送ローラ5の基板1の支持高さのばらつきの影響を低減して、加熱位置において基板1を一定の高さで支持することができる。
【0041】
図5は、基板を基板支持部材で支持しつつ、加熱している状態を示す断面模式図である。図1,5に示すように、基板支持部材4は、側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間11が形成され、上部開口端の全周が基板1の下面と接触して基板1を支持する。熱風ヒータなどの非接触加熱手段3は、基板支持部材4が基板1を支持した状態で上記空間11の内部に位置し、基板1の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して非接触な状態で加熱する。
【0042】
基板1は、通常、0.7mm程度の厚さで形成され、熱容量が小さく加熱により昇温されやすい。このため、基板1の上面に形成された塗布液または熱硬化性の部材を基板1の下面から加熱しても、エネルギロスはほとんど無い。また、塗布液または熱硬化性の部材の乾燥品質的にも、基板1の下面から乾燥させることに問題はない。
【0043】
図5中の矢印で示すように、上記空間11の内部に配置される排気口6から排気筒7および排気管10を通じて、空間11に存在する空気が排出される。局所加熱装置には、加熱の際、基板支持部材4の上面から所定の距離に非接触加熱手段3を配置する、図示しない第2高さ調節手段が備えられるようにしてもよい。この場合には、基板1上に形成される塗布液または熱硬化性の部材の種類に合わせて、基板支持部材4に支持される基板1と非接触加熱手段3との距離を加熱に好適な距離に調節することができる。
【0044】
さらに局所加熱装置には、非接触加熱手段3を基板1の局所位置に位置決めする移動手段が備えられている。図5に示すように、非接触加熱手段3が基板支持部材4の内部の空間の略中心に位置するようにしてもよい。非接触加熱手段3と基板支持部材4とを含む加熱部2は一体で、Y方向を移動することができる。
【0045】
上記移動手段として、図示しない第1リニアアクチュエータが使用され、加熱部2がY方向に移動可能に構成されている。リニアアクチュエータは、リニアガイド手段とリニアモータまたはステッピングモータなどの駆動手段との組合せで構成され、リニアアクチュエータとして一般に市販されているものを使用することができる。上記第1高さ調節手段として、図示しない第2リニアアクチュエータが使用され、基板支持部材4がZ方向に移動できるように構成されている。上記第2高さ調節手段を備える場合には、図示しない第3リニアアクチュエータが使用され、非接触加熱手段3がZ方向に移動できるように構成される。
【0046】
基板搬送手段、第1リニアアクチュエータ、第2リニアアクチュエータおよび第3リニアアクテュエータは、それぞれ移動量を検出するエンコーダを有している。よって、基板1に対して加熱部2を相対的に、X方向、Y方向およびZ方向において正確に位置決め制御することが可能になっている。
【0047】
以下、本実施の形態に係る局所加熱装置において、基板1上の局所位置を加熱する方法を説明する。局所加熱装置に基板1が投入される以前に、塗布液または熱硬化性の部材は、塗布液または熱硬化性の部材の吐出装置により基板1上に形成されているものとする。その形成面積および中心位置座標などの情報は既知であるものとして説明する。
【0048】
本実施の形態に係る局所加熱装置では、基板1の端面を検出する図示しない位置センサを搭載しており、基板1が投入されると基板1の端面を検出して、第1アクテュエータの制御における座標のゼロ点を認識する。基板1の上記中心位置座標を基に、基板搬送手段による基板1のX方向への必要送り量、および、第1リニアアクテュエータによる加熱部2のY方向への必要移動量を算出する。この算出結果にしたがって、基板1および非接触加熱手段3を含む加熱部2を互いに移動させることによって、加熱対象となる局所位置に非接触加熱手段3を位置決めする。
【0049】
非接触加熱手段3の位置決めが完了した後、基板支持部材4を上昇させて基板1の下面に接触させる。この接触した状態を感知する端子を基板支持部材4の上面付近に設け、接触した位置を第2リニアアクテュエータの制御における座標のゼロ点として認識させる。その後、加熱位置近傍の基板1の高さを所定の高さまで上昇させるように、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4が移動させられる。また、基板支持部材4が基板1を支持する高さをあらかじめ設定しておき、この設定高さまで基板支持部材4を第2リニアアクテュエータにより移動させるようにしてもよい。
【0050】
局所加熱装置が第2高さ調節手段を備える場合には、基板1を基板支持部材4が支持した状態で、基板1の下面に対して所定の距離に熱風ヒータの噴出し口が配置されるように、第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータがZ方向に移動させられる。
