説明

種々の作用剤を用いた、線維性癒着の抑制に関する医薬組成物及び方法

【課題】線維性癒着の治療、予防、抑制等に有用な作用剤の投与を含む組成物及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通手術後、生体の2つの部分の間で形成される一種の傷跡(術後癒着)である種々の繊維性癒着に関わる。
そのほかの出願に対するクロスリファレンス
【0002】
本出願は、2003年5月30日に出願された米国仮特許出願第60/474,907号、2003年6月10日に出願された米国仮特許出願第60/477、654号、2003年9月22日に出願された米国仮特許出願第60/505、257号、2003年9月22日に出願された米国仮特許出願第60/505、258号、2003年11月17日に出願された米国仮特許出願第60/520、574号、2003年11月17日に出願された米国仮特許出願第60/520、804号、2003年11月17日に出願された米国仮特許出願第60/520,808号、2003年12月11日に出願された米国仮特許出願第60/529、136号、及び2003年12月31日に出願された米国仮特許出願第60/533,669号の優先権を主張する。参照が本出願に出現してもよいことにかかわらず、その教示と開示について、これら及び本明細書で述べられるそのほかの参照のすべてを全体として参照によって本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0003】
繊維性癒着は、普通手術後、生体の2つの部分の間で形成される一種の傷跡(術後癒着)である。繊維性癒着は深刻な問題を引き起こしうる。たとえば、女性の生殖器(卵巣、ファローピオ管)に関与する繊維性癒着は、不妊、性交疼痛症及び重篤な骨盤の痛みを引き起こしうる。腸管に生じる繊維性癒着は、腸閉塞症又は腸管遮断を起こしうるし、たとえば、心臓や背骨の周辺及び手のようなそのほかの部位にも繊維性癒着が形成しうる。手術に加えて、たとえば、子宮内膜症、感染、化学療法、放射線照射、外傷及び癌によっても繊維性癒着は生じうる。
【0004】
本文書では、種々の繊維性癒着を考察する。たとえば、手術癒着、術後癒着、手術後の癒着、骨盤感染症による癒着、機械的な外傷による癒着、放射線による癒着、放射線治療による癒着、外傷による癒着、及び外来物質による癒着のような用語はすべて、類似したメカニズムによる互いの組織への癒着を言い、すべて用語、繊維性癒着に包含される。
【0005】
繊維性癒着の形成は、正常では生体で分離している組織が相互に増殖する複雑な過程である。手術癒着(術後癒着としても知られる)は、さもなければ組織の正常な創傷治癒の反応から損傷に発展し、腹部の手術患者すべての3分の2を超えて生じることが報告されている(非特許文献1)。これら繊維性癒着の結末は種々であり、外科的部位又は、たとえば、関与する病変部位のようなそのほかの部位に依存する。問題には、慢性的な疼痛、腸管の閉塞、及び心臓手術後では死亡のリスクの増加さえ含まれる可能性がある(非特許文献2; 非特許文献3; 非特許文献4)。生殖年齢の女性では、子宮、ファローピオ管又は卵巣に関与する繊維性癒着が全不妊症症例のおよそ20%の原因であると推定されている(非特許文献5; 非特許文献6)。
【0006】
繊維性癒着の形成の過程には当初、フィブリンネットワークの樹立及び正常組織の修復が関与する。正常の修復過程は、中皮の修復と並んでフィブリン溶解を可能にする。しかしながら、繊維性癒着に形成では、線維芽細胞がネットワーク内で増殖し、血管形成が生じるにつれてフィブリンマトリクスが成熟し、結果的に約3〜5日以内に組織化された繊維性癒着が樹立される(非特許文献7; 非特許文献8)。炎症過程には、外傷組織での好中球の活性化、フィブリンの沈着及び隣接組織の結合、マクロファージの侵襲、その領域への線維芽細胞の増殖、コラーゲンの沈着、血管形成及び永続的な繊維性癒着組織の樹立が含まれる。
【0007】
外科的癒着を防ぐために様々な試みが行われている。これらには、外科的外傷を伴う生化学的及び細胞学的事象に影響を及ぼすことを標的とした医薬的アプローチ、並びに冒された組織を分離するためのバリア法が含まれる。たとえば、腹腔内洗浄、ヘパリン化溶液、凝血促進剤の使用、手術法の改変、たとえば、顕微鏡的手術法又は腹腔鏡手術法、手術用手袋からのタルクの除去、さらに小さな縫合糸の使用、及び漿膜表面の並置をできる限り抑制することを目的とした物理的バリア(フィルム、ゲル、又は溶液)の使用が試みられている。現在、予防的治療法には、フィブリン沈着の予防、感染の低減(ステロイド及び非ステロイド抗炎症剤)及びフィブリン沈着の除去が含まれる。
【0008】
術後の繊維性癒着を防ぐための介入的試みには、水力浮揚法又はバリア装置が含まれる。水力浮揚には、臓器を離しておく試みで、デキストラン(非特許文献9)又はカルボキシメチルセルロース(非特許文献10)のようなポリマーを大量に外科的空間に点滴することが含まれる。酸化変性セルロース(たとえば、インターシードTM)、ポリテトラフルオロエチレン(ゴアテックス手術用膜)から作られた合成バリア膜及び修飾ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(HA/CMC)の組み合わせ(セプラフィルムTM)から作られた完全に吸収可能な膜は、動物及びヒトで術後の癒着形成を軽減するのに使用されている(非特許文献11; 非特許文献12; 非特許文献13)。これらHA/CMC膜の成功は、繊維性癒着が形成される際、腹膜の創傷修復の間、組織の分離を提供するそれらの能力に由来してもよい。膜は、適用後3〜5日間、術後の癒着形成の時間経過に相当する時間、損傷した組織上で透明な粘性の被膜を形成することが認められた(非特許文献14)。残念ながら、これらの方法では限られた成功しか見られていない。
【非特許文献1】Ellis, H., Surg. Gynecol. Obstet., 133:497, 1971
【非特許文献2】diZerega, G. S., Prog. Clin. Biol. Res., 381:1-18, 1993
【非特許文献3】diZerega, G. S., Fertil. Steril., 61:219-235, 1994
【非特許文献4】Dobell, A. R., Jain, A. K., Ann. Thorac. Surg., 37:273-278, 1984
【非特許文献5】Holtz, G., Fertl. Steril., 41:497-507, 1984
【非特許文献6】Webel M.A. and Majvo, G., Am. J. Surg., 126:345-353, 1973
【非特許文献7】Buckman, R. F. et al., J. Surg. Res., 21:67-78, 1976
【非特許文献8】Raferty, A. T., J. Anat., 129:659-664, 1979
【非特許文献9】Adhesion Study Group, Fertil. Steril., 40:612-619, 1983
【非特許文献10】Elkins, T. E., et al., Fertil. Steril., 41:926-928, 1984
【非特許文献11】Burns, J. W. et al., Eur. J. Surg. Suppl., 577:40-48, 1997
【非特許文献12】Burns, J. W. et al., Fertil. Steril., 66:814-821, 1996
【非特許文献13】Becker, J. M. et al., J. Am. Coll. Surg., 183:297-306, 1996
【非特許文献14】Ellis, H., Br. J. Surg., 50:10-16, 1963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
明らかに、好ましくはさらに効率的に少ない副作用で、繊維性癒着の形成を抑制する、又はさもなくば治療する及び/又は予防する化合物、組成物、方法等(送達法を含む)に対する、未だ対処されていないニーズがある。本化合物、組成物、方法等は、これらの利点の1以上を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外科的癒着を治療するための、本明細書で考察される1以上の繊維性癒着抑制剤を含む組成物及び方法等を含む。繊維性癒着抑制剤は、通常、低い副作用も提供しながら、繊維性癒着に対して十分な治療効果を提供する。さらに、種々の異なった繊維性癒着抑制剤を考察するので、そのほかの疾患又は症状を病んでいる可能性がある患者における副作用を減らすために、及び/又は有益な健康に良い効果又は治療効果を提供するために、繊維性癒着を抑制すると共に、癌又は関節炎又は腫れ又は本明細書の1以上の繊維性癒着抑制剤で治療することもできる種々のそのほかの疾患又は症状も治療する組成物として、作用剤の種々の組み合わせを所望のように選択することができる。本明細書の組成物は、繊維性癒着と類似の生物学を共有するケロイドのような繊維性増殖及びその状態の治療にも有用である。従って、本明細書における考察はそのような繊維性増殖にも同様に適用される。
【0011】
側面の1つでは、本発明は、繊維性癒着を抑制する作用剤を選択すること、及び繊維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の作用剤を投与することを含む、動物において繊維性癒着を抑制する方法を提供する。作用剤は、1以上のアルギン酸、ドキシサイクリン、コルチゾン、エストラムスチン、メレジトース、コハク酸、メクロフェナメート、パルミチン酸、デキストラン硫酸、コラーゲン、ブデソニド、マレイン酸エナラプリルのようなエナラプリル、ナブメトン、シムバスタチンのようなスタチン、カプトプリル、キトサン、ミノサイクリン、メソトレキート、シスプラチン、イブプロフェン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、抗SDF−1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のようなSDF−1阻害剤、抗SDF−1小分子RNA、抗SDF−1siRNA、抗SDF−1リゾチーム、抗SDF−1アプタマー、SDF−1の小分子阻害剤、抗hSDF−1/PBSFのような抗SDF−1抗体、ラパマイシン、ヒドロキシプロピルセルロース、ブスルファン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ヒドロキシロウレア、ミトタン、ドセタキセル、硫酸ビンブラスチン、MG132、ニメスルド、ジクロフェナック、テノキシカム、インドメタシン、アセチルサリチル酸、ジフルシナル、ベタメタゾン、デキサメタゾン、デフェロキサミンメシレート、レチノイン酸、ヘパリン、ペントキシフィリン、ストレプトキナーゼ、TGF−β、TIMP−2、デキストロース、デキストランT70、デンプン、ケルセチン二水和物、カフェイン、レフルノミド、イオタ−カラギーナン又はラムダ−カラギーナンのようなカラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、コンドロイチン硫酸Aを含むことができる。
【0012】
作用剤はまた、抗腫瘍剤、抗炎症剤、イオンキレート剤、トリエンマクロライド抗生物質、3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル−CoA還元酵素阻害剤、レチノイド、抗血栓剤、抗凝固剤、プラスミノーゲン活性化剤、サイトカイン、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、テトラサイクリン、ACE阻害剤、デキストラン糖、又はカラギーナン、アルキル化剤、代謝抑制剤、リボヌクレアーゼ還元酵素阻害剤、細胞傷害性抗生物質、タキサン、ビンカ・アルカロイド、又はプロテアーゼ阻害剤、COX−2阻害剤、フェナメート、オキシカム、アセチル酸誘導体、サリチル酸誘導体、又はコルチコステロイドであることもできる。
【0013】
他に記載したように、本明細書における種々の側面及び実施態様は、特徴等であることができ、所望の様式において混合され及び一致され及び組み合わせられ及び順序を変えられうる。従って、上記の及びここの特定の作用剤及び以下の作用剤等は、同一段落に一緒に現れなくても適宜、組み合わせることができる。
【0014】
実施態様の一部では、対象又は患者は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、又はそのほかの哺乳類、又はトリ、爬虫類又はそのほかの動物のような動物である。治療部位は、外科的部位、骨盤感染症部位、機械的傷害部位、放射線暴露部位、外来物質の存在に冒された部位又はそのほかの所望の部位であることができる。部位は、全体としての動物、又は腹部、四肢、背骨、心臓、生殖器、消化器、呼吸系、胸腔、又は血管系、尿路系の内部又は所望のそのほかの系又は位置のような特定の部位であることができる。
【0015】
ポリマー投与形態からの制御放出を介して、病変部位に薬剤を実質的に連続して投与することができる。投与形態は、フィルム、貼付剤、ペースト、ミクロスフェア、インプラント、ゲル、スプレー又は液体、溶液、懸濁液であることができ、米国薬局方の乳酸加リンガー注射液であることができる。フコイダンであることができるフカンとの併用で作用剤を投与することができる。本明細書の1以上のそのほかの作用剤又はそのほかの治療剤であることができる第2の作用剤との併用で作用剤を投与することができる。
【0016】
本発明はまた、繊維性癒着を抑制するように構成された医薬組成物を提供するが、該組成物は、繊維性癒着を抑制するように選択された治療上有効量のフカン、繊維性癒着を抑制するように選択された治療上有効量の少なくとも1種の治療上有効な本明細書の作用剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む。所望であれば、薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤は、プルロニック、セルロース、アルギネート、アクリレート、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール及びキトサンから成る群から選択することができる。
【0017】
組成物を、繊維性癒着を治療するための薬物の製造に使用することができ、ヒト患者における繊維性癒着に関連した症状を軽減することができる薬物を製造する方法、たとえば、薬学上有効量のフコイダン、繊維性癒着を抑制するように選択された治療上有効量の少なくとも1種の治療上有効な本明細書の作用剤及び薬学上許容可能な賦形剤又は緩衝剤を組み合わせることを含む方法に使用することができる。
【0018】
さらに他の側面では、本発明は、動物において少なくとも1種の非繊維性癒着の疾患又は非繊維性癒着の症状を治療する方法を含む。方法は、少なくとも1種の非繊維性癒着の疾患又は症状を同定することを含み、非繊維性癒着の疾患又は症状ための少なくとも1種の治療剤を選択すること、少なくとも1種の非繊維性癒着抑制剤を選択すること、非繊維性癒着の疾患又は症状のための治療量の少なくとも1種の治療剤及び治療量の少なくとも1種の繊維性癒着抑制剤を含む少なくとも1種の医薬組成物を投与することを含むことができる。
【0019】
非繊維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療剤及び治療量の少なくとも1種の繊維性癒着抑制剤を少なくとも2種の異なった組成物に入れ、方法はさらにその組成物を実質的に同時に投与することを含むことができる。また、作用剤すべてを単一の組成物に入れることもできる。溶液として、懸濁液として、又はさもなければ所望に応じて、ポリマーの投与形態からの制御放出を介して作用剤を部位に投与することができる。
【0020】
さらに別の側面において、本発明は、動物において少なくとも1種の非繊維性癒着の疾患又は非繊維性癒着の症状を治療し、繊維性癒着を抑制するように構成された医薬組成物を含み、該組成物は、非繊維性癒着の疾患又は症状を治療するために選択された非繊維性癒着の疾患又は症状のための治療上有効量の少なくとも1種の治療剤、繊維性癒着を抑制するように選択された治療上有効量の少なくとも1種の繊維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む。
【0021】
組成物を、動物において少なくとも1種の非繊維性癒着の疾患又は非繊維性癒着の症状を治療し、且つ繊維性癒着を抑制するための薬物の製造において使用することができる。
【0022】
本発明は、ヒト患者において、少なくとも1種の非繊維性癒着の疾患又は非繊維性癒着の症状に関連する症状を軽減し、且つ、繊維性癒着に関連する症状を抑制することができる薬物の製造方法も含み、非繊維性癒着の疾患又は症状を治療するために選択された非繊維性癒着の疾患又は症状のための治療上有効量の少なくとも1種の治療剤、繊維性癒着を抑制するように選択された治療上有効量の少なくとも1種の繊維性癒着抑制剤及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む薬物を製造する方法を含む。
【0023】
さらにその上さらなる側面では、本発明は、繊維性癒着を抑制するように作用剤を選択し、繊維性癒着を有すると疑われる部位に、治療上有効量の作用剤を含む組成物を投与することを含む動物において繊維性癒着を抑制する方法を含み、その際、組成物は、繊維性癒着の特定の部分、たとえば、繊維性癒着の約75%、90%、99%又は実質的にそのすべてを抑制するように構成することができる。有効性は、たとえば、ヒト、ラット又はウサギのモデルで使用することができる、所望の基準、たとえば、いかなる繊維性癒着抑制剤も含まないアルロン酸フィルムと比べて決定することができる。実施態様はまた、選択された繊維性癒着抑制剤を含み、動物において繊維性癒着を抑制するように構成された医薬組成物を含み、その際、組成物は、少なくとも繊維性癒着の特定の部分、たとえば、繊維性癒着の約75%、90%、99%又は実質的にそのすべてを抑制するように構成することができる。
【0024】
さらにその上、別のさらなる側面では、本発明は、キットを提供する。キットは、本明細書の組成物を含有する容器及び繊維性癒着を抑制するための組成物の医薬的使用に関する指示書を含むラベルを含むことができる。ラベルは、たとえばFDAのような政府に認可されたラベルである。容器は、点滴用剤又は本明細書の所望の組成物形態を保持するように構成されたバイアルであることができる。ラベルは、少なくとも1種の非繊維性癒着の疾患又は非繊維性癒着の症状を治療するための組成物の医薬的使用に関する指示書をさらに含むことができる。
【0025】
これら、及びそのほかの側面、特徴及び実施態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面を含む本出願の範囲内において述べられる。さらに、関連する出願に対するクロスリファレンスを含み、特定の系、装置、方法又はそのほかの情報を考察する種々の参考文献は、本出願に現れてもよいことにかかわらず、その教示及び考察に関してそのすべてを全体として参照により本明細書に組み入れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
実施態様の一部では、本発明は、手術後、外傷後、又は放射線照射若しくは化学療法の後、又は他の原因の結果、形成されてもよい繊維性癒着の形成を抑制する、たとえば、治療する又は予防するために、繊維性癒着の発生が疑われる部位、たとえば、放射線への暴露、手術、疾患又は傷害により過度に繊維性癒着発生の対象となる部位、及び繊維性癒着を発生させる又は広げる過程にある部位にて、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、又はそのほかの哺乳類、又はトリ、爬虫類又はそのほかの動物のような動物の組織に作用剤を適用することによって本明細書にて考察される作用剤を使用する。列記される各作用剤には、明白に述べない限り、例外なく、作用剤及びそれらのすべての誘導体、塩及び類縁体が含まれる。繊維性癒着の抑制のために異なった処方で作用剤を投与することができる。これら化合物の一部の全身性送達に関係する可能性がある毒性を減らすために、所望であれば、組成物は、病変部位のみに有効量の作用剤を放出するようにすることができる。組成物はまた、本明細書の作用剤(そのすべての誘導体、塩及び類縁体を含む)のポリマー製剤又は所望によってそのほかの製剤を含むことができ、それらは、繊維性癒着の可能性がある部位への作用剤の持続的な放出を提供する。本明細書で考察される組成物、方法等は、単独で使用されようと、フコイダン(又はそのほかのフカン)との併用で、又は本明細書で考察されるそのほかの作用剤との併用で、又はそのほかの作用剤装置、又はバリア、又はフコイダンを含む薬剤及び本明細書で考察される作用剤及びそのほかの作用剤との併用で使用されようと、本明細書で考察される各作用剤を含む処方を含む。部位に直接、全身性に又はさもなければ所望のように組成物を投与することができる。特定の実施態様では、本明細書の組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド又は、遺伝子治療ヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド剤を含まない。
【0027】
実施態様の一部では、本明細書の方法及び組成物は、本明細書の種々の繊維性癒着抑制剤のたった1種の使用、又はそのような作用剤の2種以上の使用に関する。実施態様の一部では、単一の及び複数の作用剤混合物組成物を含むそのような組成物における作用剤の少なくとも1つがフカンであり、そのほかにおいては、混合物組成物はフカンを含まない。
【0028】
本明細書の組成物は、繊維性癒着と類似の生物学を共有するケロイドのような繊維性増殖及びその状態の治療にも有用である。従って、本明細書における考察はそのような繊維性増殖にも同様に適用される。
【0029】
