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蒸気供給装置を含む基板処理装置
説明

蒸気供給装置を含む基板処理装置

【課題】制御された蒸気の供給を可能とする。
【解決手段】液体又は固体の物質を保持する保持部4と、保持部を冷却する冷却手段5と、保持部の温度を検知する検知手段6と、検知手段により検出した温度に基づき、冷却手段を制御する制御手段7と、を有し、制御手段により、冷却手段を用いて保持部の温度を制御することで、液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して、物質の蒸気を供給する。蒸気供給装置の置かれた雰囲気での、液体又は固体から気化又は昇華した蒸気の圧力を測定する手段9又は10を有し、制御手段は、測定された圧力に基づき蒸気の圧力が所定の値になるように保持部の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気を供給する蒸気供給装置、これを利用した基板処理装置と基板処理方法、電子デバイス製造装置、電子デバイスの製造方法、及び電子デバイスの製造方法を使用して生産された電子デバイス、トンネル型磁気抵抗素子及び磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイスには酸化膜又は酸化物を含む膜が多く使用されている。例えば、MRAM (Magnetoresistive Random Access Memory)やハードディスクドライブ(以降HDDと略す)の磁気ヘッドに搭載されるトンネル型磁気抵抗素子には、2つの磁性膜の間に厚みわずか数原子層の酸化物(例えば酸化アルミ、酸化マグネシウム)が用いられている。また、HDDの磁気記録媒体には酸化物(例えばSiO2)を含有するCoCrPt磁性膜が垂直磁気記録方式では主流になっている。さらに、現在開発が精力的に進められているRRAM(Resistance Random Access Memory)にも金属合金酸化物又は酸化物薄膜が記録膜として使用されている。
【0003】
次世代HDD磁気ヘッドには素子の低抵抗化がより一層必要になり、そのために膜面に対して電流を垂直方向に流して作動するCPP−GMR膜(Current Perpendicular to Plane Giant Magnetoresistive膜)が最有力候補となっている。この素子では所望の磁気抵抗特性を得るには、磁性層の間に存在する非磁性スペーサ層を酸化物と金属からなるグラニュラー構造にする必要があるが、現状の成膜技術では膜構造のバラツキが大きく、素子の耐久性が問題となっている。
【0004】
これらの電子デバイスが高い信頼性で動作するためには酸化物又は酸化物を含む膜の成膜に工夫がされている。例えば、特許文献1によればCo系グラニュラー磁性膜の成膜には、Arスパッタガスに微量な酸素又は窒素ガスを混合させ、反応性スパッタを行う。そうすることでCo系磁性結晶粒の周りに酸化物層が形成され、磁性結晶粒間の磁気的な相互作用が分断され、媒体ノイズが低減され、高い信号対出力比を有する磁気記録媒体を安価に作ることができるとされている。
【0005】
また、特許文献2では光磁気記録媒体の特性を向上するために、成膜中に真空装置内に反応性酸化プロセスに有効な酸素、二酸化炭素、水蒸気ガス等を導入する方法が用いられている。その結果、膜表面が均一になり、出力も向上するとされている。
【0006】
また、もう一つの精密な基板処理が必要な電子デバイスとしては、トンネル型磁気抵抗膜(Tunneling Magnetoresistive膜、以降TMR膜と略記する)を有するMRAMがある。図9はこの電子デバイスの典型的な構造の概略図である。かかる構成は例えば、特許文献3に記載されている。基板51側より、シード層52、下地層53、反強磁性層54、磁気固定層55、絶縁膜56、磁気自由層57、キャップ層58の順序で多層膜が成膜されている。
【0007】
このデバイスにおいては、磁気固定層55の磁気モーメントの向きは反強磁性層54との交換結合により固定されている。一方、磁気自由層57の磁気モーメントの向きは外部信号により変えられる。そして、磁気固定層55と磁気自由層57の磁気モーメントの向きが揃っているときは、その間にある絶縁膜56を通して電流が流れやすく、即ち電気抵抗が小さい。一方、磁気固定層55と磁気自由層57の磁気モーメントの向きが揃っていなく反対に方向を向いているときはその間にある絶縁膜56を通して電流が流れ難い、即ち電気抵抗が大きい。TMR膜を有するMRAMは上記の抵抗の変化より情報を記憶するものである。また、HDD用磁気ヘッドにもTMR膜が用いられ、製品化されている。
