説明

弾性ローラの製造方法、並びに弾性ローラ及びそれを用いた画像形成装置

【課題】ポリウレタンフォームのセルサイズが略均一で、画像ムラの発生を抑えることが可能な弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】シャフト1が配置されたモールド2に、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び水を含むウレタン原料3を、吐出ヘッド4を備えるウレタン発泡機を用いて注入し、発泡成形させたポリウレタンフォームからなる弾性層を備える弾性ローラの製造方法において、前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、次式:0.26 ≦ ライズタイム/タックタイム ≦ 0.81の関係を満たす。また、発泡成形におけるウレタン反応速度は、タックタイムが13〜120秒の範囲で且つライズタイムが10〜80秒の範囲であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラの製造方法、並びにその製造方法によって形成された弾性ローラ及び該弾性ローラを用いた画像形成装置に関し、特に、ポリウレタンフォームのセルサイズが略均一で、画像ムラの発生を抑えることが可能な弾性ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の画像形成装置においては、現像ローラ、帯電ローラ、トナー搬送ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として、ロール形状の弾性部材、即ち、弾性ローラが多用されており、該弾性ローラは、通常、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフトと、該シャフトの外周に配設された弾性層とを備えている。
【0003】
上記弾性ローラのシャフトには、鉄やステンレス等の金属の他、エンジニアリングプラスチック等の種々の樹脂が用いられる。また、上記弾性ローラの弾性層には、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)等のエラストマーやこれらを発泡させた発泡体が用いられており、これらの中でも、ウレタン材料を発泡成形させたポリウレタンフォームが多用されている。
【0004】
上記ポリウレタンフォームからなる弾性層を有する弾性ローラの製造方法としては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤(水、低沸点物等)、触媒等を含むウレタン原料を、シャフトが配置された円筒状のモールドに注入して発泡成形させる方法が知られている(特許文献1〜2)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−161807号公報
【特許文献2】特開2002−307454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、一般に、発泡成形におけるウレタンの反応速度は遅く、成形されたポリウレタンフォームに粗大セルが発生し易いため、かかるポリウレタンフォームからなる弾性層を有する弾性ローラを画像形成装置に用いた場合においては、画像ムラが発生するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ポリウレタンフォームのセルサイズが略均一で、画像ムラの発生を抑えることが可能な弾性ローラの製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、かかる製造方法によって形成された弾性ローラと、該弾性ローラを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の発泡成形におけるウレタン反応速度で発泡成形させたポリウレタンフォームからなる弾性層を有する弾性ローラを、画像形成装置に用いることで、画像ムラの発生を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の弾性ローラの製造方法は、シャフトが配置されたモールドに、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び水を含むウレタン原料を、吐出ヘッドを備えるウレタン発泡機を用いて注入し、発泡成形させたポリウレタンフォームからなる弾性層を備える弾性ローラの製造方法において、
前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、下記式(I):
0.26 ≦ ライズタイム/タックタイム ≦ 0.81 ・・・ (I)
の関係を満たすことを特徴とする。
【0010】
本発明の弾性ローラの製造方法において、前記発泡成形におけるウレタン反応速度は、タックタイムが13〜120秒の範囲で且つライズタイムが10〜80秒の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明の弾性ローラの製造方法の好適例においては、前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、前記触媒の種類及びその使用量並びに前記水の使用量の内の少なくとも一種を選択することにより調節される。この場合、上記式(I)の関係を満たす発泡成形におけるウレタン反応速度が容易に達成される。
【0012】
本発明の弾性ローラの製造方法の他の好適例においては、前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、前記ウレタン原料の貯蔵温度及び前記吐出ヘッドの使用温度の内の少なくとも一種を変えることにより調節される。この場合、上記式(I)の関係を満たす発泡成形におけるウレタン反応速度が容易に達成される。
