説明

積層型電池モジュールおよびこれを用いた電池システム

【課題】高電圧を有しながらきわめて薄型の積層型電池モジュールを提供する
【解決手段】複数の平板状に形成された単位電池(C)を、直列に接続するように積層してなる積層型電池モジュールにおいて、前記単位電池(C)が、互いに対向して配置された板状部材からなる正極集電体(3)および負極集電体(13)の、対向するそれぞれの主面に正極活物質(5)および負極活物質(15)を塗布してなる正極体(7)および負極体(17)を備えており、隣接する前記単位電池(C,C)間において、前記正極集電体(3)と負極集電体(13)とが共有集電体(23)によって形成されており、その一方の主面に正極活物質(5)が付着し、他方の主面に負極活物質(15)が付着してなる両面電極体(27)が、隣接する一方の単位電池(C)の正極体(7)および他方の単位電池(C)の負極体(17)として共有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型の単位電池を複数積層して構成した電池モジュールおよびこれに冷却手段を付加した電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーやCO削減への配慮から、風力発電や太陽光発電のような自然エネルギーを利用した発電設備で、電力平準化のために二次電池が使用されている。また、同様に環境問題対策として、自動車や電車などの車両に搭載する二次電池が開発され、使用されている。車両に二次電池を搭載した場合には、ブレーキ時の回生電力をこの搭載電池に蓄えておき、車両の動力源として使用することができるので、車両運行のエネルギー効率を高めるとともに、COの排出量を削減することができる。
【0003】
上記の発電設備や車両に用いる電池には、高電圧および高容量が要求されるため、複数の単位電池を組み合わせて構成した電池モジュールを使用することが一般的であり、例えば、単位電池あたりの電圧が高いリチウムイオン二次電池や、環境負荷特性に優れるニッケル水素二次電池を用いた電池モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような用途では、電池モジュールの設置スペースが限られるため、電池の小型化、薄型化が求められる。電池を薄型化するための技術として、例えば、リチウムイオン電池では、箔状の薄い集電体に印刷により活物質を塗布することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−110381号公報
【特許文献2】特許第3385319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電池モジュールは、それぞれがケーシングを有する複数の単位電池を接続して構成されているので、電池モジュールの大型化、高重量化が避けられなかった。また、ニッケル水素二次電池を用いて電池モジュールを構成する場合、ニッケル発泡体のような多孔質の基材に活物質を含浸させて電極を製造するので、工程が複雑でかつ時間がかかり、製造コストが高い。さらには、きわめて薄い電極を作ることが困難であり、電池の薄型化には不向きであった。
【0007】
一方、リチウムイオン二次電池の場合、上記のように薄型化することは可能であるが、電池の内部を酸素や水分に接触させることができないことから、不活性ガス雰囲気内で電池の組立てを行う必要があり、大規模な生産設備を要し、コストが高い。さらには、同様の理由により、リチウムイオン電池の単位電池には高度な密閉性が要求されるので、多数の単位電池を組み合わせることで、充放電時の発熱が大きい電池モジュールにおいて、電池の冷却は単位電池の外部から行うほかなく、効率の良い冷却が困難であった。