【0051】
このように、加熱の際、基板1の下面に接触して支持する基板支持部材4の上面と非接触加熱手段3とは、所定の距離になるように制御される。このため、基板1を支持している加熱範囲の全体において基板1の反りを低減し、基板1の下面に対して熱風を噴射する距離を精度良く調節することができる。よって、加熱の際、基板1と非接触加熱手段3との距離が近すぎて基板1に過剰なストレスを与えることを防ぎつつ、基板1上の塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる。なお、本実施の形態においては、基板支持部材4自身が加熱主体となる加熱は行なわない。
【0052】
図6は、本実施の形態に係る局所加熱装置との比較例として、非接触加熱手段を基板支持部材で囲まないで基板を加熱している状態を示す断面模式図である。図6に示すように、基板1は搬送ローラ5上に支持され、非接触加熱手段3である熱風ヒータにより加熱されている。加熱時の熱風ヒータが隣り合うローラ軸8同士の略中間の位置に配置されるように、基板1が搬送ローラ5により搬送される。
【0053】
熱風ヒータから噴射されて基板1を加熱した熱風は、外気よりも温度が高いため、外気より比重が軽く上方に拡散しやすい。しかし、基板1により上方を遮断されているため、基板1の下面に沿って拡散していく。そのため、基板1の下面近傍に存在する搬送ローラ5に熱風の熱が伝達してしまう。
【0054】
搬送ローラ5は基板1と接触するため、基板搬送時に基板1にキズをつけないために超高分子ポリエチレンなどの硬度の低い樹脂材料で形成されている。しかし、熱風の熱の影響を繰り返し受けると、耐熱性を有さない樹脂材料では劣化して変質を起こしてしまう。このため、耐熱性を有するポリイミド樹脂などを用いて搬送ローラ5を形成する必要性が生じるが、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂材料は高価であるため、搬送ローラ5を耐熱性樹脂材料で形成することは装置コストの上昇を招いてしまい好ましくない。
【0055】
熱風ヒータから噴射される熱風の熱による影響は、熱風ヒータとの距離が近いほど顕著に現れる。基板1の加熱温度は、乾燥させる塗布液または熱硬化性の部材の種類によって異なるが、300℃に近い温度となる場合もある。この場合、熱風ヒータから噴射され基板1を加熱した後の熱風は、依然300℃に近い温度を有している。
【0056】
そのため、加熱時の熱風ヒータが位置する加熱位置から搬送ローラ5を遠ざける方法も考えられる。図7(A)は、1組の隣り合うローラ軸の間隔を広くした状態、(B)は、広くしていない状態を示す断面模式図である。図7(A),(B)では、基板1が図中の右から左に搬送されている状態を示している。
【0057】
図7(A)に示すように、熱風ヒータと搬送ローラ5との距離を遠くするために、1組の隣り合うローラ軸8同士の間隔L1は広くされている。この場合、搬送ローラ5上を基板1が搬送され、間隔L1を越えて次の搬送ローラ5に乗り移る際に、基板1の片持ち状態となる部分が長くなって大きなたわみが発生する。図7(B)に示すように、ローラ軸8同士の間隔L2を広くしていない場合の基板1では、間隔L2を越えて次の搬送ローラ5に乗り移る際に発生するたわみは小さい。
【0058】
基板1が次の搬送ローラ5に乗り移る際、基板1の先端と搬送ローラ5との接触がスムーズに行なわれることが望ましい。具体的には、基板1の先端との接触位置が、搬送ローラ5の上端に近いほど接触時に基板1に加わる負荷が小さくなる。逆に、基板1の先端との接触位置が、搬送ローラ5の上端から離れるにつれて、次の搬送ローラ5に乗り移る時の基板1にかかる負荷が大きくなる。搬送速度が速い場合には、基板1にかかる負荷が衝撃力となるため、基板1が割れてしまう可能性もある。よって、熱風ヒータと搬送ローラ5との距離を遠くすることによって、熱風の熱影響への対策とすることは好ましくない。
【0059】
熱風の熱影響は搬送ローラ5のみではなく、装置本体にも及ぶ。たとえば、非接触加熱手段駆動用ガイド軸の軸受け部には、潤滑用グリスが使用されている。この軸受け部が加熱されて高温になると、グリスの粘度が低下して軸受け部からグリスが流出する場合がある。この場合、潤滑性を失った軸受け部が焼付けを起こしたり、流出したグリスが基板1に付着してしまう可能性がある。また、熱風の熱影響により、基板搬送手段または非接触加熱手段駆動用ガイド軸の固定部などにひずみが生じ、基板1および非接触加熱手段を精度良く位置決めすることができなくなる可能性もある。
【0060】
このような、熱風ヒータから噴射される熱風の熱影響を低減させる、本実施の形態に係る局所加熱装置の作用を説明する。図5に示すように、基板1および加熱部2の配置が完了した後、熱風ヒータから熱風が噴射される。このとき、熱風ヒータは基板支持部材4の上面を基板1で蓋をしたような空間11の内部に位置している。熱風ヒータから噴射され、基板1を加熱した後の熱風の温度は、300℃に近い場合もある。この温度の高い空気は、外気より高温で比重が外気より軽いため、空間11の上方に溜まりやすい。