本明細書の実施態様は、非繊維性癒着の疾患又は症状を同定し、次いで非繊維性癒着の疾患又は症状及び繊維性癒着の双方を同時に治療する又は抑制する繊維性癒着抑制剤を含む組成物を選択し、投与することを含むことができる。実施態様の一部では、組成物及び方法はさらに、一方が非繊維性癒着の疾患又は症状に対する主な効果を有し、他方が繊維性癒着に対して主な効果を有するように、2種以上の本明細書の作用剤を選択することを含む。さらに、組成物及び方法は、単一の又は同時の組成物で一緒に投与される、本明細書で考察されるもののような少なくとも1種の繊維性癒着抑制剤及び非繊維性癒着の疾患又は症状に対する少なくとも1種の作用剤を同定し、選択し、且つ投与することを含むことができる。従って、方法は、繊維性癒着を抑制するように作用剤を選択し、非繊維性癒着の疾患又は症状を抑制するように同一の又は少なくとも1種のそのほかの作用剤を選択し、非繊維性癒着の疾患又は症状及び繊維性癒着の発生が疑われる部位に治療上有効量の作用剤を投与することを含むことができる。例示となる非繊維性癒着の疾患又は症状には、癌、PID、放射線暴露、機械的な及びそのほかの傷害、関節炎、乾癬、手術、局所症状、消化器の疾患及び症状、たとえば、遮断又はそのほかの機械的な破壊の徴候の実質的なリスクを有するものが挙げられる。
【0030】
本発明の特定の実施態様の範囲内では、繊維性癒着抑制剤は、たとえば、軟膏、溶液、クリーム、ローション、ゲル、スプレー、ムース、被覆、ラップ、ペースト、バリア、インプラント、ミクロスフェア、微粒子、フィルム、粒子状物質、液体、インプラントフィルム、点滴用剤などのようなそのほかの化合物又は組成物と共に製剤化されてもよい。
【0031】
一般に、本明細書の組成物は、ペースト、ゲル、スプレー、粒子状物質、フィルム、溶液、液体、ローション、クリーム又はインプラントとして塗布又は注射によって単独で、又は組成物の一部として投与することができる。投与の経路及び部位には、経口、全身性、眼内、皮下、腹腔内、筋肉内、関節内、病変内、膣内、直腸、又は貼付剤のような局所が挙げられる。作用剤の治療上の有効量は、組成物の所望によってw/v又はw/wにて約0.1%、0.5%、1%、5%〜50%、20〜80%、80%〜100%を含むことができる。本明細書の組成物は、好適な容器又は入れ物で提供されることができ、言い換えれば、キットで提供されることができ、ラベル、好ましくは、米国食品医薬品局のような適当な政府規制当局により認可されたラベルを設けることができる。ラベルは組成物の医薬的使用に関する指示書を含むことができる。容器は、たとえば、バイアルであることができ、フィルム、ゲル、点滴用剤又は本明細書で考察されるほかの形態として又はさもなければ所望のように組成物を提供するように構成することができる。
【0032】
繊維性癒着抑制剤と共に供される化合物又は組成物は、ポリマーであっても、非ポリマーであってもよい、キャリア及び/又は物理的バリアとして機能してもよい。本明細書で考察する組成物はまた、単独で、又は水性溶液中、若しくは非水性溶液中、若しくはビヒクル若しくはキャリア内での懸濁として分散された、作用剤(又はフコイダン若しくはそのほかのフカンを含む本明細書で考察される作用剤のリストからの作用剤の任意の組み合わせ)も含む。ポリマーのキャリア、バリア及び賦形剤の代表例には、キトサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(乳酸)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(グリコール酸)、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリ(乳酸)とポリカプロラクトンのコポリマー、ゼラチン、コラーゲン、セルロース、アルブメン、プルロニック、ポリ(バレロラクトン)、ポリ−(無水物)、多糖類、アルギネートのようなアルギン酸、ヒアルロン酸、注射可能な賦形剤、そのほかのポリマー系ビヒクル及びこれらのコポリマー、誘導体、混合物及び混和物が挙げられる。そのほかの好適なキャリアの代表例には、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールを含むグリコール、トランスクトール(登録商標)、エタノールとグリコールの混合物、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、エタノールとミリスチン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピルの混合物が挙げられる。そのようなポリマーはそれ自体、特定の組成物で癒着抑制活性を提供してもよい。
例示となる繊維性癒着抑制剤の一般的考察
本明細書の組成物の薬剤成分は、他の組成物及び目的で通常、周知である。以下は、それらの一部に関する情報の一部を提供する。
【0033】
NSAID:NSAIDがその治療効果(解熱、鎮痛、抗炎症活性)を発揮する主なメカニズムは、プロスタグランジン(PG)合成の阻害である。具体的には、NSAIDは、プロスタグランジンを形成するためのアラキドン酸から環状エンドペルオキシドの合成を触媒する酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を競合的に(ほとんどの部分で)阻害する。NSAIDの抗炎症活性に寄与してもよいそのほかのメカニズムには、スーパーオキシドラジカルの還元、アポトーシスの誘導、接着分子の発現の阻害、酸化窒素合成酵素の低下、炎症誘発性サイトカインのレベルの低下(腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1)、リンパ球活性の修飾及び細胞膜機能の改変が挙げられる。
【0034】
COX−2阻害剤(Int. J. Immunopathol. Pharmacol., May-Aug:16(2) Suppl.:17-22, 2003)
その作用は、アラキドン酸をプロスタグランジン及びトロボキサンに変換するのに関与するシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素の阻害を中心とする。1991年、COXには2つの異なったアイソザイムが存在し、そのうちの1つ、COX−2は主として炎症に関与するが、消化管の整合性又は血小板の凝集には明らかに関与しないことが開示された。この理由で、最近、このアイソザイムに選択性がある新規の化合物、抗炎症活性は保持するが、消化管毒性及び出血のリスクを最小限に抑えた、いわゆる選択性COX−2阻害剤又はCOXIBが開発された。COX−2阻害剤のCOX非依存性のメカニズムの一部には、タンパク質キナーゼGの活性化、NFκB活性化の阻害、抗アポトーシスタンパク質Bcl−XLの下方制御、PPARδの阻害及びPPARγの活性化が挙げられる。
【0035】
COX−2阻害剤には、ニメスリド(CAS51803−78−2)(Drugs, Suppl. 1:9-22, 2003)が挙げられる。
【0036】
フェナメート(Prim. Care, Suppl. 17(3):589-601, 1990)。
【0037】
これらの作用剤は、それ自体がサリチル酸の生体同配体であるアントラニル酸のN−アリール置換誘導体であるとみなされている。これらの作用剤は、作用剤のこの部類に特徴的である酸性特性を保持している。最も活性の高いフェナメートは、N−アリール部分のメフェナメートの2’、3’及び/又は6’位に小さなアルキル置換基又はハロゲン置換基を有する(メフェナメート、以下参照)。脱置換したN−アリールフェナメートの間では、2’、3’−誘導体が最も活性が高いということは、2’、3’位の置換基がアントラニル酸と共に、N−アリール環を強制的に共極性の外に出すよう作用することを示唆している。従って、この立体的効果は、シクロオキシゲナーゼの阻害部位でのフェナメートの効果的な相互作用に重要であると提案されている。作用:アントラニレートは、いくつかの鎮痛活性及び解熱活性と共に主として抗炎症性を有し、非COX選択性である。アントラニレートは、穏やかな鎮痛剤として使用され、時には炎症性疾患の治療に使用される。
【0038】
フェナメートとしては、メクロフェナム酸(CAS644−62−2)、メクロフェナメート(CAS6385−02−0)、RA、OA、AS、及び術後疼痛に使用される、2−アリール酢酸に由来するジクロフェナック(CAS15307−86−5)が挙げられる。
【0039】
オキシカム(Arthritis Rheum., Jan 40(1):143-53, 1997)。
【0040】
オキシカムは、4−ヒドロキシベンゾチアジン複素環を特徴とする。オキシカムの酸性度は、内部分子のH結合によってアミドのN−H基に安定化されるエノレートアニオンを伴う4−OHに起因する。また、ベンゾチアジン環の3位におけるカルボキサミド置換基の存在は、イオン化の間形成される負の電荷を安定化する(共鳴安定化)ことによって酸性に向かって寄与する。これらの化合物は酸性ではあるが(pK=6.3)、カルボン酸NSAIDよりも幾分酸性度は低い。さらに、オキシカムは生理的pHで主としてイオン化されており、COXの阻害活性には酸性度を必要とする。
【0041】
オキシカムとしては、テノキシカム(CAS59804−37−4)が挙げられる。
【0042】
アセチル酸誘導体(FASEB J., Oct, 15(12):2057-72, 2001)。
【0043】
これらの化合物も酢酸の誘導体であり、2位に複素環又は関連する炭素環である置換基を持つ。
【0044】
アセチル酸誘導体には、インドメタシン(CAS No.53−86−1)(インドシド、イントデック)−ベンゾイル化インドール窒素を含有するインドール−3−酢酸誘導体が挙げられる。インドール環の2位のメチル基は、C−N結合に関する遊離の回転を妨げ、COXの結合及び治療活性について2つの芳香族環を正しい関係に保持する。インドメタシンは、「COX−1選択性」であり、幾分の鎮痛活性及び解熱活性と共に主として抗炎症作用を生じる。
【0045】
サリチル酸誘導体。構造及び化学:サリチレートは、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)の誘導体である。ヤナギの樹皮からのサリチル酸の抽出に続いて、サリチレートは1838年に発見された。サリチル酸はナトリウム塩として医用に使用されたが、1800年代後期に治療用には、アセチル化誘導体、アセチルサリチル酸(ASA)又はアスピリンに置き換えられた。治療的有用性は、アスピリンのようにフェノールヒドロキシル基のエステル化によって、及びジフルニザルのようにC−5における疎水性/親油性の基の置換によって高められている。サリチレートは、穏やかな鎮痛活性及び解熱活性と共に強力な抗炎症活性を有する。これらの化合物は主として「COX−1選択性」であり、高い親和性でCOX−1に結合する。毒性には、消化器刺激性、過敏症反応、血小板凝集の阻害及び内耳神経毒性(耳鳴り)が挙げられる。アスピリンの治療上の及び特定の毒性作用(すなわち、消化管)は、種々の組織におけるCOXを阻害するその能力及び試験管内のトランスアセチル化反応に関与するその能力に関係しうる。たとえば、COXのアセチル化は、この酵素の不可逆的阻害を、関節では抗炎症効果及び消化器では有害な効果を結果として生じる。循環タンパク質のアセチル化は、結果として過敏症反応を生じる可能性がある。
【0046】
サリチル酸誘導体には、アセチルサリチル酸(CAS番号50−78−2)、ジフルニザル(CAS22494−42−4)が挙げられ、サリチル酸のジフルオロフェニル類縁体は、主として鎮痛活性及び解熱活性を有するという点で、サリチレートの部類のそのほかのメンバーと異なる。RA、OA及び筋肉の疼痛に関係する経路を治療するのに使用される。アスピリンよりも消化器の潰瘍化を起こさず、聴覚の副作用も低いことが報告された。この薬剤は、サリチレートと同様に、主としてフェノール及びカルボキシ−O−グルクロン化によってクリアランスされる。
【0047】
ピラゾロン:作用剤のこの部類は、1−アリール−3,5−ピラゾリジンジオン構造を特徴とし、構造的に芳香族化合物ピラゾールに関係する。これらに化合物は、鎮痛作用、解熱作用、抗炎症作用(その弱い酸性度のために)があり、毒性用量付近で尿酸排泄性である。これらの分子の酸性度は、4位におけるエノール化可能な水素の存在によっており、pKa依存性である。
【0048】
ピラゾロンには、フェニルブタゾン(CAS50−33−9)が挙げられる。
【0049】
コルチコステロイド:コルチコステロイドは、副腎皮質から産生される天然のコルチコステロイドに類似する抗炎症剤の一群である。コルチコステロイド治療で改善することが多い疾患には、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性湿疹及び関節リウマチがある。これらの抗炎症剤がどのように後期アレルギー反応を阻害するのかは、粘膜表面に沿った肥満細胞密度の低下、走化性の低下及び好酸球の活性化、リンパ球、単球、肥満細胞及び好酸球によるサイトカイン産生の低下、アラキドン酸代謝の阻害及びそのほかのメカニズムを含む様々なメカニズムを介して生じる。
【0050】
コルチコステロイドには、デキサメタゾン(CAS50−02−2)が挙げられる。
【0051】
アルキル化剤:アルキル化剤は、主要な標的としてのDNAと共に、有機化合物における活性水素原子についてアルキル基、Cn2n+1を置換する化合物である。アルキル化剤は、1946年、マスタードガスから開発された。DNA、RNA又はタンパク質との反応がアルキル化を導き、それは、二官能性であってもよく、薬剤並びにそのほかを含有する窒素、マスタード、ニトロソウレア及び白金を含むDNA架橋基を生じる。アルキル化剤はすべて、カルボニウムイオン中間体の形成を介して強力な求電子物質を形成する。これが結果として、種々の求核部分のアルキル化によって共有結合の形成を生じる。化学療法効果及び細胞傷害効果は、他の部分もアルキル化されているが、主としてグアニンの7個の窒素原子を介したDNAのアルキル化に直接関係する。求核物質との1種の共有結合の形成は結果として突然変異誘発又は催奇形成を招きうるが、架橋を介した2つのこれらの結合の形成は細胞傷害性を生じる。
【0052】
アルキル化剤の例には、ブスルファン(CAS55−58−1)(ブスルフェックス、ミレラン)、シクロホスファミド(CAS6055−19−2)(プロサイトックス)、エストラムスチン(CAS2998−57−4)(エムシスト)、シスプラチン(CAS15663−27−1)及びダカバジン(CAS4342−03−4)が挙げられる。
【0053】
代謝抑制剤(Semin. Oncol., Dec, 19(6):695-706, 1992)。
【0054】
代謝抑制剤は、類似の化学構造を有することによって天然の代謝産物の利用を妨害する化合物として定義される。代謝抑制剤は一般に、ステロイドホルモン又は核酸前駆体の類縁体である。DNA及び/又はRNAの阻害によって核酸及び葉酸の代謝抑制剤が作用する。従って、それらの作用様式は、その毒性効果が急速に増殖している組織で最も顕著であることを意味する。代謝抑制剤については幾つかの異なった細胞性標的がある。代謝抑制剤の一般的な部類は、葉酸拮抗剤、プリン拮抗剤及びピリミジン拮抗剤である。
【0055】
代謝抑制剤の例にはメソトレキセート(CAS59−05−2)が挙げられる。
【0056】
リボヌクレアーゼ還元酵素阻害剤:リボヌクレアーゼ還元酵素阻害剤は、デオキシリボヌクレオシドのデノボ生合成を触媒する酵素、リボヌクレアーゼ還元酵素のR1サブユニットに結合してもよく、従ってDNA合成を妨害する(Expert Rev. Anticancer Ther., Aug, 2(4):437-48, 2002)。
【0057】
リボヌクレアーゼ還元酵素阻害剤の例には、ヒドロキシウレア(CAS127−07−1)(ヒドレア)が挙げられる。
【0058】
細胞傷害性抗生物質
細胞傷害性抗生物質の例には、ミトタン(CAS53−19−0)が挙げられる。
【0059】
タキサン:タキサンは、微小管を安定化することにより細胞周期の進行を遮断し、その結果、中心体の損傷、異常な紡錘糸の誘導及び紡錘糸微小管の動態抑制を生じる(Curr. Cancer Drug Targets, Jun, 3(3):193-203, 2003)。
【0060】
トポイソメラーゼ阻害剤の例には、ドセタキセル(CAS114977−28−5)(タクソテレ)が挙げられる。
【0061】
ビンカアルカロイド及び類縁体(Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents, Jan, 2(1):1-17, 2002)。
【0062】
ビンカアルカロイドは、管の側面に結合することにより微小管の重合を阻害し、従って、中期/後期の過渡期で有糸分裂を阻止し、細胞死を誘導する。
【0063】
ビンカアルカロイドの例にはビンブラスチン(CAS865−21−4)が挙げられる。
【0064】
プロテアソーム阻害剤(Cancer Treat Rev., May, 29 Suppl., 1:41-8, 2003)。
【0065】
プロテアソームは、IκB/NFκB、p53、及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21及びp27を含む多数の細胞内調節性タンパク質の重要な異化経路に関与する最終的な分解酵素である。プロテアソーム阻害剤の抗腫瘍効果には、細胞増殖シグナル伝達経路の阻害、アポトーシスの誘導及び細胞性接着分子の発現の阻害を含む、幾つかの異なったメカニズムが関与してもよい。
【0066】
プロテアソーム阻害剤の例には、MG132(Cytokine, Nov, 7;24(3):67-73, 2003)が挙げられ、それはNFκBの形成及びその阻害剤IκBの分解を阻害する。
【0067】
イオンキレート剤(Adv. Exp. Med. Biol., 509:231-49, 2002)。輸液のイオン過剰負担の症状で治療的に使用され、サラセミアでのイオン過剰負担の治療に使用される経口活性のあるイオンキレート剤。
【0068】
イオンキレート剤の例には、デフェロキサミンメシレート(CAS138−14−7)が挙げられ、それは、遊離のイオン、フェリチンのイオン及びヘモシデリンに結合してフェリオキサミンを形成し、水溶性のキレート剤であり、腎臓(尿は赤みを帯びた色)によって並びに胆汁を介して糞便によって排泄される。血漿酵素により急速に代謝され、尿に排泄される。
【0069】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル−CoA還元酵素阻害剤。これらの薬剤は、コレステロール生合成の初期の律速段階である、HMG−CoAのメバロネートへの変換を触媒する3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル補酵素A−CoA還元酵素を阻害する。
【0070】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル−CoA還元酵素阻害剤の例には、スタチン類及びシムバスタチン(ゾコール)(CAS79902−63−9)が挙げられる。
【0071】
レチノイド及びレチノイド類縁体(J. Dermatol., May, 30(5):355-80, 2003)。
【0072】
レチノイド(ビタミンAの天然及び合成の誘導体)は、多様な正常細胞、前癌細胞及び癌細胞において強力な分化及び増殖抑制の効果をシグナル伝達する。レチノイドは、全トランスレチノイン酸(ATRA)を生じ、それはビタミンA(レチノール)の主な活性型であり、その生体同配体は、核のその受容体、レチノイン酸受容体(RAR)に結合することによって生物効果を発揮する。
【0073】
レチノイド及びレチノイド類縁体の例には、全トランスレチノイン酸が挙げられる(CAS302−79−4)(J. Biol. regul. Homeost. Agents, Jan-Mar, 17(1):98-114, 2003)。
【0074】
抗血栓剤:トロンビンと相互作用し、フィブリノーゲン、血小板及びそのほかの基質の触媒活性を阻止する薬剤(Expert Opin. Pharmacother., May, 4(5):635-66, 2003)。
【0075】
抗血栓剤の例には、ヘパリンナトリウム(CAS9041−08−1)が挙げられる。
【0076】
低分子量ヘパリン(Semin. Tromb. Hemost., 26: Suppl. 1:31-8, 2000)。標準のヘパリンに比べて、LMWHは、異なった薬物力学及び薬物動態の特性を有し、臨床的な利益も異なる。LMWHは、未分画ヘパリンに比べてさらに大きな生物利用性、長い半減期、予測可能な薬理反応、安全性の改善の可能性、及び類似の又はさらに大きな有効性を有する。
【0077】
抗凝固剤
抗凝固剤の例には、ペントキシフィリン(CAS6493−05−6)が挙げられる。
【0078】
プラスミノーゲン活性化剤
プラスミノーゲン活性化剤の例には、ストレプトキナーゼ(CAS9002−01−1)が挙げられる。
【0079】
サイトカイン類
サイトカイン類の例には、形質転換増殖因子β(TGF−β、J. Biol. Chem., Aug, 30:277(35):31938-48, 2002)が挙げられる。
【0080】
マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤(Hematol. Oncol. Clin. North. Am., Oct, 16(5):1189-227, 2002)。
【0081】
マトリクスメタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤が、腫瘍細胞の侵襲を阻止するということは、それらが転移抑制遺伝子として作用することを示唆している。それらの主な機能は、ECMの種々の成分を分解するZn(2+)結合のエンドペプチダーゼであるマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害することである。MMPは、正常の及び病的な組織リモデエリング過程、創傷治癒、血管形成及び腫瘍侵襲に関係すると思われる酵素である。
【0082】
マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例には、TIMP−2が挙げられる。
【0083】