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、モジュール内の隣接する単位電池間で共有される両面塗布電極を設けることにより、高電圧でありながらきわめて薄型の積層型電池モジュールと、これに冷却手段を付加した電池システムを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明の第1構成に係る積層型電池モジュールは、複数の平板状に形成された単位電池を、直列に接続するように積層してなる積層型電池モジュールであって、前記単位電池が、互いに対向して配置された板状部材からなる正極集電体および負極集電体の、対向するそれぞれの主面に正極活物質および負極活物質を付着させてなる正極体および負極体を備えており、隣接する前記単位電池間において、前記正極集電体と負極集電体とが、共有集電体によって形成されており、前記共有集電体の一方の主面に正極活物質が付着し、他方の主面に負極活物質が付着してなる両面電極体が形成され、前記両面電極体が、一方の単位電池の正極体および他方の単位電池の負極体として共有されている。
【0010】
この構成によれば、隣接する単位電池間で、一方の単位電池の正極体と他方の単位電池の負極体とを兼ねる両面電極体を共有しており、これを積層することにより直列に接続された電池モジュールが形成される。したがって、電池の構成部材を大幅に削減して、電池モジュールを大幅に小型化、軽量化することが可能になる。特に、集電体として薄い箔状の金属部材を用い、この集電体に正極・負極の活物質を印刷によって薄く付着させて正極体および負極体を形成した場合には、高電圧でありながらきわめて薄型の電池モジュールを構成することができる。
【0011】
本発明の第1構成に係る積層型電池モジュールにおける前記単位電池は、例えば、ニッケル水素二次電池であることが好ましい。従来のニッケル水素二次電池の電極は、発泡ニッケルのような多孔質の基板に活物質を含浸させて作製していたため、電池の薄型化および低コスト化が困難であった。これに対して、上記の構成によれば、きわめて薄型のニッケル水素二次電池を低コストで作製することができる。また、ニッケル水素二次電池であれば、リチウムイオン二次電池のような非水電解液系二次電池の製造に必要とされる、不活性ガス雰囲気下で組み立てる必要がないので、上記のような利点を有する電池モジュールを安価に製造することができる。さらには、組立て後の使用時においても、リチウムイオン二次電池のような高度な密閉性を要しないので、後述するような集電体を直に冷却する冷却構造を採用することが容易となる。
【0012】
本発明の第1構成に係る積層型電池モジュールにおいて、前記正極活物質および負極活物質のそれぞれが、前記正極集電体および負極集電体の主面に沿った方向に分離された複数の正極活物質片および負極活物質片からなり、前記正極集電体と負極集電体との間に、各正極活物質片および負極活物質片を、前記主面に沿った方向に隔離して、電解液およびセパレータとともに収容する複数の枠体が設けられており、該複数の枠体が互いに離間して配置されて、これら枠体間に冷却媒体の通路が形成されていることが好ましい。このように構成することにより、冷却媒体通路に冷媒を通過させて、正極及び負極の各集電体を直接冷却することが可能となる。したがって、簡単な構造できわめて効果的に電池モジュールを冷却することができるので、電池モジュールを大型化しても、長期寿命性能を良好に維持することが可能となる。
【0013】
本発明の第2構成に係る積層型電池モジュールは、前記第1構成における単位電池をニッケル水素二次電池としたうえで、上記の枠体による冷却構造を採用したものであり、前記単位電池が、互いに対向して配置された板状部材からなる正極集電体および負極集電体の、対向するそれぞれの主面に、該主面に沿った方向に分離された複数の正極活物質片および負極活物質片を付着させてなる正極体および負極体を備えており、隣接する前記単位電池間において、前記正極集電体と負極集電体とが、共有集電体によって形成されており、前記共有集電体の一方の主面に正極活物質片が付着し、他方の主面に負極活物質片が付着してなる両面電極体が形成され、前記両面電極体が、一方の単位電池の正極体および他方の単位電池の負極体として共有されており、前記正極集電体と負極集電体との間に、各正極活物質片および負極活物質片を、前記主面に沿った方向に隔離して、電解液およびセパレータとともに収容する複数の枠体が設けられており、該複数の枠体が互いに離間して配置されて、これら枠体間に冷却媒体の通路が形成されている。
【0014】
