窒化物組み込み用のシリコンに対するジルコニウムおよびハフニウムホウ化物合金テンプレート
約800℃未満の温度でエピタキシャルAlGaN層を調製するための方法が提供される。包括的には、基板が、エピタキシャルAlxGa1-xN層を形成するのに適した温度と圧力で、Al源の存在下で、H2GaN3、D2GaNsまたはそれらの混合物と接触させる。さらに、基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備え、複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2合金層からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい、半導体構造が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、固体支持体上にIII−N群材料を調製する際のエピタキシャルバッファ層の調製および使用に関する。より詳細には、本発明は、III−N群オーバレイヤの調製に使用される半導体基板上のエピタキシャル二ホウ化バッファ層の使用に関する。
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)の下、いずれもその全体が本明細書に援用される2007年1月4日出願の米国仮出願出願番号第60/883,477号および2007年9月17日出願の米国仮出願出願番号第60/973,002号の出願日の利益を主張する。
(政府資金についての記載)
本明細書に記載した発明は、米国国立科学財団(NSF)により許可された許可番号第EEC−0438400号の下、一部政府支援により成された。米国政府は本発明に関し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
III群窒化物材料には、ガリウム窒化物(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、インジウム窒化物(InN)、およびアルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)、インジウムガリウム窒化物(InGaN)ならびにアルミニウムインジウムガリウム窒化物(AlInGaN)等のそれらの合金が含まれる。これらの材料は、広い直接のバンドギャップを有する半導体化合物であり、このため非常に活発な電子遷移が起こる。そのような電子遷移によって、青色光と紫外線を効率的に放射する能力や高周波で信号を送信する能力等を含む多くの魅力的な特性を有するIII群窒化物材料が生じ得る。従って、III群窒化物材料はトランジスタ等の超小型電子装置およびレーザーダイオードや発光ダイオード(LED)等のオプトエレクトロニクス装置を含む多くの半導体素子の用途で広く研究されている。
【0003】
III群窒化物材料は、サファイア、シリコン(Si)および炭化ケイ素(SiC)を含む多くの種々の基板の上にこれまで形成されていた。そして、III群窒化物材料領域内にドープ領域等の半導体構造が形成され得る。Si基板の上にGaN等のIII群窒化物を成長させることには多くの利点があり、そのうちの重要な1つはSiベースのエレクトロニクスと統合して基板の非常に大きな面積を利用できることである。しかしながら、以前には、Si基板上にIII群窒化物を形成した半導体構造には顕著な欠点が存在した。かかる構造は複雑で生産に高い費用がかかった。さらに、シリコン基板上にIII群窒化物が形成された発光オプトエレクトロニクス装置は、サファイア基板の上方に形成された装置ほどに効率が良くなかった。オプトエレクトロニクスの用途では、Siは紫外線(UV)領域の約45%を吸収するが、サファイアは全く透明である(非特許文献1)。したがって、サファイアが基板として使用される場合よりもSi(111)が基板として使用される場合には、III群窒化物ベースの発光オプトエレクトロニクス装置はあまり効率的ではないと思われる。
【0004】
GaNを含めたIII群窒化物の成長は、金属有機化学蒸着法(MOCVD)および分子線エピタキシ(MBE)法を用いたヘテロエピタキシにより最も一般的に行われている。使用される基板は、通常、GaNとの格子不整合がそれぞれ16%および3.6%であるサファイアおよびα−SiC(0001)である。熱膨張度が不整合な状態で結合されると、ヘテロエピタキシ成長中にGaNで生じた不適合な転位によって窒化物ベースのエ
レクトロニクスの最終的な性能が制限される。転位密度を改善するためにパターン化された基板を伴う種々の成長スキームが開発されており、このような成長スキームには、例えば、非特許文献2に記載された側方過成長エピタキシ(ELOG)や、非特許文献3に記載されたpendeoエピタキシ(PE)が含まれる。格子整合基板の探究が続けられている。非特許文献4に記載されているように高圧下で成長させたバルクGaN結晶が基板として使用されているがこの基板は小規模であるという障害がある。ホモエピタキシへの別のアプローチは、非特許文献5に記載されている水素化物気相エピタキシ(HVPE)による厚いGaN層の成長であり、これは非特許文献5に記載されている。しかしながら、これらの基板は結晶度が低く、層の歪みが大きいためにしばしばクラックや他の不適切な形態を発達させる。
非特許文献6は、二ホウ化ジルコニウムの単結晶すなわちZrB2(0001)を成長さ
せて導電性格子整合基板を提供することについて記載している。ZrB2は格子定数a=
3.169Åおよびc=3.530Åの六方晶構造を有している。面内格子定数はGaN(a=3.189Å)のそれに対して約0.6%の不整合を有している。基礎面の[1010]に沿った熱膨張係数はZrB2とGaNの間でよく整合しており、それぞれ5.9
x10-6K-1および5.6x10-6K-1である。ZrB22とGaNの間のこのような熱
的性質の類似性は、GaNでの転位密度および二軸歪みの両方の低減につながり得ることを示唆しているが、重要な欠点がいまだGaNフィルムの成長用基板としてのZrB2(
0001)の使用を制限している。そのような1つの欠点はZrB2の融点が3220℃
であるためZrB2の単結晶の調製に高温を要することである。非特許文献7に記載され
ているようなフロートゾーン方法が開発されており、ここでは直径1cmの棒がZrB2
粉末から1700℃で平衡にプレスされ、高周波(RF)加熱によりフローティングゾーンで溶融される。非特許文献6および7に記載されているように、溶融ゾーンは長さ約0.5cmであり、毎時2−3cmの成長速度が得られたが、成長されるZrB2単結晶基
板にはサイズの制約がある。
【0005】
ZrB2のそのような結晶の一般的なサイズは、直径1cmおよび長さ6cmである。
MBEおよびMOCVDを使用したZrB2のそのような単結晶上でのエピタキシャルで
歪みのないGaNおよびAlNの成長が非特許文献8および9にそれぞれ記載されている。しかしながら、ZrB2基板のサイズの制約は未解決な問題として残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Aspnes, et al. Phys. Rev. B 27, 985 (1983)
【非特許文献2】Kato, et al. J. Cryst. Growth 144, 133 (1994)
【非特許文献3】Linthicum et al, Appl. Phys. Lett. 75, 196 (1999).
【非特許文献4】Porowski, J. Cryst. Growth 189/190, 153 (1998)
【非特許文献5】Molnar, et al, J. Cryst. Growth 178, 147 (1997)
【非特許文献6】Kinoshita et al. Jpn. J. Appl. Phys., pt. 2, 40, L 1280 (2001)
【非特許文献7】Otani, et al, J. Cryst. Growth 165, 319 (1996)
【非特許文献8】Suda et al, J. Cryst. Growth 237-239, 1114 (2002)
【非特許文献9】Liu et al, Appl Phys. Lett. 81, 3182 (2002)
【発明の概要】
【0007】
第1態様において、本発明は、基板および基板の上方に形成されたエピタキシャル層を備えた半導体構造であって、エピタキシャル層がB(ホウ素)とZr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素とを含み、エピタキシャル層が50nmよりも大きい厚さを有する半導体構造を提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、基板の上方にエピタキシャルバッファ層を形成する方法であって、基板上にエピタキシャルバッファ層を堆積させるのに適した温度および圧力で基板を前駆体ガスと接触させることからなり、エピタキシャルバッファ層は約50nmより大きな厚さを有し、前駆体ガスは(i)約0.1〜5v/v%のZr(BH4)4およびHf(BH4)4、Al源、またはそれらの混合物と、(ii)水素とを含む方法を提供する。
【0009】
第3態様では、本発明は、基板の上方にIII群窒化物を組み込む方法であって、基板の上方に約50nmより大きな厚さを有するZr、Hf、Alの二ホウ化物またはそれらの混合物からなるバッファ層を形成することと、バッファ層上にIII群窒化物層を形成することとからなる方法を提供する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、基板の上方にAlxGa1-xN層を形成する方法であって、AlxGa1-xN層を形成する温度および圧力で、Al源の存在下で、基板をH2GaN3、D2GaN3、またはそれらの混合物と接触させることからなり、前記温度は約800未満である方法を提供する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、バッファ層の反射率を調節する方法であって、約50nmより大きな厚さと基板よりも大きな反射率とを有する組成HfxZr1-xB2の合金バッフ
ァ層を形成することからなり、xは0から1までの間の所定値であり、バッファ層の反射率はバッファ層と同程度の厚さを有するZrB2の層より大きい方法を提供する。
【0012】
第6の態様では、本発明は、バッファ層の格子定数を調節する方法であって、約50nmより大きな厚さを有する組成HfxZr1-xB2の合金バッファ層を形成することと、バ
ッファ層上に活性層を形成することからなり、xは0から1までの間の所定値であり、活性層はバッファ層と格子整合している方法を提供する。
【0013】
第7の態様では、本発明は、基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備えた半導体構造であって、前記複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい半導体構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】基板と、基板の上方に形成された本明細書に記載の本発明の層と、を備えた本発明の例証的な半導体構造。
【図2】基板と、基板の上方に形成された本明細書に記載の本発明の層と、本発明の層の上方に形成された活性層とを備えた本発明の例証的な半導体構造。
【図3】厚いZrB2フィルムからの典型的な高解像度XTEM顕微鏡写真。
【図4】200nmの厚いZrB2フィルムに対する温度の関数としての測定a軸(四角)およびc軸(丸)歪みを示すグラフ。
【図5】400nmの厚いZrB2フィルムに対する温度の関数としての測定a軸(正方形)およびc軸(丸)歪みを示すグラフ。
【図6】計算された緩和値(白丸)および文献由来のバルクデータ(実線)に対するZrB2フィルム(黒四角)の測定a軸およびc軸格子定数の温度依存性を示すグラフ。
【図7】900℃の成長温度での薄いZrB2/Siヘテロ構造と厚いZrB2/Siヘテロ構造の歪み分布を示す略図。
【図8】ZrB2/Si(111)フィルムおよびバルクZrB2基板とのGaNの不整合歪みの温度依存性の比較。
【図9】(a)は、ZrB2の電子バンド構造(水平線はフェルミ準位を示す)、(b)は、半金属特性を示すZrB2の状態密度、(c)は、バンド構造プロットで使用されるブリュアンゾーンの「道路マップ」、(d)は、ZrB2(Zr原子は青、B原子はピンク)の結晶構造。
【図10】サイト(Zr,B)による、および角運動量特性による状態密度の分解を示すグラフ。上部パネルは格子間寄与のプロット。
【図11】Si(111)上に成長したZrB2フィルムの赤外線複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。
【図12】Si(111)上に成長したZrB2フィルムの可視−UV複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。
【図13】偏光解析法の赤外線、可視光線および紫外線由来のSi(111)(実線)上に成長したZrB2フィルムの反射率プロットを示すグラフ。点線は全電子FPLAPW−DFTシミュレーションであり、一点鎖線はOdaとFukuiによって得られるようなバルクZrB2結晶からの反射率データ。挿入図は、理論に基づく反射率の水晶である(R‖とR⊥はそれぞれ基底面に水平および垂直な偏光の反射率である)。
【図14】2.2、4.4および5.5eVの反射率で見出されたスペクトル特徴を有する電子源を示すZrB2のバンド図のグラフ。網掛け領域はバンド間遷移、すなわちスペクトル特徴に対する運動量行列要素の寄与が最大になるk空間の位置を示す。
【図15(a)】本発明によりSi(111)上に直接成長させたZr0.70Hf0.30B2フィルムのRBSスペクトル。
【図15(b)】Zr0.70Hf0.30B2/Si(111)由来のX線回折(XRD)(113)逆格子空間マップ。
【図15(c)】欠陥がない微細構造と滑らかな表面とを示す層全体の回折コントラストの顕微鏡写真。挿入図は、完全エピタキシャル界面の高解像度画像を示す。
【図16(a)】ZrB2バッファ層上に成長させたHf0.5Zr0.5B2合金層のRBSスペクトル。
【図16(b)】Hf0.5Zr0.5B2およびZrB2バッファ層の(−113)ピークの高解像度X線逆格子空間マップ。
【図17】(上側)HfB2/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造のZコントラスト、および(下側)完全エピタキシャルHfB2/ZrB2インターフェイスの高解像度XTEMおよび対応するHf(M端)およびZr(L端)のEELS組成プロフィール。
【図18】ZrB2バッファ層を介してSi(111)上に成長させたHfB2フィルムの赤外線複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。誘電関数は本明細書に記載のように偏光解析データの逐点適合(フィット)により得られる。
【図19】HfxZr1-xB2バッファ層を介してSi(111)上に成長させたHfB2フィルムの可視光線複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。誘電関数は本明細書に記載のように偏光解析データの逐点適合(フィット)により得られる。
【図20】実線:誘電関数データから計算された、Si(111)上に成長させたZrB2フィルムの光学反射率。点線:誘電関数データから計算された、HfxZr1-xB2バッファ層を介してSi(111)上に成長させたHfB2フィルムの光学反射率。
【図21】(左)大きな島の存在を示す軸上Si(111)ウェハ上に成長させたZrB2フィルム用の表面形態の光学画像。島の間の領域は公称AFM RMSが約2.5nmで滑らかである。(右)表面に本質的に特徴がないことを示す4度のミスカットSi(111)上に成長させたフィルムの対応画像。AFMイメージは非常に均質な表面粗さを示している。
【図22】本発明によるGaN/ZrB2/Si(111)半導体構造の微構造を示す断面透過電子顕微鏡法(XTEM)の画像。
【図23】本発明によるGaN/ZrB2/Si(111)半導体構造のPLスペクトル。
【図24(a)】AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)構造を示す顕微鏡写真。
【図24(b)】組成Al0.10Ga0.90Nに相当する346nmで波長が最大値となる強いバンドギャップ放射ピークを示す図24(a)のサンプルの典型的な陰極線発光スペクトル。
【図25】本発明による半導体素子のバッファ領域の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1態様では、本発明は、基板および基板の上方に形成されたエピタキシャル層を備えた半導体構造であって、エピタキシャル層がB(ホウ素)とZr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素とを含み、エピタキシャル層が50nmよりも大きい厚さを有するエピタキシャル層がB(ホウ素)とZr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素とを含み、エピタキシャル層が50nmよりも大きい厚さを有する。
【0016】
本発明の半導体構造は、例えば、基板上でのIII群窒化物材料の成長の支持を促すために使用することができる。1つの非限定的な例では、エピタキシャル層は基板上でのIII群窒化物材料の成長のためのバッファ層として機能し、例えばバッファ層がその下の基板に対して熱を伝えないよう分離されている(熱的に固定されていない)。そのようなバッファ層は、半導体プロセスおよび動作に関与する熱サイクリングによって半導体構造に加えられる歪みを低減させるという利点を有する。そのようにして生じたIII群窒化物材料を有する半導体構造は、トランジスタ、電界エミッタ、発光オプトエレクトロニクス装置およびオプトエレクトロニクス装置のような能動半導体素子に使用することができる。
【0017】
図1を参照すると、本発明の第1態様によれば、基板(1800)と、基板の上方に形成されたおよびエピタキシャル層(1801)とを備えた半導体構造が提供される。かかる層(1801)は不連続であってもよいし(例えば島または量子ドット)、または図1に示すように連続的であってもよい。
【0018】
エピタキシャル層は、一般に50nm以上の厚さを有する。エピタキシャル層のそのような厚さは、本開示の方法(以下に記載)により調製可能である。例えば、そのような層は、過剰量の水素と、Zr、Hfおよび/またはAl源とを含む前駆体ガスから基板上方に形成可能であることが知られている。
【0019】
いくつかの実施形態では、エピタキシャル層は約100nmより大きな厚さを有してもよく、好ましくは約200nmより大きな厚さを有してもよい。エピタキシャル層のそのような厚さにより、思いがけず、下にある基板から熱的に分離される(すなわち熱的に固定されない)ことが分かった。200nm以下の厚さのエピタキシャル層とは対照的に、下にある基板はその上にあるエピタキシャル層の熱的性質(例えば熱膨張率)を制御せず、むしろ、本発明のエピタキシャル層がバルクに本質的に類似の熱的性質、特にその熱膨張率を有している。
【0020】
本明細書に使用する場合、エピタキシャル層は、50nm〜2μmまたは100nm〜2μmの厚さを有し得る。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層は、250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、または400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有する。第1態様の種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層は250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きな厚さを有し得る。本発明のエピタキシャル層は所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、エピタキシャル層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、エピタキシャル層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0021】
第1態様の1実施形態では、エピタキシャル層は基板上に直接形成される。
第1態様の別の実施形態では、エピタキシャル層は約200nmより大きな厚さを有すると共に、1または複数の以下の特性:(i)900℃での緩和;(ii)基板に熱的に固定されないこと;(iii)室温から900℃までの温度範囲にわたって本質的に熱に対して一定の不整合歪み;(iv)原子平坦面;を有する。
【0022】
特に、基板の上方に形成されたエピタキシャル層は、一般に、約50μm2よりも大き
な面積に及ぶ原子平坦面を有する。しばしば、エピタキシャル層は約100μm2より大
きな面積に及ぶ原始平坦面を有する。好ましい実施形態では、エピタキシャル層は約250μm2、500μm2、または1mm2よりも大きい面積に及ぶ原子平坦面を有する。エ
ピタキシャル層の表面特性である原子平坦面の範囲は、原子力顕微鏡およびXTEM技術を用いて当業者に容易に決定可能である。標準的な光学顕微鏡は、ウェハ表面の平坦領域間に大きな島または他の欠陥が存在しないことを確認するために使用される。
【0023】
第1態様の上述のいずれの実施形態でも、エピタキシャル層は、Bと、Zr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の要素とを含んでよい。種々の実施形態では、エピタキシャル層は、ZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2のうちの一つを含み、xとyの合計は1以下である。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層はZrB2、HfB2、HfxZr1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、xとyの合計は1以下である。
さらなる実施形態では、エピタキシャル層はZrB2を含む。
【0024】
第1態様の上述のいずれの実施形態でも、エピタキシャル層は基板上に直接形成され、ZrB2、HfxZr1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、x
とyの合計は1以下である。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層は基板上に直接形成され、ZrB2またはHfxZr1-xB2を含む。さらなる実施形態では、エピタキシャル層は基板上に直接形成され、ZrB2を含む。
【0025】
エピタキシャル層は2つ以上のエピタキシャルサブ層を含んでもよく、この場合、第1のエピタキシャルサブ層が第2のエピタキシャルサブ層上に直接形成され得る。エピタキシャルサブ層の各々は、Bと、Zr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素との合金を含んでもよい。種々の実施形態では、エピタキシャルサブ層は、独立して、ZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含み、xとyの合計は1以下である。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャルサブ層は、ZrB2、HfB2、HfxZr1-xB2
またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、xとyの合計は1以下である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1のエピタキシャルサブ層が基板上に直接形成され、ZrB2、HfxZr1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含み、
xとyの合計は1以下である。この実施形態では、第2のエピタキシャルサブ層は、ZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含んでよく、xとyの合計は1以下である。別の特定の実施形態では、第1のエピタキシャルサブ層が基板上に直接形成され、ZrB2、HfxZr1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含み、xとyの合計は
1以下であり、第2のエピタキシャルサブ層がHfB2を含む。1つの特定の実施形態で
は、第1のエピタキシャルサブ層が基板上に直接形成されZrB2またはHfxZr1-xB2を含み、第2のエピタキシャルサブ層がHfB2を含む。
【0027】
エピタキシャル層が2つ以上のエピタキシャルサブ層を含むいずれの実施形態でも、エ
ピタキシャル層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有する。エピタキシャル層が2つ以上のエピタキシャルサブ層を含む別の実施形態では、エピタキシャルサブ層の少なくとも1つが50nmよりも大きい厚さを有する。本明細書に使用する場合、エピタキシャル層は、50nm〜2μm、100nm〜2μm、250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有する。
【0028】
図2を参照すると、本発明の第1態様は、基板(1900)、50nmよりも厚さが大きいエピタキシャル層(1901)、およびエピタキシャル層の上方に形成された活性層(1902)をさらに含む、第1態様の上記実施形態のいずれかの半導体構造、またはそれらの組み合わせをさらに提供する。そのような層(1902)は、不連続であってもよいし(例えば島または量子ドット)、または図2に示すように連続的であってもよい。
【0029】
第1態様の1実施形態では、活性層(1902)はエピタキシャル層に格子整合する。
第1態様の1実施形態では、活性層(1902)はエピタキシャルである。
第1態様の別の実施形態では、活性層(1902)はエピタキシャル層(1901)の上に直接形成される。
【0030】
活性領域(1902)はIII群窒化物を含んでもよい。種々の実施形態では、III群窒化物には、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlN、InN、SiCAlN、またはその混合物、ならびにSiCおよびGe等の他の四面体半導体が含まれる
基板(1800)および/または(1900)は、Si(例えばpドープSiまたはnドープSi)、AI2O3(例えばサファイア)、SiCまたはGaAsを含んでよい。1実施形態では、基板はSi(100)を含む。別の実施形態では、基板はSi(111)を含む。
【0031】
第1態様の別の実施形態では、基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。上述の実施形態は材料の有意な改良への道筋を提供しているが、優れた形態学的性質のHfxZ
r1-xB2層を、ミスカットされたSiウェハ上に直接成長できることが期せずして発見された。詳細には、ミスカットSi(111)ウェハディスプレイ上に形成された層は、少なくとも50μm2を超える表面積をカバーする信じられないほど平坦な面を示す。その
ような表面形態は、転位置が低レベルな非常に一様な構造につながり、および/または個々の層間および層内の他の境界結晶につながるため、多層半導体素子の組立のためには非常に望ましい。
【0032】
Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。詳細には、基板がミスカットSi(111)ウェハを含む場合、基板上に一般に形成されるエピタキシャル層は約50μm2より大きな面積に及ぶ原子平坦面を有
する。しばしば、基板がミスカットSi(111)ウェハを含む場合、基板上に一般に形成されるエピタキシャル層は約100μm2より大きな面積に及ぶ原子平坦面を有する。
好ましい実施形態では、エピタキシャル層は、約250μm2、500μm2、または1mm2よりも大きな面積に及ぶ原子平坦面を有する。エピタキシャル層表面の平面性質の範
囲は、例えば光学顕微鏡および/または原子力顕微鏡を使用して当業者に容易に決定可能である。
【0033】
活性層(1902)は、例えば当業者に周知のガスソース分子線エピタキシ等の方法によって形成され得る。別の実施形態では、活性層は化学蒸着法により形成され得る。そのような方法が、本明細書にその全体が援用される2004年2月12日出願の米国特許出
願出願公開第2006/0236923号に記載されている。
【0034】
エピタキシャル層を形成する方法
先行技術では、900℃の温度および約13.3322μPa(10-7トル)の圧力での前駆体(Zr(BH4)4)のガスソース分子線エピタキシ(GS−MBE)により、約25〜50nm未満の厚さを有するZrB2フィルムを一般的に成長させた。しかしなが
ら、高圧で行なわれた初期の迅速な成長速度における研究によると、Bが豊富な部分による表面の被毒(恐らくZr(BH4)4の気相反応による)と、約20nmという高い表面粗さが生じていた。
【0035】
このような問題を克服するため、本発明は、希釈剤と、1または複数のB源と、1または複数のZr、Hf、またはAl源とを含む前駆体ガスを提供する。希釈剤は一般に水素を含み、好ましくは当業者に周知の高純度水素を含む。当業者には理解されるように、一つの源が、B源と、Zr、Hfおよび/またはAl源との両方を含んでいてもよい。例えば、Zr(BH4)4およびHf(BH4)4は各々、BおよびZrと、BおよびHfと供給源である。他の希釈剤が使用されてもよく、例えばヘリウムおよび/またはアルゴン等の非反応性ガスが前駆体ガスに加えられてもよい。
【0036】
一般に、前駆体ガスは、エピタキシャル層を構成する、希釈剤と、1または複数のB源と、1または複数のZr、Hfおよび/またはAl源とを含む。前駆体ガスのための適切な源には、Zr(BH4)4、Hf(BH4)4、またはAl源としてクヌーセンセル蒸発器等のAl源が含まれるが、これらに限定されるわけではない。代わりに、Al(BH4)3−アルミニウム三ホウ化水素をAl源として使用してもよい。室温で前駆体ガス成分の揮発性が高いと(例えばZr(BH4)4およびAl(BH4)3の蒸気圧はそれぞれ約1.06658kPa(8トル)および約13.3322kPa(100トル)である)、それらはガス源MBE用途に非常に有用である。Al(BH4)3はSi(111)等の基板の表面で熱分解し、以下の反応によりエピタキシャル層にAlB2を組み込むと共に、ガス
副産物H2とジボランB2H6を生じさせる:
【0037】
【化1】
本発明の1実施形態では、前駆体ガスは、合計体積が約0.1〜約5%v/vのZr(BH4)4、Hf(BH4)4、または、Al(BH4)3と、高純度水素とを含む。特定の実施形態では、前駆体ガスは、約1〜約3%v/vのZr(BH4)4、Hf(BH4)4、またはAl(BH4)3と、高純度H2とを含む。しかしながら、他の混合体積を用いてもよ
く、異なる純度レベルの水素を含むがこれに限定されない他の希釈剤を用いてもよい。上述の前駆体ガスを用いると、約500nm以下の厚さで原子力平坦面(例えば約2nmの表面粗さ)を有するフィルムが得られた。先に説明したように、他の厚さフィルムも得ることができる(前掲)。
【0038】
しばしば、過剰量の水素は、前駆体ガスの95%v/vよりも多くを含み、好ましくは、水素は前駆体ガスの97%v/vよりも多くを含み、さらにより好ましくは、水素は前駆体ガスの約98%v/vよりも多くを含む。
【0039】
本発明の実施形態では、エピタキシャルZr1-xHfxB2層がその組成範囲全体(0≦
x≦1)にわたって合成された。また、同時に熱および格子整合用途へのその有用性が研究された。
【0040】
本発明の実施形態では、0.1〜約5%v/vでH2と混合したHf(BH4)4および
Zr(BH4)4前駆体を用いて、エピタキシャルZr1-xHfxB2層をGS−MBEによ
り成長させ得る。本発明の別の実施形態では、約1〜約3%でH2と混合したHf(BH4)4およびZr(BH4)4前駆体を用いて、エピタキシャルZr1-xHfxB2層をGS−MBEにより成長させ得る。本発明の別の実施形態では、約2体積%でH2と混合したHf
(BH4)4およびZr(BH4)4前駆体を用いて、エピタキシャルZr1-xHfxB2層を
GS−MBEにより成長させ得る。
【0041】
式Zr1-xHfxB2のエピタキシャル層の組成は、ストック混合物中のHf(BH4)4
/Zr(BH4)4の比を変えることにより調整可能である。例えば、Zr(BH4)4対Hf(BH4)4の比は、100:1〜1:100の間でそれらの間の任意の値(例えば1:1)に偏光可能である。
【0042】
エピタキシャル層は一般に、約800〜1000℃の温度で形成される。好ましくは、エピタキシャル層は、約850〜950℃の温度で形成される。より好ましくは、エピタキシャル層は、約875〜925℃の温度で形成される。さらに、前駆体ガスは一般に約133.322mPa(約1×10-3)〜約0.133322μPa(1×10-9トル)の圧力で供給される。好ましくは、前駆体ガスは、約1.33322mPa(約1×10-5)〜約13.3322μPa(1×10-7)の圧力で供給される。
【0043】
エピタキシャル層を利用するIII群窒化物の組み込み
本明細書で説明するエピタキシャル層は、基板上にIII群窒化物合金層を組み込むのに特に有用である。詳細には、本発明のエピタキシャル層を備えた半導体構造は、例えば、基板上のIII群窒化物材料の成長を支援するために使用することができる。このような調整可能で構造的で熱弾性で光学的な性質により、HfB2−ZrB2システムはSiへのIII窒化物の広範な組み込みに適したものとなっている。
【0044】
1つの非限定的な例では、バッファ層が基板上のIII群窒化物材料の成長の支持を促す。III群窒化物材料を有する結果として得られる半導体構造は、トランジスタ、電界エミッタ、発光オプトエレクトロニクス装置およびオプトエレクトロニクス装置等の能動半導体素子に使用することができる。
【0045】
第3態様では、本発明は、基板上にIII群窒化物を組み込む方法であって、基板の上方にZr、Hf、Alの二ホウ化またはそれらの混合物からなる厚いバッファ層を形成することと、バッファ層の上方にIII群窒化物層を形成することとからなる方法を提供する。そのようなIII群窒化物層は、不連続であってもよいし(例えば島または量子ドット)、不連続であってもよい。
【0046】
第3態様の種々のさらなる実施形態では、バッファ層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きな厚さを有し得る。本発明のバッファ層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、バッファ層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、バッファ層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0047】
本明細書に使用する場合、バッファ層は、50nm〜2μm、100nm〜2μm、または200nm〜2μmの厚さを有する。第3態様の種々のさらなる実施形態では、バッファ層は、50nm〜1.5μm、100nm〜1.5μm、150nm〜1.5μm、200nm〜1.5μm、250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有
する。
【0048】
第3態様の別の実施形態では、バッファ層は基板上に直接形成される。
第3態様の別の実施形態では、バッファ層はエピタキシャルである。
第3態様の別の実施形態では、バッファ層は900℃で緩和される。
【0049】
第3態様の別の実施形態では、バッファ層は、バルクと本質的に同一の熱膨張率を有する。
第3態様の別の実施形態では、バッファ層の不整合歪みは、室温から900℃までの温度範囲にわたって本質的に熱に対して一定である。
【0050】
第3態様の種々の実施形態では、バッファ層はZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、xおよびyの合計は1以下である。さらなる実施形態では、バッファ層はZrB2を含む。
【0051】
第3態様の別の実施形態では、III群窒化物層はバッファ層上に直接形成される。第3態様のさらに別の実施形態では、III群窒化物は、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlN、InN、SiCAlNまたはそれらの混合物から成る群から選択された化合物を含む。
【0052】
第3態様の1実施形態では、III群窒化物層はバッファ層と格子整合する。
第3態様の別の実施形態では、基板はSi、AI2O3、SiCまたはGaAsを含む。第3態様の種々の実施形態では、基板はSi(111)を含む。第3態様の他の種々の実施形態では、基板はSi(100)を含む。第3態様の好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。
【0053】
別の実施形態では、III群窒化物層は当業者に周知の分子線エピタキシにより形成される。別の実施形態では、III群窒化物層は、化学蒸着法(CVD)または金属有機化学蒸着法(MOCVD)により形成される。そのような方法が、本明細書にその全体が援用される2004年2月12日出願の米国特許出願出願公開第2006/0236923号に記載されている。
【0054】
III群窒化物層を形成する方法
第4の態様では、本発明は、基板の上方にAlxGa1-xN層を形成する方法であって、AlxGa1-xN層を形成するのに適した温度および圧力で、Al源の存在下で、基板をH2GaN3、D2GaN3、またはそれらの混合物と接触させることからなり、温度は約800℃未満℃である方法を提供する。
【0055】
何らかの特定の動作の理論に束縛されるわけではないが、上記温度での合金の形成は、H2GaN3またはD2GaN3分子の電子が豊富なN3基が、追加の活性化なく酸性Al原
子と結合して必要なAl−N−Ga結合配置を生成するのに十分な反応性を有することを暗示している。この相互作用の機構は、「D2GaN3:Al」複合体等の反応中間体の生成と、その後の該中間体の基板表面上での反応によるGa1-xAlxNおよびH2/D2/N2の副産物の生成とを伴い得る。これに関し、ルイス酸−塩基型GaN−N−N−Mモチ
ーフが、III群化合物のアジ化物分子の構造で観察される。700℃では、「D2Ga
N3:Al」の即時分解によって生じるいかなるGaN−Al断片も拡散および結合して
、一様で連続的な結晶の層を形成する。この温度よりも低いとAl元素がウェハ表面で分離する場合があり、これは「D2GaN3:Al」複合体が、表面を被毒して結晶窒化物のさらなる組立を防止するAl元素クラスタと不均衡であることを示唆している。AlGa
N形成のための別の競合機構は、成長表面の衝突Al原子による吸着Ga3N3ユニット内でのGaの置換が関与し得る。この場合、Al−N結合は対応するGa−N結合よりも大幅に強いため、自由Gaは表面上に拡散し、成長中のフィルムの組織化された組立を促進する界面活性剤として機能し得る。自由Gaは最終的には堆積条件(例えば約13.33322μPa(10-7トル)および700℃)でのその高い蒸気圧に起因して成長正面から真空へし得る。
【0056】
第4の態様の1実施形態では、基板をAl源の存在下でH2GaN3と接触させる。別の実施形態では、基板をAl源の存在下でD2GaN3と接触させる。Al源は基板にAl元素を供給することが当業者に知られている任意の供給源であってよい。例えば、Al源はクヌーセンセルから蒸発したAl原子要素であってもよい
好ましくは、接触は約700℃未満の温度で起こるか、または約500℃から約700℃までの範囲の温度で起こる。接触の圧力は、約1.33322μPa(約1×10-8トル)から約133.322μPa(約1×10-6トル)までの範囲であり、好ましくは圧力は約26.6644μPa〜106.658μPa(約2〜8×10-7トル)である。
【0057】
基板はSi(100)またはSi(111)ウェハのように均質であってもよく、またはベース基板上に1または複数のオーバレイヤ等の1または複数の材料を含んでもよい。例えば、基板は、Si基板の上方に形成されたZrB2のバッファ層を含んでよい。
【0058】
1実施形態では、基板はGaNを含むがこれに限定されないIII群窒化物を含む。詳細には、基板はSi(100)またはSi(111)等のベース基板の上方に形成されたGaNの層を含んでよい。1実施形態では、基板は、ベース基板(例えばSi(100)またはSi(111))の上方に形成されたバッファ層(例えばZrHfAlB2)の上
方に形成されたGaNの層を含む。
【0059】
AlxGa1-xN層はxが0と1の間の値となるように先の方法によって調製可能である。好ましい実施形態では、そのように形成されたAlxGa1-xN層は、約0.01〜約0.20の間のxの値を有し、より好ましくはAlxGa1-xN層は約0.01〜約0.10の間のxの値を有する。
【0060】
第4の態様の種々のさらなる実施形態では、AlxGa1-xN層は10nm、25nm、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有する。本発明のAlxGa1-xN層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、AlxGa1-xN層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、AlxGa1-xN層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0061】
第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、AlxGa1-xN層は元素が均質である。第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、AlxGa1-xN層は単結晶である。好ましくは、第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、AlxGa1-xN層はエピタキシャルである。
【0062】
第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、基板は、本発明の第1態様の半導体構造を備えてよい。
同様に、第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、基板は、本発明の第2態様に従って調製された半導体構造を備えてよい。
【0063】
さらに、第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、基板は、本発明の第3態様に従って調製された半導体構造を備えてよい。
適用
本発明の半導体構造、または本発明の方法に従って形成された半導体構造は、操作可能なマイクロ電子デバイスの一部を構成してもよい。第2態様の任意の実施形態(またはその組み合わせ)の半導体構造も、同様に操作可能なマイクロ電子デバイスとして機能してもよい。さらに、第2態様の任意の実施形態(またはその組み合わせ)の半導体構造は、操作可能なオプトエレクトロニクスの装置の一部を構成してもよいし、またはそれ自体が操作可能なマイクロ電子デバイスとして機能してもよい。
【0064】
例えば、本発明の方法に従って生産された構造は、ヘテロ構造電界効果トランジスタ(HFET)(本願に援用するMaeda, et al, Phys. Stat. Sol. (a) 188, No. 1, pp. 223-226 (2001)参照)、ダブルヘテロ接合バイポーラトランジスター(DHBT)(本願に
援用するMalcinoto, et al. Phys. Stat. Sol. (a) 188, No. 1, pp. 183-186 (2001),参照)、多重量子井戸(MQW)レーザ(いずれも本願に援用するNakamura, et al. J. Crystal Growth 189/190, pp. 841-845 (1998)およびKuramata, et al. J. Crystal Growth
189/190 pp. 826-830 (1998)参照)、および紫外線発光ダイオード(UV LED)(
本願に援用するMukai, et al. J. Crystal Growth 189/190 pp. 778-781 (1998)参照)を含むがこれらに限らないデバイスに使用可能である。
【0065】
(a)反射率の調節
UV−IRの偏光解析測定は、純HfB2の反射率がZrB2よりも高いことを示すが、これは純HfB2が、吸収Siウェハ上に窒化物装置を構成するための反射率格子整合テ
ンプレートとして、ZrB2よりも有意に優れていることを示している。
【0066】
Si(111)上で成長させた純ZrB2の空気反射率を、図13に入射光子エネルギ
ーの関数としてプロットし、図で純ZrB2の空気反射率をバルクSiの反射率と比較す
る。サンプルは金属に似た挙動を示し、反射率は0.5付近の値から急激に増大し、低フォトンエネルギー(IR領域)では一致した。しかしながら、多くのIII−N適用に関連する2−6eV(620−200nm)の領域では、ZrB2の反射率がSiのそれよ
り低い。
【0067】
密度関数理論を使用して基本原理からシミュレートしたZrB2、HfB2、およびSiの反射率(フルポテンシャル化線形増強平面波法、FLAPW; EXCITING DFTコード)は、ZrB2−HfB2システムのSi上のバッファ層の光学特性を調節する能力を示す。コードに関するより詳しい情報は本願に援用するJ.K. Dewhurst, S. Sharma
and C. Ambrosch-Draxl, EXCITING FPLAPW code Version 0.9.57 (2006)を参照されたい。
【0068】
化合物の半金属の性質により、複素誘電関数ε=ε1+iε2は、バンド間とバンド内の寄与の合計として計算された(本願に援用するC. Ambrosch-Draxl and J.O. Sofo, Comp.