【0008】
上記TMR膜を有するMRAMの製造過程において、絶縁膜56の膜質は最終性能に大きな影響を与える。絶縁膜56としては、酸化アルミ(Al2O3)、酸化マグネシュウム(MgO)等があるが、より高性能化のためにはこれらの酸化膜は化学量論比を満たしている必要がある。
【特許文献1】米国特許第7033685号明細書
【特許文献2】米国特許第5302493号明細書
【特許文献3】特開2005-101441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば絶縁膜の酸化のような基板処理の制御が容易ではないという問題があった。
【0010】
この問題を解決する手段としては以下のものが考えられる。ここでは、酸化処理に限って説明する。
1) 酸素を直接マスフローコントローラにて供給する。
2) 大気をリークさせて、これに含まれる酸素及び水分により酸化する。
3) 水を液体マスフローコントローラにより供給する。
【0011】
上記1)の手段では、酸素は強い酸化剤であるため、少しでも多いと過度の酸化となり、少ないと酸化が不足するという状態が起る。即ち、制御が非常に難しいという問題がある。
【0012】
上記2)の手段では、大気の湿度変動により、酸化剤でもある水の供給量が変動するため、1)と同様に制御が、難しいという問題がある。
【0013】
上記3)の手段では、凝縮した水が処理室内に残ると、この水を処理室内から除去することが困難で、酸化工程以外のプロセスを害するという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記1)〜3)の課題を解決すべく、鋭意に研究した結果、液体又は固体を保持する保持部の温度を制御して蒸気圧を制御することにより、該液体又は固体の蒸気を所要の量を正確に再現良く供給できることを見いだし、本発明に想到した。
【0015】
本発明の蒸気供給装置は、液体又は固体の物質を保持する保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して、前記物質の蒸気を供給することを特徴とする蒸気供給装置である。
【0016】
本発明の電子デバイスの製造方法は、液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、電子デバイスに含まれる基板の処理を行う工程を含む電子デバイスの製造方法であって、
前記基板処理室内の前記蒸気の圧力を測定し、測定された圧力に基づき前記蒸気の圧力が所定の値になるように前記制御手段により前記保持部の温度を制御しつつ、前記基板の処理を行う電子デバイスの製造方法である。
【0017】
また本発明の電子デバイスの製造方法は、液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、電子デバイスに含まれる基板の処理を行う工程を含む電子デバイスの製造方法であって、
蒸気供給時以外は、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を蒸気供給時の温度より下げて、蒸気を液化又は凝固させて液体又は固体の物質を前記保持部に保持し、
蒸気供給時になったときに、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を上げて、保持された前記液体又は固体の物質を気化又は昇華させて蒸気を供給し、基板の処理を行う電子デバイスの製造方法である。
【0018】
本発明の基板処理方法は、液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、基板の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板処理室内の前記蒸気の圧力を測定し、測定された圧力に基づき前記蒸気の圧力が所定の値になるように前記制御手段により前記保持部の温度を制御しつつ、前記基板の処理を行う基板処理方法である。
【0019】
また本発明の基板処理方法は、液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、基板の処理を行う基板処理方法であって、