本発明の第3構成に係る積層型電池モジュールは、前記第1構成における単位電池をリチウムイオン二次電池としたものであり、前記正極集電体がアルミニウムの板状部材からなり、負極集電体がアルミニウムの板状部材における前記正極集電体と対向する主面に銅膜が形成されてなり、前記正極集電体および負極集電体の、対向するそれぞれの主面に、コバルトリチウムを含む正極活物質と炭素を含む負極活物質が付着している。前記共有集電体は、アルミニウムの板状部材の一面に銅膜が形成されてなり、前記アルミニウムが露出した一方の主面に、コバルトリチウムを含む正極活物質が付着し、他方の主面に炭素を含む負極活物質が付着している。この構成により、高電圧を有しながら薄型のリチウムイオン電池を実現できる。
【0015】
本発明に係る電池システムは、冷却媒体の通路を有する本発明の電池モジュールを備え、前記冷却媒体が空気であり、さらに、空気を前記通路に通す送風手段を備えている。この構成により、電池モジュールを効果的に冷却できる。
【0016】
本発明に係る他の電池システムは、冷却媒体の通路を有する本発明の電池モジュールを備え、前記冷却媒体が冷却液であり、この冷却液中に前記電池モジュールが浸漬されており、さらに、前記冷却液を放熱させるラジエータを備えている。この構成により、やはり電池モジュールを効果的に冷却できる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る積層型電池モジュールによれば、高電圧を有しながらきわめて薄型に形成することが可能となる。また、本発明に係る電池システムによれば、積層型電池モジュールを効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る積層型電池モジュールを示す断面図である。
【図2】図1の電池モジュールの要部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】図1の電池モジュールの製造方法を説明する平面図である。
【図4A】図1の電池モジュールを含む空冷式の電池システムの一例を示す断面図である。
【図4B】図4Aの空冷式電池システムにおける、絶縁構造の他の例を示す概略図である。
【図4C】図4Aの空冷式電池システムにおける、絶縁構造の他の例を示す概略図である。
【図4D】図4Aの空冷式電池システムにおける、絶縁構造の他の例を示す断面図である。
【図5】図4AのV−V線に沿った断面図である。
【図6】同電池システムの要部を示す斜視図である。
【図7】図1の電池モジュールを含む液冷式の電池システムの一例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る積層型電池モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層型電池モジュールB(以下、単に「電池モジュールB」という。)の構造を模式的に示す断面図である。この電池モジュールBは、平板状に形成された複数の単位電池Cを、直列に接続するように積層して構成されている。単位電池Cは、水酸化ニッケルを主要な正極活物質とし、水素吸蔵合金を主要な負極活物質とし、アルカリ系水溶液を電解液とするニッケル水素二次電池として構成されている。なお、以下の説明では、電池モジュールBの積層方向Xにおける正極側(図1の上側)を上側と呼び、負極側(図1の下側)を下側と呼ぶ。
【0021】
電池モジュールBの平板状の単位電池Cは、導電性の板状部材からなる正極集電体3に正極活物質5を付着させてなる正極体7と、正極集電体3に対向配置された、導電性の板状部材からなる負極集電体13に負極活物質15を付着させてなる負極体17とを有している。正極活物質5と負極活物質15との間には、絶縁性の多孔質膜からなるセパレータ19が介在している。セパレータ19には電解液が含浸されている。
【0022】
さらに、各単位電池Cは、絶縁性素材からなる矩形の枠体21により、積層方向Xに垂直な横方向Yに、サブ単位電池Csとして分割されている。枠体21およびサブ単位電池Csの構成については後に詳述する。
【0023】