【0061】
このように、高温の空気を空間11に滞留させることにより、熱風が周囲に直接拡散するのを防ぐことができる。上述のように、空間11と連通するように排気手段が接続されている。排気手段は、基板支持部材4の内周に設けられた排気口6と、この排気口6から空気を基板支持部材4の外部に排気する流路となる排気筒7を含む。さらに、排気手段は、排気筒7に接続される排気管10、および排気管10に繋がれている図示しない排気ポンプまたは排気ダクトを含む。
【0062】
排気筒7には高温の空気が流入するため、排気筒7は耐熱性を有する金属製のパイプで形成されていることが望ましい。排気される空気は、排気筒7内を通過している間に温度が下がるため、排気筒7に接続される排気管10には、金属より低い耐熱性を有するテフロン(登録商標)チューブなどを使用することができる。排気ポンプにより負圧を発生させることにより、空間11内の高温の空気は、排気口6から排気筒7および排気管10内を通過して外部に排出される。
【0063】
図5に示すように、空間11は下方が開放されているが、高温の空気は空間11の上方から満たされていくため、空間11の体積一杯になるまで、空間11の下方から高温の空気は漏れにくい。さらに、空間11に排気手段を接続して高温の空気を外部に排出するため、空間11の下方からの高温の空気の漏れをより抑えることができる。仮に、基板支持部材4の下方から高温の空気がわずかに拡散したとしても、熱風ヒータから直接拡散するのに比べて、搬送ローラ5に到達するまでの距離が大きいため、与える熱影響は小さくなる。
【0064】
本実施の形態においては、空間11の下方が開放された構造としているが、基板支持部材4の下方を熱風ヒータが位置する部分を除いて、図示しない密閉部材で覆ってもよい。このようにすることにより、空間11は、基板1、基板支持部材4、密閉部材および熱風ヒータによって、略密閉状態とされる。よって、空間11から高温の空気が拡散することをより確実に防ぐことができる。
【0065】
図8は、本実施の形態に係る局所加熱装置において、熱風ヒータを取囲むように配置される排気筒を通して、空間の内部の空気を排気する構成を示す断面模式図である。図8に示すように、排気筒7は上方に排気口6となる開口部を有し、下方は閉口部を有して、その閉口部に排気管10が接続されている。このような構成によっても、空間11の内部の空気を排気することができる。
【0066】
さらに、排気筒7の外周を基板支持部材4の内周に接近するように設け、空間11の下方における開放面積を減じる構成にしてもよい。このような構成にした場合には、空間11を略閉鎖空間とすることができ、高温の空気が外部に拡散するのを低減することができる。
【0067】
本実施の形態に係る局所加熱装置は、上記の構成により加熱部の加熱の影響が装置本体に及ぶのを防ぐことにより、装置精度を維持して基板を精度良く加熱することができる。また、基板の局所位置の下方に形成される空間内の加熱雰囲気を、非接触加熱手段および排気手段を調節することにより調整することができ、基板を安定して加熱することができる。このように、加熱することにより、基板に過剰なストレスを与えることなく、基板上の塗布液または熱硬化性の部材を効率的に均一に乾燥させることができる。
【0068】
実施の形態2
図9は、本発明の実施の形態2に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。図9に示すように、本実施の形態に係る局所加熱装置では、排気筒7の排気口6が基板支持部材4により支持された状態の基板1の直下に配置されている。
【0069】
非接触加熱手段3である熱風ヒータから噴射された熱風は、基板1を加熱した後、空間11の内部で滞留する。空間11の内部の空気は、空間11の内部に接続される排気手段により外部へ排出される。熱風ヒータから噴射された熱風が排気口6にたどり着くまでの間の経路は、排気口6の配置により変化する。
【0070】
排気口6を基板1から大きく下方に離れた位置に形成した場合、排気筒7には空間11外の空気が多量に流入して、空間11内の高温の空気を十分に排気できないことがある。その結果、排気できなかった高温の空気が空間11から外部に漏れて、装置本体に熱影響が及ぶ可能性がある。また、排気口6を熱風ヒータの噴出し口よりも下方に設けると、空間11内における熱風の経路が、熱風ヒータから基板1を経由せずに直接排気口6へ向かうように形成され、基板1の加熱効率が低下するおそれがある。
【0071】
そこで、本実施の形態に係る局所加熱装置では、図9に示すように、排気手段が、基板支持部材4により支持された状態の基板1の直下に接続されるようにしている。このようにすると、熱風ヒータから噴射された熱風は、基板1の下面に到達した後、基板1の下面に沿って拡散し、排気口6から排気筒7に流入する。よって、空間11の下方から外部に漏れる高温の空気の量を減少させることができる。また、熱風ヒータから噴射された熱風が基板1の下面に誘導されるような気流を空間11内に発生させることができるため、基板1の加熱が確実に行なわれ、基板1の加熱効率の低下を防ぐことができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