テトラサイクリン:テトラサイクリンは、多環式ナプタセンカルボキシアミドの近い類縁遺伝子系の誘導体である。テトラサイクリンは、グラム陽性及びグラム陰性の細菌に対する広範囲の抗菌活性を持つ。試験管内では、これらの薬剤は、主として静菌的である。テトラサイクリン及び非抗菌的に改変した類縁体は、コラーゲンの破壊を生じるマトリクスメタロプロテイナーゼの活性を阻害することにより宿主の応答を調節すると思われる特性を有する。それらはまた、破骨細胞の機能を阻害し、骨芽細胞の骨形成を刺激し、脈管形成を調節する。
【0084】
テトラサイクリンの例には、テトラサイクリン(CAS60−54−8),ミノサイクリン(CAS10118−90−8)及びドキシサイクリン(CAS564−25−0)が挙げられる。
【0085】
アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤:ACE阻害剤は、基本的にレニン−アンギオテンシン血管収縮系の阻害剤として作用し、高血圧及び鬱血性心不全を治療するのに使用される。それらはまた、インターロイキン−6のような炎症誘発性メディエータを低下させ、インターロイキン−10のような抗炎症性サイトカインの濃度を高めることが示されている。
【0086】
アンギオテンシン変換酵素阻害剤の例には、カプトプリル(CAS62571−86−2)及びマレイン酸エナラプリル(たとえば5%w/w)のようなその塩を含むエナラプリル(CAS76095−16−4)が挙げられる。
【0087】
その他
特定のそのほかの所望の作用剤の例には、レフルノミド(アラバ)が挙げられ、それは、ミトコンドリアにおけるジヒドロ−オロテートデヒドロゲナーゼ(DHO−DH)を阻害することによりピリミジンの代謝を妨害し、それによってT細胞及びB細胞の増殖を阻止するイソキサゾール免疫モジュレータである(Expert Opin. Pharmacother., Jun, 4(6):987-97, 2003)。そのほかの例には、エリスロマイシン、デキストラン硫酸、アルギン酸、デキストロース、デキストランT70、デンプン、ケルセチン二水和物、カフェイン、γカラギーナン、λカラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、コンドロイチン硫酸Aが挙げられる。
【0088】
フカン
フカン(フコイダンを含む)は、褐色海草から抽出された高分子量の硫酸化多糖類であり(Percival E. & McDowell R. H., 海洋藻類の多糖類の化学及び酵素学、157〜175ページ、Academic Press, New York, 1967)、周知のように、同様にそのほかの出典、Vasseur E., 紫ウニ卵のゼリー被膜の化学的研究、Acta Chem. Scand., 2:900-913, 1948; Muorao, PAS & Bastos IG, ナマコの酸性度の高いグリカン、Eur. J. Biochem., 166:639-645, 1987; Pereira et al., 硫酸化フカンの構造及び抗凝固、J. Biol. Chem., 274:12. 7656-7667, 1999に見い出すことができる。フコイダン(又はフコイジン)は、褐色海草に由来するフカンを指す。米国特許2003064958。フカンは、単独でありうるし、又は混合物、たとえば、キシロース、ガラクトース、グルコース及び/又はマンノースのような糖の混合物でありうる。これらの糖は、海洋藻類に含有されることが知られており、フカンとともに抽出されてもよい。Duarte, Maria ER, Cardoso, Marc A, Noseda, Miguel D., Cerezo, Alberto S., 「ワカメ、Sargassum stenophyllumのフコイダンにおける構造的研究」、Carbohydrate Research 333:281-293, 2001。
【0089】
これらの化合物は報告によれば、抗血栓、抗増殖、抗補体、抗癌、及び抗好中球移動の効果を含む生体内及び試験管内での複数の阻害作用を有する。フカンは、インテグリン−セレクチン分子を介した細胞−細胞の結合を含む細胞表面にて、血中のトロンビン又は補体或いは細胞表面のフコース受容体を結合することにより、細胞表面での種々の結合事象を阻止してもよい。
【0090】
そのような活性は、これらの細胞の組織への侵襲、それに続く炎症を妨げてもよい、(たとえば)血管内皮細胞へのリンパ球又は好中球の結合の阻害を介した抗炎症特性に関与すると考えられている(Patankar, MS et al., J. Biol. Chem., 268:21770-21778, 1993; Brandley BK et al., J. Cell Biol., 105:991-997, 1987)。最近の研究がまた、フカンが血管平滑筋細胞の増殖を阻害することを示しているということは(Logeart D. et al., Eur. J. Cell Biol., 74:376-384 & 385-390, 1997)、これら化合物の再狭窄抑制能の可能性を示している(が、決定ではない)。フカンは、内皮細胞及び平滑筋細胞の双方の表面に結合した後、ゆっくりと細胞内に取り込まれることが示されている(Giabe CG et al., J. Cell Science 61:475-490, 1983; Logeart D. et al., Eur. J. Cell Biol., 74:375-384, 1997)。
【0091】
日本では、種々の海草から抽出されたフコイダンが健康食品として販売されている(Riou, D. et al., Anticancer Res., 16(3A):1213-1218, 1996; Itoh, H., Anticancer res., 13(6A):2045-2052, 1983; NishinoT., et al., Thromb. Res., 82: 765-773, 1991; Blondin C. et al., Mol. Immunol., 31:247-253, 1994; Patanker MS et al., J. Biol. Chem., 268:21770-21776, 1993)。フコイダンは化粧品又は皮膚剤として提案されている。JP01031707及びJP01085905。フコイダンは強力な抗癌剤として報告されている(Riou D. Anticancer Res., 16 3a:1213-18, 1996; Itoh H. et al., Anticancer Res., 15 5b:1937-47, 1995)。フコイダンは、試験管内で血管形成を阻害することが報告されている(Soeda S. et al., Bichem. Biophys. Acta (1):127-134, 2000)。同様に、フコイダンは、血清で誘導されるHUVE細胞の(試験管内)増殖を刺激することが見い出されたということは、血管形成誘発効果の可能性を示している(線維芽細胞増殖因子が存在すれば阻害が可能であるが)(Giraux J. et al., Eur. J. Cell Biol., 774:352-9, 1998)。研究はまた、フカンが内皮細胞の単層結合を阻害することを示した(Glabe CG, J. Cell Science, 61:475-490, 1983)。毛細血管を構成する細胞は内皮細胞なので、この報告は、試験管内で細胞接着の一部が阻害されてもよいことを示しているが、これらのデータは、生体内でのフコイダンの血管形成効果を明らかにはしていない。フコイダンが胃細胞へのヘリコバクターの結合を阻害すると報告されたということは、胃潰瘍抑制効果を示唆している(Shibat HJ, Nutr. Sci. Vitaminol., 45:325-336, 1999)。
【0092】
直鎖、分枝鎖及び直鎖硫酸化フカンを含むそのほかの硫酸化フカンは差動的な抗凝固活性を有することが報告されている(Perelra MS., J. Biol. Chem., 12:7656-67, 1999)。デキストラン硫酸及び誘導体は癌細胞の増殖を阻害すること(Bittoun P., Carbohydrate Res., (3-4):247-255, 1999)及び抗凝固効果を有すること(Mauray S., J. Biomat. Sci. Poly ed. 9:373-87, 1989)が報告されている。硫酸化多糖類は、たとえば、AIDSに対して使用するための抗ウイルス剤として提案されている。EP00293828;JP01313433。
【0093】
フコイダンのようなフカンは、Adenocystis utricularis、Ascophyllum nodosum、Chorda filum、Cladosiphon okamuranus、Cystoseira abies marina、Ecklonia kurome、Fucus evanescens、Fucus vesiculosis、Hizikia fusiforme、Kjellmaniella crassufolla、Laminaria brasillensis、Laminaria cichorioides、Laminaria japonica(一般にコンブと呼ばれる)、Laminaria saccharina、Pelvetia fastigiata、Sargassum stenophylum、Sargassum thunbergil及びUndaria pinnatifidaを含むが、これらに限定されない褐色藻類の様々な種から得ることができる。これらの種はすべて分類学上に部類、Phaeophyceaeに由来し、これらの種の大半は、Fucales科及びLaminariaceae科に分類される。
【0094】
本発明に好適なフカンは、上に列記された起源、同様に分類上Fucales科及びLaminariaceae科における追加の起源、又は所望のそのほかの起源から得られるものである。さらに、海洋藻類及び海草からのフカンのすべての起源が本発明に含まれる。
【0095】
フィルム
本明細書で考察される作用剤は、線維性癒着の治療のためにヒトを含む動物に直接適用するのに好適なフィルムとして製剤化することができる。フィルムの所望の特性には、薄く、柔軟で、取り扱うことができ、組織に貼ることができることが挙げられる。本明細書で考察される各作用剤をポリマーに組み入れてフィルムを創製することができる。好適な賦形剤の添加によってポリマーフィルム製剤の特性を高めることができる。実施態様の1つでは、作用剤をヒアルロン酸ポリマーと組み合わせてフィルムを作製することができる。添加できる賦形剤には、1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDAC)及びグリセロールが挙げられる。
【0096】
本発明の実施態様は、0.001%〜99%w/wの薬剤(作用剤)を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第2の実施態様は、50%〜99%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第3の実施態様は、0.001%〜50%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第4の実施態様は、10%〜50%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第5の実施態様は、30%〜40%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第6の実施態様は、0.001%〜10%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第7の実施態様は、1%〜10%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第8の実施態様は、0.001%〜1%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第9の実施態様は、1%〜5%w/wの薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。第10の実施態様は、1%〜2%w/wの、又は本明細書で考察されるそのほかの濃度の薬剤を負荷したフィルムを製造するための作用剤の組み込みである。実施態様の1つは、作用剤の組み込みを含み、ヒアルロン酸が5%w/wの薬剤を負荷したフィルムをもたらし、フィルムの残りの部分は、およそ45:19:3の比率で、ヒアルロン酸、グリセロール及びEDACで構成される。
【0097】
ゲル
本明細書で考察される各作用剤は、本明細書でゲルと呼ばれる粘性溶液に組み入れることができる。このゲルは、ヒトを含む動物の体腔に投与することができ、線維性癒着の形成の抑制及び予防に有効である。
【0098】
ゲルの所望の特性には、特定の位置に適用し、そのに貼ったままにしておくのに十分に粘性であり、従ってそれ自体の重量で流れず、注射器の使用又は針を介した注入によって好ましい位置に投与できることが挙げられる。本発明の実施態様の1つでは、粘性の液体は、5.5%のヒアルロン酸溶液を用いて作製される。本明細書で考察される作用剤を組み込んで0.001%〜1%w/vのゲルを得ることができる。作用剤を加えて1%〜10%w/vのゲルを製造してもよい。作用剤を負荷して、10%〜50%w/vの、又は本明細書で考察されるそのほかの濃度のゲルを製造してもよい。
【0099】
点滴用剤
本明細書で考察される各作用剤を液体に溶解又は懸濁し、それをヒトを含む動物の体腔に投与することができ、増大した増殖を含む繊維性癒着の形成を抑制する、治療する、予防する等に使用することができる。これらの製剤を本明細書では点滴用剤製剤と呼ぶ。これらの製剤を、たとえば、手術後の患者の腹腔内に投与して術後癒着を防ぐことができ、又はそのほかの所望の傷、病変等の部位の中/上に投与することができる。この液体は溶媒であることができ、続いて作用剤の溶液を製造することができる。さらに、作用剤を溶解するのに使用される溶媒は水系であってもよい。電解溶液への作用剤の溶解が点滴用剤製剤を作製する。次いで、線維性癒着の形成を防ぐ好適な体腔に点滴用剤を投与する。
【0100】
実施態様の一部では、点滴用剤溶液は、たとえば、それが導入される特定の体腔の実質的にすべての領域に達することが可能である水に実質的に類似する粘性を有する、実質的に非粘性の液体である。所望の混合物は、本明細書で考察される少なくとも1種の作用剤を液体に組み入れて、約0.0001w/v%〜1%w/vの間、1w/v%〜2%w/vの間、2w/v%〜5%w/vの間、5w/v%〜10%w/vの間、10w/v%〜25%w/vの間、25w/v%〜50%w/vの間の濃度又は本明細書で考察されるそのほかの濃度にて溶液(又は懸濁液等)を製造してもよい。
【0101】
列記された各作用剤は、明らかに示されない限り、例外なく、作用剤並びにびその誘導体、塩及び類縁体すべてを包含する。たとえば、「コハク酸」は、コハク酸、スクシネート並びにそれらの塩及び類縁体すべてを包含する。線維性癒着を予防するために様々な製剤で作用剤を投与することができる。本明細書で考察される製剤、方法、系等は、本明細書で考察される各作用剤を含む製剤、製剤が単独で使用されようと、フコイダン(又はそのほかのフカン)との併用、又は本明細書で考察されるそのほかの作用剤との併用で使用されようと、そのほかの作用剤、装置、又はフコイダンを含む薬剤との組み合わせ、及び本明細書で考察される作用剤及びそのほかの作用剤を包含するように理解されるべきである。
【0102】
明らかに述べられない限り、又は背景から明らかでない限り、実施態様、側面、特徴等はすべて、所望の様式にて混合され、一致させられ、組み合わせられ、順序を変えられうる。特に指示されない限り、クレームを除いて、「又は」の使用は、「及び」を包含し、逆もまた同様である。明らかに述べられない限り、又は背景が明らかに示さないかぎり、非限定的用語は限定として解釈されるべきではない(たとえば、「包含する」、「有する」及び「含む」は、「限定なく包含する」ことを指す)。クレームも含めて、「a」、「an」及び「the」のような単一形態は、明らかに述べられない限り、又は背景が明らかに示さないかぎり、複数の参照を包含する。
【0103】
抗SDF−1剤
ケモカインは、炎症過程の間、白血球の移動、活性化及び走化性の主な調節剤として機能する低分子量(6〜14kd)の構造的に類似したタンパク質の大きなファミリーを構成する(概説には、Rollins BJ., Blood 90:909-928, 1997を参照のこと)。今日までこのサイトカインスーパーファミリーの30を超えるメンバーが同定されており、必須のジスルフィド結合を形成するNH2−末端のシステインの位置に基づいて4つの亜群、C、CC、CXC及びCX3Cに大別される。
【0104】
ストローマ細胞由来因子(SDF−1)はCXCケモカインである。2つの形態のSDF−1、SDF−1α及びβ(本明細書では一緒にSDF−1と呼ぶ)が同定されており、選択的スプライシングによってSDF遺伝子に由来する。双方の形態をコードするゲノム配列は決定されている(米国特許第5,563,048号及び米国特許第5,756,084号を参照のこと)。SDF−1は、骨髄、胸腺、脾臓、心臓、肺、筋肉、腎臓及び肝臓を含む多数の組織で構成的に産生されている。このことは、炎症誘発性サイトカインによってその発現が高度に調節されているそのほかの多数のケモカインとは対照的であり、SDF−1が、たとえば、白血球及び造血幹細胞の輸送(Nakasawa T. et al., Proc. natl. acad. Sci. USA, 91:2305-2309, 1994; McGrath KE. et al., Dev. Biol., 213:442-456, 1999; Tashiro K. et al., Science 261:600-603, 1993)、Bリンパ芽球、胚形成中の骨髄形成の確立、神経形成、心臓形成及び血管形成(Aluti A. et al., Eur. J. Immunol., 29:1823-1831, 1999; Zou YR. et al., Nature 393:595-599, 1998; Tachibana K. et al., Nature 393:591-594, 1998)を含む定常状態の恒常性過程で役割を担っているという考えを導いた。
【0105】
ほかのケモカイン又はケモカイン受容体を遺伝的に欠損させて作出した「ノックアウト」マウスは、生存可能であり、明瞭な混乱は示さない一方で、SDF−1の遺伝的欠損は子宮内で致死であり、胎児は多数の異常を示し、それには、造血系、循環器系、消化器系及び神経系における欠陥、並びにBリンパ球形成及び骨髄形成における欠陥が含まれる(Nagasawa T. et al., Nature 382:653-658, 1996; Ma Q. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:9448-9453, 1998; Bleul C. et al., Nature 382:829, 1998; Oberiln E. et al., Nature 382:833, 1996)。SDF−1は、T及びBリンパ球、好中球、単球及び顆粒球を含む多くの種類の細胞のためのケモカインである(Bleul C. et al., Nature 382:829, 1998; Oberiln E. et al., Nature 382:833, 1996)。
【0106】
SDF−1は、他のCXCケモカインとの間でたった約22%のアミノ酸配列同一性しか有さないが、他の種との進化的相同性を保持しているという点で他のケモカインと構造的に異なる。SDF−1は、単一受容体、CXCR4(以前は、LESTR、HUMSTER又はフシンと呼ばれた)に対する明らかな特異性(Federsopiel B. et al., Genomics 16:707-712, 1993; Loetscher M. et al., J. Biol. Chem., 269:232-237, 1994; Feng et al., Science 272:872-877, 1996)及びはるかに幅広い作用範囲で他の多数のケモカインと異なる。CXCR4は、好中球、リンパ球及び単球(Bieul et al., J. Exp. Med., 184:1101-1109, 1998; Foster R. et al., J. Immunol., 160:1522-1531, 1998)、巨核球(Wang JF. et al., Blood 92:756-764, 1998)、ミクログリア細胞及び星状細胞(Tanabe S. et al., J. Immunol., 159:905-911, 1997)、及び樹状細胞並びに未熟な造血系前駆体幹細胞(Mohie R. et al., 91:4523-4530, 1998; Aluti et al., Eur. J. Immunol., 29:1823-1831, 1999)に発現されている。CXCR4はまた、心臓、脳、脾臓、肝臓及び結腸を含む多種多様なそのほかの臓器及び組織における細胞上でも発現されている(Federsopiel B. et al., Genomics 16:707-712, 1993; Loetscher M. et al., J. Biol. Chem., 269:232-237, 1994; Tanabe et al., J. Immunol., 159:905-911, 1997; Zou YR. et al., Nature 393:595-599, 1998; Tachibana et al., Nature 393:591-594, 1998)。
【0107】
本発明は、たとえば、SDF−1の小分子阻害剤のような抗SDF−1を線維性癒着の発生が疑われる部位に送達することによって、術後線維性癒着のような線維性癒着を治療する、予防する及び抑制する方法を包含する。そのような作用剤の代表例には、SDF−1のmRNAの翻訳を阻害する抗SDF−1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、SDF−1のmRNAの翻訳を阻害する抗SDF−1小分子RNA、SDF−1のmRNAの転写を阻害する抗SDF−1siRNA/RNAi、SDF−1のmRNAを切断する抗SDF−1リボザイム、SDF−1の機能を阻害するSDF−1の小分子阻害剤、抗SDF−1アプタマーのような抗SDF−1結合パートナー及びSDF−1の機能を阻害する抗SDF−1抗体、及び抗SDF−1デオキシオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0108】
