説明

洗浄乾燥装置

【課題】純水洗浄の省略が許容される被洗浄物を洗浄する装置において、洗浄時間が長くなるのを防止しつつ洗浄液の長寿命化を図る。
【解決手段】外側容器14と、外側容器14内に配設され、洗浄液が貯溜されるとともに被洗浄物Wを出し入れ可能な開口部が設けられた内側容器38と、被洗浄物Wに付着した洗浄液が蒸発する程度に外側容器14の内部を減圧させるための減圧手段20と、洗浄液を浄化するためのフィルタ58と、内側容器38の開口部を気密状に塞ぐための蓋52と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、二槽タイプの真空脱脂洗浄装置が知られている。この洗浄装置は、図2に示すように、洗浄室101の上に乾燥室102が配設され上下二槽に構成されるものであり、洗浄室101に貯溜された洗浄液によって被洗浄物Wを洗浄し、その後昇降装置103によって被洗浄物Wを乾燥室102まで引き上げ、乾燥室102内を真空引きすることで被洗浄物Wを乾燥させるようにしている。また、洗浄液中の汚れ成分が被洗浄物Wに付着することを考慮し、被洗浄物Wを乾燥させる前に被洗浄物Wに洗浄液を浴びせるシャワー104を乾燥室102に設けるようにしている。
【0003】
一方、特許文献2に開示されているように、一槽タイプの洗浄装置も知られている。図3に示すように、この洗浄装置では、洗浄槽111が、洗浄液による被洗浄物Wの洗浄を行うだけでなく、純水による純水洗浄と被洗浄物Wの乾燥とが行えるようになっている。また洗浄槽111には、洗浄液を循環させて汚れ成分をフィルタ112で除去する循環ろ過装置113が設けられている。そして洗浄液による洗浄時には循環ろ過装置113を作動させて洗浄液の清浄度を維持するようにしている。また洗浄後には、汚れた洗浄液をドレイン管114を通じて排出し、純水供給ライン115から洗浄槽111に純水を供給し、循環ろ過装置113を作動させながら被洗浄物Wの水洗をしている。そして、最後に純水を排出するとともに、エア供給ダクト116を通して洗浄槽111に乾燥エアを供給して被洗浄物Wを乾燥させ、一連の洗浄工程を終えるようにしている。
【特許文献1】特開平7−109590号公報
【特許文献2】特開平6−84872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献2の洗浄装置では、一槽タイプとなっているので、装置の小型化が可能であるが、この装置では、純水洗浄するためには、洗浄液を排出(廃棄)して洗浄槽111内を空にしないといけない。この洗浄装置は、洗浄液による洗浄後に純水洗浄が必要な被洗浄物Wを対象とした装置であるが、この洗浄装置では、一回ごとに洗浄液を廃棄する必要があるため、大量の洗浄液が必要になるという問題がある。
【0005】
一方、特許文献1の洗浄装置では、純水洗浄工程がないことから、一回ごとに洗浄液を廃棄する必要はないが、洗浄液が洗浄室101にずっと溜められていることになるので、洗浄液は次第に汚れてくる。このため汚れた洗浄液で被洗浄物Wを洗浄せざるを得ないという問題がある。また、被洗浄物Wに付着した汚れをシャワー104で洗い落とすようにしているが、この構成では、洗浄工程での時間が余分にかかってしまうという問題が残されている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、純水洗浄の省略が許容される被洗浄物を洗浄する装置において、洗浄時間が長くなるのを防止しつつ洗浄液の長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、被洗浄物を洗浄液で洗浄するとともに被洗浄物に付着した洗浄液を乾燥させる洗浄乾燥装置であって、外側容器と、前記外側容器内に配設され、前記洗浄液が貯溜されるとともに被洗浄物を出し入れ可能な開口部が設けられた内側容器と、被洗浄物に付着した洗浄液が蒸発する程度に前記外側容器の内部を減圧させるための減圧手段と、前記洗浄液を浄化するための浄化手段と、前記内側容器の前記開口部を気密状に塞ぐための蓋と、を備えている洗浄乾燥装置である。
【0008】