Phys. Comm. 175, 1 (2006)参照)。後者はドルーデ(Drude)式を用いて示される:
【0069】
【数1】
式中、ωpは自由電子プラズマ周波数(ZrB2とHfB2に対する計算値はそれぞれh
ωP=4.56および4.81eV)である。Γ=50meVの寿命拡張値が観察される低エネルギー挙動を再生することが分かった。HfB2とZrB2の両方のIR反射率で観察される急激な上昇は、ドルーデ項によるものである。
【0070】
SiおよびZrB2に対する観察スペクトルとシミュレートしたスペクトルがほぼ一致
しているのは、純HfB2フィルムの反射率が2−8eV範囲ではZrB2より約20%大きいことを示唆している。Si上で成長させたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)材料は、スペクトル範囲全体にわたって調節可能な反射率を提供することが可能である。この挙動はバッファ化Si上に窒化物に基づくバンド間(近IR)およびサブバンド内(IR)装置を成長させる設計にとって特に重要であり得る。
【0071】
第5の態様では、本発明は、バッファ層の反射率を調節する方法であって、基板上に、約50nmよりも大きな厚さと、ある反射率とを有する式HfxZr1-xB2の合金のバッ
ファ層を形成することからなり、xが0〜1までの所定値であり、バッファ層の反射率が、バッファ層と同じ厚みを有するZrB2層の反射率よりも大きい方法を提供する。
【0072】
第5の態様の種々の実施形態では、バッファ層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有し得る。本発明のバッファ層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、バッファ層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、バッファ層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0073】
1実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を有するバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層がバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0074】
別の実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を有するバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層が緩和された半導体構造が提供される。
【0075】
別の実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を有するバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層が緩和されると共にバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0076】
上記のいずれの実施形態でも、活性層はIII群窒化物を含んでよい。例えば、III群窒化物はAlGaNまたはGaNを含んでもよい。1実施形態では、III群窒化物はAlxGa1-xNxを含み、xは約0.10より大きい。
【0077】
種々の実施形態では、基板がSi(111)を含む。別の種々の実施形態では、基板がSi(100)を含む。好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)を含み、好ましくは基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。
【0078】
(b)格子定数の調節
a0=3.169Å、c0=3.525Åのバルク六方晶格子定数を有するZrB2と、
HfB2(a0=3.142Åおよびc0=3.48Å)の合金は、ZrB2よりも格子定数が小さいため、少ない歪みで高Al含量のAlxGa1-xN層を成長させることができ、Si等の基板へのそれらの材料の完全な統合すなわち組み込みの道を開く。
【0079】
x>0.10のAlxGa1-xNの広幅ギャップの成長のためにシリコン上の格子整合能を増強させる(ZrB2とHfB2の合金に基づく)ハイブリッド基板技術が開発された。Zr1-xHfxB2の固体溶液は、対象のAlxGa1-xNの十分範囲内に、ZrB2の格子定数よりも低い調節可能な格子定数を有する。
【0080】
第6の態様では、本発明は、バッファ層の格子定数を調節する方法であって、約50nmより大きな厚みを有する式HfxZr1-xB2の合金のバッファ層を形成することと、バ
ッファ層上に活性層を形成することとからなり、xは0から1までの所定値であり、活性層がバッファ層と格子整合される方法を提供する。
【0081】
第6の態様の種々の実施形態では、バッファ層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有する。本発明のバッファ層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、バッファ層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、バッファ層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0082】
1実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を含むバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層がバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0083】
別の実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を含むバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層が緩和されると共にバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0084】
上記のいずれの実施形態でも、活性層はIII群窒化物を含んでよい。III群窒化物はAlGaNまたはGaNを含んでもよい。1実施形態では、III群窒化物はAlxG
a1-xNxを含み、xは約0.10より大きい。
【0085】
種々の実施形態では、基板がSi(111)を含む。他の種々の実施形態では、基板はSi(100)を含む。好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)を含み、好ましくは基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。
【0086】
(c)分布ブラッグ(Bragg)反射器および超格子
本発明の先の説明におけるバッファ層は、2つよりも多くの異なる層の種類を有し、各層の周囲が超格子により周期的に繰り返されてもよい。そのため、第7の態様では、本発明は、基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備え、前記複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2合金層からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい、半導体構造を提供する。
【0087】
図25を参照すると、簡単さおよび議論をし易くするため2つの層の種類を使用した第7の態様の例証的実施形態を示す。バッファ領域104は、約50nmから1000nmまで、または100nmから1000nmまでであってよいが、より厚い層を成長させてもよい。個々の層の厚さ(例えばt202とt204)は、約数ナノメートルまたは数十ナノメートル(例えば5nm〜50nm)であり得る。
【0088】
一般に、スタックが2種類の合金層AおよびBをそれぞれ含む場合、スタックは式−(AB)n−の構造を有し、nは1以上である。スタックが3種類の合金層A、BおよびC
をそれぞれ含む場合、スタックは式−(ABC)n−、−(BAC)n−、−(ACB)n
−、−(BCA)n−、−(CBA)n−、または−(CAB)n−の構造を有し、nは1
以上である。好ましくはnは約1〜100であり、より好ましくはnは約1〜50であり、さらにより好ましくはnは約1から約10までである。
【0089】
スタックが4種類の合金層A、B、CおよびDをそれぞれ含む場合、スタックは式−(ABCD)n−、−(ABDC)n、−(ACBD)n、−(ACDB)n、−(ADBC)n、−(ADCB)n、−(BACD)n、−(BADC)n、−(BCAD)n、−(BC
DA)n、−(BDAC)n、−(BDCA)n、−(CABD)n、−(CADB)n、−
(CBAD)n、−(CBDA)n、−(CDAB)n、−(CDBA)n、−(DABC)n、−(DACB)n、−(DBAC)n−、−(DBCA)n−、−(DCAB)n−、ま
たは−(DCBA)n−の構造を有する。好ましくはnは約1〜100であり、より好ま
しくはnは約1〜50であり、さらにより好ましくはnは約1から約10までである。
【0090】
さらに、誘電関数とZrxHfyAl1-x-yB2の反射率がわかると、状況に合わせてしつらえた反射率を有するバッファの設計が可能となる。分布ブラッグ反射器(DBR)や反射コーティング等の状況に合わせてしつらえた反射率を有する構造の設計規則が、本願に援用するHecht in "Optics (4th Edition)", Addison Wesley Publishing Company, 2002に記載されている。DBRミラー構造は、様々な屈折率を有する材料の交互の層から成る。各層の光学的厚さは設計波長(すなわち反射器が高い反射率を有するように設計された波長、中心波長とも呼ばれる)の4分の1である。物理的に、中心波長λに対して設計されたDBRのDBR層の厚さはt=λ/4nで与えられ、nは波長λの材料の屈折率である。この波長では、これらの層間の界面で反射された部分波が構造的に干渉し、狭いスペクトル領域内に非常に高い反射率が生じる。反射率スペクトルは中心波長(λ)を有し、両側に反射率が高くなり得る波長領域を有する。所与の波長における反射の大きさと、反射率スペクトルの波長依存性とは、2つの材料間の屈折率の差と、ミラー構造を構成する層の数とによって決定される。したがって、バッファ上に形成された窒化物装置によって使用可能な高い反射率を有するよう基板上にエピタキシ成長可能なバッファ層を設計することが可能である。
【0091】
基板はSi、Ge、SiGe、AI2O3、SiCまたはGaAsを含んでよい。第7の態様の種々の実施形態では、基板はSi(111)を含む。第7の態様の別の種々の実施形態では、基板はSi(100)を含む。第7の態様の好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)を含む。第7の態様の好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、約2〜5度、または約4度でミスカットされ得る。
【0092】
複数の反復合金層の各々は、約2nmから約500nmの範囲の厚さを有し得る。好ましくは各反復合金層は、約5〜100nmの範囲または約100nm〜約500nmの範囲の厚さを有する。
【0093】
スタックの厚さは一般に、約50nm、100nm、200nm、300nm、400nmまたは500nmより大きい。より詳細には、スタックは、約50nm〜約1000nm、約100nm〜約1000nm、約250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有し得る。本発明のスタックは所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、スタックは2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、スタック層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0094】
第7の態様の半導体構造は、スタックの上方に形成された、本明細書で定義した活性層をさらに備えてもよい。1実施形態では、活性層はスタック上に直接形成される。別の実施形態では、スタックが基板上に直接形成される。さらに別の実施形態では、活性層がスタック上に直接形成され、スタックが基板上に直接形成される。そのような実施形態では、活性層はIII群合金、例えばGaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlN、InNを含んでよい。別の実施形態では、活性層はSiCAlNまたはSiCの合
金を含んでもよい。別の実施形態では、活性層はGeを含んでもよい。
【0095】
スタック中の複数の層の各々は、活性層と同様、存在する場合には、本明細書に記載したいずれかの方法に従って、または当業者に周知の方法(例えば分子線エピタキシ、化学蒸着法、またはスパッタリング)に従って形成される。一般に、第7の態様のスタック中の複数の層の各々は、エピタキシャルであることが好ましく、好ましくはスタック全体がエピタキシャルである。
定義
用語「エピタキシャル」とは、本明細書に使用する場合、材料が結晶であり、基板と完全に釣り合っていることを意味する。好ましくは、エピタキシャルは、本明細書に定義しているように、材料が単結晶であることを意味する。
【0096】
用語「単結晶」とは、本明細書に使用する場合、当業者に周知のように、サンプル全体の結晶格子が、粒界が全くないか粒界がほとんどないために連続していることを意味する。
【0097】
用語「平坦面」とは、層に関して本明細書に使用する場合、層が層厚さの約5%未満の表面粗さを有することを意味する。例えば、層が5nm未満の表面粗さを有する場合、100nmの層は原子的に平坦である。この用語は、当業者に理解されるように、層の成長方向に概ね垂直な基準層の露出面のことを指す。
【0098】
用語「厚いフィルム」および「厚い層」とは、本明細書に使用する場合、平均厚さが100〜200nmよりも大きいフィルムまたは層を意味する。種々のさらなる実施形態では、厚いフィルムまたは層は、250nm以上、300nm以上、350nm以上または400nm以上の平均厚さを有する。本明細書に使用する場合、厚いフィルムおよび層は所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、厚フィルムまたは層は2〜3μm未満の厚さを有し、種々のさらなる実施形態では、厚フィルムまたは層は1.5μm未満、1.25μm未満、または1.0μm未満の厚さを有する。
【0099】
典型的には、本明細書に使用する場合、「厚いフィルム」および「厚い層」は100nm〜2μmの厚さを有する。種々のさらなる実施形態では、厚フィルムまたは層は150nm、200nm、または250nm〜2μm、300nm〜2μm、350nm〜2μm、400nm〜2μm、250nm〜1.5μm、300nm〜1.5μm、350〜1.5μm、400nm〜1.5μm、250nm〜1.25μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、250nm〜1μm、300nm〜1μm、350〜1μmまたは400nm−1μmの厚さを有する。
【0100】
用語「熱的に固定される」とは、本明細書に使用する場合、基板上のある材料の熱膨張の割合すなわちその熱膨張率は基板の熱膨張率と実質的に一致するが、基板上での該材料の熱膨張の割合はバルク材料の熱膨張の割合とは異なる(すなわち基板とフィルムは同じ割合で拡張する)ことを意味する。
【0101】
用語「不整合歪み」は、本明細書に使用する場合、材料と基板の格子定数の差により基板の上方に形成された材料層に引き起こされる歪みを意味する。
用語「本質的に熱に対して一定」とは、本明細書に使用する場合、基準となる物が特定の温度範囲にわたって10%未満しか変更しないことを意味する。好ましくは、基準となる物は特定の温度範囲にわたって5%未満しか変更しない。
【0102】
用語「格子整合」とは、本明細書に使用する場合、基準材料の格子定数が約1%未満し
か異ならないことを意味する。(すなわち、格子不整合が約1%未満である)。
ある層が別の層や基板の「上に」または「上方に」あると言う場合、別の層や基板の上に直接それらに接して存在してもよいし、介在する層が存在してもよいことに留意する。ある層が別の層や基板の「上に」または「上方に」あると言う場合、層は別の層や基板の全体を覆っていてもよいし、別の層や基板の一部分を覆っていてもよいことにも留意する。
【0103】
ある層が別の層や基板「の上に直接」存在すると言う場合、2つの層が介在する層の無い状態で互いに直接接触していることに留意する。ある層が別の層や基板「の上に直接」存在すると言う場合、層は別の層や基板の全体を覆っていてもよいし、別の層や基板の一部分を覆っていてもよいことにも留意する。
実施例
【0104】
実施例1
エピタキシャルZrB2層の調製
厚い単結晶ZrB2層(厚さ500nm以下)を、900℃、約0.266644mP
a〜約0.533288mPa(2〜4×10-6トル)、および約1%Zr(BH4)4/H2の温度、圧力、および反応物濃度でSi(111)六方晶表面で成長させた。約0.
533288mPa/リットル(4トル/リットル)のZr(BH4)4と大過剰量の研究グレードのH2に基づく反応混合物を、約53.5388mPa(400トル)の最終圧
力合計となるよう1000mLの真空瓶中でそれらの純粋な化合物を組み合わせることにより、各蒸着の前に調製しておいた。フラスコを蒸着チャンバのガス注入マニホルドに接続し、マニホルドを10-8まで加圧した。ホウ素でドープした(1〜10Ω−cm)Si(111)ウェハをサンプルステージの寸法に合わせるために1cm2サイズの基板に切
断した。各基板を、5分間メタノール中で超音波処理し、純N2流で乾燥させ、約53.
32884nPa(4×10-10)トルの基準圧力でロードロックを通じて成長チャンバ
に挿入し、UHV下で600℃に加熱し、チャンバの圧力がバックグラウンドレベルに回復するまで表面の汚染物質を除去した。次に、その後、表面から天然の酸化物を除去するために、ウェハを1150℃で続けて5回フラッシュ洗浄した。フィルムの成長を開始させるために、ウェハに直流電流を通すことによりウェハを900℃まで加熱した。温度を単色高温計で測定し、5分間安定化させた。前駆体混合物を、手動漏れバルブで制御して約0.08sccmの一定流量でチャンバに導入した。チャンバ内部の反応圧力は、耐腐食性ターボ分子ポンプを使用した動的ポンピングにより、成長中、2×10-6〜2×10-5の間に維持した。成長条件は、以下の反応に従って完全な分解機構に追従するように思慮深く調節した。
【0105】
【化2】
Siフィルム上に生じたZrB2は、1nm/分以下の速度で成長し、500nm以下
の厚さとなった。
【0106】
30分間かけて900℃から室温まで非常にゆっくりサンプルを冷却することで、ZrB2材料とSi基板との間の熱膨張の差による層(厚みに依存する)の亀裂を回避するこ
とが可能である。
【0107】
実施例2
エピタキシャルZrB2層の構造的および形態学的特徴付け
実施例1で生じたフィルムは、ラザフォード後方散乱(RBS)イオンチャネリング、原子力顕微鏡(AFM)および透過型電子顕微鏡(XTEM)(図3参照)を含む種々の微細構造および表面の特徴付け技術により実証されるように、その下にある六方晶表面と完全に釣り合い、完全に同じ方向を向いている。透過型電子顕微鏡(XTEM)によると、Siの5つの格子列がZrB2の6つの列ごとと整列する対応が不適合な機構(つまり
「マジック不整合」)を介してZrB2(0001)とSi(111)の間のヘテロエピ
タキシが得られていることが明らかである。この位置合わせにより、格子定数の大きな差に適合した、界面に沿った端部転位の周期的な配列が生じる。
【0108】
上述したように、最適の成長条件を維持することが非常に重要であり、どんなに小さくても偏差は、結晶材料の無視できる成長か、または形態の劣る多結晶粒の生成かを不可避に生じさせる。フィルムの目で観察できる外観は、特に約400〜500nm厚のサンプルの場合、金属的であり、アルミニウムの鏡を思い出させる。平面図および断面図形状のZrB2フィルムの電子顕微鏡画像は、特徴がなく、破砕や表面傷が全くないように見え
た。AFM走査によると、フィルム表面に直径1−2μm範囲の可変側面の範囲に浅い凹凸の配列が目立っていることが示された。それらの対応する高さはフィルム厚さによって決まることが判明し、100〜500nm厚のサンプルでは2〜5nmに及んだ。個々の凹凸の三次元の相は、非常に小さなアスペクト比の六角形のピラミッドに似ている。基底から頂点への垂直方向距離は、AFM測定値(RMS粗さ)によって決定されるが、約2−5nmである。その表面構造は、ピラミッド形の頂点で終端する大きな柱状の粒の形成を介して成長が進行することを示唆している。これらの特徴の凸面の部分は、次第に減少する直径を有する積み重ねられた六角形のメサから構成されている。この形態は各粒内のμm規模の層ごとの成長と一致している。
【0109】
実施例3
エピタキシャルZrB2層に関する高解像度XRDフィルム歪みの研究
実施例1の上記厚いフィルムの構造品質および結晶配向を、Panalytical X-pert Pro回折計を使用して高解像度X線回析(HR−XRD)により分析した。θ−2θ走査により、六方格子の(001)および(002)ピークのみが明らかとなり、これはヘテロ構造が高度に配向し、エピタキシャルであることを示している。ZrB2(001)の二回の
結晶ロッキング走査により、500nm厚フィルムに対する0.15度の半値全幅(FWHM)が示され、これは結晶領域間に顕著な傾斜がないことを示し、これは水平方向内のモザイクが非常に狭いことと一致している。100nm以下の公称厚さのサンプルの場合、干渉縞の対称的なエンベロープもθ−2θ回折パターンのZrB2ピークの付近に存在
した。より厚みが大きいサンプルの場合、これらの干渉縞がペアレント(001)ピーク内で合併する。
【0110】
正確な面内および垂直方向の格子定数を決定し、かつフィルム厚と温度の関数として側方歪みの発生に追従するために、広範囲な軸外高解像度測定も行なった。この目的のため、ZrB2結晶(AlB2型構造)の(113)逆格子空間マップ(RSM)を、その強度が比較的高く、発明者らの回析装置の散乱形状内に幾何学的にアクセスし易いため、記録した。エピ層(113)ピークに対して逆格子空間で近接しているため、基準点としてSi(111)ウェハの(224)反射を使用して、ルーチンの再現可能なサンプルアライメントを行なった。通常の500nm厚のZrB2/Si(111)の場合、室温での逆
格子空間マップの詳細な分析により、約0.5μmの相関長さと、約658秒角の隣接粒間の角傾斜が得られ、これはこの材料の結晶品質が高いことを示している。その厚みに課から輪図、研究したすべてのフィルムに対して同様な値が得られた。このサンプルに対して測定された格子パラメータa=3.1857Åおよびc=3.5212Åは、緩和バルクZrB2の値a0=3.169Åおよびc0=3.530(Okamoto, et al, J. Appl. Phys. 93, 88 (2003)参照)とわずかに異なることがと分かったが、これはこのフィルムに
引っ張り歪みが生じていることを示す。以下に示すように、標準弾性理論から得られる歪み値は約0.5%である。
Si上に成長させたZrB2層に基づくテンプレート構造の設計には、システムにおける
歪みの厚さおよび温度依存性についての完全な理解が必要である。室温でのエピ層厚さの関数としての歪みの変化を、50〜500nmの範囲の厚みを有する一連のフィルムの(113)回析最大値の高解像度XRD逆格子空間マップの測定により決定した。ZrB2
フィルムの面内歪みを正確に評価するために、測定されたaおよびc格子定数を使用して各厚さの緩和単位格子の寸法を計算した。基板表面に垂直に配向された[0001]面を有する六方晶フィルムの場合、垂直(εc)および平行(εa)歪みがεc=−2C13εa/
C33で与えられ、εc=(c−c0)/c0およびεa=(a−a0)/a0である。バルク
ZrB2の場合、既知のc/a比(ηによって以下に表示)は1.1139である。室温
の弾性定数はC13=120.5GPaおよびC33=436.1 GPaであり、ξ=−2C13/C33=−0.553を生じる。歪み関係の反転から、緩和格子定数は、a0={c/η−ξa}/{1−ξ}およびc0=ηa0により与えられ、これらは実験値と共に表1に列挙される。
【0111】
50〜500nmの厚さのZrB2層の緩和格子パラメータ定数a0およびc0は、緩和
エピタキシャルフィルムのηが平衡バルク結晶のそれと同じであるという近似を用いて得られる。フィルムの計算された歪み状態は、表1のaおよびcの測定値の隣に括弧に入れて与えられる。
【0112】
フィルムの緩和格子定数は、実質的に同じであることが計算され、バルク相a0=3.