以下に電池モジュールBの積層構造を詳しく説明する。電池モジュールBの最上端に位置する正極集電体3と、最下端に位置する負極集電体13のほかの、これら両集電体3,5の間に位置する集電体は、図1の要部を拡大して示す図2に示すように、隣接する単位電池C,Cの一方の正極集電体3と他方の負極集電体13とを兼ねる単一の共有集電体23として形成されている。共有集電体23の正極集電面23aである下側の主面には正極活物質5が塗布により付着され、負極集電面23bである上側の主面には負極活物質15が塗布により付着されて、隣接する単位電池C,Cの一方の正極体と他方の負極体とを兼ねる両面電極体27が形成されている。
【0024】
換言すれば、図1に示す電池モジュールBの最上端には、正極集電体3の集電面3aである下側の主面に正極活物質5を塗布した正極体7が配置され、最下端には、負極集電体13の集電面13aである上側の主面に負極活物質15を塗布した負極体17が配置され、これら両端の正・負極体7,17の間に、上述の両面電極体27がセパレータ19を介して複数積層されている。このようにして、電池モジュールBにおいて複数の単位電池Cが直列接続されるように積層されている。
【0025】
各単位電池を構成する正極集電体3と負極集電体13との間には、上述の枠体21が複数設けられている。これら複数の枠体21は、集電体3,13の主面に沿った方向、すなわち積層方向Xに直交する横方向Yに、互いに平行に並べて配置されており、枠体21によって、単位電池C内の正極活物質5、負極活物質15およびセパレータ19が隔離されている。すなわち、枠体21の内方に、正極活物質5、負極活物質15、セパレータ19およびセパレータ19に含浸された電解液が収納されており、これらの各要素と、正極集電体3および負極集電体13の対応する部分とで、サブ単位電池Csが形成されている。つまり、単位電池Cは、枠体21によって画定される複数のサブ単位電池Csが並列に接続された構造を有している。
【0026】
複数の枠体21は、横方向Yに互いに離間して配置されており、隣接する枠体21,21間の、積層方向Xおよび横方向Yに直交する縦方向(図1の紙面に垂直な方向)Zに延びる隙間が、冷却媒体を通過させることのできる冷媒通路33を形成している。より詳細には、隣接する枠体21,21の対向する外周面21a,21a、正極集電体3の集電面3a、および負極集電体13の集電面13aにより画定される空間が、冷媒通路33を形成している。
【0027】
単位電池Cは、複数の枠体21を設けずに、集電体の主面に分離していない大きな単一の正負極活物質層を設け、単位電池C全体の両活物質層、セパレータおよびこれに含まれる電解液を収納する、単一の大きな枠体を有する構造としてもよい。しかしながら、本実施形態のように、複数の枠体21を設けて、それらの間に冷媒通路33を形成することにより、電池モジュールBの内部を、単位電池Cよりも小さい体積を有するサブ単位電池Cs毎に冷却することができる。さらには、正極および負極の集電体3,13を内側から直接冷却することができるので、きわめて効果的に電池モジュールBを冷却することが可能となる。これにより、電池モジュールBの充放電性能、特には長期寿命性能を維持しながら、高容量化のために活物質塗布面積を増大したり、高電圧化のために単位電池Cの積層数を増加することが可能となる。
【0028】
正極集電体3および負極集電体13を形成する材料としては、ニッケルめっきを施した鋼板を箔状に加工したもの用いているが、これに限らず、電気化学的な特性や機械的強度、耐食性などを考慮して、適宜選択することができる。また、正極集電体3と負極集電体13とに、異なる材料を用いてもよい。特に、共有集電体23としては、例えば異なる2種類の金属材料からなるクラッド材を用いることにより、正極集電面23aと負極集電面23bとをそれぞれ異なる材料で形成してもよい。
【0029】
枠体21を形成する絶縁性素材としては、本実施形態ではポリプロピレン樹脂を使用しているが、これに限らず、機械的な強度、耐熱性、耐電解液性などの観点から種々の材料を選択できる。
【0030】
セパレータ19を形成する素材としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアミド系繊維などを使用することができる。
【0031】