本発明では、洗浄液を浄化する浄化手段が設けられているため、内側容器内で被洗浄物を洗浄することで洗浄液が汚れることがあるとしても、洗浄液の浄化が可能となる。このため、洗浄後に改めてシャワーをする等の対策を講ずる必要がなく、洗浄工程が長くなるのを防止することができる。しかも洗浄液を長持ちさせることができる。また、外側容器の内部を減圧することによって洗浄後の被洗浄物を乾燥させるので、被洗浄物を細部に亘って乾燥させることができる。このとき、内側容器が蓋によって気密状に塞がれているため、内側容器内の洗浄液をそこに溜めたまま外側容器内を減圧することができる。このため、被洗浄物の乾燥時に洗浄液を排出する時間を省略でき、乾燥工程の時間を短縮できるとともに、無駄な洗浄液の廃棄を防止することができる。しかも、被洗浄物の乾燥に用いられる外側容器内に洗浄用の内側容器が収容される構成となっているので、密閉容器として構成する必要のある外側容器自体の加工工数が増えるのを抑制することができる。さらに、外側容器の内側に内側容器が配設される構成となっているので、装置の設置時等において内側容器の水平度を調整する際に内側容器のみを独立して動かすことができ、調整作業が煩雑になるのを抑制することができる。つまり、図2に示す上下二槽の構成では、洗浄室と乾燥室との間のシール性を確保すべく、洗浄室には乾燥室がリジッドに固定されており、この洗浄室の水平度を調整するには、乾燥室が一体となった装置の傾き調整を行わなければならず、調整作業が煩雑となる。これに対し、本発明のように外側容器内に内側容器が収容される構成では、外側容器と内側容器との接合部でシール性を確保する必要が生じないので、内側容器単体で傾き調整を行うことが可能となり、調整作業に要する労力が低減される。
【0009】
前記洗浄乾燥装置において、洗浄液を加熱するヒータを備えているのが好ましい。外側容器内では、減圧に伴って洗浄液が蒸発するため、気化潜熱による温度低下が生ずるが、この態様では、洗浄液を加熱するヒータが設けられているので、温度低下に伴って内側容器内の洗浄液が凝固するのを防止することができる。また、洗浄液の温度上昇により洗浄能力を向上させることもできる。また、処理温度を一定に保つこともできる。
【0010】
また、前記洗浄乾燥装置において、前記内側容器は、容器内部を、被洗浄物が浸漬される第1室と、第2室とに仕切る仕切り壁を備え、前記内側容器には、一端部が前記第1室に接続されるとともに他端部が前記第2室に接続された循環路が設けられ、前記循環路にポンプが設けられる場合には、このポンプの駆動により前記第1室内の洗浄液を前記仕切り壁から前記第2室内へオーバーフローさせるのが好ましい。
【0011】
この態様では、ポンプが駆動すると、第2室内の洗浄液が循環路を通して第1室へ流入する。そして、第1室内の洗浄液は仕切り壁からオーバーフローして第2室内へ流れ込む。このように洗浄液を強制的に循環させることができる。すなわち、被洗浄物が浸漬される第1室内の洗浄液を強制的に流動させることができるので、被洗浄物の洗浄能力を向上することができる。
【0012】
この態様において、前記浄化手段は、前記循環路に設けられたフィルタによって構成されているのが好ましい。この態様では、ポンプの駆動によって洗浄液が内側容器から循環路に流入し、この洗浄液が循環路を流れる。そして、この洗浄液はフィルタによって浄化される。
【0013】
前記洗浄乾燥装置において、前記内側容器に超音波洗浄手段が設けられているのが好ましい。この態様では、被洗浄物の洗浄力をさらに向上することができる。
【0014】
前記洗浄乾燥装置において、前記減圧手段は、前記外側容器に接続された吸引路と、この吸引路に設けられたポンプとを備え、前記吸引路は、気液分離器に接続され、前記気液分離器には凝縮手段が設けられているのが好ましい。
【0015】
この態様では、吸引路を通して吸引される空気が気液分離器に流入するが、この空気に含まれる気化洗浄液が気液分離器に貯溜されることとなる。気液分離器には凝縮手段が設けられているため、気化洗浄液を液化して分離することが可能である。
【0016】
前記洗浄乾燥装置において、前記被洗浄物を前記内側容器の内部と外部との間で搬送するための搬送手段を備える場合には、前記搬送手段は、前記内側容器内での被洗浄物の洗浄時に当該被洗浄物を揺動可能に構成されていてもよい。この態様では、被洗浄物を揺動させながら被洗浄物の洗浄を行うことができるので、洗浄能力をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、純水洗浄の省略が許容される被洗浄物を洗浄する装置において、洗浄時間が長くなるのを防止しつつ洗浄液の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明による洗浄乾燥装置の一実施形態を概略的に示している。本実施形態による洗浄乾燥装置10は、半導体や精密機械部品等を洗浄乾燥するための装置である。同図に示すように、洗浄乾燥装置10は、ケース12を備え、このケース12内に外側容器14が収納された構成となっている。