169Åおよびc0=3.530Åに対する既知の値と一致する。この発見は、面内歪み
決定の顕著な一貫性を実証すると共に、格子定数が約0.001Åまで正確であることを示している。歪み分析は、50nmよりも厚みが大きいZrB2フィルムはすべてεaが約+0.51%、εcが約−0.30%の引張り歪みの平均値を示すことを示している。引
張り歪みは室温で500nmまで厚さが増加しても変化しない。残留歪みは、フィルムが1100℃まで数秒間急速に熱アニーリングされることによって、または900℃で24時間以内の間UHV条件下で成長後処理によって、加熱された後さえ、顕著に堅固であることが分かった。
【0113】
検討されたすべてのZrB2フィルムが引張り歪みを受けていることが分かったという
事実は、Siとの窒化物の組み込み用のバッファ層として上記材料を使用するに当たり重要な意味を持つ。室温でのaの平均測定値はGaNのそれ(a=3.189Å)と本質的に同一であり、これらのバッファがSi上に窒化物を組み込むのに適したプラットフォームであり得ることを示している。
【0114】
しかしながら、この戦略が成功するには、温度に伴うZrB2フィルム中の歪みの発達
についての完全な理解も必要である。そのような研究の必要性は以下の観察により強調される:ZrB2フィルムが900℃の成長温度で緩和され、成長温度から冷却された場合
にSi基板に追従する(同じ割合で膨張する)と仮定すると、室温における歪みを予測するために、バルクZrB2(基本寸法に対するαa)およびバルクSi(α)に対して測定された熱膨張率(CTE)を使用することができる。しかしながら、ZrB2に対するαa=6.66×10×10-6K-1(Okamoto, et al, J. Appl. Phys. 93, 88 (2003))と、Siに対するα=3.78×10×10-6K-1とを用いると、約0.2%の歪みεa(2
0℃)が予測され、これは本願発明者らのサンプルで観察された約0.5%よりもはるかに小さい(表1)。この不一致に関して、本願発明者らのZrB2/Si(111)エピ
タキシャル系は、不整合基板上にエピタキシ成長させた一般的なコンプライアントなフィルム系(すなわちSi上に成長させたGe)と比較して異なる挙動を示すように見える。予想された引張り歪みよりも高いこと(約0.5%)および室温におけるその厚さの独立
性を説明する一つの特徴は、ZrB2エピ層の堅固さがSi基板のそれよりもはるかに大
きいということである。さらに、本研究の高い成長速度(900℃)では、シリコン基板が機械的にはるかに堅固でなくなる。特に合成には大きな温度変化(例えば従来の半導体用途ではΔT 約400℃だったのに対しΔT 約900℃)を伴うため、ZrB2とS
iの弾性および熱的性質の大規模な差がヘテロ構造中の複雑で恐らく予期しなかった歪み反応を起こしていると考えられる。
【0115】
この残留歪みの発生源を解明するために、200および400nmの厚みの代表的なZrB2/Siサンプルを使用して熱的挙動に関する研究を試みた。それらの中間物が表1
に示されている。これらのサンプル中の室温歪みが冷却時のZrB2とSiの間の熱膨張
差によって制御される場合、上記の議論は、成長温度で無くならない歪みが存在することを暗示している。この歪みは、界面における位置合わせ(5つの格子列に対応する6つのZrB2が成長の最初の数ナノメートル以内で確立される)(Hu, et al.J. Cryst. Growth 267 (3-4), 554-563 (2004)およびTo lle, et ah, Appl. Phys. Lett. 84 (18), 3510-3512 (2004)参照)におそらく関連し、フィルムが続いてどれだけ厚く成長されても不変
に固定されるだろう。十分に厚いフィルムは、成長温度で消失する歪み(十分な緩和)を示すと予想され得る。この研究はいずれの機構も動作中であることを実証している。
【0116】
【表1】
より薄い(200nm)サンプルを20〜900℃の範囲の一連の温度まで加熱し、900℃に到達可能な回折計のAnton Paar高温ステージを用いて各温度での対応する格子パラメータを記録した。加熱は、サンプルの酸化を防ぐため、27.579KPa(4psi)の過剰圧力でUHP窒素の動的フローの不活性雰囲気条件下で行った。各温度で、フィルムは、Si(224)反射を使用して再整列させ、回折計ステージの膨張に関連する任意のサンプルのドリフトを補正した。ホウ化物フィルムの格子パラメータは、軸外ZrB2(113)逆格子空間マップ(RSM)の測定値から決定した。
表2は、ZrB2に対する観察されたフィルム格子パラメータaおよびc、Siの対応す
る格子定数a、計算緩和値a0(T)およびc0(T)、ならびに解析から得られた関連歪みε‖(T)およびε⊥(T)の温度依存性を列挙している。後者は、関連する歪みは、フィルム歪みの厚さ依存性に関して上述したのと同じ式を用いて得た。完全に緩和したZrB2フィルムのc/a比、すなわちη(T)は、どの所定の温度でも対応する平衡バル
クZrB2結晶のそれと同じであると仮定した。温度に伴うη(T)の変化は、バルクZ
rB2に対して最近測定したCTE(CTE自体の温度依存性を含む)から得た。弾性比
ξ(T)=−2C13(T)/C33(T))の温度依存性も、バルクZrB2結晶に対する
弾性定数C13(T)およびC33(T)の最近の測定値から得た(Okamoto, et al, J. Appl. Phys. 93, 88 (2003))。これは、歪みの関係ε⊥(T)=ξ(T)ε‖(T)が本願発明者らの研究の温度範囲(20〜900℃)にわたって有効であるという仮定に基づく
。
【0117】
【表2】
表2は、Matthewsによって導入された一致格子不整(coincidence lattice misfit)Fも列挙しており(Matthews, Report No. RC 4266 No. 19084, 1973、R. W. Vook, International Metals Reviews 27 (4), 209-245 (1982)、K. H. Ploog A. Trampert, Crystal Research and Technology 35 (6-7), 793- 806 (2000)参照)、本願の場合F=(5dsi-si−6aZrB2)/(6aZrB2)で定義され、式中dsi-si=asi/√2は(111)面におけるSi−Si距離である。F0はバルクZrB2パラメータを用いて計算された一致不整を示す。定義から、F+εa=F0であることは明らかである。このバルク一致不整F0は
、Okamoto(J. Appl. Phys. 93, 88 (2003)からの熱膨張データを使用して計算したが、
0.983%の室温値を有し、これはZrB2の基本格子パラメータが完全な6/5一致
のために必要とされるよりもわずかに小さいことを意味している。900℃の成長温度では、SiのCTEがZrB2の基底面より小さいため、不整が0.733%の値まで減少
する。この温度で、基底面の歪みはεa=0.26%であり、これは35%の一致不整が
ZrB2フィルム中の引張り歪みによって吸収されることを意味している。残りの65%
は、追加の不整転位により、または面間領域の歪みにより、提供される。室温まで冷却すると、一致不整は本質的に一定のままであり、これは基底面のZrB2フィルムの収縮割
合がその下のSiのそれと一致することを示している。
200nm厚のフィルムにおける歪みの温度依存性には追従挙動がはっきりと確認され、これを図4にグラフで示す。線は、成長温度での測定歪みとしたにあるSiのα軸熱膨張に等しいZrB2 α軸熱膨張とを仮定した、予想された傾向を表している。合致は優れ
ており、室温で予想より高い引張り歪み(約0.5%)が観察されたのは成長温度で引張り歪みεa=0.26%が既に存在したせいであることが確認される。
【0118】
厚さ依存性試験(表1)で生産されたサンプルがすべて室温でほぼ同じ引張り歪み(0.5%)の値を有しているという知見と組み合わせると、すべてのフィルムは成長温度で約0.26%の同じ歪み値を有すべきことが示唆される。しかしながらこれは、厚いバルク様ZrB2フィルム中の歪みが厚さの増加と共に最終的には消えなければならないとい
う予想と矛盾するように見える。
【0119】
成長温度と、冷却時とにおける厚みの関数としてのZrB2フィルムの歪状態をさらに
解明し、かつ上記課題を解決するために、より厚い400nmサンプルに対して200nmフィルム温度試験を繰り返した。その結果を表3に示すと共に、図5にグラフで示す。900℃の成長温度では200nmフィルムの基底面に+0.26%の残留歪みが観察されていたが、表3に記載されるように400nmフィルムでは対応する歪みが本質的に消えている。図5は、観察されたデータ(記号)を、400nm厚のサンプルに関して成長
温度ではゼロ歪みで、ZrB2 a軸熱膨張がSiのそれと等しいと仮定した予想された
傾向(線)と比較している。比較は、aおよびcのいずれの歪みも予想より大きいことを示し、このことはZrB2がその下のSiに対して熱的に固定されていないことを示して
いる。
【0120】
200nm厚のフィルム(図4参照)の場合、歪みの温度依存性はこのモデルを正確に辿り、エピ層とSiが同じ割合で膨張することを示した。したがって、薄いZrB2フィ
ルムの熱的挙動と厚いZrB2フィルムの熱的挙動間の最も重要な違いは、薄い200n
mサンプルはSiに追従するが、厚い400nmサンプルは追従しないということである。これは成長温度900℃では200〜400nmの範囲で「偽臨界」厚さが存在することを意味している。
【0121】
【表3】
この当惑させるような結果が厚いフィルムサンプル中の相異質性のせいでも測定誤差でもないことを立証するために、図6は、400nmフィルムの測定されたaおよびcパラメータ、計算緩和値a0およびc0、ならびに温度の関数としてのバルクZrB2に対する
格子パラメータ(実線)を示す。200nmサンプルの場合のように、400nmサンプルの緩和パラメータとバルク値の間の合致は優れており、フィルムの熱的挙動が標準ZrB2結晶の弾性特性の点から理解されるべきことが確認された。
成長温度で実質的に歪みが観察されなかったことは、より厚いサンプルのバルク様挙動を示唆している。しかしながら、もし400nmフィルムがバルク様に作用していた場合、冷却にともなってその熱膨張はバルクZrB2のそれに近づくはずである。しかし、その
反対が観察されており、バルクZrB2はというと900℃と20℃の間で|Δa|/a
=0.58%の収縮があるが、200nmフィルムでは0.405、400nmフィルムでは0.14%である。一致不整の温度依存性の試験は、厚いフィルムの挙動への何らかの洞察を提供する:200nmサンプルにおけるよりも大きな一致不整Fを犠牲にしても、成長温度ではフィルムは本質的に緩和する。しかしながら、冷却時にフィルムは、一致不整を最小限にする方法として、歪みを吸収するように見える。最終的に、室温では、一致不整は200nmフィルムにおけるのと同じ値に減少した。
【0122】
上記の観察は、Si基板とZrB2フィルムのみを含む歪エネルギー平衡状態モデルの
点からは説明することができない。追加の不整転位が400nmフィルムでの成長温度歪みを緩和すると仮定したとしても、そのような仮定は、その格子パラメータの温度依存性の単純な説明には結びつかない。説明は、自身の弾性特性および歪み状態を有する薄い界面層がエネルギー最小化に役割を果たす可能性を考慮すべきであるように思われる。
【0123】
Si(111)上のZrB2の最初の核形成は、表面下の層におけるB原子による√3
×√3 Si表面再構築を伴い、成長は「6/5」一致機構(「マジック」不整合、前掲
)を介して進行する。界面層の原子構造はSi結晶およびZrB2結晶とは異なり、バル
ク材料特性でモデル化することができない。200nmおよび400nmのフィルムの異なる挙動と、すべてのフィルムは厚さにかかわらず同じ室温歪みを有するという観察とは、弾性定数が温度依存で、恐らく非直線的に変わりさえする強い非調和の弾性特性を有する界面層を必要とする。
【0124】
実験的に、ナノメートルサイズの界面領域原子の位置は、本願発明者らのHR−XRD測定からは決定することができない。しかしながら、シリコンを走る顕著な歪み領域は、それらのサンプルから得られたHR XTEM顕微鏡写真ではっきりと見えた。実際、断面TEM試験のための薄い標本の調製で遭遇する共通の問題は、おそらく界面領域内のシリコンでの大きな歪みにより引き起こされたと思われる、基板からの厚いフィルムの層の剥離であった。
【0125】
動作のいかなる理論にも限定されるわけではないが、界面層を含む900℃の成長温度における薄いZrB2フィルムと厚いZrB2フィルムの歪み分布の略図を図7に示す。厚い緩和フィルムの場合、右パネル中のZrB2−Si界面に「黒へのフェード」コントラ
ストで示されているように、ZrB2は界面層により大きな圧縮応力を加える。上に示し
たように、この応力が最小になっているのは、厚いフィルム中の予想される室温歪みよりも歪みがより大きいことの理由である可能性がある。微細構造の観点から、歪み不整合は、約6/5一致と一致し、界面における一定数の端部転位によって提供され、これはエピ層を基板に「固定」して2つの材料間の大きな不整歪みを部分的に緩和する。したがって、ZrB2中の歪みは、フィルム成長(900℃)の初期段階の薄い開始層によって決定
されるが、この層は後続のフィルム成長用の丈夫なテンプレートとして機能する。⊥Γ格子の高い機械的堅固さが高いため、この開始層によって採用された位置合わせは、続いて成長温度におけるZrB2フィルムの残りの歪み状態を決定する。この研究では、その歪
みが厚さに依存し、一旦ゼロ歪み状態が得られると、Siの上で達成され得る厚さには減速として上限がないことを示した。
【0126】
ZrB2フィルムで観察される熱歪み挙動は、Siとの窒化物の組み込み用のバッファ
層としてのそれらの材料の使用にとって重要な意味を持つ。GaNと、サファイア、SiCおよびバルクZrB2を含む通常の基板候補との間の不整合歪みの温度依存性を、図8
の挿入図のZrB2/Si(111)と比較する。ここに示されるように、サファイアと
SiCは、これらの基板とGaNとの間の格子パラメータが大きく異なるために、いずれも全温度範囲にわたって一定の不整合歪みを示す。しかしながら、バルクZrB2の場合
、温度が増大するにつれて不整合歪みの体系的かつ顕著な減少が観察される。これは、SiCとAl2O3に比べてバルクZrB2とGaNの間では良好な格子整合があるが、前者
における不整合歪みの約10倍の熱による変化が装置に亀裂(クラッキング)や他の構造的劣化につながる可能性を示している。対照的に、Si(111)上に成長させた200nmの厚いZrB2フィルムに基づくハイブリッド基板は最小の不整合歪みを有し、これ
は約400℃消失し、実際に高温では負になる(図8のメインパネル参照)。
【0127】
本願発明者らの知る限りでは、このシステムは、考慮した基板間の全温度にわたって歪みが最小の絶対値を示す、GaN組み込み用の最初の「ゼロ不整合」テンプレートを表す。400nm厚のフィルムの場合も、歪みは他の候補基板に比べて非常に小さく、本質的に温度依存性でないことを示す(図8参照)が、これは厚いZrB2テンプレートに基づ
くGaN/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造が最小の程度の熱ストレスを受けること
を示している。全体として、これらのデータは、構造的理由および熱弾性的理由の両方で、シリコンへの窒化物の実際的な組み込みのための本願発明者らのバッファアプローチの優位性を実証している。
【0128】
実施例4
ZrB2層の光学特性
約0.2から7eVまでのエネルギー範囲におけるZrB2の誘電関数ε(ω)とその
反射率R(ω)の測定値と理論的シミュレーションとの両方の詳細な説明を、1から7eVまでの範囲の反射率プロットの種々の特性スペクトルの特徴の源を同定し、かつZrB2の金属の挙動に関連する低エネルギー(<1eV)の赤外線特性を解明するために調べ
た。
【0129】
実施例4a
ZrB2層の電子構造の計算
EXCITINGコードで実施されるフルポテンシャル化線形増強平面波法(FPLAPW)を使用して、電子構造の最先端の密度関数計算を行った。交換相関ポテンシャルのPerdew−Zungerパラメータ化と、Ceperley−Alder電子ガス汎関数のエネルギー密度とを使用した。(Perdew and Zunger, Phys. Rev. B 23, 5048 (1981)およびCeperley and Alder, Phys. Rev. Lett. 45, 566 (1980))室温でZrB2はa
=3.186Åおよびc=3.521Åの格子定数と原子位置(格子座標中)Zr:(000)、B:(1/3 2/3 1/2)(2/3 1/3 1/2でAlB2型構造(空間群P6/mmm)に
結晶化した。FPLAPW方法を使用したLDAレベルでのセルパラメータの静止格子最適化により、この平衡構造が確認されたが、体積/式単位ユニットで3.5%の過小評価に対応するわずかに縮小した格子定数(a=3.145Åおよびc=3.487Å A)を生じた。この不一致の一部は、ゼロ点エネルギーおよび振動エントロピー効果を考慮しなかったことに関連するが、これらは本研究の範囲外である。測定された光学特性とシミュレートされた光学特性との間の有意義な比較を保証するために、本願発明者らのシミュレーション研究はすべてZrB2の室温の実験構造で行なった。
【0130】
Kohn−Sham方程式の十分に収束した自己矛盾のない基底状態の解を、RMTKMAX=7(原子球体半径と格子間面波カットオフ値の積)と、格子間密度およびポテンシャ
ルの拡張における12.0の最大G−ベクトル(GMA X)と、原子球体(その半径はZrおよびBに対してそれぞれ2.0および1.45Åに設定)内の対応する密度およびポテンシャルに対するIMAX=10の角運動量カットオフ値とを使用して、FPLAPWに基
づいて得た。ブリュアンゾーン組み込みは、既約ウェッジ中の133k点に対応する12×12×12Γ中心グリッドに対する四面体法を使用して行った)。
【0131】
ZrB2のバンド構造と、対応する全体状態密度(DOS)とを、図9に示す。図は、
単位格子構造の略図と、ブリュアンゾーンのスケッチと、バンドの分散をプロットするために使用される対称性の大きいパスとを含んでいる。恐らく、電子構造の最も顕著な特徴は「偽ギャップ」であり、これはフェルミ準位(EF)の位置の周囲のDOSに谷として
現われる。ZrB2への半金属の特性の授与に加え、EF付近の比較的低いDOSがこの二成分化合物中の弱い電子フォノン結合につながることが示唆された。DOS(部分DOS)の種と角運動量の分解を図10に示す。これは、価電子バンド構造が、主としてB p−状態とZr d−状態の混合物に依存する混合ハイブリッドの性質を有することを示す。このエネルギー範囲内の最も低くに位置するバンドは、その大部分がホウ素のs−様であり、−10eV付近の約4eVの広い特徴を説明している。伝導バンド中のDOSは、EFを超えてZr d−状態から10eVまでの貢献に支配され、ホウ素のp−状態は図
面に示された高いエネルギーにおける特徴を説明している。
本がんの仕事で説明したすべてのシミュレートされた光学特性は、複素誘電関数ε(ω)=ε1(ω)+iε2(ω)から得られる。半金属ZrB2の場合、バンド間およびバンド
内遷移の両方が誘電応答に寄与し、低いエネルギーではバンド内遷移が支配的である。電子、光子、およびフォノンの間の3つの粒子の相互作用も、原則として、バンド間およびバンド内の電子遷移を生じ得る。これらの結果を組み込むと本願の仕事の範囲を超えるが
、それらはスペクトル応答に関する円滑な背景技術に本質的に貢献するものと考えられる(Smith, Phys.Rev. B, 3 1862 (1971))。この仕事では、直接のバンド間およびバンド
内遷移のみが明示的に含まれていた。誘電関数の虚数部分ε2(ω)のバンド間成分は以
下のランダム位相近似(RPA)内で得られる:
【0132】
【数2】
式中、pn,m,kは波ベクトルkにおけるバンドnからmの遷移のための運動量行列要素
であり、対応するバンドエネルギーEn(k)およびEm(k)とf(E)は占有数であ
る。次に実数部分ε1(ω)がKramers−Kronig積分から得られる:
【0133】
【数3】
直接バンド内遷移からの貢献をモデル化するために、Drude方程式εDrude(ω)
=1−ω2p/(ω2+iωΓ)を採用した。ここで、Γは寿命の延長(Γは約7fsの緩
和時間に対応して約0.11eV、以下参照)であり、ωpは以下の式で与えられる自由
電子プラズマ周波数である。
【0134】
【数4】
ZrB2のような六方対称を備えた二成分結晶の場合、光学の反応は一般に異方性であ
り、ε(ω)およびωpに対する2つの独立成分が電場極性E‖cおよびE⊥cに対応す
る。これらは適当な運動量演算子成分を用いて方程式1〜3に表されている行列要素を評価することにより得られる。
【0135】
プラズマ周波数を含めて線形の光学特性に収束させるために、非常に密度の高い40×40×40k点メッシュ(3234個の既約k点)が要求された。光学計算における空状態の数を増大させて、光学スペクトルに関係し得るより高いエネルギー遷移を捕捉した。後者のグリッドを使用すると、基底面およびc軸に平行なプラズマ周波数に対してωxxp
=4.29eVおよびωzzpω=4.06eVが得られ、等方性平均値は4.21eVで
あった。これは2130個のk点のより粗いグリッドを用いて得られた初期報告値の4.56eVよりも小さい。一旦収束を達成すると、以下のフレネル方程式を用いて上記に定義した誘電関数から両偏光の垂直入射反射率を計算した。
【0136】
【数5】
式中、nとkは
【0137】
【数6】
で定義される複素屈折率の実数部分と虚数部分である。
【0138】
【数7】
に従って平均を取ることで、誘電関数、プラズマ周波数および反射率(以下参照)の等方性の値が得られた。式中、NaおよびNcは基底面およびc軸に対応する数である。
【0139】
実施例4b
ZrB2層の楕円偏光解析法から得られた光学特性
コンピュータ制御された補償器を備えた可変角度分光楕円偏光計と、回転補償器を備えた赤外線可変角度分光楕円偏光計(IR−VASE)とを用いて、室温で分光楕円偏光解析法測定を行った(Herzinger et ah, J. Appl Phys. 83 (6), 3323-3336 (1998)参照)
。この系はフーリエ変換赤外線分光器に基づいている。いずれの機器もJ. A. Woollam Co.社製である。本願発明者らは、異なる厚み(約50nmおよび約150nm)の2つの
ZrB2サンプルについて調べた。可視光線−紫外線機器を用いて、フィルムの誘電関数
を0.03eVのステップで0.74eVから6.6eVまで決定した。2つの入射角(70°および80°)を使用された。60°の入射角での赤外線測定を150nmサンプルについて行なった。これらの測定は0.03eVから0.83eVまでをカバーした。
【0140】
ZrB2フィルムは、Si基板、フィルム層および表面層から成る3層からなるシステ
ムとしてモデル化した。ZrB2が光吸収性であるため、フィルムの厚みと光学定数との
間には強い相関性がある(McGahan, et al. Thin Solid Films 234 (1- 2), 443 (1993)
)。信頼できる光学データを抽出するために、表面層は、50%のZrB2と50%の空
隙からなる薄層としてブラッグマン(Bruggeman)近似でモデル化した(Craig F. Bohren and Donald R. Huffman, Absorption and Scattering of Light by Small Particles. (Wiley Interscience, New York, 1983), p.530)。AFM測定から得られるように、表面フィルムの厚さは、表面粗さRMS値の2倍とし、適合(フィッティング)プロセスで一定に維持しておいた。ZrB2フィルムの厚さは、RBS測定から決定した厚さからAFM
粗さRMS値を引いたものに等しくし、やはり一定に維持しておいた。最後に、Si基板の光学定数は文献から得た(Herzinger, et al, J. Appl. Phys. 83 (6), 3323-3336 (1998))。上記仮定条件では、逐点適合(フィット)(Perucchi, et al. Phys. Rev. Lett.