本発明の特定の実施態様の範囲内では、抗SDF−1作用剤は、ポリマー投与形態からの数時間から数日にわたる制御放出を介して、実質的に連続して標的組織に暴露される。
【0109】
特定の実施態様の範囲内では、抗SDF−1作用剤又は本明細書のそのほかの線維性癒着抑制剤と共に与えられる化合物は、本明細書で考察される少なくとも1種のそのほかの作用剤及び/又はカンプトテシン、メナジオン若しくはエトポシドのような、しかし、これらに限定されないトポイソメラーゼ、ヘパリン若しくはジピリダモールのような、しかし、これらに限定されない抗凝固剤、ラザロイドのような、しかし、これらに限定されない抗酸化剤、ケトチフェンのような、しかし、これらに限定されない抗ヒスタミン剤、レチノイドのような、しかし、これらに限定されない増殖抑制剤、フィブリノリシン、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼのような、しかし、これらに限定されない線維分解剤、組換え組織プラスミノーゲン活性化剤、イブプロフェン、セロコキシブのような、しかし、これらに限定されない非ステロイド系抗炎症剤、ラパマイシンのようなトリエンマクロライド抗生物質のような、しかし、これらに限定されない免疫抑制剤、或いはパクリタキセル若しくはドセタキセルのような、しかし、これらに限定されないタキサンであってもよい。化合物はまた、たとえば、小分子量拮抗剤、又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA/RNAi、IL−8、MCP−1、TNF−α、IL−10に対する中和抗体、α4β7又はα4β1のような、しかし、これらに限定されないインテグリン受容体のような、しかし、これらに限定されない、治療上有効量の別のケモカイン又はサイトカインの阻害剤を含むことができる。SDF−1に対する中和抗体は知られており、市販されている。治療上有効量のSDF−1阻害剤を組成物の一部として送達することができ、SDF−1阻害剤は、組成物の約0.0001%、0.001、0.01〜1%w/v、又は1%〜35%、5%〜50%、20%〜80%、又は80%〜100%w/vであることができる。
【0110】
作用剤はさらに、線維性癒着が発生している可能性のある外科的部位に付着してもよいヒアルロン酸フィルムのような生体適合性のマトリクスにSDF−1阻害剤を入れることを含むことができる。これらの製剤は、次いで数時間から数日にわたって化合物を放出し、線維性癒着の形成に関与する炎症過程及び血管形成過程を阻害し、正常な創傷治癒をさせてもよい。10%のグリセロールの添加により柔軟にし、2mMのEDAC(水溶性カルボイミド)と架橋されたヒアルロン酸フィルムは、いかなる毒性も誘発することなく、擦り傷部位に適用してもよい、粘膜付着性で生体適合性である。
【0111】
本発明は、さらに、たとえば、キトサン又はポリL−リジンのような正に荷電した賦形剤による荷電した水性ゲルの形成を含むことができ、負に荷電したSDF−1阻害剤、たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA/RNAiのようなSDF−1発現の阻害剤を病変部位に適用するためにそのようなゲルに組み入れることができる。
【0112】
本発明はさらに、SDF−1の発現を阻害できる核酸鎖のための形質移入剤としてのフカンの使用を含むことができる。遺伝子治療として知られる医学の先端領域は、薬剤送達の問題で制約されており、そのために、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、siRNA/RNAiを含むオリゴヌクレオチドのような遺伝子断片又は核酸鎖は、これら化合物の電荷及び高分子量のために細胞への取り込みが阻害されている。本発明はさらに、SDF−1の発現を阻害するように設計された核酸鎖をフコイダンの微粒子と結合する又はそれに内包させることを含む。本発明はさらに、外科的部位に適用する前の溶解を阻害するように粒子を化学的に架橋することをさらに含むことができる。
【0113】
本発明はさらに、SDF−1の発現を阻害するように設計された核酸鎖をキトサン(カチオン多糖類)又はそのほかのカチオンポリマーに結合させることを含むことができる。このように形成された複合体は、内因性酵素による分解からの核酸の保護を提供し、結果として作用部位への核酸の制御放出を生じる。
【0114】
実施態様の1つでは、方法は、mRNA断片、特にSDF−1タンパク質をコードするmRNAに配列で相補的な小RNAの設計及び合成を含む。小RNAの発現は、SDF−1mRNAの翻訳を効率的に阻止することができるので、ケモカインの産生を除外することができる。別の実施態様では、SDF−1mRNAの転写を阻止することができる特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの存在によって、又はケモカインをコードするmRNAを認識し、切断する特異的なリボザイムの投与によってSDF−1の発現が阻害される。
【0115】
用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸又はデオキシリボ核酸のオリゴマー又はポリマーを言う。この用語は、天然に生じるヌクレオ塩基、糖及び糖間(主鎖)共有結合から成るオリゴヌクレオチド、並びに同様に機能する非天然に生じる部分を有するオリゴヌクレオチドを包含する。そのように修飾された又は置換されたオリゴヌクレオチドは、たとえば、細胞への取り込みの向上、標的への結合の向上又はヌクレアーゼの存在下での安定性の向上のような望ましい特性のために、天然の形態よりも好ましいことが多い。
【0116】
代表的なアンチセンス化合物は、約5〜約50のヌクレオ塩基を含む。特に一般的なのは、約8〜約30のヌクレオ塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、さらに一般的なのは、約15〜25のヌクレオ塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチド(たとえば、約15〜約25のの連結されたヌクレオシド)である。既知のように、ヌクレオシドは塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は通常、複素環塩基である。そのような複素環塩基の最も一般的な2つの部類がプリン及びピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合した少なくとも1種のリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドについては、リン酸基は、糖の2’、3’又は5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合することができる。オリゴヌクレオチドの形成では、リン酸基が隣接するヌクレオシドに互いに共有結合し、線状のポリマー化合物を形成する。同様に、この線状のポリマー構造の各末端をさらに連結して環状構造を形成することができるが、開環、線状構造が一般に好ましい。オリゴヌクレオチド構造の範囲内で、リン酸基は共通して、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成するとみなされる。RNA及びDNAの正常な結合又は主鎖は、3’〜5’のホスホジエステル結合である。
【0117】
本発明で有用な好ましいアンチセンス化合物の具体例には、修飾された主鎖又は非天然のヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書で定義されるように、修飾された主鎖を有するオリゴヌクレオチドには、主鎖にリン原子を保持するもの及び主鎖にリン原子を有さないものが挙げられる。本明細書の目的で、ヌクレオシド間主鎖にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオチドであるとみなすことができる。
【0118】
好ましい修飾されたオリゴヌクレオチドには、たとえば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及びそのほかのアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’−5’結合を有するボラノホスフェート、その2’−5’結合類縁体、及びヌクレオシド単位の隣接対が3’−5’から5’−3’又は2’−5’から5’−2’に結合する逆極性を有するものが挙げられる。種々の塩、混合塩及び遊離の酸の形態も包含される。
【0119】
リン含有結合の調製を開示している代表的な米国特許には、米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,536,253号、同第5,571,799号、同第5,578,361号、及び同第5,625,050号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
その中にリン原子を包含しない好ましい修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合されたヘテロ原子及びアルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は1以上の短鎖へテロ原子若しくは複素環ヌクレオシド間結合によって形成される主鎖を有する。これらには、モルフォリノ結合(部分的には、ヌクレオシドの糖部分から形成される)、シロキサン主鎖、スルフィド、スルホキシド及びスルホン主鎖、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖、アルケン含有主鎖、スルホネート及びスルホンアミド主鎖、アミド主鎖、並びに混合されたN、O、S及びCH2成分部分を有するものが挙げられる。
【0121】
オリゴヌクレオチドを考察している代表的な米国特許には、米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,214,134号、同第5,216,141号、同第5,235,033号、同第5,264,562号、同第5,264,564号、同第5,405,938号、同第5,434,257号、同第5,466,677号、同第5,470,967号、同第5,489,677号、同第5,541,307号、同第5,561,225号、同第5,596,086号、同第5,602,240号、同第5,610,289号、同第5,602,240号、同第5,608,046号、同第5,610,289号、同第5,618,704号、同第5,623,070号、同第5,663,312号、同第5,633,360号、同第5,677,437号、及び同第5,677,439号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
一部のオリゴヌクレオチドでは、ヌクレオシド単位の糖及びヌクレオシド間結合双方、すなわち、主鎖の模倣は、新規の基によって反復される。塩基単位は、ハイブリッド形成のために適当な核酸標的化合物によって保持される。そのようなオリゴマー化合物の1つ、優れたハイブリッド形成特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖主鎖がアミノ酸含有主鎖、たとえば、アミノエチルグリシン主鎖で置き換えられる。ヌクレオ塩基は保持され、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合される。PNA化合物の調製を開示している代表的な米国特許には、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号、及び同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる考察は、Nielsen et al., (Science 254:1497-1500, 1991)に見い出される。
【0123】
本発明の特定の実施態様は、ホスホロチオエート主鎖を持つオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子主鎖を持つオリゴヌクレオチド、たとえば、上記参照した米国特許第5,489,677号の−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−(メチレン(メチルイミノ)又はMMI主鎖として知られる)、−CH2O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2−及び−O−N(CH3)−CH2−CH2−(天然のホスホジエステル主鎖は−O−P−O−CH2−と表される)及び上記参照した米国特許第5,602,240号のアミド主鎖を持つオリゴヌクレオチドである。また、好ましいのは、上記参照した米国特許第5,034,506号のモルフォリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0124】
修飾されたオリゴヌクレオチドは、また1以上の置換された糖部分も含有してもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位にて、以下のOH、F、O−、S−、又はN−アルキル、O−アルキル−Oアルキル、O−、S−、又はN−アルキル、又はO−、S−又はN−アルキルの1つを含み、その際、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換又は非置換のC1〜C10のアルキル又はC2〜C10のアルケニル及びアルキニルであってもよい。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH22ON(CH32、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2及びO(CH2)nON[(CH2)nCH32であり、その際、nは1〜約10である。そのほかの好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位にて、以下のC1〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリル又はO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2、CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、リポーター基、インターカレータ、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、オリゴヌクレオチドの薬物力学特性を改善するための基、及び類似の特性を有するそのほかの置換基の1つを含む。好ましい修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH2、2’−O−(2−メトキシエトキシ)又は2’−MOEとしても知られる)(Martin et al., Heiv. Chim. Acta 78:486-504, 1995)すなわち、アルコキシアルコキシ基が挙げられる。
【0125】
そのほかの好ましい修飾には、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−アミノプロピル(2’−OCH2CH2CH2NH2)及び2’フルオロ(2’−F)が挙げられる。類似の修飾は、オリゴヌクレオチドのほかの位置、3’末端ヌクレオチドにおける糖又は2’〜5’結合のオリゴヌクレオチドの3’位及び5’末端ヌクレオチドの5’位で行われてもよい。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体を有してもよい。修飾された糖構造の調製を開示している代表的な米国特許には、米国特許第4,981,957号、同第5,118,800号、同第5,319,080号、同第5,359,044号、同第5,393,878号、同第5,446,137号、同第5,466,786号、同第5,514,785号、同第5,519,134号、同第5,567,811号、同第5,576,427号、同第5,591,722号、同第5,597,909号、同第5,610,300号、同第5,627,053号、同第5,639,873号、同第5,646,265号、同第5,658,873号、同第5,670,833号、及び同第5,700,920号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
オリゴヌクレオチドはまた、ヌクレオ塩基(単に「塩基」と呼ぶことが多い)の修飾及び置換を包含してもよい。本明細書で使用するとき、「未修飾の」又は「天然の」ヌクレオ塩基には、プリン塩基、アデニン(A)及びグアニン(G)並びにピリミジン塩基、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が挙げられる。修飾ヌクレオ塩基には、たとえば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及びそのほかのアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及びそのほかのアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニルウラシル及びシトシン、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(偽ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシ及びそのほかの8−置換されたアデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−フルオロメチル及びそのほかの5−置換されたウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン及び3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンが挙げられる。さらなるヌクレオ塩基には、米国特許第4,687,808号で開示されたもの、ポリマー科学及び工学のコンサイス百科事典(1990年、858〜859ページ、Kroschwitz JI. ed., John Wiley & Sons)で開示されたもの、Sangivi YS. Crooke ST & Lebieu B. 編のアンチセンスの研究及び応用(CRC Press Boca Raton, pages 289-302)で開示されたものが挙げられる。
【0127】
実施態様の一部では、ヌクレオ塩基は、2−アミノプロピルアデノシン、5−プロピニルウラシル及び5−プロピニルシトシンを含む5−置換ピリミジン、8−アザピリミジン並びにN−2、N−6及びO−6置換のプリンを含む。5−メチルシトシンの置換は、0.6〜1.2℃によって核酸の二本鎖の安定性を高めることが示されており(Sangivi YS. Crooke ST & Lebieu B. 編のアンチセンスの研究及び応用(CRC Press Boca Raton, pages 276-278)、現在、好ましい塩基置換であり、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合、さらに一層好ましい。
【0128】
そのほかの修飾ヌクレオ塩基と同様に上記の修飾ヌクレオ塩基を考察している代表的な米国特許には、米国特許第3,687,808号、同第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,594,121号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、及び同第5,681,941号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
オリゴヌクレオチドのもう1つの修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞での分布又は細胞への取り込みを高める1以上の部分又は抱合体をオリゴヌクレオチドに化学的に連結することを含む。そのような部分には、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 20:533-538, 1992)のようなコレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6553-6556, 1989)のような脂質部分、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923-937, 1996)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 4:1053-1059, 1994)、チオエーテル、たとえば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 660:306-309, 1992; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 3:2765-2770, 1993)、脂肪族鎖、たとえば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Salson-Behmoaraset al., EMBO J., 10:1111-1118, 1991; Kabanov et al., FEBS Lett., 259:327-330, 1990; Svinarchuk et al., Biochemie 75:49-54, 1993)、リン脂質、たとえば、ジヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995; Shea et al., Nucl. Acids Res., 18:3777-3783, 1990)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides 14:969-973, 1995)、アダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995)、パルミチル部分(Misshra et al., Biochem. Biophys. Acta, 1264:229-237, 1995 )が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