【0020】
外側容器14は、上側が開放された容器であり、この外側容器14には、外蓋15が設けられている。外蓋15は、外側容器14の上側に形成された外側開口16を開閉可能に構成されていて、この外側開口16を気密状に塞ぐことができるようになっている。この外側開口16は、被洗浄物Wを外側容器14内に搬入する際に使用される。
【0021】
外側容器14には、外側容器14の内部を減圧するための減圧手段20が設けられている。この減圧手段20は、吸引路20aと、真空ポンプ20bとを備えている。吸引路20aは、一端部が外側容器14に設けられた真空ポート22に接続されている。吸引路20aには第1逆止弁23、前記真空ポンプ20b、第2逆止弁24が設けられている。真空ポンプ20bを駆動することにより、外側容器14内が減圧される。
【0022】
吸引路20aの他端部は気液分離器26に接続されている。この気液分離器26は、吸引路20aを通して吸引された空気に含まれる気化洗浄液を空気から分離するためのものであり、気液分離器26には凝縮手段としての加圧ポンプ28が設けられている。加圧ポンプ28は、気液分離器26に接続されており、この加圧ポンプ28を駆動することにより、減圧状態にある気液分離器26内を加圧できるように構成されている。気液分離器26内が加圧されることにより、気化した洗浄液を液化させることができる。液化した洗浄液は洗浄液回収タンク30に回収される。
【0023】
気液分離器26には、排気路32が接続されている。この排気路32は、気液分離器26内の空気をケース12外へ排気するためのものであり、排気路32には逆止弁33が設けられている。また気液分離器26には液面センサ35が設けられている。
【0024】
外側容器14内には、内側容器38が収容されている。この内側容器38以外の外側容器14内の空間は被洗浄物Wを乾燥させるための乾燥用空間S1として機能する。内側容器38は、上側が開放された側壁(外壁)38aを有する容器であり、この容器38には洗浄液(薬液)が貯溜されている。内側容器38の内部は、仕切り壁38bによって第1室39と第2室40とに仕切られている。第1室39は、被洗浄物Wを挿入可能な大きさに構成され、第2室40は仕切り壁38bを挟んで第1室39の側方に位置している。仕切り壁38bは内側容器38の側壁38aよりも低い高さとなっているので、この仕切り壁38bを越える程度に洗浄液が第1室39内に供給された場合には、第1室39内の洗浄液は、仕切り壁38bを超えて第2室40内に貯溜されることになる。
【0025】
第2室40には液面センサ42と排出ポート44とが設けられている。液面センサ42は、第2室40内の液量を所定範囲内に制御するためのものであり、第2室40内の液面を検出可能に構成されている。そして、液面センサ42は、コントローラ46に接続されている。第2室40内の液面が下限高さを下回ると、供給ポンプ48を駆動して洗浄液供給タンク49から洗浄液を供給し、上限高さを越えると、洗浄液供給タンク49からの液供給を停止できるようになっている。排出ポート44は第2室40内の洗浄液を全排出するために使用される。
【0026】
内側容器38には、天部38cが設けられている。天部38cは、内側容器38の開口を一部塞ぐように側壁38a上に設けられている。この天部38cには、洗浄液供給タンク49が繋がる供給管50の出口端が固定されている。
【0027】
また内側容器38には、上側開口を開閉するための蓋52が設けられている。蓋52は、内側容器38の側壁38aに回動可能に設けられており、蓋52は、水平向きとなる閉じ位置と、この閉じ位置から起立した縦向きとなる開き位置との二位置を取り得る。そして、閉じ位置では、上側開口を気密状に塞ぐことができるようになっている。閉じ位置では、蓋52は天部38cと面接合することで気密性が確保されている。なお、図1では、閉じ位置にある蓋52を実線で示し、開き位置にある蓋52を破線で示している。
【0028】
内側容器38には洗浄液を循環させるための循環路55が接続されている。循環路55の一端部55a(上流側端部)は第2室40の底部に接続され、他端部55b(下流側端部)は第1室39の底部に接続されている。この他端部55bは、例えば水平方向に延びる管状に構成されていて、その管壁に設けられた多数の貫通孔(図示省略)を通して循環路55内の洗浄液を内側容器38内に流出させる。
【0029】