蒸気供給時以外は、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を蒸気供給時の温度より下げて、蒸気を液化又は凝固させて液体又は固体の物質を前記保持部に保持し、
蒸気供給時になったときに、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を上げて、保持された前記液体又は固体の物質を気化又は昇華させて蒸気を供給し、基板の処理を行う基板処理方法である。
【0020】
本願において、気化とは液体から気体(蒸気)に変わる、又は固体が液体を経て気体(蒸気)に変わることをいう。昇華とは固体から気体(蒸気)に変わることをいう。また液化とは気体(蒸気)から液体に変わることをいう。凝固とは気体(蒸気)から固体に変わる、又は液体から固体に変わることをいう。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、蒸気を制御して供給することが可能となる。その結果、例えば、制御された蒸気の供給が必要な基板の処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。図1は蒸気供給装置を含む基板処理装置の構成図、図2は蒸気供給装置の一部の斜視図である。
【0023】
蒸気供給装置は、液体又は固体の状態で水分を保持し、水分を必要に応じて蒸発させて供給する水分供給部4、水分供給部4の温度を制御する冷凍機5、水分供給部4もしくは冷凍機5の温度を計測する温度計測手段6、水分供給部4を加熱したい場合に用いる加熱手段(ヒーター)11、真空フランジ12、冷凍機5を制御する冷凍機制御部7(図2において不図示)を備えている。
【0024】
蒸気供給装置は真空計9や質量分析計10等の蒸気の圧力を測定する手段を含む場合もある。加熱手段は昇温の速度を上げたい場合に取り付けられ、必要に応じて動作する。
【0025】
図1に示すように、真空室1内の被処理物ホルダー2に被処理物3を装着し、酸化物ターゲット(図示せず)を用いてスパッタにより被処理物3上に酸化膜を成膜する場合において、真空室1内に冷凍機5により任意の温度に冷却制御可能な水分供給部4を設置する。水分供給部4もしくは冷凍機5には温度計測手段6が装着され、この温度信号は、冷凍機制御器7により処理され温度計測可能な構成となっている。温度計測手段6としては、例えば、熱電対、白金測温抵抗体(Pt-100)などの測温抵抗体、シリコンダイオードセンサを用いることができる。なお、水分供給部4は水分を液体又は固体として保持する保持部、冷凍機5は冷却手段、温度計測手段6は検知手段、冷凍機制御部7は制御手段、真空室1は基板処理室となる。
【0026】
水分供給部4には予め充分な水分が凝縮されている。例えば、当該被処理物3に対し10-3Pa(パスカル)の分圧にて水分を供給したい場合、水の平衡蒸気圧特性(図3)より10-3Paの蒸気圧となる温度は約-100℃なので、水分供給部4が-100℃となるように、温度検出手段6の信号に基づき冷凍機制御器7により冷凍機5の運転制御を行う。同様に、10-2Paの水分供給が必要な場合には、10-2Paの平衡蒸気圧となる温度は-90℃であることより、-90℃にて運転制御を行う。なお、図3において、例えば、1.0E+05は1.0×10Pa、1.0E−11は1.0×10−11Paを示す。
【0027】
また、より精密な水分供給量の制御が必要な場合は、真空室1に装着されている真空計9の出力を冷凍機制御器7にフィードバックし、圧力が一定となるよう冷凍機5の温度を制御することにより制御することができる。10-3Pa以上の低真空領域では全圧に占める残留水分圧の比率は非常に大きいため、全圧にてフィードバックしても概ね正確な制御が可能である。つまり、蒸気の圧力は全圧に近似的に等しい。
【0028】
更に厳密な制御が必要な場合は、真空室1に分圧計9もしくは質量分析計10を設置し、この出力が一定となるよう冷凍機制御器7にフィードバックする。こうすることで、分圧計もしくは質量分析計10の出力により求められる蒸気の圧力が目標とする圧力(所定の圧力値)より低ければ、水分供給部4の温度を上げ、蒸気の圧力が目標とする圧力より高ければ、水分供給部4の温度を下げる制御を行うことができる。
【0029】
真空計、分圧計、質量分析計は、蒸気供給装置の置かれた雰囲気の液体又は固体から気化又は昇華した蒸気の圧力を測定する手段となる。
【0030】
また、水分供給を必要とする成膜時以外(蒸気供給時以外)は、冷凍機5を充分低温となるよう運転する。こうすることにより水分供給部4を充分に冷却して蒸気の供給を低減して、水分が不要な他の膜や他の被処理物、或いは隣接する他の真空室への悪影響を低減することが可能となる。