また、セパレータ19に含浸させる電解液としては、ニッケル水素二次電池で一般的に用いられているアルカリ系水溶液、例えば、KOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液などを用いることができる。特には、アクリル酸カリウムを添加したKOH水溶液に粘性を与えてゲル状としたものを、セパレータに含浸させてシート状にしたものを使用することが好適である。
【0032】
次に、図1に示した実施形態に係る電池モジュールBを製造する方法の一例を、図3を参照しながら説明する。
【0033】
正極集電体3、負極集電体13、および共有集電体23への正極・負極の各活物質5,15の付着は、好ましくは印刷によって行われる。共有集電体23については、図3(a)、(b)に示すように、表裏の各面23a,23bに正極活物質5と負極活物質15とがそれぞれ印刷により塗布される。本実施形態では、共有集電体23の各面23a,23bにおいて枠体21の設置領域および冷媒通路33を形成する領域を確保するために、両活物質5,15のそれぞれを、横方向Yに沿って一定間隔だけ離間して並び、かつ、共有集電体23の縦方向Zの両端からそれぞれ一定の間隔を空けて位置決めされた矩形の活物質片35として、連続的に印刷塗布している。
【0034】
集電体に活物質を印刷した後、正極および負極の一方(図3の例では正極)の活物質片35の、横方向Yおよび縦方向Zの外周を囲むように枠体21が設けられる。枠体21の設置は、あらかじめ所定の形状に加工して容易したものを集電板に接着や溶着などにより接合してもよく、あるいは印刷により設けてもよい。
【0035】
その後、セパレータ19に電解液を含浸したシートを、各正極の活物質片35の表面に貼り付ける。このような構成を有するセパレータを印刷により正極の活物質片35の表面に印刷してもよい。なお、セパレータ19を設ける工程は、枠体21を設ける工程よりも先に行われてもよいが、電解液の漏出を抑制するために、枠体21を設ける工程の後に行われることが好ましい。
【0036】
このように作製した、正極体7に枠体21とセパレータ19を設置したものに、負極体17を対向させて積層することにより、図1の単位電池Cが組み立てられ、さらに単位電池Cを複数積層することにより、電池モジュールBが組み立てられる。
【0037】
なお、この場合の印刷方式としては、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷など、任意の方式を用いることができる。
【0038】
活物質5,15、枠体21、セパレータ19を上記のように印刷で設けることにより、単位電池Cおよび電池モジュールBをきわめて薄型に形成し、かつ低コストで製造することができる。本実施形態の電池モジュールBは、集電体を形成するニッケルめっき鋼板の厚みを30μmとし、枠体21の厚みを120μmとして、単位電池Cあたりの厚みを150μmに設定し、この単位電池を1200個積層(1200直列)して構成されている。この場合、電池モジュールBは、約1500Vの高出力電圧を有しながら、積層方向Xの厚み寸法は約180mmに抑えられる。
【0039】
なお、電池モジュールBの厚み寸法は、単位電池の積層数によって決まる全体電圧との関係から、絶縁破壊を起こさない沿面距離を確保することも考慮して適切に設定される。
【0040】
このようにして組み立てられた電池モジュールBは、図4A〜4Dに示すように、さらに、積層方向Xの上下両端にそれぞれ配設された正極総括端子板37および負極総括端子板39の間で、締付部材により適切な圧力で締め付けられ、ケーシング41内に収容された状態で設置される。
【0041】
より詳細には、例えば図4Aに示すように、両総括端子板37,39は、電池モジュールBよりも大きい横方向Y寸法を有しており、電池モジュールBよりもY方向に延出する両端部分に、積層方向Xに貫通する貫通孔37a,39aが同一軸心上に設けられている。この貫通孔37a,39aに、締付部材である長軸の締付ボルト42を挿通し、締付ボルト42の両端にナット43を螺合することにより、両総括端子板37,39および電池モジュールBが互いに締付固定される。締付ボルト42およびナット43は、ともにナット43の締付度合いを調整することにより、電池モジュールBに対する積層方向Xの締付圧力を適切に調整することができる。