【0013】
本発明の弾性ローラの製造方法の他の好適例においては、前記ウレタン発泡機が、ウレタン高圧発泡機である。
【0014】
また、本発明の弾性ローラは、シャフトと、該シャフトの外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層とを備え、前記弾性層が、上記の弾性ローラの製造方法によって形成されてなることを特徴とする。
【0015】
本発明の弾性ローラは、トナー搬送ローラ、転写ローラ又はクリーニングローラとして好適である。
【0016】
更に、本発明の画像形成装置は、上記の弾性ローラを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定の発泡成形におけるウレタン反応速度でウレタン原料を発泡成形させることにより、弾性層としてのポリウレタンフォームのセルサイズが略均一で、画像ムラの発生を抑えることが可能な弾性ローラを製造することができる。また、かかる方法で得られる弾性ローラを適用した、良好な画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<弾性ローラ>
以下に、本発明の弾性ローラの製造方法を、図を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の弾性ローラの製造方法の一例を説明する工程図であり、図2は、図1に示す製造方法によって形成された本発明の弾性ローラの一例の斜視図であり、図3は、図1に示す弾性ローラの製造方法に用いるウレタン発泡機の吐出ヘッドの一例の断面図である。
【0019】
図1の工程図に示すように、本発明の弾性ローラの製造方法は、予めシャフト1が配置されたモールド2に、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び水を含むウレタン原料3を、吐出ヘッド4を備えるウレタン発泡機を用いて注入し、発泡成形させることによって、ポリウレタンフォームからなる弾性層が形成される。なお、図示例のモールド2は、その両端部に孔部5を有するキャップ6,7が嵌め合わされ、一方のキャップ6の孔部5がウレタン原料3の注入口として作用し、他方のキャップ7の孔部5がエアー抜きとして作用している。
【0020】
また、図2に示すように、発泡成形後にモールドから取り出した弾性ローラ8は、シャフト1と、該シャフト1の外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層9とを備える。
【0021】
ここで、本発明の弾性ローラの製造方法は、上記発泡成形におけるウレタン反応速度が、上記式(I)の関係を満たすことを特徴とする。一般に、弾性層としてのポリウレタンフォーム中に存在するセルは、弾性ローラにトナーを出入りさせる作用があり、それによって、トナーを搬送したり、隣接する部材からトナーを掻き取ることができる。しかしながら、吐出ヘッドを備えるウレタン発泡機を用いた弾性ローラの製造方法においては、一般に発泡成形におけるウレタンの反応速度が遅く、形成されるポリウレタンフォームに粗大セルが発生するため、トナーの搬送及び掻き取りの作用が十分に機能しなくなり、画像ムラの原因となっていた。そこで、本発明者らは、ポリウレタンフォームのセルサイズについて詳細に検討したところ、ポリウレタンフォームのセルサイズの均一化を図るためには、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応の反応速度と、生成する気泡の膨張速度との相関関係が重要であることが分かった。この知見から、本発明の弾性ローラの製造方法においては、後で詳細に説明するライズタイム/タックタイムを、発泡成形におけるウレタン反応速度として規定し、かかるウレタン反応速度の最適化が必要と考えられる。そして、本発明の弾性ローラの製造方法においては、上記発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)が0.26〜0.81であるため、ポリウレタンフォームのセルサイズを略均一に調整し、粗大セルの発生を抑えることができる。換言すれば、ウレタン原料の組成や製造条件等を選択することにより、発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)を上記の特定した範囲内に設定してさえいれば、ポリウレタンフォームのセルサイズが略均一に調整された弾性層を有する弾性ローラを安定して製造することができることになる。
【0022】
本発明の弾性ローラの製造方法においては、上記発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)が0.26〜0.81であることを要し、0.30〜0.75であることが好ましい。ここで、ライズタイム/タックタイムの値が0.26未満では、ポリウレタンフォームに粗大セルが発生し易く、一方、0.81を超えると、弾性ローラの製造においてポリウレタンフォームのモールドに接した部分に、表面セルの開口部が薄い層で閉じられたセル、即ち、無開口の表面セル部分が形成され易い。なお、この発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)は、例えば、(1)ウレタン原料中に含まれる触媒の種類及びその使用量並びに水の使用量の内の少なくとも一種を適宜選択したり、(2)ウレタン原料の貯蔵温度及び吐出ヘッドの使用温度の内の少なくとも一種を適宜変更したり、更には(3)上記(1)及び(2)の方法を併用することにより、容易に調節することができる。