【0031】
なお、スパッタ等の基板処理時間が短い場合には、冷凍機や加熱手段(ヒーター)を用いた水分供給部の温度制御にはある程度時間がかかるため、蒸気の圧力変化を水分供給部の温度制御により制御するのが困難な場合がある。この場合は非スパッタ時に水分供給部の温度制御を行い、温度を平衡状態としておき、スパッタ時にはその温度を維持するようにしてもよい。
【0032】
ここで、冷凍機5の種類としては、入力電圧を制御することにより低温から常温まで簡単に運転制御可能なスターリング冷凍機が望ましいが、Gifford−McMahon冷凍機(以降GM冷凍機と略す)やソルベサイクル冷凍機、或いはパルス管冷凍機等でも使用できる。但し、この場合には、図示していない加熱手段を装着して温度制御することが求められる。水分供給部上の水分の枯渇により、いくら温度を上げても水分圧が上昇しない場合がある。冷凍機5の保護又は水分供給部4の温度が過剰に上昇しないように、冷凍機5の制御可能温度域を予め決めておくことが望ましい。例えば、冷凍機5の温度制御範囲を0℃以下に制限し、冷凍機温度が0℃に達した場合はアラーム発報を行うようにすることができる。
【0033】
なお、水分供給部4に溜め込んでおく水分量に関しては、例えば、図示していない主排気ポンプの排気速度を仮に500L/S(リットル/秒)とすると、真空室1の圧力を10-3Paとするために必要な水分供給量は0.5PaL/Sであり、ガス流量に換算して0.3sccmとなる。仮に2週間連続で水分供給するものとして、0.3×60(分)×24(時間)×14(日)=6048cc(気体)で、0.27molとなり、約5g程度の水分をリークバルブ8等を利用して予め凝縮しておけば良い。即ち、水分を凝縮しておく水分保持部としては、形状的にも熱容量的にもコンパクトなもので充分である。尚、このリークバルブ8を通して供給水蒸気の一部を供給することも可能である。このような使い方により、水分補充の為に装置の稼動を停止する回数を低減することが出来る。また、水分供給部はリークバルブから効率良く水分を導入するために、リークバルブ8の吹き出し口に設置することが望ましい。
【0034】
なお、本実施形態では蒸気供給装置を真空室に設けているが、配管の途中に設けてもよい。ただし、配管の途中で水が凝縮する可能性があるので、蒸気供給装置を真空室に設けることが望ましい。蒸気供給装置の水分供給部4の上に傘(シールド)を設けてもよい。傘を設けることで、例えば真空室1内でプラズマ生成を行うような場合において、水分供給部が直接プラズマに曝されて余分に水分が供給されるのを回避することができる。
【0035】
また、本実施形態では、酸化剤として水蒸気を用いた。水は酸素に比べて、穏やかな酸化剤であるため、制御性も改善されるという更なるメリットがある。本実施形態は基板の処理として酸化処理を例にとって説明した。しかし、本発明の技術的思想は、基板処理用の気体を液体又は固体の状態で、冷却された保持部に保持し、保持部の温度を冷却手段で制御することで、液体又は固体の気化又は昇華を制御して、気体(蒸気)を供給することにあり、気体の材料は特に限定されない。
【0036】
供給する気体(蒸気)としては、反応性反応プロセスに有効な、酸素、二酸化炭素、水蒸気が挙げられ、二酸化炭素はドライアイスを昇華させることで供給することができる。
【0037】
基板処理装置としては、薄膜形成装置以外の装置、例えばドライエッチング装置にも本実施形態の蒸気供給装置を用いることができる。
【0038】
以下、図10を用いて、成膜の開始前又は成膜中の水蒸気の圧力の制御のフローについて説明する。なお、ここでは水分供給部の温度検知とともに、基板処理室(真空室)内の水蒸気の圧力を測定して、水分供給部の温度制御する場合について説明する。図10に示すように、成膜が開始前又は成膜中に、水分供給部4の温度が検出される(ステップS21)。そして、上述したように、真空計9や質量分析計10等を使って基板処理室(真空室)内の水蒸気の圧力を測定する(ステップS22)。測定の結果、冷凍機制御部7が水蒸気の圧力が所定の圧力かどうかの判断を行い(ステップS23)、所定の圧力を超えていれば水分供給部4の温度を下げる。所定の圧力であれば水分供給部4の温度を維持し、所定の圧力より低ければ水分供給部4の温度を上昇させる(ステップS24、ステップS25、ステップS26)。そして、成膜が終了かどうかを判断し(ステップS27)、終了でなければステップS21へもどり、終了であれば基板処理フローが終了する。なお、水分供給部4の温度の検出は水蒸気の圧力の測定と同時でも、水蒸気の圧力の測定の後でもよい。水分供給部4の温度の検出が水蒸気の圧力の測定の後の場合は、ステップS27で、成膜終了でなければ水蒸気の圧力の測定の動作にもどることになる。