【0042】
両総括端子板37,39間での短絡を防止するため、例えば、締付ボルト42およびナット43の少なくとも両総括端子板37,39に接触する部分を絶縁素材により形成することができる。図4Aの実施形態では、締付ボルト42を絶縁被覆された金属製ボルトとして形成しており、ナット43を、絶縁被覆された金属製ナットとして形成している。
【0043】
あるいは、図4Bに示すように、絶縁素材からなる中空部材である絶縁パイプ44を貫通孔37a,39aに挿通し、金属製の締付ボルト42を絶縁パイプ44の中空孔44aに挿通し、各総括端子板37,39と金属製のナット43との間に絶縁素材からなるワッシャー45を介在させた状態で、締付ボルト42の両端にナット43を螺合させてもよい。
【0044】
さらには、図4Cに示すように、締付ボルト42の両総括端子板37,39間に位置する部分に、絶縁性素材で形成された絶縁部42aを設けることにより、両総括端子板37,39間を絶縁してもよい。同図の例では、締付ボルト42を、2つのボルト半体42A,42Bから構成しており、各半体42A,42Bは、ナット43が螺合する螺合端部42Aa,42Baと、互いに係合可能な鈎状の係合端部42Ab,42Bbを有している。この係合端部の少なくとも一方(同図の例では両方)が絶縁素材で形成されて、絶縁部42aを構成している。なお、絶縁部42aは、単一物である締付ボルト42の両総括端子板37,39間に位置する部分に形成されてもよい。
【0045】
また、両総括端子板37,39に、積層方向Xに貫通する貫通孔37a,39aを設けて締付ボルト42を挿通させる代わりに、図4Dに示すように、ケーシング41の上壁と、上側に位置する総括端子板(同図の例では正極総括端子板37)との間に、締付部材として突っ張りボルト46を介在させることにより、電池モジュールBを締付固定してもよい。図4Dの例では、突っ張りボルト46を絶縁性素材により形成しているが、金属素材で形成しても、両総括端子板37,39間の絶縁は確保される。なお、このように突っ張りボルト46を使用する場合には、図4A~4Cのように締付ボルト42を使用する場合よりも、ケーシング41の強度を向上させることが好ましい。また、突っ張りボルト46は、総括端子板上の、ケーシング41の各角部に近い位置に配置することが好ましい。
【0046】
ケーシング41は、例えば鉄板のような高強度の素材で形成した基材41aの内面に、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)のような樹脂からなる絶縁層41bを設けて形成されている。このケーシング41の底面に、複数の碍子47を介して電池モジュールBが載置されている。
【0047】
図4AのV−V線に沿った断面図である図5に示すように、正極総括端子板37および負極総括端子板39と、ケーシング41の前壁41aおよび後壁41bとの間には、位置決め用の絶縁スペーサ48が介在している。正極総括端子板37および負極総括端子板39からの電力取出し用の電線49,50は、例えば、ケーシング41の前壁41aを貫通して外部に引き出される。前記後壁41bの後面には、冷却媒体を冷媒通路33(図1)に流通させて電池モジュールBを冷却するための冷媒供給装置51が設置されている。本実施形態では、冷媒供給装置51として電動式のファンのような送風手段を使用し、空気導入孔52を介して外部から導入した空気Aを冷媒として使用し、後方の空気導出孔53から、ファン51により吸い出して、外部に排出している。
【0048】
電池モジュールB内への空気Aの通りをよくするために、図6に示すように、電池モジュールBの両側に接して、絶縁性の側方ガイド板55,55を設け、さらに、電池モジュールBの前側と後側に、絶縁性の四角筒形の入口ガイド体56と出口ガイド体57を設けている。この入口ガイド体56の入口開口に嵌め込まれたルーバによってスリット状の前記空気導入孔52が形成され、出口ガイド体57にスリット状の空気導出孔53が形成されている。こうして、電池モジュールBの最上層の正極集電体3、最下層の負極集電体13、側方ガイド板55、入口ガイド体56および出口ガイド体57により、冷却用の空気Aを電池モジュールBに効率よく通す風道が形成される。