実施の形態3
非接触加熱手段である熱風ヒータを動作させるには、動力となる電力および加熱媒体となるガスをヒータの発熱体に供給する必要がある。一般に、加熱媒体となるガスとして窒素またはドライエアなどが用いられる。熱風ヒータのガス供給口に供給される低温のガスは、高温に発熱した発熱体により加熱および昇温されて、ガス噴出し口から熱風として噴射される。噴射される熱風の温度は、熱風ヒータの内部に設けられた熱電対によりモニターされ、所定温度となるように発熱体への電力供給量が調整される。
【0073】
図5に示すように、基板1を加熱する際、熱風ヒータの熱風の噴射量Q1が排気手段による排出量Q2より大きい場合、排気能力が不足して、空間11の下方から高温の空気が漏れ出してしまう。
【0074】
そこで、熱風ヒータの熱風の噴射量Q1より排気手段による排出量Q2が大きくなるように制御する。このように設定することにより、空間11内の空気を排気手段により確実に外部に排出することができる。このようにすることにより、装置の加熱部以外の部分が加熱されて劣化することを防ぎ、装置精度を維持して基板を精度良く加熱することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
実施の形態4
図10は、反りの大きい基板を基板支持部材で支持して加熱している状態を示す断面模式図である。基板1に自重によるたわみ、または、軽度の反りが発生していても、基板支持部材4により基板1を支持する際には、基板支持部材4の上面と基板1の下面とは略全面で接触する。しかし、大きい反りまたはねじれが発生している基板1を基板支持部材4で支持する場合、その反りまたはねじれの影響で基板支持部材4の上面と基板1の下面とが一部しか接触しないことがある。この状態で加熱を行なうと、基板1と基板支持部材4の間の隙間から高温の空気が漏れ出し、搬送ローラ5などの装置本体に熱影響を及ぼしてしまう。
【0076】
図11は、本発明の実施の形態4に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。図11に示すように、本実施の形態に係る局所加熱装置は、基板支持部材4が基板1の下面に吸着して支持する吸着部を備えている。吸着部は、基板支持部材4の上面に形成される少なくとも1つ以上の吸着孔12、この吸着孔12に接続される吸着用配管13、および、吸着用配管13に繋がれる図示しないポンプなどで構成される。
【0077】
基板支持部材4の上面を基板1の下面に接触させた状態で、ポンプなどにより吸着用配管13内を真空引きすることにより、吸着孔12に基板1を吸着させる。このようにして、基板1を基板支持部材4に吸着させることにより、基板1と基板支持部材4とを隙間無く密着させることができる。そのため、空間11の上方から高温の空気が漏れ出すことを防ぐことができる。
【0078】
加熱処理終了後、基板1の吸着を解除するには、吸着用配管13に圧縮空気または窒素を供給することにより、容易に吸着解除することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
実施の形態5
図12は、局所加熱装置の加熱部の移動範囲を示す平面図である。上述のように、基板1は、基板搬送手段によりX方向に搬送可能とされている。加熱部2は、第1リニアアクチュエータによってY方向に搬送可能とされている。図12に示すように、通常、加熱部2は基板1のY方向の幅に相当する距離だけ移動できればよい。
【0080】
しかし、本実施の形態に係る局所加熱装置では、非接触加熱手段3として熱風ヒータを用いている。熱風ヒータは、電力を供給されてから、基板1を加熱可能な状態に昇温されるまで時間がかかる。そのため、基板1が局所加熱装置に投入されてから熱風ヒータに電力を供給したのでは、熱風ヒータの温度が上昇するまでの時間が待機時間となり、加熱処理終了までの処理時間が長くなる。
【0081】
そこで、基板1の加熱処理時間を短縮するために、熱風ヒータに常時電力を供給しておくことが有効となる。本発明の実施の形態5に係る局所加熱装置は、常時、熱風ヒータから熱風を噴射させた状態で、基板1を加熱処理するものである。
【0082】
加熱部2の移動範囲が基板1の幅相当に限られた状態で、熱風ヒータが常時熱風を噴射している場合、基板1が局所加熱装置に投入されてから熱風ヒータが基板1の局所位置に位置決めされるまでの間、熱風ヒータは基板1の下面から下方に離れた位置で待機している。この待機中に噴射された熱風は基板1の下面の下方から上昇して、基板1の下面に沿って拡散する。そのため、基板1上の加熱対象ではない部位が加熱されてしまう。
【0083】