92 (6), 067401 (2004)参照)から得られたZrB2の光学定数を除いて、光学モデルの
パラメータをすべて一定にしている。
【0141】
モデルは等方性誘電関数テンソルを仮定しており、これはZrB2の対称によっては要
求されないが、10%以下の最大偏差で反射率中の異方性が考慮した大半のエネルギー範囲にわたって本質的に0であることを予測する上述の理論シミュレーションにより良好な近似として正当化される。フィットの首尾一貫性は、2つの上部層(二ホウ化層と表面層)の厚さを変えつつ逐点で光学定数を一定にしておくことにより確認した。フィットにより、表面層とフィルム層に対する厚さはAFMとRBSのデータに基づいて仮定された同じ値に収束した。2つのサンプルから得られた光学定数は実質的に同じであった。フィルム厚さが非常に異なるため、これはフィットの信頼度をさらに支持している。屈折率の実数部分の関する2つのサンプル間の最大偏差は、UVでΔn=0.2であり、他方、虚数部分に関しては偏差がΔk<0.1である。上記の手順を用いて得られた2つのサンプルの反射率は、実質的に同一であった。最後に、光学定数のKramers−Kronigコンシステンシーの確認は、ガウス発振器から成る光学分散モデルを用いると逐点フィット誘電関数を正確に記述できることを確認することによりなされた。
【0142】
赤外線中の複素誘電関数の実数部分と虚数部分を、図11に示す。この図から理解されるように、誘電関数は、赤外線中の一般的な金属のDrude挙動を示す。データは以下の式でフィットさせる。
【0143】
【数8】
式中、εinter(ω)はガウス発振器としてモデル化されたバンド間遷移に相当する。
また、Drude項は、プラズマ周波数ωpと緩和時間τの項で(または別の選択肢では
DC抵抗ρdcおよびτの項で)
【0144】
【数9】
として与えられる。プラズマ周波数は
【0145】
【数10】
で表され、nが伝導電子密度であり、moptが平均光学質量である。フィットパラメータ
は
【0146】
【数11】
およびτ==9.0fsである。プラズマエネルギーの値はFPLAPW−LDA予測値の
−4.21eVとよく一致する。これらのパラメータから、本願発明者らはρdc=30.6μΩcmを見出している。ZrB2単結晶中の輸送測定により、室温抵抗ρdc(300
K)=6〜10μΩcmが得られ、これはτが約30〜45fsで、残余低温抵抗ρ0=
0.5〜2μΩcmであることを意味している(Gasparov, et al, Phys. Rev. B 73 (9), 094510 (2006,)およびForzani et al, European Physical Journal B 51 (1), 29 (2006)参照)。フィルムとバルクの比較分析により、Mattiesen規則の趣旨に則り、これは本
願発明者らのフィルムがρ0=21〜25μΩcmの残余低温抵抗を有することを示唆し
ており、これはバルク単結晶におけるよりも約一桁大きい。しかしながら、我々は、フィルムから得られた光学データをバルク結晶中の輸送測定値と比較していることを強調しておく。2つ以上のDrude項により特徴付けられる光学反応を有するシステムでは、DC抵抗の輸送測定値と光学測定値の間に不一致が記された。ZrB2材料は、フェルミ準
位でいくつかのチャージポケットを備えた複雑な伝導のバンド構造を有するため、そのような例であり得る。
【0147】
これは単一のDrude項と非常によくフィットし、フィットが非常に狭い低周波範囲に限定される場合には方程式[6]のDrude式のパラメータは一定のままであるが、(本願発明者らの楕円偏光計の測定範囲を超えた)極端に低い周波数で明確となる追加のDrude項の存在を除外することができない。バルクZrB2単結晶に対する楕円偏光
計による測定により、この系における輸送データと光学データとの間の想定される不一致が明確になるはずである。
【0148】
光学的に得た抵抗を輸送データと比較可能であると仮定する場合、本願発明者らの材料の抵抗が高いのは、その薄いフィルムの性質によるものであり得る。実際、同型構造MgB2化合物でも同様の結果が観察され、サファイア基板上に成長させた400nm厚のフ
ィルム中の残留抵抗率は単結晶MgB2におけるよりも5倍大きい(Kim, et al., Phys. Rev. Lett. 87 (8), 087002 (2001)およびMasui, et el., Phys. Rev. B 65 (21), 214513 (2002)参照)
バルクZrB2結晶中の残留抵抗率は、想定されるフィルム欠陥の相対的寄与が拡大す
るMgB2と比較して非常に低い。本願発明者らがZrB2フィルムで観察した唯一の欠陥は界面に位置する歪みを緩和する端部転位である。不整合ヘテロエピタキシで一般に観察される貫通アナログは、本願発明者らの場合には存在しない。他方、界面粗さの散乱はフィルム厚dがキャリア平均自由路lよりもずっと小さい場合にはつねに重要な寄与をなすことが判っている(Guy Fishman and Daniel Calecki, Phys. Rev. Lett. 62 (11), 1302
(1989))。
【0149】
ZrB2に対するde Haas−van Alphenデータ(Forzani, et al. European Physical Journal B 51 (1), 29 (2006)参照)を使用して、フェルミ速度νF=1
.2×108cm/sを概算したところ、室温でバルク材料ではlが約50nmとなった
。si/ZrB2界面での粗さ散乱は、本願発明者らのd=150nmフィルムの抵抗率
が増大したことの主たる理由とは予想されない。同様に、上記のXRDの議論は、粒径が少なくとも500nmであることを示唆しており、その結果、粒界散乱は支配的な役割を果たさないだろう。
【0150】
近赤外線から紫外線までの誘電関数の実数部分と虚数部分を図12に示し、対応する空気反射率(Drude領域を含む)を図13に示される。上述したように、ZrB2に利
用可能な光学データは、1.4〜25eVのエネルギー範囲をカバーするOdaとFukuiの仕事であったが、これも図13にプロットし、本願のデータと比較した。3eVより低い領域で合理的な一致が見られた、より高いエネルギーでは、OdaおよびFukuiのデータでは反射率がかなり急激に降下するが、これは本願発明者らの実験データまたはシミュレーションデータ(図13のそれぞれ実線および点線)では見出されない。他方、いずれのデータセットもバンド間遷移に関連する3つの特徴のエネルギーすなわち2.6eV、4.3eVおよび5.7eVでよく一致している。
【0151】
ここに示された可視光線/紫外線反射率の値は、以前に報告されたそれよりもわずかに高い。この不一致の理由は、フィッティングプロセスでの表面層とおよびZrB2フィル
ムの厚みの変化を許容したことにあり得る。しかしながら、本願では、上述したようにRBSおよびAFM値を選択した。共通のモデルが、ZrB2およびHfxZr1-xB2合金の楕円解析測定値に適合する一般式が求められる場合には、後者アプローチの方がより一貫した結果を生じさせる。ZrB2に関する2つのフィッティング手順間の相違は、誘電関
数の楕円解析による決定に推定誤差を与える。しかしながら、赤外線反射率も、可視光線/紫外線バンド間特徴も、いずれもフィッティング手順の選択によっては影響されない。
【0152】
図13ではさらに、観察された反射率を本願発明者らのLDAシミュレーションと比較している。点線は等方性平均反射率を表わし、挿入図はZrB2c軸にそれぞれ垂直およ
び平行なE場に対応する反射率間の差として計算された異方性のプロットである。シミュレーションは、0〜10eVのへネルギー範囲の大部分にわたって反射率が本質的に等方性である
【0153】
【数12】
が、4.4および9.5eV付近に約5〜10%の有意な偏差が期待されることを予測している。この比較から理解されるように、理論反射率は、図にA(2.6eV)、B(4.3eV)およびC(5.7eV)と記した主な実験スペクトル特徴の位置を含めて、実験データをかなりうまく再現している。シミュレーションから得られるその対応値はそれぞれ2.2、4.4および5.5〜5.7eVである。エネルギーが<1eVである場合、シミュレート結果は、
【0154】
【数13】
の計算値とτ=7fsの最良フィット値を使用して観察される反射率をわずかに低く推算した。ここで得られた寿命のわずかに低い値は、反射率に対する計算されたバンド間成分および測定されたバンド間成分の間の差に関連するが、前者の場合、非経験的である。低いエネルギー範囲で理論と実験が一致するのは、実験的フィッティングで使用された単一発振器の仮定条件が良好な近似であることを示す。
【0155】
図13にA、BおよびCと記した観察されたスペクトル特徴の供給源を解明するために
、電子バンド構造の詳細な分析を行なった。エネルギーとk点インデックスに従ってバンド間遷移(図1参照)に対応する運動量行列要素を体系的にソートすることにより、バンドの組み合わせが、3つの特徴に対する主要なスペクトル重み付けにより同定された。シミュレーションによれば、これらの遷移は逆格子空間における対称の高い点では生じず、図14の各特徴に対応する各パネルの下のセグメントによって記載されるようなブリュアンゾーン内の狭い領域から生じる。ここで、パラメータκA、κBおよびκCの値はk空間
の格子座標の項の形で与えられ、点から中へ与えられる:
【0156】
【数14】
これらのプロットから、2.2eVおよび4.4eVの特徴AおよびBはをそれぞれバンド9からバンド10への遷移に関与するが、5.5〜5.7eV付近の特徴Cはバンド8からバンド11への直接のバンド間遷移に関与することが明らかである(図14の最初のパネルのバンド構造の番号付け参照)。図14に示されているグレー領域は最大運動量行列要素に対応する近似範囲を示す。
【0157】
実施例5
ZrHJB2合金
Si(111)上に直接、高品質のヘテロエピタキシャルHfxZr1-xB2(0≦x≦
1)バッファ層をエピタキシ成長させた。フィルム構造の組成依存性と最初の(アブイニシオ)弾性定数は、この六方晶HfxZr1-xB2合金層が成長されると面内引っ張り歪み
(約0.5%)を有することを示している。
【0158】
Si(111)基板を650℃でMBEチャンバ内で脱ガスし、天然酸化物を1200℃でフラッシュ洗浄することにより除去した。次にHf(BH4)4およびZr(BH4)4ガスを、フィルム厚に依存して、900℃および約1.33322〜2.66644mPa(1〜20×10-6トル)で約30〜120分間基板上で反応させた。かかる条件下でどちらの前駆体も以下の式に従って熱分解し、フィルムを生成した:
【0159】
【化3】
この関係は、アルミニウムと、前駆体をZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)のフィルムの生成に関連付ける対応する式とを含めるようにさらに一般化させ、それに従って記述することが可能である。例えば副産物としての生成ジボランまたはBH4+部分は原子Alと反応して固体AlB2を生成することが可能である。
【0160】
図15(a)は、公称厚さが50nmのZr0.70Hf0.30B2サンプルのRBSスペク
トルを示す。整列ピーク高さ対ランダムピーク高さの比(χmin)は、HfおよびZrの
いずれでも6%であり、これはそれらが合金中で完全に置換可能であると共に、Si基板に対してフィルムが高度にエピタキシャル整列していることを示している。XTEMは、層が完全に単結晶で、高度に整合しており(coherent)、原子が平坦であることを示している(図15bおよび図15c)ことを示す。
【0161】
格子不整は[1120]方向に沿って特定の{1100}面を挿入することにより、純粋な端部タイプの転位により吸収される。回折コントラスト顕微鏡写真によれば、約3μmの視野内では表面に貫通転位コアが伝搬しないことが明らかである。
【0162】
ナノメートルサイズの電子プローブを用いた電子エネルギー損失分光法(EELS)によると、個々の合金成分が分離することなく検針したナノメートルスケール領域ごとで、構成成分であるZrおよびHf要素が共に現われることが示された。原子力顕微鏡(AFM)によると、バッファ層の用途に非常に呈した5×5μm2面積に対し約2nmの粗さ
を備えた滑らかな表面が明らかとなった。表面形態は、900℃および約0.133322μPa(10-9トル)で8時間フィルムを実験室内アニーリングすることによりさらに改善され、これにより粗さ1.5nm、ステップごとに接続された大きな原子平坦領域からなる表面が得られる。
【0163】
特徴付けされたすべてのZr1-xHfxB2フィルムに対し、HR−XRD軸上走査を行
ったところ、Si(111)と平行(0001)に配向されたAlB2構造の(001)
および(002)ピークが示された。二ホウ化物のZrHfAlB2ファミリーは、一般
に「AlB2」構造と呼ばれる層状構造を有している。(002)ピークは、これは合金
の組成の変化により感度が高いが、純ZrB2のピークから大幅に移動していた。これら
のピークの分割や広がりのなさは、格子中のHfおよびZr原子の両方の完全な置換性の確証となっている。(001)および(002)反射の付近に厚さ縞が観察され、高品質な界面と層の均質性および平滑性が確認された。AlB2構造の非対称(−113)逆格
子空間マップから正確なaおよびc格子パラメータが導出され、約50±5nmの厚さみを有するサンプルに対するそれらの格子パラメータが表1に与えられる。歪みのため、これらの測定された格子パラメータは緩和六方格子パラメータa0およびC0とは一致していない。
基板表面に垂直に配向された[0001]面を有する六方晶フィルムの場合、垂直(εc
)および平行(εa)歪みがεc=−2C13εa/C33で与えられ、εc=(c−c0)/c0
およびεa=(a−a0)/a0である。C13およびC33は弾性テンソルである。バルクZrB2とHrB2の場合、既知のc/a比(ηによって以下に表示)はわずかに異なる(それぞれ1.114および1.108)である。したがって、歪み状態を決定するため、以下の近似がなされた:(i)緩和エピタキシャルフィルムのηは平衡バルク結晶のそれと同じである、(ii)c/a比(η)および弾性比ξ=−2C13/C33はいずれも組成の線形関数であり、それぞれη(x)=xηHfB2+(1−x)ηZrB2およびξ(x)=xξHfB2+(1−x)ξZrB2である。ZrB2とHfB2の両方の弾性定数が一般にあまり知られていないため、平衡化された系の有限歪み変形を使用してそれらの弾性常数を計算するためにVienna ab initio simulation package (VASP)DFTコード(いずれも
本願に援用するG. Kresse and J. Furthmuller in Phys. Rev. B 54, 11169 (1996)およ
び G. Kresse and J. Furthmuller, in Comput. Mater. Sci. 6, 15 (1996)に記載)を使用した。六方晶遷移金属材料の弾性定数の理論についてのさらなる情報は本願に援用される(Fast et ah, in Phys. Rev. B 41, 17431 (1995))より得た。歪み関係の反転から、その後、緩和格子定数は、a0(x)={c(x)η(x)−ξ(x)a(x)}/{1
−ξ(x)およびc0(x)=η(x)・ao(x)で与えられ、これらを表4(以下)
に列挙する。端部メンバーの緩和フィルム格子定数は、バルク相に対する既知値と一致する。これは上記近似をさらに補足正当化する。
【0164】
合金用の緩和格子定数は、Vegardの法則に非常に緊密に追跡する。本願発明者らの分析によると、ZrB2および合金フィルムはわずかな引張り歪み(εa約+0.50%およびεc約−0.29%)しか示さないが、HfB2フィルムはもっと歪んでいる(εa
約+0.66%およびεc約−0.36%)ことが示される。ZrB2フィルム(ZrB2
を含む)が引張り歪みを受けていることが分かったという事実は、これはGaが豊富な金属により良好に適合するため、格子エンジニアリングにとって重要な意味を持つ。詳細には、ZrB2フィルムの測定値は、GaNのそれと本質的に同一である。
【0165】
図16(a)は、厚さ85nmのZrB2バッファ層上で成長させた厚さ45nmのH
f0.5Zr0.5B2合金に対して得られたラザフォード後方散乱(RBS)スペクトルを示
す。ZrとHfはいずれもは、高い整合度(追跡量が低い)を示し、これは高い結晶性および完全なエピタキシャル位置合わせと一致している。図16(b)は、ヘテロ構造内の正確な格子定数値を示すHf0.5Zr0.5B2およびZrB2バッファ層の(113)ピークの高解像度X線逆格子空間マップを示す。
【0166】
実施例6
エピタキシャルZrxHfyAl1-x-yB2層
)原子Al源の包含により上述の例の方法によりZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)の例証的なフィルムを成長させ、ラザフォード後方散乱(RBS)、高解像度断面透過電子顕微鏡法(XTEM)、Zコントラスト画像診断および高解像度X線回析(HR−XRD)により特徴付けた。このような調整可能で構造的で熱弾性で光学的な性質により、ZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)テンプレートはSiへのIII窒化物の広範な組み込みに適したものであることが示唆される。実施形態の一例として、ZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)フィルムをy=0(すなわちジルコニウムとハフニウムの合金)で成長させた。
【0167】
実施例7
HfB2/ZrB2/Si(111)
高品質HfB2フィルムを、歪みを補償するZrB2バッファSi(111)上でも成長させた。厚いZrB2フィルムの最初の反射率測定値は、HfB2の反射率がZrB2に比
べて約2〜8電子ボルト(eV)のエネルギー範囲で20%分増加すると予測する基本原則計算に一致している。波長(λ)(マイクロメートル(μm)で測定)は、
λ(μm)=1.24/エネルギー(eV)
という関係を介してエネルギーと相互に関連付けられる。
【0168】
上述のように、成長速度の同時減少(純HfB2の場合約0.5nm/min)ととも
に、Hfが豊富な組成様式で面内歪みが体系的に増大する。歪みの増大によって反応性および表面の移動性が減少する。実際HfB2の場合、Si(111)上での成長によって
、大きな表面の凹凸(AFM粗さ>15nm)を有するほぼ排他的に粗いフィルムが最終的に生じる。成長は、この場合、合金に対して上述したのと同様な条件下で純Hf(BH4)4の分解によって900℃で行った。RBSとXTEMのデータによって、大きな島の集合によって占められる優勢に粗い層の存在が確認された。しかしながら、フィルム歪みがわずかに大きい(表4参照)にもかかわらず、データは、鋭く釣り合った界面を備えた化学量論的な整列された材料も示した(および)。XRD軸外測定の結果、a=3.160Åおよびc=3.467Åであり、これはSi基板にかかる歪みのため、バルクHfB2a==3.142Å、c=3.48Åよりも大きい/小さい。
【0169】
さらに、窒化物の組み込みに適したフィルムの生成を促進するために、(Si(111)表面上に直接ではなく)同族構造ZrB2バッファ上へのHfB2フィルムの成長が追求された。これらのHfB2フィルムは、非常に容易に成長し(約2nm/分)し、平坦面
(AFM粗さ約2nm)、高度に整合した界面、および実質的に欠陥のない微細構造を含む、例外的な形態および構造特性を示す。XRD測定値は、層が部分的に歪み、格子パラメータがSi上で成長されたHfB2のそれに近いことを示している(表4)。
【0170】
【表4】
Hf(BH4)4の分解を介した酸化Si上での薄いHfB2層の成長がJayaram
anらによって報告されている(本願に援用するJayaraman et al, Surf. Coat. Tech. 200(22-23), 6629 (2006))が、エピタキシの証拠がなかった。XTEMデータは、ZrB2バッファがHfB2とSiの間に歪みの差を架け渡し、Si上で直接得られない完全エピタキシャルHfB2フィルムの形成を許容することを示している。したがって、基板の上
にエピタキシ堆積されたZrB2層上に続くZrHfAlB2二ホウ化フィルムはエピタキシ堆積され、続く二ホウ化フィルムの成長を促進する。界面におけるZrおよびHfのXTEM Z−コントラスト画像およびEELSプロファイルは、ZrB2からHfB2まで要素が急激に遷移していることを示し、2つの材料の間にナノメートル規模で混ざっている証拠はなかった。(図17)
【0171】
実施例8
Zr1-xHfxB2/ZrB2/Si(111)
ガス源MBEによるHf(BH4)4およびZr(BH4)4前駆体の反応を介して、均質範囲全体にわたる組成を有するZr1-xHfxB2合金を生産した。成長は上述と同様の手
順を使用して行なった。簡単に説明すると、新たに調製したHf(BH4)4およびZr(BH4)4ガス前駆体を研究グレードのH2で2堆積%にて希釈し、合金の最終組成を決定
することが判っている望ましいモル比で混合することによりストック混合物を得る。各堆積の前に、混合物をガスIRでチェックし、これにより延長期間の間維持された時でさえ個々の成分が反応したり分解したりしないことを確認した。表面から有機不純物を除去するために、Si(111)基板をメタノールで超音波処理し、次に、MBEチャンバにロードした。圧力が基底値の約0.13322μPa(10-9トル)に戻るまで650℃で脱ガスし、天然酸化物を1200℃でフラッシュ洗浄することにより除去した。反応は、目標フィルム組成および厚さに依存して、900℃の温度および約0.33322mPa〜約6.6644mPa(1×10-6〜2×10-5トル)の範囲の圧力で、2〜5時間行った。
【0172】
サンプルの組成および形態の特性は、HfB2/ZrB2/Si(111)の系に対して上述したのと同じ技術を使用して特徴付けた。また、一般にデータは、同様の質を有する材料を示した。ここで、本願発明者らは、(113)逆格子空間マップの測定によって得
られた選択されたHfxZr1-xB2/ZrB2/Si(111)およびHfyZr1-yB2/
HfxZr1-xB2/Si(111)サンプル(y>x)の歪み挙動に注目する。典型的な
例は、35nm厚ZrB2バッファ上に成長させた約300nm厚Hf0.25Zr0.7B2合
金から成るHfxZr1-xB2/ZrB2/Si(111)サンプルを含んでいる。バッファの面内格子定数(3.1699Å)は、同じ厚さで成長させたZrB2/Si(111)
サンプルで観察されるそれ(3.189A)よりも小さいが、これはHf0.25Zr0.7B2オーバレイヤが下にあるZrB2テンプレートに圧縮を引き起こしたことを示している。
Hf0.25Zr0.7B2の格子定数(3.1692Å)が緩和合金の値(3.160Å)よりも大幅に大きいのは、オーバレイヤが引張り歪みを受けていることを示す。全体としてこれらの結果は、エピ層がそれより薄いバッファ層を圧縮し、バッファ層がエピ層に引張り歪みを引き起こすという一般的な挙動に示す。従って、Hf0.25Zr0.7B2フィルム全体は高度に整合しており(coherent)、基板に対して引張り歪みを受けている。
【0173】
上記サンプルの歪み特性を、オーバレイヤが有意に高いHf含量を有すると共にバッファよりもずっと薄い(それぞれ45および80nm)Hf0.5Zr0.5B2/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造と比較した。測定された面内格子定数はそれぞれ3.183Åおよび3.186Åであり、2つの層が本質的に格子整合していることを示している。
【0174】
先のサンプルとは対照的に、今回の場合のエピ層は、元の歪み状態に比べてHf含量は高いがバッファの格子定数は本質的に変化しない(=3.189Å)大きな格子定数を示す。この観察は、より厚いバッファがオーバレイヤに大きな引張り歪みを加え、スタック全体が基板に対して引張り歪みを受けることを示している。本明細書で説明したいずれの例でも、結合されたホウ化物層の歪み状態は、期待通り、個々の層の厚さと組成に密接に依存する。
【0175】
実施例9
HfB2/ZrB2/Siの光学特性
RBSによって測定されると約70nmのHfB2厚さと約70nmのZrBを有する
ように先の例に従って調製されたHfB2/ZrB2/Siサンプルの分光楕円偏光解析測定を行った。誘電関数は3つの入射角:65°、70°および75°を使用して0.02eVのステップで0.74eVから6.6eVまで測定した。0.03eVから0.83eVまでの間の測定は、3つの入射角:65°、70°および75°を使用して赤外線楕円偏光計で行なった。HfB2/ZrB2/Siスタックを、Si基板、ZrB2バッファ
層、界面粗さ層、フィルム層および表面層から成る5層からなる系としてモデル化した。ZrB2の場合のように、表面層を、50%のZrB2と50%の空隙からなる薄層としてブラッグマン(Bruggeman)近似でモデル化した。AFM測定から得られるように、表面フ
ィルムの厚さは、表面粗さRMS値の2倍とし、適合(フィッティング)プロセスで一定に維持しておいた。HfB2フィルムの厚さは、RBS測定から決定した厚さからAFM
粗さRMS値を引いたものに等しくし、やはり一定に維持しておいた。バッファに関し、本願発明者らは先の研究で記載されたZrB2の光学常数を使用した。HfB2の光学定数は、逐点適合から得られた、等方性誘電関数テンソルを仮定した。
【0176】
さらに、HfxZr1-xB2バッファ層上で成長させた追加ZrB2キャップ層とHfB2
層とを備えたサンプルについて調べた。これらのサンプルから得られた赤外線データは実験誤差内で一致するが、可視光線/紫外線のHfB2の誘電関数はサンプル依存的に見え
る。本願発明者らは、赤外線の結果を図18に、HfB2/HfxZr1-xB2/Si(111)サンプルの可視光線−紫外線データを図19に示す。図20で、対応する反射率をZrB2のそれと比較する。2eV〜6eVの間の微細構造は、反射率の絶対値が多少異な
るにもかかわらず、またエネルギーがZrBに対してシフトしているにもかかわらず、同じエネルギーではすべてのHfB2サンプルと一致しているように思われる。これはバン
ド間遷移の点での説明と一致している。別の箇所でも示される一連のHfxZr1-xB2合
金サンプルから得られた結果は、ZrB2とHfB2の間でエネルギーが滑らかな組成依存性を有することを示す。
【0177】
HfB2の赤外線誘電関数の分析は、上述のZrB2研究に類似していた。データフィットはDrude項を含み、適合パラメータはhωp=4.27eVおよびτ=7.5fs
である。これらのパラメータから、本願発明者らはρdc=35.6μΩcmを見出した。バルクHfB2の報告された室温抵抗率はρdc(298 K)=8.8μΩcmであり、
結果はZrB2フィルムから得られたものと非常に類似していた。
【0178】
実施例10
ミスカットSi(IIl)ウェハ上の成長
先の例で説明したバッファ層アプローチは材料の有意な改良への体系的な直接の道筋を提供しているが、他の場合には達成できないHfに富んだ系に対する重要な構造的な光学データを生じたが、残留歪みの存在および多数ステップからなる処理の必要性が、より大規模な組み込みスキームにとって現実的な別の研究を刺激した。
【0179】
すぐれた形態品質を有するHfxZr1-xB2フィルムを、約4℃でミスカットされたS
iウェハ上に直接成長できることが予期せずして判明した(図21)。この技術により、アーティファクトや曖昧さのない誘電関数分光楕円偏光解析測定に適した顕著に均質な表面粗さを備えた厚いフィルムの成長が許容される。これは、初めて大規模な形式である約4℃でミスカットされたSiウェハ上に直接成長可能な重要な新たな開発である。
【0180】
実施例11
エピタキシャル層GaN/ZrB2/Si(111)上のIII群窒化物の成長
GaNを、バッファ層上でエピタキシ成長させた。層は化学蒸着法(CVD)により成長されたが、窒化物のエピタキシ成長のための他の技術を使用してもよい。
【0181】
典型的な実験では、Si(111)基板表面を1150℃および約52.3288nPa(4×10-10トル)にフラッシュ洗浄することにより清掃した。その直後、Zr(B
H4)4の分解により厚いZrB2(0001)バッファ層(100nm)を900℃で成
長させた。GaNの後の成長は、室温で化合物の蒸気圧により確立された2×10-7の圧力で、基板表面から2cm離して配置したノズルにより単一供給源のH2GaN3またはD2GaN3前駆体を導入することにより行った。公称厚さが500nmのフィルムは550℃で生産し、約2nmのRMS粗さの平坦表面を示すと共に、XTEM顕微鏡写真の視界内に貫通欠陥がない高度に整列された微細構造を示す。この方法によって生産された材料の品質は、その発光特性にも反映され、これは1050℃でMOCVDによりサファイア上に成長された非ドープGaNフィルムに匹敵する。
【0182】
図22は、本発明によるGaN/ZrB2/Si(111)半導体構造の断面透過電子
顕微鏡(XTEM)画像を示す。図23は、本発明によるGaN/ZrB2/Si(11
1)半導体構造のPLスペクトルである。CVD成長温度は550℃であったが、他の成長温度を用いてもよい。フィルムは、単相六方晶GaNに対するバンド端発光を示す強いフォトルミネセンス(PL)を示す。15nmのFWHMで10KのPLピークが359nmに位置するが、これはGaNフィルムの低温PLに通常関連する3.47eVの中立ドナー束縛励起子D0Xラインに近い。560℃の周囲では室温でも低温PLでも黄色ル
ミネセンスは見出されていない。
【0183】
実施例12
エピタキシャル層AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)上のIII群窒化物
の成長
AlGaNオーバレイヤを実施例11の構造に施し、図24(a)に示すようなクヌーセンセルから蒸発させたD2GaNs蒸気およびAl元素(純度99.999%)の熱活性化反応によりAlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造を形成した。基
板材料におけるAl原始の反応流速(約1〜3Å/分)を結晶厚さ監視装置を用いて測定した。D2GaNs蒸気は、約26.6644〜106.6576μPa(2〜8×10-7トル)の圧力範囲で漏れバルブを通じてチャンバに導入した。これらの条件下で、かつ700℃に維持した基板温度で、完全に均質で単結晶の合金フィルムが生産された。
【0184】
公称150nm厚さの透明フィルムを堆積させるためのこの方法によるAlGaN層の成長速度は約4nm/分だった。ラザフォード後方散乱分光測定法(RBS)を用いて、要素の組成を決定し、かつフィルム厚を推算した。結果、反応環境中のD2GaNsおよびAlガス種の流束比を調節により、約2〜10%の範囲で終産物中のAl含量が体系的に調節されることが示された。RBSの決定される組成は、Ga1-xAlxN系で完全なベ
ガード法則の挙動をとると仮定すれば、(002)および(004)反射の高解像度XRD測定値により確証された。
【0185】
150nm厚のAl0.08Ga0.92Nフィルムからの光電子放出は、走査型電子顕微鏡に適合させた陰極線発光(CL)分光計を用いて得られた。図24は、Al0.10Ga0.90Nの組成に相当する346nmに最大波長を有する強いバンドギャップ放射ピークを示す典型的なCLスペクトルを示す。ピークFWHMは20nmであり、D2GaNsの分解によってZrB2上に成長させられる純GaNのそれに匹敵する。おそらく下にGaNバッフ
ァ層が存在するため、追加の弱いショルダが375nmで観察される。選択波長のCL信号サンプルを収集すると同時にサンプル表面をラスターすることにより、SEM/CL装置の走査特徴も使用して、フィルムの空間一様性および組成の均質性が調べられた。これらの実験では、最大ピーク値(346nm)、純GaN(358nm)および合金最大値よりも僅かに低い対照値(339nm)に対応して3つの波長をモニタした。これらの波長における空間強度分布は同じだあり、約5nmの側方スケールで合金が高度に一様な組成を有することが判った。
【0186】
実施例13
エピタキシャル層AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)上のIII群窒化物
の成長
先の実施例と同様に、AlGaNオーバレイヤを実施例11の構造に施し、AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造を形成した。今回の実施例の場合、基板
に隣接するGaN層を、H2GaN3化合物の単一供給源の堆積により、550〜600℃で形成した。
【0187】
AlGaNオーバレイヤは、H2GaN3蒸気と、放出セルで固体供給源から生成された滲出液セルのAl原子ビームとの反応によって形成された。この方法は、高エネルギーの単一供給源CVDと従来の分子線エピタキシとを組み合わせることにより、先例がない低温(600℃)の成長条件を許容した。
【0188】
実施例14
AlGaN/GaN/ZrB2成長の理論シミュレーション
吸収Ga3N3ユニットからAlでGa原子を置換することによるGaN/ZrB2でバ
ッファしたSi上でのAlGaNの成長を、AlGaNの形成につながる置換反応機構を解明するために研究した。最初に、(D2GaNs)sの三量体前駆体の安定性を調べ、Z
rB2表面とのその後の相互作用を、第1原理密度関数理論(DFT)を用いてモデル化
した。データは、インタクトのGasNsユニットがN原子を介してZrで終端する表面に
強く結合し、これらのユニットがAlGaNを形成するAlによるGaの後の置換用反応部位として機能することを示した。
【0189】
本願発明者らの第1原理DFT計算はすべてVASPコードを使用してGGAレベルで行なわれた。すべての場合で350eVの平面波カットオフと単一のγ点κ空間統合を使用した。10.978×12.626×35.3Å寸法の計算セルを使用して、約22Åの介在真空空間を有する結晶のZrB2の5つのスラブを表した。最初の未反応の形状は
、真空領域の中心でスラブの周囲に(D2GaN3)3分子を配置することにより表わした
。反応後の形状は、同じ真空領域に分解副産物D2とN2を一様に配置し、表面付近に(GaN)3の構造ブロックを配置することで初期化した。三量体および単量体の分子構造の
ための自由分子計算により、空のスーパーセル内にユニットを配置して近似した。計算上の誤差はすべての計算に同一の条件(セル寸法、平面波カットオフ値、収束基準)を使用することにより最小限にした。
【0190】
計算は、三量体(D2GaN3)3が対応するD2GaN3の単量体要素よりも4.8eV
だけ熱力学的に安定していることを示した。これにより、吸着プロセスと後の結晶成長が、単量体由来の個々のGaNユニットに関与するのではなく、(D2GaN3)3の(Ga
N)3分子コア全体に関与することが確認される。
【0191】
成長プロセスの初期ステップを、5層ZrB2(0001)スラブの自由ZrおよびB
終端表面上への(D2GaN3)3の吸着をシミュレートによりモデル化した。ZrB2基板に結合する(GaN)3の構造ブロックは、ガス(D2GaN3)3化合物からN2およびD2を加熱除去することにより生成される。このプロセスをシミュレートするために、スラブの上の分離(D2GaN3)3分子のエネルギーを、D2とN2の副産物生成を含む表面に結
合した(GaN)3環状コアのエネルギーと比較することにより、正味の反応エネルギー
を計算した。
【0192】
これに関し、4つの可能な同一平面内(コプレーナ)(GaN)3−ZrB2(0001)結合配向と関連するエネルギーを調べた。これには、ZrB2(0001)の自由ジル
コニウムまたはホウ素終端表面のいずれかに結合する(GaN)3のGaまたはN原子が
含まれる。最も優勢な反応は、(GaN)3の3つのN原子がZrで終端するZrB2表面に結合されるものに関することが判る。この場合、計算により、1つの(GaN)3ユニ
ット当たり約−4.5eVの正味の反応エネルギーを産出した。これは1つのZr−N結合当たり1.5eVに相当し、これは対応するバルクGaN−ZrB2界面に見出される
約1.6eVの計算されたZr−N結合エネルギーに匹敵する。結果は、予め形成された(GaN)3構造ブロックが、完全に釣り合った高度に化学量論的なGaN−ZrB2界面を形成するための、本来的に正確なGa−N組成と、正確な結合配置と、熱力学的駆動力とを本質的に有することが示された。界面でのZr−B−Nの生成につながるいかなる二次反応も、フィルムに(GaN)3全体を組み込むことにより効果的に抑制される。
【0193】
特定の実施形態を本明細書で図示すると共に説明したが、同じ目的を達成することが意図される配置であればいかなるものも示された特定の実施形態の代わりに用いられ得ることが当業者には理解されるだろう。本願は、本発明の実施形態のいかなる適応物または変形物をも包含するものとする。上記説明は例示であって限定ではなく、本明細書で使用される語法または用語は説明を目的とするものであって限定ではない。上記の実施形態および他の実施形態の組み合わせが上記説明を検討した当業者では明らかである。本発明の範囲は、上記構造の実施形態および製造方法が使用されるいかなる他の適用例も包含する。本発明の実施形態の範囲は、かかる実施形態に関連する請求項と、そのような請求項に対する等価物の範囲全体とを考慮して決定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、固体支持体上にIII−N群材料を調製する際のエピタキシャルバッファ層の調製および使用に関する。より詳細には、本発明は、III−N群オーバレイヤの調製に使用される半導体基板上のエピタキシャル二ホウ化バッファ層の使用に関する。
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)の下、いずれもその全体が本明細書に援用される2007年1月4日出願の米国仮出願出願番号第60/883,477号および2007年9月17日出願の米国仮出願出願番号第60/973,002号の出願日の利益を主張する。
(政府資金についての記載)
本明細書に記載した発明は、米国国立科学財団(NSF)により許可された許可番号第EEC−0438400号の下、一部政府支援により成された。米国政府は本発明に関し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
III群窒化物材料には、ガリウム窒化物(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、インジウム窒化物(InN)、およびアルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)、インジウムガリウム窒化物(InGaN)ならびにアルミニウムインジウムガリウム窒化物(AlInGaN)等のそれらの合金が含まれる。これらの材料は、広い直接のバンドギャップを有する半導体化合物であり、このため非常に活発な電子遷移が起こる。そのような電子遷移によって、青色光と紫外線を効率的に放射する能力や高周波で信号を送信する能力等を含む多くの魅力的な特性を有するIII群窒化物材料が生じ得る。従って、III群窒化物材料はトランジスタ等の超小型電子装置およびレーザーダイオードや発光ダイオード(LED)等のオプトエレクトロニクス装置を含む多くの半導体素子の用途で広く研究されている。
【0003】
III群窒化物材料は、サファイア、シリコン(Si)および炭化ケイ素(SiC)を含む多くの種々の基板の上にこれまで形成されていた。そして、III群窒化物材料領域内にドープ領域等の半導体構造が形成され得る。Si基板の上にGaN等のIII群窒化物を成長させることには多くの利点があり、そのうちの重要な1つはSiベースのエレクトロニクスと統合して基板の非常に大きな面積を利用できることである。しかしながら、以前には、Si基板上にIII群窒化物を形成した半導体構造には顕著な欠点が存在した。かかる構造は複雑で生産に高い費用がかかった。さらに、シリコン基板上にIII群窒化物が形成された発光オプトエレクトロニクス装置は、サファイア基板の上方に形成された装置ほどに効率が良くなかった。オプトエレクトロニクスの用途では、Siは紫外線(UV)領域の約45%を吸収するが、サファイアは全く透明である(非特許文献1)。したがって、サファイアが基板として使用される場合よりもSi(111)が基板として使用される場合には、III群窒化物ベースの発光オプトエレクトロニクス装置はあまり効率的ではないと思われる。
【0004】
GaNを含めたIII群窒化物の成長は、金属有機化学蒸着法(MOCVD)および分子線エピタキシ(MBE)法を用いたヘテロエピタキシにより最も一般的に行われている。使用される基板は、通常、GaNとの格子不整合がそれぞれ16%および3.6%であるサファイアおよびα−SiC(0001)である。熱膨張度が不整合な状態で結合されると、ヘテロエピタキシ成長中にGaNで生じた不適合な転位によって窒化物ベースのエ
レクトロニクスの最終的な性能が制限される。転位密度を改善するためにパターン化された基板を伴う種々の成長スキームが開発されており、このような成長スキームには、例えば、非特許文献2に記載された側方過成長エピタキシ(ELOG)や、非特許文献3に記載されたpendeoエピタキシ(PE)が含まれる。格子整合基板の探究が続けられている。非特許文献4に記載されているように高圧下で成長させたバルクGaN結晶が基板として使用されているがこの基板は小規模であるという障害がある。ホモエピタキシへの別のアプローチは、非特許文献5に記載されている水素化物気相エピタキシ(HVPE)による厚いGaN層の成長であり、これは非特許文献5に記載されている。しかしながら、これらの基板は結晶度が低く、層の歪みが大きいためにしばしばクラックや他の不適切な形態を発達させる。
非特許文献6は、二ホウ化ジルコニウムの単結晶すなわちZrB2(0001)を成長さ
せて導電性格子整合基板を提供することについて記載している。ZrB2は格子定数a=
3.169Åおよびc=3.530Åの六方晶構造を有している。面内格子定数はGaN(a=3.189Å)のそれに対して約0.6%の不整合を有している。基礎面の[1010]に沿った熱膨張係数はZrB2とGaNの間でよく整合しており、それぞれ5.9
x10-6K-1および5.6x10-6K-1である。ZrB22とGaNの間のこのような熱
的性質の類似性は、GaNでの転位密度および二軸歪みの両方の低減につながり得ることを示唆しているが、重要な欠点がいまだGaNフィルムの成長用基板としてのZrB2(
0001)の使用を制限している。そのような1つの欠点はZrB2の融点が3220℃
であるためZrB2の単結晶の調製に高温を要することである。非特許文献7に記載され
ているようなフロートゾーン方法が開発されており、ここでは直径1cmの棒がZrB2
粉末から1700℃で平衡にプレスされ、高周波(RF)加熱によりフローティングゾーンで溶融される。非特許文献6および7に記載されているように、溶融ゾーンは長さ約0.5cmであり、毎時2−3cmの成長速度が得られたが、成長されるZrB2単結晶基
板にはサイズの制約がある。
【0005】
ZrB2のそのような結晶の一般的なサイズは、直径1cmおよび長さ6cmである。
MBEおよびMOCVDを使用したZrB2のそのような単結晶上でのエピタキシャルで
歪みのないGaNおよびAlNの成長が非特許文献8および9にそれぞれ記載されている。しかしながら、ZrB2基板のサイズの制約は未解決な問題として残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Aspnes, et al. Phys. Rev. B 27, 985 (1983)
【非特許文献2】Kato, et al. J. Cryst. Growth 144, 133 (1994)
【非特許文献3】Linthicum et al, Appl. Phys. Lett. 75, 196 (1999).