【0049】
なお、送風手段51は、吸入ファンに限らず、使用する冷却媒体の種類やケーシング41内の設置可能スペースなどに応じて適宜選択してよく、例えば、コンプレッサを使用してもよい。また、冷却媒体としては、空気Aの他に、例えば水や油を使用してもよく、好ましくは電気絶縁性の高い純水やシリコンオイル等の絶縁油が考えられる。このような液冷式の一例を図7に示す。
【0050】
図7において、絶縁性のシリコンオイルのような冷却液Lを冷却媒体として、ケーシング41A内に貯留し、この冷却液L内に電池モジュールBを浸漬する。負極総括端子板39とケーシング41Aとの間は絶縁性の保持板61により封止されて、冷却液Lの漏洩を防止している。つまり、負極総括端子板39と保持板61とで、オイル貯留槽の底壁を形勢している。電力取出し用の電線48,49は、ケーシング41Aの上壁を貫通して外部に引き出されている。ケーシング41Aの外部に電動式のファン62が付いたラジエータ63を設置し、ファン62により生起される空気流により、ラジエータ63で冷却液Lの放熱を行う。冷却液Lは、ケーシング41Aから導入路65を介してラジエータ63に、その上部から導入され、下部から帰還路66を介してケーシング41A内に還流される。冷却液Lは、温度差による対流によって自然に循環するが、循環用のオイルポンプを設ければ、さらに冷却効率を向上させることができる。
【0051】
電池モジュールBの冷却は、ヒートパイプ式とすることもできる。その場合、沸点の低い(例えば40ないし60℃程度)非導電性の冷却液中に電池モジュールを浸漬し、この冷却液をヒートパイプで外部に取出し、外部の放熱部分を自然通風または小型のファンによって冷却する。なお、図5〜7を参照して説明した電池モジュールBの冷却構造は、代表として、図4Aの電池システムに適用した例を説明したが、図4B〜4Dに示した電池システムのいずれにも同様に適用可能である。
【0052】
上記の実施形態に係る電池モジュールBによれば、隣接する単位電池C,C間で、一方の単位電池Cの正極体7と他方の単位電池Cの負極体17とを兼ねる両面電極体27を共有しており、これを積層することにより、直列に接続された電池モジュールBが形成されている。したがって、電池の構成部材を大幅に削減して、電池モジュールBを大幅に小型化、軽量化することが可能になる。特に、集電体3,13,23として薄い箔状の金属部材を用い、正極・負極の活物質5,15を印刷により薄く塗布して正極体7および負極体17を形成した場合には、高電圧でありながらきわめて薄型の電池モジュールBを構成することができる。
【0053】
なお、上記の実施形態に係る電池モジュールBは、単位電池Cをニッケル水素二次電池として構成した例を説明したが、本発明は、これに限らず、各種一次電池および二次電池、例えば、ニッケルカドミウム電池やリチウムイオン電池などに適用することが可能である。例えば、リチウムイオン二次電池に適用した第2実施形態を図8に示す。
【0054】
図8において、正極集電体3Aはアルミニウムの板状部材からなり、負極集電体13Aはアルミニウムの板状部材における正極集電体3Aと対向する主面に、銅めっきを行うか、または銅箔を貼り付けることにより、銅膜71が形成されている。正極集電体3Aおよび負極集電体13Aの、対向するそれぞれの主面に、コバルトリチウムを含む正極活物質5Aと炭素を含む黒鉛のような負極活物質15Aが付着しており、その間にセパレータ19が介挿されている。各単位電池C,C間はフレーム21によって隔離され、その間に冷媒通路33が形成されている。最上端と最下端を除く中間の正極集電体3Aおよび負極集電体13Aは、第1実施形態の場合と同様に、共通の共有集電体23Aとなっており、アルミニウムの板状部材の一面である上面にのみ銅膜71が形成されている。アルミニウムが露出した下面(一方の主面)に、コバルトリチウムを含む正極活物質5Aが付着し、上面(他方の主面)に炭素を含む負極活物質が付着している。こうして、薄型のリチウムイオン二次電池のモジュールC1が得られる。
【0055】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
3 正極集電体
5 正極活物質
7 正極体
13 負極集電体