そのようなオリゴヌクレオチド抱合体の調製を考察している代表的な米国特許には、米国特許第4,829,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717号、同第5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,048号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,867,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241号、同第5,391,723号、同第5,416,203号、同第5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,585,552号、同第5,587,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号、及び同第5,688,941号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
本発明はまた、キメラオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドも包含する。本発明の背景では、「キメラオリゴヌクレオチド」又は「キメラ」は、それぞれ少なくとも1つのヌクレオチドから成る2以上の化学的に識別可能な領域を含有するオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは通常少なくとも1つの領域を含有し、その際、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼの分解に対する高い耐性、細胞への高い取り込み及び/又は標的核酸に対する高い結合親和性をオリゴヌクレオチドに付与するように修飾される。オリゴヌクレオチドの追加の領域は、RNA/DNA又はRNA/RNAのハイブリッドを切断可能な酵素に対する基質として作用してもよい。一例として、RNA分解酵素Hは、RNA/DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞性のエンドヌクレアーゼである。従って、RNA分解酵素Hの活性化は、RNA標的の分解を生じ、それによって遺伝子発現のアンチセンス阻害の効率が大きく高められる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動、及び必要に応じて、関連する核酸ハイブリッド形成技法によって日常的に検出することができる。
【0132】
キメラオリゴヌクレオチドの例には、3つの異なった領域が存在し、通常、化学的には互いに同等であるが、ギャップとは異なる2つの領域が隣接する中央領域を持つ「ギャップマー」が挙げられるが、これらに限定されない。ギャップマーの例は、オリゴヌクレオチドの中央部分(ギャップ)がRNA分解酵素Hの基質として作用し、2’−デオキシヌクレオチドから成るが、隣接部分(5’及び3’の「ウイング」)は、標的RNA分子に対してさらに大きな親和性を有するが、ヌクレアーゼ活性を支えることはできないように修飾される(たとえば、フルオロ−又は2’−O−メトキシエチル置換の、又はロックされた核酸)オリゴヌクレオチドである。キメラオリゴヌクレオチドは糖で修飾されたものに限定されないが、修飾された主鎖を持つ、たとえば、ホスホロチオエート(P=S)及びホスホジエステル(P=O)の主鎖結合を持つ、又はMMI及びP=Sの主鎖結合の領域を持つオリゴヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドも包含してもよい。
【0133】
そのほかのキメラには、「ヘミマー」としても知られる「ウイングマー」、すなわち、2つの異なった領域を持つオリゴヌクレオチドが挙げられる。ウイングマーの好ましい例では、オリゴヌクレオチドの5’位が、RNA分解酵素Hの基質として作用し、好ましくは2’−デオキシヌクレオチドから成るが、3’位は、標的RNAにさらに大きな親和性を有するが、ヌクレアーゼ活性を支えることはできないように修飾され(たとえば、フルオロ−又は2’−O−メトキシエチル置換)、逆もまた同様である。
【0134】
本発明に従って、本発明のオリゴヌクレオチドの1つの、複数の又はすべてのヌクレオチド単位が、2’−メトキシエチル(−O−CH2CH2OCH3)の修飾を持ってもよい。2’−メトキシエチルの修飾を有する複数のヌクレオチドサブユニットを含むオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの範囲内でいかなるヌクレオチドサブユニットにそのような修飾を有することもでき、キメラオリゴヌクレオチドであってもよい。2’−メトキシエチルの修飾のほかに、又はそれに加えて、アンチセンスの有効性、潜在力又は標的への親和性を高めるそのほかの修飾を含有するオリゴヌクレオチドも好ましい。1以上のそのような修飾を含むキメラオリゴヌクレオチドは現在好ましい。
【0135】
本発明に従って使用するオリゴヌクレオチドは、固相合成の周知の技法を介して都合よく且つ日常的に作製してもよい。そのような合成用の機器は、アプライドバイオシステムズを含む幾つかの販売業者によって販売されている。そのような合成のためのそのほかの所望のアプローチを採用してもよい。たとえば、同様の技法を用いて、ホスホロチオエート及び、2’−O−メトキシエチルオリゴヌクレオチドを含む2’−アルコキシ又は2’アルコキシアルコキシの誘導体のようなオリゴヌクレオチドを調製することは周知である(Martin, P., Heiv. Chim. Acta 78:486-504, 1995)。類似の技法を用い、市販の修飾アミダイト及び制御された細孔ガラス製品、たとえば、ビオチン、フルオレセイン、アクリジン又はプソラレンで修飾したアミダイト及び/又はコントロールド・ポア・ガラス(CPG)(バージニア州、スターリングのグレンリサーチから入手可能)を用いて、蛍光的に標識された、ビオチン化された又はそのほかで共役されたオリゴヌクレオチドを合成することも周知である
【0136】
本発明のアンチセンス化合物には、薬学上許容可能な塩及びプロドラッグを含む生物同等性の化合物が挙げられる。これは、薬学上許容可能な塩、エステル又はそのようなエステルの塩、又は、ヒトを含む動物に投与する際、生物活性のあるその代謝産物又は残基を提供することが可能であるそのほかの化合物を含むことを意図する。従って、たとえば、開示もまた、本発明の核酸の薬学上許容可能な塩及びそのような核酸のプロドラッグに引きつけられる。「薬学上許容可能な塩」は、本発明の核酸の生理学的に且つ薬学上許容可能な塩、すなわち、母型化合物の所望の生物活性を保持し、所望でない毒性効果をそれに付与しない塩である(たとえば、Berge et al., 「医薬的な塩」J. of Pharma. Sci. 66:1-19, 1977を参照のこと)。
【0137】
オリゴヌクレオチドについては、薬学上許容可能な塩の例には、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、スペルミン及びスペルミジン等のようなポリアミンのようなカチオンとともに形成される塩;(b)たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などのような無機酸と共に形成される酸付加塩;(c)たとえば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクトロン酸などのような有機酸と共に形成される塩;並びに(d)塩素、臭素、及びヨウ素のような元素アニオンから形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明のオリゴヌクレオチドは、追加的に又は代替的に「プロドラッグ」の形態で送達されるように調製されてもよい。用語「プロドラッグ」は、内因性の酵素又はそのほかの化学物質の作用及び/又は条件によって体内又は細胞内で活性化型に変換される不活性型で調製される治療剤を指す。たとえば、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ型は、WO93/24510で開示された方法に従ってSATE[(S−アセチル−2−チオエチル)ホスフェート]誘導体として調製される。
【0139】
SDF−1タンパク質の阻害のための特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、以下の実施例3に示される。
【0140】
実施例3で与えられる実施態様よりも大きな又は小さな数の置換ヌクレオチドを有し、3’方向又は5’方向のいずれかでSDF−1mRNAに沿ってさらに伸び、配列番号1〜13で包括的に同定されるが、SDF−1タンパク質の発現も阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドも本発明の範囲内である。
【0141】
別の実施態様では、SDF−1の作用は、特異的な中和抗体の存在によって阻害することができる。
【0142】
さらに別の実施態様では、本発明は、SDF−1の発現を阻害するように設計された核酸鎖のための形質移入剤としてのフカンの使用を提供する。遺伝子治療として知られる医学の先端領域は、薬剤送達の問題で制約されており、そのために、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、RNA阻害剤を含むオリゴヌクレオチドのような遺伝子断片又は核酸鎖は、これら化合物の電荷及び高分子量のために細胞への取り込みが阻害されている。最近、遺伝子又は核酸を含有する微粒子(たとえば、リン酸カルシウム)の使用が、それらが細胞表面に結合し、エンドサイトーシス又は陥入によって取り込まれ、結果として遺伝子又は核酸の細胞内への侵入が生じるような形質移入剤として提案されている。ほとんどの細胞は、膜表面にフカン受容体を含有する。この実施態様では、SDF−1の発現を阻害するように設計された核酸鎖をフコイダン微粒子に結合し、又は内包することができ、外科的部位に適用される前の溶解を阻害するように粒子を架橋することができる。
【0143】
上述から、本明細書では、説明の目的で特定の実施態様を考察してきたが、開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な改変を行ってもよいことが十分に理解されるであろう。従って、系および方法等は、本明細書で述べられた対象物の順列組み合わせと同様にそのような改変を包含し、限定されない。
【0144】
特に指示されない限り、クレームを除いて、「又は」の使用は、「及び」を包含し、逆もまた同様である。明らかに述べられない限り、又は背景が明らかに示さないかぎり、非限定的用語は限定として解釈されるべきではない(たとえば、「包含する」、「有する」及び「含む」は通常、「限定なく包含する」ことを指す)。「a」、「an」及び「the」のような単一形態は、明らかに述べられない限り、又は背景が明らかに示さないかぎり、複数の参照を包含する。
【0145】
線維性癒着抑制剤の定量的有効性の考察
実施態様の1つでは、所定の薬剤又は薬剤の組み合わせの有効性は、手術の線維性癒着について、ラットの盲腸側壁モデルにて、薬剤又は組み合わせに対する所定の標準、たとえば、薬剤を負荷したヒアルロン酸ナトリウムフィルムに対する偽物を負荷した又はヒアルロン酸ナトリウムフィルムのみの平均合計癒着値(強さx面積「TAV」)の低下として評価することができる。他の標準には、そのほかのフィルム、溶液等、及びそのほかのモデル、たとえば、ウサギの子宮角モデル又はヒトにおける有効性を挙げることができる。種々の実施態様では、薬剤は、対照の値、たとえば、手術の線維性癒着に関するラットの盲腸側壁モデルを用いたヒアルロネートフィルムのみの値の0.001%、1%、5%、10%、25%、50%、又は75%以下の平均TAVを有することができる。他の測定パラメータでは、薬剤は、患者における線維性癒着の形成を実質的にすべて抑制することができる。
【0146】
たとえば、手術の線維性癒着に関するラットの盲腸側壁モデルを用いたヒアルロン酸ナトリウムフィルムのみに対する薬剤の有効性を比較する以下の実施例では、図1〜5に示すように、フコイダンは、約10%未満のTAVを有し(約0%にまで落ちる)、抗h−SDF−1/PBSF抗体及びベタメタゾンは、約25%未満のTAVを有し、コンドロイチン硫酸A、デキストラン硫酸、エリスロマイシン及びTIMP−2は、約50%未満のTAVを有し、ストレプトキナーゼ、テトラサイクリン、ミノサイクリン、マレイン酸エナラプリル、コハク酸、デンプン、メソトレキセート、ドセタキセル、ニメスリド、メクロフェナン酸、メクロフェナン酸ナトリウム一水和物及びデキサメタゾンは、約75%未満のTAVを有し、ブデノシド、ジフルニサル、ダカルバジン、スタキオース、ヒドロキシプロピルセルロース、インドメタシン、ケルセチン、アルギン酸、カプトプリル、ドキシサイクリン、TGF−β及びシムバスタチンは、約90%未満のTAVを有し、並びに酢酸コルチゾン、テノキシカム、シクロホスファミド、レフルノミド、コラーゲン、デキストロースは、約100%未満のTAVを有した。別の実施態様では、少なくとも1人の試験対象又は患者における癒着すべてを抑制すること(すなわち合計癒着値(強さx面積)の尺度でゼロにスコア化される)における有効性に従って薬剤を評価することができる。たとえば、以下の実施例では、線維性癒着の発生が疑われる盲腸側壁部位に治療上の有効量の作用剤を投与した後、少なくとも1匹の試験動物にて、フコイダン、シスプラチン、メソトレキセート、ドセタキセル、デキサメタゾン及び抗SDF−1抗体のそれぞれが線維性癒着を完全に抑制した。
【0147】
実施例
簡単に要約すると、実施例1及び2は、動物モデルを用い、手術の癒着に対する種々の作用剤の有効性の解析を指向し、実施例3〜7は、アンチセンス及びそのほかのSDF−1阻害剤に関する。実施例8〜10は、ラパマイシンに関する。実施例11〜14は、線維性癒着抑制剤の種々の製剤に関する。実施例15は、様々な起源に由来するフコイダンの有効性に関する。
【実施例1】
【0148】
ラットにおける盲腸側壁の手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防に関する薬剤負荷ヒアルロン酸フィルムの有効性
手術癒着のラット盲腸側壁モデルを用いて、本明細書で考察した各作用剤(以下、薬剤と呼ぶ)の投与の効果を術後型の線維性癒着の防止について検討した。このモデルではラットを4匹の群に分けた。手術の損傷後、ラットを処置しないか、又は架橋したヒアルロン酸(HA)フィルム又はフィルムに以下の濃度(%w/w)の薬剤を含有するHAフィルムで処理した。



【0149】
ヒアルロン酸フィルムの調製:水にヒアルロン酸ナトリウム及びグリセロールを一晩溶解することによってヒアルロン酸溶液を調製した。ヒアルロン酸ナトリウムとグリセロールの比は、約3:1であり、溶質(ヒアルロン酸ナトリウム及びグリセロール)の合計濃度は、2〜3%w/wの間だった。十分量をスパーテルで混合することにより薬剤を溶液に組み入れ、ヒアルロン酸ナトリウム及びグリセロールに対して2%、5%、15%または約30%の薬剤混合物を製造した(すなわち、薬剤の濃度は水を計算に含めない)。
【0150】
架橋剤、EDACを約0.1%w/w(水における最終濃度)で含めた。2枚のプラスチック製ペトリ皿に溶液をピペッティングし、60℃にて少なくとも12時間乾燥することによってこれらの溶液からフィルムを成形した。外科用の刃を用いて各乾燥フィルムをペトリ皿から外し、1.2cmx1.8cmの大きさに切断した。
【0151】
動物試験:手術の損傷は以下のように誘導した。体重が225〜300gの成熟したスプラーグドーリー系ラットは、ブリティッシュコロンビア大学動物施設から入手した。肉眼的に正常に見える(すなわち、清潔で乱れのない毛皮、明るく澄んだ目及び活動的な姿勢を示す)動物のみをこの試験に用いた。動物を無作為に処理群に割り振り、イソフルランガスによって麻酔した。腹部を剃毛し、皮膚用抗菌洗剤(ステリスタット2%)で清浄し、クロロヘキサンを沁みこませたガーゼでぬぐった。尾静脈に切れ目を入れ、少量の血液試料を得た(100mL以下)。この血液試料で白血球数を数えた。抗生物質(40,000単位/kgのデポ−ペニシリン)を各ラットの右大腿に注射し、鎮痛剤(0.01mg/kgのブプレノルフィン)を左大腿に注射した。ピンセットで筋肉を管理しながら、白線の後方約2cmに始まる皮膚に4cmの切開を作った。盲腸を見つけ、腹腔から引き出し、背面と腹面双方の表面を、10号の外科用メスで盲腸表面に対して45度の角度で45回こすって怪我をさせた。刃が指している方向と反対方向でこすった。生理食塩水に浸したガーゼにこすった盲腸を包んだ。ドインを用いて皮膚から腹膜壁を離し、ドインを用いて腹膜壁を反転し、壁の内側をさらした。浅い切開によっておおまかに1.2cmx1.8cmの長方形の傷を腹膜壁に作った。ピンセットを用いて上の膜及び筋肉組織の層を除いた。5−0の縫合糸を用いて、2つの縫い目の上を結束することなく、長方形の4つの角を縫い合わせた。フィルムを一枚こすった長方形の上に置き、次いで、2つの縫い目の上をきつく結んだ。未処理の対照群の場合では、こすった上にフィルムは置かなかった。腸管におけるねじれの応力を防ぐような方法で、さらした臓器を腹の中に戻した。5−0の縫合糸で腹膜壁を閉じ、3−0の縫合糸で手術の切開を閉じた。動物の首の周りにカラーを付けて、縫い合わせを妨害するのを防いだ。ラットを清潔なケージに入れ、意識が戻るまで加熱ランプで温めた。手術後毎日、ラットの体重を測定した。
【0152】
手術の1週間後、線維性癒着を評価した。炎症の徴候及び創傷治癒の欠如について切開部位を視覚的にチェックした。ラットを麻酔し、尾静脈の切れ目から白血球数を決定するために血液試料を得た。次いでCO2を用いてラットを屠殺し、次いで正中に沿って再切開した。異常について内臓を視覚的にチェックした。縫合糸を外し、盲腸と側壁との間、同様に縫い合わせ点における線維性癒着を、事前に定義したスコア化システムに従って評価した。この評価に使用した2種類の基準があった。線維性癒着は、以下の尺度に従って決定した。
癒着によって覆われた面積の尺度:
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
癒着の強度の尺度
0 癒着がない
1 鈍い剥離で引き離し可能な癒着
2 容易には分離できない癒着
3 癒着の鋭い剥離を必要とする(壁又は角を引き裂く)
【0153】
面積スコアを線維性癒着の強度スコアに乗じることによって動物についての全体的な線維性癒着のスコアを決定した。
【0154】
薬剤負荷フィルムの治療効果を示す一連のグラフを図1〜5に示す。データが、所定の負荷レベルで以下の薬剤によって処理された動物は対照群の動物よりも低い全体的な線維性癒着のスコアを有することが見い出されたことを明らかにしているということは、薬剤負荷フィルムによって線維性癒着の形成が効果的に抑制されたことを明らかにしている。癒着スコアの低下は、片側スチューデントのt検定を用いて、デキストラン硫酸(5%w/w)、マレイン酸エナラプリル(5%w/w)、シスプラチン(2%w/w)、デキストラン硫酸(25%w/w)、フコイダン(33%w/w)、エリスロマイシン(5%w/w)、及びテトラサイクリン(5%w/w)について統計学的に有意(P<0.05)であった。
【実施例2】
【0155】
ウサギにおける子宮角手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防に対する薬剤負荷ヒアルロン酸フィルムの有効性
ウサギにおける子宮角手術癒着モデルを用いて、本明細書で考察し、選択された各作用剤(以下、薬剤と呼ぶ)の投与の効果を術後型の線維性癒着の防止について検討する。このモデルではウサギを4匹の群に分ける。手術の損傷後、ウサギを、架橋したヒアルロン酸(HA)フィルム、5%w/wで負荷した薬剤を含有する架橋したHAフィルム、2%w/wで負荷した薬剤を含有する架橋したHAフィルム、30%w/wで負荷した薬剤を含有する架橋したHAフィルム、5%w/w〜99%w/wの間の濃度で負荷した薬剤を含有する架橋したHAフィルムで処理し、又は処理しない(対照群)。他の処理群は、0.0001%w/w〜1%w/wの間の濃度の薬剤の溶液(懸濁液)又は1%w/w〜2%w/wの間の濃度の薬剤の溶液(懸濁液)、又は2%w/w〜5%w/wの間の濃度の薬剤の溶液(懸濁液)、又は5%w/w〜10%w/wの間の濃度の薬剤の溶液(懸濁液)、又は10%w/w〜25%w/wの間の濃度の薬剤の溶液(懸濁液)、又は25%w/w〜50%w/wの間の濃度の薬剤の溶液(懸濁液)を含む。
【0156】
ヒアルロン酸フィルムの調製:水にヒアルロン酸ナトリウム及びグリセロールを一晩溶解することによってヒアルロン酸溶液を調製する。ヒアルロン酸ナトリウムとグリセロールの比は、約3:1であり、溶質(ヒアルロン酸ナトリウム及びグリセロール)の合計濃度は、1〜2.5%w/wの間である。十分量をスパーテルで混合することにより薬剤を溶液に組み入れ、ヒアルロン酸ナトリウム及びグリセロールに対して2%、5%、又は約30%の薬剤混合物を製造する(すなわち、薬剤の濃度は水を計算に含めない)。
【0157】
架橋剤、EDACを約0.1%w/w(水における最終濃度)で含めるであろう。2枚のプラスチック製ペトリ皿に溶液をピペッティングし、60℃にて少なくとも12時間乾燥することによってこれらの溶液からフィルムを成形する。次いで外科用の刃を用いて各乾燥フィルムをペトリ皿から外し、1.2cmx1.8cmの大きさに切断する。