【非特許文献4】Porowski, J. Cryst. Growth 189/190, 153 (1998)
【非特許文献5】Molnar, et al, J. Cryst. Growth 178, 147 (1997)
【非特許文献6】Kinoshita et al. Jpn. J. Appl. Phys., pt. 2, 40, L 1280 (2001)
【非特許文献7】Otani, et al, J. Cryst. Growth 165, 319 (1996)
【非特許文献8】Suda et al, J. Cryst. Growth 237-239, 1114 (2002)
【非特許文献9】Liu et al, Appl Phys. Lett. 81, 3182 (2002)
【発明の概要】
【0007】
第1態様において、本発明は、基板および基板の上方に形成されたエピタキシャル層を備えた半導体構造であって、エピタキシャル層がB(ホウ素)とZr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素とを含み、エピタキシャル層が50nmよりも大きい厚さを有する半導体構造を提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、基板の上方にエピタキシャルバッファ層を形成する方法であって、基板上にエピタキシャルバッファ層を堆積させるのに適した温度および圧力で基板を前駆体ガスと接触させることからなり、エピタキシャルバッファ層は約50nmより大きな厚さを有し、前駆体ガスは(i)約0.1〜5v/v%のZr(BH4)4およびHf(BH4)4、Al源、またはそれらの混合物と、(ii)水素とを含む方法を提供する。
【0009】
第3態様では、本発明は、基板の上方にIII群窒化物を組み込む方法であって、基板の上方に約50nmより大きな厚さを有するZr、Hf、Alの二ホウ化物またはそれらの混合物からなるバッファ層を形成することと、バッファ層上にIII群窒化物層を形成することとからなる方法を提供する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、基板の上方にAlxGa1-xN層を形成する方法であって、AlxGa1-xN層を形成する温度および圧力で、Al源の存在下で、基板をH2GaN3、D2GaN3、またはそれらの混合物と接触させることからなり、前記温度は約800未満である方法を提供する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、バッファ層の反射率を調節する方法であって、約50nmより大きな厚さと基板よりも大きな反射率とを有する組成HfxZr1-xB2の合金バッフ
ァ層を形成することからなり、xは0から1までの間の所定値であり、バッファ層の反射率はバッファ層と同程度の厚さを有するZrB2の層より大きい方法を提供する。
【0012】
第6の態様では、本発明は、バッファ層の格子定数を調節する方法であって、約50nmより大きな厚さを有する組成HfxZr1-xB2の合金バッファ層を形成することと、バ
ッファ層上に活性層を形成することからなり、xは0から1までの間の所定値であり、活性層はバッファ層と格子整合している方法を提供する。
【0013】
第7の態様では、本発明は、基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備えた半導体構造であって、前記複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい半導体構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】基板と、基板の上方に形成された本明細書に記載の本発明の層と、を備えた本発明の例証的な半導体構造。
【図2】基板と、基板の上方に形成された本明細書に記載の本発明の層と、本発明の層の上方に形成された活性層とを備えた本発明の例証的な半導体構造。
【図3】厚いZrB2フィルムからの典型的な高解像度XTEM顕微鏡写真。
【図4】200nmの厚いZrB2フィルムに対する温度の関数としての測定a軸(四角)およびc軸(丸)歪みを示すグラフ。
【図5】400nmの厚いZrB2フィルムに対する温度の関数としての測定a軸(正方形)およびc軸(丸)歪みを示すグラフ。
【図6】計算された緩和値(白丸)および文献由来のバルクデータ(実線)に対するZrB2フィルム(黒四角)の測定a軸およびc軸格子定数の温度依存性を示すグラフ。
【図7】900℃の成長温度での薄いZrB2/Siヘテロ構造と厚いZrB2/Siヘテロ構造の歪み分布を示す略図。
【図8】ZrB2/Si(111)フィルムおよびバルクZrB2基板とのGaNの不整合歪みの温度依存性の比較。
【図9】(a)は、ZrB2の電子バンド構造(水平線はフェルミ準位を示す)、(b)は、半金属特性を示すZrB2の状態密度、(c)は、バンド構造プロットで使用されるブリュアンゾーンの「道路マップ」、(d)は、ZrB2(Zr原子は青、B原子はピンク)の結晶構造。
【図10】サイト(Zr,B)による、および角運動量特性による状態密度の分解を示すグラフ。上部パネルは格子間寄与のプロット。
【図11】Si(111)上に成長したZrB2フィルムの赤外線複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。
【図12】Si(111)上に成長したZrB2フィルムの可視−UV複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。
【図13】偏光解析法の赤外線、可視光線および紫外線由来のSi(111)(実線)上に成長したZrB2フィルムの反射率プロットを示すグラフ。点線は全電子FPLAPW−DFTシミュレーションであり、一点鎖線はOdaとFukuiによって得られるようなバルクZrB2結晶からの反射率データ。挿入図は、理論に基づく反射率の水晶である(R‖とR⊥はそれぞれ基底面に水平および垂直な偏光の反射率である)。
【図14】2.2、4.4および5.5eVの反射率で見出されたスペクトル特徴を有する電子源を示すZrB2のバンド図のグラフ。網掛け領域はバンド間遷移、すなわちスペクトル特徴に対する運動量行列要素の寄与が最大になるk空間の位置を示す。
【図15(a)】本発明によりSi(111)上に直接成長させたZr0.70Hf0.30B2フィルムのRBSスペクトル。
【図15(b)】Zr0.70Hf0.30B2/Si(111)由来のX線回折(XRD)(113)逆格子空間マップ。
【図15(c)】欠陥がない微細構造と滑らかな表面とを示す層全体の回折コントラストの顕微鏡写真。挿入図は、完全エピタキシャル界面の高解像度画像を示す。
【図16(a)】ZrB2バッファ層上に成長させたHf0.5Zr0.5B2合金層のRBSスペクトル。
【図16(b)】Hf0.5Zr0.5B2およびZrB2バッファ層の(−113)ピークの高解像度X線逆格子空間マップ。
【図17】(上側)HfB2/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造のZコントラスト、および(下側)完全エピタキシャルHfB2/ZrB2インターフェイスの高解像度XTEMおよび対応するHf(M端)およびZr(L端)のEELS組成プロフィール。
【図18】ZrB2バッファ層を介してSi(111)上に成長させたHfB2フィルムの赤外線複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。誘電関数は本明細書に記載のように偏光解析データの逐点適合(フィット)により得られる。
【図19】HfxZr1-xB2バッファ層を介してSi(111)上に成長させたHfB2フィルムの可視光線複素誘電関数の実数(ε1)および虚数(ε2)部分を示すグラフ。誘電関数は本明細書に記載のように偏光解析データの逐点適合(フィット)により得られる。
【図20】実線:誘電関数データから計算された、Si(111)上に成長させたZrB2フィルムの光学反射率。点線:誘電関数データから計算された、HfxZr1-xB2バッファ層を介してSi(111)上に成長させたHfB2フィルムの光学反射率。
【図21】(左)大きな島の存在を示す軸上Si(111)ウェハ上に成長させたZrB2フィルム用の表面形態の光学画像。島の間の領域は公称AFM RMSが約2.5nmで滑らかである。(右)表面に本質的に特徴がないことを示す4度のミスカットSi(111)上に成長させたフィルムの対応画像。AFMイメージは非常に均質な表面粗さを示している。
【図22】本発明によるGaN/ZrB2/Si(111)半導体構造の微構造を示す断面透過電子顕微鏡法(XTEM)の画像。
【図23】本発明によるGaN/ZrB2/Si(111)半導体構造のPLスペクトル。
【図24(a)】AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)構造を示す顕微鏡写真。
【図24(b)】組成Al0.10Ga0.90Nに相当する346nmで波長が最大値となる強いバンドギャップ放射ピークを示す図24(a)のサンプルの典型的な陰極線発光スペクトル。
【図25】本発明による半導体素子のバッファ領域の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1態様では、本発明は、基板および基板の上方に形成されたエピタキシャル層を備えた半導体構造であって、エピタキシャル層がB(ホウ素)とZr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素とを含み、エピタキシャル層が50nmよりも大きい厚さを有するエピタキシャル層がB(ホウ素)とZr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素とを含み、エピタキシャル層が50nmよりも大きい厚さを有する。
【0016】
本発明の半導体構造は、例えば、基板上でのIII群窒化物材料の成長の支持を促すために使用することができる。1つの非限定的な例では、エピタキシャル層は基板上でのIII群窒化物材料の成長のためのバッファ層として機能し、例えばバッファ層がその下の基板に対して熱を伝えないよう分離されている(熱的に固定されていない)。そのようなバッファ層は、半導体プロセスおよび動作に関与する熱サイクリングによって半導体構造に加えられる歪みを低減させるという利点を有する。そのようにして生じたIII群窒化物材料を有する半導体構造は、トランジスタ、電界エミッタ、発光オプトエレクトロニクス装置およびオプトエレクトロニクス装置のような能動半導体素子に使用することができる。
【0017】
図1を参照すると、本発明の第1態様によれば、基板(1800)と、基板の上方に形成されたおよびエピタキシャル層(1801)とを備えた半導体構造が提供される。かかる層(1801)は不連続であってもよいし(例えば島または量子ドット)、または図1に示すように連続的であってもよい。
【0018】
エピタキシャル層は、一般に50nm以上の厚さを有する。エピタキシャル層のそのような厚さは、本開示の方法(以下に記載)により調製可能である。例えば、そのような層は、過剰量の水素と、Zr、Hfおよび/またはAl源とを含む前駆体ガスから基板上方に形成可能であることが知られている。
【0019】
いくつかの実施形態では、エピタキシャル層は約100nmより大きな厚さを有してもよく、好ましくは約200nmより大きな厚さを有してもよい。エピタキシャル層のそのような厚さにより、思いがけず、下にある基板から熱的に分離される(すなわち熱的に固定されない)ことが分かった。200nm以下の厚さのエピタキシャル層とは対照的に、下にある基板はその上にあるエピタキシャル層の熱的性質(例えば熱膨張率)を制御せず、むしろ、本発明のエピタキシャル層がバルクに本質的に類似の熱的性質、特にその熱膨張率を有している。
【0020】
本明細書に使用する場合、エピタキシャル層は、50nm〜2μmまたは100nm〜2μmの厚さを有し得る。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層は、250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、または400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有する。第1態様の種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層は250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きな厚さを有し得る。本発明のエピタキシャル層は所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、エピタキシャル層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、エピタキシャル層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0021】
第1態様の1実施形態では、エピタキシャル層は基板上に直接形成される。
第1態様の別の実施形態では、エピタキシャル層は約200nmより大きな厚さを有すると共に、1または複数の以下の特性:(i)900℃での緩和;(ii)基板に熱的に固定されないこと;(iii)室温から900℃までの温度範囲にわたって本質的に熱に対して一定の不整合歪み;(iv)原子平坦面;を有する。
【0022】
特に、基板の上方に形成されたエピタキシャル層は、一般に、約50μm2よりも大き
な面積に及ぶ原子平坦面を有する。しばしば、エピタキシャル層は約100μm2より大
きな面積に及ぶ原始平坦面を有する。好ましい実施形態では、エピタキシャル層は約250μm2、500μm2、または1mm2よりも大きい面積に及ぶ原子平坦面を有する。エ
ピタキシャル層の表面特性である原子平坦面の範囲は、原子力顕微鏡およびXTEM技術を用いて当業者に容易に決定可能である。標準的な光学顕微鏡は、ウェハ表面の平坦領域間に大きな島または他の欠陥が存在しないことを確認するために使用される。
【0023】
第1態様の上述のいずれの実施形態でも、エピタキシャル層は、Bと、Zr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の要素とを含んでよい。種々の実施形態では、エピタキシャル層は、ZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2のうちの一つを含み、xとyの合計は1以下である。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層はZrB2、HfB2、HfxZr1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、xとyの合計は1以下である。
さらなる実施形態では、エピタキシャル層はZrB2を含む。
【0024】
第1態様の上述のいずれの実施形態でも、エピタキシャル層は基板上に直接形成され、ZrB2、HfxZr1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、x
とyの合計は1以下である。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャル層は基板上に直接形成され、ZrB2またはHfxZr1-xB2を含む。さらなる実施形態では、エピタキシャル層は基板上に直接形成され、ZrB2を含む。
【0025】
エピタキシャル層は2つ以上のエピタキシャルサブ層を含んでもよく、この場合、第1のエピタキシャルサブ層が第2のエピタキシャルサブ層上に直接形成され得る。エピタキシャルサブ層の各々は、Bと、Zr、HfおよびAlから成る群から選択された1または複数の元素との合金を含んでもよい。種々の実施形態では、エピタキシャルサブ層は、独立して、ZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含み、xとyの合計は1以下である。種々のさらなる実施形態では、エピタキシャルサブ層は、ZrB2、HfB2、HfxZr1-xB2
またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、xとyの合計は1以下である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1のエピタキシャルサブ層が基板上に直接形成され、ZrB2、HfxZr1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含み、
xとyの合計は1以下である。この実施形態では、第2のエピタキシャルサブ層は、ZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含んでよく、xとyの合計は1以下である。別の特定の実施形態では、第1のエピタキシャルサブ層が基板上に直接形成され、ZrB2、HfxZr1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2の合金を含み、xとyの合計は
1以下であり、第2のエピタキシャルサブ層がHfB2を含む。1つの特定の実施形態で
は、第1のエピタキシャルサブ層が基板上に直接形成されZrB2またはHfxZr1-xB2を含み、第2のエピタキシャルサブ層がHfB2を含む。
【0027】
エピタキシャル層が2つ以上のエピタキシャルサブ層を含むいずれの実施形態でも、エ
ピタキシャル層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有する。エピタキシャル層が2つ以上のエピタキシャルサブ層を含む別の実施形態では、エピタキシャルサブ層の少なくとも1つが50nmよりも大きい厚さを有する。本明細書に使用する場合、エピタキシャル層は、50nm〜2μm、100nm〜2μm、250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有する。
【0028】
図2を参照すると、本発明の第1態様は、基板(1900)、50nmよりも厚さが大きいエピタキシャル層(1901)、およびエピタキシャル層の上方に形成された活性層(1902)をさらに含む、第1態様の上記実施形態のいずれかの半導体構造、またはそれらの組み合わせをさらに提供する。そのような層(1902)は、不連続であってもよいし(例えば島または量子ドット)、または図2に示すように連続的であってもよい。
【0029】
第1態様の1実施形態では、活性層(1902)はエピタキシャル層に格子整合する。
第1態様の1実施形態では、活性層(1902)はエピタキシャルである。
第1態様の別の実施形態では、活性層(1902)はエピタキシャル層(1901)の上に直接形成される。
【0030】
活性領域(1902)はIII群窒化物を含んでもよい。種々の実施形態では、III群窒化物には、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlN、InN、SiCAlN、またはその混合物、ならびにSiCおよびGe等の他の四面体半導体が含まれる
基板(1800)および/または(1900)は、Si(例えばpドープSiまたはnドープSi)、AI2O3(例えばサファイア)、SiCまたはGaAsを含んでよい。1実施形態では、基板はSi(100)を含む。別の実施形態では、基板はSi(111)を含む。
【0031】
第1態様の別の実施形態では、基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。上述の実施形態は材料の有意な改良への道筋を提供しているが、優れた形態学的性質のHfxZ
r1-xB2層を、ミスカットされたSiウェハ上に直接成長できることが期せずして発見された。詳細には、ミスカットSi(111)ウェハディスプレイ上に形成された層は、少なくとも50μm2を超える表面積をカバーする信じられないほど平坦な面を示す。その
ような表面形態は、転位置が低レベルな非常に一様な構造につながり、および/または個々の層間および層内の他の境界結晶につながるため、多層半導体素子の組立のためには非常に望ましい。
【0032】
Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。詳細には、基板がミスカットSi(111)ウェハを含む場合、基板上に一般に形成されるエピタキシャル層は約50μm2より大きな面積に及ぶ原子平坦面を有
する。しばしば、基板がミスカットSi(111)ウェハを含む場合、基板上に一般に形成されるエピタキシャル層は約100μm2より大きな面積に及ぶ原子平坦面を有する。
好ましい実施形態では、エピタキシャル層は、約250μm2、500μm2、または1mm2よりも大きな面積に及ぶ原子平坦面を有する。エピタキシャル層表面の平面性質の範
囲は、例えば光学顕微鏡および/または原子力顕微鏡を使用して当業者に容易に決定可能である。
【0033】
活性層(1902)は、例えば当業者に周知のガスソース分子線エピタキシ等の方法によって形成され得る。別の実施形態では、活性層は化学蒸着法により形成され得る。そのような方法が、本明細書にその全体が援用される2004年2月12日出願の米国特許出
願出願公開第2006/0236923号に記載されている。
【0034】
エピタキシャル層を形成する方法
先行技術では、900℃の温度および約13.3322μPa(10-7トル)の圧力での前駆体(Zr(BH4)4)のガスソース分子線エピタキシ(GS−MBE)により、約25〜50nm未満の厚さを有するZrB2フィルムを一般的に成長させた。しかしなが
ら、高圧で行なわれた初期の迅速な成長速度における研究によると、Bが豊富な部分による表面の被毒(恐らくZr(BH4)4の気相反応による)と、約20nmという高い表面粗さが生じていた。
【0035】
このような問題を克服するため、本発明は、希釈剤と、1または複数のB源と、1または複数のZr、Hf、またはAl源とを含む前駆体ガスを提供する。希釈剤は一般に水素を含み、好ましくは当業者に周知の高純度水素を含む。当業者には理解されるように、一つの源が、B源と、Zr、Hfおよび/またはAl源との両方を含んでいてもよい。例えば、Zr(BH4)4およびHf(BH4)4は各々、BおよびZrと、BおよびHfと供給源である。他の希釈剤が使用されてもよく、例えばヘリウムおよび/またはアルゴン等の非反応性ガスが前駆体ガスに加えられてもよい。
【0036】
一般に、前駆体ガスは、エピタキシャル層を構成する、希釈剤と、1または複数のB源と、1または複数のZr、Hfおよび/またはAl源とを含む。前駆体ガスのための適切な源には、Zr(BH4)4、Hf(BH4)4、またはAl源としてクヌーセンセル蒸発器等のAl源が含まれるが、これらに限定されるわけではない。代わりに、Al(BH4)3−アルミニウム三ホウ化水素をAl源として使用してもよい。室温で前駆体ガス成分の揮発性が高いと(例えばZr(BH4)4およびAl(BH4)3の蒸気圧はそれぞれ約1.06658kPa(8トル)および約13.3322kPa(100トル)である)、それらはガス源MBE用途に非常に有用である。Al(BH4)3はSi(111)等の基板の表面で熱分解し、以下の反応によりエピタキシャル層にAlB2を組み込むと共に、ガス
副産物H2とジボランB2H6を生じさせる:
【0037】
【化1】
本発明の1実施形態では、前駆体ガスは、合計体積が約0.1〜約5%v/vのZr(BH4)4、Hf(BH4)4、または、Al(BH4)3と、高純度水素とを含む。特定の実施形態では、前駆体ガスは、約1〜約3%v/vのZr(BH4)4、Hf(BH4)4、またはAl(BH4)3と、高純度H2とを含む。しかしながら、他の混合体積を用いてもよ
く、異なる純度レベルの水素を含むがこれに限定されない他の希釈剤を用いてもよい。上述の前駆体ガスを用いると、約500nm以下の厚さで原子力平坦面(例えば約2nmの表面粗さ)を有するフィルムが得られた。先に説明したように、他の厚さフィルムも得ることができる(前掲)。
【0038】
しばしば、過剰量の水素は、前駆体ガスの95%v/vよりも多くを含み、好ましくは、水素は前駆体ガスの97%v/vよりも多くを含み、さらにより好ましくは、水素は前駆体ガスの約98%v/vよりも多くを含む。
【0039】
本発明の実施形態では、エピタキシャルZr1-xHfxB2層がその組成範囲全体(0≦
x≦1)にわたって合成された。また、同時に熱および格子整合用途へのその有用性が研究された。
【0040】
本発明の実施形態では、0.1〜約5%v/vでH2と混合したHf(BH4)4および
Zr(BH4)4前駆体を用いて、エピタキシャルZr1-xHfxB2層をGS−MBEによ
り成長させ得る。本発明の別の実施形態では、約1〜約3%でH2と混合したHf(BH4)4およびZr(BH4)4前駆体を用いて、エピタキシャルZr1-xHfxB2層をGS−MBEにより成長させ得る。本発明の別の実施形態では、約2体積%でH2と混合したHf
(BH4)4およびZr(BH4)4前駆体を用いて、エピタキシャルZr1-xHfxB2層を
GS−MBEにより成長させ得る。
【0041】
式Zr1-xHfxB2のエピタキシャル層の組成は、ストック混合物中のHf(BH4)4
/Zr(BH4)4の比を変えることにより調整可能である。例えば、Zr(BH4)4対Hf(BH4)4の比は、100:1〜1:100の間でそれらの間の任意の値(例えば1:1)に偏光可能である。
【0042】
エピタキシャル層は一般に、約800〜1000℃の温度で形成される。好ましくは、エピタキシャル層は、約850〜950℃の温度で形成される。より好ましくは、エピタキシャル層は、約875〜925℃の温度で形成される。さらに、前駆体ガスは一般に約133.322mPa(約1×10-3)〜約0.133322μPa(1×10-9トル)の圧力で供給される。好ましくは、前駆体ガスは、約1.33322mPa(約1×10-5)〜約13.3322μPa(1×10-7)の圧力で供給される。
【0043】
エピタキシャル層を利用するIII群窒化物の組み込み
本明細書で説明するエピタキシャル層は、基板上にIII群窒化物合金層を組み込むのに特に有用である。詳細には、本発明のエピタキシャル層を備えた半導体構造は、例えば、基板上のIII群窒化物材料の成長を支援するために使用することができる。このような調整可能で構造的で熱弾性で光学的な性質により、HfB2−ZrB2システムはSiへのIII窒化物の広範な組み込みに適したものとなっている。
【0044】
1つの非限定的な例では、バッファ層が基板上のIII群窒化物材料の成長の支持を促す。III群窒化物材料を有する結果として得られる半導体構造は、トランジスタ、電界エミッタ、発光オプトエレクトロニクス装置およびオプトエレクトロニクス装置等の能動半導体素子に使用することができる。
【0045】
第3態様では、本発明は、基板上にIII群窒化物を組み込む方法であって、基板の上方にZr、Hf、Alの二ホウ化またはそれらの混合物からなる厚いバッファ層を形成することと、バッファ層の上方にIII群窒化物層を形成することとからなる方法を提供する。そのようなIII群窒化物層は、不連続であってもよいし(例えば島または量子ドット)、不連続であってもよい。
【0046】
第3態様の種々のさらなる実施形態では、バッファ層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きな厚さを有し得る。本発明のバッファ層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、バッファ層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、バッファ層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0047】
本明細書に使用する場合、バッファ層は、50nm〜2μm、100nm〜2μm、または200nm〜2μmの厚さを有する。第3態様の種々のさらなる実施形態では、バッファ層は、50nm〜1.5μm、100nm〜1.5μm、150nm〜1.5μm、200nm〜1.5μm、250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有
する。
【0048】
第3態様の別の実施形態では、バッファ層は基板上に直接形成される。
第3態様の別の実施形態では、バッファ層はエピタキシャルである。
第3態様の別の実施形態では、バッファ層は900℃で緩和される。
【0049】
第3態様の別の実施形態では、バッファ層は、バルクと本質的に同一の熱膨張率を有する。
第3態様の別の実施形態では、バッファ層の不整合歪みは、室温から900℃までの温度範囲にわたって本質的に熱に対して一定である。
【0050】
第3態様の種々の実施形態では、バッファ層はZrB2、AlB2、HfB2、HfxZr1-xB2、HfxAl1-xB2、ZrxAl1-xB2またはZrxHfyAl1-x-yB2を含み、xおよびyの合計は1以下である。さらなる実施形態では、バッファ層はZrB2を含む。
【0051】
第3態様の別の実施形態では、III群窒化物層はバッファ層上に直接形成される。第3態様のさらに別の実施形態では、III群窒化物は、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlN、InN、SiCAlNまたはそれらの混合物から成る群から選択された化合物を含む。
【0052】
第3態様の1実施形態では、III群窒化物層はバッファ層と格子整合する。
第3態様の別の実施形態では、基板はSi、AI2O3、SiCまたはGaAsを含む。第3態様の種々の実施形態では、基板はSi(111)を含む。第3態様の他の種々の実施形態では、基板はSi(100)を含む。第3態様の好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。
【0053】
別の実施形態では、III群窒化物層は当業者に周知の分子線エピタキシにより形成される。別の実施形態では、III群窒化物層は、化学蒸着法(CVD)または金属有機化学蒸着法(MOCVD)により形成される。そのような方法が、本明細書にその全体が援用される2004年2月12日出願の米国特許出願出願公開第2006/0236923号に記載されている。
【0054】
III群窒化物層を形成する方法
第4の態様では、本発明は、基板の上方にAlxGa1-xN層を形成する方法であって、AlxGa1-xN層を形成するのに適した温度および圧力で、Al源の存在下で、基板をH2GaN3、D2GaN3、またはそれらの混合物と接触させることからなり、温度は約800℃未満℃である方法を提供する。
【0055】
何らかの特定の動作の理論に束縛されるわけではないが、上記温度での合金の形成は、H2GaN3またはD2GaN3分子の電子が豊富なN3基が、追加の活性化なく酸性Al原
子と結合して必要なAl−N−Ga結合配置を生成するのに十分な反応性を有することを暗示している。この相互作用の機構は、「D2GaN3:Al」複合体等の反応中間体の生成と、その後の該中間体の基板表面上での反応によるGa1-xAlxNおよびH2/D2/N2の副産物の生成とを伴い得る。これに関し、ルイス酸−塩基型GaN−N−N−Mモチ
ーフが、III群化合物のアジ化物分子の構造で観察される。700℃では、「D2Ga
N3:Al」の即時分解によって生じるいかなるGaN−Al断片も拡散および結合して
、一様で連続的な結晶の層を形成する。この温度よりも低いとAl元素がウェハ表面で分離する場合があり、これは「D2GaN3:Al」複合体が、表面を被毒して結晶窒化物のさらなる組立を防止するAl元素クラスタと不均衡であることを示唆している。AlGa
N形成のための別の競合機構は、成長表面の衝突Al原子による吸着Ga3N3ユニット内でのGaの置換が関与し得る。この場合、Al−N結合は対応するGa−N結合よりも大幅に強いため、自由Gaは表面上に拡散し、成長中のフィルムの組織化された組立を促進する界面活性剤として機能し得る。自由Gaは最終的には堆積条件(例えば約13.33322μPa(10-7トル)および700℃)でのその高い蒸気圧に起因して成長正面から真空へし得る。
【0056】
第4の態様の1実施形態では、基板をAl源の存在下でH2GaN3と接触させる。別の実施形態では、基板をAl源の存在下でD2GaN3と接触させる。Al源は基板にAl元素を供給することが当業者に知られている任意の供給源であってよい。例えば、Al源はクヌーセンセルから蒸発したAl原子要素であってもよい
好ましくは、接触は約700℃未満の温度で起こるか、または約500℃から約700℃までの範囲の温度で起こる。接触の圧力は、約1.33322μPa(約1×10-8トル)から約133.322μPa(約1×10-6トル)までの範囲であり、好ましくは圧力は約26.6644μPa〜106.658μPa(約2〜8×10-7トル)である。
【0057】
基板はSi(100)またはSi(111)ウェハのように均質であってもよく、またはベース基板上に1または複数のオーバレイヤ等の1または複数の材料を含んでもよい。例えば、基板は、Si基板の上方に形成されたZrB2のバッファ層を含んでよい。
【0058】
1実施形態では、基板はGaNを含むがこれに限定されないIII群窒化物を含む。詳細には、基板はSi(100)またはSi(111)等のベース基板の上方に形成されたGaNの層を含んでよい。1実施形態では、基板は、ベース基板(例えばSi(100)またはSi(111))の上方に形成されたバッファ層(例えばZrHfAlB2)の上
方に形成されたGaNの層を含む。
【0059】
AlxGa1-xN層はxが0と1の間の値となるように先の方法によって調製可能である。好ましい実施形態では、そのように形成されたAlxGa1-xN層は、約0.01〜約0.20の間のxの値を有し、より好ましくはAlxGa1-xN層は約0.01〜約0.10の間のxの値を有する。
【0060】
第4の態様の種々のさらなる実施形態では、AlxGa1-xN層は10nm、25nm、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有する。本発明のAlxGa1-xN層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、AlxGa1-xN層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、AlxGa1-xN層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0061】
第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、AlxGa1-xN層は元素が均質である。第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、AlxGa1-xN層は単結晶である。好ましくは、第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、AlxGa1-xN層はエピタキシャルである。
【0062】
第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、基板は、本発明の第1態様の半導体構造を備えてよい。
同様に、第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、基板は、本発明の第2態様に従って調製された半導体構造を備えてよい。
【0063】
さらに、第4の態様の上述のいずれの実施形態でも、基板は、本発明の第3態様に従って調製された半導体構造を備えてよい。
適用
本発明の半導体構造、または本発明の方法に従って形成された半導体構造は、操作可能なマイクロ電子デバイスの一部を構成してもよい。第2態様の任意の実施形態(またはその組み合わせ)の半導体構造も、同様に操作可能なマイクロ電子デバイスとして機能してもよい。さらに、第2態様の任意の実施形態(またはその組み合わせ)の半導体構造は、操作可能なオプトエレクトロニクスの装置の一部を構成してもよいし、またはそれ自体が操作可能なマイクロ電子デバイスとして機能してもよい。
【0064】
例えば、本発明の方法に従って生産された構造は、ヘテロ構造電界効果トランジスタ(HFET)(本願に援用するMaeda, et al, Phys. Stat. Sol. (a) 188, No. 1, pp. 223-226 (2001)参照)、ダブルヘテロ接合バイポーラトランジスター(DHBT)(本願に
援用するMalcinoto, et al. Phys. Stat. Sol. (a) 188, No. 1, pp. 183-186 (2001),参照)、多重量子井戸(MQW)レーザ(いずれも本願に援用するNakamura, et al. J. Crystal Growth 189/190, pp. 841-845 (1998)およびKuramata, et al. J. Crystal Growth
189/190 pp. 826-830 (1998)参照)、および紫外線発光ダイオード(UV LED)(
本願に援用するMukai, et al. J. Crystal Growth 189/190 pp. 778-781 (1998)参照)を含むがこれらに限らないデバイスに使用可能である。
【0065】
(a)反射率の調節
UV−IRの偏光解析測定は、純HfB2の反射率がZrB2よりも高いことを示すが、これは純HfB2が、吸収Siウェハ上に窒化物装置を構成するための反射率格子整合テ
ンプレートとして、ZrB2よりも有意に優れていることを示している。
【0066】
Si(111)上で成長させた純ZrB2の空気反射率を、図13に入射光子エネルギ
ーの関数としてプロットし、図で純ZrB2の空気反射率をバルクSiの反射率と比較す
る。サンプルは金属に似た挙動を示し、反射率は0.5付近の値から急激に増大し、低フォトンエネルギー(IR領域)では一致した。しかしながら、多くのIII−N適用に関連する2−6eV(620−200nm)の領域では、ZrB2の反射率がSiのそれよ
り低い。
【0067】
密度関数理論を使用して基本原理からシミュレートしたZrB2、HfB2、およびSiの反射率(フルポテンシャル化線形増強平面波法、FLAPW; EXCITING DFTコード)は、ZrB2−HfB2システムのSi上のバッファ層の光学特性を調節する能力を示す。コードに関するより詳しい情報は本願に援用するJ.K. Dewhurst, S. Sharma
and C. Ambrosch-Draxl, EXCITING FPLAPW code Version 0.9.57 (2006)を参照されたい。
【0068】
化合物の半金属の性質により、複素誘電関数ε=ε1+iε2は、バンド間とバンド内の寄与の合計として計算された(本願に援用するC. Ambrosch-Draxl and J.O. Sofo, Comp.