【0023】
上記ライズタイムは、ポリウレタンフォームの発泡成形において生成した気泡の膨張速度を表す指標であって、上記式(I)の関係を満たす限り特に制限されるものではないが、10〜80秒であることが好ましい。ここで、ライズタイムは、ウレタン発泡機の吐出ヘッドによりウレタン原料を吐出してから、ウレタン原料に対するポリウレタンフォームの体積が10倍に発泡膨張するまでの時間(秒)である。該ライズタイムが10秒未満では、ポリウレタンフォームの成型性が悪化するおそれがあり、一方、80秒を超えると、弾性ローラの製造においてポリウレタンフォームのモールドに接した部分に無開口の表面セル部分が形成され易く、かかる弾性ローラをトナー搬送ローラとして画像形成装置に用いた場合、トナー搬送量が低下するおそれがある。
【0024】
上記タックタイムは、ポリウレタンフォームの発泡成形においてウレタン化反応の反応速度を表す指標であって、上記式(I)の関係を満たす限り特に制限されるものではないが、13〜120秒であることが好ましい。ここで、タックタイムは、ウレタン発泡機の吐出ヘッドによりウレタン原料を吐出してから、生成するポリウレタンフォームが糸を曳くまでの時間(秒)である。なお、「糸を曳く」とは、吐出されたウレタン原料の表面に棒状の木片を当てて、引き離す際に、生成するポリウレタンフォームが木片に付着したまま5mm以上伸長する状態を指す。なお、木片は棒状であれば、これに限定されるものではなく、紙片やプラスチック片でもよい。該タックタイムが13秒未満では、弾性ローラの製造においてポリウレタンフォームのモールドに接した部分に無開口の表面セル部分が形成され易く、かかる弾性ローラをトナー搬送ローラとして画像形成装置に用いた場合、トナー搬送量が低下するおそれがあり、一方、120秒を超えると、ポリウレタンフォームに粗大セルが発生し易くなる。
【0025】
以上のことから、本発明の弾性ローラの製造方法において、上記発泡成形におけるウレタン反応速度は、タックタイムが13〜120秒の範囲で且つライズタイムが10〜80秒の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の弾性ローラの製造方法において、上記ウレタン発泡機は、ウレタン原料をモールドに注入するための吐出ヘッドを備えていればよく、通常のウレタン発泡に使用されるウレタン発泡機を用いることができるが、例えば、吐出ヘッド内のウレタン原料の滞留時間を短縮することが可能なウレタン高圧発泡機を用いることが好ましい。一般に、ウレタン低圧発泡機は、吐出ヘッドの構造上、調節できる発泡成形におけるウレタン反応速度の範囲が狭い傾向にある。例えば、ウレタン低圧発泡機の発泡成形におけるウレタン反応速度を高めると、ウレタン発泡機の吐出ヘッド内でウレタン原料の粘度が上昇し、吐出が不均一になったり、更には、ウレタン原料が硬化し、吐出ができなくなる場合もある。これに対し、ウレタン高圧発泡機であれば、吐出ヘッド内のウレタン原料の滞留時間が短いため、発泡成形におけるウレタン反応速度を問題なく調節できる。なお、上記式(I)の関係を満たす発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)を得るために、上記ウレタン原料の貯蔵温度は、15〜70℃の範囲が好ましく、また、上記吐出ヘッドの使用温度は、10〜70℃の範囲が好ましい。
【0027】
本発明の弾性ローラの製造方法において、ウレタン発泡機としてウレタン高圧発泡機を用いた場合、例えば、モールドへの注入に際し、ウレタン原料をポリオール成分系(触媒及び水を含む、以下同じ)とポリイソシアネート成分系とに分別し、両成分系を高圧下で、好ましくは圧力50〜300kg/cm2で衝突混合して、高圧発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなる弾性層が形成される。この場合、吐出ヘッドとしては、図3に示す構造のものが好適に挙げられる。図示例の吐出ヘッド4は、ポリオール成分系とポリイソシアネート成分系の各流入口10,11が、互いに対向する位置に設けられており、それぞれの流入口10,11から各成分系を噴射して、衝突混合することにより、高圧発泡が実施される。
【0028】
本発明の弾性ローラの製造方法において、弾性層9は、ポリオール、ポリイソシネート、触媒及び水を含むウレタン原料を発泡形成させたポリウレタンフォームからなり、必要に応じて導電剤等の他の成分を含むことができる。
【0029】
上記ウレタン原料に用いるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、プロピレンオキサイド(PO)変性ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。なお、上記ポリエステルポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多塩基カルボン酸とから得られ、また、上記ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られる。
【0030】
上記ウレタン原料に用いることができるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(粗MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等を用いることができる。これらポリイソシアネートの使用量は、該ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と上記ポリオールの水酸基(OH)との比(NCO/OH)が95/100〜110/100の範囲になるよう適宜選択されることが好ましい。