【0039】
また、図11を用いて、水分供給を必要とする成膜時以外に温度を低下させる水蒸気の圧力の制御のフローについて説明する。図11に示すように、まず、水分供給部4の温度が検出される(ステップS31)。次に、水蒸気の供給時(成膜時)であるかどうかが判断される(ステップS32)。水蒸気の供給時でなければ(成膜時以外)、水分供給部4の温度が成膜時の所定の温度よりも低いかどうかを判断し(ステップS33)、低ければステップS31へもどり、高ければ、水分供給部4の温度を下降させた後にステップS31へもどる。こうして、成膜時以外は蒸気の供給を低減させる処理が行われる。水蒸気の供給時であれば、成膜時以外の温度から成膜時の温度(所定の温度)まで温度が上昇しているかどうかを判断する(ステップS35)。温度が所定の温度まで上昇していれば、基板処理室(真空室)内の水蒸気の圧力を測定する(ステップS37)。温度が上昇していなければ、水分供給部4の温度を所定の温度まで上昇させた後、ステップS37へ移行する。圧力の測定結果に基づいて図10で説明したように、水分供給部4の温度調整を行う(ステップS38)。そして、成膜が終了かどうかを判断し(ステップS39)、終了でなければステップS37へもどり、終了であれば基板処理フローが終了する。なお、基板処理フロー終了後にステップS31に戻ってもよい。
【0040】
以上説明した、本実施形態の基板処理装置は、MRAMやHDDの磁気ヘッドに搭載されるトンネル型磁気抵抗素子において、2つの磁性膜の間に形成される、数原子層の酸化物(トンネルバリア層(トンネル障壁層)(例えば酸化アルミ、酸化マグネシウム)を含む非磁気スペーサ層の作製に用いることができる。膜面に対して電流を垂直方向に流して作動する巨大磁気抵抗膜を有する巨大磁気抵抗素子にも適用することができる。勿論、膜面に平行に電流を流す巨大磁気抵抗効果を利用した巨大磁気素子に適用しても有効であることは言うまでもない。
【0041】
また、HDDの磁気記録媒体において用いられる、酸化物(例えばSiO2)を含有するCoCrPt磁性膜の作製に用いることができる。
【0042】
さらに、RRAMの記録膜として使用されている、垂直磁気異方性を有する、酸化物と金属粒子とを含む膜又は酸化物薄膜の作製に用いることができる。そして、Co系グラニュラー磁性膜の成膜において、Arスパッタガスに微量な水蒸気を混合させ、反応性スパッタを行う場合に、本実施形態の基板処理装置を用いることができる。また磁気記録媒体の基板と平行方向に磁化された膜の作製に用いることができる。
【0043】
また、光磁気記録媒体の成膜中に真空装置内に人為的に反応性酸化プロセスに有効な水蒸気ガスを導入する場合に、本実施形態の基板処理装置を用いることができる。
【0044】
また、MRAMのTMR膜の作製に本実施形態の基板処理装置を用いることができる。
【0045】
本発明の電子デバイスの例として、磁気記録媒体を本実施形態の薄膜形成装置を用いて作製した場合について説明する。
【0046】
まず、磁気記録媒体における水蒸気を用いて酸化層を形成した場合の特性を、水蒸気、酸素、空気を導入した場合の比較において説明する。
【0047】
図4に磁気記録媒体の層構成を説明する。図4において、42は基板41上に形成されたTaからなる厚さ3nmの第1のシード層、43はNiPからなる厚さ30nmの第2のシード層、44はCrからなる厚さ12nmの第1の下地層、45はCrMoからなる厚さ15nmの第2の下地層、46はCoCrからなる厚さ2nmの中間層、47はCoCrPtBからなる厚さ20nmの磁性層、48はCからなる厚さ5nmの保護層である。後述する多層膜形成装置を用いて第1のシード層42から磁性層47まではスパッタで成膜し、保護層48はCVDで成膜した。成膜圧力は、第1のシード層42から磁性層47までは6mTorr、保護層48は20mTorrとした。印加パワーは第1のシード層42、第2のシード層43、第1の下地層44、第2の下地層45、中間層46、磁性層47、保護層48でそれぞれ200W、2000W、500W、700W、250W、900W、1000wである。
【0048】
第2のシード層43の成膜において、スパッタで成膜後に酸化材料を導入して、43の終端部を酸化して酸化層43aを形成した。