Phys. Comm. 175, 1 (2006)参照)。後者はドルーデ(Drude)式を用いて示される:
【0069】
【数1】
式中、ωpは自由電子プラズマ周波数(ZrB2とHfB2に対する計算値はそれぞれh
ωP=4.56および4.81eV)である。Γ=50meVの寿命拡張値が観察される低エネルギー挙動を再生することが分かった。HfB2とZrB2の両方のIR反射率で観察される急激な上昇は、ドルーデ項によるものである。
【0070】
SiおよびZrB2に対する観察スペクトルとシミュレートしたスペクトルがほぼ一致
しているのは、純HfB2フィルムの反射率が2−8eV範囲ではZrB2より約20%大きいことを示唆している。Si上で成長させたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)材料は、スペクトル範囲全体にわたって調節可能な反射率を提供することが可能である。この挙動はバッファ化Si上に窒化物に基づくバンド間(近IR)およびサブバンド内(IR)装置を成長させる設計にとって特に重要であり得る。
【0071】
第5の態様では、本発明は、バッファ層の反射率を調節する方法であって、基板上に、約50nmよりも大きな厚さと、ある反射率とを有する式HfxZr1-xB2の合金のバッ
ファ層を形成することからなり、xが0〜1までの所定値であり、バッファ層の反射率が、バッファ層と同じ厚みを有するZrB2層の反射率よりも大きい方法を提供する。
【0072】
第5の態様の種々の実施形態では、バッファ層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有し得る。本発明のバッファ層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、バッファ層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、バッファ層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0073】
1実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を有するバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層がバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0074】
別の実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を有するバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層が緩和された半導体構造が提供される。
【0075】
別の実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を有するバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層が緩和されると共にバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0076】
上記のいずれの実施形態でも、活性層はIII群窒化物を含んでよい。例えば、III群窒化物はAlGaNまたはGaNを含んでもよい。1実施形態では、III群窒化物はAlxGa1-xNxを含み、xは約0.10より大きい。
【0077】
種々の実施形態では、基板がSi(111)を含む。別の種々の実施形態では、基板がSi(100)を含む。好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)を含み、好ましくは基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。
【0078】
(b)格子定数の調節
a0=3.169Å、c0=3.525Åのバルク六方晶格子定数を有するZrB2と、
HfB2(a0=3.142Åおよびc0=3.48Å)の合金は、ZrB2よりも格子定数が小さいため、少ない歪みで高Al含量のAlxGa1-xN層を成長させることができ、Si等の基板へのそれらの材料の完全な統合すなわち組み込みの道を開く。
【0079】
x>0.10のAlxGa1-xNの広幅ギャップの成長のためにシリコン上の格子整合能を増強させる(ZrB2とHfB2の合金に基づく)ハイブリッド基板技術が開発された。Zr1-xHfxB2の固体溶液は、対象のAlxGa1-xNの十分範囲内に、ZrB2の格子定数よりも低い調節可能な格子定数を有する。
【0080】
第6の態様では、本発明は、バッファ層の格子定数を調節する方法であって、約50nmより大きな厚みを有する式HfxZr1-xB2の合金のバッファ層を形成することと、バ
ッファ層上に活性層を形成することとからなり、xは0から1までの所定値であり、活性層がバッファ層と格子整合される方法を提供する。
【0081】
第6の態様の種々の実施形態では、バッファ層は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nmまたは400nmよりも大きい厚さを有する。本発明のバッファ層は、所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、バッファ層は2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、バッファ層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0082】
1実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を含むバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層がバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0083】
別の実施形態では、基板と、基板の上方に形成されたZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)を含むバッファ層と、基板の上方に形成された活性層とを備え、活性層が緩和されると共にバッファ層と格子整合された半導体構造が提供される。
【0084】
上記のいずれの実施形態でも、活性層はIII群窒化物を含んでよい。III群窒化物はAlGaNまたはGaNを含んでもよい。1実施形態では、III群窒化物はAlxG
a1-xNxを含み、xは約0.10より大きい。
【0085】
種々の実施形態では、基板がSi(111)を含む。他の種々の実施形態では、基板はSi(100)を含む。好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)を含み、好ましくは基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、または約2〜5度でミスカットされ得る。
【0086】
(c)分布ブラッグ(Bragg)反射器および超格子
本発明の先の説明におけるバッファ層は、2つよりも多くの異なる層の種類を有し、各層の周囲が超格子により周期的に繰り返されてもよい。そのため、第7の態様では、本発明は、基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備え、前記複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2合金層からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい、半導体構造を提供する。
【0087】
図25を参照すると、簡単さおよび議論をし易くするため2つの層の種類を使用した第7の態様の例証的実施形態を示す。バッファ領域104は、約50nmから1000nmまで、または100nmから1000nmまでであってよいが、より厚い層を成長させてもよい。個々の層の厚さ(例えばt202とt204)は、約数ナノメートルまたは数十ナノメートル(例えば5nm〜50nm)であり得る。
【0088】
一般に、スタックが2種類の合金層AおよびBをそれぞれ含む場合、スタックは式−(AB)n−の構造を有し、nは1以上である。スタックが3種類の合金層A、BおよびC
をそれぞれ含む場合、スタックは式−(ABC)n−、−(BAC)n−、−(ACB)n
−、−(BCA)n−、−(CBA)n−、または−(CAB)n−の構造を有し、nは1
以上である。好ましくはnは約1〜100であり、より好ましくはnは約1〜50であり、さらにより好ましくはnは約1から約10までである。
【0089】
スタックが4種類の合金層A、B、CおよびDをそれぞれ含む場合、スタックは式−(ABCD)n−、−(ABDC)n、−(ACBD)n、−(ACDB)n、−(ADBC)n、−(ADCB)n、−(BACD)n、−(BADC)n、−(BCAD)n、−(BC
DA)n、−(BDAC)n、−(BDCA)n、−(CABD)n、−(CADB)n、−
(CBAD)n、−(CBDA)n、−(CDAB)n、−(CDBA)n、−(DABC)n、−(DACB)n、−(DBAC)n−、−(DBCA)n−、−(DCAB)n−、ま
たは−(DCBA)n−の構造を有する。好ましくはnは約1〜100であり、より好ま
しくはnは約1〜50であり、さらにより好ましくはnは約1から約10までである。
【0090】
さらに、誘電関数とZrxHfyAl1-x-yB2の反射率がわかると、状況に合わせてしつらえた反射率を有するバッファの設計が可能となる。分布ブラッグ反射器(DBR)や反射コーティング等の状況に合わせてしつらえた反射率を有する構造の設計規則が、本願に援用するHecht in "Optics (4th Edition)", Addison Wesley Publishing Company, 2002に記載されている。DBRミラー構造は、様々な屈折率を有する材料の交互の層から成る。各層の光学的厚さは設計波長(すなわち反射器が高い反射率を有するように設計された波長、中心波長とも呼ばれる)の4分の1である。物理的に、中心波長λに対して設計されたDBRのDBR層の厚さはt=λ/4nで与えられ、nは波長λの材料の屈折率である。この波長では、これらの層間の界面で反射された部分波が構造的に干渉し、狭いスペクトル領域内に非常に高い反射率が生じる。反射率スペクトルは中心波長(λ)を有し、両側に反射率が高くなり得る波長領域を有する。所与の波長における反射の大きさと、反射率スペクトルの波長依存性とは、2つの材料間の屈折率の差と、ミラー構造を構成する層の数とによって決定される。したがって、バッファ上に形成された窒化物装置によって使用可能な高い反射率を有するよう基板上にエピタキシ成長可能なバッファ層を設計することが可能である。
【0091】
基板はSi、Ge、SiGe、AI2O3、SiCまたはGaAsを含んでよい。第7の態様の種々の実施形態では、基板はSi(111)を含む。第7の態様の別の種々の実施形態では、基板はSi(100)を含む。第7の態様の好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)を含む。第7の態様の好ましい実施形態では、基板はミスカットSi(111)ウェハを含む。Si(111)ウェハは、約0.5〜約8度、約1〜6度、約2〜5度、または約4度でミスカットされ得る。
【0092】
複数の反復合金層の各々は、約2nmから約500nmの範囲の厚さを有し得る。好ましくは各反復合金層は、約5〜100nmの範囲または約100nm〜約500nmの範囲の厚さを有する。
【0093】
スタックの厚さは一般に、約50nm、100nm、200nm、300nm、400nmまたは500nmより大きい。より詳細には、スタックは、約50nm〜約1000nm、約100nm〜約1000nm、約250nm〜1.5μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、または400nm〜1μmの厚さを有し得る。本発明のスタックは所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、スタックは2〜3μm未満の厚さを有し、さらなる実施形態では、スタック層は1.5μmまたは1μm未満の厚さを有する。
【0094】
第7の態様の半導体構造は、スタックの上方に形成された、本明細書で定義した活性層をさらに備えてもよい。1実施形態では、活性層はスタック上に直接形成される。別の実施形態では、スタックが基板上に直接形成される。さらに別の実施形態では、活性層がスタック上に直接形成され、スタックが基板上に直接形成される。そのような実施形態では、活性層はIII群合金、例えばGaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlN、InNを含んでよい。別の実施形態では、活性層はSiCAlNまたはSiCの合
金を含んでもよい。別の実施形態では、活性層はGeを含んでもよい。
【0095】
スタック中の複数の層の各々は、活性層と同様、存在する場合には、本明細書に記載したいずれかの方法に従って、または当業者に周知の方法(例えば分子線エピタキシ、化学蒸着法、またはスパッタリング)に従って形成される。一般に、第7の態様のスタック中の複数の層の各々は、エピタキシャルであることが好ましく、好ましくはスタック全体がエピタキシャルである。
定義
用語「エピタキシャル」とは、本明細書に使用する場合、材料が結晶であり、基板と完全に釣り合っていることを意味する。好ましくは、エピタキシャルは、本明細書に定義しているように、材料が単結晶であることを意味する。
【0096】
用語「単結晶」とは、本明細書に使用する場合、当業者に周知のように、サンプル全体の結晶格子が、粒界が全くないか粒界がほとんどないために連続していることを意味する。
【0097】
用語「平坦面」とは、層に関して本明細書に使用する場合、層が層厚さの約5%未満の表面粗さを有することを意味する。例えば、層が5nm未満の表面粗さを有する場合、100nmの層は原子的に平坦である。この用語は、当業者に理解されるように、層の成長方向に概ね垂直な基準層の露出面のことを指す。
【0098】
用語「厚いフィルム」および「厚い層」とは、本明細書に使用する場合、平均厚さが100〜200nmよりも大きいフィルムまたは層を意味する。種々のさらなる実施形態では、厚いフィルムまたは層は、250nm以上、300nm以上、350nm以上または400nm以上の平均厚さを有する。本明細書に使用する場合、厚いフィルムおよび層は所定の目的に適した厚さであればいかなる最大厚さを有してもよい。1実施形態では、厚フィルムまたは層は2〜3μm未満の厚さを有し、種々のさらなる実施形態では、厚フィルムまたは層は1.5μm未満、1.25μm未満、または1.0μm未満の厚さを有する。
【0099】
典型的には、本明細書に使用する場合、「厚いフィルム」および「厚い層」は100nm〜2μmの厚さを有する。種々のさらなる実施形態では、厚フィルムまたは層は150nm、200nm、または250nm〜2μm、300nm〜2μm、350nm〜2μm、400nm〜2μm、250nm〜1.5μm、300nm〜1.5μm、350〜1.5μm、400nm〜1.5μm、250nm〜1.25μm、300nm〜1.25μm、350nm〜1.25μm、400nm〜1.25μm、250nm〜1μm、300nm〜1μm、350〜1μmまたは400nm−1μmの厚さを有する。
【0100】
用語「熱的に固定される」とは、本明細書に使用する場合、基板上のある材料の熱膨張の割合すなわちその熱膨張率は基板の熱膨張率と実質的に一致するが、基板上での該材料の熱膨張の割合はバルク材料の熱膨張の割合とは異なる(すなわち基板とフィルムは同じ割合で拡張する)ことを意味する。
【0101】
用語「不整合歪み」は、本明細書に使用する場合、材料と基板の格子定数の差により基板の上方に形成された材料層に引き起こされる歪みを意味する。
用語「本質的に熱に対して一定」とは、本明細書に使用する場合、基準となる物が特定の温度範囲にわたって10%未満しか変更しないことを意味する。好ましくは、基準となる物は特定の温度範囲にわたって5%未満しか変更しない。
【0102】
用語「格子整合」とは、本明細書に使用する場合、基準材料の格子定数が約1%未満し
か異ならないことを意味する。(すなわち、格子不整合が約1%未満である)。
ある層が別の層や基板の「上に」または「上方に」あると言う場合、別の層や基板の上に直接それらに接して存在してもよいし、介在する層が存在してもよいことに留意する。ある層が別の層や基板の「上に」または「上方に」あると言う場合、層は別の層や基板の全体を覆っていてもよいし、別の層や基板の一部分を覆っていてもよいことにも留意する。
【0103】
ある層が別の層や基板「の上に直接」存在すると言う場合、2つの層が介在する層の無い状態で互いに直接接触していることに留意する。ある層が別の層や基板「の上に直接」存在すると言う場合、層は別の層や基板の全体を覆っていてもよいし、別の層や基板の一部分を覆っていてもよいことにも留意する。
実施例
【0104】
実施例1
エピタキシャルZrB2層の調製
厚い単結晶ZrB2層(厚さ500nm以下)を、900℃、約0.266644mP
a〜約0.533288mPa(2〜4×10-6トル)、および約1%Zr(BH4)4/H2の温度、圧力、および反応物濃度でSi(111)六方晶表面で成長させた。約0.
533288mPa/リットル(4トル/リットル)のZr(BH4)4と大過剰量の研究グレードのH2に基づく反応混合物を、約53.5388mPa(400トル)の最終圧
力合計となるよう1000mLの真空瓶中でそれらの純粋な化合物を組み合わせることにより、各蒸着の前に調製しておいた。フラスコを蒸着チャンバのガス注入マニホルドに接続し、マニホルドを10-8まで加圧した。ホウ素でドープした(1〜10Ω−cm)Si(111)ウェハをサンプルステージの寸法に合わせるために1cm2サイズの基板に切
断した。各基板を、5分間メタノール中で超音波処理し、純N2流で乾燥させ、約53.
32884nPa(4×10-10)トルの基準圧力でロードロックを通じて成長チャンバ
に挿入し、UHV下で600℃に加熱し、チャンバの圧力がバックグラウンドレベルに回復するまで表面の汚染物質を除去した。次に、その後、表面から天然の酸化物を除去するために、ウェハを1150℃で続けて5回フラッシュ洗浄した。フィルムの成長を開始させるために、ウェハに直流電流を通すことによりウェハを900℃まで加熱した。温度を単色高温計で測定し、5分間安定化させた。前駆体混合物を、手動漏れバルブで制御して約0.08sccmの一定流量でチャンバに導入した。チャンバ内部の反応圧力は、耐腐食性ターボ分子ポンプを使用した動的ポンピングにより、成長中、2×10-6〜2×10-5の間に維持した。成長条件は、以下の反応に従って完全な分解機構に追従するように思慮深く調節した。
【0105】
【化2】
Siフィルム上に生じたZrB2は、1nm/分以下の速度で成長し、500nm以下
の厚さとなった。
【0106】
30分間かけて900℃から室温まで非常にゆっくりサンプルを冷却することで、ZrB2材料とSi基板との間の熱膨張の差による層(厚みに依存する)の亀裂を回避するこ
とが可能である。
【0107】
実施例2
エピタキシャルZrB2層の構造的および形態学的特徴付け
実施例1で生じたフィルムは、ラザフォード後方散乱(RBS)イオンチャネリング、原子力顕微鏡(AFM)および透過型電子顕微鏡(XTEM)(図3参照)を含む種々の微細構造および表面の特徴付け技術により実証されるように、その下にある六方晶表面と完全に釣り合い、完全に同じ方向を向いている。透過型電子顕微鏡(XTEM)によると、Siの5つの格子列がZrB2の6つの列ごとと整列する対応が不適合な機構(つまり
「マジック不整合」)を介してZrB2(0001)とSi(111)の間のヘテロエピ
タキシが得られていることが明らかである。この位置合わせにより、格子定数の大きな差に適合した、界面に沿った端部転位の周期的な配列が生じる。
【0108】
上述したように、最適の成長条件を維持することが非常に重要であり、どんなに小さくても偏差は、結晶材料の無視できる成長か、または形態の劣る多結晶粒の生成かを不可避に生じさせる。フィルムの目で観察できる外観は、特に約400〜500nm厚のサンプルの場合、金属的であり、アルミニウムの鏡を思い出させる。平面図および断面図形状のZrB2フィルムの電子顕微鏡画像は、特徴がなく、破砕や表面傷が全くないように見え
た。AFM走査によると、フィルム表面に直径1−2μm範囲の可変側面の範囲に浅い凹凸の配列が目立っていることが示された。それらの対応する高さはフィルム厚さによって決まることが判明し、100〜500nm厚のサンプルでは2〜5nmに及んだ。個々の凹凸の三次元の相は、非常に小さなアスペクト比の六角形のピラミッドに似ている。基底から頂点への垂直方向距離は、AFM測定値(RMS粗さ)によって決定されるが、約2−5nmである。その表面構造は、ピラミッド形の頂点で終端する大きな柱状の粒の形成を介して成長が進行することを示唆している。これらの特徴の凸面の部分は、次第に減少する直径を有する積み重ねられた六角形のメサから構成されている。この形態は各粒内のμm規模の層ごとの成長と一致している。
【0109】
実施例3
エピタキシャルZrB2層に関する高解像度XRDフィルム歪みの研究
実施例1の上記厚いフィルムの構造品質および結晶配向を、Panalytical X-pert Pro回折計を使用して高解像度X線回析(HR−XRD)により分析した。θ−2θ走査により、六方格子の(001)および(002)ピークのみが明らかとなり、これはヘテロ構造が高度に配向し、エピタキシャルであることを示している。ZrB2(001)の二回の
結晶ロッキング走査により、500nm厚フィルムに対する0.15度の半値全幅(FWHM)が示され、これは結晶領域間に顕著な傾斜がないことを示し、これは水平方向内のモザイクが非常に狭いことと一致している。100nm以下の公称厚さのサンプルの場合、干渉縞の対称的なエンベロープもθ−2θ回折パターンのZrB2ピークの付近に存在
した。より厚みが大きいサンプルの場合、これらの干渉縞がペアレント(001)ピーク内で合併する。
【0110】
正確な面内および垂直方向の格子定数を決定し、かつフィルム厚と温度の関数として側方歪みの発生に追従するために、広範囲な軸外高解像度測定も行なった。この目的のため、ZrB2結晶(AlB2型構造)の(113)逆格子空間マップ(RSM)を、その強度が比較的高く、発明者らの回析装置の散乱形状内に幾何学的にアクセスし易いため、記録した。エピ層(113)ピークに対して逆格子空間で近接しているため、基準点としてSi(111)ウェハの(224)反射を使用して、ルーチンの再現可能なサンプルアライメントを行なった。通常の500nm厚のZrB2/Si(111)の場合、室温での逆
格子空間マップの詳細な分析により、約0.5μmの相関長さと、約658秒角の隣接粒間の角傾斜が得られ、これはこの材料の結晶品質が高いことを示している。その厚みに課から輪図、研究したすべてのフィルムに対して同様な値が得られた。このサンプルに対して測定された格子パラメータa=3.1857Åおよびc=3.5212Åは、緩和バルクZrB2の値a0=3.169Åおよびc0=3.530(Okamoto, et al, J. Appl. Phys. 93, 88 (2003)参照)とわずかに異なることがと分かったが、これはこのフィルムに
引っ張り歪みが生じていることを示す。以下に示すように、標準弾性理論から得られる歪み値は約0.5%である。
Si上に成長させたZrB2層に基づくテンプレート構造の設計には、システムにおける
歪みの厚さおよび温度依存性についての完全な理解が必要である。室温でのエピ層厚さの関数としての歪みの変化を、50〜500nmの範囲の厚みを有する一連のフィルムの(113)回析最大値の高解像度XRD逆格子空間マップの測定により決定した。ZrB2
フィルムの面内歪みを正確に評価するために、測定されたaおよびc格子定数を使用して各厚さの緩和単位格子の寸法を計算した。基板表面に垂直に配向された[0001]面を有する六方晶フィルムの場合、垂直(εc)および平行(εa)歪みがεc=−2C13εa/
C33で与えられ、εc=(c−c0)/c0およびεa=(a−a0)/a0である。バルク
ZrB2の場合、既知のc/a比(ηによって以下に表示)は1.1139である。室温
の弾性定数はC13=120.5GPaおよびC33=436.1 GPaであり、ξ=−2C13/C33=−0.553を生じる。歪み関係の反転から、緩和格子定数は、a0={c/η−ξa}/{1−ξ}およびc0=ηa0により与えられ、これらは実験値と共に表1に列挙される。
【0111】
50〜500nmの厚さのZrB2層の緩和格子パラメータ定数a0およびc0は、緩和
エピタキシャルフィルムのηが平衡バルク結晶のそれと同じであるという近似を用いて得られる。フィルムの計算された歪み状態は、表1のaおよびcの測定値の隣に括弧に入れて与えられる。
【0112】
フィルムの緩和格子定数は、実質的に同じであることが計算され、バルク相a0=3.