循環路55には循環ポンプ57と浄化手段としてのフィルタ58とが設けられている。循環ポンプ57は、洗浄液を強制的に流動させるためのものであり、この循環ポンプ57は、第2室40に接続された一端部55aから第1室39に接続された他端部55bに向かって洗浄液を流動させるように構成されている。循環ポンプ57が駆動すると、第2室40内の洗浄液を吸引する一方、循環路55内の洗浄液を第1室39内に送出し、洗浄液を内側容器38と循環路55との間で循環させることができる。フィルタ58は、洗浄液を浄化するためのものであり、洗浄液に含まれる汚れ成分を捕捉可能に構成されている。
【0030】
内側容器38には、超音波洗浄手段60が設けられている。この超音波洗浄手段60は内側容器38内の洗浄液に超音波振動を付与することで洗浄液の洗浄力を向上するものである。
【0031】
循環路55には、洗浄液を加熱可能なヒータ62が設けられている。このヒータ62はコントローラ46によって制御可能に構成されている。また、内側容器38には洗浄液の温度を検出するための液温計64が設けられている。この液温計64もコントローラ46に接続されている。ヒータ62で洗浄液を加熱するようにしているのは、外側容器14内の乾燥用空間S1を減圧することで外側容器14内の洗浄液が蒸発し、それに伴う吸熱作用により内側容器38内の洗浄液が冷却されて凝固してしまうのを防止するためである。一方、洗浄液の温度を監視することで、洗浄液が沸騰してしまうほどに加熱されるのが防止されている。なお、循環ポンプ57、フィルタ58及びヒータ62は、外側容器14の外側のケース12内に配設されている。
【0032】
循環路55にはヒータ62に滞留する洗浄液を排出するためのヒータ側排出管65と、フィルタ58に滞留する洗浄液を排出するためのフィルタ側排出管66とが接続されている。これら排出管65,66は何れもドレインタンク68に接続されている。またヒータ側排出管65には逆止弁69が、またフィルタ側排出管66にはニードル弁70がそれぞれ設けられている。また、外側容器内に溜まった洗浄液は、ドレイン管72を通してドレインタンク68に回収される。
【0033】
洗浄乾燥装置10には、被洗浄物Wを内側容器38の内部と外部との間で搬送するための搬送手段74が設けられている。搬送手段74は、図外のモータによって駆動するリフター74aを備えており、このリフター74aは、上下に延びるガイド74bに沿って上下方向に移動可能に構成されている。そして、搬送手段74は、リフター74aに載置された被洗浄物Wを、洗浄工程に先立って内側容器38の外部から内部へと搬送する一方、洗浄が終わると内側容器38の内部から外部(乾燥用空間S1)へ被洗浄物Wを搬送する。なお、図示省略しているが、外側容器14の壁には上下方向と垂直に穴が貫通形成されていて、この穴をリフターの支持部材(図示省略)が貫通している。そして、リフター74aの上下移動の際には支持部材はその穴の内側で上下移動する。この穴はベローズによって封止されていて、これにより外側容器14の密閉度が確保されている。
【0034】
リフター74aは、被洗浄物Wを洗浄する際に揺動させることができる。例えば、ガイド74bに沿ってリフター74aを上下方向に揺動させるように構成されていてもよく、あるいはリフター74aをガイド74bに対して左右に揺動可能に構成してもよい。
【0035】
次に、本実施形態による洗浄乾燥装置10の動作について説明する。この洗浄乾燥装置10の動作には、被洗浄物Wを洗浄する洗浄工程と、濡れた被洗浄物Wを乾燥させる乾燥工程とがある。洗浄工程では、被洗浄物Wが搬送手段74によって内側容器38内に搬送されて洗浄液に浸漬される。この搬送時には、外蓋15を開けて、外側容器14の外側開口16を通して外側容器14内に被洗浄物Wを入れ、蓋52を開けてリフター74aを降下させて内側容器38内に被洗浄物Wを搬入する。
【0036】
循環ポンプ57の駆動により、内側容器38の第2室40内の洗浄液が循環路55に吸入され、この洗浄液は循環路55を流れた後、他端部55b(下流側端部)を通して第1室39内に供給される。循環路55の他端部55bは第1室39の底部に設けられているため、内側容器38の第1室39内では、下から供給された洗浄液が仕切り壁38bをオーバーフローするという上向きの流動が生ずる。そして、洗浄液は内側容器38と循環路55との間で循環するが、この循環により、洗浄液に含まれる汚れ成分はフィルタ58によって除去される。
【0037】
また洗浄工程では、超音波洗浄手段60により洗浄液に超音波振動が発生し、またリフター74aの揺動により被洗浄物Wが揺動する。このため、洗浄液の流動に加えて超音波振動及び被洗浄物W自体の揺動により洗浄が行われる。そして、洗浄が終わると、リフター74aが上昇し、被洗浄物Wは内側容器38の外側、即ち乾燥用空間S1内へ運び出される。なお、洗浄時には蓋52を開けておいてもよく、あるいは閉めておいてもいい。