15 負極活物質
17 負極体
19 セパレータ
21 枠体
23 共有集電体
27 両面電極体
33 冷媒通路
35 活物質片
A 空気
B 電池モジュール
C 単位電池
L 冷却液
X 積層方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状に形成された単位電池を、直列に接続するように積層してなる積層型電池モジュールであって、
前記単位電池が、互いに対向して配置された板状部材からなる正極集電体および負極集電体の、対向するそれぞれの主面に正極活物質および負極活物質を付着させてなる正極体および負極体を備えており、
隣接する前記単位電池間において、前記正極集電体と負極集電体とが、共有集電体によって形成されており、
前記共有集電体の一方の主面に正極活物質が付着し、他方の主面に負極活物質が付着してなる両面電極体が形成され、前記両面電極体が、隣接する一方の単位電池の正極体および他方の単位電池の負極体として共有されている積層型電池モジュール。
【請求項2】
請求項1において、前記単位電池がニッケル水素二次電池として構成されている積層型電池モジュール。
【請求項3】
請求項1において、前記正極活物質および負極活物質のそれぞれが、前記正極集電体および負極集電体の主面に沿った方向に分離された複数の正極活物質片および負極活物質片からなり、前記正極集電体と負極集電体との間に、各正極活物質片および負極活物質片を、前記主面に沿った方向に隔離して、電解液およびセパレータとともに収容する複数の枠体が設けられており、該複数の枠体が互いに離間して配置されて、これら枠体間に冷却媒体の通路が形成されている積層型電池モジュール。
【請求項4】
複数の平板状に形成された単位電池を、直列に接続するように積層してなる積層型ニッケル水素二次電池モジュールであって、
前記単位電池が、互いに対向して配置された板状部材からなる正極集電体および負極集電体の、対向するそれぞれの主面に、該主面に沿った方向に分離された複数の正極活物質片および負極活物質片を付着させてなる正極体および負極体を備えており、
隣接する前記単位電池間において、前記正極集電体と負極集電体とが、共有集電体によって形成されており、
前記共有集電体の一方の主面に正極活物質片が付着し、他方の主面に負極活物質片が付着してなる両面電極体が形成され、前記両面電極体が、隣接する一方の単位電池の正極体および他方の単位電池の負極体として共有されており、
前記正極集電体と負極集電体との間に、各正極活物質片および負極活物質片を、前記主面に沿った方向に隔離して、電解液およびセパレータとともに収容する複数の枠体が設けられており、該複数の枠体が互いに離間して配置されて、これら枠体間に冷却媒体の通路が形成されている積層型電池モジュール。
【請求項5】
請求項1または3において、
前記正極集電体はアルミニウムの板状部材からなり、負極集電体はアルミニウムの板状部材における前記正極集電体と対向する主面に銅膜が形成されてなり、前記正極集電体および負極集電体の、対向するそれぞれの主面に、コバルトリチウムを含む正極活物質と炭素を含む負極活物質が付着しており、
前記共有集電体は、アルミニウムの板状部材の一面に銅膜が形成されてなり、前記アルミニウムが露出した一方の主面に、コバルトリチウムを含む正極活物質が付着し、他方の主面に炭素を含む負極活物質が付着している積層型電池モジュール。
【請求項6】
請求項3、4または5に記載の電池モジュールを備え、前記冷却媒体が空気であり、さらに、空気を前記通路に通す送風手段を備えている電池システム。
【請求項7】
請求項3、4または5に記載の電池モジュールを備え、前記冷却媒体が冷却液であり、この冷却液中に前記電池モジュールが浸漬されており、さらに、前記冷却液を放熱させるラジエータを備えている電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−71011(P2011−71011A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222328(P2009−222328)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】