【0158】
薬剤溶液(点滴用剤)の調製:
適当量の薬剤を水性溶液(たとえば、乳酸加リンガー液、USP)に溶解する。これらの溶液をろ過して粗い粒子を除き、22μmのフィルター又はオートクレーブ又はそのほかの適当な手段によって滅菌する。薬剤を溶液ではなく懸濁液として投与するならば、ろ過工程は使用しない。手術処置の終わり、手術切開を閉じるためのウサギの最後の縫合の直前に、滅菌した点滴用剤の薬剤を腹腔に直接投与する。
【0159】
動物試験
ウサギにおける子宮角手術癒着モデルを用いてこれらの製剤を調べる。簡単に言えば、ウサギの腹部に切開を作る。子宮角を見つけ、角の基部を指定した(及び一貫した)時間、つかむことによって傷つける。外科用メスでこすることによって特定の領域でウサギの腹膜の側壁を傷つける。腹膜の側壁のこすった領域に載せるような方法で子宮角を置き、角の先端を縫い合わせる。縫い合わせは、側壁のこすった領域の外にあるが、子宮角がこすった領域から外れるのを防ぐ。
【0160】
こすった領域の上(角と側壁の間)に直接置くことによってフィルム製剤の有効性を評価する。
【0161】
手術処置が完了する前に、ウサギの腹部で調べられている製剤を30mL点滴することによって点滴用剤の製剤の有効性を評価する。
【0162】
手術処置が完了する前に、ウサギの腹部に30mLの乳酸加リンガー注射液USPを点滴することによって調べられる対照群と、これらの製剤を比較する。
【0163】
処置の14日後、ウサギを安楽死させて癒着形成の程度を評価する。評価者は、どの群が評価されるのかについて盲検する。癒着に覆われた面積と形成した癒着の強度の積としてこれらの癒着をランク分けする。癒着に覆われた面積は4点の尺度でランク分けし、癒着の強度は、0〜3の尺度でランク分けする。
癒着の強度の尺度
0 癒着がない
1 鈍い剥離で引き離し可能な癒着
2 容易には分離できない癒着
3 癒着の鋭い剥離を必要とする(壁又は角を引き裂く)
癒着によって覆われた面積の尺度:
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
【0164】
次いで、面積スコアを線維性癒着の強度スコアに乗じることによって各ウサギについての癒着スコアが得られる。薬剤で処理された動物が、対照における動物よりも低い全体の線維性癒着のスコアを有することが判明するということは、対照群と比べた場合、処理されたラットにおける外観、体重又は白血球数での変化の欠如によって認められるように明らかな毒性を伴わずに、薬剤負荷フィルム及び/又は薬剤負荷点滴用剤溶液(又は懸濁液)によって線維性癒着の形成が効果的に抑制されることを明らかにしている。
【実施例3】
【0165】
SDF−1タンパク質の阻害のための好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドの決定
SDF−1mRNAのアンチセンスの可能性がある配列を決定するために、SDF−1のmRNA配列をバイオテクノロジー情報国立センター(NCBI)のデータベースから先ず入手した。http://www.ncbi.nlm.nih.govnにてデータベースにアクセスできる。検索パラメータにおいて、「SDF」を入力し、ヒトSDF−1mRNAに相当する受託番号NM_000609を持つ配列を見い出した。
【0166】
RNA又はDNAの二次配列を予測するオンラインサービスであるmfoldに配列を提出したが、それは、http://bioweb.pasteur.fr/seqanal/interfaces/mfold-simple.htmlにてアクセスできる。mfoldのサービスは3000塩基に限定されているが、SDF−1の配列は3541塩基の長さであることに注意にのこと。SDF−1配列の最初の2760塩基のみを用いた。
【0167】
mfoldは配列を処理し、検索結果をオンラインで提示するのに48時間かかる。7日以内にmfoldのサーバーから削除されるので、結果をダウンロードすべきである。
【0168】
mfoldサービスは、38の可能性のある配列を予測し、アンチセンス配列がmRNAに結合する可能性のある部位について各構造を熟視した。以下に描いたように、これらの領域は分子内結合を有さないので、構造においてループを探すことによってこれを行った。
【0169】
【化1】

【0170】
上記ループに使用する相補的配列は、5’−CAGCCGGGCTACAATCTG(配列番号2)であった。この方法に基づいて全部で、12の配列を設計した。アンチセンスを設計するのに使用した各ループ構造は、38配列のうち少なくとも19に存在することを確認した。
【表1】

【実施例4】
【0171】
SDF−1アンチセンスオリゴヌクレオチドの製造及びポリカプロラクトンのペーストからのその制御放出
10%(w/w)の濃度にて60℃にてスパーテルですり潰すことによりSDF−1阻害剤をポリカプロラクトン(PCL、バーミンガムポリマーズ、分子量54K)と混合する。次いで、この混合物を1mLのプラスチック製注射器に装填し、冷却する。この製剤を18ゲージの針を介して56℃にて注射することができる。
【0172】
PCLペーストからの薬剤の放出を測定するには、10mgの融解したペーストを15mLのガラス管の底に注入し、冷却し固める。15mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を管に加え、管に蓋をして、37℃のオーブンにて端から端に転倒させる。特定の時間に、管を取り出し、放出された薬剤の量を吸収分光光度計によって分析する。SDF−1阻害剤の放出は、薬剤放出の最初の突発、その後の緩慢なな徐放を特徴とする。SDF−1阻害剤のこの投与形態は、制御された方式で薬剤を放出する、阻害剤の生体適合性の、生分解性の注射可能な製剤を表す。
【実施例5】
【0173】
ニワトリ胚の絨毛尿膜における血管形成に対するSDF−1阻害剤(特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、mRNA阻害剤又は中和抗体)を負荷したペレットの効果
ニワトリの受精卵を地方の孵化場から入手し、3日と半日、自動回転式の37℃のインキュベータに入れる。卵の尖った先端を5〜10分間上に向けて内膜から卵の内容物が剥離するように卵を手動で回転させる。70%及びキムワイプを用いて卵全体をぬぐい、卵の外側を清潔且つ衛生的に保つ。層流フードの中で、鈍い方を上にして卵を保持し、ピンセットの先端で慎重に殻を割ることによって卵の鈍い先端に穴を1つ開ける。殻の膜をピンセットで穏やかに取り除き、鈍い先端に穴を形成する。内膜を損傷せずに、この丸い穴を直径2〜3cmほどに大きくすることができる。いったん、殻に穴を創ると内側の殻の膜(卵の内容物を格納する)を穏やかに剥がし、ピンセットで取り除くが、絨毛尿膜(CAM)(黄身を格納し、ニワトリ胚を発生させている)を損傷しないように注意すること。
【0174】
次いで、パラフィンを穏やかに引き伸ばし、穴の周りに置くことによって、滅菌したパラフィンワックス紙のシートで穴を覆う。次いで、卵をインキュベータ(37℃)の卵棚に置き、回転を防ぐような方法で位置取りさせる。6日後、卵を1つずつインキュベータ(鈍い方が上)から取り出し、胚の後腸に起源を持つCAMを直接評価するために、窓を覆うパラフィンを外す。SDF−1阻害剤(1%〜30%w/wの間で負荷)を含有するポリマーペレットをCAMの増殖している毛細血管床の上に載せる。卵内容物を再びパラフィンシートで密封し、卵を37℃のインキュベータに戻す。さらに2日後、CAMの脈管構造の分析を記録する(薬剤をCAMの毛細血管床の載せて48時間後)。薬剤の効果を0、1、2又は3に等級化する無血管の尺度を用いてCAMに対する薬剤の効果をランク分けする。無血管尺度の値は以下のとおりである。
0 抗血管形成活性なし
1 微細な血管の減少
2 薬剤ペレット(直径2mm)のサイズに相当する小さな無血管域
3 直径4〜5mmの無血管域
【0175】
SDF−1阻害剤を負荷したペレットの存在は、CAMアッセイにおいて血管形成を妨害し、又は低下させ、このことは、SDF−1阻害剤の抗血管形成活性を明らかにし、阻害剤のポリマー徐放性製剤は、過度の毒性を誘発することなく、治療上有効な濃度の薬剤を放出する有効な方法であることを示している。
【実施例6】
【0176】
活性化内皮細胞におけるSDF−1発現に対するSDF−1阻害剤(特異的なASO、リボザイム又はmRNA阻害剤)の有効性
ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)を単離し、10%FCS、8%のプールしたヒト血清、50mg/mLの内皮細胞増殖因子、10U/mLのヘパリン及び抗生物質を含有するM199培地(シグマ−アルドリッチ)で一次培養を樹立し、継代する。サイトカイン添加の1日前に、フィブロネクチンをコートしたプレートに細胞を事前に播き、次いで、SDF−1阻害剤の存在下でTNF−α(12ng/mL、R&Dシステムズ)を補完した培養培地で18時間刺激する。
【0177】
SDF−1阻害剤の存在下でのサイトカインの刺激に続いて、細胞を回収し、溶解し、市販のmRNA精製キット(キアゲン)を用いてmRNAを抽出し、市販のキットを用いて、逆転写処置を行う。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いて、得られたDNAを増幅し、リアルタイムPCR機(ライトサイクラー、バイオラッド)において定量する。SDF−1の発現を阻害するために特異的なリボザイム又は阻害的mRNA配列を加える培養の場合、SDF−1産生は、市販のSDF−1のELISAキット(R&Dシステムズ)を用いて定量する。SDF−1阻害剤の投与は、TNF−αで刺激した培養におけるこのケモカインの発現を妨げる。
【実施例7】
【0178】
キトサンフィルムにおけるSDF−1阻害剤(特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、mRNA阻害剤又は中和抗体)の内包
SDF−1阻害剤を1.2mLのジメチルスルホキシドに溶解し、2%w/vの酢酸中2.5%w/vのキトサン(フルカサイエンティフィック、低分子量)4mLにピペットで入れる。この混合物をスパーテルで撹拌し、沈殿した薬剤をキトサン溶液に均質に懸濁する。次いで、この粘性混合物4mLを2.5cmのペトリ皿に注ぎ、37℃にて一晩乾燥する。キトサンは、ペトリ皿から外される薄いフィルムに乾燥する。これらのフィルムは、中程度に柔軟性があり、約35mmの厚さで、阻害剤は、10%(キトサンに対してw/w)の濃度でキトサンマトリクスに均一に懸濁されている。これらキトサンフィルムからの薬剤の放出を測定するには、10mLのPBS(pH7.4)に20mg入れ、管に蓋をして特定の時間、37℃にて転倒させる。フィルムからPBSに放出された阻害剤の量を260nmの吸収によって測定する。薬剤の放出は、最初の突発に続く緩慢な徐放を特徴とする。阻害剤のこの投与形態は、制御された方式で薬剤を放出する、SDF−1阻害剤の生体適合性の、粘膜付着性の製剤を表す。
【実施例8】
【0179】
ポリカプロラクトンペーストにおけるラパマイシンの製造及びポリカプロラクトンペーストからのその制御された放出
10%(w/w)の濃度にて60℃にてスパーテルですり潰すことによりラパマイシンをポリカプロラクトン(PCL、バーミンガムポリマーズ、分子量54K)と混合する。次いで、この混合物を1mLのプラスチック製注射器に装填し、冷却する。この製剤を18ゲージの針を介して56℃にて注射することができる。

【0180】
PCLペーストからの薬剤の放出を測定するには、10mgの融解したペーストを15mLのガラス管の底に注入し、冷却し固める。15mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を管に加え、管に蓋をして、37℃のオーブンにて端から端に転倒させる。特定の時間に、管を取り出し、放出された薬剤の量を吸収分光光度計によって分析する。ラパマイシンの放出は、薬剤放出の最初の突発、その後の緩慢な徐放を特徴とする。ラパマイシンのこの投与形態は、制御された方式で薬剤を放出する、阻害剤の生体適合性の、生分解性の注射可能な製剤を表す。
【実施例9】
【0181】
ニワトリ胚の絨毛尿膜における血管形成に対するラパマイシンを負荷したペレットの効果(CAMアッセイ)
ニワトリの受精卵を地方の孵化場から入手し、3日と半日、自動回転式の37℃のインキュベータに入れる。卵の尖った先端を5〜10分間上に向けて内膜から卵の内容物が剥離するように卵を手動で回転させる。70%及びキムワイプを用いて卵全体をぬぐい、卵の外側を清潔且つ衛生的に保つ。層流フードの中で、鈍い方を上にして卵を保持し、ピンセットの先端で慎重に殻を割ることによって卵の鈍い先端に穴を1つ開ける。殻の膜をピンセットで穏やかに取り除き、鈍い先端に穴を形成する。内膜を損傷せずに、この丸い穴を直径2〜3cmほどに大きくすることができる。いったん、殻に穴を創ると内側の殻の膜(卵の内容物を格納する)を穏やかに剥がし、ピンセットで取り除くが、絨毛尿膜(CAM)(黄身を格納し、ニワトリ胚を発生させている)を損傷しないように注意すること。
【0182】
次いで、パラフィンを穏やかに引き伸ばし、穴の周りに置くことによって、滅菌したパラフィンワックス紙のシートで穴を覆う。次いで、卵をインキュベータ(37℃)の卵棚に置き、回転を防ぐような方法で位置取りさせる。6日後、卵を1つずつインキュベータ(鈍い方が上)から取り出し、胚の後腸に起源を持つCAMを直接評価するために、窓を覆うパラフィンを外す。ラパマイシン(1%〜30%w/wの間で負荷)を含有するポリマーペレットをCAMの増殖している毛細血管床の上に載せる。卵内容物を再びパラフィンシートで密封し、卵を37℃のインキュベータに戻す。さらに2日後、CAMの脈管構造の分析を記録する(薬剤をCAMの毛細血管床の載せて48時間後)。薬剤の効果を0、1、2又は3に等級化する無血管の尺度を用いてCAMに対する薬剤の効果をランク分けする。無血管尺度の値は以下のとおりである
0 抗血管形成活性なし
1 微細な血管の減少
2 薬剤ペレット(直径2mm)のサイズに相当する小さな無血管域
3 直径4〜5mmの無血管域
【0183】
SDF−1阻害剤を負荷したペレットの存在は、CAMアッセイにおいて血管形成を妨害し、又は低下させ、このことは、ラパマイシンの抗血管形成活性を明らかにし、ラパマイシンのポリマーの徐放性製剤は、過度の毒性を誘発することなく、治療上有効な濃度の薬剤を放出する有効な方法であることを示している。
【実施例10】
【0184】
キトサンフィルムにおけるラパマイシンの内包
ラパマイシンを1.2mLのジメチルスルホキシドに溶解し、次いで2%w/vの酢酸中2.5%w/vのキトサン(フルカサイエンティフィック、低分子量)4mLにピペットで入れる。この混合物をスパーテルで撹拌し、沈殿した薬剤をキトサン溶液に均質に懸濁する。次いで、この粘性混合物4mLを2.5cmのペトリ皿に注ぎ、37℃にて一晩乾燥する。キトサンは、ペトリ皿から外される薄いフィルムに乾燥する。これらのフィルムは、中程度に柔軟性があり、約35mmの厚さで、阻害剤は、10%(キトサンに対してw/w)の濃度でキトサンマトリクスに均一に懸濁されている。これらキトサンフィルムからの薬剤の放出を測定するには、10mLのPBS(pH7.4)に20mg入れ、管に蓋をして特定の時間、37℃にて転倒させる。フィルムからPBSに放出されたラパマイシンの量を260nmの吸収によって測定する。薬剤の放出は、最初の突発に続く緩慢な徐放を特徴とする。ラパマイシンのこの投与形態は、制御された方式で薬剤を放出する、薬剤の生体適合性の、粘膜付着性の製剤を表す。
【実施例11】
【0185】
ウサギの子宮角手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防に対するフコイダンを負荷した(33%w/w)ヒアルロン酸フィルム及び乳酸加リンガー液中フコイダン点滴用剤(3%w/v)の有効性
蒸留水中にグリセロールと共にヒアルロン酸(HA)を溶解することによって33%フコイダンのフィルムを製剤化した。37℃のオーブンで逆さに反転することによってHAの溶解は2時間以内に生じた。混合しながらHA/グリセロールの溶液にフコイダン(シグマケミカルズ)を加えた。激しく混合しながら、EDAC、架橋剤を製剤に加えた。この溶液をペトリ皿に注入し、それを60℃のオーブンに一晩入れ、製剤を乾燥させてフィルムにした。次いで、得られたフィルム(33%フコイダンw/w)をピンセットでペトリ皿から外し、適当な大きさに切断した。
【0186】
3%w/vのフコイダン点滴用剤を製剤化した。測定した量のフコイダンを乳酸加リンガー液に加え、3%w/vの点滴用剤を形成した。
【0187】
ウサギの子宮角手術癒着モデルを用い、2種類の製剤を調べた。簡単に言えば、ウサギの腹部に切開を作った。子宮角を見つけ、角の基部を指定した(及び一貫した)時間、つかむことによって傷つけた。外科用メスでこすることによって特定の領域でウサギの腹膜の側壁を傷つけた。腹膜の側壁のこすった領域に載せるような方法で子宮角を置き、角の先端を縫い合わせた。縫い合わせは、側壁のこすった領域の外にあったが、子宮角がこすった領域から外れるのを防いだ。
【0188】
こすった領域の上(角と側壁の間)に直接置くことによってフコイダンフィルム製剤の有効性を評価した。角は側壁にきつく保持されなかったので、傷ついた側壁に置いたフィルムは粘膜付着性であり、それ自体の物性によってその場所にとどまったままであったことに注意。
【0189】
手術処置が完了する前に、ウサギの腹部に製剤を30mL点滴することによってフコイダン点滴用剤製剤の有効性を評価した。
【0190】
手術処置が完了する前に、ウサギの腹部に30mLの乳酸加リンガー注射液USPを点滴することによって調べられた対照群と、これらの製剤を比較した。
【0191】
処置の14日後、ウサギを安楽死させて癒着形成の程度を評価した。評価者は、どの群が評価されるのかについて盲検した。癒着に覆われた面積と形成した癒着の強度の積としてこれらの癒着をランク分けした。癒着に覆われた面積は4点の尺度でランク分けし、癒着の強度は、0〜3の尺度でランク分けした。以下の尺度を用いた。
癒着の強度の尺度
0 癒着がない
1 鈍い剥離で引き離し可能な癒着
2 容易には分離できない癒着
3 癒着の鋭い剥離を必要とする(壁又は角を引き裂く)
癒着によって覆われた面積の尺度:
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
【0192】
次いで、面積スコアを線維性癒着の強度スコアに乗じることによって各ウサギについての癒着スコアが得られる。各試験群についての癒着スコアの結果を図6に示す。データは8匹の動物の平均癒着スコア(±1S)を表す。
【0193】
これらのデータは、フコイダン製剤が双方共に対照と比べると、群におけるウサギの平均癒着スコアを低下させたので、手術癒着の治療において有効であることを明らかにしており、また点滴用剤は、フィルムよりもさらに有効であると思われたことを明らかにしている。
【実施例12】
【0194】
ラットの盲腸側壁の手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防に対するフコイダンゲルの有効性
一連のゲルがこの実験のために製剤化された:
1.5.5%w/vヒアルロン酸ゲル中の0%w/vフコイダン
2.5.5%w/vヒアルロン酸ゲル中の1.5%w/vフコイダン
3.5.5%w/vヒアルロン酸ゲル中の3%w/vフコイダン
4.5.5%w/vヒアルロン酸ゲル中の6%w/vフコイダン
ラットの盲腸側壁の手術癒着モデルを用いこれらのゲルを評価して手術癒着の防止に対する有効性を決定した。
【0195】
簡単に言えば、ラットの腹部に沿って切開し、盲腸を見つけて引き出した。外科用メスの刃で盲腸を上に15回、下に15回、次いで上に15回こすった。腹膜壁を皮膚から分離し、この壁の小さな四角は、上の膜を有し、筋肉組織の線維層を1つ除いた。次いで、所定の位置で四角を覆うように盲腸を縫い合わせた。縫い合わせは、盲腸の2つの上の角で開始したが、完了させなかったので、盲腸は、傷ついた腹膜壁に結束されなかった。次いで、特定のゲルを盲腸と腹膜壁の間に置いて、処方された処理を適用した。対照群の場合は、処理製剤を適用しなかった。縫い合わせを完成させ、盲腸の角を壁に結束させた。
【0196】
処置の7日後、ラットを安楽死させて、盲腸と側壁との間で、癒着形成の程度を評価した。評価者はどの群が評価されているのかについて盲検した。癒着に覆われた面積と形成した癒着の強度の積としてこれらの癒着をランク分けした。癒着に覆われた面積は4点の尺度でランク分けし、癒着の強度は、0〜3の尺度でランク分けした。以下の尺度を用いた。
癒着の強度の尺度
0 癒着がない
1 鈍い剥離で引き離し可能な癒着
2 容易には分離できない癒着
3 癒着の鋭い剥離を必要とする(壁又は角を引き裂く)
癒着によって覆われた面積の尺度:
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
【0197】
次いで、面積スコアを線維性癒着の強度スコアに乗じることによって各ラットについての全体的癒着スコアが得られる。各試験群についての癒着スコアの結果を図7に示す。これらの結果は、処理群(フコイダンゲル群)における動物の平均の全体的癒着スコアが、対照群のそれよりも有意に低いことを示している。このことは、フコイダンゲル製剤が線維性癒着の形成を予防するのに有効であることを明らかにしている。
【実施例13】
【0198】
ラットの子宮角の手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防に対するフコイダン点滴用剤製剤の有効性
適当量のフコイダンを乳酸加リンガー液に溶解し所定の濃度を達成することによって0.001%、0.003%及び0.01%w/vのフコイダン点滴用剤の溶液を製造した。フコイダンは、褐色海洋藻類、Fucus vesiculosisからの抽出物であり、シグマケミカルズから入手した。対照として乳酸加リンガー液注射液USPを用い、ラットの子宮角の手術癒着モデルを用いて、ラットでの手術癒着の予防における有効性についてこれらの製剤を評価した。