【0049】
酸化材料として、酸素(O2)、大気(空気)、水蒸気(H2O)を導入した場合のHc(保持力)とガス流量との関係を示す特性図、大気、水蒸気を導入した場合のS(エススター)とガス流量との関係を示す特性図を、それぞれ図5、図6に示す。図5、図6からに示すように、O2、による酸化は水蒸気及び大気よりも保持力Hcを低下させ、大気による酸化は水蒸気よりもS*の低下をもたらす。なお、ここでS*は磁化反転の鋭敏性を表す指標である。磁気記録媒体のポテンシャルとしては保持力(Hc)は高いほどよく、S*は大きいほどよい。S*は、図7に示す磁界の大きさ(H)と磁化(M)との関係を示すヒステリシスループにおいて、Hc値における接線を求め、その接線と磁化=外部磁場(H)が零のときの磁化の直線との交点でのH値(H*)を算出する。そして、S*=Hc/H*よりS*を求める。
【0050】
以上の2つの結果より、水蒸気(H2O)を磁気記録媒体の酸化膜形成に用いることが好ましいことが分かる。
【0051】
以下、上記磁気記録媒体の第1のシード層41から磁性層46をスパッタリングにより形成する多層膜形成装置について説明する。多層膜形成装置は、各層の薄膜を作製する成膜チャンバーを備える。図8は、磁気記録媒体の多層膜形成装置における成膜チャンバーの断面概略図である。成膜チャンバーには図2に示す蒸気供給装置を備えている。
【0052】
図8に示す成膜チャンバー23は、内部を排気する排気系31と、成膜チャンバー23内の所定位置に基板1を配置するための基板ホルダー32と、スパッタ放電を生じさせるための複数のカソード33,34と、各カソード33,34に電圧を印加する不図示のスパッタ電源等を備えている。
【0053】
成膜チャンバー23は、気密な真空容器であり、基板21の出し入れを行うための開口を備えており、この開口はゲートバルブ30によって開閉される。尚、排気系31は、ターボ分子ポンプのような真空ポンプを備えており、チャンバー23に隣接した排気室を通して排気するようになっている。
【0054】
ガス導入系は、前述したように、スパッタ用ガスとしてはアルゴンを採用しており、アルゴンガスの配管361を備えている。配管361には、バルブの他、流量調整器362が設けられており、所定の流量で配管35を通してアルゴンガスを成膜チャンバー23に導入することができる。
【0055】
各カソード33,34は、マグネトロンスパッタリングを実現するためのカソード、即ちマグネトロンカソードである。各カソード33,34は、ターゲット331,341と、ターゲット331、341の背後に設けられた磁石ユニット332,342とから主に構成されている。磁石ユニット332,342の詳細は図示されていないが、電界と磁界の直交関係を成立させて電子のマグネトロン運動を実現するためのものであり、中心磁石と、中心磁石を取り囲む周辺磁石等から構成されている。また、静止したターゲット331,341のエロージョンを均一化させるために、磁石ユニット332,342を回転させる回転機構が設けられることもある。また、ターゲット331,341の前方には、シャッタ333、343が設けられている。シャッタ333,343は、そのカソード33,34が使用されないとき、ターゲット331,341を被ってターゲット331,341の汚損等を防止するためのものである。
【0056】
尚、図8では、二つのカソード33,34が図示されているが、実際には三つ又はそれ以上の数のカソードが設けられることがある。これらの構造については、特開2002−43159号公報が参照できる。
【0057】
不図示のスパッタ電源は、各カソード33,34に負の直流電圧又は高周波電圧を印加するものであり、各カソード33,34毎に設けられる。尚、各カソード33,34への投入電力を独立して制御する不図示の制御部が設けられている。
【0058】
上記多層膜形成装置の成膜チャンバー23を複数用いて図4に示した磁気記録媒体の各層を形成した。第2のシード層(NiP)43の終端で蒸発供給装置を用いて水蒸気を導入して第二のシード層を水蒸気に曝露し、第2のシード層の表面酸化する。水分供給部4に溜め込んでおく水分量は、図5及び図6の特性図によりHc、S*が高くなるガス流量を実験的に定め、その流量に基づき装置の稼働時間等を考慮して見積もる。その見積もり出された水分量を、多層膜形成装置の蒸発供給装置に保持した。そして、所定の蒸気圧となるように図3の特性図に基づいて水分供給部4の温度を設定し、酸化膜形成時に水分供給部から水蒸気を供給した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、蒸気の圧力の正確な制御を可能とし、再現性良く安定した成膜プロセスに有効であり、スパッタ装置等の基板処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態の基板処理装置の概略断面図である。