また、加熱処理後の基板1を局所加熱装置から搬出する際も同様に、基板1上の加熱対象ではない部位を加熱してしまうことになる。加熱されて温度が高い状態で基板1が局所加熱装置から搬出された場合、基板1を次工程に送る基板搬送手段、または、次工程の基板処理プロセス自身に悪影響を与える危険性がある。また、基板1が局所加熱装置に投入されていない待機時においても、基板搬送手段などの装置本体に熱風の熱影響が及んで、装置精度の低下を招く可能性がある。
【0084】
図13は、本発明の実施の形態5に係る、加熱部の待機領域を設けた局所加熱装置を示す平面模式図である。図13に示すように、本発明の実施の形態5に係る局所加熱装置では、基板1のY方向の幅に相当する範囲以外に、加熱部2が移動可能とされている。さらに、局所加熱装置には、基板搬送手段が配置される領域以外の待機領域14が設けられている。基板1を加熱するとき以外は、非接触加熱手段3である熱風ヒータおよび基板支持部材4を含む加熱部2が、待機領域14において待機するようにされている。
【0085】
待機領域14は、基板搬送手段が配置される領域以外に設けられているため、加熱部2が待機領域14で待機中は、搬送ローラ5およびローラ軸8などの基板搬送手段が加熱されることがない。基板1が局所加熱装置に投入されて、基板1の局所位置に非接触加熱手段3が位置決めされるまでの間は、基板1上の加熱対象ではない部位が加熱されてしまうが、常に基板1の下方に加熱部2が待機している場合に比べて、基板1の不要な加熱を低減することができる。
【0086】
図14は、本実施の形態に係る局所加熱装置において、基板の加熱処理を終えて、基板が搬出位置にある状態を示す平面模式図である。図14に示すように、加熱処理後の基板1を局所加熱装置から搬出する際は、基板支持部材4を第2リニアアクテュエータにより基板1の下方に移動させた後、第1リニアアクテュエータにより加熱部2を待機領域14へ移動させる。その後、基板搬送手段により基板搬出位置まで基板1を搬送し、さらに局所加熱装置外へ搬出する。
【0087】
一方、装置内に基板1が投入される場合には、上記の基板搬出時とは逆の動作が行なわれる。よって、局所加熱装置をこのような構成にすることにより、基板の投入から搬出まで基板1を不要に加熱することがなく、基板1を次工程に送る基板搬送手段、または、次工程の基板処理プロセス自身に悪影響を与える危険性を低減することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
実施の形態6
図15は、本発明の実施の形態6に係る、待機領域に温度校正用基板を配置した局所加熱装置を示す平面模式図である。図16は、温度校正用基板を加熱している状態を示す断面模式図である。本発明の実施の形態6においても、実施の形態5と同様に局所加熱装置に待機領域を設けている。図15に示すように、この待機領域に、温度校正用基板15を配置する。
【0089】
図16に示すように、温度校正用基板15は、製品となる基板1と同一の材質および板厚で形成され、温度計測装置として熱電対16が埋め込まれている。また、温度校正用基板15は、搬送ローラ5上の基板1と略同一の高さで、X,Y,Zの各方向に若干の自由度を持って図示しない保持部材により保持されている。
【0090】
以下、温度校正用基板15を用いて非接触加熱手段3の調節する方法を説明する。待機領域に加熱部2を移動させた後、温度校正用基板15の熱電対16が埋め込まれている位置に、非接触加熱手段3である熱風ヒータが位置決めされる。第1高さ調節手段として第2リニアアクチュエータにより基板支持部材4を温度校正用基板15の下面に接触するまで移動させる。この接触した位置を第2リニアアクテュエータの制御における座標のゼロ点として認識させる。その後、温度校正用基板15の高さを所定の高さまで上昇させるように、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4が移動させられる。
【0091】
温度校正用基板15を基板支持部材4が支持した状態で、温度校正用基板15の下面に対して所定の距離に熱風ヒータの噴出し口が配置されるように、第2高さ調節手段として第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータが移動させられる。
【0092】
このように、温度校正用基板15を加熱する際、温度校正用基板15の下面に接触して支持する基板支持部材4の上面と非接触加熱手段3との距離は、製品となる基板1を加熱するときと同じ距離になるように制御される。この状態で、熱風ヒータにより温度校正用基板15は加熱される。温度校正用基板15の温度は、熱電対16により測定される。
【0093】
この測定された温度は、製品となる基板1と略同一の条件により加熱処理した時の基板温度である。よって、温度校正用基板15を用いて測定された温度は、製品となる基板1を加熱処理した時の基板温度とみなすことができる。
【0094】