【0199】
ラットの子宮角モデルの手順は以下のとおりである。各ラットを麻酔し、抗生物質を与えた。次いで、腹部の正中及び腹壁の白線に沿って3〜4cmの切開を作った。子宮角の一方を見つけ、角を止血し、腸間膜から切り取った。外科用メスでそれを上に15回、下に15回、次いで上に15回こすった。これは点状出血を生じ、同じ処理を反対側の角で繰り返した。腹膜壁を皮膚から分離し、反転させて壁の内側をさらし、腹膜壁の小さな領域(1.0x2.5cm)を切り取った。次いで子宮角を側壁のこの傷の上に置き、ゆるく縫合した。同じ処置を反対側の側壁で行った。腹膜側壁について5−0の縫合糸で切開を閉じた。最後の縫い合わせを結ぶ直前に、調べるべき点滴用剤5mLを事前に負荷した滅菌注射器を用いて腹腔に入れた。手術完了のために、3−0の縫合糸を皮膚に用いた。
【0200】
7日後、ラットを安楽死させ、その癒着を調べた。腹膜壁を反転し、子宮角と側壁との間の癒着を調べた。
【0201】
癒着強度及び癒着によって覆われた推定面積に基づいて癒着をスコア化した。以下の尺度を用いて各パラメータについてスコア化した。
癒着の強度の尺度
0 癒着がない
1 鈍い剥離で引き離し可能な癒着
2 容易には分離できない癒着
3 癒着の鋭い剥離を必要とする(壁又は角を引き裂く)
癒着によって覆われた面積の尺度:
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
【0202】
次いで、癒着によって覆われた面積スコアを癒着の強度スコアに乗じることによって各ラットについての全体的な癒着スコアを得た。各処理群について5匹の動物を評価し、対照群では4匹のラットだった。各群についての平均の全体的な癒着スコアのグラフを図8に提供する。これらのデータは、調べたすべての濃度にて点滴用剤中のフコイダンの存在によって全体的な癒着スコアが有意に低下することを示しており、フコイダンが線維性癒着の形成を予防するのに有効であることを明らかにしている。
【実施例14】
【0203】
ウサギの子宮角の手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防に対するフコイダン点滴用剤製剤の有効性
ウサギで行われた有効性試験は、ウサギにおける手術癒着病態の子宮角モデルを利用した。ニュージーランドホワイト種のウサギを入手し、処理の少なくとも3日前に収容した。ウサギはウサギ用の餌及び水に自由にアクセスさせた。手順は以下のとおりであった。
【0204】
ウサギの体重を測定し、次いで、後肢の側面の筋肉内に22.5mg/kgのケタミン及び2.5mg/kgのキシラジンを投与することによる前投薬によって手術の準備をした。5%イソフルラン及び酸素吸入によるノーズコーンを麻酔誘導に用いた。次いで、ウサギをインキュベートし、残りの処置のために動物をイスフルランで維持した。眼が乾くのを防ぐために各眼瞼の下にデュラティアを加えた。
【0205】
次いで、ウサギの腹部及び背の部分を剃毛し、動物を手術室の手術台に移した。腹部を清浄し、滅菌タオルをかけ、正中腹部切開を介して入った。一方の子宮角を見つけて切断した。電気焼灼器を用いて約5cmの子宮角を止血した。角の止血した部分を広い子宮靭帯から切断し、生理食塩水で湿らせた滅菌ガーゼの上に置いた。腹壁を縮め、裏返して普通子宮が納まっている位置に最も近い腹膜の一部をさらした。腹膜及び筋肉(腹部を横切る)の表層を1.5x3cm2の面積にわたって切断した。切断は、第2の層から背後の無傷の一部及び裂かれた繊維の一部を残して、内腹斜筋を含んだ。微少の局所の出血には止まるまでタンポンを入れた。フィルム製剤で処理される動物では、フィルムを直接、こすった腹膜(角と側壁との間)の上に置いた。子宮角の止血部分を側壁の傷の上に置き、こすった部位の上下の縁から少なくとも1cm離した地点で単一の縫い目で縫合した。反対側の子宮角及び側壁で手順を繰り返した。
【0206】
手術手順に続いて、4−0の絹の縫合糸で腹壁を閉じた。次いで3−0の絹の縫合糸で皮膚を閉じた。最後の縫い目を結ぶ前に処理されたウサギの腹部に30mLの点滴用剤溶液を投与した。動物の腹腔から点滴用剤が漏れていないことに注意して、次いで最後の縫い目を結んだ。加熱ランプのもとでの清潔な寝床にウサギを置き、回復する間、タオルをかけて体温を維持した。
【0207】
処置の14日後、ウサギを安楽死させ、傷ついた子宮角と腹膜の間で癒着形成の程度を評価した。形成された腹部の癒着も記録した。評価者はどの製剤が評価されているのかについて盲検した。子宮角の癒着は、以下の尺度を用いて癒着により覆われた面積と形成された癒着の強度の積として計算された。
癒着強度のランク分け尺度
0〜0.5 ほとんど癒着がない
0.5〜1.5 鈍い剥離で引き離し可能
1.5〜2 単一領域で容易には分離できない
2〜3 鋭い剥離を必要とする
3 穿孔又は引き裂きを回避できない
癒着面積の尺度
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
【0208】
所定の治療に対する合計の癒着スコアは、強度スコアと癒着面積スコアの積として報告される。この尺度を用いた癒着の最高スコアは12である。
【0209】
有効性の実験
この実験には合計19匹のウサギを使用した。ウサギはすべて上述の子宮角処置の対象とした。ウサギを3群に分け、8匹の動物は無処理であり、3匹には30mLの0.3%w/vのフコイダン点滴用剤を与え(90mgのフコイダン用量)、8匹の動物には、30mLの3%w/vのフコイダン点滴用剤を与えた(900mgのフコイダン用量)。術後14日目に各動物の癒着スコアを評価し、図9にプロットする。
【0210】
データは、フコイダン点滴用剤による治療が、無処理の対照群に比べて、全体的な癒着スコアで劇的な低下を生じたことを示す。これらのデータは、手術癒着を抑制する又は予防するのにフコイダンが有効であることを示す。
【実施例15】
【0211】
ラットの子宮角の手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防のためのFucus vesiculosis及びLaminaria japonica(コンブ)に由来するフコイダンの使用
ラットの子宮角の手術癒着モデルを用いた手術癒着の予防における有効性についてFucus vesiculosis及びLaminaria japonica(コンブ)に由来するフコイダンを評価した。0.001%w/vの濃度でフコイダンの各起源を乳酸加リンガー注射液USPに溶解した。子宮角の手術癒着モデルを用いた手術に続いて、これを5mLの用量で腹腔内でラットに投与した。これら製剤の有効性を乳酸加リンガー注射液USPの対照(ラット当たり5mL)と比較した。
【0212】
先ず、ラットを麻酔し、抗生物質を与えた。次いで、腹部の正中及び腹膜壁の白線に沿って3〜4cmの切開を作った。子宮角の一方を見つけ、角を止血し、腸間膜から切り取った。外科用メスでそれを上に15回、下に15回、次いで上に15回こすった。これは点状出血を生じ、同じ処理を反対側の角で繰り返した。腹膜壁を皮膚から分離し、反転させて壁の内側をさらし、腹壁の小さな領域(1.0x2.5cm)を切り取った。次いで子宮角を側壁の傷の上に置き、傷を負った腹膜側壁の傷の上側の縫い目1つと尾側の縫い目1つでゆるく縫合した。同じ処置を反対側の側壁で行った。
【0213】
腹膜側壁について5−0の縫合糸で外科切開を閉じた。最後の縫い合わせを結ぶ直前に、調べるべき点滴用剤を腹腔に入れた。次いで最後の縫い目を結んだ。皮膚切開の閉鎖は、3−0の縫合糸を用いて行った。
【0214】
7日後、ラットを安楽死させ、その癒着を調べた。腹壁を反転し、子宮角と側壁との間の癒着を調べた。
【0215】
癒着強度及び癒着が存在する癒着した側壁の面積に基づいて癒着をスコア化した。以下の尺度を用いて、癒着した領域内の癒着の強度及び癒着で覆われた面積をスコア化した。
癒着の強度の尺度
0 癒着がない
1 鈍い剥離で引き離し可能な癒着
2 容易には分離できない癒着
3 癒着の鋭い剥離を必要とする(壁又は角を引き裂く)
癒着によって覆われた面積の尺度:
1〜25% 1
25〜50% 2
51〜75% 3
76〜100% 4
【0216】
次いで、癒着の強度に関するスコアを癒着によって覆われた面積に関するスコアに乗じることによって各ラットについての癒着スコアを得た。この処置を受けたラットを3つの処理群(群当たりn=5)に分け、Fucus vesiculosisに由来する0.001%w/vの点滴用剤フコイダン5mL、Laminaria japonica(コンブ)に由来する0.001%w/vの点滴用剤フコイダン5mL、又は乳酸加リンガー注射液USP(対照)を与えた。これら3群の平均した癒着スコアに対する効果を図10に提供する。これらのデータは、対照に比べて試験群での有意に低い癒着スコアによって、いずれの起源からのフコイダンも手術癒着の予防に有効であることを明らかにしている。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する抗SDF−1の結果を表すグラフである。
【図2】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対するラパマイシンの結果を表すグラフである。
【図3】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する種々の抗腫瘍剤の結果を表すグラフである。
【図4】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する種々の抗炎症剤の結果を表すグラフである。
【図5】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する種々の作用剤の結果を表すグラフである。
【図6】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対するフコイダンフィルム又はフコイダン点滴用剤製剤の結果を表すグラフである。
【図7】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する一連のフコイダンゲル製剤の結果を表すグラフである。
【図8】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する0.001%、0.003%及び0.01%w/vフコイダン点滴用剤製剤を用いた結果を表すグラフである。
【図9】ウサギの子宮角モデルを用いた線維性癒着の抑制に対する3%及び0.3%w/vフコイダン点滴用剤製剤を用いた結果を表すグラフである。
【図10】ラットの盲腸側壁の癒着モデルを用いた線維性癒着の抑制に対するFucus vesiculosis及びLaminaria japonica(コンブ)から産生される0.001%w/vフコイダンの点滴用剤の結果を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がアルギン酸を含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項2】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がドキシサイクリンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項3】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がコルチゾンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項4】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がメクロフェナメートを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項5】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がコラーゲンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項6】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がブデソニドを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項7】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がエナラプリルを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項8】
該エナラプリルがマレイン酸エナラプリルである請求項7の方法。
【請求項9】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤が線維性癒着を有することが疑われる部位へのスタチンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項10】
該スタチンがシムバスタチンである請求項9の方法。
【請求項11】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がカプトプリルを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項12】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がキトサンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項13】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がミノサイクリンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項14】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がメソトレキセートを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項15】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がシスプラチンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項16】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がSDF−1阻害剤を含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項17】
該SDF−1阻害剤が、抗SDF−1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である請求項16の方法。
【請求項18】
該SDF−1阻害剤が、抗SDF−1小分子RNAである請求項16の方法。
【請求項19】
該SDF−1阻害剤が、抗SDF−1siRNAである請求項16の方法。
【請求項20】
該SDF−1阻害剤が、抗SDF−1リボザイムである請求項16の方法。
【請求項21】
該SDF−1阻害剤が、SDF−1の小分子阻害剤である請求項16の方法。
【請求項22】
該SDF−1阻害剤が、抗SDF−1抗体又は抗SDF−1アプタマーである請求項16の方法。
【請求項23】
該SDF−1阻害剤が、抗hSDF−1/PBSFである請求項22の方法。
【請求項24】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がラパマイシンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項25】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がヒドロキシプロピルセルロースを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項26】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がダカルバジンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項27】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がドセタキセルを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項28】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がニメスリドを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項29】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がジフルシナルを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項30】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がベタメタゾンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項31】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がデキサメタゾンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項32】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がストレプトキナーゼを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項33】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がTGF−βを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項34】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がTIMP−2を含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項35】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がデンプンを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項36】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がケルセチン二水和物を含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項37】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がレフルノミドを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項38】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がスタキオースを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項39】
線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の該作用剤を投与することを含み、該作用剤がコンドロイチン硫酸Aを含む、動物において線維性癒着を抑制する方法。
【請求項40】
部位が外科的部位である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項41】
部位が動物の腹部の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項42】
部位が動物の四肢の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項43】
部位が動物の背骨の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項44】
部位が動物の頭部の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項45】
部位が動物の生殖器の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項46】
部位が動物の消化器の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項47】
部位が動物の呼吸器系の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項48】
部位が動物の胸腔の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項49】
部位が動物の循環器系の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項50】
部位が動物の泌尿器系の中である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項51】
部位が骨盤炎症病変部位である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項52】
部位が機械的損傷部位である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項53】
部位が放射線暴露部位である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項54】
部位が外来物質の存在に冒された部位である請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項55】