【図2】蒸気供給装置の一部の斜視図である。
【図3】水の平衡蒸気圧特性を示す図である。
【図4】面内磁気記録媒体の層構成を示す図である。
【図5】酸素(O2)、大気(空気)、水蒸気(H2O)を導入した場合のHc(保持力)とガス流量の関係を示す特性図である。
【図6】S*と大気、水蒸気を導入した場合のガス流量との関係を示す特性図である。
【図7】S*(エススター)を説明するための図である。
【図8】磁気記録媒体の多層膜形成装置における成膜チャンバーの断面概略図である。
【図9】トンネル型磁気抵抗素子の構成を示す断面図である。
【図10】成膜の開始前又は成膜中の水蒸気の圧力の制御のフローを示すフローチャートである。
【図11】水分供給を必要とする成膜時以外は温度を低下させる水蒸気の圧力の制御のフローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 真空室
2 被処理物ホルダー
3 被処理物
4 水分供給部
5 冷凍機
6 温度計測手段
7 冷凍機制御器
8 リークバルブ
9 真空計
10 分圧計(質量分析計)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は固体の物質を保持する保持部と、
該保持部を冷却する冷却手段と、
該保持部の温度を検知する検知手段と、
該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して、前記物質の蒸気を供給することを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気供給装置において、
前記蒸気供給装置の置かれた雰囲気での、前記液体又は固体から気化又は昇華した蒸気の圧力を測定する手段を有し、
前記制御手段は、測定された圧力に基づき前記蒸気の圧力が所定の値になるように前記保持部の温度を制御することを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸気供給装置において、
前記制御手段は、蒸気供給時以外は、前記保持部の温度を蒸気供給時の温度より下げることを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気供給装置を有する基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置は、成膜装置であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の基板処理装置において、前記蒸気供給装置の保持部は基板処理室に設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の蒸気供給装置を有する電子デバイス製造装置。
【請求項8】
前記蒸気供給装置は電子デバイスの酸化膜形成に用いられることを特徴とする請求項7に記載の電子デバイス製造装置。
【請求項9】
前記電子デバイスはトンネル型磁気抵抗素子であって、前記酸化膜は、トンネル障壁層であることを特徴とする請求項8に記載の電子デバイス製造装置。
【請求項10】
前記電子デバイスは磁気記録媒体であることを特徴とする請求項8に記載の電子デバイス製造装置。
【請求項11】
液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、電子デバイスが含まれる基板の処理を行う工程を含む電子デバイスの製造方法であって、
前記基板処理室内の前記蒸気の圧力を測定し、測定された圧力に基づき前記蒸気の圧力が所定の値になるように前記制御手段により前記保持部の温度を制御しつつ、前記基板の処理を行う電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、電子デバイスに含まれる基板の処理を行う工程を含む電子デバイスの製造方法であって、
蒸気供給時以外は、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を蒸気供給時の温度より下げて、蒸気を液化又は凝固させて液体又は固体の物質を前記保持部に保持し、