ここで、非接触加熱手段3の基板の加熱設定温度がTc1、温度校正用基板15により測定された基板温度がTc2とする。加熱設定温度Tc1は、基板1上に形成されている塗布液または熱硬化性の部材を乾燥させるのに好適な温度である。そのため、実際の基板温度Tc2が設定温度Tc1になるように、手動または自動で熱風ヒータの設定温度を校正する。この校正後の設定温度に熱風ヒータを設定して、基板1を加熱することにより、局所位置の基板温度を目標温度に管理することができる。
【0095】
このように、加熱時の局所加熱位置の基板温度を目標温度に管理することにより、加熱処理後の塗布液または熱硬化性の部材により形成される膜の高品質化を図ることができる。また、熱風ヒータの設定温度の校正は、装置に基板1が投入されるまでの待機時間に行なわれるため、基板1の加熱乾燥工程のタクトタイムは、実施の形態5の局所加熱装置と変わらない。本実施の形態においては、温度校正用基板15として熱電対16を埋め込んだ基板を用いたが、温度校正用基板15の基板温度を放射温度計を用いて非接触で測定するようにしてもよい。他の構成については、実施の形態1,5と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
実施の形態7
図17は、本発明の実施の形態7に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。図17に示すように、本発明の実施の形態7に係る局所加熱装置は、基板1を下面側から冷却する冷却装置を備えている。
【0097】
熱風ヒータにより加熱処理された基板1は、300℃に近い温度まで上昇することがある。加熱処理後の基板1は、基板搬送手段により搬出位置まで搬送される。基板1を支持する搬送ローラ5は、基板1にキズをつけないように硬度の低い樹脂材料が使用されている。加熱処理後の高温の基板1が搬送ローラ5上を移動または停止するとき、搬送ローラ5の基板1と接触する箇所に熱影響が及ぶ。この熱影響により、搬送ローラ5が変形、または、搬送ローラ5が変質して基板1に搬送ローラ5の軌跡が付着する可能性がある。また、加熱されて温度が高い状態で基板1が装置から搬出された場合、基板1を次工程に送る基板搬送手段、または、次工程の基板処理プロセス自身に悪影響を与える危険性がある。
【0098】
基板1の厚さは0.7mm程度で単位面積当たりの熱容量は小さいが、300℃に近い温度まで加熱されると、基板温度が自然冷却により搬出に適した40℃以下まで下がるまで長時間を要する。そのため、基板1の加熱乾燥工程のタクトタイムを短縮するためには、加熱処理後の基板1を短時間で冷却することが必要である。
【0099】
そこで、本実施の形態に係る局所加熱装置では、図17に示すように、空間11の内部に、基板1を下面側から冷却する冷却装置が備えられている。冷却装置は、たとえば、エアノズル17、エアノズル17に接続される配管および配管に繋がれるコンプレッサを含む。冷却ガスとして、コンプレッサにより圧縮される圧縮空気または窒素を用いることができる。図17に示すように、空間11の中央に熱風ヒータを、その周囲にエアノズル17を配置してもよい。
【0100】
図18は、本実施の形態に係る局所加熱装置において、冷却装置により基板を冷却している状態を示す断面模式図である。図18に示すように、基板1の加熱が終了すると、基板支持部材4は第1高さ調節手段である第2リニアアクテュエータにより基板1の下方に離れて配置される。同様に、非接触加熱手段3は第2高さ調節手段である第3リニアアクテュエータにより基板1の下方に離れて配置される。
【0101】
その後、エアノズル17の先端から冷却ガスが加熱された基板1の局所位置に噴射される。基板1の下面に到達した冷却ガスは、基板1から熱を奪い、基板1を急速に冷却する。冷却中も熱風ヒータからは熱風が噴射されているため、冷却ガスの流量Q3は、熱風ヒータの噴射量Q1よりかなり多くなるように設定される。エアノズル17は、基板1の下方に離れて配置されているため、冷却ガスの噴射圧力は高めに設定される。このように設定することによって、冷却中も熱風ヒータから熱風が噴射されていても基板1の冷却を十分行なうことができる。
【0102】
本実施の形態に係る局所加熱装置を、このような構成にすることにより、加熱処理後の基板1の冷却速度をあげて、次工程への基板の払出し時間を短縮することができる。他の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0103】
実施の形態8
図19は、本発明の実施の形態8に係る局所加熱装置を示す断面模式図である。実施の形態7と同様に基板1を冷却する際、さらに冷却速度を向上させるためには、基板1に対して熱風ヒータは遠ざけ、エアノズル17は基板1の近くに配置することが望ましい。そのようにすると、熱風ヒータから噴射される熱風の影響を少なくした状態で、冷却ガスを基板1の局所位置の下面に集中的に噴射することができ、より効率的に基板1を冷却することができる。
【0104】