169Åおよびc0=3.530Åに対する既知の値と一致する。この発見は、面内歪み
決定の顕著な一貫性を実証すると共に、格子定数が約0.001Åまで正確であることを示している。歪み分析は、50nmよりも厚みが大きいZrB2フィルムはすべてεaが約+0.51%、εcが約−0.30%の引張り歪みの平均値を示すことを示している。引
張り歪みは室温で500nmまで厚さが増加しても変化しない。残留歪みは、フィルムが1100℃まで数秒間急速に熱アニーリングされることによって、または900℃で24時間以内の間UHV条件下で成長後処理によって、加熱された後さえ、顕著に堅固であることが分かった。
【0113】
検討されたすべてのZrB2フィルムが引張り歪みを受けていることが分かったという
事実は、Siとの窒化物の組み込み用のバッファ層として上記材料を使用するに当たり重要な意味を持つ。室温でのaの平均測定値はGaNのそれ(a=3.189Å)と本質的に同一であり、これらのバッファがSi上に窒化物を組み込むのに適したプラットフォームであり得ることを示している。
【0114】
しかしながら、この戦略が成功するには、温度に伴うZrB2フィルム中の歪みの発達
についての完全な理解も必要である。そのような研究の必要性は以下の観察により強調される:ZrB2フィルムが900℃の成長温度で緩和され、成長温度から冷却された場合
にSi基板に追従する(同じ割合で膨張する)と仮定すると、室温における歪みを予測するために、バルクZrB2(基本寸法に対するαa)およびバルクSi(α)に対して測定された熱膨張率(CTE)を使用することができる。しかしながら、ZrB2に対するαa=6.66×10×10-6K-1(Okamoto, et al, J. Appl. Phys. 93, 88 (2003))と、Siに対するα=3.78×10×10-6K-1とを用いると、約0.2%の歪みεa(2
0℃)が予測され、これは本願発明者らのサンプルで観察された約0.5%よりもはるかに小さい(表1)。この不一致に関して、本願発明者らのZrB2/Si(111)エピ
タキシャル系は、不整合基板上にエピタキシ成長させた一般的なコンプライアントなフィルム系(すなわちSi上に成長させたGe)と比較して異なる挙動を示すように見える。予想された引張り歪みよりも高いこと(約0.5%)および室温におけるその厚さの独立
性を説明する一つの特徴は、ZrB2エピ層の堅固さがSi基板のそれよりもはるかに大
きいということである。さらに、本研究の高い成長速度(900℃)では、シリコン基板が機械的にはるかに堅固でなくなる。特に合成には大きな温度変化(例えば従来の半導体用途ではΔT 約400℃だったのに対しΔT 約900℃)を伴うため、ZrB2とS
iの弾性および熱的性質の大規模な差がヘテロ構造中の複雑で恐らく予期しなかった歪み反応を起こしていると考えられる。
【0115】
この残留歪みの発生源を解明するために、200および400nmの厚みの代表的なZrB2/Siサンプルを使用して熱的挙動に関する研究を試みた。それらの中間物が表1
に示されている。これらのサンプル中の室温歪みが冷却時のZrB2とSiの間の熱膨張
差によって制御される場合、上記の議論は、成長温度で無くならない歪みが存在することを暗示している。この歪みは、界面における位置合わせ(5つの格子列に対応する6つのZrB2が成長の最初の数ナノメートル以内で確立される)(Hu, et al.J. Cryst. Growth 267 (3-4), 554-563 (2004)およびTo lle, et ah, Appl. Phys. Lett. 84 (18), 3510-3512 (2004)参照)におそらく関連し、フィルムが続いてどれだけ厚く成長されても不変
に固定されるだろう。十分に厚いフィルムは、成長温度で消失する歪み(十分な緩和)を示すと予想され得る。この研究はいずれの機構も動作中であることを実証している。
【0116】
【表1】
より薄い(200nm)サンプルを20〜900℃の範囲の一連の温度まで加熱し、900℃に到達可能な回折計のAnton Paar高温ステージを用いて各温度での対応する格子パラメータを記録した。加熱は、サンプルの酸化を防ぐため、27.579KPa(4psi)の過剰圧力でUHP窒素の動的フローの不活性雰囲気条件下で行った。各温度で、フィルムは、Si(224)反射を使用して再整列させ、回折計ステージの膨張に関連する任意のサンプルのドリフトを補正した。ホウ化物フィルムの格子パラメータは、軸外ZrB2(113)逆格子空間マップ(RSM)の測定値から決定した。
表2は、ZrB2に対する観察されたフィルム格子パラメータaおよびc、Siの対応す
る格子定数a、計算緩和値a0(T)およびc0(T)、ならびに解析から得られた関連歪みε‖(T)およびε⊥(T)の温度依存性を列挙している。後者は、関連する歪みは、フィルム歪みの厚さ依存性に関して上述したのと同じ式を用いて得た。完全に緩和したZrB2フィルムのc/a比、すなわちη(T)は、どの所定の温度でも対応する平衡バル
クZrB2結晶のそれと同じであると仮定した。温度に伴うη(T)の変化は、バルクZ
rB2に対して最近測定したCTE(CTE自体の温度依存性を含む)から得た。弾性比
ξ(T)=−2C13(T)/C33(T))の温度依存性も、バルクZrB2結晶に対する
弾性定数C13(T)およびC33(T)の最近の測定値から得た(Okamoto, et al, J. Appl. Phys. 93, 88 (2003))。これは、歪みの関係ε⊥(T)=ξ(T)ε‖(T)が本願発明者らの研究の温度範囲(20〜900℃)にわたって有効であるという仮定に基づく
。
【0117】
【表2】
表2は、Matthewsによって導入された一致格子不整(coincidence lattice misfit)Fも列挙しており(Matthews, Report No. RC 4266 No. 19084, 1973、R. W. Vook, International Metals Reviews 27 (4), 209-245 (1982)、K. H. Ploog A. Trampert, Crystal Research and Technology 35 (6-7), 793- 806 (2000)参照)、本願の場合F=(5dsi-si−6aZrB2)/(6aZrB2)で定義され、式中dsi-si=asi/√2は(111)面におけるSi−Si距離である。F0はバルクZrB2パラメータを用いて計算された一致不整を示す。定義から、F+εa=F0であることは明らかである。このバルク一致不整F0は
、Okamoto(J. Appl. Phys. 93, 88 (2003)からの熱膨張データを使用して計算したが、
0.983%の室温値を有し、これはZrB2の基本格子パラメータが完全な6/5一致
のために必要とされるよりもわずかに小さいことを意味している。900℃の成長温度では、SiのCTEがZrB2の基底面より小さいため、不整が0.733%の値まで減少
する。この温度で、基底面の歪みはεa=0.26%であり、これは35%の一致不整が
ZrB2フィルム中の引張り歪みによって吸収されることを意味している。残りの65%
は、追加の不整転位により、または面間領域の歪みにより、提供される。室温まで冷却すると、一致不整は本質的に一定のままであり、これは基底面のZrB2フィルムの収縮割
合がその下のSiのそれと一致することを示している。
200nm厚のフィルムにおける歪みの温度依存性には追従挙動がはっきりと確認され、これを図4にグラフで示す。線は、成長温度での測定歪みとしたにあるSiのα軸熱膨張に等しいZrB2 α軸熱膨張とを仮定した、予想された傾向を表している。合致は優れ
ており、室温で予想より高い引張り歪み(約0.5%)が観察されたのは成長温度で引張り歪みεa=0.26%が既に存在したせいであることが確認される。
【0118】
厚さ依存性試験(表1)で生産されたサンプルがすべて室温でほぼ同じ引張り歪み(0.5%)の値を有しているという知見と組み合わせると、すべてのフィルムは成長温度で約0.26%の同じ歪み値を有すべきことが示唆される。しかしながらこれは、厚いバルク様ZrB2フィルム中の歪みが厚さの増加と共に最終的には消えなければならないとい
う予想と矛盾するように見える。
【0119】
成長温度と、冷却時とにおける厚みの関数としてのZrB2フィルムの歪状態をさらに
解明し、かつ上記課題を解決するために、より厚い400nmサンプルに対して200nmフィルム温度試験を繰り返した。その結果を表3に示すと共に、図5にグラフで示す。900℃の成長温度では200nmフィルムの基底面に+0.26%の残留歪みが観察されていたが、表3に記載されるように400nmフィルムでは対応する歪みが本質的に消えている。図5は、観察されたデータ(記号)を、400nm厚のサンプルに関して成長
温度ではゼロ歪みで、ZrB2 a軸熱膨張がSiのそれと等しいと仮定した予想された
傾向(線)と比較している。比較は、aおよびcのいずれの歪みも予想より大きいことを示し、このことはZrB2がその下のSiに対して熱的に固定されていないことを示して
いる。
【0120】
200nm厚のフィルム(図4参照)の場合、歪みの温度依存性はこのモデルを正確に辿り、エピ層とSiが同じ割合で膨張することを示した。したがって、薄いZrB2フィ
ルムの熱的挙動と厚いZrB2フィルムの熱的挙動間の最も重要な違いは、薄い200n
mサンプルはSiに追従するが、厚い400nmサンプルは追従しないということである。これは成長温度900℃では200〜400nmの範囲で「偽臨界」厚さが存在することを意味している。
【0121】
【表3】
この当惑させるような結果が厚いフィルムサンプル中の相異質性のせいでも測定誤差でもないことを立証するために、図6は、400nmフィルムの測定されたaおよびcパラメータ、計算緩和値a0およびc0、ならびに温度の関数としてのバルクZrB2に対する
格子パラメータ(実線)を示す。200nmサンプルの場合のように、400nmサンプルの緩和パラメータとバルク値の間の合致は優れており、フィルムの熱的挙動が標準ZrB2結晶の弾性特性の点から理解されるべきことが確認された。
成長温度で実質的に歪みが観察されなかったことは、より厚いサンプルのバルク様挙動を示唆している。しかしながら、もし400nmフィルムがバルク様に作用していた場合、冷却にともなってその熱膨張はバルクZrB2のそれに近づくはずである。しかし、その
反対が観察されており、バルクZrB2はというと900℃と20℃の間で|Δa|/a
=0.58%の収縮があるが、200nmフィルムでは0.405、400nmフィルムでは0.14%である。一致不整の温度依存性の試験は、厚いフィルムの挙動への何らかの洞察を提供する:200nmサンプルにおけるよりも大きな一致不整Fを犠牲にしても、成長温度ではフィルムは本質的に緩和する。しかしながら、冷却時にフィルムは、一致不整を最小限にする方法として、歪みを吸収するように見える。最終的に、室温では、一致不整は200nmフィルムにおけるのと同じ値に減少した。
【0122】
上記の観察は、Si基板とZrB2フィルムのみを含む歪エネルギー平衡状態モデルの
点からは説明することができない。追加の不整転位が400nmフィルムでの成長温度歪みを緩和すると仮定したとしても、そのような仮定は、その格子パラメータの温度依存性の単純な説明には結びつかない。説明は、自身の弾性特性および歪み状態を有する薄い界面層がエネルギー最小化に役割を果たす可能性を考慮すべきであるように思われる。
【0123】
Si(111)上のZrB2の最初の核形成は、表面下の層におけるB原子による√3
×√3 Si表面再構築を伴い、成長は「6/5」一致機構(「マジック」不整合、前掲
)を介して進行する。界面層の原子構造はSi結晶およびZrB2結晶とは異なり、バル
ク材料特性でモデル化することができない。200nmおよび400nmのフィルムの異なる挙動と、すべてのフィルムは厚さにかかわらず同じ室温歪みを有するという観察とは、弾性定数が温度依存で、恐らく非直線的に変わりさえする強い非調和の弾性特性を有する界面層を必要とする。
【0124】
実験的に、ナノメートルサイズの界面領域原子の位置は、本願発明者らのHR−XRD測定からは決定することができない。しかしながら、シリコンを走る顕著な歪み領域は、それらのサンプルから得られたHR XTEM顕微鏡写真ではっきりと見えた。実際、断面TEM試験のための薄い標本の調製で遭遇する共通の問題は、おそらく界面領域内のシリコンでの大きな歪みにより引き起こされたと思われる、基板からの厚いフィルムの層の剥離であった。
【0125】
動作のいかなる理論にも限定されるわけではないが、界面層を含む900℃の成長温度における薄いZrB2フィルムと厚いZrB2フィルムの歪み分布の略図を図7に示す。厚い緩和フィルムの場合、右パネル中のZrB2−Si界面に「黒へのフェード」コントラ
ストで示されているように、ZrB2は界面層により大きな圧縮応力を加える。上に示し
たように、この応力が最小になっているのは、厚いフィルム中の予想される室温歪みよりも歪みがより大きいことの理由である可能性がある。微細構造の観点から、歪み不整合は、約6/5一致と一致し、界面における一定数の端部転位によって提供され、これはエピ層を基板に「固定」して2つの材料間の大きな不整歪みを部分的に緩和する。したがって、ZrB2中の歪みは、フィルム成長(900℃)の初期段階の薄い開始層によって決定
されるが、この層は後続のフィルム成長用の丈夫なテンプレートとして機能する。⊥Γ格子の高い機械的堅固さが高いため、この開始層によって採用された位置合わせは、続いて成長温度におけるZrB2フィルムの残りの歪み状態を決定する。この研究では、その歪
みが厚さに依存し、一旦ゼロ歪み状態が得られると、Siの上で達成され得る厚さには減速として上限がないことを示した。
【0126】
ZrB2フィルムで観察される熱歪み挙動は、Siとの窒化物の組み込み用のバッファ
層としてのそれらの材料の使用にとって重要な意味を持つ。GaNと、サファイア、SiCおよびバルクZrB2を含む通常の基板候補との間の不整合歪みの温度依存性を、図8
の挿入図のZrB2/Si(111)と比較する。ここに示されるように、サファイアと
SiCは、これらの基板とGaNとの間の格子パラメータが大きく異なるために、いずれも全温度範囲にわたって一定の不整合歪みを示す。しかしながら、バルクZrB2の場合
、温度が増大するにつれて不整合歪みの体系的かつ顕著な減少が観察される。これは、SiCとAl2O3に比べてバルクZrB2とGaNの間では良好な格子整合があるが、前者
における不整合歪みの約10倍の熱による変化が装置に亀裂(クラッキング)や他の構造的劣化につながる可能性を示している。対照的に、Si(111)上に成長させた200nmの厚いZrB2フィルムに基づくハイブリッド基板は最小の不整合歪みを有し、これ
は約400℃消失し、実際に高温では負になる(図8のメインパネル参照)。
【0127】
本願発明者らの知る限りでは、このシステムは、考慮した基板間の全温度にわたって歪みが最小の絶対値を示す、GaN組み込み用の最初の「ゼロ不整合」テンプレートを表す。400nm厚のフィルムの場合も、歪みは他の候補基板に比べて非常に小さく、本質的に温度依存性でないことを示す(図8参照)が、これは厚いZrB2テンプレートに基づ
くGaN/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造が最小の程度の熱ストレスを受けること
を示している。全体として、これらのデータは、構造的理由および熱弾性的理由の両方で、シリコンへの窒化物の実際的な組み込みのための本願発明者らのバッファアプローチの優位性を実証している。
【0128】
実施例4
ZrB2層の光学特性
約0.2から7eVまでのエネルギー範囲におけるZrB2の誘電関数ε(ω)とその
反射率R(ω)の測定値と理論的シミュレーションとの両方の詳細な説明を、1から7eVまでの範囲の反射率プロットの種々の特性スペクトルの特徴の源を同定し、かつZrB2の金属の挙動に関連する低エネルギー(<1eV)の赤外線特性を解明するために調べ
た。
【0129】
実施例4a
ZrB2層の電子構造の計算
EXCITINGコードで実施されるフルポテンシャル化線形増強平面波法(FPLAPW)を使用して、電子構造の最先端の密度関数計算を行った。交換相関ポテンシャルのPerdew−Zungerパラメータ化と、Ceperley−Alder電子ガス汎関数のエネルギー密度とを使用した。(Perdew and Zunger, Phys. Rev. B 23, 5048 (1981)およびCeperley and Alder, Phys. Rev. Lett. 45, 566 (1980))室温でZrB2はa
=3.186Åおよびc=3.521Åの格子定数と原子位置(格子座標中)Zr:(000)、B:(1/3 2/3 1/2)(2/3 1/3 1/2でAlB2型構造(空間群P6/mmm)に
結晶化した。FPLAPW方法を使用したLDAレベルでのセルパラメータの静止格子最適化により、この平衡構造が確認されたが、体積/式単位ユニットで3.5%の過小評価に対応するわずかに縮小した格子定数(a=3.145Åおよびc=3.487Å A)を生じた。この不一致の一部は、ゼロ点エネルギーおよび振動エントロピー効果を考慮しなかったことに関連するが、これらは本研究の範囲外である。測定された光学特性とシミュレートされた光学特性との間の有意義な比較を保証するために、本願発明者らのシミュレーション研究はすべてZrB2の室温の実験構造で行なった。
【0130】
Kohn−Sham方程式の十分に収束した自己矛盾のない基底状態の解を、RMTKMAX=7(原子球体半径と格子間面波カットオフ値の積)と、格子間密度およびポテンシャ
ルの拡張における12.0の最大G−ベクトル(GMA X)と、原子球体(その半径はZrおよびBに対してそれぞれ2.0および1.45Åに設定)内の対応する密度およびポテンシャルに対するIMAX=10の角運動量カットオフ値とを使用して、FPLAPWに基
づいて得た。ブリュアンゾーン組み込みは、既約ウェッジ中の133k点に対応する12×12×12Γ中心グリッドに対する四面体法を使用して行った)。
【0131】
ZrB2のバンド構造と、対応する全体状態密度(DOS)とを、図9に示す。図は、
単位格子構造の略図と、ブリュアンゾーンのスケッチと、バンドの分散をプロットするために使用される対称性の大きいパスとを含んでいる。恐らく、電子構造の最も顕著な特徴は「偽ギャップ」であり、これはフェルミ準位(EF)の位置の周囲のDOSに谷として
現われる。ZrB2への半金属の特性の授与に加え、EF付近の比較的低いDOSがこの二成分化合物中の弱い電子フォノン結合につながることが示唆された。DOS(部分DOS)の種と角運動量の分解を図10に示す。これは、価電子バンド構造が、主としてB p−状態とZr d−状態の混合物に依存する混合ハイブリッドの性質を有することを示す。このエネルギー範囲内の最も低くに位置するバンドは、その大部分がホウ素のs−様であり、−10eV付近の約4eVの広い特徴を説明している。伝導バンド中のDOSは、EFを超えてZr d−状態から10eVまでの貢献に支配され、ホウ素のp−状態は図
面に示された高いエネルギーにおける特徴を説明している。
本がんの仕事で説明したすべてのシミュレートされた光学特性は、複素誘電関数ε(ω)=ε1(ω)+iε2(ω)から得られる。半金属ZrB2の場合、バンド間およびバンド
内遷移の両方が誘電応答に寄与し、低いエネルギーではバンド内遷移が支配的である。電子、光子、およびフォノンの間の3つの粒子の相互作用も、原則として、バンド間およびバンド内の電子遷移を生じ得る。これらの結果を組み込むと本願の仕事の範囲を超えるが
、それらはスペクトル応答に関する円滑な背景技術に本質的に貢献するものと考えられる(Smith, Phys.Rev. B, 3 1862 (1971))。この仕事では、直接のバンド間およびバンド
内遷移のみが明示的に含まれていた。誘電関数の虚数部分ε2(ω)のバンド間成分は以
下のランダム位相近似(RPA)内で得られる:
【0132】
【数2】
式中、pn,m,kは波ベクトルkにおけるバンドnからmの遷移のための運動量行列要素
であり、対応するバンドエネルギーEn(k)およびEm(k)とf(E)は占有数であ
る。次に実数部分ε1(ω)がKramers−Kronig積分から得られる:
【0133】
【数3】
直接バンド内遷移からの貢献をモデル化するために、Drude方程式εDrude(ω)
=1−ω2p/(ω2+iωΓ)を採用した。ここで、Γは寿命の延長(Γは約7fsの緩
和時間に対応して約0.11eV、以下参照)であり、ωpは以下の式で与えられる自由
電子プラズマ周波数である。
【0134】
【数4】
ZrB2のような六方対称を備えた二成分結晶の場合、光学の反応は一般に異方性であ
り、ε(ω)およびωpに対する2つの独立成分が電場極性E‖cおよびE⊥cに対応す
る。これらは適当な運動量演算子成分を用いて方程式1〜3に表されている行列要素を評価することにより得られる。
【0135】
プラズマ周波数を含めて線形の光学特性に収束させるために、非常に密度の高い40×40×40k点メッシュ(3234個の既約k点)が要求された。光学計算における空状態の数を増大させて、光学スペクトルに関係し得るより高いエネルギー遷移を捕捉した。後者のグリッドを使用すると、基底面およびc軸に平行なプラズマ周波数に対してωxxp
=4.29eVおよびωzzpω=4.06eVが得られ、等方性平均値は4.21eVで
あった。これは2130個のk点のより粗いグリッドを用いて得られた初期報告値の4.56eVよりも小さい。一旦収束を達成すると、以下のフレネル方程式を用いて上記に定義した誘電関数から両偏光の垂直入射反射率を計算した。
【0136】
【数5】
式中、nとkは
【0137】
【数6】
で定義される複素屈折率の実数部分と虚数部分である。
【0138】
【数7】
に従って平均を取ることで、誘電関数、プラズマ周波数および反射率(以下参照)の等方性の値が得られた。式中、NaおよびNcは基底面およびc軸に対応する数である。
【0139】
実施例4b
ZrB2層の楕円偏光解析法から得られた光学特性
コンピュータ制御された補償器を備えた可変角度分光楕円偏光計と、回転補償器を備えた赤外線可変角度分光楕円偏光計(IR−VASE)とを用いて、室温で分光楕円偏光解析法測定を行った(Herzinger et ah, J. Appl Phys. 83 (6), 3323-3336 (1998)参照)
。この系はフーリエ変換赤外線分光器に基づいている。いずれの機器もJ. A. Woollam Co.社製である。本願発明者らは、異なる厚み(約50nmおよび約150nm)の2つの
ZrB2サンプルについて調べた。可視光線−紫外線機器を用いて、フィルムの誘電関数
を0.03eVのステップで0.74eVから6.6eVまで決定した。2つの入射角(70°および80°)を使用された。60°の入射角での赤外線測定を150nmサンプルについて行なった。これらの測定は0.03eVから0.83eVまでをカバーした。
【0140】
ZrB2フィルムは、Si基板、フィルム層および表面層から成る3層からなるシステ
ムとしてモデル化した。ZrB2が光吸収性であるため、フィルムの厚みと光学定数との
間には強い相関性がある(McGahan, et al. Thin Solid Films 234 (1- 2), 443 (1993)
)。信頼できる光学データを抽出するために、表面層は、50%のZrB2と50%の空
隙からなる薄層としてブラッグマン(Bruggeman)近似でモデル化した(Craig F. Bohren and Donald R. Huffman, Absorption and Scattering of Light by Small Particles. (Wiley Interscience, New York, 1983), p.530)。AFM測定から得られるように、表面フィルムの厚さは、表面粗さRMS値の2倍とし、適合(フィッティング)プロセスで一定に維持しておいた。ZrB2フィルムの厚さは、RBS測定から決定した厚さからAFM
粗さRMS値を引いたものに等しくし、やはり一定に維持しておいた。最後に、Si基板の光学定数は文献から得た(Herzinger, et al, J. Appl. Phys. 83 (6), 3323-3336 (1998))。上記仮定条件では、逐点適合(フィット)(Perucchi, et al. Phys. Rev. Lett.
92 (6), 067401 (2004)参照)から得られたZrB2の光学定数を除いて、光学モデルの
パラメータをすべて一定にしている。
【0141】
モデルは等方性誘電関数テンソルを仮定しており、これはZrB2の対称によっては要
求されないが、10%以下の最大偏差で反射率中の異方性が考慮した大半のエネルギー範囲にわたって本質的に0であることを予測する上述の理論シミュレーションにより良好な近似として正当化される。フィットの首尾一貫性は、2つの上部層(二ホウ化層と表面層)の厚さを変えつつ逐点で光学定数を一定にしておくことにより確認した。フィットにより、表面層とフィルム層に対する厚さはAFMとRBSのデータに基づいて仮定された同じ値に収束した。2つのサンプルから得られた光学定数は実質的に同じであった。フィルム厚さが非常に異なるため、これはフィットの信頼度をさらに支持している。屈折率の実数部分の関する2つのサンプル間の最大偏差は、UVでΔn=0.2であり、他方、虚数部分に関しては偏差がΔk<0.1である。上記の手順を用いて得られた2つのサンプルの反射率は、実質的に同一であった。最後に、光学定数のKramers−Kronigコンシステンシーの確認は、ガウス発振器から成る光学分散モデルを用いると逐点フィット誘電関数を正確に記述できることを確認することによりなされた。
【0142】
赤外線中の複素誘電関数の実数部分と虚数部分を、図11に示す。この図から理解されるように、誘電関数は、赤外線中の一般的な金属のDrude挙動を示す。データは以下の式でフィットさせる。
【0143】
【数8】
式中、εinter(ω)はガウス発振器としてモデル化されたバンド間遷移に相当する。
また、Drude項は、プラズマ周波数ωpと緩和時間τの項で(または別の選択肢では
DC抵抗ρdcおよびτの項で)
【0144】
【数9】
として与えられる。プラズマ周波数は
【0145】
【数10】
で表され、nが伝導電子密度であり、moptが平均光学質量である。フィットパラメータ
は
【0146】
【数11】
およびτ==9.0fsである。プラズマエネルギーの値はFPLAPW−LDA予測値の
−4.21eVとよく一致する。これらのパラメータから、本願発明者らはρdc=30.6μΩcmを見出している。ZrB2単結晶中の輸送測定により、室温抵抗ρdc(300
K)=6〜10μΩcmが得られ、これはτが約30〜45fsで、残余低温抵抗ρ0=
0.5〜2μΩcmであることを意味している(Gasparov, et al, Phys. Rev. B 73 (9), 094510 (2006,)およびForzani et al, European Physical Journal B 51 (1), 29 (2006)参照)。フィルムとバルクの比較分析により、Mattiesen規則の趣旨に則り、これは本
願発明者らのフィルムがρ0=21〜25μΩcmの残余低温抵抗を有することを示唆し
ており、これはバルク単結晶におけるよりも約一桁大きい。しかしながら、我々は、フィルムから得られた光学データをバルク結晶中の輸送測定値と比較していることを強調しておく。2つ以上のDrude項により特徴付けられる光学反応を有するシステムでは、DC抵抗の輸送測定値と光学測定値の間に不一致が記された。ZrB2材料は、フェルミ準
位でいくつかのチャージポケットを備えた複雑な伝導のバンド構造を有するため、そのような例であり得る。
【0147】
これは単一のDrude項と非常によくフィットし、フィットが非常に狭い低周波範囲に限定される場合には方程式[6]のDrude式のパラメータは一定のままであるが、(本願発明者らの楕円偏光計の測定範囲を超えた)極端に低い周波数で明確となる追加のDrude項の存在を除外することができない。バルクZrB2単結晶に対する楕円偏光
計による測定により、この系における輸送データと光学データとの間の想定される不一致が明確になるはずである。
【0148】
光学的に得た抵抗を輸送データと比較可能であると仮定する場合、本願発明者らの材料の抵抗が高いのは、その薄いフィルムの性質によるものであり得る。実際、同型構造MgB2化合物でも同様の結果が観察され、サファイア基板上に成長させた400nm厚のフ
ィルム中の残留抵抗率は単結晶MgB2におけるよりも5倍大きい(Kim, et al., Phys. Rev. Lett. 87 (8), 087002 (2001)およびMasui, et el., Phys. Rev. B 65 (21), 214513 (2002)参照)
バルクZrB2結晶中の残留抵抗率は、想定されるフィルム欠陥の相対的寄与が拡大す
るMgB2と比較して非常に低い。本願発明者らがZrB2フィルムで観察した唯一の欠陥は界面に位置する歪みを緩和する端部転位である。不整合ヘテロエピタキシで一般に観察される貫通アナログは、本願発明者らの場合には存在しない。他方、界面粗さの散乱はフィルム厚dがキャリア平均自由路lよりもずっと小さい場合にはつねに重要な寄与をなすことが判っている(Guy Fishman and Daniel Calecki, Phys. Rev. Lett. 62 (11), 1302
(1989))。
【0149】
ZrB2に対するde Haas−van Alphenデータ(Forzani, et al. European Physical Journal B 51 (1), 29 (2006)参照)を使用して、フェルミ速度νF=1
.2×108cm/sを概算したところ、室温でバルク材料ではlが約50nmとなった
。si/ZrB2界面での粗さ散乱は、本願発明者らのd=150nmフィルムの抵抗率
が増大したことの主たる理由とは予想されない。同様に、上記のXRDの議論は、粒径が少なくとも500nmであることを示唆しており、その結果、粒界散乱は支配的な役割を果たさないだろう。
【0150】
近赤外線から紫外線までの誘電関数の実数部分と虚数部分を図12に示し、対応する空気反射率(Drude領域を含む)を図13に示される。上述したように、ZrB2に利
用可能な光学データは、1.4〜25eVのエネルギー範囲をカバーするOdaとFukuiの仕事であったが、これも図13にプロットし、本願のデータと比較した。3eVより低い領域で合理的な一致が見られた、より高いエネルギーでは、OdaおよびFukuiのデータでは反射率がかなり急激に降下するが、これは本願発明者らの実験データまたはシミュレーションデータ(図13のそれぞれ実線および点線)では見出されない。他方、いずれのデータセットもバンド間遷移に関連する3つの特徴のエネルギーすなわち2.6eV、4.3eVおよび5.7eVでよく一致している。
【0151】
ここに示された可視光線/紫外線反射率の値は、以前に報告されたそれよりもわずかに高い。この不一致の理由は、フィッティングプロセスでの表面層とおよびZrB2フィル
ムの厚みの変化を許容したことにあり得る。しかしながら、本願では、上述したようにRBSおよびAFM値を選択した。共通のモデルが、ZrB2およびHfxZr1-xB2合金の楕円解析測定値に適合する一般式が求められる場合には、後者アプローチの方がより一貫した結果を生じさせる。ZrB2に関する2つのフィッティング手順間の相違は、誘電関
数の楕円解析による決定に推定誤差を与える。しかしながら、赤外線反射率も、可視光線/紫外線バンド間特徴も、いずれもフィッティング手順の選択によっては影響されない。
【0152】
図13ではさらに、観察された反射率を本願発明者らのLDAシミュレーションと比較している。点線は等方性平均反射率を表わし、挿入図はZrB2c軸にそれぞれ垂直およ
び平行なE場に対応する反射率間の差として計算された異方性のプロットである。シミュレーションは、0〜10eVのへネルギー範囲の大部分にわたって反射率が本質的に等方性である
【0153】
【数12】
が、4.4および9.5eV付近に約5〜10%の有意な偏差が期待されることを予測している。この比較から理解されるように、理論反射率は、図にA(2.6eV)、B(4.3eV)およびC(5.7eV)と記した主な実験スペクトル特徴の位置を含めて、実験データをかなりうまく再現している。シミュレーションから得られるその対応値はそれぞれ2.2、4.4および5.5〜5.7eVである。エネルギーが<1eVである場合、シミュレート結果は、
【0154】
【数13】
の計算値とτ=7fsの最良フィット値を使用して観察される反射率をわずかに低く推算した。ここで得られた寿命のわずかに低い値は、反射率に対する計算されたバンド間成分および測定されたバンド間成分の間の差に関連するが、前者の場合、非経験的である。低いエネルギー範囲で理論と実験が一致するのは、実験的フィッティングで使用された単一発振器の仮定条件が良好な近似であることを示す。
【0155】
図13にA、BおよびCと記した観察されたスペクトル特徴の供給源を解明するために
、電子バンド構造の詳細な分析を行なった。エネルギーとk点インデックスに従ってバンド間遷移(図1参照)に対応する運動量行列要素を体系的にソートすることにより、バンドの組み合わせが、3つの特徴に対する主要なスペクトル重み付けにより同定された。シミュレーションによれば、これらの遷移は逆格子空間における対称の高い点では生じず、図14の各特徴に対応する各パネルの下のセグメントによって記載されるようなブリュアンゾーン内の狭い領域から生じる。ここで、パラメータκA、κBおよびκCの値はk空間
の格子座標の項の形で与えられ、点から中へ与えられる:
【0156】
【数14】
これらのプロットから、2.2eVおよび4.4eVの特徴AおよびBはをそれぞれバンド9からバンド10への遷移に関与するが、5.5〜5.7eV付近の特徴Cはバンド8からバンド11への直接のバンド間遷移に関与することが明らかである(図14の最初のパネルのバンド構造の番号付け参照)。図14に示されているグレー領域は最大運動量行列要素に対応する近似範囲を示す。
【0157】
実施例5
ZrHJB2合金
Si(111)上に直接、高品質のヘテロエピタキシャルHfxZr1-xB2(0≦x≦
1)バッファ層をエピタキシ成長させた。フィルム構造の組成依存性と最初の(アブイニシオ)弾性定数は、この六方晶HfxZr1-xB2合金層が成長されると面内引っ張り歪み
(約0.5%)を有することを示している。
【0158】
Si(111)基板を650℃でMBEチャンバ内で脱ガスし、天然酸化物を1200℃でフラッシュ洗浄することにより除去した。次にHf(BH4)4およびZr(BH4)4ガスを、フィルム厚に依存して、900℃および約1.33322〜2.66644mPa(1〜20×10-6トル)で約30〜120分間基板上で反応させた。かかる条件下でどちらの前駆体も以下の式に従って熱分解し、フィルムを生成した:
【0159】
【化3】
この関係は、アルミニウムと、前駆体をZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)のフィルムの生成に関連付ける対応する式とを含めるようにさらに一般化させ、それに従って記述することが可能である。例えば副産物としての生成ジボランまたはBH4+部分は原子Alと反応して固体AlB2を生成することが可能である。
【0160】
図15(a)は、公称厚さが50nmのZr0.70Hf0.30B2サンプルのRBSスペク
トルを示す。整列ピーク高さ対ランダムピーク高さの比(χmin)は、HfおよびZrの
いずれでも6%であり、これはそれらが合金中で完全に置換可能であると共に、Si基板に対してフィルムが高度にエピタキシャル整列していることを示している。XTEMは、層が完全に単結晶で、高度に整合しており(coherent)、原子が平坦であることを示している(図15bおよび図15c)ことを示す。
【0161】
格子不整は[1120]方向に沿って特定の{1100}面を挿入することにより、純粋な端部タイプの転位により吸収される。回折コントラスト顕微鏡写真によれば、約3μmの視野内では表面に貫通転位コアが伝搬しないことが明らかである。