【0038】
乾燥工程では、内側容器38の蓋52が閉められ、真空ポンプ20bが駆動する。これにより、内側容器38の外側の空間(乾燥用空間)S1が減圧されることになる。そして、減圧に伴って洗浄液が蒸発し、これにより被洗浄物Wは乾燥する。
【0039】
一方、気化した洗浄液は真空ポンプ20bによって吸引され、吸引路20aを通して気液分離器26に導入される。気液分離器26では、加圧ポンプ28の駆動により気体状の洗浄液が凝縮し、空気と分離される。空気は排気路32を通して外部に排気され、洗浄液は洗浄液回収タンク30に回収される。
【0040】
この乾燥工程において、乾燥用空間S1での洗浄液の気化に伴って周囲の熱が奪われて温度が低下することがある。この温度低下に伴って内側容器38内の洗浄液の温度が低下し、洗浄液が凝固するのは好ましいことではないため、ヒータ62で洗浄液を加熱することにより、洗浄液の凝固を防止している。また、内側容器38内の洗浄液の温度が液温計64によって検出されており、洗浄液が沸騰してしまう温度にまで加熱されるのを防止している。なお、洗浄液は乾燥工程の際にも循環ポンプ57で循環するようにしているが、洗浄液の凝固の虞がないような場合等には洗浄工程のときだけ循環ポンプ57を駆動するようにしてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、洗浄液を浄化するフィルタ58が設けられているため、内側容器38内で被洗浄物Wを洗浄することで洗浄液が汚れることがあるとしても、洗浄液の浄化が可能となっている。したがって、洗浄後に改めてシャワーをする等の対策を講ずる必要がなく、洗浄工程が長くなるのを防止することができる。しかも洗浄液を長持ちさせることができる。また、外側容器14の内部を減圧することによって洗浄後の被洗浄物Wを乾燥させるので、被洗浄物Wを細部に亘って乾燥させることができる。このとき、内側容器38が蓋52によって気密状に塞がれているため、内側容器38内の洗浄液をそこに溜めたまま外側容器14内を減圧することができる。このため、被洗浄物Wの乾燥時に洗浄液を排出する時間を省略でき、乾燥工程の時間を短縮できるとともに、無駄な洗浄液の廃棄を防止することができる。しかも、被洗浄物Wの乾燥に用いられる外側容器14内に洗浄用の内側容器38が収容される構成となっているので、密閉容器として構成する必要のある外側容器14自体の加工工数が増えるのを抑制することができる。さらに、外側容器14の内側に内側容器38が配設される構成となっているので、装置の設置時等において内側容器38の水平度を調整する際に内側容器38のみを独立して動かすことができ、調整作業が煩雑になるのを抑制することができる。つまり、図2に示す上下二槽の構成では、洗浄室と乾燥室との間のシール性を確保すべく、洗浄室には乾燥室がリジッドに固定されており、この洗浄室の水平度を調整するには、乾燥室が一体となった装置の傾き調整を行わなければならず、調整作業が煩雑となる。これに対し、本実施形態のように外側容器14内に内側容器38が収容される構成では、外側容器14と内側容器38との接合部でシール性を確保する必要が生じないので、内側容器38単体で傾き調整を行うことが可能となり、調整作業に要する労力が低減される。特に、本実施形態では、オーバーフローさせる構成となっているので、内側容器38の微調整が要求されるが、内側容器38のみの調整で済むため、内側容器38の微調整作業を行い易いものとなっている。
【0042】
また本実施形態では洗浄液を加熱するヒータ62が設けられているので、乾燥用空間S1内での洗浄液の蒸発に伴う温度低下によって内側容器38内の洗浄液が凝固するのを防止することができる。また、洗浄液の温度上昇により洗浄能力を向上させることもできる。また処理温度を一定に保つことができる。
【0043】
また本実施形態では、循環ポンプ57が駆動すると、第2室40内の洗浄液が循環路55を通して第1室39へ流入する。そして、第1室39内の洗浄液は仕切り壁38bからオーバーフローして第2室40内へ流れ込む。このように洗浄液を強制的に循環させることができる。すなわち、被洗浄物Wが浸漬される第1室39内の洗浄液をポンプ57によって強制的に流動させることができるので、被洗浄物Wの洗浄能力を向上することができる。
【0044】
しかも本実施形態では、超音波洗浄手段60が設けられているので、被洗浄物Wの洗浄力をさらに向上することができる。