薬剤が、ポリマーの投与形態からの制御放出を介して実質的に連続して病変部位に投与される請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項56】
ポリマーの投与形態が、フィルム、貼付剤、ペースト、ミクロスフェア、インプラント、ゲル、スプレー又は液体を含む請求項55の方法。
【請求項57】
薬剤が、溶液又は懸濁液として病変部位に実質的に送達される請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項58】
溶液又は懸濁液が、乳酸加リンガー注射液USPである請求項57の方法。
【請求項59】
作用剤がフカンとの併用で投与される請求項1〜39のいずれか1項の方法。
【請求項60】
フカンがフコイダンである請求項59の方法。
【請求項61】
フカンが点滴用剤の形態である請求項59又は60の方法。
【請求項62】
作用剤が、請求項1〜39のいずれか1項の第2の作用剤との併用で投与される請求項1〜61のいずれか1項の方法。
【請求項63】
作用剤が、治療上許容可能な量のそのほかの治療剤との併用で投与される請求項1〜61のいずれか1項の方法。
【請求項64】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び、イオンキレート剤、トリエンマクロライド抗生物質、3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル−CoA、還元酵素阻害剤、レチノイド、抗血栓剤、抗凝固剤、プラスミノーゲン活性化剤、サイトカイン、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、テトラサイクリン、ACE阻害剤、デキストラン糖、又はカラギーナンの少なくとも1種を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項65】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び、デフェロキサミンメシレート、シムバスタチン、レチノイン酸、ヘパリン、ペントキシフィリン、ストレプトキナーゼ、TGF−β、TIMP−2、ラパマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、カプトプリル、ドキシサイクリン、エナラプリル、デキストラン硫酸、デキストロース、デキストランT70、コハク酸、コラーゲン、デンプン、ケルセチン二水和物、カフェイン、ラムダ−カラギーナン、イオタ−カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、コンドロイチン硫酸A又はレフルノミドの少なくとも1種を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項66】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び少なくとも1種の抗腫瘍剤を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項67】
抗腫瘍剤が、アルキル化剤、代謝抑制剤、リボヌクレオチド還元酵素阻害剤、細胞傷害性抗生物質、タキサン、ビンカアルカロイド又はプロテアーゼ阻害剤の少なくとも1種を含む請求項66の方法。
【請求項68】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び、ブスルファン、シクロホスファミド、エストラムスチン、シスプラチン、デカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、ドセタキセル、硫酸ビンブラスチン又はMG132の少なくとも1種を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項69】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び少なくとも1種の抗炎症剤を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項70】
抗炎症剤が、COX−2阻害剤、フェナメート、オキシカム、アセチル酸誘導体、サリチル酸誘導体又はコルチコステロイドの少なくとも1種を含む請求項69の方法。
【請求項71】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び、ニメスリド、メクロフェナン酸、ジクロフェナック、メクロフェナン酸ナトリウム一水和物、テノキシカム、インドメタシン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン又は酢酸コルチゾンの少なくとも1種を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項72】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び少なくとも1種のSDF−1阻害剤を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項73】
SDF−1阻害剤が、抗SDF−1アンチセンスオリゴヌクレオチド、(ASO)、抗SDF−1小分子RNA、抗SDF−1siRNA、抗SDF−1リゾチーム、SDF−1の小分子阻害剤、抗SDF−1アプタマー、抗SDF−1抗体又は抗hSDF−1/PBSFの少なくとも1種を含む請求項72の方法。
【請求項74】
線維性癒着を抑制することを決定すること、及び線維性癒着を有することが疑われる部位に、治療上有効量のフカン及び、デキストラン硫酸、SDF−1阻害剤、シスプラチン、ドセタキセル、ベタメタゾン、TIMP−2、エリスロマイシン、及びコンドロイチン硫酸Aの少なくとも1種を投与することを含む動物で線維性癒着を抑制する方法。
【請求項75】
部位が外科的部位である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項76】
部位が動物の腹部の中である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項77】
部位が動物の皮膚の中である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項78】
部位が動物の頭部の中である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項79】
部位が動物の生殖器の中である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項80】
部位が動物の消化器の中である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項81】
部位が機械的損傷部位である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項82】
部位が放射線暴露部位である請求項64〜74のいずれか1項の方法。
【請求項83】
薬剤が、ポリマーの投与形態からの制御放出を介して実質的に連続して病変部位に投与される請求項64〜82のいずれか1項の方法。
【請求項84】
薬剤が、溶液又は懸濁液として病変部位に実質的に送達される請求項64〜83のいずれか1項の方法。
【請求項85】
フカンがフコイダンである請求項64〜84のいずれか1項の方法。
【請求項86】
フカンが点滴用剤の形態である請求項64〜85の方法。
【請求項87】
作用剤が、請求項64〜74のいずれか1項の第2の作用剤との併用で投与される請求項64〜86のいずれか1項の方法。
【請求項88】
動物がヒトである請求項1〜87のいずれか1項の方法。
【請求項89】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の、イオンキレート剤、トリエンマクロライド抗生物質、3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル−CoA還元酵素阻害剤、レチノイド、抗血栓剤、抗凝固剤、プラスミノーゲン活性化剤、サイトカイン、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、テトラサイクリン、ACE阻害剤、デキストラン糖、又はカラギーナンの少なくとも1種を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項90】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の、デフェロキサミンメシレート、シムバスタチン、レチノイン酸、ヘパリン、ペントキシフィリン、ストレプトキナーゼ、TGF−β、TIMP−2、ラパマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、カプトプリル、ドキシサイクリン、エナラプリル、デキストラン硫酸、デキストロース、デキストランT70、コハク酸、コラーゲン、デンプン、ケルセチン二水和物、カフェイン、ラムダ−カラギーナン、イオタ−カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、コンドロイチン硫酸A又はレフルノミドの少なくとも1種を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項91】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の少なくとも1種の抗腫瘍剤を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項92】
抗腫瘍剤が、アルキル化剤、代謝抑制剤、リボヌクレオチド還元酵素阻害剤、細胞傷害性抗生物質、タキサン、ビンカアルカロイド又はプロテアーゼ阻害剤の少なくとも1種を含む請求項91の医薬組成物。
【請求項93】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の、ブスルファン、シクロホスファミド、エストラムスチン、シスプラチン、デカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、ドセタキセル、硫酸ビンブラスチン又はMG132の少なくとも1種を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項94】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の少なくとも1種の抗炎症剤を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項95】
抗炎症剤が、COX−2阻害剤、フェナメート、オキシカム、アセチル酸誘導体、サリチル酸誘導体又はコルチコステロイドの少なくとも1種を含む請求項94の医薬組成物。
【請求項96】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の、ニメスリド、メクロフェナン酸、ジクロフェナック、メクロフェナン酸ナトリウム一水和物、テノキシカム、インドメタシン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン又は酢酸コルチゾンの少なくとも1種を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項97】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、及び治療上有効量の少なくとも1種のSDF−1阻害剤を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項98】
SDF−1阻害剤が、抗SDF−1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、抗SDF−1小分子RNA、抗SDF−1siRNA、抗SDF−1リゾチーム、SDF−1の小分子阻害剤、抗SDF−1アプタマー、抗SDF−1抗体又は抗hSDF−1/PBSFの少なくとも1種を含む請求項97の医薬組成物。
【請求項99】
線維性癒着を抑制するように構成される医薬組成物であって、線維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量のフカン、並びに治療上有効量の、デキストラン硫酸、SDF−1阻害剤、シスプラチン、ドセタキセル、ベタメタゾン、TIMP−2、エリスロマイシン、及びコンドロイチン硫酸Aの少なくとも1種を含む少なくとも1種の治療上有効な線維性癒着抑制剤、並びに少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項100】
フカンがフコイダンである請求項89〜99のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項101】
線維性癒着を治療するための薬物の製造における使用のための請求項89〜99のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項102】
ヒト患者において線維性癒着に関連する症状を軽減できる薬物の製造方法であって、薬学上有効量のフコイダン、線維性癒着を抑制するように選択されるフコイダン以外の、治療上有効量の、請求項89〜99のいずれか1項の少なくとも1種の治療上有効な作用剤、及び薬学上許容可能な賦形剤又は緩衝液を含む方法。
【請求項103】
動物において少なくとも1種の非線維性癒着の疾患又は非線維性癒着の症状を治療する方法であって、非線維性癒着の疾患又は症状を同定すること、非線維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療剤を選択すること、少なくとも1種の線維性癒着抑制剤を選択すること、治療上有効量の、非線維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療剤及び治療量の、少なくとも1種の線維性癒着抑制剤を含む少なくとも1種の医薬組成物を動物を投与することを含む方法。
【請求項104】
症状が少なくとも1種の外科的又は機械的な損傷である請求項103の方法。
【請求項105】
疾患が、癌、PID、放射線暴露、関節炎、乾癬、手術、局所症状、又は消化器の疾患の少なくとも1つである請求項103の方法。
【請求項106】
少なくとも1種の線維性癒着抑制剤がフカンを含む請求項103〜105のいずれか1項の方法。
【請求項107】
少なくとも1種の線維性癒着抑制剤がフコイダンである請求項103〜105のいずれか1項の方法。
【請求項108】
少なくとも1種の線維性癒着抑制剤が、抗hSDF−1/PBSF抗体、及びベタメタゾン、コンドロイチン硫酸A、デキストラン硫酸、エリスロマイシン及びTIMP−2の少なくとも1種を含む請求項103〜107のいずれか1項の方法。
【請求項109】
非線維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療剤が抗炎症剤及び抗腫瘍剤を含む請求項103〜107のいずれか1項の方法。
【請求項110】
非線維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療剤が、SDF−1阻害剤、イオンキレート剤、トリエンマクロライド抗生物質、3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル−CoA還元酵素阻害剤、レチノイド、抗血栓剤、抗凝固剤、プラスミノーゲン活性化剤、サイトカイン、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、テトラサイクリン、ACE阻害剤、エリスロマイシン、デキストラン糖、コハク酸、コラーゲン、ケルセチン二水和物、レフルノミド、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、コンドロイチン硫酸A、アルキル化剤、代謝抑制剤、リボヌクレアーゼ還元酵素阻害剤、細胞傷害性抗生物質、タキサン、ビンカ・アルカロイド、プロテアーゼ阻害剤、COX−2阻害剤、フェナメート、オキシカム、アセチル酸誘導体、サリチル酸誘導体、又はコルチコステロイドの少なくとも1種を含む請求項103〜107のいずれか1項の方法。
【請求項111】
非線維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療剤及び治療量の少なくとも1種の線維性癒着抑制剤が少なくとも2種の異なった組成物にあり、方法が、該組成物を実質的に同時に投与することをさらに含む請求項103〜107のいずれか1項の方法。
【請求項112】
動物がヒトである請求項103〜111のいずれか1項の方法。
【請求項113】
動物において少なくとも1種の非線維性癒着の疾患又は非線維性癒着の症状を治療し、且つ繊維性癒着を抑制するように構成された医薬組成物であって、非線維性癒着の疾患又は症状を治療するように選択される非線維性癒着の疾患又は症状のための治療上有効量の少なくとも1種の治療剤、繊維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量の少なくとも1種の線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を含む組成物。
【請求項114】
組成物が、フィルム、貼付剤、ペースト、ミクロスフェア、インプラント、ゲル、スプレー、液体又は点滴用剤を含むポリマー投与形態である請求項113の医薬組成物。
【請求項115】
少なくとも1種の線維性癒着抑制剤がフカンを含む請求項113の医薬組成物。
【請求項116】
動物において少なくとも1種の非線維性癒着の疾患又は非線維性癒着の症状を治療するための、且つ繊維性癒着を抑制するための薬物の製造における使用のための請求項113〜115のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項117】
ヒト患者において少なくとも1種の非線維性癒着の疾患又は非線維性癒着の症状に関連する症状を軽減し、且つ繊維性癒着に関連する症状を抑制することができる薬物の製造方法であって、非線維性癒着の疾患又は症状を治療するように選択される非線維性癒着の疾患又は症状のための少なくとも1種の治療上有効量の治療剤、繊維性癒着を抑制するように選択される治療上有効量の少なくとも1種の線維性癒着抑制剤、及び少なくとも1種の薬学上許容可能な賦形剤、キャリア又は希釈剤を単一の組成物において組み合わせることを含む方法。
【請求項118】
動物において線維性癒着を抑制する方法であって、線維性癒着を抑制する作用剤を選択すること及び線維性癒着を有することが疑われる部位に治療上有効量の作用剤を含む医薬組成物を投与することを含み、該組成物が、いかなる線維性癒着抑制剤も含まないヒアルロン酸フィルムに比べて少なくとも約90%の線維性癒着を抑制するように構成される方法。
【請求項119】
組成物が、いかなる線維性癒着抑制剤も含まないヒアルロン酸フィルムに比べて少なくとも約99%の線維性癒着を抑制するように構成される請求項118の方法。
【請求項120】
組成物が、実質的にすべての線維性癒着を抑制するように構成される請求項118の方法。
【請求項121】
組成物がフカンを含む請求項118〜120のいずれか1項の方法。
【請求項122】
組成物がフコイダンを含む請求項118〜120のいずれか1項の方法。
【請求項123】
組成物が点滴用剤を含む請求項118〜122のいずれか1項の方法。
【請求項124】
動物において線維性癒着を抑制するように構成された医薬組成物であって、選択された線維性癒着抑制剤を含み、該組成物が、いかなる線維性癒着抑制剤も含まないヒアルロン酸フィルムに比べて少なくとも約90%の線維性癒着を抑制するように構成される組成物。
【請求項125】
組成物が、いかなる線維性癒着抑制剤も含まないヒアルロン酸フィルムに比べて少なくとも約99%の線維性癒着を抑制するように構成される請求項124の医薬組成物。
【請求項126】
組成物が、実質的にすべての線維性癒着を抑制するように構成される請求項請求項124のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項127】
組成物がフカンを含む請求項124〜126のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項128】
組成物がフコイダンを含む請求項124〜126のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項129】
組成物が点滴用剤を含む請求項124〜128のいずれか1項の医薬組成物
【請求項130】
請求項89〜101、113〜116、124〜129のいずれか1項に記載の組成物を含有する容器及び線維性癒着を抑制するために医薬的に使用するための指示書を含むラベルを含むキット。
【請求項131】
ラベルがFDA認可のラベルである請求項130のキット。
【請求項132】
容器が点滴用剤を保持するように構成されるバイアルである請求項130又は131のキット。
【請求項133】
ラベルが、少なくとも1種の非線維性癒着の疾患又は非線維性癒着の症状を治療するための組成物の医薬的使用に関する指示書をさらに含む請求項130〜132のいずれか1項のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−504273(P2007−504273A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529506(P2006−529506)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000800
【国際公開番号】WO2004/105737
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505441535)エーアールシー ファーマシューティカルズ,インク. (1)
【Fターム(参考)】