【0031】
また、上記ウレタン原料は、上記ポリオール及びポリイソシアネートに代えて、予め上記ポリオールとポリイソシアネートを反応させたウレタンプレポリマーを用いてもよい。なお、合成されたウレタンプレポリマーのNCO基含有率は、3〜30質量%の範囲が好ましく、5〜15質量%の範囲が更に好ましく、ウレタンプレポリマーの合成におけるポリイソシアネート及びポリオールの使用量は、ウレタンプレポリマーのNCO基含有率が上記の範囲になるよう適宜選択されることが好ましい。上記ウレタン原料は、上記ポリオール及びポリイソシアネートに代えて、予め上記ポリオールとポリイソシアネートを反応させたウレタンプレポリマーを用いる場合、更に鎖延長剤を含むことが好ましい。上記鎖延長剤は、上記ウレタンプレポリマー同士を連結する化合物であり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これら鎖延長剤の使用量は、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)と鎖延長剤の水酸基(OH)との比(NCO/OH)が95/100〜110/100の範囲になるよう、適宜選択されることが好ましい。
【0032】
上記原料混合物に用いる水は、発泡剤として作用し、上記ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と反応して炭酸ガスを発生させる。また、水の使用量は、上記ポリオール又はウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5〜5質量部の範囲が好ましく、上記発泡成形におけるウレタン反応速度を調節する観点から、0.8〜4質量部の範囲が更に好ましい。
【0033】
上記原料混合物に用いる触媒は、ウレタン化反応用の触媒であり、具体的には、ジブチルスズジラウレート,ジブチルスズジアセテート,ジブチルスズチオカルボキシレート,ジブチルスズジマレエート,ジオクチルスズチオカルボキシレート,オクテン酸スズ、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン,テトラメチルプロパンジアミン,テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類;ペンタメチルジエチレントリアミン,ペンタメチルジプロピレントリアミン,テトラメチルグアニジン等のトリアミン類;トリエチレンジアミン,ジメチルピペラジン,メチルエチルピペラジン,メチルモルホリン,ジメチルアミノエチルモルホリン,ジメチルイミダゾール等の環状アミン類;ジメチルアミノエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノール,トリメチルアミノエチルエタノールアミン,メチルヒドロキシエチルピペラジン,ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル,エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類等が挙げられる。これら触媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記触媒の使用量は、上記発泡成形におけるウレタン反応速度を調節する観点から、適宜選択すればよい。
【0034】
上記ウレタン原料は、更にポリウレタンフォームのセルを安定させるため、整泡剤を含むことが好ましい。上記ウレタン原料に用いることができる整泡剤としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーン系整泡剤の他、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活剤等を挙げることができる。該整泡剤の使用量は、上記ポリオール又はウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5〜5.0質量部の範囲が好ましい。
【0035】
上記ウレタン原料には、上記ポリウレタンフォームからなる弾性層に導電性を付与するため、導電剤を添加してもよく、該導電剤としては、イオン導電剤、電子導電剤等が挙げられる。イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられ、電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウィスカー、黒鉛ウィスカー、炭化チタンウィスカー、導電性チタン酸カリウムウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー、導電性酸化チタンウィスカー、導電性酸化亜鉛ウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。これら導電剤の使用量は、上記ポリウレタンフォームからなる弾性層が所望の導電性を有するように適宜調整することができる。
【0036】
上記ウレタン原料には、上記ポリオール、ポリイソシアネート、水、触媒、整泡剤、導電剤の他に、弾性ローラの製造に通常使用される添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0037】
本発明の弾性ローラは、上記した通り、シャフト1と、該シャフト1の外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層9とを備え(図2参照)、該弾性層9が、上述した弾性ローラの製造方法によって形成されてなることを特徴とする。該弾性ローラは、画像形成装置の現像ローラ、帯電ローラ、トナー搬送ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として用いることができるが、トナー搬送ローラ、転写ローラ、クリーニングローラとして好適である。