【0045】
また本実施形態では、真空ポンプ20bの駆動により吸引路20aを通して吸引される空気が気液分離器26に流入するが、この空気に含まれる気化洗浄液が気液分離器26に貯溜されることとなる。気液分離器26には凝縮手段が設けられているため、気化洗浄液を液化して分離することが可能である。
【0046】
また本実施形態では、洗浄時に被洗浄物Wを揺動させながら被洗浄物Wの洗浄を行うことができるので、洗浄能力をより向上させることができる。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、ヒータ62は循環路55に設けるようにしたが、これに代え、内側容器38内に配置するようにしてもよい。
【0048】
また本実施形態では、洗浄時にリフター74aを揺動させるようにしたが、被洗浄物Wの種類によってはリフター74aが揺動しないようにしてもよい。また超音波洗浄手段60を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態による洗浄乾燥装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】従来の洗浄乾燥装置の構成を示す図である。
【図3】従来の洗浄乾燥装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
14 外側容器
20 減圧手段
20a 吸引路
20b 真空ポンプ
26 気液分離器
28 加圧ポンプ
38 内側容器
38a 側壁
38b 仕切り壁
39 第1室
40 第2室
52 蓋
55 循環路
55a 一端部
55b 他端部
57 循環ポンプ
58 フィルタ
60 超音波洗浄手段
62 ヒータ
74 搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を洗浄液で洗浄するとともに被洗浄物に付着した洗浄液を乾燥させる洗浄乾燥装置であって、
外側容器と、
前記外側容器内に配設され、前記洗浄液が貯溜されるとともに被洗浄物を出し入れ可能な開口部が設けられた内側容器と、
被洗浄物に付着した洗浄液が蒸発する程度に前記外側容器の内部を減圧させるための減圧手段と、
前記洗浄液を浄化するための浄化手段と、
前記内側容器の前記開口部を気密状に塞ぐための蓋と、を備えている洗浄乾燥装置。
【請求項2】
洗浄液を加熱するヒータを備えている請求項1に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項3】
前記内側容器は、容器内部を、被洗浄物が浸漬される第1室と、第2室とに仕切る仕切り壁を備え、
前記内側容器には、一端部が前記第1室に接続されるとともに他端部が前記第2室に接続された循環路が設けられ、
前記循環路にポンプが設けられ、このポンプの駆動により前記第1室内の洗浄液を前記仕切り壁から前記第2室内へオーバーフローさせる請求項1又は2に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項4】
前記浄化手段は、前記循環路に設けられたフィルタによって構成されている請求項3に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項5】
前記内側容器に超音波洗浄手段が設けられている請求項1から4の何れか1項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項6】
前記減圧手段は、前記外側容器に接続された吸引路と、この吸引路に設けられたポンプとを備え、
前記吸引路は、気液分離器に接続され、
前記気液分離器には凝縮手段が設けられている請求項1から5の何れか1項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項7】
前記被洗浄物を前記内側容器の内部と外部との間で搬送するための搬送手段を備え、
前記搬送手段は、前記内側容器内での被洗浄物の洗浄時に当該被洗浄物を揺動可能に構成されている請求項1から5の何れか1項に記載の洗浄乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−294368(P2008−294368A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140798(P2007−140798)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】