【0162】
ナノメートルサイズの電子プローブを用いた電子エネルギー損失分光法(EELS)によると、個々の合金成分が分離することなく検針したナノメートルスケール領域ごとで、構成成分であるZrおよびHf要素が共に現われることが示された。原子力顕微鏡(AFM)によると、バッファ層の用途に非常に呈した5×5μm2面積に対し約2nmの粗さ
を備えた滑らかな表面が明らかとなった。表面形態は、900℃および約0.133322μPa(10-9トル)で8時間フィルムを実験室内アニーリングすることによりさらに改善され、これにより粗さ1.5nm、ステップごとに接続された大きな原子平坦領域からなる表面が得られる。
【0163】
特徴付けされたすべてのZr1-xHfxB2フィルムに対し、HR−XRD軸上走査を行
ったところ、Si(111)と平行(0001)に配向されたAlB2構造の(001)
および(002)ピークが示された。二ホウ化物のZrHfAlB2ファミリーは、一般
に「AlB2」構造と呼ばれる層状構造を有している。(002)ピークは、これは合金
の組成の変化により感度が高いが、純ZrB2のピークから大幅に移動していた。これら
のピークの分割や広がりのなさは、格子中のHfおよびZr原子の両方の完全な置換性の確証となっている。(001)および(002)反射の付近に厚さ縞が観察され、高品質な界面と層の均質性および平滑性が確認された。AlB2構造の非対称(−113)逆格
子空間マップから正確なaおよびc格子パラメータが導出され、約50±5nmの厚さみを有するサンプルに対するそれらの格子パラメータが表1に与えられる。歪みのため、これらの測定された格子パラメータは緩和六方格子パラメータa0およびC0とは一致していない。
基板表面に垂直に配向された[0001]面を有する六方晶フィルムの場合、垂直(εc
)および平行(εa)歪みがεc=−2C13εa/C33で与えられ、εc=(c−c0)/c0
およびεa=(a−a0)/a0である。C13およびC33は弾性テンソルである。バルクZrB2とHrB2の場合、既知のc/a比(ηによって以下に表示)はわずかに異なる(それぞれ1.114および1.108)である。したがって、歪み状態を決定するため、以下の近似がなされた:(i)緩和エピタキシャルフィルムのηは平衡バルク結晶のそれと同じである、(ii)c/a比(η)および弾性比ξ=−2C13/C33はいずれも組成の線形関数であり、それぞれη(x)=xηHfB2+(1−x)ηZrB2およびξ(x)=xξHfB2+(1−x)ξZrB2である。ZrB2とHfB2の両方の弾性定数が一般にあまり知られていないため、平衡化された系の有限歪み変形を使用してそれらの弾性常数を計算するためにVienna ab initio simulation package (VASP)DFTコード(いずれも
本願に援用するG. Kresse and J. Furthmuller in Phys. Rev. B 54, 11169 (1996)およ
び G. Kresse and J. Furthmuller, in Comput. Mater. Sci. 6, 15 (1996)に記載)を使用した。六方晶遷移金属材料の弾性定数の理論についてのさらなる情報は本願に援用される(Fast et ah, in Phys. Rev. B 41, 17431 (1995))より得た。歪み関係の反転から、その後、緩和格子定数は、a0(x)={c(x)η(x)−ξ(x)a(x)}/{1
−ξ(x)およびc0(x)=η(x)・ao(x)で与えられ、これらを表4(以下)
に列挙する。端部メンバーの緩和フィルム格子定数は、バルク相に対する既知値と一致する。これは上記近似をさらに補足正当化する。
【0164】
合金用の緩和格子定数は、Vegardの法則に非常に緊密に追跡する。本願発明者らの分析によると、ZrB2および合金フィルムはわずかな引張り歪み(εa約+0.50%およびεc約−0.29%)しか示さないが、HfB2フィルムはもっと歪んでいる(εa
約+0.66%およびεc約−0.36%)ことが示される。ZrB2フィルム(ZrB2
を含む)が引張り歪みを受けていることが分かったという事実は、これはGaが豊富な金属により良好に適合するため、格子エンジニアリングにとって重要な意味を持つ。詳細には、ZrB2フィルムの測定値は、GaNのそれと本質的に同一である。
【0165】
図16(a)は、厚さ85nmのZrB2バッファ層上で成長させた厚さ45nmのH
f0.5Zr0.5B2合金に対して得られたラザフォード後方散乱(RBS)スペクトルを示
す。ZrとHfはいずれもは、高い整合度(追跡量が低い)を示し、これは高い結晶性および完全なエピタキシャル位置合わせと一致している。図16(b)は、ヘテロ構造内の正確な格子定数値を示すHf0.5Zr0.5B2およびZrB2バッファ層の(113)ピークの高解像度X線逆格子空間マップを示す。
【0166】
実施例6
エピタキシャルZrxHfyAl1-x-yB2層
)原子Al源の包含により上述の例の方法によりZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)の例証的なフィルムを成長させ、ラザフォード後方散乱(RBS)、高解像度断面透過電子顕微鏡法(XTEM)、Zコントラスト画像診断および高解像度X線回析(HR−XRD)により特徴付けた。このような調整可能で構造的で熱弾性で光学的な性質により、ZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)テンプレートはSiへのIII窒化物の広範な組み込みに適したものであることが示唆される。実施形態の一例として、ZrxHfyAl1-x-yB2(0≦x≦1、0≦y≦1)フィルムをy=0(すなわちジルコニウムとハフニウムの合金)で成長させた。
【0167】
実施例7
HfB2/ZrB2/Si(111)
高品質HfB2フィルムを、歪みを補償するZrB2バッファSi(111)上でも成長させた。厚いZrB2フィルムの最初の反射率測定値は、HfB2の反射率がZrB2に比
べて約2〜8電子ボルト(eV)のエネルギー範囲で20%分増加すると予測する基本原則計算に一致している。波長(λ)(マイクロメートル(μm)で測定)は、
λ(μm)=1.24/エネルギー(eV)
という関係を介してエネルギーと相互に関連付けられる。
【0168】
上述のように、成長速度の同時減少(純HfB2の場合約0.5nm/min)ととも
に、Hfが豊富な組成様式で面内歪みが体系的に増大する。歪みの増大によって反応性および表面の移動性が減少する。実際HfB2の場合、Si(111)上での成長によって
、大きな表面の凹凸(AFM粗さ>15nm)を有するほぼ排他的に粗いフィルムが最終的に生じる。成長は、この場合、合金に対して上述したのと同様な条件下で純Hf(BH4)4の分解によって900℃で行った。RBSとXTEMのデータによって、大きな島の集合によって占められる優勢に粗い層の存在が確認された。しかしながら、フィルム歪みがわずかに大きい(表4参照)にもかかわらず、データは、鋭く釣り合った界面を備えた化学量論的な整列された材料も示した(および)。XRD軸外測定の結果、a=3.160Åおよびc=3.467Åであり、これはSi基板にかかる歪みのため、バルクHfB2a==3.142Å、c=3.48Åよりも大きい/小さい。
【0169】
さらに、窒化物の組み込みに適したフィルムの生成を促進するために、(Si(111)表面上に直接ではなく)同族構造ZrB2バッファ上へのHfB2フィルムの成長が追求された。これらのHfB2フィルムは、非常に容易に成長し(約2nm/分)し、平坦面
(AFM粗さ約2nm)、高度に整合した界面、および実質的に欠陥のない微細構造を含む、例外的な形態および構造特性を示す。XRD測定値は、層が部分的に歪み、格子パラメータがSi上で成長されたHfB2のそれに近いことを示している(表4)。
【0170】
【表4】
Hf(BH4)4の分解を介した酸化Si上での薄いHfB2層の成長がJayaram
anらによって報告されている(本願に援用するJayaraman et al, Surf. Coat. Tech. 200(22-23), 6629 (2006))が、エピタキシの証拠がなかった。XTEMデータは、ZrB2バッファがHfB2とSiの間に歪みの差を架け渡し、Si上で直接得られない完全エピタキシャルHfB2フィルムの形成を許容することを示している。したがって、基板の上
にエピタキシ堆積されたZrB2層上に続くZrHfAlB2二ホウ化フィルムはエピタキシ堆積され、続く二ホウ化フィルムの成長を促進する。界面におけるZrおよびHfのXTEM Z−コントラスト画像およびEELSプロファイルは、ZrB2からHfB2まで要素が急激に遷移していることを示し、2つの材料の間にナノメートル規模で混ざっている証拠はなかった。(図17)
【0171】
実施例8
Zr1-xHfxB2/ZrB2/Si(111)
ガス源MBEによるHf(BH4)4およびZr(BH4)4前駆体の反応を介して、均質範囲全体にわたる組成を有するZr1-xHfxB2合金を生産した。成長は上述と同様の手
順を使用して行なった。簡単に説明すると、新たに調製したHf(BH4)4およびZr(BH4)4ガス前駆体を研究グレードのH2で2堆積%にて希釈し、合金の最終組成を決定
することが判っている望ましいモル比で混合することによりストック混合物を得る。各堆積の前に、混合物をガスIRでチェックし、これにより延長期間の間維持された時でさえ個々の成分が反応したり分解したりしないことを確認した。表面から有機不純物を除去するために、Si(111)基板をメタノールで超音波処理し、次に、MBEチャンバにロードした。圧力が基底値の約0.13322μPa(10-9トル)に戻るまで650℃で脱ガスし、天然酸化物を1200℃でフラッシュ洗浄することにより除去した。反応は、目標フィルム組成および厚さに依存して、900℃の温度および約0.33322mPa〜約6.6644mPa(1×10-6〜2×10-5トル)の範囲の圧力で、2〜5時間行った。
【0172】
サンプルの組成および形態の特性は、HfB2/ZrB2/Si(111)の系に対して上述したのと同じ技術を使用して特徴付けた。また、一般にデータは、同様の質を有する材料を示した。ここで、本願発明者らは、(113)逆格子空間マップの測定によって得
られた選択されたHfxZr1-xB2/ZrB2/Si(111)およびHfyZr1-yB2/
HfxZr1-xB2/Si(111)サンプル(y>x)の歪み挙動に注目する。典型的な
例は、35nm厚ZrB2バッファ上に成長させた約300nm厚Hf0.25Zr0.7B2合
金から成るHfxZr1-xB2/ZrB2/Si(111)サンプルを含んでいる。バッファの面内格子定数(3.1699Å)は、同じ厚さで成長させたZrB2/Si(111)
サンプルで観察されるそれ(3.189A)よりも小さいが、これはHf0.25Zr0.7B2オーバレイヤが下にあるZrB2テンプレートに圧縮を引き起こしたことを示している。
Hf0.25Zr0.7B2の格子定数(3.1692Å)が緩和合金の値(3.160Å)よりも大幅に大きいのは、オーバレイヤが引張り歪みを受けていることを示す。全体としてこれらの結果は、エピ層がそれより薄いバッファ層を圧縮し、バッファ層がエピ層に引張り歪みを引き起こすという一般的な挙動に示す。従って、Hf0.25Zr0.7B2フィルム全体は高度に整合しており(coherent)、基板に対して引張り歪みを受けている。
【0173】
上記サンプルの歪み特性を、オーバレイヤが有意に高いHf含量を有すると共にバッファよりもずっと薄い(それぞれ45および80nm)Hf0.5Zr0.5B2/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造と比較した。測定された面内格子定数はそれぞれ3.183Åおよび3.186Åであり、2つの層が本質的に格子整合していることを示している。
【0174】
先のサンプルとは対照的に、今回の場合のエピ層は、元の歪み状態に比べてHf含量は高いがバッファの格子定数は本質的に変化しない(=3.189Å)大きな格子定数を示す。この観察は、より厚いバッファがオーバレイヤに大きな引張り歪みを加え、スタック全体が基板に対して引張り歪みを受けることを示している。本明細書で説明したいずれの例でも、結合されたホウ化物層の歪み状態は、期待通り、個々の層の厚さと組成に密接に依存する。
【0175】
実施例9
HfB2/ZrB2/Siの光学特性
RBSによって測定されると約70nmのHfB2厚さと約70nmのZrBを有する
ように先の例に従って調製されたHfB2/ZrB2/Siサンプルの分光楕円偏光解析測定を行った。誘電関数は3つの入射角:65°、70°および75°を使用して0.02eVのステップで0.74eVから6.6eVまで測定した。0.03eVから0.83eVまでの間の測定は、3つの入射角:65°、70°および75°を使用して赤外線楕円偏光計で行なった。HfB2/ZrB2/Siスタックを、Si基板、ZrB2バッファ
層、界面粗さ層、フィルム層および表面層から成る5層からなる系としてモデル化した。ZrB2の場合のように、表面層を、50%のZrB2と50%の空隙からなる薄層としてブラッグマン(Bruggeman)近似でモデル化した。AFM測定から得られるように、表面フ
ィルムの厚さは、表面粗さRMS値の2倍とし、適合(フィッティング)プロセスで一定に維持しておいた。HfB2フィルムの厚さは、RBS測定から決定した厚さからAFM
粗さRMS値を引いたものに等しくし、やはり一定に維持しておいた。バッファに関し、本願発明者らは先の研究で記載されたZrB2の光学常数を使用した。HfB2の光学定数は、逐点適合から得られた、等方性誘電関数テンソルを仮定した。
【0176】
さらに、HfxZr1-xB2バッファ層上で成長させた追加ZrB2キャップ層とHfB2
層とを備えたサンプルについて調べた。これらのサンプルから得られた赤外線データは実験誤差内で一致するが、可視光線/紫外線のHfB2の誘電関数はサンプル依存的に見え
る。本願発明者らは、赤外線の結果を図18に、HfB2/HfxZr1-xB2/Si(111)サンプルの可視光線−紫外線データを図19に示す。図20で、対応する反射率をZrB2のそれと比較する。2eV〜6eVの間の微細構造は、反射率の絶対値が多少異な
るにもかかわらず、またエネルギーがZrBに対してシフトしているにもかかわらず、同じエネルギーではすべてのHfB2サンプルと一致しているように思われる。これはバン
ド間遷移の点での説明と一致している。別の箇所でも示される一連のHfxZr1-xB2合
金サンプルから得られた結果は、ZrB2とHfB2の間でエネルギーが滑らかな組成依存性を有することを示す。
【0177】
HfB2の赤外線誘電関数の分析は、上述のZrB2研究に類似していた。データフィットはDrude項を含み、適合パラメータはhωp=4.27eVおよびτ=7.5fs
である。これらのパラメータから、本願発明者らはρdc=35.6μΩcmを見出した。バルクHfB2の報告された室温抵抗率はρdc(298 K)=8.8μΩcmであり、
結果はZrB2フィルムから得られたものと非常に類似していた。
【0178】
実施例10
ミスカットSi(IIl)ウェハ上の成長
先の例で説明したバッファ層アプローチは材料の有意な改良への体系的な直接の道筋を提供しているが、他の場合には達成できないHfに富んだ系に対する重要な構造的な光学データを生じたが、残留歪みの存在および多数ステップからなる処理の必要性が、より大規模な組み込みスキームにとって現実的な別の研究を刺激した。
【0179】
すぐれた形態品質を有するHfxZr1-xB2フィルムを、約4℃でミスカットされたS
iウェハ上に直接成長できることが予期せずして判明した(図21)。この技術により、アーティファクトや曖昧さのない誘電関数分光楕円偏光解析測定に適した顕著に均質な表面粗さを備えた厚いフィルムの成長が許容される。これは、初めて大規模な形式である約4℃でミスカットされたSiウェハ上に直接成長可能な重要な新たな開発である。
【0180】
実施例11
エピタキシャル層GaN/ZrB2/Si(111)上のIII群窒化物の成長
GaNを、バッファ層上でエピタキシ成長させた。層は化学蒸着法(CVD)により成長されたが、窒化物のエピタキシ成長のための他の技術を使用してもよい。
【0181】
典型的な実験では、Si(111)基板表面を1150℃および約52.3288nPa(4×10-10トル)にフラッシュ洗浄することにより清掃した。その直後、Zr(B
H4)4の分解により厚いZrB2(0001)バッファ層(100nm)を900℃で成
長させた。GaNの後の成長は、室温で化合物の蒸気圧により確立された2×10-7の圧力で、基板表面から2cm離して配置したノズルにより単一供給源のH2GaN3またはD2GaN3前駆体を導入することにより行った。公称厚さが500nmのフィルムは550℃で生産し、約2nmのRMS粗さの平坦表面を示すと共に、XTEM顕微鏡写真の視界内に貫通欠陥がない高度に整列された微細構造を示す。この方法によって生産された材料の品質は、その発光特性にも反映され、これは1050℃でMOCVDによりサファイア上に成長された非ドープGaNフィルムに匹敵する。
【0182】
図22は、本発明によるGaN/ZrB2/Si(111)半導体構造の断面透過電子
顕微鏡(XTEM)画像を示す。図23は、本発明によるGaN/ZrB2/Si(11
1)半導体構造のPLスペクトルである。CVD成長温度は550℃であったが、他の成長温度を用いてもよい。フィルムは、単相六方晶GaNに対するバンド端発光を示す強いフォトルミネセンス(PL)を示す。15nmのFWHMで10KのPLピークが359nmに位置するが、これはGaNフィルムの低温PLに通常関連する3.47eVの中立ドナー束縛励起子D0Xラインに近い。560℃の周囲では室温でも低温PLでも黄色ル
ミネセンスは見出されていない。
【0183】
実施例12
エピタキシャル層AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)上のIII群窒化物
の成長
AlGaNオーバレイヤを実施例11の構造に施し、図24(a)に示すようなクヌーセンセルから蒸発させたD2GaNs蒸気およびAl元素(純度99.999%)の熱活性化反応によりAlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造を形成した。基
板材料におけるAl原始の反応流速(約1〜3Å/分)を結晶厚さ監視装置を用いて測定した。D2GaNs蒸気は、約26.6644〜106.6576μPa(2〜8×10-7トル)の圧力範囲で漏れバルブを通じてチャンバに導入した。これらの条件下で、かつ700℃に維持した基板温度で、完全に均質で単結晶の合金フィルムが生産された。
【0184】
公称150nm厚さの透明フィルムを堆積させるためのこの方法によるAlGaN層の成長速度は約4nm/分だった。ラザフォード後方散乱分光測定法(RBS)を用いて、要素の組成を決定し、かつフィルム厚を推算した。結果、反応環境中のD2GaNsおよびAlガス種の流束比を調節により、約2〜10%の範囲で終産物中のAl含量が体系的に調節されることが示された。RBSの決定される組成は、Ga1-xAlxN系で完全なベ
ガード法則の挙動をとると仮定すれば、(002)および(004)反射の高解像度XRD測定値により確証された。
【0185】
150nm厚のAl0.08Ga0.92Nフィルムからの光電子放出は、走査型電子顕微鏡に適合させた陰極線発光(CL)分光計を用いて得られた。図24は、Al0.10Ga0.90Nの組成に相当する346nmに最大波長を有する強いバンドギャップ放射ピークを示す典型的なCLスペクトルを示す。ピークFWHMは20nmであり、D2GaNsの分解によってZrB2上に成長させられる純GaNのそれに匹敵する。おそらく下にGaNバッフ
ァ層が存在するため、追加の弱いショルダが375nmで観察される。選択波長のCL信号サンプルを収集すると同時にサンプル表面をラスターすることにより、SEM/CL装置の走査特徴も使用して、フィルムの空間一様性および組成の均質性が調べられた。これらの実験では、最大ピーク値(346nm)、純GaN(358nm)および合金最大値よりも僅かに低い対照値(339nm)に対応して3つの波長をモニタした。これらの波長における空間強度分布は同じだあり、約5nmの側方スケールで合金が高度に一様な組成を有することが判った。
【0186】
実施例13
エピタキシャル層AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)上のIII群窒化物
の成長
先の実施例と同様に、AlGaNオーバレイヤを実施例11の構造に施し、AlGaN/GaN/ZrB2/Si(111)ヘテロ構造を形成した。今回の実施例の場合、基板
に隣接するGaN層を、H2GaN3化合物の単一供給源の堆積により、550〜600℃で形成した。
【0187】
AlGaNオーバレイヤは、H2GaN3蒸気と、放出セルで固体供給源から生成された滲出液セルのAl原子ビームとの反応によって形成された。この方法は、高エネルギーの単一供給源CVDと従来の分子線エピタキシとを組み合わせることにより、先例がない低温(600℃)の成長条件を許容した。
【0188】
実施例14
AlGaN/GaN/ZrB2成長の理論シミュレーション
吸収Ga3N3ユニットからAlでGa原子を置換することによるGaN/ZrB2でバ
ッファしたSi上でのAlGaNの成長を、AlGaNの形成につながる置換反応機構を解明するために研究した。最初に、(D2GaNs)sの三量体前駆体の安定性を調べ、Z
rB2表面とのその後の相互作用を、第1原理密度関数理論(DFT)を用いてモデル化
した。データは、インタクトのGasNsユニットがN原子を介してZrで終端する表面に
強く結合し、これらのユニットがAlGaNを形成するAlによるGaの後の置換用反応部位として機能することを示した。
【0189】
本願発明者らの第1原理DFT計算はすべてVASPコードを使用してGGAレベルで行なわれた。すべての場合で350eVの平面波カットオフと単一のγ点κ空間統合を使用した。10.978×12.626×35.3Å寸法の計算セルを使用して、約22Åの介在真空空間を有する結晶のZrB2の5つのスラブを表した。最初の未反応の形状は
、真空領域の中心でスラブの周囲に(D2GaN3)3分子を配置することにより表わした
。反応後の形状は、同じ真空領域に分解副産物D2とN2を一様に配置し、表面付近に(GaN)3の構造ブロックを配置することで初期化した。三量体および単量体の分子構造の
ための自由分子計算により、空のスーパーセル内にユニットを配置して近似した。計算上の誤差はすべての計算に同一の条件(セル寸法、平面波カットオフ値、収束基準)を使用することにより最小限にした。
【0190】
計算は、三量体(D2GaN3)3が対応するD2GaN3の単量体要素よりも4.8eV
だけ熱力学的に安定していることを示した。これにより、吸着プロセスと後の結晶成長が、単量体由来の個々のGaNユニットに関与するのではなく、(D2GaN3)3の(Ga
N)3分子コア全体に関与することが確認される。
【0191】
成長プロセスの初期ステップを、5層ZrB2(0001)スラブの自由ZrおよびB
終端表面上への(D2GaN3)3の吸着をシミュレートによりモデル化した。ZrB2基板に結合する(GaN)3の構造ブロックは、ガス(D2GaN3)3化合物からN2およびD2を加熱除去することにより生成される。このプロセスをシミュレートするために、スラブの上の分離(D2GaN3)3分子のエネルギーを、D2とN2の副産物生成を含む表面に結
合した(GaN)3環状コアのエネルギーと比較することにより、正味の反応エネルギー
を計算した。
【0192】
これに関し、4つの可能な同一平面内(コプレーナ)(GaN)3−ZrB2(0001)結合配向と関連するエネルギーを調べた。これには、ZrB2(0001)の自由ジル
コニウムまたはホウ素終端表面のいずれかに結合する(GaN)3のGaまたはN原子が
含まれる。最も優勢な反応は、(GaN)3の3つのN原子がZrで終端するZrB2表面に結合されるものに関することが判る。この場合、計算により、1つの(GaN)3ユニ
ット当たり約−4.5eVの正味の反応エネルギーを産出した。これは1つのZr−N結合当たり1.5eVに相当し、これは対応するバルクGaN−ZrB2界面に見出される
約1.6eVの計算されたZr−N結合エネルギーに匹敵する。結果は、予め形成された(GaN)3構造ブロックが、完全に釣り合った高度に化学量論的なGaN−ZrB2界面を形成するための、本来的に正確なGa−N組成と、正確な結合配置と、熱力学的駆動力とを本質的に有することが示された。界面でのZr−B−Nの生成につながるいかなる二次反応も、フィルムに(GaN)3全体を組み込むことにより効果的に抑制される。
【0193】
特定の実施形態を本明細書で図示すると共に説明したが、同じ目的を達成することが意図される配置であればいかなるものも示された特定の実施形態の代わりに用いられ得ることが当業者には理解されるだろう。本願は、本発明の実施形態のいかなる適応物または変形物をも包含するものとする。上記説明は例示であって限定ではなく、本明細書で使用される語法または用語は説明を目的とするものであって限定ではない。上記の実施形態および他の実施形態の組み合わせが上記説明を検討した当業者では明らかである。本発明の範囲は、上記構造の実施形態および製造方法が使用されるいかなる他の適用例も包含する。本発明の実施形態の範囲は、かかる実施形態に関連する請求項と、そのような請求項に対する等価物の範囲全体とを考慮して決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方にAlxGa1-xN層を形成する方法であって、
AlxGa1-xN層を形成するのに適した温度および圧力で、Al源の存在下で、基板をH2GaN3、D2GaN3、またはそれらの混合物と接触させることからなり、前記温度は約800℃未満である方法。
【請求項2】
Al源の存在下で基板をH2GaN3と接触させることからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Al源の存在下で基板をD2GaN3と接触させることからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Al源はクヌーセンセルから蒸発したAl元素の原子である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記接触が約700℃未満の温度で起こる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記接触が約500℃から約700℃までの範囲の温度で起こる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接触が約1.33322μPa(約1×10-8トル)から約133.322μPa(約1×10-6)までの範囲の圧力で起こる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基板がSi(111)を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基板がIII群窒化物を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記III群窒化物がGaNを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記AlxGa1-xN層がエピタキシャルである請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
半導体構造であって、
基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備え、
前記複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2合金層からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい、半導体構造。
【請求項13】
前記基板がSi、Al2O3、SiCまたはGaAsを含む請求項12に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記基板がSi(111)を含む請求項13に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記基板がミスカットSi(111)を含む請求項14に記載の半導体構造。
【請求項16】
前記スタックは2種類の反復合金層を含む請求項12に記載の半導体構造。
【請求項17】
前記スタックは3種類の反復合金層を含む請求項12に記載の半導体構造。
【請求項18】
前記スタックの上方に形成された活性層をさらに含む請求項12〜17のいずれかに記載の半導体構造。
【請求項19】
前記活性層がIII群窒化物を含む請求項18に記載の半導体構造。
【請求項20】
前記III群窒化物がGaNまたはInGaNを含む請求項19に記載の半導体構造。
【請求項21】
反復合金層の各々が約2〜500nmの厚さを有する請求項12〜17のいずれかに記載の半導体構造。
【請求項22】
前記スタックが約100nmから1000nmの厚さを有する請求項12〜17のいずれかに記載の半導体構造。
【請求項1】
基板の上方にAlxGa1-xN層を形成する方法であって、
AlxGa1-xN層を形成するのに適した温度および圧力で、Al源の存在下で、基板をH2GaN3、D2GaN3、またはそれらの混合物と接触させることからなり、前記温度は約800℃未満である方法。
【請求項2】
Al源の存在下で基板をH2GaN3と接触させることからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Al源の存在下で基板をD2GaN3と接触させることからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Al源はクヌーセンセルから蒸発したAl元素の原子である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記接触が約700℃未満の温度で起こる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記接触が約500℃から約700℃までの範囲の温度で起こる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接触が約1.33322μPa(約1×10-8トル)から約133.322μPa(約1×10-6)までの範囲の圧力で起こる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基板がSi(111)を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基板がIII群窒化物を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記III群窒化物がGaNを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記AlxGa1-xN層がエピタキシャルである請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
半導体構造であって、
基板の上方に形成された、複数の反復合金層を含むスタックを備え、
前記複数の反復合金層は2つ以上の合金層の種類を有し、少なくとも1つの合金層の種類はZrzHfyAl1-z-yB2合金層からなり、zとyの合計は1以下であり、スタックの厚さは約50nmより大きい、半導体構造。
【請求項13】
前記基板がSi、Al2O3、SiCまたはGaAsを含む請求項12に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記基板がSi(111)を含む請求項13に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記基板がミスカットSi(111)を含む請求項14に記載の半導体構造。
【請求項16】
前記スタックは2種類の反復合金層を含む請求項12に記載の半導体構造。
【請求項17】
前記スタックは3種類の反復合金層を含む請求項12に記載の半導体構造。
【請求項18】
前記スタックの上方に形成された活性層をさらに含む請求項12〜17のいずれかに記載の半導体構造。
【請求項19】
前記活性層がIII群窒化物を含む請求項18に記載の半導体構造。
【請求項20】
前記III群窒化物がGaNまたはInGaNを含む請求項19に記載の半導体構造。
【請求項21】
反復合金層の各々が約2〜500nmの厚さを有する請求項12〜17のいずれかに記載の半導体構造。
【請求項22】
前記スタックが約100nmから1000nmの厚さを有する請求項12〜17のいずれかに記載の半導体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15(b)】
【図15(c)】
【図16(b)】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24(a)】
【図24(b)】
【図25】
【図7】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15(a)】
【図16(a)】
【図17】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15(b)】
【図15(c)】
【図16(b)】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24(a)】
【図24(b)】
【図25】
【図7】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15(a)】
【図16(a)】
【図17】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2010−538949(P2010−538949A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544994(P2009−544994)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/050280
【国際公開番号】WO2008/086210
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(507080994)アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (17)
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS,a body corporate acting on behalf of ARIZONA STATE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/050280
【国際公開番号】WO2008/086210
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(507080994)アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (17)
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS,a body corporate acting on behalf of ARIZONA STATE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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