上記の効果を実現するために、本実施の形態に係る局所加熱装置は、冷却装置と非接触加熱手段3との高さを独立して制御することができる構成にされている。非接触加熱手段3には、第2高さ調節手段である第3リニアアクテュエータが備えられ、Z方向に移動可能とされている。
【0105】
冷却装置は、第1高さ調節手段と接続され、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4と共にZ方向に移動するようにされてもよい。または、第1高さ手段とは別の第3高さ調節手段を冷却装置が備え、エアノズル17をZ方向に移動できるようにしてもよい。第3高さ調節手段として、第4リニアアクテュエータを用いてもよい。
【0106】
第4リニアアクテュエータは、リニアガイド手段とリニアモータまたはステッピングモータなどの駆動手段との組合せで構成され、リニアアクテュエータとして一般に市販されているものを使用することができる。第4リニアアクテュエータも第2,3リニアアクテュエータと同様に第1リニアアクテュエータ上に構成されて、冷却装置を加熱部2と同時にY方向に位置制御することが可能にされている。
【0107】
以下、本実施の形態に係る局所加熱装置における、基板1の加熱および冷却の際の動作を説明する。なお、冷却装置が第3高さ調節手段を備えている場合について説明する。基板1が局所加熱装置に投入されると、基板1が基板搬送手段により搬送されてX方向の位置決めがされる。次に、第1リニアアクテュエータにより加熱部2および冷却装置が、基板1の局所位置に熱風ヒータが位置するようにY方向の位置決めがされる。
【0108】
その後、第2リニアアクテュエータにより基板支持部材4がZ方向に移動させられて、基板1を所定の高さに支持する。この基板支持部材4が基板1を支持した状態で、第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータがZ方向に移動され、基板1の下面に対して所定の距離に熱風ヒータの噴出し口が配置される。エアノズル17は、熱風ヒータの周囲に配置されている。このとき、局所加熱装置は、図17に示す状態となっており、この状態において、基板1が加熱される。
【0109】
基板1の加熱が終了すると、第3リニアアクテュエータにより熱風ヒータが基板1の下方に離される。次に、第4リニアアクテュエータによりエアノズル17がZ方向に移動させられて、エアノズル17の噴出し口が基板1の局所位置の下面に近づけられる。このときも加熱時に引き続き、空間11に接続されている排気手段により、空間11内の高温の空気は装置外に排気されている。よって、熱風ヒータから噴射される熱風の影響をさらに低減することができる。この状態で、図19に示すように、エアノズル17から冷却ガスが基板1の局所位置の下面に噴射され、基板1を冷却する。
【0110】
局所加熱装置をこのような構成にすることにより、熱風ヒータから噴射される熱風の影響を低減するとともに、エアノズル17を冷却に適した位置に配置して基板1を冷却することができる。なお、冷却装置が第3高さ調節手段を備えていない場合にも、予めエアノズル17を基板支持部材4の上面に対して所定の距離に配置することにより、同様の効果を得ることができる。その結果、基板の冷却効率を高めて冷却時間を短縮することができ、基板の加熱乾燥工程のタクトタイムを削減することができる。他の構成については、実施の形態1,7と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
本発明の実施の形態において、熱風ヒータから常時、熱風が噴射されている場合について説明したが、基板を加熱するたびに熱風ヒータの電量供給をON/OFFするようにしてもよい。
【0112】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1 基板、2 加熱部、3 非接触加熱手段、4 基板支持部材、5 搬送ローラ、6 排気口、7 排気筒、8 ローラ軸、9 パスライン、10 排気管、11 空間、12 吸着孔、13 吸着用配管、14 待機領域、15 温度校正用基板、16 熱電対、17 エアノズル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を局所的に加熱する装置であって、
前記基板を搬送する搬送手段と、
側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間が形成され、上部開口端の全周が前記基板の下面と接触して前記基板を支持する基板支持部材と、
前記基板支持部材が前記基板を支持した状態で前記空間の内部に位置し、前記基板の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して、非接触な状態で前記局所位置を加熱する非接触加熱手段と、
前記空間と連通するように接続され、前記空間に存在する空気を排出する排気手段と、
前記基板の下面に接触する前記基板支持部材の上面が所定の高さになるように調節する第1高さ調節手段と、
前記非接触加熱手段を前記基板の前記局所位置に位置決めする移動手段と