蒸気供給時になったときに、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を上げて、保持された前記液体又は固体の物質を気化又は昇華させて蒸気を供給し、基板の処理を行う電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の電子デバイスの製造方法において、前記蒸気は水蒸気であり、前記基板の処理は酸化処理であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載された電子デバイスの製造方法により生産された電子デバイス。
【請求項15】
請求項13に記載の電子デバイスの製造方法を用いて形成された酸化膜を有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の電子デバイスはトンネル型磁気抵抗素子であって、前記酸化膜は、トンネル障壁層であることを特徴とするトンネル型磁気抵抗素子。
【請求項17】
請求項13に記載の電子デバイスの製造方法を用いて形成された、酸化物と金属粒子とを含む膜を有すること特徴とする電子デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の電子デバイスにおいて、前記酸化物と金属粒子とを含む膜がグラニュラー構造を形成すること特徴とする電子デバイス。
【請求項19】
前記電子デバイスは磁気記録媒体であることを特徴とする請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項20】
請求項17に記載の電子デバイスは磁気記録媒体であって、前記膜は垂直磁気異方性を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項21】
請求項17に記載の電子デバイスは磁気記録媒体であって、前記膜は前記基板と平行方向に磁化された膜であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項22】
請求項15に記載の電子デバイスにおいて、前記膜は、膜面に対して電流を垂直方向に流して作動する磁気抵抗膜に含まれることを特徴とする電子デバイス。
【請求項23】
液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、基板の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板処理室内の前記蒸気の圧力を測定し、測定された圧力に基づき前記蒸気の圧力が所定の値になるように前記制御手段により前記保持部の温度を制御しつつ、前記基板の処理を行う基板処理方法。
【請求項24】
液体又は固体の物質の保持部と、該保持部を冷却する冷却手段と、該保持部の温度を検知する検知手段と、該検知手段により検出した温度に基づき、前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する蒸気供給装置であって、前記制御手段により、前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を制御することで、前記液体又は固体の物質の気化又は昇華を制御して前記物質の蒸気を供給する蒸気供給装置から基板処理室内に蒸気を供給し、基板の処理を行う基板処理方法であって、
蒸気供給時以外は、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を蒸気供給時の温度より下げて、蒸気を液化又は凝固させて液体又は固体の物質を前記保持部に保持し、
蒸気供給時になったときに、前記制御手段により前記冷却手段を用いて前記保持部の温度を上げて、保持された前記液体又は固体の物質を気化又は昇華させて蒸気を供給し、基板の処理を行う基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−174044(P2009−174044A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278168(P2008−278168)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【出願人】(503421139)キヤノンアネルバテクニクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】