【0038】
また、本発明の弾性ローラのシャフト1としては、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフト、或いは良導電性のプラスチック製シャフト等を用いることができる。
【0039】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した弾性ローラを用いたことを特徴とし、トナー搬送ローラ、転写ローラ及びクリーニングローラの少なくともいずれかに用いることが好ましい。本発明の画像形成装置は、上記弾性ローラを用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0040】
以下に、図4を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図4は、本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、静電潜像を保持した感光ドラム12と、感光ドラム12の近傍(図では上方)に位置し感光ドラム12を帯電させるための帯電ローラ13と、トナー14を供給するためのトナー搬送ローラ15と、トナー搬送ローラ15と感光ドラム12との間に配置された現像ローラ16と、現像ローラ16の近傍(図では上方)に設けられた成層ブレード17と、感光ドラム12の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ18と、感光ドラム12に隣接して配置されたクリーニングローラ19とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画像形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0041】
図示例の画像形成装置においては、感光ドラム12に帯電ローラ13を当接させて、感光ドラム12と帯電ローラ13との間に電圧を印加して、感光ドラム12を一定電位に帯電させた後、露光機(図示せず)により静電潜像を感光ドラム12上に形成する。次に、感光ドラム12と、トナー搬送ローラ15と、現像ローラ16とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー搬送ローラ15上のトナー14が現像ローラ16を経て感光ドラム12に送られる。現像ローラ16上のトナー14は、成層ブレード17により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ16と感光ドラム12とが接触しながら回転することにより、トナー14が現像ローラ16から感光ドラム12の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー14は、転写ローラ18で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光ドラム12上に残留するトナー14は、クリーニングローラ19によって除去される。ここで、本発明の画像形成装置においては、トナー搬送ローラ15、転写ローラ18及びクリーニングローラ19の少なくともいずれかに、上述した本発明の弾性ローラを用いることで、優れた画像を形成することが可能となる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜5及び比較例1〜2)
予め、直径6mm、長さ320mmの金属製シャフトを中心に配設した内径20mm、長さ300mmの円筒状のモールドに、ポリオール成分系及びポリイソシアネート成分系からなるウレタン原料を、図3に示す構造の吐出ヘッドを備えるウレタン高圧発泡機を用いて注入し、発泡成形させて、図2に示す構造の弾性ローラを得た。ここで、高圧発泡の条件として、吐出ヘッド内における噴射圧力を150kg/cm2とした。なお、ポリオール成分系及びポリイソシアネート成分系の配合処方、並びにウレタン原料の貯蔵温度及び吐出ヘッドの使用温度を表1に示す。
【0044】
なお、弾性ローラを製造する際においてライズタイム及びタックタイムを下記の方法で測定しており、また、得られた弾性ローラにおいては、粗大セルの有無、無開口の表面セル部分の有無及び画像ムラを下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0045】
(1)ライズタイム
表1に示す条件で、メスシリンダー又は体積を測定できる目盛りのついた容器に、ウレタン原料を吐出した。ポリウレタンフォームの体積が、吐出直後のウレタン原料に対して10倍に膨張するまでの時間(秒)を測定した。
【0046】
(2)タックタイム
表1に示す条件で、容器にウレタン原料を吐出した。次に、吐出されたウレタン原料の表面に、棒状の細い木片を当て、引き離す工程を繰り返し行った。このとき、ウレタン原料を吐出してから、生成するポリウレタンフォームが糸を曳くまでの時間(秒)を測定した。
【0047】
(3)粗大セルの有無
マイクロスコープにて直径800μm以上の表面セルの有無を確認した。
【0048】
(4)無開口の表面セル部分の有無
マイクロスコープにて無開口の表面セル部分の有無を確認した。
【0049】
(5)画像ムラ
得られた弾性ローラをトナー搬送ローラとしてプリンターに装着して画像テストを実施した。ハーフトーン画像を印刷し、目視にて画像濃度ムラが確認されないものを「○」、及び画像濃度ムラが確認されたものを「×」として評価した。
【0050】
【表1】

【0051】
*1 三洋化成工業(株)製, ポリエーテルポリオール.