を備える、局所加熱装置。
【請求項2】
前記基板支持部材の上面から所定の距離に前記非接触加熱手段を配置する第2高さ調節手段をさらに備える、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項3】
前記排気手段が、前記基板支持部材により支持された状態の前記基板の直下に接続される、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項4】
前記非接触加熱手段の熱風の噴射量より前記排気手段の空気の排出量の方が大きくなるように制御される、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項5】
前記基板支持部材が、前記基板の下面に吸着して前記基板を支持する吸着部をさらに備える、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項6】
前記基板を加熱するとき以外は、前記基板搬送手段が配置される領域以外の待機領域において、前記非接触加熱手段および前記基板支持部材が待機する、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項7】
前記待機領域において温度計測装置を含む温度校正用基板を用いて前記非接触加熱手段による基板加熱温度を調節する、請求項6に記載の局所加熱装置。
【請求項8】
前記温度校正用基板が、前記温度計測装置として熱電対を含む基板である、請求項7に記載の局所加熱装置。
【請求項9】
前記基板を下面側から冷却する冷却装置を備える、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項10】
前記非接触加熱手段および前記冷却装置の前記基板の下面に対する距離をそれぞれ独立して制御することができる、請求項9に記載の局所加熱装置。
【請求項1】
基板を局所的に加熱する装置であって、
前記基板を搬送する搬送手段と、
側部周囲を囲まれ上下に開口を有する空間が形成され、上部開口端の全周が前記基板の下面と接触して前記基板を支持する基板支持部材と、
前記基板支持部材が前記基板を支持した状態で前記空間の内部に位置し、前記基板の加熱対象となる局所位置の下面側に熱風を噴射して、非接触な状態で前記局所位置を加熱する非接触加熱手段と、
前記空間と連通するように接続され、前記空間に存在する空気を排出する排気手段と、
前記基板の下面に接触する前記基板支持部材の上面が所定の高さになるように調節する第1高さ調節手段と、
前記非接触加熱手段を前記基板の前記局所位置に位置決めする移動手段と
を備える、局所加熱装置。
【請求項2】
前記基板支持部材の上面から所定の距離に前記非接触加熱手段を配置する第2高さ調節手段をさらに備える、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項3】
前記排気手段が、前記基板支持部材により支持された状態の前記基板の直下に接続される、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項4】
前記非接触加熱手段の熱風の噴射量より前記排気手段の空気の排出量の方が大きくなるように制御される、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項5】
前記基板支持部材が、前記基板の下面に吸着して前記基板を支持する吸着部をさらに備える、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項6】
前記基板を加熱するとき以外は、前記基板搬送手段が配置される領域以外の待機領域において、前記非接触加熱手段および前記基板支持部材が待機する、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項7】
前記待機領域において温度計測装置を含む温度校正用基板を用いて前記非接触加熱手段による基板加熱温度を調節する、請求項6に記載の局所加熱装置。
【請求項8】
前記温度校正用基板が、前記温度計測装置として熱電対を含む基板である、請求項7に記載の局所加熱装置。
【請求項9】
前記基板を下面側から冷却する冷却装置を備える、請求項1に記載の局所加熱装置。
【請求項10】
前記非接触加熱手段および前記冷却装置の前記基板の下面に対する距離をそれぞれ独立して制御することができる、請求項9に記載の局所加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−164652(P2010−164652A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4918(P2009−4918)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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