*2 架橋剤.
*3 東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製, シリコーン整泡剤.
*4 花王(株)製, アミン触媒.
*5 花王(株)製, アミン触媒.
*6 花王(株)製, アミン触媒.
*7 TDI−80と粗MDIの混合物中の質量比を示す.なお,TDI−80は,2,4-トリレンジイソシアネート(A)と2,6-トリレンジイソシアネート(B)との質量比(A/B)が80/20の混合物である.
*8 ポリイソシアネート成分系の使用量を指数表示したものである.NCOインデックス=(ポリイソシアネート成分系中のNCOのモル数/ポリオール成分系中の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数)×100.
【0052】
表1から、実施例1〜5の製造方法により得られた弾性ローラは、発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)が上記式(I)の関係を満たすため、比較例1の製造方法により得られた弾性ローラと比べて、ポリウレタンフォームのセルサイズが均一であり、また、比較例2の製造方法により得られた弾性ローラに確認された無開口の表面セル部分が存在していないことが分かる。その結果、実施例1〜5の製造方法により得られた弾性ローラを用いた画像形成装置によれば、画像ムラの発生が十分に抑制された良好な画像を形成できることが確認された。また、触媒の種類及びその使用量並びに水の使用量を適宜選択したり、ウレタン原料の貯蔵温度及び吐出ヘッドの使用温度を適宜変更することにより、発泡成形におけるウレタン反応速度(ライズタイム/タックタイム)を調節できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の弾性ローラの製造方法の一例を説明する工程図である。
【図2】図1に示す製造方法によって形成された本発明の弾性ローラの一例の斜視図である。
【図3】図1に示す弾性ローラの製造方法に用いるウレタン発泡機の吐出ヘッドの一例の断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 シャフト
2 モールド
3 ウレタン原料
4 吐出ヘッド
5 孔部
6 キャップ
7 キャップ
8 弾性ローラ
9 弾性層
10 流入口
11 流入口
12 感光ドラム
13 帯電ローラ
14 トナー
15 トナー搬送ローラ
16 現像ローラ
17 成層ブレード
18 転写ローラ
19 クリーニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが配置されたモールドに、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び水を含むウレタン原料を、吐出ヘッドを備えるウレタン発泡機を用いて注入し、発泡成形させたポリウレタンフォームからなる弾性層を備える弾性ローラの製造方法において、
前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、下記式(I):
0.26 ≦ ライズタイム/タックタイム ≦ 0.81 ・・・ (I)
の関係を満たすことを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記発泡成形におけるウレタン反応速度は、タックタイムが13〜120秒の範囲で且つライズタイムが10〜80秒の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、前記触媒の種類及びその使用量並びに前記水の使用量の内の少なくとも一種を選択することにより調節されることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記発泡成形におけるウレタン反応速度が、前記ウレタン原料の貯蔵温度及び前記吐出ヘッドの使用温度の内の少なくとも一種を変えることにより調節されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記ウレタン発泡機が、ウレタン高圧発泡機であることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
シャフトと、該シャフトの外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層とを備える弾性ローラにおいて、
前記弾性層が、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性ローラの製造方法によって形成されてなることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項7】
トナー搬送ローラ、転写ローラ又はクリーニングローラであることを特徴とする請求項6に記載の弾性ローラ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の弾性ローラを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−304627(P2008−304627A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150629(P2007−150629)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】